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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1379279
審判番号 不服2021-741  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-19 
確定日 2021-10-18 
事件の表示 特願2016- 79640「結像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月19日出願公開、特開2017-191175〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2016-79640号(以下「本件出願」という。)は、平成28年4月12日を出願日とする特許出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和2年 1月22日付け:拒絶理由通知書
令和2年 3月30日提出:意見書
令和2年 3月30日提出:手続補正書
令和2年 7月28日付け:拒絶理由通知書
令和2年 9月25日提出:意見書
令和2年 9月25日提出:手続補正書
令和2年10月13日付け:補正の却下の決定
令和2年10月13日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和3年 1月19日提出:審判請求書
令和3年 1月19日提出:手続補正書


第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年1月19日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
一方の側から入射する元像からの光の進行方向を変えて他方の側へ透過し、他方の側へ像を結像するための光学パネルを備えた結像装置であって、
前記光学パネルは、
前記一方の側から入射する元像からの光を反射する複数の第1反射面であって、互いに平行となるようにして第1配列方向に配列された複数の第1反射面と、
前記複数の第1反射面の他方の側に設けられ、前記第1反射面で反射された元像からの光を反射する複数の第2反射面であって、互いに平行となるようにして、第1配列方向と交差する第2配列方向に配列された複数の第2反射面と、を含み、
前記結像装置は、前記光学パネルの前記一方の側に配置され、光の透過方向に応じて当該光の透過率を変化させる光透過方向制御部材をさらに有し、
前記光透過方向制御部材は、前記光学パネルと前記元像との間となる位置に、前記元像から離間して配置されている、結像装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。
「【請求項1】
一方の側から入射する元像からの光の進行方向を変えて他方の側へ透過し、他方の側へ像を結像するための光学パネルを備えた結像装置であって、
前記光学パネルは、
前記一方の側から入射する元像からの光を反射する複数の第1反射面であって、互いに平行となるようにして第1配列方向に配列された複数の第1反射面と、
前記複数の第1反射面の他方の側に設けられ、前記第1反射面で反射された元像からの光を反射する複数の第2反射面であって、互いに平行となるようにして、第1配列方向と交差する第2配列方向に配列された複数の第2反射面と、を含み、
前記結像装置は、前記光学パネルの前記一方の側に配置され、光の透過方向に応じて当該光の透過率を変化させる光透過方向制御部材をさらに有し、
前記光透過方向制御部材は、前記光学パネルと前記元像との間となる位置に、前記光学パネル及び前記元像の両方から離間して配置されている、結像装置。」

2 本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明の、発明を特定するために必要な事項である「光透過方向制御部材」の配置についての限定を、本件出願の願書に最初に添付した図面の図2の記載に基づいて、「前記光学パネルと前記元像との間となる位置に、前記元像から離間して配置されている」から、「前記光学パネルと前記元像との間となる位置に、前記光学パネル及び前記元像の両方から離間して配置されている」へと変更して、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)とする補正事項を含むものである。
ここで、本件補正前の請求項1に係る発明と、本件補正後発明の産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題は、同一である(本件出願の明細書の【0001】、【0006】)。
そうしてみると、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものであり、また、同条第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲の限定的減縮)を目的とする補正を含むものである。
そこで、本件補正後発明が特許法第17条の2条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

3 独立特許要件についての判断
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由において引用された、特開2013-257529号公報(以下「引用文献1」という。)は、本件出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面を有する表示パネルと、
互いに直交する2つの鏡面要素を有する単位結像素子を複数備える反射型結像素子と、
前記表示パネルと前記反射型結像素子との間に配置され、前記表示面に平行な第1主面と前記第1主面に平行な第2主面とを有する光出射角制御層とを備え、
前記2つの鏡面要素でそれぞれ1回ずつ、合わせて2回反射する光以外の光によって、前記反射型結像素子の前記表示パネル側とは反対側に画像が形成するのを実質的に防止しつつ、
前記表示パネルの前記表示面に表示される画像を、前記反射型結像素子を対称面とする面対称な位置に結像する、光学システム。
・・・省略・・・
【請求項3】
前記光出射角制御層は、光を透過する複数の透光帯と光を遮光する複数の遮光帯とを有する少なくとも1つのルーバーフィルムを含む、請求項1または2に記載の光学システム。」

イ「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間に被投影物の像を結像させることができる反射型結像素子と、表示パネルとを有する光学システムに関する。
【背景技術】
・・・省略・・・
【0005】
また、特許文献6に開示されている反射型結像素子は、長手方向に互いに平行に配置された鏡面を有する2つの部材を、互いの部材の鏡面要素が直交するように重ねあわせて形成されたもの(特許文献6の図4参照)である。特許文献6に開示されている他の反射型結像素子は、長手方向に互いに平行に掘削された無数の細長い溝を含む2つの部材を有し、互いの部材の溝内に形成された光を全反射させる平滑面が直交するように2つの透明基板を重ねあわせて形成されたものである(特許文献6の図9参照) 。
・・・省略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した反射型結像素子を有する光学システムでは、反射型結像素子が有する互いに直交した2つの鏡面要素または平滑面(以下、「鏡面要素」という)で光が2回反射されることにより、被投影物の像が結像される。
【0010】
しかしながら、反射型結像素子に入射したすべての光が結像に用いられるのではなく、結像に寄与しない迷光も生じる。具体的には、図14に示すように、鏡面要素での光の反射が1回である迷光M1およびM2や、鏡面要素以外の要素で多重反射された迷光などがある。迷光が結像に寄与する光と混ざることにより空中映像70の視認性が低下する。さらに、空中映像70を観察する視点によっては、反射型結像素子20を介して直接被投影物(例えば、表示パネル2に表示された画像A1)が観察され、これにより空中映像70の視認性が低下する。このような現象は、被投影物の設置条件や被投影物と反射型結像素子との間の距離により、顕著に現れる場合がある。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、空中映像の視認性が向上した反射型結像素子を備える光学システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態による光学システムは、表示面を有する表示パネルと、互いに直交する2つの鏡面要素を有する単位結像素子を複数備える反射型結像素子と、前記表示パネルと前記反射型結像素子との間に配置され、前記表示面に平行な第1主面と前記第1主面に平行な第2主面とを有する光出射角制御層とを備え、前記2つの鏡面要素でそれぞれ1回ずつ、合わせて2回反射する光以外の光によって、前記反射型結像素子の前記表示パネル側とは反対側に画像が形成するのを実質的に防止しつつ、前記表示パネルの前記表示面に表示される画像を、前記反射型結像素子を対称面とする面対称な位置に結像する。
・・・省略・・・
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態によれば、空中映像の視認性が向上した反射型結像素子を備える光学システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本発明の実施形態による光学システム100および200の模式的な斜視図であり、(b)は光学システム100および200の模式的な側面図である。
【図2】(a)は反射型結像素子20の模式的な平面図であり、(b)は単位結像素子21の模式的な斜視図である。
・・・省略・・・
【図5】(a)は、ルーバーフィルム34の配置を説明する模式的な平面図であり、(b)および(c)は、ルーバーフィルム34の模式的な平面図である。」

ウ「【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明するが、本発明は例示する実施形態に限定されない。
【0024】
図1に本発明の実施形態における光学システム100を示す。図1(a)は、光学システム100の模式的な斜視図である。なお、図1(a)に示すVは、観察者を表す。図1(b)は、光学システム100の模式的な側面図である。図2(a)は、反射型結像素子20の模式的な平面図であり、図2(b)は、単位結像素子21の模式的な斜視図である。
【0025】
光学システム100は、表示面2aを有する表示パネル2と、互いに直交する2つの鏡面要素14および15を有する単位結像素子21を複数備える反射型結像素子20と、表示面2aに平行な第1主面4aと、第1主面4aに平行な第2主面4bとを有する光出射角制御層4とを備える。光出射角制御層4は、表示パネル2と反射型結像素子20との間に配置されている。光学システム100は、表示パネル2の表示面2aに表示される画像を、反射型結像素子20を対称面とする面対称な位置に結像させる。光学システム100では、2つの鏡面要素14および15でそれぞれ1回ずつ、合わせて2回反射する光以外の光(迷光)によって、反射型結像素子20の表示パネル2側とは反対側に画像が形成するのを実質的に防止することができる。
【0026】
このような構成を有する光学システム100は、結像に寄与しない迷光が結像に寄与する光と混ざることを防ぎ、空中映像70の視認性が向上するという効果を奏する。
【0027】
反射型結像素子20としては、例えば特許文献1または6に開示された反射型結像素子を用いることができる。反射型結像素子20を図2(a)および図2(b)を参照しながら簡単に説明する。図2(a)および図2(b)に示すように、反射型結像素子20は複数の単位結像素子21を有する。各単位結像素子21は、例えば貫通孔16を有し、貫通孔16内の側壁に互いに直交する2つの鏡面要素14および15が形成されている。2つの鏡面要素14および15によって、反射型結像素子20に入射した光Lを2回反射させて、被投影物の像を空中に結像させることができる。本例では、反射型結像素子20が全体として直方体形状とされており、個々の貫通孔16における鏡面要素14および15のそれぞれは、反射型結像素子20の側面と45度の角度をなすように設定されている。光学システム100が有する反射型結像素子20において、鏡面要素14および15の幅aは、例えば約150μmであり、鏡面要素14および15の高さ(反射型結像素子20の厚さ方向と平行な方向の長さ)は、例えば約170μmである。鏡面要素14および15は、例えばAl(アルミニウム)から形成されている。鏡面要素14および15のそれぞれに対向する面に表示パネル2からの光Lが当たると、結像に寄与しない迷光が生じ得る。また、鏡面要素14また15において1回反射しかしていない光も迷光となり得る。
【0028】
表示パネル2は、例えば液晶表示パネルである。その他、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、プロジェクターまたはLED(Light Emitting Diodes)ディスプレイを表示パネル2として用いることもできる。表示パネル2は、設置面に対して所定の角度θを有して配置されている。光学システム100において、角度θは例えば約30度である。角度θは、約0度超約90度未満が好ましく、約30度以上約70度以下が好ましい。なお、角度θを大きくするほど、空中映像70の浮遊感が増す。
【0029】
光出射角制御層4は、後述するように、例えば、ファイバーオプティクプレート(Fiber Optic Plate(FOP))や、ルーバーフィルムを含んでいる。光出射角制御層4が、偏光素子および複屈折素子を含んでいてもよい。詳細は後述するが、光出射角制御層4は、図2(a)に示した、X方向(反射型結像素子20の横方向と平行な方向)に広がる光と、Y方向(反射型結像素子20の縦方向と平行な方向)に広がる光とを同時に制御し得る。
・・・省略・・・
【0036】
次に、図5および図6を参照しながら、ルーバーフィルム34を光出射角制御層4として用いた場合の光学システム200を説明する。光学システム100と共通する構成要素には、同じ参照符号を付し、説明の重複を避ける。なお、光学システム200の全体構成は、光学システム100と共通するので、図1(a)および図1(b)を参照する。
【0037】
図5(a)および図6は、表示パネル2と、ルーバーフィルム34と、反射型結像素子20との配置関係を説明する模式的な平面図である。図5(b)および図5(c)は、ルーバーフィルム34の改変例を説明する模式的な平面図である。
【0038】
図5(a)に示すように、本実施形態において、光出射角制御層4は、光を遮光する複数の遮光帯44と光を透過する複数の透光帯45とを有する少なくとも1つのルーバーフィルム34を含んでいる。図5(a)に示した例では、ルーバーフィルム34が第1ルーバーフィルム34aと第2ルーバーフィルム34bを含んでおり、第1ルーバーフィルム34aの上に、第2ルーバーフィルム34bが配置されている。なお、第1ルーバーフィルム34aの上に第2ルーバーフィルム34bを配置してもよいし、第2ルーバーフィルム34bの上に第1ルーバーフィルム34aを配置してもよい。
【0039】
第1ルーバーフィルム34aは、光を遮光する複数の第1遮光帯(ルーバー)44aと光を透過する複数の第1透光帯45aとを有する。第2ルーバーフィルム34bは、光を遮光する複数の第2遮光帯(ルーバー)44bと光を透過する複数の第2透光帯45bとを有する。なお、ルーバーピッチp'(第1透光帯45aまたは第2透光帯45bの幅)は、例えば約10μmである。第1遮光帯44aと第1透光帯45aとは、交互に配置されている。同様に、第2遮光帯44bと第2透光帯45bとは、交互に配置されている。第1ルーバーフィルム34aにおける第1遮光帯44aおよび第1透光帯45aは、それぞれ第1の方向に延設されている。第2ルーバーフィルム34bにおける第2遮光帯44bおよび第2透光帯45bは、それぞれ第1の方向とは異なる第2の方向に延設されている。例えば、第1ルーバーフィルム34aおよび第2ルーバーフィルム34bは、ルーバーフィルム34の法線方向からみたときに、第1ルーバーフィルム34aにおける複数の第1遮光帯44aのそれぞれと第2ルーバーフィルム34bにおける複数の第2遮光帯44bのそれぞれとがほぼ直交するように配置されている。
【0040】
また、使用用途によっては、第1ルーバーフィルム34aおよび第2ルーバーフィルム34bのいずれか一方だけを用いてもよい。この場合も、表示パネル2から出射される光の出射角範囲を制御することができ、反射型結像素子20からの迷光の出射を抑制し得る。なお、第1ルーバーフィルム34aおよび第2ルーバーフィルム34bを用いる代わりに、互いに直交するよう(格子状)に形成された複数の遮光帯44を有する1枚のルーバーフィルムを用いてもよい。
・・・省略・・・
【0042】
ルーバーフィルム34は、表示パネル2と反射型結像素子20との間に配置されている。ルーバーフィルム34が第1ルーバーフィルム34aおよび第2ルーバーフィルム34bを含む場合、例えば、第1ルーバーフィルム34aにおける複数の第1遮光帯44aが、鏡面要素14および15の一方とほぼ平行となるように配置され、第2ルーバーフィルム34bにおける複数の第2遮光帯44bが、鏡面要素14および15の他方とほぼ平行となるように配置される。つまり、反射型結像素子20の法線方向から見たとき、ルーバーフィルム34は、例えば、鏡面要素14の幅方向(図2(b)参照)と平行な方向に延設された複数の第2遮光帯44bと、鏡面要素15の幅方向(図2(b)参照)と平行な方向に延設された複数の第1遮光帯44aとを有する。
【0043】
図5(a)に示したように、ルーバーフィルム34を配置すると、鏡面要素14または15による1回反射の迷光、鏡面要素14および15に対向する面において反射した迷光、および表示パネル2に映し出された画像を直接観察することにつながる迷光が観察者Vに向けて出射されることが抑制される。観察者Vへ向けての迷光の出射を抑制することにより、観察者Vに迷光が視認されることを防止でき、空中映像70の視認性が高まる。
・・・省略・・・
【0045】
また、図6に示すようにルーバーフィルム34を配置してもよい。
【0046】
具体的には、図6に示すように、表示パネル2の法線方向から見たとき、表示パネル2の列方向に平行な複数の第2遮光帯44bと、表示パネル2の行方向に平行な複数の第1遮光帯44aとを有するように、ルーバーフィルム34を反射型結像素子20と表示パネル2との間に配置する。このようにルーバーフィルム34を配置しても、表示パネル2に映しだされた画像を直接観察することに繋がる迷光や、鏡面要素14および15に対向する面において反射した迷光が観察者Vに視認されることを防ぐことができ、空中映像70の視認性が高まる。特に、表示パネル2の行方向に平行な第1遮光帯44aにより、表示パネル2に映しだされた画像を直接観察することに繋がる迷光が観察者Vに視認されることを防ぐことができる。また、表示パネル2の列方向に平行な第2遮光帯44bにより鏡面要素14および15に対向する面において反射した迷光が観察者Vに視認されることを防ぐことができる。なお、表示パネル2の画素ピッチとルーバーピッチp'とが近い値の場合、干渉縞が発生し、空中映像70の視認性が低下する場合がある。この場合、複数の遮光帯44のすべてが表示パネル2の列方向と交わるようにルーバーフィルム34を配置することが好ましい。このように配置すると、干渉縞の発生を防ぐことができ、空中映像70の視認性が向上する。」

エ「【図1】



オ「【図2】



(2)引用発明
引用文献1の請求項1を引用する請求項3には、「光学システム」として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「 表示面を有する表示パネルと、
互いに直交する2つの鏡面要素を有する単位結像素子を複数備える反射型結像素子と、
前記表示パネルと前記反射型結像素子との間に配置され、前記表示面に平行な第1主面と前記第1主面に平行な第2主面とを有する光出射角制御層とを備え、 前記光出射角制御層は、光を透過する複数の透光帯と光を遮光する複数の遮光帯とを有する少なくとも1つのルーバーフィルムを含み、
前記2つの鏡面要素でそれぞれ1回ずつ、合わせて2回反射する光以外の光によって、前記反射型結像素子の前記表示パネル側とは反対側に画像が形成するのを実質的に防止しつつ、
前記表示パネルの前記表示面に表示される画像を、前記反射型結像素子を対称面とする面対称な位置に結像する、光学システム。」

(3)対比
本件補正後発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。

ア 元像、光学パネル
引用発明の「反射型結像素子」は、「表示パネルの」「表示面に表示される画像を、」「反射型結像素子を対称面とする面対称な位置に結像する」ものである。
その構成からみて、引用発明の「反射型結像素子」は、一方の側から入射する「表示パネルの」「表示面に表示される画像」からの光の進行方向を変えて他方の側へ透過し、他方の側へ像を結像する」ものであるといえる。
そうしてみると、引用発明の「画像」は、本件補正後発明の「元像」に相当し、引用発明の「反射型結像素子」は、本件補正後発明の「光学パネル」に対し、「光学」部材という点で共通し、「一方の側から入射する元像からの光の進行方向を変えて他方の側へ透過し、他方の側へ像を結像するための」という要件を満たす。

イ 光透過方向制御部材
引用発明の「光出射角制御層」は、「表示パネルと」「反射型結像素子との間に配置され」、「光を透過する複数の透光帯と光を遮光する複数の遮光帯とを有する少なくとも1つのルーバーフィルムを含む」ものである。
その「ルーバー」の機能からみて、引用発明の「ルーバーフィルム」は、光の透過方向に応じて当該光の透過率を変化させて、光透過方向を制御する機能を有するものであるといえる。
そうしてみると、引用発明の「ルーバーフィルム」は、本件補正後発明の「光透過方向制御部材」に相当する。
さらに、その構成及び上記アの対比結果からみて、引用発明の「ルーバーフィルム」は、本件補正後発明の「光透過方向制御部材」における、「光学」部材「の一方の側に配置され、光の透過方向に応じて当該光の透過率を変化させる」ものであり、「光学」部材「と元像との間となる位置に、」「配置されている」という点で共通する。

ウ 結像装置
引用発明の「光学システム」は、「表示パネルの」「表示面に表示される画像を、」「反射型結像素子を対称面とする面対称な位置に結像する」ものであり、本件補正後発明の「結像装置」に相当する。
そして、上記ア?イを総合すれば、引用発明の「光学システム」は、本件補正後発明の「結像装置」における、「一方の側から入射する元像からの光の進行方向を変えて他方の側へ透過し、他方の側へ像を結像するための光学」部材「を備え」、「光学」部材「の」「一方の側に配置され、光の透過方向に応じて当該光の透過率を変化させる光透過方向制御部材をさらに有し、」という要件を満たす。

(4)一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明は、次の構成で一致する。
「 一方の側から入射する元像からの光の進行方向を変えて他方の側へ透過し、他方の側へ像を結像するための光学部材を備えた結像装置であって、
前記結像装置は、前記光学部材の前記一方の側に配置され、光の透過方向に応じて当該光の透過率を変化させる光透過方向制御部材をさらに有し、
前記光透過方向制御部材は、前記光学部材と前記元像との間となる位置に、配置されている、結像装置。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明は、次の点で相違する。
(相違点1)
「一方の側から入射する元像からの光の進行方向を変えて他方の側へ透過し、他方の側へ像を結像するための光学」部材が、本件補正後発明は、「パネル」であり、また、「一方の側から入射する元像からの光を反射する複数の第1反射面であって、互いに平行となるようにして第1配列方向に配列された複数の第1反射面と、前記複数の第1反射面の他方の側に設けられ、前記第1反射面で反射された元像からの光を反射する複数の第2反射面であって、互いに平行となるようにして、第1配列方向と交差する第2配列方向に配列された複数の第2反射面と、を含」むものであるのに対し、引用発明は、パネルであるか不明であり、また、その反射面の構成も不明である点。

(相違点2)
「光透過方向制御部材」が、本件補正後発明は、「光学パネルと」「元像との間となる位置に、前記光学パネル及び前記元像の両方から離間して配置されている」のに対して、引用発明は、「前記表示パネルと前記反射型結像素子との間に配置され」ているが、両方から離間して配置されているものであるか特定されていない点。

(5)判断
相違点についての判断は以下のとおりである。

ア 相違点1についての判断
引用文献1の【0027】には、「本例では、反射型結像素子20が全体として直方体形状とされており」と記載されている。
そうしてみると、上記記載に基づいて、引用発明の「反射型結像素子」を、直方体形状、すなわち板状とし、パネルとすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
また、引用文献1の【0027】には、「反射型結像素子20としては、例えば特許文献1または6に開示された反射型結像素子を用いることができる。」、【0005】には、「特許文献6に開示されている反射型結像素子は、長手方向に互いに平行に配置された鏡面を有する2つの部材を、互いの部材の鏡面要素が直交するように重ねあわせて形成されたもの(特許文献6の図4参照)である。特許文献6に開示されている他の反射型結像素子は、長手方向に互いに平行に掘削された無数の細長い溝を含む2つの部材を有し、互いの部材の溝内に形成された光を全反射させる平滑面が直交するように2つの透明基板を重ねあわせて形成されたものである(特許文献6の図9参照)」ことが記載されている。
そうしてみると、上記記載に基づいて、引用発明の「反射型結像素子」として、一方の側から入射する元像からの光を反射する複数の第1反射面であって、互いに平行となるようにして第1配列方向に配列された複数の第1反射面と、前記複数の第1反射面の他方の側に設けられ、前記第1反射面で反射された元像からの光を反射する複数の第2反射面であって、互いに平行となるようにして、第1配列方向と交差する第2配列方向に配列された複数の第2反射面と、を含むように構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。

イ 相違点2についての判断
光出射角制御層4を、反射型結像素子20と離間して配置することは、引用文献1の図1(b)等の記載に基づいて、当業者が容易になし得る設計的事項にすぎない。
光出射角制御層4を、元像に対し離間して配置するか、又は密接させて配置するかのいずれかについて、引用文献1に明示的な記載はないが、図1(b)の記載からは、光出射角制御層4と表示パネル2との間に若干の隙間があり、元像から離間して配置されている様子が看取される。また、【0028】には表示パネル2として「プロジェクター」を用いることが例示されており、図1(b)に記載の光学システムにおいて表示パネル2として「プロジェクター」を用いる場合には、光出射角制御層4が、元像から離間して配置されることは当業者に明らかである。また、結像装置において元像として実物の被写体(本件出願明細書【0060】の「円錐」のモデルに対応)を用いることは広く知られているから(特開2013-220981号公報の図4を参照)、引用発明の光学システムにおける表示パネルに代えて、このような実物の被写体を採用することは当業者が容易に想到し得たことであって、その場合において光出射角制御層4は元像に密接することはできず、元像から離間して配置することは当業者に明らかであるか、容易になし得る設計的事項にすぎない。
そうしてみると、引用発明に基づいて、光出射角制御層4を、反射型結像素子及び元像の両方から離間して配置した構成とすることは、当業者が容易になし得る設計的事項にすぎない。

なお、本件補正後発明において光透過方向制御部材を元像から離間して配置することに関して、本件出願明細書の【0068】には、「元像91から出射してケーシング15の内面やケーシング15内の他の装置の表面で反射し、元像91から出射していずれかの箇所で反射することなく光学パネル20に入射する光L1とは異なる角度で光学パネル20に入射し光学パネル20を透過した光L2が、本来観察されるべき像92とは異なる位置で結像し、この像がゴーストとして観察者から視認されることを効果的に抑制することができる。すなわち、一方の側から入射する元像91からの光の進行方向を変えて他方の側へ透過し、他方の側へ像を結像するための光学パネル20を備えた結像装置10において、ゴーストの発生を効果的に抑制することができる。」と記載されており、その「離間」の程度について特定しているようにもうかがえる。
しかし、本件補正後発明を説明した本件出願の図1、図2を参照すると、光透過方向制御部材よりも元像側の空間(ケーシングの底面との間の空間)にも、ケーシングの内面が存在(場合によっては他の装置の表面も存在)しているから、光透過方向制御部材が元像から非常に小さい距離で離間される態様であっても、ケーシングの内面や他の装置の表面で反射した光が光学パネルに入射することを抑制することになると考えられ、一方で、光透過方向制御部材と光学パネルの間にある空間にも依然としてケーシングの内面が(場合によっては他の装置の表面も)存在しているから、「離間」の程度が、ケーシングの内面や他の装置の表面で反射した全ての光が光学パネルに入射することのない程度に特定されているとは考えがたい。したがって、本件補正後発明は、単に「前記光透過方向制御部材は、前記光学パネルと前記元像との間となる位置に、前記光学パネル及び前記元像の両方から離間して配置されている」と特定されている(光透過方向制御部材が元像から非常に小さい距離で離間される態様も包含されている)にすぎず、その「離間」の程度について特定しているものとは認められない。

(6)審判請求書について
審判請求人は、令和3年1月19日提出の審判請求書において、引用文献1の「光出射角制御層4」は「表示パネル2」に接するように配置されており、光学パネルと元像との間となる位置に、光学パネル及び元像の両方から離間して配置することは当業者であっても容易ではない旨の主張をしている。
しかしながら、上記(5)で述べたとおりであり、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

(7)小括
本件補正後発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、本件出願の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]に記載のとおり、決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2」[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、理由2(進歩性)本願発明は、本件出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2013-257529号公報

3 引用文献及び引用発明
(1) 引用文献1
引用文献1の記載、引用発明は、前記「第2」[理由]3(1)、(2)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は、前記「第2」[理由]1(2)の本件補正後発明から、「光透過方向制御部材は、」「光学パネル」「から離間して配置されている」という限定事項を除いたものである。また、本願発明の構成を全て具備し、これにさらに限定を付したものに相当する本件補正後発明は、前記「第2」[理由]3で述べたとおり、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうしてみると、本願発明は、前記「第2」[理由]3で述べた理由と同様の理由により、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-08-06 
結審通知日 2021-08-10 
審決日 2021-08-31 
出願番号 特願2016-79640(P2016-79640)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 説志  
特許庁審判長 榎本 吉孝
特許庁審判官 関根 洋之
井亀 諭
発明の名称 結像装置  
代理人 宮嶋 学  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 中村 行孝  
代理人 柳本 陽征  
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