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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1379283
審判番号 不服2020-16000  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-19 
確定日 2021-11-09 
事件の表示 特願2018-237487「住宅ネットワークの装置のための効率的通信」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月28日出願公開、特開2019- 50630、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)6月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年6月25日 米国)を国際出願日とする出願である特願2015-563117号の一部を、平成28年12月14日に新たな特許出願とした特願2016-242302号の一部を、平成29年9月20日に新たな特許出願とした特願2017-180135号の一部を、平成30年12月19日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 1月15日 :手続補正書の提出
令和 2年 2月12日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 7月14日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 8月 6日付け:拒絶査定
令和 2年11月19日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提


第2 原査定について
1 概要
原査定(令和2年8月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
令和2年7月14日に提出された手続補正書でした補正は、以下の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
また、この出願は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
請求項2には、「前記イメージクエリ応答は、前記第2の装置または前記ローカルサーバもしくは前記遠隔サーバを含む送信側装置に記憶されるソフトウェア更新および前記送信側装置の転送プロトコルを含む伝送特性に関する送信側情報を含む」と記載されているが、当初明細書等には、そのようなことについて記載も示唆もない。
請求項2と同様の記載のある請求項13ついても同様である。

2 「付記」について
なお、原査定では、「付記」として、次のような趣旨の指摘がなされている。

(1)新規事項について
ア 請求項1には、「前記イメージクエリメッセージは当該イメージクエリメッセージが前記ソフトウェアのローカル記述を予め定められた地域の言語にエンコードするための情報を示すロケール仕様フィールドを含むか否かを示すロケール仕様フラグを含み」と記載されているが、当初明細書等には、「イメージクエリメッセージがソフトウェアのローカル記述を予め定められた地域の言語にエンコードする」ということは記載も示唆もされていない。
当初明細書の【0176】、【0177】、【0181】、【0181】には、イメージクエリメッセージがエンコードをするということは記載も示唆もされていない。(イメージクエリメッセージがエンコードするという記載は意味も不明である。)
請求項8,12,17にも同様の記載がある。

イ 請求項9には、「イメージクエリ応答は、前記第1の装置に記憶されるソフトウェア更新および前記第1の装置の転送プロトコルを含む伝送特性に関する情報を含む、」と記載されているが、当初明細書等にはそのような記載も示唆もない。

(2)進歩性について
請求項1?20に係る発明は、以下の引用文献1?4(当審注: いずれも、令和2年2月12日付けの拒絶理由通知書で引用されたもの)に記載された発明に対して進歩性を欠く。
引用文献1:国際公開第2008/114454号
引用文献2:特開2008-310750号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2003-87424号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2009-245397号公報

第3 本願発明
本願請求項1?14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明14」という。)は、令和2年11月19日に提出された手続補正書により補正された(以下、この補正を「本件補正」という。)特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定される発明であり、それらのうちの本願発明1,7,9,13は、それぞれ以下のとおりの発明である(下線は補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
ファブリックネットワークをわたってソフトウェア更新を伝送する方法であって、
前記ファブリックネットワークにおける第1の装置から前記ファブリックネットワークにおける第2の装置またはローカルサーバもしくは遠隔サーバにイメージクエリメッセージを送信することを含み、前記イメージクエリメッセージは、当該イメージクエリメッセージに前記ソフトウェアのローカル記述を予め定められた地域の言語にエンコードするための情報を示すロケール仕様フィールドが含まれるか否かを示すロケール仕様フラグを含み、前記方法はさらに、
前記第1の装置において前記第2の装置または前記ローカルサーバもしくは遠隔サーバからイメージクエリ応答を受信することを含み、前記イメージクエリ応答は、前記ソフトウェア更新が利用可能であるかどうかを示し、前記イメージクエリ応答は、前記第1の装置が前記ソフトウェア更新をダウンロードすることを可能にするよう、位置情報を有するダウンロード情報を含み、前記イメージクエリ応答は更新優先度を含み、前記方法はさらに、
前記第1の装置において前記ソフトウェア更新を前記位置情報を用いてダウンロードすることを含み、ソフトウェア更新は、前記ファブリックネットワークにおける前記更新優先度に少なくとも一部が基づいた時間にダウンロードされる、ファブリックネットワークをわたってソフトウェア更新を伝送する方法。」
「【請求項7】
ファブリックネットワークをわたってソフトウェア更新を伝送するための、コンピュータ読取可能プログラムであって、前記プログラムは、命令を有し、前記命令は、
前記ファブリックネットワークにおける第1の装置から前記ファブリックネットワークにおける第2の装置またはローカルサーバもしくは遠隔サーバにイメージクエリメッセージを送信する命令を含み、前記イメージクエリメッセージは当該イメージクエリメッセージに関する情報を示すフレーム制御フィールドを含み、前記フレーム制御フィールドは、
前記イメージクエリメッセージに前記ソフトウェアのローカル記述を予め定められた地域の言語にエンコードするための情報を有するロケール仕様フィールドが含まれるかどうかを示すロケール仕様フラグを含み、前記命令はさらに、
前記第1の装置において前記第2の装置または前記ローカルサーバもしくは遠隔サーバからイメージクエリ応答を受信する命令を含み、前記イメージクエリ応答は、前記ソフトウェア更新が利用可能であるかどうかを示し、前記イメージクエリ応答は、前記第1の装置が前記ソフトウェア更新をダウンロードすることを可能にするよう、位置情報を有するダウンロード情報を含み、前記イメージクエリ応答は更新優先度を含み、前記命令はさらに、
前記第1の装置において前記ソフトウェア更新を前記位置情報を用いてダウンロードする命令を含み、ソフトウェア更新は、前記ファブリックネットワークにおける前記更新優先度に少なくとも一部が基づいた時間にダウンロードされる、コンピュータ読取可能プログラム。」
「【請求項9】
ファブリックネットワーク内で通信するように構成される第1の電子装置であって、前記第1の電子装置は、クラウドベースの処理システムと、前記処理システムに動作可能に結合されるメモリを備え、前記処理システムは、
前記ファブリックネットワークにおける第2の電子装置またはローカルサーバもしくは遠隔サーバにイメージクエリメッセージを送信し、前記イメージクエリメッセージは、当該イメージクエリメッセージにソフトウェアのローカル記述を予め定められた地域の言語にエンコードするための情報を示すロケール仕様フィールドが含まれるか否かを示すロケール仕様フラグを含み、
前記第2の電子装置または前記ローカルサーバもしくは遠隔サーバからイメージクエリ応答を受信するよう構成され、前記イメージクエリ応答は、ソフトウェア更新が利用可能であるかどうかを示し、前記イメージクエリ応答は、前記第1の電子装置が前記ソフトウェア更新をダウンロードすることを可能にするよう、位置情報を有するダウンロード情報を含み、前記イメージクエリ応答は更新優先度を含み、前記イメージクエリ応答は、更新オプションを含み、前記更新オプションは、前記更新優先度を示す更新優先度フィールドと、ソフトウェアをいつ更新すべきかまたは更新するかどうかの条件を判断するための情報を含む更新条件フィールドと、を含み、前記処理システムはさらに、
前記ソフトウェア更新を前記位置情報を用いてダウンロードするよう構成され、前記ソフトウェア更新は、前記ファブリックネットワークにおける前記更新優先度に少なくとも一部が基づいた時間にダウンロードされる、第1の電子装置。」
「【請求項13】
ファブリックネットワークをわたってソフトウェア更新を伝送するためのコンピュータ読取可能プログラムであって、前記プログラムは命令を有し、前記命令は、
前記ファブリックネットワークにおける第1の装置から前記ファブリックネットワークにおける第2の装置またはローカルサーバもしくは遠隔サーバにイメージクエリメッセージを送信する命令を含み、前記イメージクエリメッセージはバージョン仕様フィールドを含み、前記バージョン仕様フィールドは、前記ソフトウェア更新のソフトウェアバージョン属性を示す可変長のバージョン文字列フィールドと、前記バージョン文字列フィールドの長さを示すバージョン長フィールドとを含み、前記イメージクエリメッセージは、当該記イメージクエリメッセージに前記ソフトウェアのローカル記述を予め定められた地域の言語にエンコードするための情報を有するロケール仕様フィールドが含まれるかどうかを示すロケール仕様フラグを含み、前記命令はさらに、
前記第1の装置において前記第2の装置または前記ローカルサーバもしくは遠隔サーバからイメージクエリ応答を受信する命令を含み、前記イメージクエリ応答は、前記ソフトウェア更新が利用可能であるかどうかを示し、前記イメージクエリ応答は、前記第1の装置が前記ソフトウェア更新をダウンロードすることを可能にするよう、位置情報を有するダウンロード情報を含み、前記イメージクエリ応答は更新優先度を含み、前記命令はさらに、
前記第1の装置において前記ソフトウェア更新を前記位置情報を用いてダウンロードする命令を含み、ソフトウェアは、前記ファブリックネットワークにおける前記更新優先度に少なくとも一部が基づいた時間にダウンロードされる、コンピュータ読取可能プログラム。」

また、本願発明2?6は本願発明1を、本願発明8は本願発明7を、本願発明10?12は本願発明9を、本願発明14は本願発明13を、それぞれ減縮した発明である。

第4 原査定についての判断
本件補正により、請求項2,13が削除されたため、原査定の理由(上記第2の1)は解消しているから、原査定を維持することはできない。
もっとも、原査定では、「付記」として、請求項1等に新規事項が追加されている旨が指摘され(上記第2の2(1))、また、請求項1?20に係る発明は引用文献1?4に記載された発明に対して進歩性を欠く旨についても指摘されている(上記第2の2(2))ことから、以下、これらの点についても検討しておく。

第5 原査定の「付記」について
1 新規事項について
本件補正により、請求項1には、「当該イメージクエリメッセージに前記ソフトウェアのローカル記述を予め定められた地域の言語にエンコードするための情報を示すロケール仕様フィールドが含まれる」と記載されている。
一方、当初明細書には、「ソフトウェア更新クライアント1198とソフトウェア更新サーバ1200との間におけるソフトウェア更新に対するプロトコルシーケンス1196」(【0173】)に関し、「ロケール仕様フラグ1234における1値は、ロケール仕様フィールド1226がイメージクエリメッセージに存在することを示し」との記載があり(【0177】)、また、「ロケール仕様フィールド1226のロケール文字列フィールド1248は、長さが可変であってもよく、ポータブルオペレーティングシステムインターフェイス(POSIX(ポジックス))ロケールコードに基づいてローカル記述をエンコードするUTF-8文字の文字列を含んでもよい。POSIXロケールコードに対する標準フォーマットは、[language[_territory][.codeset][@modifier]]である。たとえば、オーストラリア英語に対するPOSIX表現はen_AU.UTF8である。」との記載がある(【0181】)。
当初明細書等の特にこれらの記載から、「イメージクエリメッセージ」に「ロケール仕様フィールド1226」が含まれる得ること、及び、「ロケール仕様フィールド1226」が、更新されるソフトウェアに関するローカル記述を、特定の地域の言語にエンコードするための情報を示すものであることが理解できる。
そうすると、請求項1の上記記載に関して、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されているということはできない。
請求項7,9,13にも、請求項1の上記記載に対応する記載があり、それらの記載についても同様である。
また、本件補正により、請求項9が削除された。
以上のことから、請求項1等に新規事項が追加されている旨の指摘(上記第2の2(1))は、もはや当たらない。
なお、本件補正において、請求項1の上記記載に係る補正は、原査定の「付記」における「イメージクエリメッセージがエンコードするという記載は意味も不明である」との指摘(上記第2の2(1)の括弧書き)を受けてなされたものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえる。

2 進歩性について
(1)引用文献1の記載、引用発明
ア 引用文献1(国際公開第2008/114454号)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。)。

「[0045] 次に本発明の更新システムが備える各装置の処理を説明する。図5は、本発明の更新システムにて用いられる端末装置2の更新監視処理の一例を示すフローチャートである。ユーザが端末装置2を起動させる操作を行うことにより、端末装置2が起動して、先ず基本プログラム22bが起動し、基本プログラム22b上で本発明のコンピュータプログラム2aが常駐プログラムとして起動する。そしてユーザは、入力手段25から実行プログラム22aに対する起動させる命令、起動した実行プログラム22aに対して特定の処理を実行させる命令等の各種命令を入力する操作を行う。
[0046] 端末装置2は、本発明のコンピュータプログラム2aを実行する制御手段20の制御により、入力手段25が受け付けた命令を基本プログラム22bにて解釈し、実行プログラム22aに対する命令であると判定した命令を検出する(S101)。本発明のコンピュータプログラム2aは、基本プログラム22b上に常駐し、基本プログラム22bが実行プログラム22aを起動させる命令、及び起動後、アクティブ状態にある実行プログラム22aに対して渡されるべき命令を監視している。そして端末装置2は、ステップS101において、実行プログラム22aに対する命令を検出した場合、以降の処理を実行する。
[0047] 端末装置2は、制御手段20の制御により、受け付けた命令の対象となる実行プログラム22aのバージョンの版数を検出する(S102)。
[0048] そして端末装置2は、制御手段20の制御により、通信手段24にて通信網100に接続されている中央装置1にアクセスし、中央装置1が備える実行制限テーブル11bから、受け付けた命令の対象となる実行プログラム22a及び受け付けた命令に対応する条件情報及び制限情報を読み取り、読み取った条件情報及び制限情報に基づいて、命令実行の可否を判定する(S103)。図4を用いて説明した様に、実行制限テーブル11bには、プログラム情報に対応付けて、条件情報、命令情報及び制限情報が記録されている。ステップS103では、命令の対象となる実行プログラム22aを示すプログラム情報及び受け付けた命令を示す命令情報に対応するレコードを読み取り、読み取ったレコードに条件情報として示されている版数及び時期に係る条件に、時計手段27が示す日付、曜日及び時刻並びにステップS102にて検出した版数が合致する場合、読み取ったレコードに記録されている制限情報に基づいて命令実行の可否を判定する。即ち条件に合致するレコードに係る制限情報が、実行可又は監視無しである場合、命令実行可と判定し、実行禁止である場合、命令実行不可と判定する。なおプログラム情報、命令情報及び条件情報に該当するレコードが記録されていない場合、実行可と判定する。
[0049] ステップS103において、命令実行可と判定した場合(S103:YES)、端末装置2は、制御手段20の制御により、中央装置1にアクセスし、中央装置1が備えるバージョンテーブル11aから、受け付けた命令の対象となる実行プログラム22aに対応する版数情報を読み取る(S104)。
[0050] そして端末装置2は、制御手段20の制御により、受け付けた命令の対象となる実行プログラム22aのバージョンの版数及びバージョンテーブル11aから読み取った版数情報が示すバージョンの版数を比較して一致するか否かを判定する(S105)。ステップS105において、命令の対象となる実行プログラム22aの版数及びバージョンテーブル11aに係る版数が一致していれば、命令の対象となる実行プログラム22aは最新版のバージョンであると判定する。また版数が異なると判定した場合、即ち命令の対象となる実行プログラム22aの版数より、バージョンテーブル11aに係る版数の方が新しいと判定した場合、命令の対象となる実行プログラム22aは最新版のバージョンではないと判定する。なおステップS105において、命令の対象となる実行プログラム22aのバージョンが公開された日付を検出することが可能で有れば、検出した日付をバージョンテーブル11aに記録されている日付情報が示す日付と比較する様にしても良い。
[0051] ステップS105において、比較により、版数が一致していると判定した場合、即ち命令の対象となる実行プログラム22aは最新版のバージョンであると判定した場合(S105:YES)、端末装置2は、制御手段20の制御により、ステップS101へ戻り、以降の処理を繰り返す。即ち最新版のバージョンを使用しているため、更新不要であると判断する。
[0052] ステップS105において、比較により、版数が異なると判定した場合、即ち命令の対象となる実行プログラム22aは最新版のバージョンではないと判定した場合(S105:NO)、端末装置2は、制御手段20の制御により、中央装置1が備えるバージョンテーブル11aから、受け付けた命令の対象となる実行プログラム22aに対応する命令情報を読み取る(S106)。
[0053] そして端末装置2は、制御手段20の制御により、受け付けた命令及びバージョンテーブル11aから読み取った命令情報が示す命令を比較して一致するか否かを判定する(S107)。ステップS107において、受け付けた命令及び読み取った命令が異なる場合、当該命令は監視の対象から外れており、実行プログラム22aを更新しなくとも、命令の実行が可能であると判定する。また受け付けた命令及び読み取った命令が一致する場合、当該命令は監視の対象であり、実行プログラム22aの更新を要すると判定する。
[0054] ステップS107において、比較により、命令が異なると判定した場合(S107:NO)、端末装置2は、制御手段20の制御により、ステップS101へ戻り、以降の処理を繰り返す。
[0055] ステップS107において、比較により、命令が一致すると判定した場合(S107:YES)、端末装置2は、制御手段20の制御により、中央装置1が備えるバージョンテーブル11aから、受け付けた命令の対象となる実行プログラム22aに対応する緊急度情報を読み取り(S108)、読み取った緊急度情報を示す緊急度が、最優先で強制的に更新を行うことを示す「1」であるか否かを判定する(S109)。
[0056] ステップS109において、緊急度が強制的更新であると判定した場合(S109:YES)、端末装置2は、制御手段20の制御により、中央装置1に記録されている当該実行プログラム22aに対応する更新用情報11cをダウンロードし(S110)、ダウンロードした更新用情報11cに基づいて実行プログラム22aを新しいバージョンに更新し(S111)、ステップS101へ戻り、以降の処理を繰り返す。ステップS110では、当該レコードに記録されている位置情報が示す装置及び/又は位置に記録されている更新用情報11cをダウンロードする。ステップS111において、実行プログラム22aのバージョンを更新後、端末装置2の再起動等の処理が必要で有れば、必要な処理を実行する。また再起動等の処理が不要で有れば、更新後の実行プログラム22aにおいて、受け付けた命令を実行する。
[0057] ステップS109において、緊急度が強制的更新ではないと判定した場合(S109:NO)、端末装置2は、制御手段20の制御により、更新可否の命令の入力の要求を出力手段26から出力する(S112)。ステップS112では、例えばモニタである出力手段26から「プログラムを新しいバージョンに更新しますか?(YES/NO)」というメッセージを出力し、ユーザに更新の判断及びその結果の入力を要求する。そしてユーザは、更新可又は更新不可を示す可否情報を入力する。」

イ 上記アから、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「端末装置2の更新監視処理の方法であって、
端末装置2は、実行プログラム22aのバージョンの版数を検出し、
端末装置2は、通信手段24にて通信網100に接続されている中央装置1にアクセスし、中央装置1が備えるバージョンテーブル11aから、実行プログラム22aに対応する版数情報を読み取り、
端末装置2は、実行プログラム22aのバージョンの版数及びバージョンテーブル11aから読み取った版数情報が示すバージョンの版数を比較して一致するか否かを判定し、版数が異なると判定した場合、即ち実行プログラム22aの版数より、バージョンテーブル11aに係る版数の方が新しいと判定した場合、実行プログラム22aは最新版のバージョンではないと判定し、
実行プログラム22aは最新版のバージョンではないと判定した場合、端末装置2は、中央装置1が備えるバージョンテーブル11aから、受け付けた命令の対象となる実行プログラム22aに対応する緊急度情報を読み取り、
緊急度が強制的更新であると判定した場合、端末装置2は、中央装置1に記録されている当該実行プログラム22aに対応する更新用情報11cをダウンロードし、ダウンロードした更新用情報11cに基づいて実行プログラム22aを新しいバージョンに更新し、緊急度が強制的更新ではないと判定した場合、端末装置2は、ユーザに更新の判断及びその結果の入力を要求し、そしてユーザは、更新可又は更新不可を示す可否情報を入力する、方法。」

(2)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「端末装置2の更新監視処理の方法」は、「端末装置2は、通信手段24にて通信網100に接続されている中央装置1にアクセス」すること、及び「端末装置2は、中央装置1に記録されている当該実行プログラム22aに対応する更新用情報11cをダウンロードし、ダウンロードした更新用情報11cに基づいて実行プログラム22aを新しいバージョンに更新」することを含むから、「通信網100」を「わたって」、「実行プログラム22aを新しいバージョンに更新」するための「更新用情報11c」を「ダウンロード」するといえる。
ここで、「通信網100」と本願発明1の「ファブリックネットワーク」とは、「ネットワーク」である点で共通している。
また、引用発明の「更新用情報11c」は、本願発明1の「ソフトウェア更新」に相当し、引用発明の「ダウンロード」することは、本願発明1の「伝送する」ことに含まれる。
以上のことから、後述する相違点は別として、本願発明1の
「ファブリックネットワークをわたってソフトウェア更新を伝送する方法」
に関して、引用発明と本願発明1とは、
「ネットワークをわたってソフトウェア更新を伝送する方法」
という点で共通している。

(イ)引用発明では、「端末装置2は、通信手段24にて通信網100に接続されている中央装置1にアクセスし、中央装置1が備えるバージョンテーブル11aから、実行プログラム22aに対応する版数情報を読み取」ることや、「端末装置2は、中央装置1が備えるバージョンテーブル11aから、受け付けた命令の対象となる実行プログラム22aに対応する緊急度情報を読み取」ることが行われる。
ここで、「端末装置2」は、「通信網100」を介して「中央装置1」に「アクセス」することにより、問い合わせを行って、「端末装置2」において、それに対する応答として、「中央装置1」から、「版数情報」や「緊急度情報」を受け取るといえる。
そして、上記問い合わせを行うことと、本願発明1の「イメージクエリメッセージを送信する」こととは、「クエリを送信する」ことである点で共通しており、上記応答を受け取ることと、本願発明1の「イメージクエリ応答を受信する」こととは、「クエリ応答を受信する」ことである点で共通している。
また、引用発明の「端末装置2」は、本願発明1の「第1の装置」に相当し、引用発明の「中央装置1」は、本願発明1の「第2の装置またはローカルサーバもしくは遠隔サーバ」との択一的記載のうちの、「第2の装置」に相当する。
以上の点について上記(ア)も踏まえると、本願発明1の
「前記ファブリックネットワークにおける第1の装置から前記ファブリックネットワークにおける第2の装置またはローカルサーバもしくは遠隔サーバにイメージクエリメッセージを送信することを含み、前記イメージクエリメッセージは、当該イメージクエリメッセージに前記ソフトウェアのローカル記述を予め定められた地域の言語にエンコードするための情報を示すロケール仕様フィールドが含まれるか否かを示すロケール仕様フラグを含み、前記方法はさらに、
前記第1の装置において前記第2の装置または前記ローカルサーバもしくは遠隔サーバからイメージクエリ応答を受信することを含」む
との構成に関して、引用発明と本願発明1とは、
「前記ネットワークにおける第1の装置から前記ネットワークにおける第2の装置にクエリを送信することを含み、前記方法はさらに、
前記第1の装置において前記第2の装置からクエリ応答を受信することを含」む
という点で共通している。

(ウ)引用発明は、上記(イ)で述べた構成において「緊急度情報を読み取」った結果、「緊急度が強制的更新であると判定した場合、端末装置2は、中央装置1に記録されている当該実行プログラム22aに対応する更新用情報11cをダウンロードし、ダウンロードした更新用情報11cに基づいて実行プログラム22aを新しいバージョンに更新し、緊急度が強制的更新ではないと判定した場合、端末装置2は、ユーザに更新の判断及びその結果の入力を要求し、そしてユーザは、更新可又は更新不可を示す可否情報を入力する」ものである。
ここで、「端末装置2」において「更新用情報11c」を「ダウンロード」するタイミングに関して、「緊急度が強制的更新であると判定した場合」のタイミングは、「緊急度が強制的更新ではないと判定した場合」とは異なる、つまり、「更新用情報11c」は、「緊急度情報」に「少なくとも一部が基づいた時間」に「ダウンロード」されるといえる。
また、「緊急度情報」は、「中央装置1」からの応答(上記(イ))に含まれるものであり、「緊急度が強制的更新であると判定した場合」では、「緊急度が強制的更新ではないと判定した場合」よりも「実行プログラム22a」の「更新」が優先的に行われるといえるから、「緊急度情報」は本願発明1の「更新優先度」に相当する。
以上の点について上記(ア)、及び上記(イ)で更に検討した点も踏まえると、本願発明1の
「前記イメージクエリ応答は、前記ソフトウェア更新が利用可能であるかどうかを示し、前記イメージクエリ応答は、前記第1の装置が前記ソフトウェア更新をダウンロードすることを可能にするよう、位置情報を有するダウンロード情報を含み、前記イメージクエリ応答は更新優先度を含み、前記方法はさらに、
前記第1の装置において前記ソフトウェア更新を前記位置情報を用いてダウンロードすることを含み、ソフトウェア更新は、前記ファブリックネットワークにおける前記更新優先度に少なくとも一部が基づいた時間にダウンロードされる」
との構成に関して、引用発明と本願発明1とは、
「前記クエリ応答は更新優先度を含み、前記方法はさらに、
前記第1の装置において前記ソフトウェア更新をダウンロードすることを含み、ソフトウェア更新は、前記ネットワークにおける前記更新優先度に少なくとも一部が基づいた時間にダウンロードされる」
という点で共通している。

(エ)上記(ア)?(ウ)から、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「ネットワークをわたってソフトウェア更新を伝送する方法であって、
前記ネットワークにおける第1の装置から前記ネットワークにおける第2の装置にクエリを送信することを含み、前記方法はさらに、
前記第1の装置において前記第2の装置からクエリ応答を受信することを含み、前記クエリ応答は更新優先度を含み、前記方法はさらに、
前記第1の装置において前記ソフトウェア更新をダウンロードすることを含み、ソフトウェア更新は、前記ネットワークにおける前記更新優先度に少なくとも一部が基づいた時間にダウンロードされる、ネットワークをわたってソフトウェア更新を伝送する方法。」

(相違点1)
本願発明1では、ネットワークの種類が「ファブリックネットワーク」であるのに対し、引用発明では、「通信網100」の種類が「ファブリックネットワーク」であるとは特定されない点。

(相違点2)
本願発明1では、「第1の装置」と「第2の装置またはローカルサーバもしくは遠隔サーバ」との間で送受信される情報の形式が「イメージクエリメッセージ」及び「イメージクエリ応答」であるのに対し、引用発明では、「端末装置2」が「中央装置1にアクセス」して「緊急度情報」を「読み取」る際に送受信される情報の形式が、「イメージクエリメッセージ」や「イメージクエリ応答」であるとは特定されない点。

(相違点3)
本願発明1は、「前記イメージクエリメッセージ」が「当該イメージクエリメッセージに前記ソフトウェアのローカル記述を予め定められた地域の言語にエンコードするための情報を示すロケール仕様フィールドが含まれるか否かを示すロケール仕様フラグを含」むものであるのに対し、引用発明は、「端末装置2」が「中央装置1にアクセス」する際に、そのような内容のデータが「中央装置1」に送信されると特定されるものではない点。

(相違点4)
本願発明1は、「前記イメージクエリ応答」が、「前記ソフトウェア更新が利用可能であるかどうかを示」すものであるのに対し、引用発明は、「緊急度情報」等の他に、「端末装置2」がそのような内容のデータを「中央装置1」から「読み取」ると特定されるものではない点。

(相違点5)
本願発明1は、「前記イメージクエリ応答」が、「前記第1の装置が前記ソフトウェア更新をダウンロードすることを可能にするよう、位置情報を有するダウンロード情報を含」むものであり、それに伴い、「前記ソフトウェア更新」を「ダウンロードする」ことを「前記位置情報を用いて」行うものであるのに対し、引用発明は、「緊急度情報」等の他に、「端末装置2」がそのような内容のデータを「中央装置1」から「読み取」ると特定されるものではなく、当該データを用いて「更新用情報11cをダウンロード」すると特定されるものでもない点。

イ 判断
事案に鑑みて、相違点3について先に検討する。
一方の装置が他方の装置から一方の装置のソフトウェアを更新するためのソフトウェア更新をダウンロードするために、一方の装置が他方の装置へメッセージを送信する際、当該メッセージに前記ソフトウェアのローカル記述を予め定められた地域の言語にエンコードするための情報が含まれるか否かを示すフラグを含むものとすることは、引用文献1?4には記載されておらず、本願の優先日前において周知技術であったともいえない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1?4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本願発明2?14について
本願発明7,9は、それぞれ、本願発明1に対応するプログラム、装置の発明であり、本願発明13は、本願発明7と一部の発明特定事項が相違するのみであって、本願発明7,9,13はいずれも相違点3に対応する発明特定事項を含む。
また、本願発明2?6は本願発明1を、本願発明8は本願発明7を、本願発明10?12は本願発明9を、本願発明14は本願発明13を、それぞれ減縮した発明である。
そうすると、本願発明2?14も本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1?4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由は解消しているから、その理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-10-19 
出願番号 特願2018-237487(P2018-237487)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
P 1 8・ 537- WY (H04L)
P 1 8・ 55- WY (H04L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 玉木 宏治  
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 富澤 哲生
野崎 大進
発明の名称 住宅ネットワークの装置のための効率的通信  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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