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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1379310
審判番号 不服2021-6014  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-11 
確定日 2021-11-09 
事件の表示 特願2017-563467「ユニット交換用台車」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月 3日国際公開、WO2017/130345、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年1月28日を国際出願日とする出願であって、令和2年2月4日付けで拒絶理由が通知され、同年6月4日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、同年8月4日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年12月9日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、令和3年2月5日付けで令和2年12月9日の手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和3年5月11日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正(以下、「審判請求時の補正」という。)がされたものである。

第2 令和3年2月5日付けの補正の却下の決定及び原査定の概要
1 令和3年2月5日付けの補正の却下の決定の概要は以下のとおりである。
令和2年12月9日にした手続補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるが、当該補正後の請求項1?6に係る発明は、引用文献1に記載された発明又は引用文献3に記載された発明と、引用文献2、4?9に記載された事項とに基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、独立特許要件を満たさないから、令和2年12月9日にした手続補正は却下すべきものである。

引用文献1.特開2015-173192号公報
引用文献2.国際公開第2014/010084号
引用文献3.特開2009-218463号公報
引用文献4.特開2006-227673号公報
引用文献5.特開2012-208592号公報
引用文献6.特開平7-125836号公報
引用文献7.特開2010-67679号公報
引用文献8.特開平6-6084号公報
引用文献9.特開平3-153098号公報

2 原査定(令和3年2月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の令和2年6月4日にした手続補正後の請求項1?6に係る発明は、上記引用文献1に記載された発明又は引用文献3に記載された発明と、引用文献2、4?7に記載された事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 令和3年5月11日に審判請求と同時にした補正(以下、「審判請求時の補正」という。)について
1 補正の目的について
審判請求時の補正は、補正前の請求項1に特定されている搭載部に関し、「前記搭載部は、前記車体部から分離可能に設けられ、前記ユニット交換用台車は、前記搭載部と前記車体部とを相対移動不能とするロックと、該ロックの解除とが可能なロック機構をさらに備え、」及び「前記搭載部と一体的に自動走行して前記搭載部を前記実装装置にセットし、前記搭載部が前記実装装置にセットされると退出指示を受けて前記ロック機構を解除して前記搭載部を残したまま前記実装装置から退出する」という事項(以下、「搭載部に関する限定事項」という。)を追加することを含む補正であって、審判請求時の補正の前後で発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

また、審判請求時の補正は、補正前の請求項3を削除し、補正前の請求項4?6を、補正後の請求項3?5とするとともに、引用関係を整合させ、併せて、補正後の請求項1の特定事項と重複する補正後の請求項5の記載を削除することを含む補正であって、特許法第17条の2第5項第1号に規定する「第三十6条第5項に規定する請求項の削除」及び同項第4号に規定する「明りようでない記載の釈明」を目的とするものである。

2 新規事項の有無について
願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の明細書の段落【0045】には(下線は当審で付した。以下同様。)、
「変形例のユニット交換用台車140の車体部141は、図8(a)に示すように、後方から見て上面の左右の縁で搭載部151を支持しており、上面の中央には搭載部151との間に隙間140aがあるために搭載部151を支持しないものとなっている。また、車体部141は、バッテリ46からの電力により作動してロッド148aを昇降させる電動アクチュエータ148(ロック機構)を備える。(中略) このため、電動アクチュエータ148のロッド148aが上昇してロッド148aの先端が凹部151aに嵌まり込んでいる状態では、車体部141と搭載部151との水平方向の相対移動が不能にロックされる。また、電動アクチュエータ148のロッド148aが下降してロッド148aの先端が凹部151aから抜け出ている状態では、車体部141と搭載部151とのロックが解除される。」と記載されており、同明細書の段落【0046】には、
「ユニット交換用台車140の台車制御装置47は、走行中は、ロッド148aの先端が凹部151aに嵌まり込むよう電動アクチュエータ148を制御する。これにより、車体部141と搭載部151とを一体的に自動走行して、実装装置120に搭載部151をセットすることができる(図9(a))。なお、ユニット交換用台車140が実装装置120内に進入する際に、実装装置120の支持部129がユニット交換用台車140の隙間140aに入り込むことになる。ユニット交換用台車140がセットされると、台車制御装置47は、ロッド148aの先端が凹部151aから抜け出るよう電動アクチュエータ148を制御する(図9(b))。なお、変形例の実装装置120は、ユニット交換用台車140がセットされると車体部141の退出が可能である旨の情報を管理装置80に送信し、その情報を受信した管理装置80が台車制御装置47に退出指示を送信し、退出指示を受けた台車制御装置47が電動アクチュエータ148を制御するものとしてもよい。これにより、車体部141と搭載部151とのロックが解除されて相対移動が可能となる。また、電動アクチュエータ148のロッド148aが下降して車体部141が僅かに下方に下がると、車体部141による支持に代えて、実装装置120の支持部129により搭載部151が支持される。このため、ユニット交換用台車140は、搭載部151を残したまま、車体部141だけを退出させることが可能となる(図9(c))。」と記載されているから、搭載部に関する限定事項は、当初明細書等に記載された事項である。
したがって、審判請求時の補正は、当初明細書等に新たな技術的事項を追加するものではないといえるから、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

3 独立特許要件について
「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、審判請求時の補正後の請求項1?5に係る発明は、独立特許要件を満たすものであるから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

したがって、審判請求時の補正は、適法なものである。

第4 本願発明
本願請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、審判請求時の補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される発明であるところ、本願発明1は以下のとおりである。

[本願発明1]
「部品供給用のユニットから供給される部品を基板に実装する実装装置にセットされるユニット交換用台車であって、
前記部品供給用のユニットを前記実装装置で使用可能に搭載する搭載部と、
前記搭載部が設けられ、走行経路に沿って自動走行可能に構成される車体部と、
を備え、
前記搭載部は、前記車体部から分離可能に設けられ、
前記ユニット交換用台車は、前記搭載部と前記車体部とを相対移動不能とするロックと、該ロックの解除とが可能なロック機構をさらに備え、
前記車体部は、
走行モータと、
前記走行モータに電力を供給するためのバッテリと、
を備え、前記搭載部と一体的に自動走行して前記搭載部を前記実装装置にセットし、前記搭載部が前記実装装置にセットされると退出指示を受けて前記ロック機構を解除して前記搭載部を残したまま前記実装装置から退出する
ユニット交換用台車。」

なお、本願発明2?5は、本願発明1をさらに限定した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1に記載された事項及び引用発明1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1及び図2に示す部品実装装置1は、基板2に部品3を装着する動作を繰り返し実行する装置であり、基台11上に基板搬送部12、部品供給部13、部品装着部14を備えて成る。ここでは説明の便宜上、基板搬送部12による基板2の搬送方向(図1中に示す矢印A)をX軸方向(作業者OPから見た左右方向)とし、X軸方向と直交する水平面内方向(作業者OPから見た前後方向)をY軸方向とする。また、上下方向をZ軸方向とする。
【0012】
図1及び図2において、基板搬送部12は、上流工程側から送出された基板2を受け取ってX軸方向に搬送する前後の2つの基板搬送レーン12Lから成る。部品供給部13は、基台11の前方と後方のそれぞれに連結される2つの台車21と、各台車21が備えるフィーダベース22に着脱自在に装着される複数のパーツフィーダ23から成る。基台11の前方に連結された台車21のフィーダベース22とこのフィーダベース22に装着された複数のパーツフィーダ23は前方部品供給部13aを構成する。また、基台11の後方に連結された台車21のフィーダベース22及びこのフィーダベース22に装着された複数のパーツフィーダ23は後方部品供給部13bを構成する。各パーツフィーダ23は例えばテープフィーダから成り、部品供給口23pに部品3を連続的に供給する。」

(2)【図1】?【図3】からは、フィーダベース22と、フィーダベース22の下方の手押し車状の部分とからなる、台車21の構成が見て取れる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明1]
「パーツフィーダ23から供給される部品3を基板2に装着する部品実装装置1に連結される台車21であって、
前記パーツフィーダ23を前記部品実装装置1で部品3を連続的に供給できるよう装着するフィーダベース22と、
前記フィーダベース22が備えられる、フィーダベース22の下方の手押し車状の部分と、
を備える台車21。」

2 引用文献3に記載された事項及び引用発明2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0010】
実装装置1は、基板搬送装置2によって装置内に搬入されてきた基板3に対し、ノズル4に吸着した部品を搭載する実装動作を繰り返し行う装置である。基板3に搭載される部品は、基板搬送装置2の側方に置かれたテープフィーダ5の上部の部品供給口5aに供給され、ノズル4によって上方からピックアップされる。ノズル4は実装ヘッド6の下部に装着され、上下方向に移動が可能である。実装ヘッド6は直交ロボット7に装着され、基板3とテープフィーダ5の上方を水平方向に移動が可能である。実装ヘッド6は基板3とテープフィーダ5の上方を繰り返し往復移動し、ノズル4によってテープフィーダ5からピックアップされた部品を基板3に搭載する実装動作を繰り返し行う。テープフィーダ5は基板搬送装置2の側方に複数個並列して置かれ、多種多様な部品の供給を可能にするとともに予備の部品をいつでも供給可能な状態にしている。」

(2)「【0012】
基板搬送装置2とノズルストッカ8は支持台10に置かれており、テープフィーダ5も部品供給口5aが設けられた先端部が同じ支持台10に置かれるように台車11によって支持されている。これにより基板3の表面とノズルストッカ8と部品供給口5aは高さが略同一に揃えられているので、実装ヘッド6の上下方向の移動距離が短縮され、実装動作が効率よく行われる。台車11はオペレータの操作によって移動できるようになっており、テープフィーダ5の先端部が支持台10に置かれる位置まで台車11を移動させることでテープフィーダ5を実装装置1に装着することができる。
【0013】
実装装置1の作業領域(図1に破線で示す)は、実装ヘッド6が実装動作を行う範囲を設定する直交ロボット7の駆動範囲によって確定されている。直交ロボット7の周囲は安全カバー(図示せず)によって覆われており、オペレータの安全を確保するとともに精密さが要求される実装作業に外乱が作用しないようにされている。オペレータが作業領域内にアクセスするときは安全カバーを開く必要があるので、実装動作中に安全カバーが開くと実装装置1は緊急停止し、実装作業は一時中断する。実装装置1に装着されたテープフィーダ5は、後端部からキャリアテープ5bを取り込むようになっているので、キャリアテープ5bの交換時やスプライシング時の作業性や生産効率性を低下させないように、後端部は安全カバーの外側、すなわち実装装置1の作業領域外に位置し、部品の供給を行う先端部のみが安全カバーの内側、すなわち実装装置1の作業領域内に位置している。」

(3)【図2】からは、テープフィーダ5を支持する上側の部分と、当該上側の部分を備えるキャスター状の部分とからなる台車11の構成が見て取れる。

したがって、上記引用文献3には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明2]
「テープフィーダ5から供給される部品を基板3に搭載する実装装置1に、テープフィーダ5の先端部が実装装置1の作業領域内に位置するよう置かれる台車11であって、
前記テープフィーダ5を前記実装装置1で部品4の供給を可能にするように支持する台車11の上側の部分と、
前記上側の部分が備えられる、キャスター状の部分と、
を備える台車11。」

3 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面(特に[図3]参照。)とともに次の事項が記載されている。
(1)「[0027] 各作業モジュール13の前面側の床面上には、無人搬送台車16がX軸方向に沿って走行可能に設けられ、これら無人搬送台車16は、作業モジュール13A、13Bに沿って床面に埋設されたガイドライン90の磁気誘導作用によって、部品保管庫14と作業モジュール13との各間で搬送されるようになっている。」

(2)「[0030] これら複数の無人搬送台車16および移動台91は、複数の部品供給要素に対して構成が同じになるように共通化され、複数の共通ベース台96を構成している。そして、これら複数の共通ベース台96上に、テープフィーダ34あるいは部品トレイ37を支持するフィーダ補給ユニット51あるいはトレイ補給ユニット52がそれぞれ搭載される。」

(3)「[0033] 無人搬送台車16には、図示してないが、走行駆動源としてのモータが搭載されており、このモータに後述する非接触伝送装置65によって作業モジュール13A、13B側から電力が供給され、無人搬送台車16が搬送制御される。この場合、無人搬送台車16にモータ電源としてのバッテリを内蔵させ、このバッテリによって無人搬送台車16を搬送制御するとともに、各実装機モジュール12において部品が補給されている間に、非接触伝送装置65によって非接触給電された電力をバッテリに蓄電するようにしてもよい。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面(【図1】?【図6】)とともに次の事項が記載されている。
「【0006】
上記目的を達成するために、本発明の自律走行装置は、自律走行車付属カメラにて天井、壁面の目標地点を検出し、予め入力した目標地点との位置ずれ情報を算出し、経路積算値および前期位置ずれ情報を台車運動方程式に算入して台車位置制御を行い、移動しながら目標地点からのずれを修正し、作業機器による屋内作業を行うものである。」

5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面(特に【図5】参照。)とともに次の事項が記載されている。
「【0002】
従来から、工場や倉庫等においては、路面に敷設された誘導ラインと、該誘導ラインに沿って走行する無人搬送車とを備えた無人搬送システムが活用されている。このような無人搬送システムは種々の方式のものが知られているが、例えば特許文献1には、誘導ラインの近傍に設けられた停止マークを目印にして無人搬送車が停止するよう構成された無人搬送システムが開示されている。
【0003】
図5(A)は、従来の一般的な停止マークである。同図に示すように、停止マーク3Dは誘導ライン2上に設けられており、平面視矩形状(同図では正方形)を有している。また、停止マーク3Dは誘導ライン2とは異なった色で着色されており、光学的にその形が認識され得るようになっている。
【0004】
かかる停止マーク3Dを用いた無人搬送システムにおいては、無人搬送車に備えられたCCDカメラ等の光学的撮像手段によって停止マーク3が撮像され、これにより得た画像データから停止マーク3Dの寸法(走行方向寸法a、ライン幅方向寸法b)が求められ、次いで停止マーク3Dの中心Cが特定される(同図(B)参照)。そして、無人搬送車は、該中心Cが撮像領域の中心にくるように走行制御され、中心Cと撮像領域の中心が重なった位置で停止する。」

6 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、図面(特に【図3】、【図5】及び【図6】参照。)とともに次の事項が記載されている。
「【0014】・・・さて図3(b)に示すように、パーツフィーダ6の装着が完了したならば、図5(a),図6(a)に示すように、矢印N2方向に台車1を移動してゆくと、図5(a)に示す状態から、カムフォロワ43がカム23,24の傾斜面に周接し、カムフォロワ43がこの傾斜面に沿って上昇するとにより、昇降テーブル32が小距離上昇して、平行リンク機構31が上方へ伸び、ガイド部材4のレベルSがガイド部材13のレベルTに一致する。このとき、係止片36も上昇し、係止ピン34に係合しなくなる。また、台車1の幅方向について、図6(b)に示すように、案内板45,46がローラ22に当接して、台車1のセンタ出しが行われる。これにより、台車位置決めピン44が位置決め孔25,26に挿入され、台車1が電子部品実装装置Aに対し位置決めされると共に、係合リング27,28に係止部47が係着して、台車1は電子部品実装装置Aに固定される。この状態において、フック38を解除して図5(b)に示すように、パレット35を矢印N3方向に移動させると、パーツフィーダ6をパレット35と共に電子部品実装装置Aヘ取付けることができる。・・・」

7 引用文献7について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7には、図面(特に【図2】参照。)とともに次の事項が記載されている。
「【0017】
実装装置1には空圧発生ユニット16や電源ユニット17が内蔵されており、これら空圧発生ユニット16や電源ユニット17は実装装置1内に配設された空圧配管18及び電気配線19を介して上記実装装置側コネクタ15に繋がっている。このため、台車側コネクタ30と実装装置側コネクタ15が接続されることによって、実装装置1側の空圧発生ユニット16や電源ユニット17を台車20側で利用することができるようになる。具体的には、空圧発生ユニット16を空圧源としてテープ切断装置23を駆動するための空圧アクチュエータを使用することができるようになり、電源ユニット17を電源としてテープフィーダ9の制御装置を使用することができるようになる。」

8 引用文献8について
補正の却下の決定に引用された引用文献8には、図面(特に【図8】参照。)とともに次の事項が記載されている。
「【0023】
【実施例2】図8は本発明の実施例2を示し、実施例1と同一の要素は同一の符号で対応させることにより重複する説明を省略する。この実施例ではテープ送り機構11を多段状に格納した部品庫80と、テープ送り機構11を載置した状態で部品庫80と収納部2との間を往復移動する搬送車90を備えている。搬送車90は生産管理指示装置8の無線装置(図示省略)からの指令により走行する。」

9 引用文献9について
補正の却下の決定に引用された引用文献9には、図面(特に第8?11図参照。)とともに次の事項が記載されている。
「次に無人搬送機121がキャリッジ載置台18に部品キャリッジ17を載置する動作を第9図乃至第11図を基に説明する。無人搬送機121は運行軌道テープ120沿いに移動しながら目的のキャリッジ交換ステーション23に接近する。移動経路は、第15図に示す無人搬送機運行制御部160から、無線、光通信等周知の手段で指令される。この時無人搬送機121は部品キャリッジ17をキャリッジ載置台18より高い位置にささげている(第9図)。無人搬送機121はキャリッジ載置台18の真上に部品キャリッジ17が到着する(第10図)と停止させられる。次に無人搬送機121はフォーク128を下げ、部品キャリッジ17をキャリッジ載置台18に載せる。フォーク128は部品キャリッジ17の透孔37から位置決めビン138が脱出するまで下げられる(第11図)。この後無人搬送機121は後述する発着基地122に帰還する。」(第5ページ左上欄第11行?右上欄第8行)

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1を主引例とした場合の対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「パーツフィーダ23」は、本願発明1の「部品供給用のユニット」に相当し、以下同様に、
「部品3」は「部品」に、
「基板2」は「基板」に、
「装着する」ことは「実装する」ことに、
「部品実装装置1」は「実装装置」に
「連結される」ことは「セットされる」ことに、
「台車21」は「ユニット交換用台車」に、
「部品実装装置1で部品3を連続的に供給できるよう装着する」ことは「使用可能に搭載する」ことに、
「フィーダベース22」は「搭載部」に、
「フィーダベース22が備えられ」ることは「搭載部が設けられ」ることに、
「フィーダベース22の下方の手押し車状の部分」は「車体部」に、それぞれ相当する。

したがって、本願発明1と引用発明1とは、
「部品供給用のユニットから供給される部品を基板に実装する実装装置にセットされるユニット交換用台車であって、
前記部品供給用のユニットを前記実装装置で使用可能に搭載する搭載部と、
前記搭載部が設けられる車体部と、
を備えるユニット交換用台車」の点で一致し、以下の相違点1において相違する。
[相違点1]
本願発明1の「車体部」は「走行経路に沿って自動走行可能に構成され」、「走行モータと、前記走行モータに電力を供給するためのバッテリと、を備え」る構成であり、
「前記搭載部は、前記車体部から分離可能に設けられ、前記ユニット交換用台車は、前記搭載部と前記車体部とを相対移動不能とするロックと、該ロックの解除とが可能なロック機構をさらに備え」る構成であり、
さらに「前記車体部」は、「前記搭載部と一体的に自動走行して前記搭載部を前記実装装置にセットし、前記搭載部が前記実装装置にセットされると退出指示を受けて前記ロック機構を解除して前記搭載部を残したまま前記実装装置から退出する」構成であるのに対し、引用発明1は、このような構成を有しない点。

(2)引用発明1を主引例とした場合の検討
上記相違点1について検討する。

引用文献6には、パレット35(本願発明1の搭載部に相当)を台車1(本願発明1の車体部に相当)に係止ピン34でロックする構成が記載されており、引用文献9には、部品キャリッジ17(本願発明1の搭載部に相当)を無人搬送機121(本願発明1の車体部に相当)に位置決めピン138でロックする構成が記載されている。しかしながら、これらの構成は、搭載部を実装装置にセットする動きの中で、搭載部が車体部と一体のピンより相対的に上に移動して、ピンが搭載部から抜ける(ことでロックを解除する)構成であり、搭載部が実装装置にセットされた後に退出指示を受けてロック機構を解除する構成を示唆するものではない。したがって、仮に引用発明1のものを自動搬送車にできたとしても、引用文献6または9に記載された事項を適用して「退出指示を受けて前記ロック機構を解除して前記搭載部を残したまま前記実装装置から退出する」構成とすることは、当業者といえども、容易になし得たこととは認められない。

また、引用文献2、4、5、7及び8は、搭載部が実装装置にセットされた後に退出指示を受けてロック機構を解除する構成を、記載ないし示唆したものではない。

そうであれば、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2、4?9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(3)引用発明2を主引例とした場合の対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「テープフィーダ5」は、本願発明1の「部品供給用のユニット」に相当し、以下同様に、
「基板3」は「基板」に、
「搭載する」ことは「実装する」ことに、
「実装装置1」は「実装装置」に
「テープフィーダ5の先端部が実装装置の作業領域内に位置するよう置かれる」ことは「セットされる」ことに、
「台車11」は「ユニット交換用台車」に、
「実装装置1で部品4の供給を可能にするように支持する」ことは「使用可能に搭載する」ことに、
「台車11の上側の部分」は「搭載部」に、
「上側の部分が備えられ」ることは「搭載部が設けられ」ることに、
「キャスター状の部分」は「車体部」に、それぞれ相当する。

したがって、本願発明1と引用発明2とは、
「部品供給用のユニットから供給される部品を基板に実装する実装装置にセットされるユニット交換用台車であって、
前記部品供給用のユニットを前記実装装置で使用可能に搭載する搭載部と、
前記搭載部が設けられる車体部と、
を備えるユニット交換用台車」
の点で一致し、以下の相違点2において相違する。

[相違点2]
本願発明1の「車体部」は「走行経路に沿って自動走行可能に構成され」、「走行モータと、前記走行モータに電力を供給するためのバッテリと、を備え」る構成であり
「前記搭載部は、前記車体部から分離可能に設けられ、前記ユニット交換用台車は、前記搭載部と前記車体部とを相対移動不能とするロックと、該ロックの解除とが可能なロック機構をさらに備え」る構成であり、
さらに「前記車体部」は、「前記搭載部と一体的に自動走行して前記搭載部を前記実装装置にセットし、前記搭載部が前記実装装置にセットされると退出指示を受けて前記ロック機構を解除して前記搭載部を残したまま前記実装装置から退出する」構成であるのに対し、引用発明2は、このような構成を有しない点。

そして、相違点2は、上記(1)の相違点1と同じ内容であるから、上記(2)で検討したのと同様の理由により、本願発明1は、引用発明2及び引用文献2、4?9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

2 本願発明2?5について
本願発明2?5は、本願発明1をさらに限定した発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1又は2と、引用文献2、4?9に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定の理由(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1?5は「前記搭載部が前記実装装置にセットされると退出指示を受けて前記ロック機構を解除して前記搭載部を残したまま前記実装装置から退出する」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明又は引用文献3に記載された発明及び引用文献2、4?7に記載された事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-10-18 
出願番号 特願2017-563467(P2017-563467)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 太田 義典松江川 宗  
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 中村 大輔
内田 博之
発明の名称 ユニット交換用台車  
代理人 特許業務法人アイテック国際特許事務所  
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