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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1379330
審判番号 不服2021-9649  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-19 
確定日 2021-11-09 
事件の表示 特願2017- 43239「内視鏡装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月20日出願公開、特開2018-143594、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、平成29年3月7日の出願であって、令和2年12月8日付けで拒絶理由が通知され、令和3年1月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月15日付けで拒絶査定されたところ、同年7月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和3年6月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
請求項 1?3
引用文献等 1?3

請求項 4?5
引用文献等 1?4

<引用文献等一覧>
1.特開2002-58631号公報
2.特開2015-156937号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2015-205126号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2015-12958号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願請求項1ないし5に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、令和3年1月25日提出の手続補正書により手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりである。
「【請求項1】
被検体内に挿入される内視鏡の接眼部に着脱自在に接続され、当該内視鏡にて取り込まれた当該被検体内部の被写体像を撮像する撮像素子を有し、当該撮像素子による撮像で得られた画像信号を出力する撮像装置と、
前記画像信号を処理して表示用の映像信号を生成する制御装置と、
前記撮像装置から前記制御装置に前記画像信号を伝送する信号伝送路とを備え、
前記撮像装置は、
前記撮像素子における全画素領域のうち、当該全画素領域よりも小さく、前記被写体像全体を含む指定画素領域における各画素の画素信号を前記画像信号として出力し、
前記制御装置は、
前記画像信号に基づく撮像画像における画素毎の輝度信号に基づいて、当該撮像画像に含まれる前記被写体像と当該被写体像以外のマスク領域との境界点を検出するマスクエッジ検出処理を実行するエッジ検出部と、
前記撮像装置の動作を制御する撮像制御部とを備え、
前記撮像制御部は、
前記撮像画像における前記エッジ検出部にて検出された境界点で囲まれる被写体像の領域に基づいて、前記指定画素領域を設定し、当該指定画素領域における各画素の画素信号を前記画像信号として前記撮像装置から出力させる
ことを特徴とする内視鏡装置。」

なお、本願発明2ないし5は、本願発明1を引用する発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の出願前である平成14年2月26日に頒布された刊行物である特開2002-58631号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同じ。)
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は撮像方法および装置に関し、より詳しくは蛍光を発生する被写体の蛍光像および微弱な光で照明された被写体の反射光像等を撮像する撮像方法および装置に関するものである。」

(2)「【0008】本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、ダークノイズを減少させることにより被写体の光像をS/Nの高い画像として撮像することができる微弱光撮像方法および装置を提供することを目的とするものである。」

(3)「【0063】
【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的な実施の形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の撮像方法を実施する撮像装置を蛍光内視鏡装置に適用した第1の実施の形態の概略構成を示す図である。
【0064】蛍光内視鏡装置800は、波長410nmの励起光Leを射出する光源ユニット100、光源ユニット100から射出された励起光を照射光ファイバ21を通して生体組織1に照射し、この励起光Leの照射を受けた生体組織1から発生した蛍光による生体組織1の蛍光像をイメージファイバ22の入射端面22aから射出端面22bまで伝搬する内視鏡ユニット200、イメージファイバ22の射出端面22bに伝搬された蛍光像を撮像し映像信号に変換して出力する蛍光像撮像ユニット300および蛍光像撮像ユニット300から出力された映像信号を入力し画像として表示する表示器400から構成されている。」

(4)「【0066】内視鏡ユニット200は、照射光ファイバ21によって伝搬された白色光Lwおよび励起光Leを生体組織1に照射することにより生じた生体組織1の像が入射する先端部201、および光源ユニット100と蛍光像撮像ユニット300とが接続された操作部202とから構成されており、先端部201から操作部202に亘って照射光ファイバ21とファイバ本数約10,000本からなるイメージファイバ22とが施設されている。」

(5)「【0068】蛍光像撮像ユニット300には、イメージファイバの射出端面22bが接続されており、射出端面22bに伝搬された蛍光像Zkは、射出端面22bに伝搬された像を縮小して結像させる結像レンズ32を通して、25万画素のフロント露光型CCD撮像素子である蛍光像撮像素子33の受光領域33a中に結像される。受光領域33a中に結像された蛍光像Zkは蛍光像撮像素子33によって撮像され電気的な画像信号に変換されて出力される。蛍光像撮像素子33から出力された画像信号は画像信号抽出回路35に入力され、予め受光領域33a中に定められた蛍光像Zkの結像領域を含む画像読出領域に含まれる画素から得られる画像信号のみが抽出され出力されて、さらに映像信号処理回路34aによって映像信号に変換され出力される。一方、通常像撮像素子25から出力されケーブル28によって伝送された画像信号は映像信号処理回路34bに入力され映像信号に変換されて出力される。」

(6)「【図1】



(7)「【図2】



上記引用文献1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「ダークノイズを減少させることにより被写体の光像をS/Nの高い画像として撮像することができる蛍光を発生する被写体の蛍光像および微弱な光で照明された被写体の反射光像等を撮像する撮像装置を、蛍光内視鏡装置800に適用した装置において、
蛍光内視鏡装置800は、波長410nmの励起光Leを射出する光源ユニット100、光源ユニット100から射出された励起光を照射光ファイバ21を通して生体組織1に照射し、この励起光Leの照射を受けた生体組織1から発生した蛍光による生体組織1の蛍光像をイメージファイバ22の入射端面22aから射出端面22bまで伝搬する内視鏡ユニット200、イメージファイバ22の射出端面22bに伝搬された蛍光像を撮像し映像信号に変換して出力する蛍光像撮像ユニット300および蛍光像撮像ユニット300から出力された映像信号を入力し画像として表示する表示器400から構成されており、
内視鏡ユニット200は、照射光ファイバ21によって伝搬された白色光Lwおよび励起光Leを生体組織1に照射することにより生じた生体組織1の像が入射する先端部201、および光源ユニット100と蛍光像撮像ユニット300とが接続された操作部202とから構成されており、
蛍光像撮像ユニット300には、イメージファイバの射出端面22bが接続されており、射出端面22bに伝搬された蛍光像Zkは、射出端面22bに伝搬された像を縮小して結像させる結像レンズ32を通して、25万画素のフロント露光型CCD撮像素子である蛍光像撮像素子33の受光領域33a中に結像され、受光領域33a中に結像された蛍光像Zkは蛍光像撮像素子33によって撮像され電気的な画像信号に変換されて出力され、蛍光像撮像素子33から出力された画像信号は画像信号抽出回路35に入力され、予め受光領域33a中に定められた蛍光像Zkの結像領域を含む画像読出領域に含まれる画素から得られる画像信号のみが抽出され出力されて、さらに映像信号処理回路34aによって映像信号に変換され出力され、一方、通常像撮像素子25から出力されケーブル28によって伝送された画像信号は映像信号処理回路34bに入力され映像信号に変換されて出力される、
装置。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された、本願の出願前である平成27年9月3日に頒布された刊行物である特開2015-156937号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。
(1)「【0001】
本技術は、画像処理装置、画像処理方法、並びにプログラムに関する。詳しくは、内視鏡のマスクを正確に検出することができる画像処理装置、画像処理方法、並びにプログラムに関する。」

(2)「【0031】
<第1の実施の形態における画像処理装置の構成>
以下に説明する画像処理装置は、例えば、内視鏡などから得られる画像を処理する画像処理装置である。以下に説明する本技術は、内視鏡から得られる画像を処理する装置に以外にも適用でき、画像を取得し、その画像からマスクを検出する装置に広く適用できる。ここでは、内視鏡から得られる画像を処理する画像処理装置を例に挙げて説明する。
【0032】
図1は、第1の実施の形態における画像処理装置の構成について説明するための図である。図1に示した画像処理装置100は、図示していない医療機器としての内視鏡装置からの画像データを取得し、処理し、処理した画像をモニタなどの表示部101に出力する。
【0033】
画像処理装置100は、画像取得部111、第1演算部112、および第2演算部113を備える。第1演算部112は、輝度画像変換部121、エッジ検出部122、および転送部123を備える。第2演算部113は、円推定部131、エッジ削除部132、および楕円推定部133を備える。
【0034】
画像処理装置100の画像取得部111は、図示していない内視鏡装置からの画像を取得する。内視鏡装置は、体腔内に侵入され、体内を撮像する体内撮像装置を形成する内視鏡、この内視鏡に照明光を供給する光源装置、内視鏡の撮像手段、例えばCCD(Charge Coupled Device)、その撮像手段に対する信号処理を行うカメラコントロールユニットなどから構成され、このカメラコントロールユニットから出力された画像データを、画像取得部111は取得する。
【0035】
画像取得部111で取得された画像データは、第1演算部112に供給される。第1演算部112の輝度画像変換部121は、取得された画像データを輝度画像の画像データに変換し、エッジ検出部122に供給する。
【0036】
エッジ検出部122は、供給された画像データに基づく輝度画像を用いて、エッジ部分を検出する。図2を参照し、エッジ(マスク形状)につて説明する。図2は、表示部101に表示される画像例を示している。画面中央部分は、楕円形状の有効領域151とされ、ユーザに内視鏡装置で撮像された画像を提供する領域とされている。
【0037】
画像の有効領域151の周りは、マスク領域152とされ、例えば、図2に示したように黒く塗られた領域とされる。エッジは、画像の有効領域151とマスク領域152の境目であり、そのような境目をエッジ検出部122は検出する。本技術においては、後述するように、エッジ検出部122でのエッジの検出後に、補正することで正確なエッジ(マスクの検出)が行われる。
【0038】
内視鏡で得られる画像は、画像の左右上下方向には、生体内映像が映らない領域がある。これは、内視鏡でケラレが発生し、撮像手段に光が入ってこない領域があるからである。この生体内映像が映らない領域がマスク領域152に該当し、生体内映像が映る領域が、有効領域151に該当する。


(3)「【図1】



上記引用文献2の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「内視鏡から得られる画像を処理し、内視鏡のマスクを正確に検出することができる画像処理装置100において、
画像処理装置100は、医療機器としての内視鏡装置からの画像データを取得し、処理し、処理した画像をモニタなどの表示部101に出力するものであり、
画像処理装置100は、画像取得部111、第1演算部112、および第2演算部113を備え、
画像処理装置100の画像取得部111は、内視鏡装置からの画像を取得し、画像取得部111で取得された画像データは、第1演算部112に供給され、第1演算部112の輝度画像変換部121は、取得された画像データを輝度画像の画像データに変換し、エッジ検出部122に供給し、エッジ検出部122は、供給された画像データに基づく輝度画像を用いて、画像の有効領域151とマスク領域152の境目であるエッジ部分を検出し、
生体内映像が映らない領域がマスク領域152に該当し、生体内映像が映る領域が、有効領域151に該当する、
画像処理装置。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された、本願の出願前である平成27年11月19日に頒布された刊行物である特開2015-205126号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、観察光学系及び固体撮像素子を有する内視鏡装置、及びこの内視鏡装置で得られた画像に画像処理を施してモニタに出力する画像処理装置、並びに内視鏡装置の画像調整方法に関する。」

(2)「【0023】
[内視鏡装置の全体構成]
図1は、本発明に係る内視鏡装置(内視鏡システムともいう)10の外観斜視図である。内視鏡装置10は、大別して、患者体内の観察部位を撮像するスコープ(ここでは軟性内視鏡)としての電子内視鏡11、光源装置12、プロセッサ装置13、及びモニタ14などを備えている。
【0024】
光源装置12は、観察部位を照明する照明光を電子内視鏡11へ供給する。プロセッサ装置13は、本発明の画像処理装置の一形態に相当するものであり、電子内視鏡11により得られた撮像信号に基づいてモニタ14に表示する表示用画像の画像データ(以下、表示用画像データという)を生成してモニタ14に出力する。モニタ14は、プロセッサ装置13から入力される画像データに基づき観察部位の観察像を表示する。」

(3)「【0031】
電子内視鏡11は、大別して、ライトガイド40、照明窓42、観察窓43、観察光学系44、固体撮像素子45、内視鏡CPU47、ROM48、及び内視鏡記憶部49を有している。」

(4)「【0037】
また、内視鏡CPU47は、プロセッサ装置13のプロセッサCPU61と通信を行って、ROM48や内視鏡記憶部49に記憶されている情報を、プロセッサ装置13に送信する。ROM48には、プロセッサ装置13に送信される情報として、例えば、電子内視鏡11の種類を識別するための識別情報が記憶されている。
【0038】
内視鏡記憶部49は、本発明の記憶部の一形態に相当するものである。内視鏡記憶部49には、プロセッサ装置13に送信される情報として、詳しくは後述する画像切り出し情報51及び倍率情報53が電子内視鏡11の製造時に予め記憶されている。」

(5)「【0039】
プロセッサ装置13は、プロセッサCPU61、ROM62、デジタル信号処理回路(DSP:Digital Signal Processor)63、プロセッサ記憶部64、画像処理部65、及び表示ドライバ66を有している。
【0040】
プロセッサCPU61は、ROM62から必要なプログラムやデータを読み出して逐次処理することで、プロセッサ装置13の各部を制御する。また、プロセッサCPU61は、内視鏡CPU47から送信された識別情報をDSP63に出力すると共に、画像切り出し情報51及び倍率情報53を画像処理部65に出力する。従って、プロセッサCPU61は、本発明の情報取得部の一形態に相当するものである。」

(6)「【0043】
画像処理部65は、プロセッサCPU61の制御の下、プロセッサ記憶部64から取得した画像切り出し情報51及び倍率情報53に基づき、DSP63から入力される画像データに対して画像切り出し処理、画像拡大処理、マスク処理を施すことで、表示用画像データを生成する。そして、画像処理部65は、表示用画像データを表示ドライバ66に出力する。
【0044】
表示ドライバ66は、画像処理部65から入力される表示用画像データに基づき、モニタ14に観察部位の観察像を表示させる。」

(7)「【0055】
図5は、現実状態における画像切り出し領域TR、及び画像切り出し情報51を説明するための説明図である。図5に示すように、画像切り出し領域TRは、DSP63から入力される画像データ71に基づく画像内で、結像エリア中心CKを基準として表示エリア170と同じアスペクト比を有する最大の領域である。なお、本実施形態の表示エリア170は円形状であるので、ここでいう「同じアスペクト比を有する領域」とは例えば正方形状の領域である。
【0056】
ここで、画像切り出し領域TRの中心に対応する位置、すなわち画像データ71に基づく画像内での結像エリア中心CK(観察光学系44の光軸)に対応する位置は、例えば、電子内視鏡11で同心円状のパターンなどの各種テストチャートの撮像を行い、この撮像により得られた画像データを解析することで求められる。また、表示エリア170の形状及び大きさは既知である。従って、結像エリア中心CKの位置と、表示エリア170の形状及び大きさとに基づき、画像切り出し領域TRを決定することができる。この画像切り出し領域TRの位置及び大きさ等を示す情報が、画像切り出し情報51として電子内視鏡11の製造時に予め求められ、内視鏡記憶部49に記憶されている。これにより、画像切り出し情報51に基づき、画像データ71から画像切り出し領域TRに対応する表示用画像データ73を切り出すことができる。」

(8)「【図2】



上記引用文献3の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「内視鏡装置10は、電子内視鏡11、光源装置12、プロセッサ装置13、及びモニタ14などを備え、
プロセッサ装置13は、電子内視鏡11により得られた撮像信号に基づいてモニタ14に表示する表示用画像の画像データ(以下、表示用画像データという)を画像処理を施して生成してモニタ14に出力し、
電子内視鏡11は、大別して、ライトガイド40、照明窓42、観察窓43、観察光学系44、固体撮像素子45、内視鏡CPU47、ROM48、及び内視鏡記憶部49を有し、
内視鏡記憶部49には、プロセッサ装置13に送信される情報として、画像切り出し情報51及び倍率情報53が電子内視鏡11の製造時に予め記憶されており、
内視鏡CPU47は、プロセッサ装置13のプロセッサCPU61と通信を行って、ROM48や内視鏡記憶部49に記憶されている情報を、プロセッサ装置13に送信し、
プロセッサ装置13は、プロセッサCPU61、ROM62、デジタル信号処理回路(DSP:Digital Signal Processor)63、プロセッサ記憶部64、画像処理部65、及び表示ドライバ66を有し、
プロセッサCPU61は、内視鏡CPU47から送信された識別情報をDSP63に出力すると共に、画像切り出し情報51及び倍率情報53を画像処理部65に出力し、
画像処理部65は、プロセッサCPU61の制御の下、プロセッサ記憶部64から取得した画像切り出し情報51及び倍率情報53に基づき、DSP63から入力される画像データに対して画像切り出し情報51に基づき、画像データ71から画像切り出し領域TRに対応する表示用画像データ73を切り出し、画像拡大処理、マスク処理を施すことで、表示用画像データを生成し、表示用画像データを表示ドライバ66に出力し、
表示ドライバ66は、画像処理部65から入力される表示用画像データに基づき、モニタ14に観察部位の観察像を表示させる、
内視鏡装置10。」

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用文献4として引用された、本願の出願前である平成27年1月22日に頒布された刊行物である特開2015-12958号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は複数種類のテレビジョン信号規格の内視鏡画像を記録する内視鏡画像記録装置に関する。」

(2)「【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1に示す内視鏡システム1は、本発明の第1の実施形態の内視鏡画像記録装置2と、この内視鏡画像記録装置2に各種の映像信号を出力する内視鏡装置3A、3B、3Cと、この内視鏡画像記録装置2から出力される映像信号を表示する標準テレビジョン(SD)信号規格のモニタ(SDモニタと略記)4Aと、高精細テレビジョン(HDと略記)信号規格のモニタ(HDモニタと略記)4Bと、を備える。
また、内視鏡画像記録装置2は、この内視鏡画像記録装置2の内部に設けた記録装置としてのデータ記録部48(図2参照)の他に、内部の記録装置に記録した内視鏡画像の映像信号を外部の記録媒体又は記録装置に記録可能にしている。
具体的には、内視鏡画像記録装置2の前面には、DVD、ブルーレイディスク(BDと略記)等の光ディスク5a、USB接続のハードディスク(HDDと略記)等により構成される、USBストレージ装置5b、ネットワークストレージ装置(NASと略記)5cをそれぞれ接続するための光ディスク装着スロット6a、USB接続スロット6b、ネットワーク接続スロット6cが設けてある。」

(3)「【0016】
図1に示す例では、例えば実線で示すように内視鏡装置3Aの信号処理回路28Aにより生成されたSDの映像信号が内視鏡画像記録装置2に入力される状態で示している。なお、以下に説明するように複数の映像信号を内視鏡画像記録装置2に入力できる状態にして、複数の映像信号から実際に記録する1つの映像信号を選択することもできる。図2は、内視鏡画像記録装置2の内部構成を示す。
図2に示すように内視鏡画像記録装置2は、内視鏡画像記録装置2における各種の制御を行う制御手段としてのCPU等から構成される制御部40と、外部から複数種類のテレビジョン信号規格の映像信号を入力可能とする複数の映像信号入力端子(映像入力コネクタ)41a,41b,41c,41dと、複数の映像信号入力端子41a?41dから1つの映像信号入力端子41j(j=a?dのいずれか)の映像信号を術者等のユーザが選択する映像信号選択部(又は映像信号選択回路)42とを有する。」

(4)「【0020】
また、ユーザから映像信号の変換を行わない選択がされた場合には、制御部40は、入力信号を(Upコンバート処理、Downコンバート処理を行う事無く)スルーさせて映像信号変換部44から出力するように制御する。
なお、SDの映像信号を表示する場合の画素数サイズと、HDの映像信号を表示する場合の画素数サイズは、たとえばNTSC信号の場合には図3に示すようになっている。SDの場合には、水平方向(横方向)及び垂直方向(縦方向)の画素数は、それぞれ720,480(PAL信号の場合には720、576)であり、横:縦の画素数比としてのアスペクト比は4:3になる。これに対してHDの場合には、水平方向(横方向)及び垂直方向(縦方向)の画素数は、それぞれ1920,1080であり、アスペクト比は16:9となる。
このようにSDの場合とHDの場合とでは、画素数が異なると共にアスペクト比も異なるため、一方の映像信号の全体を欠落させることなく他方の映像信号に(解像度を上げたり、下げたりして)変換した場合には、縦(上下)又は横(左右)に無信号部分としての黒画像(又は黒帯)を付加して、変換前のアスペクト比を変換後のアスプクト比を有するようにする。
【0021】
なお、本明細書においては、黒画像と黒帯とは同じ意味で用いる。換言すると、本明細書においては、黒画像は内視鏡画像の上下の端、又は左右の端の黒帯形状の無信号又は黒レベルの画像部分を指す。
上記Upコンバート処理回路44aは、SDの映像信号をHDの映像信号に解像度を上げて変換した場合には、図4(A)に示すように左右両側にピラーボックスと呼ばれる240画素分の黒帯を付加する。なお、図4その他の図面中においては、黒帯部分を斜線で示す。
また、上記Downコンバート処理回路44bは、HDの映像信号をSDの映像信号に解像度をさげて変換した場合には、図4(B)に示すように上下両側にレターボックスと呼ばれる80画素分の黒帯を付加する。
また、内視鏡画像記録装置2は、映像信号変換部44から出力される映像信号に対して黒画像を含まない映像信号を生成する黒画像処理手段としての黒画像処理部45を有する。」

(5)「【図1】



(6)「【図2】



上記引用文献4の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献4には、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「内視鏡システム1において、
内視鏡システム1は、内視鏡画像記録装置2と、この内視鏡画像記録装置2に各種の映像信号を出力する内視鏡装置3A、3B、3Cと、この内視鏡画像記録装置2から出力される映像信号を表示する標準テレビジョン(SD)信号規格のモニタ(SDモニタと略記)4Aと、高精細テレビジョン(HDと略記)信号規格のモニタ(HDモニタと略記)4Bと、を備え、
内視鏡画像記録装置2は、内視鏡画像記録装置2における各種の制御を行う制御手段としてのCPU等から構成される制御部40と、外部から複数種類のテレビジョン信号規格の映像信号を入力可能とする複数の映像信号入力端子(映像入力コネクタ)41a,41b,41c,41dと、複数の映像信号入力端子41a?41dから1つの映像信号入力端子41j(j=a?dのいずれか)の映像信号を術者等のユーザが選択する映像信号選択部(又は映像信号選択回路)42とを有し、
SDの場合とHDの場合とで一方の映像信号の全体を欠落させることなく他方の映像信号に(解像度を上げたり、下げたりして)変換した場合には、縦(上下)又は横(左右)に無信号部分としての黒画像(又は黒帯)を付加する、
内視鏡システム。」

5.特開2017-34656号公報について
当審にて新たに発見した、本願の出願前である平成29年2月9日に頒布された刊行物である特開2017-34656号公報(以下「引用文献5」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、医療用撮像装置、医療用画像取得システム及び内視鏡装置に関する。」

(2)「【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる内視鏡装置1の概略構成を示す図である。内視鏡装置1は、医療分野において用いられ、人等の観察対象物の内部(生体内)の被写体を観察する装置である。この内視鏡装置1は、図1に示すように、内視鏡2と、撮像装置3(医療用撮像装置)と、表示装置4と、制御装置5(画像処理装置)と、光源装置6とを備え、撮像装置3と制御装置5とで、医療用画像取得システムを構成している。なお、本実施の形態1では、内視鏡2及び撮像装置3により、硬性鏡を用いた内視鏡装置を構成している。
【0023】
光源装置6は、ライトガイド7の一端が内視鏡2に接続され、当該ライトガイド7の一端に生体内を照明するための白色の照明光を供給する。ライトガイド7は、一端が光源装置6に着脱自在に接続されるとともに、他端が内視鏡2に着脱自在に接続される。そして、ライトガイド7は、光源装置6から供給された光を一端から他端に伝達し、内視鏡2に供給する。
【0024】
撮像装置3は、内視鏡2からの被写体像を撮像して当該撮像結果を出力する。この撮像装置3は、図1に示すように、信号伝送部である伝送ケーブル8と、カメラヘッド9とを備える。本実施の形態1では、伝送ケーブル8とカメラヘッド9とにより医療用撮像装置が構成される。
【0025】
内視鏡2は、硬質で細長形状を有し、生体内に挿入される。この内視鏡2の内部には、1または複数のレンズを用いて構成され、被写体像を集光する光学系が設けられている。内視鏡2は、ライトガイド7を介して供給された光を先端から出射し、生体内に照射する。そして、生体内に照射された光(被写体像)は、内視鏡2内の光学系(レンズユニット91)により集光される。
【0026】
カメラヘッド9は、内視鏡2の基端に着脱自在に接続される。そして、カメラヘッド9は、制御装置5による制御の下、内視鏡2にて集光された被写体像を撮像し、当該撮像による撮像信号を出力する。なお、カメラヘッド9の詳細な構成については、後述する。
【0027】
伝送ケーブル8は、一端がコネクタを介して制御装置5に着脱自在に接続されるとともに、他端がコネクタを介してカメラヘッド9に着脱自在に接続される。具体的に、伝送ケーブル8は、最外層である外被の内側に複数の電気配線(図示略)が配設されたケーブルである。当該複数の電気配線は、カメラヘッド9から出力される撮像信号、制御装置5から出力される制御信号、同期信号、クロック、及び電力をカメラヘッド9にそれぞれ伝送するための電気配線である。
【0028】
表示装置4は、制御装置5による制御のもと、制御装置5により生成された画像を表示する。表示装置4は、観察時の没入感を得やすくするために、表示部が55インチ以上を
有するものが好ましいが、これに限らない。
【0029】
制御装置5は、カメラヘッド9から伝送ケーブル8を経由して入力された撮像信号を処理し、表示装置4へ画像信号を出力するとともに、カメラヘッド9及び表示装置4の動作を統括的に制御する。なお、制御装置5の詳細な構成については、後述する。」

(3)「【0030】
次に、撮像装置3及び制御装置5の構成について説明する。図2は、カメラヘッド9及び制御装置5の構成を示すブロック図である。なお、図2では、カメラヘッド9及び伝送ケーブル8同士を着脱可能とするコネクタの図示を省略している。
【0031】
以下、制御装置5の構成、及びカメラヘッド9の構成の順に説明する。なお、以下では、制御装置5の構成として、本発明の要部を主に説明する。制御装置5は、図2に示すように、信号処理部51と、画像生成部52と、通信モジュール53と、入力部54と、制御部55と、メモリ56とを備える。なお、制御装置5には、制御装置5及びカメラヘッド9を駆動するための電源電圧を生成し、制御装置5の各部にそれぞれ供給するとともに、伝送ケーブル8を介してカメラヘッド9に供給する電源部(図示略)などが設けられていてもよい。」

(4)「【0041】
次に、カメラヘッド9の構成として、本発明の要部を主に説明する。カメラヘッド9は、図2に示すように、レンズユニット91と、撮像部92と、駆動部93と、通信モジュール94と、カメラヘッド制御部95とを備える。
【0042】
レンズユニット91は、1または複数のレンズを用いて構成され、内視鏡2にて集光された被写体像を、撮像部92を構成する撮像素子の撮像面に結像する。当該1または複数のレンズは、光軸に沿って移動可能に構成されている。そして、レンズユニット91には、当該1または複数のレンズを移動させて、画角を変化させる光学ズーム機構(図示略)や焦点を変化させるフォーカス機構が設けられている。なお、レンズユニット91は、光学ズーム機構及びフォーカス機構のほか、絞り機構や、光軸上に挿脱自在な光学フィルタ(例えば赤外光をカットするフィルタ)が設けられていてもよい。」

(5)「【図1】



(6)「【図2】



上記引用文献5の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献5には、次の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。
「医療分野において用いられ、人等の観察対象物の内部(生体内)の被写体を観察する内視鏡装置1において、
内視鏡装置1は、内視鏡2と、撮像装置3(医療用撮像装置)と、表示装置4と、制御装置5(画像処理装置)と、光源装置6とを備え
撮像装置3は、信号伝送部である伝送ケーブル8と、カメラヘッド9とを備え、
カメラヘッド9は、レンズユニット91と、撮像部92と、駆動部93と、通信モジュール94と、カメラヘッド制御部95とを備え、
カメラヘッド9は、内視鏡2の基端に着脱自在に接続され、制御装置5による制御の下、内視鏡2にて集光された被写体像を撮像部92を構成する撮像素子で撮像し、当該撮像による撮像信号を出力し、
制御装置5は、カメラヘッド9から伝送ケーブル8を経由して入力された撮像信号を処理し、表示装置4へ画像信号を出力するとともに、カメラヘッド9及び表示装置4の動作を統括的に制御する、
内視鏡装置1。」

第5 対比・判断
1.引用発明1との対比・判断
(1)対比
本願発明1を、引用発明1と比較する。
ア 引用発明1の「光源ユニット100から射出された励起光を照射光ファイバ21を通して生体組織1に照射し、この励起光Leの照射を受けた生体組織1から発生した蛍光による生体組織1の蛍光像をイメージファイバ22の入射端面22aから射出端面22bまで伝搬する内視鏡ユニット200」は、本願発明1の「被検体内に挿入される内視鏡」に相当する。
イ 引用発明1の「内視鏡ユニット200」で測定された「イメージファイバ22の射出端面22bに伝搬された蛍光像」は、本願発明1の「内視鏡にて取り込まれた被検体内部の被写体像」に相当する。
ウ 引用発明1では「イメージファイバ22の射出端面22bに伝搬された蛍光像を撮像し映像信号に変換して出力する蛍光像撮像ユニット300」において「射出端面22bに伝搬された蛍光像Zkは、射出端面22bに伝搬された像を縮小して結像させる結像レンズ32を通して、25万画素のフロント露光型CCD撮像素子である蛍光像撮像素子33の受光領域33a中に結像され、受光領域33a中に結像された蛍光像Zkは蛍光像撮像素子33によって撮像され電気的な画像信号に変換されて出力され」ることから、引用発明1の「蛍光像撮像素子33」は本願発明1の「当該内視鏡にて取り込まれた当該被検体内部の被写体像を撮像する撮像素子」に相当し、引用発明1の「蛍光像撮像素子33によって撮像され電気的な画像信号に変換されて出力され」ることは、本願発明1の「当該撮像素子による撮像で得られた画像信号を出力する」ことに相当する。
エ 引用発明1の「内視鏡ユニット200」の「イメージファイバの射出端面22bが接続」され「射出端面22bに伝搬された蛍光像Zkは、射出端面22bに伝搬された像を縮小して結像させる結像レンズ32を通して、25万画素のフロント露光型CCD撮像素子である蛍光像撮像素子33の受光領域33a中に結像され、受光領域33a中に結像された蛍光像Zkは蛍光像撮像素子33によって撮像され電気的な画像信号に変換されて出力され」る「蛍光像撮像ユニット300」は、本願発明1の「被検体内に挿入される内視鏡」「にて取り込まれた当該被検体内部の被写体像を撮像する撮像素子を有し、当該撮像素子による撮像で得られた画像信号を出力する撮像装置」に相当する。
オ 引用発明1の「蛍光像撮像ユニット300」における「蛍光像撮像素子33から出力された画像信号は画像信号抽出回路35に入力され、予め受光領域33a中に定められた蛍光像Zkの結像領域を含む画像読出領域に含まれる画素から得られる画像信号のみが抽出され出力され」ることは、本願発明1の「撮像装置」が「前記撮像素子における全画素領域のうち、当該全画素領域よりも小さく、前記被写体像全体を含む指定画素領域における各画素の画素信号を前記画像信号として出力」することに相当する。
カ 引用発明1の「蛍光像撮像ユニット300」の「映像信号処理回路34a」は、「蛍光像撮像素子33から出力された画像信号は画像信号抽出回路35に入力され、予め受光領域33a中に定められた蛍光像Zkの結像領域を含む画像読出領域に含まれる画素から得られる画像信号のみが抽出され出力され」た画像信号を「映像信号に変換」して「出力」するものであるから、本願発明1の「前記画像信号を処理して表示用の映像信号を生成する制御装置」に相当する。
キ 引用発明1の「蛍光像撮像ユニット300」は、本願発明1の「撮像装置」と「制御装置」の両方の装置を兼ねていることから、本願発明1の「前記撮像装置から前記制御装置に前記画像信号を伝送する信号伝送路」を備えていると認められる。

すると、本願発明1と、引用発明1とは、次の点で一致する。
<一致点>
「被検体内に挿入される内視鏡にて取り込まれた当該被検体内部の被写体像を撮像する撮像素子を有し、当該撮像素子による撮像で得られた画像信号を出力する撮像装置と、
前記画像信号を処理して表示用の映像信号を生成する制御装置と、
前記撮像装置から前記制御装置に前記画像信号を伝送する信号伝送路とを備え、
前記撮像装置は、
前記撮像素子における全画素領域のうち、当該全画素領域よりも小さく、前記被写体像全体を含む指定画素領域における各画素の画素信号を前記画像信号として出力する、
内視鏡装置。」

一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点1>
撮像装置が、本願発明1では「内視鏡の接眼部に着脱自在に接続され」ているのに対し、引用発明1では「蛍光像撮像ユニット300」が「内視鏡ユニット200」の「イメージファイバ22の射出端面22b」に接続されている点。
<相違点2>
制御装置が、本願発明1では、
「前記画像信号に基づく撮像画像における画素毎の輝度信号に基づいて、当該撮像画像に含まれる前記被写体像と当該被写体像以外のマスク領域との境界点を検出するマスクエッジ検出処理を実行するエッジ検出部と、
前記撮像装置の動作を制御する撮像制御部とを備え、
前記撮像制御部は、
前記撮像画像における前記エッジ検出部にて検出された境界点で囲まれる被写体像の領域に基づいて、前記指定画素領域を設定し、当該指定画素領域における各画素の画素信号を前記画像信号として前記撮像装置から出力させる」
のに対し、引用発明1の「蛍光像撮像ユニット300」は上記構成を備えていない点。

(2)判断
上記「(1)」で記載した各相違点につき、判断する。
ア 相違点1について
引用発明5は、内視鏡装置1において、内視鏡2の基端にカメラヘッド9を着脱自在に接続する技術を備えている。上記技術を、引用発明1の内視鏡ユニット200と蛍光像撮像ユニット300の接続部分に適用して、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者ならば容易になしえたことである。

イ 相違点2について
(ア)引用発明2は、内視鏡の画像を処理する画像処理装置において、供給された画像データに基づく輝度画像を用いて、画像の有効領域151とマスク領域152の境目であるエッジ部分を検出するエッジ検出部122を備えている。このエッジ検出部122は、本願発明1の「前記画像信号に基づく撮像画像における画素毎の輝度信号に基づいて、当該撮像画像に含まれる前記被写体像と当該被写体像以外のマスク領域との境界点を検出するマスクエッジ検出処理を実行するエッジ検出部」に相当する。
(イ)引用発明3は、内視鏡装置10において、電子内視鏡11により得られた撮像信号を、プロセッサ装置13の画像処理部65において、内視鏡記憶部49に記憶されている製造時に記憶された画像切り出し情報51をもとに、画像処理を行い、表示用画像データ73を切り出す技術を備えている。
(ウ)引用発明4は、内視鏡システム1において、内視鏡画像記録装置2に内視鏡画像記録装置2における各種の制御を行う制御手段としてのCPU等から構成される制御部40を備え、標準テレビジョン(SD)信号規格の場合と、高精細テレビジョン(HDと略記)信号規格の場合とで一方の映像信号の全体を欠落させることなく他方の映像信号に(解像度を上げたり、下げたりして)変換した場合には、縦(上下)又は横(左右)に無信号部分としての黒画像(又は黒帯)を付加する技術を備えている。
(エ)しかしながら、引用発明2ないし4には「制御装置」が「前記撮像装置の動作を制御する撮像制御部」を備え、その「撮像制御部」が「撮像画像における」「エッジ検出部にて検出された境界点で囲まれる被写体像の領域に基づいて、」「指定画素領域を設定し、当該指定画素領域における各画素の画素信号を」「画像信号として」「撮像装置から出力させる」技術は開示されていない。
(オ)上記「(エ)」の点は、引用発明5にも開示されていない。
(カ)また、引用発明1に、引用発明2のエッジ検出部(上記(ア)参照。)を適用し、さらに引用発明3の表示用画像データを切り出す技術(上記(イ)参照。)を適用したとしても、表示用画像データは、内視鏡記憶部49に記憶されている製造時に記憶された画像切り出し情報51をもとに切り出される(指定画素領域を設定し、当該指定画素領域における各画素の画素信号を画像信号として出力される)こととなり、エッジ検出部にて検出された境界点で囲まれる被写体像の領域に基づいて、指定画素領域を設定し、当該指定画素領域における各画素の画素信号を画像信号として撮像装置から出力される構成とはならない。
(キ)以上のことから、上記相違点2に係る発明特定事項を引用発明1ないし5から当業者が導き出すことはできない。

ウ 小括
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1ないし5に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2.引用発明5との対比・判断
(1)対比
本願発明1を、引用発明5と比較する。
ア 引用発明5の「内視鏡2」は、本願発明1の「被検体内に挿入される内視鏡」に相当する。
イ 引用発明5の「内視鏡2の基端」は、本願発明1の「被検体内に挿入される内視鏡の接眼部」に相当する。
ウ 引用発明5の「内視鏡2にて集光された被写体像」を撮影する「撮像部92を構成する撮像素子」は、本願発明1の「内視鏡にて取り込まれた当該被検体内部の被写体像を撮像する撮像素子」に相当する。
エ 引用発明5の「カメラヘッド9」は、「内視鏡2の基端に着脱自在に接続され、制御装置5による制御の下、内視鏡2にて集光された被写体像を撮像部92を構成する撮像素子で撮像し、当該撮像による撮像信号を出力」するものであるから、本願発明1の「被検体内に挿入される内視鏡の接眼部に着脱自在に接続され、当該内視鏡にて取り込まれた当該被検体内部の被写体像を撮像する撮像素子を有し、当該撮像素子による撮像で得られた画像信号を出力する撮像装置」に相当する。
オ 引用発明5の「カメラヘッド9から伝送ケーブル8を経由して入力された撮像信号を処理し、表示装置4へ画像信号を出力する」「制御装置5」は、本願発明1の「撮像装置」からの「画像信号を処理して表示用の映像信号を生成する制御装置」に相当する。
カ 引用発明5の「カメラヘッド9から」「撮像信号」を「制御装置5」に伝える「伝送ケーブル8」は、本願発明1の「撮像装置から」「制御装置に」「画像信号を伝送する信号伝送路」に相当する。

すると、本願発明1と、引用発明5とは、次の点で一致する。
「被検体内に挿入される内視鏡の接眼部に着脱自在に接続され、当該内視鏡にて取り込まれた当該被検体内部の被写体像を撮像する撮像素子を有し、当該撮像素子による撮像で得られた画像信号を出力する撮像装置と、
前記画像信号を処理して表示用の映像信号を生成する制御装置と、
前記撮像装置から前記制御装置に前記画像信号を伝送する信号伝送路とを備えた、
内視鏡装置。」

一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点3>
撮像装置が、本願発明1では「前記撮像素子における全画素領域のうち、当該全画素領域よりも小さく、前記被写体像全体を含む指定画素領域における各画素の画素信号を前記画像信号として出力」するものであるのに対し、引用発明5は上記構成を備えていない点。
<相違点4>
制御装置が、本願発明1では、
「前記画像信号に基づく撮像画像における画素毎の輝度信号に基づいて、当該撮像画像に含まれる前記被写体像と当該被写体像以外のマスク領域との境界点を検出するマスクエッジ検出処理を実行するエッジ検出部と、
前記撮像装置の動作を制御する撮像制御部とを備え、
前記撮像制御部は、
前記撮像画像における前記エッジ検出部にて検出された境界点で囲まれる被写体像の領域に基づいて、前記指定画素領域を設定し、当該指定画素領域における各画素の画素信号を前記画像信号として前記撮像装置から出力させる」
ものであるのに対し、引用発明5は上記構成を備えていない点。

(2)判断
上記「(1)」で記載した各相違点のうち、相違点4は、上記「1.(2)イ」で検討した相違点2であり、上記「1.(2)イ」で検討したのと同様の理由により、上記相違点4に係る発明特定事項を引用発明1ないし5から当業者が導き出すことはできない。
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1ないし5に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5も、本願発明1の上記相違点2及び4に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1ないし5に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
上記「第5」で検討したように、本願発明1ないし5は、引用発明1ないし5から当業者が容易に発明できたものとはいえないから、拒絶査定において引用された引用文献1ないし4に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-10-25 
出願番号 特願2017-43239(P2017-43239)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 蔵田 真彦
伊藤 幸仙
発明の名称 内視鏡装置  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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