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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1379342
審判番号 不服2021-5890  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-07 
確定日 2021-11-16 
事件の表示 特願2020-542172「データ処理装置、データ処理方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)8月3日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年11月20日付け:拒絶理由通知
令和 3年 1月 4日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 4月 2日付け:拒絶査定(原査定)
令和 3年 5月 7日 :審判請求書の提出
令和 3年 7月15日付け:当審の拒絶理由通知
令和 3年 9月10日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和3年4月2日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。

1 (新規性)本願請求項1-5、10-11に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2 (進歩性)本願請求項1-11に係る発明は、以下の引用文献A-Dに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2014-116025号公報
B.特開2001-325562号公報
C.特開2016-177349号公報
D.特開2019-49823号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審が令和3年7月15日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりである。

本願請求項1-3、6-11に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2020/012539号(当審において新たに引用した文献)
2.特開2008-262380号公報(当審において新たに引用した文献)
3.特開2014-116025号公報(拒絶査定時の引用文献A)

第4 本願発明
本願の請求項1-10に係る発明(それぞれ、以下「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、令和3年9月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であって、そのうち本願発明1は以下のとおりのものである。

【請求項1】
請求先企業が受け取った請求書に対応しており、合計請求額が記載された第1請求書データと、前記第1請求書データに記載された請求書番号に関連付けられた請求書番号を含み、複数の商品の明細が記載されているとともに前記複数の商品それぞれに関連付けて税抜金額と税額とが含まれている第2請求書データと、により構成される請求書データを取得するデータ取得部と、
前記第1請求書データに含まれる前記合計請求額と、前記第2請求書データに含まれている前記複数の商品に対応する複数の商品金額と、を特定する金額特定部と、
前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額の合計額である第1合算額、及び前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額と複数の前記税額との合算額である第2合算額のそれぞれと、前記合計請求額とを比較する比較部と、
前記第1合算額と前記合計請求額との比較結果、及び前記第2合算額と前記合計請求額との比較結果の両方が一致していない場合に警告情報を出力する出力部と、
を有するデータ処理装置。

なお、本願発明2-10の概要は次のとおりである。
本願発明2-8は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明9は、本願発明1のカテゴリ表現を「データ処理方法」に変更した発明である。
本願発明10は、コンピュータに本願発明9の「データ処理方法」を実行させるための「プログラム」の発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1と引用発明
(1)引用文献1の記載事項
当審拒絶理由において引用した引用文献1(国際公開日2020年(令和2年)1月16日)には、図1とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以降の文献も同様。)
「[0026] 図1は本発明の一実施形態に係る仕訳要素解析部を含む会計処理システムを示したシステム構成図であり、同図に基づき本実施形態の構成について説明する。
[0027] 図1に示すように、本実施形態に係る会計処理システム1は、インターネット、VPN(Virtual Private Network)等の通信網2を介して、ユーザ側の各装置と会計処理サービス提供者側の会計処理装置10とが接続されて構成されている。なお、説明の簡略化のため図1では一人のユーザのみを示しているが、会計処理装置10は通信網2を介して複数のユーザと接続可能である。
[0028] ユーザは、例えば税理士及び会計士等の専門家であったり、直接会計処理を行う法人や個人等であり、少なくとも読取装置3と情報端末4を有している。
[0029] 読取装置3は、例えばスキャナ又はカメラ等の光学機器であり、証憑を画像データとして取り込める装置である。なお、本実施形態及び特許請求の範囲における「証憑」という文言は、領収書やレシート、その他の受領書、請求書、納品書、金融機関の通帳、会計上金銭授受の証明となる書類、電子マネー等のICカードによる取引情報も含むものとする。
[0030] 情報端末4は、例えばパーソナルコンピュータ(以下、PCという)や、スマートフォン、タブレットPC、及び携帯電話のような携帯端末であり、少なくともweb情報を表示可能な端末である。
[0031] ユーザは、読取装置3により証憑の画像データを取得して、情報端末4により会計処理装置10に送信可能であるとともに、会計処理装置10からの情報を受信可能である。なお、図1では読取装置3と情報端末4とが別体のように示しているが、カメラ付きの携帯端末のように読取装置3と情報端末4とが一体であってもよい。また、ユーザ自身が読取装置3を所有している必要はなく、例えば外部の読取装置により読み取った証憑の画像データをメールやwebを介して取得してもよい。
[0032] 一方、会計処理サービス提供者(以下、単にサービス提供者ともいう)は、いわゆるクラウドコンピューティングにより会計処理サービスを提供する事業者であり、会計処理装置10を管理する者である。
[0033] 会計処理装置10(会計処理システム)は、プログラムに基づき仕訳処理を実行する1又は複数のサーバ(コンピュータ)を有し、機能的には主に、証憑の画像データから仕訳要素を抽出して解析を行う仕訳要素解析部11(仕訳要素解析装置)と、仕訳要素の解析結果を表示する表示部12と、解析した仕訳要素を確定する仕訳要素確定部13と、確定された仕訳要素に基づいて自動仕訳を行う仕訳部14と、仕訳要素抽出AI及び仕訳AIを生成する学習システム15と、を有している。
[0034] さらに、仕訳要素解析部11は、仕訳要素抽出部20、振分部21、検算部22、突合部23、整合性判定部24、自動補正部25、仕訳要素出力部26とを有している。
[0035] 仕訳要素抽出部20は、ユーザから証憑の画像データを受信し、当該画像データから仕訳要素を抽出する機能を有している。具体的には、仕訳要素抽出部20は、証憑の画像データから仕訳要素を抽出するための仕訳要素抽出AIを複数有し、当該複数の仕訳要素抽出AIにより同一の証憑の画像データからそれぞれ仕訳要素を抽出可能である。なお、本実施形態では第1の仕訳要素抽出AIと第2の仕訳要素抽出AIを用いるものとする。この複数の仕訳要素抽出AIは、証憑の画像データから仕訳要素抽出する機能は共通しているが、例えば学習システム15において学習用データが異なる等の異なる学習を行ったAIである。
[0036] 仕訳要素抽出AIは、証憑の画像データ内から仕訳要素に対応する部分(位置)を特定し、特定された部分の内容に対応する仕訳要素をテキストとして抽出する。つまり、仕訳要素抽出AIは、学習システム15において、機械学習により画像データ内から仕訳要素に対応する部分を含む領域を指定し、当該指定された部分の内容に対応する仕訳要素をテキストとして出力することを学習したAIである。例えば、仕訳要素抽出AIは、証憑の画像データ内のおいて、日付部分、金額部分、取引先部分、摘要部分を指定し、日付部分や金額部分においては数字を認識して年月日や金額のテキストを出力し、取引先に対応する部分や摘要に対応する部分においては文字を認識して取引先や摘要のテキストを出力する。
[0037]- [0038](略)
[0039] 仕訳要素としては、例えば日付、金額、取引先、摘要(但し書き、商品名含む)、取引元(宛名含む)があり、これらに対応する数字、文字、図形(例えばロゴマーク、印影、その他企業を特定可能な図柄)、及び証憑の外観(例えば通帳や領収書の大きさ、色)がある。
[0040] 仕訳要素抽出部20は、例えば日付については、「日付」「年」「月」「日」等の文字や「/」等の記号の前後や上下の数字部分を特定する。金額については「¥」等の記号や商品名、「金額」「預り金」「小計」「合計」「税」「お釣り」「割引」「円」「支払い」「預り」「残高」等の金額に関係する文字の前後や上下の数字部分を特定する。そして、本実施形態では金額については、例えば「合計 1000円」「お釣り 50円」等、金額に関係する文字や数字毎に仕訳要素を抽出する。なお、仕訳要素抽出部20は、抽出された文字の意味についても認識可能であり、例えば「小計」は商品の価格を合算した金額である等の会計上の関係性まで特定可能である。
[0041] また、取引先については、「株式会社」「(株)」「(カ)」等の文字の前後の文字部分や、ロゴマーク、電話番号、証憑の外観を特定して、これらの情報に基づく会社名や個人名に対応する部分を特定する。摘要については、「但」等の文字に続く文字部分を特定する。取引元については、「様」等の文字の前にある文字の部分を特定する。
[0042](略)
[0043] 仕訳要素抽出部20と接続されている振分部21は、抽出された仕訳要素から後述する検算部22にて用いる関係式が成立しない特定の証憑を判別し、当該特定の証憑の仕訳要素については検算部22による検算を行わず突合部23による突合のみを行うよう振り分ける。
[0044] 詳しくは、振分部21は、仕訳要素抽出部20により抽出された仕訳要素から証憑の種類を判別して、検算可能である証憑と検算不可能である証憑との振り分けを行う。具体的には、検算部22にて用いる関係式が成立する仕訳要素を全て具備している場合には検算可能である証憑とし、当該関係式が成立しない場合には検算不可能である証憑として振り分ける。また、予め、タクシー、電車等の交通系の領収書、飲食店等の手書き領収書のように税込金額のみが記載される証憑等、商慣習上や法律上において検算部22にて用いる関係式が成立し得ない証憑を予め図示しない記憶部等に記憶させておき、抽出された仕訳要素から判別される証憑が、登録された特定の証憑であるか否かで振り分けてもよい。
[0045] 検算部22は、抽出された仕訳要素のうち金額に関する仕訳要素にかかる関係式を用いて検算を行う機能を有している。関係式としては、例えば、お預り=合計+お釣り、合計(又は小計)=税込商品金額の合計、消費税額=(税込商品金額の合計-消費税額)×消費税率、税抜金額=税込金額/消費税、等があり、複数の関係式からなる連立方程式から検算してもよい。関係式としては、この他にも、消費税率が商品に応じて8%、10%と異なる場合には、消費税額=8%対象商品合計額×0.08+10%商品合計額×0.10、という関係式を用いてもよい。このような会計に基づく関係式は、図示しない記憶部に記憶されており、検算部22は抽出された金額に関する仕訳要素に応じて記憶部から適当な関係式を呼び出して用いる。
[0046] 検算部22における検算は、例えば抽出した仕訳要素の数値から関係式が成立するか(等式が成り立つか)を判別し、成立の有無を検算結果として出力する。特に関係式が成立しない場合には、どの式のどの要素が成り立たないか等の情報も検算結果に含める。なお、検算部22は、複数の仕訳要素抽出AIにより抽出された金額に関する仕訳要素のそれぞれについて検算を行ってもよいし、検算に使用する仕訳要素抽出AIを予め一つに設定しておいたり、抽出の信頼度が高い仕訳要素を用いることとしてもよい。ここでの信頼度とは、仕訳要素抽出AIの判断で確度であり、例えばパーセントで表すことが可能である、(当審注:原文のとおり。)
[0047] 突合部23は、仕訳要素抽出部20において、複数の仕訳要素抽出AIにより抽出された同種の仕訳要素を突合させる。例えば、第1の仕訳要素抽出AIにより抽出された合計金額の額と、第2の仕訳要素抽出AIにより抽出された合計金額の額とを突合する。そして、各仕訳要素について突合して一致した仕訳要素、不一致な仕訳要素を突合結果として出力する。なお、本実施形態では、突合部23は検算部22と同様に、抽出された仕訳要素のうち金額に関する仕訳要素について突合を行うものとして説明するが、突合部23において突合を行う仕訳要素は金額に関する仕訳要素に限られない。
[0048] 整合性判定部24は、検算部22による検算結果、及び突合部23による突合結果から、抽出された仕訳要素の整合性を判定する。なお、検算不可能な証憑に対しては突合結果のみに基づいて仕訳要素の整合性を判定する。
[0049] 具体的には、整合性判定部24は、例えば、検算結果及び突合結果から全ての仕訳要素が整合する旨、不整合な仕訳要素があるが補正可能である旨、補正も不可能な仕訳要素がある旨、等の判定結果を出力可能である。
[0050] 自動補正部25は、整合性判定部24にて判定された不整合な仕訳要素について、検算結果又は突合結果を用いて自動補正を行う機能を有している。例えば、自動補正部25は、検算部22にて用いた関係式の連立方程式の成立を妨げる仕訳要素がある場合、当該仕訳要素に対して連立方程式が成立する数値に変更する。又は、自動補正部25は、突合結果から不一致な仕訳要素がある場合、信頼度の高い仕訳要素抽出AIが抽出した仕訳要素を採用して不整合箇所を変更する。
[0051] 仕訳要素出力部26は、自動補正された仕訳要素も含め、仕訳要素抽出部20により抽出された仕訳要素を表示部12にて表示可能な表示データとして出力する機能を有している。特に、仕訳要素出力部26は、整合性判定部24が判定した整合性に応じて異なる表示を付する。例えば本実施形態では、仕訳要素出力部26は不整合な仕訳要素がなかった場合には通常表示とし、自動補正できなかった不整合な仕訳要素には第1の警告表示(赤色フラグ表示)、自動補正した不整合な仕訳要素には第2の警告表示(黄色フラグ表示)を付する。
[0052] 警告表示は、通常表示と異なる表示であればよく、表示形式は特に限定されず、例えば不整合仕訳要素のテキストに下線を記載したり、文字色を異ならせたり、テキストの近くにフラグを表示する等して表現する。また、警告表示の種類も整合性に応じて複数設定してもよいし、1種類のみでもよい。
[0053] 表示部12は、例えば会計処理装置10のディスプレイであり、仕訳要素出力部26より出力された仕訳要素の抽出結果を示す表示データを表示する機能を有している。なお、仕訳要素出力部26により生成される表示データは、会計処理装置10の表示部12だけでなく、ユーザの情報端末4に送信し、ユーザも仕訳要素の抽出結果を確認できるようにしてもよい。
[0054]-[0056](略)
[0057] このように構成された会計処理装置10は、仕訳要素解析部11において、抽出した仕訳要素に対して、金額に関する仕訳要素については検算を行ったり、複数の仕訳要素抽出AIにより抽出した同種の仕訳要素抽出結果を突合させ、不整合な仕訳要素については警告表示を付して表示する。」

(2)引用発明
ここで、段落[0029]には、「本実施形態及び特許請求の範囲における『証憑』という文言は、領収書やレシート、その他の受領書、請求書、納品書、金融機関の通帳、会計上金銭授受の証明となる書類、電子マネー等のICカードによる取引情報も含むものとする。」との記載があるから、引用文献1の上記記載において、「証憑」を「請求書」と読み替えたものは、引用文献1に記載されているに等しい事項といえる。
そうすると、引用文献1には、「インターネット、VPN(Virtual Private Network)等の通信網2を介して、ユーザ側の各装置と会計処理サービス提供者側の会計処理装置10とが接続されて構成され」ている「会計処理システム」([0027])における「会計処理装置10」について、以下の事項が記載されているといえる。

ア 仕訳要素抽出部20は、ユーザから請求書の画像データを受信する機能と、当該画像データから仕訳要素を抽出する機能を有している([0035])。
そして、抽出する仕分要素は、金額を含み([0039])、金額については、「¥」等の記号や商品名、「金額」「小計」「合計」「税」「円」等の金額に関係する文字の前後や上下の数字部分を特定したものであり、さらに、金額について、金額に関係する文字や数字毎に仕訳要素を抽出し、抽出された文字の意味についても認識可能であり、会計上の関係性まで特定可能である([0040])。そうすると、前記「仕分要素を抽出する機能」は、金額に関する仕分要素として、商品名の商品に対応する商品金額及び合計金額を抽出することは明らかであり、請求書における「合計金額」は、「合計請求額」に他ならない。さらに、下記イの検算部22は、「合計(小計)=税込商品金額の合計」の関係式を用いて検算([0045])することが記載されており、関係式の右辺が検算するために抽出された仕分要素といえるから、この場合、仕分要素抽出部20は、「商品名の商品に対応する商品金額」として「税込商品金額」を抽出するものといえ、さらに、「合計」の記載からみて、複数の商品名の商品に対応する複数の税込商品金額を抽出するものといえる。
よって、「会計処理装置」は、「ユーザから請求書の画像データを受信する機能と、当該画像データから仕分要素として合計請求額と、複数の商品名の商品に対応する複数の税込商品金額を抽出する機能とを有している仕分要素抽出部」を備えるといえる。

イ 検算部22は、抽出された仕分要素のうち金額に関する仕分要素にかかる関係式を用いて検算を行う機能を有しており、関係式として、合計(小計)=税込商品金額の合計を用いて検算してもよく([0045])、検算部22における検算は、例えば抽出した仕分要素の数値から関係式が成立するか(等式が成り立つか)を判別し、成立の有無を検算結果として出力する([0046])ものである。
よって、「会計処理装置」は、「抽出された合計請求額と複数の税込商品金額が、合計請求額=複数の税込商品金額の合計という関係式が成立するかを判別して、成立の有無を検算結果として出力する検算部」を備えるといえる。

ウ 仕分要素出力部26は、検算部22による検算結果から抽出された仕分要素の整合性を判定する整合性判定部24([0048])が判定した整合性に応じて異なる表示を付するものであり、自動補正することができなかった不整合な仕分要素には第1の警告表示、自動補正した不整合な仕分要素には第2の警告表示を付する([0051])ものである。
よって、「会計処理装置」は、「検算結果が不整合であると判定された場合、不整合な仕分要素に警告表示を付する仕分要素出力部」を備えるといえる。

上記アないしウより、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
ユーザから請求書の画像データを受信する機能と、当該画像データから仕分要素として合計請求額と複数の商品名の商品に対応する複数の税込商品金額を抽出する機能とを有している仕分要素抽出部と、
抽出された合計請求額と複数の税込商品金額が、合計請求額=複数の税込商品金額の合計という関係式が成立するかを判別して、成立の有無を検算結果として出力する検算部と、
検算結果が不整合であると判定された場合、不整合な仕分要素に警告表示を付する仕分要素出力部と、
を備える会計処理装置。

2 引用文献2と周知事項
当審拒絶理由において引用した引用文献2には、以下の事項が記載されている。
「【0003】
ここで、顧客の指定請求書の一例を図31、図32を参照して説明する。図31は合計消費税計算による指定請求書の書式を示しており、図32は明細消費税計算による指定請求書の書式を示している。又、図31(a)、図32(a)は請求書鑑用紙を示しているとともに、図31(b)、図32(b)は請求書明細用紙を示している。指定請求書には、図31(a)、図32(a)に示す請求書鑑用紙が付いている場合と付いていない場合とがある。
【0004】
又、上記指定請求書には、小計欄E、消費税欄F、合計欄Gの夫々の項目に関して有る場合と無い場合がある。又、小計欄E、消費税欄F、合計欄Gが無い顧客であっても、明細行に小計、消費税、合計、総合計の表示は必要であり、指定請求書の書式によって合計欄Gに小計を、小計欄Eに合計を、小計欄E又は合計欄Gに総合計をタイトル変更して表示する必要がある。
【0005】
又、明細消費税計算の顧客には、図32に示すように、消費税欄Fは表記上存在しない。又、請求書鑑用紙Aの明細行C、請求書明細用紙Bの明細行Dの行数は顧客によってそれぞれ異なり、請求書鑑用紙Aには明細行Cがない顧客もある。そして請求書鑑用紙Aの小計欄E、消費税欄F、合計欄Gと、請求書明細用紙Bの小計欄E、消費税欄F、合計欄Gの有無は顧客毎必ず同じである。」


」(図32)
図32より、請求書鑑用紙Aと請求書明細用紙Bには、いずれも現場コードを記載する欄があり、各用紙に記載する現場コードは、同じコードか又は関連するコードであることは明らかである。また、当該現場コードは請求書毎に異なるから請求書番号ということができる。さらに、明細行Dは、品名毎に金額、消費税、金額(税込)が記載されるものといえる。
そして、商取引に用いる請求書について、引用文献2に記載されたような、「合計請求額が記載されている請求書鑑用紙と、該請求書鑑用紙と同じ又は関連する請求書番号を含み、品名毎に金額、消費税、金額(税込)が記載される請求書明細用紙とからなる請求書」は周知事項である。

3 引用文献3の記載事項
当審拒絶理由において引用した引用文献3(原査定において引用された引用文献A)には、以下の事項が記載されている。
「【0028】
図1は、文書の有効性を決定するための方法100を示す。方法100は、任意の所望の環境において実行されてもよいことに留意されたい。
【0029】
操作102に示されるように、光学式文字認識(OCR)が、取引全体の一部として使用される、紙文書であり得る、第1の文書のスキャンされた画像上で行われる。第1の文書は、手書き、タイプ、またはプリントされたテキストの任意の物理的表現を含んでもよい。例えば、第1の文書として、請求書、領収証、明細書、販売注文文書、保険金請求文書等を含んでもよい。別の実施例では、第1の文書として、福利厚生の説明文書、医療保険文書等を含んでもよい。
【0030】
加えて、一実施形態では、スキャンされた画像は、第1の文書をスキャンすることによって、生成されてもよい。例えば、文書は、個人または市販のハードウェアスキャンデバイス、スキャンソフトウェア等を使用して、スキャンされてもよい。
【0031】
さらに、スキャンされた画像は、文書のスキャンから得られた任意の画像を含んでもよい。例えば、スキャンされた画像は、JPEG画像、ビットマップ画像、TIFF画像、RAW画像等を含んでもよい。当然ながら、しかしながら、スキャンされた画像は、任意の画像の種類を含んでもよい。加えて、本実施形態に照らして、光学式文字認識は、スキャンされた画像の機械編集可能テキストへの任意の機械的または電子的変換を含んでもよい。
【0032】(略)
【0033】
加えて、操作104に示されるように、識別子が、第1の文書から抽出される。本実施形態に照らして、識別子は、識別の目的のために使用可能な第1の文書の任意の側面を含んでもよい。例えば、識別子は、注文書番号、文書の見出し、文書の表題、OCRされたバージョンの文書のファイル名等を含んでもよい。一実施形態では、識別子は、スキャンされ、OCRされたバージョンの第1の文書から抽出されてもよい。
【0034】-【0035】(略)
【0036】
さらに、操作106に示されるように、第1の文書と関連付けられた相補的文書(または、複数の文書)が、識別子を使用して、識別されてもよい。本実施形態に照らして、相補的文書として、何らかの方法で、第1の文書と関連付けられた任意の文書を含んでもよい。例えば、相補的文書として、注文書、覚書、配達受領書等のうちの少なくとも1つを含んでもよい。別の実施形態では、相補的文書は、第1の文書と関係を有してもよい。例えば、相補的文書として、第1の文書と関連する注文書を含んでもよく、その場合、第1の文書は、請求書である。
【0037】
別の実施形態では、相補的文書は、識別子をデータベース、リポジトリ等と比較することによって、識別されてもよい。例えば、注文書は、注文書番号を注文書リポジトリと比較することによって、識別されてもよい。さらに別の実施形態では、相補的文書は、読み出されてもよい。例えば、相補的文書は、データベース、リポジトリ等から読み出されてもよい。
【0038】(略)
【0039】
さらに、操作108に示されるように、第1の文書を相補的文書にマッピングする仮説のリストが、第1の文書からのテキスト情報、相補的文書からのテキスト情報、および所定のビジネスルールを使用して、生成される。一実施形態では、第1の文書および相補的文書からのテキスト情報として、数値情報、テキスト、記号等を含んでもよい。例えば、テキスト情報として、物品の記述、明細行項目、ヘッダフィールド項目、単価、物品の数量、計算価格等を含んでもよい。
【0040】-【0042】(略)
【0043】
別の実施形態では、仮説は、第1の文書および対応する文書のテキスト情報の1つ以上の項目間の任意の対応を含んでもよい。例えば、仮説は、第1の文書からのテキスト情報と対応する文書からのテキスト情報との間の整合を含んでもよい。さらに、所定のビジネスルールとして、ビジネスに関連する任意の所定のルールを含んでもよい。一実施形態では、所定のビジネスルールは、第1の文書または相補的文書に関連してもよい。例えば、所定のビジネスルールとして、明細行項目の総額は、数量を単価で乗じたものに等しいというルールを含んでもよい。別の実施例では、所定のビジネスルールとして、全明細行項目は、第1の文書の小計と等しい必要があるというルールを含んでもよい。
【0044】(略)
【0045】
一例示的実施形態では、第1の文書と相補的文書との間で潜在的に整合する任意のフィールドが、仮説を生成するために、潜在的フィールドとして選択される。加えて、単一フィールドは、複数の潜在的対応する仮説を有してもよい。すべての潜在的に整合するフィールドが、決定されると、第1の文書および/または相補的文書の構造が決定され、フィールドが、論理的順番に群化される。例えば、フィールドは、「最近傍」様式で群化されてもよい。別の実施例では、フィールドは、記述、質、価格、合計等として、群化されてもよい。さらに、次いで、所定のビジネスルールを使用して、フィールドの有効性を確認する。例えば、所定のビジネスルールは、個々の量フィールドを個々の価格フィールドと乗じたものが、総額フィールドと等しいことを確認してもよい。このように、正確な仮説が、再構築または抽出をほとんど使用せずに、生成され得る。
【0046】
別の例示的実施形態では、抽出は、テキスト情報だけでなく、各フィールドに関する初期概念を提供するために、OCRされたバージョンの第1の文書にわたって実行される。抽出されたテキスト情報、所定のビジネスルール、および相補的文書を利用した分析後、抽出されたテキスト情報が、改変される。例えば、番号、文字、および他のフィールド項目が、所定のビジネスルールならびに相補的文書から得られた情報に従って、改変される。改変が行われた後、付加的分析が、改変された抽出テキスト情報、所定のビジネスルール、および相補的文書を利用して、行われる。このように、抽出されたテキスト情報は、相補的文書により正確に関連するように、微調整されてもよい。
【0047】
さらに別の例示的実施形態では、抽出は、明細行項目を表す、すべての明細行および明細行群を識別するために、OCRされたバージョンの第1の文書にわたって実行される。加えて、相互相関が、相補的文書と抽出された第1の文書からのテキスト情報との間で行われる。さらに、第1の文書は、相互相関を使用して、再構築される。
【0048】
別の実施形態では、第1の文書内のOCRエラーは、相補的文書からのテキスト情報および所定のビジネスルールのうちの少なくとも1つを使用して、補正されてもよい。加えて、別の実施形態では、第1の文書からのデータは、相補的文書からのテキスト情報および所定のビジネスルールのうちの少なくとも1つを使用して、正規化されてもよい。さらに、さらに別の実施形態では、相補的文書からのデータは、第1の文書からのテキスト情報および所定のビジネスルールのうちの少なくとも1つを使用して、正規化されてもよい。例えば、正規化として、グラムからキログラム、オンスからグラム、ドルからユーロ等への変換を含んでもよい。
【0049】
加えて、操作110に示されるように、第1の文書の有効性は、仮説に基づいて、決定される。本実施形態に照らして、有効性は、第1の文書が、相補的文書と十分に関連するかどうかの表示を含んでもよい。例えば、有効性として、第1の文書が相補的文書と整合することの表示を含んでもよい。加えて、有効性は、仮説を分析することによって、決定されてもよい。別の実施形態では、加えて、決定は、仮説の信頼レベルに基づいてもよい。
【0050】
さらに、一実施形態では、第1の文書の有効性を決定する際、潜在的問題に遭遇すると、警告が、生成されてもよい。例えば、警告として、第1および相補的文書における、予測された類似または同一値の不整合の識別を含んでもよい。加えて、別の実施形態では、第1の文書の明細行項目、ヘッダフィールド項目等の項目の補正および認証のうちの少なくとも1つを示す、ユーザ入力が、受信されてもよい。
【0051】
さらに、別の実施形態では、第1の文書の有効性を決定するステップは、第1の文書内の予測されるまたは実際の明細行項目、ヘッダフィールド項目等のための値を自動的に予想するステップを含んでもよい。また、第1の文書の有効性を決定するステップは、相補的文書からのテキスト情報およびビジネスルールのうちの少なくとも1つに基づいて、第1の文書内の予測されるまたは実際の明細行項目、ヘッダフィールド項目等のための値を自動的に補正することを含んでもよい。さらに別の実施形態では、第1の文書は、仮説およびビジネスルールを使用して、再構築されてもよく、その場合、有効性を決定するステップは、再構築された第1の文書を分析する。オプションとして、第1の文書の有効性を決定するステップは、第1の文書からのテキスト情報を全体的に認証するステップを含んでもよい。例えば、請求書の各明細行項目が、全体的に認証されてもよい。
【0052】
さらに別の実施形態では、第1の文書が有効であると決定すると、知識が、生成された仮説に基づいて、生成されてもよい。例えば、知識を生成するステップは、変換を使用するステップを含んでもよい。当技術分野において周知の任意の変換方法を使用可能である。種々の実施形態で使用され得る、いくつかの変換方法は、2007年5月23日出願のSchmidtlerらの米国特許出願公開第US2008-0097936A1号に記載されており、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0053】
一例示的実施形態では、抽出された第1の文書からのテキスト情報が、個人によって検証されると、または抽出されたテキスト情報が、完全整合の決定によって、コンピュータによって検証されると、検証結果が、エクストラクタに送信される。このように、エクストラクタは、検証された情報から「学習」し、検証された情報を将来的抽出および分析に適用可能である。
【0054】
さらに、操作112に示されるように、決定された有効性は、表示として出力される。出力表示は、テキスト、画像、音、または決定された有効性を表す任意の他の表示を含んでもよい。例えば、表示は、グラフ表示デバイス等に出力されてもよい。さらに、表示は、例えば、RAM、ROM、ハードドライブ等、当技術分野において周知の種類の記憶媒体に出力され、そこに格納されてもよい。このように、第1の文書は、ほとんどの場合、ヒトの介入を伴わずに、第1の文書内の有効ではないものの正確な知識をもって、シームレスに認証され得る。加えて、一実施形態では、決定された有効性を使用して、ビジネス取引を認証してもよい。
【0055】
加えて、第1の文書が有効であることの決定に失敗すると、または第1の文書が無効であることを決定すると、照合画面が、ユーザに出力されてもよい。例えば、第1の文書内の1つ以上のエラーが、相補的文書と解決不可能な整合をもたらす場合、エラーが、照合画面に提示され、そこで、ヒトオペレータ(例えば、顧客またはサプライヤの従業員)が、第1の文書の有効性の決定を支援するために、エラーを閲覧し、第1の文書を補正してもよい。ヒトによる操作は、メッセージ、例えば、電子メールメッセージを介して、解決不可能なエラーが、第1の文書とともに存在することを通知されてもよい。ヒトによる補正が行われた後、次いで、方法は、補正された第1の文書上で反復されてもよい。」

4 引用文献Bの記載事項
原査定で引用された引用文献Bには、以下の事項が記載されている。
「【0033】検算部35は、表演算部34で処理された演算値と、検算対象の数値データとを比較し、演算値と数値データとが一致しているか否かを判断する。」
「【0076】そこで、演算値と検算対象の数値データとが一致しない場合は(S21「No」)、演算値と数値データとが一致しない旨がユーザに報知される(S22)。具体的には、第6数値領域に配置される文字列の色属性を変更したり、文字列を文字修飾したりして、出力する。列「B」に配置されるすべての文字列の色属性を変更したり、文字列を文字修飾したりしてもよい。エラーメッセージを操作パネル部24に表示することにより、一致しない旨を報知することもできる。」

5 引用文献Cの記載事項
原査定で引用された引用文献Cには、以下の事項が記載されている。
「【0047】
図7を再度参照し、照合部215は、バッチごとに、所定の基準合計金額情報と、当該バッチに属する全対象帳票の記憶金額情報に基づく算出合計金額情報とを比較し、両者が一致しているか否かを判定する照合処理(プルーフ処理)を行う。照合部215は、基準合計金額情報と算出合計金額情報が一致している場合には照合OK信号を出力し、一致していない場合には照合NG信号を出力する。
【0048】
(略)しかしながら、1つのバッチ内には多数の帳票(例えば1000枚)が含まれていることも多く、多数の帳票の中から照合NG信号を導いた帳票をオペレータが何の手がかりも無く探し出して修正することには多大な手間を要する。
【0049】
検索条件設定部216は、このような手間を軽減すべく、照合NG信号を導いた帳票を検索するのに役立つ検索条件を設定する。つまり、検索条件設定部216は、或るバッチについて、算出合計金額情報を基準合計金額情報に一致させるために、記憶部250に記憶された当該バッチに属する全対象帳票の記憶金額情報の中から、修正が必要な記憶金額情報の候補(修正されるべき記憶金額情報の候補)を検索するための条件を設定する。ここで、当該候補を修正候補金額情報とも言い、設定される条件を検索条件とも言う。そして、検索処理部217は、検索条件設定部216にて設定された検索条件に従って、修正候補金額情報としての記憶金額情報を実際に検索する検索処理を行う。即ち例えば、検索処理では、記憶部250に記憶された当該バッチに属する全対象帳票の記憶金額情報の中から、設定された検索条件を満たす記憶金額情報を修正候補金額情報として検索する。ここで検索されたものは、そうでないものよりも、エントリ部214を用いた修正が必要となる可能性が高いと考えられる。故に、検索条件設定部216及び検索処理部217を用いることで、照合OKを導くための手間が軽減可能となる。検索条件の詳細については後述する。」
「【0076】
検索条件設定用画像600が表示されているとき、検索条件設定部216は、オペレータによる入力部240への入力操作内容に従って検索条件(修正候補金額情報を検索するための条件)を設定することができ、検索処理部217は、設定された検索条件を満たす金額情報を現バッチに属する対象帳票T[1]?T[m]の記憶金額情報の中から修正候補金額情報として検索することができる。そして、表示制御部218は、検索された修正候補金額情報としての記憶金額情報を表示部230に表示させることができる。」

6 引用文献Dの記載事項
原査定で引用された引用文献Dには、以下の事項が記載されている。
「【0013】
抽出部120は、既定の抽出規則に従って、文書画像から、抽出対象項目についての項目値を抽出する。例えば、抽出部120は、文書画像に抽出規則を適用することにより、抽出対象項目についての情報を自動的に抽出することができる。以下、抽出対象項目のことを、抽出対象又は単に項目と呼ぶことがある。また、抽出対象項目に関して抽出される情報を、抽出結果又は項目値と呼ぶことがある。抽出規則は、抽出対象項目の項目値を抽出する際に用いるルールであり、以下では抽出規則とも呼ぶことがある。この抽出規則は、画像処理装置100に記憶され、又は画像処理装置100がアクセス可能である。このように、抽出部120が用いるために予め用意されている抽出規則のことを、以下では既定の抽出規則と呼ぶ。なお、抽出部120が抽出する項目値は、文字認識により得られた文字列又は数値であってもよいし、文書画像上で項目値が記載されている領域を特定する情報であってもよいし、この領域内の画像であってもよい。検証部130は、抽出対象について項目値の抽出ができたかどうかを検証する。
【0014】
推定部140は、既定の抽出規則に従った場合に抽出対象項目についての項目値が抽出されなかったことに応じて、仮の抽出規則に従って、文書画像から、抽出対象項目についての項目値を抽出する。このように、推定部140は、既定の抽出規則を用いずに、項目値を推定する。以下では、推定部140が抽出した項目値のことを、抽出候補又は単に候補と呼ぶ。この抽出候補とは、項目値として正しい可能性がある情報である。また、推定部140が抽出した項目値のことを抽出結果と呼ぶこともある。もっとも、推定部140は、既定の抽出規則で項目値が抽出されなかったことに応じて仮の抽出規則に従って項目値を抽出すればいいのであって、既定の抽出規則で項目値が抽出された場合に仮の抽出規則に従って項目値を抽出してもよい。例えば、後述するように、既定の抽出規則で抽出された項目値が正しくないことを示すユーザ指示を修正部150が取得した場合、推定部140は、仮の抽出規則に従って項目値を抽出してもよい。
【0015】
修正部150は、抽出部120又は推定部140が抽出した項目値を提示する。例えば、修正部150は、抽出された項目値又は推定された候補をユーザに提示することができる。提示された項目値又は候補が正しくないとユーザが判断した場合、修正部150は、ユーザが手動で入力したユーザ指示に基づいて、抽出対象項目の項目値を修正することができる。更新部160は、推定部140が抽出した項目値が正しいことを示す確認結果に応じて、項目値を抽出できるように既定の抽出規則を更新する。例えば、更新部160は、既定の抽出規則を追加又は変更することができる。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると次のことがいえる。
ア 引用発明の「ユーザ」は、「例えば税理士及び会計士等の専門家であったり、直接会計処理を行う法人や個人等で」([0028])あることを考慮すると、引用発明の「請求書」は、本願発明1の「請求先企業が受け取った請求書」に相当し、さらに、引用発明の「請求書の画像データ」は、後述の相違点1を除き本願発明1の「請求書データ」に相当する。
そうすると、引用発明の「仕分要素抽出部」の「ユーザから請求書の画像データを受信する機能」と本願発明1の「データ取得部」の「請求先企業が受け取った請求書に対応しており、合計金額が記載された第1請求書データと、前記第1請求書データに記載された請求書番号に関連付けられた請求書番号を含み、複数の商品の明細が記載されているとともに前記複数の商品それぞれに関連付けて税抜金額と税額とが含まれている第2請求書データと、により構成される請求書データを取得する」機能とは、「請求先企業が受け取った請求書に対応する請求書データを取得する」機能である点で共通する。

イ 引用発明の「合計請求額」及び「複数の商品名の商品に対応する複数の税込商品金額」は、それぞれ本願発明1の「合計請求額」及び「前記複数の商品に対応する複数の商品金額」に相当し、本願発明1と引用発明は、それらが上記アで検討した「請求書データ」に含まれる点で共通する。さらに、引用発明の「抽出する」ことは、本願発明1の「特定する」ことに相当する。
そうすると、引用発明の「仕分要素抽出部」の「当該画像データから仕分要素として合計請求額と複数の商品名の商品に対応する複数の税込商品金額を抽出する機能」と、本願発明1の「金額特定部」の「前記第1請求書データに含まれる前記合計請求額と、前記第2請求書データに含まれている前記複数の商品に対応する複数の商品金額と、を特定する」機能とは、「前記請求書データに含まれる合計請求額と、複数の商品に対応する複数の商品金額と、を特定する」機能である点で共通する。

ウ 本願発明1の「前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額の合計額である第1合算額」、及び、「前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額と複数の前記税額との合算額である第2合算額」と、引用発明の「複数の税込商品金額の合計」は、いずれも「所定の合算額」である点で共通する。さらに、引用発明が「合計請求額=複数の税込商品金額の合計という関係式が成立するかを判別」することは、等式である関係式の左辺の「合計請求額」と右辺の「所定の合算額」である「複数の商品金額の合計」とを比較して両者が等しいか否かを判別することといえる。
そうすると、引用発明の「検算部」が「抽出された合計請求額と複数の商品金額が、合計請求額=複数の商品金額の合計という関係式が成立するかを判別」する機能は、本願発明1の「比較部」の「前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額の合計額である第1合算額、及び前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額と複数の前記税額との合算額である第2合算額のそれぞれと、前記合計請求額とを比較する」機能とは、「前記合計請求額と所定の合算額とを比較する」機能である点で共通する。

エ 引用発明の「検算結果が不整合であると判定された場合」は、合計請求額と複数の税込商品金額の合計が一致していない場合であるから、本願発明1の「前記比較部による比較結果が一致していない場合」に相当し、引用発明が、その場合に「不整合な仕分要素に警告表示を付する」ことは、本願発明1が「警告情報を出力する」ことに相当する。
そうすると、引用発明の「仕分要素出力部」が「検算結果が不整合であると判定された場合、不整合な仕分要素に警告表示を付する」機能と、本願発明1の「出力部」の「前記第1合算額と前記合計請求額との比較結果、及び前記第2合算額と前記合計請求額との比較結果の両方が一致していない場合に警告情報を出力する」機能とは、「前記比較部による比較結果が一致していない場合に警告情報を出力する」機能である点で共通する。

オ 引用発明の「会計処理装置」は、「請求書の画像データ」や該画像データから抽出された「合計請求額」及び「複数の税込商品金額」を処理する装置といえるから、本願発明1と同様の「データ処理装置」といえる。

上記アないしオより、本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。

<一致点>
請求先企業が受け取った請求書に対応する請求書データを取得するデータ取得部と、
前記請求書データに含まれる合計請求額と、複数の商品に対応する複数の商品金額と、を特定する金額特定部と、
前記合計請求額と所定の合算額とを比較する比較部と、
前記比較部による比較結果が一致していない場合に警告情報を出力する出力部と、
を有するデータ処理装置。

<相違点1>
本願発明1では、「データ取得部」は、「合計請求額が記載された第1請求書データと、前記第1請求書データに記載された請求書番号に関連付けられた請求書番号を含み、複数の商品の明細が記載されているとともに前記複数の商品それぞれに関連付けて税抜金額と税額とが含まれている第2請求書データと、により構成される請求書データ」を取得するのに対し、引用発明では、「仕分要素抽出部」が受信する「請求書の画像データ」が、「合計金額が記載された第1請求書データと、前記第1請求書データに記載された請求書番号に関連付けられた請求書番号を含み、複数の商品の明細が記載されているとともに前記複数の商品それぞれに関連付けて税抜金額と税額とが含まれている第2請求書データ」であることが特定されていない点。

<相違点2>
相違点1に関連して、「金額特定部」について、本願発明1では、「前記第1請求書データに含まれる前記合計請求額と、前記第2請求書データに含まれている前記複数の商品に対応する複数の商品金額と、を特定する」ものであるのに対し、引用発明では、この点が特定されていない点。

<相違点3>
相違点1,2に関連して、「比較部」について、本願発明1では、「前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額の合計額である第1合算額、及び前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額と複数の前記税額との合算額である第2合算額のそれぞれと、前記合計請求額とを比較する」ものであるのに対し、引用発明では、この点が特定されていない点。

<相違点4>
相違点1-3に関連して、「出力部」について、本願発明1では、「前記第1合算額と前記合計請求額との比較結果、及び前記第2合算額と前記合計請求額との比較結果の両方が一致していない場合に警告情報を出力する」のに対し、引用発明では、この点が特定されていない点。

(2)判断
相違点1-4は関連するため、まとめて検討する。
引用文献2に記載されているように、「合計請求額が記載されている請求書鑑用紙と、該請求書鑑用紙と同じ又は関連する請求書番号を含み、品名毎に金額、消費税、金額(税込)が記載される請求書明細用紙とからなる請求書」は周知事項であるから、引用発明において、周知の請求書についても対応できるようにすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
この場合、請求書の画像データは、「合計請求額が記載されている請求書鑑用紙の画像データ(すなわち、「第1請求書データ」)と、該請求書鑑用紙と同じ又は関連する請求書番号を含み、品名毎に金額、消費税、金額(税込)が記載される請求書明細用紙の画像データ(すなわち、「第2請求書データ」)とからなる請求書の画像データ」となり、さらに、引用発明の「仕分要素抽出部」(金額特定部)は、第1請求書データに含まれる合計請求額と、第2請求書データに含まれる複数の商品名の商品に対応する複数の商品金額を抽出するものとなること、すなわち、相違点1及び相違点2に係る本願発明1の構成となることは、明らかである。
しかしながら、本願発明1は、さらに、相違点3及び相違点4に係る構成、すなわち、「前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額の合計額である第1合算額、及び前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額と複数の前記税額との合算額である第2合算額のそれぞれと、前記合計請求額とを比較する比較部と、前記第1合算額と前記合計請求額との比較結果、及び前記第2合算額と前記合計請求額との比較結果の両方が一致していない場合に警告情報を出力する出力部」を備えるものであるところ、この構成は、引用文献2、3に記載されておらず、当業者にとって自明なものでもない。
そして、本願発明1は、当該構成により、本願明細書に記載された「鑑に税込の合計請求額が記載されており、明細に商品別の税抜金額が記載されているような場合に、いずれかが誤っていると比較部134が誤判定して、出力部が警告情報を出力してしまうことを防止できる。」(段落【0049】)という効果を奏するものである。

したがって、本願発明1は、引用発明と引用文献2、3の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2-10について
(1)本願発明2-8について
本願発明2-8は、本願発明1を減縮した発明であって、本願発明1の「前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額の合計額である第1合算額、及び前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額と複数の前記税額との合算額である第2合算額のそれぞれと、前記合計請求額とを比較する比較部と、前記第1合算額と前記合計請求額との比較結果、及び前記第2合算額と前記合計請求額との比較結果の両方が一致していない場合に警告情報を出力する出力部」という構成を備えるから、本願発明1についての理由により、引用発明と引用文献2、3の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本願発明9、10について
本願発明9は、本願発明1のカテゴリ表現を「データ処理方法」に変更した発明であり、本願発明10は、コンピュータに本願発明9の「データ処理方法」を実行させるための「プログラム」の発明であって、いずれも本願発明1の「前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額の合計額である第1合算額、及び前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額と複数の前記税額との合算額である第2合算額のそれぞれと、前記合計請求額とを比較する比較部と、前記第1合算額と前記合計請求額との比較結果、及び前記第2合算額と前記合計請求額との比較結果の両方が一致していない場合に警告情報を出力する出力部」という構成に対応する構成を備えるから、本願発明1についての理由と同様の理由により、引用発明と引用文献2、3の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第7 原査定の理由についての判断
原査定で引用した引用文献A(引用文献3)には、上記第5の3の記載からみて、「請求書をスキャンした画像から抽出した数値情報等のテキスト情報と、相補的文書(注文書)からの数値情報等のテキスト情報と、明細行項目の総額は数量を単価で乗じたものに等しいというルール等の所定のビジネスルールとを使用して、請求書の有効性を決定するシステム」についての発明が記載されている。
一方、令和3年9月10日にされた手続補正による補正により、補正後の請求項1-8は、「前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額の合計額である第1合算額、及び前記複数の商品に対応する複数の前記税抜金額と複数の前記税額との合算額である第2合算額のそれぞれと、前記合計請求額とを比較する比較部と、前記第1合算額と前記合計請求額との比較結果、及び前記第2合算額と前記合計請求額との比較結果の両方が一致していない場合に警告情報を出力する出力部」という技術的事項を有し、また、請求項9,10は当該技術的事項に対応する技術的事項を有するものとなった。
そして、当該技術的事項は、原査定における引用文献A-Dには記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1-10は、引用文献Aに記載された発明でなく、かつ、当業者であっても、原査定における引用文献A-Dに基づいて容易に発明をすることができたものでもない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-10-27 
出願番号 特願2020-542172(P2020-542172)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
P 1 8・ 113- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 久宗 義明  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 後藤 嘉宏
中野 浩昌
登録日 2021-11-19 
登録番号 特許第6980927号(P6980927)
発明の名称 データ処理装置、データ処理方法及びプログラム  
代理人 泉 通博  

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