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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03B |
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管理番号 | 1379371 |
審判番号 | 不服2020-14150 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-10-08 |
確定日 | 2021-10-27 |
事件の表示 | 特願2019-504039「カラーホイール装置及びプロジェクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月 1日国際公開、WO2018/018974、令和 1年 9月 5日国内公表、特表2019-525244〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2017年(平成29年)4月28日を国際出願日とする外国語特許出願(パリ条約による優先権主張2016年7月27日、中国)であって、その出願後の手続の経緯の概略は、次のとおりである。 平成31年 2月 7日 :翻訳文の提出 令和 元年12月13日付け:拒絶理由通知書 令和 2年 5月18日 :手続補正書、意見書の提出 令和 2年 5月28日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (原査定の謄本の送達日:令和2年 6月 9日) 令和 2年10月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和2年10月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年10月8日に提出された手続補正書による補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 補正の内容 令和2年10月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正をするものである。本件補正前(令和2年5月18日にされた手続補正後をいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1及び本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。下線は補正箇所を示す。 (1)本件補正前 「【請求項1】 カラーホイール装置であって、 カラーホイールキャビティと、熱交換器と、空気動力装置とを備え、 前記カラーホイールキャビティは、カラーホイールモジュールを収容し、前記カラーホイールキャビティに吸気口及び排気口が設けられ、前記カラーホイールモジュールには、励起光によって照射されて被励起光を生成するための波長変換層が担持されており、 前記熱交換器は、熱交換コアを備え、前記熱交換コアには、カラーホイールキャビティ内の気体が通過する第1通路が設けられ、前記カラーホイールキャビティの排気口が前記第1通路の熱交換入口に連通して、前記第1通路の熱交換出口が前記カラーホイールキャビティの吸気口に連通することにより、閉止された循環風路が形成され、前記第1通路は、間隔を開けて多層に設けられ、隣接する2つの層の前記第1通路の間の空間は、外気が通過するための第2通路を形成し、前記第1通路と前記第2通路は、共通の通路壁を有し、前記第2通路の空気入口及び空気出口は、前記熱交換器における互いに対向する2つの表面にそれぞれ開設され、 前記空気動力装置は、前記循環風路内の気体の流動を駆動することを特徴とするカラーホイール装置。」 (2)本件補正後 「【請求項1】 カラーホイール装置であって、 カラーホイールキャビティと、熱交換器と、空気動力装置とを備え、 前記カラーホイールキャビティは、カラーホイールモジュールを収容し、前記カラーホイールキャビティに吸気口及び排気口が設けられ、前記カラーホイールモジュールには、励起光によって照射されて被励起光を生成するための波長変換層が担持されており、 前記熱交換器は、熱交換コアを備え、前記熱交換コアには、カラーホイールキャビティ内の気体が通過する第1通路が設けられ、前記カラーホイールキャビティの排気口が前記第1通路の熱交換入口に連通して、前記第1通路の熱交換出口が前記カラーホイールキャビティの吸気口に連通することにより、閉止された循環風路が形成され、前記第1通路は、間隔を開けて多層に設けられ、隣接する2つの層の前記第1通路の間の空間は、外気が通過するための第2通路を形成し、前記第1通路と前記第2通路は、共通の通路壁を有し、前記第2通路の空気入口及び空気出口は、前記熱交換器における互いに対向する2つの表面にそれぞれ開設され、 前記空気動力装置は、前記循環風路内の気体の流動を駆動し、 前記第1通路の熱交換出口は、接続通路を介して前記カラーホイールキャビティの吸気口と連通し、 前記接続通路の高さは、前記第2通路の高さの1/3よりも小さいことを特徴とするカラーホイール装置。」 2 本件補正の適否 (1)本件補正の目的 本件補正による特許請求の範囲の補正のうち、請求項1についての補正は、「前記第1通路の熱交換出口が前記カラーホイールキャビティの吸気口に連通する」形態について、「前記第1通路の熱交換出口は、接続通路を介して前記カラーホイールキャビティの吸気口と連通」することを限定するとともに、「前記接続通路の高さ」と「前記第2通路の高さ」の関係について、「前記接続通路の高さは、前記第2通路の高さの1/3よりも小さい」ことを限定するものである。そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、同一である。 したがって、特許請求の範囲を補正する本件補正のうちの請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)独立特許要件について 本件補正による請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討を行う。 ア 本件補正発明 本件補正発明は、前記1(2)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 イ 引用文献1に記載された発明の認定(ア)引用文献1の記載事項 本願の優先日前に発行された米国特許出願公開第2015/0029472号明細書(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。括弧内に当審による日本語訳を示す。下線は、当審が付したものであり、後述の引用発明の認定に直接用いるところに付してある。 「[0022] FIG. 1 is a top view of an embodiment of an optical device utilized in a laser projector of the invention; and」 (図1は、本発明のレーザプロジェクタに使用される光学装置の一実施形態の上面図である。) 「[0023] FIG. 2 is an oblique view of the embodiment of the optical device utilized in the laser projector of the invention.」 (図2は、本発明のレーザプロジェクタに使用される光学装置の一実施形態の斜視図である。) 「DESCRIPTION OF THE EMBODIMENTS」 (実施例の説明) 「[0024] Reference will now be made in detail to the present embodiments of the invention, examples of which are illustrated in the accompanying drawings. Wherever possible, the same reference numbers are used in the drawings and the description to refer to the same or like parts.」 (ここで、本発明の実施形態について詳細に述べられ、その例が添付の図面に図示されている。可能な限り、同じ参照符号が図面において使用され、同一又は類似の部分を参照する。) 「[0025] In order to solve the problem of phosphor wheel being damaged because of the raising temperature due to the high energy carried by the laser beam, a fan is widely used for cooling the phosphor wheel with environment air. However, the cooling efficiency by using only the fan is pretty poor. Therefore, the present invention provides a thermal exchanger and a circulatory air channel for cooling the phosphor wheel with a cold air colder than the environment air thereby improving the heat dissipating efficiency of the phosphor wheel.」 (レーザービームによって運ばれる高エネルギーによる温度上昇のために蛍光体ホイールが損傷するという問題を解決するために、ファンが、環境空気で蛍光体ホイールを冷却するために広く使用されている。しかしながら、ファンのみを使用することによる冷却効率はかなり悪い。したがって、本発明は、周囲空気よりも冷たい冷気で蛍光体ホイールを冷却するための熱交換器及び循環空気通路を提供し、それによって蛍光体ホイールの放熱効率を改善する。) 「[0026] FIG. 1 is a top view of an embodiment of an optical device utilized in a laser projector of the invention. FIG. 2 is an oblique view of the embodiment of the optical device utilized in the laser projector of the invention. The optical device 100 is utilized in a laser projector. The optical device 100 includes a circulatory air channel 110, a phosphor wheel 120 disposed in the circulatory air channel 110, a thermal exchanger 130 partially disposed in the circulatory air channel 110, and an air guiding component 140 disposed in the circulatory air channel 110.」 (図1は、本発明のレーザプロジェクタに利用される光学装置の一実施形態の上面図である。図2は、本発明のレーザプロジェクタに利用される光学装置の一実施形態の斜視図である。光学装置100は、レーザプロジェクタに利用される。光学装置100は、循環空気通路110と、循環空気通路110に配置された蛍光体ホイール120と、循環空気通路110に部分的に配置された熱交換器130と、循環空気通路110に配置された空気案内部材140とを備える。) 「[0027] In order to better perform the features of the present invention, the circulatory air channel 110 is illustrated with broken line in FIG. 1 and FIG. 2.」 (本発明の特徴をより良好に実施するために、循環空気通路110は、図1及び図2の破線で示されている。) 「[0028] The circulatory air channel 110 provides a channel for allowing an air flowing within circularly, and the air is basically recyclable utilized in the circulatory air channel 110. The thermal exchanger 130 provides a cold air, which has a temperature lower than the environment temperature, flowing in the circulatory air channel 110. The environment temperature means a room temperature outside of the laser projector, or the temperature in laser projector but not within the circulatory air channel 110. The temperature of the cold air provided by the thermal exchanger 130 must be colder than both above environment temperatures.」 (循環空気通路110は、空気を循環させる流路を提供し、空気は、基本的に循環空気通路110内で利用されて再利用可能である。熱交換器130は、環境温度より低い温度であり、循環空気通路110を流れる冷気を供給する。環境温度は、レーザプロジェクタの外部の室温、又は、レーザプロジェクタ内の温度であるが循環空気通路110内の温度ではない温度を意味する。熱交換器130によって提供される冷気の温度は、上記の両方の環境温度よりも低くなければならない。) 「[0029] The air guiding component 140 is disposed in the circulatory air channel 110. The air guiding component 140 is disposed between the thermal exchanger 130 and the phosphor wheel 120 for guiding the cold air provided by the thermal exchanger 130 to the phosphor wheel 120 for cooling the phosphor wheel 120. The air guiding component 140 can be a blower or a fan. The temperature of the cold air provided by the thermal exchanger 130 is lower than the temperature of the environment temperature. Such that, comparing to conventional cooling method by only using the environment air, the present invention has higher cooling efficiency by using the cold air provided by the thermal exchanger 130.」 (空気案内部材140は、循環空気通路110内に配置されている。熱交換器130によって提供された冷気を蛍光体ホイール120に導き、蛍光体ホイール120を冷却するために、空気案内要素140は、熱交換器130と蛍光ホイール120の間に配置される。空気案内部材140は、送風機又はファンであってもよい。熱交換器130によって提供される冷気の温度は、環境温度の温度よりも低い。このように、環境空気のみを使用する従来の冷却方法と比較して、本発明は、熱交換器130によって提供される冷気を使用することによって、より高い冷却効率を有する。) 「[0030] The cold air provided by the thermal exchanger 130 is guided via the air guiding component 140 toward the phosphor wheel 120 for cooling the phosphor wheel 120 by thermal exchanging process. The cold air is heated after being thermal exchanged with the phosphor wheel 120. The heated air flows in the circulatory air channel 110 along a predetermined air flow direction. The heated air once again passes the thermal exchanger 130 for being cooled and becomes the cold air. The cold air cooled by the thermal exchanger 130 is once again guided to the phosphor wheel 120 for cooling the phosphor wheel 120 via the air guiding component 140. The air is basically recyclable utilized in the circulatory air channel 110.」 (熱交換器130によって提供される冷気は、熱交換プロセスによって蛍光体ホイール120を冷却するために、空気案内部材140を介して蛍光体ホイール120に向かって案内される。この冷気は、蛍光体ホイール120と熱交換して熱くなる。熱くなった空気は、所定の空気流れ方向に沿って循環空気通路110内を流れる。熱くなった空気は、再び熱交換器130を通過して冷却され、冷気となる。熱交換器130で冷却された冷気は、蛍光体ホイール120を冷却するため、空気案内部材140を介して再び蛍光体ホイール120に導かれる。空気は、基本的に循環空気通路110内で利用されて再利用可能である。) 「[0031] The circulatory air channel 110 can be substantially regarded as a closed chamber, so that the air is utilized repeatedly in the circulatory air channel 110. The air circularly flowing in the circulatory air channel 110 can be cooled by the thermal exchanger 130 for cooling the phosphor wheel 120. Furthermore, the air circularly flowing in the circulatory air channel 110 is cleaner than the air outside of the leaser projector, which may include dust, soot or other pollutions. The problem of poor cooling efficiency and the dust pollution carried by only using the fan inducing the outside air raised in prior art can be prevented in the present disclosure.」 (循環空気通路110は、実質的に密閉室とみなすことができるので、循環空気通路110において空気が繰り返し利用される。蛍光体ホイール120を冷却するため、循環空気通路110内を流れる空気循環は、熱交換器130によって冷却することができる。さらに、レーザプロジェクタの外部の空気は、埃、煤又は他の汚染物質を含み得るところ、循環空気チャネル110内を循環して流れる空気は、レーザプロジェクタの外部の空気よりも清浄である。冷却効率が悪いという問題及び外気を誘導するファンを使用するだけでは運び込まれてしまう埃汚染の問題という、従来技術で挙げられた問題は、本開示においては、防止することができる。) 「[0032] The thermal exchanger 130 can be a thermoelectric cooling chip. The thermal exchanger 130 includes a cold side 132 and a hot side 134. The cold side 132 includes a plurality of cold side fins. The hot side 134 includes a plurality of hot side heat dissipating fins. The cold side 132 is located in the circulatory air channel 110. The cold side 132 and the phosphor 120 are disposed at opposite sides of the air guiding component 140. The cold air provided by the cold side 132 of the thermal exchanger 130 is guided by the air guising component 140 toward the phosphor wheel 120 for cooling the phosphor wheel 120. The hot side 134 is partially exposed of the circulatory air channel 110. The hot side 134 is utilized for heat dissipating by thermal exchanging with the air outside of the circulatory air channel 110.」 (熱交換器130は、熱電冷却チップとすることができる。熱交換器130は、低温側132及び高温側134を含む。低温側132は、複数の冷却側フィンを含む。高温側134は、複数の高温側放熱フィンを含む。低温側132は、循環空気通路110内に位置する。低温側132及び蛍光体120は、空気案内部材140の両側に配置される。熱交換器130の低温側132によって提供される冷気は、蛍光体ホイール120を冷却するために、空気案内部材140によって蛍光体ホイール120に向かって案内される。高温側134は、循環空気通路110から部分的に露出している。高温側134は、循環空気通路110の外側の空気との熱交換による放熱に利用される。) 「[0033] The optical device 100 further includes a cooling fan 150 for cooling the hot side 134 of the thermal exchanger 130. The cooling fan 150 is disposed outside of the circulatory air channel 110. The cooling fan 150 is disposed adjacent to the hot side 134 for dissipating heat from the hot side 134 thereby improving heat dissipating efficiency of the hot side 134.」 (光学装置100は、熱交換器130の高温側134を冷却するための冷却ファン150をさらに含む。冷却ファン150は、循環空気通路110の外側に配置されている。冷却ファン150は、高温側134から熱を放散するために高温側134に隣接して配置され、それによって高温側134の放熱効率を改善する。) 「[0034] The optical device 100 further includes a laser light source 160. The laser light source 160 provides a laser beam emitting to the phosphor wheel 120. In order to make the laser beam entering and exiting the circulatory air channel 110, the circulatory air channel 110 further includes a first light passage 112 and a second light passage 114. The first light passage 112 and the second light passage 114 are disposed corresponding to a light receiving side and a light emitting side of the phosphor wheel 120 respectively. The first light passage 112 is disposed between the laser light source 160 and the phosphor wheel 120. The first light passage 112 and the second light passage 114 are made of transparent material, such as a glass, so that the laser beam may pass through the circulatory air channel 110, and the air may be kept in within the circulatory air channel 110. The first light passage 112 and the second light passage 114 can be plane glasses.」 (光学装置100は、レーザ光源160をさらに含む。レーザ光源160は、蛍光ホイール120に照射するレーザビームを提供する。レーザビームを循環空気通路110に出入りさせるために、循環空気通路110は、第1の光路112及び第2の光路114をさらに含む。第1の光路112及び第2の光路114は、それぞれ蛍光体ホイール120の受光側及び発光側に対応して配置されている。第1光路112は、レーザ光源160と蛍光体ホイール120の間に配置される。第1の光通路112及び第2の光通路114は、レーザビームが循環空気通路110を通過し、空気が循環空気通路110内に保持されるように、ガラスなどの透明な材料で作られている。第1の光通路112及び第2の光通路114は、平面ガラスとすることができる。) 「[0035] The laser beam with a first wavelength passes the first light passage 112 and emits onto the phosphor wheel 120. The laser beam with the first wavelength is converted by the phosphor wheel 120 and becomes a beam with a second wavelength. The beam with the second wavelength emits through the second light passage 114 and enters an image processing unit for imaging. In some embodiments, the second light passage 114 can be plane glass or lens for further adjusting light path.」 (第1の波長のレーザビームは、第1光路112を通って蛍光体ホイール120に照射される。第1の波長のレーザビームは、蛍光体ホイール120によって変換され、第2の波長のビームとなる。第2の波長のビームは、第2の光路114を通って出射し、画像形成のために画像処理ユニットに入る。いくつかの実施形態では、第2の光通路114は、光路をさらに調整するための平面ガラス又はレンズであり得る。) 「[0036] In order to further improve the cooling efficiency to the phosphor wheel 120, the optical device 100 may optionally include at least one cooling fins set 170. A part of the cooling fins set 170 is disposed in the circulatory air channel 110, and another art of the cooling fins set 170 is exposed of the circulatory air channel 110. The air passed the phosphor wheel 120 is heated, and the heated air may heat exchange with the cooling fins set 170 thereby dissipating a part of heat carried by the heated air.」 (蛍光体ホイール120に対する冷却効率をさらに向上させるために、光学装置100は、任意選択で、少なくとも1つの冷却フィンセット170を含むことができる。冷却フィンセット170の一部は、循環空気通路110内に配置され、冷却フィンセット170の別の部分は、循環空気通路110から露出される。蛍光体ホイール120を通過した空気は熱くなり、熱くなった空気は、冷却フィンセット170と熱交換し、それによって、熱くなった空気によって運ばれる熱の一部を放散することができる。) 「[0037] Although only one set of cooling fins set 170 and one thermal exchanger 130 are discussed in this embodiment, the number of the cooling fins set 170 and the thermal exchanger 130 is not limited and can be plural in other embodiments. A person having ordinary skill in the art may design the arrangement of the cooling fins set(s) 170 according to actual requirements.」 (本実施形態では、1組の冷却フィンセット170及び1つの熱交換器130のみが議論されているが、冷却フィンセット170及び熱交換器130の数は限定されず、他の実施形態では複数であり得る。当業者は、実際の要件に従って冷却フィンセット170の配置を設計することができる。) 「[0038] The shape of the circulatory air channel 110 is substantially a rectangle. The cold side 132 of the thermal exchanger 130, the air guiding component 140 and the phosphor wheel 120 are basically placed at the same side of the circulatory air channel 110 in order to make the air flow smoothly.」 (循環空気通路110の形状は、略矩形である。熱交換器130の低温側132、空気案内部材140及び蛍光体ホイール120は、空気を円滑に流すために、基本的に循環空気通路110の同じ側に配置される。) 「[0039] The present disclosure uses the air cooled by the thermal exchanger for cooling the phosphor wheel thereby enhancing the cooling efficiency to the phosphor wheel. Furthermore, the air circularly flowing in the circulatory air channel is cleaner than the air outside of the leaser projector, the problem of the dust pollution carried by the outside air can be prevented.」 (本開示は、蛍光体ホイールを冷却するたに熱交換器によって冷却された空気を使用し、これにより、蛍光体ホイールに対する冷却効率を向上させる。また、循環空気通路内を循環して流れる空気は、レーザプロジェクタの外部にある空気よりも清浄であり、外気によって運ばれる塵汚染の問題を防止することができる。) 「[0040] Although the present invention has described in considerable detail with reference to certain embodiments thereof, other embodiments are possible. Therefore, the spirit and scope of the appended claims should not be limited to the description of the embodiments contained herein.」 (本発明をその特定の実施形態を参照してかなり詳細に説明したが、他の実施形態も可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲は、本明細書に含まれる実施形態の記載に限定されるべきではない。) Fig. 1 「 」 Fig. 2 「 」 (イ) 図面から読み取れる事項の認定 「蛍光体ホイール120」を回転駆動する装置が必要であるから、引用文献1の光学装置100も「蛍光体ホイール120」の回転駆動装置を備えていることは当然のことである。そして、引用文献1の図1と図2のうちの次の部分に注目すると、次の事項を読み取ることができる。 図1の部分図 「 」 図2の部分図 「 」 [図面から読み取れる事項] 「循環空気通路110の、蛍光体ホイール120及び蛍光体ホイール120の回転駆動装置が配置された部分は、空気案内部材140から空気が送られてくる入口と入口の対角に位置する出口を有すること。」 (ウ) 引用発明の認定 引用文献1の前記(ア)の記載及び(イ)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 <引用発明> 「レーザプロジェクタに利用される光学装置100であって[0026]、 循環空気通路110と、循環空気通路110に配置された蛍光体ホイール120と、循環空気通路110に部分的に配置された熱交換器130と、循環空気通路110に配置された空気案内部材140とを備え[0026]、 空気案内部材140は、循環空気通路110内に配置されており、熱交換器130によって提供された冷気を蛍光体ホイール120に導き、蛍光体ホイール120を冷却するために、空気案内要素140は、熱交換器130と蛍光ホイール120の間に配置され[0029]、 空気案内部材140は、送風機又はファンであり[0029]、 循環空気通路110の、蛍光体ホイール120及び蛍光体ホイール120の回転駆動装置が配置された部分は、空気案内部材140から空気が送られてくる入口と入口の対角に位置する出口を有し[図面から読み取れる事項]、 熱交換器130は、熱電冷却チップであり[0032]、 光学装置100は、レーザ光源160をさらに含み[0034]、 第1の波長のレーザビームは、第1光路112を通って蛍光体ホイール120に照射され、第1の波長のレーザビームは、蛍光体ホイール120によって変換され、第2の波長のビームとなり[0035]、 循環空気通路110は、空気を循環させる流路を提供し[0028]、 循環空気通路110は、実質的に密閉室とみなすことができ[0031]、 熱交換器130によって提供される冷気は、熱交換プロセスによって蛍光体ホイール120を冷却するために、空気案内部材140を介して蛍光体ホイール120に向かって案内され、この冷気は、蛍光体ホイール120と熱交換して熱くなり、熱くなった空気は、所定の空気流れ方向に沿って循環空気通路110内を流れ、熱くなった空気は、再び熱交換器130を通過して冷却され、冷気となり、熱交換器130で冷却された冷気は、蛍光体ホイール120を冷却するため、空気案内部材140を介して再び蛍光体ホイール120に導かれるものである[0030]、 光学装置100。」 ウ 周知技術の認定 (ア) 引用文献2に記載された技術事項 本願の優先日前に発行された特開2008-175513号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、平板状の仕切プレートと波形状のフィンとを交互に積層して構成されるプレートフィン型熱交換器およびそれを用いた温風暖房機に関するものである。 【背景技術】 【0002】 仕切プレートと波形状フィン(コルゲートフィン)とを交互に積層して、仕切プレート間に互いに直交する2つの流体流路を交互に形成し、この2つの流体流路に流通される異なる2流体を互いに熱交換させる直交流方式のプレートフィン型熱交換器は、換気装置や空気調和装置等の空調分野、あるいは化学プラント、発電プラント等の各種工業用プラントの分野において、仕切プレートを隔てて流れる2種の流体を互いに熱交換させる熱交換器として広範囲に利用されている。かかるプレートフィン型熱交換器としては、従来から様々な構成のものが提案されている。 【0003】 その1例として、特許文献1には、一対の伝熱板(仕切プレート)と、これらの伝熱板間に接合され、その間隔を規制し、かつ流体の流れ方向に沿って延びる間隔規制部材とを含む単位体を、交互に90度ずつ向きを変えて積層することにより、熱交換エレメントを構成したものが示されている。 また、特許文献2および3には、2つの流体流路を仕切る板状の仕切プレートとコルゲーションフィンとを交互に積層するとともに、各流体流路の両側に仕切プレートの間隔を保ち、流路を密封するためのスペーサーバーを配置し、これらをロー付け接合して構成されるプレートフィン型熱交換器が示されている。 さらに、特許文献4には、樹脂製の仕切板と、表面および裏面の向かい合う両端部に互いに直交する方向の遮蔽リブを有するとともに、その遮蔽リブ間に所定間隔で複数平行に設けられた間隔リブを有する樹脂製の熱交換板とを交互に複数枚積層して構成される熱交換素子が示されている。 【0004】 【特許文献1】特開平11-201666号公報 【特許文献2】特開平7-167579号公報 【特許文献3】特開2001-349679号公報 【特許文献4】特開2003-287387号公報」 「【0020】 上記排熱回収器(熱交換器)9には、直交する2つの流体流路に燃焼排ガスおよび空気の2つの流体を流通させ、互いに熱交換させる直交流方式のプレートフィン型熱交換器が採用される。燃焼排ガスは、参百数十℃ の温度を有しており、その排熱により室温の低温空気を加熱し、送風機5の吸入側に空気ダクト10を介して吸入させ、排熱を回収する構成とされている。 排熱回収器9を構成するプレートフィン型熱交換器は、図2に示されるように、平板状の仕切プレート11と、波形状のフィン12とを交互に積層して、仕切プレート11間に互いに直交する空気側流路13と排ガス側流路14とを交互に形成し、空気と燃焼排ガスとを互いに熱交換させ、燃焼排ガス側から空気側に排熱を回収するものである。 【0021】 仕切プレート11は、図3に示されるように、幅方向寸法L1と長さ方向寸法L2との比が、1:1とされた正方形状のステンレス製平板であり、その対向する平行な2 辺の端部を各々表面側に折り曲げて形成される第1フランジ11A,11Aと、他の対向する平行な2 辺の端部を各々裏面側に折り曲げて形成される第2フランジ11B,11Bとを有する。第1フランジ11Aは、第2フランジ11Bよりも高さが高くされており、後述のように、仕切プレート11を、表裏を逆にしてその間に波形状フィン12を配設して積層したとき、端部同士がオーバーラップする高さを有している。 【0022】 波形状のフィン12は、ステンレス製の薄板から成形されるもので、図4に示されるように、幅方向寸法M1と長さ方向寸法M2との比が1:1の正方形状であり、仕切プレート11の第1フランジ11A,11A間および第2フランジ11B,11B間にそれぞれ位置決めされて配設され、その波形頂部12Aがそれぞれ仕切プレート11にロー付け接合されるものである。この波形状フィン12により、仕切プレート11間に、直交する空気側流路13と排ガス側流路14とが、それぞれ複数の流路13Aおよび14Aに仕切られて分離構成される。 【0023】 なお、波形状フィン12の波ピッチおよびその高さは、性能および用途に応じて任意に設定することが可能であり、頂部12Aには、仕切プレート11に対して確実にロー付けされるように、一定幅の面を設けることが望ましい。 上記排熱回収器9は、図2に示されるように、上記の仕切プレート11と波形状フィン12とを、ロー材を介装して必要な容量分だけ順次積層し、炉中で仕切プレート11と波形状フィン12の頂部間および上下の仕切プレート11の第1フランジ11A,11A間をロー付けすることにより、コア部15が構成することができる。 【0024】 仕切プレート11と波形状フィン12との積層は、例えば、第1フランジ11A,11Aを下向きにして置いた仕切プレート11の裏面側の第2フランジ11B,11B間にロー材を介装して波形状フィン12を位置決めして配設し、その上にロー材を介装して仕切プレート11を、第1フランジ11A,11Aを上向きにして、すなわち表裏を逆にして積層することにより、2枚の仕切プレート11間に、波形状フィン12で仕切られた複数の流路13Aから構成される空気側流路13を形成することができる。 【0025】 さらに、上記仕切プレート11の上向きの第1フランジ11A,11A間に、ロー材を介装して波形状フィン12を、90度向きを変えて位置決め配設し、その上にロー材を介装して仕切プレート11を、第1フランジ11A,11Aが下向きとなるように表裏を逆にして積層することにより、2枚の仕切プレート11間に波形状フィン12で仕切られた複数の流路14Aから構成される排ガス側流路14を形成することができる。排ガス側流路14は、表裏を逆にして交互に積層される上下の仕切プレート11の第1フランジ11A,11Aの端部同士がオーバーラップされ、このオーバーラップ部分が互いにロー付け接合されることにより、幅方向の両端部にそれぞれ流路14Aを区画形成することができる。このため、流路14Aの数を増やし、有効伝熱面積を増大させることができる。 【0026】 上記のように、空気側流路13と排ガス側流路14とが交互に形成されるように、仕切プレート11と波形状フィン12とを必要な段数だけ積層することにより、所定の容量を有する排熱回収器9としてのプレートフィン型熱交換器を製造することができる。このプレートフィン型熱交換器を、図1に示すように、燃焼排ガス流路8と空気ダクト10との直交部において、排ガス側流路14を燃焼排ガス流路8に連通させ、空気側流路13を空気ダクト10に連通させて設置することにより、上記した排熱回収器9として機能させることができる。」 「【0029】 また、排熱回収器9(プレートフィン型熱交換器)は、対向する平行な2辺の端部をそれぞれ表面側と裏面側とに折り曲げて第1フランジ11Aおよび第2フランジ11Bを形成した仕切プレート11を、表裏を逆にして交互に積層し、その仕切プレート11間にそれぞれ波形状フィン12を、第1フランジ11Aおよび第2フランジ11Bにより位置決めして互いに直交する方向に交互に配設する。この波形状フィン12 の波形頂部12Aをそれぞれ仕切プレート11にロー付け接合することによって、波形状フィン12によりそれぞれ複数の流路13A,14Aに仕切られた互いに直交する空気側流路13および排ガス側流路14を有する構成の熱交換器とされている。この熱交換器により、排ガス側流路14に流通される高温の燃焼排ガスから、空気側流路13に流通される低温空気側により排熱を回収することができ、これを燃焼排ガスから空気への排熱回収器として有効利用することにより、温風暖房機1 の熱効率向上に寄与させることができる。 【0030】 しかして、上記排熱回収器9(プレートフィン型熱交換器)は、コア部15を仕切プレート11とフィン12との2種の部品のみにより構成することができるため、構成部品数を最少化することができる。また、それによって製造工程における部品管理の簡素化および組み立て工程の簡易化を図ることができる。従って、プレートフィン型熱交換器の製造コストを大幅に低減することができる。 また、空気側流路13および排ガス側流路14が、それぞれ波形状フィン12により複数の分離流路13A,14Aに仕切られているために十分な伝熱面積を有し、かつ仕切プレート11と波形状フィン12間がロー付けされているために伝熱抵抗が小さく、熱交換効率のよい、構成が簡素で組み立てが容易な排熱回収器9(プレートフィン型熱交換器)とすることができる。」 【図2】 「 」 【図3】 「 」 【図4】 「 」 (イ) 引用文献3に記載された技術事項 a 当審が新たに引用する、本願の優先日前に発行された特開平11-201666号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。なお、引用文献3は、引用文献2の段落【0003】及び【0004】で引用されたものである。 「【従来の技術】従来、上記の熱交換エレメントとして、図8に示すように、平板状の伝熱板30と、紙製の断面波形をなすいわゆるコルゲート板31を互いに接着しながら交互に積層した熱交換エレメント32がある。一方、図9に示すように、紙製の伝熱板33と、この伝熱板33の表面に一の方向に沿って平行に配置した複数の樹脂製の中実リブ34を一体化した単位体35を、交互に90°ずつ向きを代えて接着しながら積層した熱交換エレメント36がある。」 【図8】 「 」 【図9】 「 」 (ウ) 引用文献4に記載された技術事項 当審が新たに引用する、本願の優先日前に発行された特開平7-167579号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の記載がある。なお、引用文献4は、引用文献2の段落【0003】及び【0004】で引用されたものである。 「【0003】この熱交換器の心臓部である熱交換コア部は図5に示す如く、低温流体通路と高温流体通路を仕切る板状のチューブプレート1と、伝熱促進用の角型板からなるフィン2が交互に積層され、また、チューブプレート1,1の間隔を保ち、流路を密封するためのスペーサーバー3が両側面に並べられた基本構造から構成されている。低温流体と高温流体のコア部内の流れ方により種々の構成があるが、図5のAはが直交流するクロスフロータイプであり、図5のBは両流体が向流するカウンターフロータイプである。また、各流体の出入口としてチューブプレート1に比べて板厚が厚く剛性の高いヘッダータンクがコア部の所要端面に配置される。」 図5のA 「 」 図5のB 「 」 (エ) 周知技術の認定 前記(ア)から(ウ)において引用文献2?4の記載事項を示して例示したように、熱交換器として次の熱交換器は、技術常識ともいうべき周知技術である。 <周知技術> 「 熱交換コアを備える熱交換器であって、 熱交換コアは、 第1の流体が流れる第1通路と、 第2の流体が流れ、第1通路と直交する第2の流路と、 を備えたものであり、 前記第1通路は、間隔を空けて多層に設けられ、 第2の通路は、隣接する2つの層の前記第1通路の間に形成され、 前記第1通路と前記第2通路は、共通の通路壁を有し、 前記第1通路の入口及び出口は、前記熱交換器における互いに対向する2つの表面にそれぞれ開設され、 前記第2通路の入口及び出口は、前記熱交換器における互いに対向する2つの表面にそれぞれ開設されたものである、 熱交換器。」 エ 対比 (ア) 対比分析 本件補正後の請求項1の記載の分節の順に沿って、本件補正発明と引用発明を対比する。 a 引用発明における「蛍光体ホイール120」は、本件補正発明における「カラーホイール」に相当する。したがって、「カラーホイール装置」の発明である本件補正発明と、「蛍光体ホイール120」を備える「レーザプロジェクタに利用される光学装置100」の発明である引用発明とは、「カラーホイール装置」の発明である点で一致する。 b 引用発明における「熱交換器130」と本件補正発明における「熱交換器」は、熱交換器である点で共通する。引用発明における「送風機又はファン」である「空気案内部材140」は、本件補正発明における「空気動力装置」に相当する。引用発明における「循環空気通路110の、蛍光体ホイール120と蛍光体ホイール120の回転駆動装置が配置された部分」は、本件補正発明における「カラーホイールキャビティ」に相当する。したがって、本件補正発明と引用発明は「カラーホイールキャビティと、熱交換器と、空気動力装置とを備え」る点で一致する。 c(a) 引用発明における、「蛍光体ホイール120と蛍光体ホイール120の回転駆動装置」は、本件補正発明における「カラーホイールモジュール」に相当する。引用発明における、「循環空気通路110の、蛍光体ホイール120と蛍光体ホイール120の回転駆動装置が配置された部分」が「蛍光体ホイール120と蛍光体ホイール120の回転駆動装置」を収容していることは、明らかであるから、本件補正発明と引用発明は、「カラーホイールキャビティは、カラーホイールモジュールを収容し」ている点で一致する。 (b) 引用発明における「循環空気通路110の蛍光体ホイール120が配置された部分」の「入口」は、本件補正発明における「前記カラーホイールキャビティに」「設けられ」た「吸気口」に相当する。また、引用発明における「循環空気通路110の蛍光体ホイール120が配置された部分」における、「出口」は、本件補正発明における「前記カラーホイールキャビティに」「設けられ」た「排気口」に相当する。したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記カラーホイールキャビティに吸気口及び排気口が設けられ」ている点で一致する。 (c) 引用発明においては、「第1の波長のレーザビームは、第1光路112を通って蛍光体ホイール120に照射され、第1の波長のレーザビームは、蛍光体ホイール120によって変換され、第2の波長のビームとな」るところ、引用発明における「第1の波長のレーザビーム」は、本件補正発明における「励起光」に相当する。また、引用発明における「第1の波長のレーザビーム」が「照射」された「蛍光体ホイール120によって変換され」た「第2の波長のビーム」は、本件補正発明における「励起光」が「照射」された「波長変換層」により「生成」された「被励起光」に相当する。そして、引用発明における「蛍光体ホイール120」が蛍光体層を備えていることは技術常識である。以上の点を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記カラーホイールモジュールには、励起光によって照射されて被励起光を生成するための波長変換層が担持されて」いる点で一致する。 (d) 前記(a)から(c)の検討結果を総合すると、本件補正発明と引用発明は、「前記カラーホイールキャビティは、カラーホイールモジュールを収容し、前記カラーホイールキャビティに吸気口及び排気口が設けられ、前記カラーホイールモジュールには、励起光によって照射されて被励起光を生成するための波長変換層が担持されて」いる点で一致する。 d 引用発明においては、「循環空気通路110は、空気を循環させる流路を提供し」、「循環空気通路110は、実質的に密閉室とみなすことができ」、「熱交換器130によって提供される冷気は、熱交換プロセスによって蛍光体ホイール120を冷却するために、空気案内部材140を介して蛍光体ホイール120に向かって案内され、この冷気は、蛍光体ホイール120と熱交換して熱くなり、熱くなった空気は、所定の空気流れ方向に沿って循環空気通路110内を流れ、熱くなった空気は、再び熱交換器130を通過して冷却され、冷気となり、熱交換器130で冷却された冷気は、蛍光体ホイール120を冷却するため、空気案内部材140を介して再び蛍光体ホイール120に導かれるものである」から、引用発明の熱交換器130が、蛍光体ホイール120と熱交換して熱くなった空気が通過する通路を有する部分を備えることは明らかであり、また、引用発明における「熱交換器130」の「入口」が「循環空気通路110の蛍光体ホイール120が配置された部分」の「出口」に連通し、引用発明における「熱交換器130」の「出口」が「循環空気通路110の蛍光体ホイール120が配置された部分」の「入口」に連通することは、明らかである。 前記b及びcにおいて認定した相当関係も踏まえると、本件補正発明と引用発明は、熱交換器は、「カラーホイールキャビティ内の気体が通過する通路」を有する部分を備え、「前記カラーホイールキャビティの排気口が熱交換器の熱交換入口に連通し、熱交換器の熱交換出口が前記カラーホイールキャビティの吸気口に連通することにより、閉止された循環風路が形成され」ている点で共通する。 e 引用発明における「空気案内部材140」は、「送風機又はファンであり」、「空気案内部材140は、循環空気通路110内に配置されており、熱交換器130によって提供された冷気を蛍光体ホイール120に導」くものであるから、本件補正発明と引用発明は、「前記空気動力装置は、前記循環風路内の気体の流動を駆動」する点で一致する。 f 本件補正発明における「接続通路」の意味について検討する。 (a) 本願の明細書の段落【0017】、【0019】、【図1】及び【図2】を摘記する。下線は、当審による。 【0017】 <実施例1> 本実施例に係るカラーホイール装置は、図1と図2に示すように、カラーホイールキャビティ1、カラーホイールモジュール2、熱交換器3及び接続通路4を備える。ここで、カラーホイールモジュール2は、カラーホイールキャビティ1の内部に収容され、接続通路4は熱交換器3とカラーホイールキャビティ1とを接続し、接続通路4内に、カラーホイールキャビティ1の内部の気流の流動を加速させるための空気動力装置が設けられ、本実施例に係る空気動力装置は、送風機41である。 【0019】 カラーホイールキャビティ1の吸気口11と排気口12とは、その内部において対角に位置するように設けられ、ここで、排気口12は、カラーホイールキャビティの低いほうの対角位置に位置する。接続通路4は、一端の接続口がカラーホイールキャビティ1の吸気口11に連通し、他端の接続口が熱交換器3の熱交換コアに連通する。接続通路4内には、循環風路内部での空気の流動を駆動するための送風機41が設けられている。 【図1】 【図2】 (b) 前記(a)で摘記した本願明細書の記載及び図面を参酌すると、本件補正発明における「接続通路」について、次のことが理解できる。 「接続通路」は、「熱交換器3」が配置されたところと「カラーホイールキャビティ1」が配置されたところは含ず、「前記第1通路の熱交換出口」と「前記カラーホイールキャビティの吸気口」の間に介在しこれらを「連通」するものを含み、さらに「カラーホイールキャビティ1の吸気口11」と「熱交換器3の熱交換コア」との間に介在しこれらを「連通」するもの及び空気動力装置が設けられたところを含む。 (c) 前記(b)の検討結果を踏まえると、引用発明における「循環空気通路110」のうち、「熱交換器130」が配置された部分と「蛍光体ホイール120及び蛍光体ホイール120の回転駆動装置が配置された部分」とを除いた部分が、本件補正発明における「接続通路」に相当する。そして、本件補正発明と引用発明は「熱交換出口は、接続通路を介して前記カラーホイールキャビティの吸気口と連通し」ている点で共通する。 (イ) 一致点及び相違点 前記(ア)の対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 a 一致点 「 カラーホイール装置であって、 カラーホイールキャビティと、熱交換器と、空気動力装置とを備え、 前記カラーホイールキャビティは、カラーホイールモジュールを収容し、前記カラーホイールキャビティに吸気口及び排気口が設けられ、前記カラーホイールモジュールには、励起光によって照射されて被励起光を生成するための波長変換層が担持されており、 熱交換器は、カラーホイールキャビティ内の気体が通過する通路を有する部分を備え、前記カラーホイールキャビティの排気口が熱交換器の熱交換入口に連通し、熱交換器の熱交換出口が前記カラーホイールキャビティの吸気口に連通することにより、閉止された循環風路が形成され、 前記空気動力装置は、前記循環風路内の気体の流動を駆動し、 熱交換出口は、接続通路を介して前記カラーホイールキャビティの吸気口と連通する、 カラーホイール装置」である点。 b 相違点 熱交換器について、 本件補正発明においては、 熱交換器が「熱交換コア」を備える熱交換器であり、「熱交換コア」は、被冷却流体が通過する通路として、「第1通路」を備え、熱交換器の「熱交換入口」と「熱交換出口」はそれぞれ、「第1通路」の「熱交換入口」と「熱交換出口」であり、「前記第1通路は、間隔を開けて多層に設けられ、隣接する2つの層の前記第1通路の間の空間は、外気が通過するための第2通路を形成し、前記第1通路と前記第2通路は、共通の通路壁を有し、前記第2通路の空気入口及び空気出口は、前記熱交換器における互いに対向する2つの表面にそれぞれ開設され」たものであり(以上を、以下「部分相違点A」という。)、 さらに、「前記接続通路の高さは、前記第2通路の高さの1/3よりも小さい」(以下「部分相違点B」という。)のに対して、 引用発明は、熱交換器が「熱電冷却チップ」である点。 オ 進歩性要件充足性の判断 (ア) 部分相違点Aについて 前記第2の2(2)ウで示したように、次の熱交換器は、技術常識ともいうべき周知技術である。 「 熱交換コアを備える熱交換器であって、 熱交換コアは、 第1の流体が流れる第1通路と、 第2の流体が流れ、第1通路と直交する第2の流路と、 を備えたものであり、 前記第1通路は、間隔を空けて多層に設けられ、 第2の通路は、隣接する2つの層の前記第1通路の間に形成され、 前記第1通路と前記第2通路は、共通の通路壁を有し、 前記第1通路の入口及び出口は、前記熱交換器における互いに対向する2つの表面にそれぞれ開設され、 前記第2通路の入口及び出口は、前記熱交換器における互いに対向する2つの表面にそれぞれ開設されたものである、 熱交換器。」 したがって、製造費用や電力消費量などを考慮して、引用発明の「熱電冷却チップ」の熱交換器に代えて、上記周知の熱交換器を採用したり、又は、引用文献1の段落[0037]の「熱交換器130の数は限定されず、他の実施形態では複数であり得る」との示唆に基づいて、「熱電冷却チップ」である熱交換器の上流に上記周知の熱交換器に追加的に設けたりすることは、当業者には自明の設計変更にすぎない。その結果、部分相違点Aを備えることとなるから、部分相違点Aは、格別なものではない。 (イ) 部分相違点Bについて a 部分相違点Bの技術効果についての請求人の主張 本件補正発明が「前記接続通路の高さは、前記第2通路の高さの1/3よりも小さい」との限定を有することについて、請求人は、審判請求書の請求の理由において、本願発明は部材小型化と放熱効率との両立を実現できる旨主張している。 審判請求書の請求の理由の説明からは、その詳細は不明であるが、同欄の説明において補正の根拠としている明細書の段落【0021】を参照すると、次のように記載されている。 「好ましくは、接続通路4の高さは、第2通路の高さの1/3よりも小さいように設置される。ここで、高さとは、接続通過の実体厚さであり、即ち、一の表面から対向する他の表面までの距離であり、第2通路の高さとは、同様に複数の第2通路間の距離である。第2通路を通過する気流は、多くても1/3の面積だけが接続通路によって遮断される。このように、気流の大部分は、全機のファンの作用下で、接続通路に遮断されることがなく、部材の小型化を保つとともに、気流が流通する抵抗を低減させて、放熱効率の向上に有利である。」 b 部分相違点Bの評価 本件発明においては、循環風路に沿っての接続通路の形状や断面積の変化、第2通路の方向(水平方向か垂直方向かなど)などは特定されておらず、第1通路内の空気の流れと第2通路の気流の流れに対する接続通路の影響を導くための前提条件の特定が不十分であるから、本件補正発明において「前記接続通路の高さは、前記第2通路の高さの1/3よりも小さい」ことを限定したことに技術的意義を認めることはできない。したがって、部分相違点Bは、デザイン上の相違としてしか評価できず、格別なものと認めることはできない。 また、第1通路内の空気の流れと第2通路の気流の流れを十分なものとする方向で接続通路の循環風路に沿った形状や断面を設計すべきことは、当業者にとっては自明の設計指針にすぎないから、その意味でも、部分相違点Bは、当業者が適宜なすべき設計上の事項であり、格別なものとは認められない。 (エ) 小括 以上検討のとおり、部分相違点A及び部分相違点Bは、格別のものではない。そして、本件補正発明の奏する作用効果には、引用発明及び周知技術から予測されるものを超える、格別顕著なものは認められない。 したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである カ 独立特許要件についての判断のまとめ 前記オにおいて検討したとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3 補正の却下の決定の理由のむすび 以上検討のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件発明について 1 本件発明の認定 本件補正は、上記第2において示したとおり却下したから、本願の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、前記第2の1(1)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定における拒絶の理由のうち、本件発明に対する拒絶の理由は、本件発明は、次の本願の優先日前に発行された引用文献1(前記第2の2(2)イ参照)に記載された発明と引用文献2に例示される本願の優先日前の周知技術(前記第2の2(2)ウ参照)に基づいて、本願の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない、というものである。 3 引用文献に記載された発明等 引用文献1に記載された技術事項及び引用発明の認定は、前記第2の2(2)イにおいて示したとおりである。また、引用文献2?4に記載された技術事項及び周知技術の認定は、前記第2の2(2)ウにおいて示したとおりである。 4 対比・判断 (1)対比 ア 本件発明は、本件補正発明のうち、次の(ア)と(イ)の限定を省いたものである。 (ア) 「前記第1通路の熱交換出口が前記カラーホイールキャビティの吸気口に連通する」形態についての、「前記第1通路の熱交換出口は、接続通路を介して前記カラーホイールキャビティの吸気口と連通」することの限定。 (イ) 「前記接続通路の高さ」と「前記第2通路の高さ」の関係についての、「前記接続通路の高さは、前記第2通路の高さの1/3よりも小さい」ことの限定。 イ そうすると、本件発明と引用発明の相違点は、前記第2の2(2)エ(イ)bに示した相違点のうちの部分相違点Bと同一である。 (2)判断 部分相違点Bについては、前記第2の2(2)オ(ア)において説示したとおり、引用発明と周知技術から当業者が容易に想到し得たものである。そして、本件発明には、当業者の予測を超える、格別顕著な効果の存在を認めることはできない。したがって、本件発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上検討のとおり、本件発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2021-05-28 |
結審通知日 | 2021-06-01 |
審決日 | 2021-06-14 |
出願番号 | 特願2019-504039(P2019-504039) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G03B)
P 1 8・ 121- Z (G03B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 秀直、村川 雄一 |
特許庁審判長 |
居島 一仁 |
特許庁審判官 |
岡田 吉美 清水 靖記 |
発明の名称 | カラーホイール装置及びプロジェクタ |
代理人 | 徳山 英浩 |
代理人 | 山田 卓二 |
代理人 | 岡部 博史 |