• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01G
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A01G
管理番号 1379433
審判番号 不服2020-16126  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-24 
確定日 2021-10-28 
事件の表示 特願2016- 47471「自動給水栓」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月14日出願公開、特開2017-158503〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月10日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 1年 7月10日付け:拒絶理由通知書
(令和 1年 7月23日発送)
令和 1年 9月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 2月14日付け:拒絶理由通知書(最後)
(令和 2年 2月25日発送)
令和 2年 4月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 8月12日付け:補正の却下の決定
(令和 2年 4月27日付け手続補正書による補正を却下)
令和 2年 8月12日付け:拒絶査定
(令和 2年 8月25日発送)
令和 2年11月24日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 令和2年11月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年11月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は、特許請求の範囲の補正を含むものである。本件補正に先立つ令和2年4月27日付け手続補正書による補正は、原審における令和2年8月12日付け補正の却下の決定により却下されているから、本件補正の前後における特許請求の範囲における記載は、請求項1についてみれば、次のとおりである。(下線部は、補正箇所である。)
なお、本件補正は、請求項2以降については、本件補正前の請求項2ないし3及び請求項5を削除し、本件補正前の請求項4を本件補正後の請求項2へと繰り上げたものであるところ、本件補正前後の請求項2以降については、摘記を省略する。

(1)本件補正後
「【請求項1】
シール材と該シール材に対して上流側から押圧可能に設けられた弁体とを有する給水栓と、
前記給水栓の下流側の端面に接続され、前記給水栓の弁体の開閉動作を駆動する給水栓駆動機構と、
前記給水栓駆動機構を駆動させるための電気エネルギーを発電し、受光面の面積が310cm^(2)以下である太陽電池と、
前記電気エネルギーを蓄え、蓄電池容量が3Ah以上10Ah以下であるバッテリーと、
を備え、
前記太陽電池の取り付け角度が0°?20°であり、
前記給水栓駆動機構には、回転駆動により前記弁体に対して近接離間する方向に進退移動する弁軸が設けられ、
止水時には水圧により前記弁体が前記シール材に上流側から押圧され、
通水時には前記弁軸を上流側へ移動させることにより該弁軸の上流側先端が前記弁体に対して下流側から押圧して前記弁体が前記シール材から離間する自動給水栓。」

(2)本件補正前(令和1年9月20日付け手続補正後)
「【請求項1】
シール材と該シール材に対して上流側から押圧可能に設けられた弁体とを有する給水栓と、
前記給水栓の下流側の端面に接続され、前記給水栓の弁体の開閉動作を駆動する給水栓駆動機構と、
前記給水栓駆動機構を駆動させるための電気エネルギーを発電太陽電池と、
前記電気エネルギーを蓄えるバッテリーと、
を備え、
前記太陽電池の取り付け角度が0°?20°であり、
前記給水栓駆動機構には、回転駆動により前記弁体に対して近接離間する方向に進退移動する弁軸が設けられ、
止水時には水圧により前記弁体が前記シール材に上流側から押圧され、
通水時には前記弁軸を上流側へ移動させることにより該弁軸の上流側先端が前記弁体に対して下流側から押圧して前記弁体が前記シール材から離間する自動給水栓。」

2 補正目的
本件補正は、請求項1についてみれば、本件補正前の請求項1における「太陽電池」について、「受光面の面積が310cm^(2)以下である」ことを限定するとともに、本件補正前の請求項1における「バッテリー」について、「蓄電池容量が3Ah以上10Ah以下である」ことを限定するものである。
そのため、本件補正は、本件補正前の請求項1について、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認める。

3 独立特許要件
上記2のとおり、本件補正は、本件補正前の請求項1について、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認めることができる。
そのため、本件補正前の請求項1に記載された発明を限定した、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)は、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合すること(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること)を要する。
以下、本件補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができたか否かを検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載
ア 引用文献1
(ア)記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、「水管理を自動化しませんか? 水み君(仮称) タイマー式自動給水栓」、積水化学工業株式会社リーフレット(2014年8月)(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は、当審決で付した。以下、同様。)。

a 第1頁 タイトル及びタイトルの下の欄
「水み君(仮称) タイマー式自動給水栓
タイマー制御で給水管理!
給水操作をタイマー制御で自動化し、
水管理の省力化を実現。水使用の平準化により、
水使用量削減を可能にします。また、夜間かんがいで
米作りをサポートします。」

b 第1頁 上の写真




c 第1頁 下の写真




d 第1頁 「特長」の「4」
「動力はソーラー発電+バッテリー」

e 第2頁 「寸法」の欄(当審注;左図の左横の矢印は、原審における刊行物提出の提出者による。)




f 第2頁 仕様
「外形寸法」には、「190×200×440(エアダスバルブ含まず)」と記載されている。
「対応バルブ/パイプ」には、「エアダスバルブ/φ75」と記載されている。
「ソーラーパネル」と記載されている。
「バッテリー」として、「DC6V4.5」と記載されている。
「モーター」として、「6V-3.5W」と記載されている。
「制御方法」として、「開度 9段切替 1?9」と記載されている。

g 第2頁 取付方法
「手動バルブへの自動機(水み君)取付は簡単」


1.ハンドルとナットを外し」


2.本体をナットで固定」


3.上下の軸を固定し完了」

(イ)看取できる事項、及び記載されていることが明らかである事項
上記(ア)gの説明及び写真より、「エアダスバルブ」「75」と記載されたバルブのハンドルとナットとを外した上面に自動機(水み君)を取付けると読み取ることができること、並びに、上記(ア)fに「対応バルブ/パイプ」が「エアダスバルブ/φ75」と記載されていることをふまえると、引用文献1においては、エアダスバルブ/φ75のハンドルとナットを外した上面に、自動機(水み君)の本体を固定することが、看取される。
上記(ア)cの写真及び同eの図面が、対応バルブ/パイプに自動機を取付けた状態と理解できること、並びに、上記(ア)fに「対応バルブ/パイプ」が「エアダスバルブ/φ75」と記載されていることをふまえると、引用文献1においては、上記(ア)aに記載される「タイマー式自動給水栓」は、エアダスバルブ/φ75に自動機(水み君)を取付けて構成されることが、看取される。また、上記(ア)cの写真及び同eの図面から、エアダスバルブの給水管は下方から伸びており、技術常識を勘案すると水圧は下方からかかることが、看取できる。
上記(ア)a及びfより、引用文献1には、自動機(水み君)は、エアダスバルブ/φ75の開度を9段切替して給水操作をタイマー制御で自動化するものであることが、記載されていることが明らかである。
上記(ア)eに図示される「エアダスバルブ/φ75」の大きさ、及び後記イ(ア)eに示される「呼び径」が「75」の「エアダスバルブ」の大きさの単位が「mm」であること、並びに技術常識から、上記(ア)fに示される外形寸法の「190×200×440(エアダスバルブ含まず)」の数値は、単位がmmであることが、明らかである。同(ア)eの「寸法」の欄に示される、自動機(水み君)の各寸法の数値は、数字がつぶれていて直接読み取ることはできないものの、同eの図示において寸法が最大となる高さ方向の寸法が、同fに示される外形寸法のうち数値が最大の440mmに対応すると看取でき、同eの図示における傾斜した上面の寸法は、同fに示される外形寸法の残る2つの数値に近い略190mm×200mm程度であると看取できる。
上記(ア)b及びcの写真において、自動機(水み君)の傾斜した上面の略下半分に設けられた部材を看て取ることができ、当該部材は同(ア)d及びfに記載される、動力をソーラー発電+バッテリーとするための、ソーラーパネルであると理解できる。上記(ア)b及びcの写真より、当該ソーラーパネルの広がる範囲は、傾斜した上面の中でも、上端からは上下辺の2/10程度離れた位置まで、下端からは上下辺の1/10程度離れた位置まで、左右端からは左右辺の1/10程度離れた位置までで収まっていると看て取ることができるから、ソーラーパネルの面積は、傾斜した上面に対して、(1-0.2-0.1)×(1-0.1-0.1)=0.7×0.8=0.56程度であり、大きく見積もっても傾斜した上面の面積の6割以下と看取できる。
上記(ア)d及びfより、引用文献1には、自動機(水み君)には、動力をソーラー発電+バッテリーとするための、DC6V4.5のバッテリーが設けられていることが、記載されていることが明らかである。
上記(ア)e、f及びgより、自動機(水み君)は、6V-3.5Wのモータと、エアダスバルブ/φ75のハンドルが付いていた軸に固定される上下の軸とを備えることが、看取できる。

(ウ)引用発明1
上記(ア)及び(イ)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明1>
「エアダスバルブ/φ75に自動機(水み君)を取付けたタイマー式自動給水栓であり、
給水管が下方から伸び、水圧が下方からかかるエアダスバルブ/φ75と、
エアダスバルブ/φ75のハンドルとナットを外した上面に、本体が固定され、エアダスバルブ/φ75の開度を9段切替して給水操作をタイマー制御で自動化する自動機(水み君)と、
自動機(水み君)の傾斜した略190mm×200mm程度の上面に、該上面の6割以下の面積で設けられ、動力をソーラー発電+バッテリーとするための、ソーラーパネルと、
自動機(水み君)に設けられ、動力をソーラー発電+バッテリーとするための、DC6V4.5のバッテリーと、
6V-3.5Wのモータと、エアダスバルブ/φ75のハンドルが付いていた軸に固定される上下の軸とを備える、
タイマー式自動給水栓。」

イ 引用文献2
(ア)記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、「エアダスバルブ」リーフレット、積水化学工業株式会社(2013年2月)(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

a 第1頁 「6つの特長」の上の欄
「エアダスバルブは、給水、流量調整、給水停止にくわえて排気、吸気、さらには、散水栓による小規模ホースかんがい、農機具洗浄などができる多機能給水栓です。」

b 第1頁 「3.バルブの開閉が容易」の欄
「バルブの開閉はバルブ中の止水栓ボールが上下する機構のため、開閉トルクが非常に少なく簡単に操作できます。」

c 第1頁 「6.流量特性に特長があります」の欄
「流量特性は表(裏面参照)のように開度(ハンドル回転数)によって大きく変化する特長を持っているため、適正流量を確保する開度規制が容易にできます。」

d 第2頁 「エアダスバルブN」の図




e 第2頁 「エアダスバルブN」の表
「呼び径」が「75」のものについて、「H」の値が「全開時」に「297」、「全閉時」に「337」と記載され、「単位」は「mm」と記載されている。

f 第2頁 「エアダスバルブN」「エアダスバルブNL」に共通の表
上記dの図における番号「○4」(当審注;「○数字」は「○」の中に「数字」を示す、以下同様。)の名称が「ボール」と記載され、「○5」の名称が「ハンドル」と記載され、「○11」の名称が「スピンドル」と記載されている。

(イ)看取できる事項、及び技術常識から明らかである事項
上記(ア)dの図より、ハンドル5を備える上面が、給水栓としてのエアダスバルブ全体の上端であり、給水栓に至る給水管は下方から伸びており、水圧は下方からかかること、及び、ハンドル5から下方に伸びるスピンドル11の下端が止水栓ボール4の上面に当接していることを、読み取ることができる。
そして、上記(ア)b及びcの記載より、ハンドル5を回転してバルブ内で止水栓ボールであるボール4が上下することでバルブの開閉が行われること、並びに、上記(ア)eの表より、呼び径75mmのエアダスバルブでは、全開時にはハンドル5を含む高さHが297mmであり、全閉時にはハンドル5を含む高さHが337mmであることから、呼び径75mmのエアダスバルブについて、ハンドル5及びスピンドル11が上がり、止水栓ボール4が上がった状態で、バルブが全閉となり、ハンドル5及びスピンドル11が下がり、止水栓ボール4が下がった状態で、バルブが全開となることを、読み取ることができる。
さらに、下方から水圧がかかる給水栓において、上面がスピンドル11の下端に当接して上下する止水栓ボール4が、上がって全閉となる状態では、止水栓ボール4が水圧により上方に密着して止水を行うこと、及び、止水栓ボール4が密着して止水を行う箇所について、密着及び止水に適した素材を用いてシール部としていることは、技術常識から明らかである。また、当該止水栓ボール4が下がって全開となる状態では、スピンドル11の下端が水圧に反して、止水栓ボール4を、上記シール部から下方に押し下げることが、技術常識から明らかである。

(ウ)呼び径75mmのエアダスバルブの構成
上記(ア)及び(イ)より、引用文献2には、給水栓である呼び径75mmのエアダスバルブについて、次の構成が記載されている。

<給水栓である呼び径75mmのエアダスバルブ>
「下方から伸びている給水管に取り付けられ、ハンドル5を備える上面が全体の上端となり、下方から水圧がかかる、給水栓である呼び径75mmのエアダスバルブであり、
ハンドル5、及びハンドル5から下方に延びるスピンドル11を有し、スピンドル11の下端が止水栓ボール4の上面に当接しており、バルブの開閉はハンドル5を回転して、スピンドル11によりバルブ中の止水栓ボール4を上下させる機構であり、
ハンドル5及びスピンドル11が上がり、止水栓ボール4が上がった状態で、バルブが全閉となり、ハンドル5及びスピンドル11が下がり、止水栓ボール4が下がった状態で、バルブが全開となり、
全閉となる状態では、止水栓ボール4が水圧により上方のシール部に密着して止水を行い、全開となる状態では、スピンドル11の下端が水圧に反して止水栓ボール4を上方のシール部から下方に押し下げる、
呼び径75mmのエアダスバルブ。」

ウ 引用文献3
(ア)記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特許第2818123号公報(平成10年10月30日発行)(以下、「引用文献3」という。)には、次の記載がある。

a 「【0020】
【実施例】
(第1の実施例)本発明の給水栓自動開閉装置を、その好適な一実施例(第1の実施例)を示す図1から図3を参照しつつ説明する。図1は、給水栓付近の水田の状態を示す図であり、図2は給水栓に本発明の給水栓自動開閉装置を装着した状態を示す図である。図3において、(a)は給水栓自動開閉装置の構成を示す正面部分破断断面図、(b)はその側部断面図である。
【0021】図1において、水田1には水2が注入され、稲3が植えられている。水田1の地中には、ため池等から引かれた給水管6が設置されており、地上露出部には給水栓4が設けられている。一般には、給水栓4はその上部に設けられたハンドル5を手動操作することにより開閉される。次に、図2に示すように、給水栓4からハンドル5を取り外し、本発明の給水栓自動開閉装置10を給水栓4の上部に装着する。給水栓自動開閉装置10は、図3(a)及び(b)に示すように、筐体11の上部に傾斜して取付けられた太陽電池12と、太陽電池12により発電された電気エネルギーを駆動源とするモーター13と、余分な電気エネルギーを蓄えておくための蓄電池14と、モーター13の出力軸に連結された歯車機構15と、モーター13の起動及び停止、回転方向や回転時間等を制御するためのプログラムを内蔵した制御装置16と、歯車機構15の出力軸15aに連結され垂直方向には上下動しない第1の軸17と、第1の軸17と嵌合し垂直方向に上下動可能な中空の第2の軸18と、給水栓4の駆動軸4aに取付けられたアダプター19等で構成されている。
【0022】モーター13の駆動力を給水栓4の駆動軸4aに伝達するため、この実施例の場合、第1の軸17及び第2の軸18はそれぞれ矩形断面を有している。なお、矩形断面を有する軸は製造工程が複雑で、コストを高くする要因となるため、第1及び第2の軸17及び18をそれぞれ円形断面とし、両者を小判穴及び当該小判穴を摺動するピン等で連結してもよい。太陽電池12は、太陽熱/電気エネルギー変換効率が最も高くなるように、水平から略22度から30度傾斜させて設けられている。また、太陽電池12の傾斜面を太陽の方向、例えば南向きにすることはいうまでもない。モーター13としては、小型軽量で高トルクのギヤードモーター等を用いる。制御装置16は、CPU、メモリー、入力キー、ディスプレイド及びタイマー等で構成され、内蔵されているプログラムに従ってモーター13を制御する。また、歯車機構15、第1及び第2の軸17及び18、アダプター19等は、モーター13の駆動力を給水栓4の駆動軸4aに伝達するための駆動力伝達機構を構成する。
【0023】以上のように構成された本発明の給水栓自動開閉装置の動作について説明する。一般に、給水栓4の機種により駆動軸4aの回転数や駆動軸4aの動作ストローク等が異なる。また、個々の給水栓4によっても、錆や泥の付着、駆動部分の嵌合や潤滑の程度又は水圧等により駆動軸4aを回転させるために必要なトルクが異なる。さらに、給水栓4の開き量が同じであっても、水圧等により給水に要する時間が異なる。そのため、既存の給水栓に本発明の給水栓自動開閉装置を装着した場合、最初に動作テストを行う。例えば、給水栓4が、その駆動軸4aを反時計方向に10回転させることにより全開するものである場合、モーター13が駆動軸4aを左方向に10回転まで所定方向の電流を通電し、その通電時間をカウントしておく。次に、給水栓4が開いた状態で、水田1の水2が所定の水位を上昇するのに要する時間をカウントする。そして、水田1の水2が所定の水位に達した後、前記所定方向とは逆向きの電流をモーター13に通電し、駆動軸4aを時計方向に10回転させる。このとき、駆動軸4aを時計方向に10回転させるのに要する時間もカウントしておく。このようにして得られたデータを制御装置16に内蔵されているプログラムの変数として入力する。そして、水田を見回りに行った際に、水位の低下を見て、給水栓4の全開時間をセットする。
【0024】なお、上記実施例では、既存の給水栓に本発明の給水栓自動開閉装置を装着した後、最初に動作テストを行ったが、初回使用だけ手動制御によりモーター13を操作し、次の使用からは最初に手動制御したデータに基づいて給水栓4の開閉を自動制御するように構成してもよい。上記実施例と同様に、例えば、給水栓4が、その駆動軸4aを反時計方向に10回転させることにより全開するものである場合、制御装置16のタイマーをカウントしつつ、モーター13が駆動軸4aを左方向に10回転まで所定方向の電流を通電する。そして、この時にモーター13が駆動軸4aを左方向に10回転までに要した時間をメモリーに記憶しておく。次に、給水栓4が開いた状態で、水田1の水2が所定の水位を上昇するのに要する時間をタイマーでカウントし、その時間をメモリーに記憶する。そして、水田1の水2が所定の水位に達した後、前記所定方向とは逆向きの電流をモーター13に通電し、駆動軸4aを時計方向に10回転させる。このとき、駆動軸4aを時計方向に10回転させるのに要する時間もタイマーによりカウントしておき、その時間をメモリーに記憶する。制御装置16に内蔵されて入るプログラムは、これらのデータを自動的に入力し、次の使用時からは自動的に給水栓4の開閉を行う。なお、水田の水位の低下の状況に応じて、給水栓4の全開時間を調整できるようにすることはいうまでもない。
【0025】さらに、水田に供給(補充)すべき水の量は、天候によって調節する必要がある場合もある。例えば晴天の場合、水の蒸発量や地面に沁み込む量が多いため供給量を多くしなければならない。この場合、例えば給水栓4を全開にし、全開時間も長くする必要がある。一方、曇天や雨天の場合は水の蒸発量や地面に沁み込む量は少なく、あまり水を補充しなくてもよい場合もある。この場合、給水栓4を全開させず半開程度にとどめたり、あるいは全開時間を短くする必要がある。また、雨天時の降水量の多い場合、水を補充する必要がない場合もある。この場合は、給水栓自動開閉装置を動作させる必要はない。さらには、田植えの時期、稲の開花時期及び収穫前等、稲の成育にあわせて水田の水位を調節する必要もある。そこで、制御装置16に複数組の制御データを記憶させ、任意に制御データを切り換えてモーター13を制御するように構成してもよい。」

b 「【0039】一般に、給水栓の機種や給水堰の大きさ等によって駆動軸の回転数や駆動軸の動作ストローク、給水堰を上下動させるのに必要な駆動力等が異なる。また、個々の給水栓や給水堰によっても、錆や泥の付着等によって駆動軸を回転させ又は堰を上下動させるために必要なトルク等も異なる。さらに、水圧等によっても給水に要する時間が異なる。そのため、既存の給水栓又は給水堰に本発明の給水栓自動開閉装置又は給水堰自動開閉装置を装着した場合、最初に動作テストが行われる。そこで、給水栓又は給水堰に装着後、初回使用時のみ手動でモーターを制御して前記給水栓又は給水堰の開閉量を調整し、モーターの制御データを記憶し、以後の使用時は記憶された制御データに基づいて自動的に行うことにより、個々の給水栓又は給水堰固有の条件に対応することが可能となる。」

c 「



d 「



(イ)引用発明3
上記(ア)より、引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。

<引用発明3>
「給水管6の地上露出部に設けられ、上部に設けられたハンドル5を手動操作することにより開閉される給水栓4と、
給水栓4からハンドル5を取り外し、給水栓4の上部に装着する給水栓自動開閉装置10とを有し、
給水栓自動開閉装置10は、筐体11の上部に取付けられた太陽電池12と、太陽電池12により発電された電気エネルギーを駆動源とするモーター13と、余分な電気エネルギーを蓄えておくための蓄電池14と、モーター13の出力軸に連結された歯車機構15と、モーター13の起動及び停止、回転方向や回転時間等を制御するためのプログラムを内蔵した制御装置16と、歯車機構15の出力軸15aに連結され垂直方向には上下動しない第1の軸17と、第1の軸17と嵌合し垂直方向に上下動可能な中空の第2の軸18と、給水栓4の駆動軸4aに取付けられたアダプター19とを備え、
給水栓自動開閉装置10は、機種が異なる既存の給水栓4に装着後、モーター13の制御データを記憶し、個々の給水栓4の条件に対応することが可能であり、
太陽電池12は、太陽熱/電気エネルギー変換効率が最も高くなるように、水平から略22度から30度傾斜させて設けられ、
給水栓自動開閉装置10が有する歯車機構15、第1及び第2の軸17及び18、アダプター19は、モーター13の駆動力を給水栓4の駆動軸4aに伝達するための駆動力伝達機構を構成する、
給水栓自動開閉装置10を装着した給水栓4。」

エ 引用文献4
(ア)記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、実願昭53-154147号(実開昭55-71867号)のマイクロフィルム(昭和55年5月17日公開)(以下、「引用文献4」という。)には、次の記載がある。

a 明細書第1頁第10行?第3頁第8行
「この考案は弁の開度を予め設定した以上に開放できない機能を付与した給液バルブに関する。
従来、水頭差の大きい農業用パイプライン例えば、第2図に示すように高地の水源の貯水池AからパイプラインBを通つて低地各田畑に給水バルブa、b、cより給水する場合、水頭が一番大きい給水バルブcの弁を全開にすると、上流の各給水バルブa、bの吐出量が極端に落込み、所定時間内に所要量の水を田畑に供給できなくなり、受益者の公平を欠いていた。
したがつて、農業用パイプライン等に使用する給液バルブにおいては、水圧水頭が異なる全ての箇所に必要最小限の吐出量を保障する必要があつた。
この考案は前記要求を満したものであつて、給液バルブに設けた液吐出用の弁を開閉するためのスピンドルの所要の位置にストツパを取付けることにより、弁より単位時間に流れる最大流量が一定量を超えないように規制することができるようにした給液バルブである。
以下、付図に示す実施例により本考案を説明する。第1図は給液バルブの一実施例を示す浮子式バルブで、1は弁本体、2は蓋体で弁本体1の上部を覆つている。3は浮子ボールで、弁本体1内に収納されている。4はスピンドルで蓋体2を貫通して上方に延び最上端にハンドル5を取付けている。6はストツパで蓋体2の上方に貫通されたスピンドル4の外周に嵌合されている。
さて、第1図に示す浮子式バルブは普段ハンドル5によつてスピンドル4が引上げられているので、浮子ボール3の外面は浮力によつて弁本体1のバルブシート部11に密着されて止水作用をしている。つぎに給水時にはスピンドル4を引下して浮子ボール3の浮力に抗して押下げるとバルブシート部11と浮子3の外面とが離れるので、このスロート部分Sより水が通過し、蓋体2の内側を通つて蓋体の出口21より外部に噴出される。」

b 第1図




(イ)引用発明4
上記(ア)より、引用文献4には、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されている。

<引用発明4>
「農業用パイプラインに使用する浮子式バルブであって、
弁本体1、弁本体1の上部を覆う蓋体2、弁本体1内に収納されている浮子ボール3、蓋体2を貫通して上方に延び最上端にハンドル5を取付けているスピンドル4を有し、
普段ハンドル5によつてスピンドル4が引上げられているので、浮子ボール3の外面は浮力によつて弁本体1のバルブシート部11に密着されて止水作用をし、
給水時にはスピンドル4を引下して浮子ボール3の浮力に抗して押下げると、バルブシート部11と浮子3の外面とが離れるので、このスロート部分Sより水が通過し、蓋体2の内側を通つて蓋体の出口21より外部に噴出される、
浮子式バルブ。」

オ 引用文献5
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2015-74934号公報(平成27年4月20日公開)(以下、「引用文献5」という。)には、次の記載がある。

「【0023】
ちなみに、太陽光発電パネル21は、表1に示すように、水平面に対して約30°の傾斜角度とした時に、受光効率がほぼ最大となる。これに対し、この実施例の0.35の勾配は、水平面に対して約20°程度の傾斜角度となる。この約20°程度の傾斜角度は、受光効率が約30°の傾斜角度の場合とほとんど変わらず、しかも、方位の影響や、太陽の位置による影響を受け難いものとなる。
これに対し、上記特許公報に記載されたような0.8の勾配は、水平面に対して約40°程度の傾斜角度となる。この約40°程度の傾斜角度は、方位の影響や、太陽の位置による影響を受け易いことが分かる(例えば、建物方位90°周辺などでは、78.9%と大幅に低下している。これにより建物方位が45°から90°にかけて受光効率が大きく低下する様子が伺える)。よって、傾斜角度を約20°程度にすると、傾斜角度を約40°とした場合に比べて、総合的な受光効率を上げることが可能となる。
【表1】



(3)引用発明1を主たる引用発明として
ア 引用発明1との対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1における「エアダスバルブ/φ75」は、「自動機(水み君)」を取付けることで「タイマー式自動給水栓」とすることができるから、弁体を有する給水栓であることは明らかであり、本件補正発明における「弁体」を有する「給水栓」に相当する。
引用発明1において、「給水管が下方から伸び、水圧が下方からかかるエアダスバルブ/φ75」の「ハンドル」が取り付けられていた「上面」は、本件補正発明における「給水栓の下流側の端面」に相当する。
引用発明1において、「エアダスバルブ/φ75の開度を9段切替して給水操作をタイマー制御で自動化する自動機(水み君)」は、本件補正発明における「給水栓の弁体の開閉動作を駆動する給水栓駆動機構」に相当する。
引用発明1において、「自動機(水み君)」の「本体」が「エアダスバルブ/φ75」の「ハンドルとナットを外した上面」に「固定」される構成は、本件補正発明において、「給水栓の下流側の端面」に「給水栓駆動機構」が「接続」される構成に相当する。
引用発明1において、「自動機(水み君)」が備える、「動力をソーラー発電+バッテリーとするための、ソーラーパネル」は、本件補正発明において、「給水栓駆動機構を駆動させるための電気エネルギーを発電」する「太陽電池」に相当する。
引用発明1において、「自動機(水み君)」が備える、「動力をソーラー発電+バッテリーとするため」の、「DC6V4.5のバッテリー」は、本件補正発明において、「前記電気エネルギーを蓄え」る「バッテリー」に相当する。
引用発明1において、「6V-3.5Wのモータと、エアダスバルブ/φ75のハンドルが付いていた軸に固定される上下の軸」は、「ハンドルが付いていた軸」が「ハンドル」に換えて「モータ」によって回転駆動され、「エアダスバルブ/φ75」の弁体の「開度」が「9段切替」されるよう、「ハンドルが付いていた軸」が弁体に対して近接離間する方向に進退移動することが明らかであることをふまえると、本件補正発明において、「回転駆動により前記弁体に対して近接離間する方向に進退移動する弁軸」に相当する。
引用発明1において、「エアダスバルブ/φ75」に「自動機(水み君)」を取付けた「タイマー式自動給水栓」は、本件補正発明における「自動給水栓」に相当する。

整理すると、本件補正発明と引用発明1とは、
「弁体を有する給水栓と、
前記給水栓の下流側の端面に接続され、前記給水栓の弁体の開閉動作を駆動する給水栓駆動機構と、
前記給水栓駆動機構を駆動させるための電気エネルギーを発電する太陽電池と、
前記電気エネルギーを蓄えるバッテリーと、
を備え、
前記給水栓駆動機構には、回転駆動により前記弁体に対して近接離間する方向に進退移動する弁軸が設けられる、
自動給水栓。」
である点で一致するといえる。

そして、本件補正発明と引用発明1とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
給水栓に関し、
本件補正発明では、「シール材と該シール材に対して上流側から押圧可能に設けられた弁体と」を有し、「止水時には水圧により前記弁体が前記シール材に上流側から押圧」され、「通水時には前記弁軸を上流側へ移動させることにより該弁軸の上流側先端が前記弁体に対して下流側から押圧して前記弁体が前記シール材から離間する」ことが特定されているのに対し、
引用発明1においては、給水栓である「エアダスバルブ/φ75」の止水及び通水に関する構成が明らかでない点。

<相違点2>
太陽電池の面積に関し、
本件補正発明では、「受光面の面積が310cm^(2)以下である」と特定されているのに対し、
引用発明1では、ソーラーパネルが「略190mm×200mm程度の上面」の「6割以下の面積」で設けられているところ、面積が310cm^(2)以下であるとは、直接明記されていない点。

<相違点3>
バッテリーの容量に関し、
本件補正発明では、「蓄電池容量が3Ah以上10Ah以下である」と特定されているのに対し、
引用発明1では、「DC6V4.5」のバッテリーが用いられているものの、蓄電池容量が3Ah以上10Ah以下であると直接明記はされていない点。

<相違点4>
太陽電池の取り付け角度に関し、
本件補正発明では、「0°?20°」と特定されているのに対し、
引用発明1では、ソーラーパネルの水平に対する取り付け角度が明らかでない点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点1について
上記相違点1について判断する。
引用発明1は、給水栓として「エアダスバルブ/φ75」を用いるところ、上記引用文献2に示されるとおり、給水栓である呼び径75mmのエアダスバルブは、「ハンドル5、及びハンドル5から下方に延びるスピンドル11を有し、スピンドル11の下端が止水栓ボール4の上面に当接しており、バルブの開閉はハンドル5を回転して、スピンドル11によりバルブ中の止水栓ボール4を上下させる機構」を有し、「ハンドル5及びスピンドル11が上がり、止水栓ボール4が上がった状態で、バルブが全閉となり、ハンドル5及びスピンドル11が下がり、止水栓ボール4が下がった状態で、バルブが全開となり、全閉となる状態では、止水栓ボール4が水圧により上方のシール部に密着して止水を行い、全開となる状態では、スピンドル11の下端が水圧に反して止水栓ボール4を上方のシール部から下方に押し下げる」構成を有しており、引用発明1における「エアダスバルブ/φ75」も引用文献2に記載される「呼び径75mmのエアダスバルブ」と同様の構成を有している蓋然性が高い。
引用発明1において、「エアダスバルブ/φ75」の「ハンドルとナットを外した上面」に「自動機(水み君)」の「本体」を「固定」し、「ハンドルが付いていた軸」に「自動機(水み君)」が有する「上下の軸」を「固定」すると、引用文献2に記載される「呼び径75mmのエアダスバルブ」が有すると同様の、「スピンドル11によりバルブ中の止水栓ボール4を上下させる機構」、及び、「全閉となる状態」では「止水栓ボール4が水圧により上方のシール部に密着して止水を行」い、「全開となる状態」では「スピンドル11の下端が水圧に反して止水栓ボール4を上方のシール部から下方に押し下げる」構成を備えることとなるところ、当該「呼び径75mmのエアダスバルブ」が有すると同様の「上方のシール部」、及び、「全閉となる状態」では「水圧により上方のシール部に密着」する「止水栓ボール4」は、上記相違点1に係る本件補正発明の構成における「シール材」、及び、「該シール材に対して上流側から押圧可能に設けられた弁体」に相当する。また、上記「呼び径75mmのエアダスバルブ」が有すると同様の、「止水栓ボール4」が、「全閉となる状態」では「水圧により上方のシール部に密着して止水を行」う構成は、上記相違点1に係る本件補正発明の構成における、「止水時には水圧により前記弁体が前記シール材に上流側から押圧され」る構成に相当する。そして、上記「エアダスバルブ/φ75」において、上記「呼び径75mmのエアダスバルブ」と同様に、「全開となる状態」では「スピンドル11の下端が水圧に反して止水栓ボール4を上方のシール部から下方に押し下げ」る構成は、上記相違点1に係る本件補正発明の構成における、「通水時には前記弁軸を上流側へ移動させることにより該弁軸の上流側先端が前記弁体に対して下流側から押圧して前記弁体が前記シール材から離間する」構成に相当する。
したがって、上記相違点1に係る本件補正発明の構成は、引用発明1において、「エアダスバルブ/φ75」を給水栓として採用していることにより既に得られている構成であるか、引用発明1において、「エアダスバルブ/φ75」に該当する給水栓として、具体的に引用文献2に記載される「呼び径75mmのエアダスバルブ」を採用することにより、容易に得ることができる構成である。

(イ)相違点2及び3について
上記相違点2及び3について、判断する。
引用発明1において、ソーラーパネルの面積は、略190mm×200mmの上面の6割以下程度であるから、cm単位で計算して、19×20×0.6=228cm^(2)程度以下であり、310cm^(2)以下であることは明らかである。また、引用発明1において、「自動機(水み君)」は「エアダスバルブ/φ75」の上面に固定するものであるから、「自動機(水み君)」の寸法を引用文献1に示されるより巨大なものとする動機はなく、ソーラーパネルについても、引用発明1においてソーラーパネルの面積を上面の略全体まで広げることなく、略190mm×200mmの上面の6割以下で足りていることから、ソーラーパネルを、引用文献1の写真に示されるより大きな面積とする必要性があるものではない。
したがって、上記相違点2は、一応相違点としたうえで検討したが、実質的な相違点ではない。
また、引用発明1において、「動力」を「ソーラー発電+バッテリー」とするための「バッテリー」における「DC6V4.5」の表記のうち、「DC6V」が電圧値6Vを意味し、残る「4.5」が、電圧値6Vで電池が電気を供給できる電流及び時間である「4.5Ah」という蓄電池容量を示すことは、技術常識から明らかであるとともに、「6V-3.5W」のモーターを日に何度か回転させる程度の用途であれば、当該4.5Ah程度の蓄電池容量で十分であることも、技術常識から明らかである。
したがって、上記相違点3も、一応の相違点としたうえで検討したが、実質的な相違点ではない。
なお、上記相違点2及び3について、仮に実質的な相違点であったとしても、引用発明1において写真に示される程度の面積のソーラーパネル、及び当該ソーラーパネルに見合い6V-3.5Wのモーターを日に何度か回転させるのに足りる程度の適宜の蓄電池容量のバッテリーを選択することにより、当該相違点2及び3に係る本件補正発明の構成に相当する構成とすることは、当業者であれば適宜になし得た設計事項程度である。

(ウ)相違点4について
上記相違点4について、判断する。
引用発明1において、ソーラーパネルは、略190mm×200mmの自動機(水み君)の上面の、6割以下程度の面積で足りており、当該面積のソーラーパネルの発電能力は、引用発明1を機能させるうえで十分なものであると理解することができる。
ここで、引用発明1においては、自動機(水み君)の上面を傾斜させ、傾斜した上面にソーラーパネルを設けているものの、傾斜の具体的角度は明らかではない。
しかしながら、引用文献5に示されるとおり、太陽光発電パネルに関して、最も効率が良いとされる真南に向けて30°の傾斜角で配置した場合の受光効率を100%として、傾斜の角度を10°単位で変更し、またパネルを向ける方位を変更した場合の、太陽光発電パネルの出力特性は、公知であり、太陽光パネルを約20°程度の傾斜角度とすると方位の影響や太陽の位置による影響を受け難いものとなること、及び、傾斜角を0°とした場合にも約88%の受光効率を得ることができ、しかも方位の影響を受けることがなくなることが、知られている。
このことからすると、引用発明1において、自動機の上面の6割以下程度の面積で十分な出力が得られるソーラーパネルについて、十分な出力が得られる範囲で方位の影響や太陽の位置による影響を受け難いものとなる傾斜角度として、20°?0°の範囲を選択し、もって上記相違点4に係る本件補正発明の構成に至ることは、引用文献5にも示される太陽光パネルの公知の出力特性を考慮して、当業者であれば容易に想到できた事項である。
そして、そうしたことによる効果も、引用文献1、及び引用文献5に示される太陽光発電パネルの受光効率特性から、事前に予測された範囲を超えるものではない。

(エ)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明1、及び、引用文献2及び引用文献5に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができたものではない。

(4)引用発明3を主たる引用発明として
ア 引用発明3との対比
本件補正発明と引用発明3とを対比する。
引用発明3における「給水栓4」は、「駆動軸4a」によって駆動される弁体を備えることが明らかであることをふまえると、本件補正発明における「弁体」を有する「給水栓」に相当する。
引用発明3において、「給水栓4」は「給水管6の地上露出部に設けられ」ているから、「給水栓4からハンドル5を取り外し」て「給水栓自動開閉装置10」を装着する、「給水栓4の上部」は、地下から地上へと露出する給水管6における水の流れの下流側の端部であることが明らかであることをふまえると、本件補正発明における「給水栓の下流側の端面」に相当する。 引用発明3において、「給水栓4の上部に装着」する「給水栓自動開閉装置10」は、「歯車機構15、第1及び第2の軸17及び18、アダプター19」を有して、「モーター13の駆動力を給水栓4の駆動軸4aに伝達するための駆動力伝達機構を構成」しており、給水栓4の弁体を自動開閉することが明らかであることをふまえると、本件補正発明における、「前記給水栓の下流側の端面に接続され、前記給水栓の弁体の開閉動作を駆動する給水栓駆動機構」に相当する。
引用発明3において、「筐体11の上部に取付けられた太陽電池12」は、「給水栓自動開閉装置10」が「太陽電池12により発電された電気エネルギー」を「モーター13」の「駆動源とする」ことをふまえると、本件補正発明における「前記給水栓駆動機構を駆動させるための電気エネルギーを発電」する「太陽電池」に相当する。
引用発明3において、「余分な電気エネルギーを蓄えておくための蓄電池14」は、本件補正発明における「前記電気エネルギーを蓄え」る「バッテリー」に相当する。
引用発明3において、「自動開閉装置10」が有する、「モーター13の出力軸に連結された歯車機構15」の「出力軸15aに連結」された「第1の軸17と嵌合」し、「垂直方向に上下動可能な中空の第2の軸18」は、「アダプター19」を介して取付けられた「給水栓4の駆動軸4a」の先に給水栓4の弁体があることが明らかであることをふまえると、本件補正発明における「回転駆動により前記弁体に対して近接離間する方向に進退移動する弁軸」に相当する。
引用発明3において、「自動開閉装置10を装着した給水栓4」は、本件補正発明における「自動給水栓」に相当する。

整理すると、本件補正発明と引用発明3とは、
「弁体を有する給水栓と、
前記給水栓の下流側の端面に接続され、前記給水栓の弁体の開閉動作を駆動する給水栓駆動機構と、
前記給水栓駆動機構を駆動させるための電気エネルギーを発電する太陽電池と、
前記電気エネルギーを蓄えるバッテリーと、
を備え、
前記給水栓駆動機構には、回転駆動により前記弁体に対して近接離間する方向に進退移動する弁軸が設けられる、
自動給水栓。」
である点で一致するといえる。

そして、本件補正発明と引用発明3とは、以下の点で相違する。
<相違点a>
給水栓に関し、
本件補正発明では、「シール材と該シール材に対して上流側から押圧可能に設けられた弁体と」を有し、「止水時には水圧により前記弁体が前記シール材に上流側から押圧」され、「通水時には前記弁軸を上流側へ移動させることにより該弁軸の上流側先端が前記弁体に対して下流側から押圧して前記弁体が前記シール材から離間する」ことが特定されているのに対し、
引用発明3においては、給水栓4の止水及び通水に関する構成が明らかでない点。

<相違点b>
太陽電池の面積に関し、
本件補正発明では、「受光面の面積が310cm^(2)以下である」と特定されているのに対し、
引用発明3では、太陽電池12の面積が310cm^(2)以下であるとは、特定されていない点。

<相違点c>
バッテリーの容量に関し、
本件補正発明では、「蓄電池容量が3Ah以上10Ah以下である」と特定されているのに対し、
引用発明3では、蓄電池14の容量が3Ah以上10Ah以下であるとは特定されていない点。

<相違点d>
太陽電池の取り付け角度に関し、
本件補正発明では、「0°?20°」と特定されているのに対し、
引用発明3では、「太陽電池12」は「水平から略22度から30度傾斜させて」設けられている点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点aについて
上記相違点aについて判断する。
引用発明3は、「給水栓4」としては、「機種が異なる既存の」ものを使用できるところ、上記引用文献2には、給水栓である「呼び径75mmのエアダスバルブ」が記載されており、「給水栓4」として上記引用文献2に記載される「呼び径75mmのエアダスバルブ」を採用すると、上記(3)イ(ア)で本件補正発明と引用発明1との上記相違点1について示したと同様に、上記相違点aに係る本件補正発明における構成は容易に得られるものである。
また、引用発明3は、「給水栓4」として「機種が異なる既存の」ものを使用できるから、引用発明4の「農業用パイプラインに使用する浮子式バルブ」を使用する動機付けもあるところ、引用発明4の「農業用パイプラインに使用する浮子式バルブ」は、上記相違点aに係る本件補正発明の構成における「給水栓」に相当し、引用発明4において「普段ハンドル5によってスピンドル4が引上げられている」ので「浮力によつて弁本体1のバルブシート部11に密着されて止水作用を」する「浮子ボール3」は、上記相違点aに係る本件補正発明の構成における「シール材に対して上流側から押圧可能に設けられた弁体」に相当し、引用発明4において「浮子ボール3」が「密着されて止水作用を」する「弁本体1のバルブシート部11」は、上記相違点aに係る本件補正発明の構成における「シール材」に相当する。また、引用発明4において、「普段ハンドル5によつてスピンドル4が引上げられているので、浮子ボール3の外面は浮力によつて弁本体1のバルブシート部11に密着されて止水作用を」する構成は、上記相違点aに係る本件補正発明の構成における、「止水時には水圧により前記弁体が前記シール材に上流側から押圧」される構成に相当し、引用発明4において、「給水時にはスピンドル4を引下して浮子ボール3の浮力に抗して押下げると、バルブシート部11と浮子3の外面とが離れるので、このスロート部分Sより水が通過し、蓋体2の内側を通つて蓋体の出口21より外部に噴出される」構成は、上記相違点aに係る本件補正発明の構成における、「通水時には前記弁軸を上流側へ移動させることにより該弁軸の上流側先端が前記弁体に対して下流側から押圧して前記弁体が前記シール材から離間する」構成に相当する。
したがって、引用発明3において、「給水栓4」として、引用発明4の「農業用パイプラインに使用する浮子式バルブ」を採用することによっても、上記相違点aに係る本件補正発明における構成は、容易に得られるものである。

(イ)相違点b及びcについて
上記相違点b及びcについて、判断する。
引用発明3において、「給水栓自動開閉装置10」は、「機種が異なる既存の給水栓4」の「上部に装着」するものであるから、通常の給水栓の上部に装着できる程度の大きさであり、「給水栓自動開閉装置10」の「筐体11の上部に取付けられた太陽電池12」も、「給水栓4の上部」への「給水栓自動開閉装置10」の装着に支障が無い程度の大きさに収めることは明らかであるから、上記相違点bに係る本件補正発明の構成に相当する310cm^(2)以下程度の面積とすることは、当業者であれば適宜そうすることができたであろう設計事項程度である。そして、太陽電池の面積を310cm^(2)以下とすることに関して、請求人が審判請求書で主張する、「既存の給水栓の呼び径(75mm)に対して自立取付が可能な範囲において、受光面の大きさは、310cm^(2)よりも大きくすると給水栓への取り付けが困難になったり」するという問題点についても、引用発明3が「給水栓自動開閉装置10」を「機種が異なる既存の給水栓4」の「上部に装着」するものであることからすれば、引用発明3において事前に十分に認識され、太陽電池12の受光面の面積を不要に大きなものとしない選択によって、適宜に回避された事項である。
したがって、上記相違点bに係る本件補正発明の構成をとることは、引用発明3において、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度であり、そうしたことによる効果も事前に十分に予測された範囲を超えるものではない。
また、引用発明3において、上述したとおりさほど大面積でない「太陽電池12」が発電する「余分な電気エネルギーを蓄えておくため」の「蓄電池14」について、ある程度小型・軽量の蓄電池を選択し、上記相違点cに係る本件補正発明の構成に相当する、3Ah以上10Ah以下程度のものとすることも、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度である。なお、3Ah以上10Ah以下という蓄電池容量については、引用発明3と概略同様の構成を有する引用文献1において、「バッテリー」として「DC6V4.5」と記載されていることからしても、引用発明3において通常選択するであろう電池容量と特段相違するものではない。
したがって、上記相違点cに係る本件補正発明の構成をとることも、引用発明3において、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度であり、そうしたことによる効果も事前に十分に予測された範囲を超えるものではない

(ウ)相違点dについて
上記相違点dについて、判断する。
引用発明3において、「太陽電池12」は、太陽熱/電気エネルギー変換効率を考慮したうえで、「水平から略22度から30度傾斜させて」設けられているところ、引用文献5に示されるとおり、太陽光発電パネルに関して、最も効率が良いとされる真南に向けて30°の傾斜角で配置した場合の受光効率を100%として、傾斜の角度を10°単位で変更し、またパネルを向ける方位を変更した場合の、太陽光発電パネルの出力特性は、公知であり、太陽光パネルを約20°程度の傾斜角度とすると方位の影響や太陽の位置による影響を受け難いものとなること、及び、傾斜角を0°とした場合にも約88%の受光効率を得ることができ、しかも方位の影響を受けることがなくなることが、知られている。また、引用発明3における「水平から略22度」の傾斜と、引用文献5に記載される方位の影響や太陽の位置による影響を受け難い角度である「約20°程度の傾斜角度」とは、きわめて近接した角度である。
このことからすると、引用発明3において、太陽電池12の傾斜角度について、十分な出力が得られる範囲で方位の影響や太陽の位置による影響を受け難いものとなる傾斜角度として、20°?0°の範囲を選択し、もって上記相違点dに係る本件補正発明の構成に至ることは、当業者であれば容易に想到できた事項である。
そして、そうしたことによる効果も、引用文献3、及び引用文献5に示される太陽光発電パネルの受光効率特性から、事前に予測された範囲を超えるものではない。

(エ)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明3、及び、引用文献2又は引用文献4及び引用文献5に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができたものではない。

(5)請求人の主張について
請求人は審判請求書において、引用文献1?5には、太陽電池の受光面の面積を310cm^(2)以下とすること、及び、蓄電池容量を3Ah以上10Ah以下とすることについて記載されておらず、引用文献1には太陽電池の取り付け角度および受光面積を所定の範囲とすることについての記載・示唆はなく、このような太陽電池と所定の蓄電池容量の蓄電池とを組み合わせることの示唆もない旨を主張している。
しかしながら、引用文献1において、ソーラーパネルの面積は、略190mm×200mmである自動機(水み君)の上面の6割以下程度であり、バッテリーについても「DC6V4.5」との記載があるから、4.5Ah程度であることが記載もしくは示唆されていることからすれば、引用発明1を主たる引用発明とした場合について、太陽電池の面積及び蓄電池容量に関する上記請求人の上記主張は、妥当なものとして採用することができない。
また、引用文献3においても、給水栓自動開閉装置10を既存の給水栓4の上部に装着することから、太陽電池12の面積及び蓄電池14の容量として、さほど大型でない適宜の値のものを選択することは、上記(4)イ(イ)に指摘したとおり設計事項程度であるから、太陽電池の面積及び蓄電池容量に関する請求人の主張は、引用発明3を主たる引用発明とした場合についても、妥当なものとして採用することができない。
そして、引用発明1、及び引用発明3のいずれにおいても、太陽電池の傾斜角度については、上記(3)イ(ウ)及び上記(4)イ(ウ)に判断したとおりであり、請求人の主張について考慮しても、上記の判断を変更すべき事情を見いだすことはできない。
したがって、請求人の主張について考慮しても、本件補正発明が独立特許要件を満たすか否かについては、上記(3)及び(4)のとおり判断されるべきものである。

4 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができたものではない。
そして、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条7項の規定に違反するものであるから、同法第159条1項の規定において読み替えて準用する同法第53条1項の規定により、却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明1
令和2年11月24日付け手続補正書による補正は、上記第2のとおり却下され、令和2年4月27日付け手続補正書による補正は、原審における令和2年8月12日付け補正の却下の決定により却下されているから、本願の請求項1ないし5に係る発明は、令和1年9月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものである。
請求項1に着目すると、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、
(1)本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明、及び引用文献2並びに引用文献5に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができず、
また、
(2)本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献3に記載された発明、及び引用文献2又は引用文献4並びに引用文献5に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

3 引用文献の記載
(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし5には、上記第2[理由]2(2)アないしオに示したとおりの事項が記載されている。

4 引用発明1を主たる引用発明とした、本願発明1の進歩性
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
本願発明1は、本件補正発明における太陽電池の受光面の面積の特定、及び、バッテリーの蓄電池容量の特定を省いたものであるから、本願発明1と引用発明1とを対比すると、両者は上記第2[理由]3(3)アで対比した本件補正発明と引用発明1との一致点で一致し、本件補正発明と引用発明1との相違点2及び3に対応する点においては相違せず、本件補正発明と引用発明1との相違点1及び4に対応する次の点で相違することとなる。

<相違点1’>
給水栓に関し、
本願発明1では、「シール材と該シール材に対して上流側から押圧可能に設けられた弁体と」を有し、「止水時には水圧により前記弁体が前記シール材に上流側から押圧」され、「通水時には前記弁軸を上流側へ移動させることにより該弁軸の上流側先端が前記弁体に対して下流側から押圧して前記弁体が前記シール材から離間する」ことが特定されているのに対し、
引用発明1においては、給水栓である「エアダスバルブ/φ75」の構成が明らかでない点。

<相違点4’>
太陽電池の取り付け角度に関し、
本願発明1では、「0°?20°」と特定されているのに対し、
引用発明1では、ソーラーパネルの水平に対する取り付け角度が明らかでない点。

(2)相違点についての判断
ア 上記相違点1’について
上記相違点1’について判断する。
上記相違点1’は、本件補正発明と引用発明1との上記相違点1と同じであり、上記第2[理由]3(3)イ(ア)において上記相違点1について指摘したと同様に、引用発明1において「エアダスバルブ/φ75」を給水栓として採用していることにより既に得られている構成であるか、引用発明1において給水栓として具体的に引用文献2に記載される「呼び径75mmのエアダスバルブ」を採用することにより、容易に得ることができる構成である。

イ 上記相違点4’について
上記相違点4’について判断する。
上記相違点4’は、本件補正発明と引用発明1との上記相違点4と同じであり、上記第2[理由]3(3)イ(ウ)において上記相違点4について指摘したと同様に、引用発明1において、引用文献5に記載された事項に基いて、当業者が容易に得ることができた構成である。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明1は、原査定の理由のとおり、引用発明1、及び引用文献2並びに引用文献5に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。

5 引用発明3を主たる引用発明とした、本願発明1の進歩性
(1)対比
本願発明1と引用発明3とを対比する。
本願発明1は、本件補正発明における太陽電池の受光面の面積の特定、及び、バッテリーの蓄電池容量の特定を省いたものであるから、本願発明1と引用発明3とを対比すると、両者は上記第2[理由]3(4)アで対比した本件補正発明と引用発明3との一致点で一致し、本件補正発明と引用発明3との相違点b及びcに対応する点においては相違せず、本件補正発明と引用発明3との相違点a及びdに対応する次の点で相違することとなる。

<相違点a’>
給水栓に関し、
本願発明1では、「シール材と該シール材に対して上流側から押圧可能に設けられた弁体と」を有し、「止水時には水圧により前記弁体が前記シール材に上流側から押圧」され、「通水時には前記弁軸を上流側へ移動させることにより該弁軸の上流側先端が前記弁体に対して下流側から押圧して前記弁体が前記シール材から離間する」ことが特定されているのに対し、
引用発明3においては、給水栓4の構成が明らかでない点。

<相違点d’>
太陽電池の取り付け角度に関し、
本願発明1では、「0°?20°」と特定されているのに対し、
引用発明3では、「太陽電池12」は「水平から略22度から30度傾斜させて」設けられている点。

(2)相違点についての判断
ア 上記相違点a’について
上記相違点a’について判断する。
上記相違点a’は、本件補正発明と引用発明3との上記相違点aと同じであり、上記第2[理由]3(4)イ(ア)において上記相違点aについて指摘したと同様に、引用発明3において、「給水栓4」として、引用文献2に記載される「呼び径75mmのエアダスバルブ」、若しくは引用発明4の「農業用パイプラインに使用する浮子式バルブ」を採用することにより、容易に得ることができる構成である。

イ 上記相違点d’について
上記相違点d’について判断する。
上記相違点d’は、本件補正発明と引用発明3との上記相違点dと同じであり、上記第2[理由]3(4)イ(ウ)において上記相違点dについて指摘したと同様に、引用発明3において、引用文献5に記載された事項に基いて、当業者が容易に得ることができた構成である。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明1は、原査定の理由のとおり、引用発明3、及び、引用文献2又は引用文献4並びに引用文献5に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明1は、原査定の理由のとおり、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-08-06 
結審通知日 2021-08-10 
審決日 2021-09-10 
出願番号 特願2016-47471(P2016-47471)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (A01G)
P 1 8・ 121- Z (A01G)
P 1 8・ 575- Z (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大谷 純川野 汐音  
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 田中 洋行
有家 秀郎
発明の名称 自動給水栓  
代理人 山口 洋  
代理人 川越 雄一郎  
代理人 西澤 和純  
代理人 大槻 真紀子  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ