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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05B
管理番号 1379451
審判番号 不服2021-881  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-21 
確定日 2021-11-16 
事件の表示 特願2016-165246号「照明装置及び照明システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年3月1日出願公開、特開2018-32565号、請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年8月26日の出願であって、令和2年3月24日付けで拒絶理由が通知され、同年4月17日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月7日付けで拒絶理由が通知され、同年9月2日に意見書が提出されたが、同年12月8日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)され、これに対して、令和3年1月21日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同年6月3日付けで拒絶理由が通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)され、同年7月29日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 当審拒絶理由について
当審では、請求項1に係る発明は、ユーザが手動で照明素子の制御内容を調整するものを含むものであり、発明の詳細な説明に記載したものでないから、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨、及び、請求項1において、どのようにして、「制御部」が、別の部分の「照明設定部に入力された」「感想を示す」「第1主観的情報」を得ることができるのか不明であり、請求項1に係る発明は明確でないから、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨の拒絶の理由を通知したが、令和3年7月29日付けの手続補正により、発明の詳細な説明の段落【0031】の記載等を根拠として、請求項1において、「照明設定部から前記照明素子を所定のモードで動作させるための指示を受けることで第1の制御内容で前記照明素子を動作させ、次に前記指示を受けることで、前記照明設定部に入力された前記第1の制御内容に対するユーザの感想を示す照明設定部が送信した第1主観的情報に基づく、第2の制御内容で前記照明素子を動作させる制御部」と補正された結果、ユーザが手動で照明素子の制御内容を調整するものを含まなくなり、「制御部」が、どのようにして「第1主観的情報」を得るのかが明らかになったため、特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載したものとなり、明確になった。
したがって、当審拒絶理由は解消した。

第3 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
この出願の以下の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1-3、5
・刊行物等 1-2

・請求項 6-12、15-16
・刊行物等 1-3

1.特開2015-207381号公報
2.特開2012-164466号公報
3.特開2015-41612号公報
以下、刊行物等1?3をそれぞれ引用文献1?3という。

第4 本願発明
本願の請求項1?17に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」?「本願発明17」という。)は、令和3年7月29日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定される次のとおりの発明である。
「 【請求項1】
本体と、
前記本体に取り付けられた照明素子と、
照明設定部から前記照明素子を所定のモードで動作させるための指示を受けることで第1の制御内容で前記照明素子を動作させ、次に前記指示を受けることで、前記照明設定部に入力された前記第1の制御内容に対するユーザの感想を示す前記照明設定部が送信した第1主観的情報に基づいて第2の制御内容を決定し、前記第2の制御内容で前記照明素子を動作させる制御部と、を備える
照明装置。
【請求項2】
前記照明設定部は、入力部を有し、
前記制御部は、前記入力部が予め決められた操作を受けることで、前記指示を前記照明設定部から受ける
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記照明設定部は、表示部を有し、
前記表示部は、前記制御部が前記照明素子を前記第1の制御内容で動作させた後に、ユーザに前記第1主観的情報を入力させるための表示をする
請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記制御部が前記照明素子を前記第2の制御内容で動作させた後に、ユーザに前記第2の制御内容に対するユーザの感想を示す第2主観的情報を入力させるための表示をし、
当該表示には、前記制御部が前記照明素子を前記第1の制御内容で動作させた後に入力された前記第1主観的情報が含まれる
請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記所定のモードは、ユーザの起床予定時刻前に前記照明素子を特定の制御内容で動作させる起床モード、若しくは、ユーザの就寝予定時刻前に前記照明素子を特定の制御内容で動作させる就寝モード、又は、前記起床モード及び前記就寝モードの両方を含むモードである
請求項1?4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記照明素子は、前記本体が建築物に取り付けられる方向である背面側を照明する第1の照明素子から構成される
請求項1?5のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記照明素子は、さらに、第2の照明素子から構成され、
前記第1の照明素子及び前記第2の照明素子は、それぞれ独立して調色可能な照明素子である
請求項6に記載の照明装置。
【請求項8】
前記第2の照明素子は、前記背面側を照明する
請求項7に記載の照明装置。
【請求項9】
前記照明素子は、さらに、前記背面側とは反対の方向である前面側を照明する第3の照明素子から構成される
請求項7又は8に記載の照明装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記所定のモードにおいて、前記第1の照明素子及び前記第2の照明素子の少なくとも一方を駆動させ、前記第3の照明素子を駆動させない
請求項9に記載の照明装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記所定のモードにおいて、前記第1の照明素子及び前記第2の照明素子の少なくとも一方を駆動させ、前記第3の照明素子の明るさを徐々に低下させる
請求項9に記載の照明装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記所定のモードにおいて、前記第1の照明素子及び前記第2の照明素子の少なくとも一方を駆動させ、前記第3の照明素子の明るさを徐々に上昇させる
請求項9に記載の照明装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記第1主観的情報にユーザの好みの光が間接光であることを示す情報が含まれている場合には、前記第2の制御内容として、前記第3の照明素子の明るさを、前記第1の照明素子及び前記第2の照明素子の少なくとも一方の明るさよりも暗くし、
前記第1主観的情報にユーザの好みの光が間接光でないことを示す情報が含まれている場合には、前記第2の制御内容として、前記第3の照明素子の明るさを、前記第1の照明素子及び前記第2の照明素子の少なくとも一方の明るさよりも明るくする
請求項9?12のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記第1主観的情報にユーザが目覚めるときの前記照明素子が暗すぎることを示す情報が含まれている場合には、前記第1の照明素子及び前記第2の照明素子のうちの青色成分が少ない光を出力する照明素子に比べ、青色成分が多い光を出力する照明素子の、前記第1の制御内容での明るさに対する前記第2の制御内容での明るさの上昇率を大きくする
請求項7?13のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項15】
請求項1?14のいずれか1項に記載の照明装置と、
前記照明装置に無線又は有線により接続された前記照明設定部と、を備える
照明システム。
【請求項16】
前記照明設定部は、携帯端末である
請求項15に記載の照明システム。
【請求項17】
本体と、
前記本体に取り付けられた照明素子と、
照明設定部から前記照明素子を所定のモードで動作させるための指示を受けることで第1の制御内容で前記照明素子を動作させ、次に前記指示を受けることで、前記照明設定部に入力された前記第1の制御内容に対するユーザの感想を示す第1主観的情報に基づく第2の制御内容で前記照明素子を動作させる制御部と、を備え、
前記照明設定部は、表示部を有し、
前記表示部は、
前記制御部が前記照明素子を前記第1の制御内容で動作させた後に、ユーザに前記第1主観的情報を入力させるための表示をし、
前記制御部が前記照明素子を前記第2の制御内容で動作させた後に、ユーザに前記第2の制御内容に対するユーザの感想を示す第2主観的情報を入力させるための表示をし、当該表示には、前記制御部が前記照明素子を前記第1の制御内容で動作させた後に入力された前記第1主観的情報が含まれる
照明装置。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様である。)。
(1a)
「【0005】
しかしながら、上記照明器具においては、ユーザが就寝時刻や起床時刻、照明装置の点灯又は消灯開始時刻等を任意に設定できる一方で、ユーザは、設定された各時刻がユーザ自身の睡眠パターンに適合しているか否かを確認することができない。そのため、ユーザが、就寝時及び起床時において、上記照明器具によって快適で心地良い照明環境を十分に得られていないことがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、ユーザが、自身の就寝時及び起床時に適した照明環境を確認でき、それを実現することができる照明器具を用いた照明システムを提供することを目的とする。
・・・
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、照明器具の操作情報及び点灯情報からユーザの睡眠前から起床後の期間における照明情報を、端末の表示部に表示するので、ユーザが、自身の就寝時及び起床時に適した照明環境を確認でき、それを実現することができる。」
(1b)
「【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係る照明システム100について、図1乃至図7を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の照明システム100は、天井面Ce(設置面)に取付けられるシーリングライト型の照明器具1を備える。照明器具1は、図示したようにベッドBが置かれた寝室に好適に用いられ、壁面Waや床面Flといった屋内全般に光を照射する。
【0023】
照明器具1は、ユーザ10(10a,10b)が端末11を操作することで、その点灯を制御することができる。なお、本実施形態の照明器具1は、シーリングライト以外の照明器具として実現されてもよく、上記の各領域に夫々光を照射することができれば、例えば、ベースライト、ダウンライト又はスポットライトとして実現されてもよい。端末11は、照明器具1の専用のリモートコントローラであってもよいし、スマートフオンやタブレット端末などの情報通信端末が用いられてもよい。また、端末11は、インターネットITを介して外部サーバ等の外部端末12に接続されている。
【0024】
図2(a)乃至(c)に示すように、照明器具1は、器具本体2と、器具本体2の中央部を中心とする環状に配された光源3と、光源3の光出射方向に設けられてLED3から出射した光の配光を制御する光学部材4と、備える。また、照明器具1は、光学部材4からの光出射方向に設けられて光学部材4から出射する光を拡散させて放射する拡散部材(カバー)5を備える。
【0025】
光源3は、夫々複数のLEDを環状に配して成るLED群3a、3bが、同心円状に2列に配されて成る。このうち、外周側のLED群3aは、相対的に高色温度の光を照射するLEDチップから構成され、内周側のLED群3bは、相対的に低色温度の光を照射するLEDチップから構成される。なお、本実施形態では、光源3として、LED群が2列配された構成を示すが、これに限らずLED群は1列又は3列以上であってもよく、LED群は、LEDが内装された蛍光灯型LED照明装置であってもよい。
【0026】
光源3のLEDは、LEDチップの出射光の波長を変換する波長変換部材が被覆されて、LEDパッケージとして構成される。LEDチップには、例えば、青色光を放射するGaN系青色LEDチップが用いられ、波長変換部材には、封止用の透光性樹脂材料に昼白色や電球色の光を出射できるようにするための蛍光体が混入されたものが用いられる。なお、光源3が照射する光の色温度は、昼光色?電球色(色温度7100K?2600K)であればよい。なお、相対的に高色温度の光を照射するLED群3aには、例えば、色温度6500K程度の昼光色光を出射するLEDチップが好適に用いられる。また、相対的に低色温度の光を照射するLED群3bには、例えば、色温度2700K程度の電球色光を出射するLEDチップが好適に用いられる。これらLED群3a及びLED群3bの調光比を制御することにより、光源3は、照射される光の色温度を適宜に可変とすることができる。
【0027】
器具本体2は、上面(取引付け面)が天井面Ceに対面した状態で天井面Ceに取り付けられる上面視円形の板状部材であり、例えば、厚みの薄いダイカスト部材や、鉄板、アルミ板等で構成され、所定形状に一体成形されたものを含む。また、器具本体2の上面の中央部分には、取付金具(不図示)が設けられ、この取付金具が天井面Ceに設けられた引掛シーリング等に接続される。一方、天井面Ceの反対側の面に光源3が配置される。
【0028】
器具本体2の中央部には、施工面に設けられた給電コネクタ等に固定される給電部21が設けられる。また、給電部21の外周側には、光源3を点灯駆動するための点灯回路22と、光源3のLEDが実装される基板23と、が設けられる。器具本体2は、所定の剛性を有するアルミニウム板又は鋼板等の板材を、上記形状にプレス及び切削加工することにより形成され、LED等が配置される面には可視光の反射率が高い白色塗料が塗布又は反射性金属材料が蒸着されていてもよい。
【0029】
給電部21は、汎用のアダプタガイドであり、給電コネクタ等を介して商用交流電源に接続される。点灯回路22は、給電部21から供給された交流電流を光源3に適合する所定電圧の直流電流に変換及び整流するための、トランス、コンデンサ及び制御用IC等を備える。
【0030】
基板23は、ガラスエポキシ樹脂等の絶縁材料から成り、LED3が実装される面に所定の配線パターンが形成されている。基板23は、樹脂をベースとするもの、セラミックから成るもの、及びアルミ等の金属をベースとするものに加えて、フレキシブル基板等が用いられてもよい。
【0031】
点灯回路22は、ユーザの操作に基づき、中心側のLED群3a及び外周側のLED群3bを夫々独立して点灯させることができるように構成されている。なお、各LED群3a、3b内の各LEDが個別に又は複数にグルーピングされて更に細かい部分点灯又は間引き点灯等が可能なように構成されていてもよい。
【0032】
また、基板23には、各光源3を点灯制御するための制御部40が設けられる。制御部40は、端末11から受信した無線信号に基づいて各光源3の点灯又は消灯を行う。ここで言う、無線通信は、赤外線、電波、可視光を含む。また、制御部40、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御や、アナログ調光制御により、各光源3の調光制御を行う。制御部40は、マイコン41によって実現される。なお、調光比とは、各光源3の最大輝度に対する輝度の割合を意味し、例えば、制御部40がPWM制御により光源3の調光制御を行う場合の調光比は、PWM信号のデューテイ比により定められる。
【0033】
また、器具本体2の外周には、照明器具1が設けられた屋内に居る人の動作を検知するセンサ部6が設けられている。センサ部6は、照明器具1とは別体の構成であってもよい。このセンサ部6は、例えば、モーションセンサにより構成され、就寝者(ユーザ10(図1も参照))の寝返り等の就寝中の体動を検知し、ユーザ10の眠りの深さを検知する。また、ユーザ10の動きから、ユーザ10の入眠時刻を検知することもできる。
【0034】
光学部材4は、環状に配された複数のLED3を一括して覆う樋状のレンズ部材であり、アクリル樹脂等の透光性樹脂により形成される。本実施形態において、光学部材4は、光源3の器具中央側のLED群3a及び器具外周側のLED群3bを一括して覆う半円樋状レンズ部材から成る。
【0035】
カバー5は、器具本体2の前面を覆うドーム形状とされ、例えば、アクリル樹脂等の透光性材料に光拡散性粒子又は顔料等を添加した樹脂材料から形成される。カバー5は、上記の光拡散性粒子又は顔料等の添加に換えて、透明なガラス板又は樹脂板の表面又は裏面に、サンドブラスト処理を施して粗面としたもの、又はシボ加工を施したもの、ディンプル加工等により微細な凹凸形状を形成したもの等であってもよい。
【0036】
図3に示すように、制御部40は、時刻を計時するタイマ42、及びタイマ42で計時された時間に対する光源3の調光比等のデータや過去の照明情報等を記憶するメモリ43を有する。また、照明器具1には、端末11との間で制御信号等を送受信するための送受信部44と、信号受信時に発信音を出力するブザー45と、が設けられている。ブザー45は、上記発信音に加えて、就寝者の目覚めを覚醒する覚醒刺激音を出力する。
【0037】
端末11は、就寝及び起床時における照明器具1の調光モードを設定するための入力部13と、入力内容を表示する表示部14と、照明器具1と通信するための送受信部15(端末送受信部)と、を備える。入力部13は、入力インターフェースであり、例えば、押しボタン式のスイッチや、タッチパネル等がから構成される。送受信部15は、例えば、赤外線通信や、WPAN(Wireless Persona1 Area Network)の標準規格の一つであるZigBee(登録商標)やその他の通信方式を用いて通信を行う。また、端末11は、上記各構成を制御するマイコン16a、タイマ16b及びメモリ16cを内蔵した制御部16を有する。
【0038】
照明器具1は、ユーザ10が端末11を操作することにより、ユーザ10が就寝する際に光源3の調光比を漸増的に高める起床制御モードと、ユーザ10が起床する際に各光源3の調光比を漸増的に低めて所定時間後に消灯する入眠制御モードと、を実行する。
【0039】
また、照明器具1は、メモリ43に記憶された端末11による操作情報及び照明器具1の点灯情報からユーザ10の睡眠前から起床後の期間における照明情報を抽出する情報抽出部を有する。また、送受信部44は、端末11との間で上記照明情報を伝送する情報送受信部として機能する。なお、下記に説明する照明システム100の動作は、照明器具1の制御部40ではなく、端末11の制御部16によって実行されてもよい。
【0040】
ユーザ10が日常の生活の中で、照明器具1を点灯又は消灯させる等の行動をすることにより、ユーザ10に対する様々な照明情報が得られる。例えば、図4に示すように、ユーザ10が、夜間に寝室に入室した際には、端末11を用いて照明器具1を点灯させると、その点灯操作と操作時間(例えば、23:00)が照明情報として得られる。また、ユーザ10が就寝前に音楽を聞いたり、読書をする際に、照明器具1を所定の色温度(3000K)及び調光比(50%)で点灯させたときは、その時の照明環境の色温度及び調光比が照明情報として得られる。また、ユーザ10が上記入眠制御モードを入力すると、その操作時刻(23:30)や、入眠制御モードでの調光比(10%)、及び予め設定された消灯時刻(0:00)が照明情報として得られる。また、ユーザ10が夜間にトイレに行く等により一時的に意識が覚醒して、照明器具1を点灯させると、その時刻(2:00)や色温度(3000K)、調光比(5%)が照明情報として得られる。
【0041】
また、ユーザ10が予め上記起床制御モードを設定している場合、起床制御モード起動時の時刻(6:00)、色温度(3000K?6500K)、調光比(5%)が照明情報として得られる。また、実際に、ユーザ10が起床した時や、寝室からの退出時にも上記と同様の照明情報が得られる。
【0042】
本実施形態においては、上述した照明情報を、図5に示すような端末11の表示部14に表示することにより、ユーザ10は自身の就寝時刻や起床時刻、照明装置の点灯又は消灯開始時刻等を確認することができ、それを参考にして、上記設定を行うことにより、自身の就寝時及び起床時に適した照明環境を実現することができる。また、表示部14は、例えば、週単位、月単位、3ケ月単位といった任意の期間毎の照明情報の平均値・中央値・最頻値・累積値のうち少なくともいずれか一つを表示することができる。本実施形態では、平均値を例示している。これにより、ユーザ10は、自身の生活習慣と、その傾向を把握することができ、その改善等に役立てることができる。
【0043】
また、情報抽出部(マイコン41)は、照明情報として、ユーザ10の入眠前における照明器具1の色温度、照度及び照射時間から入眠前あかり量を算出し、図6に示すように、表示部14がこれを表示する。入眠前あかり量は、上記期間の色温度、照度及び照射時間の積算により算出される。このように、ユーザ10が入眠前に不適切な明りをどの程度浴びているかを定量化することで、ユーザ10がその量を減らし、寝付くまでにかかる時間の短縮に役立てることができる。
【0044】
また、情報抽出部は、照明情報として、ユーザ10の起床後における照明器具1の色温度、照度及び照射時間から算出される起床後あかり量を算出し、図6に示したように、表示部14がこれを表示する。起床後あかり量もまた、上記期間の色温度、照度及び照射時間の積算により算出される。ユーザ10が起床後に自身の意識を覚醒させる明りを、どの程度浴びているか定量化することで、ユーザ10がその量を増やし、寝室を退出した後の覚醒感アップに役立てることができる。
【0045】
また、表示部14は、上記起床制御モードにおける起床設定時刻を表示する。起床設定時刻は、特定の日にちに加えて、任意の期間毎の平均値で示され、例えば、ユーザが平日と休日の起床時刻のばらつきを知ることで、睡眠リズムを整えるのに役立てることができる。
【0046】
また、センサ部6は、ユーザ10の就寝中の体動を検知することで就寝若しくは起床判定及び睡眠の深さを検知する。そして、情報抽出部は、起床設定時刻からセンサ部6により検知されたユーザ10の起床時刻までの時間差から、ユーザ10の目覚めに関する快適度を抽出し、表示部14は、図7に示すように、その快適度を指標化して表示する。これに併せて、情報抽出部は、起床制御モード開始時からユーザ10が起床するまでの間に、センサ部6が検知した就寝中の体動の回数から快適度を抽出し、表示部14は、その快適度を指標化して表示する。図例のように、表示部14は、各回適度を座標化して表示し、そのポジションに応じて快眠スコアを段階的に(例えば、A?E評価)に表示する。これにより、起床時刻と実際に目覚めた時刻との差や、眠りの浅さ等から、ユーザ10は、スムーズな目覚めを指標化することができ、起床制御モードの調整により、よりすっきりした目覚めを得られるようになる。なお、このとき、表示部14は、起床設定時刻や実際の起床時間を表示する。これにより、ユーザが睡眠リズムを整えるのに役立てることができる。
【0047】
また、入眠制御モードでは、表示部14は、照明情報として、照明器具1の消灯時刻を所定の期間で平均化して表示する(不図示)。また、センサ部6が、ユーザの入眠を検知する場合、情報抽出部は、入眠制御モードの開始時刻からセンサ部6により検知されたユーザ10の入眠時刻までの時間から、ユーザの入眠に関する快適度を抽出し、表示部14がこれを表示する(不図示)。なお、図6に示したように、表示部14は、実際の入眠時刻の平均値を表示することもできる。これにより、ユーザ10が、寝付くまでにかかった時間の平均を概ね知ることができ、例えば、お休み前の過ごし方の見直しや、実質睡眠時間の確保に役立てることができる。なお、表示部14は、入眠制御モードの終了時刻からユーザ10の起床時刻までの期間において、照明器具1が点灯していた時間又は点灯した回数を表示する(図6参照)。
【0048】
また、端末11の入力部13は、起床時のユーザ10の目覚めの気分といった睡眠感を入力可能とされている。例えば、上記図7に示したように、目覚め快適度(例えば、図中の星5段階評価)を入力することができる。そして、ユーザ10が、快適度と照明情報との相関を対比することで、ユーザ10の睡眠・起床に関する実感と照明環境との関係を明確に知ることができる。」
(1c)
図1?7は、以下のとおりである。

(2)引用文献1に記載された発明

図3から、「制御部40」を備える「照明器具1」が看取できるところ、当該制御部40は、「端末11から受信した無線信号に基づいて各光源3の点灯又は消灯を行う」、「各光源3を点灯制御する制御部40」であり(段落【0032】)、かつ、「ユーザ10が端末11を操作することにより、ユーザ10が就寝する際に光源3の調光比を漸増的に高める起床制御モードと、ユーザ10が起床する際に各光源3の調光比を漸増的に低めて所定時間後に消灯する入眠制御モードと、を実行する」(段落【0038】)ことが明らかであるから、当該制御部40は、「ユーザ10が端末11を操作することにより」、「端末11から受信した無線信号に基づいて」、「ユーザ10が就寝する際に光源3の調光比を漸増的に高める起床制御モードと、ユーザ10が起床する際に各光源3の調光比を漸増的に低めて所定時間後に消灯する入眠制御モードと」のいずれか「を実行する」ように、「各光源3の点灯又は消灯を行う」、「各光源3を点灯制御する制御部40」として特定できる。

上記ア、摘記(1b)及び図1?7(摘記(1c)参照)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「器具本体2と、
LED群3a、3bが同心円状に2列に配されて成る、器具本体2の天井面Ceの反対側の面に配置される光源3と、
ユーザ10が端末11を操作することにより、端末11から受信した無線信号に基づいて、ユーザ10が就寝する際に光源3の調光比を漸増的に高める起床制御モードと、ユーザ10が起床する際に各光源3の調光比を漸増的に低めて所定時間後に消灯する入眠制御モードとのいずれかを実行するように、各光源3の点灯又は消灯を行う、各光源3を点灯制御する制御部40、
を備え、
端末11は、タッチパネルから構成される就寝及び起床時における照明器具1の調光モードを設定するための入力部13と、入力内容を表示する表示部14と、照明器具1と通信するための送受信部15と、を備え、端末11の入力部13は、目覚め快適度の星5段階評価を入力することができ、ユーザ10が、快適度と照明情報との相関を対比することで、ユーザ10の睡眠・起床に関する実感と照明環境との関係を明確に知ることができる、
照明器具1。」

2 引用文献2について
引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(2a)
「【0012】
本発明は、上記従来の課題を考慮して、表示装置が置かれている空間の照明環境とは別に3次元映像を視聴する視聴者が感じる照明環境を制御できる照明制御装置、照明装置、立体映像システムおよび照明制御方法等を提供することを目的とする。
・・・
【0032】
照明装置2Aは、空間Rを照明する光源21を含む。光源21は、照明装置2Aに組み込まれた照明制御装置20Aの制御下で、表示装置3Aが表示する3次元映像のフレーム画像の切り換えに同期して点灯し、フレーム画像の表示に同期して消灯する。また、照明装置2Aは、リモートコントローラー5Aによっても制御され空間Rの照度をコントロールする。光源21として、LED(Light Emitting Diode)が好適に用いられるが、表示装置3Aのフレームレートに追従して明滅することができる他の発光素子が用いられてもよい。」
(2b)
「【0051】
本実施の形態1において、送信素子53から送出される制御信号は、視聴者がリモートコントローラー5Aで設定する明暗の程度を照明装置2Aに送信する信号として用いられる。空間Rの照度を明るく感じさせるボタン51は視聴者が所望する明暗の程度を上げるボタンであり、空間Rの照度を暗く感じさせるボタン52は明暗の程度を下げるボタンである、視聴者がボタン51あるいはボタン52を押したとき、押されたボタンに相当する制御信号が送信素子53から送信される。
・・・
【0080】
光源21は、明暗調整部66から入力されるオン信号およびオフ信号に従い明滅し、表示装置3Aが置かれた空間Rを照明する。
・・・
【0097】
送信制御部57は、視聴者が感じたいと所望する空間Rの明暗の程度の情報を蓄積している。
【0098】
例えば、明暗の程度を0から1の範囲(0のときに視聴者が最も暗く感じ、1のときに視聴者が最も明るく感じる)とした場合、送信制御部57は、空間Rの照度を明るく感じさせるボタン51が押されたことを示す信号が入力された際、明暗の程度を0.1上げ、空間Rの照度を暗く感じさせるボタン52が押されたことを示す信号が入力された際、明暗の程度を0.1下げる。ただし送信制御部57は、明暗の程度が1以上になる場合は1にし、0以下になる場合は0とする。さらに送信制御部57は、明暗の程度が変化した場合、明暗の程度を含む制御信号を生成し、制御信号送信部58に出力する。制御信号送信部58は、入力された制御信号を、照明制御装置20Aの制御信号受信部68へ送信する。」
(2c)
図1、図4は、以下のとおりである。
【図1】

【図4】

3 引用文献3について
引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(3a)
「【0029】
図2に示されるように、照明器具10は、カバー31と、フレーム32と、器具本体20と、間接光発光部30aおよび30bと、直接光発光部40と、制御部50と、レンズ60と、グローブ65とを備える。また、図2には、照明器具10の点灯または消灯を制御するためのリモートコントローラ70も図示されている。なお、図2では、間接光発光部30bの図示は省略されている。
・・・
【0038】
制御部50は、器具本体20の下面の中央部分に設けられ、リモートコントローラ70から受信した無線信号に基づいて間接光発光部30aおよび30b、並びに直接光発光部40の点灯または消灯を行う。また、制御部50は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御や、アナログ調光制御により間接光発光部30aおよび30b、並びに直接光発光部40の調光(調光比の制御)を行う。制御部50は、具体的には、マイクロコンピュータなどによって実現される。なお、調光比とは、発光部101の最大輝度に対する輝度の割合を意味する。例えば、制御部50がPWM制御を行う場合には、調光比は、PWM信号のデューティ比により定められる。
・・・
【0053】
図6に示されるブロック図では、照明器具10は、間接光発光部30a(30b)と、直接光発光部40と、制御部50とを備える。また、リモートコントローラ70は、就寝設定部80と、起床設定部90と、送信部100とを備える。
・・・
【0058】
一方、ユーザ200が、リモートコントローラ70の起床設定部90から起床希望時刻を設定した場合、送信部100は、設定情報を照明器具10の制御部50に無線送信する。この結果、照明器具10は、ユーザ200を起床させるための起床制御を行う。」
(3b)
図1、2及び6は、以下のとおりである。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

引用発明の「器具本体2」は、本願発明1の「本体」に相当する。

LEDは照明素子といえるから、上記アを踏まえると、引用発明の「LED群3a、3bが同心円状に2列に配されて成る、器具本体2の天井面Ceの反対側の面に配置される光源3」における「LED群3a、3b」は、本願発明1の「前記本体に取り付けられた照明素子」に相当する。

(ア)
引用発明の「端末11」、「無線信号」及び「端末11から受信した無線信号に基づ」くことは、それぞれ、本願発明1の「照明設定部」、「指示」及び「照明設定部から」「指示を受けること」に相当する。
(イ)
引用発明の「ユーザ10が就寝する際に光源3の調光比を漸増的に高める起床制御モード」及び「ユーザ10が起床する際に各光源3の調光比を漸増的に低めて所定時間後に消灯する入眠制御モード」は、いずれも、本願発明1の「所定のモード」に相当する。
(ウ)
上記(ア)、(イ)から、引用発明の「ユーザ10が就寝する際に光源3の調光比を漸増的に高める起床制御モードと、ユーザ10が起床する際に各光源3の調光比を漸増的に低めて所定時間後に消灯する入眠制御モードとのいずれかを実行するように、各光源3の点灯又は消灯を行う、各光源3を点灯制御する」ことは、「第1の制御内容で前記照明素子を動作させ」ることに相当する。
(エ)
引用発明の「制御部40」は、本願発明1の「制御部」に相当する。
(オ)
上記(ア)?(ウ)を踏まえると、引用発明の「ユーザ10が端末11を操作することにより、端末11から受信した無線信号に基づいて、ユーザ10が就寝する際に光源3の調光比を漸増的に高める起床制御モードと、ユーザ10が起床する際に各光源3の調光比を漸増的に低めて所定時間後に消灯する入眠制御モードとのいずれかを実行するように、各光源3の点灯又は消灯を行う、各光源3を点灯制御する制御部40」は、本願発明1の「照明設定部から前記照明素子を所定のモードで動作させるための指示を受けることで第1の制御内容で前記照明素子を動作させ」る「制御部」に相当する。
(カ)
上記(オ)を踏まえると、引用発明の「ユーザ10が端末11を操作することにより、端末11から受信した無線信号に基づいて、ユーザ10が就寝する際に光源3の調光比を漸増的に高める起床制御モードと、ユーザ10が起床する際に各光源3の調光比を漸増的に低めて所定時間後に消灯する入眠制御モードとのいずれかを実行するように、各光源3の点灯又は消灯を行う、各光源3を点灯制御する制御部40」及び「端末11は、タッチパネルから構成される就寝及び起床時における照明器具1の調光モードを設定するための入力部13と、入力内容を表示する表示部14と、照明器具1と通信するための送受信部15と、を備え、端末11の入力部13は、目覚め快適度の星5段階評価を入力することができ、ユーザ10が、快適度と照明情報との相関を対比することで、ユーザ10の睡眠・起床に関する実感と照明環境との関係を明確に知ることができる」ことと、本願発明1の「照明設定部から前記照明素子を所定のモードで動作させるための指示を受けることで第1の制御内容で前記照明素子を動作させ、次に前記指示を受けることで、前記照明設定部に入力された前記第1の制御内容に対するユーザの感想を示す前記照明設定部が送信した第1主観的情報に基づいて第2の制御内容を決定し、前記第2の制御内容で前記照明素子を動作させる制御部」とは、「照明設定部から前記照明素子を所定のモードで動作させるための指示を受けることで第1の制御内容で前記照明素子を動作させる制御部」の限りにおいて、共通している。

引用発明の「照明器具1」は、本願発明1の「照明装置」に相当する。

以上から、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「本体と、
前記本体に取り付けられた照明素子と、
照明設定部から前記照明素子を所定のモードで動作させるための指示を受けることで第1の制御内容で前記照明素子を動作させる制御部と、を備える
照明装置。」
<相違点>
「照明設定部から前記照明素子を所定のモードで動作させるための指示を受けることで第1の制御内容で前記照明素子を動作させる、制御部」について、本願発明1では、照明設定部から前記照明素子を所定のモードで動作させるための指示を受けることで第1の制御内容で前記照明素子を動作させ、「次に前記指示を受けることで、前記照明設定部に入力された前記第1の制御内容に対するユーザの感想を示す前記照明設定部が送信した第1主観的情報に基づいて第2の制御内容を決定し、前記第2の制御内容で前記照明素子を動作させる」制御部であるのに対して、引用発明では、「制御部40」がそのように特定されておらず、「端末11は、タッチパネルから構成される就寝及び起床時における照明器具1の調光モードを設定するための入力部13と、入力内容を表示する表示部14と、照明器具1と通信するための送受信部15と、を備え、端末11の入力部13は、目覚め快適度の星5段階評価を入力することができ、ユーザ10が、快適度と照明情報との相関を対比することで、ユーザ10の睡眠・起床に関する実感と照明環境との関係を明確に知ることができる」点。

(2)判断
相違点について以下検討する。

引用発明の「目覚め快適度の星5段階評価」は、「起床制御モード」の照明内容に対するユーザの感想といえるから、本願発明1の「前記照明設定部に入力された前記第1の制御内容に対するユーザの感想を示す」「第1主観的情報」に相当する。
引用発明では、「目覚め快適度の星5段階評価」を、「端末11の入力部13」から「入力する」と、それが「端末11」の「表示部14」に表示され、「ユーザ10が、快適度と照明情報との相関を対比することで、ユーザ10の睡眠・起床に関する実感と照明環境との関係を明確に知ることができる」(摘記(a)の「ユーザが、自身の就寝時及び起床時に適した照明環境を確認でき」るという課題を解決しているといえる。)が、その後、ユーザがどのようにして適した照明環境を実現するかについては、引用文献1に記載されていない。
そして、引用発明の「目覚め快適度の星5段階評価」(「前記照明設定部に入力された前記第1の制御内容に対するユーザの感想を示す」「第1主観的情報」)が、「照明器具1」が「備え」る「制御部40」に送信されることや、その送信された情報に基づいて照明が制御されることは、引用文献1には、記載も示唆もされていない。

本願発明1の「次に前記指示を受けること」は、「次に」「照明設定部から前記照明素子を所定のモードで動作させるための指示を受けること」を意味しているところ、引用文献2の「リモートコントローラー5A」の「空間Rの照度を明るく感じさせるボタン51」及び「空間Rの照度を暗く感じさせるボタン52」は、「明暗の程度」を上げたり下げたりするものであるから(摘記(2b)参照)、いずれも、所定のモード(摘記(1b)を参照すると、「光源21」が「表示装置3Aが表示する3次元映像のフレーム画像の切り換えに同期して点灯し」た時のモードといえる。)を変更するためのボタンであって、最初に点灯させる、すなわち、最初に所定のモードで動作させるための指示を受けるボタンではないから、上記の「ボタン51」や「ボタン52」を操作しても、「照明装置2A」は、本願発明1で特定している、「次に」「照明設定部から前記照明素子を所定のモードで動作させるための指示を受けること」はない。
要するに、引用文献2の「空間Rの照度を明るく感じさせるボタン51」及び「空間Rの照度を暗く感じさせるボタン52」は、最初に、照明素子を所定のモードで動作させるための指示を受けるボタンではなく、これらのボタンを操作しても、照明素子が点灯して所定のモードで動作することはない。
また、引用文献2の「リモートコントローラー5A」の「空間Rの照度を明るく感じさせるボタン51」及び「空間Rの照度を暗く感じさせるボタン52」の操作により、空間の「明暗の程度」(本願発明1の「照明の制御内容」といえる。)に対する、ユーザの感想を示す主観的情報が送信される得ることがあるとしても、この空間の「明暗の程度」(照明の制御内容)は、「リモートコントローラー5A」に入力されたものではないから、引用文献2は、上記相違点に係る本願発明1の「前記照明設定部に入力された前記第1の制御内容に対するユーザの感想を示す」「第1主観的情報」を有しているものではない。

上記ア、イ及び摘記(3a)、(3b)のとおりであって、「次に前記指示(次に照明設定部から前記照明素子を所定のモードで動作させるための指示)を受けることで、前記照明設定部に入力された前記第1の制御内容に対するユーザの感想を示す前記照明設定部が送信した第1主観的情報に基づいて第2の制御内容を決定し、前記第2の制御内容で前記照明素子を動作させる」ことは、下位の請求項のために引用された引用文献3を含むいずれの引用文献にも記載も示唆もされていないし、引用発明に引用文献2に記載された技術事項を適用しても、引用発明の「制御部40」は、「次に前記指示(次に照明設定部から前記照明素子を所定のモードで動作させるための指示)を受けることで、・・・前記照明設定部が送信した第1主観的情報に基づいて第2の制御内容を決定し、前記第2の制御内容で前記照明素子を動作させる」制御部にはならない。

したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2ないし3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

そして、本願発明1は、「照明素子の制御内容を容易にユーザ好みのものにすることができる」(本願明細書の段落【0008】)という格別に顕著な作用効果を奏するものである。

2 本願発明2?17について
本願発明2、3、5?12、15及び16は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに請求項2、3、5?12、15及び16の発明特定事項を付加して限定したものであるから、上記1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2ないし3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明4、13、14及び17は、拒絶査定で示されたとおり、拒絶の理由を発見しないものである。

3 まとめ
上記1、2のとおりであるから、本願発明1?17は、引用発明及び引用文献2ないし3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本願発明1?3、5?12、15及び16について特許を受けることができないとした原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-10-26 
出願番号 特願2016-165246(P2016-165246)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H05B)
P 1 8・ 121- WY (H05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 野木 新治  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 出口 昌哉
一ノ瀬 覚
発明の名称 照明装置及び照明システム  
代理人 新居 広守  
代理人 寺谷 英作  
代理人 道坂 伸一  

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