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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1379485
審判番号 不服2020-17008  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-10 
確定日 2021-11-26 
事件の表示 特願2019- 40836「画面用の手書きキーボード」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月10日出願公開、特開2019-175441、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年5月31日(パリ条約による優先権主張2016年(平成28年)6月12日、米国)に出願した特願2017-108227号の一部を、平成31年3月6日に新たな特許出願としたものであって、平成31年4月22日に手続補正書が提出され、令和2年5月11日付けで拒絶理由が通知され、令和2年7月29日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、令和2年8月7日付けで拒絶査定がされ、これに対し、令和2年12月10日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年8月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-9に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2009-289188号公報
2.特開2013-206141号公報
3.米国特許出願公開第2014/0361983号明細書

第3 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、令和2年7月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であって、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
1つ以上のプロセッサ、タッチ感知面、及びディスプレイを有する電子デバイスにおいて、
メッセージエリア及びストローク入力エリアを含むユーザ入力インタフェースを前記ディスプレイに表示することと、
前記タッチ感知面上の前記ストローク入力エリアで第1のストロークを受けることと、
前記第1のストロークを受け付けたことに応じて、
前記第1のストロークに基づいて第1の文字を決定することと、
前記第1の文字をメッセージエリアに表示することと、
前記第1のストロークを受けた後の第1の時間において、前記タッチ感知面上で、前記第1のストロークとは異なる第2のストロークを受けることと、
前記第1の時間が閾値時間を超えているかどうかを判定することと、
前記第1の時間が前記閾値時間を超えているとの判定に従って、
前記第2のストロークに基づいて、かつ、前記第1のストロークには基づかずに第2の文字を決定することと、
前記第2の文字を前記メッセージエリアに表示することと、
前記第1の時間が前記閾値時間未満との判定に従って、
前記第1のストロークと前記第2のストロークとに基づいて修正された第1の文字を決定することと、
前記メッセージエリアにおいて、前記第1の文字の表示を、前記修正された第1の文字の表示に置き換えることと
を含む方法。」

なお、本願発明2-9の概要は以下のとおりである。

本願発明2-6は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明7は、本願発明1-6のいずれかに対応するコンピュータ可読記憶媒体の発明である。

本願発明8-9は、本願発明1-6のいずれかに対応する電子デバイスの発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1及び引用発明
(1) 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、特に着目した箇所を示す。以下同様。)。

ア 段落【0019】
「【0019】
実施形態1.
図1は、本発明の第1の実施形態の構成例を示すブロック図である。本発明の文字入力装置20は、入力手段1と、ストローク抽出手段2と、ストローク記憶手段3と、区切り時刻推定手段4と、区切り時刻記憶手段5と、文字認識手段6と、出力手段7と、区切り時刻移動手段8とを備える。」

イ 段落【0030】-【0041】
「【0030】
入力手段1および出力手段7が、同一の入出力装置(例えば、タッチパネルやペンタブレット等)によって実現されていてもよい。ストローク抽出手段2、区切り時刻推定手段4、文字認識手段6および区切り時刻移動手段8は、例えば、プログラム(文字入力用プログラム)に従って動作するCPUによって実現される。すなわち、CPUが、記憶装置に記憶されたプログラムを読み込み、ストローク抽出手段2、区切り時刻推定手段4、文字認識手段6および区切り時刻移動手段8として動作してもよい。また、このCPUが、出力手段7および入力手段1を制御してもよい。また、図1に示す各手段がそれぞれ、別々の回路によって実現されていてもよい。
【0031】
次に、動作について説明する。
図2は、手書き入力された文字に対する文字認識結果を出力する動作の例を示すフローチャートである。入力手段1の入力領域にペンを押し当てて文字を書くと、入力手段1は、ストローク毎にペンダウン(ペンの接触開始)からペンアップ(ペンの接触終了)までのペン接触位置の座標を順次、ストローク抽出手段2に送る。ストローク抽出手段2は、ストローク毎に、ストロークの最初の座標から、そのストロークの最後の座標までの座標集合を、1ストローク分のストロークデータとして抽出し、時系列順にストローク記憶手段3に記憶させる(ステップS101)。ステップS101において、ストローク抽出手段2は、1ストローク分のストロークデータを抽出したときに、ストローク記憶手段3に記憶されたストロークデータ列の最後に追加すればよい。
【0032】
ユーザは、入力手段1の入力領域に文字を書くときに、1文字書き終えたら、同じ箇所に重ねて次の文字を書く。各文字の各ストロークが手書き入力されるにつれ、ステップS101の動作により、ストローク抽出手段2は、順次、ストロークデータを抽出し、ストローク記憶手段3に記憶させていく。
【0033】
ストローク記憶手段3に新たなストロークデータが追加されると、区切り時刻推定手段4は、その新たなストロークデータを含むそれまでにストローク記憶手段3に記憶されたストロークデータについて、どのストロークデータからどのストロークデータまでが1文字分のストロークデータとなるかを推定し、各文字に対応するストロークデータ集合の区切り時刻を推定する(ステップS102)。そして、推定した区切り時刻を区切り時刻記憶手段5に記憶させる。

・・・(中略)・・・

【0036】
また、他の方法として、ユーザは、1文字毎に少しの時間間隔を開けて手書き入力をしなければならないという制約を設け、区切り時刻推定手段4は、あるストロークが書き終えられてから次のストロークが書き始められるまでの時間間隔を計測し、その間隔が一定時間以上空いていれば、その時刻を区切り時刻と推定してもよい。
【0037】
あるいは、上記の3つの方法等を組み合わせて、より精度よく区切り時刻を推定してもよい。
【0038】
区切り時刻推定が完了すると、文字認識手段6は、区切り時刻記憶手段5に記憶された最新の区切り時刻に従って、ストローク記憶手段3に記憶されたストロークデータ群を、個々の文字に対応するストロークデータ集合に区切り、各ストロークデータ集合が表す文字を認識する(ステップS103)。例えば、上記の辞書データ(各文字のストロークの形状や文字を構成するストロークの位置関係を定めた辞書データ)と、ストロークデータ集合とを照合し、ストロークデータ集合に該当する文字を特定してもよい。さらに、文字認識手段6は、ストロークデータ集合毎に認識した各文字を、文字列として出力手段7に表示させる(ステップS104)。
【0039】
ステップS102で推定された区切り時刻が、実際の文字の区切りに対応していない場合、ステップS104で表示された文字は、ユーザが認識している入力文字と異なることになる。このときに、区切り時刻を修正することにより、手書き入力した文字を正しく認識させることができる。図3は、区切り時刻修正操作が行われたときの動作の例を示すフローチャートである。
【0040】
ユーザは、手書き入力に対して文字入力装置20が文字認識を行って表示した文字列中に修正すべき文字があれば、その文字を選択し、その選択した文字とその前後の文字との間でストロークデータの割り当てを変更する操作を行う。この操作の具体例については後述する。区切り時刻移動手段8は、区切り時刻記憶手段5に記憶されたストロークの区切り時刻の中から、ユーザによるストロークデータ割り当て変更操作に伴って変更されるストロークの区切り時刻を検索する(ステップS202)。
【0041】
例えば、第1ストロークから第3ストロークまでの各ストロークデータが一つのストロークデータ集合となっていて、第4ストロークから第7ストロークストロークまでの各ストロークデータが一つのストロークデータ集合となっているとする。このとき、第3ストロークと第4ストロークの間を区切りとする区切り時刻(t1とする。)が推定されていることになる。この状態から、後者のストロークデータ集合内の最初のストロークデータ(第4ストロークのストロークデータ)を、前者のストロークデータ集合に割り当てる操作が行われたとする。この割り当て変更を行う場合、ストロークデータ集合の区切りを、上記のt1から変更することになる。ステップS202では、このような変更対象となる区切り時刻(上記の例ではt1)を検索する。」

ウ 段落【0053】
「【0053】
次に、本実施形態の具体例を説明する。図4は、入力手段1および出力手段7の表示画面例の例を示す説明図である。図4は、入力手段1および出力手段7が同一の入出力装置で実現されている場合を例示している。図4に示す入力領域71は、ペンが押し当てられ文字が手書き入力される領域である。入力領域71には、各文字が1文字ずつ重ねて書かれる。また、図4に示す領域72は、文字認識手段6が認識結果である文字列を表示させる結果表示エリアである。」

(2) 引用発明
よって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。

「文字入力装置20は、入力手段1と、ストローク抽出手段2と、ストローク記憶手段3と、区切り時刻推定手段4と、区切り時刻記憶手段5と、文字認識手段6と、出力手段7と、区切り時刻移動手段8とを備え、
入力手段1および出力手段7が、同一の入出力装置(例えば、タッチパネルやペンタブレット等)によって実現され、
入力手段1および出力手段7の表示画面において、入力領域71は、ペンが押し当てられ文字が手書き入力される領域であり、領域72は、文字認識手段6が認識結果である文字列を表示させる結果表示エリアであり、
ストローク抽出手段2、区切り時刻推定手段4、文字認識手段6および区切り時刻移動手段8は、例えば、プログラム(文字入力用プログラム)に従って動作するCPUによって実現され、
手書き入力された文字に対する文字認識結果を出力する動作において、
入力手段1の入力領域にペンを押し当てて文字を書くと、ストローク抽出手段2は、ストローク毎に、ストロークの最初の座標から、そのストロークの最後の座標までの座標集合を、1ストローク分のストロークデータとして抽出し、時系列順にストローク記憶手段3に記憶させ(ステップS101)、
ストローク記憶手段3に新たなストロークデータが追加されると、区切り時刻推定手段4は、その新たなストロークデータを含むそれまでにストローク記憶手段3に記憶されたストロークデータについて、どのストロークデータからどのストロークデータまでが1文字分のストロークデータとなるかを推定し、各文字に対応するストロークデータ集合の区切り時刻を推定し(ステップS102)、そして、推定した区切り時刻を区切り時刻記憶手段5に記憶させ、
ここで、ユーザは、1文字毎に少しの時間間隔を開けて手書き入力をしなければならないという制約を設け、区切り時刻推定手段4は、あるストロークが書き終えられてから次のストロークが書き始められるまでの時間間隔を計測し、その間隔が一定時間以上空いていれば、その時刻を区切り時刻と推定し、
区切り時刻推定が完了すると、文字認識手段6は、区切り時刻記憶手段5に記憶された最新の区切り時刻に従って、ストローク記憶手段3に記憶されたストロークデータ群を、個々の文字に対応するストロークデータ集合に区切り、各ストロークデータ集合が表す文字を認識し(ステップS103)、
さらに、文字認識手段6は、ストロークデータ集合毎に認識した各文字を、文字列として出力手段7に表示させ(ステップS104)、
ステップS102で推定された区切り時刻が、実際の文字の区切りに対応していない場合、ステップS104で表示された文字は、ユーザが認識している入力文字と異なることになり、
ユーザは、手書き入力に対して文字入力装置20が文字認識を行って表示した文字列中に修正すべき文字があれば、その文字を選択し、その選択した文字とその前後の文字との間でストロークデータの割り当てを変更する操作を行う、方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに、段落【0103】、【0107】に、次の事項が記載されている。

「【0103】 前述した図3のステップS2において、タッチパネル筆跡検出部11から手書き文字の座標情報を受け取ると、手書き文字認識制御部12は、文字コードDB16Aを用いて文字を認識して、手書き認識文字コードを抽出する(ステップS3A)。」

「【0107】
続いて、予測変換制御部13は、未確定かつ完成(認識済)文字の1?(C-1)番目の文字コードとC文字目の部首コードとから、語彙予測辞書DB17を検索し、絞り込まれた熟語候補を取得する(ステップS55)。例えば、完成文字「会」+「言(ごんべん)」で検索が行われる。」

引用文献2の上記記載から、タッチパネルの文字認識において、先行する文字の認識結果を、後続する文字の認識に利用することは、周知技術であると認められる。

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、段落[0270]に、図面(特に、図15D、図15E)とともに、次の事項が記載されている。

(1) 段落[0270]
「[0270] In some embodiments, the user device identifies (e.g., 1614) two adjacent recognition units from the plurality of handwritten strokes. The user device displays (1616), in the candidate display area, an initial recognition result (e.g., results 1512, 1514, 1516, and 1518 in FIG. 15C) comprising respective characters recognized from the two adjacent recognition units, e.g., as illustrated in FIG. 15C. In some embodiments, when displaying the first recognition result (e.g., result 1524, 1526, or 1528 in FIG. 15E) in response to a pinch gesture, the user device replaces (1618) the initial recognition result with the first recognition result in the candidate display area. In some embodiments, the user device receives (1620) the pinch gesture input while the initial recognition result is displayed in the candidate display area, as shown in FIG. 15D. In some embodiments, in response to the pinch gesture input, the user device re-renders (1622) the plurality of handwritten strokes to reduce a distance between the two adjacent recognition units in the handwriting input area, e.g., as shown in FIG. 15E.」
(当審訳:
[0270] いくつかの実施形態では、ユーザ装置は、複数の手書きストロークから、2つの隣接する認識単位(例えば、1614)を特定する。図15Cに示されるように、ユーザ装置は、隣接する2つの認識単位から認識された文字から構成される、初期的な認識結果(例えば、図15Cの結果1512、1514、1516、1518)を、候補表示領域に表示する(1616)。一部の実施形態では、ピンチジェスチャに応じて、第1の認識結果(例えば、図15Eでの結果1524、1526、又は1528)を表示する場合、ユーザデバイスは、候補表示区域内で、初期の認識結果を、その第1の認識結果で置き換える(1618)。いくつかの実施形態では、初期的な認識結果が候補表示領域に表示されている状態で、ユーザ装置はピンチ・ジェスチャ入力を受信する(1620)、図15D)。いくつかの実施形態において、図15Eに示されるように、ピンチ・ジェスチャ入力に応答して、ユーザ装置は、手書き入力領域の2つの隣接する認識単位の間の距離を減少させるように、複数の手書きストロークを再レンダリング(1622)する。)

(2)図15D、図15E




図15D、図15Eを参照すると、手書き入力の初期的な認識結果(1512)として、2つの漢字(「巾」と「冒」)が表示されている状態で、ユーザがピンチ・ジェスチャ(1520,1522)によって、2つの認識単位(1502,1510)の間の距離を近づけると(図15D)、2つの漢字(「巾」と「冒」)が1つの漢字(「帽」)に合成されて第1の認識結果(1524)として表示されること(図15E)を認定できる。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と、引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

ア 引用発明の「文字入力装置20」が備える「プログラム(文字入力用プログラム)に従って動作するCPU」は、本願発明の「1つ以上のプロセッサ」に対応する。
引用発明の「文字入力装置20」が備える「入力手段1」と「出力手段7」は、「入力手段1および出力手段7が、同一の入出力装置(例えば、タッチパネルやペンタブレット等)によって実現され」るから、本願発明の「タッチ感知面」と「ディスプレイ」に対応する。
よって、引用発明の「プログラム(文字入力用プログラム)に従って動作するCPU」、「入力手段1」、「出力手段7」を備える「文字入力装置20」は、本願発明1の「1つ以上のプロセッサ、タッチ感知面、及びディスプレイを有する電子デバイス」に相当する。

イ 引用発明の「入力手段1および出力手段7の表示画面において、入力領域71は、ペンが押し当てられ文字が手書き入力される領域であり、領域72は、文字認識手段6が認識結果である文字列を表示させる結果表示エリアであ」ることは、本願発明1の「メッセージエリア及びストローク入力エリアを含むユーザ入力インタフェースを前記ディスプレイに表示すること」に相当する。

ウ 引用発明は、手書き入力に関して、「区切り時刻推定手段4は、その新たなストロークデータを含むそれまでにストローク記憶手段3に記憶されたストロークデータについて、どのストロークデータからどのストロークデータまでが1文字分のストロークデータとなるかを推定し、各文字に対応するストロークデータ集合の区切り時刻を推定し(ステップS102)」、「ここで、ユーザは、1文字毎に少しの時間間隔を開けて手書き入力をしなければならないという制約を設け、区切り時刻推定手段4は、あるストロークが書き終えられてから次のストロークが書き始められるまでの時間間隔を計測し、その間隔が一定時間以上空いていれば、その時刻を区切り時刻と推定し」ている。
すなわち、引用発明では、「各文字に対応するストロークデータ集合」である「1文字分のストローク」が、「1文字毎に少しの時間間隔を開けて」手書き入力されるものである。
ここで、引用発明の手書き入力の特別なケースとして、例えば、漢数字の「一」や数字の「1」のように、単一の「ストローク」自体が、1つの「文字」となる場合を想定できる。
そして、このような場合には、単一の「ストローク」が、「各文字に対応するストロークデータ集合」を構成するから、引用発明において、
「ストローク記憶手段3に新たなストロークデータが追加されると、区切り時刻推定手段4は、その新たなストロークデータを含むそれまでにストローク記憶手段3に記憶されたストロークデータについて、どのストロークデータからどのストロークデータまでが1文字分のストロークデータとなるかを推定し、各文字に対応するストロークデータ集合の区切り時刻を推定し(ステップS102)、そして、推定した区切り時刻を区切り時刻記憶手段5に記憶させ、
ここで、ユーザは、1文字毎に少しの時間間隔を開けて手書き入力をしなければならないという制約を設け、区切り時刻推定手段4は、あるストロークが書き終えられてから次のストロークが書き始められるまでの時間間隔を計測し、その間隔が一定時間以上空いていれば、その時刻を区切り時刻と推定し、
区切り時刻推定が完了すると、文字認識手段6は、区切り時刻記憶手段5に記憶された最新の区切り時刻に従って、ストローク記憶手段3に記憶されたストロークデータ群を、個々の文字に対応するストロークデータ集合に区切り、各ストロークデータ集合が表す文字を認識し(ステップS103)、
さらに、文字認識手段6は、ストロークデータ集合毎に認識した各文字を、文字列として出力手段7に表示させ(ステップS104)」ることは、
本願発明1において、
「前記タッチ感知面上の前記ストローク入力エリアで第1のストロークを受けることと、
前記第1のストロークを受け付けたことに応じて、
前記第1のストロークに基づいて第1の文字を決定することと、
前記第1の文字をメッセージエリアに表示することと、
前記第1のストロークを受けた後の第1の時間において、前記タッチ感知面上で、前記第1のストロークとは異なる第2のストロークを受けることと、
前記第1の時間が閾値時間を超えているかどうかを判定することと、
前記第1の時間が前記閾値時間を超えているとの判定に従って、
前記第2のストロークに基づいて、かつ、前記第1のストロークには基づかずに第2の文字を決定することと、
前記第2の文字を前記メッセージエリアに表示することと、
前記第1の時間が前記閾値時間未満との判定に従って、
前記第1のストロークと前記第2のストロークとに基づいて修正された第1の文字を決定することと、
前記メッセージエリアにおいて、前記第1の文字の表示を、前記修正された第1の文字の表示に置き換えること」と、
「前記タッチ感知面上の前記ストローク入力エリアで第1のストロークを受けることと、
前記第1のストロークを受け付けたことに応じて、
前記第1のストロークに基づいて第1の文字を決定することと、
前記第1の文字をメッセージエリアに表示することと、
前記第1のストロークを受けた後の第1の時間において、前記タッチ感知面上で、前記第1のストロークとは異なる第2のストロークを受けることと、
前記第1の時間が閾値時間を超えているかどうかを判定することと、
前記第1の時間が前記閾値時間を超えているとの判定に従って、
前記第2のストロークに基づいて、かつ、前記第1のストロークには基づかずに第2の文字を決定することと、
前記第2の文字を前記メッセージエリアに表示すること」
である点で共通するといえる。

エ よって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は次のとおりであるといえる。

[一致点]
「1つ以上のプロセッサ、タッチ感知面、及びディスプレイを有する電子デバイスにおいて、
メッセージエリア及びストローク入力エリアを含むユーザ入力インタフェースを前記ディスプレイに表示することと、
前記タッチ感知面上の前記ストローク入力エリアで第1のストロークを受けることと、
前記第1のストロークを受け付けたことに応じて、
前記第1のストロークに基づいて第1の文字を決定することと、
前記第1の文字をメッセージエリアに表示することと、
前記第1のストロークを受けた後の第1の時間において、前記タッチ感知面上で、前記第1のストロークとは異なる第2のストロークを受けることと、
前記第1の時間が閾値時間を超えているかどうかを判定することと、
前記第1の時間が前記閾値時間を超えているとの判定に従って、
前記第2のストロークに基づいて、かつ、前記第1のストロークには基づかずに第2の文字を決定することと、
前記第2の文字を前記メッセージエリアに表示することと、
を含む方法。」

[相違点1]
本願発明1は、さらに、「前記第1の時間が前記閾値時間未満との判定に従って、前記第1のストロークと前記第2のストロークとに基づいて修正された第1の文字を決定することと、前記メッセージエリアにおいて、前記第1の文字の表示を、前記修正された第1の文字の表示に置き換えること」を含むのに対して、引用発明は、「修正された第1の文字」を決定して、置き換えることについて特定されていない点。

(2) 当審の判断
本願発明1の上記[相違点1]に係る「前記第1の時間が前記閾値時間未満との判定に従って、前記第1のストロークと前記第2のストロークとに基づいて修正された第1の文字を決定することと、前記メッセージエリアにおいて、前記第1の文字の表示を、前記修正された第1の文字の表示に置き換えること」を含む構成は、上記引用文献1-3には記載されておらず、周知技術であるともいえない。

特に、引用文献3には、タッチスクリーンの手書き入力の文字の再認識に関して、ユーザのピンチ・ジェスチャに応じて、2つの文字を1つの文字として認識することが記載されているが、本願発明1の上記[相違点1]のように、「前記第1の時間が前記閾値時間未満との判定に従って」再認識を行うことは記載されていないから、たとえ、引用発明に、引用文献3の開示事項を組み合わせたとしても、上記[相違点1]の構成には至らない。

なお、そもそも、引用発明では、手書き入力は、上記「(1)ウ」のように、「各文字に対応するストロークデータ集合」である「1文字分のストローク」が、「1文字毎に少しの時間間隔を開けて」手書き入力されることを前提とするものである。
そして、引用発明では、文字認識は、「個々の文字に対応するストロークデータ集合に区切り、各ストロークデータ集合が表す文字を認識し」ており、「ストロークデータ集合」を単位として、文字認識が行われる。
よって、引用発明では、連続的に複数のストロークが入力された場合に、各ストローク毎に文字認識を行うことは想定されていない。
すなわち、引用発明において、連続して「第1のストローク」と「第2のストローク」が入力された場合には、同一の「ストロークデータ集合」に属すると判断される結果、連続する「第1のストローク」と「第2のストローク」を入力中、各ストロークについて個別に文字認識を行うことは想定されない。
また、もしも、本願発明1との上記[相違点1]に係る構成のように、連続する「第1のストローク」と「第2のストローク」について、個別に文字認識を行うように引用発明を変更すると、「区切り情報」と無関係に文字認識を行うこととなり、引用文献1から「区切り情報」の概念がなくなることとになる。このとき、「区切り情報」によって区切られる「ストロークデータ集合」の概念もなくなるから、ストローク間の時間間隔を判定する構成もなくなる。
以上のことから、仮に引用文献3に基づいて本願発明が上記[相違点1]に係る構成を有するように変形できたとしても、変形後の引用発明は、「前記第1のストロークを受けた後の第1の時間において」、「前記第1の時間が閾値時間を超えているかどうかを判定すること」という構成を有しないので、結局、本願発明には至らない。

したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-9について
本願発明2-9も、本願発明1の上記[相違点1]に係る、「前記第1の時間が前記閾値時間未満との判定に従って、前記第1のストロークと前記第2のストロークとに基づいて修正された第1の文字を決定することと、前記メッセージエリアにおいて、前記第1の文字の表示を、前記修正された第1の文字の表示に置き換えること」を含む構成と、(実質的に)同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-9は、当業者が引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。


 
審決日 2021-11-09 
出願番号 特願2019-40836(P2019-40836)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼瀬 健太郎  
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 稲葉 和生
富澤 哲生
発明の名称 画面用の手書きキーボード  
代理人 大塚 康徳  
代理人 下山 治  
代理人 高柳 司郎  
代理人 永川 行光  
代理人 大塚 康弘  
代理人 木村 秀二  
代理人 特許業務法人大塚国際特許事務所  
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