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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1379515
審判番号 不服2021-4220  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-01 
確定日 2021-11-26 
事件の表示 特願2019-537209「カードホルダ、挿入装置および端末」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月25日国際公開、WO2018/192275、令和 2年 2月20日国内公表、特表2020-505682、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2018年(平成30年)1月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年4月19日(以下,「優先日」という。),中国)を国際出願日とする出願であって,令和2年7月13日付けで拒絶理由通知がされ,令和2年9月1日付けで手続補正がされ,令和2年12月28日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和3年4月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年12月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1-15に係る発明は,以下の引用文献1に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.中国実用新案第204720601号明細書

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1に「前記摺動ブロック(22)が、前記摺動溝(212)内で前記弾性要素(23)の長さ方向に対して垂直な方向に沿って摺動し、前記弾性要素(23)が前記摺動ブロック(22)を貫通するか、または前記摺動ブロック(22)の両側面から外側に延びる」という事項を追加する補正は,補正前の請求項1の発明特定事項である「摺動ブロック(22)」及び「弾性要素(23)」を限定的に減縮するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また,「前記摺動ブロック(22)が、前記摺動溝(212)内で前記弾性要素(23)の長さ方向に対して垂直な方向に沿って摺動し、前記弾性要素(23)が前記摺動ブロック(22)を貫通するか、または前記摺動ブロック(22)の両側面から外側に延びる」という事項は,当初明細書の段落0011,0041,図2,及び図3に記載されているから,当初明細書等に記載された事項であり,新規事項を追加するものではないといえる。
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1-14に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-14に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明14」という。)は,令和3年4月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
データカード(300)を装着するように構成されたカードホルダ(20)であって、
前記データカード(300)を収容するように構成されたカードスロット(211)を画定するカードトレイ(21)と、前記カードスロット(211)と連通する摺動溝(212)と、
前記摺動溝(212)に沿って摺動可能な摺動ブロック(22)と、
弾性要素(23)であって、前記摺動ブロック(22)に結合され、前記カードトレイ(21)に固定され、かつ、前記弾性要素(23)が変形状態にある場合に前記摺動ブロック(22)を押圧して前記摺動ブロック(22)を前記データカード(300)の第1の側面に当接させるように構成された、弾性要素(23)と
を含み、
前記摺動ブロック(22)が、前記摺動溝(212)内で前記弾性要素(23)の長さ方向に対して垂直な方向に沿って摺動し、前記弾性要素(23)が前記摺動ブロック(22)を貫通するか、または前記摺動ブロック(22)の両側面から外側に延びる、カードホルダ(20)。
【請求項2】
前記カードトレイ(21)が、第1の表面(217)と、前記第1の表面(217)と反対側の第2の表面(218)とをさらに含み、前記カードスロット(211)が前記第1の表面(217)に画定され、前記摺動溝(212)が前記第1の表面(217)に画定される、請求項1に記載のカードホルダ(20)。
【請求項3】
前記カードトレイ(21)が、第1の表面(217)と、前記第1の表面(217)と反対側の第2の表面(218)とをさらに含み、前記カードスロット(211)が、前記第1の表面(217)に画定された第1のカードスロット(2111)と、前記第2の表面(218)に画定された第2のカードスロット(2112)とを含み、前記摺動溝(212)が前記第1の表面(217)に画定され、かつ前記第1のカードスロット(2111)を経て前記第2のカードスロット(2112)に深さ方向に部分的に貫入し、前記データカード(300)が前記第1のカードスロット(2111)に収容されている場合、または前記データカード(300)が前記第2のカードスロット(2112)に収容されている場合、または前記データカード(300)が前記第1のカードスロット(2111)および前記第2のカードスロット(2112)の各々に収容されている場合に、前記摺動ブロック(22)が前記データカード(300)に当接することができる、請求項1に記載のカードホルダ(20)。
【請求項4】
前記カードトレイ(21)が前記第1のカードスロット(2111)と前記第2のカードスロット(2112)との間に設けられた仕切り板(21a)をさらに含み、前記仕切り板(21a)が、前記第1のカードスロット(2111)に収容された前記データカード(300)を前記第2のカードスロット(2112)に収容された前記データカード(300)から分離するように構成される、請求項3に記載のカードホルダ(20)。
【請求項5】
前記カードトレイ(21)が前記第1の表面(217)に画定された固定溝(219)をさらに含み、前記固定溝(219)が前記摺動溝(212)と連通しており、前記弾性要素(23)が前記固定溝(219)に収容され、前記固定溝(219)が前記カードスロット(211)に隣接する第1の壁(2191)と、前記第1の壁(2191)と反対側の第2の壁(2192)とを含み、前記第2の壁(2192)が、前記固定溝(219)の2つの端部から前記固定溝(219)の中間位置に向かう方向に沿って前記カードスロット(211)から次第に離れて延びる、請求項2?4のいずれか一項に記載のカードホルダ(20)。
【請求項6】
前記弾性要素(23)の2つの端部が前記固定溝(219)の2つの端部に固定されている、請求項5に記載のカードホルダ(20)。
【請求項7】
前記弾性要素(23)が前記固定溝(219)の内壁に当接することができる、請求項5に記載のカードホルダ(20)。
【請求項8】
前記摺動ブロック(22)が前記弾性要素(23)の長さ方向の中間位置に位置し、前記摺動溝(212)内での前記摺動ブロック(22)の摺動方向が前記カードスロット(211)の中間位置と位置合わせされる、請求項1に記載のカードホルダ(20)。
【請求項9】
前記カードトレイ(21)の端部に結合されたハンドル(24)をさらに含み、前記摺動溝(212)が前記カードスロット(211)と前記ハンドル(24)との間に位置する、請求項1?8のいずれか一項に記載のカードホルダ(20)。
【請求項10】
前記カードトレイ(21)が全体的に直方体形状を呈し、前記カードスロット(211)が端部と端部とが結合された4つの側壁によって画定され、前記側壁が、第1の側壁(213)と、第2の側壁(214)と、第3の側壁(215)と、第4の側壁(216)とを含む、請求項1?9のいずれか一項に記載のカードホルダ(20)。
【請求項11】
前記第1の側壁(213)および前記第3の側壁(215)が対向し、かつ第2の方向に沿って延び、前記第2の側壁(214)および前記第4の側壁(216)が対向し、かつ第1の方向に沿って延び、前記第2の側壁(214)が、前記第1の側壁(213)の第1の端部と前記第3の側壁(215)の第1の端部とを結合する一方で、前記第4の側壁(216)が、前記第1の側壁(213)の第2の端部と前記第3の側壁(215)の第2の端部とを結合する、請求項10に記載のカードホルダ(20)。
【請求項12】
前記データカード(300)が前記カードスロット(211)に収容されていない場合、前記摺動ブロック(22)が前記第1の方向に沿って第1の深さ(D1)だけ前記カードスロット(211)に挿入され、前記データカード(300)が前記カードスロット(211)に収容されている場合、前記摺動ブロック(22)が前記第1の方向に沿って第2の深さ(D2)だけ前記カードスロット(211)に挿入され、前記第1の深さ(D1)が前記第2の深さ(D2)より大きい、請求項10または11に記載のカードホルダ(20)。
【請求項13】
挿入装置(100)であって、
収容空間(12)を画定するカードソケット(10)と、
前記収容空間(12)に対して移動可能に挿抜可能な請求項1?12のいずれか一項に記載のカードホルダ(20)と
を含む、挿入装置(100)。
【請求項14】
請求項1?12のいずれか一項に記載のカードホルダ(20)を含む、端末(200)。」

第5 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

ア 「


(当審訳:[0010]任意選択的に,弾性位置決め構造は以下を含む:一端に張出部を有し,両側にストッパ部を有するスライダであって,取り付け溝内に移動可能に取り付けられるもの;及びスライダと通路開口部に対向する取り付け溝の側壁との間に取り付けられる弾性部材であって,弾性部材はスライダを弾性支持してスライダの張出部を通路開口部から延出させ,スライダのストッパ部を通路開口部の内端面に当接させるもの。)

イ 「


(当審訳:[0029]本実用新案が提供する位置決めカードトレイは,図1及び図2に示すように,電子カードを位置決めして取り付けることに用いられ,以下を含む:第一本体1であって,第一本体1の上面に前後中心が対称に配置された2枚の電子カードを収容する1つの収容溝2を有し,前端に把持部4を有するもの;及び収容溝2の左側壁及び/又は右側壁に取り付けられた弾性位置決め構造3であって,電子カードを取り付けた後に電子カードを収容溝2内に位置決めすることに用いられるもの。)

ウ 「


(当審訳:[0037]本実用新案の一つの具体的な実施例において,図1及び図2に示すように,収容溝2の右側壁の上端面に前後に間隔を置いて設置された2つの取り付け溝6を有し,且つ2つの取り付け溝6の左側壁にいずれも通路開口部7が開設され,2つの弾性位置決め構造3は,2つの取り付け溝6内にそれぞれ対応して取り付けられ,且つ弾性位置決め構造3の左端は通路開口部7から延出し,収容溝2の内底壁面と間隔を置いて設けられ,電子カードの右端は収容溝2の内底壁面と弾性位置決め構造3の左端との間に位置決めされる。
[0038]ここで,図1及び図2に示すように,弾性位置決め構造3は以下を含む:スライダ31であって,スライダ31の左端に張出部,前後両側に位置制限部を有するもの;
及びスライダ31と取り付け溝6の右側壁との間に取り付けられる弾性部材32であって,弾性部材32はスライダ31を弾性的に支持してスライダ31の張出部を通路開口部7から延出させ,スライダ31の位置制限部の左端を取り付け溝6の左側壁の右壁面に当接させ,それによりスライダ31を取り付け溝6内に位置制限し,スライダ31が通路開口部7から離脱することを効果的に回避するもの。
[0039]ここで,図1及び図2に示すように,スライダ31は「凸」形状を有し,「凸」形状の小端は通路開口部7から取付溝6に延出しており,弾性部材32は,ばね線である。
[0040]さらに,図1から図3に示すように,収容溝2は上下に貫通する貫通溝であり,貫通溝の左側内壁面及び右側内壁面にいずれも支持縁部8を有し,且つ支持縁部8は弾性位置決め構造3の下方に位置し,電子カードは支持縁部8とスライダ31との間で上下方向に位置決めされてクランプされる。
[0041]好ましくは,2枚の電子カードは2枚のSIMカードであってもよく,2枚のSDカード又は2枚のTカードであってもよく,さらに1枚のSIMカード及び1枚のSDカード等であってもよいものであり,いずれも本出願の目的を実現することができ,その趣旨は本実用新案の設計思想から逸脱せず,ここでは説明を省略し,いずれも本出願の保護範囲内に属すべきである。)

エ 「


(当審訳:[0043]SIMカードの右端を支持縁部8とスライダ31との間に挿入した後,左端を収容溝2に押し込んで,SIMカードの取り付けを完了する。)

オ 「図1



カ 「図2



(2)引用発明
引用文献1の上記記載について検討する。

ア 上記(1)イの「位置決めカードトレイは」「電子カードを位置決めして取り付けることに用いられ,以下を含む:第一本体1であって」「上面に」「電子カードを収容する」「収容溝2を有し,前端に把持部4を有するもの;及び収容溝2の」「右側壁に取り付けられた弾性位置決め構造3であって,電子カードを取り付けた後に電子カードを収容溝2内に位置決めすることに用いられるもの」との記載,上記(1)オに摘記した図1及び上記(1)カに摘記した図2の記載から,引用文献1には,
「上面に電子カードを収容する収容溝2を有し,前端に把持部4を有する第一本体1と,収容溝2の右側壁に取り付けられ,電子カードを取り付けた後に電子カードを収容溝2内に位置決めすることに用いられる弾性位置決め構造3とを含み,電子カードを位置決めして取り付けることに用いられる位置決めカードトレイ」が記載されていると認められる。

イ 上記(1)ウの段落[0037]の「収容溝2の右側壁」「に」「設置された」「取り付け溝6を有し」,「取り付け溝6の左側壁に」「通路開口部7が開設され」,「弾性位置決め構造3は」,「取り付け溝6内に」「取り付けられ」,「弾性位置決め構造3の左端は通路開口部7から延出し,収容溝2の内底壁面と間隔を置いて設けられ,電子カードの右端は収容溝2の内底壁面と弾性位置決め構造3の左端との間に位置決めされる」との記載,上記(1)オに摘記した図1及び上記(1)カに摘記した図2の記載から,引用文献1には,「収容溝2の右側壁に取り付け溝6が設置され,取り付け溝6の左側壁に通路開口部7が開設され,弾性位置決め構造3は,取り付け溝6内に取り付けられ,弾性位置決め構造3の左端は通路開口部7から延出し,収容溝2の内底壁面と間隔を置いて設けられ,電子カードの右端は収容溝2の内底壁面と弾性位置決め構造3の左端との間に位置決めされ」ることが記載されていると認められる。

ウ 上記(1)カに摘記した図2の記載を参照すると,「収容溝2」と「取り付け溝6」とが「通路開口部7」を介して“連通”していることが読み取れるから,引用文献1には,“収容溝2と取り付け溝6は通路開口部7を介して連通し”ていることが記載されていると認められる。

エ 上記(1)ウの段落[0038]の「弾性位置決め構造3は以下を含む:スライダ31であって,スライダ31の左端に張出部」「を有するもの;及びスライダ31と取り付け溝6の右側壁との間に取り付けられる弾性部材32であって,弾性部材32はスライダ31を弾性的に支持してスライダ31の張出部を通路開口部7から延出させ,スライダ31の位置制限部の左端を取り付け溝6の左側壁の右壁面に当接させ,それによりスライダ31を取り付け溝6内に位置制限し」との記載から,引用文献1には,「弾性位置決め構造3は,左端に張出部を有するスライダ31と,スライダ31と取り付け溝6の右側壁との間に取り付けられる弾性部材32であって,スライダ31を弾性的に支持してスライダ31の張出部を通路開口部7から延出させ,スライダ31の位置制限部の左端を取り付け溝6の左側壁の右壁面に当接させ,それによりスライダ31を取り付け溝6内に位置制限する弾性部材32とを含」むことが記載されていると認められる。

オ 上記(1)アの「スライダであって,取り付け溝内に移動可能に取り付けられるもの」との記載から,「スライダは,取り付け溝内に移動可能に取り付けられるもの」であることが記載されていると認められる。

カ 上記(1)ウの段落[0039]の「弾性部材32は,ばね線である」との記載,及び上記(1)カに摘記した図2の記載から,「弾性部材32は,ばね線であ」ることが記載されていると認められる。

キ 上記(1)ウの段落[0040]の「収容溝2は」「左側内壁面及び右側内壁面に」「支持縁部8を有し」,「支持縁部8は弾性位置決め構造3の下方に位置し,電子カードは支持縁部8とスライダ31との間で上下方向に位置決めされ」との記載,上記(1)オに摘記した図1及び上記(1)カに摘記した図2の記載から,引用文献1には,「収容溝2は左側内壁面及び右側内壁面に支持縁部8を有し,支持縁部8は弾性位置決め構造3の下方に位置し,電子カードは支持縁部8とスライダ31との間で上下方向に位置決めされ」ることが記載されていると認められる。

ク 上記(1)のウの段落[0041]の「電子カードは」「SIMカードであってもよく」との記載から,引用文献1には,「電子カードはSIMカードであってもよ」いことが記載されていると認められる。

ケ 上記(1)のエの「SIMカードの右端を支持縁部8とスライダ31との間に挿入した後,左端を収容溝2に押し込んで,SIMカードの取り付けを完了する」との記載,上記(1)オに摘記した図1及び上記(1)カに摘記した図2の記載から,引用文献1には,「SIMカードの右端を支持縁部8とスライダ31との間に挿入した後,左端を収容溝2に押し込んで,SIMカードの取り付けを完了する」ことが記載されていると認められる。

コ 上記ア?ケより,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「上面に電子カードを収容する収容溝2を有し,前端に把持部4を有する第一本体1と,収容溝2の右側壁に取り付けられ,電子カードを取り付けた後に電子カードを収容溝2内に位置決めすることに用いられる弾性位置決め構造3とを含み,電子カードを位置決めして取り付けることに用いられる位置決めカードトレイであって,
前記収容溝2の右側壁に取り付け溝6が設置され,取り付け溝6の左側壁に通路開口部7が開設され,前記弾性位置決め構造3は,前記取り付け溝6内に取り付けられ,前記弾性位置決め構造3の左端は前記通路開口部7から延出し,前記収容溝2の内底壁面と間隔を置いて設けられ,前記電子カードの右端は収容溝2の内底壁面と弾性位置決め構造3の左端との間に位置決めされ,
前記収容溝2と前記取り付け溝6は前記通路開口部7を介して連通しており,
前記弾性位置決め構造3は,左端に張出部を有するスライダ31と,前記スライダ31と前記取り付け溝6の右側壁との間に取り付けられる弾性部材32であって,前記スライダ31を弾性的に支持して前記スライダ31の張出部を前記通路開口部7から延出させ,前記スライダ31の位置制限部の左端を前記取り付け溝6の左側壁の右壁面に当接させ,それにより前記スライダ31を取り付け溝6内に位置制限する弾性部材32とを含み,
前記スライダ31は,前記取り付け溝6内に移動可能に取り付けられるものであり,
前記弾性部材32は,ばね線であり,
前記収容溝2は左側内壁面及び右側内壁面に支持縁部8を有し,前記支持縁部8は前記弾性位置決め構造3の下方に位置し,前記電子カードは前記支持縁部8と前記スライダ31との間で上下方向に位置決めされ,
前記電子カードはSIMカードであってもよく,
前記SIMカードの右端を前記支持縁部8と前記スライダ31との間に挿入した後,左端を前記収容溝2に押し込んで,前記SIMカードの取り付けを完了する,
位置決めカードトレイ。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明の「電子カード」は,「SIMカード」であってもよいものである一方,本願発明1の「データカード(300)」は,本願明細書の段落0028の記載によれば,「SIMカード、TFカード、SDカードなどとすることができる」ものであるから,引用発明の「電子カード」は,本願発明1の「データカード(300)」に相当する。

イ 引用発明の「位置決めカードトレイ」は,「上面に電子カードを収容する収容溝2」を有する「第一本体1」を含み,前記収容溝2に電子カードを“装着する”ことができるものであるから,本願発明1の「データカード(300)を装着するように構成されたカードホルダ(20)」に相当する。

ウ 引用発明の「収容溝2」は,「電子カードを収容する」ものであるから,本願発明1の「前記データカード(300)を収容するように構成されたカードスロット(211)」に相当する。また,引用発明の「収容溝2」は「第一本体1」に“画定され”ているといえるから,引用発明の「収容溝2」を“画定する”「第一本体1」は,本願発明1の「カードスロット(211)を画定するカードトレイ(21)」に相当する。

エ 引用発明の「取り付け溝6」は,「通路開口部7を介して」「収容溝2」と「連通して」いるから,引用発明の「収容溝2」と「連通」する「取り付け溝6」は,本願発明1の「カードスロット(211)と連通する摺動溝(212)」に相当する。

オ 引用発明の「スライダ31」は,「取り付け溝6内」で「移動可能」なものであり,例えば「取り付け溝6」の内部において,「弾性部材32」に押されると,「取り付け溝6」に“沿って”,図2の左方向に“摺動可能”であるから,本願発明1の「摺動溝(212)に沿って摺動可能な摺動ブロック(22)」に相当する。

カ 引用発明の「弾性部材32」は,本願発明1の「弾性要素(23)」に相当する。そして,引用発明の「弾性部材32」は,「ばね線」であり,「前記スライダ31を弾性的に支持して前記スライダ31の張出部を前記通路開口部7から延出させ」るものであるから,「ばね線」が“変形状態”にある場合に,「スライダ31」を,図2の左方向に“押圧”していることは明らかである。
したがって,引用発明と本願発明1とは,“弾性要素(23)であって,前記弾性要素(23)が変形状態にある場合に前記摺動ブロック(22)を押圧するように構成された,弾性要素(23)”を含んでいる点で共通する。

キ 上記オで検討したように,引用発明の「スライダ31」は,「取り付け溝6」の内部において,「弾性部材32」に押されると,「取り付け溝6」に“沿って”,図2の左方向に“摺動可能”であるところ,図2の記載からすると,図2の“左方向”は,「弾性部材32(ばね線)」の“長さ方向”に対して“垂直な方向”であるといえるから,引用発明と本願発明1とは,「前記摺動ブロック(22)が,前記摺動溝(212)内で前記弾性要素(23)の長さ方向に対して垂直な方向に沿って摺動」する点で共通している。

ク 上記ア?キの検討から,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「データカード(300)を装着するように構成されたカードホルダ(20)であって,
前記データカード(300)を収容するように構成されたカードスロット(211)を画定するカードトレイ(21)と,前記カードスロット(211)と連通する摺動溝(212)と,
前記摺動溝(212)に沿って摺動可能な摺動ブロック(22)と,
弾性要素(23)であって,前記弾性要素(23)が変形状態にある場合に前記摺動ブロック(22)を押圧するように構成された,弾性要素(23)と
を含み,
前記摺動ブロック(22)が,前記摺動溝(212)内で前記弾性要素(23)の長さ方向に対して垂直な方向に沿って摺動する,カードホルダ(20)。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1では,「弾性要素(23)」が「前記摺動ブロック(22)に結合され,前記カードトレイ(21)に固定され」ているのに対して,引用発明の「弾性部材32」は,「スライダ31を弾性的に支持」しているものの,「スライダ31」に結合されているか否かは明らかでなく,また,「第一本体1」に固定されているか否かも明らかではない点。

(相違点2)本願発明1は,前記弾性要素(23)が変形状態にある場合に前記摺動ブロック(22)を押圧して「前記摺動ブロック(22)を前記データカード(300)の第1の側面に当接させる」ように構成されているのに対し,引用発明は,弾性部材32がスライダ31を弾性的に支持して,前記スライダ31の張出部を通路開口部7から延出させているものの,電子カードは支持縁部8とスライダ31との間で上下方向に位置決めされるものであり,電子カードの側面にスライダ31の張出部を当接させるように構成されたものではない点。

(相違点3)本願発明1は,「前記弾性要素(23)が前記摺動ブロック(22)を貫通するか,または前記摺動ブロック(22)の両側面から外側に延びる」という構成であるのに対し,引用発明の「弾性部材32」は,「スライダ31と取り付け溝6の右側壁との間に取り付けられる」「ばね線」である点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み,上記相違点3について先に検討すると,相違点3に係る本願発明1の「前記弾性要素(23)が前記摺動ブロック(22)を貫通するか,または前記摺動ブロック(22)の両側面から外側に延びる」という構成は,上記引用文献1には記載も示唆もなく,本願優先日前に当該技術分野における周知技術であったともいえない。
また,引用発明の「ばね線」を上記相違点3に係る本願発明1のような弾性要素の構成に変更する動機付けがあるともいえない。
したがって,上記相違点1,2について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-14について
本願発明2-14は,本願発明1を限定する発明であり,本願発明1の上記相違点3に係る構成と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
<理由1(特許法第29条第2項)について>
審判請求時の補正により,本願発明1-14は「前記弾性要素(23)が前記摺動ブロック(22)を貫通するか,または前記摺動ブロック(22)の両側面から外側に延びる」という事項を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由1を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-11-10 
出願番号 特願2019-537209(P2019-537209)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山崎 慎一
須田 勝巳
発明の名称 カードホルダ、挿入装置および端末  
代理人 吉田 昌司  
代理人 関根 毅  
代理人 宮嶋 学  
代理人 中村 行孝  
代理人 出口 智也  
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