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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q |
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管理番号 | 1379522 |
審判番号 | 不服2020-17922 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-12-28 |
確定日 | 2021-11-01 |
事件の表示 | 特願2016- 74449「POS端末装置及び広告配信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月12日出願公開、特開2017-187853〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成28年4月1日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 2年 2月28日付け:拒絶理由通知書 令和 2年 4月23日 :意見書,手続補正書の提出 令和 2年 9月30日付け:拒絶査定 令和 2年12月28日 :審判請求書,手続補正書の提出 令和 3年 4月28日付け:前置報告 第2 令和2年12月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年12月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所であり,審判請求人が付与した。) 「【請求項1】 POS端末装置であって, 顧客の購入情報を記憶する記憶部と, 前記顧客の精算額を含む精算情報を表示する精算情報表示部と, 前記精算情報表示部に表示される前記精算情報を視認する顧客が同時に視認可能であることが推定される所定の距離内に配置される,前記顧客に向けて表示する複数の広告のうちのいずれかを,前記精算情報に隣接させて前記精算額の表示に合わせて表示する広告表示部と を備え, 前記精算情報表示部において前記顧客の精算情報を表示中に,前記複数の広告のうちのいずれかを前記広告表示部に表示した後,当該いずれかの広告と該広告の表示対象である前記顧客の属性情報との対応関係を前記記憶部に記憶することを特徴とするPOS端末装置。」 (2)本件補正による明細書の補正 明細書の【0007】についても,本件補正により,上記(1)と同じ補正がなされた。 (3)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の,令和2年4月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 POS端末装置であって, 顧客の購入情報を記憶する記憶部と, 前記顧客の精算情報を表示する精算情報表示部と, 前記精算情報表示部に表示される前記精算情報を視認する顧客が同時に視認可能であることが推定される所定の距離内に配置される,前記顧客に向けて表示する複数の広告のうちのいずれかを表示する広告表示部とを備え, 前記精算情報表示部において前記顧客の精算情報を表示中に,前記複数の広告のうちのいずれかを前記広告表示部に表示した後,当該いずれかの広告と該広告の表示対象である前記顧客の属性情報との対応関係を前記記憶部に記憶することを特徴とするPOS端末装置。」 2 補正の適否 本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記顧客の精算情報」及び「前記顧客に向けて表示する複数の広告のうちのいずれかを表示する広告表示部」について,それぞれ,「前記顧客の精算額を含む精算情報」及び「前記顧客に向けて表示する複数の広告のうちのいずれかを,前記精算情報に隣接させて前記精算額の表示に合わせて表示する広告表示部」との限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また,発明の特別な技術的特徴を変更する補正でもなく(同条第4項),新規事項を追加する補正でもない(同条第3項)。 また,明細書の【0007】についてする補正も,新規事項を追加する補正(同条第3項)ではない。 そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2006-146782号公報(平成18年6月8日出願公開。以下「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 あ 「【背景技術】 【0002】 販売促進のための商品広告は,新聞や雑誌等の紙媒体,TVやラジオ等の放送媒体,携帯電話やインターネット等の通信媒体,電車やバス等の公共交通手段の車内広告等の種々の媒体を介して行なわれている。斯かるマスメディアによる商品広告は,不特定多数に対して且つ広域の潜在顧客に対してなされるので,インパクトが大きいので,広告主は高額の広告料を支払うのが一般的である。しかし,斯かる広告を見聞きした者が,それらの媒体を介して直ちに購入する消費者となるとは限らないので,その広告効果を判断することは容易でない。 【0003】 一方,コンビニエンスストア(以下,単にコンビニという)等の小売店舗は,消費者の身近にあり,顧客は消費者であるのが一般的である。従って,コンビニ等の小売店舗で商品の広告を行なうことは,販売促進のために極めて有効である。特に,斯かる小売店舗では決済その他の目的でPOS端末が導入されており,POS端末には大型のカラー液晶表示装置(LCD)等の表示装置が設けられている。この表示装置は,両面表示方であり,片側の表示装置は,店員が購入された商品の入力等に使用され,他側の表示装置は,顧客に対して入力結果および合計金額等の表示と共に各種商品を宣伝広告する広告画面としても使用されている。」 い 「【0013】 先ず,図1は,本発明による広告配信装置の好適実施例の構成を示すブロック図である。この広告配信装置10は,1以上の店舗20(この特定例にあっては,店舗20Aおよび店舗20Bの2店舗)にそれぞれ設置されたPC(パーソナルコンピュータ)等のストアコンピュータ21A,21B(以下総称してコンピュータ21という場合もある)および広告表示機能付き決済端末(POS端末)22A,22B(以下,総称して決済端末22という場合もある)を備えている。また,本部30には,管理サーバ(又はホストサーバ)31と各種データベース,即ち広告履歴データベース32,購入履歴データベース33および成功報酬データベース34などを備えている。 【0014】 これら各店舗20には,不特定多数の顧客である消費者23が適宜買い物のために来店する。各消費者(又は顧客)23は,それぞれ本人を特定(識別)するポイントカード,クレジットカード又は電子マネー等(以下,単にカードという)を保持するものとする。この消費者のカードは,決済時に例えば店員に提示して,例えばバーコードリーダ等の光学的,電気的又は磁気的読取装置(図示せず)により決済端末22に読み込まれる。また,各ストアコンピュータ21および管理サーバ31は,有線又は無線通信回線により相互接続され,データ通信可能に構成されている。 【0015】 ここで,消費者23は,店舗20の顧客,即ちこの店舗20における何らかの商品又はサービスの購入対象者であり,上述の如く本人が特定できるポイントカード,電子マネーカード又はクレジットカード等のカードを保有する。決済端末22は,配信される商品広告が表示可能な広告画面を有すると共に決済機能を有する端末であり,例えば液晶画表示面(LCD)付きPOS端末である。ストアコンピュータ21は,各店舗20A,20Bに設置されてあるコンピュータであり,決済端末(POS端末)22と連動して各店舗20A,20Bの売上データ等を記録保存すると共に本部30と既存の通信回線を使用して売上データの集計や広告媒体の配信等を行なう。 【0016】(省略) 【0017】 次に,図1に示す広告配信装置10の動作を,図2?図5に示す具体例を参照して説明する。この具体例では,店舗20はコンビニとする。また,広告を表示する機能を持った決済端末22は,液晶表示画面に商品広告が表示可能な店舗20のPOS端末であるとする。尚,商品広告は,広告主からの広告媒体を本部30の管理サーバ31に登録し,既存の通信回線を経由し,店舗20A,20Bのストアコンピュータ21Aおよび21Bに配信する。そして,この広告媒体を最終的には,決済端末22Aおよび22Bに送信して,その広告画面に表示する。 【0018】 先ず,顧客である消費者23は,店舗20独自のポイントカード,電子マネーカード又はクレジットカード等の本人を特定するカードを予め用意して店舗20が販売する商品を購入する。以下,店舗20で用意した独自のポイントカードを使用するものとする。このとき,消費者23の購入時間(即ち,決済端末22での決済時間)等から購入時に配信されていた広告を推定する。決済端末22には,図2に示す如き「※※オーケストラのコンサート」に関する商品広告が表示されているとする。換言すると,この消費者23は,決済端末22による決済中にこの「※※オーケストラのコンサート」に関する商品広告を見たものと推定する。そこで,この広告情報および消費者23のポイントカードの識別番号等は,決済端末22を介して店舗20のストアコンピュータ21に既存の通信手段を使用して送られる。この店舗20が複数の店舗を有するチェーン店の場合には,各店舗20Aおよび20Bの情報は,それぞれストアコンピュータ21Aおよび21Bを介して本部30の管理サーバ31に既存の通信手段で送信される。本部30の管理サーバ31には,上述の如く広告履歴データベース32,購入履歴データベース33および成功報酬データベース34が接続されている。」 う 「【0022】 次に,図6は,上述した本発明による広告配信装置10の詳細構成を示す機能ブロック図である。決済端末(POS端末)22は,顧客データ入力部61,商品情報入力部62,顧客購入履歴部63,広告データ記憶部64,日時時間部65,表示部66および送信部67を含んでいる。ストアコンピュータ21は,送信部71,広告データ記憶部72,顧客購入履歴部73,日時時間部74および送信部75を含んでいる。また,本部30には,管理サーバ(又はホストサーバ)31,広告履歴データベース32,購入履歴データベース33,成功報酬データベース34,広告データベース35,日時時間部36および送信部37を有する。 【0023】 ここで,各機能部の主要機能を説明する。顧客データ入力部61は,顧客である消費者23の保有するポイントカード等の本人を特定するデータを光学,電気又は磁気的読取手段により読み取り,顧客購入履歴部63に入力する。商品情報入力部62は,各商品に貼付されたバーコード又はICチップ等の商品情報,例えば商品名,重量,価格その他の情報を読み取り,顧客購入履歴部63に入力する。顧客購入履歴部63は,顧客データ入力部61および商品情報入力部62から入力されるデータを,日時時間部65から読み込んだ正確な日時(消費者23が決済端末22で購入した商品の決済処理している日時)情報および広告データ記憶部64からの広告データと共に記憶保存する。広告データ記憶部64は,顧客データ入力部61および商品情報入力部62から顧客購入履歴部63へのデータ入力時に決済端末22に広告画面に表示されていた商品広告データを顧客購入履歴部63に入力する。日時時間部65は,ストアコンピュータ21の日時時間部74の管理下で,正確な日時を保持し,顧客購入履歴部63の要求に基づきその情報を送信する。表示部66は,本部30の広告データベース35から配信される商品広告と共に決済端末22の決済データ,即ち顧客が購入した商品情報,合計金額,顧客から受け取った金額および釣り銭等を表示する。送信部67は,決済端末22とストアコンピュータ21間のデータの送受信を行なう。」 え 上記「あ」【0003】,上記「い」【0015】及び【0017】,上記「う」【0022】及び【0023】のPOS端末の「液晶表示画面(LCD)」と「表示部66」に関する記載から,POS端末の「液晶表示画面(LCD)」と「表示部66」とは,消費者23が購入した商品の合計金額等と商品広告を表示することから,同じものである。 (イ)上記(ア)から,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「 広告表示機能付き決済端末(POS端末)22であって(【0003】【0013】【0015】【0017】), 顧客データ入力部61,商品情報入力部62,顧客購入履歴部63,広告データ記憶部64,表示部66を含んでおり(【0022】), 表示部66は,顧客に対して入力結果および合計金額等の表示と共に各種商品を宣伝広告する広告画面としても使用され(【0003】「え」),本部30の広告データベース35から配信される商品広告と共に決済端末22の決済データ,即ち顧客が購入した商品情報,合計金額,顧客から受け取った金額および釣り銭等を表示し(【0023】), 消費者23が,決済端末22による決済中に「※※オーケストラのコンサート」に関する商品広告を見たものと推定し(【0018】), 顧客データ入力部61は,決済時に店員に提示された,顧客である消費者23の保有するポイントカード等の本人を特定するデータを読み取り,商品情報入力部62は,各商品に貼付された商品情報,例えば商品名,重量,価格その他の情報を読み取り,顧客購入履歴部63は,顧客データ入力部61および商品情報入力部62から入力されるデータを,正確な日時(消費者23が決済端末22で購入した商品の決済処理している日時)情報及び決済端末22に広告画面に表示されていた広告データと共に記憶保存する(【0014】【0015】【0023】), 広告表示機能付き決済端末(POS端末)22。」 イ 引用文献2 (ア)前置報告で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2008-226180号公報(平成20年9月25日出願公開。以下「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。なお,下線は,当審で付与した。 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら,上述した特許文献1に記載されているPOS端末では,購入を希望する商品を顧客自身で検索して入力するものであるため,店舗側が画策する広告商品等の販売促進効果に寄与するものとはなり得ない。また,上述した特許文献2に記載されているPOS端末では,精算が混み合っていて順番待ちが発生している場合には有効であるが,精算の順番待ちが発生していないときには,顧客用のタッチパネル付きディスプレイの使用の機会が失われるため,販売促進効果が見込めない。」 「【0022】 売場用POS端末10は,店舗の売場等に設置される端末装置であり,顧客が購入する商品の精算を行う。図2は,売場用POS端末10の構成を示す図であり,図11は,売場用POS端末10の外観図である。各図に示すように,売場用POS端末10は,物理的には,例えば,顧客用タッチパネル付きディスプレイ12(顧客用表示装置),店員用タッチパネル付きディスプレイ13,CPU14,メモリ15,通信インタフェース等の通信装置16,バーコードスキャナ等の読取装置17,キーボード等の入力キー18,釣銭装置19,プリンタ等の印字装置1A等を有している。また,売場用POS端末10は,機能的には,例えば,処理実行部11を有する。この処理実行部11は,CPU14がメモリ15に格納されているプログラムを実行することによって機能する。この処理実行部11の詳細については後述する。」 「【0025】 図2を参照して,本実施例1における売場用POS端末10の機能構成について説明する。同図に示すように,売場用POS端末10は,処理実行部11を有する。処理実行部11は,入力キー,タッチパネル,読取装置等の各種入力装置を介して入力される操作指示信号を検知するとともに,この操作指示信号に対応する各種の処理を実行する。各種の処理としては,例えば,広告商品表示処理,商品登録処理,預り金処理,釣銭算出処理,予約情報送信処理,レシート印字処理等がある。 【0026】 広告商品表示処理は,店舗側が画策する広告商品に関する広告商品情報を顧客に提示する処理である。商品登録処理は,読取装置17から順次読み込まれる顧客の購入商品に関する情報を用いて,購入商品に対応する支払い金額を加算する処理である。預り金処理は,釣銭装置19から投入される預り金の金種を識別し,預り金の額を算出する処理である。釣銭算出処理は,支払い金額の合計と預かり金額とを用いて釣銭の額を算出する処理である。予約情報送信処理は,顧客が予約した商品に関する予約商品情報を店舗サーバ30に送信する処理である。レシート印字処理は,レシート用紙に精算内容等を印字する処理である。 【0027】(省略) 【0028】 広告商品表示部11aは,顧客向けの広告商品情報を顧客用タッチパネル付きディスプレイ12に表示させる。広告商品情報は,予めメモリ15に登録されている。広告商品情報としては,例えば,広告商品を一意に特定する広告番号,商品名,商品価格,商品画像等が該当する。図3は,各ディスプレイに表示される表示画面例を示す図である。図3(a)は,顧客用タッチパネル付きディスプレイに表示される表示画面の一例を示す図である。同図に示すように,表示画面の左側には,複数の広告商品が,それぞれの商品画像,商品名および商品価格を用いて表示されている。商品登録処理中に,この表示画面に表示されているいずれかの広告商品をタッチして選択すると,この選択した商品が予約商品として精算されることになる。 【0029】 商品登録処理部11bは,読取装置17によって読み込まれた購入商品情報を用いて,顧客用タッチパネル付きディスプレイ12および店員用タッチパネル付きディスプレイ13に表示される商品リストの明細欄に明細情報を追加表示させる。購入商品情報は,商品に付されたバーコードに含まれる情報である。この購入商品情報には,例えば,購入商品を一意に特定する商品番号,商品名,商品価格等が含まれる。各ディスプレイに表示される商品リストには,例えば,商品名および商品価格等を含む明細情報,合計金額,預り金額,釣銭額等が表示される。 【0030】 図3(a)は,顧客用タッチパネル付きディスプレイに表示される表示画面の一例を示す図である。同図に示すように,表示画面の右側には,商品リストが表示されており,この商品リストには,商品名および商品価格等を含む明細情報欄,合計金額欄,預り金額欄,釣銭額欄が設けられている。また,図3(b)は,店舗用タッチパネル付きディスプレイに表示される表示画面の一例を示す図である。同図に示すように,表示画面には,商品リストが表示されており,この商品リストには,商品名,商品単価,数量および商品毎合計価格等を含む明細情報欄,合計金額欄が設けられている。」 ![]() 【図3】(a) (イ)上記(ア)から,引用文献2には,次の技術的事項が記載されている。 顧客用タッチパネル付きディスプレイ12を有する売場用POS端末10は,広告商品表示処理,商品登録処理を実行し, 広告商品表示処理は,店舗側が画策する広告商品に関する広告商品情報を顧客に提示する処理であり,顧客向けの広告商品情報を顧客用タッチパネル付きディスプレイ12に表示させ, 商品登録処理は,読取装置17から順次読み込まれる顧客の購入商品に関する情報を用いて,購入商品に対応する支払い金額を加算する処理であり,顧客用タッチパネル付きディスプレイ12に,表示される商品リストの明細欄に明細情報を追加表示させ, 顧客用タッチパネル付きディスプレイに表示される表示画面の左側には,複数の広告商品が,それぞれの商品画像,商品名および商品価格を用いて表示され,表示画面の右側には,商品リストが表示されており,この商品リストには,商品名および商品価格等を含む明細情報欄,合計金額欄,預り金額欄,釣銭額欄が設けられていること。 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「広告表示機能付き決済端末(POS端末)22」は,後述する相違点は別にして,本件補正発明の「POS端末装置」に相当する。 (イ)引用発明の「顧客」及び「消費者23」は,本件補正発明の「顧客」に相当する。引用発明の,「商品情報入力部62から入力されるデータ」であって,「正確な日時(消費者23が決済端末22で購入した商品の決済処理している日時)情報」とともに記憶される「各商品に貼付された商品名,重量,価格その他の情報」は,本件補正発明の「顧客の購入情報」に相当し,引用発明の,「正確な日時(消費者23が決済端末22で購入した商品の決済処理している日時)情報」とともに記憶される「各商品に貼付された商品名,重量,価格その他の情報」を記憶する「顧客購入履歴部63」は,本件補正発明の「顧客の購入情報を記憶する記憶部」に相当する。 (ウ)引用発明において,決済端末22の「決済データ」即ち「顧客が購入した商品情報,合計金額,顧客から受け取った金額および釣り銭等」は,本件補正発明の「顧客の精算額を含む精算情報」に相当し,引用発明の当該「顧客が購入した商品情報,合計金額,顧客から受け取った金額および釣り銭等」を表示する「表示部66」は,本件補正発明の「前記顧客の精算額を含む精算情報を表示する精算情報表示部」と,「前記顧客の精算額を含む精算情報を表示する表示機能部」で共通する。 (エ)引用発明の「商品広告」又は「配信されていた広告」は,本部の広告データベース35に複数記憶されていることは明らかであり,この広告データベース35から配信された「広告データ」を,宣伝広告として表示部66で表示したものである点で,本件補正発明の「前記顧客に向けて表示する複数の広告のうちいずれか」に相当する。 そして,引用発明において,「表示部66は,顧客に対して入力結果および合計金額等の表示と共に各種商品を宣伝広告する広告画面としても使用され」ることで,「消費者23が,決済端末22による決済中に「※※オーケストラのコンサート」に関する商品広告を見たものと推定」されるものであるから,「商品広告」は,消費者23が決済中に合計金額等である「決済データ」を視認しているときに,消費者23の視野の範囲内に配置されていることは明らかである。そうすると,引用発明の,表示部66で表示される,「決済データ」を視認しているときの消費者23の視野の範囲内に配置されている「商品広告」は,本件補正発明の「前記精算情報表示部に表示される前記精算情報を視認する顧客が同時に視認可能であることが推定される所定の距離内に配置される,前記顧客に向けて表示する複数の広告のうちのいずれか」に相当する。そして,引用発明の,このような配置の関係にある「商品広告」を表示する「表示部66」は,本件補正発明の「前記精算情報表示部に表示される前記精算情報を視認する顧客が同時に視認可能であることが推定される所定の距離内に配置される,前記顧客に向けて表示する複数の広告のうちのいずれかを」「表示する広告表示部」と,「前記精算情報を視認する顧客が同時に視認可能であることが推定される所定の距離内に配置される,前記顧客に向けて表示する複数の広告のうちのいずれかを」「表示する表示機能部」で共通する。 (オ)上記(ウ)及び(エ)のとおりであるから,引用発明の「表示部66」は,本件補正発明の「前記顧客の精算額を含む精算情報を表示する精算情報表示部」及び「前記精算情報表示部に表示される前記精算情報を視認する顧客が同時に視認可能であることが推定される所定の距離内に配置される,前記顧客に向けて表示する複数の広告のうちのいずれかを」「表示する広告表示部」と,「前記顧客の精算額を含む精算情報を表示し,記精算情報を視認する顧客が同時に視認可能であることが推定される所定の距離内に配置される,前記顧客に向けて表示する複数の広告のうちのいずれかを」「表示する表示機能部」で共通する。 (カ)引用発明の,表示部66が「顧客に対して入力結果および合計金額等の表示と共に各種商品を宣伝広告する広告画面としても使用され」ることは,顧客に対して入力結果および合計金額等を表示するという決済中に,広告を表示することであるから,引用発明の表示部66の当該表示機能は,本件補正発明の「前記精算情報表示部において前記顧客の精算情報を表示中に,前記複数の広告のうちのいずれかを前記広告表示部に表示した」ことに相当する。また,引用発明の,顧客データ入力部61が読み取る「決済時に店員に提示された,顧客である消費者23の保有するポイントカード等の本人を特定するデータ」は,本件補正発明の「前記顧客の属性情報」に相当する。 そして,引用発明の,「顧客データ入力部61」「から入力されるデータ」を,決済端末22に広告画面に「表示されていた広告データ」「と共に」「記憶保存する」ことは,本件補正発明の「前記複数の広告のうちのいずれかを前記広告表示部に表示した後,当該いずれかの広告と該広告の表示対象である前記顧客の属性情報との対応関係を前記記憶部に記憶する」に相当する。 イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。 <一致点> POS端末装置であって, 顧客の購入情報を記憶する記憶部と, 前記顧客の精算額を含む精算情報を表示し,前記精算情報を視認する顧客が同時に視認可能であることが推定される所定の距離内に配置される,前記顧客に向けて表示する複数の広告のうちのいずれかを表示する表示機能部と を備え, 前記表示機能部において前記顧客の精算情報を表示中に,前記複数の広告のうちのいずれかを前記広告表示部に表示した後,当該いずれかの広告と該広告の表示対象である前記顧客の属性情報との対応関係を前記記憶部に記憶するPOS端末装置。 <相違点> (相違点1) 「表示機能部」が,本件補正発明は,「精算情報表示部」と「広告表示部」とに分かれているのに対し,引用発明では,「表示部66」が,決済データ及び商品広告の両方を表示する機能を有している点。 (相違点2) 本件補正発明は,顧客に向けて表示する複数の広告のうちのいずれかを,「前記精算情報に隣接させて」精算額の表示に合わせて表示するのに対し,引用発明では,商品広告と共に決済データを表示する構成であるものの,商品広告が「前記精算情報に隣接させて」表示されているか定かではない点。 (4)判断 以下,相違点について検討をする。 ア 相違点1 引用発明は,「表示部66」は,顧客に対して入力結果および合計金額等の表示と共に各種商品を宣伝広告する広告画面としても使用されることから,顧客に対して入力結果および合計金額等である決済データを表示する領域と,各種商品を宣伝広告する商品広告を表示するため領域とを有しており,それぞれ異なる表示制御が行われることは技術常識である。このため,決済データを表示する領域と,商品広告を表示する領域とを,それぞれ異なる「表示部」とすることで,上記相違点1の構成とすることに,技術的困難性は見いだせない。 イ 相違点2 引用文献2には,上記(2)イ(イ)のとおりの技術的事項が記載されており,特に,売場用POS端末10の顧客用タッチパネル付きディスプレイ12の,表示画面の左側には,複数の広告商品が,それぞれの商品画像,商品名および商品価格を用いて表示され,表示画面の右側には,商品リストが表示されており,この商品リストには,商品名および商品価格等を含む明細情報欄,合計金額欄,預り金額欄,釣銭額欄が設けられている構成が記載されている。 そして,引用発明と引用文献2に記載された技術的事項とは,POS端末の,顧客用の表示装置において,商品価格や合計金額等の決済データと商品広告を表示するという点で機能を共通にすることから,引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用して,上記相違点2の構成とすることは,当業者が容易になし得た事項である。 ウ 効果について 上記相違点1及び2の構成とすることで奏する,表示した広告を視認したことが推定される顧客の属性を収集できるという効果も,当業者の予測し得る範囲内のものである。 (5)小括 したがって,本件補正発明は,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 補正の却下の決定のむすび よって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和2年12月28日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?10に係る発明は,令和2年4月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(3)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1?10に係る発明は,本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献A?Dに記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 引用文献1:特開2006-146782号公報 引用文献A:特開2004-310369号公報(周知技術を示す文献) 引用文献B:特開2002-157654号公報(周知技術を示す文献) 引用文献C:特開2013-182568号公報(周知技術を示す文献) 引用文献D:特開2010-97256号公報(周知技術を示す文献) 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は,上記第2[理由]2(2)アに記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は,上記第2[理由]2で検討した本件補正発明の「前記顧客の精算額を含む精算情報」における「精算額を含む」との限定事項を削除し,及び,同「前記顧客に向けて表示する複数の広告のうちのいずれかを,前記精算情報に隣接させて前記精算額の表示に合わせて表示する広告表示部」における「前記精算情報に隣接させて前記精算額の表示に合わせて」(上記第2[理由]2(3)イの相違点2の構成)との限定事項を削除したものである。 よって,本願発明と引用発明とを対比すると,次の点で,一致又は相違する。 <一致点> POS端末装置であって, 顧客の購入情報を記憶する記憶部と, 前記顧客の精算情報を表示し,前記精算情報を視認する顧客が同時に視認可能であることが推定される所定の距離内に配置される,前記顧客に向けて表示する複数の広告のうちのいずれかを表示する表示機能部とを備え, 前記表示部機能において前記顧客の精算情報を表示中に,前記複数の広告のうちのいずれかを前記広告表示部に表示した後,当該いずれかの広告と該広告の表示対象である前記顧客の属性情報との対応関係を前記記憶部に記憶するPOS端末装置。 <相違点> 「表示機能部」が,本願発明は,「精算情報表示部」と「広告表示部」とに分かれているのに対し,引用発明では,「表示部66」が,決済データ及び商品広告の両方を表示する機能を有している点。 上記相違点についての当審の判断は,上記第2[理由]2(4)アで検討とおりであるから,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-08-30 |
結審通知日 | 2021-08-31 |
審決日 | 2021-09-16 |
出願番号 | 特願2016-74449(P2016-74449) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 貝塚 涼 |
特許庁審判長 |
畑中 高行 |
特許庁審判官 |
上田 智志 松田 直也 |
発明の名称 | POS端末装置及び広告配信システム |
代理人 | 吉澤 弘司 |
代理人 | 岡部 讓 |