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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1379605
審判番号 不服2020-8498  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-18 
確定日 2021-11-12 
事件の表示 特願2018-116246「データ接続を介して電気消費機器へ電力供給する装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月22日出願公開、特開2018-186089〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2011年(平成23年)8月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年9月2日、欧州)を国際出願日とする出願である特願2013-526571号の一部を平成28年5月20日に新たな特許出願とした特願2016-101098号の一部を平成30年6月19日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 8月14日 :上申書,手続補正書 提出
平成31年 4月15日付:拒絶理由通知
令和 元年10月21日 :意見書 提出
令和 2年 2月14日付:拒絶査定
令和 2年 6月18日 :審判請求書,手続補正書 提出

第2 令和2年 6月18日の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

令和2年 6月18日にされた手続補正を却下する。

[補正却下の理由]

1.手続補正の内容

令和2年 6月18日の手続補正(以下,「本件補正」という)により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,本件補正前の(1)のとおりの記載から,本件補正後の(2)のとおりの記載に補正された(下線は本件補正により変更された部分を示す)。

(1)本件補正前の請求項1

本件補正前の特許請求の範囲の請求項1は,平成30年 8月14日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
データ接続を介して電気消費機器に電力供給すると共に同じデータ接続を介してデータを伝送する装置であって、
前記データ接続を介して前記電気消費機器に電力供給するための電源と、
前記電気消費機器に送信されるべきデータを受信するデータ受取りユニットと、
前記電気消費機器に送信されるべきデータが受信され、且つ、前記電気消費機器への電力供給が非動作化されている場合に、前記データ接続を介した前記電気消費機器への電力供給を動作化するためのコントローラーと、
を含むことを特徴とする装置。」

(2)本件補正後の請求項1

「【請求項1】
データ接続を介して電気消費機器に電力供給すると共に同じデータ接続を介してデータを伝送する装置であって、
前記データ接続を介して前記電気消費機器に電力供給するための電源と、
前記電気消費機器に送信されるべきデータを受信するデータ受取りユニットと、
前記電気消費機器に送信されるべきデータが受信され、且つ、前記電気消費機器への電力供給が非動作化されている場合に、前記データ接続を介した前記電気消費機器への電力供給を動作化するためのコントローラーと、
を含み、
前記電気消費機器への電力供給が非動作化されている場合、前記データ接続を介した前記電気消費機器への電力供給はゼロである、
ことを特徴とする装置。」

2.補正の適否

(1)本件補正の目的

この補正は,本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「電気消費機器への電力供給が非動作化されている場合」について,「前記データ接続を介した前記電気消費機器への電力供給はゼロである」と限定するものであって,本件補正の前後で,請求項1に記載の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定された特許出願の際独立して特許を受けられるものであるか否かについて以下検討する。

(2)独立特許要件についての判断

ア 本件補正発明

本件補正発明は,上記1.(2)の記載により特定されるとおりのものである。

イ 引用発明

原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2009-081723号公報(以下,「引用文献1」という)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審で付加した。以下同様。)。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、中継装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークに接続された例えばプリンタ等の装置には、一般に、装置を省電力状態に設定する動作モードが設けられている。その中には、所定時間の間に信号を受信しない場合には、ネットワークとの通信を制御する回路部への電力供給を遮断する動作モードが設定されるものもある。
例えば特許文献1には、ネットワーク回路を一定時間毎にオン/オフすることで、装置の平均消費電力を抑える技術が記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】 特開2004-110695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで一般に、ネットワークに接続された装置にはネットワークを介して多種多様な信号が送信される。そのため、受信した信号がその装置において処理の必要がないものであっても、信号を受信する度毎に省電力状態から強制復帰させられ、装置に無駄な電力消費が発生するという問題がある。
本発明は、ネットワークに接続された装置における消費電力の低減を図ることを目的とする。」

(イ)図1


(ウ)「【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の通信システム1の全体構成を示す概略図である。図1に示した通信システム1では、例えばユーザの作業スペース(例えば、デスク)等に設置された端末装置2A?2C(以下、「端末装置2」とも総称する)と、端末装置2にて生成等された画像データを記録紙等の媒体に印刷処理する例えばプリンタ等の画像形成装置4A?4C(以下、「画像形成装置4」とも総称する)とが、中継装置(中継手段)の一例としてのハブ3に中継されて、通信手段の一例としてのネットワーク5を介して双方向に通信可能に接続されている。ここで、ネットワーク5としては、例えば通信回線やLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等が用いられる。通信回線としては、電話回線や衛星通信回線(例えば、デジタル衛星放送における空間伝送路)を含んでもよい。
また、ハブ3には、ハブ3に対する各種設定入力を行うための端末装置6が接続されている。
【0015】
なお、図1に示した本実施の形態の通信システム1では、一例として、ネットワーク5に3台の端末装置2A?2C、ハブ3に3台の画像形成装置4A?4Cがそれぞれ接続された構成を示している。しかし、ハブ3に接続する装置としては、画像形成装置4に限定されるものではなく、例えばパーソナルコンピュータ(PC)のように、ネットワーク5を介して送信される信号を処理する装置であれば、如何なる装置を接続してもよい。
【0016】
端末装置2は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)が用いられ、文書や図形、写真等からなる画像データを作成・保存する。そして、端末装置2は、作成された画像データや保存された画像データを印刷するに際し、画像データを画像形成装置4A?4Cのいずれかに対する印刷命令である印刷ジョブに変換して出力する。この印刷ジョブを構成するデータ(印刷ジョブデータ)は、画像データに加えて、各種印刷機能の設定や印刷を行う画像形成装置4A?4Cのいずれかの指定等を行うための情報である属性データを含んで構成される。
端末装置2から出力された印刷ジョブは、ネットワーク5を介してハブ3に送信され、ハブ3を中継して画像形成装置4A?4Cのいずれかに転送される。
【0017】
本実施の形態のハブ3は、ネットワーク5を介して送信される信号を受信する。そして、受信した信号に含まれる情報を解析し、その解析結果に応じて、受信した信号を送信先の例えば画像形成装置4に対して転送するか否かを判定する処理を行う。具体的には、受信した信号に関する解析結果に応じて、受信した信号をハブ3に接続された例えば画像形成装置4等の装置に転送するか、または、転送しないで画像形成装置4等に代わって代理応答するか、さらには、受信した信号を破棄するかのいずれかの処理を行う。」

(エ)図2

(オ)「【0018】
図2は、ハブ3の機能構成を説明するブロック図である。図2に示したように、ハブ3は、ハブ制御部30、複数の入力ポート31A,31B(以下、「入力ポート31」とも総称する)、スイッチング部32、代理応答部33、複数の出力ポート34A,34B,34C,34D,34E(以下、「出力ポート34」とも総称する)、パケット記憶部35、アドレス管理テーブル記憶部36、通信履歴情報記憶部37、電源部38、インターフェース部39、外部記憶部50を備えている。なお、図2では、信号を伝送する信号線を実線で示し、電力を供給するための電力線を破線で示している。
【0019】
入力ポート31A,31Bは、受信部の一例であって、例えばLANケーブル等の通信線を通してネットワーク5と接続される。そして、ネットワーク5から送信される例えば端末装置2からの印刷ジョブ等といった各種の信号を受信する。なお、以下の説明では、入力ポート31にて受信した各種の信号を「パケット」とも称する。
スイッチング部32は、入力ポート31にて受信したパケットをハブ制御部30とパケット記憶部35とに送信する。パケット記憶部35では、受信したパケットが記憶される。また、スイッチング部32は、ハブ制御部30から指示された出力ポート34に対し、パケット記憶部35に記憶されたパケットを送信する。
【0020】
代理応答部33は、例えばLANケーブル等の通信線を通してネットワーク5と接続される。そして、ハブ3が画像形成装置4等の装置に代わって代理応答する場合に、ネットワーク5に対して代理応答信号を送信する。
出力ポート34A?34Eは、例えばLANケーブル等の通信線を介して画像形成装置4等の装置が接続される。そして、ハブ制御部30による制御に従って、入力ポート31にて受信され、パケット記憶部35に記憶されたパケットを画像形成装置4に送信する。
また、出力ポート34A?34Eには、電源部38から例えば5Vの電力が供給されている。そして、ハブ制御部30による制御に従って、電源部38からの電力を出力ポート34に接続された装置に供給する。
なお、本実施の形態の通信システム1では、入力ポート31Aにネットワーク5が接続されているものとする。また、出力ポート34Aに画像形成装置4A、出力ポート34Bに画像形成装置4B、出力ポート34Cに画像形成装置4Cがそれぞれ接続されているものとする。」

(カ)「【0022】
続いて、ハブ制御部30の機能について説明する。
ハブ制御部30は、入力ポート31にて受信したパケットをスイッチング部32から取得する。そして、取得したパケットに含まれる情報の解析を行う。
まず、ハブ制御部30は、パケットに含まれる情報を解析して、パケットの送信先である出力ポート34を識別する。ハブ制御部30では、送信先である出力ポート34の識別を、例えばパケットのMAC(Medium Access Control)ヘッダに含まれる宛先MACアドレスに基づいて行う。すなわち、アドレス管理テーブル記憶部36には、出力ポート34各々に接続された画像形成装置4のMACアドレスと出力ポート34との対応関係を表すアドレス管理テーブルが記憶され、どのMACアドレスの画像形成装置4がどの出力ポート34上に接続されているかが管理されている。それにより、ハブ制御部30は、アドレス管理テーブル記憶部36のアドレス管理テーブルを参照することで、受信したパケットに含まれる宛先MACアドレスに基づき送信先である出力ポート34を識別する。
このように、ハブ制御部30およびアドレス管理テーブル記憶部36は、パケットの送信先である出力ポート34を識別することで、送信先である画像形成装置4を識別する識別手段として機能する。
【0023】
アドレス管理テーブル記憶部36に記憶されるアドレス管理テーブルは、例えば、ARP(Address Resolution Protocol)パケットやネットワーク5に接続されたDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバへのIP(Internet Protocol)アドレス要求パケット等を利用して作成される。ハブ制御部30は、例えば出力ポート34に画像形成装置4が接続された際または所定時間毎に、出力ポート34から画像形成装置4に対して電源部38からの電力を供給する。その際に、出力ポート34に接続された画像形成装置4から送信されるARPパケットやIPアドレス要求パケットを受信し、これらに含まれるMACアドレスを取得する。そして、取得したMACアドレスと画像形成装置4が接続された出力ポート34とを対応付け、識別内容の一例としてのアドレス管理テーブルを自動的に作成する。ハブ制御部30は、作成したアドレス管理テーブルをアドレス管理テーブル記憶部36に送り、アドレス管理テーブルを記憶させる。
さらに、通信システム1の管理者等が特定の出力ポート34と特定のMACアドレスとの対応関係をアドレス管理テーブルに追加してもよい。その場合には、追加する対応関係は、ハブ3に接続された端末装置6から入力される。
【0024】
また、ハブ制御部30は、受信したパケットを画像形成装置4に転送処理した際に、画像形成装置4から識別信号の一例としてのARPパケットやIPアドレス要求パケットを受信し、MACアドレスを取得するように構成してもよい。それにより、アドレス管理テーブルに記憶されたMACアドレスと出力ポート34との対応関係を確認する。また、その際に、アドレス管理テーブルに記憶されたMACアドレスと出力ポート34との対応関係が異なることが判明した場合には、新たに取得したMACアドレスによりアドレス管理テーブルの書き換えを行う。その場合には、受信したパケットの画像形成装置4への転送処理、および出力ポート34から画像形成装置4への電力供給を中止するように構成してもよい。
【0025】
また、ハブ制御部30は、出力ポート34のそれぞれには、特定の規格(例えば、IEEE802.3af)に準拠したパケット/電力受信部(後段の図4に示した「パケット/電力受信部42」参照)を備えた画像形成装置4が接続されているか否かを判定する。
すなわち、出力ポート34には、画像形成装置4側にてハブ3との通信を制御する通信制御部としてのパケット/電力受信部が接続される。その際に、画像形成装置4側のパケット/電力受信部は、出力ポート34から電力の供給が可能な通信制御部であるかを確認する必要がある。そこで、ハブ制御部30は、画像形成装置4側のパケット/電力受信部が特定の規格に準拠したものであるか否かを判定する。そして、ハブ制御部30は、特定の規格に準拠したパケット/電力受信部を備えた画像形成装置4が接続されていると判定された場合に、電源部38からの電力を出力ポート34を介してその画像形成装置4に供給可能であると判断する。
なお、本実施の形態の通信システム1では、出力ポート34A?34C各々に接続された画像形成装置4A?4Cのすべては、ここでの例えばIEEE802.3af等といった特定の規格に準拠したパケット/電力受信部を備えているものとする。」

(キ)図6


(ク)「【0047】
続いて、ハブ3にて行われる画像形成装置4を送信先とするパケットの処理の手順について説明する。図6は、ハブ3のハブ制御部30が行うパケットの処理(パケット処理)の手順を示したフローチャートである。
図6に示したように、ハブ3では、ネットワーク5から入力ポート31Aがパケットを受信すると、ハブ制御部30は、スイッチング部32を介して受信したパケットを取得する(S101)。さらに、スイッチング部32に対して、受信したパケットをパケット記憶部35に送信するように指示し、パケットをパケット記憶部35に記憶させる(S102)。
引き続いて、ハブ制御部30は、ステップ101にて取得したパケットに含まれる情報を解析する。すなわち、ハブ制御部30は、取得したパケットからそのパケットに含まれるMACアドレスとTCPのポート番号とを読み出す(S103)。
そして、ステップ103にて読み出したMACアドレスから、アドレス管理テーブル記憶部36に記憶されたアドレス管理テーブルを参照して、受信したパケットの送信先である画像形成装置4が接続された出力ポート34を判定する(S104)。
【0048】
次に、ステップ103にて読み出したMACアドレスとTCPのポート番号とから、通信履歴情報記憶部37に記憶された通信履歴情報を参照して、受信したパケットに含まれるTCPのポート番号が送信先の画像形成装置4に関する通信履歴情報に登録されているか否かを判定する(S105)。
ステップ105での判定の結果、受信したパケットに含まれるTCPのポート番号が送信先の画像形成装置4に関する通信履歴情報に登録されていると判定された場合には(S106)、ハブ制御部30は、通信履歴情報記憶部37に記憶された通信履歴情報に基づいて、処理を決定する(S107)。具体的には、ハブ制御部30は、通信履歴情報に基づき、送信先の画像形成装置4に対してパケットを転送処理するか、画像形成装置4に転送せず、ハブ制御部30自身がパケットに対する応答処理を行うか、受信したパケットを廃棄処理するかを決定する。
【0049】
そして、ステップ107にて決定された処理が送信先の画像形成装置4に対してパケットを転送処理である場合には(S108)、ハブ制御部30は、送信先の画像形成装置4が接続された出力ポート34から画像形成装置4に対して、電源部38からの電力を供給する(S109)。それにより、画像形成装置4の制御部41を起動させ、ハブ3からのパケットの処理が行える状態を設定する。
ハブ制御部30は、制御部41のCPU411が起動を開始したのを確認した後(S110)、送信先の画像形成装置4に対してパケットの転送処理を行う(S111)。
【0050】
一方、ステップ105での判定の結果、受信したパケットに含まれるTCPのポート番号が送信先の画像形成装置4に関する通信履歴情報に登録されていないと判定された場合(S106)、ハブ制御部30は、送信先の画像形成装置4が接続された出力ポート34から画像形成装置4に対して、電源部38からの電力を供給する(S112)。それにより、画像形成装置4の制御部41を起動させ、ハブ3からのパケットの処理が行える状態を設定する。
ハブ制御部30は、制御部41のCPU411が起動を開始したのを確認した後(S113)、送信先の画像形成装置4に対してパケットの転送処理を行う(S114)。
そして、ハブ制御部30は、パケットが送信された画像形成装置4において、そのパケットがどのように処理されたかを把握し、処理の状況を通信履歴情報に記憶する(S115)。すなわち、画像形成装置4が送信されたパケットに対して例えば印刷処理等のプログラム処理を行った場合には、その画像形成装置4に対して転送処理の必要があるTCPのポート番号であるとして、通信履歴情報に記憶する。また、プログラム処理を行わないが、そのパケットに対して何らかの応答を行った場合には、その画像形成装置4において応答の必要のあるTCPのポート番号であるとして、通信履歴情報に記憶する。一方、何らのプログラム処理も応答も行わない場合には、廃棄するTCPのポート番号であるとして、通信履歴情報に記憶する。」

(ケ) 上記(ア)?(ク)より,引用文献1の,特に下線を付加した記載に着目すると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ネットワークに接続された装置における消費電力の低減を図ることを目的とする通信システムであって,端末装置2A?2C(以下、「端末装置2」とも総称する)と、端末装置2にて生成等された画像データを記録紙等の媒体に印刷処理する例えばプリンタ等の画像形成装置4A?4C(以下、「画像形成装置4」とも総称する)とが、中継装置(中継手段)の一例としてのハブ3に中継されて、通信手段の一例としてのネットワーク5を介して双方向に通信可能に接続されている通信システム1において,
ネットワーク5としては、例えば通信回線やLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等が用いられており,
ハブ3に接続する装置としては、画像形成装置4に限定されるものではなく、例えばパーソナルコンピュータ(PC)のように、ネットワーク5を介して送信される信号を処理する装置であれば、如何なる装置を接続してもよく,
ハブ3は、ネットワーク5を介して送信される信号を受信し,受信した信号に含まれる情報を解析し、その解析結果に応じて、受信した信号を送信先の例えば画像形成装置4に対して転送するか否かを判定する処理を行うものであり,具体的には、受信した信号に関する解析結果に応じて、受信した信号をハブ3に接続された例えば画像形成装置4等の装置に転送するか、または、転送しないで画像形成装置4等に代わって代理応答するか、さらには、受信した信号を破棄するかのいずれかの処理を行うハブ3であって,
ハブ3は、ハブ制御部30、複数の入力ポート31A,31B(以下、「入力ポート31」とも総称する)、スイッチング部32、代理応答部33、複数の出力ポート34A,34B,34C,34D,34E(以下、「出力ポート34」とも総称する)、パケット記憶部35、アドレス管理テーブル記憶部36、通信履歴情報記憶部37、電源部38、インターフェース部39、外部記憶部50を備えており,
入力ポート31A,31Bは、受信部の一例であって、例えばLANケーブル等の通信線を通してネットワーク5と接続され、ネットワーク5から送信される例えば端末装置2からの印刷ジョブ等といった各種の信号を受信しており,
スイッチング部32は、入力ポート31にて受信したパケットをハブ制御部30とパケット記憶部35とに送信しており,
出力ポート34A?34Eは、例えばLANケーブル等の通信線を介して画像形成装置4等の装置が接続され、ハブ制御部30による制御に従って、入力ポート31にて受信され、パケット記憶部35に記憶されたパケットを画像形成装置4に送信しており,
出力ポート34A?34Eには、電源部38から例えば5Vの電力が供給されており,ハブ制御部30による制御に従って、電源部38からの電力を出力ポート34に接続された装置に供給しており,
ハブ制御部30は、入力ポート31にて受信したパケットをスイッチング部32から取得して、取得したパケットに含まれる情報の解析を行い、パケットの送信先である出力ポート34を識別しており,
アドレス管理テーブル記憶部36には、出力ポート34各々に接続された画像形成装置4のMACアドレスと出力ポート34との対応関係を表すアドレス管理テーブルが記憶され、どのMACアドレスの画像形成装置4がどの出力ポート34上に接続されているかが管理されており,
ハブ制御部30は、例えば出力ポート34に画像形成装置4が接続された際または所定時間毎に、出力ポート34から画像形成装置4に対して電源部38からの電力を供給し,その際に、出力ポート34に接続された画像形成装置4から送信されるARPパケットやIPアドレス要求パケットを受信し、これらに含まれるMACアドレスを取得して、取得したMACアドレスと画像形成装置4が接続された出力ポート34とを対応付け、識別内容の一例としてのアドレス管理テーブルを自動的に作成しており,
アドレス管理テーブルに記憶されたMACアドレスと出力ポート34との対応関係が異なることが判明した場合には、新たに取得したMACアドレスによりアドレス管理テーブルの書き換えを行い、受信したパケットの画像形成装置4への転送処理、および出力ポート34から画像形成装置4への電力供給を中止しており,
ハブ制御部30は、出力ポート34のそれぞれには、特定の規格(例えば、IEEE802.3af)に準拠したパケット/電力受信部を備えた画像形成装置4が接続されているか否かを判定しており,
ハブ3にて行われる画像形成装置4を送信先とするパケットの処理の手順において,ハブ3では、ネットワーク5から入力ポート31Aがパケットを受信すると、ハブ制御部30は、スイッチング部32を介して受信したパケットを取得し、取得したパケットからそのパケットに含まれるMACアドレスとTCPのポート番号とを読み出し,アドレス管理テーブル記憶部36に記憶されたアドレス管理テーブルを参照して、受信したパケットの送信先である画像形成装置4が接続された出力ポート34を判定しており,
ハブ制御部30は、通信履歴情報に基づき、送信先の画像形成装置4に対してパケットを転送処理するか、画像形成装置4に転送せず、ハブ制御部30自身がパケットに対する応答処理を行うか、受信したパケットを廃棄処理するかを決定しており,
決定された処理が送信先の画像形成装置4に対してパケットを転送処理である場合には、ハブ制御部30は、送信先の画像形成装置4が接続された出力ポート34から画像形成装置4に対して、電源部38からの電力を供給することにより、画像形成装置4の制御部41を起動させ、ハブ3からのパケットの処理が行える状態を設定し,制御部41のCPU411が起動を開始したのを確認した後、送信先の画像形成装置4に対してパケットの転送処理を行う
ハブ。」

ウ 対比

本件補正発明と,引用発明とを対比する。

(ア)引用発明において「ハブ3は、ネットワーク5を介して送信される信号を受信し,受信した信号に含まれる情報を解析し、その解析結果に応じて、受信した信号を送信先の例えば画像形成装置4に対して転送するか否かを判定する処理を行うものであり,具体的には、受信した信号に関する解析結果に応じて、受信した信号をハブ3に接続された例えば画像形成装置4等の装置に転送するか、または、転送しないで画像形成装置4等に代わって代理応答するか、さらには、受信した信号を破棄するかのいずれかの処理を行」っており,「ハブ3は、ハブ制御部30、複数の入力ポート31A,31B(以下、「入力ポート31」とも総称する)、スイッチング部32、代理応答部33、複数の出力ポート34A,34B,34C,34D,34E(以下、「出力ポート34」とも総称する)、パケット記憶部35、アドレス管理テーブル記憶部36、通信履歴情報記憶部37、電源部38、インターフェース部39、外部記憶部50を備えており,」「出力ポート34A?34Eは、例えばLANケーブル等の通信線を介して画像形成装置4等の装置が接続され、ハブ制御部30による制御に従って、入力ポート31にて受信され、パケット記憶部35に記憶されたパケットを画像形成装置4に送信しており,」「出力ポート34A?34Eには、電源部38から例えば5Vの電力が供給されており,ハブ制御部30による制御に従って、電源部38からの電力を出力ポート34に接続された装置に供給しており,」「出力ポート34のそれぞれには、特定の規格(例えば、IEEE802.3af)に準拠したパケット/電力受信部を備えた画像形成装置4が接続されている」とされている。

ここで,IEEE802.3af規格は,LAN(Ethernet)ケーブル内の通信線を介して,別途の電力線を必要とすることなく,対応機器に電力を供給できるPoE(Power on Ethernet)に関する規格であることは,技術常識である。

また,引用発明の「LANケーブル」は,本件補正発明の「データ接続」に相当するといえる。

さらに,引用発明の「ハブ」は,「LANケーブル等の通信線を介して」「画像形成装置4」に「5Vの電力」を「供給」して,「画像形成装置4の制御部41を起動させ」るとともに,「ネットワーク5を介して送信される信号」である「パケット」を「画像形成装置4に対して転送」している。ここで,「画像形成装置4の制御部41を起動させ」る際に,供給された電力が「画像形成装置4の制御部41」において消費されていることは明らかである。

したがって,引用発明の「ハブ」は,本件補正発明と同様に,「データ接続を介して電気消費機器に電力供給すると共に同じデータ接続を介してデータを伝送する装置であ」るといえる。

(イ)引用発明において「ハブ3は、ハブ制御部30、複数の入力ポート31A,31B(以下、「入力ポート31」とも総称する)、スイッチング部32、代理応答部33、複数の出力ポート34A,34B,34C,34D,34E(以下、「出力ポート34」とも総称する)、パケット記憶部35、アドレス管理テーブル記憶部36、通信履歴情報記憶部37、電源部38、インターフェース部39、外部記憶部50を備えており,」「出力ポート34A?34Eには、電源部38から例えば5Vの電力が供給されており,」「出力ポート34から画像形成装置4に対して電源部38からの電力を供給し」ている。

したがって,引用発明の「ハブ」は,本件補正発明と同様に,「前記データ接続を介して前記電気消費機器に電力供給するための電源」「を含」んでいるといえる。

(ウ)引用発明において「ハブ3は、ハブ制御部30、複数の入力ポート31A,31B(以下、「入力ポート31」とも総称する)、スイッチング部32、代理応答部33、複数の出力ポート34A,34B,34C,34D,34E(以下、「出力ポート34」とも総称する)、パケット記憶部35、アドレス管理テーブル記憶部36、通信履歴情報記憶部37、電源部38、インターフェース部39、外部記憶部50を備えており,」「入力ポート31A,31Bは、受信部の一例であって、例えばLANケーブル等の通信線を通してネットワーク5と接続され、ネットワーク5から送信される例えば端末装置2からの印刷ジョブ等といった各種の信号を受信しており,」「出力ポート34A?34Eは、例えばLANケーブル等の通信線を介して画像形成装置4等の装置が接続され、ハブ制御部30による制御に従って、入力ポート31にて受信され、パケット記憶部35に記憶されたパケットを画像形成装置4に送信して」いる。

ここで,引用発明の「端末装置2からの印刷ジョブ等といった各種の信号」は,「入力ポート31にて受信され、パケット記憶部35に記憶されたパケットを画像形成装置4に送信して」いるから,本件補正発明の「電気消費機器に送信されるべきデータ」に対応するといえる。

したがって,引用発明の「ハブ」は,本件補正発明と同様に,「前記電気消費機器に送信されるべきデータを受信するデータ受取りユニット」「を含」んでいるといえる。

(エ)引用発明において「ハブ3では、ネットワーク5から入力ポート31Aがパケットを受信すると、ハブ制御部30は、スイッチング部32を介して受信したパケットを取得し、取得したパケットからそのパケットに含まれるMACアドレスとTCPのポート番号とを読み出し,アドレス管理テーブル記憶部36に記憶されたアドレス管理テーブルを参照して、受信したパケットの送信先である画像形成装置4が接続された出力ポート34を判定しており,」「ハブ制御部30は、通信履歴情報に基づき、送信先の画像形成装置4に対してパケットを転送処理するか、画像形成装置4に転送せず、ハブ制御部30自身がパケットに対する応答処理を行うか、受信したパケットを廃棄処理するかを決定しており,」「決定された処理が送信先の画像形成装置4に対してパケットを転送処理である場合には、ハブ制御部30は、送信先の画像形成装置4が接続された出力ポート34から画像形成装置4に対して、電源部38からの電力を供給することにより、画像形成装置4の制御部41を起動させ、ハブ3からのパケットの処理が行える状態を設定し,制御部41のCPU411が起動を開始したのを確認した後、送信先の画像形成装置4に対してパケットの転送処理を行う」とされている。

ここで,引用発明において,「受信したパケット」が「転送処理する」ものと「決定された」「場合」の「受信したパケット」は,本件補正発明の「電気消費機器に送信されるべきデータ」に対応するといえる。

また,引用発明の「ハブ3では、ネットワーク5から入力ポート31Aがパケットを受信すると、ハブ制御部30は、スイッチング部32を介して受信したパケットを取得し、取得したパケットからそのパケットに含まれるMACアドレスとTCPのポート番号とを読み出し,アドレス管理テーブル記憶部36に記憶されたアドレス管理テーブルを参照して、受信したパケットの送信先である画像形成装置4が接続された出力ポート34を判定し」,「ハブ制御部30は、送信先の画像形成装置4が接続された出力ポート34から画像形成装置4に対して、電源部38からの電力を供給することにより、画像形成装置4の制御部41を起動させ、ハブ3からのパケットの処理が行える状態を設定し,制御部41のCPU411が起動を開始したのを確認した後、送信先の画像形成装置4に対してパケットの転送処理を行」っており,「出力ポート34から画像形成装置4に対して、電源部38からの電力を供給する」前には,「電源部38からの電力を供給」していない状態であるといえるから,引用発明の「ハブ制御部」は,本件補正発明の「前記電気消費機器に送信されるべきデータが受信され、且つ、前記電気消費機器への電力供給が非動作化されている場合に、前記データ接続を介した前記電気消費機器への電力供給を動作化するためのコントローラー」に対応するといえる。

したがって,本件補正発明と,引用発明とは,「前記電気消費機器に送信されるべきデータが受信され、且つ、前記電気消費機器への電力供給が非動作化されている場合に、前記データ接続を介した前記電気消費機器への電力供給を動作化するためのコントローラー」「を含」んでいる点で共通しているといえる。

しかし,本件補正発明では,「前記電気消費機器への電力供給が非動作化されている場合、前記データ接続を介した前記電気消費機器への電力供給はゼロである」のに対して,引用発明では,「前記電気消費機器への電力供給が非動作化されている場合、前記データ接続を介した前記電気消費機器への電力供給はゼロである」のか否か,が明らかでない点で一応相違している。

エ 一致点および相違点

本件補正発明と,引用発明とは,以下(ア)の点で一致し,以下(イ)の点で相違する。

(ア)一致点

「データ接続を介して電気消費機器に電力供給すると共に同じデータ接続を介してデータを伝送する装置であって、
前記データ接続を介して前記電気消費機器に電力供給するための電源と、
前記電気消費機器に送信されるべきデータを受信するデータ受取りユニットと、
前記電気消費機器に送信されるべきデータが受信され、且つ、前記電気消費機器への電力供給が非動作化されている場合に、前記データ接続を介した前記電気消費機器への電力供給を動作化するためのコントローラーと、
を含む
装置。」

(イ)相違点

本件補正発明では,「前記電気消費機器への電力供給が非動作化されている場合、前記データ接続を介した前記電気消費機器への電力供給はゼロである」のに対して,引用発明では,「前記電気消費機器への電力供給が非動作化されている場合、前記データ接続を介した前記電気消費機器への電力供給はゼロである」のか否か,が明らかでない点。

オ 相違点についての判断

引用発明において,ハブ制御部30は、「アドレス管理テーブルに記憶されたMACアドレスと出力ポート34との対応関係が異なることが判明した場合には、新たに取得したMACアドレスによりアドレス管理テーブルの書き換えを行い、受信したパケットの画像形成装置4への転送処理、および出力ポート34から画像形成装置4への電力供給を中止して」いる(段落0024参照)とされているから,引用発明は,「出力ポート34から画像形成装置4への電力供給を中止」する機能を備えており,「電力供給を中止」している状態は,電力供給がゼロといえる。

ここで,引用発明の「ハブ制御部30は、送信先の画像形成装置4が接続された出力ポート34から画像形成装置4に対して、電源部38からの電力を供給する」前には,「出力ポート34から画像形成装置4への電力供給を」しておらず,「電力供給を中止」している状態と同様に,電力供給がゼロといえるから,引用発明において,「出力ポート34から画像形成装置4に対して、電源部38からの電力を供給する」前には,「出力ポート34から画像形成装置4への電力供給」がゼロであると解釈することは,当業者にとって合理的なことであり,不自然ではない。

したがって,引用発明においても,「ハブ制御部30は、送信先の画像形成装置4が接続された出力ポート34から画像形成装置4に対して、電源部38からの電力を供給する」前には,「出力ポート34から画像形成装置4への電力供給を」しておらず,「出力ポート34から画像形成装置4への電力供給を中止」する場合と同様,「出力ポート34から画像形成装置4への電力供給」がゼロであると解釈可能であるから,本件補正発明の上記相違点は,実質的相違点でない。

また,本件補正発明の上記相違点が,仮に,実質的相違点であったとしても,引用発明は,「出力ポート34から画像形成装置4への電力供給を中止」する機能を備えているのであるから,引用発明の「ハブ制御部30は、送信先の画像形成装置4が接続された出力ポート34から画像形成装置4に対して、電源部38からの電力を供給する」前に,当該「出力ポート34から画像形成装置4への電力供給を中止」する機能により,「出力ポート34から画像形成装置4への電力供給」をゼロとし,本件補正発明の上記相違点に係る構成とすることは,当業者が容易に想到しうることである。

また,引用発明において,当該相違点に係る構成を採用することによる効果も,当業者が容易に想到しうる範囲内のものに過ぎない。

以上により,本件補正発明は,特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また,第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

カ 請求人の主張について

(ア)請求人は,審判請求書において,概ね以下の様に主張している。

引用文献1においては、IEEE802.3afに関する記載があるところ、スリープモードは、「消費電力が極めて小さく、画像形成動作モードに復帰するまでに比較的長い時間を要する」モードであり(引用文献1の段落0041参照),また、引用文献1においては、「スリープモードでは、リレー49がオフされる。それにより、電源部46から制御部41のCPU411を含めたその他の機能部への電力供給が停止される。」と記載されており(引用文献1の段落0040参照)、引用文献1に記載の発明において、画像形成装置は、スリープモードにおいても従前のPoE規格に従いハブの出力ポートから電力供給が行われるものであり、「前記電気消費機器への電力供給が非動作化されている場合、前記データ接続を介した前記電気消費機器への電力供給はゼロである」ものではなく、PoE規格において斯様に構成を拡張する動機付けもない。

(イ)上記請求人の主張について検討する。

上記オで述べたように,引用文献1には,「アドレス管理テーブルに記憶されたMACアドレスと出力ポート34との対応関係が異なることが判明した場合には、新たに取得したMACアドレスによりアドレス管理テーブルの書き換えを行う。その場合には、受信したパケットの画像形成装置4への転送処理、および出力ポート34から画像形成装置4への電力供給を中止するように構成してもよい。」(段落0024)との記載があり,「出力ポート34から画像形成装置4への電力供給を中止」した場合に「データ接続を介した前記電気消費機器への電力供給はゼロ」となることは,当業者にとって明らかである。
つまり,引用発明においても,PoE規格をベースとしながら,電力供給を中止する(電力供給をゼロとする)という技術思想が開示されているといえる。
よって、引用発明の「ハブ制御部30は、送信先の画像形成装置4が接続された出力ポート34から画像形成装置4に対して、電源部38からの電力を供給する」前であるスリープモードにおいても、「出力ポート34から画像形成装置4への電力供給を中止」している以上、「出力ポート34から画像形成装置4への電力供給」がゼロであると解釈することは,当業者にとって合理的なことであり,不自然ではない。

したがって,上記請求人の主張は採用できない。

(3)小活

したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明

上述のとおり,令和2年6月18日の手続補正は却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成30年8月14日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-15の記載により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という)は,上記第2の1.(1)に記載されたとおりのものである。

2.刊行物に記載された発明

引用文献1の記載事項及び引用発明は,上記第2の2.(2)「イ 引用発明」に記載したとおりである。

3.本願発明と引用発明との対比・判断

本願発明は,上記第2の2.(1)で述べたように,本件補正発明から,本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「電気消費機器に対する電源が非動作化されている場合」について,「前記データ接続を介した前記電気消費機器への電力供給はゼロである」という限定を省いたものであるから,本願発明と引用発明とは,上記の省いた構成を除いて,上記第2の2.(2)「エ 対比」と同様に対比でき,本願発明と引用発明との一致点は,上記第2の2.(2)「オ 一致点および相違点」「(ア)一致点」で述べた本願補正発明と引用発明との一致点から,上記「前記データ接続を介した前記電気消費機器への電力供給はゼロである」との限定を除いたものとなり,本願発明は,本願補正発明と同様に,引用発明と実質的に同一であり,また,引用発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。

したがって,本願発明は,引用発明と実質的に同一であるから,本願発明は,特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび

以上のとおりであるから,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,本願は,その余の請求項について論及するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2021-06-15 
結審通知日 2021-06-16 
審決日 2021-06-29 
出願番号 特願2018-116246(P2018-116246)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H05B)
P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森田 充功  
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 野崎 大進
林 毅
発明の名称 データ接続を介して電気消費機器へ電力供給する装置  
代理人 柴田 沙希子  

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