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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B60R
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60R
管理番号 1379610
審判番号 不服2021-2360  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-24 
確定日 2021-11-30 
事件の表示 特願2018-226944号「制御システム及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月 9日出願公開、特開2019- 69763号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 理 由
第1 手続きの経緯
本願は、平成24年1月10日に出願した特願2012-1774号の一部を、平成28年11月1日に新たな特許出願とした特願2016-213941号の一部を、平成30年12月4日に新たな特許出願としたものであって、その手続の概要は以下のとおりである。

令和 1年10月15日付け:拒絶理由通知書
同年12月23日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 4月22日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年 6月22日 :意見書の提出
同年11月20日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 3年 2月24日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出
同年 5月27日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由」とい
う。)
同年 7月30日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項 1?3
・引用文献 A、B

<刊行物等一覧>
引用文献A.特開2001-121989号公報
引用文献B.特開2007-218682号公報

第3 当審拒絶理由の概要
[理由1](サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

[理由2](明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

[理由3](進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


1 [理由1]について
請求項2、3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

2 [理由2]について
請求項1?3に係る発明は明確でない。

3 [理由3]について
・請求項1、3
・引用文献1、2

<刊行物等一覧>
引用文献1.特開2003-200757号公報
引用文献2.特開2010-143407号公報

第4 本願発明
本願の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、令和3年 7月30日の手続補正(以下「本件補正」ということもある。)により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
取得したデータに基づくメーター表示をする制御を行う制御システムであって、
一つの画面上に複数のメーター表示領域を備えた画面を描画する機能を備え、
前記メーター表示領域は円周部分の内部の領域であり、
前記画面上の少なくともいずれか1のメーター表示領域においてユーザが選択表示可能なメーターとして、前記メーター表示領域の円周側に向けて針を描画するメーターを備え、
前記円周側に向けて針を描画するメーターに代えて前記メーター表示領域の円周部分の内部に前記取得したデータに基づく過去の複数の値を示すグラフを表示するメーターを前記ユーザが選択可能なメーターとして備えること
を特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記円周側に向けて針を描画するメーターに代えて円周部分の内部に前記取得したデータに基づき表示する前記グラフとして、前記取得したデータに基づく区間毎の燃料消費に関するグラフを表示させる機能を備えること
を特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制御システムの機能をコンピュータに実現させるためのプログラム。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審が付した。以下同様である。)。
「【0013】(第1の実施形態)図1は、本発明の第1の実施形態による車両用表示装置であるコンビネーションメータ1の断面図であり、図2のI-I線断面図である。図2は、本発明の第1の実施形態による車両用表示装置であるコンビネーションメータ1の正面図である。
【0014】コンビネーションメータ1は、自動車の運転席前方に、運転者が容易に視認できるような位置に配置されている。コンビネーションメータ1は、図1に示すように、各種情報を表示して運転者に視認させるための表示器として液晶パネル2を備えている。液晶パネル2はケース13に保持されており、ケース13内には、液晶パネル2を駆動する制御手段をなす液晶制御装置3が収容されている。
【0015】液晶パネル2の表示面2a上には、図2に示すように、複数の表示項目として、速度計21、タコメータ22、燃料計23、水温計24の各計器、および自動車に何らかの異常が発生した場合、それを運転者に知らせるための警告表示部25が映像表示されて形成されている。そして、液晶パネル2の表面2aの各計器部21?24と警告表示部25以外の部分は背景部26となっている。また、自動車に何も異常が発生していない状態の時は、警告表示部25には何も表示されず、背景部26と一体化している。
・・・
【0018】液晶パネル2を駆動する液晶制御装置(制御手段)3は、液晶パネル2の表示画面構成を決定する表示面情報を記憶する第1の記憶手段3aを接続すると共に、イグニッションスイッチ8を介してバッテリ9の+極側に接続している。この第1の記憶手段3aは、液晶制御装置3をなすマイクロコンピュータチップに内蔵されるメモリでもよい。また、液晶制御装置3には、車速センサ41、回転センサ42、燃料センサ43、水温センサ44が接続されており、各センサ41?44の出力信号に基づき液晶制御装置3が液晶パネル2を駆動して、各計器部21?24を映像表示し、さらに必要があれば警告表示部25に異常内容を表示する。
・・・
【0020】また、自動車50のユーザが、液晶制御装置3をコンビネーションメータ端末6に接続させて、コンビネーションメータ1の表示仕様を自分の好みに合った仕様に設定する作業を行なうための表示設定装置をなす操作部5が、液晶制御装置3に接続されている。この操作部5は、設定作業を行なうための、たとえばキーボード(図示せず)およびディスプレー(図示せず)を備えている。
・・・
【0027】図4には、コンビネーションメータ1の表示仕様を設定するためのプログラムを表すフローチャートを示す。このプログラムは、コンビネーションメータ端末6内に内蔵されており、自動車50のユーザが操作部5を操作することにより、液晶制御装置3を無線通信手段7を介してコンビネーションメータ端末6に接続すると起動する。
【0028】先ず、操作部5を操作して、液晶制御装置3を無線通信手段7を介してコンビネーションメータ端末6に交信接続すると共に、コンビネーションメータ1の表示仕様設定プログラムを起動させる。なお、この操作は、安全確保上車両停止状態、たとえばイグニッションスイッチ8がACCポジション(アクセサリーポジション)にある時にのみ実施可能である。また、液晶制御装置3がコンビネーションメータ端末6に交信接続したこと、およびコンビネーションメータ1の表示仕様設定プログラムが起動したことは、操作部5のディスプレー上の表示により確認できる。
【0029】次に、ステップS101により、コンビネーションメータ1において表示させたい表示項目、すなわち表示させる計器の種類および異常警告表示させる項目等を選択する。
【0030】次に、ステップS102により、ステップS101にて選択した各表示項目について、その表示デザインを選択する。ここで、表示デザインとは、たとえば計器の目盛の形状や色、数字や文字の字体や色、指示範囲、指針表示またはデジタル表示、指針の場合その形状や色、等である。さらに、ステップ102により、背景部26の色や模様等も選択する。
【0031】次に、ステップS103により、ステップS101にて選択した各表示項目の配置を決定する。
【0032】なお、ステップS101?S103の作業中は、液晶パネル2の表示面2a上に、各ステップ毎の選択肢やサンプル等が表示され、それらを見ながら選択することができる。
【0033】次に、ステップS104により、以上の作業で決定されたコンビネーションメータ1の表示仕様が表示されるので、これを見て確認する。
【0034】次に、ステップS105により、修正または変更するかどうかを選択する。修正または変更が必要な場合は、ステップS106により修正または変更作業を行い、再度、ステップS104に戻る。修正(変更)不要の場合は、表示された仕様が、それ以降のコンビネーションメータ1の表示仕様となり表示面2aに表示される。」

また、以下に示すように図1には、コンビネーションメータ1の断面図が、図2にはコンビネーションメータ1の正面図が、図4にはコンビネーションメータ1の表示仕様を設定するためのプログラムを表すフローチャートが図示されている。




(2)引用文献1の認定事項
上記(1)の摘示から、次のことが認定できる。
ア 段落【0015】、図1及び2から、液晶パネル2が一つの表示面2aを有すること。

イ 段落【0015】及び図2から、少なくとも速度計21、タコメータ22の各計器が、略円形形状であって針が円周側に向いていること。

(3)引用発明1
上記(1)及び(2)から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「液晶パネル2を備え、
液晶パネル2はケース13に保持されており、ケース13内には、液晶パネル2を駆動する制御手段をなす液晶制御装置3が収容され、
液晶パネル2の一つの表示面2a上には、複数の表示項目として、速度計21、タコメータ22、燃料計23、水温計24の各計器が映像表示され、
液晶制御装置3には、車速センサ41、回転センサ42、燃料センサ43、水温センサ44が接続されており、各センサ41?44の出力信号に基づき液晶制御装置3が液晶パネル2を駆動して、各計器部21?24を映像表示し、
少なくとも速度計21、タコメータ22の各計器が、略円形形状であって針が円周側に向いており、
ユーザが、コンビネーションメータ1の表示仕様を自分の好みに合った仕様に設定する作業を行なうための表示設定装置をなす操作部5が、液晶制御装置3に接続され、
ユーザが操作部5を操作してコンビネーションメータ1の表示仕様設定プログラムを起動させ、
次に、コンビネーションメータ1において表示させたい表示項目、すなわち表示させる計器の種類を選択し、
次に、選択した各表示項目について、指針表示またはデジタル表示等の表示デザインを選択し、
次に、選択した各表示項目の配置を決定し、 次に、以上の作業で決定されたコンビネーションメータ1の表示仕様が表示されるので、これを見て確認し、
次に、修正(変更)不要の場合は、表示された仕様が、それ以降のコンビネーションメータ1の表示仕様となり表示面2aに表示される、
車両用表示装置であるコンビネーションメータ1。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0025】(構成-表示装置)表示装置50の構成について説明する。この表示装置50は、モニタ51、制御部52、及びデータ記録部53を備えている。
【0026】モニタ51は、車速センサ20から取得した車両の現在速度を示す現在速度情報を、複数の速度を示す目盛511bに関連付けて表示する表示手段である。例えば、モニタ51は、液晶ディスプレイを用いて構成されている。このモニタ51による目盛511b等の表示例を図2に示す。この図2に示すように、モニタ51には、スピードメータとして、指標511及びゲージ512が表示されている。
【0027】指標511は、指標線511a及び目盛511bを備えて構成されている。指標線511aは、目盛511bを表示するための基準線であって、図2の例では、円弧状に形成されている。目盛511bは、指標線511aに割り当てられた各速度を示すものであって、各速度の割り当て位置を表示するための目盛線511b1と、これら各速度を数値で示す表示文字511b2から構成されている。目盛線511b1は、図2の例では、指標線511a上の内側又は外側において、当該指標線511aに対して直交するように表示されている。表示文字511b2は、目盛線511b1の端部付近に表示されている。なお、以下の説明では、指標511によって示される複数の速度の中で、最低の速度(図2では0km)を表示最低速度、最高の速度(図2では160km)を表示最高速度と称するものとする(本実施の形態1では、これら表示最低速度及び表示最高速度と、これら表示最低速度及び表示最高速度の表示位置が一定であって変更されない例について説明する)。
・・・
【0029】ゲージ512は、現在速度情報を示すものであり、図2の例では、指標線511aの内側に表示されるものであって、当該指標線511aに沿った円弧状の帯状領域として構成されている。このゲージ512は、指標511における速度=0に対応する位置を始端とし、指標511における現在速度に対応する位置を終端とする。従って、ゲージ512の終端の位置に対応する目盛511bの表示文字511b_(2)を読み取ることで、現在速度を把握することができる。また、ゲージ512の終端の位置と、基準位置Pに表示された目盛511bとの相対関係により、現在速度と認識速度との相対的な関係を容易に把握することができる。」
また、以下に示すように図2にはモニタ51の表示例が図示されている。



3 引用文献Aについて
(1)引用文献Aに記載された事項
引用文献Aには、図面とともに次の事項が記載されている。
「【発明の名称】車両用情報表示装置」

「【0007】本発明はこのような問題点に着目したものであり、その目的は、必要に応じて運転者や事業者が固有の任意レイアウト表示画面を選択的に表示できる車両用情報表示装置を実現することにある。
・・・
【0009】請求項1によれば、運転者や事業者は、予め車両の用途や運行形態に適した任意レイアウト表示画面を生成して格納できるので、必要に応じて状況に最適な情報を車両用情報表示装置から得ることができる。
・・・
【0044】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の実施の形態の一例を示すブロック図である。図において、画面メモリ1には、標準レイアウト表示画面が格納されるとともに、任意レイアウト表示画面編集部2で生成される少なくとも一つの任意レイアウト表示画面が格納されている。
・・・
【0047】画面メモリ1に格納されている標準レイアウト表示画面および任意レイアウト表示画面は、画面選択部3からの制御信号によって選択され、表示画面生成部4に読み出される。
【0048】画面選択部3には、例えばタッチパネル31のような画面選択手段と、このタッチパネル31を選択的に有効にするための電子的個人識別システムとして機能するID識別部32が設けられている。
・・・
【0054】表示画面生成部4は、画面メモリ1から入力される各種のレイアウト画面情報、情報伝送インターフェース5から入力されるGPSや各種の問い合わせに対する照会回答などの情報データ、測定データインターフェース8から入力される各種のデータなどに基づいて、例えば図2?図7に示すような各種の表示画面を生成し、画面表示部9に表示する。
・・・
【0056】以下に画面の概念例について説明する。例えば図2は標準レイアウト画面であり、上部には方向指示ランプや燃料残量警告やワイパー作動表示などの各種の警告ランプや注意メッセージを表示する表示部100が設けられ、下部左側にはアナログ表示形の速度計200が設けられ、下部右側にはアナログ表示形の回転計300が設けられている。
【0057】これに対し、図3?図7は図2の標準レイアウト画面をベースにして任意に編集した任意レイアウト画面例である。図3の画面では、下部には警告・注意表示部100が設けられ、上部左側には速度計200が設けられ、上部右側には回転計300が設けられている。このように上下を入れ替えることによって、画面の印象は異なることになり、個性的な画面が得られる。
【0058】図4の画面では、下部には警告・注意表示部100が設けられ、上部左側には速度計200が設けられ、上部右側には回転計300が設けられ、さらにこれら速度計200と回転計300の間には情報表示部400が設けられている。この情報表示部400には、速度や回転を含む各種センサによる現在の測定値や測定値の推移トレンドをバーグラフやデジタル値で表示したり、外部との情報伝送に基づいて得られるカーナビゲーションなどの画像データや交通取締まりに関連した照会テキストデータなどの各種の情報を表示する。」

また、図1、2及び4は以下のとおりである。
【図1】



【図2】



【図4】



(2)引用文献Aの認定事項
上記(1)の摘示から、次のことが認定できる。
ア 段落【0054】の「図2?図7に示すような各種の表示画面を生成し、画面表示部9に表示する。」との記載、図2及び4から、画面表示部9の画面が一つであること。

イ 図2及び4から、速度計200及び回転計300は、それぞれ、円形の表示領域を有すること。

(3)引用発明A
上記(1)、(2)より、引用文献Aには次の技術的事項(以下「引用発明A」という。)が記載されているものと認められる。
「 画面メモリ1には、標準レイアウト表示画面が格納されるとともに、任意レイアウト表示画面編集部2で生成される少なくとも一つの任意レイアウト表示画面が格納され、
画面メモリ1に格納されている標準レイアウト表示画面および任意レイアウト表示画面は、画面選択部3からの制御信号によって選択され、表示画面生成部4に読み出さ、
画面選択部3には、タッチパネル31のような画面選択手段と、このタッチパネル31を選択的に有効にするための電子的個人識別システムとして機能するID識別部32が設けられ、
表示画面生成部4は、画面メモリ1から入力される各種のレイアウト画面情報などに基づいて、各種の表示画面を生成し、画面表示部9に表示し、
画面表示部9の画面が一つであり、
運転者は、予め車両の用途や運行形態に適した任意レイアウト表示画面を生成して格納でき、
標準レイアウト画面では、上部には方向指示ランプや燃料残量警告やワイパー作動表示などの各種の警告ランプや注意メッセージを表示する表示部100が設けられ、下部左側にはアナログ表示形の速度計200が設けられ、下部右側にはアナログ表示形の回転計300が設けられ、
任意レイアウト画面では、下部には警告・注意表示部100が設けられ、上部左側には速度計200が設けられ、上部右側には回転計300が設けられ、さらにこれら速度計200と回転計300の間には情報表示部400が設けられ、この情報表示部400には、速度や回転を含む各種センサによる現在の測定値や測定値の推移トレンドをバーグラフやデジタル値で表示したり、外部との情報伝送に基づいて得られるカーナビゲーションなどの画像データや交通取締まりに関連した照会テキストデータなどの各種の情報を表示し、
速度計200及び回転計300は、それぞれ、円形の表示領域を有する、
車両用情報表示装置。」

4 引用文献Bについて
(1)引用文献Bに記載された事項
引用文献Bには、図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】
車両に搭載され、運転席から視認可能に設けられる車両用メーターユニットであって、
メーター指示値を目盛り上の位置にて指示する指針と、該指針を前記メーター指示値に対応する位置へ駆動する指針駆動部とを備えたアナログメーター部と、
画像ディスプレイ装置として構成されるとともに前記指針の背後に配置され、その表示画面の表示モードを、前記アナログメーター部の前記目盛りを含む第一画像を表示する第一表示モードと、前記第一画像とは異なる第二画像を表示する第二表示モードとの間で切替え可能なメーター表示盤と、
表示モード切替部の操作に基づいて、前記メーター表示盤の画像表示を前記第一表示モードと前記第二表示モードとの間で切替える表示切替制御部と、
前記表示モード切替部の操作に基づいて、前記指針駆動部に対し前記指針の位置を、前記第一表示モードに対応する前記目盛り上のメーター指示位置と、前記第二表示モードにて前記第二画像を表示するための退避位置との間で切替え駆動させる指針位置切替部とを備えることを特徴とする車両用メーターユニット。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、そのようにして統合・簡略化されたメーター類のデザインを嫌い、あくまで旧来のアナログメーター表示などにこだわる本物志向のユーザーが多く存在する。例えば、スポーツカータイプの車両を好むユーザーの中には、油圧・油温・ブースト圧を表示する三連ゲージは、それぞれを円形のアナログ表示で行ないたいと望む方が多く存在しており、中には、それを自身が普段乗る一般車・高級車においても同様に備えたいと望む声もある。しかしながら、最近の車両の場合は、ナビゲーション装置、音楽再生装置、エアコン装置、他多数の機能が標準的に搭載されることも多く、アナログメーターを配置するためのスペースの確保は一層困難な状況にある。
・・・
【0006】
アナログメーターの目盛り盤を画像ディスプレイ装置の表示画面として構成し、指針はリアルなアナログメーターの態様を維持することで、アナログメーターを尊重するプロやマニアの欲求を充足でき、しかも画面切替えにより目盛り盤をなす画像ディスプレイ装置に、アナログメーターの指示情報とは異なる第二画像を表示できるようにしたことで、従来の指示情報量が限られていたアナログメーターの表示内容を大幅に多様化でき、自動車の多機能化にも問題なく対応できる。
・・・
【0018】
図1に示す車両用メーターユニットは、自動車の運転席から視認及び操作可能な位置に設けられ、メーター表示盤(図中のメーター表示部)101、201、301が図の左から順に横方向に隣接する形でメーターフード9に配置され、いわゆる三連ゲージとして表示されている。」

また、図1及び3は、以下のとおりである。
【図1】


【図3】


第6 対比・判断
1-1 本願発明1について(引用発明1を主引用発明とする場合)
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「計器」、「表示面2a上」は、それぞれ、本願発明1の「メーター」、「画面上」に相当する。

イ 引用発明1の「コンビネーションメータ1」の「液晶制御装置3」は、「車速センサ41、回転センサ42、燃料センサ43、水温センサ44」の「出力信号に基づき」、「各計器部21?24を映像表示」しているから、「車速センサ41、回転センサ42、燃料センサ43、水温センサ44」及び「液晶制御装置3」などからなるシステムを構成することは明らかである。また、本願発明1の「制御システム」は、「取得したデータに基づくメーター表示をする制御を行う」ものである。そうすると、上記アも踏まえると、引用発明1の「コンビネーションメータ1」は、本願発明1の「制御システム」に相当して、引用発明1の「車速センサ41、回転センサ42、燃料センサ43、水温センサ44」の「出力信号に基づき」、「各計器部21?24を映像表示」する「コンビネーションメータ1」は、本願発明1の「取得したデータに基づくメーター表示をする制御を行う制御システム」に相当する。

ウ 引用発明1の「液晶パネル2の一つの表示面2a」のうち、「計器が映像表示され」る領域は、上記アも踏まえると本願発明1の「メーター表示領域」に相当する。また、引用発明1の「映像表示され」る事項は、その対象が「液晶パネル2の表示面2a」であることから、本願発明1の「描画する」事項に相当する。

エ 引用発明1において「液晶パネル2の一つの表示面2a上」に「各計器が映像表示され」るから、当該「表示面2a上」には、複数の「計器が映像表示され」る領域を備えた画面が映像表示されることは明らかであるし、「コンビネーションメータ1」がそのような機能を備えていることは明らかである。そうすると、引用発明1の「コンビネーションメータ1」において「液晶パネル2の一つの表示面2a上」に「速度計21、タコメータ22の各計器」が「映像表示され」ることは、上記ア及びウも踏まえると本願発明1の「制御システム」が「一つの画面上に複数のメーター表示領域を備えた画面を描画する機能を備え」ることに相当する。

オ 引用発明1の「速度計21、タコメータ22の各計器」は「略円形形状」であるから、前記「速度計21、タコメータ22の各計器」が「映像表示され」る領域も略円形形状であり、前記領域はその円周部分の内部の領域であるといえる。そうすると、引用発明1の「速度計21、タコメータ22の各計器」が「略円形形状」であることは、上記ウも踏まえると本願発明1の「前記メーター表示領域は円周部分の内部の領域であ」ることに相当する。

カ 引用発明1は、「複数」の「略円形形状」の「計器が映像表示され」る領域において「速度計21、タコメータ22の各計器」が「映像表示され」るものである。そして、「ユーザ」は「表示させる計器の種類を選択」でき、また、「配置を決定」することができるから、「速度計21、タコメータ22の各計器」は、「ユーザ」が「液晶パネル2の表示面2a上」の少なくともいずれか1の前記「計器が映像表示され」る領域において「選択」「表示」可能なものといえる。また、前記「速度計21、タコメータ22の各計器」は「略円形形状であって針が円周側に向いて」いるから、「速度計21、タコメータ22の各計器」が「映像表示され」る領域も「略円形形状」であって前記「針」はその「円周側に向いている」ように「映像表示」されるものであるといえる。そうすると、引用発明1の係る「速度計21、タコメータ22の各計器」は、上記ア及びウも踏まえると、本願発明1の「前記画面上の少なくともいずれか1のメーター表示領域においてユーザが選択表示可能なメーターとして、前記メーター表示領域の円周側に向けて針を描画するメーター」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。
<一致点1>
「 取得したデータに基づくメーター表示をする制御を行う制御システムであって、
一つの画面上に複数のメーター表示領域を備えた画面を描画する機能を備え、
前記メーター表示領域は円周部分の内部の領域であり、
前記画面上の少なくともいずれか1のメーター表示領域においてユーザが選択表示可能なメーターとして、前記メーター表示領域の円周側に向けて針を描画するメーターを備える、
制御システム。」

<相違点1>
本願発明1は「前記円周側に向けて針を描画するメーターに代えて前記メーター表示領域の円周部分の内部に前記取得したデータに基づく過去の複数の値を示すグラフを表示するメーターを前記ユーザが選択可能なメーターとして備える」のに対して、引用発明1では「ユーザ」が「表示させる計器」の「指針表示またはデジタル表示等の表示デザインを選択」する点。

(2)相違点についての判断
相違点1について検討する。
引用文献2に記載された事項の「スピードメータ」に「表示」される「ゲージ512」は、「円弧状の帯状領域」で形成され、「ゲージ512の終端の位置に対応する目盛511bの表示文字511b2を読み取ることで、現在速度を把握することができる」ものであるから、バーグラフである。
しかしながら、引用文献2に記載された事項の「スピードメータ」は「現在速度」を「表示」するものであって過去の複数の値を示すものではなく、引用文献2に記載された事項は、上記相違点1に係る本願発明1の構成のうち、少なくとも「前記メーター表示領域の円周部分の内部に前記取得したデータに基づく過去の複数の値を示すグラフ」との構成を開示していない。
したがって、引用発明1に引用文献2に記載された事項を適用しても、上記相違点1に係る本願発明1の構成には至らない。
また、上記相違点1に係る本願発明1の構成が技術常識又は周知技術であると認めるに足る証拠もないことから、引用発明1において上記構成を採用することが設計的事項であるともいえない。
よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2に記載された事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

1-2 本願発明2、3について
本願発明2、3は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに本願請求項2、3において特定される発明特定事項により限定したものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2に記載された事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2-1 本願発明1について(引用発明Aを主引用発明とする場合)
(1)対比
本願発明1と引用発明Aとを対比する。
ア 引用発明Aの「画面表示部9に表示」する「任意レイアウト画面」では、「情報表示部400」に「速度や回転を含む各種センサによる現在の測定値や測定値の推移トレンドをバーグラフやデジタル値で表示」するから、引用文献Aの「車両用情報表示装置」が、「各種センサ」及び「画面表示部9」などからなるシステムを構成することは明らかである。そうすると、引用発明Aの、かかる構成を有する「車両用情報表示装置」は、本願発明1の「取得したデータに基づくメーター表示をする制御を行う制御システム」に相当する。

イ 引用発明Aの「画面メモリ1から入力される各種のレイアウト画面情報などに基づいて」「生成」した「各種の表示画面」は、「画面表示部9に表示」されるから、当該「表示画面」は描画されているといえる。また、引用発明Aでは、「画面表示部9」で「表示」される「表示画面」である「標準レイアウト画面」ないし「任意レイアウト画面」は「速度度計200」及び「回転計300」が「設けられ」、当該「速度度計200」及び「回転計300」は、「それぞれ、円形の表示領域を有し」ている。そして、引用発明Aの「画面表示部9の画面」は「一つ」である。そうすると、引用発明Aの「車両用情報表示装置」が、かかる構成を有することは、上記アも踏まえると本願発明1の「制御システム」が「一つの画面上に複数のメーター表示領域を備えた画面を描画する機能を備え」、「前記メーター表示領域は円周部分の内部の領域であ」ることに相当する。

ウ 引用発明Aの「速度計200」及び「回転計300」は「アナログ表示形」であるところ、円形のアナログメーターの針が円周側に向けられていることは技術常識であるから、当該「アナログ表示形の速度計200」及び「アナログ表示形の回転計300」は、その「円形の表示領域」の円周側に向けて針を描画するものであることは明らかである。

エ 引用発明Aの「任意レイアウト表示画面」は、「運転者」が「予め車両の用途や運行形態に適した」ものとして「格納でき」るから、「画面表示部9」上の「速度計200」ないし「回転計300」が「表示」される「円形の表示領域」に当該「速度計200」ないし「回転計300」を「表示」することは「運転者」によって選択可能であるといえる。そうすると、引用発明Aにおいて「画面表示部9」に「表示」される「任意レイアウト表示画面」が、「アナログ表示形」の「速度計200」及び「回転計300」を「設け」ていることは、上記ウも踏まえると本願発明1の「前記画面上の少なくともいずれか1のメーター表示領域においてユーザが選択表示可能なメーターとして、前記メーター表示領域の円周側に向けて針を描画するメーターを備え」ることに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明Aとは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。
<一致点2>
「 取得したデータに基づくメーター表示をする制御を行う制御システムであって、
一つの画面上に複数のメーター表示領域を備えた画面を描画する機能を備え、
前記メーター表示領域は円周部分の内部の領域であり、
前記画面上の少なくともいずれか1のメーター表示領域においてユーザが選択表示可能なメーターとして、前記メーター表示領域の円周側に向けて針を描画するメーターを備える、
制御システム。」

<相違点2>
本願発明1では、「前記円周側に向けて針を描画するメーターに代えて前記メーター表示領域の円周部分の内部に前記取得したデータに基づく過去の複数の値を示すグラフを表示するメーターを前記ユーザが選択可能なメーターとして備える」のに対して、引用発明Aでは、そのように特定されていない点。

(2)相違点についての判断
相違点2について検討する。
引用文献Bに記載された事項は、「旧来のアナログメーター表示などにこだわる本物志向のユーザーが多く存在」し、「ユーザーの中には、油圧・油温・ブースト圧を表示する三連ゲージは、それぞれを円形のアナログ表示で行ないたいと望む方が多く存在して」いることを課題として、少なくとも「メーター指示値を目盛り上の位置にて指示する指針と、該指針を前記メーター指示値に対応する位置へ駆動する指針駆動部とを備えたアナログメーター部」との構成を備えることで、「指針はリアルなアナログメーターの態様を維持することで、アナログメーターを尊重するプロやマニアの欲求を充足でき」るという効果を奏するものである。
そうすると、引用文献Bに記載された事項の車両用メーターユニットは、図1及び3に示されるように3つの「メーター表示部101、201、301」を有しているが、「指針」及び「指針駆動部」の構成を踏まえると、各「メーター表示部」の配置は固定されていることが前提であることは明らかである。
一方、引用発明Aは、引用文献Aの段落【0009】に記載されているように「必要に応じて運転者や事業者が固有の任意レイアウト表示画面を選択的に表示できる車両用情報表示装置を実現すること」を目的とするものである。
してみると、引用発明Aに引用文献Bに記載された事項を適用すると、複数のメーター表示領域の配置が固定されたものとなり、引用発明Aの上述した目的を達成できなくなるから、阻害要因があると言わざるを得ない。
また、引用文献Bには、アナログメーター部の目盛りを含む第一画像を表示する第一表示モードと、前記第一画像とは異なる第二画像を表示する第二表示モードとの間で切替え可能とすること(引用文献Bの【請求項2】参照)が記載されているが、上記相違点2に係る本願発明1の構成のうち、少なくとも「前記メーター表示領域の円周部分の内部に前記取得したデータに基づく過去の複数の値を示すグラフ」との構成を開示していない。
したがって、仮に引用発明Aに引用文献Bに記載された事項を適用することができたとしても、上記相違点2に係る本願発明1の構成には至らない。
よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明A及び引用文献Bに記載された事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2-2 本願発明2、3について
本願発明2、3は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに本願請求項2、3において特定される発明特定事項により限定したものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明A及び引用文献Bに記載された事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 当審拒絶理由について
1 [理由1]について
本件補正により、補正前請求項2の「所定時間における燃料消費に関するグラフ」が「区間毎の燃料消費に関するグラフ」となり、本願発明2及び3は、発明の詳細な説明に記載したものになった。
したがって、本願発明2及び3は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

2 [理由2]について
本件補正により「前記メーター表示領域は円周部分の内部の領域であり、」との構成が付加され、補正前請求項1の「メーター表示領域についてユーザが選択可能なメーター」が「メーター表示領域においてユーザが選択表示可能なメーター」とされた。さらに、補正前請求項1の「円周側」及び「円周部分」が、それぞれ、「メーター表示領域の円周側」及び「メーター表示領域の円周部分」とされた。
これにより、「メーター表示領域」と「ユーザ」による「選択」との関係、及び、「メーター表示領域」と「円周」との関係が明確になった。
したがって、本願発明1?3は明確である。

3 [理由3]について
本件補正により、本願発明1、3は、上記相違点1に係る本願発明1の構成を有するものとなっている。
そのため、上記第6で述べたとおり、本願発明1、3は、当審拒絶理由で引用された、引用発明1及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

4 小括
上記「1」?「3」のとおり、本件補正により、当審拒絶理由は解消した。

第8 原査定について
本件補正により、本願発明1?3は、上記相違点2に係る本願発明1の構成を有するものとなっている。
そのため、上記第6で述べたとおり、本願発明1?3は、拒絶査定で引用された、引用発明A及び引用文献Bに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。



 
審決日 2021-11-09 
出願番号 特願2018-226944(P2018-226944)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60R)
P 1 8・ 537- WY (B60R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菅 和幸  
特許庁審判長 一ノ瀬 覚
特許庁審判官 畔津 圭介
八木 誠
発明の名称 制御システム及びプログラム  

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