• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 F25B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B
管理番号 1379636
審判番号 不服2020-17424  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-21 
確定日 2021-11-11 
事件の表示 特願2018-546977「冷凍サイクル装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月 3日国際公開、WO2018/078729〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年10月25日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年4月18日に手続補正書及び上申書の提出
令和2年3月17日付けで拒絶理由通知
令和2年5月19日に意見書及び手続補正書の提出
令和2年9月10日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年12月21日に拒絶査定不服審判の請求及びその請求と同時に手続補正書の提出

第2 令和2年12月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年12月21日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は、本件補正前に下記(2)のとおりであった特許請求の範囲の請求項1の記載を、下記(1)のとおり補正することを含むものである。

(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「 【請求項1】
室外機と室内機とを備える冷凍サイクル装置であって、
室外熱交換器と、
入側と出側とを含む圧縮機と、
少なくとも1つの室内熱交換器と、
四方弁と、
入側と出側とを含む逆止弁と、
前記四方弁と前記逆止弁の前記入側とを接続する流路と、
前記流路に接続された圧力センサと、
前記逆止弁の前記出側と前記圧縮機の前記入側とを接続する第1流路と、
第1開閉弁と、
前記圧縮機、前記室外熱交換器、前記第1開閉弁、前記少なくとも1つの室内熱交換器、前記四方弁、前記逆止弁に冷媒を循環させる冷媒回路からの冷媒漏れを検知する冷媒漏洩検知装置と、
前記第1開閉弁と前記少なくとも1つの室内熱交換器とを繋ぐ室外室内流路に配置された第2開閉弁とを備え、
前記室外機は、前記室外熱交換器、前記圧縮機、前記四方弁、前記逆止弁、前記流路、前記圧力センサ、前記第1流路、前記第1開閉弁とを含み、
前記室内機は、前記室内熱交換器と前記第2開閉弁とを含み、
前記室外熱交換器と前記第1開閉弁とを繋ぐ第2流路に配置された第1のレシーバを備え、前記室外熱交換器と前記第1のレシーバの間に膨張弁が配置されておらず、
前記冷媒回路は、前記四方弁を操作することにより、冷房運転状態では、前記圧縮機、前記室外熱交換器、前記第1開閉弁、前記少なくとも1つの室内熱交換器、前記逆止弁および前記第1流路の順に冷媒が循環するように構成され、かつ、暖房運転状態では、前記圧縮機、前記少なくとも1つの室内熱交換器、前記第1開閉弁、前記室外熱交換器、前記逆止弁および前記第1流路の順に冷媒が循環するように構成され、
前記冷凍サイクル装置は、前記冷媒漏洩検知装置により冷媒漏れが検知されると、前記少なくとも1つの室内熱交換器から前記逆止弁を介して前記室外熱交換器へ冷媒を移送する冷媒移送運転が実施されるように構成され、
前記冷媒移送運転では、
前記冷房運転状態において前記冷媒漏洩検知装置により冷媒漏れが検知されると、前記第1開閉弁が閉じた後、前記第2開閉弁を開放した状態で前記圧縮機を運転させ、
前記暖房運転状態において前記冷媒漏洩検知装置により冷媒漏れが検知されると、前記冷媒回路の運転状態を前記暖房運転状態から前記冷房運転状態に変更した後、前記第1開閉弁が閉じた後、前記第2開閉弁を開放した状態で前記圧縮機を運転させ、
前記圧力センサの検知により前記圧縮機の運転を停止させる、冷凍サイクル装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の、令和2年5月19日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
室外機と室内機とを備える冷凍サイクル装置であって、
室外熱交換器と、
入側と出側とを含む圧縮機と、
少なくとも1つの室内熱交換器と、
四方弁と、
入側と出側とを含む逆止弁と、
前記四方弁と前記逆止弁の前記入側とを接続する流路と、
前記流路に接続された圧力センサと、
前記逆止弁の前記出側と前記圧縮機の前記入側とを接続する第1流路と、
第1開閉弁と、
前記圧縮機、前記室外熱交換器、前記第1開閉弁、前記少なくとも1つの室内熱交換器、前記四方弁、前記逆止弁に冷媒を循環させる冷媒回路からの冷媒漏れを検知する冷媒漏洩検知装置と、
前記第1開閉弁と前記少なくとも1つの室内熱交換器とを繋ぐ室外室内流路に配置された第2開閉弁とを備え、
前記室外機は、前記室外熱交換器、前記圧縮機、前記四方弁、前記逆止弁、前記流路、前記圧力センサ、前記第1流路、前記第1開閉弁とを含み、
前記室内機は、前記室内熱交換器と前記第2開閉弁とを含み、
前記冷媒回路は、前記四方弁を操作することにより、冷房運転状態では、前記圧縮機、前記室外熱交換器、前記第1開閉弁、前記少なくとも1つの室内熱交換器、前記逆止弁および前記第1流路の順に冷媒が循環するように構成され、かつ、暖房運転状態では、前記圧縮機、前記少なくとも1つの室内熱交換器、前記第1開閉弁、前記室外熱交換器、前記逆止弁および前記第1流路の順に冷媒が循環するように構成され、
前記冷凍サイクル装置は、前記冷媒漏洩検知装置により冷媒漏れが検知されると、前記少なくとも1つの室内熱交換器から前記室外熱交換器へ冷媒を移送する冷媒移送運転が実施されるように構成され、
前記冷媒移送運転では、
前記冷房運転状態において前記冷媒漏洩検知装置により冷媒漏れが検知されると、前記第1開閉弁が閉じた後、前記第2開閉弁を開放した状態で前記圧縮機を運転させ、
前記暖房運転状態において前記冷媒漏洩検知装置により冷媒漏れが検知されると、前記冷媒回路の運転状態を前記暖房運転状態から前記冷房運転状態に変更した後、前記第1開閉弁が閉じた後、前記第2開閉弁を開放した状態で前記圧縮機を運転させる、冷凍サイクル装置。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1における「室外機」について、「前記室外熱交換器と前記第1開閉弁とを繋ぐ第2流路に配置された第1のレシーバを備え、前記室外熱交換器と前記第1のレシーバの間に膨張弁が配置されておらず」という事項の限定を付加し、「前記少なくとも1つの室内熱交換器から前記室外熱交換器へ冷媒を移送する冷媒移送運転」について、「前記逆止弁を介して」という事項の限定を付加し、さらに、「前記冷媒漏洩検知装置により冷媒漏れが検知されると」、「前記圧縮機を運転させ」ることについて、「前記圧力センサの検知により前記圧縮機の運転を停止させる」という事項の限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

<特許法第29条第2項(進歩性)について>
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載した事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用文献
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2002-228281号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。(下線は当審において付したものである。以下同様。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空気調和機の室内機の冷媒漏れ時の制御に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、空気調和機の室内機に冷媒漏れが発生した場合には、室内機の設置された部屋が酸欠状態になるのを防ぐためいわゆるポンプダウンを行うことにより冷媒を空気調和機の室外機に回収して対応することが考えられていた。
【0003】この種の従来の空気調和機として、たとえば、特開平11-325672号公報に記載の空気調和機が提案されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記公報に記載の空気調和機は、可燃性冷媒を検知するガス検知器を室内機に設けると共に室外機の液管に膨張弁を、同じくガス管に開閉弁を設けそれらを制御して室内機の冷媒を回収していた。
【0005】上述した空気調和機は、暖房運転時に圧縮機の高圧側に熱交換器が無いため冷媒を回収するのに時間がかかるという課題があった。
【0006】そこで、本発明は、上述の点に考慮して、室内機の設置された部屋に冷媒の漏れが生じると室内機内の冷媒を安全に室外機へ回収することの出来る空気調和機を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、圧縮機、室外送風ファンにより熱交換作用を受ける室外熱交換器、室外膨張弁、冷房/暖房運転切り替え時に冷媒の流れを反転させる四方切換弁、レシーバタンクを有する室外機と、室内膨張弁、室内熱交換器を有する室内機とから構成される空気調和機において、室内機の設置された部屋に冷媒の漏洩を検知するガス検知器を設けると共に、室外機において冷房運転時のレシーバタンク下流に開閉弁を設け、ガス検知器が冷媒の漏洩を検知すると室内機に設けた警報装置が警報を発すると共に四方切換弁を冷房運転側とし、開閉弁を閉じ、圧縮機並びに室外送風ファンを運転して冷媒をレシーバタンク並びに室外熱交換器へ回収することを特徴とする。」

「【0019】図1に示すように、空気調和機1は、室外機2及び室内機3を有してなり、室外機2の冷媒配管4と、室内機3の冷媒配管5とがユニット間配管4A,4Bとで連結されて構成される。
【0020】この空気調和機1は、冷媒回路を循環する冷媒としてHCFC冷媒やHFC混合冷媒を用いている。更に炭化水素や二酸化炭素などの自然冷媒を用いることも可能である。
【0021】室外機2は、室外に設置され以下に述べる機器が収納されている。圧縮機7と、圧縮機7の吸込側に設けられたアキュムレータ6と、冷房/暖房運転切り替え時に冷媒の流れを反転させる四方切換弁8と、室外熱交換器9と、減圧装置としての室外膨張弁10(電動弁)と、液冷媒を蓄えるレシーバタンク18と冷媒の流れを止める開閉弁20と圧力検知器22とが冷媒配管4を介し図1のように接続されている。この室外膨張弁10は、暖房運転時に空調負荷に応じて開度が調整され、しぼり弁として機能する。室外熱交換器9には、この室外熱交換器9へ向かって送風する室外送風ファン9Fが隣接して配置されている。
【0022】一方、室内機3は、室内に設置され、室内熱交換器11と室内膨張弁12(電動弁)とが冷媒配管5を介し図1のように接続されている。この室内膨張弁12は、冷房運転時に空調負荷に応じて開度が調整され、しぼり弁として機能する。
【0023】なおまた、室内熱交換器11には、この室内熱交換器11へ送風する室内送風ファン11Fとガス検知器25が隣接して配置されている。このガス検知器25は室内の床面の近傍に設けても良い。又、ガス検知器25の代わりに酸素濃度検出手段を設けても良い。
【0024】30は制御手段で圧縮機7、送風ファン9F、室外膨張弁10、開閉弁20、開閉弁21、室内膨張弁12等の部品を制御する。
【0025】上述の空気調和機1は、四方切換弁8を切り換えることにより、各冷媒配管4,5内を流れる冷媒の流れが反転されて、冷房運転又は暖房運転が実施される。
【0026】冷房運転時には、四方切換弁8が冷房側に切り換えられ、開閉弁20は開放され、室外膨張弁10は開放され、室内膨張弁12は制御されて冷媒が各冷媒配管4,5内を図1の実線矢印の如く流れ、室外熱交換器9が凝縮器に、室内熱交換器11が蒸発器になって室内を冷房する。
【0027】また、暖房運転時には、四方切換弁8が暖房側に切り換えられ、開閉弁20は開放され、室外膨張弁10は制御され、室内膨張弁12は開放されて冷媒が各冷媒配管4,5内を図1の破線矢印の如く流れ、室外熱交換器9が蒸発器に、室内熱交換器11が凝縮器となって室内を暖房する。
【0028】圧縮機7の吸込管に接続されたアキュムレータ6は、液冷媒を分離して圧縮機7への液バックを防止する機能がある。」

「【0029】ここで本発明の詳細について図2を参照して説明する。図2は本発明の実施例を示す空気調和機の各種機器の動作状態を示すタイミング図である。
【0030】室内機3に冷媒漏れが発生した場合には、以下のような圧縮機や各弁の制御によって、自動的にポンプダウンを行うことにより、運転停止時や冷房/暖房運転中の室内機3の設置された部屋への冷媒の漏れ極力少なくすると共に室外機2に冷媒を回収させる。
【0031】即ち、運転停止中に、室内機3に冷媒漏れが発生した場合には、まず、ガス検知器25がガス漏れを検知すると室内機3の警報装置(図示せず)が警報を発する。
【0032】次に、室外膨張弁10と室内膨張弁12とが開放され、四方切換弁8が冷房側に保たれ、開閉弁20が閉じられ、圧縮機7と室外熱交換器9へ送風する送風ファン9Fが強制的に運転させる。これにより、室内機3と室内外を連結する冷媒配管内の冷媒は、主に室外機2内のレシーバタンク18と室外熱交換器9に回収される。
【0033】冷房運転中にガス検知器25が冷媒の漏れを検知すると、室内機3の警報装置(図示せず)が警報を発する。
【0034】次に、室外膨張弁10と室内膨張弁12とが開放され、開閉弁20が閉じられ、圧縮機7と室外熱交換器9へ送風する送風ファン9Fが強制的に運転させる。これにより、室内機3と室内外を連結する冷媒配管内の冷媒は、主に室外機2内のレシーバタンク18と室外熱交換器9に回収される。
【0035】暖房運転中にガス検知器25が冷媒の漏れを検知すると、室内機3の警報装置(図示せず)が警報を発する。
【0036】次に四方切換弁8が暖房運転側から冷房運転側に切り替えられ、室内膨張弁12と室外膨張弁10とが開放され、開閉弁20が閉じられ、圧縮機7と室外熱交換器9へ送風する送風ファン9Fが強制的に運転させる。これにより、室内機3と室内外を連結する冷媒配管内の冷媒は、主に室外機2内のレシーバタンク18と室外熱交換器9に回収される。
【0037】圧縮機7と送風ファン9Fと警報装置は、空気調和機1の管理者が冷媒の漏れた部屋を確認してから運転を停止する。
【0038】上述したようにして、室外機2内に回収された冷媒は、圧縮機7の冷媒回路の吸込側に設けた逆止弁21が閉じることにより電源が切断されても冷媒の漏れを防ぐことができる。
【0039】また圧縮機7のモータに巻き線保護サーモ7Tを設けて、巻き線保護サーモが働いた後、圧縮機7のポンプダウン運転を停止するようにすれば圧縮機7の過熱を防ぎ、修理の手間を削減することができる。
【0040】また圧縮機7の吐出配管に高圧スイッチ23を設けて、高圧スイッチ23が働いた後、圧縮機7のポンプダウン運転を停止するようにすれば圧縮機7の過熱を防ぎ、修理の手間を削減することができる。
【0041】また開閉弁20の下流に圧力検知器22を設け、圧力検知器22が所定の圧力(1乃至0.5kg/cm^(2)G)を検知すると、圧縮機のポンプダウン運転を停止するようにすれば冷媒回路への空気の侵入を防ぎ、修理の手間を削減することができる。
【0042】またガス検知器25は、通常空気より重い冷媒が滞留する部屋の床に近い壁面に設置するのが良いが、室内機3が部屋の床に近い壁面に設置される場合は室内機3の内部に設けても良い。
【0043】また空気調和機1の室内機3が複数の部屋に複数台設置される場合は、図1のユニット間配管4A,4Bを延長すれば良く、この場合にも各部屋にガス検知器25を設置しておけば上述した冷媒回収運転を行うことにより、室内機3と室内外を連結する冷媒配管内の冷媒は、室外機2内に回収される。
【0044】特に複数の室内機3が一台の室外機2に繋がれるマルチ型エアコンにおいては、シングル型エアコンと比較して室内機3の台数増加並びに室内機3と室外機2を繋ぐ配管が長くなることにより多量の冷媒が冷媒回路に存在する。このため冷媒漏れが発生した室内機3から大量の冷媒冷媒の漏れが発生することが考えられるが本発明によればこの漏れを最小限に押さえることが可能となる。」

「【0046】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1にかかる発明によれば、圧縮機、室外送風ファンにより熱交換作用を受ける室外熱交換器、室外膨張弁、冷房/暖房運転切り替え時に冷媒の流れを反転させる四方切換弁、レシーバタンクを有する室外機と、室内膨張弁、室内熱交換器を有する室内機とから構成される空気調和機において、室内機の設置された部屋に冷媒の漏洩を検知するガス検知器を設けると共に、室外機において冷房運転時のレシーバタンク下流に開閉弁を設け、ガス検知器が冷媒の漏洩を検知すると室内機に設けた警報装置が警報を発すると共に四方切換弁を冷房運転側とし、開閉弁を閉じ、圧縮機並びに室外送風ファンを運転して冷媒をレシーバタンク並びに室外熱交換器へ回収することにより、室内機内の冷媒を安全に回収することの出来る空気調和機を提供することができる。」





(イ)上記(ア)及び図面の記載から認められる事項
上記(ア)及び図面の記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 上記(ア)の段落0001?0007、0019及び0029並びに図1の記載によれば、引用文献1には、室外機2と室内機3とを備える空気調和機1が記載されている。

b 上記(ア)の段落0021及び0038並びに図1の記載によれば、空気調和機1の室外機2は、室外熱交換器9、入側と出側とを含む圧縮機7、四方切換弁8、入側と出側とを含む逆止弁21、前記四方切換弁8と前記逆止弁21の前記入側とを接続する冷媒配管4の部分(以下「流路A」という。)、圧力検知器22、前記逆止弁21の前記出側と前記圧縮機7の前記入側とを接続し、アキュムレータ6が設けられた冷媒配管4の部分(以下「流路B」という。)、開閉弁20、前記室外熱交換器9と前記開閉弁20との間の冷媒配管4の部分(以下「流路C」という。)に配置されたレシーバタンク18及び前記室外熱交換器9と前記レシーバタンク18の間に配置された室外膨張弁10を含んでいる。

c 上記(ア)の段落0022及び図1の記載によれば、空気調和機1の室内機3は、室内熱交換器11及び室内膨張弁12を含んでいる。

d 上記(ア)の段落0021及び0022並びに図1の記載によれば、前記室内膨張弁12は、前記開閉弁20と前記室内熱交換器11とを繋ぐ、前記室外機2の冷媒配管4、ユニット間配管4B及び前記室内機3の冷媒配管5からなる部分(以下「流路D」という。)に配置されている。

e 上記(ア)の段落0019?0023、0033、0035及び0042並びに図1の記載(特に、段落0020、0023及び0042の記載)によれば、空気調和機1は、冷媒回路からの冷媒漏れを検知するガス検知器25を備えている。

f 上記(ア)の段落0019?0022、0025及び0026並びに図1の記載によれば、冷媒回路は、四方切換弁8を操作することにより、冷房運転では、圧縮機7、四方切換弁8、室外熱交換器9、室外膨張弁10、レシーバタンク18、開閉弁20、室内膨張弁12、室内熱交換器11、四方切換弁8、流路A、逆止弁21及び流路Bの順に冷媒が循環するように構成されている。

g 上記(ア)の段落0019?0022、0025及び0027並びに図1の記載によれば、冷媒回路は、四方切換弁8を操作することにより、暖房運転では、圧縮機7、四方切換弁8、室内熱交換器11、室内膨張弁12、開閉弁20、レシーバタンク18、室外膨張弁10、室外熱交換器9、四方切換弁8、流路A、逆止弁21及び流路Bの順に冷媒が循環するように構成されている。

h 上記(ア)の段落0019?0023及び0030?0038並びに図1及び2の記載(特に、段落0030及び0038並びに図1及び2の記載)によれば、空気調和機1は、ガス検知器25により冷媒漏れが検知されると、室内熱交換器11から逆止弁21を介して室外熱交換器9へ冷媒を移送するポンプダウン運転が実施されるように構成されている。

i 上記(ア)の段落0019?0023、0033及び0034並びに図1及び2の記載(特に、段落0033及び0034並びに図2の記載)によれば、ポンプダウン運転では、冷房運転においてガス検知器25により冷媒漏れが検知されると、開閉弁20が閉じられ、室外膨張弁10と室内膨張弁12とが開放された状態で圧縮機7を運転させている。

j 上記(ア)の段落0019?0023、0035及び0036並びに図1及び2の記載(特に、段落0035及び0036並びに図2の記載)によれば、ポンプダウン運転では、暖房運転においてガス検知器25により冷媒漏れが検知されると、冷媒回路の運転状態を暖房運転から冷房運転に変更した後、開閉弁20が閉じられ、室外膨張弁10と室内膨張弁12とが開放された状態で圧縮機7を運転させている。

k 上記(ア)の段落0041並びに図1の記載によれば、ポンプダウン運転では、開閉弁20の下流に設けた圧力検知器22の検知により圧縮機7の運転を停止させている。

(ウ)引用発明
上記(ア)及び(イ)から、本件補正発明に倣って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「室外機2と室内機3とを備える空気調和機1であって、
室外熱交換器9と、
入側と出側とを含む圧縮機7と、
室内熱交換器11と、
四方切換弁8と、
入側と出側とを含む逆止弁21と、
前記四方切換弁8と前記逆止弁21の前記入側とを接続する流路Aと、
圧力検知器22と、
前記逆止弁21の前記出側と前記圧縮機7の前記入側とを接続し、アキュムレータ6が設けられた流路Bと、
開閉弁20と、
前記室外熱交換器9と前記開閉弁20との間の流路Cに配置されたレシーバタンク18と、
前記室外熱交換器9と前記レシーバタンク18の間に配置された室外膨張弁10と、
前記開閉弁20と前記室内熱交換器11とを繋ぐ前記室外機2の冷媒配管4、ユニット間配管4B及び前記室内機3の冷媒配管5からなる流路Dに配置された室内膨張弁12と、
冷媒回路からの冷媒漏れを検知するガス検知器25とを備え、
前記室外機2は、前記室外熱交換器9、前記圧縮機7、前記四方切換弁8、前記逆止弁21、前記流路A、前記圧力検知器22、前記流路B、前記開閉弁20、前記レシーバタンク18、前記室外膨張弁10とを含み、
前記室内機3は、前記室内熱交換器11と前記室内膨張弁12とを含み、
前記冷媒回路は、前記四方切換弁8を操作することにより、冷房運転では、前記圧縮機7、前記四方切換弁8、前記室外熱交換器9、前記室外膨張弁10、前記レシーバタンク18、前記開閉弁20、前記室内膨張弁12、前記室内熱交換器11、前記四方切換弁8、前記流路A、前記逆止弁21及び前記流路Bの順に冷媒が循環するように構成され、かつ、暖房運転では、前記圧縮機7、前記四方切換弁8、前記室内熱交換器11、前記室内膨張弁12、前記開閉弁20、前記レシーバタンク18、前記室外膨張弁10、前記室外熱交換器9、前記四方切換弁8、前記流路A、前記逆止弁21及び前記流路Bの順に冷媒が循環するように構成され、
前記空気調和機1は、前記ガス検知器25により冷媒漏れが検知されると、前記室内熱交換器11から前記逆止弁21を介して前記室外熱交換器9へ冷媒を移送するポンプダウン運転が実施されるように構成され、
前記ポンプダウン運転では、
前記冷房運転において前記ガス検知器25により冷媒漏れが検知されると、前記開閉弁20が閉じられ、前記室外膨張弁10と前記室内膨張弁12とが開放された状態で前記圧縮機7を運転させ、
前記暖房運転において前記ガス検知器25により冷媒漏れが検知されると、前記冷媒回路の運転状態を前記暖房運転から前記冷房運転に変更した後、前記開閉弁20が閉じられ、前記室外膨張弁10と前記室内膨張弁12とが開放された状態で前記圧縮機7を運転させ、
前記開閉弁20の下流に設けた前記圧力検知器22の検知により前記圧縮機7の運転を停止させる、空気調和機1。」

イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された文献であって、本願の出願前に頒布された特開平1-314866号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

「 (実施例)
以下、この発明に係る冷媒加熱型空気調和機の一実施例について添付図面を参照して説明する。
第1図はこの発明の一例を示す冷媒加熱型空気調和機であり、この空気調和機はコンプレッサ10、四方弁11、室外側熱交換器12、逆止弁13、減圧機構としての膨張弁(キャピラリチューブでもよい。)14、室内側熱交換器15を順次接続し、四方弁11から逆止弁16を経てコンプレッサ10に至る冷凍サイクル18が構成される。この冷凍サイクル18は、暖房運転時における膨張弁14の下流側から冷媒加熱回路20が分岐され、この冷媒加熱回路20は途中に二方弁21および冷媒加熱器22を経てコンプレッサ10の吸込側に接続される。
一方、冷凍サイクル18の室外側には室外温度を検出する室外温度検出器としての室外温度センサ24が設けられる一方、冷凍サイクル18のコンプレッサ吸込側にコンプレッサ吸込圧力を検出する圧力検出器25が設けられる。この圧力検出器25は例えば四方弁11と逆止弁16との間のコンプレッサ吸込圧力を検出している。
室外温度センサ24や圧力検出器25でそれぞれ検出された検出信号は制御装置26に入力される。制御装置26は室外温度およびコンプレッサ吸込圧力を入力してコンプレッサ10や四方弁11、二方弁21の作動を制御し、冷媒回収運転時間を制御している。冷媒回収運転は暖房運転に先立って行なわれ、室外側熱交換器12内に貯溜されている冷媒や冷凍機油を暖房サイクル26側に回収するものである。」(2ページ左下欄10行?同ページ右下欄末行)





ウ 引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された文献であって、本願の出願前に頒布された特開昭53-59953号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。

「本発明はこのようなこれまでの冷媒循環装置の問題点を解決したものであり、以下その実施例を図とともに説明する。第1図は、セパレート型ヒートポンプエアコンを示すものである。この図において室外側には室外ユニットとして、圧縮機11,四方弁12,室外側熱交器13,室外側ファン14等が設けられている。
また四方弁12から圧縮機11の吸入口に至る経路15には、冷媒の逆流を防止する逆止弁16及び回路内圧を検知して動作する圧力スイッチ17が設けられている。なお圧縮機に設けられている弁が十分に逆止機能を有する時は逆止弁16をなくしてもよい。一方室内側には、室内側熱交換器18,室内側ファン19及び冷媒の循環を停止する膨張弁を兼ねたストップ弁20が室内ユニットとして設けられている。また23は室外熱交換器側に設けた膨張弁である。室内側と室外側との間は、冷媒配管21が設けられている。次にこの装置の動作を説明すると、いま仮に、このヒートポンプエアコンが暖房運転を行なっていて、図中の矢印で示す様に冷媒が循環しているものとする。暖房が不要となり室内側で室内側熱交換器18の近傍に設けであるストップ弁20を閉止すると、冷媒の循環は停止し、同時にストップ弁と連動して室内側ファン19を停止する。冷媒の循環が停止すると、ストップ弁20から配管21,室外側熱交換器13,四方弁12及び逆止弁16を経て圧縮機11の吸入口に至る経絡(経路I)の内圧は低くなり、液状で存在していた冷媒はすべてガス状になる。一方、圧縮機の吐出口から四方弁12を経て、室内側熱交換器18に至る経路(経路II)は次第に内圧が上がり、この経路には液状とガス状の冷媒が混合状態で存在する。前記のストップ弁から配管,室外側熱交換器,四方弁及び逆止弁を経て圧縮機吸入口に至る経路I内の内圧が十分下った時点で圧カスイッチ17が作動し、圧縮機11及び室外側ファン14か運転を停止する。すると、圧縮機吐出口から四方弁,室内側熱交換器を経てストップ弁に至る経路IIの高圧が、圧縮機の弁を通過して圧縮機吸入側の低圧経路Iに加わろうとするが、逆止弁16があるためこれに阻止され、経路I内は低圧状態に保持される。」(2ページ左上欄5行?同ページ左下欄6行)





(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
ア 後者の「室外機2」は、前者の「室外機」に相当し、以下同様に、「室内機3」は「室内機」に、「室外熱交換器9」は「室外熱交換器」に、「圧縮機7」は「圧縮機」に、「室内熱交換器11」は「少なくとも1つの室内熱交換器」に、「四方切換弁8」は「四方弁」に、「逆止弁21」は「逆止弁」に、「流路A」は「流路」に、「圧力検知器22」は「圧力センサ」に、「開閉弁20」は「第1開閉弁」に、「流路C」は「第2流路」に、「レシーバタンク18」は「第1のレシーバ」に、「室外膨張弁10」は「膨張弁」に、「前記室外機2の冷媒配管4、ユニット間配管4B及び前記室内機3の冷媒配管5からなる流路D」は「室外室内流路」に、「冷媒回路」は「冷媒回路」に、「ガス検知器25」は「冷媒漏洩検知装置」に、「冷房運転」は「冷房運転状態」に、「暖房運転」は「暖房運転状態」に、「ポンプダウン運転」は「冷媒移送運転」に、それぞれ相当する。

イ 後者の「空気調和機1」は、室外機2が、室外熱交換器9、圧縮機7、四方切換弁8を含み、室内機3が、室内熱交換器11、室内膨張弁12とを含んでおり、冷凍サイクルを構成するものであるから、前者の「冷凍サイクル装置」に相当する。

ウ 後者の「前記逆止弁21の前記出側と前記圧縮機7の前記入側とを接続し、アキュムレータ6が設けられた流路B」は、前者の「前記逆止弁の前記出側と前記圧縮機の前記入側とを接続する第1流路」に相当する。

エ 後者の「前記室外熱交換器9と前記開閉弁20との間の流路C」は、前者の「前記室外熱交換器と前記第1開閉弁とを繋ぐ第2流路」に、「前記室外熱交換器と前記第1開閉弁との間の第2流路」という限りにおいて一致する。

オ 前者の「第2開閉弁」は膨張弁で構成されることから(本願明細書の段落0012)、後者の「室内膨張弁12」は、前者の「第2開閉弁」に相当する。

カ 後者の「冷媒回路」は、「前記四方切換弁8を操作することにより、冷房運転では、前記圧縮機7、前記四方切換弁8、前記室外熱交換器9、前記室外膨張弁10、前記レシーバタンク18、前記開閉弁20、前記室内膨張弁12、前記室内熱交換器11、前記四方切換弁8、前記流路A、前記逆止弁21及び前記流路Bの順に冷媒が循環するように構成され、かつ、暖房運転では、前記圧縮機7、前記四方切換弁8、前記室内熱交換器11、前記室内膨張弁12、前記開閉弁20、前記レシーバタンク18、前記室外膨張弁10、前記室外熱交換器9、前記四方切換弁8、前記流路A、前記逆止弁21及び前記流路Bの順に冷媒が循環するように構成され」ていることから、前者の「前記圧縮機、前記室外熱交換器、前記第1開閉弁、前記少なくとも1つの室内熱交換器、前記四方弁、前記逆止弁に冷媒を循環させる冷媒回路」に相当する。

キ 後者の「前記室外機2は、前記室外熱交換器9、前記圧縮機7、前記四方切換弁8、前記逆止弁21、前記流路A、前記圧力検知器22、前記流路B、前記開閉弁20、前記レシーバタンク18、前記室外膨張弁10とを含み」という態様は、前者の「前記室外機は、前記室外熱交換器、前記圧縮機、前記四方弁、前記逆止弁、前記流路、前記圧力センサ、前記第1流路、前記第1開閉弁とを含み」という態様に相当する。

ク 前者の「前記冷媒回路は、前記四方弁を操作することにより、冷房運転状態では、前記圧縮機、前記室外熱交換器、前記第1開閉弁、前記少なくとも1つの室内熱交換器、前記逆止弁および前記第1流路の順に冷媒が循環するように構成され、かつ、暖房運転状態では、前記圧縮機、前記少なくとも1つの室内熱交換器、前記第1開閉弁、前記室外熱交換器、前記逆止弁および前記第1流路の順に冷媒が循環するように構成され」という態様は、冷媒が流れる順に列挙された構成要素が含まれていればよいから、当該態様に後者の「前記冷媒回路は、前記四方切換弁8を操作することにより、冷房運転では、前記圧縮機7、前記四方切換弁8、前記室外熱交換器9、前記室外膨張弁10、前記レシーバタンク18、前記開閉弁20、前記室内膨張弁12、前記室内熱交換器11、前記四方切換弁8、前記流路A、前記逆止弁21及び前記流路Bの順に冷媒が循環するように構成され、かつ、暖房運転では、前記圧縮機7、前記四方切換弁8、前記室内熱交換器11、前記室内膨張弁12、前記開閉弁20、前記レシーバタンク18、前記室外膨張弁10、前記室外熱交換器9、前記四方切換弁8、前記流路A、前記逆止弁21及び前記流路Bの順に冷媒が循環するように構成され」という態様が相当する。

ケ 後者の「前記ポンプダウン運転では」、「前記ガス検知器25により冷媒漏れが検知されると」、「前記開閉弁20が閉じられ、前記室外膨張弁10と前記室内膨張弁12とが開放された状態で前記圧縮機7を運転させ」る態様は、前者の「前記冷媒移送運転では」、「前記冷媒漏洩検知装置により冷媒漏れが検知されると」、「前記第1開閉弁が閉じた後、前記第2開閉弁を開放した状態で前記圧縮機を運転させ」る態様に、「前記冷媒移送運転では」、「前記冷媒漏洩検知装置により冷媒漏れが検知されると」、「前記第1開閉弁が閉じられ、前記第2開閉弁を開放した状態で前記圧縮機を運転させ」るという限りにおいて一致する。

以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「室外機と室内機とを備える冷凍サイクル装置であって、
室外熱交換器と、
入側と出側とを含む圧縮機と、
少なくとも1つの室内熱交換器と、
四方弁と、
入側と出側とを含む逆止弁と、
前記四方弁と前記逆止弁の前記入側とを接続する流路と、
圧力センサと、
前記逆止弁の前記出側と前記圧縮機の前記入側とを接続する第1流路と、
第1開閉弁と、
前記圧縮機、前記室外熱交換器、前記第1開閉弁、前記少なくとも1つの室内熱交換器、前記四方弁、前記逆止弁に冷媒を循環させる冷媒回路からの冷媒漏れを検知する冷媒漏洩検知装置と、
前記第1開閉弁と前記少なくとも1つの室内熱交換器とを繋ぐ室外室内流路に配置された第2開閉弁とを備え、
前記室外機は、前記室外熱交換器、前記圧縮機、前記四方弁、前記逆止弁、前記流路、前記圧力センサ、前記第1流路、前記第1開閉弁とを含み、
前記室内機は、前記室内熱交換器と前記第2開閉弁とを含み、
前記室外熱交換器と前記第1開閉弁との間の第2流路に配置された第1のレシーバを備え、
前記冷媒回路は、前記四方弁を操作することにより、冷房運転状態では、前記圧縮機、前記室外熱交換器、前記第1開閉弁、前記少なくとも1つの室内熱交換器、前記逆止弁および前記第1流路の順に冷媒が循環するように構成され、かつ、暖房運転状態では、前記圧縮機、前記少なくとも1つの室内熱交換器、前記第1開閉弁、前記室外熱交換器、前記逆止弁および前記第1流路の順に冷媒が循環するように構成され、
前記冷凍サイクル装置は、前記冷媒漏洩検知装置により冷媒漏れが検知されると、前記少なくとも1つの室内熱交換器から前記逆止弁を介して前記室外熱交換器へ冷媒を移送する冷媒移送運転が実施されるように構成され、
前記冷媒移送運転では、
前記冷房運転状態において前記冷媒漏洩検知装置により冷媒漏れが検知されると、前記第1開閉弁が閉じられ、前記第2開閉弁を開放した状態で前記圧縮機を運転させ、
前記暖房運転状態において前記冷媒漏洩検知装置により冷媒漏れが検知されると、前記冷媒回路の運転状態を前記暖房運転状態から前記冷房運転状態に変更した後、前記第1開閉弁が閉じられ、前記第2開閉弁を開放した状態で前記圧縮機を運転させ、
前記圧力センサの検知により前記圧縮機の運転を停止させる、冷凍サイクル装置。」

[相違点1]
「圧力センサ」に関し、本件補正発明では、(四方弁と前記逆止弁の前記入側とを接続する)「前記流路に接続された」ものであるのに対して、引用発明では、「ポンプダウン運転」において「前記開閉弁20の下流に設けた」ものである点。

[相違点2]
本件補正発明では、「前記室外熱交換器と前記第1開閉弁とを繋ぐ第2流路に配置された第1のレシーバを備え、前記室外熱交換器と前記第1のレシーバの間に膨張弁が配置されて」いないのに対して、引用発明では、「前記室外熱交換器9と前記開閉弁20との間の流路Cに配置されたレシーバタンク18と、前記室外熱交換器9と前記レシーバタンク18の間に配置された室外膨張弁10と」を「備え」ている点。

[相違点3]
「前記冷媒移送運転では」、「前記冷媒漏洩検知装置により冷媒漏れが検知されると」、「前記第1開閉弁が閉じられ、前記第2開閉弁を開放した状態で前記圧縮機を運転させ」ることに関し、
本件補正発明では、「前記第1開閉弁が閉じた後、前記第2開閉弁を開放した状態で前記圧縮機を運転させ」るのに対して、
引用発明では、「前記開閉弁20が閉じられ、前記室外膨張弁10と前記室内膨張弁12とを開放した状態で前記圧縮機7を運転させ」る点。

(4)判断
ア 相違点について
上記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
本件補正発明の「圧力センサ」は、「前記流路に接続された」ものであるところ、冷媒移送運転であるポンプダウン運転を停止する条件であって、圧縮機を停止する条件である、室内機の冷媒量が所定量以下になったことを示す条件が成立したかどうかを確認するために、逆止弁の入側の圧力を検知するものであり(本願明細書段落0025及び0026)、冷媒が回収される流路の圧力を検知するものといえる。
一方、引用発明の圧力検出器22(圧力センサ)は、開閉弁20(第1開閉弁)の下流に設けたものであるところ、ポンプダウン運転(冷媒移送運転)において圧縮機7(圧縮機)の運転を停止させるため、本件補正発明の「圧力センサ」と同じく、冷媒が回収される流路の圧力を検知するものである。
そして、冷凍サイクル装置において、圧力センサの検知により冷媒回収のための圧縮機の運転を停止するにあたり、四方弁と逆止弁の入側とを接続する流路に圧力センサを設けることは、例えば、上記(2)のイ及びウに摘記した引用文献2及び引用文献3の記載から理解できるように、本願の出願前に周知の技術(以下「周知技術1」という。)であるから、引用発明に周知技術1を適用し、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)相違点2について
四方弁により冷房運転状態と暖房運転状態が切り換え可能な冷凍サイクル装置において、室外熱交換器と室内熱交換器との間の流路に膨張弁を1つのみ設けることは、本願の出願前に周知の技術(以下「周知技術2」という。例えば、特開平2-140574号公報(特に、2ページ左下欄14行?3ページ左上欄11行、冷房運転時、暖房運転時に膨張弁として用いられる1つの冷媒減圧器(8)。)を参照。)である。
そして、引用発明において、室外膨張弁10と室内膨張弁12の2つの膨張弁が1つのみとなることにより、部品点数の削減によるコスト低減を図ることができ、1つの膨張弁のみとしても、2つの膨張弁の機能を兼用させることにより、膨張弁としての機能に変わりがないものとなるから、引用発明に周知技術2を適用し、膨張弁として室内膨張弁12のみとし、室内膨張弁12に室外膨張弁10の機能を兼ね備えたものとすることで、前記室外熱交換器9と前記レシーバタンク18の間に膨張弁が配置されていないようにし、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(ウ)相違点3について
本件補正発明では、「前記第1開閉弁が閉じた後、前記第2開閉弁を開放した状態で前記圧縮機を運転させ」るところ、文言上、必ずしも、第1開閉弁が閉じるタイミングに対して、第2開閉弁を開放した状態で圧縮機を運転させるタイミングに遅れの時間差があるような開閉順序を規定したものに限るものではないから、上記相違点3は実質的な相違点ではない。
仮に、第1開閉弁が閉じるタイミングに対して、第2開閉弁を開放した状態で圧縮機を運転させるタイミングに遅れの時間差があるような順序を規定したものを意味し、相違点3が実質的な相違点であるとしても、冷媒移送(冷媒回収)をするにあたり、第2開閉弁を開放した状態で圧縮機を運転させることは、第1開閉弁が閉じた状態にあることが前提となる動作であるから、引用発明において、第1開閉弁が閉じるタイミングに対して、第2開閉弁を開放した状態で圧縮機を運転させるタイミングに遅れの時間差があるような順序を規定したものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。

イ 請求人の主張について
(ア)請求人は、審判請求書の5ページ6?19行において、「引用文献1には、「四方弁と逆止弁の入側とを接続する流路に接続された圧力センサ」の開示がありません。引用文献1には、開閉弁20と室内膨張弁12の間に、圧力検知器22が開示されています。この部分に圧力センサを設ける理由として、段落0041の記載から、冷媒回路の空気の侵入を防ぐことを意図しています。これは、流路の上流側で冷媒が減少したことを早期に検知し、ポンプダウン運転を早期に停止すること意図しています。
このため、・・・(当審注:「・・・」は記載の省略を示す。)「四方弁と逆止弁の入側とを接続する流路に接続された圧力センサ」として、開閉弁20と室内膨張弁12の間に比べ、圧力の変化が遅れる下流側である四方弁と逆止弁の入力側の間に圧力センサを設けることには至りません。
また、引用文献2,3には、四方弁と逆止弁の入側とを接続する流路に、圧力センサを接続するものが開示されていますが、ポンプダウン運転に関するものでなく、早期にポンプダウン運転を停止することを意図した引用文献1が、敢えて、引用文献2,3の圧力センサの配置を組み合わせる動機付けがありません。」と主張する。
しかし、上記ア(ア)で検討したとおり、引用発明の圧力検出器22(圧力センサ)は、冷媒が回収される流路の圧力を検知すべく設けられたものであって、冷媒が回収される流路の圧力を検知できる箇所であれば任意の箇所に設置できるものであり、その際に周知技術1の圧力センサの設置箇所を考慮して、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるから、請求人の上記主張は採用することができない。

(イ)また、請求人は、審判請求書の5ページ21行?6ページ5行において、「例えば、引用文献1の開示に類似するように、第1開閉弁を閉じることと、第2開閉弁を開放することを同時に行った場合、もしくは、図2の暖房運転時のように、先に第2開閉弁を開放することとした場合、通常圧縮機は冷媒漏れの検知前後でも連続して動作しているので、室外室内流路に冷媒が流れ、室内機へ冷媒が流れてしまいます。
これに対し、請求項1に係る発明では、・・・このような室外室内流路に冷媒が流れ、室内機へ冷媒が流れる問題を生じなくできます。
また、室内機から室外機の流路も長い流路でありますが、室外室内流路に比べ、圧縮機に近い側であり、かつ、逆止弁があるため、第2開閉弁を開放する前に第1開閉弁を閉じたとしても、閉じたことの影響は小さく、冷媒を室外機に送ることができます。
以上のように、請求項1に係る発明では、長い室外室内流路を考慮して第1開閉弁と第2開閉弁の開閉順序を規定し、かつ、逆止弁を有効に利用し確実に冷媒を室外機へ流すものであります。
」と主張する。
しかし、上記ア(ウ)で検討したとおり、本件補正発明は、冷媒移送運転において第1開閉弁と第2開閉弁の開閉順序が規定されているものに限るものではなく、実質的な相違点ではないから、請求人の上記主張は採用することができない。また、仮に、第1開閉弁と第2開閉弁の開閉順序が規定されているものであるとしても、そのようなことは引用発明においても当業者が適宜なし得たことであるから、請求人の上記主張は採用することができない。

(ウ)さらに、請求人は、審判請求書の6ページ7?14行において、「引用文献1では、室外熱交換器9とレシーバタンク18の間に膨張弁10が配置されています。一方、請求項1に係る発明では、上記(ホ)のように、室外熱交換器と第1のレシーバの間に膨張弁が配置されていません。これにより、流路抵抗の削減と部品の削減を実現できます。
引用文献1では、早期にポンプダウン運転を終了することを意図しており、また、膨張弁10を暖房運転時の空調負荷のため必要としています。このため、本願の課題である配管の流路抵抗の抑制が最重要であることを考慮できていないものからは、容易に膨張弁をなくすことに至らないと考えます。」と主張する。
しかし、上記ア(イ)で検討したとおり、部品点数の削減によるコスト低減を図るため、引用発明に周知技術2を適用し、膨張弁として室内膨張弁12のみとし、室内膨張弁12に室外膨張弁10の機能を兼ね備えたものとすることで、室外熱交換器9(室外熱交換器)とレシーバタンク18(第1のレシーバ)の間に膨張弁が配置されないように構成することは、当業者が容易になし得たことであって、冷媒回路において構成部品が少なくなれば流路抵抗が低減することは技術常識として理解できることであり、そのような効果は格別のものでないから、請求人の上記主張は採用することができない。

ウ 効果について
そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、周知技術1及び周知技術2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ まとめ
したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?6に係る発明は、令和2年5月19日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の一部は、以下のとおりである。
<理由(進歩性)について>
本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2002-228281号公報
引用文献2:特開平1-314866号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開昭53-59953号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1?3、それらの記載及び引用発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明と引用発明とは、前記第2の[理由]2(3)の対比を踏まえると、前記相違点1及び3で相違し、その余は一致する。
そうすると、前記第2の[理由]2(4)の判断を踏まえると、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許受けることができないものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-09-03 
結審通知日 2021-09-07 
審決日 2021-09-24 
出願番号 特願2018-546977(P2018-546977)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25B)
P 1 8・ 575- Z (F25B)
P 1 8・ 572- Z (F25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯星 潤耶  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 槙原 進
後藤 健志
発明の名称 冷凍サイクル装置  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ