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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B66B 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 B66B |
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管理番号 | 1379690 |
審判番号 | 不服2020-12808 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-09-11 |
確定日 | 2021-11-30 |
事件の表示 | 特願2019-35016「交換工事方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月27日出願公開、特開2019-104636、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2017年(平成29年)9月27日を国際出願日とする出願である特願2018-526822号の一部を平成31年2月27日に新たな特許出願としたものであって、令和2年4月22日付けで拒絶理由が通知され、同年6月25日に意見書が提出されるとともに、手続補正がされ、同年7月22日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、同年9月11日に審判請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 令和2年9月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年9月11日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「カゴが一つのみ設けられたエレベーターであって、複数の構成部を備えた当該エレベーターの当該構成部の交換工事をおこなう交換工事方法において、 前記構成部とシリアル伝送方式によって通信可能に接続され、当該構成部を制御する制御盤と当該構成部との接続を切り離し、当該制御盤を取り外す第1の工程と、 前記構成部がシリアル伝送方式によって出力する、当該構成部から前記制御盤への伝達情報にかかる信号を、当該信号と同じ意味の信号であって、前記制御盤とは別の種類の新制御盤が理解できる、当該伝達情報にかかるシリアル伝送方式による別の信号へ変換する信号変換装置を、前記構成部にシリアル伝送方式によって通信可能に接続するとともに、当該信号変換装置を前記新制御盤にシリアル伝送方式によって通信可能に接続する第2の工程と、 前記第2の工程による接続の動作確認をおこなう第3の工程と、 を有する制御盤交換工程と、 前記制御盤交換工程による制御盤の交換が完了した後に、前記構成部の少なくとも一つと前記信号変換装置との接続を切り離し、当該構成部とは別の構成部であって、前記新制御盤が理解できる、当該新制御盤への伝達情報にかかる信号をシリアル伝送方式によって出力する新構成部を、前記新制御盤にシリアル伝送方式によって通信可能に接続する第4の工程と、 前記第4の工程による接続の動作確認をおこなう第5の工程と、 を有する構成部交換工程と、 を含んだことを特徴とする交換工事方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和2年6月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「カゴが一つのみ設けられたエレベーターであって、複数の構成部を備えた当該エレベーターの当該構成部の交換工事をおこなう交換工事方法において、 前記構成部を制御する制御盤と当該構成部との接続を切り離し、当該制御盤を取り外す第1の工程と、 前記構成部が出力する、当該構成部から前記制御盤への伝達情報にかかる信号を、当該信号と同じ意味の信号であって、前記制御盤とは別の種類の新制御盤が理解できる、当該伝達情報にかかる別の信号へ変換する信号変換装置を、前記構成部に接続するとともに、当該信号変換装置を前記新制御盤に接続する第2の工程と、 前記第2の工程による接続の動作確認をおこなう第3の工程と、 を有する制御盤交換工程と、 前記制御盤交換工程による制御盤の交換が完了した後に、前記構成部の少なくとも一つと前記信号変換装置との接続を切り離し、当該構成部とは別の構成部であって、前記新制御盤が理解できる、当該新制御盤への伝達情報にかかる信号を出力する新構成部を、前記新制御盤に接続する第4の工程と、 前記第4の工程による接続の動作確認をおこなう第5の工程と、 を有する構成部交換工程と、 を含んだことを特徴とする交換工事方法。」 2 補正の適否 (1)当審の判断 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、新旧制御盤と新旧構成部との間の情報の伝達方式について、上記のとおり限定((i)旧構成部と旧制御盤との通信がシリアル伝送方式である点、(ii)信号変換装置が、シリアル伝送方式による信号をシリアル伝送方式よる別の信号に変換する点、(iii)新構成部と新制御盤は、シリアル伝送方式で旧機器と旧制御盤とは別の信号の通信を行う点)を付加するものである。 しかしながら、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、上記(i)?(iii)の技術的事項、すなわち、旧構成部と旧制御盤と間の信号の伝送方式をシリアル方式と特定した上で、新構成部と新制御盤との間の信号の伝送方式を同じ方式(シリアル方式)を採用しつつも、信号の中身は新旧で別のものとするという技術的事項は、何ら記載も示唆もされておらず(当初明細書等には、旧構成部と旧制御盤、旧構成部と信号変換装置、信号変換装置と新制御盤及び新構成部と新制御盤との間の信号の伝送方式がシリアル伝送方式を採用していることは一切記載されていない。)、当初明細書等の記載から、出願時の技術常識に照らして、そのような技術的事項が当初明細書等に記載されているのと同然であるともいえない。 してみれば、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 なお、上記補正により付加された点は、原出願の当初の明細書等にも記載されていないものである。 (2)審判請求人の主張について ア 本件補正に関し、審判請求人は、審判請求書において次のように主張する。 「本願の原出願の出願時(平成29年9月27日)のエレベーターの制御盤と構成部との大半の通信はシリアル伝送方式によりおこなわれており、稼働しているパラレル伝送方式による旧型(旧方式)のエレベーターは極めてその数が少なくなっていたという当時の技術的背景からしても、本願発明の信号の通信がシリアル伝送方式によりおこなわれることは、当業者間における技術常識であると思量します。これにより、原出願の当初明細書等の記載に接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、補正された事項が当初明細書等に記載されているのと同然であると理解する事項であると判断することができるものと思量します。」(審判請求書「(2)補正の概要」第4段落?第5段落。) イ しかしながら、審判請求人もいうように、本願の原出願の出願時に、エレベーターの制御盤と構成部とがパラレル伝送方式であるものが存在していたと認められるし(例えば、国際公開第2019/073606号(出願日:平成29年10月13日)の請求項2、段落[0033]?[0036]、[0042]、[0064]には、リニューアル対象(すなわち旧機器)の通信方式がシリアル通信方式とパラレル通信方式の両方式が存在することが記載されている。)、また、本願の当初明細書等には、旧構成部と旧制御盤、旧構成部と信号変換装置、信号変換装置と新制御盤及び新構成部と新制御盤との間の信号の伝送方式がシリアル伝送方式だけを採用しているものであるとは一切記載されていないことからすれば、本願発明における、旧構成部と旧制御盤、旧構成部と信号変換装置、信号変換装置と新制御盤及び新構成部と新制御盤との間の信号の伝送方式がシリアル伝送方式であるこということが、当業者間における技術常識であるとはいえず、審判請求人の上記主張は採用できない。 ウ また、審判請求人は、審判請求書において次のようにも主張する。 「図7A、図7Bから明らかなように、制御盤106と各構成部700との接続を、・・・(中略)・・・。同様に、図9B、図9C、図9Dから明らかなように、新制御盤106’と各新構成部700’の接続を、1本の接続線によって示していることから、新制御盤106’と各新構成部700’との間がシリアル伝送方式で通信するように接続されていることを示唆していますし、少なくともそのように示唆していると客観的に判断できるものと思量します。」(審判請求書「(2)補正の概要」第6段落。) エ しかしながら、本願の願書に添付された明細書中において、図7A、図7B、図9B、図9C及び図9Dにおける1本の接続線がシリアル伝送方式であるとの記載は一切無い。また、図1において、通常複数本の接続線から構成されるエレベーター100の制御基板111cと制御盤106との間が1本の通信線で描かれていること、図4において、信号変換装置のバス405(複数本の通信線から構成されるものであることが技術常識であるといえる。)が1本の信号線で描かれていることを含め、本願の願書に添付された図面において、通信線が全て1本の線で描かれていることからすれば、図7A、図7B、図9B、図9C及び図9Dは、概要図を示しているにすぎず、図7A?図7Dの記載から、当業者が一意的に把握できる事項は、(i)制御盤106と各構成部700とが接続されているという事項、(ii)信号変換装置400と各構成部700とが接続されるという事項、及び(iii)信号変換装置400と新制御盤106’とが接続されるという事項に留まるものと認められ、図7A?図7D、図9A?図9Cにおいて、旧構成部と旧制御盤、旧構成部と信号変換装置、信号変換装置と新制御盤及び新構成部と新制御盤との間の信号の伝送方式がシリアル伝送方式であるという技術的事項が明示的に記載されているとはいえず、また、シリアル伝送方式であることが自明であるとも認められない。 したがって、請求人の上記主張も採用できない。 3 補正の却下の決定についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 原査定の概要 原査定(令和2年7月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 この出願の請求項1?11に係る発明は、本願の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2012-12161号公報 第4 本願発明 本件補正は、上記「第2 補正の却下の決定」のとおり、却下された。 したがって、本願の請求項1?11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明11」という。)は、令和2年6月25日にされた手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 カゴが一つのみ設けられたエレベーターであって、複数の構成部を備えた当該エレベーターの当該構成部の交換工事をおこなう交換工事方法において、 前記構成部を制御する制御盤と当該構成部との接続を切り離し、当該制御盤を取り外す第1の工程と、 前記構成部が出力する、当該構成部から前記制御盤への伝達情報にかかる信号を、当該信号と同じ意味の信号であって、前記制御盤とは別の種類の新制御盤が理解できる、当該伝達情報にかかる別の信号へ変換する信号変換装置を、前記構成部に接続するとともに、当該信号変換装置を前記新制御盤に接続する第2の工程と、 前記第2の工程による接続の動作確認をおこなう第3の工程と、 を有する制御盤交換工程と、 前記制御盤交換工程による制御盤の交換が完了した後に、前記構成部の少なくとも一つと前記信号変換装置との接続を切り離し、当該構成部とは別の構成部であって、前記新制御盤が理解できる、当該新制御盤への伝達情報にかかる信号を出力する新構成部を、前記新制御盤に接続する第4の工程と、 前記第4の工程による接続の動作確認をおこなう第5の工程と、 を有する構成部交換工程と、 を含んだことを特徴とする交換工事方法。 【請求項2】 カゴが一つのみ設けられたエレベーターであって、複数の構成部を備えた当該エレベーターの当該構成部の交換工事をおこなう交換工事方法において、 前記構成部を制御する制御盤と当該構成部との接続を切り離し、当該制御盤を取り外す第1の工程と、 新制御盤が出力する、当該新制御盤から前記構成部への伝達情報にかかる信号を、当該伝達情報にかかる信号と同じ意味の信号であって、前記構成部が理解できる、当該伝達情報にかかる別の信号へ変換する信号変換装置を、前記構成部に接続するとともに、当該信号変換装置を前記新制御盤に接続する第2の工程と、 前記第2の工程による接続の動作確認をおこなう第3の工程と、 を有する制御盤交換工程と、 前記制御盤交換工程による制御盤の交換が完了した後に、前記構成部の少なくとも一つと前記信号変換装置との接続を切り離し、当該構成部とは別の構成部であって、前記新制御盤が理解できる、当該新制御盤への伝達情報にかかる信号を出力する新構成部を、前記新制御盤に接続する第4の工程と、 前記第4の工程による接続の動作確認をおこなう第5の工程と、 を有する構成部交換工程と、 を含んだことを特徴とする交換工事方法。 【請求項3】 カゴが一つのみ設けられたエレベーターであって、複数の構成部を備えた当該エレベーターの当該構成部の交換工事をおこなう交換工事方法において、 前記構成部を制御する制御盤と当該構成部との接続を切り離し、当該制御盤を取り外す第1の工程と、 前記構成部が出力する、当該構成部から前記制御盤への伝達情報にかかる信号を、当該信号と同じ意味の信号であって、前記制御盤とは別の種類の新制御盤が理解できる、当該伝達情報にかかる別の信号へ変換し、かつ、前記新制御盤が出力する、当該新制御盤から前記構成部への伝達情報にかかる信号を、当該伝達情報にかかる信号と同じ意味の信号であって、前記構成部が理解できる、当該伝達情報にかかる別の信号へ変換する信号変換装置を、前記構成部に接続するとともに、当該信号変換装置を前記新制御盤に接続する第2の工程と、 前記第2の工程による接続の動作確認をおこなう第3の工程と、 を有する制御盤交換工程と、 前記制御盤交換工程による制御盤の交換が完了した後に、前記構成部の少なくとも一つと前記信号変換装置との接続を切り離し、当該構成部とは別の構成部であって、前記新制御盤が理解できる、当該新制御盤への伝達情報にかかる信号を出力する新構成部を、前記新制御盤に接続する第4の工程と、 前記第4の工程による接続の動作確認をおこなう第5の工程と、 を有する構成部交換工程と、 を含んだことを特徴とする交換工事方法。 【請求項4】 カゴが一つのみ設けられたエレベーターであって、複数の構成部を備えた当該エレベーターの当該構成部の交換工事をおこなう交換工事方法において、 前記構成部を制御する制御盤と当該構成部との接続を切り離し、当該制御盤を取り外す第1の工程と、 前記構成部が出力する、当該構成部から前記制御盤への伝達情報にかかる信号を、当該信号と同じ意味の信号であって、前記制御盤とは別の種類の新制御盤が理解できる、当該伝達情報にかかる別の信号へ変換する信号変換装置を、前記構成部に接続するとともに、当該信号変換装置を前記新制御盤に接続する第2の工程と、 前記第2の工程による接続の動作確認をおこなう第3の工程と、 を有する制御盤交換工程と、 前記制御盤交換工程による制御盤の交換が完了した後に、前記構成部の少なくとも一つと前記信号変換装置との接続を切り離し、当該構成部とは別の構成部であって、前記新制御盤が出力する、当該新制御盤からの伝達情報にかかる信号を理解できる新構成部を、前記新制御盤に接続する第4の工程と、 前記第4の工程による接続の動作確認をおこなう第5の工程と、 を有する構成部交換工程と、 を含んだことを特徴とする交換工事方法。 【請求項5】 カゴが一つのみ設けられたエレベーターであって、複数の構成部を備えた当該エレベーターの当該構成部の交換工事をおこなう交換工事方法において、 前記構成部を制御する制御盤と当該構成部との接続を切り離し、当該制御盤を取り外す第1の工程と、 新制御盤が出力する、当該新制御盤から前記構成部への伝達情報にかかる信号を、当該伝達情報にかかる信号と同じ意味の信号であって、前記構成部が理解できる、当該伝達情報にかかる別の信号へ変換する信号変換装置を、前記構成部に接続するとともに、当該信号変換装置を前記新制御盤に接続する第2の工程と、 前記第2の工程による接続の動作確認をおこなう第3の工程と、 を有する制御盤交換工程と、 前記制御盤交換工程による制御盤の交換が完了した後に、前記構成部の少なくとも一つと前記信号変換装置との接続を切り離し、当該構成部とは別の構成部であって、前記新制御盤が出力する、当該新制御盤からの伝達情報にかかる信号を理解できる新構成部を、前記新制御盤に接続する第4の工程と、 前記第4の工程による接続の動作確認をおこなう第5の工程と、 を有する構成部交換工程と、 を含んだことを特徴とする交換工事方法。 【請求項6】 カゴが一つのみ設けられたエレベーターであって、複数の構成部を備えた当該エレベーターの当該構成部の交換工事をおこなう交換工事方法において、 前記構成部を制御する制御盤と当該構成部との接続を切り離し、当該制御盤を取り外す第1の工程と、 前記構成部が出力する、当該構成部から前記制御盤への伝達情報にかかる信号を、当該信号と同じ意味の信号であって、前記制御盤とは別の種類の新制御盤が理解できる、当該伝達情報にかかる別の信号へ変換し、かつ、前記新制御盤が出力する、当該新制御盤から前記構成部への伝達情報にかかる信号を、当該伝達情報にかかる信号と同じ意味の信号であって、前記構成部が理解できる、当該伝達情報にかかる別の信号へ変換する信号変換装置を、前記構成部に接続するとともに、当該信号変換装置を前記新制御盤に接続する第2の工程と、 前記第2の工程による接続の動作確認をおこなう第3の工程と、 を有する制御盤交換工程と、 前記制御盤交換工程による制御盤の交換が完了した後に、前記構成部の少なくとも一つと前記信号変換装置との接続を切り離し、当該構成部とは別の構成部であって、前記新制御盤が出力する、当該新制御盤からの伝達情報にかかる信号を理解できる新構成部を、前記新制御盤に接続する第4の工程と、 前記第4の工程による接続の動作確認をおこなう第5の工程と、 を有する構成部交換工程と、 を含んだことを特徴とする交換工事方法。 【請求項7】 カゴが一つのみ設けられたエレベーターであって、複数の構成部を備えた当該エレベーターの当該構成部の交換工事をおこなう交換工事方法において、 前記構成部を制御する制御盤と当該構成部との接続を切り離し、当該制御盤を取り外す第1の工程と、 前記構成部が出力する、当該構成部から前記制御盤への伝達情報にかかる信号を、当該信号と同じ意味の信号であって、前記制御盤とは別の種類の新制御盤が理解できる、当該伝達情報にかかる別の信号へ変換し、かつ、前記新制御盤が出力する、当該新制御盤から前記構成部への伝達情報にかかる信号を、当該伝達情報にかかる信号と同じ意味の信号であって、前記構成部が理解できる、当該伝達情報にかかる別の信号へ変換する信号変換装置を、前記構成部に接続するとともに、当該信号変換装置を前記新制御盤に接続する第2の工程と、 前記第2の工程による接続の動作確認をおこなう第3の工程と、 を有する制御盤交換工程と、 前記制御盤交換工程による制御盤の交換が完了した後に、前記構成部の少なくとも一つと前記信号変換装置との接続を切り離し、当該構成部とは別の構成部であって、前記新制御盤が理解できる、当該新制御盤への伝達情報にかかる信号を出力し、かつ、前記新制御盤が出力する、当該新制御盤からの伝達情報にかかる信号を理解できる新構成部を、前記新制御盤に接続する第4の工程と、 前記第4の工程による接続の動作確認をおこなう第5の工程と、 を有する構成部交換工程と、 を含んだことを特徴とする交換工事方法。 【請求項8】 前記構成部は、前記エレベーターの駆動機構であることを特徴とする請求項1?7のいずれか一つに記載の交換工事方法。 【請求項9】 前記構成部は、前記エレベーターの乗り場の制御機構であることを特徴とする請求項1?7のいずれか一つに記載の交換工事方法。 【請求項10】 前記構成部は、前記エレベーターのカゴの制御機構であることを特徴とする請求項1?7のいずれか一つに記載の交換工事方法。 【請求項11】 前記構成部は、前記エレベーターのセンサー機構であることを特徴とする請求項1、3または7のいずれか一つに記載の交換工事方法。」 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2012-12161号公報(引用文献1)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。)。 (1) 「【請求項1】 昇降路側に、エレベータの運行を制御する機器が設けられ、前記昇降路外に設けられた制御装置は、これら各機器との間にそれぞれ設けられた配線によりパラレル通信方式で信号授受を行うと共に、このパラレル通信方式による配線の中間部には、前記配線を昇降路側と制御装置側に区分し、かつ、これらの間をそれぞれ突き合わせ接続する集線ボックスを設けた既存方式のエレベータ装置を、新規な制御装置を有し、この新規な制御装置が用いるシリアル通信方式を用いて各機器との信号授受を行う新方式のエレベータにリニューアルするエレベータのリニューアル方法であって、 前記各機器から前記集線ボックスまでのパラレル通信方式の配線を撤去せずに残存させ、この集線ボックスと前記新規な制御装置との間はシリアル通信方式の配線を新たに施し、この集線ボックス内に信号変換ユニットを設け、この信号変換ユニットにより、各制御機器との間で前記既存の配線によりパラレル信号の授受を行い、前記新規な制御装置との間では前記シリアル通信方式で信号の授受を行い、これらパラレル信号をシリアル通信方式へ、また、シリアル通信方式の信号をパラレル信号へ、それぞれ変換することにより、前記各機器と新たな制御装置との間で相互に信号通信を行う ことを特徴とするエレベータのリニューアル方法。」 (2) 「【請求項3】 昇降路側に、エレベータの運行を制御する機器が設けられ、前記昇降路外に設けられた制御装置は、これら各機器との間にそれぞれ設けられた配線によりパラレル通信方式で信号授受を行うと共に、このパラレル通信方式による配線の中間部には、前記配線を昇降路側と制御装置側に区分し、かつ、これらの間をそれぞれ突き合わせ接続する集線ボックスを設けた既存方式のエレベータ装置を、新規な制御装置を有し、この新規な制御装置が用いるシリアル通信方式を用いて各機器との信号授受を行う新方式にリニューアルされたエレベータ装置であって、 前記各機器から前記集線ボックスまでにそれぞれ配線された既存の配線と、 前記集線ボックスと前記新規な制御装置との間に敷設されたシリアル通信方式の配線と、 この集線ボックス内に設けられ、各制御機器との間の前記既存の配線によりパラレル信号の授受を行い、前記新規な制御装置との間では前記シリアル通信方式で信号の授受を行い、これらパラレル信号をシリアル通信方式へ、また、シリアル通信方式の信号をパラレル信号へ、それぞれ変換する信号変換ユニットと、 を備えたことを特徴とするリニューアルされたエレベータ装置。」 (3) 「【技術分野】 【0001】 本発明の実施形態は、旧方式から新方式にリニューアルするエレベータのリニューアル方法及びリニューアルされたエレベータ装置に関する。 【背景技術】 【0002】 これまで、比較的低層の建物におけるエレベータ装置としては、機械室を昇降路直上や昇降路に近接した場所に設置しなくてよく、高さ制限といった建物でのレイアウト制限を余り受けないことから油圧式のエレベータ装置が多く設置されていた。このようなエレベータ装置がリニューアルの時期を迎えた場合、最近では省エネルギー化など環境への対応が重視されていることから、マシンルームレスエレベータヘのリニューアルが行われるケースが多くなっている。 【0003】 従来、油圧式のエレベータ装置をリニューアルする場合は、これまで使用してきた用品類を昇降路より撤去し、マシンルームレスエレベータに更新するといった方法が採られる。 【0004】 しかし、この方法では工事期間中、エレベータは全面停止するので、建物での上下移動設備が失われることとなる。工事期間は規模にもよるが3週間以上になることもあり、該当期間は建物利用者に不便を強いることとなっていた。 【0005】 そこで撤去する用品は最小限に留め、昇降駆動用の油圧シリンダを残存させ、この油圧シリンダで乗りかごの昇降駆動を継続しながら、夜間など運転が行われない時間帯に、昇降路内の隙間の空間に、マシンルームレスエレベータ用の巻上機などの用品を配置する所謂,間欠的停止により工事を行い、しかるべき時点で全面停止して、残工事工程を完了させるというような工法が考えられている。 ・・・(中略)・・・ 【0007】 このように、油圧エレベータのリニューアルエ事において、再度油圧エレベータが設置されることは少なくなり、機械室なしのエレベータを設置する傾向にある。この時、旧用品は全撤去し、新しく用品類を昇降路内に設置していく方法が主流であったが、撤去ならびに新既用品取付にかかる期間、エレベータは当然のごとく連続して利用が出来ない。そこで間欠停止する期間、完全に停止しなければならない期間とを分けて利用停止期間の短縮を図る方法が考えられるようになっている。この中で、昇降路内を引き回す配線を扱う工程は、その撤去及び新たな敷設作業に長時間を要する。 【0008】 通常、リニューアルに当たっては、エレベータの運転制御などに用いる信号の取り扱い方式が異なってくることから、旧方式での配線撤去及び新方式での配線敷設作業が必要となる。これらの作業はエレベータを完全停止する期間に行わなければならないことから、停止期間、ひいては工事期間の短縮を実現する上での障害となっていた。すなわち、昇降路内外の配線取付ならびに引き回しは、撤去新設において時間を消費する工程であり、しかも、エレベータを完全に停止しなければならない期間でもある。 【0009】 したがって、これら信号の取り扱い方式が異なる場合の、配線の取り扱い期間を如何に短縮できるかが、工事日程を短縮するための大きなポイントとなる」 (4) 「【0019】 図3は、上記従来方式における昇降路10側のパラレル配線の敷設状態を表す図である。図3において、図示しない乗りかごから導出されたテールコード11は、昇降路10の中間高さ地点に設けられた中間支持部12を経て、昇降路10内下部に設けられた集線ボックス13内に、その図示左側面に形成された開口13aから挿入される。このテールコード11は、乗りかご内に設けられた表示器や操作ボタンスイッチなどの機器とそれぞれ接続するパラレル配線を有し、これら各機器からの信号を外部に設けられた制御装置14に伝えると共に、外部の制御装置14からの表示制御信号を、乗りかご側の各機器に伝えるものである。 【0020】 また、乗りかごが停止する各階ホールには、乗場呼び用のスイッチや表示器などの機器15がそれぞれ設けられている。これら各ホールの機器15にも、それぞれ信号授受用の配線16がパラレル配線されており、それらの図示していない各端部も、集線ボックス13内に開口13aを通って挿入される。 【0021】 さらに、昇降路10内には、乗りかごの位置を検出して、それを停止制御するためのリミットスイッチなどの機器17が複数個設置されている。これら昇降路10内の各機器17にも、それぞれ信号授受用の配線18がパラレル配線されており、それらの図示していない各端部も、集線ボックス13内に開口13aを通って挿入される。 【0022】 集線ボックス13内に開口13aを通って挿入された各配線11,16,18の端部は、集線ボックス13において、外部制御装置14への図示しない配線束の先端とそれぞれ突合せ接続される。この配線束は、昇降路10壁に穿たれた開口19を通って外部に導出され、配線ダクト20により、機械室などに設けられた既設の制御装置14まで敷設される。 【0023】 この実施の形態では、上述した昇降路10側の集線ボックス13までの配線11,16,18は撤去せずに、そのまま利用する。一方、既存の制御装置14は、それが設けられた機械室がそもそも廃しされるので、配線ダクト20と共に撤去される。そして既存の油圧に変わるロープ式エレベータ用の新規な制御装置が適切な設置場所に設置される。このため、集線ボックス13と新規な制御装置との間はシリアル通信方式の配線を新たに施し、この集線ボックス13内には信号変換ユニットを設ける。 ・・・(中略)・・・ 【0025】 集線ボックス内に設けられる信号変換ユニットは、各機器との間で授受される既存の配線によるパラレル信号と、新規な制御装置との間で授受されるシリアル通信方式による信号との相互変換を可能とするものである。すなわち、パラレル信号をシリアル通信方式へ、また、シリアル通信方式の信号をパラレル信号へ、それぞれ変換する。この信号変換ユニットを介して昇降路10側の各機器と新たな制御装置との間で相互に信号通信を行う。 【0026】 図2は集線ボックス13を、そのカバーを取り去った状態で示す構成図である。集線ボックス13は昇降路10の下部、ただし最下階レベルよりは上部に設置されている。その側面両側の中央部には配線を入線するための開口13a,13bが設けられている。これら関ロ13a,13bのうち、一方13aには、前述のようにテールコードを含む昇降路10内外からの配線11,16,18が入線し、他方13bには制御装置から来る配線が入線する。従来は、これら配線端末はコネクタ加工されており、ボックス13内に設置した上下2段のケーブル懸架用パイプ22に対しケーブルを載せて固定し、端末コネクタをフリーハンギングで接続するというのが通例で、この集線ボックス13の内部で突き合わせ接続されていた。 【0027】 しかし、リニューアル後の制御装置は、昇降路10側の各機器側に通信装置があることを前提としたシリアル通信方式であり、各機器と制御装置との間で通信することで信号入出力を行い、操作や表示を可能としている。よって、基本的に電源ならびに1対のツイスト信号線を敷設接続すれば良い。 【0028】 この実施の形態では、昇降路10内はもちろんのこと、ホール表示装置といった昇降路10外や乗りかごからの信号配線は全て集線ボックス13に配線されている。したがって、集線ボックス13に入線した一方はパラレル配線であり、他方はリニューアル後におけるシリアル配線であるため、信号方式が異なる。したがって、ボックス13内で直接接続することができない。そこで、集線ボックス13に信号変換ユニット24を取り付ける。 【0029】 この信号変換ユニット24は、図1で示すように、基板上に設けられた電源ユニット33、変換処理ユニット34及びその自己診断確認ユニット35、通信内容処理ユニット36、既設信号入出力ユニット37を有し、外部との接続用として電源入力コネクタ31、伝送信号接続コネクタ32、既存信号接続コネクタ38を有する。 【0030】 昇降路10側の配線11,16,18は、集線ボックス13内において、図1で示した既存信号コネクタ38にそれぞれ接続される。また、新規な制御装置との間のシリアル通信方式による配線は、伝送信号コネクタ32に接続される。電源入力コネクタ31には、図示しない電源線が接続されるので、電源ユニット33は、この電源入力コネクタ31により入力された電源を変換処理ユニット34及び既設信号入出力ユニット37に供給する。 【0031】 昇降路10側に設けられた各機器からの既設配線を介したパラレル信号は、既設信号接続コネクタ38を介して入力され、既設信号入出力ユニット37を経て変換処理ユニット34に入力され、ここでシリアル通信用の信号に変換される。その後、通信内容処理ユニット36及び伝送信号接続コネクタ32を経て、シリアル通信方式により新たな制御装置に送信される。 【0032】 反対に、新たな制御装置からの信号は、伝送信号接続コネクタ32および通信内容処理ユニット36を経て変換処理ユニット34に入力され、ここでシリアル通信用の信号から、各機器へのパラレル信号に変換され、既設信号入出力ユニット37及び既存信号接続コネクタ38を経て、対応する機器へ出力される。 ・・・(中略)・・・ 【0034】 このようにすれば、集線ボックス13から昇降路10側の機器側配線を撤去新設することなく、そのまま流用して工事を進めることが可能となる。また、新規の制御装置からは、集線ボックス13に収納した信号変換用基板24までの通信線のみを引き回し接続することで機器配線の工程を終了できる。このように、配線の撤去ならびに取付引き回しの工程を省略することで、工期の短縮が可能となる。」 (5) 「【0036】 なお、旧意匠品をそのまま残す場合には本実施形態の適用で問題ないが、実際にはリニューアルを実施する場合、ドア駆動を含めて電装品、意匠品を変更してしまうことがある。このような場合、集線ボックス13へ配線を下ろすより、乗りかごの制御部から改めてテールコードを引き回す方が有利である。このようになったとしても、必要となる作業時間に大幅な追加はない。すなわち、各機器の一部にシリアル通信方式による新規な構成の機器が用いられた場合、この新規な構成の機器は、新たな制御装置との間で、既存の配線11,16,18及び集線ボックス13を介することなく、直接的にシリアル通信方式で信号授受を行うように構成してもよい。」 (6) 引用文献1には、「エレベータのリニューアル方法及びリニューアルされたエレベータ装置」に関する記載が成されているところ、【請求項1】及び段落【0001】?【0007】の記載内容からすれば、引用文献1に記載のエレベータのリニューアルは、群管理された複数のエレベータの各自をリニューアルするものではなく、乗りかごが一つのみ設けられたエレベータをリニューアルする方法に関するものであると認定できる。 また、引用文献1の段落【0019】に記載された、乗りかご内に設けられた表示器や操作ボタンスイッチなどの「機器」、段落【0021】に記載された、乗りかごが停止する各階ホールに設けられた、乗場呼び用のスイッチなどの「昇降路10内の各機器17」は、「エレベータの運行を制御する複数の機器」ないし「各機器」と認定できる。 さらに、引用文献1の段落【0023】の記載から、引用文献1には、各機器とパラレル通信方式で信号授受を行う既存の制御装置を、シリアル通信方式を用いて各機器との信号授受を行う新規な制御装置に交換することが記載されているといえる。 2 引用発明 上記認定事項及び引用文献1の上記記載内容からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「引用発明」 「乗りかごが一つのみ設けられ、エレベータの運行を制御する複数の機器と、これら各機器との間にそれぞれ設けられた配線によりパラレル通信方式で信号授受を行う既存の制御装置と、このパラレル通信方式による配線の中間部には、前記配線を昇降路側と制御装置側に区分し、かつ、これらの間をそれぞれ突き合わせ接続する集線ボックスとが設けられた既存方式のエレベータのリニューアル方法であって、 各機器とパラレル通信方式で信号授受を行う既存の制御装置を、シリアル通信方式を用いて各機器との信号授受を行う新規な制御装置に交換し、 各機器との間で既存の配線によりパラレル信号の授受を行い、前記新規な制御装置との間ではシリアル通信方式で信号の授受を行うものであって、 各機器との間で授受される既存の配線によるパラレル信号と、新規な制御装置との間で授受されるシリアル通信方式による信号との相互変換を可能とする信号変換ユニットを集線ボックス内に設け、 この信号変換ユニットを介して昇降路側の各機器と新規な制御装置との間で相互に信号通信を行い、 前記各機器の一部にシリアル通信方式による新規な構成の機器が用いられた場合、この新規な構成の機器は、新規な制御装置との間で、直接的にシリアル通信方式で信号授受を行うようにする、 エレベータのリニューアル方法。」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「乗りかごが一つのみ設けられ」た「エレベータ」は、本願発明1の「カゴが一つのみ設けられたエレベーター」に相当する。 引用発明の「エレベータの運行を制御する複数の機器」及び「各機器」は、本願発明1の「複数の構成部」に相当する。 引用発明の「パラレル通信方式で信号授受を行う既存の制御装置」は、本願発明1の「構成部を制御する制御盤」に相当し、引用発明の「シリアル通信方式を用いて各機器との信号授受を行う新規な制御装置」は、本願発明1の「前記制御盤とは別の種類の新制御盤」に相当する。 イ 引用発明の「リニューアル方法」は、工事方法であり、また、引用発明の「既存方式のエレベータ装置のリニューアル方法」は、「前記各機器の一部にシリアル通信方式による新規な構成の機器が用いられた場合」を含んでいるから、エレベータ装置の各機器の交換工事を行うものであるといえ、本願発明1の「複数の構成部を備えた当該エレベーターの当該構成部の交換工事をおこなう交換工事方法」ないし「交換工事方法」に相当する。 ウ 引用発明の「各機器とパラレル通信方式で信号授受を行う既存の制御装置を、シリアル通信方式を用いて各機器との信号授受を行う新規な制御装置に交換」することは、各機器とパラレル通信方式で信号授受を行う既存の制御装置との接続を切り離し、既存の制御装置を取り外す工程を含むのは明らかといえるから、本願発明1の「前記構成部を制御する制御盤と当該構成部との接続を切り離し、当該制御盤を取り外す第1の工程」に相当する工程を含むものであるといえる。 エ 引用発明の「パラレル信号」は、「各機器」と「既存の制御装置」との間で授受される信号であるので、本願発明1の「前記構成部が出力する、当該構成部から前記制御盤への伝達情報にかかる信号」に相当する。 引用発明の「信号変換ユニット」は、「この信号変換ユニットを介して昇降路側の各機器と新規な制御装置との間で相互に信号通信を行う」ものであるから、信号変換ユニットにより「各機器との間で授受される既存の配線によるパラレル信号」から変換される「新規な制御装置との間で授受されるシリアル通信方式による信号」は、パラレル信号と同じ意味の信号であり、新規な制御装置で理解できるものといえる。 したがって、引用発明の「新規な制御装置との間で授受されるシリアル通信方式による信号」は、本願発明1の「当該信号と同じ意味の信号であって、前記制御盤とは別の種類の新制御盤が理解できる、当該伝達情報にかかる別の信号」に相当する。 そして、引用発明の「信号変換ユニット」は、本願発明1の「信号変換装置」に相当する。 オ 引用発明の「信号変換ユニット」は、「複数の機器」と「新規な制御装置」との間に接続されることは明らかである。 そして、引用発明の「集線ボックス」は、「配線を昇降路側と制御装置側に区分し、かつ、これらの間をそれぞれ突き合わせ接続する」ものであることを踏まえれば、引用発明の「信号変換ユニットを集線ボックス内に設け」ることは、本願発明1の「信号変換装置を、前記新制御盤と前記構成部との間に接続する」ことに相当する。 カ したがって、ウ?オを踏まえると、引用発明の「各機器とパラレル通信方式で信号授受を行う既存の制御装置を、シリアル通信方式を用いて各機器との信号授受を行う新規な制御装置に交換し、各機器との間で既存の配線によりパラレル信号の授受を行い、前記新規な制御装置との間ではシリアル通信方式で信号の授受を行うものであって、各機器との間で授受される既存の配線によるパラレル信号と、新規な制御装置との間で授受されるシリアル通信方式による信号との相互変換を可能とする信号変換ユニットを集線ボックス内に設け」ることは、本願発明1の「前記構成部を制御する制御盤と当該構成部との接続を切り離し、当該制御盤を取り外す第1の工程と、前記構成部が出力する、当該構成部から前記制御盤への伝達情報にかかる信号を、当該信号と同じ意味の信号であって前記制御盤とは別の種類の新制御盤が理解できる、当該伝達情報にかかる別の信号へ変換する信号変換装置を、前記構成部に接続するとともに、当該信号変換装置を前記新制御盤に接続する第2の工程と、前記第2の工程による接続の動作確認をおこなう第3の工程と、を有する制御盤交換工程」との対比において、「前記構成部を制御する制御盤と当該構成部との接続を切り離し、当該制御盤を取り外す第1の工程と、前記構成部が出力する、当該構成部から前記制御盤への伝達情報にかかる信号を、当該信号と同じ意味の信号であって前記制御盤とは別の種類の新制御盤が理解できる、当該伝達情報にかかる別の信号へ変換する信号変換装置を、前記構成部に接続するとともに、当該信号変換装置を前記新制御盤に接続する第2の工程と、を有する制御盤交換工程」との限度で一致する。 キ 引用発明の「新規な構成の機器」は、本願発明1の「新構成部」に相当し、エを踏まえると、引用発明の「シリアル通信方式による新規な構成の機器」は、本願発明1の「当該構成部とは別の構成部であって、前記新制御盤が理解できる、当該新制御盤への伝達情報にかかる信号を出力する新構成部」に相当する。 以上のとおりであるから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点] 「カゴが一つのみ設けられたエレベーターであって、複数の構成部を備えた当該エレベーターの当該構成部の交換工事をおこなう交換工事方法において、 前記構成部を制御する制御盤と当該構成部との接続を切り離し、当該制御盤を取り外す第1の工程と、 前記構成部が出力する、当該構成部から前記制御盤への伝達情報にかかる信号を、当該信号と同じ意味の信号であって、前記制御盤とは別の種類の新制御盤が理解できる、当該伝達情報にかかる別の信号へ変換する信号変換装置を、前記構成部に接続するとともに、当該信号変換装置を前記新制御盤に接続する第2の工程と、 を有する制御盤交換工程と、 を含んだ交換工事方法。」 [相違点] 本願発明1は、「制御盤交換工程」に「前記第2の工程による接続の動作確認をおこなう第3の工程」を有し、「前記制御盤交換工程による制御盤の交換が完了した後に、前記構成部の少なくとも一つと前記信号変換装置との接続を切り離し、当該構成部とは別の構成部であって、前記新制御盤が理解できる、当該新制御盤への伝達情報にかかる信号を出力する新構成部を、前記新制御盤に接続する第4の工程と、前記第4の工程による接続の動作確認をおこなう第5の工程と、を有する構成部交換工程」を含むものであるのに対し、引用発明は、「各機器とパラレル通信方式で信号授受を行う既存の制御装置を、シリアル通信方式を用いて各機器との信号授受を行う新規な制御装置に交換し」た後、各機器との間で動作確認をおこなう工程を含むとはされておらず、また、「前記各機器の一部にシリアル通信方式による新規な構成の機器が用いられた場合、この新規な構成の機器は、新規な制御装置との間で、直接的にシリアル通信方式で信号授受を行うようにする」ことが、「この信号ユニットを介して昇降路側の各器機と新規な制御装置との間で相互に信号通信を行」った後に行われるとは特定されていない点。 (2)判断 上記相違点について検討する。 引用文献1の段落【0036】(前記「第5 1(5)」参照)の記載は、エレベータリニューアル工事において、既存の制御装置と各機器とがあるなかで、 ア 制御装置のみを新規な制御装置とした時には、新規な制御装置と既存の各機器とを集線ボックス13を介した接続とし、 イ 制御装置と各器機とを新規な制御装置、新規な機器とした時には、集線ボックス13を介さず、直接両者を接続する、 ことを意味していると解される。 そうすると、引用発明の「前記各機器の一部にシリアル通信方式による新規な構成の機器が用いられた場合、この新規な構成の機器は、新規な制御装置との間で、直接的にシリアル通信方式で信号授受を行うようにする」は、上記イの事項を意味していると認められ、本願発明1のような「前記制御盤交換工程による制御盤の交換が完了した後に」するものということはできない。 また、引用文献1は、エレベータのリニューアル工事において、工事日程を短縮することを目的とする技術を開示するものである(引用文献1の段落【0007】?【0009】を参照。)。引用発明において、新規な制御装置と既存の各機器とを集線ボックス13を介して接続した状態で動作確認を行い、その後に既存の各機器と新規な機器との入れ換えを行うことは、上記イのように制御装置と各機器とを一括して入れ換える場合と比べて工程が増えることとなり、そのように構成することは上記目的からすれば、引用発明においては想定されていないというべきである。 さらに、エレベータのリニューアルにおいて、既設の機器を新規な制御装置の制御下で制御し、エレベータを通常運転した後に、時間的間隔を空けて当該既設の機器を新規な構成の機器に変更するということが当業者にとって周知・慣用であるとの証拠もない。 したがって、引用発明において、既設の機器を新規な制御装置の制御下で制御し、エレベータを通常運転した後に、斯かる既設の機器の少なくとも一つと新規な制御装置との接続を切り離し、新規な機器を、前記新制御盤に接続する工程と、この工程による接続の動作確認をおこなう工程と、を有する機器交換工程を含むものとすることは、当業者が容易に想到できるものではない。 よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 本願発明2?11について 本願発明2?11は、いずれも、本願発明1と同様の「前記制御盤交換工程による制御盤の交換が完了した後に、前記構成部の少なくとも一つと前記信号変換装置との接続を切り離し、当該構成部とは別の構成部であ」る「新構成部を、前記新制御盤に接続する第4の工程」を含むものであるから、引用発明と本願発明2?11との間には、少なくとも、上記1(1)の相違点と同様の相違点が存在することとなる。 したがって、上記1(2)と同様の理由により、本願発明2?11は、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1?11は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-11-15 |
出願番号 | 特願2019-35016(P2019-35016) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B66B)
P 1 8・ 561- WY (B66B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 羽月 竜治 |
特許庁審判長 |
平田 信勝 |
特許庁審判官 |
杉山 健一 尾崎 和寛 |
発明の名称 | 交換工事方法 |
代理人 | 酒井 昭徳 |