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審決分類 審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 B66C
管理番号 1379697
審判番号 不服2020-16915  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-08 
確定日 2021-11-30 
事件の表示 特願2016- 8192「リフティングマグネット作業機械」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月27日出願公開、特開2017-128412、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月19日の出願であって、令和1年10月23日付けで拒絶理由が通知され、同年12月24日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年2月28日付けで拒絶理由が通知され、同年4月17日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月1日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年12月8日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願の請求項1に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた以下の特許出願1(以下「先願1」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
先願1:特願2015-120553号(特開2017-001868号)
引用文献2:特開2011-105454号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:国際公開第2013/061893号(周知技術を示す文献)

請求項2-7に係る発明については、拒絶の理由を発見しない。

第3 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、令和2年4月17日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。なお、下線は補正箇所を示している。

【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
エンジンと、
前記エンジンと機械的に連結される電動発電機と、
前記エンジン及び前記電動発電機と機械的に連結される、可変容量型の油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給される作動油を用いて、前記下部走行体及び前記上部旋回体を含む複数の被駆動要素のそれぞれを駆動する複数の油圧アクチュエータと、
前記電動発電機に接続されるインバータと、
前記インバータに接続されるDCバスと、
前記DCバスに接続される駆動回路と、
前記駆動回路に接続され、前記電動発電機から供給される電力で、電磁吸着力を発生する電磁石を含むリフティングマグネットと、を備え、
前記駆動回路は、前記電磁石の励磁状態を制御すると共に、
前記インバータは、前記リフティングマグネットの釈放時、前記駆動回路を介して前記電磁石から放出される回生電力を外部に蓄電することなく前記電動発電機に供給し力行運転させる、
リフティングマグネット作業機械。
【請求項2】
前記インバータは、前記リフティングマグネットの釈放時、予め規定される前記回生電力の放出パターンに基づき、前記駆動回路の動作に同期して動作する、
請求項1に記載のリフティングマグネット作業機械。
【請求項3】
前記エンジンの回転数を所定の回転数に維持する制御を行うエンジン制御部を備え、
前記エンジン制御部は、前記リフティングマグネットの釈放時、前記放出パターンに基づき、前記エンジンの燃料噴射量を制御する、
請求項2に記載のリフティングマグネット作業機械。
【請求項4】
前記エンジンの出力及び前記リフティングマグネットの出力は、前記回生電力が前記複数の油圧アクチュエータの非作動時における前記エンジンの出力以上にならないように規定される、
請求項1乃至3の何れか一項に記載のリフティングマグネット作業機械。
【請求項5】
前記油圧ポンプの吸収馬力が前記エンジン及び前記電動発電機による出力馬力を超えないように、前記油圧ポンプの吐出流量を制御する、
請求項1乃至4の何れか一項に記載のリフティングマグネット作業機械。
【請求項6】
前記回生電力が供給されることにより前記電動発電機が力行運転を開始すると、前記エンジンの燃料噴射量を減少させ、前記エンジンの回転数を所定の回転数に維持する、
請求項1乃至5の何れか一項に記載のリフティングマグネット作業機械。
【請求項7】
前記インバータは、前記回生電力による前記電動発電機の出力を、前記回生電力の放出開始時の大きさから滑らかに0まで減少させ、
前記回生電力の減少に応じて、前記エンジンの燃料噴射量を増加させ、前記エンジンの回転数を前記所定の回転数に維持する、
請求項6に記載のリフティングマグネット作業機械。

第4 引用文献等に記載された事項及び引用発明
1.先願1について
1-1.先願1の当初明細書等に記載された事項
原査定において引用された先願1は、本願の出願の日前である平成27年6月15日に出願され、本願の出願後である平成29年1月5日に出願公開された特願2015-120553号(特開2017-1868号)であって、その当初明細書等には、以下の事項が記載されている。

ア「【技術分野】
【0001】
本発明は作業アタッチメントの先端にマグネット(電磁石。「リフティングマグネット」または略して「リフマグ」と呼ばれる)を取付け、このマグネットを発電電動機からの電力によって励磁するマグネット作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マグネットで金属スクラップ等を吸着するマグネット作業機械(通称「リフマグ機」は、図6に示すように、下部走行体1と上部旋回体2とから成る自走式のベースマシン3にブーム4、アーム5を有する作業アタッチメントAを装着した油圧ショベルを母体として、作業アタッチメントAの先端(図示のようにアーム5の先端または図示しないバケット)にマグネット6を取付けて構成され、マグネット6に金属スクラップ等を吸着させて運搬する。」

イ「【0024】
図1は実施形態に係るマグネット作業機械のシステム構成図である。
【0025】
図示のようにエンジン7によって発電電動機8が駆動され、吸着スイッチ9が吸着側に操作されたときに、実線の二重線矢印で示すように発電電動機8で発生した電力が制御手段としてのインバータ10を介してマグネット6に供給される。これによりマグネット6が励磁され、荷(スクラップ等)の吸着作用が行われる。」

ウ「【0028】
図2はインバータ10の内部構成を示す。
【0029】
インバータ10は、スイッチング回路11と、たとえばHブリッジ回路から成る励磁/消磁切換回路12と、この両回路11,12を制御する制御部13と、両回路11,12を結ぶ正、負両電源母線14,15と、この両母線14,15間に設けられた大容量コンデンサ(平滑用コンデンサ)16を具備する。
【0030】
励磁/消磁切換回路12は、吸着スイッチ9の操作(吸着側、釈放側両操作に基づいて)マグネット6の励磁/消磁を切換え、かつ、励磁時にマグネット6に印加する電圧を決定する。
【0031】
スイッチング回路11は、複数のトランジスタ等のスイッチング素子を組み合わせて成り、発電電動機8とマグネット6の間の電力の授受を制御する。
【0032】
すなわち、励磁時に必要な発電電動機電力をマグネット6に供給し、消磁時にはマグネット電力を発電電動機8に回生電力として送って消費させる。
【0033】
この消磁時に、制御部13から発電電動機8に対する電動機トルクの指令値が出力され、この指令トルクに応じてスイッチング回路11のスイッチング動作が行われる。
【0034】
また、正、負両電源母線14,15間の電圧、すなわち主回路電圧を検出する電圧計17が設けられ、検出された主回路電圧が制御部13に送られる。
【0035】
制御部13は、吸着スイッチ9の消磁側(釈放側)操作による消磁時に、検出された主回路電圧に応じて発電電動機8の電動機トルクを決定し、決定した電動機トルクを発電電動機8に向けて指令する。」

エ「【0039】
また、「逆励磁」は、消磁操作として、荷を釈放するために逆方向に電流を流して逆磁界を発生させることをいい、図3(c)及び図4に示すようにこの逆励磁区間でマグネット6に印加された電力によって主回路電圧が変化する。
【0040】
ここで、何の制御も加えない場合は、図4中に二点鎖線で示すように電圧変化ΔVが大きくなって過電圧が発生し、機器の故障発生等のおそれがある。
【0041】
そこで制御部13は、消磁時に主回路電圧の変化を抑制する(主回路電圧を一定に保つ)ように、主回路電圧の変化ΔVに応じて電動機トルクを決定し、これを発電電動機8に対するトルク指令として出力する。
【0042】
具体的には、たとえば図5に示すように電圧変化ΔVにほぼ比例して電動機トルクを一定のゲインで変化させる特性(電圧変化ΔVを抑制し得る他の特性でもよい)をもって電動機トルクを決定し出力する。
【0043】
これにより、発電電動機8が指令された電動機トルクで電動機作用を行ってマグネット6からの回生電力を消費するため、主回路電圧の変化ΔVを最小限に抑えて主回路電圧をほぼ一定(目標値)に保つことができる。
・・・
【0045】
なお、大容量コンデンサ16は、基本的に主回路電圧の変動を減少させる平滑作用を行い、上記電動機トルクまたは発電機トルクの制御による電圧変動抑制作用を助ける機能を果たす。」

オ「【図1】



カ「【図2】



キ「【図3】



ク「【図4】



ケ 作業機の上部旋回体は、下部走行体に旋回自在に搭載されることが技術常識であることを勘案すると、摘記事項アにおける上部旋回体2は、下部走行体1に旋回自在に搭載されているものと認められる。

コ 作業機の発電電動機やポンプは、減速機などを介してエンジンに連結駆動されることが技術常識であることを勘案すると、摘記事項イ、オにおけるエンジン7と発電電動機8とは、機械的に連結されているものと認められる。

サ 摘記事項ウの特に段落【0029】の記載及び摘記事項カから、大容量コンデンサ(平滑コンデンサ)16を介して正、負両電源母線14,15間を接続する導体が存在するものと認められる。

シ 摘記事項カから、スイッチング回路11が発電電動機8に接続されること、大容量コンデンサ(平滑コンデンサ)16を介して正、負両電源母線14,15間を接続する導体がスイッチング回路11に接続されること、励磁/消磁切換回路12が大容量コンデンサ(平滑コンデンサ)16を介して正、負両電源母線14,15間を接続する導体に接続されること、及びマグネット6が励磁/消磁切換回路12に接続されることが看取できる。

ス 摘記事項ウの段落【0031】及び段落【0032】の記載並びに摘記事項カから、スイッチング回路11は、マグネット6の釈放時、励磁/消磁切換回路12を介して電磁石から放出される回生電力を発電電動機8に供給するものと認められる。

1-2.先願1の当初明細書等に記載された発明
上記1-1の摘記事項ア?ク及び認定事項ケ?スから、先願1の当初明細書等には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
「下部走行体1と、下部走行体1に旋回自在に搭載される上部旋回体2と、エンジン7と、エンジン7と機械的に連結される発電電動機8と、発電電動機8に接続されるスイッチング回路11と、スイッチング回路11に接続される大容量コンデンサ(平滑コンデンサ)16を介して正、負両電源母線14,15間を接続する導体と、大容量コンデンサ(平滑コンデンサ)16を介して正、負両電源母線14,15間を接続する導体に接続される励磁/消磁切換回路12と、励磁/消磁切換回路12に接続され、発電電動機8から供給される電力で、電磁吸着力を発生する電磁石を含むマグネット6と、を備え、励磁/消磁切換回路12は、電磁石の励磁状態を制御すると共に、スイッチング回路11は、マグネット6の釈放時、励磁/消磁切換回路12を介して電磁石から放出される回生電力を発電電動機8に供給する、マグネット作業機械。」

2.引用文献2について
引用文献2には、以下の事項が記載されている。

ア「【0013】
図1は本発明によるリフマグ式建設機械の一例であるハイブリッド型リフマグ式ショベルの側面図である。図1に示すリフマグ式ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3からはブーム4が延在し、ブーム4の先端にアーム5が設けられ、アーム5の先端にリフマグ(リフティングマグネット)200が装着される。ブーム4はブームシリンダ7により油圧駆動され、アーム5はアームシリンダ8により油圧駆動され、リフマグ200はバケットシリンダ9により油圧駆動される。また、上部旋回体3には、操縦者が乗り込むキャビン10が設けられ、且つ動力源としてエンジンや電動発電機が搭載される。
【0014】
図2は、図1に示すリフマグ式ショベルの構成を示すブロック図である。図2において、機械的動力系を二重線、高圧油圧ラインを太実線、パイロットラインを破線、電気駆動・制御系を細実線でそれぞれ示す。
【0015】
機械式駆動部としてのエンジン11と、発電用電動機及びアシスト用電動機としての電動発電機12は、ともに変速機13の入力軸に接続されている。変速機13の出力軸には、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。」

イ「【0019】
また、蓄電系には、インバータ20を介して作業用電動機としての旋回用電動機21が接続されている。旋回用電動機21は、旋回機構2の動力源であり、上部旋回体3を右方向又は左方向に回転させるための駆動制御が行われる。蓄電系は、リフマグ200、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間で電力の授受を行うために配設されている。」

ウ「【図2】



3.引用文献3について
引用文献3には、以下の事項が記載されている。

ア「[0016]ハイブリッドショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端に、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端にバケット6が取り付けられている。ブーム4,アーム5及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。
[0017]図2は、本発明の一実施形態によるハイブリッドショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は実線でそれぞれ示されている。
[0018]機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプであるメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。」

イ「[0020]電動発電機12には、インバータ18Aを介して、蓄電器としてのキャパシタを含む蓄電系120が接続される。蓄電系120には、インバータ20を介して電動作業要素としての旋回用電動機21が接続されている。すなわち、旋回用電動機21は旋回用のモータである。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回変速機24が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。旋回用電動機21と、インバータ20と、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回変速機24とで負荷駆動系が構成される。」

ウ「[図2]



第5 当審の判断
1.発明者及び出願人について
先願の発明者は、先願の願書に記載された「柚本 夏輝」、「古賀 信洋」、「吉原 英喜」、「田村 佳嗣」及び「浅井 祥史」であり、本願の発明者である「佐野 公則」とは完全に一致していないから同一でない。また、本願の出願時において、先願1の出願人は、「コベルコ建機株式会社」及び「シンフォニアテクノロジー株式会社」であり、本願の出願人である「住友建機株式会社」とは完全に一致していないから同一でない。

2.本願発明1と先願発明との対比
ア 先願発明の「下部走行体1」、「上部旋回体2」、「エンジン7」、「発電電動機8」、「マグネット6」、「マグネット作業機械」は、それぞれ本願発明1の「下部走行体」、「上部旋回体」、「エンジン」、「電動発電機」、「リフティングマグネット」、「リフティングマグネット作業機械」に相当する。

イ 先願発明の「大容量コンデンサ(平滑コンデンサ)16を介して正、負両電源母線14,15間を接続する導体」に関して、上記第4の1.の1-1.摘記事項エの特に段落【0045】の記載から、先願発明の「大容量コンデンサ(平滑コンデンサ)16」は、正、負両電源母線14,15間の電圧の変動を減少させる平滑作用を行い、電動機トルクまたは発電機トルクの制御による電圧変動抑制作用を助ける機能を果たすものであると認められるから、先願発明の「大容量コンデンサ(平滑コンデンサ)16を介して正、負両電源母線14,15間を接続する導体」は、本願発明1の「DCバス」に相当する。

ウ 先願発明の「スイッチング回路11」に関して、上記第4の1.の1-1.摘記事項ウ?エ、カ?クから、先願発明の「スイッチング回路11」は、複数のトランジスタ等のスイッチング素子を組み合わせて成り、発電電動機8とマグネット6の間の電力の授受を制御するものであり、大容量コンデンサ(平滑コンデンサ)16を介して正、負両電源母線14,15間を接続する導体と発電電動機8とを接続し、正、負両電源母線14,15間の電圧をほぼ一定に保つようにスイッチング動作を行うものと認められるから、本願発明1の「インバータ」に相当する。

エ 先願発明の「励磁/消磁切換回路12」に関して、上記第4の1.の1-1.摘記事項ウ?エ、カ?クから、先願発明の「励磁/消磁切換回路12」は、吸着スイッチ9の操作(吸着側、釈放側両操作に基づいて)マグネット6の励磁/消磁を切換え、かつ、励磁時にマグネット6に印加する電圧を決定するものと認められるから、本願発明1の「駆動回路」に相当する。

オ 先願発明の「スイッチング回路11は、マグネット6の釈放時、励磁/消磁切換回路12を介して電磁石から放出される回生電力を発電電動機8に供給する」に関して、上記第4の1.の1-1.摘記事項ウ?エ、カ?クから、先願発明の「スイッチング回路11」は、マグネット6の釈放時、回生電力を発電電動機8に供給して駆動させるのみであって、発電電動機8以外に回生電力を消費する負荷が存在せず、回生電力を蓄電する電池やコンデンサも存在しないことから、回生電力を外部に蓄電することなく発電電動機8に供給して力行運転させるものと認められる。
よって、先願発明の「スイッチング回路11は、マグネット6の釈放時、励磁/消磁切換回路12を介して電磁石から放出される回生電力を発電電動機8に供給する」ことは、本願発明1の「インバータは、リフティングマグネットの釈放時、駆動回路を介して電磁石から放出される回生電力を外部に蓄電することなく電動発電機に供給し力行運転させる」ことに相当する。

カ したがって、本願発明1と先願発明は、次の点で一致し、相違する。

〈一致点〉
「下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、エンジンと、前記エンジンと機械的に連結される電動発電機と、前記電動発電機に接続されるインバータと、前記インバータに接続されるDCバスと、前記DCバスに接続される駆動回路と、前記駆動回路に接続され、前記電動発電機から供給される電力で、電磁吸着力を発生する電磁石を含むリフティングマグネットと、を備え、前記駆動回路は、前記電磁石の励磁状態を制御すると共に、前記インバータは、前記リフティングマグネットの釈放時、前記駆動回路を介して前記電磁石から放出される回生電力を外部に蓄電することなく前記電動発電機に供給し力行運転させる、リフティングマグネット作業機械。」

〈相違点〉
本願発明1は、「前記エンジン及び前記電動発電機と機械的に連結される、可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される作動油を用いて、前記下部走行体及び前記上部旋回体を含む複数の被駆動要素のそれぞれを駆動する複数の油圧アクチュエータと、」を備えるのに対し、先願発明は、そのようなものを備えるのか不明である点。

3.相違点についての判断
ア 本願の発明の詳細な説明の段落【0014】の特に「走行油圧モータ1A,1B(図2参照)により油圧駆動される下部走行体1には、旋回油圧モータ21(図2参照)により油圧駆動される旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載される。」との記載及び本願の発明の詳細な説明の段落【0019】の特に「ブームシリンダ7、アームシリンダ8、リフマグシリンダ9、走行油圧モータ1A,1B、及び旋回油圧モータ21を集合的に「油圧アクチュエータ」と称する。」との記載からみて、本願の発明の詳細な説明には、被駆動要素としての「下部走行体1」を駆動する油圧アクチュエータとしての「走行油圧モータ1A,1B」、被駆動要素としての「上部旋回体3」を駆動する油圧アクチュエータとしての「旋回油圧モータ21」が記載されている。してみると、本願発明1は、「前記油圧ポンプから供給される作動油を用いて、前記下部走行体及び前記上部旋回体を含む複数の被駆動要素のそれぞれを駆動する複数の油圧アクチュエータ」を発明特定事項とするのであるから、下部走行体1及び上部旋回体3を含む複数の被駆動要素のそれぞれを駆動する複数の油圧アクチュエータとして、少なくとも「走行油圧モータ1A,1B」及び「旋回油圧モータ21」を備えなければならないものと認められる。

イ 一方、引用文献2には、上記第4の2.摘記事項アないしウから、エンジン及び電動発電機と機械的に連結される油圧ポンプを備える構成及び上部旋回体を駆動する旋回用電動機21を備える構成が記載されているが、当該油圧ポンプは、「可変容量型」ではなく、上部旋回体を駆動する旋回用電動機21も「油圧アクチュエータ」ではない。
また、引用文献3についても、上記第4の3.摘記事項アないしウから、エンジン及び電動発電機と機械的に連結される油圧ポンプを備える構成及び上部旋回体を駆動する旋回用電動機21を備える構成が記載されているが、引用文献2と同様に、当該油圧ポンプは「可変容量型」ではなく、上部旋回体を駆動する旋回用電動機21も「油圧アクチュエータ」ではない。

ウ そうすると、本願発明1のように、「回生電力を外部に蓄電することなく前記電動発電機に供給し力行運転させる」作業機において「前記エンジン及び前記電動発電機と機械的に連結される、可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される作動油を用いて、前記下部走行体及び前記上部旋回体を含む複数の被駆動要素のそれぞれを駆動する複数の油圧アクチュエータと、」を備えることは、単なる周知技術の適用のように課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえない。
したがって、上記相違点は実質的な相違点であるから、本願発明1は先願発明と同一であるとはいえない。

4.本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7も、本願発明1の「前記エンジン及び前記電動発電機と機械的に連結される、可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される作動油を用いて、前記下部走行体及び前記上部旋回体を含む複数の被駆動要素のそれぞれを駆動する複数の油圧アクチュエータ」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2ないし7は先願発明と同一であるとはいえない。

5.小括
したがって、本願発明1ないし7は、先願発明と実質的に同一の発明ではないから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない発明とはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。


 
審決日 2021-11-15 
出願番号 特願2016-8192(P2016-8192)
審決分類 P 1 8・ 161- WY (B66C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 今野 聖一  
特許庁審判長 間中 耕治
特許庁審判官 内田 博之
段 吉享
発明の名称 リフティングマグネット作業機械  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
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