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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A47L
管理番号 1379709
審判番号 不服2021-1542  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-04 
確定日 2021-11-30 
事件の表示 特願2019-125041「自律走行型掃除機」拒絶査定不服審判事件〔令和元年9月26日出願公開、特開2019-162542、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月11日(優先権主張平成28年2月5日)に出願した特願2016-47749号の一部を令和元年7月4日に新たな出願としたものであって、令和元年7月4日に上申書が提出され、令和2年6月23日付け(発送日:令和2年6月30日)で拒絶理由通知がされ、令和2年7月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和2年12月28日付け(発送日:令和3年1月5日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して令和3年2月4日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

1(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(新規性)について
・請求項1-3
・引用文献等 1

●理由2(進歩性)について
・請求項1-3
・引用文献等 1

<引用文献等一覧>
1.特開2015-91290号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、令和2年7月22日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
ボディの底面に設けられた吸込口にごみを集めることができる複数のブリッスル束を有する自律走行型掃除機であり、
前記ボディの底面には、前記複数のブリッスル束が取り付けられた取付部が回転可能に接続されており、
前記複数のブリッスル束は、短いブリッスルの束である短尺ブリッスル束、および、前記短尺ブリッスル束よりも長いブリッスルの束である長尺ブリッスル束を含み、
前記取付部の回転方向において、長尺ブリッスル束よりも短尺ブリッスル束が先行するように、複数のブリッスル束が前記取付部に取り付けられている、自律走行型掃除機。
【請求項2】
前記取付部は、前記複数のブリッスル束を保持する毛保持部を有し、
前記毛保持部は、前記取付部から突出するように設けられ、
前記毛保持部は、前記取付部の中心軸線の径方向に向けて突出している、
請求項1に記載の自律走行型掃除機。
【請求項3】
前記取付部は、前記ボディの底面の左右前方側に配置される、請求項1または2に記載の自律走行型掃除機。」

第4 引用文献、引用発明等
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって、原査定の拒絶の理由に引用された特開2015-91290号公報(以下、「引用文献」という。)には、「掃除機用サイドブラシ及び自走式掃除機」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。

1 「【0015】
図1は、本発明に係る掃除機本体の底面図、図2は本発明に係る掃除機本体の正面図、図3の(a)は本発明に係るサイドブラシの正面図であり、図3の(b)は、本発明に係るサイドブラシの平面図、図4は、本発明に係る各駆動体に関するブロック図である。
【0016】
これらの図に示すように、掃除機本体1の底面2の前面3側の両サイドには、サイドブラシ4、4、が掃除機本体1に収納されたモーター等より成る駆動体5、5により、底面2の中央部に向けてそれぞれが、回転(図中の矢印方向)自在に設けられている。吸込み口6は、サイドブラシ4、4より後方で、このサイドブラシ4、4に近接するよう横幅広に形成されてあり、その内部には清掃用モーター7により回転自在に形成された清掃体8が収納されている。走行輪9は、底面2に回転自在に複数設けられており、その走行輪9のうち2個には、走行用モーター10が連結されており駆動輪11として、設けられている。なお、この走行輪9の数は必要に応じて、自由であり、もちろん、駆動輪も2個に限定するものでもないし、掃除機本体1を、使用者が自在に走行操作するようなタイプの掃除機の場合は、走行輪9のみでも良く、その形態により、走行用モーター10の取り付けは自在である。
電動送風機12は、掃除機本体1に収納されて被清掃面X上の塵埃を吸込み口6より吸引するためのものである。吸引された塵埃は、フィルター(図示せず)で捕集される。13はマイコン等の電子部品で構成された制御体であり、予め設定されたプログラムにより、上記各種部品(モーター)を制御運転させるものである、
【0017】
サイドブラシ4は、上面に自らの形状による弾性力を利用して掃除機本体1の底面2に着脱かつ回転自在に取り付けるための保持部14を有する回転軸15、下面の外周部に傾斜面16を有する略円盤状の基台17と、傾斜面16に後端部18が固着され、被清掃面囲Xに接触するための先端部19が、掃除機本体1の側面より、直線状に外方に下降傾斜し突出して、被清掃面Xに所定圧力で接触している樹脂線や金属線等から成る弾性を有するブラシ片20が複数形成されたブラシ部21、先端部19以外を被覆する弾性力を有する熱収縮性チューブより成る弾性体22とから形成された一直線状のブラシ体23とにより構成されている。ブラシ体23は、傾斜面16にその円周方向で等間隔に4個設けられているが、その数や、前記等間隔等は、限定するものではない。なお、熱収縮性チューブより成る弾性体22は、ブラシ部21を基台17に固着する前に、ブラシ部21に被せ、所定の温度で収縮固定しても、基台17に固着後、所定の温度で、収縮させても良いものである。また、弾性体22は、熱収縮性チューブでなく、少なくともその外周方向に伸縮自在の網目状のチューブで、このチューブを外方に広げながら、複数のブラシ片20を、その内部に収縮固定しても良いものである。なお、掃除機本体1を稼働させる電源は、特に図示しないが、コンセントから電源コードを介しても、掃除機本体1に充電池を収納し、この充電池の電源を使用しても良く、特に限定するものではない。さらにまた、サイドブラシ4は回転軸15を有しているが、本実施の形態以外にも、図示はしないが、掃除機本体1の下面に、回転軸が一体的に形成されてあり、形成された回転軸にたいして、回転軸を有しない基台を、掃除機本体1にたいして着脱自在に固定する形態も本発明に含まれる。
【0018】
このように構成された掃除機本体1を、被清掃面X上で稼動させると、制御体13は、電動送風機12、サイドブラシ4、清掃体8、および駆動輪11などを駆動させ、被清掃面X上を移動する。この時、サイドブラシ4、4も当然、それぞれ回転を始め、掃除機本体1の両側面外の塵埃をも、ブラシ体23の回転により、弾性体22に覆われていない先端部19は自在に変形しながら掃き飛ばし、吸込み口6に強制移動させるので、被清掃面Xの清掃化が図られる。特に、被清掃面Xが、毛足の長い絨毯や、凹凸があるとき、すなわち、抵抗の多い被清掃面Xの場合は、回転するブラシ部21も相当抵抗を受け、各ブラシ片20の結束が乱れ、バラバラになり易く、塵埃を回転力で掃き飛ばす力が低下したり、さらに、ブラシ部21は、その回転時に、絨毯の毛足や、凹凸面に繰り返し衝突して、変形や傷が生じやすくなったりして、清掃効率の低下を招きやすいが、本発明は、ブラシ部21の被清掃面Xと接触する先端部19を除く個所を弾性体22で被覆しているので、これらを防止かつ保護することができ、先端部19を形成する各ブラシ片20が自在に変形しながら、確実に塵埃を吸込み口6に向け掃き飛ばすので、清掃効率の低下を防止することができるものである。また、先端部19を構成する各ブラシ片20の端面が、直接塵埃に回転衝突するので、特に床面にこびりついたような塵埃除去には、有効である。
【0019】
図5(a)は、本発明に係る他の実施例を示すサイドブラシの底面図、図5(b)は、本発明に係るサイドブラシの壁面に接触する状態を示した拡大平面図、図5(c)は、本発明に係る一般的なサイドブラシの壁面に接触する状態を示した拡大平面図である。図5(a)及び図5(b)の如く、ブラシ体23は、4本設け、基台17の下面の外周部に等間隔で、基台17の回転中心Eを通過する中心線Cから、ブラシ体23の長手方向の軸芯Dがそれぞれ所定寸法Lだけ離れ、基台17の回転中心Eを通らないように構成した。これにより、サイドブラシ4、4の回転時、特に壁面Y近傍の隅部を清掃すると、ブラシ体23は、壁面Yに接触する。この時、ブラシ体23の軸芯Dが中心線Cから所定寸法Lだけ離れていると、壁面Yに接触するときの入射角度α1は、図5(c)の如く、ブラシ体23の軸芯Dと中心線Cが同一の場合の壁面Yに接触するときの入射角度α2に比べ、小さくなる。したがって、ブラシ体23を壁面Yにソフトに接触させることができる。これにより、壁面Yとブラシ体23のキズや損傷等を軽減することができる。」

2 「【0022】
図7の(a)は、本発明に係る他の実施例を示すブラシ片の正面図で、(b)は、(a)に関連するブラシ体の状態を示す正面図である。ブラシ片20の先端部19は、後加工により複数本に切り裂いた先割れ部26を形成することで、先割れ部26は、細棒の集合体と化す。これにより、被清掃面Xの壁際等の隅部に堆積する細塵に接触でき、より確実に取り除くことが可能となる。なお、ブラシ片20の太さは、大きくでき、ブラシ部21を構成する各ブラシ片20の本数は少なくすることができる。すなわち、弾性体22で各ブラシ片20を覆う作業が容易になるので、作業性も向上する。」

3 「【0024】
図9の(a)は、本発明に係る他の実施例を示すブラシ部の側面図、(b)は、(a)に関するブラシ部を複数の弾性体で覆った状態を示す側面図、(c)は、(b)に関するブラシ部と弾性体を基台に取り付けた状態を示すサイドブラシの一部切り欠き底面図である。より多くのブラシ片20より成るブラシ部213を複数の分割束にして、この分割束をそれぞれ弾性体22、22で被覆して、複数のブラシ体233が形成されている。サイドブラシ4が1回転するごとに、複数のブラシ体233が、繰り返し被清掃面Xを回転清掃することが可能となるので、塵埃除去能力を向上させることができる。
【0025】
図10は、本発明に係る他の実施例を示すサイドブラシの要部拡大正面図である。多数のブラシ片20より成るブラシ部213を複数の分割束にして、この分割束をそれぞれ弾性体22、22で被覆してブラシ体233、233を形成するが、この時に、複数のブラシ体233、233は、被清掃面Xとの接触角度がそれぞれ異なる角度δ1とδ2に形成する。これにより、サイドブラシ4の回転に伴う被清掃面Xとの接触幅は大きくなり、その清掃幅も大きくなり、効率の良い清掃が可能とすることができる。
【0026】
図11は、本発明に係る他の実施例を示す掃除機の斜視図である。掃除機本体11をハンドル36で操作する掃除機であり、使用者がハンドル36を持ち、被清掃面X上を自在に操作しながらサイドブラシ4、4を回転させることで、掃除機本体11の外方をも含めて、清掃できるものである。このように自走式の掃除機以外にも応用できる。」

したがって、引用文献(特に図10の実施例を参照。)には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「掃除機本体1の底面2に設けられた吸込み口6に塵埃を集めることができる複数のブラシ体233、233を有する自走式掃除機であり、
前記掃除機本体1の底面2には、前記複数のブラシ体233、233が取り付けられた基台17が回転可能に接続されており、
前記複数のブラシ体233、233は、短いブラシ体233、および、前記短いブラシ体233よりも長いブラシ体233を含み、
複数のブラシ体233、233が前記基台17に取り付けられている、自走式掃除機。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「掃除機本体1」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明1における「ボディ」に相当し、以下同様に、「底面2」は「底面」に、「吸込み口6」は「吸込口」に、「塵埃」は「ごみ」に、「ブラシ体233、233」は「ブリッスル束」に、「自走式掃除機」は「自律走行型掃除機」に、「基台17」は「取付部」に、「短いブラシ体233」は「短いブリッスルの束である短尺ブリッスル束」及び「短尺ブリッスル束」に、「長いブラシ体」は「長いブリッスルの束である長尺ブリッスル束」に、それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「ボディの底面に設けられた吸込口にごみを集めることができる複数のブリッスル束を有する自律走行型掃除機であり、
前記ボディの底面には、前記複数のブリッスル束が取り付けられた取付部が回転可能に接続されており、
前記複数のブリッスル束は、短いブリッスルの束である短尺ブリッスル束、および、前記短尺ブリッスル束よりも長いブリッスルの束である長尺ブリッスル束を含み、
複数のブリッスル束が前記取付部に取り付けられている、自律走行型掃除機。」

<相違点>
本願発明1は、「前記取付部の回転方向において、長尺ブリッスル束よりも短尺ブリッスル束が先行するように」、複数のブリッスル束が取付部に取り付けられているのに対して、引用発明は、「前記基台17の回転方向において、長いブラシ体233よりも短いブラシ体233が先行するように」、複数のブラシ体233、233が基台17に取り付けられているかどうか不明である点。

上記相違点について検討する。
引用文献1の図10を参照すると、長いブラシ体233の手前に短いブラシ体233が設けられていることが看取できる。これらのブラシ体233、233は、基台17に取り付けられ、基台17の回転にともなって回転するものであるが、図10で手前の方に回転するか、奥の方に回転するかは不明である。
また、図10の実施例において長いブラシ体233と短いブラシ体233が設けられているのは、明細書の段落【0025】に記載されているように、「複数のブラシ体233、233は、被清掃面Xとの接触角度がそれぞれ異なる角度δ1とδ2に形成する。これにより、サイドブラシ4の回転に伴う被清掃面Xとの接触幅は大きくなり、その清掃幅も大きくなり、効率の良い清掃が可能とすることができる。」という作用効果を達成するためのものであり、サイドブラシ4の回転方向とは関係がない。
そうすると、引用発明において、本願発明1のように「前記取付部の回転方向において、長尺ブリッスル束よりも短尺ブリッスル束が先行するように、複数のブリッスル束が前記取付部に取り付けられている」ものとすることは、特に考えられていないといえる。
そうすると、上記相違点は実質的な相違点である。また、引用発明に基いて上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたものとはいえない。
そして、他に、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者が容易に想到し得たという証拠や根拠もない。
したがって、本願発明1は、引用発明ではない。また、本願発明1は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものともいえない。

2 本願発明2及び3について
本願の特許請求の範囲における請求項2及び3は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく直接又は間接的に引用して記載されたものであるから、本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2及び3は、本願発明1について述べたものと同様の理由により、引用発明ではなく、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

3 小括
そうすると、本願発明1ないし3は、引用発明ではなく、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-11-11 
出願番号 特願2019-125041(P2019-125041)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A47L)
P 1 8・ 113- WY (A47L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 関口 知寿  
特許庁審判長 山本 信平
特許庁審判官 星名 真幸
金澤 俊郎
発明の名称 自律走行型掃除機  
代理人 野村 幸一  
代理人 鎌田 健司  

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