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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H03H 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H03H |
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管理番号 | 1379720 |
審判番号 | 不服2021-1870 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-02-10 |
確定日 | 2021-11-30 |
事件の表示 | 特願2018- 57088「平衡不平衡変換器及びそれを備えた半導体集積回路」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月 3日出願公開、特開2019-169882、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年3月23日の出願であって、令和2年7月10日付けで拒絶理由が通知され、令和2年9月10日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年11月2日付けで拒絶査定されたところ、令和3年2月10日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和2年11月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1.(新規性)この出願の請求項1?3、5?6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1又は2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2.(進歩性)この出願の請求項1?10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1又は2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開平08-125446号公報 2.特開平10-013156号公報 第3 本願発明 本願の請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明8」という。)は、令和3年2月10日の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 平衡信号と不平衡信号を相互に変換する平衡不平衡変換器(1)であって、 誘電体あるいは半導体からなる基板(10)と、 前記基板上に形成され、第1端(12a)にて前記不平衡信号が入力又は出力され、第2端(12b)が開放された不平衡線路(12)と、 前記基板上に前記不平衡線路の前記第1端から長手方向の中心(12c)までの線路部分(12d)に対し並行に配置され、前記中心側の第3端(14a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第4端(14b)が接地された第1の平衡線路(14)と、 前記基板上に前記不平衡線路の前記第2端から前記中心までの線路部分(12e)に対し並行に配置され、前記中心側の第5端(16a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第6端(16b)が接地された第2の平衡線路(16)と、 を備え、前記不平衡線路が、前記中心で前記第1及び第2の平衡線路の反対側に折れ曲がっていることを特徴とし、 前記基板上に前記平衡不平衡変換器の前記第1及び第2の平衡線路側に隣接して配置された電子回路(20)と前記平衡不平衡変換器との境界線(T)に対して、前記第1の平衡線路及び前記第2の平衡線路の少なくとも一方が傾斜し、 前記第1の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ1)と、前記第2の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ2)が、異なることを特徴とする平衡不平衡変換器。 【請求項2】 平衡信号と不平衡信号を相互に変換する平衡不平衡変換器(1)であって、 誘電体あるいは半導体からなる基板(10)と、 前記基板上に形成され、第1端(12a)にて前記不平衡信号が入力又は出力され、第2端(12b)が開放された不平衡線路(12)と、 前記基板上に前記不平衡線路の前記第1端から長手方向の中心(12c)までの線路部分(12d)に対し並行に配置され、前記中心側の第3端(14a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第4端(14b)が接地された第1の平衡線路(14)と、 前記基板上に前記不平衡線路の前記第2端から前記中心までの線路部分(12e)に対し並行に配置され、前記中心側の第5端(16a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第6端(16b)が接地された第2の平衡線路(16)と、 を備え、前記不平衡線路が、前記中心で前記第1及び第2の平衡線路の反対側に折れ曲がり、 前記不平衡線路の前記第1端から前記中心までの線路部分と、前記不平衡線路の前記第2端から前記中心までの線路部分と、前記第1の平衡線路と、前記第2の平衡線路と、の長さが等しいことを特徴とする平衡不平衡変換器。 【請求項3】 前記基板上に前記平衡不平衡変換器の前記第1及び第2の平衡線路側に隣接して配置された電子回路(20)と前記平衡不平衡変換器との境界線(T)に対して、前記第1の平衡線路及び前記第2の平衡線路の少なくとも一方が傾斜し、 前記第1の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ1)と、前記第2の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ2)が、等しいことを特徴とする請求項2に記載の平衡不平衡変換器。 【請求項4】 前記第1の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ1)、あるいは前記第2の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ2)のいずれかが、75°より小さいことを特徴とする請求項1あるいは3のいずれか1項に記載の平衡不平衡変換器。 【請求項5】 前記第1の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ1)、あるいは前記第2の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ2)のいずれかが、15°以上60°以下の範囲内であることを特徴とする請求項1,3,4のいずれか1項に記載の平衡不平衡変換器。 【請求項6】 請求項1?5のいずれか1項に記載の平衡不平衡変換器(1)と、半導体製である前記基板上に前記平衡不平衡変換器の前記第1及び第2の平衡線路の側に隣接して配置された電子回路(20)と、を備えたことを特徴とする半導体集積回路。 【請求項7】 前記電子回路が周波数変換器であることを特徴とする請求項6に記載の半導体集積回路。 【請求項8】 前記電子回路は、誘導性回路素子を含むことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の半導体集積回路。」 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について (1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平08-125446号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審にて付与したものである。以下、同じ。)。 ア 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、マイクロ波帯の通信機に使用される変調器、混合器、及びこれらの特性調整方法に関するものである。」 イ 「【0011】 【実施例】図1は本発明に係る変調器の一実施例の構成を示す図である。同図により2相位相変調器の例でその構成及び動作を説明する。この変調器の構成は、マイクロ波信号が印加されるバランス・アンバランス変換部1、該変換部の平衡側出力端A,Bに接続された合成分配線路部8、同接続部A,Bから伸張された線路4、5と、該線路の終端近傍に設けられ、高周波的にアースとして働く扇状パターン15、扇状パターン15の側に接続された低周波信号印加線路7、7、線路4、5と扇型のパターン15間に線路7ー7間からみて互いに逆方向(又は順方向)に実装されたダイオード2、3、及び線路4、5の近傍に設けた複数の特性調整用の容量性スタブ6から構成されている。 【0012】更に、バランス・アンバランス変換部1はマーチャントバランで構成され、これはマイクロ波信号が印加される線路端10より延びる略λ/4長の不平衡側線路11とその端部からさらに略λ/4長延長した不平衡側線路12と、これら線路11、12と対向する位置に結合配置され、一端がアースされた略λ/4長の出力側平衡線路13、14から構成されている。また、合成分配線路部8は略λ/4長の線路12、13の線路パターンと出力線路9で構成されており、前記λ/4線路12、13は前記平衡線路13、14の端部に接続する線路パターンとなっている。 【0013】この変調器は、通常ストリップラインとして構成され、上記構成の線路パターンはアルミナ等のセラミック基板上に金、銀等の金属で形成され、更にその上に同様の材料の基板が設けられサンドイッチ構成を基本とする構成がとられている。 【0014】また、前記λ/4線路4、5は、後に詳述するように変調器の製造上の理由で設けられているものであって、前記上側の基板における、線路4、5の端部近傍の部分に穴(窓)を設け、ダイオード2、3を前記上側基板側から取り付けるとともに、1乃至複数の容量性スタブによる調整を可能にしている。(図には右側の線路5に対応する上側基板の穴の位置についてのみ点線で示している。) 次に、この変調器の2相位相変調器としての動作について説明する。 【0015】図示していないローカル発振器等から供給されるマイクロ波信号は入力線路10に印加され、またベースバンドの変調信号は線路7、7に互いに逆位相関係で印加される(但し、ダイオード2、3、は前記逆方向接続の場合)。マイクロ波信号はバランス・アンバランス変換部において不平衡信号から平衡信号に変換され、平衡線路の端部A,Bに互いに逆位相関係のマイクロ波信号が発生する。該端部A,Bには略λ/4長の延長線路4、5を介してスイッチングダイオード2、3が接続され、このダイオードは線路7、7のパルス信号により交互にオン、オフする。導通側ダイオードの端部は実質的に高周波的にアースされてマイクロ波信号は出力を阻止され、非導通側ダイオードの端部のマイクロ波信号は出力される。この結果端部A,Bから合成分配線路部8のλ/4線路12、13を介し線路9に伝搬されるマイクロ波信号は0相又はπ相のいずれかの信号となり、2相位相変調された被変調波信号が出力される。ここで線路7、7のパルス信号は、ダイオード2、3が逆方向接続の場合互いに逆相信号で与えられるが、順方向接続の場合は同相でよく、線路7、7は一本にまとめることができる。」 ウ 「【図1】 」 (2)上記(1)の「ア」、「イ」、「ウ」で摘記した事項より、以下の事項がいえる。 ア 図1のバランス・アンバランス変換部1は、「不平衡側線路11」と「不平衡側線路12」を含む連続した線路が形成されており、該連続した線路は、2か所で「出力側平衡線路13、14」の反対側に折れ曲がっている。また、「マイクロ波信号が印加される線路端10」の反対側である「不平衡側線路12」の線路端は開放されていることが見て取れる。 イ 図1より、「出力側平衡線路13」は、不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路のうち、不平衡側線路11の線路端10と線路端10からみて1番目の折れ曲がりまでの間の線路の部分に対して並行に配置されていることが見て取れる。 また、「出力側平衡線路14」は、不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路のうち、不平衡側線路12の線路端と当該線路端からみて1番目の折れ曲がりまでの間の線路の部分に対して並行に配置されていることが見て取れる。 さらに、「平衡側出力端A」は、不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路の中心側に位置する、出力側平衡線路13の端であり、「平衡側出力端B」は、不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路の中心側に位置する、出力側平衡線路14の端といえる。 ウ 図1より、「出力側平衡線路13、14」はいずれも、「合成分配線路部8、同接続部A,Bから伸張された線路4、5と、該線路の終端近傍に設けられ、高周波的にアースとして働く扇状パターン15、扇状パターン15の側に接続された低周波信号印加線路7、7、線路4、5と扇型のパターン15間に線路7ー7間からみて互いに逆方向(又は順方向)に実装されたダイオード2、3、及び線路4、5の近傍に設けた複数の特性調整用の容量性スタブ6」からなる構成に対して、傾斜していることが見て取れる。 (3)上記(1)及び(2)より、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「 マイクロ波信号が印加されるバランス・アンバランス変換部1、該変換部の平衡側出力端A,Bに接続された合成分配線路部8、同接続部A,Bから伸張された線路4、5と、該線路の終端近傍に設けられ、高周波的にアースとして働く扇状パターン15、扇状パターン15の側に接続された低周波信号印加線路7、7、線路4、5と扇型のパターン15間に線路7ー7間からみて互いに逆方向(又は順方向)に実装されたダイオード2、3、及び線路4、5の近傍に設けた複数の特性調整用の容量性スタブ6から構成された変調器で用いられるバランス・アンバランス変換部1であって、(【0011】) この変調器は、通常ストリップラインとして構成され、上記構成の線路パターンはアルミナ等のセラミック基板上に金、銀等の金属で形成され、(【0013】) バランス・アンバランス変換部1はマーチャントバランで構成され、これはマイクロ波信号が印加される線路端10より延びる略λ/4長の不平衡側線路11とその端部からさらに略λ/4長延長した不平衡側線路12と、これら線路11、12と対向する位置に結合配置され、一端がアースされた略λ/4長の出力側平衡線路13、14から構成されており、(【0012】) 不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路が形成され、該連続した線路は、2か所で出力側平衡線路13、14の反対側に折れ曲がっていて、マイクロ波信号が印加される線路端10の反対側である不平衡側線路12の線路端は開放されており、((2)ア) 出力側平衡線路13は、不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路のうち、不平衡側線路11の線路端10と線路端10からみて1番目の折れ曲がりまでの間の線路の部分に対して並行に配置され、 出力側平衡線路14は、不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路のうち、不平衡側線路12の線路端と当該線路端からみて1番目の折れ曲がりまでの間の線路の部分に対して並行に配置され、 平衡側出力端Aは、不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路の中心側に位置する、出力側平衡線路13の端であり、 平衡側出力端Bは、不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路の中心側に位置する、出力側平衡線路14の端であり、((2)イ) 出力側平衡線路13、14はいずれも、合成分配線路部8、同接続部A,Bから伸張された線路4、5と、該線路の終端近傍に設けられ、高周波的にアースとして働く扇状パターン15、扇状パターン15の側に接続された低周波信号印加線路7、7、線路4、5と扇型のパターン15間に線路7ー7間からみて互いに逆方向(又は順方向)に実装されたダイオード2、3、及び線路4、5の近傍に設けた複数の特性調整用の容量性スタブ6からなる構成に対して、傾斜している、((2)ウ) バランス・アンバランス変換部1。」 2.引用文献2について (1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-013156号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、マイクロ波帯で用いられる平衡変調器に関する。」 イ 「【0016】図1は本発明の一実施形態の平衡変調器の回路図、図2はそのパターン図である。 【0017】本実施形態の平衡変調器は、チョーク回路6,7と、ダイオード2,3と、ローカル信号の入力端子8と、マーチャントバランを用いたバランス・アンバランス変換部1と、ハイブリッド14と、バランス・アンバランス変換部1にダイオード2,3を接続するためのライン4,5と、ハイブリッド14に接続された出力端子9と、互いに距離L(=λ/8、λは使用する周波数での波長)離れて配置された容量性スタブ10と11、12と13で構成されている。」 ウ 図1は、次のとおりである。 「 」 エ 図2は、次のとおりである。 「 」 (2)上記(1)の「ア」から「エ」で摘記した事項より、以下の事項がいえる。 ア 図1には、バランス・アンバランス変換部1について、直列に接続された3つのラインが、ローカル信号の入力端子である符号「8」に接続されている(以下、符号「8」からみて、順に、「第1のライン」、「第2のライン」、「第3のライン」という。)。 そして、第1のラインに対して、第1のラインと概ね同一長とされたライン(以下、「第4のライン」という。)が並行して配置され、第4のラインは、一端がアースされ、第1乃至第3のラインの中心側にある端がハイブリッド14及びライン4と接続されていることが見て取れる。 また、図1より、第3のラインに対して、第3のラインと概ね同一長のライン(以下、「第5のライン」という。)が並行して配置され、第5のラインは、一端がアースされ、第1乃至第3のラインの中心側である端がハイブリッド14及びライン5に接続されていることが見て取れる。 そして、図1及び図2を合わせて見ると、第1乃至第3のラインは、2か所で第4のライン、第5のラインの反対側に折れ曲がっていて、第3のラインの端は開放されていることが見て取れる。 イ 図2より、「第4のライン」、「第5のライン」はいずれも、「チョーク回路6,7と、ダイオード2,3と、ハイブリッド14と、バランス・アンバランス変換部1にダイオード2,3を接続するためのライン4,5と、ハイブリッド14に接続された出力端子9と、互いに距離L(=λ/8、λは使用する周波数での波長)離れて配置された容量性スタブ10と11、12と13」からなる構成に対して、傾斜していることが見て取れる。 (3)上記(1)及び(2)より、引用文献2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「チョーク回路6,7と、ダイオード2,3と、ローカル信号の入力端子8と、マーチャントバランを用いたバランス・アンバランス変換部1と、ハイブリッド14と、バランス・アンバランス変換部1にダイオード2,3を接続するためのライン4,5と、ハイブリッド14に接続された出力端子9と、互いに距離L(=λ/8、λは使用する周波数での波長)離れて配置された容量性スタブ10と11、12と13で構成されている平衡変調器に用いられているバランス・アンバランス変換部1であって、 直列に接続された3つのラインが、ローカル信号の入力端子に接続され、該3つのラインは、順に第1のライン、第2のライン、第3のラインであり、 第1のラインに対して、第1のラインと概ね同一長の第4のラインが並行して配置され、第4のラインは、一端がアースされ、第1乃至第3のラインの中心側である端がハイブリッド14及びライン4と接続され、 第3のラインに対して、第3のラインと概ね同一長の第5のラインが並行して配置され、第5のラインは、一端がアースされ、第1乃至第3のラインの中心側である端がハイブリッド14及びライン5に接続され、 第1乃至第3のラインは、2か所で第4のライン、第5のラインの反対側に折れ曲がっていて、第3のラインの線路端は開放されており、 第4のライン、第5のラインはいずれも、チョーク回路6,7と、ダイオード2,3と、ハイブリッド14と、バランス・アンバランス変換部1にダイオード2,3を接続するためのライン4,5と、ハイブリッド14に接続された出力端子9と、互いに距離L(=λ/8、λは使用する周波数での波長)離れて配置された容量性スタブ10と11、12と13からなる構成に対して、傾斜している、 バランス・アンバランス変換部1。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)引用発明1を主引用発明とした場合 ア 対比 本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。 (ア)引用発明1の「バランス・アンバランス変換部1」は、本願発明1の「平衡不平衡変換器(1)」に対応する。 (イ)引用発明1において、「変調器」は「アルミナ等のセラミック基板」上に形成されるものであるから、「バランス・アンバランス変換部1」も同様にセラミック基板上に形成されるものである。そして、「アルミナ等のセラミック基板」が「誘電体からなる基板」に含まれることは自明である。 (ウ)『前記基板上に形成され、第1端(12a)にて前記不平衡信号が入力又は出力され、第2端(12b)が開放された不平衡線路(12)と、』について 引用発明1の「マイクロ波信号が印可される線路端10」、「マイクロ波信号が印加される線路端10の反対側である不平衡側線路12の線路端」は、それぞれ、本願発明1の「前記不平衡信号が入力又は出力され」る「第1端(12a)」、「開放された」「第2端(12b)」に対応し、引用発明1の「不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路」は、本願発明1の「不平衡線路(12)」に対応する。 (エ)『前記基板上に前記不平衡線路の前記第1端から長手方向の中心(12c)までの線路部分(12d)に対し並行に配置され、前記中心側の第3端(14a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第4端(14b)が接地された第1の平衡線路(14)と、』について 引用発明1において、「出力側平衡線路13」は、「不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路」の中心側に平衡側出力端Aをもち、一端がアースされる。 そして、引用発明1では、出力側平衡線路13が並行に配置される不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路の部分は、不平衡側線路11の線路端10と線路端10からみて1番目の折れ曲がりまでの間の線路の部分であるから、出力側平衡線路13が並行に配置される線路の部分は、不平衡線路の長手方向の中心(12c)までの線路部分(12d)とはいえない。 そうすると、本願発明1と引用発明1とは、 「前記基板上に前記不平衡線路の前記第1端からの線路部分(12d)に対し並行に配置され、前記中心側の第3端(14a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第4端(14b)が接地された第1の平衡線路(14)」である点で一致する。 (オ)『前記基板上に前記不平衡線路の前記第2端から前記中心までの線路部分(12e)に対し並行に配置され、前記中心側の第5端(16a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第6端(16b)が接地された第2の平衡線路(16)と、』について 引用発明1において、「出力側平衡線路14」は、「不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路」の中心側に平衡側出力端Bをもち、一端がアースされる。 そして、引用発明1では、出力側平衡線路14が並行に配置される不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路の部分は、不平衡側線路12の線路端と当該線路端からみて1番目の折れ曲がりまでの間の線路の部分であるから、出力側平衡線路14が並行に配置される線路の部分は、不平衡線路の前記中心までの線路部分(12e)とはいえない。 そうすると、本願発明1と引用発明1とは、 「前記基板上に前記不平衡線路の前記第2端からの線路部分(12e)に対し並行に配置され、前記中心側の第5端(16a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第6端(16b)が接地された第2の平衡線路(16)」である点で一致する。 (カ)『前記不平衡線路が、前記中心で前記第1及び第2の平衡線路の反対側に折れ曲がっている』について 引用発明1は、「不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路」は、「2か所で出力側平衡線路13、14の反対側に折れ曲がって」いる。 そうすると、本願発明1と引用発明1とは、「前記不平衡線路が、前記第1及び第2の平衡線路の反対側に折れ曲がっている」で一致する。 (キ)『前記基板上に前記平衡不平衡変換器の前記第1及び第2の平衡線路側に隣接して配置された電子回路(20)と前記平衡不平衡変換器との境界線(T)に対して、前記第1の平衡線路及び前記第2の平衡線路の少なくとも一方が傾斜し、』について 引用発明1の「合成分配線路部8、同接続部A,Bから伸張された線路4、5と、該線路の終端近傍に設けられ、高周波的にアースとして働く扇状パターン15、扇状パターン15の側に接続された低周波信号印加線路7、7、線路4、5と扇型のパターン15間に線路7ー7間からみて互いに逆方向(又は順方向)に実装されたダイオード2、3、及び線路4、5の近傍に設けた複数の特性調整用の容量性スタブ6からなる構成」は、ダイオードという電子部品を含む構成であるから「電子回路」ということができ、さらに、「出力側平衡線路13、14」と「平衡側出力端A,B」で接続されることから、出力側平衡線路13、14と隣接して配置されているといえる。 そうすると、本願発明1と引用発明1とは、「前記基板上に前記平衡不平衡変換器の前記第1及び第2の平衡線路側に隣接して配置された電子回路(20)と前記平衡不平衡変換器との境界線(T)に対して、前記第1の平衡線路及び前記第2の平衡線路の少なくとも一方が傾斜し」である点で一致する。 上記(ア)?(キ)より、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「 平衡信号と不平衡信号を相互に変換する平衡不平衡変換器(1)であって、 誘電体あるいは半導体からなる基板(10)と、 前記基板上に形成され、第1端(12a)にて前記不平衡信号が入力又は出力され、第2端(12b)が開放された不平衡線路(12)と、 前記基板上に前記不平衡線路の前記第1端からの線路部分(12d)に対し並行に配置され、前記中心側の第3端(14a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第4端(14b)が接地された第1の平衡線路(14)と、 前記基板上に前記不平衡線路の前記第2端からの線路部分(12e)に対し並行に配置され、前記中心側の第5端(16a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第6端(16b)が接地された第2の平衡線路(16)と、 を備え、前記不平衡線路が、前記第1及び第2の平衡線路の反対側に折れ曲がっており、 前記基板上に前記平衡不平衡変換器の前記第1及び第2の平衡線路側に隣接して配置された電子回路(20)と前記平衡不平衡変換器との境界線(T)に対して、前記第1の平衡線路及び前記第2の平衡線路の少なくとも一方が傾斜し、 ている平衡不平衡変換器。」 (相違点1) 本願発明1は、第1の平衡線路が並行に配置される線路部分が、「不平衡線路の前記第1端から長手方向の中心(12c)までの線路部分(12d)」であるのに対して、引用発明1は、「不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路のうち、不平衡側線路11の線路端10と線路端10からみて1番目の折れ曲がりまでの間の線路」である点。 (相違点2) 本願発明1は、第2の平衡線路が並行に配置される線路部分が、「不平衡線路の前記第2端から前記中心までの線路部分(12e)」であるのに対して、引用発明1は、「不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路のうち、不平衡側線路12の線路端と当該線路端からみて1番目の折れ曲がりまでの線路」である点。 (相違点3) 本願発明1は、「前記不平衡線路が、前記中心で前記第1及び第2の平衡線路の反対側に折れ曲がっている」のに対して、引用発明1は、不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路は、2か所で出力側平衡線路13、14の反対側に折れ曲がっている点。 (相違点4) 本願発明1では、「前記第1の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ1)と、前記第2の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ2)が、異なる」ことが特定されているのに対して、引用発明1は、当該特定を有しない点。 イ 相違点についての判断 (ア)相違点1?3について まず相違点3について検討すると、引用発明1は、不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路が2箇所で折れ曲がっているものであり、連続した線路の中心で折れ曲がっているものではない。 そして、「不平衡線路が、中心で前記第1及び第2の平衡線路の反対側に折れ曲がっている」ことは、引用文献2にも記載されておらず、本願出願時に周知な技術ともいえないし、引用発明1において、不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路が、「2か所」で折れ曲がっていることを、「中心で」折れ曲がっているようにすることは、単なる設計的変更ともいえないから、当業者といえども容易に想到し得るものではない。 さらに、上記相違点3に係る本願発明1の構成が、当業者といえども容易に想到し得たるものではないことを踏まえると、 引用発明1において、「不平衡側線路11の線路端10と線路端10からみて1番目の折れ曲がりまでの間の線路」を、相違点1に係る本願発明1の「不平衡線路の前記第1端から長手方向の中心(12c)までの線路部分(12d)」とすること、 及び、 引用発明1において、「不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路のうち、不平衡側線路12の線路端と当該線路端からみて1番目の折れ曲がりまでの間の線路」を、相違点2に係る本願発明1の「不平衡線路の前記第2端から前記中心までの線路部分(12e)」とすることは、 いずれも当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 (イ)相違点4について 「前記第1の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ1)と、前記第2の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ2)が、異なる」ことは、引用文献2にも記載されておらず、本願出願時に周知な技術ともいえないし、単なる設計的変更ともいえないから、引用発明1において、「前記第1の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ1)と、前記第2の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ2)が、異なる」こととすることは、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 ウ 小括 以上より、本願発明1は、引用発明1に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (2)引用発明2を主引用発明とした場合 ア 対比 本願発明1と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。 (ア)引用発明2の「バランス・アンバランス変換部1」は、本願発明1の「平衡不平衡変換器(1)」に対応する。 (イ)引用発明2の「バランス・アンバランス変換部1」は、マーチャントバランを用いたものであるから、引用発明2の「第1乃至第3のライン」は、マーチャントバランの「不平衡線路」であり、本願発明1の「不平衡線路(12)」に対応するといえる。 また、引用発明2の「第4のライン」、「第5のライン」は、マーチャントバランの2本の「平衡線路」であり、それぞれ、本願発明1の「第1の平衡線路(14)」、「第2の平衡線路(16)」に対応するといえる。 (ウ)『前記基板上に前記不平衡線路の前記第1端から長手方向の中心(12c)までの線路部分(12d)に対し並行に配置され、前記中心側の第3端(14a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第4端(14b)が接地された第1の平衡線路(14)と、』について 引用発明2の「第4のライン」は、「第1のラインと概ね同一長」であり、「第1乃至第3のライン」が本願発明1の「不平衡線路(12)」に対応する。 また、「ハイブリッド14及びライン4と接続され」る「端」は、マーチャントバランにおける平衡信号の出力である。 したがって、本願発明1と引用発明2の「第4のライン」とは、「前記不平衡線路の前記第1端からの線路部分(12d)に対し並行に配置され、前記中心側の第3端(14a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第4端(14b)が接地された第1の平衡線路(14)」である点で一致する。 (エ)『前記基板上に前記不平衡線路の前記第2端から前記中心までの線路部分(12e)に対し並行に配置され、前記中心側の第5端(16a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第6端(16b)が接地された第2の平衡線路(16)と、』について 引用発明2の「第5のライン」は、「第3のラインと概ね同一長」であり、「第1乃至第3のライン」が本願発明1の「不平衡線路(12)」に対応する。 また、「ハイブリッド14及びライン5に接続され」る「端」は、マーチャントバランにおける平衡信号の出力である。 したがって、本願発明1と引用発明2の「第5のライン」とは、「前記不平衡線路の前記第2端からの線路部分(12e)に対し並行に配置され、前記中心側の第5端(16a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第6端(16b)が接地された第2の平衡線路(16)」である点で一致する。 (オ)『前記不平衡線路が、前記中心で前記第1及び第2の平衡線路の反対側に折れ曲がっている』について 引用発明2は、「第1乃至第3のライン」は、「2か所で第4のライン、第5のラインの反対側に折れ曲がってい」る。 そうすると、本願発明1と引用発明2とは、「前記不平衡線路が、前記第1及び第2の平衡線路の反対側に折れ曲がっている」で一致する。 (カ)『前記基板上に前記平衡不平衡変換器の前記第1及び第2の平衡線路側に隣接して配置された電子回路(20)と前記平衡不平衡変換器との境界線(T)に対して、前記第1の平衡線路及び前記第2の平衡線路の少なくとも一方が傾斜し、』について 引用発明2の「チョーク回路6,7と、ダイオード2,3と、ハイブリッド14と、バランス・アンバランス変換部1にダイオード2,3を接続するためのライン4,5と、ハイブリッド14に接続された出力端子9と、互いに距離L(=λ/8、λは使用する周波数での波長)離れて配置された容量性スタブ10と11、12と13からなる構成」は、ダイオードという電子部品を含む構成であるから「電子回路」ということができ、さらに、「第4のライン」の「端」、及び「第5のライン」の「端」と接続されることから、「第4のライン」、「第5のライン」と隣接して配置されているといえる。 そうすると、本願発明1と引用発明2とは、「前記平衡不平衡変換器の前記第1及び第2の平衡線路側に隣接して配置された電子回路(20)と前記平衡不平衡変換器との境界線(T)に対して、前記第1の平衡線路及び前記第2の平衡線路の少なくとも一方が傾斜し」である点で共通する。 上記(ア)?(カ)より、本願発明1と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「 平衡信号と不平衡信号を相互に変換する平衡不平衡変換器(1)であって、 第1端(12a)にて前記不平衡信号が入力又は出力され、第2端(12b)が開放された不平衡線路(12)と、 前記不平衡線路の前記第1端からの線路部分(12d)に対し並行に配置され、前記中心側の第3端(14a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第4端(14b)が接地された第1の平衡線路(14)と、 前記不平衡線路の前記第2端からの線路部分(12e)に対し並行に配置され、前記中心側の第5端(16a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第6端(16b)が接地された第2の平衡線路(16)と、 を備え、前記不平衡線路が、前記第1及び第2の平衡線路の反対側に折れ曲がっており、 前記平衡不平衡変換器の前記第1及び第2の平衡線路側に隣接して配置された電子回路(20)と前記平衡不平衡変換器との境界線(T)に対して、前記第1の平衡線路及び前記第2の平衡線路の少なくとも一方が傾斜した、 平衡不平衡変換器。」 (相違点1) 本願発明1は、「誘電体あるいは半導体からなる基板(10)」を備え、不平衡線路(12)が前記基板上に形成され、第1の平衡線路(14)、第2の平衡線路(16)及び電子回路(20)が前記基板上に配置されているのに対して、引用発明2は、当該事項が特定されていない点。 (相違点2) 本願発明1は、第1の平衡線路が並行に配置される線路部分が、「不平衡線路の前記第1端から長手方向の中心(12c)までの線路部分(12d)」であるのに対して、引用発明2は、「第1のライン」である点。 (相違点3) 本願発明1は、第2の平衡線路が並行に配置される線路部分が、「不平衡線路の前記第2端から前記中心までの線路部分(12e)」であるのに対して、引用発明2は、「第3のライン」である点。 (相違点4) 本願発明1は、「前記不平衡線路が、前記中心で前記第1及び第2の平衡線路の反対側に折れ曲がっている」のに対して、引用発明2は、第1乃至第3のラインは、2か所で第4のライン、第5のラインの反対側に折れ曲がっている点。 (相違点5) 本願発明1では、「前記第1の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ1)と、前記第2の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ2)が、異なる」ことが特定されているのに対して、引用発明2は、当該特定事項を有しない点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、まず相違点2?4について、検討する。 (ア)相違点2?4について まず相違点4について検討すると、引用発明2は、第1乃至第3のラインが2か所で折れ曲がっているものであり、第1乃至第3のラインの中心で折れ曲がっているものではない。 そして、「不平衡線路が、中心で前記第1及び第2の平衡線路の反対側に折れ曲がっている」ことは、引用文献1にも記載されておらず、本願出願時に周知な技術ともいえないし、引用発明2において、第1乃至第3のラインが、「2か所」で折れ曲がっていることを、「中心で」折れ曲がっているようにすることは、単なる設計的変更ともいえないから、当業者といえども容易に想到し得るものではない。 さらに、上記相違点4に係る本願発明1の構成が、当業者といえども容易に想到し得たるものではないことを踏まえると、 引用発明2において、「第1のライン」を、相違点2に係る本願発明1の「不平衡線路の前記第1端から長手方向の中心(12c)までの線路部分(12d)」とすること、 及び、 引用発明2において、「第3のライン」を、相違点3に係る本願発明1の「不平衡線路の前記第2端から前記中心までの線路部分(12e)」とすることは、 いずれも当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 (イ)相違点5について 「前記第1の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ1)と、前記第2の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ2)が、異なる」ことは、引用文献1にも記載されておらず、本願出願時に周知な技術ともいえないし、単なる設計的変更ともいえないから、引用発明2において、「前記第1の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ1)と、前記第2の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ2)が、異なる」こととすることは、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 ウ 小括 そうすると、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明2に基いて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 2.本願発明2について (1)引用発明1を主引用発明とした場合 ア 対比 本願発明2と引用発明1とを対比すると、上記「1.(1)ア」の本願発明1と引用発明1との対比における(ア)?(カ)と同様の事項がいえる。 そうすると、本願発明2と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「 平衡信号と不平衡信号を相互に変換する平衡不平衡変換器(1)であって、 誘電体あるいは半導体からなる基板(10)と、 前記基板上に形成され、第1端(12a)にて前記不平衡信号が入力又は出力され、第2端(12b)が開放された不平衡線路(12)と、 前記基板上に前記不平衡線路の前記第1端からの線路部分(12d)に対し並行に配置され、前記中心側の第3端(14a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第4端(14b)が接地された第1の平衡線路(14)と、 前記基板上に前記不平衡線路の前記第2端からの線路部分(12e)に対し並行に配置され、前記中心側の第5端(16a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第6端(16b)が接地された第2の平衡線路(16)と、 を備え、前記不平衡線路が、前記第1及び第2の平衡線路の反対側に折れ曲がっている、 平衡不平衡変換器。」 (相違点1) 本願発明2は、第1の平衡線路が並行に配置される線路部分が、「不平衡線路の前記第1端から長手方向の中心(12c)までの線路部分(12d)」であるのに対して、引用発明1は、「不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路のうち、不平衡側線路11の線路端10と線路端10からみて1番目の折れ曲がりまでの間の線路」である点。 (相違点2) 本願発明2は、第2の平衡線路が並行に配置される線路部分が、「不平衡線路の前記第2端から前記中心までの線路部分(12e)」であるのに対して、引用発明1は、「不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路のうち、不平衡側線路12の線路端と当該線路端からみて1番目の折れ曲がりまでの線路」である点。 (相違点3) 本願発明2は、「前記不平衡線路が、前記中心で前記第1及び第2の平衡線路の反対側に折れ曲がっている」のに対して、引用発明1は、不平衡側線路11と不平衡側線路12を含む連続した線路は、2か所で出力側平衡線路13、14の反対側に折れ曲がっている点。 (相違点4) 本願発明2は、「前記不平衡線路の前記第1端から前記中心までの線路部分と、前記不平衡線路の前記第2端から前記中心までの線路部分と、前記第1の平衡線路と、前記第2の平衡線路と、の長さが等しいこと」が特定されているのに対して、引用発明1は、「略λ/4長の不平衡側線路11とその端部からさらに略λ/4長延長した不平衡側線路12」と「略λ/4長の出力側平衡線路13、14」から構成されることが特定されている点。 イ 相違点についての判断 相違点1?3は、上記「1.(1)イ(ア)」での判断と同様に、いずれの相違点も、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 また、相違点3に係る本願発明2の構成が、当業者が容易に想到し得るものではないから、相違点4に係る本願発明2の「前記不平衡線路の前記第1端から前記中心までの線路部分と、前記不平衡線路の前記第2端から前記中心までの線路部分と、前記第1の平衡線路と、前記第2の平衡線路と、の長さが等しい」は、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 ウ 小括 以上より、本願発明2は、引用発明1に基いて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 (2)引用発明2を主引用発明とした場合 ア 対比 本願発明2と引用発明2とを対比すると、上記「1.(2)ア」の本願発明1と引用発明2との対比における(ア)?(オ)と同様の事項がいえる。 そうすると、本願発明2と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「 平衡信号と不平衡信号を相互に変換する平衡不平衡変換器(1)であって、 第1端(12a)にて前記不平衡信号が入力又は出力され、第2端(12b)が開放された不平衡線路(12)と、 前記不平衡線路の前記第1端からの線路部分(12d)に対し並行に配置され、前記中心側の第3端(14a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第4端(14b)が接地された第1の平衡線路(14)と、 前記不平衡線路の前記第2端からの線路部分(12e)に対し並行に配置され、前記中心側の第5端(16a)にて前記平衡信号が出力又は入力され、第6端(16b)が接地された第2の平衡線路(16)と、 を備え、前記不平衡線路が、前記第1及び第2の平衡線路の反対側に折れ曲がっている、 平衡不平衡変換器。」 (相違点1) 本願発明2は、「誘電体あるいは半導体からなる基板(10)」を備え、不平衡線路(12)が前記基板上に形成され、第1の平衡線路(14)、第2の平衡線路(16)及び電子回路(20)が前記基板上に配置されているのに対して、引用発明2は、当該事項が特定されていない点 (相違点2) 本願発明2は、第1の平衡線路が並行に配置される線路部分が、「不平衡線路の前記第1端から長手方向の中心(12c)までの線路部分(12d)」であるのに対して、引用発明2は、「第1のライン」である点。 (相違点3) 本願発明2は、第2の平衡線路が並行に配置される線路部分が、「不平衡線路の前記第2端から前記中心までの線路部分(12e)」であるのに対して、引用発明2は、「第3のライン」である点。 (相違点4) 本願発明2は、「前記不平衡線路が、前記中心で前記第1及び第2の平衡線路の反対側に折れ曲がっている」のに対して、引用発明2は、第1乃至第3のラインは、2か所で第4のライン、第5のラインの反対側に折れ曲がっている点。 (相違点5) 本願発明2は、「前記不平衡線路の前記第1端から前記中心までの線路部分と、前記不平衡線路の前記第2端から前記中心までの線路部分と、前記第1の平衡線路と、前記第2の平衡線路と、の長さが等しいこと」が特定されているのに対して、引用発明2は、「第1のラインと概ね同一長の第4のライン」、「第3のラインと概ね同一長の第5のライン」が特定されている点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、まず相違点2?4について、検討する。 相違点2?4は、上記「1.(2)イ(ア)」での相違点2?4の判断と同様に、いずれの相違点も、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 また、相違点4に係る本願発明2の構成が、当業者が容易に想到し得るものではないから、相違点5に係る本願発明2の「前記不平衡線路の前記第1端から前記中心までの線路部分と、前記不平衡線路の前記第2端から前記中心までの線路部分と、前記第1の平衡線路と、前記第2の平衡線路と、の長さが等しい」は、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 ウ 小括 そうすると、相違点1について検討するまでもなく、本願発明2は、引用発明2に基いて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 3.本願発明3?8について 本願発明3?8は、請求項1または2を直接的又は間接的に引用する発明であるから、本願発明1又は本願発明2と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1又は2に記載された発明に基いて、容易に想到し得るものとはいえない。 第6 原査定について 審判請求時の補正により、本願発明1は、「前記第1の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ1)と、前記第2の平衡線路の前記境界線に対する傾斜角度(θ2)が、異なること」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1又は2に記載された発明に基いて、容易に発明できたものとはいえない。 また、本願発明2は、「前記不平衡線路の前記第1端から前記中心までの線路部分と、前記不平衡線路の前記第2端から前記中心までの線路部分と、前記第1の平衡線路と、前記第2の平衡線路と、の長さが等しいこと」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1又は2に記載された発明に基いて、容易に発明できたものとはいえない。 本願発明3?8は、請求項1又は2を直接的又は間接的に引用するものであるから、同様に、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1又は2に記載された発明に基いて、容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1?8は、当業者が引用文献1又は2に記載された発明に基いて容易に発明できたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-11-11 |
出願番号 | 特願2018-57088(P2018-57088) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(H03H)
P 1 8・ 121- WY (H03H) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 石田 昌敏 |
特許庁審判長 |
佐藤 智康 |
特許庁審判官 |
吉田 隆之 衣鳩 文彦 |
発明の名称 | 平衡不平衡変換器及びそれを備えた半導体集積回路 |
代理人 | 有我 栄一郎 |