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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A45D
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A45D
管理番号 1379737
審判番号 不服2020-6025  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-01 
確定日 2021-11-09 
事件の表示 特願2018-534818「少なくとも部分的に、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー材料の成形によって得られる化粧品塗布具の塗布具部材」拒絶査定不服審判事件〔平成29年7月13日国際公開、WO2017/118568、平成31年1月10日国内公表、特表2019-500167〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、2016年(平成28年)12月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年1月5日(FR)フランス共和国)を国際出願日とする出願であって、令和元年7月12日付けで拒絶理由(発送日:同年7月22日)が通知され、その指定期間内である令和元年9月5日に意見書及び手続補正書が提出され、令和元年12月23日付けで拒絶査定(発送日:令和2年1月6日)がされ、これに対し、令和2年5月1日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲を手続補正する手続補正書が提出され、令和2年8月12日に上申書が提出され、令和2年9月24日に上申書が提出され、当審において令和3年2月2日付けで拒絶理由(発送日:同年2月8日)が通知され、その指定期間内である令和3年4月22日に意見書が提出されたものである。


第2.当審において通知した拒絶の理由1及び2について
当審において令和3年2月2日付けで通知した拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
理由1.(サポート要件違反)
この出願(以下、「本願」という。)は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由2.(実施可能要件(委任省令要件)違反)
本願は、明細書の発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。



本願の各請求項に係る発明は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載からみて、その解決すべき課題を解決し得ないものを含んでいるから、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
また、本願明細書の発明の詳細な説明は、経済産業省令で定めるところにより、当業者が本願の各請求項の記載の技術的な意味を正確に理解し、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

第3.当審の判断
1.理由1(サポート要件違反)について
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、サポート要件に適合するか否かは、本願の出願人である本件請求人がその証明責任を負うものである。

本願の特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かについて検討する。

(1)本願の特許請求の範囲の記載、本願発明
本願の特許請求の範囲の記載は、令和2年5月1日の手続補正で補正された特許請求の範囲のとおりであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「化粧品塗布具用の塗布部材(8)であって、少なくとも部分的に、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー材料の成形によって得られる、塗布部材(8)において、前記材料が、10MPa以上、25MPa以下の引張強度を有するTPSであり、
TPS材料が、少なくとも15重量%のポリオレフィン添加剤を含有し、前記ポリオレフィン添加剤が、ポリエチレンを含み、
TPS材料が、20重量%未満のミネラル添加剤を含み、前記ミネラル添加剤が、CaCO_(3)、アルミニウム及びアルミニウム化合物、カオリン、並びに亜鉛及び亜鉛化合物から選択されることを特徴とする塗布部材(8)。」

(2)本願発明が解決すべき課題及びその解決手段
本願発明が解決すべき課題は、本願明細書の段落【0001】ないし【0060】に記載された事項からみて、「化粧品塗布具の塗布具部材に関し、コスト及び吸水性の面でHytrel(登録商標)よりも優れている、SEBS(スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン)を含むTPS(熱可塑性スチレンエラストマー)を使用し、同一形状において、前記Hytrel(登録商標)の性能と同様の化粧効果の観点での性能を有しつつ低いレベルの吸水性を有する経済的な材料に対するニーズに応えること」(以下、「本願課題」という。)であると認める。

そして、本願発明は、上記本願課題を解決するために、「少なくとも部分的に、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー材料の成形によって得られる、塗布部材(8)において、前記材料が、10MPa以上、25MPa以下の引張強度を有するTPSであり、TPS材料が、少なくとも15重量%のポリオレフィン添加剤を含有し、前記ポリオレフィン添加剤が、ポリエチレンを含み、TPS材料が、20重量%未満のミネラル添加剤を含み、前記ミネラル添加剤が、CaCO_(3)、アルミニウム及びアルミニウム化合物、カオリン、並びに亜鉛及び亜鉛化合物から選択されること」(以下、「本願発明特定事項」という。)を発明特定事項としたものと、当業者に理解されるべきものである。

(3)本願発明特定事項に関する本願の明細書の発明の詳細な説明の記載
本願発明特定事項に関する本願の明細書の発明の詳細な説明の記載を確認する。
本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
ア.「前記材料が、10MPa以上、25MPa以下の引張強度を有するTPSであり」なる事項に関して
(ア)「【0061】
これを実施するため、本発明は、特に、ケラチン繊維に化粧品を塗布するための、特に、睫毛にマスカラを塗布するための化粧品塗布具の塗布具部材に関する。前記塗布具部材は、少なくとも部分的に、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー材料の成形によって得られ、前記材料は、10MPa以上、好ましくは15MPa以上の引張強度を有するTPSであることを特徴とする。
【0062】
引張強度(又は最大引張強度)は、標準規格DIN53504/ISO37に従って、標準的なS2試験片に対し200mm/分の速度(移動速度)で決定される。
【0063】
任意の1つの理論に拘束されることを望むものではないが、本出願人は、実質的に同様の硬度において、明記した引張強度は、従来使用されているHytrel(登録商標)のものに類似する弾性及び力学特性を確保することを可能にすると考える。
【0064】
特に、化粧をする間、塗布具部材、より具体的には塗布要素は、圧縮及び伸びの両方において変形(特に、曲げによる)する。したがって、塗布具部材は、特定の硬度及び特定の引張強度及び耐曲げ性を同時に有するべきである。」

(イ)「【0066】
有利には、TPS材料は、25MPa以下の引張強度を有する。このような最大値は、特に、特定の塗布可撓性及びユーザの快適性の保証を可能にする。」

(ウ)「【0104】
使用される熱可塑性エラストマー材料は、10MPa以上、好ましくは15MPa以上の引張強度を有する。
【0105】
優先的には、TPS材料は、25MPa以下の引張強度を有する。」

イ.「TPS材料が、少なくとも15重量%のポリオレフィン添加剤を含有し、前記ポリオレフィン添加剤が、ポリエチレンを含み」なる事項に関して
(ア)「【0077】
特定の一実施形態によれば、TPS材料は、少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、又は更に少なくとも35重量%のポリオレフィン添加剤を含有する。
【0078】
場合によっては、45重量%以下、又は更に50重量%若しくは55重量%以下、のポリオレフィン添加剤を追加すると有用であり得る。
【0079】
好ましくは、ポリオレフィン添加剤は、ポリエチレンを含む、又は更にポリエチレンで構成されている。特に、ポリエチレンは、高密度(HD)ポリエチレン、低密度(LD)ポリエチレン、直鎖低密度(LLD)ポリエチレン、又はラジカル低密度(RLD)ポリエチレンであり得る。好ましくは、ポリエチレンは高密度ポリエチレンである。
【0080】
有利には、TPS材料は、多くとも70重量%、優先的には60重量%未満のポリオレフィン添加剤を含有する。」

(イ)「【0109】
選択されたTPS材料の機械的特性は、種々の手法で、特に添加剤によって調整してもよい。
【0110】
したがって、TPS材料は、少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、又は更に少なくとも35重量%、又はそうでなければ、少なくとも45重量%、55重量%超までのポリオレフィン添加剤を含有し、ポリオレフィン添加剤は、好ましくはポリエチレンを含む、又は更に、ポリエチレンで構成されている。
【0111】
好ましくは、ポリオレフィン添加剤は70重量%未満、又は更に60重量%未満にとどまる。」

ウ.「TPS材料が、20重量%未満のミネラル添加剤を含み、前記ミネラル添加剤が、CaCO_(3)、アルミニウム及びアルミニウム化合物、カオリン、並びに亜鉛及び亜鉛化合物から選択される」なる事項に関して
(ア)「【0081】
代替的又は補足的な一実施形態によれば、TPS材料は、20重量%未満、好ましくは15重量%若しくは10重量%未満、又は更に1重量%未満のミネラル添加剤を含み、ミネラル添加剤は、CaCO_(3)、アルミニウム及びアルミニウム化合物、カオリン、並びに亜鉛及び亜鉛化合物(特に、抗菌特性)から選択される。
【0082】
1つの理論に拘束されることを望むものではないが、本出願人は、ポリオレフィン、特に、ポリエチレン、有機添加剤及び/又はミネラル添加剤、特に、CaCO_(3)の変更によって熱可塑性エラストマー材料の機械的特性に大きく影響することが可能になると考える。
【0083】
有機及びポリマーの性質を持つポリオレフィン粒子の表面は、その内部に使用されているポリマーで湿る。したがって、機械的特性の強化を一般にもたらす相互作用がポリオレフィン添加剤粒子とポリマーとの間に生じる。
【0084】
特にCaCO_(3)のミネラル粒子(好ましくは5?10ミクロン)は、ポリマーマトリックス中に容易に均一に分散し、ポリマーで湿らない。ミネラル添加剤とポリマーとの間に相互作用はない。したがって、製造コスト低下のために一般に炭酸カルシウムが添加剤として使用されており、その使用が有利であると一般に考えられている。
【0085】
本出願人は、このような添加剤は、実際には、化粧品塗布具部材の特性に不利な影響を及ぼし得ると考える。必要であれば、この影響は、ポリオレフィン添加剤又はTPS材料の長い若しくは短いセグメントの性質を用いて少なくとも一部補償することができる又はリバランスすることができると思われる。」

(イ)「【0112】
前述のように、本出願人は、不活性ミネラル添加剤は、ポリオレフィン添加剤とは異なり、所望の機械的特性に負の影響を及ぼすと考える。
【0113】
したがって、選択されるTPS材料が、20重量%未満、好ましくは10重量%未満、又は更に1重量%未満のミネラル添加剤を含むことが好ましい。
【0114】
特に、ミネラル添加剤は、CaCO_(3)、アルミニウム及びアルミニウム化合物、カオリン、並びに亜鉛及び亜鉛化合物から選択され得る。特に、殺菌特性などの付加的な特性を有するミネラル添加剤を選択すると有利であり得る。
【0115】
このような材料は、多くの製造業者、特に、Kraiburg又は三菱ケミカル株式会社から市販されている。」

エ.その他の関連する記載に関して
「【0116】
以下の表では、特に、本願による塗布具部材8の製造に好適であり得る入手可能な材料の基準のリストを記載する。表1には、現在使用されており、上記で詳述した理由から完全には満足の行くものではない標準的な材料も記載する。標準的な材料はイタリック体で記載する。
【0117】
【表1】


【0118】
塗布具部材8をいくつかの材料から成形し、それらの化粧の観点における性能を試験した。
【0119】
以下の表(表2)は、化粧の官能試験専門家によって評価された、同一のマスカラ調合物を含む塗布具部材を1つの目につき約20回通過させた後の結果を示す。
【0120】
【表2】


(4)判断
まず、上記(3)アないしエに摘記した本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願発明特定事項が、本願明細書の発明の詳細な説明の記載に基づくものであることを示すものではある。
しかし、これらの記載は、本願発明が、本願発明特定事項を満たすこと、すなわち、「少なくとも部分的に、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー材料の成形によって得られる、塗布部材(8)において、前記材料が、10MPa以上、25MPa以下の引張強度を有するTPSであり、TPS材料が、少なくとも15重量%のポリオレフィン添加剤を含有し、前記ポリオレフィン添加剤が、ポリエチレンを含み、TPS材料が、20重量%未満のミネラル添加剤を含み、前記ミネラル添加剤が、CaCO_(3)、アルミニウム及びアルミニウム化合物、カオリン、並びに亜鉛及び亜鉛化合物から選択されること」を満たすことで、「化粧品塗布具の塗布具部材に関し、コスト及び吸水性の面でHytrel(登録商標)よりも優れている、SEBS(スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン)を含むTPS(熱可塑性スチレンエラストマー)を使用し、同一形状において、前記Hytrel(登録商標)の性能と同様の化粧効果の観点での性能を有しつつ低いレベルの吸水性を有する経済的な材料に対するニーズに応えること」という本願課題が解決される仕組みや機序を説明するものではない。
例えば、上記(3)ア(ア)に摘記した段落【0063】の記載は、10MPa以上、25MPa以下の引張強度を有するTPSであれば、「従来使用されているHytrel(登録商標)のものに類似する弾性及び力学特性を確保することを可能にすると考える。」と述べるにとどまり、上記(3)ウ(ア)に摘記した段落【0082】、【0083】及び【0085】の記載並びに上記(3)ウ(イ)に摘記した段落【0112】の記載も、「ポリオレフィン、特に、ポリエチレン、有機添加剤及び/又はミネラル添加剤の添加が、熱可塑性エラストマー材料の機械的特性に大きく影響」し、「特に、不活性ミネラル添加剤は、所望の機械的特性に負の影響を及ぼすと考える」が、「ポリオレフィン添加剤又はTPS材料の長い若しくは短いセグメントの性質を用いて少なくとも一部補償することができる又はリバランスすることができると思われる。」と述べるにとどまっており、「所望の機械的特性に負の影響を及ぼすと考える」という「不活性ミネラル添加剤」を「20重量%」近くまで添加したとしても、「15重量%のポリオレフィン添加剤を含有し」、「10MPa以上、25MPa以下の引張強度を有する」、「TPS材料」を採用すれば、何故、「Hytrel(登録商標)の性能と同様の化粧効果の観点での性能を有す」ることが可能となるのかといったことは、説明されていない。

ゆえに、本願特許明細書の発明の詳細な説明には、上記仕組みや機序が不明である本願発明が、本願発明特定事項を満たすことにより本願課題を解決したという実証的な説明が求められるところ、上記(3)エに摘記した段落【0115】ないし【0120】に記載された説明も、以下(1)ないし(3)の点で、本願発明が、本願発明特定事項により、本願課題を解決することを実証的に示すものとはいえない。
(1)【表1】の「TOFI823 90A W001」ないし「HTF890531」は、「ミネラルフィラー」が、「CaCO_(3)、アルミニウム及びアルミニウム化合物、カオリン、並びに亜鉛及び亜鉛化合物から選択される」という規定を満たすものであるのかが不明であること。
(2)仮に、上記(1)を不問としても、【表1】の「TF9AAE」ないし「HTF890531」のうちで、「10MPa以上、25MPa以下の引張強度を有するTPSであり、TPS材料が、少なくとも15重量%のポリオレフィン添加剤を含有し、前記ポリオレフィン添加剤が、ポリエチレンを含み、TPS材料が、20重量%未満のミネラル添加剤を含み」という規定を満たす「TF9AAB」、「TM9HET」、「TF8AAB」、「TF8THT」、「TF7THT」のうち、化粧の官能試験専門家による評価結果を示す【表2】に記載されているものは、22MPaの引張強度を有するTPSであり、49.8%のポリエチレンを含み、0.2%のミネラルフィラーを含む「TF9AAB」及び18.5MPaの引張強度を有するTPSであり、59.8%のポリエチレンを含み、0%のミネラルフィラーを含む「TM9HET」の2例のみであること。
(3)上記「TF9AAB」及び「TM9HET」の2例のみから、本願発明特定事項、すなわち、「少なくとも部分的に、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー材料の成形によって得られる、塗布部材(8)において、前記材料が、10MPa以上、25MPa以下の引張強度を有するTPSであり、TPS材料が、少なくとも15重量%のポリオレフィン添加剤を含有し、前記ポリオレフィン添加剤が、ポリエチレンを含み、TPS材料が、20重量%未満のミネラル添加剤を含み、前記ミネラル添加剤が、CaCO3、アルミニウム及びアルミニウム化合物、カオリン、並びに亜鉛及び亜鉛化合物から選択されること」を満たすことで、「化粧品塗布具の塗布具部材に関し、コスト及び吸水性の面でHytrel(登録商標)よりも優れている、SEBS(スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン)を含むTPS(熱可塑性スチレンエラストマー)を使用し、同一形状において、前記Hytrel(登録商標)の性能と同様の化粧効果の観点での性能を有しつつ低いレベルの吸水性を有する経済的な材料に対するニーズに応えること」という本願課題が解決できると、当業者が認識できる程度の記載が、本願明細書の発明の詳細な説明にはなく、また、当業者が出願時の技術常識に照らし本願課題を解決できると認識できる範囲のものであるとすべき根拠もみいだせないこと。

以上のとおり、本願発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲を超えるものといわざるを得ない。
したがって、本願発明は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。

(5)請求人の主張について
請求人は、令和3年4月22日に意見書において、概ね以下のアないしウを主張している。
ア.請求項1における「TPS材料が、20重量%未満のミネラル添加剤を含み、前記ミネラル添加剤が、CaCO_(3)、アルミニウム及びアルミニウム化合物、カオリン、並びに亜鉛及び亜鉛化合物から選択される」との特定事項は、ミネラル添加剤の含有量の最大値を特定するものであり、ミネラル添加剤の種類については本願発明の主要な特徴ではなく、その添加剤含有量が高くなるほど材料の総コストが低下することが知られているが、本願発明において、CaCO_(3)ミネラル粒子が熱可塑性エラストマー材料の機械的特性に不利な影響を及ぼすことを見出し、ミネラル添加剤の含有量を20重量%未満とすることを特定したものである旨。
イ.「TM9HET」及び「TF9AAB」は、低いレベルの吸水性を有するという特徴を有し、これらの材料は、現在使用されている高コスト及び高吸水性であるHytrelに対して、低コストであり、より吸水性が低いという利点を有し、本願明細書の段落【0041】には、「SEBS及びより一般にはTPSが、Hytrel(登録商標)が呈するコスト及び吸収の課題に対する答えとなる」ことが記載されている旨。
ウ.重要な点は、請求人が、Hytrelに匹敵する硬さを有しつつ、コスト及び吸水性が改善された化粧品塗布用具の塗布部材として最適なTPS材料を特定したことにある旨。

しかしながら、上記アないしウの主張は、いずれも、本願発明特定事項を満たすことにより、本願課題が解決される仕組み、機序や実証例が、本願明細書の発明の詳細な説明に記載されていることを裏付けるものではなく、当を得たものではないから、採用できない。


2.理由2(実施可能要件(委任省令)違反)について
明細書の発明の詳細な説明の記載は、経済産業省令(特許法施行規則第24条の2)で定めるところにより、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならないとされている。
しかしながら、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、上記1で示したとおり、本願発明が、本願発明特定事項を満たすことで、本願課題が解決される仕組みや機序を説明するものではないし、当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、発明の課題とその数式又は数値による特定との実質的な関係を理解することができず、発明の課題の解決手段を理解できないゆえに、発明の技術上の意義が不明であるから、発明が解決しようとする課題の解決手段その他の発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしたもの、すなわち、経済産業省令で定めるところにより、当業者が本願の各請求項の記載の技術的な意味を正確に理解し、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。


第4.むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲及び明細書の記載が、特許法第36条第6項1号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2021-05-31 
結審通知日 2021-06-07 
審決日 2021-06-22 
出願番号 特願2018-534818(P2018-534818)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (A45D)
P 1 8・ 536- WZ (A45D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 健晴東 勝之  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 渡邊 豊英
高島 壮基
発明の名称 少なくとも部分的に、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー材料の成形によって得られる化粧品塗布具の塗布具部材  
代理人 堀江 健太郎  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
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