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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B01D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B01D
管理番号 1379766
異議申立番号 異議2020-700915  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-27 
確定日 2021-09-03 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6701309号発明「燃料用フィルタ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6701309号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第6701309号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6701309号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成27年10月28日(優先権主張 平成26年12月1日 日本国)を出願日とする特願2016-562352号の一部を特許法第44条第1項の規定により、平成30年12月6日に新たな特許出願として分割したものであり、令和2年5月8日にその特許権の設定登録がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、令和2年11月27日に特許異議申立人原田祐子(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、令和3年3月2日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年4月20日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、これに対し、異議申立人からは意見書の提出がなかったものである。

第2 訂正の適否

1 訂正事項
上記令和3年4月20日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであって、その具体的な訂正事項は次のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記濾過材の最外層には、スパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布が配置されており、
前記スパンボンド不織布はフラット面と凹凸面とを表裏に有し、該フラット面が前記フィルタ部材の外周側に向けて配置されており、」とあるのを、「前記濾過材の最外層には、ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工したスパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布が配置されており、
前記最外層に配置されるスパンボンド不織布は、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備えており、
前記一方の面は、前記フィルタ部材の外周側に向けて配置されており、」に訂正する。
(請求項1を直接または間接的に引用する請求項2、3についても同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記最内層に配置されるスパンボンド不織布はフラット面と凹凸面とを表裏に有し、該フラット面が前記フィルタ部材の内周側に向けて配置されている」とあるのを、「前記最内層に配置されるスパンボンド不織布は、ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工したスパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布で、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備えており、
前記一方の面は、前記フィルタ部材の内周側に向けて配置されている」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1は、スパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布が、「ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工したスパンボンド法により製造された」ものであることを限定すると共に、濾過材の最外層に配置されるスパンボンド不織布が、「平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備え」、「前記一方の面」が、フィルタ部材の外周側に向けて配置されているものであることを明確にし、また限定するものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 訂正事項1のスパンボンド不織布が、「ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工したスパンボンド法により製造された」ものであることは、本件明細書【0058】の「また、スパンボンド不織布90a,90eは、例えば、原料を紡糸し、紡糸した繊条を冷却しつつエジェクターにて引取り延伸し、ベルトコンベア上に開繊、捕集してウエブを形成し、そのウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工した後、巻き取ることによって得られる。なお、熱エンボスローラーによりスパンボンド不織布90a,90eの凹凸面94が形成されていると共に、熱フラットロールによりスパンボンド不織布90a,90eのフラット面92が形成されている。」との記載に基づくものであり、濾過材の最外層に配置されるスパンボンド不織布が、「平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備え」、「前記一方の面」が、フィルタ部材の外周側に向けて配置されていることは、同【0054】の「両スパンボンド不織布90a,90eは、平面状のフラット面からなる一方の面92と、凹凸面からなる他方の面94とを備えるシート状のスパンボンド不織布である。他方の面94は、多数の凹部94aを有する凹凸面94(他方の面と同一符号を付す)からなる。」及び同【0059】の「濾過材90の最外層のスパンボンド不織布90aの一方の面92すなわちフラット面92(一方の面と同一符号を付す)は、フィルタ部材52の外表面を形成するように配置されている。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ 訂正事項1は、請求項1のスパンボンド不織布をさらに限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、最内層に配置されるスパンボンド不織布が、「ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工したスパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布で、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備え」、「前記一方の面」が、フィルタ部材の内周側に向けて配置されているものであることを明確にし、また限定するものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 訂正事項2の最内層に配置されるスパンボンド不織布が、「ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工したスパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布で、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備え」、「前記一方の面」が、フィルタ部材の内周側に向けて配置されているものであることは、本件明細書【0058】の「また、スパンボンド不織布90a,90eは、例えば、原料を紡糸し、紡糸した繊条を冷却しつつエジェクターにて引取り延伸し、ベルトコンベア上に開繊、捕集してウエブを形成し、そのウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工した後、巻き取ることによって得られる。なお、熱エンボスローラーによりスパンボンド不織布90a,90eの凹凸面94が形成されていると共に、熱フラットロールによりスパンボンド不織布90a,90eのフラット面92が形成されている。」、同【0054】の「両スパンボンド不織布90a,90eは、平面状のフラット面からなる一方の面92と、凹凸面からなる他方の面94とを備えるシート状のスパンボンド不織布である。他方の面94は、多数の凹部94aを有する凹凸面94(他方の面と同一符号を付す)からなる。」及び同【0059】の「また、濾過材90の最内層のスパンボンド不織布90eのフラット面92は、フィルタ部材52の内表面を形成するように配置されている。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ 訂正事項2は、請求項3の最内層に配置されるスパンボンド不織布をさらに限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 小括
本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1ないし3〕について訂正することを求めるものであるところ、上記2のとおり、訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1ないし3〕について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件訂正後の請求項1ないし3に係る発明(以下、各請求項1に係る発明及び特許を項番に対応して「本件発明1」、「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
濾過材により袋状に形成されたフィルタ部材を備えており、
前記フィルタ部材の内部空間に燃料タンク内の燃料吸入口が連通される燃料用フィルタであって、
前記濾過材は、複数枚の不織布を積層してなる多層構造を有しており、
前記濾過材の最外層には、ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工したスパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布が配置されており、
前記最外層に配置されるスパンボンド不織布は、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備えており、
前記一方の面は、前記フィルタ部材の外周側に向けて配置されており、
前記スパンボンド不織布は、前記フラット面が前記凹凸面よりも繊維切れが生じ難い、燃料用フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料用フィルタであって、
前記濾過材の最内層には、スパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布が配置されている、燃料用フィルタ。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料用フィルタであって、
前記フィルタ部材の内部空間に配置される内骨部材を備えており、
前記最内層に配置されるスパンボンド不織布は、ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工したスパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布で、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備えており、
前記一方の面は、前記フィルタ部材の内周側に向けて配置されている、燃料用フィルタ。」

第4 令和3年3月2日付けで通知した取消理由及びこの取消理由において採用しなかった異議申立人による特許異議の申立理由の概要

1 令和3年3月2日付けで通知した取消理由の概要
(1)特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)
ア 本件訂正前の請求項1に係る発明は「前記濾過材の最外層には、スパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布が配置されており、
前記スパンボンド不織布はフラット面と凹凸面とを表裏に有し、該フラット面が前記フィルタ部材の外周側に向けて配置されており、
前記スパンボンド不織布は、前記フラット面が前記凹凸面よりも繊維切れが生じ難い」と規定するが、上記2箇所の「前記スパンボンド不織布」のそれぞれが、「前記最外層」に配置される「スパンボンド不織布」を指しているのか否か明らかでない。

イ 上記アの規定において、「フラット面と凹凸面とを表裏に有し」が、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備えていることを意味しているのか、表面及び裏面のそれぞれがフラット面と凹凸面とを備えていることを意味しているのか明らかでない。

ウ 上記アの規定において、当該「フラット面」及び「凹凸面」が、どの程度(どのような工程により得られる程度)の凹凸度合いを意味しているのか明らかでない。

エ 本件訂正前の請求項3に係る発明は「スパンボンド不織布はフラット面と凹凸面とを表裏に有し、該フラット面が前記フィルタ部材の内周側に向けて配置されている」と規定するが、上記イ及びウと同様の点が明らかでない。

オ 以上のとおり、本件訂正前の請求項1に係る発明及びこれを直接又は間接的に引用する請求項2、3に係る発明は明確であるとはいえない。

2 取消理由において採用しなかった異議申立人による特許異議の申立理由の概要
(1)特許法第29条第2号所定の規定違反(進歩性欠如)
ア 本件訂正前の請求項1、2に係る発明は、下記甲第1号証に記載された発明及び下記甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「申立理由1-1」という。)。
イ 本件訂正前の請求項1?3に係る発明は、下記甲第2号証に記載された発明、下記甲第3号証に記載された事項及び周知技術(甲第4号証及び甲第5号証に記載の技術)に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「申立理由1-2」という。)。

甲第1号証:特開2008-229593号公報
甲第2号証:米国特許第5716522号明細書
甲第3号証:特開2003-126619号公報
甲第4号証:特開2010-58328号公報
甲第5号証:特開2003-220309号公報
(以下、「甲第1号証」を「甲1」などという。)

(2)特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)
本件発明1の直接的な作用効果又は発明が達成するべき課題は、「他部材(例えば、燃料タンク(12)の開口部の口縁部等)との接触によるフラット面(92)の繊維切れを抑制し、その繊維切れによる毛羽立ちや傷付き等の損傷を抑制することができる」ことと解される。しかるに、この課題を達成する手段として請求項1に記載されているのは、「前記スパンボンド不織布は、前記フラット面が前記凹凸面よりも繊維切れが生じ難い」ということだけである。すなわち、発明の課題を請求項1に記載しているにすぎず、具体的な解決手段が不明である。
よって、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2、3は明確でない(以下、「申立理由2」という。)。

第4 当審の判断

1 取消理由(特許法第36条第6項第2号(明確性要件違反))について
(1)第3の1(1)アの点について
本件訂正により、訂正前の請求項1?3は、第2のとおり訂正された。
そして、本件訂正により、本件訂正前の請求項1の「前記スパンボンド不織布はフラット面と凹凸面とを表裏に有し、該フラット面が前記フィルタ部材の外周側に向けて配置されており、
前記スパンボンド不織布は、前記フラット面が前記凹凸面よりも繊維切れが生じ難い」は、「前記最外層に配置されるスパンボンド不織布は、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備えており、
前記一方の面は、前記フィルタ部材の外周側に向けて配置されており、
前記スパンボンド不織布は、前記フラット面が前記凹凸面よりも繊維切れが生じ難い」と訂正されることにより、まず、訂正後の上記記載の最初の「スパンボンド不織布」は、最外層に配置されるスパンボンド不織布であることが直接特定されている。そして、2箇所目の「スパンボンド不織布」は、「前記フラット面」及び「前記凹凸面」を有するものであるが、これら「前記フラット面」及び「前記凹凸面」とは、「前記最外層に配置されるスパンボンド不織布」が備えるものであるから、2箇所目の「スパンボンド不織布」も、最外層に配置されるスパンボンド不織布であることが明らかである。
そうすると、本件訂正後の上記の記載で、「スパンボンド不織布」のそれぞれが、「前記最外層」に配置される「スパンボンド不織布」を指していることを明確に理解することができる。

(2)第3の1(1)イの点について
本件訂正により、本件訂正前の請求項1の「前記スパンボンド不織布はフラット面と凹凸面とを表裏に有し」は、「前記最外層に配置されるスパンボンド不織布は、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備えており」と訂正されることにより、最外層に配置されるスパンボンド不織布は、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面を備えるものであることが明らかである。
そうすると、本件訂正後の上記の記載で、最外層のスパンボンド不織布が、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備えているものであることを明確に理解することができる。

(3)第3の1(1)ウの点について
本件訂正により、本件訂正前の請求項1の記載は、「ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工したスパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布」と訂正されることにより、当該「フラット面」及び「凹凸面」が、例えば本件明細書の図21及び【0058】に記載されている、「ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工」して得られる形状を意味していることが明らかである。
そうすると、訂正後の上記の記載で、「フラット面」及び「凹凸面」が、どの程度(どのような工程により得られる程度)の凹凸度合いを意味しているのかを明確に理解することができる。

(4)第3の1(1)エの点について
本件訂正により、本件訂正前の請求項3の記載は、「前記最内層に配置されるスパンボンド不織布は、ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工したスパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布で、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備えており」と訂正されることにより、最内層に配置されるスパンボンド不織布は、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面を備えるものであることが明らかであり、また当該「フラット面」及び「凹凸面」が、例えば本件明細書の図21及び【0058】に記載されている、「ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工」して得られる形状を意味していることが明らかである。
そうすると、本件訂正後の上記の記載で、最内層のスパンボンド不織布が、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備えていること、及び、「フラット面」及び「凹凸面」が、どの程度(どのような工程により得られる程度)の凹凸度合いを意味しているのかを明確に理解することができる。

(5)以上のとおり、上記第3の1(1)ア?エの点で、不明確なところはなく、本件発明1?3は、明確であるということができるから、取消理由には理由がない。

2 申立理由1-1、1-2(特許法第29条第2項(進歩性欠如))について

(1)甲1?甲5に記載の事項
ア 甲1(特開2008-229593号公報)
(ア)「【0001】
本発明は、燃料ポンプの吸込み口に設けられるフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の燃料タンク内の燃料は、燃料ポンプによって、エンジンルームへ送出されるようになっているが、該燃料ポンプの吸込み口には燃料タンク内の燃料を濾過するフィルタ装置が設けられている。・・・
【0004】
また、複数枚の濾材を点溶着(いわゆるドット溶着)する技術もあるが(特許文献2)、溶着点が小さく、燃料ポンプの吸込み口の下では、燃料ポンプの吸引力によって全体或いは最内層の濾材が変形してしまうことがある。その場合には燃料ポンプの吸込力に負担を掛けてしまうことになり、燃料ポンプの耐久性に影響を及ぼしてしまう可能性がある。・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題を考慮して、ポンプの耐久性を従来よりも高くするフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、流体を吸い込むポンプの吸込み口に設けられ、樹脂繊維で形成されたフィルタで前記流体を濾過するフィルタ装置であって、前記フィルタを袋状として内部空間内を流体が流動可能なフィルタ部材と、前記フィルタ部材に形成され、前記内部空間と前記吸込み口とを連通させる吸引部と、前記吸引部と対向する前記フィルタを溶融させた溶融固化部と、を有することを特徴とする。
【0007】
ポンプの吸込み口と連通する吸引部と対向する位置は、ポンプによる吸引力が最も大きく、フィルタが吸引部側へ撓み、該吸引部への張り付き現象が発生する場合がある。このため、請求項1に記載の発明では、フィルタの吸引部と対面する位置に、該フィルタを溶融させた溶融固化部を設けている。
【0008】
該溶融固化部では流体が通過しないため、吸引部と対向する位置からポンプの吸込み口へ向かう直線の流れが無くなり、ポンプの吸込み口へは、吸引部回りから回り込んで、流体がポンプの吸込み口へ流れることとなる。
【0009】
これにより、吸引部と対面する位置における、ポンプの吸引力を低下させることができ、フィルタの変形を抑制することができる。したがって、吸引部への張り付き現象を抑えることができ、フィルタの圧力損失を低下させ、ポンプの耐久性を向上させることができる。」

(イ)「【0022】
まず、図1に示すように、車両などに備えられる燃料タンク10には、燃料ポンプ12が配設されており、該燃料ポンプ12によって、燃料タンク10内の燃料が吸引され、エンジンルーム(図示省略)へ送出される。ここで、燃料ポンプ12の吸込み口側には、フィルタ装置14が設けられており、このフィルタ装置14によって燃料タンク10内の燃料が濾過される。
【0023】
フィルタ装置14は、図2に示すように、平面視にて略長方形状を成し、二つ折りの状態で外縁部が溶着されて袋状とされたフィルタ16と、このフィルタ16の内部に設けられた樹脂製の骨部材18と、を含んで構成されている。なお、フィルタ16の形状は、燃料タンク10の形状、燃料ポンプ12の配置場所などによって変わる。
【0024】
フィルタ16は、図3(A)に示すように、複数の樹脂繊維16A、16B、16C、16D(ここでは樹脂繊維を4層構造とする)で構成されており、樹脂繊維16A、16B、16Cは、熱溶融可能な樹脂製の不織布で形成されている。樹脂繊維16A、16B、16Cは、それぞれ繊維径が異なっており、各樹脂繊維16A、16B、16Cで、燃料内に含まれた不純物をその粒径に合わせて効率よく除去することができる。
【0025】
また、一番外側に配置された樹脂繊維16Dは、樹脂繊維16A、16B、16Cよりも外形が大きく形成されており、ポリプロピレンなど熱溶着性の高い樹脂が用いられ、二つ折りにした状態で、互いに対面する樹脂繊維16D同士が確実に溶着されるようにしている。」

(ウ)「【0034】
また、フィルタ16は、図3(A)に示すように、複数の樹脂繊維16A、16B、16C、16Dで構成されているため、所定間隔おきに点溶着部46(図3(B)参照)を設け、樹脂繊維16A、16B、16C、16D同士が一体となるようにしている。これにより、フィルタ16の内側に位置する樹脂繊維16A等が空間44内で撓まないようにしている。・・・
【0036】
ここで、点溶着部46や溶融固化部48の形成は、略長方形状のフィルタ16を二つ折りにする前に行われるが、例えば、超音波溶着機(図示省略)によってフィルタ16を溶着させる方法がある。
【0037】
また、超音波溶着以外にも、この溶融固化部48及び点溶着部46は、ヒータによる熱溶着で形成しても良い。ヒータからの熱が伝導される熱板(図示省略)をフィルタ16に当接させることで、溶融固化部48が形成されるが、この熱板には、溶融固化部48を形成するためのY字状の突設部が設けられることとなる。」

(エ)「【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


イ 甲2(米国特許第5716522号明細書)
訳文は、異議申立人が甲2の訳文として提出したものである。
(ア)「The invention relates generally to in-tank fuel filters and more specifically to an in-tank fuel filter having layers of non-woven material comprising both spun bonded and melt blown filtration media.」(第1欄第5?8行)
本発明は、一般に、タンク内燃料フィルター、より具体的には、スパンボンド濾過媒体およびメルトブロー濾過媒体の両方を含む不織布材料の層を有するタンク内燃料フィルターに関する。

(イ)「Referring now to FIGS.1 and 2, the electric fuel pump module 14 a1so includes a depending, preferably hollow cylindrical suction or inlet fitting 26 which defines an inlet opening in fluid communication with the suction side of the fuel pump 20. The cylindrical inlet fitting 26 receives and retains an in-tank fuel filter assembly 30 according to the present invention.」(第2欄第66行?第3襴第5行)
ここで、図1および図2を参照する。図1および2に示されるように、電気燃料ポンプモジュール14はまた、燃料ポンプ20の吸引側と流体連絡する入口開口部を規定する、従属する、好ましくは中空の円筒形吸引または入口継手26を含む。円筒形入口継手26は、本発明によるタンク内燃料フィルタアセンブリ30を受け取り、保持する。

(ウ)「The in-tank fuel filter assembly 30 includes a body 32 comprising a preferably folded swatch of a multi-layered or composite filtration media having a single elongate fold line 34 and a partial peripheral seam or seal 36. The body 32 is preferably rectangular and may be formed of a single, folded swatch of composite filtration media and three of the edges may include an edge or peripheral seam or seal 36. Alternatively, the body 32 may define a triangular, other polygonal shape (e.g., square, pentagonal or hexagonal) or irregular shape with at least one straight edge, in which case one edge is folded and the N-1 remaining edges, where N is the number of edges, or non-folded regions are closed by a seam or seal 36. As a further alternative, the body 32 may comprise a pair of equal size filtration media swatches of any convenient or desired regular shape such as round or oval or irregular shape which may be sealed together entirely around their aligned, adjacent peripheries. In any case, the body 32 forms a closed interior space and includes a first or upper composite panel 38A and a second or lower composite panel 38B.」(第3欄第6?25行)
タンク内燃料フィルターアセンブリ30は、単一の細長い折り目34および部分的な周辺シームまたはシール36を有する多層または複合濾過媒体の好ましくは折り畳まれた見本を含む本体32を含む。本体32は、好ましくは長方形であり得、複合濾過媒体の単一の折り畳まれた見本で形成され、縁の3つは、縁または周辺の継ぎ目またはシール36を含み得る。あるいは、本体32は、三角形、他の多角形(例えば、正方形、五角形または六方形)、または、少なくとも1つの直線エッジを持つ不規則な形状を規定し得る。この場合、1つのエッジが折りたたまれ、残りのN-1個のエッジ(Nはエッジの数)、または折りたたまれていない領域が継ぎ目またはシール36によって閉じられる。あるいは、本体32は、それらの整列した隣接する周辺の周りに完全に一緒に密封され得る、円形または楕円形または不規則な形状などの任意の便利なまたは所望の規則的な形状の一対の等しいサイズの濾過媒体見本を含み得る。いずれの場合も、本体32は、閉じた内部空間を形成し、第1または上部複合パネル38Aおよび第2または下部複合パネル38Bを含む。

(エ)「Referring now to FIG. 3, a cross sectional view of the upper panel 38A or lower panel 38B of the filter assembly 30 is illustrated. For purposes of discussion and clarity it will be assumed to be an upper panel 38A, although it should be understood that the panels 38A and 38B are the same, are interchangeable and that the description of one applies equally to the other. The upper composite panel 38A preferably includes at least three distinct layers of non-woven material. The outer, that is, upper and lower exterior regions or layers 50 are preferably spun bonded nylon filaments but may be spun bonded polyester, acetal, Teflon or other stable, fuel tolerant material. Teflon is a registered trademark of the E. I. DuPont de Nemours Co. As utilized herein, the terms spun bonded filaments and spun bonded filtration media refer to that class of non-woven materials wherein the filaments are cooled by the application of cold air immediately upon forming to stop attenuation thereof.」(第3欄第55行?第4欄第4行)
ここで図3を参照する。図3を参照すると、フィルタアセンブリ30の上部パネル38Aまたは下部パネル38Bの断面図が示されている。議論および明確化のために、上部パネル38Aであると想定されるが、パネル38Aおよび38Bは同じであり、交換可能であり、一方の説明が他方に等しく適用されることを理解されたい。上部複合パネル38Aは、好ましくは、不織布材料の少なくとも3つの別個の層を含む。外側、すなわち上部および下部の外部領域または層50は、好ましくは紡糸結合ナイロンフィラメントであるが、紡糸結合ポリエステル、アセタール、テフロンまたは他の安定した耐燃料性材料であり得る。テフロンは、EI DuPont de Nemours Co. の登録商標です。本明細書で利用される場合、紡糸結合フィラメントおよび紡糸結合濾過媒体という用語は、フィラメントがその減衰を停止するために形成直後に冷気の適用によって冷却されるそのクラスの不織布材料を指す。

(オ)「Disposed within the exterior two layers 50 of spun bonded material is a center or intermediate layer 52 of finer, melt blown filaments. As utilized herein, the terms melt blown filaments and melt blown filtration media refer to that class of non-woven materials wherein the filaments are maintained at an elevated temperature by the application of hot air immediately upon forming to encourage attenuation thereof. Typically, melt blown filaments are on the order of ten times smaller than spun bonded filaments and thus are nominally 10 microns in diameter and may readily be in the range of 5 to 20 microns. The melt blown filaments may also be nylon, polyester, acetal, Teflon or other stable, fuel impervious material. The center or intermediate layer 52 of melt blown filaments has a nominal uncompressed thickness of 1 millimeter but may vary from less than 0.5 millimeters to 2 millimeters or thicker.」(第4欄第12?27行)
スパンボンド材料の外側の2つの層50内に配置されているのは、より微細なメルトブローフィラメントの中央または中間層52である。本明細書で利用される場合、メルトブローフィラメントおよびメルトブロー濾過媒体という用語は、フィラメントがその減衰を促進するために形成直後に熱風を適用することによって高温に維持されるそのクラスの不織布材料を指す。通常、メルトプローフィラメントは、スパンボンドフィラメントの約10分の1であるため、公称直径は10ミクロンであり、5?20ミクロンの範囲になる。メルトブローフィラメントは、ナイロン、ポリエステル、アセタール、テフロン、またはその他の安定した燃料不浸透性の材料でもよい。メルトブローフィラメントの中心層または中間層52は、公称非圧縮厚さが1ミリメートルであるが、0.5ミリメートル未満から2ミリメートル以上まで変化し得る。

(カ)「The primary benefit of this structure and filtration mode is improved service life in that only particulate matter above a certain size is filtered out by the first filtration material, for example, the exterior layers 50 of spun bonded material, which allow the passage of smaller particulate matter which are then trapped by the smaller pore size of the intermediate layer 52 of melt blown material. Such staged or depth media filtration has the effect of increasing the surface area of the filter as a given region and thus surface area functions to filter only a specific band or range of particulate sizes. This greatly increases the capacity of the fuel filter 30 to retain particulate matter. The exterior layers 50 of spun bonded material also provide excellent abrasion resistance which is necessary in applications where the filter assembly 30 is disposed in contact with a surface, for example, the bottom surface of the fuel tank 10. Moreover, the two exterior layers 50 of spun bonded material fully encapsulate and contain the finer filaments of the intermediate layer 52 of melt blown material thereby preventing migration of the melt blown filaments into the fuel and fuel system of the vehicle.」(第4欄第44?63行)
この構造および濾過モードの主な利点は、特定のサイズを超える粒子状物質のみが第1の濾過材料、例えば、より小さな粒子の通過を可能にする紡糸結合材料の外層50によって濾過されるという耐用年数の改善である。次に、メルトブロー材料の中間層52のより小さな細孔サイズによって補足される物質。そのような段階的または深さ媒体濾過は、所与の領域としてフィルターの表面積を増加させる効果を有し、したがって、表面積は、特定のバンドまたは粒子サイズの範囲のみを濾過するように機能する。これは、粒子状物質を保持するための燃料フィルター30の容量を大幅に増加させる。スパンボンド材料の外層50はまた、フィルタアセンブリ30が表面、例えば燃料タンク10の底面と接触して配置される用途において必要とされる優れた耐摩耗性を提供する。さらに、2つの外層50スパンボンド材料は、メルトブロー材料の中間層52のより細いフィラメントを完全にカプセル化して含み、それにより、メルトブローフィラメントの車両の燃料および燃料システムへの移動を防止する。

(キ)「【図1】

【図2】


【図3】

ウ 甲3(特開2003-126619号公報)
(ア)「【請求項1】少なくとも対向する2面を形成する濾材と、
該濾材によって囲まれ、液体が溜まる内部空間と、
該内部空間と外部とを連通させ前記内部空間の液体を外部へ送り出すための連結部材とからなる燃料用濾過器において、
前記濾材は、原料繊維と接着ファイバーからなる不織布であり、該接着ファイバー部分を溶融することにより、繊維間を接着してなることを特徴とする燃料用濾過器。」

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、燃料用濾過器の改良構造に関し、特に自動車等の燃料タンク内に設置されるインタンク式燃料用濾過器の改良構造に関する。」

(ウ)「【0008】ところがインタンク式燃料用濾過器2は、前記したように燃料タンク1内の燃料が低位となっても十分に燃料を吸い上げることができるように底壁9に当接される形態で取り付けられるところ、燃料タンク1は、走行中常時振動を受けており、燃料用濾過器2の底面は燃料タンク1の底壁9と擦れ合っている。そのため、この燃料用濾過器2が不織布のみにより成形されるものにおいては、その底面が摩耗し、最悪時には破断することもあった。」

(エ)「【0018】請求項1に係る発明においては、少なくとも対向する2面を形成する濾材と、該濾材によって囲まれ、液体が溜まる内部空間と、該内部空間と外部とを連通させ前記内部空間の液体を外部へ送り出すための連結部材とからなる燃料用濾過器において、前記濾材は、原料繊維と接着ファイバーからなる不織布であり、該接着ファイバー部分を溶融することにより、繊維間を接着してなる構成。
【0019】そして、このような構成により、燃料用濾過器を不織布で作ることができるため、軽量化でき、また、接着ファイバー部分を溶融し、繊維間を接着しているため、濾材の表面は勿論のこと、切断面においても図13で示す繊維毛5bの毛羽立ちがなくなるため、その繊維毛5bの剥離がなくなる。更に、原料繊維外周上にコーティングされた接着ファイバーが残った状態で存することになるため、不織布全体の強度が増し、不織布のみで燃料用濾過器を形成できる。その結果、従来のカバー層5c或いはスクリーン層5dを廃止することができる。」

(オ)「【0029】本願発明は、図1に示す繊維30を用い、これら繊維30から不織布を作製し、この不織布を加熱成形することにより濾材5を作製し、この濾材5を用いて燃料用濾過器2を形成してなるものである。なお、すべての繊維30に接着ファイバー32をコーティングする必要はなく、その一部の繊維30はそのままのものを用いても良い。
【0030】濾材5は、次のように加熱成形する。即ち、例えば成形型に配置した原料繊維と接着ファイバーとの混合物に対し、高温槽等の加熱雰囲気においてプレス加工を行うか、または、あらかじめ加熱した成形型に入れてプレス加工を行う。この方法によれば、容易に原料繊維と接着ファイバーとの混合物を所望の形状の濾材に成形することができる。加熱雰囲気または加熱した成形型の温度は、少なくとも接着ファイバーの接着のための成分が溶融し、原料繊維と接着される程度の温度、例えば前記したように40?240℃程度の温度である。
【0031】この場合、接着ファイバーは、融点温度並びに加熱時間によって加熱成形後の繊維密度が異なり、繊維密度を低く(繊維間の隙間は多く、濾過機能は充分有するが、強度は劣る。)したければその融点温度が低いものを使用するとともに、加熱時間を短くし、繊維密度を高く(繊維間の隙間が少なくなり、濾過機能は低減するが、強度は増す。)したければその融点温度が高いものを使用するとともに、加熱時間を長めにとることにより、その繊維の強度を高め、より樹脂化することができる。しかしながら、繊維密度は、融点並びに加熱時間の組合せにより可変可能である。
【0032】本発明の濾材5は、本来の機能である濾過機能を充分維持できるとともに、例え燃料タンク1の底壁9と擦れあっても摩耗しない適当な強度になるように加熱成形が行われる。」

エ 甲4(特開2010-58328号公報)
(ア)「【請求項1】
2層以上からなる積層構造体であって、少なくとも、直径10nm?500nmの超極細繊維の繊維構造体からなる超極細繊維層と、一部あるいは全部が熱可塑性繊維からなる不織布または熱可塑性樹脂が付着した不織布からなる不織布層とからなり、かつ、該積層構造体の少なくとの一方の面において、線状、波状、または、ジグザグ状の熱圧着部が形成されており、該熱圧着部が複数並列に並んで配されていることを特徴とする積層構造体。・・・
【請求項6】
熱圧着部が、一対のエンボスロール、または、エンボスロールとフラットロールによる熱圧着によって成形されている請求項1記載の積層構造体。」

(イ)「【0001】
本発明は、部分的に熱圧着部が形成された、超極細繊維層を含む2層以上の積層構造体およびそれからなるフィルターろ材に関する。」

(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、捕集効率が良好あり圧力損失が少なく、プリーツ加工性に優れ、プリーツ部で毛羽が発生せず、層間の剥離が起きにくい積層構造体およびそれからなるフィルターろ材を提供することにある。・・・
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層構造体は、超極細繊維層と一部または全部が熱可塑性繊維からなるあるいは熱可塑性樹脂が付着した不織布層からなり、プリーツ加工を施す部分に線状、波状、ジグザグ状の熱圧着部を有しているため、容易に該加工を行うことができ、該加工やその後の使用においてプリーツ部で毛羽が発生しない。また、上記積層構造体では、超極細繊維層と不織布層が熱圧着により接合一体化されており層間の剥離が起きにくく、超極細繊維層の存在により捕集効率が良好であり、かつプリーツ部以外には熱圧着部が存在しないため圧力損失が極めて少ない。」

(エ)「【0022】
不織布は、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法、トウ開繊法、抄紙法、カーディング法、エアレイド法、フィラメント直交法などにより製造できる。これらの不織布はそのまま用いても良いが、制電加工、撥水加工、親水加工などが目的に応じて施されていてもよい。」

(オ)「【0043】 次にこの積層体を、金属製で回転方向と直交する方向に線状の彫刻がなされた加熱ローラ(上ローラ)と平滑な耐熱性樹脂ローラ(下ローラ)を用いて、エンボスの熱圧着部の幅が60mm、積層体における熱圧着部の面積比率が10%となるエンボス加工を上ローラの温度を160℃、上下ローラ間の線圧0.5t/30cm、加圧時の上下ローラ間の間隔を0.05mmとして行い、熱圧着部を有する超極細繊維層ならびに不織布層からなる2層繊維構造体を得た。
得られた2層繊維構造体の剛軟度を測定し、レシプロ式プリーツ加工機にて熱圧着部の間隔でプリーツ加工した。
得られた2層繊維構造体はプリーツ加工性に優れ、層間の剥離も認められず、超極細繊維の毛羽立ちも観察されなかった。結果を表1に示す。」

(カ)「【図4】



オ 甲5(特開2003-220309号公報)
(ア)「【請求項1】 不織布からなり、
熱板をプレスすることによって凹凸が形成され、凹の部分が凸の部分よりも密であることを特徴とする濾過材。」

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関に使用されるオイル、燃料、エアー、あるいは自動変速機に使用されるオートマチックトランスミッションフルード等の流体を濾過する濾過材に関する。」

(ウ)「【0015】次に、下面に凹凸を形成した熱板2を用意し、不織布1の上面に熱板2をプレスする。このとき熱板2の凸部2aが不織布を押さえる一方、凹部2bが不織布を押さえないようにする。これにより、不織布の上面に凸の部分1aとこの凸の部分1aよりも密な凹の部分1bとが形成される。
【0016】濾過材4を使用する際、密度が小さい凸の部分1aで金属摩耗粉等の大きな粒子の捕捉が行われ、密度が大きい凹の部分1bで微細粒子の捕捉が行われる。ここで凸の部分1aでは、大きな粒子を捕捉することができるが、微細粒子を捕捉することができないので、濾過効率が悪くなる。一方凹の部分1bでは、微粒子を捕捉できるので濾過効率を高くすることができるが、流れの抵抗が大きくなる。濾過材の性能は、主にこの濾過の効率と流れの抵抗の大きさとで決められる。本実施形態の濾過材4では、熱板2の凸部2aが不織布1を潰す量、あるいは熱板2の平面的な凹凸のパターン形状等によって濾過材4の性能が決定される。」

(エ)「【0026】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、濾過材が不織布からなり、熱板をプレスして凹凸が形成され、凹の部分が凸の部分よりも密になる。凹凸のパターンまたは凸の部分を潰した量を調整することによって、濾過材の濾過効率、抵抗等の性能を容易に調整することができる。」

(オ)「【図1】



(2)申立理由1-1(甲1を主引用例とする理由)について
ア 甲1に記載された発明
上記(1)ア(ア)の【0001】の記載によれば、甲1には、燃料ポンプの吸い込み口に設けられる「フィルタ装置」が記載され、同(イ)の【0023】の記載によれば、フィルタ装置14は、袋状とされたフィルタ16を備えること、同(エ)の【図2】及び【図4】の記載からは、フィルタ装置14について、袋状に形成されたフィルタ16内の空間44に吸引口22が連通している構造が理解できる。
同(イ)の【0024】の記載によれば、フィルタ16は、熱溶融可能な樹脂製の不織布で形成される樹脂繊維16A、16B、16Cと、樹脂繊維16Dの4層構造で構成されること、同(イ)の【0025】の記載によれば、樹脂繊維16Dは一番外側に配置されること、同(ウ)の【0034】の記載によれば、フィルタ16には、所定間隔おきに点溶着部46を設けることを、それぞれ理解することができ、同(エ)の【図3】(B)からは、点溶着部46の構造が、樹脂繊維16A側が凹んでおり、樹脂繊維16Dのフィルタ16の外周側の面がフラットである構造が理解できる。
これらフィルタ装置14に関する記載事項をまとめると、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

「袋状とされたフィルタ16を備え、
袋状に形成されたフィルタ16内の空間44に吸引口22が連通しているフィルタ装置14であって、
フィルタ16は、熱溶融可能な樹脂製の不織布で形成される樹脂繊維16A、16B、16Cと、樹脂繊維16Dの4層構造で構成され、
樹脂繊維16Dは一番外側に配置され、
フィルタ16は、所定間隔おきに、樹脂繊維16A側が凹んでおり、樹脂繊維16Dのフィルタ16の外周側の面がフラットである点溶着部46が設けられている、
フィルタ装置14。」

イ 対比
(ア)本件発明1と甲1発明を対比する。
a 甲1発明の「フィルタ16」、「フィルタ装置14」及び「吸引口22」は、それぞれ本件発明1の「フィルタ部材」、「燃料用フィルタ」及び「燃料吸入口」に相当する。
b 甲1発明の「袋状とされたフィルタ16を備え」は、「フィルタ」が「濾過材」であることは明らかであるから、本件発明1の「濾過材により袋状に形成されたフィルタ部材を備えており」に相当する。
c 甲1発明の「袋状に形成されたフィルタ16内の空間44に吸引口22が連通しているフィルタ装置14であって」は、「袋状に形成されたフィルタ16内の空間44」が、「フィルタ部材の内部空間」に相当し、また「吸引口22」が、上記(1)ア(エ)の【図1】及び【図4】の記載によれば、燃料タンク10内に設けられるものであるから、本件発明1の「前記フィルタ部材の内部空間に燃料タンク内の燃料吸入口が連通される燃料用フィルタであって」に相当する。
d 甲1発明の「フィルタ16は、熱溶融可能な樹脂製の不織布で形成される樹脂繊維16A、16B、16Cと樹脂繊維16Dの4層構造で構成され」は、濾過材であるフィルタが不織布で形成される樹脂繊維16A、16B、16Cの少なくとも3層の積層構造を有するものであるから、本件発明1の「前記濾過材は、複数枚の不織布を積層してなる多層構造を有しており」に相当する。
e 甲1発明の「樹脂繊維16D」は、本件発明1の「スパンボンド不織布」と、「繊維布」の点で共通している。

(イ)そうすると、本件発明1と甲1発明は、
「濾過材により袋状に形成されたフィルタ部材を備えており、
前記フィルタ部材の内部空間に燃料タンク内の燃料吸入口が連通される燃料用フィルタであって、
前記濾過材は、複数枚の不織布を積層してなる多層構造を有しており、
前記濾過材の最外層には、繊維布が配置されている、燃料用フィルタ。」
の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。

<相違点>
繊維布について、本件発明1では、ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工したスパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布であり、前記スパンボンド不織布は、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備え、前記一方の面は、前記フィルタ部材の外周側に向けて配置されており、前記フラット面が前記凹凸面よりも繊維切れが生じ難いものであるのに対し、甲1発明では、フィルタ部材(フィルタ16)は、樹脂繊維16A側に凹部を有するものの、樹脂繊維16Dが、本件発明1のようなスパンボンド不織布であるのか明らかでない点。

ウ 相違点についての判断
本件発明1において、上記相違点に係るスパンボンド不織布を、濾過材の最外層に配置することには、次のような技術的な意義があると認められる。すなわち、本件明細書【0033】の「両スパンボンド不織布58a,58dは、両メルトブロウン不織布58b,58cと比べて、脱落繊維が極めて少なく、耐摩耗性に優れ、強度の高い不織布である。」の記載によれば、濾過材からの脱落繊維を極めて少なくし、濾過材の最外層を耐摩耗性に優れ、強度の高いものとすることができ、加えて、同【0063】の記載によれば、フラット面と凹凸面とを備えることにより、表裏両面がフラット面であるスパンボンド不織布と比べると、強度を高く、厚さのばらつきを小さくでき、また、表裏両面が凹凸面(エンボス面)であるスパンボンド不織布と比べると、コストが低く、コスト面を考慮しつつ所定の強度を確保することができ、さらに、同【0061】の記載によれば、フラット面をフィルタ部材の外表面を形成するように配置することによって、燃料タンク内への燃料用フィルタの挿入時における他部材(例えば、燃料タンクの開口部の口縁部)との接触によるフィルタ部材の外表面の毛羽立ちや傷付き等の損傷を抑制することができ、また、凹凸面を、そのスパンボンド不織布の内層側にある不織布に面するように配置することによって、最外層のスパンボンド不織布の凹凸面の毛羽立ちを抑制することができる、という技術的な意義があることを理解することができる。そして、これらの技術的な意義によって、本件発明1は、従来の濾過材の最外層に配置されたメッシュを省略し、コストを低減するという発明の課題(同【0004】)を解決することができるといえる。
一方、甲1発明は、上記(1)ア(ア)の記載によれば、燃料ポンプの吸込み口に設けられるフィルタ装置において(【0001】)、燃料ポンプの吸込み口の下では、燃料ポンプの吸引力によって全体或いは最内層の濾材が変形してしまうことがあり、その場合には燃料ポンプの吸込力に負担を掛けてしまうことになり、燃料ポンプの耐久性に影響を及ぼしてしまう可能性があった(【0004】)のに対し、甲1発明は、フィルタを袋状としたフィルタ部材に形成された吸引部に対向する位置に、フィルタを溶融させた溶融固化部を設けたものであり(【0006】)、これにより、吸引部と対向する位置からポンプの吸込み口へ向かう直線の流れが無くなり、ポンプの吸込み口へは、吸引部回りから回り込んで、流体がポンプの吸込み口へ流れることとなり(【0008】)、吸引部へのフィルタの張り付き現象を抑えることができ、フィルタの圧力損失を低下させ、ポンプの耐久性を向上させることができるというものである(【0009】)。
そうすると、甲1発明は、フィルタ部材の最外層に何ら着目するものではなく、ましてや、燃料タンク内への燃料用フィルタの挿入時における他部材(例えば、燃料タンクの開口部の口縁部)との接触によるフィルタ部材の外表面の毛羽立ちや傷付き等の損傷を抑制することを認識するものではないから、このような甲1発明には、フィルタ部材の最外層に配置される樹脂繊維16Dを、わざわざ本件発明1のスパンボンド不織布に変更することを動機付けるような事情は存しないといえる。
また、甲2には、上記(1)イ(オ)のとおり、タンク内燃料フィルターについて、フィルターが複数枚の不織布からなり、最外層には、スパンボンド不織布を配置することが記載され、さらに、上記(1)イ(カ)には、「スパンボンド材料の外層50はまた、フィルタアセンブリ30が表面、例えば燃料タンク10の底面と接触して配置される用途において必要とされる優れた耐摩耗性を提供する」ものであることが記載されていることから、フィルタ部材の最外層にスパンボンド不織布を配置する技術自体が既に知られていたことを認定し得たとしても、上述のように甲1発明は、フィルタ部材の最外層に着目するものではないから、甲1発明に、この技術を適用する動機付けはない。さらに、甲2には、スパンボンド不織布について、ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工したスパンボンド法により製造され、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備え、前記一方の面は、前記フィルターの外周側に向けて配置され、前記フラット面が前記凹凸面よりも繊維切れが生じ難いものであることについての記載、さらにはそれに関する示唆もないから、仮に、甲1発明に、甲2に記載された上記技術を適用することができたとしても、上記相違点に係る本件発明1の事項にまでは至らない。
そして、上記相違点に係る特定の表面性状を具備するスパンボンド不織布を、濾過材の最外層に配置することにより、本件発明1は、上述の技術的な意義に対応する効果を奏するものであり、これらの効果は、甲1発明、甲1に記載の事項及び甲2に記載の事項からは予測することはできない。
よって、上記相違点に係る本件発明1の事項は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。

エ 小括
以上のとおり、上記相違点に係る本件発明1の事項は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明1は、甲1発明、甲1に記載の事項及び甲2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものであるか、または、本件発明1にさらに他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2は、甲1発明、甲1に記載の事項及び甲2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

カ 申立理由1-1に関するまとめ
以上のとおり、申立理由1-1には理由がない。

(3)申立理由1-2(甲2を主引用例とする理由)について
ア 甲2に記載された発明
甲2には、上記(1)イ(キ)の【図1】?【図3】に示される構造を有するタンク内燃料フィルターの発明が記載されている(以下、「甲2発明」という。)。

イ 対比
(ア)本件発明1と甲2発明を対比する。
a 上記(1)イ(ウ)の特に、「本体32は、好ましくは長方形であり得、複合濾過媒体の単一の折り畳まれた見本で形成され、縁の3つは、縁または周辺の継ぎ目またはシール36を含み得る。」、「本体32は、閉じた内部空間を形成し、第1または上部複合パネル38Aおよび第2または下部複合パネル38Bを含む。」等の記載及び同(キ)の【図1】、【図2】の記載によれば、本件発明1と同様に、甲2発明のタンク内燃料フィルターは、「濾過材により袋状に形成されたフィルタ部材を備え」るものであることが理解できる。
b 同(イ)の記載及び同(キ)の【図1】、【図2】の記載によれば、甲2発明のタンク内燃料フィルターは、タンク内の燃料をタンク内燃料フィルター内を介して吸引する燃料ポンプ20に接続されるものであるから、本件発明1と同様に、「フィルタ部材の内部空間に燃料タンク内の燃料吸入口が連通される燃料用フィルタ」であることが理解できる。
c 同(エ)の記載及び同(キ)の【図2】、【図3】の記載によれば、甲2発明のタンク内燃料フィルターの濾過媒体である上部パネル38A(下部パネル38B)は、不織布材料の少なくとも3つの別個の層を含むこと、同(オ)の記載及び同(キ)の【図3】の記載によれば、上部パネル38Aの不織布材料の少なくとも3つの別個の層の内、外側の2つの層50がスパンボンド材料であることが理解できるから、甲2発明のタンク内燃料フィルターは、本件発明1と同様に、「濾過材は、複数枚の不織布を積層してなる多層構造を有しており、前記濾過材の最外層には、スパンボンド不織布が配置されて」いるものであることが理解できる。

(イ)そうすると、本件発明1と甲2発明は、
「濾過材により袋状に形成されたフィルタ部材を備えており、
前記フィルタ部材の内部空間に燃料タンク内の燃料吸入口が連通される燃料用フィルタであって、
前記濾過材は、複数枚の不織布を積層してなる多層構造を有しており、前記濾過材の最外層には、スパンボンド不織布が配置されている、燃料用フィルタ。」
の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。

<相違点>
スパンボンド繊維布について、本件発明1では、ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工したスパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布であり、前記スパンボンド不織布は、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備え、前記一方の面は、前記フィルタ部材の外周側に向けて配置されており、前記フラット面が前記凹凸面よりも繊維切れが生じ難いものであるのに対し、甲2発明では、最外層に配置されるスパンボンド不織布において、本件発明1のようなスパンボンド不織布であるのか明らかでない点。

ウ 相違点についての判断
上記(1)イ(カ)の「スパンボンド材料の外層50はまた、フィルタアセンブリ30が表面、例えば燃料タンク10の底面と接触して配置される用途において必要とされる優れた耐摩耗性を提供する。」の記載によれば、甲2発明においては、タンク内燃料フィルターの最外層に配置されるスパンボンド不織布の、例えば燃料タンク10の底面と接触する外周側の面については、耐摩耗性を高めるなどの認識がなされているといえるものの、当該スパンボンド不織布の反対側の面に着目する記載はないから、甲2には、タンク内燃料フィルターの最外層に配置されるスパンボンド不織布を、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備え、前記一方の面は、前記フィルターの外周側に向けて配置される(すなわち、前記他方の面は、中間層側に向けて配置される)スパンボンド不織布とする動機付けが存在しない。
そして、甲3には、「ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工したスパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布であり、前記スパンボンド不織布は、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備え」たスパンボンド不織布は、記載されていない。また、甲4に記載の事項は、上記(1)エ(ア)?(ウ)、(オ)の記載のように、2層以上の積層構造体からなるフィルターろ材全体をエンボスロールとフラットロールで熱圧着することにより、同(カ)に記載される「平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備え」た形状とするものであり、複数枚の不織布からからなる濾過材を構成する一枚の不織布を、「平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備え」た形状としているものではないから、甲2発明の複数枚の不織布からなるフィルターを構成する最外層に配置される一枚のスパンボンド不織布を変更しようとする際に考慮の対象となるような事項とはならないし、そもそも甲2発明に、このような変更の動機付けがないことは上述のとおりである。
また、甲5に記載の事項も、上記(1)オ(ア)、(ウ)、(エ)、(オ)の【図1】の記載のように、濾過材全体を下面に凹凸を形成した熱板で押さえることにより、同(オ)の【図1】に記載される「平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備え」た形状とするものであり、複数枚の不織布からからなる濾過材を構成する一枚の不織布を、「平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備え」た形状としているものではないから、甲4に記載の事項と同様に、甲2発明の複数枚の不織布からなるフィルターを構成する最外層に配置される一枚のスパンボンド不織布を変更しようとする際に考慮の対象となるような事項とはならない。仮に、甲5に記載の事項が、例えば、複数枚の不織布からなる濾過材を構成する一枚の不織布の構造として、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備えることが知られていることを示しているとしても、甲5に記載の不織布のフラット面を、甲2発明のフィルターの外周側に、凹凸面を中間層側に配置する動機付けは、甲2、甲5に存在しない。
そして、上記相違点に係る特定の表面性状を具備するスパンボンド不織布を、濾過材の最外層に配置することにより、本件発明1は、上記(2)ウで述べた技術的な意義に対応する効果を奏するものであり、これらの効果は、甲2発明、甲2、3に記載の事項及び周知事項(甲4及び甲5に記載の事項)からは予測することはできない。
よって、上記相違点に係る本件発明1の事項は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。

エ 小括
以上のとおり、上記相違点に係る本件発明1の事項は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明1は、甲2発明、甲2、3に記載の事項及び周知事項(甲4及び甲5に記載の事項)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものであるか、または、本件発明1にさらに他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2、3は、甲2発明、甲2、3に記載の事項及び周知事項(甲4及び甲5に記載の事項)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

カ 申立理由1-2に関するまとめ
以上のとおり、申立理由1-2には理由がない。

3 申立理由2(特許法第36条第6項2号(明確性要件違反))について

請求項に係る発明が明確に把握されるためには、請求項に係る発明の範囲が明確であること、すなわち、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されていることが必要であり、この観点に照らして、発明が明確か否かを判断すべきである。
これに対し、異議申立人の主張は、「他部材(例えば、燃料タンク(12)の開口部の口縁部等)との接触によるフラット面(92)の繊維切れを抑制し、その繊維切れによる毛羽立ちや傷付き等の損傷を抑制することができる」という本件発明1の直接的な作用効果又は発明が達成するべき課題に対して、本件発明1において、具体的な解決手段が不明であるというものであるが、本件発明1の直接的な作用効果又は発明が達成するべき課題に対して、具体的な解決手段が本件発明1に特定されているか否かという点は、上記の明確性の判断の枠組みに沿うものではないから、異議申立人の主張では、本件発明1は、明確でないということにはならない。
なお、本件発明1の直接的な作用効果又は発明が達成するべき課題に対して、具体的な解決手段が記載されているか否かという観点で検討したとしても、本件発明1で特定される「前記濾過材の最外層には、ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工したスパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布が配置されており、
前記最外層に配置されるスパンボンド不織布は、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備えており、
前記一方の面は、前記フィルタ部材の外周側に向けて配置されており、
前記スパンボンド不織布は、前記フラット面が前記凹凸面よりも繊維切れが生じ難い」という特定によって、「他部材(例えば、燃料タンク(12)の開口部の口縁部等)との接触によるフラット面(92)の繊維切れを抑制し、その繊維切れによる毛羽立ちや傷付き等の損傷を抑制することができる」という本件発明1が達成するべき課題を解決することができる。
そうすると、異議申立人の申立理由2では、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2、3を、不明確であるとすることはできない。
したがって、申立理由2には理由がない。

第5 むすび

上記第4で検討したとおり、本件特許1?3は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとも、同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるともいうことはできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、上記取消理由及び申立理由では、本件特許1?3を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1?3を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過材により袋状に形成されたフィルタ部材を備えており、
前記フィルタ部材の内部空間に燃料タンク内の燃料吸入口が連通される燃料用フィルタであって、
前記濾過材は、複数枚の不織布を積層してなる多層構造を有しており、
前記濾過材の最外層には、ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工したスパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布が配置されており、
前記最外層に配置されるスパンボンド不織布は、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備えており、
前記一方の面は、前記フィルタ部材の外周側に向けて配置されており、
前記スパンボンド不織布は、前記フラット面が前記凹凸面よりも繊維切れが生じ難い、燃料用フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料用フィルタであって、
前記濾過材の最内層には、スパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布が配置されている、燃料用フィルタ。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料用フィルタであって、
前記フィルタ部材の内部空間に配置される内骨部材を備えており、
前記最内層に配置されるスパンボンド不織布は、ウエブを熱エンボスローラーと熱フラットロールとの間で熱圧着するとともにエンボス加工したスパンボンド法により製造されたスパンボンド不織布で、平面状のフラット面からなる一方の面と、多数の凹部又は多数の凸部を有する凹凸面からなる他方の面とを備えており、
前記一方の面は、前記フィルタ部材の内周側に向けて配置されている、燃料用フィルタ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-08-24 
出願番号 特願2018-228931(P2018-228931)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B01D)
P 1 651・ 121- YAA (B01D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 関根 崇  
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 原 賢一
後藤 政博
登録日 2020-05-08 
登録番号 特許第6701309号(P6701309)
権利者 愛三工業株式会社
発明の名称 燃料用フィルタ  
代理人 特許業務法人岡田国際特許事務所  
代理人 特許業務法人岡田国際特許事務所  
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