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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D06M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  D06M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  D06M
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  D06M
管理番号 1379768
異議申立番号 異議2020-700657  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-02 
確定日 2021-09-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6657571号発明「樹脂強化用炭素繊維束、並びに、樹脂強化用炭素繊維束、炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物及び成形体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6657571号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正することを認める。 特許第6657571号の請求項1ないし14に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6657571号の請求項1?14に係る特許についての出願は、平成27年3月5日(優先権主張 平成26年3月5日)の特許出願であって、令和2年2月10日に特許権の設定登録がされ、同年3月4日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和2年 9月 2日:特許異議申立人岡林茂(以下「申立人」という)による特許異議の申立て
同年12月 2日:取消理由の通知
(令和2年11月30日付け取消理由通知書)
令和3年 1月28日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 3月15日:申立人による意見書の提出

第2 訂正の請求についての判断
1 訂正の内容
令和3年1月28日提出の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6657571号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?14について訂正することを求める。」というものであり、その訂正(以下「本件訂正」という)の内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「かつ前記有機高分子物質(A)の付着量が樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1質量%以上0.5質量%以下である樹脂強化用炭素繊維束。」とあるのを、「かつ前記有機高分子物質(A)の付着量が樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1質量%以上0.5質量%以下であり、前記有機高分子物質(A)は主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体、主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド、主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル、主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミドからなる群のうちの少なくとも一つである物質を含む、樹脂強化用炭素繊維束。」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項3から14についても同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「かつ前記有機高分子物質(A)の付着量が樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1質量%以上0.5質量%以下である樹脂強化用炭素繊維束。」とあるのを、「かつ前記有機高分子物質(A)の付着量が樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1質量%以上0.5質量%以下であり、前記有機高分子物質(A)は主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体、主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド、主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル、主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミドからなる群のうちの少なくとも一つである物質を含む、樹脂強化用炭素繊維束。」に訂正する。
(請求項2の記載を引用する請求項3から14についても同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に「前記有機高分子物質(A)が側鎖に酸性基を含有する変性ポリオレフィン、及び(メタ)アクリル共重合体からなる群のうちの少なくとも一つである」とあるのを、「前記有機高分子物質(A)が無水マレイン酸変性プロピレン系共重合体、及びアクリル系重合体からなる群のうちの少なくとも一つであり、前記混合物が、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.2?1.0質量%付着している」に訂正する。
(請求項6の記載を引用する請求項8から14についても同様に訂正する)。

なお、本件訂正前の請求項3?14は、請求項1又は請求項2の記載を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1及び訂正事項2によって請求項1及び請求項2の記載が訂正されるのと連動して訂正されるものであり、また、本件訂正前の請求項8?14は、請求項6の記載を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項3によって請求項6の記載が訂正されるのと連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正前の請求項1?14に対応する本件訂正後の請求項1?14は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、有機高分子物質(A)を主鎖の構成の点から限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許明細書の段落【0017】には「有機高分子物質(A)の例としては、主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体;主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド;主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル:主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミド;主鎖がエーテル結合によって構成されている変性セルロースなどがあげられる」と記載されている。訂正事項1は、この記載の範囲内のものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1により発明のカテゴリー、対象、目的が変更されるものではないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2も、訂正事項1と同様に、有機高分子物質(A)を主鎖の構成の点から限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2も、訂正事項1と同様に、本件特許明細書の段落【0017】記載の範囲内のものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項2により発明のカテゴリー、対象、目的が変更されるものではないから、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3について、訂正後の請求項1又は請求項2と併せて検討する。 訂正後の請求項1又は請求項2に追加された「変性ポリオレフィン」及び「(メタ)アクリル共重合体」は、訂正前の請求項6に特定されていた事項であるから、訂正事項3は、訂正後の請求項1及び2の「変性ポリオレフィン」及び「(メタ)アクリル共重合体」を前提に、訂正前の請求項6の「側鎖に酸性基を含有する変性ポリオレフィン、及び(メタ)アクリル共重合体」を訂正後の請求項6において「無水マレイン酸変性プロピレン系共重合体、及びアクリル系重合体」として構成を限定するものである。
また、請求項6が引用する請求項1又は請求項2で混合物の樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対する付着量が「0.1?5.0質量%」であったのを「0.2?1.0質量%」とその範囲を狭めるものである。
したがって、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3のうち「前記有機高分子物質(A)が無水マレイン酸変性プロピレン系共重合体、及びアクリル系重合体からなる群のうちの少なくとも一つであり」は、本件特許明細書の段落【0091】の「製造例1:無水マレイン酸変性プロピレン系共重合体(A-1)の水系樹脂分散体の製造」という記載、及び、段落【0092】の「製造例2:アクリル系重合体(A-1)の水溶液の製造」という記載に基づくものである。
また、訂正事項3のうち「前記混合物が、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.2?1.0質量%付着している」は、本件特許明細書の段落【0071】の「<混合物の付着量> 本発明の樹脂強化用炭素繊維束におけるサイジング剤(混合物)の付着量(含有量)は、目的とする複合材料の成形法や用途等に応じて設定することができるが、炭素繊維束と混合物との合計質量(即ち、樹脂強化用炭素繊維束の質量)に対し、0.1質量%以上5.0質量%以下とする。・・・・・また、このサイジング剤の付着量は、同様の観点から、炭素繊維束と混合物との合計質量に対し、0.15質量%以上1.8質量%以下とすることが好ましく、0.2質量%以上1.0質量%以下がより好ましい。」という記載で“より好ましい”とされた範囲に基づくものである。
そうすると、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項3は、発明のカテゴリー、対象、目的を変更するものとはいえないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1?14〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正を認めることができるので、本件特許の請求項1?14に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定された、次のとおりのものである(以下「本件発明1」などという。また、本件発明1?14を総称して「本件発明」ということがある。)。
「【請求項1】
複数本の単繊維が集束されている炭素繊維束に、質量平均分子量が10000以上の有機高分子物質(A)と、下記測定条件で求められる熱減量率が5質量%以上である有機化合物(B)とを含む混合物が、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1?5.0質量%付着しており、かつ前記有機高分子物質(A)の付着量が樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1質量%以上0.5質量%以下であり、前記有機高分子物質(A)は主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体、主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド、主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル、主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミドからなる群のうちの少なくとも一つである物質を含む、樹脂強化用炭素繊維束。
<熱減量率の測定条件>
試験対象物を、円筒状の容器(底面の直径が50mm、高さ10mm)にW_(0)(g)採取し、50リットル(1気圧、25℃における体積)/分の空気気流中、200℃で10分間熱処理して、熱処理後の固形分の質量を測定してW_(1)(g)とし、次式より算出する。
(熱減量率(質量%))=[(W_(0)-W_(1))/W_(0)]×100
【請求項2】
複数本の単繊維が集束されている炭素繊維束に、質量平均分子量が10000以上の有機高分子物質(A)と、下記測定条件で求められる熱減量率が0.8質量%以上である有機化合物(B)とを含む混合物が、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1?5.0質量%付着しており、かつ前記有機高分子物質(A)の付着量が樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1質量%以上0.5質量%以下であり、前記有機高分子物質(A)は主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体、主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド、主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル、主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミドからなる群のうちの少なくとも一つである物質を含む、樹脂強化用炭素繊維束。
<熱減量率の測定条件>
空気雰囲気下、対象試験物W_(0)(g) を20℃/minで昇温して熱減量曲線を取得し、150℃における質量のW_(1)(g)と、200℃における質量のW_(2)(g)とを測定し、次式より算出する。
(熱減量率(質量%))=[(W_(0)?W_(2))/W_(0)]×100-[(W_(0)-W_(1))/W_(0)] × 100
【請求項3】
前記有機化合物(B)の炭素繊維束に対する付着量が樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.2?4.0質量%である請求項1又は2に記載の樹脂強化用炭素繊維束。
【請求項4】
前記混合物中、[前記有機高分子物質(A)の質量]:[前記有機化合物(B)の質量]で表される質量比が8.5:1.5?2:8である請求項1?3のいずれか一項に記載の樹脂強化用炭素繊維束。
【請求項5】
前記有機高分子物質(A)の主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている請求項1?4のいずれか一項に記載の樹脂強化用炭素繊維束。
【請求項6】
前記有機高分子物質(A)が無水マレイン酸変性プロピレン系共重合体、及びアクリル系重合体からなる群のうちの少なくとも一つであり、前記混合物が、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.2?1.0質量%付着している請求項1?4のいずれか一項に記載の樹脂強化用炭素繊維束。
【請求項7】
前記有機高分子物質(A)が、水溶性及び/又は自己乳化性である請求項1?4のいずれか一項に記載の樹脂強化用炭素繊維束。
【請求項8】
前記有機化合物(B)の30℃における粘度が、2500Pa・s以下である請求項1?7のいずれか一項に記載の樹脂強化用炭素繊維束。
【請求項9】
前記有機化合物(B)が、ポリエーテル系界面活性剤である請求項1?8のいずれか一項に記載の樹脂強化用炭素繊維束。
【請求項10】
前記有機化合物(B)が、ウレタン樹脂である請求項1?8のいずれか一項に記載の樹脂強化用炭素繊維束。
【請求項11】
請求項1?10のいずれか一項に記載の樹脂強化用炭素繊維束の製造方法であって、前記有機高分子物質(A)及び、前記有機化合物(B)を含有する水分散液又は溶液に、前記炭素繊維束を接触させたのちに、110℃以上、180℃以下で加熱して溶媒を除去する、樹脂強化用炭素繊維束の製造方法。
【請求項12】
請求項1?10のいずれか一項に記載の樹脂強化用炭素繊維束を開繊させたのちに、180℃以上に加熱した熱可塑性樹脂(C)を接触させて含浸させる工程を含む、炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
前記熱可塑性樹脂(C)が、ポリオレフィン及びポリアミドからなる群から選ばれる1以上の樹脂からなる請求項12に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の製造方法によって得られた炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物を、200℃以上に加熱する工程を含む、炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体の製造方法。」

第4 当審の判断
1 取消理由の概要
本件訂正前の本件特許に対して令和2年12月2日に通知した取消理由(令和2年11月30日付け取消理由通知書)の概要は、次のとおりである。

本件特許は、請求項1?14に係る発明が課題を解決できないものを含んでいるため、特許請求の範囲の記載が不備であり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 令和2年12月2日に通知した取消理由についての判断
(1)本件訂正により請求項1、請求項2に係る発明及びそれらの請求項の記載を直接的に又は間接的に引用して記載された請求項3?請求項14に係る発明の発明特定事項に「前記有機高分子物質(A)は主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体、主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド、主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル、主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミドからなる群のうちの少なくとも一つである物質を含む」という事項が含まれることとなった。
これにより本件発明の「混合物」は、「質量平均分子量が10000以上の有機高分子物質(A)」と、特定の「測定条件」で求められる「熱減量率」が特定の質量%以上である「有機化合物(B)」とを含むものであったのが、「質量平均分子量が10000以上」の「主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体、主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド、主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル、主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミドからなる群のうちの少なくとも一つである物質を含む」「有機高分子物質(A)」と、特定の「測定条件」で求められる「熱減量率」が特定の質量%以上である「有機化合物(B)」とを含むものとなり、技術内容が限定されたものとなった。

(2)本件発明の発明特定事項では混合物の付着量は「0.1?5.0質量%」とされている。
明細書は、この数値範囲について「炭素繊維束の適度な集束性が得られるため、成形加工時の工程通過性と、炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物中での炭素繊維束と熱可塑性樹脂(C)(マトリクス樹脂)との界面接着性を両立することができる。」と説明している(段落【0071】参照)。また、明細書では、混合物の付着量を0.4質量%とした実施例について効果が確認されている。
本件発明の「混合物」は、一般に「サイジング剤」と称される物に相当し、サイジング剤を数%のオーダーで添加することは、普通に行われていることである(後述する甲6,7参照)。
そうすると、質量平均分子量が10000以上で、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し0.1質量%以上0.5質量%以下の添加量である上に、本件訂正により特定の主鎖構成が備えられたものに限定された「有機高分子物質(A)」と特定の「測定条件」で求められる「熱減量率」が特定の質量%以上である「有機化合物(B)」とを含む混合物について、その付着量を「0.4%」でなく「0.1?5.0質量%」としても、その範囲で所与の課題の解決が見込まれないと考えられるものではない。

(3)したがって、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定される要件を満たすものであるから、本件請求項1?14に係る特許は、同法第113項第4号に該当するものではない。

(4)申立人は、意見書において、本件訂正後の請求項1、2に係る発明でも有機高分子物質(A)が「主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体、主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド、主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル、主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミドからなる群のうちの少なくとも一つである物質」の少なくとも一つをごく僅かに含む場合が包摂されるし、有機高分子物質(A)に包摂される膨大な種類の物質の中から樹脂強化用炭素繊維と熱可塑性樹脂(C)との界面を保持できる接着性を予測して種類及び量を選択することは過度の試行錯誤を要し、本件訂正後の有機高分子物質(A)であればいかなる場合でも課題を解決できるとは言い難い等指摘する。
しかし、本件発明における有機高分子物質(A)は、「樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1質量%以上0.5質量%以下」の量で付着されるものであって、明細書、とりわけ実施例の記載からすると、「主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体、主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド、主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル、主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミドからなる群のうちの少なくとも一つである物質」は、有機高分子物質(A)の主要部を占めるべきものと考えられる。また、当業者にとって、本件発明を実施することは、明細書に記載された実施例を参酌することで可能である。さらに、所与の課題の解決については、本件発明の発明特定事項とされた範囲内で有機高分子物質(A)を選定するのみならず、合わせて熱減量率で特定された「有機化合物(B)」を採用し、有機高分子物質(A)及び有機化合物(B)の特定の範囲内の量で添加することによってはじめて果たされ得るものであるから、本件訂正で限定された後も、本件発明で特定される有機高分子物質(A)の範囲すべてについて課題を解決できるかどうかという論は、本件発明で課題が解決できるかどうかということを考える上で過重というべきである。
特に本件発明6についても同様である。
したがって、申立人の指摘に沿って結論することはできない。

3 取消理由の通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)新規性進歩性について
申立人が本件発明の新規性進歩性に関して提出した甲号証は、以下のとおりである(以下各甲号証を「甲2」のようにいうこととする)。
・甲第1号証 : 特願2014-43336号の願書、明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面
・甲第2号証 : 国際公開第2014/038574号
・甲第3号証 : 荻野圭三、外2名、「非イオン系界面活性剤の熱分解および熱酸化」日本化学会誌、公益社団法人日本化学会、1979年1月、1979.(1)p.106-110
・甲第4号証 : 大矢勝著、「図解入門よくわかる 最新洗浄・洗剤の基本と仕組み」第1版、株式会社秀和システム、2011年12月20日、p.40、p.41、p.52、及びp.64-67
・甲第5号証 : 辻薦著、「乳化・可溶化の技術」第7版、工学図書株式会社、平成元年5月30日、p.13及びp.15
・甲第6号証 : 特開2013-119684号公報
・甲第7号証 : 国際公開第2012/017877号
・甲第8号証 : 特開2006-233346号公報
・甲第9号証 : Hajime Nakamura,外4名、“INTERFACIAL PROPERTIES OF CARBON FIBER REINFORCED THERMOPLASTIC COMPOSITES”The 10^(th) International Conference on Flow Processes in Composite Materials(FPCM10), Monte Veria ,Ascona,CH、July 11-15,2010
・甲第10号証: SOFICAR社のHIGH-PERFORMANCE CARBON FIBER “TORAYCA”のカタログ
・甲第11号証: 特開2012-188770号公報
・甲第12号証: 国際公開第2006/101269号
・甲第13号証: ニューコール 723-SFの安全データシート、日本乳化剤株式会社、1993年4月1日作成

ア 特許法第41条に掲げられた優先権主張の効果について
本件に係る特許出願は、特許法第41条に掲げられた優先権の主張(以下「国内優先権」という。)を伴うものである。
当該国内優先権の主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「基礎出願当初明細書等」という。甲1参照。)には、「【請求項1】 複数本の単繊維が集束されている炭素繊維束に、下記測定条件で求められる熱減量率が5質量%以下である質量平均分子量が5500以上の有機高分子物質(A)と、下記測定条件で求められる熱減量率が5質量%以上である有機化合物(B)とを、[前記有機高分子物質(A)の質量]:[前記有機化合物(B)の質量]で表される質量比が8:2?2:8となるように混合してなる混合物が、0.1?2.0質量%付着していることを特徴とする樹脂強化用炭素繊維束。 <熱減量率の測定条件> 試験対象物を、円筒状の容器(底面の直径が50mm、高さ10mm)にW_(0)(g)採取し、50リットル(1気圧、25℃における体積)/分の空気気流中、200℃で10分間熱処理して、熱処理後の固形分の質量を測定してW_(1)(g)とし、次式より算出する。(熱減量率(質量%))=[(W_(0)-W_(1))/W_(0)]×100」等の発明が記載されている。
しかし、基礎出願当初明細書等は、有機高分子物質(A)の樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対する付着量自体の記載を欠いており、本件発明で発明特定事項とされている「有機高分子物質(A)の付着量が樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1質量%以上0.5質量%以下」が記載されていないことは明らかである。また、本件発明で発明特定事項とされている「混合物が、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1?5.0質量%付着」していること、「質量平均分子量が10000以上の有機高分子物質(A)」、「[前記有機高分子物質(A)の質量]:[前記有機化合物(B)の質量]で表される質量比が8.5:1.5?2:8」であることに関して、基礎当初明細書等にはそれらの数値範囲につき記載はない。
そして、これら本件発明の発明特定事項が、基礎出願当初明細書等の記載を総合して導かれるものともいえない。
したがって、本件発明は、基礎出願当初明細書等に記載されたものではないから、国内優先権の主張の効果を認めることはできない。

イ 甲2発明に基づくもの
(ア)甲2に記載された事項
甲2は、本件の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものである。
既に「ア」で述べたように、本件の優先権主張の効果は認められないので、以下、甲2に記載された発明に基づいて、本件発明の新規性進歩性を検討する。
甲2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
a.「請求の範囲
[請求項1] 分子構造中にポリオレフィン構造(a1)および酸性基(a2)を有する酸変性ポリオレフィン(A)と、重量平均分子量(Mw)が450以上の親水性高分子(B)とが結合してなる重合体(AB)が、炭素繊維束に付着してなる樹脂強化用炭素繊維束であって、
該酸変性ポリオレフィン(A)における、該ポリオレフィン構造(a1)と、該酸性基(a2)との質量比(a1):(a2)が、100:0.1?100:10であり、
該酸変性ポリオレフィン(A)と、該親水性高分子(B)との質量比(A):(B)が、100:1?100:100であり、
該樹脂強化用炭素繊維束中の重合体(AB)の含有量が、0.1質量%以上8.0質量%以下である樹脂強化用炭素繊維束。
・・・・・・
[請求項8] 前記酸変性ポリオレフィン(A)の重量平均分子量(Mw)が、10,000以上500,000以下である請求項1?7のいずれか1項に記載の樹脂強化用炭素繊維束。
・・・・・・
[請求項10] 前記重合体(AB)とエポキシ樹脂を主成分とする樹脂組成物(D)とが前記炭素繊維束に付着し、
前記樹脂強化用炭素繊維束中の、該重合体(AB)および該樹脂組成物(D)の合計含有量が0.1質量%以上8.0質量%以下である請求項1?9のいずれか1項に記載の樹脂強化用炭素繊維束。
・・・・・・
[請求項14] 前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレンである請求項13に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
・・・・・・
[請求項17] 前記樹脂強化用炭素繊維束における、前記重合体(AB)と前記樹脂組成物(D)との質量比が1:9?8:2である、請求項15又は16に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。」
b.「[0001] 本発明は、熱可塑性樹脂の補強材として用いられる、サイジング剤が付着した炭素繊維束(即ち樹脂強化用炭素繊維束)およびその製造方法、並びに、その樹脂強化用炭素繊維束を用いた炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物およびその成形品に関する。
・・・・・・
[0012] 本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂を作製する際に、炭素繊維束及び熱可塑性樹脂のいずれに対しても良好な界面接着性を発現でき、良好な乳化安定性を有するサイジング剤を用いて作製された樹脂強化用炭素繊維束、及びその製造方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、この樹脂強化用炭素繊維束を用いた炭素繊維強化熱可塑性樹脂及びその成形品を提供することである。」
c.「[0074] (樹脂組成物(D))
本発明の樹脂強化用炭素繊維束は、上記重合体(AB)以外に、他の樹脂が付着した炭素繊維束であることができる。この他の樹脂としては、例えば、後述する樹脂組成物(D)を用いることができる。なお、この樹脂組成物(D)は、サイジング剤として機能することができる。樹脂組成物(D)と、重合体(AB)とは、それぞれ炭素繊維束に付着させてもよいし、予め混合し、該混合物を炭素繊維束に付着させてもよい。
・・・・・・
[0077] 樹脂組成物(D)は、エポキシ樹脂を主成分として含む。
・・・・・・
[0078] なお、この主成分とは、この樹脂組成物中に含まれる成分のうち、最も多い含有割合(質量%)で含む成分のことを意味する。また、樹脂組成物(D)は、必要に応じてエポキシ樹脂以外の樹脂(酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂など)やシランカップリング剤、帯電防止剤、潤滑剤、平滑剤を含むことができる。但し、炭素繊維表面との反応性、及び重合体(AB)との反応性の観点より、樹脂組成物(D)の固形分中のエポキシ樹脂の含有割合は、50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上がより好ましい。
・・・・・・
[0083] なお、樹脂組成物(D)の水性樹脂分散体とは、少なくとも樹脂組成物(D)と水とを含む分散液であり、この樹脂組成物(D)と水とからなってもよいし、水性樹脂分散体の安定性を損ねない限り、他の成分が含まれてもよい。水分散性のエポキシ樹脂を含む樹脂組成物(D)を炭素繊維束に付着させる場合には、この樹脂組成物(D)には、通常、乳化剤が含まれる。乳化剤としては、特に限定されるものではないが、アニオン系、カチオン系、ノニオン系乳化剤などを用いることができる。これらの中でも、乳化性能が良好で、また低価格であることから、アニオン系又はノニオン系乳化剤が好ましい。なお、樹脂組成物(D)中の乳化剤の含有量は、樹脂組成物(D)中のエポキシ樹脂の効果を阻害しない程度の、1重量%?70重量%が好ましい。
・・・・・・
[0087] さらに、後述するように、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物において、熱可塑性樹脂が、ポリプロピレンと酸変性ポリプロピレンを含む場合には、重合体(AB)と樹脂組成物(D)の質量比は1:9?8:2であることが好ましく、2:8?6:4であることがより好ましい。上記範囲とすることで、該熱可塑性樹脂組成物中のポリプロピレンおよび酸変性ポリプロピレンの双方と炭素繊維との接着性が良好となる。
・・・・・・
[0089] (炭素繊維束(重合体(AB)を付着させる前の炭素繊維束))
上記重合体(AB)を付着させるための炭素繊維束としては、炭素繊維の分野で公知の炭素繊維束を用いることができ、特に限定されない。通常の炭素繊維束は、平均直径が5μm以上15μm以下の単繊維を、1000本以上60000本以下束ねた形態を有している。 ・・・・・・
・・・・・・
[0094] (重合体(AB)及び樹脂組成物(D)の炭素繊維束への付着量)
本発明の樹脂強化用炭素繊維束中の重合体(AB)(塩基性物質(C)を用いた場合は、塩基性物質(C)も含む。以下同様)の含有量(付着量)は、目的とする複合材料の成形法や用途等に応じて設定することができるが、0.1質量%以上8.0質量%以下とする。重合体(AB)の含有量が0.1質量%以上8.0質量%以下であれば、炭素繊維束の適度な集束性が得られるため、成形加工時の工程通過性が低下することがない。また、この重合体(AB)の含有量は、同様の観点から、0.3質量%以上4.0質量%以下とすることが好ましい。
[0095] 重合体(AB)に樹脂組成物(D)を併用する場合は、該重合体(AB)および該樹脂組成物(D)の合計含有量が0.1質量%以上8.0質量%以下であることが好ましく、0.2?5.0質量%であることがより好ましい。また該樹脂組成物(D)に含まれるエポキシ樹脂の量についても、該重合体(AB)とエポキシ樹脂との合計含有量が0.1質量%以上8.0質量%以下であることが好ましく、0.2?5.0質量%であることがより好ましい。
・・・・・・
[0103] 特に、本発明の重合体(AB)は水への分散性に非常に優れため、該重合体(AB)を含む水性樹脂分散体は、分散粒子径が細かく、かつ樹脂の分散状態が長期間安定している。このような水性樹脂分散体を用いると、炭素繊維の表面に樹脂が均一に付着した樹脂強化用炭素繊維束を、容易に得ることができる。」
d.「[0123] [製造例1:無水マレイン酸変性プロピレン系共重合体前駆体の製造]
メタロセン触媒によって重合されたプロピレン-ブテン共重合体(ポリオレフィン(a1-1)に相当)であるタフマー(登録商標)XM-7070(商品名、三井化学社製、融点75℃、プロピレン単位の含有量74モル%、重量平均分子量[Mw]240,000(ポリプロピレン換算)、分子量分布[Mw/Mn]2.2)200kgと、無水マレイン酸(MAH)(酸(a2-1)に相当)5kgとをスーパーミキサーでドライブレンドした。その後、2軸押出機(日本製鋼所社製、商品名:TEX54αII)を用いて、このプロピレン-ブテン共重合体100質量部に対して1質量部となるように、パーブチル(登録商標)I(日本油脂社製、重合開始剤)を液添ポンプで途中フィードしながら、ニーディング部のシリンダー温度200℃、スクリュー回転数125rpm、吐出量80kg/時間の条件下で混練し、ペレット状の無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体前駆体を得た。
[0124] このようにして得られた無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体前駆体中の無水マレイン酸由来基のグラフト率は0.8質量%(無水マレイン酸由来基として0.08mmol/g、カルボン酸由来基として0.16mmol/g)であった。また、この前駆体の重量平均分子量(ポリスチレン換算)[Mw]は156,000、数平均分子量[Mn]は84,000であった。
・・・・・・
[0152] [製造例14:水性樹脂分散体の製造]
還流冷却管、温度計、攪拌機のついたガラスフラスコ中に、製造例1で得られた無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体前駆体100gと、トルエン50gとを入れ、容器内を窒素ガスで置換し、110℃に昇温してこの前駆体を溶解した。その後、この溶液に、無水マレイン酸を6.0g、パーブチル(登録商標)Iを2.0g加え、7時間同温度(110℃)で攪拌を続けて反応を行った。反応終了後、トルエン92gを加え、希釈を行った。次いで、70℃温水750gを加え、30分間撹拌を行い、その後、30分間静置し、分離した水相を抜出した。次いで、この溶液に、親水性高分子(B)として、ハンツマン社製、商品名:ジェファーミン(登録商標)M-1000(メトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)-2-プロピルアミン(重量平均分子量[Mw]1000))5g(5mmol;上記で得られた無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体100質量部に対し5質量部に相当)をイソプロパノール(IPA)50gに溶解した溶液を滴下して、70℃で1時間反応させ、重合体(AB)に相当する重合体(反応生成物)液を得た。
[0153] 続いて、この重合体液に、塩基性物質(C)として、ジメチルエタノールアミン(DMEA)6.4g(6.4mmol:無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体に対して1.0質量%に相当)を蒸留水120gとIPA140gに溶解させて添加した。
[0154] その後、温度を70℃に保ち、攪拌しながら水155gを滴下し、減圧下にてトルエンとIPAを除くことにより、樹脂(重合体)固形分濃度が30質量%の乳白色の水性樹脂分散体を得た。この水性樹脂分散体を日機装(株)社製、商品名:マイクロトラック UPA(モデル9340 バッチ型 動的光散乱法)にて体積換算として粒径が細かい方から累積で50%粒子径を測定した結果、50%粒子径は0.10μm、90%粒子径は0.18μmであった。また、この水性樹脂分散体の温度25℃におけるpHは、8.2であった。
・・・・・・
[0156] [製造例15:エポキシ樹脂分散体の製造]
ミキサー(特殊機化工業(株)製、商品名:ハイビスディスパーミックス、ホモミキサー仕様:型式3D-5型)を用い、以下の手順で、転相乳化することでサイジング液を調製した。
[0157] エポキシ樹脂jER(登録商標)157S70(商品名、三菱化学株式会社製)80質量部、界面活性剤NC-723-SF(商品名、日本乳化剤工業製)20質量部の混合物を、90℃にてプラネタリーミキサーとホモミキサーで混練、混合し、樹脂組成物(固形分中のエポキシ樹脂の含有量は80質量%)を得た。次に、この樹脂組成物に脱イオン水を少量ずつ滴下して転相点を通過した後、滴下する水量を増加した。最終的に樹脂組成物濃度40質量%のエポキシ樹脂分散体を得た。」
e.「[0161] (実施例1)
サイジング剤が付着していない炭素繊維束(三菱レイヨン社製、商品名:パイロフィル(登録商標)TR 50S15L(フィラメント数15000本、ストランド強度5000MPa、ストランド弾性率242GPa))を、製造例3より得られる水性樹脂分散体を固形分濃度6.0質量%に調製した水性樹脂分散体に浸漬させ、ニップロールを通過させた。その後、この炭素繊維束を、表面の温度を140℃とした加熱ロールに10秒間接触させることにより乾燥し、サイジング剤が付着した炭素繊維束(樹脂強化用炭素繊維束)を得た。
・・・・・・
[0166] <炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物の作製及び物性測定>
得られたサイジング剤が付着した炭素繊維束をロービングカッターで6mmの長さ(繊維軸方向の長さ)に切断して炭素繊維チョップドストランドを作製した。得られた炭素繊維チョップドストランド200gと十分に乾燥したポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名:ノバテック(登録商標)MA3)800gとの計1kgをドライブレンドしたものを押出機のホッパーに供給し、溶融混練してストランド状に押し出し、水中で冷却後切断して炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。
[0167] 上記ペレットを乾燥させた後、射出成形機にて230℃で幅10.0mm、長さ80mm、厚さ4mmの短冊形テストピースを作製し、ISO178試験法により、三点曲げ試験を行い、曲げ強度を測定した。
・・・・・・
[0173] (実施例9)
サイジング剤が付着していない炭素繊維束(三菱レイヨン社製、商品名:パイロフィル(登録商標)TR 50S15L(フィラメント数15000本、ストランド強度5000MPa、ストランド弾性率242GPa))を、製造例3より得られる水性樹脂分散体を固形分濃度2.0質量%に調製した水性樹脂分散体に浸漬させ、ニップロールを通過させた。その後、この炭素繊維束を、表面の温度を140℃とした加熱ロールに10秒間接触させることにより乾燥し、サイジング剤が付着した炭素繊維束(樹脂強化用炭素繊維束)を得た。
[0174] <炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物の作製及び物性測定2>
(炭素繊維シート及びプリプレグの作製)
製造した樹脂強化用炭素繊維束をドラムワインドにて巻き付け、炭素繊維の目付(FAW:単位面積当たりの質量)が145g/m^(2)の一方向の炭素繊維シートを作製した。
[0175] 作製した炭素繊維シートに適度に張力を掛け、炭素繊維シートに両面から、ポリプロピレン樹脂SA06GA(商品名、日本ポリプロ株式会社製)を40μmの厚みに成形したフィルム、フッ素樹脂製フィルム(日東電工社製、商品名:ニトフロンフィルム970-4UL)、及びアルミ製の平板の順に挟み、前記加熱冷却二段プレスの加熱盤で230?240℃、5分、20kPa、さらに、冷却盤で5分、20kPaの条件で、炭素繊維が単一方向(UD)に配向している半含浸プリプレグ(連続繊維強化シート)を作製した。ここで、このプリプレグの目付(TAW)は、218g/m^(2)であった。
・・・・・・
[0181] (実施例12)
製造例3で得られた水性樹脂分散体を固形分濃度2.0質量%に調製した水性樹脂分散体の代わりに、製造例3で得られた水性樹脂分散体とjER(登録商標)W2821R70(商品名、三菱化学社製エポキシ樹脂エマルジョン、45℃における固形分の粘度15poise、複数のエポキシ基を持つ化合物を最も多く含有する成分として含む。固形分中のエポキシ樹脂の含有量は85.7質量%)を固形分の質量比が9:1になるように混合し、全体の固形分濃度を2.0質量%に調製した水性樹脂分散体を用いた以外は実施例9と同様にしてサイジング剤が付着した炭素繊維束、及び炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物を作製し、評価した。
[0182] (実施例13、14)
製造例3で得られた水性樹脂分散体とjER(登録商標)W2821R70を混合して調整した水性樹脂分散体の代わりに、製造例14、製造例5で得られた水性樹脂分散体とW2821R70を混合して調整した水性樹脂分散体をそれぞれ用いた以外は、実施例12と同様にしてサイジング剤が付着した炭素繊維束、及び炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物を作製し、評価した。
・・・・・・
[0184] (実施例18)
jER(登録商標)W2821R70を製造例15で得られたエポキシ樹脂分散体に変更した以外は、実施例13と同様にしてサイジング剤が付着した炭素繊維束、及び炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物を作製し、評価した。なお、製造例15で得られたエポキシ樹脂分散体の固形分の粘度は、45℃において23000poiseであった。
・・・・・・
[0190] 実施例18は、樹脂組成物(D)の粘度が高かったことによって、接着性は発現しているが、開繊性を向上させる効果は不十分であったことを示している。」
f.実施例18の「エポキシ樹脂分散体とエポキシ樹脂分散体の固形分の質量比」は「9:1」で、「サイジング剤含有量」(質量%)は、0.53であること([0192]の[表2]から)。

(イ)甲2発明
甲2炭素繊維束及び熱可塑性樹脂の双方に対して界面接着性が良好なサイジング剤を用いた樹脂強化炭素繊維束について開示するものであるところ、特にその実施例18に着目すると、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲2発明」という)。
「フィラメント数15000本の炭素繊維束に、重量平均分子量が156,000の無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体前駆体及び親水性高分子ジェファーミン(登録商標)M-1000(メトキシポリ(オキシエン/オキシプロピレン)-2-プロピルアミン)から得られた重合体と、エポキシ樹脂jER(登録商標)157S70と界面活性剤NC-723-SFの混合物から得られたエポキシ樹脂分散体とが混合して調整されたサイジング剤が、樹脂強化用炭素繊維束に対して0.53%付着しており、かつ前記重合体と前記エポキシ樹脂分散体の固形分の質量比が9:1である、樹脂強化用炭素繊維束。」

(ウ)本件発明1について
a.本件発明1を甲2発明と対比する。
甲2発明(以下「後者」ということがある)の「フィラメント数15000本の炭素繊維束」、「樹脂強化用炭素繊維束」は、それぞれ、本件発明1(以下「前者」ということがある)の「複数本の単繊維が集束されている炭素繊維束」、「樹脂強化用炭素繊維束」に相当する。
後者の「サイジング剤」は、「重合体」と「エポキシ樹脂分散体」が混合された物であるから、前者の「混合物」に相当する。そして、後者の「重量平均分子量が156,000の無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体前駆体及び親水性高分子ジェファーミン(登録商標)M-1000(メトキシポリ(オキシエン/オキシプロピレン)-2-プロピルアミン)から得られた重合体」は、「重量平均分子量が156,000の無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体前駆体」と「親水性高分子ジェファーミン(登録商標)M-1000(メトキシポリ(オキシエン/オキシプロピレン)-2-プロピルアミン)」とを重合したものであるから、その重量平均分子量は156,000を上回ったものと考えられるので、その「重量平均分子量が156,000の無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体前駆体及び親水性高分子ジェファーミン(登録商標)から得られた重合体」は、前者の「質量平均分子量が10000以上の有機高分子物質(A)」に相当する。
また、後者の「重量平均分子量が156,000の無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体前駆体及び親水性高分子ジェファーミン(登録商標)M-1000(メトキシポリ(オキシエン/オキシプロピレン)-2-プロピルアミン)から得られた重合体」は、前者の「主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体、主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド、主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル、主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミドからなる群のうちの少なくとも一つである物質」に相当する。
さらに、後者の「エポキシ樹脂分散体」は、前者の「有機化合物(B)」に相当する。
以上を踏まえると、両発明の一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点]
「複数本の単繊維が集束されている炭素繊維束に、質量平均分子量が10000以上の有機高分子物質(A)と、有機化合物(B)とを含む混合物が付着しており、前記有機高分子物質(A)は主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体、主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド、主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル、主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミドからなる群のうちの少なくとも一つである物質を含む、樹脂強化用炭素繊維束。」
[相違点1]
有機混合物(B)が、本件発明1では「<熱減量率の測定条件> 試験対象物を、円筒状の容器(底面の直径が50mm、高さ10mm)にW_(0)(g)採取し、50リットル(1気圧、25℃における体積)/分の空気気流中、200℃で10分間熱処理して、熱処理後の固形分の質量を測定してW_(1)(g)とし、次式より算出する。(熱減量率(質量%))=[(W_(0)-W_(1))/W_(0)]×100」で求められる「熱減量率が5質量%以上である」のに対して、甲2発明では「エポキシ樹脂jER(登録商標)157S70と界面活性剤NC-723-SFの混合物から得られたエポキシ樹脂分散体」であるが、これの上記熱減量率の測定条件で求められる熱減量率は明らかでない点。
[相違点2]
付着量について、本件発明1では「混合物が、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1?5.0質量%付着しており、」「有機高分子物質(A)の付着量が樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1質量%以上0.5質量%以下」であるのに対して、甲2発明では「サイジング剤が、樹脂強化用炭素繊維束に対して0.53%付着しており」、「重合体」と「エポキシ樹脂分散体」の「固形分の質量比が9:1である」点。

b.相違点について検討する。
(a)相違点1について
i.甲2は、本件発明1でいう「熱減量率」が記載されるものではないし、また、熱減量率を所定の範囲にすることが教示されるものでもない。
そもそも、甲2には、エポキシ樹脂jER(登録商標)157S70と界面活性剤NC-723-SFの混合物から得られたエポキシ樹脂分散体あるいはそれを含む概念である樹脂組成物(D)について、それの熱的な物性に言及した記載がない。
申立人が指摘するように、甲3?甲5には、乳化剤のEO付加数につき記載されているが、それをもって甲2発明の「エポキシ樹脂jER(登録商標)157S70と界面活性剤NC-723-SFの混合物から得られたエポキシ樹脂分散体」が、本件発明1でいう「熱減量率が5質量%以上である」ことが立証されているものではない。
そうすると、甲2発明の「エポキシ樹脂jER(登録商標)157S70と界面活性剤NC-723-SFの混合物から得られたエポキシ樹脂分散体」が、「<熱減量率の測定条件> 試験対象物を、円筒状の容器(底面の直径が50mm、高さ10mm)にW_(0)(g)採取し、50リットル(1気圧、25℃における体積)/分の空気気流中、200℃で10分間熱処理して、熱処理後の固形分の質量を測定してW_(1)(g)とし、次式より算出する。(熱減量率(質量%))=[(W_(0)-W_(1))/W_(0)]×100」で求められる「熱減量率が5質量%以上である」ということは、当然に導き出せる事項たり得ない。
したがって、相違点1は、実質的なものである。
ii.また、当業者が甲2の記載事項から、甲2発明において「<熱減量率の測定条件> 試験対象物を、円筒状の容器(底面の直径が50mm、高さ10mm)にW_(0)(g)採取し、50リットル(1気圧、25℃における体積)/分の空気気流中、200℃で10分間熱処理して、熱処理後の固形分の質量を測定してW_(1)(g)とし、次式より算出する。(熱減量率(質量%))=[(W_(0)-W_(1))/W_(0)]×100」で求められる「熱減量率が5質量%以上である」などとすることが容易であるとはいえず、また、他の甲6等の証拠を合わせみても、甲2発明に基づいて相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することが当業者に容易になし得たことといえるものではない。
(b)したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明と同一ではないし、また、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものでもない。

(エ)本件発明2について
a.本件発明2を甲2発明と対比する。
両発明は、本件発明1と甲2発明を対比したときと同様の相当関係があるもので、両発明の一致点、相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「複数本の単繊維が集束されている炭素繊維束に、質量平均分子量が10000以上の有機高分子物質(A)と、有機化合物(B)とを含む混合物が、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1?5.0質量%付着しており、前記有機高分子物質(A)は主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体、主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド、主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル、主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミドからなる群のうちの少なくとも一つである物質を含む、樹脂強化用炭素繊維束。」
[相違点3]
有機混合物(B)が、本件発明2では「<熱減量率の測定条件> 空気雰囲気下、対象試験物W_(0)(g) を20℃/minで昇温して熱減量曲線を取得し、150℃における質量のW_(1)(g)と、200℃における質量のW_(2)(g)とを測定し、次式より算出する。(熱減量率(質量%))=[(W_(0)?W_(2))/W_(0)]×100-[(W_(0)-W_(1))/W_(0)] × 100」で求められる「熱減量率が0.8質量%以上である」のに対して、甲2発明では用いられるのは「芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂PU-1」であるがこれの上記熱減量率の測定条件で求められる熱減量率が明らかでない点。
[相違点4]
付着量について、本件発明2では「混合物が、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1?5.0質量%付着しており、」「有機高分子物質(A)の付着量が樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1質量%以上0.5質量%以下」であるのに対して、甲2発明では「サイジング剤が、樹脂強化用炭素繊維束に対して0.53%付着しており」、「重合体」と「エポキシ樹脂分散体」の「固形分の質量比が9:1である」点。

b.相違点について検討する。
相違点3についての判断は、本件発明1と甲2発明の相違点1について説示したと同様である。
したがって、相違点4について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明と同一ではないし、また、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

(オ)本件発明3?14について
本件発明3?14は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項をすべて含んだ上で他の発明特定事項を付加したものといえる。
したがって、本件発明3?14は、いずれも、甲2発明と同一ではなく、また、本件発明3?14は、いずれも、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

ウ 甲6発明に基づくもの
(ア)甲6に記載された事項
本件の特許出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲6には、図面とともに以下の事項が記載されている。
a.「【0005】
本発明は、熱可塑性樹脂用のサイジング剤を付与した炭素繊維束において、マトリックス樹脂との接着性に優れ、かつ開繊性を向上させた炭素繊維束、ならびにそれからの炭素繊維製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、共重合ポリオレフィンと、20℃で液体のノニオン系界面活性剤とを含有するサイジング剤を付与した炭素繊維束とすることで、標記課題を解決できることを見出した。
・・・・・・
【発明の効果】
【0008】
本発明により、取扱性に優れ、かつ開繊性を向上させた炭素繊維束とそれからの炭素繊維製品を得ることができる。取扱性とは、具体的に繊維をカットする工程や、繊維束を開繊させる工程において、絡みつきなどのトラブルが少なくなることを指し、開繊性を向上するとは、繊維を開繊する工程を供することで、求める炭素繊維製品の形態に合う炭素繊維束の状態を作ることができることを指す。
・・・・・・
【0024】
<ノニオン系界面活性剤>
本発明においてサイジング剤を構成するノニオン系界面活性剤は、少なくとも20℃で液体であることを特徴とする。
本発明のノニオン系界面活性剤は、20℃で液体であれば特に限定されないが、好ましい化合物として例えば、下記式(2)のポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。
H_(2m2+1)C_(m2)-O-(X^(2)-O)_(n2)-H (2)
(m2=8?22の整数、n2=2?20の整数、X^(2):炭素数1?5のアルキレン基)
【0025】
X^(2)の炭素数は2?5が好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオイレルエーテル等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
本発明のノニオン系界面活性剤の含有量は、前記共重合ポリオレフィン100重量部に対して10重量部以上かつ60重量部未満である。当該範囲であれば開繊性が担保でき、またマトリックス樹脂に対するノニオン系界面活性剤の量が十分少なく、本発明の炭素繊維束を用いた各種材料の機械的物性を低下させることがないため好ましい。ノニオン系界面活性剤の含有量の上限値は55重量部が好ましく、30重量部がさらに好ましい。また得られる炭素繊維束の開繊性の観点から、ノニオン系界面活性剤の含有量の下限値は、10重量部が好ましく、15重量部が更に好ましい。
【0027】
<炭素繊維>
本発明の炭素繊維束には、ポリアクリロニトリル(PAN)系、石油・石炭ピッチ系、レーヨン系、リグニン系など、何れの炭素繊維も使用することができる。特に、PANを原料としたPAN系炭素繊維が、工業規模における生産性及び機械的特性に優れており好ましい。
炭素繊維は、平均直径5?10μmのものを使用するのが好ましい。また、1000?50000本のモノフィラメントが繊維束となったものを使用するのが好ましい。
・・・・・・
【0032】
<炭素繊維束および得られる炭素繊維製品>
本発明方法により開繊された炭素繊維束が得られ、それを加工することで炭素繊維製品が得られる。
炭素繊維束におけるサイジング剤の付着量は特に限定されないが、炭素繊維100重量部に対して0.01?10重量部であることが好ましい。
本発明の炭素繊維束に付与されるサイジング剤は、共重合ポリオレフィンと、20℃で液体のノニオン系界面活性剤を含有し、該ノニオン系界面活性剤の含有量が該共重合ポリオレフィン100重量部に対して10重量部以上かつ60重量部未満である。
・・・・・・
【0037】
樹脂としては熱可塑性樹脂が好ましく、これらの中でポリオレフィン系樹脂、なかでもポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
・・・・・・
【0042】
<一軸配向炭素繊維複合材料>
本発明の開繊された炭素繊維束を引き揃え、溶融した熱可塑性樹脂と接触させることにより炭素繊維束と熱可塑性樹脂とが複合されてなる一軸配向炭素繊維複合材料を得ることができる。この際に用いられる熱可塑性樹脂はランダムマットの項に記載したものが同様に挙げられる。一軸配向炭素繊維複合材料は、複数の一軸配向炭素繊維複合材料を積層してなるものとしてもよい。
【0043】
一軸配向炭素繊維複合材料層を製造する方法はとくに限定はなく、例えばプルトリュージョン法などで得ることができる。プルトリュージョン法による場合は炭素繊維が熱可塑性樹脂により含浸されているものが好適に得られる。熱可塑性樹脂による含浸を抑えたもの、すなわち半含浸の層とした場合は、例えば熱可塑性樹脂からなるシート上に炭素繊維の一方向に引き揃えて、必要によりプレスしつつ加熱する方法等で好ましく得ることができる。」
b.「【0049】
[実施例1]
プロピレン・スチレン共重合体(プロピレン100に対するスチレンのモル比は1)280重量部、無水マレイン酸25重量部、ジクミルパーオキサイド7重量部およびトルエン420重量部を、撹拌機を取り付けたオートクレーブ中に加え、窒素置換を約5分間行った後、加熱撹拌しながら140℃で5時間反応を行った。反応終了後、反応液を大量のメチルエチルケトン中に投入し、粗共重合ポリオレフィンを析出させた。粗共重合ポリオレフィンをさらにメチルエチルケトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去したのち、減圧乾燥することにより、共重合ポリオレフィンの固形物を得た。赤外吸収スペクトルの測定結果から、無水マレイン酸の共重合比はモル比でプロピレン100に対して0.7であった。また、高温GPC測定による重量平均分子量は86000であった。
【0050】
次に、共重合ポリオレフィン100重量部にトルエン400重量部を加え、攪拌しながら加温して、均一に溶解させた。一方、別の容器に20℃で液体のノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル登録商標「エマルゲン103」)30重量部を水400重量部に加えて溶解させた。共重合ポリオレフィンのトルエン溶液と界面活性剤水溶液とを乳化器に入れて攪拌し、プレエマルジョンを得た。この20℃で液体のノニオン系界面活性剤は、エマルジョン化のための役割と後述の開繊率の向上に寄与するものである。
このプレエマルジョンにモルフォリンを加えて、プレエマルジョンの温度を45℃に保ち、ロータリーエバポレーターを使用して、100?200Torrで系内のトルエンを減圧蒸留した。
最終的に得られた共重合ポリオレフィン水性エマルジョンは、平均粒径0.7μmであり、ポリオレフィン100重量部に対して、水は400重量部であった。
得られた共重合ポリオレフィン水性エマルジョンを、共重合ポリオレフィン100重量部に対して、水の量は4000重量部となるように調製して、水性エマルジョンを作製した後、水性エマルジョンの浴に、未サイジングの炭素繊維ストランド(東邦テナックス社製、登録商標「テナックスSTS-24K N00」、直径7μm×24000フィラメント、繊度1.6g/m、引張強度4000MPa(408kgf/mm^(2))、引張弾性率238GPa(24.3ton/mm^(2)))を連続的に浸漬させ、フィラメント間に水性エマルジョンを含浸させた。これを120℃?150℃の乾燥炉に約40秒間通し、乾燥し、幅約15mmの炭素繊維束を得た。
【0051】
また、得られた炭素繊維束中のサイジング剤の付着量は、炭素繊維重量100重量部に対して、1.2重量部であった。サイジング剤の付着量は、1.0mの炭素繊維束を2本採取し、これらを500℃に昇温した炉で10分間焼成し、重量減少した分をサイジング剤の付着分として以下の式(4)によって計算されたものの平均である。
サイジング剤の付着量=(焼成前重量-焼成後重量)/焼成後重量 ×100 (%) (4)
得られた炭素繊維束中の界面活性剤の付着量は、サイジング剤における量比より求めた結果、炭素繊維重量100重量部に対して、0.28重量部であった。炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着性の評価として、引張せん断強度を測定した。得られた炭素繊維束を2本用意し、この間にポリプロピレンフィルム(トーセロ社製プロピレンフィルム、CPS#50)を挟み、230℃で接着した後、JIS K6850に準拠して接着部の長さ7mmで引張せん断強度を測定したところ、表1に示すとおり高い引張せん断強度が得られた。
また、テーパ管内にφ1mmの穴を5ヶ所あけ、外側より0.5MPa圧力をかけ、圧縮空気を繊維束に直接吹き付けることにより開繊しつつ、テーパ管出口の下部に設置したテーブル上に散布した。得られた炭素繊維束について上述した方法で開繊率を測定したところ、表1に示すとおり、高い開繊率が得られた。」

(イ)甲6発明
甲6は、取扱性、マトリックス樹脂との接着性等に優れた炭素繊維束について開示するものであるところ、その炭素繊維束は、樹脂を強化するためのものであり、特にその実施例1に着目すると、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲6発明」という)。
「炭素繊維束に、質量平均分子量が86000の共重合ポリオレフィンと、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)とを混合してなる共重合ポリオレフィン水性エマルジョンたるサイジング剤が、樹脂強化用炭素繊維重量100重量部に対して1.2重量部付着しており、かつ前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の付着量が樹脂強化用炭素繊維重量100重量部に対して0.28重量部である、樹脂強化用炭素繊維束。」

(ウ)本件発明1について
a.本件発明1を甲6発明と対比する。
甲6発明(以下「後者」ということがある)の「炭素繊維束」、「質量平均分子量が86000の共重合ポリオレフィン」、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)」、「共重合ポリオレフィン水性エマルジョンたるサイジング剤」、「樹脂強化用炭素繊維重量」、「樹脂強化用炭素繊維束」は、それぞれ、本件発明1(以下「前者」ということがある)の「複数本の単繊維が集束されている炭素繊維束」、「質量平均分子量が10000以上の有機高分子物質(A)」、「有機化合物(B)」、「混合物」、「樹脂強化用炭素繊維束重量」、「樹脂強化用炭素繊維束」に相当する。
以上を踏まえると、両発明の一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点]
「複数本の単繊維が集束されている炭素繊維束に、質量平均分子量が10000以上の有機高分子物質(A)と有機化合物(B)とを含む混合物が付着している、樹脂強化用炭素繊維束。」
[相違点5]
有機混合物(B)が、本件発明1では「<熱減量率の測定条件> 試験対象物を、円筒状の容器(底面の直径が50mm、高さ10mm)にW_(0)(g)採取し、50リットル(1気圧、25℃における体積)/分の空気気流中、200℃で10分間熱処理して、熱処理後の固形分の質量を測定してW_(1)(g)とし、次式より算出する。(熱減量率(質量%))=[(W_(0)-W_(1))/W_(0)]×100」で求められる「熱減量率が5質量%以上である」のに対して、甲6発明では「ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)」であるがこれの上記熱減量率の測定条件で求められる熱減量率は明らかでない点。
[相違点6]
有機高分子物質(A)が、本件発明1では「主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体、主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド、主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル、主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミドからなる群のうちの少なくとも一つである物質を含む」と限定されているのに対して、甲6発明では「共重合ポリオレフィン」である点。
[相違点7]
付着量について、本件発明1では「混合物が、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1?5.0質量%付着しており、」「有機高分子物質(A)の付着量が樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1質量%以上0.5質量%以下」であるのに対して、甲6発明では「共重合ポリオレフィン水性エマルジョンたるサイジング剤が、樹脂強化用炭素繊維重量100重量部に対して1.2重量部付着しており、」「ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の付着量が樹脂強化用炭素繊維重量100重量部に対して0.28重量部である」点。

b.相違点について検討する。
(a)相違点5について
甲6には、本件発明1でいう「熱減量率」が記載されるものではないし、また、熱減量率を所定の範囲にすることが教示されるものでもない。
そもそも、甲6には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の熱的な物性への言及はなく、甲6発明の「ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)」が「<熱減量率の測定条件> 試験対象物を、円筒状の容器(底面の直径が50mm、高さ10mm)にW_(0)(g)採取し、50リットル(1気圧、25℃における体積)/分の空気気流中、200℃で10分間熱処理して、熱処理後の固形分の質量を測定してW_(1)(g)とし、次式より算出する。(熱減量率(質量%))=[(W_(0)-W_(1))/W_(0)]×100」で求められる「熱減量率が5質量%以上である」ということが立証されているものではない。
また、甲6の記載事項からそのような熱減量率が「5質量%以上である」物質を採用することが導かれるものでもない。
さらに、他の甲2以下の証拠をみても、甲6発明に基づいて相違点5に係る本件発明1の発明特定事項を採用することが当業者に容易になし得たことといえるものではない。
(b)したがって、相違点6、7について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

(エ)本件発明2について
a.本件発明2を甲6発明と対比する。
両発明は、本件発明1と甲6発明を対比したときと同様の相当関係があるもので、両発明の一致点、相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「複数本の単繊維が集束されている炭素繊維束に、質量平均分子量が10000以上の有機高分子物質(A)と、有機化合物(B)とを含む混合物が、付着している、樹脂強化用炭素繊維束。」
[相違点8]
有機混合物(B)が、本件発明2では「<熱減量率の測定条件> 空気雰囲気下、対象試験物W_(0)(g) を20℃/minで昇温して熱減量曲線を取得し、150℃における質量のW_(1)(g)と、200℃における質量のW_(2)(g)とを測定し、次式より算出する。(熱減量率(質量%))=[(W_(0)?W_(2))/W_(0)]×100-[(W_(0)-W_(1))/W_(0)] × 100」で求められる「熱減量率が0.8質量%以上である」のに対して、甲6発明では用いられるのは「ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)」であるがこれの上記熱減量率の測定条件で求められる熱減量率が明らかでない点。
[相違点9]
有機高分子物質(A)が、本件発明2では「主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体、主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド、主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル、主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミドからなる群のうちの少なくとも一つである物質を含む」と限定されているのに対して、甲6発明では「共重合ポリオレフィン」である点。
[相違点10]
付着量について、本件発明2では「混合物が、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1?5.0質量%付着しており、」「有機高分子物質(A)の付着量が樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1質量%以上0.5質量%以下」であるのに対して、甲6発明では「共重合ポリオレフィン水性エマルジョンたるサイジング剤が、樹脂強化用炭素繊維重量100重量部に対して1.2重量部付着しており、」「ポリオキシエチレンアルキルエーテルの付着量が樹脂強化用炭素繊維重量100重量部に対して0.28重量部である点。

b.相違点について検討する。
相違点8についての判断は、本件発明1と甲6発明の相違点1について説示したと同様である。
したがって、相違点9、10について検討するまでもなく、本件発明2は、甲6発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

(オ)本件発明3?9,11?14について
本件発明3?9,11?14は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項をすべて含んだ上で他の発明特定事項を付加したものといえるから、これらも、甲6発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

エ 甲7発明に基づくもの
(ア)甲7に記載された事項
本件の特許出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲7には、図面とともに以下の事項が記載されている。
a.「[0001] 本発明は、熱可塑性マトリックス樹脂を補強するために用いられる強化繊維用サイジング剤、これを用いた合成繊維ストランドおよび繊維強化複合材料に関する。さらに詳しくは、本発明は、熱可塑性マトリックス樹脂との優れた接着性を合成繊維ストランドに付与することができる強化繊維用サイジング剤、これを用いた合成繊維ストランドおよび繊維強化複合材料に関する。
・・・・・・
[0008] かかる従来の技術背景に鑑み、本発明の目的は、熱可塑性マトリックス樹脂、特にポリオレフィン系樹脂を補強するために用いられる強化繊維に対して、優れた接着性を付与できる強化繊維用サイジング剤と、それを用いた合成繊維ストランド、繊維強化複合材料を提供することにある。
・・・・・・
[0068] 原料合成繊維ストランドへのサイジング剤の不揮発分の付着量は適宜選択でき、合成繊維ストランドが所望の機能を有するための必要量とすればよいが、その付着量は原料合成繊維ストランドに対して0.1?20重量%であることが好ましい。連続繊維の状態の合成繊維ストランドにおいては、その付着量は原料合成繊維ストランドに対して0.1?10重量%がより好ましく、0.5?5重量%がさらに好ましい。また、所定の長さに切断された状態のストランドにおいては0.5?20重量%がより好ましく、1?10重量%がさらに好ましい。
サイジング剤の付着量が少ないと、樹脂含浸性、接着性に関する本発明の効果が得られにくく、また、合成繊維ストランドの集束性が不足し、取扱い性が悪くなることがある。また、サイジング剤の付着量が多過ぎると、合成繊維ストランドが剛直になり過ぎて、かえって取扱い性が悪くなったり、コンポジット成型の際に樹脂含浸性が悪くなったりすることがあり好ましくない。
・・・・・・
[0074] <接着性>
複合材料界面特性評価装置HM410(東栄産業株式会社製)を使用し、マイクロドロップレット法により接着性を評価した。
実施例および比較例で製造した炭素繊維ストランドより、炭素繊維フィラメントを取り出し、複合材料界面特性評価装置にセッティングする。装置上で溶融したポリプロピレン樹脂混合物J-900GP(出光石油化学社製)のドロップを炭素繊維フィラメント上に形成させ、室温で十分に冷却し、測定用の試料を得た。再度測定試料を装置にセッティングし、ドロップを装置ブレードで挟み、炭素繊維フィラメントを装置上で0.06mm/分の速度で走行させ、炭素繊維フィラメントからドロップを引き抜く際の最大引き抜き荷重Fを測定した。
次式により界面剪断強度τを算出し、炭素繊維フィラメントとポリプロピレン樹脂との接着性を評価した。
界面剪断強度τ(単位:MPa)=F/πdl
(F:最大引き抜き荷重 d:炭素繊維フィラメント直径 l:ドロップの引き抜き方向の粒子径)」
b.「[0078]〔変性ポリプロピレン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂の製造〕
〔製造例A1〕
ポリプロピレン樹脂をオートクレーブで攪拌しながら加熱溶解させ、無水マレイン酸を添加し、ポリプロピレンに無水マレイン酸をグラフト共重合させ、プロピレン97.8モル%、無水マレイン酸2.2モル%、融解吸熱量58.0J/g、酸価54KOHmg/g、重量平均分子量30000の変性ポリプロピレン樹脂(1)を得た。
・・・・・
[0084]〔変性ポリプロピレン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂の水系乳化物(中和物)の製造〕
〔製造例B1〕
撹拌装置を備えたオートクレーブ中に、変性ポリプロピレン樹脂(1)222部、ポリオキシエチレン8モル付加オレイルエーテル52部、およびジエタノールアミン26部を仕込み、窒素ガス還流、撹拌下で170?180℃まで昇温した。ついで撹拌下水700部を徐々に投入、170?180℃で2時間撹拌し、内容物を均一溶解した。その後常温まで冷却し、水分調整を行い、不揮発分30重量%の水エマルジョンであるPP-1を得た。
・・・・・・
[0108]〔製造例C2〕
反応器中に窒素ガスを封入下、テレフタル酸498部、イソフタル酸332部、エチレングリコール248部、ジエチレングリコール106部、テトラメチレングリコール45部およびジブチル錫オキサイド0.2部を仕込み、190?240℃で10時間エステル化反応を行い、芳香族ポリエステルポリオールを得た。次に、得られた芳香族ポリエステルポリオール1000部を120℃で減圧により脱水し、80℃まで冷却後、メチルエチルケトン680部を仕込み撹拌溶解した。引き続きイソホロンジイソシアネート218部および鎖伸張化剤として2,2-ジメチロールプロピオン酸67部を仕込み、70℃で12時間ウレタン化反応を行った。反応終了後、40℃まで冷却し、13.6%アンモニア水97部を加えて中和反応後、水2950部を加え水エマルジョンとした。得られた水エマルジョンを65℃で減圧処理してメチルエチルケトンを留去し、水分調整を行い、不揮発分30重量%の水エマルジョンである芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂PU-1を得た。
・・・・・・・
[0111]〔実施例1〕
PP-1を水で希釈して、不揮発分濃度15重量%のサイジング剤エマルジョンを調製し、サイジング剤未処理炭素繊維ストランド(繊度800tex、フィラメント数12000本)を浸漬・含浸させた後、105℃で15分間熱風乾燥させて、理論付着量が5%であるサイジング剤処理炭素繊維ストランドを得た。本ストランドについて、前述の方法によりマトリックス樹脂接着性を評価した。その結果を表3に示した。
[0112]〔実施例2?15、比較例1?10〕
実施例1において、表3?5に示すサイジング剤不揮発分組成になるように、不揮発分濃度15重量%のサイジング剤エマルジョンを調製した以外は実施例1と同様にして、サイジング剤処理炭素繊維ストランドを得た。各特性値の評価結果を表3?5に示した。なお、表3?5に示すサイジング剤不揮発分組成は、不揮発分全体に占める各エマルジョンPP-1?PP-21、PE-1、PU-1の不揮発分の割合を示す。
・・・・・・



(イ)甲7発明
甲7は、優れた接着性を付与できる強化繊維用サイジング剤を用いた合成繊維ストランドについて開示するものであるところ、その炭素繊維束ストランドは、樹脂を強化するためのものであり、特にその実施例15に着目すると、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲7発明」という)。
「フィラメント数12000本の炭素繊維ストランドに、重量平均分子量が30000の無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂、ポリオキシエチレン8モル付加オレイユエーテル、ジエタノールアミンから得られた水エマルジョンPP-1が70%で芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂PU-1が30%の組成となるサイジング剤を5%付着してなる炭素繊維ストランド。」

(ウ)本件発明1について
a.本件発明1を甲7発明と対比する。
甲7発明(以下「後者」ということがある)の「フィラメント数12000本の炭素繊維ストランド」は、本件発明1(以下「前者」ということがある)の「複数本の単繊維が集束されている炭素繊維束」に相当する。後者の「サイジング剤を」「付着してなる」「炭素繊維ストランド」は、前者の「樹脂強化用炭素繊維束」に相当する。
後者の「サイジング剤」は、「水エマルジョンPP-1」と「芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂PU-1」を含むものであるから、「混合物」であるということができる。そして、後者の「水エマルジョンPP-1」に含まれる「重量平均分子量が30000の無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」は、前者の「質量平均分子量が10000以上の有機高分子物質(A)」に相当する。また、後者の「芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂」は、前者の「有機化合物(B)」に相当し、さらに、後者の「無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」は、前者の「主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体、主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド、主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル、主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミドからなる群のうちの少なくとも一つである物質」に相当するということができる。
後者の「サイジング剤を5%付着してなる」は、前者の「混合物が、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1?5.0質量%付着しており、」に含まれているといえる。
以上を踏まえると、両発明の一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点]
「複数本の単繊維が集束されている炭素繊維束に、質量平均分子量が10000以上の有機高分子物質(A)と、有機化合物(B)とを含む混合物が付着しており、前記有機高分子物質(A)は主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体、主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド、主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル、主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミドからなる群のうちの少なくとも一つである物質を含む、樹脂強化用炭素繊維束。」
[相違点11]
有機混合物(B)が、本件発明1では「<熱減量率の測定条件> 試験対象物を、円筒状の容器(底面の直径が50mm、高さ10mm)にW_(0)(g)採取し、50リットル(1気圧、25℃における体積)/分の空気気流中、200℃で10分間熱処理して、熱処理後の固形分の質量を測定してW_(1)(g)とし、次式より算出する。(熱減量率(質量%))=[(W_(0)-W_(1))/W_(0)]×100」で求められる「熱減量率が5質量%以上である」のに対して、甲7発明では「芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂PU-1」であるがこれの上記熱減量率の測定条件で求められる熱減量率は明らかでない点。
[相違点12]
付着量について、本件発明1では「混合物が、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1?5.0質量%付着しており、」「有機高分子物質(A)の付着量が樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1質量%以上0.5質量%以下」であるのに対して、甲7発明では「サイジング剤を5%付着してな」り、「無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂、ポリオキシエチレン8モル付加オレイユエーテル、ジエタノールアミンから得られた水エマルジョンPP-1が70%で芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂PU-1が30%の組成」である点。

b.相違点について検討する。
(a)相違点11について
甲7には、本件発明1でいう「熱減量率」が記載されるものではないし、また、熱減量率を所定の範囲にすることが教示されるものでもない。
そうすると、甲7発明の「芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂PU-1」が「<熱減量率の測定条件> 試験対象物を、円筒状の容器(底面の直径が50mm、高さ10mm)にW_(0)(g)採取し、50リットル(1気圧、25℃における体積)/分の空気気流中、200℃で10分間熱処理して、熱処理後の固形分の質量を測定してW_(1)(g)とし、次式より算出する。(熱減量率(質量%))=[(W_(0)-W_(1))/W_(0)]×100」で求められる「熱減量率が5質量%以上である」ということは立証されていないし、また、甲7の記載事項からそのような「熱減量率が5質量%以上である」物質を採用することが容易に導かれるものではない。
さらに、他の甲2以下の証拠をみても、甲7発明に基づいて相違点11に係る本件発明1の発明特定事項を採用することが当業者に容易になし得たことといえるものではない。
なお、仮に、甲7発明で「水エマルジョンPP-1」中の他の物質、例えば「ポリオキシエチレン8モル付加オレイユエーテル」が本件発明1の「有機混合物(B)」に相当するものと見立てたとしても、それが「<熱減量率の測定条件> 試験対象物を、円筒状の容器(底面の直径が50mm、高さ10mm)にW_(0)(g)採取し、50リットル(1気圧、25℃における体積)/分の空気気流中、200℃で10分間熱処理して、熱処理後の固形分の質量を測定してW_(1)(g)とし、次式より算出する。(熱減量率(質量%))=[(W_(0)-W_(1))/W_(0)]×100」で求められる「熱減量率が5質量%以上である」と立証されるものではない。
(b)したがって、相違点12について検討するまでもなく、本件発明1は、甲7発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

(エ)本件発明2について
a.本件発明2を甲7発明と対比する。
両発明は、本件発明1と甲7発明を対比したときと同様の相当関係があるもので、両発明の一致点、相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「複数本の単繊維が集束されている炭素繊維束に、質量平均分子量が10000以上の有機高分子物質(A)と、有機化合物(B)とを含む混合物が、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1?5.0質量%付着しており、前記有機高分子物質(A)は主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体、主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド、主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル、主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミドからなる群のうちの少なくとも一つである物質を含む、樹脂強化用炭素繊維束。」
[相違点13]
有機混合物(B)が、本件発明2では「<熱減量率の測定条件> 空気雰囲気下、対象試験物W_(0)(g) を20℃/minで昇温して熱減量曲線を取得し、150℃における質量のW_(1)(g)と、200℃における質量のW_(2)(g)とを測定し、次式より算出する。(熱減量率(質量%))=[(W_(0)?W_(2))/W_(0)]×100-[(W_(0)-W_(1))/W_(0)] × 100」で求められる「熱減量率が0.8質量%以上である」のに対して、甲7発明では用いられるのは「芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂PU-1」であるがこれの上記熱減量率の測定条件で求められる熱減量率が明らかでない点。
[相違点14]
付着量について、本件発明2では「混合物が、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1?5.0質量%付着しており、」「有機高分子物質(A)の付着量が樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1質量%以上0.5質量%以下」であるのに対して、甲7発明では「サイジング剤を5%付着してな」り、「無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂、ポリオキシエチレン8モル付加オレイユエーテル、ジエタノールアミンから得られた水エマルジョンPP-1が70%で芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂PU-1が30%の組成」である点。

b.相違点について検討する。
相違点13についての判断は、本件発明1と甲7発明の相違点11について説示したと同様である。
したがって、相違点14について検討するまでもなく、本件発明2は、甲7発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

(オ)本件発明4?7、10、12?13について
本件発明4?7、10、12?13は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項をすべて含んだ上で他の発明特定事項を付加したものといえるから、これらも、甲7発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

(2)記載要件について
ア 特許法第36条第4項第1号の要件について
(ア)申立人が申し立てた理由は、本件発明1で「熱減量率」の上限値を数値限定したことの技術的な意義が明らかでない、というものである。さらに詳しくは、「5質量%をやや超える場合、及び、5質量%にやや満たない場合が実証されていない」というものである。
(イ)明細書からは、熱減量率が、6.5質量%であると良好な結果が得られ、0.3%質量%であると良好な結果が得られないことが把握される。
このことから、熱減量率が0.3%質量%より大きくなければならないことが明らかであるが、6.5質量%に至らなくても良好な結果が得られるのではないかと推察される。
そうすると、0.3質量%からはかなり大きい値ではあるが、6.5質量%を下回る値である「5質量%」と規定したことで技術的意義がなくなると言い切れるものではない。
したがって、本件に係る特許出願が特許法第36条第4項第1項に違反するものとはいえない。

イ 特許法第36条第6項第2号の要件について
(ア)申立人が申し立てた理由は、本件発明1の「有機化合物(B)」として実施例で“混合物”を用いたものがあるところ、有機化合物を2種類以上含む場合の熱減量率の測定方法が明確でないため、熱減量率が5質量%未満の有機化合物が2種類以上の混合物で混合物としての熱減量率が5質量%以上となるものが「有機化合物(B)」に属するのか否か明確でない、というものである。
(イ)明細書の記載全体からすると、本件発明の「有機化合物(B)」は、1種類でも複数種類でもよいものである。そして、その「熱減量率」を「5質量%以上」としたのは、製造時の熱で大部分が分解して消滅させられるためである。
そうしてみると、本件発明1として、「有機化合物(B)」が複数種類のもので構成されていたとしても、混合物たる有機化合物(B)の熱減量率が5質量%以上であればよいものと理解される。そして、混合物の熱減量率の測定は、混合された状態で実施し得るものと考える。
したがって、本件に係る特許出願が特許法第36条第6項第2項に違反するものとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本件請求項1?14に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件請求項1?14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の単繊維が集束されている炭素繊維束に、質量平均分子量が10000以上の有機高分子物質(A)と、下記測定条件で求められる熱減量率が5質量%以上である有機化合物(B)とを含む混合物が、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1?5.0質量%付着しており、かつ前記有機高分子物質(A)の付着量が樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1質量%以上0.5質量%以下であり、前記有機高分子物質(A)は主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体、主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド、主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル、主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミドからなる群のうちの少なくとも一つである物質を含む、樹脂強化用炭素繊維束。
<熱減量率の測定条件>
試験対象物を、円筒状の容器(底面の直径が50mm、高さ10mm)にW_(0)(g)採取し、50リットル(1気圧、25℃における体積)/分の空気気流中、200℃で10分間熱処理して、熱処理後の固形分の質量を測定してW_(1)(g)とし、次式より算出する。
(熱減量率(質量%))=[(W_(0)-W_(1))/W_(0)]×100
【請求項2】
複数本の単繊維が集束されている炭素繊維束に、質量平均分子量が10000以上の有機高分子物質(A)と、下記測定条件で求められる熱減量率が0.8質量%以上である有機化合物(B)とを含む混合物が、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1?5.0質量%付着しており、かつ前記有機高分子物質(A)の付着量が樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.1質量%以上0.5質量%以下であり、前記有機高分子物質(A)は主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル共重合体、主鎖がアミド結合によって構成されている変性ポリアミド、主鎖がエステル結合によって構成されているポリエステル、主鎖がイミド結合によって構成されているポリイミドからなる群のうちの少なくとも一つである物質を含む、樹脂強化用炭素繊維束。
<熱減量率の測定条件>
空気雰囲気下、対象試験物W_(0)(g)を20℃/minで昇温して熱減量曲線を取得し、150℃における質量のW_(1)(g)と、200℃における質量のW_(2)(g)とを測定し、次式より算出する。
(熱減量率(質量%))=[(W_(0)?W_(2))/W_(0)]×100-[(W_(0)-W_(1))/W_(0)]×100
【請求項3】
前記有機化合物(B)の炭素繊維束に対する付着量が樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.2?4.0質量%である請求項1又は2に記載の樹脂強化用炭素繊維束。
【請求項4】
前記混合物中、[前記有機高分子物質(A)の質量]:[前記有機化合物(B)の質量]で表される質量比が8.5:1.5?2:8である請求項1?3のいずれか一項に記載の樹脂強化用炭素繊維束。
【請求項5】
前記有機高分子物質(A)の主鎖が炭素?炭素単結合によって構成されている請求項1?4のいずれか一項に記載の樹脂強化用炭素繊維束。
【請求項6】
前記有機高分子物質(A)が無水マレイン酸変性プロピレン系共重合体、及びアクリル系重合体からなる群のうちの少なくとも一つであり、前記混合物が、樹脂強化用炭素繊維束の総質量に対し、0.2?1.0質量%付着している請求項1?4のいずれか一項に記載の樹脂強化用炭素繊維束。
【請求項7】
前記有機高分子物質(A)が、水溶性及び/又は自己乳化性である請求項1?4のいずれか一項に記載の樹脂強化用炭素繊維束。
【請求項8】
前記有機化合物(B)の30℃における粘度が、2500Pa・s以下である請求項1?7のいずれか一項に記載の樹脂強化用炭素繊維束。
【請求項9】
前記有機化合物(B)が、ポリエーテル系界面活性剤である請求項1?8のいずれか一項に記載の樹脂強化用炭素繊維束。
【請求項10】
前記有機化合物(B)が、ウレタン樹脂である請求項1?8のいずれか一項に記載の樹脂強化用炭素繊維束。
【請求項11】
請求項1?10のいずれか一項に記載の樹脂強化用炭素繊維束の製造方法であって、前記有機高分子物質(A)及び、前記有機化合物(B)を含有する水分散液又は溶液に、前記炭素繊維束を接触させたのちに、110℃以上、180℃以下で加熱して溶媒を除去する、樹脂強化用炭素繊維束の製造方法。
【請求項12】
請求項1?10のいずれか一項に記載の樹脂強化用炭素繊維束を開繊させたのちに、180℃以上に加熱した熱可塑性樹脂(C)を接触させて含浸させる工程を含む、炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
前記熱可塑性樹脂(C)が、ポリオレフィン及びポリアミドからなる群から選ばれる1以上の樹脂からなる請求項12に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の製造方法によって得られた炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物を、200℃以上に加熱する工程を含む、炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-09-03 
出願番号 特願2015-43870(P2015-43870)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (D06M)
P 1 651・ 113- YAA (D06M)
P 1 651・ 121- YAA (D06M)
P 1 651・ 537- YAA (D06M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 斎藤 克也  
特許庁審判長 石井 孝明
特許庁審判官 藤原 直欣
藤井 眞吾
登録日 2020-02-10 
登録番号 特許第6657571号(P6657571)
権利者 三菱ケミカル株式会社
発明の名称 樹脂強化用炭素繊維束、並びに、樹脂強化用炭素繊維束、炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物及び成形体の製造方法  
代理人 高橋 詔男  
代理人 鈴木 三義  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 大浪 一徳  
代理人 志賀 正武  
代理人 伏見 俊介  
代理人 大浪 一徳  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 伏見 俊介  
代理人 志賀 正武  
代理人 高橋 詔男  
代理人 鈴木 三義  
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