• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61J
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61J
管理番号 1379779
異議申立番号 異議2020-701011  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-12-24 
確定日 2021-09-03 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6712876号発明「錠剤並びに錠剤印刷装置及び錠剤印刷方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6712876号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-3]、[4-5]、6について訂正することを認める。 特許第6712876号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6712876号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成28年3月7日に出願され、令和2年6月4日にその特許権の設定登録がされ、令和2年6月24日に特許掲載公報が発行された。その後、特許異議の申立て期間内である令和2年12月24日に特許異議申立人鈴木啓文(以下「申立人」という。)により請求項1ないし6に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、さらに、令和3年2月1日及び同年同月10日に申立人により上申書が提出され、令和3年3月8日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和3年4月27日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされたものである。

なお、特許権者による訂正の請求について、訂正請求があった旨の通知において期間を指定して申立人に意見を提出する機会を与えたが、申立人からの意見書の提出はなかった。

第2 訂正の請求
1 訂正の内容
令和3年4月27日付け訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6712876号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許に係る願書に添付した明細書、特許請求の範囲を、次のように訂正するものである(下線は、訂正箇所を示す)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記錠剤の品番、製品名、商品名、商標、錠剤提供元、有効成分、容量の何れかを示す文字」と記載されているのを、「前記錠剤の品番、製品名、商品名、商標、錠剤提供元、有効成分、有効成分の含有量の何れかを示す文字」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2、3も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記錠剤の有効成分、容量、シリアルナンバー、服用データの何れかの情報を含む」と記載されているのを、「前記錠剤の有効成分、有効成分の含有量、シリアルナンバー、服用データの何れかの情報を含む」に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「前記錠剤の品番、製品名、商品名、商標、錠剤提供元、有効成分、容量の何れかを示す文字」と記載されているのを、「前記錠剤の品番、製品名、商品名、商標、錠剤提供元、有効成分、有効成分の含有量の何れかを示す文字」に訂正する。
請求項4の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「前記錠剤の品番、製品名、商品名、商標、錠剤提供元、有効成分、容量の何れかを示す文字」と記載されているのを、「前記錠剤の品番、製品名、商品名、商標、錠剤提供元、有効成分、有効成分の含有量の何れかを示す文字」に訂正する。
(5)訂正事項5
(訂正事項5-1)
明細書の段落【0008】、【0009】にそれぞれ「容量」と記載されているのを、「有効成分の含有量」に訂正する。
(訂正事項5-2)
明細書の段落【0010】に「容量」と記載されているのを、「有効成分の含有量」に訂正する。
(訂正事項5-3)
明細書の段落【0013】に「容量」と記載されているのを、「有効成分の含有量」に訂正する。
(訂正事項5-4)
明細書の段落【0005】、【0035】、【0036】、【0038】、【0051】にそれぞれ「容量」と記載されているのを、「有効成分の含有量」に訂正する。

2 訂正の適否
(1)一群の請求項、及び、願書に添付した明細書に係る訂正について
ア 訂正事項1に係る訂正前の請求項1ないし3について、請求項2及び3は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
また、訂正事項2に係る訂正前の請求項2及び3について、請求項3は請求項2を引用しているものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1ないし3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
イ 同様に、訂正事項3に係る訂正前の請求項4及び5について、請求項5は請求項4を引用しているものであって、訂正事項3によって記載が訂正される請求項4に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項4及び5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
ウ また、訂正事項5-1は、一群の請求項[1-3]を対象とし、訂正事項5-2は、一群の請求項[4-5]を対象とし、訂正事項5-3は、請求項6を対象とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項に適合する。
(2)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の「第1表示層」に印刷処理
される文字について、「容量」という錠剤においては不明瞭な記載を「有効成分の含有量」という明確な記載に訂正するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
同様に、訂正事項1は、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2、3についても上記のとおり不明瞭な記載を明確な記載に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の「容量」という不明瞭な記載を「有効成分の含有量」という明確な記載に訂正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2、3に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
よって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
願書に添付した明細書の段落【0035】には、「図2に示すように、第1表示層51には、商品名や有効成分、錠剤提供元、容量などの文字が印字される。ここでは、その一例として、容量(「25」=25mg)と提供元名(「FREUND」)が記載されている。」と記載され、同図面の図2には、表面に「25」という数値が記載された錠剤が看て取れる。このことから、図2の錠剤の表面に記載された数値が、明細書に記載された「容量」であることが理解できる。

ここで、錠剤の表面に記載された数値が、一般的には当該錠剤における「有効成分の含有量」を示すことは、技術常識であり(必要に応じて、申立人が提出した甲第10号証の1頁【組成・性状】欄の表に、オロパタジン塩酸塩OD錠1個中の有効成分がオロパタジン塩酸塩2.5mgである錠剤の表面に「2.5」という数値が、1個中の有効成分がオロパタジン塩酸塩5mgである錠剤の表面に「5」という数値が記載されている点、同様に、同甲第11号証の1頁【組成・性状】欄の表に、アトルバスタチン錠1個中の有効成分がアトルバスタチン5mgである錠剤の表面に「5」という数値が、1個中の有効成分がアトルバスタチン10mgである錠剤の表面に「10」という数値が記載されている点、同甲第12号証の1頁【組成・性状】欄の表に、カンデサルタン錠1個中の有効成分がカンデサルタンシレキセチル2mgである錠剤の表面に「2」という数値が、1個中の有効成分がカンデサルタンシレキセチル4mgである錠剤の表面に「4」という数値が、1個中の有効成分がカンデサルタンシレキセチル8mgである錠剤の表面に「8」という数値が、1個中の有効成分がカンデサルタンシレキセチル12mgである錠剤の表面に「12」という数値が、それぞれ記載されている点参照。)、本件特許の図2において錠剤の表面に記載された数値である「25」が「有効成分の含有量」を示すことは、当業者であれば十分に理解できる。
よって、訂正前の請求項1に記載された「容量」が「有効成分の含有量」を意味することは、願書に添付した明細書の段落【0035】や図2の記載から当業者であれば十分に理解できるものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に実質的に記載した事項であるといえる。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
(3)訂正事項2ないし5について
訂正事項2ないし5は、いずれも訂正事項1と同様に「容量」を「有効成分の含有量」に訂正するものであるから、上記(2)のアないしウに示したのと同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。

3 まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、同条第4項並びに同条第9項の規定において準用する第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-3]、[4-5]、6について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下「本件発明1?6」という。また、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
表裏面の少なくとも何れか一方に印刷処理が施された錠剤であって、
可視光下にて目視可能なように、前記錠剤の品番、製品名、商品名、商標、錠剤提供元、有効成分、有効成分の含有量の何れかを示す文字が可視インクにて印刷処理された第1表示層と、
前記第1表示層と重畳して配置され、可視光下にて目視できず、識別光を照射することにより顕在化されて判読可能となるように、前記錠剤の製造管理・製品管理・投薬管理の何れかのための管理用のバーコードが不可視インクにて印刷処理された第2表示層と、を有することを特徴とする錠剤。
【請求項2】
請求項1記載の錠剤において、
前記管理用のバーコードは、前記錠剤の有効成分、有効成分の含有量、シリアルナンバー、服用データの何れかの情報を含むことを特徴とする錠剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の錠剤において、
前記第2表示層を前記錠剤の側周面に設けたことを特徴とする錠剤。
【請求項4】
表裏面の少なくとも何れか一方に印刷処理が施され、可視光下にて目視可能なように、前記錠剤の品番、製品名、商品名、商標、錠剤提供元、有効成分、有効成分の含有量の何れかを示す文字が可視インクにて印刷処理された第1表示層と、前記第1表示層と重畳して配置され、可視光下にて目視できず、識別光を照射することにより顕在化されて判読可能となるように、前記錠剤の製造管理・製品管理・投薬管理の何れかのための管理用のバーコードが不可視インクにて印刷処理された第2表示層と、を有する錠剤の前記印刷処理を行う錠剤印刷装置であって、
前記錠剤の表裏面が全面的に露出した状態となるように、前記錠剤の側周面を吸着し該錠剤を立設姿勢で支持しつつ搬送する搬送手段と、
前記搬送手段に近接して配置され、前記搬送手段によって搬送される前記錠剤に対し、前記可視インクにより前記第1表示層の印刷処理を行う第1層用印刷手段と、前記不可視インクにより前記第2表示層の印刷処理を行う第2層用印刷手段と、を有することを特徴とする錠剤印刷装置。
【請求項5】
請求項4記載の錠剤印刷装置において、
前記搬送手段は、円盤状に形成された搬送ディスクであり、
該搬送ディスクは、その端面に周方向に沿って設けられ、前記錠剤の側周面を吸着する吸着部を有することを特徴とする錠剤印刷装置。
【請求項6】
錠剤の側周面を吸着支持しつつ該錠剤を搬送し、
搬送される前記錠剤の表裏面の少なくとも何れか一方に対し、可視光下にて目視可能なように、前記錠剤の品番、製品名、商品名、商標、錠剤提供元、有効成分、有効成分の含有量の何れかを示す文字が可視インクにて印刷処理された第1表示層と、前記第1表示層と重畳して配置され、可視光下にて目視できず、識別光を照射することにより顕在化されて判読可能となるように、前記錠剤の製造管理・製品管理・投薬管理の何れかのための管理用のバーコードが不可視インクにて印刷処理された第2表示層とを形成することを特徴とする錠剤印刷方法。」

第4 取消理由について
1 令和3年3月8日付け取消理由通知で通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
なお、本件特許異議申立てにおいて申立てられた申立理由のうち、[理由1](特許異議申立書9頁8行-22行及び13頁15行-23行参照。)が通知された。

[理由1]
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



本件特許の請求項1には、「錠剤の・・・容量の何れかを示す文字が可視インクにて印刷処理された第1表示層・・・を有することを特徴とする錠剤。」と記載されている。
ここで、「容量」とは、広辞苑第6版によると、「1.器物の中に受け入れられる分量。2.電気容量の略。」のことであるが、錠剤は器物ではなく、電気容量を含むものでもないから、錠剤に印刷処理された「容量」が何を表したものであるのか明確でない。
よって、本件特許の請求項1に係る発明は、明確ではない。
また、同様の記載がある本件特許の請求項2、4及び6に係る発明も、同様に明確ではない。
さらに、本件特許の請求項1または2を引用する請求項3、同請求項4を引用する請求項5に係る発明も、同様に明確ではない。

2 上記取消理由についての判断
上記第2のとおり、本件訂正が認められることにより、本件発明1?6の「容量」は、「有効成分の含有量」に訂正された。
そして、「有効成分の含有量」とは、錠剤1錠が含有する有効成分の量であることは、当業者にとって明確である(必要に応じて上記第2の2(2)ウの括弧内に提示した甲第10号証ないし甲第12号証参照。)。
よって、本件発明1?6は、明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。
よって、本件発明1?6に係る特許は、特許法第113条第4号に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
[理由2]
本件発明1?6は、甲1に記載された発明、甲2?甲9に記載の事項、甲14?甲17に記載の事項、及び、甲10?甲13にみられる周知技術、さらには、参考文献1?5に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである(特許異議申立書13頁24行-71頁4行及び令和3年2月10日付け上申書全文参照。)。

甲1:特開2010-260691号公報
甲2:特開2008-279060号公報
甲3:特開平8-7058号公報
甲4:特開2004-217841号公報
甲5:特開2001-64160号公報
甲6:国際公開第2015/060296号
甲7:特開2015-223323号公報
甲8:特開昭61-212374号公報
甲9:特開2015-218268号公報
甲10:オロパタジン塩酸塩OD錠2.5mg 5mg「トーワ」添付文書
甲10の1:東和薬品株式会社オロパタジン塩酸塩OD錠5mg「トーワ」のWebページ
甲10の2:オロパタジン塩酸塩OD錠5mgの剤形写真
甲11:アトルバスタチン錠5mg 10mg「DSEP」添付文書
甲11の1:第一三共エスファ株式会社アトルバスタチン錠5mg「DSEP」のWebページ
甲11の2:アトルバスタチン錠5mgの剤形写真
甲12:カンデサルタン錠2mg 4mg 8mg 12mg「オーハラ」添付文書
甲12の1:大原薬品工業カンデサルタン錠4mg「オーハラ」のWebページ
甲12の2:カンデサルタン錠4mgの剤形写真
甲13:バルサルタンOD錠20mg 40mg 80mg 160mg「トーワ」添付文書
甲13の1:東和薬品株式会社バルサルタンOD錠20mg「トーワ」のWebページ
甲13の2:バルサルタンOD錠20mgの剤形写真
甲14:特開2009-288961号公報
甲15:特開2011-123668号公報
甲16:「電子スクラップシステム」情報処理学会論文誌Vol.47 No.7(2006年) P2168-2181
甲17:「不可視バーコードにおける印刷支援システム」情報処理学会論文誌Vol.50 No.11(2009年) P2607-2617
参考文献1:商標登録第5308088号公報
参考文献2:「錠剤の大きさが虚弱高齢者の服薬に与える影響-服薬模擬調査による検討-」 日本老年医学会雑誌 2007年44巻5号 P627-633
参考文献3:「内用固形製剤の服用しやすさ,摘みやすさに及ぼす製剤の大きさ・形状の影響(第1報):高齢者と学生の比較」 医療薬学 2006年32巻8号 P842-848
参考文献4:直径8mmの錠剤に4mm角の黒い紙片を載せた実験写真
参考文献5:QRコードドットコム(株式会社デンソーウェーブ)のWebページ FAQ 「5 QRコードの最小サイズ/最大サイズは?」の項目 コード領域を確定するためのポイント

2 甲各号証の記載
(1)甲1
甲1文献には、以下の記載がある(下線は当審が付した。以下同様。)。

ア 「【0001】
この発明は各種の薬剤,化学剤,健康補助食品等の扁平形状に形成された錠剤の表面又は裏面に印刷を施し又は表面を撮像により検査する等の作業を行う際に、錠剤を起立姿勢にホールドして搬送する錠剤の作業用搬送装置に関する。」

イ 「【0006】
上記課題を解決するための本発明の装置は、第1に横方向の軸1回りに回転又は回動駆動される搬送体2の外周面に、側面が扁平な錠剤3の周面を上下方向に向けた起立姿勢で収容するポケット部4を設け、上記ポケット部4に支持された錠剤3の表面又は裏面に対して作業を行うことが可能な錠剤の作業用搬送装置において、上記ポケット部4が、錠剤3が上方より収容されることにより搬送方向前後への移動、該搬送方向に対して交差方向となる両側方への移動及び姿勢変更が規制されるように搬送体2に凹設された凹部からなることを特徴としている。
【0007】
第2に、収容された状態の錠剤3の側面が側方に向かって露出するように凹部の両側壁に切欠状の側方開放部4aを設けたことを特徴としている。

ウ 「【0018】
以下図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発の錠剤の作業用搬送装置を適用した搬送装置の基本的構成を概念的に示す側面図であり、図2(A)?(C)は、それぞれ搬送体に形成されたポケット部の構造を示す拡大側面図,拡大平面図及び拡大正断面図である。前述した特許文献1等と同様に円中心に挿通される横軸(軸)1によって回転駆動される起立円板状の搬送体2の周面には、搬送体2の回転支点である横軸1に向かって窪んだ(図示する例では側面視円弧状に窪んだ)凹部から構成されるとともにその内部に錠剤3を上方から収容するポケット部4が、所定間隔(図示する例では等間隔)毎に、満遍なく複数配設されている。」

エ 「【0021】
上記形状の多数の錠剤3は、供給方向に沿って一列状に配された状態で供給部6内に収容され、搬送体2の正転方向(図1における時計回り方向)への回転に伴い、供給部6から各ポケット部4に錠剤3が順次1個づつ供給される。具体的には、搬送体2が正転方向に回転駆動されると、空のポケット部4が供給部6の先端に変位し、供給部6内の錠剤3が自重によりポケット部4内に傾斜落下する一方で、搬送体2の正転方向への回転が停止されると、ポケット部4内に収容された錠剤3によって、供給部6の先端の錠剤3が受止められ、錠剤3の供給が停止される。
【0022】
ポケット部4に供給された錠剤3は、起立姿勢状態且つ搬送方向(搬送方向前後,前後方向)への移動及び搬送方向に対して直交方向(交差方向)となる左右方向(左右側方,側方)への移動が規制された状態で該ポケット部4に保持されて、搬送体2の正転方向への回転によって下流側に搬送される。搬送される錠剤3は、搬送体2の直下位置よりも若干搬送上流位置(搬送方向後方位置)で、自重によりポケット部4から放出落下させられ、ボックス状又はホッパー状の回収部7内に受け取られ、次工程に回される。
【0023】
搬送体2の周縁部における供給部6側と錠剤回収部7側との間には、搬送途中の錠剤3の左右両側面又はいずれかの側面に印刷を施す側面用印刷ヘッド(印刷部)8a,8bが搬送体2に向かって配置され、さらにその上流側又は下流側の何れかの位置(図示する例では、下流側)には、必要に応じポケット部4の開放端(上部)側より露出している錠剤3の外周面に対して印刷を施す周面用印刷ヘッド(印刷部)9が搬送体2の中心向きに配置されている。上記のような機構により、搬送途中、錠剤3の左右側面の片側又は両側と、錠剤3の外周面とに必要な印刷が施される。」

オ 「【0027】
すなわち、ポケット部4を構成する凹部は、前記凹溝4cと、外周側を開放する外周開放部4bと、左右両側方を開放する側方開放部4aとを備え、さらに外周開放部4bの搬送方向前方開放端部には、側面視で搬送下流側に向かって外方に傾斜(仰角を形成)する傾斜面をなすように切欠かれたガイド面4dが形成されてポケット部4の全体が構成されている。くわえて、傾斜面であるガイド面4dにも横断面視V字状、角溝状、円弧状又は放物線状の凹溝4cが形成されている。
【0028】
上記凹溝4cは、ポケット部4内に錠剤3を収容した際、谷形の溝の両傾斜面(左右両側面)が、錠剤3の両側面の下端部及び外周面に、両側から同時に接触(線接触)して錠剤3を受止めることにより、錠剤3を凹溝4cの中心位置において、起立姿勢で、左右方向への移動を規制した状態で、受止めて保持する。くわえて、側面視でポケット4をなす凹部の底部側が半円形に形成されているため、錠剤3の外周面に少なくとも搬送方向前後から接触(図示する例では、側面視で底部をなす内周面の全範囲を錠剤3の外周面に接触)させて錠剤3の搬送方向前後の移動を規制する。ちなみに、凹溝4cは上記のように収容された錠剤3を凹部内で位置決めして起立姿勢が保持すれば必ずしも上記形状に限定されるものではなく、例えば錠剤3の外周面の下半部に面接触、線接触又は接触して搬送方向前後の移動を規制するものであってもよい。」

カ 「図1



キ 「図2



ク 上記エの【0023】の記載及び上記カの図1から、側面用印刷ヘッド8a、8bが搬送体2に近接して配置されていると認められる。

上記ア-キにおいて摘記した記載内容及びクの認定事項を総合すると、甲1には、次のとおりの発明(以下、「甲1-1発明」?「甲1-3発明」という。)が記載されていると認められる。

[甲1-1発明]
「両側面の少なくとも何れか一方に印刷処理が施された錠剤3。」

[甲1-2発明]
「錠剤3の両側面の少なくとも何れか一方に印刷処理を施す錠剤印刷装置であって、
前記錠剤3の側面が露出した状態となるように、前記錠剤3の外周面を受け止め該錠剤3を起立姿勢で保持しつつ搬送する搬送体2と、
前記搬送体2に近接して配置され、前記搬送体2によって搬送される前記錠剤3に対し、印刷処理を施す側面用印刷ヘッド8a、8bと、を有する錠剤印刷装置。」

[甲1-3発明]
「錠剤3の外周面を受け止め錠剤3を起立姿勢で保持しつつ搬送し、
搬送される前記錠剤3の両側面の少なくとも何れか一方に印刷処理を施す錠剤印刷方法。」

(2)甲2
甲2文献には、以下の記載がある。

ア 「【0001】
本発明は、包装された医薬品において、医薬品が正規品であることを判定するシステム、および、その方法に関するものである。
【0002】
従来から、錠剤やカプセル剤や内包等の医薬品に識別コードやロゴをプリントすることによって、製薬のタイプ、投薬量(用量)、供給元の識別が可能なようにしてきた。また、それよって異種薬剤の混入を発見できるようにしている。
ここで、識別コードとは、錠剤やカプセルや内包に直接に印刷または刻印される文字や絵文字情報であって、会社コードと製品コードから構成される。会社コードは、日本薬連に登録された識別情報である。製品コードは、会社が管理するために用いる特定情報である。」

イ 「【0004】
ところで、特許文献1の技術では、錠剤に医薬品を特定する情報をマーキングしてから包装するまでのあいだに偽造品混入する恐れがあるという欠点があった。
あるいは、悪意をもった人が、偽造した医薬品を包装あるいは瓶詰めして市場に流通させてもこれを発見できないという問題点があった。
【0005】
本発明はこのような点を解決するためになされたものであって、本発明の課題は、包装された医薬品を錠剤・カプセル・内包の単位で正規品と偽造品の判別を行うシステムを提供することである。」

ウ 「【0018】
図1は、本発明による偽造判定システムの概要を説明する図である。偽造判定システム1は、薬剤識別サーバ装置100と、個体識別錠報情報読取装置200と薬剤(錠剤、カプセル、内包)801から構成される。薬剤(錠剤、カプセル、内包)801には、薬剤801の個体を一意に識別する個体識別情報が記録されている。薬剤識別サーバ装置100と個体識別情報読取装置200はネットワークに接続され、個体識別情報読取装置100は、薬剤(錠剤、カプセル、内包)801に記録されている個体識別錠報を読取り、薬剤識別サーバ装置100に記録されている個体識別情報と一致するかどうかによって、薬剤801が偽造品か正規品かを判定する。
【0019】
薬剤識別サーバ装置100は、コンピュータプログラムによって制御されるサーバコンピュータである。薬剤識別サーバ装置100は、個体識別情報が記憶されている。
【0020】
図2は、薬剤(錠剤、カプセル、内包)801に個体識別情報を記録する方法を説明する図である。
薬剤識別サーバ装置100と、薬剤製造検査装置300と、薬剤包装装置500とがネットワーク900接続されて構成される。
【0021】
薬剤製造検査装置300は、電子制御される製造機械である。薬剤製造検査装置300は、個体識別情報(以下、個体ID)が記録された薬剤801(錠剤、カプセル、内包)を製造する。」

エ 「【0028】
錠剤製造装置330は、錠剤を製造して、その錠剤に識別コードを印刷または刻印する。
印字装置320は、錠剤に個体IDを記録する。
錠剤印字面整列機構装置340は、識別コードが記録されていない錠剤の面(以下、裏面)を表にして、搬送コンベア390に乗せる。
【0029】
なお、その錠剤は、印字装置320への搬送コンベア390にのせる前に表裏反転する必要がある。従来の錠剤製造方法では、これは必要ではなく、PTP包装物を見ても、必ずしもすべての面で識別コードが上を向いているわけではなく、それを成り行きでブリスターパッケージに格納している場合が多い。」

オ 「【0031】
印字制御装置310では、変換処理部314が、たとえば、個体IDを含む印字データから、2次元コード印字パターンやバーコードの印字パターン等の図形データに変換して、印字指示発行部315がこれをキャッシュしている。タイミング制御装置360からタイミング情報を受理した印字指示発行部315は、キャッシュしている印字パターンデータと印字指示を印字装置320に送って印字を実行させる。」

カ 「【0050】
図6は、2次元コードを印刷した錠剤の例である。
錠剤の表面には、一般的に、識別コード(=製薬会社コードと製品コードの組み合わせ情報)が印刷されているので、錠剤の裏面に、個体IDを含む2次元コード802を印刷する。
2次元コード802は、インクジェット印刷、あるいは、レーザー刻印等を用いて錠剤に記録することが可能である。」

キ 「【0053】
図7は、PTP包装物800の説明図である。
PTP包装800には、2次元コード803が記録されている。
2次元コードは、PTP包装を識別あるいは特定する情報を含む情報が符号化されている。
なお、PTP包装される錠剤801には、個体IDを含む2次元コード802が記録されている。
PTP包装される錠剤801は、図10に例示したように、個体IDが露出しないように個体ID記録面を隠して包装してもよい。そうすることによって、偽造品を作る場合にPTP包装から錠剤を取りださなければ2次元コードを確認できないようにできる。」

ク 「【0057】
図8は、個体IDの印字処理フローチャートである。
(1)個体IDのデータセットを受け取り、それを元に印字用データを生成し、それを印字用データベース302に格納する。(ステップS201)
このとき、個体IDにロット管理データベース301のデータを付加して、錠剤とロットとの関連付けておけば製造管理や不良時のリコール対策が可能である。
(2)薬品成分330と表面コーティング材料331を、それぞれ錠剤製造装置330の薬品成分用ホッパー332と、表面コーティング材料用ホッパー333に供給して、錠剤を製造する。(ステップS202)
(3)製造された錠剤に、識別コードを刻印する。(ステップS203)
(4)錠剤印字面整列機構装置340は、識別コードが刻印された錠剤の面を裏返す。(ステップS204)
(5)印字装置320は、裏返された錠剤に個体IDを用いて符号化した2次元コードを印字する。(ステップS205)このとき、印字用の2次元コードの画像データをタイミングを合わせて生成してデータを印字インクジェットヘッドあるいはレーザー刻印照射ヘッドに送信する。
(6)個体IDを検査照合データとして保持する。(ステップS206)」

ケ 「【0059】
次にこれを包装する工程に関して説明する。
図10は、錠剤PTP包装工程のフローチャートである。
PTP包装のシートもしくはバルクの瓶詰めの際のラベルに振られたコードと錠剤印字コードとを対応付けおくことは、偽造防止上有効な措置である。
(1)選別装置370にて選別したあとで、その印字状態が良好と判定された錠剤をPTP包装単位に分ける処理を行う。(ステップS401)
(2)錠剤の二次元コードを撮影できるように、二次元コードが記録される面を表にする。(ステップS402)
(3)二次元コードを撮影できるように面を表にした錠剤を撮影して、個体IDを復号する。(ステップS403)
(4)PTP包装される錠剤の個体IDを用いて、PTP包装の識別情報を作成して、両者を対応付ける。(ステップS404)
(5)PTP包装の識別情報を印刷するか否かを判定する。(ステップS405)
(6)そしてPTPパッケージ印字を行う場合には、PTP包装される各錠剤の個体IDに対応付けられたPTP包装の識別情報を、PTP包装材に印字する。(ステップS406)
(7)PTP包装の識別情報を印字されたPTP包装材を用いて、対応する錠剤を包装する。(ステップS407)このとき、錠剤の面は、PTP包装したときに、二次元コードが隠れるように面を揃える。これは、外から観察したのでは二次元コードの情報を読み取れないようにするためである。従って、PTP包装を開封しなくては、完全な偽造物を作ることは出来ないことを実現できる。
【0060】
図11は、バルク瓶詰め工程のフローチャートである。
同様にバルク瓶詰めに関しては、錠剤の瓶単位選別工程501で瓶に封入する錠剤をまとめて、さらにバルク瓶を識別する情報をラベル、RFIDに記録する。
(1)選別装置370にて選別したあとで、その印字状態が良好と判定された錠剤を瓶詰め単位に分ける処理を行う。(ステップS501)
(2)錠剤の二次元コードを撮影できるように、二次元コードが記録される面を表にする。(ステップS502)
(3)二次元コードを撮影できるように面を表にした錠剤を撮影して、個体IDを復号する。(ステップS503)
(4)瓶詰めされる錠剤の個体IDを用いて、瓶詰め識別情報を作成して、両者を対応付ける。(ステップS504)
(5)瓶詰め識別情報をラベル印刷するか否かを判定する。(ステップS505)
(6)ラベルにその印字を行う場合には、ラベル印字する。(ステップS506)
(7)瓶詰め識別情報をRFIDに記録するか否かを判定する。(ステップS507)
(8)RFIDに記録する場合には、瓶詰め識別情報をRFIDに記録する。(ステップS508)
(9)錠剤を瓶詰めする。(ステップS509)
(10)印刷したラベルを薬瓶に貼り、RFIDを取り付ける。(ステップS510)なお、ラベル印字に変えて、もしくはラベル印字と並行して、RFIDへのデータ格納工程508により、RFIDにその紐付けられた情報を格納するという方法をとることも出来る。なお、ラベル印字とRFIDの一方だけを実施してもよい。ここでは、最後に薬瓶にラベルを貼っているが工程上瓶詰めをあとに持ってくるなどの工程入れ替えは適宜可能である。
【0061】
(実施例1)
図12は、二次元コードを錠剤の側面に記録した例である。
錠剤801の側面に、個体IDを含む二次元コード802を記録した例である。」

コ 「図1



サ 「図2



シ 「図3



ス 「図6


セ 「図7


ソ 「図12



上記ア?ソにおいて摘記した記載内容を総合すると、甲2には、次のとおりの技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲2技術]
「表裏面の両方に印刷された錠剤801であって、
前記錠剤801の製薬会社コードと製品コードからなる識別コードを示す文字や絵文字情報が印刷された表面と、
ロット管理データベース301のデータを付加した個体IDを含む2次元コード802が印刷された裏面と、を有する錠剤801、そのための印字装置320、及び、錠剤印刷方法。」

(3)甲3
甲3文献には、以下の記載がある。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は扇状あるいは多角形の集合体からなる情報処理記号及び該記号による情報処理システム(以下コードと記載)に係り、特にマルチメデアショッピング、機密情報の管理、調剤等の小型正確性を要求される業務への利用方法に係る。」

イ 「【0006】第2には、扇形あるいは多角形の集合形が、既存のバーコードが白黒による判断に対して、本発明コードが調布体の場合は明暗、色彩の結合により更には蛍光、発光、吸光塗料により着色され、0?9の番号として光学あるいは放射線学的に認識できるようにした後、これを好ましくはJIS漢字コード等による規格文字に当てはめる事により、バーコードに類似した情報記録形式を提供する。」

ウ 「【0012】3)医薬品必須添付情報の管理並びに機器による自動化調剤、誤調剤確認業務にあっては前記と同様、機密情報の管理、調剤録の管理、調剤技術報酬の請求を本発明コードとコンピュータにより自動化する目的と、更には、軟膏チューブ、錠剤、カプセル剤の表皮、包装に本発明コードが記載されている事により、これを機器を使用して機器判別による自動化調剤を実現するものである。更には、本発明コードがX線吸光物質で印刷されているような場合は調剤された薬袋中の本発明コードをX線透視により読み取る手法によって、誤調剤確認業務も可能とする。」

エ 「【0015】正方集積コード線条配列による情報記載例
既存のバーコードのライン部分が正方形の集合体によって直線状に形成された物あるいは、既存のバーコード形態をなさず、正方形の1個以上の集合体から形成されたものがある。この場合、正方形あるいはこの集積体は方向性認識のための工夫がされている事を特徴としている。なお、投影物等での本発明コードは通常集積型が使用されるが、正確性を更に必要とする場合は、バーコードのライン形式のものが利用される。錠剤のような充填時座りの良い小型物に対しては本発明コードは1個でも認識は可能であるが、丸剤、カプセル剤のような充填時方向性が定まらない座りの悪い小型物に対しては周遊タイプあるいは、中心点から90度ごとに本発明コードを調布する等の工夫が必要である。」

オ 「【0029】試験例3(自動化調剤)
錠剤は直径1cmの白色コーテング錠を使用し、錠剤表面、裏面2ケ所に本発明の正方集積コード1個を印刷する方式で4成分(コード1234)を標識した。カプセル剤については1号カプセルに薬剤を充填し、カプセル表面円周に正方集積コード線条方式により4成分(コード1234)を標識した。8成分を混合状態においた後調剤は錠剤4個、カプセル剤4個収納可能なPTP包装タイプの薬剤収納容器を使用して、予め収納位置を決定した後、8成分を混合状態においた後コード読取器を使用して記載番号の読取りを行い、規定の位置に錠剤、カプセル剤を収納した。本試験例では、機器によりコードを読取り、所定の収納場所に薬剤を収納する方法をとったが、これを連続作業として、コードを読取から収納、包装をコンピュータ操作により機器で自動的に行う事は容易である事が判明した。」

カ 「【0032】商品識別、郵便類の配送区分、電話番号等バーコードに類似した利用の外、小型、不鮮明であっても判読が可能となり、画像中の物品での読取、特種光線による包装物の中身の読取もできる。例えば、画像中での利用ではマルチメデアショッピング{画像中の物品をコード処理する事により、ドラマカタログ、ドラマコマーシャル(CD-ROM,LD-ROM,CDに収まったドラマを含む)}が、小型物品の例では、機密を要する採血瓶等への必要情報の記載、薬品類、注射アンプル、錠剤、カプセル剤の表皮、包装にこれをつける事により、配合禁忌、用法、容量等の必要情報の記載を可能とした。成分名、使用量等、患者の機密を必要とする情報が、機器により確認でき、更には正確性を必須とする調剤作業が本発明の情報記載手法により機器での分包、包装後の確認作業を可能とする。機器での正確性を高め、機密保護、プライベートの保護効果も高い。」

上記ア?カにおいて摘記した記載内容を総合すると、甲3には、次のとおりの技術(以下、「甲3技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲3技術]
「X線透視により読み取ることができるように、前記錠剤の成分名等の情報が確認できるコードがX線吸光物質にて印刷された面を有する錠剤、そのための錠剤印刷装置、及び、錠剤印刷方法。」

(4)甲4
甲4文献には、以下の記載がある。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生鮮食品表面または食品に接触するおそれのある食品包装材料に対しても安全性の高いマーキングするのに適し、一般の可視光での判別がしにくく、紫外線によって確認のとれるインキに関する。」

イ 「【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のインキは本質的に紫外線の照射により識別可能となる色素として食品添加物材料を用いるものである。食品添加物材料が、麹酸およびもしくは、ニコチンアミドから選ばれる1種である。麹酸およびミコチンアミドは、食添用の材料として認められている。
【0016】
本発明では、紫外線照射において、無色であった印字面が青色ないし黄緑色発光を示すので、印字基材との発光の差違による識別を果たす。この識別のため、麹酸、ニコチンアミドは、インキ中に少なくとも0.1重量%の濃度を必要とする。また、インキの種類によっては、含有量を多くすることも可能であるが、隠しインキとしての特性から印字部分の識別のしにくい範囲にてもちいる。また、インクジェット用としては、吐出の信頼性を容易とするため10重量%以下にて用いることが好ましい。」

ウ 「【0027】
なお、食品としては、生鮮食品類、りんご、みかん、スイカ、レモン、トマト等のくだものおよび野菜類、卵、加工食品、インスタント食品、乾燥食品、液体食品、貯蔵用食品等種々のものが対象物であり、とくに、品質の特性である製造年月日、生産地、生産場所、生産工程、製品情報、品質情報等の管理、記憶、測定器等のデータを連動させてマーキングを行うと、品質管理、流通管理ができる。又、本発明のインクジェットインキは、食品に直接接触する恐れのある包装材料に使用することができる。このような包装材料はポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンのようなプラスチック材料である。」

エ 「【0030】
生産地、収穫日、糖度等のマーキングの施された生鮮食品としては、みかん、りんご、スイカ等の果物、野菜、肉類、鮮魚等がある。
食品包材としては、パン、菓子、ラーメン、麺類、ジュース、牛乳、また、食品同様、薬剤、化粧品、シップ薬、等の口にするもの、食品と同様に注意の必要なもの等への適用が可能である。」

上記ア?エにおいて摘記した記載内容を総合すると、甲4には、次のとおりの技術(以下、「甲4技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲4技術]
「一般の可視光での判別がしにくく、紫外線によって確認のとれるインキにより、製造年月日、製品情報、品質情報等のマーキングが施された薬剤、そのための薬剤マーキング装置、及び、薬剤マーキング方法。」

(5)甲5
甲5文献には、以下の記載がある。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、錠剤、錠剤を検査する検査装置、錠剤を検査する機能を有するPTP包装機および錠剤を検査する機能を有する分封機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の錠剤は、メーカーの記号または錠剤の型式を表す数字またはアルファベットが印刷されていて、包装容器に収納されていない裸の状態の錠剤の品種を特定するためには、錠剤に印刷された記号や数字等に加えて形状や色から専門家が経験を基に鑑定をしていた。しかし、その鑑定作業は非常に手間のかかる作業であった。また、小さな錠剤に数字またはアルファベットを表すのでせいぜい3桁程度の情報しか表すことができず、数千種類とも数万種類ともいわれている製薬会社から商品化されている多くの種類の錠剤を、全てこの表示により区別することはできなかった。従って、専門家の鑑定によっても特定が困難な場合も少なくなかった。また、これらの小さな数字等を連続して大量に確認することは人には困難な作業であり、一方これらの錠剤上の数字等は画像処理装置により処理するためのものではないことから、画像処理装置によって読み取ることも困難であった。例え読み取ったとしても型式を特定する上では不十分だった。ましてや、その生産時期、ロット、使用期限、生産場所などの情報は表示できないので、何時どこで作られた錠剤であるか、あるいは使用期限内か否かなどについては、知る由もなかった。従って、病院などで患者に与える錠剤の使用期限を確認することは不可能である。また、製造工程においても後の工程、例えば包装工程などで錠剤の異常が見つかったとしても、そのロットを特定することは容易ではなかったので、異常に対する対応を困難にしていた。」

イ 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、錠剤の品種の情報を小さな錠剤上に確実かつ明確に表現した錠剤を提供することであり、また、製造年月日、ロットあるいは使用期限などの情報を錠剤表面に表現した錠剤を提供することであり、また、錠剤表面に表現した品種などの情報を画像処理装置で容易に読み取ることができる錠剤を提供することであり、また、錠剤に表した品種等の情報を確実に素早く読み取ることができる検査装置を提供することであり、また、異品種の混入を確実に検査することができるPTP包装機および異品種の錠剤の混入を確実に検査することができる分封機を提供することにある。」

ウ 「【0020】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図と共に以下に説明する。第1の実施の形態である固形製剤は、図1に示すように固形製剤である錠剤1の表面に、少なくとも品種を表す画像処理に適したコードである二次元コードを表している。画像処理に適したコードとは、二値化により処理することができ、スキャンの方向がコードのX軸またはY軸と一致していなくても、コードの存在、位置および範囲を容易に知ることができるコードである。例えば、アラビア数字などの文字はパターンマッチングにより認識されるので、X軸、Y軸およびサイズが完全に一致していなければ、それが数字であることを認識することができないので画像処理に適していないが、一般的に広く使われているバーコードは少々角度がずれていても白色部分と黒色部分の比により処理されるので、例えば画像メモリー上のデータを3乃至5方向から検索することによりバーコードの存在および範囲を確認することができる。図には表れていないが、錠剤の反対側の面にも同一のコードが表されている。本実施例においては、錠剤は糖衣を施した白色であり、錠剤1の正面図である図1および側面図である図2に示すように円柱状である。図3に錠剤のほぼ中央に表される二次元コードを示す。二次元コードは、特開平10-214317に提案されているように、二進コードで表されるデータをセル化して、二次元のマトリックス状のパターンとして配置したものであり、一つの二次元コードの存在を表す位置決め用シンボルと、データセルの座標の検出に用いたり二次元コードのサイズ情報あるいはフォーマット情報を表す制御コード領域およびデータ領域からなっている。また、本実施例における二次元コードは黒のインクにより印刷され、インクの黒色と錠剤の地色である白色により表されている。」

エ 「【0024】また、前記コードにロット番号を含むことにより、後に異常のある錠剤が見つかった場合でも、そのロットが容易に特定され、異常に対する対応が容易になる。また、前記コードが、二進コードで表されるデータをセル化して、二次元のマトリックス状のパターンとして配置した二次元コードであるので、小さな錠剤においても多くの情報を無理なく表すことができる。従って、多くの品種を容易に区別することができると共に、品種以外の情報、例えば製造年月日、ロット、使用期限等の情報も表すことができる。また、前記二次元コードが、中心をあらゆる角度で横切る走査線において同じ周波数成分が得られる位置決め用シンボルを、所定位置に有するので、画像処理装置において容易に二次元コードの位置を特定することができる。従って、PTP包装機上の包装された錠剤や、分封機により分封された錠剤のように、錠剤の向きが定まっていない状態でも錠剤に付した二次元コードを容易に特定することができる。」

オ 「【0026】また、コードを錠剤の両面に設けたので、例えば、光を透さない蓋フィルムによりPTP包装された後の錠剤においても、透明な容器フィルム側から撮像することにより、常に錠剤の品種等を検査することができる。また、錠剤が糖衣錠であるので、錠剤の表面を滑らかにする事ができるので微細なコードを表示することができる。また、錠剤に付したコードの色が黒色であり錠剤の色が白色であるので、例えばレンズ錠のような表面が単純な平面でない錠剤においても、画像処理装置においてたとえシェーディング補正しなくとも二値化によるコードの読み取り作業が容易である。」

カ 「【0028】また、錠剤は、糖衣錠に限らずコードが印刷等により表現できれば素錠等でも良い。また、コードを錠剤に表すには印刷に限らず、例えば錠剤の表面を色の異なる二層構造とし表面の層をレーザー等により破壊することにより、下の層の色が表面に表れることにより表しても良いし、レーザーにより変色する層を錠剤の表面に設けレーザーを照射することにより変色させて表す等しても良い。また、錠剤に付したコードは、画像処理装置によりそのコードの位置、向き、範囲、大きさを容易に特定することができるデコード可能なコード、つまり画像処理に適したコードであれば、例えば図5に示すように、一般にバーコードと言われる一次元的コードであっても良い。ただし、バーコードの場合は二次元コードに比べて、同一面積に表示できる情報は少なくなる。」

上記ア?カにおいて摘記した記載内容を総合すると、甲5には、次のとおりの技術(以下、「甲5技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲5技術]
「品種情報、製造年月日、ロット、使用期限などの情報が黒のインクと錠剤の地色である白色により表されたコードを両面に印刷した錠剤1、そのための錠剤印刷装置、及び、錠剤印刷方法。」

(6)甲6
甲6文献には、以下の記載がある。

ア 「[0001] 本発明は、配薬作業を支援するための配薬支援システムに関する。」

イ 「[0033] 前記薬品分包装置3は、前記薬品分包装置3を制御する制御部31、及び前記薬包81に情報を印刷する分包プリンタ32を備える。前記制御部31は、CPU、ROM、及びRAMなどを備える。前記分包プリンタ32は、前記制御部31からの制御指示に従って、前記薬包81に、前記薬包81に収容される薬品を服用する服用者を示す服用者ID(服用者識別情報の一例)、前記薬包81に収容される薬品の服用時期、及び予め定められた配送先識別情報を含む第1配薬情報を印刷する。前記配送先識別情報は、前記薬包81の薬品の服用者が入居している前記老健施設Bを示す配送先ID又は配送先名などの情報であって、後述の服用者マスターに登録されている。なお、前記服用時期を示す文字に代えて、又は前記服用時期を示す文字と共に、前記服用時期ごとに予め定められた服用時期コードの数字(例えば2桁の数字)又は前記服用時期を示すピクトグラムなどの画像が前記薬袋81に印刷されることも考えられる。ここで、前記服用時期コードの数字は文字として印刷されてもよいが、前記薬品分包装置3が前記ピクトグラムを印刷する機能を有する場合には、前記制御部31がその機能を利用して、前記服用時期コードの数字の画像として予め登録された画像を前記ピクトグラムに代えて印刷することも考えられる。これにより、既存のシステムにおいて前記薬包81に前記服用時期コードの数字を印刷させることが可能である。
[0034] 特に、前記薬品分包装置3では、前記分包プリンタ32により、前記第1配薬情報を示す一次元コード又は二次元コード等のコード811(図4参照)が前記薬包81に印刷される。ここに、前記分包プリンタ32を用いて前記薬包81に前記第1配薬情報を印刷するときの前記制御部31が第1記録手段の一例である。なお、前記薬包81に貼付されるラベルなどの第1記録媒体に前記第1配薬情報が印刷されることも他の実施形態として考えられる。また、前記薬包81にICタグのような第1記録媒体が付されることも考えられる。この場合、前記薬品分包装置3が、前記第1記録媒体に前記第1配薬情報を記録するICリーダーライタのような記録手段を備える構成が考えられる。」

ウ 「[0072] また、前記ステップS2において、前記薬品分包装置3では、前記制御部31が、前記分包プリンタ32を用いて、図4に示すように、前記第1配薬情報を示す前記コード811を前記薬包81に印刷させる。前記第1配薬情報には、前記服用者ID、前記服用時期及び前記配送先識別情報が含まれる。なお、前記薬包81には、服用者名、服用日時、及び服用時期なども印刷される。
[0073] さらに、前記ステップS2において、前記制御部11は、前記プリンタ4を用いて、図4に示すように、前記第2配薬情報を示す前記コード822を、前記薬袋82に貼付される前記ラベル821に印刷させる。前記第2配薬情報には、前記服用時期及び前記配送先識別情報が含まれる。なお、前記薬袋82には、老健施設名、服用日時、及び服用時期なども印刷される。」

エ 「[0093]<ステップS25>
ステップS25において、前記制御部31は、前記分包データに含まれた当該データについて分包動作を実行する。具体的に、前記制御部31は、前記分包プリンタ32により、服用者の氏名及び服用時期と前記第1配薬情報を示す前記コード811とを前記薬包81に印刷すると共に、当該データに対応する薬品を前記薬包81に分包する。」

オ 「[0099] なお、本実施の形態では、前記薬品分包処理において前記時期別分包処理が実行される場合を例に挙げて説明したが、前記薬品分包処理において前記服用者別分包処理が実行されてもよい。ここに、図9(B)は、図6に示した前記グループ処方データに従って「老健施設B1」を対象に前記服用者別分包処理が実行された場合の分包結果を示す図である。図9(B)に示す分包結果では、一の服用者が服用する薬品が服用時期ごとに連続して分包されている。具体的に、図9(B)に示す例では、服用者「湯山一郎」の△月△日の朝食後、昼食後、夕食後、△月□日の朝食後、昼食後、夕食後のそれぞれに対応する前記薬包81が連続して形成されている。そして、服用者「湯山一郎」の後は、同一の前記老健施設B1に属する服用者「湯山二郎」についても同様に、服用時期ごとに対応する前記薬包81が連続して形成される。」

カ 「図4


キ 「図9



上記ア?キにおいて摘記した記載内容を総合すると、甲6には、次のとおりの技術(以下、「甲6技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲6技術]
「服用者名、服用日時、及び服用時期が印刷される部分と、
服用者ID、服用時期及び配送先識別情報が含まれる二次元コード811が印刷される部分と、を有する薬包81、そのための薬包印刷装置、及び、薬包印刷方法。」

(7)甲7
甲7文献には、以下の記載がある。

ア 「【0001】
本発明は、表面に方向を識別するための割線などのマークを有する錠剤の表裏に対して印刷処理を行う錠剤印刷装置および錠剤印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医薬品の錠剤には薬を識別するためのコードが印字されていることが多い。典型的には、錠剤に印字される識別コードは、例えば製造メーカーを表す会社コードや製品を区別するための製品コードなどである。このような識別コードは、主として医療機関や薬局において調剤のために用いられる。また、錠剤の誤飲防止(例えば、降圧剤と昇圧剤との誤飲防止)のために、患者にも明確に認識できるような表示を錠剤に付することもある。さらに、医薬品のトレーサビリティの目的で錠剤に番号を付するという要望もある。
【0003】
このような識別コードなどは錠剤の表面に刻印されることもあるが、視認性に問題があるために印刷によって錠剤に直接印字を行うことへのニーズが増加している。特許文献1,2には、インクジェットプリンタを用いた錠剤への印刷技術が提案されている。」

イ 「【0049】
第1インクジェットヘッド61および第2インクジェットヘッド62は、複数の吐出ノズルを備えており、それら吐出ノズルからインクジェット方式によってインクの液滴を吐出する。インクジェットの方式は、ピエゾ素子(圧電素子)に電圧を加えて変形させてインクの液滴を吐出するピエゾ方式であっても良いし、ヒータに通電してインクを加熱することによってインクの液滴を吐出するサーマル方式であっても良い。本実施形態においては、医薬品の錠剤に印刷処理を行うため、第1インクジェットヘッド61および第2インクジェットヘッド62から吐出するインクとしては食品衛生法で認められている原料によって製造された可食性インクを使用する。また、第1インクジェットヘッド61および第2インクジェットヘッド62は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)および黒(K)の4色のインクを吐出可能であり、これらを混合することによってカラー印刷が可能である。」

ウ 「【0075】
第1インクジェットヘッド61は、第1搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2の他方面に対して印刷処理を行うこととなる。制御部3は、第1搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2のうち他方面が表面である錠剤2(図7,8の例で左から2番目、4番目、5番目の錠剤2)に対しては表面用印刷データに基づいて第1インクジェットヘッド61に表面用印刷処理を行わせる。ここでは、表面用印刷データとして、例えば「ABCD」の文字データとする。
【0076】
また、制御部3は、当該錠剤2の表面に刻設された割線7に対する所定方向に沿って第1インクジェットヘッド61に表面への表面用印刷処理を行わせる。本実施形態では、錠剤2の表面の割線7と平行な方向に沿って第1インクジェットヘッド61が印刷処理を行う。第1搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2のうち他方面が表面である錠剤2における割線7の方向については、第2割線カメラ52によって取得された画像データに画像処理を施すことによって制御部3が認識することができる(図8の実線で示す割線7の方向)。その結果、図8に示すように、第1搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2のうち他方面が表面である錠剤2については、表面に刻設された割線7と平行な方向に沿って「ABCD」という文字列が第1インクジェットヘッド61によって錠剤2の表面に印刷されることとなる。
【0077】
一方、制御部3は、第1搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2のうち他方面が裏面である錠剤2(図7,8の例で左端と中央の錠剤2)に対しては裏面用印刷データに基づいて第1インクジェットヘッド61に裏面用印刷処理を行わせる。ここでは、裏面用印刷データとして、例えば「1234」の文字データとする。
【0078】
また、制御部3は、当該錠剤2の表面に刻設されている割線7に対する上記所定方向と同一方向に沿って第1インクジェットヘッド61に当該錠剤2の裏面にも裏面用印刷処理を行わせる。本実施形態では、錠剤2の表面に対しては割線7と平行な方向に沿って印刷処理が行われており、錠剤2の裏面に対しても表面側の割線7と平行な方向に沿って第1インクジェットヘッド61が印刷処理を行う。第1搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2のうち他方面が裏面である錠剤2の表面側における割線7の方向については、第1割線カメラ51によって取得された画像データに画像処理を施すことによって制御部3が認識することができる(図8の点線で示す割線7の方向)。その結果、図8に示すように、第1搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2のうち他方面が裏面である錠剤2については、表面に刻設された割線7と平行な方向に沿って「1234」という文字列が第1インクジェットヘッド61によって錠剤2の裏面に印刷されることとなる。」

エ 「【0083】
第1搬送ベルト20から第2搬送ベルト30に錠剤2が受け渡されるとき、その錠剤2は回転等することなくそのまま移動する。すなわち、それぞれの錠剤2は割線7の方向を維持したまま第1搬送ベルト20から第2搬送ベルト30に受け渡されることとなる。
【0084】
また、第1搬送ベルト20から第2搬送ベルト30に錠剤2が受け渡されるときに、それぞれの錠剤2は表裏反転することとなる。すなわち、第1搬送ベルト20では割線7が形成された表面を外側に向けて吸着保持されていた錠剤2は裏面を外側に向けて第2搬送ベルト30に吸着保持される。逆に、第1搬送ベルト20では裏面を外側に向けて吸着保持されていた錠剤2は表面を外側に向けて第2搬送ベルト30に吸着保持される。従って、第1搬送ベルト20によって搬送されていた各錠剤2はその方向を維持したまま表裏反転されて第2搬送ベルト30に受け渡されて搬送されるのである(ステップS8)。」

オ 「【0092】
第2インクジェットヘッド62は、第2搬送ベルト30によって搬送される複数の錠剤2の一方面に対して印刷処理を行うこととなる。制御部3は、第2搬送ベルト30によって搬送される複数の錠剤2のうち一方面が表面である錠剤2(図9,10の例で左端と中央の錠剤2)に対しては表面用印刷データに基づいて第2インクジェットヘッド62に表面用印刷処理を行わせる。ここでは、表面用印刷データは、上記と同様の「ABCD」の文字データである。
【0093】
また、制御部3は、当該錠剤2の表面に刻設された割線7に対する上記所定方向に沿って第2インクジェットヘッド62に表面への表面用印刷処理を行わせる。本実施形態では、錠剤2の表面の割線7と平行な方向に沿って第2インクジェットヘッド62が印刷処理を行う。第2搬送ベルト30によって搬送される複数の錠剤2のうち一方面が表面である錠剤2における割線7の方向については、第1割線カメラ51によって取得された画像データに画像処理を施すことによって制御部3が認識することができる(図10の実線で示す割線7の方向)。その結果、図10に示すように、第2搬送ベルト30によって搬送される複数の錠剤2のうち一方面が表面である錠剤2については、表面に刻設された割線7と平行な方向に沿って「ABCD」という文字列が第2インクジェットヘッド62によって錠剤2の表面に印刷されることとなる。
【0094】
一方、制御部3は、第2搬送ベルト30によって搬送される複数の錠剤2のうち一方面が裏面である錠剤2(図9,10の例で左から2番目、4番目、5番目の錠剤2)に対しては裏面用印刷データに基づいて第2インクジェットヘッド62に裏面用印刷処理を行わせる。ここでは、裏面用印刷データは、上記と同様の「1234」の文字データである。
【0095】
また、制御部3は、当該錠剤2の表面に刻設されている割線7に対する上記所定方向と同一方向に沿って第2インクジェットヘッド62に当該錠剤2の裏面にも裏面用印刷処理を行わせる。本実施形態では、錠剤2の表面に対しては割線7と平行な方向に沿って印刷処理が行われており、錠剤2の裏面に対しても表面側の割線7と平行な方向に沿って第2インクジェットヘッド62が印刷処理を行う。第2搬送ベルト30によって搬送される複数の錠剤2のうち一方面が裏面である錠剤2における表面側の割線7の方向については、第2割線カメラ52によって取得された画像データに画像処理を施すことによって制御部3が認識することができる(図10の点線で示す割線7の方向)。その結果、図10に示すように、第2搬送ベルト30によって搬送される複数の錠剤2のうち一方面が裏面である錠剤2については、表面に刻設された割線7と平行な方向に沿って「1234」という文字列が第2インクジェットヘッド62によって錠剤2の裏面に印刷されることとなる。」


上記ア?オにおいて摘記した記載内容を総合すると、甲7には、次のとおりの技術(以下、「甲7技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲7技術]
「表裏面の両方に印刷処理が行われる錠剤2であって、
前記錠剤2の表面には表面用印刷データに基づいて、前記錠剤2の裏面には裏面用印刷データに基づいて、製造会社コードや製品コードなどの識別コードが印字され、
当該印刷処理が4色のインクを吐出し、それらを混合することによりカラー印刷が可能である、錠剤2、そのための錠剤印刷装置、及び、錠剤印刷方法。」

(8)甲8
甲8文献には、以下の記載がある。

ア 「この発明は、医薬品(錠剤,カプセル等)、キャンディなどの小さな菓子類、ワッシャ、ボタン電池など、主として小物物品を被搬送物とし、その被搬送物の欠陥検査、外観検査、寸法検査、計数、印刷、包装などの工程部において被搬送物を搬送する搬送装置に関するものである。」(1頁右下欄6行-11行参照。)

イ 「第1図は搬送装置の断面図である。
第1図において、1,2は、水平方向で互いに対向する一対の回転ディスクであり、これらの回転ディスク1,2は、その対向方向の外方に膨出する皿状のものに構成されている。一対の回転ディスク1,2の外周縁部相互間には、被搬送物mの寸法よりも小さな寸法の間隙が形成されており、この間隙が発明の構成にいうスリット3を構成している。
このスリット3は、全周にわたって連続したものである。このスリット3を形成する一対の回転ディスク1,2の外周縁部が、発明の構成にいう被搬送物吸着部4,5を構成している。また、一対の回転ディスク1,2が発明の構成にいう可動対向板Aを構成している。
一対の回転ディスク1,2は、周方向の複数箇所において、内面間にわたるスペーサ6によって互いに連結され、前記スリット3を全周にわたって一定の間隙寸法の状態に保っている。
一方の回転ディスク2には中心穴7が形成されており、この中心穴7に気密的に水平方向の回転筒軸8が内嵌合されている。回転筒軸8と回転ディスク1,2とは同心である。
回転筒軸8の内部は、吸気路9を形成しており、この吸気路9は、一対の回転ディスク1,2間の空間Sを介してスリット3に連通しているとともに、吸引ポンプ10に連通接続されている。この吸引ポンプ10が、発明の構成にいう吸引手段の一例である。
11は、回転筒軸8をフレーム(図示せず)に回転自在に軸支するボールベアリングである。回転筒軸8は、図示しないモータその他の駆動機構に減速機構を介して連動連結されている。
なお、被搬送物吸着部4,5の回転軌跡の所定の位置に、スクレーパや吸い取り機構や吹き落とし機構などの分離機構(図示せず)を設けて、被搬送物mを被搬送物吸着部4,5から離脱させるように構成してある。
また、被搬送物吸着部4,5の摩擦係数は、被搬送物mの種類や搬送の目的などの条件に応じて調整している。」(3頁左上欄1行-左下欄1行参照。)

ウ 「また、この実施例を変形した実施例として、回転ディスク1,2の形状を円形に代えて、角形,楕円形,その他の非円形に構成したものでもよい。」(3頁右下欄15行-17行参照。)

エ 「第1図



オ 上記イの記載及び上記エの第1図から、被搬送物吸着部4,5は、回転ディスク1,2の端面に周方向に沿って設けられていると認められる。

上記ア-エにおいて摘記した記載内容及びオの認定事項を総合すると、甲8には、次のとおりの技術(以下、「甲8技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲8技術]
「錠剤等の被搬送物を搬送する搬送装置であって、
前記搬送装置は、互いに対向する一対の円形皿状の回転ディスク1,2であり、
該回転ディスク1,2は、その端面に周方向に沿って設けられている被搬送物吸着部4,5を有する搬送装置。」

(9)甲9
甲9文献には、以下の記載がある。

ア 「【0001】
本発明は、医療用の錠剤などの表面に施されるインクジェット印刷画像の耐光性や耐湿性といった各種耐性を向上させるためのインクジェット印刷用インク、およびインクジェット印刷を施した錠剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
錠剤やカプセル剤などの固形の医療用錠剤は、種類が多く、大きさ・色調・形状が類似したものがあるため、識別のために製品名や成分含量などをコード化して個々の錠剤に直接標示することがよく行なわれている。」

イ 「【0013】
図1は、印刷(印字)がなされた医療用錠剤(素錠)の一例を示す概略断面図であり、断面視で固形製剤基材1の上面に文字などの印刷画像3が印刷されて、素錠印刷物5が形成される。図2は、印刷(印字)がなされた医療用錠剤(フィルムコーティング錠)の一例を示す概略断面図であり、断面視で、表面にフィルムコート層7が形成された固形製剤基材1の上面に文字などの印刷画像3が印刷されて、フィルムコート錠印刷物9が形成されてなる。なお、図3に示すように、素錠印刷画像11としてベタ画像ψ4を印刷するようにしてもよく、図4に示すように、フィルムコート印刷画像13として二次元バーコードを印刷するようにしてもよい。」

ウ 「【0044】
(印刷)
上記精製インク3種類を用いて、ベンディングモードピエゾ式インクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンタにて、テスト用フィルムコーティング錠(基剤:調整澱粉、コーティング剤:ヒドロキシプロピルメチルセルロース70%・酸化チタン30%の混合、直径:6.5mm)に円形のベタ画像(直径4.0mm)および、二次元バーコード(「QRコード(登録商標)」、3.5mm角)の印刷を行なった。この結果、各色で印刷されたフィルムコーティング錠印刷物を得た。」

エ 「【0050】
(印刷)
上記精製インクi?iiiの3種類を用いて、ベンディングモードピエゾ式インクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンタにて、テスト用フィルムコーティング錠(基剤:調整澱粉、コーティング剤:ヒドロキシプロピルメチルセルロース70%・酸化チタン30%の混合、直径:6.5mm)に円形のベタ画像(直径4.0mm)および、二次元バーコード(「QRコード(登録商標)」、3.5mm角)の印刷を行なった。この結果、各色で印刷されたフィルムコーティング錠印刷物を得た。」

上記ア-エにおいて摘記した記載内容を総合すると、甲9には、次のとおりの技術(以下、「甲9技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲9技術]
「表面にインクジェット印刷が施された直径6.5mmの錠剤1であって、
前記錠剤1の製品名や成分含量などをコード化した、3.5mm角の二次元バーコードが印刷された錠剤1。」

(10)甲10-甲10の2
甲10の1頁左欄の【組成・性状】欄の記載及び甲10の2の剤形写真によると、甲10-甲10の2には、次のとおりの技術(以下、「甲10技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲10技術]
「表裏両面に「オロパタジン OD 2.5 トーワ」という文字及び数字が表示された錠剤、及び、表面に「オロパタ5」、裏面に「オロパタジン OD 5 トーワ」という文字及び数字が表示された錠剤。」

(11)甲11-甲11の2
甲11の1頁左欄の【組成・性状】欄の「2.製剤の性状」の記載及び甲11の2の剤形写真によると、甲11-甲11の2には、次のとおりの技術(以下、「甲11技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲11技術]
「一面に「アトルバスタチン 5 DSEP」、他面に「アトルバスタチン 5 第一三共エスファ」という文字及び数字が表示された錠剤。」

(12)甲12-甲12の2
甲12の1頁左欄の【組成・性状】欄の記載及び甲12の2の剤形写真によると、甲12-甲12の2には、次のとおりの技術(以下、「甲12技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲12技術]
「表裏両面に「カンデサルタン 4 オーハラ」という文字及び数字が表示された錠剤。」

(13)甲13-甲13の2
甲13の1頁左欄の【組成・性状】欄の記載及び甲13の2の剤形写真によると、甲13-甲13の2には、次のとおりの技術(以下、「甲13技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲13技術]
「表面2箇所に「バルサ20」、裏面に「バルサルタン OD 20 トーワ」という文字及び数字が表示された錠剤。」

(14)甲14
甲14の、特に、【0005】-【0006】、【0008】、【0011】、【0020】-【0024】、【0031】の記載及び図1によると、甲14には、次のとおりの技術(以下、「甲14技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲14技術]
「インク122により文字を含む画像22が印刷され、
前記画像22上に、不可視印刷物識別情報24がUVバーコードとしてUVインク124にて形成されている不可視印刷物識別情報付与印刷物20であって、
印刷物識別情報は、既に印刷されている印刷物と同じ条件の印刷物を印刷するための情報であり、前記印刷物識別情報が読み取れたとき、当該印刷物が複写物か原本かを認識することができる不可視印刷物識別情報付与印刷物20。」

(15)甲15
甲15の、特に、【0002】-【0005】、【0024】-【0027】、【0045】-【0046】の記載及び図3によると、甲15には、次のとおりの技術(以下、「甲15技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲15技術]
「文字が印刷された天面15を有し、
印刷された文字の上に重ねて、管理情報のバーコードが不可視インクにて印刷されたペットボトルのキャップ12。」

(16)甲16
甲16の、特に、1頁右下欄10行-14行、2頁左欄7行-9行、2頁左欄21行-右欄15行の記載によると、甲16には、次のとおりの技術(以下、「甲16技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲16技術]
「新聞や雑誌等の記事を印刷した印刷物であって、
前記記事に重畳して印刷され、前記記事の情報に対応するデジタルコンテンツを入手するためのバーコードが不可視インクにて印刷された印刷物。」

(17)甲17
甲17の、特に、1頁右欄1行-19行の記載によると、甲17には、次のとおりの技術(以下、「甲17技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲17技術]
「新聞等の記事を印刷した印刷物であって、
前記記事に重畳して印刷され、前記記事の関連情報を取得するための2次元バーコードが不可視インクにて印刷された印刷物。」

(18)参考文献1
参考文献1の全文によると、参考文献1には、次のとおりの事項(以下、「参1記載事項」という。)が記載されていると認められる。

[参1記載事項]
「「トーワ」が東和薬品株式会社の薬剤に関する商標であること。」

(19)参考文献2
参考文献2の、特に627頁(1頁)の「要約」や629頁(3頁)の表2に関する記載によると、参考文献2には、次のとおりの事項(以下、「参2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

[参2記載事項]
「虚弱高齢者の錠剤の服薬状況について、飲み込みやすさと取り扱い性について主観的評価を行った結果、服薬に適した錠剤サイズは7?8mmであることが示唆されたこと。」

(20)参考文献3
参考文献3の、特に845頁(4頁)右欄13行-15行によると、参考文献3には、次のとおりの事項(以下、「参3記載事項」という。)が記載されていると認められる。

[参3記載事項]
「円形錠剤の飲みやすく、摘みやすい大きさは、高齢者、学生ともに直径7?8mmと判断したこと。」

(21)参考文献4
異議申立書の61頁23行-24行によると、参考文献4には、次のとおりの事項(以下、「参4記載事項」という。)が記載されていると認められる。

[参4記載事項]
「直径8mmの略円柱状のプラセボ錠に約4mm角の黒い紙片を置いた拡大写真。」

(22)参考文献5
参考文献5の、特に1頁12行、4頁1行-4行によると、参考文献5には、次のとおりの事項(以下、「参5記載事項」という。)が記載されていると認められる。

[参5記載事項]
「QRコードの最小サイズは、0.17mm×21セルで3.57mm程度であること、さらに、上下左右、それぞれ4セル分以上のマージン(余白)が必要であること。」

3 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 判断
本件発明1と甲1-1発明とを対比すると、後者の「両側面」は、その機能、形状等からみて前者の「表裏面」に相当し、後者の「両側面の少なくとも何れか一方に印刷処理が施された」と前者の「可視光下にて目視可能なように、錠剤の品番、製品名、商品名、商標、錠剤提供元、有効成分、有効成分の含有量の何れかを示す文字が可視インクにて印刷処理された第1表示層と、前記第1表示層と重畳して配置され、可視光下にて目視できず、識別光を照射することにより顕在化されて判読可能となるように、前記錠剤の製造管理・製品管理・投薬管理の何れかのための管理用のバーコードが不可視インクにて印刷処理された第2表示層と、を有する」とは、「印刷処理された少なくとも1つの表示層を有する」という点で共通する。
したがって、両者は、
「表裏面の少なくとも何れか一方に印刷処理が施された錠剤であって、
印刷処理された少なくとも1つの表示層を有する錠剤。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
少なくとも1つの表示層に関し、本件発明1は、「可視光下にて目視可能なように、錠剤の品番、製品名、商品名、商標、錠剤提供元、有効成分、有効成分の含有量の何れかを示す文字が可視インクにて印刷処理された第1表示層と、前記第1表示層と重畳して配置され、可視光下にて目視できず、識別光を照射することにより顕在化されて判読可能となるように、前記錠剤の製造管理・製品管理・投薬管理の何れかのための管理用のバーコードが不可視インクにて印刷処理された第2表示層」であるのに対し、甲1-1発明は、そのような表示層であるか不明な点。

上記相違点について、以下に検討する。

[相違点1]について
表裏面の少なくとも何れか一方に管理用のバーコードが印刷処理された錠剤は、上記2(2)記載の甲2、上記2(3)記載の甲3、上記2(5)記載の甲5、上記2(9)記載の甲9にみられるとおり周知技術である。
また、管理情報が不可視インクにて印刷処理された錠剤は、上記2(3)記載の甲3、上記2(4)記載の甲4に記載されており、管理用のバーコードが不可視インクにて印刷処理された錠剤は、上記2(3)記載の甲3に記載されている。
さらに、錠剤ではないものの、スペースの制約や美観上の制約を受けることなく、望む情報を付与するために、文字が可視インクにて印刷処理された第1表示層に、バーコードが不可視インクにて印刷処理された第2表示層を重畳して配置することは、上記2(14)ないし(17)記載の甲14ないし17に記載されている。
そして、上記2(6)記載の甲6技術は、文字と二次元コードが印刷された薬包であり、上記2(7)記載の甲7技術は、4色インクで表裏両面に印刷された錠剤であり、上記2(8)記載の甲8技術は、錠剤の搬送装置であり、上記2(10)ないし(13)記載の甲10ないし13技術は、いずれも両面に文字及び数字が表示された錠剤である。
さらに、上記2(18)記載の参1記載事項は、「トーワ」が商標であることであり、上記2(19)及び(20)記載の参2及び3記載事項は、いずれも服薬に適した錠剤サイズが7?8mmであることであり、上記2(21)記載の参4記載事項は、直径8mmの略円柱状のプラセボ錠に約4mm角の黒い紙片を置いた拡大写真であり、上記2(22)記載の参5記載事項は、QRコードの最小サイズと必要なマージンに関することである。
よって、錠剤の印刷処理において、文字が可視インクにて印刷処理された第1表示層に、管理用のバーコードが不可視インクにて印刷処理された第2表示層を重畳して配置する、という技術的思想は、甲2?17、参考文献1?5のいずれにも記載されていない。
上記2(15)記載の甲15技術は、実質的に裏面に印刷を施すことができないペットボトルキャップに関するものであり、表裏両面に情報を印刷可能な錠剤に関する甲1-1発明とは、技術分野が大きく異なる。
また、甲14技術は、画像22の印刷物上に、当該印刷物が複写物か原本かを認識することができる不可視印刷物識別情報24を形成するものであり、不可視印刷物識別情報24と印刷物との関係が当該技術分野に特有の関係であるといえる。同様に、甲16及び甲17技術は、ともに、記事に重畳して印刷され、前記記事の情報を取得するためのバーコードが不可視インクにて印刷されたものであり、印刷物不可視インクにて印刷されたバーコードの情報と記事との関係が当該技術分野に特有の関係であるといえる。
よって、甲1-1発明と甲14技術、甲16技術及び甲17技術とは、技術分野が大きく異なる。
したがって、甲1-1発明に甲14?17技術を適用する動機付けは、ない。
そして、甲1-1発明に甲2?5及び9技術を適用したとしても、文字が可視インクにて印刷処理された第1表示層に、管理用のバーコードが不可視インクにて印刷処理された第2表示層を重畳して配置する、という技術的事項を有する相違点1に係る本件発明1の構成にはならない。
したがって、甲1-1発明に甲2?17技術、参1?5記載事項を適用して、相違点1に係る本件発明1の構成が容易に想到し得るとする理由は、見いだせない。

イ 申立人の主張について
申立人は、「甲7号証は、錠剤の表面に対して、複数種類のインクによる重畳印刷を開示しており、「第1表示層」に「第2表示層」を重畳して配置する点に新規性は認められない。」と主張する(申立書57頁15行-17行)。
しかしながら、甲7は上記2(7)記載のとおり、4色のインクを吐出し、それらを混合することによりカラー印刷を可能としたものであって、カラー印刷において通常行う技術であり、本件特許にも【0034】に記載された「多色印刷や多層印刷への対応のため、ヘッドをさらに配置することも可能である。」の「多色印刷」に相当するものである。このようなカラー印刷は、多色の中から選択された色を重畳して1つのカラー印刷物を形成するものであり、重畳したものが1つの「表示層」となるものであって、重畳する1色1色がそれぞれ1つの「表示層」といえるものではない。
したがって、この点において申立人の主張は当を得たものではない。

また、申立人は、甲2には、一方の面に会社コード等の識別コードを、他方の面に2次元コードである個体IDを印刷することが記載されているが、双方の情報を確認するために錠剤を表裏反転させなければならず、煩雑さの恐れから、一面にこれらの情報をまとめて印刷するという動機付けは当然に内在している、と主張する(申立書60頁21行-61頁1行。)。
しかしながら、甲2には、情報をマーキングしてから包装するまでのあいだに偽造品混入する恐れを避けるために(上記2(2)イ【0004】参照。)、包装工程で2次元コードを読み取ることで個体IDを確認する点が記載されている(上記2(2)ケ【0059】参照。)が、包装工程で識別コードを確認することも、包装後に2次元コードを読み取ることも記載されておらず、双方の情報を略同時に確認する必要があるとはいえず、錠剤を表裏反転させなければならないという煩雑さがあるともいえない。
よって、甲2技術に、一面にこれらの情報をまとめて印刷するという動機付けがあるとはいえず、この点において申立人の主張は当を得たものではない。

ウ まとめ
以上のとおり、甲1-1発明及び甲2?17、参考文献1?5に記載された技術的事項に基いて、上記相違点1に係る本件発明1の構成が容易に想到し得るものとはいえない。

(2)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)で示した理由と同様に、甲1-1発明及び甲2?17、参考文献1?5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明4?6について
本件発明4及び5と甲1-2発明とを対比すると、また、本件発明6と甲1-3発明とを対比すると、いずれも、その相違点は、本件発明1と甲1-1発明との対比における相違点1に係る本件発明1の構成(「第1表示層と重畳して配置され、可視光下にて目視できず、識別光を照射することにより顕在化されて判読可能となるように、錠剤の製造管理・製品管理・投薬管理の何れかのための管理用のバーコードが不可視インクにて印刷処理された第2表示層」という構成)を含むものとなるところ、上記相違点1については、上記(1)で示した理由と同様に、甲2?17技術、参1?5記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのであるから、本件発明4及び5については、甲1-2発明及び甲2?17、参考文献1?5に記載された技術的事項に基いて、本件発明6については、甲1-3発明及び甲2?17、参考文献1?5に記載された技術的事項に基いて、いずれも当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)小括
以上のとおり、本件発明1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、上記理由2によっては、本件発明1?6に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
錠剤並びに錠剤印刷装置及び錠剤印刷方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に品番や製品名、商標、バーコード等を印刷した錠剤に関し、特に、インクジェット方式等により、錠剤表面に可視インクと不可視インクにて印刷処理を行った錠剤及び当該錠剤の印刷装置・印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病院や調剤薬局等では、個人用に多種の薬を1包化するケースが増えている。その場合、薬局や看護・介護現場など(以下、薬局等と略記する)では、パッケージ内に所定の薬が所定数含まれているかどうか、パッケージが正しく対象者に渡されているか、などを確認する必要がある。また、特許切れ成分を使用した後発医薬品(いわゆるジェネリック医薬品)では、同じ有効成分を含みながら錠剤形状が異なることも多く、服用者が異なると、同処方でありながら形状の異なる錠剤が含まれる場合も存在する。このため、薬局等では、錠剤の表示を確認して薬剤を管理し、当該薬剤の服用者に対し、間違い(誤調剤)が生じないように投薬を行っている。
【0003】
一方、錠剤やカプセルの薬剤表面には、製品識別や誤飲防止のため、その品番や、品名、商標等が表示されている。このような錠剤表面の表示は、打錠時における刻印成形や、転写方式やインクジェット方式等の印刷処理によって行われている。このうち、インクジェット方式による印刷処理は、非接触状態で錠剤表面に印刷が可能なことから、錠剤表面の凹凸に付着した粉末の影響を受けにくく、また、衛生面の点でも優れていることから、近年、種々の装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5281009号公報
【特許文献2】特開2006-89741公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、錠剤表面に鮮明な印字等を行うことができても、表示自体が小さい場合、どうしても薬剤名や有効成分の含有量を読み取りにくくなる。特に、1包化された薬剤中に、表示の小さな錠剤が多数含まれている場合、それらを100%過誤なく確認することは難しい。このため、調剤の1包化により、薬局等における管理担当者の業務負担が増加するという問題があった。この場合、錠剤を大きくすれば、その分、印刷面も大きくなり、印字も見易くなるが、錠剤が大き過ぎると飲みづらくなるため、その大きさには自ずと限度がある。すなわち、飲み易い形状の錠剤は、錠剤の大きさ(印字可能面積)が限定され、その結果、錠剤表面に多くの情報(文字、マーク等)を見易い状態で書き込むことは難しくなる。
【0006】
錠剤において、視認性の良否は、薬局側、患者等の利用者側共に、誤調剤や誤飲につながる大きな問題であり、高齢者が増大する今の時代、視認性の改善は急務でもある。その場合、多種多様な処方が存在する中、人手による視認確認(目視検査)では間違い防止対策としては十分とは言えない。また、目視検査では確認記録も残しにくく、トレーサビリティの確保が難しい。さらに、同有効成分の異形錠剤が存在するジェネリック医薬品のように、薬剤形状も多様化しており、管理担当者の負担増を伴うことなく、鑑査精度を向上させることは容易ではない。
【0007】
本発明の目的は、調剤鑑査の精度向上を図り調剤過誤を削減すると共に、薬局等における管理担当者の業務負担軽減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の錠剤は、表裏面の少なくとも何れか一方に印刷処理が施された錠剤であって、可視光下にて目視可能なように、前記錠剤の品番、製品名、商品名、商標、錠剤提供元、有効成分、有効成分の含有量の何れかを示す文字が可視インクにて印刷処理された第1表示層と、前記第1表示層と重畳して配置され、可視光下にて目視できず、識別光を照射することにより顕在化されて判読可能となるように、前記錠剤の製造管理・製品管理・投薬管理の何れかのための管理用のバーコードが不可視インクにて印刷処理された第2表示層と、を有することを特徴とする。本発明にあっては、第1表示層には、可視インクにて文字や商標などが印刷され、管理担当者や錠剤利用者が目視にて確認できるようになっている。また、第2表示層には、不可視インクにてバーコードが印刷され、管理担当者や錠剤利用者は目視できないようになっている。第2表示層は、ブラックライト等によって顕在化され読み取ることが可能となる。
【0009】
前記錠剤において、前記管理用のバーコードは、前記錠剤の有効成分、有効成分の含有量、シリアルナンバー、服用データの何れかの情報を含むようにしても良い。また、前記第2表示層を錠剤側周面に形成することも可能である。
【0010】
また、本発明の錠剤印刷装置は、表裏面の少なくとも何れか一方に印刷処理が施され、可視光下にて目視可能なように、前記錠剤の品番、製品名、商品名、商標、錠剤提供元、有効成分、有効成分の含有量の何れかを示す文字が可視インクにて印刷処理された第1表示層と、前記第1表示層と重畳して配置され、可視光下にて目視できず、識別光を照射することにより顕在化されて判読可能となるように、前記錠剤の製造管理・製品管理・投薬管理の何れかのための管理用のバーコードが不可視インクにて印刷処理された第2表示層と、を有する錠剤の前記印刷処理を行う錠剤印刷装置であって、前記錠剤の表裏面が全面的に露出した状態となるように、前記錠剤の側周面を吸着し該錠剤を立設姿勢で支持しつつ搬送する搬送手段と、前記搬送手段に近接して配置され、前記搬送手段によって搬送される前記錠剤に対し、前記可視インクにより前記第1表示層の印刷処理を行う第1層用印刷手段と、前記不可視インクにより前記第2表示層の印刷処理を行う第2層用印刷手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、錠剤の側周面を吸着支持しつつ、第1及び第2表示層の印刷処理を行うので、錠剤の表・裏面を露出した状態で検査や各層の印刷処理が可能となる。また、当該搬送手段上にて錠剤の表裏面両方に第1及び第2表示層の印刷処理を行うこともできるため、錠剤の表裏を反転させることなく、表裏両面に各層を印刷することも可能となる。
【0012】
前記錠剤印刷装置において、前記搬送手段として円盤状に形成された搬送ディスクを使用し、該搬送ディスクの端面に、周方向に沿って前記錠剤の側周面を吸着する吸着部を設けて良い。
【0013】
一方、本発明の錠剤印刷方法は、錠剤の側周面を吸着支持しつつ該錠剤を搬送し、搬送される前記錠剤の表裏面の少なくとも何れか一方に対し、可視光下にて目視可能なように、前記錠剤の品番、製品名、商品名、商標、錠剤提供元、有効成分、有効成分の含有量の何れかを示す文字が可視インクにて印刷処理された第1表示層と、前記第1表示層と重畳して配置され、可視光下にて目視できず、識別光を照射することにより顕在化されて判読可能となるように、前記錠剤の製造管理・製品管理・投薬管理の何れかのための管理用のバーコードが不可視インクにて印刷処理された第2表示層とを形成することを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、錠剤の側周面を吸着支持しつつ、第1及び第2表示層の印刷処理を行うので、錠剤の表・裏面を露出した状態で検査や各層の印刷処理が可能となる。また、錠剤の表裏面両方に第1及び第2表示層の印刷処理を行うこともできるため、錠剤の表裏を反転させることなく、表裏両面に各層を印刷することも可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の錠剤によれば、第1表示層の表示を目視にて確認すると共に、目に見えない第2表示層の表示を検査装置等の機械にて確認することができ、処方と薬剤の整合性を管理担当者と機械により2重にチェックすることが可能となる。これにより、調剤鑑査の精度向上を図ることができ、調剤過誤を削減することが可能となると共に、薬局等における管理担当者の業務負担軽減を図ることも可能となる。
【0016】
本発明の錠剤印刷装置・印刷方法によれば、錠剤の側周面を吸着支持しつつ、第1及び第2表示層の印刷処理を行うので、錠剤の表・裏面を露出した状態で検査や各層の印刷処理が可能となる。また、錠剤の表裏面両方に第1及び第2表示層の印刷処理を行うこともできるため、錠剤の表裏を反転させることなく、表裏両面に各層を印刷することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態である錠剤印刷装置の全体構成を示す説明図である。
【図2】本発明による錠剤の例を示す説明図である。
【図3】調剤形態の一例を示す説明図である。
【図4】錠剤検査システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態である錠剤印刷装置1の全体構成を示す説明図である。図1の錠剤印刷装置1では、ホッパ2から供給された錠剤3を、円盤状に形成された3つの搬送ディスクA,B,Cによって1個ずつ吸着搬送し、インクジェットヘッド4,5により、錠剤3の表面6aと裏面6bにそれぞれ2層の印刷処理を行う。
【0019】
本発明による錠剤3は、その表・裏面6a,6bに、可視インクを用いた第1表示層51と、不可視インクを用いた第2表示層52が印刷される。第1表示層51はインクジェットヘッド4によって印刷され、第2表示層52はインクジェットヘッド5によって印刷される。この場合、第1表示層51には商品名などの文字が印字され、第2表示層52には管理用(製造管理・製品管理・投薬管理等)のバーコード(一次元バーコード、二次元バーコード)などが印刷される。なお、必要に応じて、表面6a・裏面6bの一方の印刷処理を省いたり、インクジェットヘッドを追加し、錠剤3の側周面7に印刷処理をさらに行ったり、3層以上の多相印刷を施したりしても良い。また、印刷処理に使用される可視インクや不可視インクは、食用可能な素材であることは言うまでもない。
【0020】
錠剤印刷装置1では、錠剤受け渡し部8aにて搬送ディスクA(錠剤供給ディスク)から搬送ディスクB(第1搬送ディスク)へ、錠剤受け渡し部8bにて搬送ディスクBから搬送ディスクC(第2搬送ディスク)へと錠剤3が移送される。搬送ディスクA,Cでは、各ディスクの端面(錠剤保持部)Xa,Xcに錠剤3の側周面7が吸着支持され、搬送ディスクBでは、ディスクの端面(錠剤保持部)Xbに錠剤3の表・裏面6a,6bが吸着支持される。錠剤3は、側周面7を上下方向に向けた立設状態(立設姿勢)でインクジェットヘッド4,5に搬送される。そして、インクジェットヘッド4,5にて錠剤3の表面6aと裏面6bが同時に印刷され、良品のみが良品排出部38から装置外へ排出される。
【0021】
図1に示すように、錠剤印刷装置1には、錠剤供給手段10として、錠剤3を貯留、供給するホッパ2と、ホッパ2から供給される錠剤3を搬送ディスクAに供給する回転フィーダ(錠剤フィーダ)11と、回転フィーダ11から錠剤受け渡し部8aに錠剤3を吸着搬送する搬送ディスクAが設けられている。回転フィーダ11は、いわゆる無振動タイプの回転式パーツフィーダであり、円筒状の筐体12内に回転円盤13と環状回転板14を同軸状に設けた構成となっている。環状回転板14は、筐体12のすぐ内側に配されており、その内側には、回転円盤13が傾斜した状態で配置されている。回転円盤13は、外周の一部が環状回転板14と同じ高さとなっており、回転円盤13と環状回転板14の連絡部15となっている。連絡部15には、回転円盤13上の錠剤を環状回転板14側に案内するガイド板16が設けられている。
【0022】
筐体12は、その一部が切り欠かれており、そこに搬送ディスクAの周回部が臨む形で配置され錠剤取得部17を形成している。搬送ディスクAの端面Xaは、その幅Wが錠剤3の最大径Dtよりも狭くなっており、周方向に沿って円形の吸着孔(吸着部)18が複数個等間隔に設けられている。吸着孔18は、真空ポンプ等の吸引装置(図示せず)と接続されている。また、端面Xaの各吸着孔18近傍には、錠剤3が導入される凹部19が形成されている。搬送ディスクAは、ディスク面Yaが略水平となった状態で配置されており、垂直方向に延びる回転軸21を中心に、図示しない駆動源によって矢示方向に回転する。図1に示すように、搬送ディスクAの後段に配された搬送ディスクB,Cは、それぞれのディスク面Yb,Ycが垂直方向に立った状態となっているのに対し、搬送ディスクAは、ターンテーブル状にディスク面Yaが水平方向に寝た状態となっている。錠剤3は、錠剤取得部17にて、その側周面7が搬送ディスクAの吸着孔18に吸着され、水平姿勢(表面6a,裏面6bを垂直方向上下に向けた状態)で搬送ディスクB側へと搬送される。
【0023】
回転フィーダ11では、ホッパ2から供給された錠剤3は、錠剤投入部22から、回転する回転円盤13上に供給される。回転円盤13上の錠剤3は、回転円盤13の回転に伴って周方向に移動し、ガイド板16により、回転円盤13と同速度で回転する環状回転板14側に移動する。環状回転板14上の錠剤3は、環状回転板14の回転に伴って周方向に移動し、錠剤取得部17に送られる。錠剤取得部17に送られた錠剤3は、回転する搬送ディスクAの端面Xaと対向し、吸着孔18に姿勢とタイミングが合致した錠剤3は、凹部19に嵌まりつつ吸着孔18に吸着される。すなわち、正しい姿勢で吸着された錠剤3は、搬送ディスクAによって、搬送ディスクBとの接点である錠剤供給部23に運ばれる。一方、姿勢とタイミングが合わず、吸着孔18に吸着されなかった錠剤3は、回転する回転円盤13上にそのまま戻る。これに対し、吸着姿勢が整わないものは、回転フィーダ11内に戻され、再び錠剤取得部17に向かって自動的に搬送される(自動リターン・自動リトライ)。
【0024】
このように、錠剤印刷装置1では、搬送ディスクAを用いて、回転フィーダ11から錠剤供給部23に錠剤3を吸着搬送する。これにより、ガイドレスにて錠剤3をピックアップし、搬送ディスクBに供給することが可能となる。近年、ジェネリック医薬品など、薬効成分が同じでありながら、錠剤のサイズや形状が異なる薬品が多く出回っている。また、同じ薬でも処方量の異なる大小の錠剤が種々存在する場合も少なくない。ところが、錠剤のフィーダと錠剤供給部23との間に、錠剤サイズに合わせたガイド部材を配し、ガイド部材によって錠剤3を整列させて錠剤供給部23に導くようにすると、錠剤サイズが変わるとガイド部材を交換する必要が生じる。このため、ジェネリック医薬品のような同成分の錠剤であっても、サイズが変われば部品交換が必要となり、そのたびに装置を停止させて交換・清掃作業を行わなければならず、手間がかかる上に処理時間も増大する。
【0025】
これに対し、当該錠剤印刷装置1は、ガイド部材を用いることなく、搬送ディスクAによって錠剤3を錠剤供給部23に供給する。このため、ディスクに吸着可能でありさえすれば、錠剤の大小に関わらず、錠剤を正しい姿勢で後段に供給することができ、種々のサイズの錠剤に柔軟に対応可能である。従って、同成分の錠剤を大小ミックスさせた状態で搬送供給でき、処理効率を大きく改善させることが可能となる。また、錠剤印刷装置1は、後段の搬送ディスクB,Cも吸着搬送を行いつつ印刷処理を行うため、錠剤サイズに関わらす所望の印刷が可能であり、搬送ディスクAの使用により、当該装置の特性を最大限に発揮した効率の良い印刷処理が可能となる。さらに、錠剤印刷装置1には搬送ガイドが存在しないため、その交換や清掃の手間もかからず、装置メンテナンスの工数も削減される。加えて、また、吸着孔18のピッチは予め決まっているため、錠剤供給部23に対し、処理能力以上の錠剤を供給してしまうこともなく、錠剤滞留による問題も生じない。
【0026】
搬送ディスクAの回転に伴い、水平姿勢のまま錠剤供給部23に搬送された錠剤3は、錠剤受け渡し部8aにて搬送ディスクAから搬送ディスクBに移送される。錠剤供給部23では、搬送ディスクAの端面Xaは、搬送ディスクBの端面Xbと直交状態に隣接、対向しており、搬送ディスクAと搬送ディスクBとの間に錠剤受け渡し部8aが形成される。搬送ディスクA,B,Cは、錠剤3の受け渡しを考慮し、錠剤3の搬送速度が同じになるよう同期駆動されている。搬送ディスクBは、回転軸24を中心に、図示しない駆動源(例えば、電動モータ)によって矢示方向に回転する。搬送ディスクBの端面Xbは、突起のない平坦面となっており、周方向に沿って、円形の吸着孔(吸着部)25が複数個等間隔に設けられている。吸着孔25は、吸着孔18と同様、真空ポンプ等の吸引装置(図示せず)と接続されている。錠剤供給部23に送給された錠剤3は、吸着孔25によって搬送ディスクBの端面Xbに吸着される。このとき、錠剤3は、表・裏面6a,6bのどちらか一方が吸着された状態で端面Xbに保持される。
【0027】
搬送ディスクBの近傍には、側周面検査装置26が配置されている。側周面検査装置26では、搬送ディスクBに吸引支持された錠剤3の側周面7の状態(割れ、欠けの有無など)が検査される(側周面検査)。錠剤印刷装置1では、錠剤外観や印刷状態の検査装置としてカメラが用いられており、検査装置にて撮影された映像は図示しない制御装置に送られ、良・不良の判別が行われる。側周面検査装置26に使用されるカメラの撮影範囲には、ライトと、錠剤側周面と対向するよう配置された1対のプリズムが設けられており、カメラは、ライトによって照らされた錠剤側周面の様子を180°ずつ2個のプリズムを介して撮影する。側周面検査装置26では、錠剤3の外観のみならず、錠剤3の厚さも測定可能であり、寸法不良の判別も行うことができる。ここで異常が検出された錠剤3は不良品として認識され、印刷処理は行わず、搬送ディスクCの後段に設けられた不良品排出部35から排出される。
【0028】
搬送ディスクBの端面Xbに吸着された錠剤3は、搬送ディスクBの回転に伴い、水平姿勢から垂直姿勢(側周面7を垂直方向上下に向けた状態)となり、側周面検査装置26にて検査処理が行われた後、錠剤受け渡し部8bに至る。錠剤受け渡し部8bには、円盤状の搬送ディスクCが配されている。搬送ディスクCは、回転軸27を中心に、図示しない駆動源によって矢示方向に回転する。搬送ディスクB,Cは互いの回転軸24,27が直交する形で配設されており、両者は錠剤の搬送速度が同じになるよう同期駆動される。搬送ディスクCの端面Xcも、搬送ディスクBと同様に突起のない平坦面となっており、その幅Wも錠剤3の最大径Dtよりも狭くなっている。また、搬送ディスクCの端面Xcにも、周方向に沿って、円形の吸着孔(吸着部)28が複数個等間隔で設けられている。搬送ディスクB,Cの端面Xb,Xcは、錠剤受け渡し部8bにて直交状態に隣接、対向している。
【0029】
錠剤3は、錠剤供給部23の錠剤受け渡し部8aにて搬送ディスクBの端面Xbに吸着され、搬送ディスクBの回転に伴い、錠剤受け渡し部8bまで搬送される。錠剤受け渡し部8bに搬送されてきた錠剤3は、錠剤受け渡し部8bにて搬送ディスクCの端面Xcに吸着され、搬送ディスクC側に移送される。この場合、搬送ディスクB側では、錠剤受け渡し部8bにて両ディスクB,Cが最接近する位置まで吸着孔25に吸着力が付与される。錠剤3は、ディスク最接近位置にて吸着力を失った吸着孔25から、対向する搬送ディスクCの吸着孔28に吸着され、搬送ディスクC側に載せ替えられる。
【0030】
錠剤3は、その表・裏面6a,6bが搬送ディスクBに吸着されているため、錠剤受け渡し部8bでは、搬送ディスクCの端面Xcに対してその側周面7が対向する。従って、搬送ディスクC側では、錠剤3の側周面7が吸着される形となり、錠剤3は立った状態で端面Xcに保持される。なお、錠剤受け渡し部8a,8bにおける搬送ディスクA,B,C間のクリアランスは、錠剤3のサイズにより適宜変更可能であり、錠剤サイズを制御パネルから入力することにより自動的に調整される。
【0031】
錠剤受け渡し部8bの後段には、搬送ディスクCに近接して印刷面検査装置29が配置されている。印刷面検査装置29では、搬送ディスクCに吸引支持された錠剤3の表・裏面6a,6bの状態が検査される(印刷面検査)。また、割線のある錠剤3では、印刷面検査装置29により、割線位置の検出も行われる。側周面検査装置26の場合と同様に、ここで外観不良が検出された錠剤3は不良品として認識され、印刷処理は行わず、不良品排出部35から排出される。
【0032】
印刷面検査装置29の後段にはインクジェットヘッド4,5が配されているが、錠剤印刷装置1では、インクジェットヘッド4,5の前に粉取り装置31が設けられている。粉取り装置31は、錠剤3に対しノズル32から圧縮空気を吹き付け、錠剤表面に付着した粉末を印刷直前に除去する。錠剤表面から吹き飛ばされた粉は、吸引管33から回収される。打錠機にて成型された錠剤の表面には薬剤等の粉末が付着しており、それを取り除かずに錠剤表面に印刷処理を行うと、錠剤表面から粉と共に表示印刷が消えてしまったり、印刷が滲み表示が不明瞭になったりする可能性がある。これに対し、当該錠剤印刷装置1では、インクジェットヘッド4,5の直前に粉取り装置31を配することにより、錠剤3は、表面の粉が除去され、しかも、新たな粉が発生する前に印刷処理を行うことができる。従って、錠剤表面に付着した粉により、印刷が消えたり滲んだりすることがなく、鮮明で高品質な印刷処理が可能となる。
【0033】
粉取り装置31による表面清浄化の後、前段のインクジェットヘッド4では、錠剤3の表・裏面6a,6bに、第1層の印刷処理が可視インクによって施される。また、後段のインクジェットヘッド5では、錠剤3の表・裏面6a,6bに、第2層の印刷処理が不可視インクによって施される。この際、錠剤3は、側周面7が吸着された形で支持されており、表・裏面6a,6bが全面的に露出した状態にある。このため、錠剤印刷装置1では、錠剤3の表・裏面6a,6b全面に余すことなく印刷処理が可能であり、錠剤周囲に印刷不能な領域も生じない。
【0034】
また、各インクジェットヘッド4,5では、表面用4a,5aと裏面用4b,5bが同位置に対向配置されており、錠剤3の表・裏面6a,6bに対し、各ヘッドにて同時に印刷処理を行うことが可能である。さらに、印刷面検査装置29で検出された割線の向きに応じて錠剤3の表面6aに印刷される文字の向きと、その裏面6bに印刷される文字の向きを一致させることも可能である。なお、表面用インクジェットヘッド4a,5aと裏面用インクジェットヘッド4b,5bはそれぞれ同位置に対向配置されているが、両者をずらして配置しても良い。また、多色印刷や多層印刷への対応のため、ヘッドをさらに配置することも可能である。
【0035】
図2は、印刷処理を行った錠剤3の例を示す説明図である。なお、図2には表面6aのみを記載したが、裏面6bにも同様の印刷処理が行われる。錠剤3の表・裏面6a,6bには、2つの表示層(第1表示層51,第2表示層52)が重畳配置され、印刷情報がレイヤー化されている。図2に示すように、第1表示層51には、商品名や有効成分、錠剤提供元、有効成分の含有量などの文字が印字される。ここでは、その一例として、有効成分の含有量(「25」=25mg)と提供元名(「FREUND」)が記載されている。第1表示層51の文字は可視インクにて印刷されており、管理担当者や錠剤利用者が目視にて確認できるようになっている。
【0036】
一方、第2表示層52にはバーコードなどが印刷される。ここでは、その一例として、二次元バーコードが記載されている。第2表示層52のバーコードは不可視インクにて印刷されており、管理担当者や錠剤利用者は目視できないようになっている。従って、通常では、錠剤表面にバーコードのような煩瑣な印刷表示は見えず、第2表示層52によって錠剤デザインを損なうことはない。この場合、第2表示層52は、ブラックライト(可視領域の長波長紫外線)や不可視領域の紫外線、レザー光などによって、顕在化され読み取ることが可能となる。つまり、第1表示層51の記載は直接人間の目で読めるが、第2表示層52の記載は人間の目では直接読み取れず、検査装置等の機械を介することによって初めて判読可能となる。第2表示層52には、第1表示層51と同じ内容(有効成分名や有効成分の含有量等)を記載すると共に、印刷時のデータ(例えば、各錠剤ごとに付されるシリアルナンバー等)が記載される。
【0037】
このような錠剤3では、投薬の際に、第1表示層51の目視による鑑査と共に、機械装置による第2表示層52の鑑査も行われる。すなわち、文字認識とバーコードを併用して1錠ごとに処方との整合性を確認する。図3は、調剤形態の一例を示す説明図である。例えば、Aさんへの処方が薬剤P×2,Q×2,Rであり、それが図3(a)に示すように1包化されて投薬されるとする(パッケージ53)。この場合、全5錠のパッケージ53を1日3回×14日分(43包)目視で鑑査するのはかなり大変な作業であり、チェックミスも生じ易い。
【0038】
これに対し、本発明による錠剤3を用いたパッケージ53では、これを検査装置54に掛けるだけで、短時間の内にその正誤を判定できる。図4は、錠剤3の検査システムの構成を示すブロック図である。当該検査システムでは、まず、検査装置54にて、錠剤3にブラックライト等の識別光を照射して第2表示層52を顕在化し、そこに記載されているバーコードを読み取る。そして、その内容(有効成分名や有効成分の含有量、シリアルナンバー等)を、コンピュータを使用したデータ照合装置55に送信する。
【0039】
データ照合装置55には、調剤データが格納されたROM56やRAM57と、データ照合部58が設けられている。データ照合部58は、検査装置54から送られて来た検査データを、ROM56等内の調剤データと照合する。調剤データには、本例の場合、Aさんの処方が格納されており、それを実際の検査データと比較し、それが一致した場合は「適(OK)」と判定する。これに対し、両者のデータが相違したばあいには、「不適(NG)」と判定する。各判定結果は、表示装置59にて管理担当者に画像や音声にて通知される。
【0040】
このように、本発明の錠剤3を用いることにより、処方と薬剤の整合性が管理担当者の目と、検査装置54により2重にチェックされる。この場合、検査装置54は、機械の目によって調剤の適否を判定するため、その精度は目視よりも高い。このため、目視のみにて調剤の管理を行う場合に比して、鑑査精度が大幅に向上し、正誤判定率を飛躍的にアップさせることが可能となる。従って、調剤過誤を大幅に削減できると共に、管理担当者の業務負担も軽減され、特に、多数の錠剤が1包化されている場合には、鑑査精度も業務負担も大きく改善される。
【0041】
また、鑑査データを確実に保存できるため、トレーサビリティの確保も可能となる。さらに、投薬データを電子情報として管理できるため、E-お薬手帳としての機能も付加することが可能となる。加えて、目に見えない状態で錠剤データを印刷できることから、全く同一に見える偽薬(ニセの薬)であっても、機械を通すことにより容易に真贋の区別が可能であり、偽薬判定にも有効に活用できる。
【0042】
一方、前述のように、各錠剤にはシリアルナンバーを付すことができるため、錠剤ごと、あるいは、1包ごとを個々に区別することも可能である。例えば、図3(b)に示すように、Bさんに薬剤P,Q,RをP×2,Q×2,Rにて投与した場合、各パッケージ53内の錠剤3には、P_(011),P_(012),Q_(011),Q_(012),R_(011)(パッケージ53a:4/1朝分)、P_(021),P_(022),Q_(021),Q_(022),R_(021)(パッケージ53b:4/1昼分)、P_(031),P_(031),Q_(031),Q_(032),R_(031)(パッケージ53c:4/1夕分)のような形で固有の番号が付与される。そこで、Bさんに、毎服用時などにそのパッケージ53をスマートフォン等にて撮影してもらい、定期的にそれを提示してもらったり、送ってもらったりする。これにより、投薬側や看護・介護側では、所定の薬を所定のタイミングで服用していることを確認することが可能となる。このとき、同じ番号の薬の映像のみが届く場合は、正しい服用が行われていない可能性があり、いち早く対処を取ることが可能となる。勿論、画像が届かない場合はすぐに連絡を取るなどの対処も可能である。
【0043】
また、錠剤3の第2表示層52に、例えば、「Bさん:4月1日朝」のような服用データを書き込むこともできる。この場合、図4のシステムをコンパクト化したような携帯端末等により、看護者・介護者が投薬時にそのデータを照合確認すれば、対象者や薬剤を誤る投薬ミスを未然に防止することが可能となる。これにより、管理担当者や錠剤利用者のみならず、看護・介護現場の担当者の負担軽減も図られる。
【0044】
インクジェットヘッド4,5の後段には、印字検査装置34が配されている。印字検査装置34は、インクジェットヘッド4,5による印刷結果を確認するために設けられており、印刷不良が検出された場合は、次段の不良品排出部35から不良品として排出される。不良品排出部35には、圧縮空気を噴射するジェットノズル36が配されており、外観不良や印刷不良と判断された錠剤3は、ジェットノズル36からの噴射エアによって搬送ディスクCから吹き飛ばされ、排除される。
【0045】
不良品排出部35の後段には、乾燥・冷却装置37が設けられている。錠剤3は、印刷面が未乾燥のまま良品排出部38に送られると、搬出路39にインクが付着したり、印刷がかすれたりするおそれがある。そこで、錠剤印刷装置1では、良品排出部38の前に乾燥・冷却装置37を配し、印刷面の乾燥とインクの固化を図っている。乾燥・冷却装置37には、加温ノズル41と冷却ノズル42が設けられており、加温ノズル41からの温風によってインクの溶媒を気化させた後、冷却ノズル42からの冷風によりインクを融点以下に冷却し固化させる。そして、印刷を錠剤表面に定着させた後、良品の錠剤3のみを良品排出部38から排出する。これにより、搬出路39に付着したインクにより良品の錠剤が汚れてしまうことがなく、また、搬出路39上を流れ落ちる際に印刷面が擦れてかすれてしまうことも防止でき、製品品質や歩留まりの向上が図られる。
【0046】
このように、本発明による錠剤印刷装置1にあっては、錠剤3の側周面7を吸着支持しつつ印刷処理を行うので、錠剤3の表・裏面6a,6bの全体が錠剤支持用のガイド等によって覆われることがない。このため、錠剤3は、被印刷面が露出した状態にて、検査や印刷処理が可能であり、錠剤表裏面の周囲に検査や印刷が不能となる領域が生じない。また、錠剤3の表裏を反転させることなく、表裏両面を印刷することができるので、錠剤反転に伴うインク転写や印刷のかすれ等のリスクを排除することが可能となる。加えて、錠剤3の両面に同時印刷することにより、表・裏面6a,6bに印刷する文字の向きを一致させることも可能となる。
【0047】
従って、当該錠剤印刷装置1によれば、表・裏全面に所望の印刷を効率良く行うことができ、印刷デザインの自由度が向上すると共に、印刷時間の短縮や装置の小型化も図られる。また、当該錠剤印刷装置1においては、マガジンなどの搬送治具を使用せず、搬送ディスクCに吸引支持した状態で、錠剤3をインクジェットヘッド4,5の位置に搬送する。このため、インクジェットヘッド4,5では、ヘッドノズルの直近を錠剤3が通過する形となり、ヘッドと錠剤との間の距離を極限まで短くすることが可能となる。従って、表裏面共に印刷精度の向上を図ることができ、より高品質な錠剤印刷が可能となる。
【0048】
さらに、錠剤印刷装置1のインクジェットヘッド4,5は、表・裏面6a,6bの形状に応じてインクの吐出量が調整されており、被印刷面が曲面の場合でも、歪みのない印刷が行える。例えば、表・裏面が球面状になっている錠剤の場合、中央と周辺部とではヘッドノズルと錠剤表面との間の距離に差があり、同条件で印刷を行うと、周辺域では印刷に歪みが生じる場合がある。そこで、錠剤印刷装置1では、錠剤の形状情報に基づき、ヘッドノズルの吐出量を調整し、歪みのない見やすい印刷を行っている。この場合、錠剤の形状情報は、装置の制御パネルからも入力できるが、側周面検査装置26にて測定した錠剤3の厚さや外径のデータ等を使用することも可能である。
【0049】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施形態では、印刷対象を円形の錠剤としたが、本発明による印刷装置は、円形錠剤以外にも、オブロング錠やキャブレット錠、多角形錠剤など種々の錠剤に対応可能である。また、錠剤のみならず、カプセル(ハード、ソフト)に対する印刷処理も可能である。従って、本発明における錠剤は、所謂円形の錠剤のみならず、各種形状の錠剤やカプセルなどを含む概念である。
【0050】
また、前述の実施形態の搬送ディスクに形成された吸着孔の形状は円形には限定されず、楕円や多角形であっても良い。また、吸着孔と共に、錠剤外形形状に合わせた内周面を持つ曲面状の吸着溝を設けても良い。その際、吸着溝の形状も、V字状やU字状、四角状など種々の形状を採用することが可能である。例えば、搬送ディスクに略V字状の溝を形成し、三角錠等の異形錠に対応しても良い。この場合、最も一般的な錠剤は円盤状であるため、錠剤の大きさが多少異なっていてもフィットする曲面状が望ましい。なお、搬送ディスクB,Cの端面Xb,Xcにも搬送ディスクAと同様の凹部を設けても良く、また、端面Xaを搬送ディスクB,Cと同様に突起のない平坦面としても良い。
【0051】
さらに、インクジェットヘッドを追加し側周面7の印刷も行う場合は、提供元名を側周面7に印刷できるため、表・裏面6a,6bにおける有効成分名や有効成分の含有量の記載を大きくすることができる。つまり、従来の表裏面だけではなく、側周面にも印字可能範囲が拡大するため、印字可能面積が増大し、その分、有効成分等を大きく表示したり、文字数を多くしたりすることができ、視認性の向上を図ることが可能となる。また、側周面7に、さらにバーコードを印刷することもでき、この場合、側周面7の印刷は可視インクでも不可視インクでも良い。すなわち、第2表示層52を単独で側周面7に設けることも可能である。なお、表・裏面6a,6bや側周面7において、第1・第2表示層51,52を重畳させず、それぞれを単独で配置することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、医薬品錠剤の印刷以外にも、錠剤状に作られた菓子等の食品にも適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 錠剤印刷装置
2 ホッパ
3 錠剤
4 インクジェットヘッド(第1層用:印刷手段)
4a 表面用インクジェットヘッド(印刷手段)
4b 裏面用インクジェットヘッド(印刷手段)
5 インクジェットヘッド(第2層用:印刷手段)
5a 表面用インクジェットヘッド(印刷手段)
5b 裏面用インクジェットヘッド(印刷手段)
6a 錠剤表面
6b 錠剤裏面
7 錠剤側周面
8a 錠剤受け渡し部
8b 錠剤受け渡し部
10 錠剤供給手段
11 回転フィーダ
12 筐体
13 回転円盤
14 環状回転板
15 連絡部
16 ガイド板
17 錠剤取得部
18 吸着孔(吸着部)
19 凹部
21 回転軸
22 錠剤投入部
23 錠剤供給部
24 回転軸
25 吸着孔(吸着部)
26 側周面検査装置
27 回転軸
28 吸着孔(吸着部)
29 印刷面検査装置
31 粉取り装置
32 ノズル
33 吸引管
34 印字検査装置
35 不良品排出部
36 ジェットノズル
37 乾燥・冷却装置
38 良品排出部
39 搬出路
41 加温ノズル
42 冷却ノズル
51 第1表示層(可視表示層)
52 第2表示層(不可視表示層)
53 パッケージ
54 検査装置
55 データ照合装置
56 ROM
57 RAM
58 データ照合部
59 表示装置
A 搬送ディスク(錠剤供給ディスク)
B 搬送ディスク(第1搬送ディスク:搬送手段)
C 搬送ディスク(第2搬送ディスク:搬送手段)
Dt 錠剤最大径
W ディスク端面幅
Xa ディスク端面(錠剤保持部)
Xb ディスク端面(錠剤保持部)
Xc ディスク端面(錠剤保持部)
Ya ディスク面
Yb ディスク面
Yc ディスク面
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏面の少なくとも何れか一方に印刷処理が施された錠剤であって、
可視光下にて目視可能なように、前記錠剤の品番、製品名、商品名、商標、錠剤提供元、有効成分、有効成分の含有量の何れかを示す文字が可視インクにて印刷処理された第1表示層と、
前記第1表示層と重畳して配置され、可視光下にて目視できず、識別光を照射することにより顕在化されて判読可能となるように、前記錠剤の製造管理・製品管理・投薬管理の何れかのための管理用のバーコードが不可視インクにて印刷処理された第2表示層と、を有することを特徴とする錠剤。
【請求項2】
請求項1記載の錠剤において、
前記管理用のバーコードは、前記錠剤の有効成分、有効成分の含有量、シリアルナンバー、服用データの何れかの情報を含むことを特徴とする錠剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の錠剤において、
前記第2表示層を前記錠剤の側周面に設けたことを特徴とする錠剤。
【請求項4】
表裏面の少なくとも何れか一方に印刷処理が施され、可視光下にて目視可能なように、前記錠剤の品番、製品名、商品名、商標、錠剤提供元、有効成分、有効成分の含有量の何れかを示す文字が可視インクにて印刷処理された第1表示層と、前記第1表示層と重畳して配置され、可視光下にて目視できず、識別光を照射することにより顕在化されて判読可能となるように、前記錠剤の製造管理・製品管理・投薬管理の何れかのための管理用のバーコードが不可視インクにて印刷処理された第2表示層と、を有する錠剤の前記印刷処理を行う錠剤印刷装置であって、
前記錠剤の表裏面が全面的に露出した状態となるように、前記錠剤の側周面を吸着し該錠剤を立設姿勢で支持しつつ搬送する搬送手段と、
前記搬送手段に近接して配置され、前記搬送手段によって搬送される前記錠剤に対し、前記可視インクにより前記第1表示層の印刷処理を行う第1層用印刷手段と、前記不可視インクにより前記第2表示層の印刷処理を行う第2層用印刷手段と、を有することを特徴とする錠剤印刷装置。
【請求項5】
請求項4記載の錠剤印刷装置において、
前記搬送手段は、円盤状に形成された搬送ディスクであり、
該搬送ディスクは、その端面に周方向に沿って設けられ、前記錠剤の側周面を吸着する吸着部を有することを特徴とする錠剤印刷装置。
【請求項6】
錠剤の側周面を吸着支持しつつ該錠剤を搬送し、
搬送される前記錠剤の表裏面の少なくとも何れか一方に対し、可視光下にて目視可能なように、前記錠剤の品番、製品名、商品名、商標、錠剤提供元、有効成分、有効成分の含有量の何れかを示す文字が可視インクにて印刷処理された第1表示層と、前記第1表示層と重畳して配置され、可視光下にて目視できず、識別光を照射することにより顕在化されて判読可能となるように、前記錠剤の製造管理・製品管理・投薬管理の何れかのための管理用のバーコードが不可視インクにて印刷処理された第2表示層とを形成することを特徴とする錠剤印刷方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-08-25 
出願番号 特願2016-43585(P2016-43585)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A61J)
P 1 651・ 121- YAA (A61J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小林 睦  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 倉橋 紀夫
栗山 卓也
登録日 2020-06-04 
登録番号 特許第6712876号(P6712876)
権利者 フロイント産業株式会社
発明の名称 錠剤並びに錠剤印刷装置及び錠剤印刷方法  
代理人 鷹野 寧  
代理人 鷹野 寧  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ