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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B29C
審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
管理番号 1379794
異議申立番号 異議2020-700272  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-04-16 
確定日 2021-09-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6594518号発明「ポリエステルフィルム及びその製造方法、ハードコートフィルム及びその製造方法、画像表示装置並びにタッチパネル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6594518号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-18]及び[19-23]について訂正することを認める。 特許第6594518号の請求項1ないし23に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6594518号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし23に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)1月30日(優先権主張 2016年(平成28年)2月15日)を国際出願日とする出願であって、令和1年10月4日にその特許権の設定登録(請求項の数23)がされ、同年同月23日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和2年4月16日に特許異議申立人 小林 瞳(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年7月13日付けで取消理由が通知され、同年9月23日に特許権者 富士フイルム株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求がなされるとともに意見書の提出がされ、同年10月30日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年11月25日に特許異議申立人より意見書の提出がされ、令和3年2月26日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年6月1日に特許権者より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされるとともに意見書の提出がなされ、同年同月11日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年7月13日に特許異議申立人より意見書の提出がされたものである。
なお、令和2年9月23日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「厚みが40μm?500μmであり」とあるのを、「厚みが60μm?500μmであり」と訂正し、「平均値が30MPa?100MPaである」とあるのを、「平均値が30MPa?80MPaであり」と訂正し、「ポリエステルフィルム」とあるのを、「ポリエステルフィルム(但し、厚みが60μm又は65μmであるポリエステルフィルムを除く)」と訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2ないし18についても同様に訂正する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項19に「前記横延伸終了時の前記表面温度を90℃以上105℃以下に制御し」とあるのを、「前記横延伸終了時の前記表面温度を93℃以上105℃以下に制御し」と訂正し、「厚みが40μm?500μmであるポリエステルフィルムを製造する」とあるのを、「厚みが60μm?500μmであるポリエステルフィルム(但し、厚みが60μm又は65μmであるポリエステルフィルムを除く)を製造する」と訂正する。
請求項19の記載を直接又は間接的に引用する請求項20ないし23についても同様に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1) 訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、ポリエステルフィルムの厚み範囲及びせん断面垂直応力A及びBの平均値の範囲を限定するとともに、厚みが60μm又は65μmであるポリエステルフィルムを除くことを特定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、ポリエステルフィルムの厚みについては明細書の段落【0017】の記載、せん断面垂直応力A及びBの平均値については明細書の段落【0019】の記載があることから、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2ないし18についても同様である。

(2) 訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項19の訂正は、ポリエステルフィルムの製造方法における横延伸終了時の表面温度範囲及びポリエステルフィルムの厚みを限定するとともに、厚みが60μm又は65μmであるポリエステルフィルムを除くことを特定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、横延伸終了時の表面温度範囲については明細書の段落【0076】の記載、ポリエステルフィルムの厚みについては明細書の段落【0017】の記載があることから、訂正事項2に係る請求項19の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項19の記載を直接又は間接的に引用する請求項20ないし23についても同様である。

3 訂正の適否についてのまとめ

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-18]、[19-23]について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし23に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明23」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
厚みが60μm?500μmであり、表層1μmにおける遅相軸方向のせん断面垂直応力Aとフィルム面内で前記遅相軸方向に直交する方向のせん断面垂直応力Bとの平均値が30MPa?80MPaであるポリエステルフィルム(但し、厚みが60μm又は65μmであるポリエステルフィルムを除く)。
【請求項2】
ハードコートフィルムの基材フィルム用である請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
一軸配向ポリエステルフィルムである請求項1又は請求項2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記ポリエステルフィルムの測定波長589nmにおけるフィルム面内のレターデーションReが4000nm?50000nmである請求項1?請求項3のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記ポリエステルフィルムの表層1μmにおける遅相軸方向のせん断面降伏応力とフィルム面内で前記遅相軸方向に直交する方向のせん断面降伏応力との平均値が20MPa?60MPaである請求項1?請求項4のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記せん断面垂直応力Bに対する前記せん断面垂直応力Aの比が1.1?2.0である請求項1?請求項5のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記ポリエステルフィルムの測定波長589nmにおけるフィルム厚み方向のレターデーションRthに対するフィルム面内のレターデーションReの比が0.6?1.2である請求項1?請求項6のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記ポリエステルフィルムのNz値の絶対値が2.0以下である請求項1?請求項7のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
ここで、上記Nz値は下記式で表され、下記式中のnxはポリエステルフィルムの面内遅相軸方向の屈折率であり、nyはポリエステルフィルムの面内進相軸方向の屈折率であり、nzはポリエステルフィルムの厚み方向の屈折率である。
Nz=(nx-nz)/(nx-ny)
【請求項9】
少なくとも片面に易接着層を有する請求項1?請求項8のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項10】
前記易接着層の厚みが30nm?300nmである請求項9に記載のポリエステルフィルム。
【請求項11】
前記易接着層が粒子を含有する請求項9又は請求項10に記載のポリエステルフィルム。
【請求項12】
前記易接着層の表面から突出する前記粒子の高さが前記易接着層の膜厚以上である請求項11に記載のポリエステルフィルム。
【請求項13】
請求項1?請求項12のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムを含む基材フィルムと、
前記基材フィルムの少なくとも片面上に積層されたハードコート層と、
を有するハードコートフィルム。
【請求項14】
前記ハードコート層の厚みが5μm以上である請求項13に記載のハードコートフィルム。
【請求項15】
前記ハードコート層の厚みが40μm以下である請求項13又は請求項14に記載のハードコートフィルム。
【請求項16】
前記ハードコート層が、
少なくとも下記a)由来の構造、下記b)由来の構造、下記c)及び下記d)を含み、
前記ハードコート層が、前記ハードコート層の全固形分を100質量%とした場合に下記a)由来の構造を15質量%?70質量%、下記b)由来の構造を25質量%?80質量%、下記c)を0.1質量%?10質量%、下記d)を0.1質量%?10質量%含む請求項13?請求項15のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
a)分子内に1個の脂環式エポキシ基と1個のエチレン性不飽和二重結合を含む基とを有し、分子量が300以下の化合物
b)分子内に3個以上のエチレン性不飽和二重結合を含む基を有する化合物
c)ラジカル重合開始剤
d)カチオン重合開始剤
【請求項17】
画像表示素子及び請求項13?請求項16のいずれか1項に記載のハードコートフィルムを含み、前記ハードコートフィルムが最表面に配置されている画像表示装置。
【請求項18】
請求項13?請求項16のいずれか1項に記載のハードコートフィルムを含み、前記ハードコートフィルムが最表面に配置されているタッチパネル。
【請求項19】
フィルム搬送路の両側に設置された一対のレールに沿ってそれぞれ走行する複数のクリップを備えた横延伸装置を用い、
未延伸の又は縦延伸したポリエステルフィルムを600℃/min以下の昇温速度で予熱する予熱工程と、
前記予熱されたポリエステルフィルムの両縁を前記複数のクリップで把持した状態で前記フィルム搬送路に対して直交する方向に延伸する横延伸を行い、前記横延伸開始から前記横延伸終了まで前記ポリエステルフィルムの表面温度を徐々に上昇させ、前記横延伸開始時の前記表面温度を80℃以上95℃以下、かつ、前記横延伸終了時の前記表面温度を93℃以上105℃以下に制御し、横延伸倍率を3.3倍以上4.8倍以下の範囲に制御する横延伸工程と、
前記横延伸工程後のポリエステルフィルムを前記横延伸装置内での最高温度まで加熱することにより熱固定する熱固定工程と、を含み、
厚みが60μm?500μmであるポリエステルフィルム(但し、厚みが60μm又は65μmであるポリエステルフィルムを除く)を製造するポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項20】
前記横延伸工程において、前記表面温度を60℃/min以下の昇温速度で徐々に上昇させ、
前記横延伸倍率が1倍以上2倍未満の範囲であるときの前記表面温度を80℃以上92℃以下に、
前記横延伸倍率が2倍以上3倍未満の範囲であるときの前記表面温度を85℃以上97℃以下に、及び、
前記横延伸倍率が3倍以上の範囲であるときの前記表面温度を90℃以上102℃以下に制御する請求項19に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項21】
前記横延伸工程の終了から前記熱固定工程における前記最高温度に到達するまでの前記ポリエステルフィルムの表面温度の昇温速度を1000℃/min以下に制御し、
前記熱固定工程における前記ポリエステルフィルムの最高到達表面温度を130℃以上230℃以下に制御し、前記ポリエステルフィルムの表面温度が130℃を越える時間を180秒以下に制御する請求項19又は請求項20に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項22】
前記熱固定工程後のポリエステルフィルムを加熱し、かつ、前記ポリエステルフィルムの少なくとも横方向の長さを縮める熱緩和工程を更に含む請求項19?請求項21のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項23】
請求項19?請求項22のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの製造方法によりポリエステルフィルムを製造する工程と、
前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面上にハードコート層を積層する工程と、
を有するハードコートフィルムの製造方法。」

第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について

特許異議申立人が特許異議申立書において、訂正前の請求項1ないし23に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。

申立理由1-1(進歩性) 本件特許の請求項1ないし23に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由1-2(進歩性) 本件特許の請求項1ないし23に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由2(明確性) 本件特許の請求項1ないし18に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たさないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

なお、申立理由2の具体的理由は概ね次のとおりである。

「本件特許発明1では、構成Bにおいて、「表層1μmにおける遅相軸方向のせん断面垂直応力Aとフィルム面内で前記遅相軸方向に直交する方向のせん断面垂直応力B」が規定されている。
このフィルムの「表層1μm」は、本件特許公報の段落0045の「易接着層の厚みが30nm以上であれば、易接着層によるクッション効果が得られ易く、せん断面垂直応力及びせん断面降伏応力が上がり過ぎることが抑制される。また、易接着層の厚みが300nm以下であれば、易接着層のクッション効果が強すぎず、せん断面垂直応力及びせん断面降伏応力が下がりすぎることが抑制される、」との記載から、フィルムに易接着層が設けられている場合には、易接着層を含む値であると解される。また、段落0022?0031において、せん断面垂直応力A、Bの測定方法が記載されているが、この記載でも易接着層が存在する場合の測定法が別に記載されていないことからも、このことが伺える、
一方、表1に記載されているように、実施例1、実施例10、実施例11、実施例12・・・のせん断面垂直応力は易接着層を含まない値であると考えられる。
さらに、上記実施例1、実施例10、実施例11、実施例12以外の実施例、比較例は比較例4を除いて易接着層が設けられているが、これらの例のせん断面垂直応力が易接着層を含めたものか、含めないものかは記載されていない。特に断りがなく発明の詳細な説明で記載された方法で測定されたのであれば、易接着層を含めたものだとも考えられる。・・・
このように、表層1μmにおけるせん断面垂直応力は、明細書の発明の詳細な説明の文章中では易接着層を含めて表層1μmの値であるとしながら、実施例では易接着層を含めず1μmの値となっており、また、一部の実施例では、易接着層を含めたものである可能性もある。従って、表層1μmにおけるせん断面垂直応力がどちらであるかが不明瞭である。また、せん断面垂直応力が易接着層を含まない値であるとするのであれば、実施例のようにインラインコートで易接着層が設けられたフィルムで、どのようにして易接着層を含めずに表層1μmにおけるせん断面垂直応力を測定するかが記載されていない。」

<証拠方法>
甲第1号証:国際公開第2016/010134号
甲第2号証:国際公開第2015/046120号
甲第3号証:特開平8-73771号公報
甲第4号証の1:技術情報協会「フィルム製膜・延伸の最適化とトラブル対策」、2007年11月30日発行、190?193頁
甲第4号証の2:技術情報協会「プラスチックフィルムの延伸技術と評価」、1992年10月16日発行、10?15頁
甲第4号証の3:技報堂出版株式会社「プラスチックフィルム-加工と応用-(第二版)」、2002年7月10日2版3刷発行、78?81頁
甲第4号証の4:共立出版株式会社「フィルムをつくる」、1995年10月25日初版2刷発行、52?54頁

また、令和3年7月13日提出の意見書に添えて、次の証拠も提出している。
甲第5号証の1:「2012タッチパネルと構成部材市場の将来展望」、株式会社富士経済、2012年2月7日発行
甲第5号証の2:「2020タッチパネル/フレキシブルディスプレイと構成部材市場の将来展望」、株式会社富士経済、2020年3月10日発行

第5 令和3年2月26日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要

当審が令和3年2月26日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
なお、取消理由(決定の予告)には、異議申立理由のうち、申立理由1-2(請求項1ないし15及び17ないし23)が包含される。

取消理由(進歩性) 本件特許の請求項1ないし15及び17ないし23に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

第6 当審の判断

1 取消理由(決定の予告)についての判断

(1) 甲第2号証の記載事項等

ア 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、次の事項が記載されている。

「[請求項1] フィルム搬送路の両側に設置された一対の無端のレールに沿って走行するクリップを有するテンター式延伸装置を用いて、未延伸のポリエステルフィルムを前記クリップで把持しながら150μm以下の厚みとなるまで横延伸する工程と、
前記クリップから前記横延伸後のポリエステルフィルムを開放する工程とを含み、
前記クリップで前記未延伸のポリエステルフィルムを把持するときのクリップの温度および前記クリップから前記横延伸後のポリエステルフィルムを開放するときのクリップの温度をいずれも80℃以下に制御するポリエステルフィルムの製造方法。」

「[請求項10] 請求項1?9のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法で製造されたポリエステルフィルム。」

「[請求項13] フィルム厚みが20?150μmであり、
フィルム面内方向のレターデーションReが3000?30000nmであり、
厚み方向のレターデーションRthが3000?30000nmであり、
Re/Rthが0.5?2.5である請求項10?12のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム。
[請求項14] 一軸配向である請求項10?13のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム。
[請求項15] 前記ポリエステルフィルムの長手方向の屈折率が1.590以下であり、かつ、
前記ポリエステルフィルムの結晶化度が5%を超える請求項14に記載のポリエステルフィルム。
[請求項16] 偏光子と、請求項10?15のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムとを含む偏光板。
[請求項17] 請求項10?15のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム、または、請求項16に記載の偏光板を備える画像表示装置。」

「[0001] 本発明は、ポリエステルフィルムおよびその製造方法、偏光板ならびに画像表示装置に関する。特に、液晶ディスプレイ基材として好適に用いられる、好ましくは一軸配向のポリエステルフィルムの製造方法と、このポリエステルフィルムの製造方法により製造されるポリエステルフィルム、このポリエステルフィルムを含む偏光板および画像表示装置に関する。」

「[0034](5)ポリマー層(易接着層)の形成:
溶融押出しされた未延伸のポリエステルフィルムには、後述する延伸の前あるいは後にポリマー層(好ましくは易接着層)を塗布により形成してもよい。
ポリマー層としては、一般に偏光板が有していてもよい機能層を挙げることができ、その中でもポリマー層として易接着層を形成することが好ましい。易接着層はWO2012/157662号公報の[0062]?[0070]に記載の方法で塗設することができる。」

「[0071]<ポリエステルフィルムの層構成、表面処理>
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂を含む。
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂を主成分とする層の単層フィルムであってもよいし、ポリエステル樹脂を主成分とする層を少なくとも1層有する多層フィルムであってもよい。また、これら単層フィルム又は多層フィルムの両面又は片面に表面処理が施されたものであってもよく、この表面処理は、コロナ処理、ケン化処理、熱処理、紫外線照射、電子線照射等による表面改質であってもよいし、高分子や金属等の塗布や蒸着等による薄膜形成であってもよい。フィルム全体に占めるポリエステル樹脂の質量割合は、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
[0072][偏光板]
本発明のポリエステルフィルムは偏光板保護フィルムとして用いることができる。
本発明の偏光板は、偏光性能を有する偏光子と、本発明のポリエステルフィルムを含む。本発明の偏光板は、本発明のポリエステルフィルム以外にセルロースアシレートフィルムなどの偏光板保護フィルムをさらに含んでいてもよい。
[0073] 偏光板の形状は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。
[0074] WO2011/162198号公報の[0025]に記載のようにPVAから成る偏光子と本発明のポリエステルフィルムを貼り合せ偏光板を調製することができる。この際、上記易接着層をPVAと接触させることが好ましい。さらに、WO2011/162198号公報の[0024]に記載のように、リターデーションを有する保護膜と組合せることも好ましい。
[0075][画像表示装置]
本発明のポリエステルフィルムは、画像表示装置に用いることができ、本発明のポリエステルフィルムを含む偏光板を画像表示装置の偏光板として用いることができる。
本発明の画像表示装置は、本発明のポリエステルフィルム、または、本発明の偏光板を備える。
画像表示装置としては、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OELD又はIELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、タッチパネル、電子ペーパー等を挙げることができる。これらの画像表示装置は、画像表示パネルの表示画面側に本発明の偏光板を備えることが好ましい。」

「[0084][実施例1]
<原料ポリエステルの合成>
(原料ポリエステル1)
以下に示すように、テレフタル酸及びエチレングリコールを直接反応させて水を留去し、エステル化した後、減圧下で重縮合を行う直接エステル化法を用いて、連続重合装置により原料ポリエステル1(Sb触媒系PET)を得た。
[0085](1)エステル化反応
第一エステル化反応槽に、高純度テレフタル酸4.7トンとエチレングリコール1.8トンを90分かけて混合してスラリー形成させ、3800kg/hの流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。更に三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を連続的に供給し、反応槽内温度250℃、攪拌下、平均滞留時間約4.3時間で反応を行なった。このとき、三酸化アンチモンはSb添加量が元素換算値で150ppmとなるように連続的に添加した。
[0086] この反応物を第二エステル化反応槽に移送し、攪拌下、反応槽内温度250℃で、平均滞留時間で1.2時間反応させた。第二エステル化反応槽には、酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液と、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を、Mg添加量およびP添加量が元素換算値でそれぞれ65ppm、35ppmになるように連続的に供給した。
[0087](2)重縮合反応
上記で得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給し、攪拌下、反応温度270℃、反応槽内圧力20torr(2.67×10^(-3)MPa)で、平均滞留時間約1.8時間で重縮合させた。
[0088] 更に、第二重縮合反応槽に移送し、この反応槽において攪拌下、反応槽内温度276℃、反応槽内圧力5torr(6.67×10^(-4)MPa)で滞留時間約1.2時間の条件で反応(重縮合)させた。
[0089] 次いで、更に第三重縮合反応槽に移送し、この反応槽では、反応槽内温度278℃、反応槽内圧力1.5torr(2.0×10^(-4)MPa)で、滞留時間1.5時間の条件で反応(重縮合)させ、反応物(ポリエチレンテレフタレート(PET))を得た。
[0090] 次に、得られた反応物を、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリエステルのペレット<断面:長径約4mm、短径約2mm、長さ:約3mm>を作製した。
[0091] 得られたポリマーは、IV=0.63であった。このポリマーを原料ポリエステル1とした(以降、PET1と略す)。」

「[0093]<ポリエステルフィルムの製造>
-フィルム成形工程-
原料ポリエステル1(PET1)を、含水率20ppm以下に乾燥させた後、直径50mmの1軸混練押出機1のホッパー1に投入した。原料ポリエステル1は、300℃に溶融し、下記押出条件により、ギアポンプ、濾過器(孔径20μm)を介し、ダイから押出した。
溶融樹脂の押出条件は、圧力変動を1%、溶融樹脂の温度分布を2%として、溶融樹脂をダイから押出した。具体的には、背圧を、押出機のバレル内平均圧力に対して1%加圧し、押出機の配管温度を、押出機のバレル内平均温度に対して2%高い温度で加熱した。
ダイから押出した溶融樹脂は、温度25℃に設定された冷却キャストドラム上に押出し、静電印加法を用い冷却キャストドラムに密着させた。冷却キャストドラムに対向配置された剥ぎ取りロールを用いて剥離し、未延伸ポリエステルフィルム1を得た。」

「[0096]-横延伸工程-
未延伸ポリエステルフィルム1をテンター(横延伸機)に導き、フィルムの両端部から幅方向に15mm離れた位置をクリップで把持しながら、下記の方法、条件にて横延伸した。
[0097](予熱部)
予熱温度を90℃とし、熱風ノズルから吹き出す熱風により、延伸可能な温度まで加熱した。
[0098](延伸部)
予熱された未延伸ポリエステルフィルム1を、幅方向に下記の条件にてテンターを用いTD方向に横延伸した。
このテンターは、WO2008/035762号公報と同様のインナーリターン式である。両サイドの無端レール上のクリップが、フィルム解放後にリターンレール室を通過し、その後再びフィルムを把持する。22℃の冷風が250m^(3)/minで供給されるリターンレール室中に、フィルムを把持しないリターンレール側のクリップを走行させ、同時に各サイドで供給量と同量(250m^(3)/min)にてリターンレール室の排気を行った。クリップには、熱風ノズルから噴き出す熱風が当たらないよう、図3に記載する構造であり、フィルムとカバーの間のクリアランスが15mmの風を遮るカバーを設けた。なお、風を遮るカバーがあっても、リターンレール室自体が十分に冷却されているため、リターンレールを走行するクリップにカバーが設けられてクリップに直接的に冷風が当たらない場合であっても、十分にクリップは冷却される。以上により、フィルムを把持時のクリップの温度は、下記表1に記載したように56℃となった。ここで、フィルムを把持時のクリップの温度は以下の方法で測定した。
フィルムを把持時のクリップの温度は、走行中のクリップを非常停止し、停止後30秒以内に直接熱電対を把持寸前のクリップに挟み込むことで測定した。
また、延伸開始時のフィルム膜面温度を、表1に延伸開始時膜面温度または延伸膜温として記載したように制御した。これは横の延伸ゾーンを搬送方向に十等分した点にパネルヒーターを設置し、この出力の調整で実施した。延伸開始時のフィルム膜面温度は、熱電対を用いて直接フィルム表面の温度を測定した。その結果、延伸開始時膜面温度と把持時クリップ温度との差は、32℃となるように制御された。
・横延伸温度(横延伸中の平均温度):90℃
・横延伸倍率:4.3倍
[0099](熱固定部)
次いで、ポリエステルフィルムの膜面温度を下記範囲に制御しながら、熱固定処理を行った。
<条件>
・熱固定温度:180℃
・熱固定時間:15秒
[0100](熱緩和部)
熱固定後のポリエステルフィルムを下記の温度に加熱し、フィルムを緩和した。
・熱緩和温度:170℃
・熱緩和率:TD方向(フィルム幅方向)2%」

「[0117][評価]
(Re、Rth、Re/Rth)
各実施例及び比較例のフィルムに対し、特開2012-256057号公報の[0054]?[0055]に記載の方法でReおよびRthを測定し、Reと、Rthと、Re/Rthの値を表1に記載した。」
(合議体注:特開2012-256057号公報の当該記載は次のとおり。
【0054】
(1)リタデーション(Re)
リタデーションとは、フィルム上の直交する二軸の屈折率の異方性(△Nxy=|Nx-Ny|)とフィルム厚みd(nm)との積(△Nxy×d)で定義されるパラメーターであり、光学的等方性、異方性を示す尺度である。二軸の屈折率の異方性(△Nxy)は、以下の方法により求めた。二枚の偏光板を用いて、フィルムの配向軸方向を求め、配向軸方向が直交するように4cm×2cmの長方形を切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルについて、直交する二軸の屈折率(Nx,Ny)、及び厚さ方向の屈折率(Nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T、測定波長589nm)によって求め、前記二軸の屈折率差の絶対値(|Nx-Ny|)を屈折率の異方性(△Nxy)とした。フィルムの厚みd(nm)は電気マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定し、単位をnmに換算した。屈折率の異方性(△Nxy)とフィルムの厚みd(nm)の積(△Nxy×d)より、リタデーション(Re)を求めた。
【0055】
(2)厚さ方向リタデーション(Rth)
厚さ方向リタデーションとは、フィルム厚さ方向断面から見たときの2つの複屈折△Nxz(=|Nx-Nz|)、△Nyz(=|Ny-Nz|)にそれぞれフィルム厚さdを掛けて得られるリタデーションの平均を示すパラメーターである。リタデーションの測定と同様の方法でNx、Ny、Nzとフィルム厚みd(nm)を求め、(△Nxz×d)と(△Nyz×d)との平均値を算出して厚さ方向リタデーション(Rth)を求めた。)

「[0120]
[表1]



イ 甲第2号証に記載された発明

アの記載、特に実施例1の記載を中心に整理すると、甲第2号証には以下の方法の発明と製造物の発明が記載されていると認める。

「以下の工程により、厚み65μm、測定波長589nmにおけるフィルム面内のレタデーションReが6500nmの一軸配向ポリエステルフィルムを製造するポリエステルフィルムの製造方法。
<原料ポリエステルの合成>
(原料ポリエステル1)
以下に示すように、テレフタル酸及びエチレングリコールを直接反応させて水を留去し、エステル化した後、減圧下で重縮合を行う直接エステル化法を用いて、連続重合装置により原料ポリエステル1(Sb触媒系PET)を得た。
(1)エステル化反応
第一エステル化反応槽に、高純度テレフタル酸4.7トンとエチレングリコール1.8トンを90分かけて混合してスラリー形成させ、3800kg/hの流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。更に三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を連続的に供給し、反応槽内温度250℃、攪拌下、平均滞留時間約4.3時間で反応を行なった。このとき、三酸化アンチモンはSb添加量が元素換算値で150ppmとなるように連続的に添加した。
この反応物を第二エステル化反応槽に移送し、攪拌下、反応槽内温度250℃で、平均滞留時間で1.2時間反応させた。第二エステル化反応槽には、酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液と、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を、Mg添加量およびP添加量が元素換算値でそれぞれ65ppm、35ppmになるように連続的に供給した。
(2)重縮合反応
上記で得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給し、攪拌下、反応温度270℃、反応槽内圧力20torr(2.67×10^(-3)MPa)で、平均滞留時間約1.8時間で重縮合させた。
更に、第二重縮合反応槽に移送し、この反応槽において攪拌下、反応槽内温度276℃、反応槽内圧力5torr(6.67×10^(-4)MPa)で滞留時間約1.2時間の条件で反応(重縮合)させた。
次いで、更に第三重縮合反応槽に移送し、この反応槽では、反応槽内温度278℃、反応槽内圧力1.5torr(2.0×10^(-4)MPa)で、滞留時間1.5時間の条件で反応(重縮合)させ、反応物(ポリエチレンテレフタレート(PET))を得た。
次に、得られた反応物を、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリエステルのペレット<断面:長径約4mm、短径約2mm、長さ:約3mm>を作製した。
得られたポリマーは、IV=0.63であった。このポリマーを原料ポリエステル1とした(以降、PET1と略す)。
<ポリエステルフィルムの製造>
-フィルム成形工程-
原料ポリエステル1(PET1)を、含水率20ppm以下に乾燥させた後、直径50mmの1軸混練押出機1のホッパー1に投入した。原料ポリエステル1は、300℃に溶融し、下記押出条件により、ギアポンプ、濾過器(孔径20μm)を介し、ダイから押出した。
溶融樹脂の押出条件は、圧力変動を1%、溶融樹脂の温度分布を2%として、溶融樹脂をダイから押出した。具体的には、背圧を、押出機のバレル内平均圧力に対して1%加圧し、押出機の配管温度を、押出機のバレル内平均温度に対して2%高い温度で加熱した。
ダイから押出した溶融樹脂は、温度25℃に設定された冷却キャストドラム上に押出し、静電印加法を用い冷却キャストドラムに密着させた。冷却キャストドラムに対向配置された剥ぎ取りロールを用いて剥離し、未延伸ポリエステルフィルム1を得た。
-横延伸工程-
未延伸ポリエステルフィルム1をテンター(横延伸機)に導き、フィルムの両端部から幅方向に15mm離れた位置をクリップで把持しながら、下記の方法、条件にて横延伸した。
(予熱部)
予熱温度を90℃とし、熱風ノズルから吹き出す熱風により、延伸可能な温度まで加熱した。
(延伸部)
予熱された未延伸ポリエステルフィルム1を、幅方向に下記の条件にてテンターを用いTD方向に横延伸した。
このテンターは、WO2008/035762号公報と同様のインナーリターン式である。両サイドの無端レール上のクリップが、フィルム解放後にリターンレール室を通過し、その後再びフィルムを把持する。22℃の冷風が250m^(3)/minで供給されるリターンレール室中に、フィルムを把持しないリターンレール側のクリップを走行させ、同時に各サイドで供給量と同量(250m^(3)/min)にてリターンレール室の排気を行った。クリップには、熱風ノズルから噴き出す熱風が当たらないよう、図3に記載する構造であり、フィルムとカバーの間のクリアランスが15mmの風を遮るカバーを設けた。なお、風を遮るカバーがあっても、リターンレール室自体が十分に冷却されているため、リターンレールを走行するクリップにカバーが設けられてクリップに直接的に冷風が当たらない場合であっても、十分にクリップは冷却される。以上により、フィルムを把持時のクリップの温度は、下記表1に記載したように56℃となった。ここで、フィルムを把持時のクリップの温度は以下の方法で測定した。
フィルムを把持時のクリップの温度は、走行中のクリップを非常停止し、停止後30秒以内に直接熱電対を把持寸前のクリップに挟み込むことで測定した。
また、延伸開始時のフィルム膜面温度を、表1に延伸開始時膜面温度または延伸膜温として記載したように制御した。これは横の延伸ゾーンを搬送方向に十等分した点にパネルヒーターを設置し、この出力の調整で実施した。延伸開始時のフィルム膜面温度は、熱電対を用いて直接フィルム表面の温度を測定した。その結果、延伸開始時膜面温度と把持時クリップ温度との差は、32℃となるように制御された。
・横延伸温度(横延伸中の平均温度):90℃
・横延伸倍率:4.3倍
(熱固定部)
次いで、ポリエステルフィルムの膜面温度を下記範囲に制御しながら、熱固定処理を行った。
<条件>
・熱固定温度:180℃
・熱固定時間:15秒
(熱緩和部)
熱固定後のポリエステルフィルムを下記の温度に加熱し、フィルムを緩和した。
・熱緩和温度:170℃
・熱緩和率:TD方向(フィルム幅方向)2%」(以下、「甲2製造方法発明」という。)

「以下の工程によるポリエステルフィルムの製造方法により製造された厚み65μm、測定波長589nmにおけるフィルム面内のレタデーションReが6500nmの一軸配向ポリエステルフィルム。
<原料ポリエステルの合成>
(原料ポリエステル1)
以下に示すように、テレフタル酸及びエチレングリコールを直接反応させて水を留去し、エステル化した後、減圧下で重縮合を行う直接エステル化法を用いて、連続重合装置により原料ポリエステル1(Sb触媒系PET)を得た。
(1)エステル化反応
第一エステル化反応槽に、高純度テレフタル酸4.7トンとエチレングリコール1.8トンを90分かけて混合してスラリー形成させ、3800kg/hの流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。更に三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を連続的に供給し、反応槽内温度250℃、攪拌下、平均滞留時間約4.3時間で反応を行なった。このとき、三酸化アンチモンはSb添加量が元素換算値で150ppmとなるように連続的に添加した。
この反応物を第二エステル化反応槽に移送し、攪拌下、反応槽内温度250℃で、平均滞留時間で1.2時間反応させた。第二エステル化反応槽には、酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液と、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を、Mg添加量およびP添加量が元素換算値でそれぞれ65ppm、35ppmになるように連続的に供給した。
(2)重縮合反応
上記で得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給し、攪拌下、反応温度270℃、反応槽内圧力20torr(2.67×10^(-3)MPa)で、平均滞留時間約1.8時間で重縮合させた。
更に、第二重縮合反応槽に移送し、この反応槽において攪拌下、反応槽内温度276℃、反応槽内圧力5torr(6.67×10^(-4)MPa)で滞留時間約1.2時間の条件で反応(重縮合)させた。
次いで、更に第三重縮合反応槽に移送し、この反応槽では、反応槽内温度278℃、反応槽内圧力1.5torr(2.0×10^(-4)MPa)で、滞留時間1.5時間の条件で反応(重縮合)させ、反応物(ポリエチレンテレフタレート(PET))を得た。
次に、得られた反応物を、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリエステルのペレット<断面:長径約4mm、短径約2mm、長さ:約3mm>を作製した。
得られたポリマーは、IV=0.63であった。このポリマーを原料ポリエステル1とした(以降、PET1と略す)。
<ポリエステルフィルムの製造>
-フィルム成形工程-
原料ポリエステル1(PET1)を、含水率20ppm以下に乾燥させた後、直径50mmの1軸混練押出機1のホッパー1に投入した。原料ポリエステル1は、300℃に溶融し、下記押出条件により、ギアポンプ、濾過器(孔径20μm)を介し、ダイから押出した。
溶融樹脂の押出条件は、圧力変動を1%、溶融樹脂の温度分布を2%として、溶融樹脂をダイから押出した。具体的には、背圧を、押出機のバレル内平均圧力に対して1%加圧し、押出機の配管温度を、押出機のバレル内平均温度に対して2%高い温度で加熱した。
ダイから押出した溶融樹脂は、温度25℃に設定された冷却キャストドラム上に押出し、静電印加法を用い冷却キャストドラムに密着させた。冷却キャストドラムに対向配置された剥ぎ取りロールを用いて剥離し、未延伸ポリエステルフィルム1を得た。
-横延伸工程-
未延伸ポリエステルフィルム1をテンター(横延伸機)に導き、フィルムの両端部から幅方向に15mm離れた位置をクリップで把持しながら、下記の方法、条件にて横延伸した。
(予熱部)
予熱温度を90℃とし、熱風ノズルから吹き出す熱風により、延伸可能な温度まで加熱した。
(延伸部)
予熱された未延伸ポリエステルフィルム1を、幅方向に下記の条件にてテンターを用いTD方向に横延伸した。
このテンターは、WO2008/035762号公報と同様のインナーリターン式である。両サイドの無端レール上のクリップが、フィルム解放後にリターンレール室を通過し、その後再びフィルムを把持する。22℃の冷風が250m^(3)/minで供給されるリターンレール室中に、フィルムを把持しないリターンレール側のクリップを走行させ、同時に各サイドで供給量と同量(250m^(3)/min)にてリターンレール室の排気を行った。クリップには、熱風ノズルから噴き出す熱風が当たらないよう、図3に記載する構造であり、フィルムとカバーの間のクリアランスが15mmの風を遮るカバーを設けた。なお、風を遮るカバーがあっても、リターンレール室自体が十分に冷却されているため、リターンレールを走行するクリップにカバーが設けられてクリップに直接的に冷風が当たらない場合であっても、十分にクリップは冷却される。以上により、フィルムを把持時のクリップの温度は、下記表1に記載したように56℃となった。ここで、フィルムを把持時のクリップの温度は以下の方法で測定した。
フィルムを把持時のクリップの温度は、走行中のクリップを非常停止し、停止後30秒以内に直接熱電対を把持寸前のクリップに挟み込むことで測定した。
また、延伸開始時のフィルム膜面温度を、表1に延伸開始時膜面温度または延伸膜温として記載したように制御した。これは横の延伸ゾーンを搬送方向に十等分した点にパネルヒーターを設置し、この出力の調整で実施した。延伸開始時のフィルム膜面温度は、熱電対を用いて直接フィルム表面の温度を測定した。その結果、延伸開始時膜面温度と把持時クリップ温度との差は、32℃となるように制御された。
・横延伸温度(横延伸中の平均温度):90℃
・横延伸倍率:4.3倍
(熱固定部)
次いで、ポリエステルフィルムの膜面温度を下記範囲に制御しながら、熱固定処理を行った。
<条件>
・熱固定温度:180℃
・熱固定時間:15秒
(熱緩和部)
熱固定後のポリエステルフィルムを下記の温度に加熱し、フィルムを緩和した。
・熱緩和温度:170℃
・熱緩和率:TD方向(フィルム幅方向)2%」(以下、「甲2製造物発明」という。また、「甲2製造方法発明」と「甲2製造物発明」を総称して、「甲2発明」という。)

(2)対比・判断

ア 本件発明19について
本件発明19と甲2製造方法発明とを対比する。
甲2製造方法発明における横延伸工程は、未延伸ポリエステルフィルムをテンター(横延伸機)に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら横延伸するものであるから、本件発明19と同じく「フィルム搬送路の両側に設置された一対のレールに沿ってそれぞれ走行する複数のクリップを備えた横延伸装置」を用いているものといえる。
また、甲2製造方法発明では、予熱された未延伸ポリエステルフィルムを熱風で加熱しながら、幅方向にテンターを用いて横延伸するものであるから、本件発明19の「前記予熱されたポリエステルフィルムの両縁を前記複数のクリップで把持した状態で前記フィルム搬送路に対して直交する方向に延伸する横延伸を行」うものであるといえる。
さらに、甲2製造方法発明の横延伸倍率は4.3倍であり、熱固定温度は180℃であることから、本件発明19の横延伸倍率、熱固定工程における温度条件のいずれの条件も満たすものである。

してみると、本件発明19と甲2製造方法発明とは、
「フィルム搬送路の両側に設置された一対のレールに沿ってそれぞれ走行する複数のクリップを備えた横延伸装置を用い、
未延伸の又は縦延伸したポリエステルフィルムを予熱する予熱工程と、
前記予熱されたポリエステルフィルムの両縁を前記複数のクリップで把持した状態で前記フィルム搬送路に対して直交する方向に延伸する横延伸を行う横延伸工程と、
前記横延伸工程後のポリエステルフィルムを前記横延伸装置内での最高温度まで加熱することにより熱固定する熱固定工程と、を含む、
ポリエステルフィルムの製造方法。」
で一致し、次の点で一応相違する。

・相違点1
予熱工程における昇温速度について、本件発明19では、「600℃/min以下」であるのに対し、甲2製造方法発明では特定がない点。

・相違点2
横延伸時の温度条件について、本件発明19では、「前記横延伸開始から前記横延伸終了まで前記ポリエステルフィルムの表面温度を徐々に上昇させ、前記横延伸開始時の前記表面温度を80℃以上95℃以下、かつ、前記横延伸終了時の前記表面温度を93℃以上105℃以下に制御し、横延伸倍率を3.3倍以上4.8倍以下の範囲に制御する」ものであるのに対し、甲2製造方法発明では、延伸開始時膜面温度が88℃であって、横延伸中の平均温度が90℃である点。

・相違点3
製造するポリエステルフィルムの厚みについて、本件発明19では、「60μm?500μm」であって、「但し、厚みが60μm又は65μmであるポリエステルフィルムを除く」ものであるのに対し、甲2製造方法発明では、ポリエステルフィルムの厚みが65μmである点。

事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。

・相違点2について
甲2製造方法発明における横延伸時の温度条件は、延伸開始時の膜面温度が88℃、横延伸中の平均膜面温度が90℃である。延伸開始時よりも延伸中の平均膜面温度の方が高いこと、横延伸が進むにしたがって通常膜面温度を高く制御することを考えるならば、甲2製造方法発明における横延伸中の温度条件は延伸開始時において88℃であって、その後徐々に昇温し、概ね92℃程度まで昇温されるものといえるものの、相違点2に係る本件発明19の特定事項(93℃以上105℃以下)を満たすものではない。
この点について、特許異議申立人は、令和3年7月13日提出の意見書において、甲第2号証の段落[0042]に、「延伸温度は70℃以上170℃以下が好ましく・・・」との記載をあげ、甲第2号証の実施例の延伸温度を数度高く設定することは当然に想定されていることであるから、横延伸の温度範囲として「93℃以上105℃以下」を採用することは、当業者に極めて容易である旨主張する。
しかしながら、本件発明19は、横延伸工程終了時の表面温度を93℃以上100℃以下とすることで、せん断面垂直応力及びせん断面降伏応力が上がり過ぎることを抑制する(【0076】)との、甲第2号証の記載に比して格別の効果を奏するものである。
よって、甲2製造方法発明において、相違点2に係る本件発明19の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

したがって、他の相違点については検討するまでもなく、本件発明19は、甲2製造方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明20ないし23について
本件発明20ないし23は、いずれも、直接又は間接的に請求項19を引用する発明であり、本件発明19の特定事項を全て有するものである。
そして、上記アのとおり、本件発明19は、甲2製造方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明19の特定事項を全て含む発明である本件発明20ないし23もまた、甲2製造方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明1について
本件発明1と甲2製造物発明とを対比すると、両者は、
「ポリエステルフィルム」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点4)
ポリエステルフィルムの厚みについて、本件発明1では、「60μm?500μm」であって、「但し、厚みが60μm又は65μmであるポリエステルフィルムを除く」ものであるのに対し、甲2製造物発明では、ポリエステルフィルムの厚みが65μmである点。

(相違点5)
ポリエステルフィルムの表層1μmにおける遅相軸方向のせん断面垂直応力Aとフィルム面内で前記遅相軸方向に直交する方向のせん断面垂直応力Bとの平均値が、本件発明1は「30MPa?80MPa」であるのに対し、甲2製造物発明では特定がない点。

事案に鑑み、まず、相違点5について検討する。
上記(1)に記載のとおり、甲2製造物発明は、要するに、甲2製造方法発明により製造されたポリエステルフィルムである。
そして、上記アにおいて検討したとおり、甲2製造物発明の製造方法は、本件発明19と同一ではないし、また、本件明細書の実施例と同一でもない。
してみると、甲2製造物発明は、その製造方法が、本件明細書に具体的に示されている実施例と異なるのであるから、甲2製造物発明が相違点5に係る本件発明1の特定事項を満たすものであると推認することはできない。
さらに、甲2製造物発明において、ポリエステルフィルムが、相違点5に係る本件発明1で特定されるようなせん断面垂直応力の平均値の条件を満たすものとなるように調整すべき動機付けもない。
してみれば、他の相違点については検討するまでもなく、本件発明1は、甲2製造物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明2ないし18について
本件発明2ないし18は、いずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記ウのとおり、本件発明1は、甲2製造物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の特定事項を全て含む発明である本件発明2ないし18もまた、甲2製造物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 採用しなかった異議申立理由について

(1) 申立理由1-2について

申立理由1-2のうちの請求項16に係る部分については、上記1(2)エで検討したとおりである。

(2) 申立理由1-1について

ア 甲第1号証の記載事項等

(ア) 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には次の事項が記載されている。

「[請求項1] 下記式1?7を満たす、一軸配向ポリエステルフィルム;
20μm≦t≦60μm ・・・式1
2000nm≦Re≦6500nm ・・・式2
0.7≦Re/Rth≦1.4 ・・・式3
2000MPa≦EMD ・・・式4
2≦ETD/EMD≦3 ・・・式5
5g・cm/cm≦TRTD ・・・式6
50MPa≦TBMD ・・・式7
式1?7中、tはフィルム厚みを表し、単位はμmであり、
Reはフィルム面内のレターデーションを表し、単位はnmであり、
Rthはフィルム厚み方向のレターデーションを表し、単位はnmであり、
EMDはフィルム長手方向の弾性率を表し、単位はMPaであり、
ETDはフィルム幅方向の弾性率を表し、単位はMPaであり、
TRTDはフィルム幅方向の引裂強度を表し、単位はg・cm/cmであり、
TBMDはフィルム長手方向の破断強度を表し、単位はMPaである。
・・・
[請求項3] 前記一軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に易接着層が積層された、請求項1または2に記載の一軸配向ポリエステルフィルム。
[請求項4] 前記易接着層が、粒子を含有し、
前記易接着層の表面から前記粒子が突出する高さが、前記易接着層の膜厚以上である、請求項3に記載の一軸配向ポリエステルフィルム;
前記易接着層の表面から前記粒子が突出する高さは、1mm四方の易接着層中の5点における平均値である。
[請求項5] 請求項1?4のいずれか一項に記載の一軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面にハードコート層が積層された、ハードコートフィルム。
・・・
[請求項8] 請求項1?4のいずれか一項に記載の一軸配向ポリエステルフィルムを含む、タッチパネル用センサーフィルム。
[請求項9] 請求項1?4のいずれか一項に記載の一軸配向ポリエステルフィルム、請求項5に記載のハードコートフィルム、請求項6に記載の飛散防止フィルム、請求項7に記載の反射防止フィルムおよび請求項8に記載のタッチパネル用センサーフィルムの少なくとも一つを備える、タッチパネル。
[請求項10] 液晶パネルと、
前記液晶パネルの出射面に配置される偏光板とを有し、
前記一軸配向ポリエステルフィルム、前記ハードコートフィルム、前記飛散防止フィルム、前記反射防止フィルムおよび前記タッチパネル用センサーフィルムの少なくとも一つの遅相軸が、前記偏光板の吸収軸に対して、45±25°の範囲で配置された、請求項9に記載のタッチパネル。
[請求項11] フィルム搬送路の両側に設置された一対のレールに沿って走行するクリップを有するテンター式延伸装置を用いる請求項1?4のいずれか一項に記載の一軸配向ポリエステルフィルムの製造方法であって、
実質的に未延伸のポリエステルフィルムを前記クリップで把持しながら横延伸する工程と、
前記横延伸後のポリエステルフィルムを前記テンター内の最高温度まで加熱する熱固定工程とを含み、
前記横延伸工程における横延伸倍率を3.3倍以上4.8倍以下の範囲に制御し、
前記横延伸工程における、延伸開始時の膜面温度を80℃以上95℃以下の範囲に保ち、かつ延伸終了時の膜面温度を90℃以上105℃以下に保ち、
前記延伸開始時から前記延伸終了時にかけて膜面温度を徐々に上昇させ、
前記一軸配向ポリエステルフィルムの厚みが20μm以上60μm以下である、一軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
[請求項12] 前記横延伸工程において、
延伸倍率が1?2倍の範囲の膜面温度を80℃以上92℃以下、
延伸倍率が2?3倍の範囲の膜面温度を85℃以上97℃以下、
延伸倍率が3倍以上の範囲の膜面温度を90℃以上102℃以下に保つ、請求項11に記載の一軸配向ポリエステルフィルムの製造方法;
ただし、延伸倍率が2?3倍の範囲の膜面温度は延伸倍率が1?2倍の範囲の膜面温度以下となることはなく、延伸倍率が3倍以上の範囲の膜面温度は延伸倍率が2?3倍の範囲の膜面温度以下になることはない。
[請求項13] 前記熱固定されたポリエステルフィルムを加熱し、かつ、前記ポリエステルフィルムの少なくともMD方向の長さを縮める熱緩和工程を含み、
前記熱緩和工程において、前記熱固定されたポリエステルフィルムのMD方向の長さを縮める割合であるMD方向の緩和率を1?7%とし、前記熱固定されたポリエステルフィルムのTD方向の長さを縮める割合であるTD方向の緩和率を0?6%とする、請求項11または12に記載の一軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
[請求項14] 前記熱固定および前記熱緩和工程の最高到達膜面温度を130℃以上190℃以下の範囲に保つ、請求項13に記載の一軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。」

「[0001] 本発明は、一軸配向ポリエステルフィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用センサーフィルム、飛散防止フィルム、反射防止フィルム、タッチパネルおよび一軸配向ポリエステルフィルムの製造方法に関する。より詳しくは、虹ムラの発生が抑制でき、タッチパネルに用いられる各種フィルムの加工工程でのシワや破断等の問題を解消でき、特にタッチパネル用の各種フィルムの基材としての使用に特に適した厚さの一軸配向ポリエステルフィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用センサーフィルム、飛散防止フィルム、反射防止フィルム、タッチパネルおよび一軸配向ポリエステルフィルムの製造方法に関する。」

「[0005] タッチパネルに使用される各種フィルムは、塗布・乾燥・スパッタリング等の工程で高温や高テンションの環境にさらされることが多い。本発明者らが検討したところ、厚みの薄い一軸配向ポリエステルフィルムをタッチパネルの基材として使用すると、塗布・乾燥・スパッタリング等の工程で高温や高テンションの環境にさらされる結果、フィルムにシワが生じたり、破断が起こったりすることが多いことを見出すに至った。
特許文献1には、薄手の一軸配向ポリエステルフィルムのシワや破断に関する記載がなかった。そこで、本発明者らが検討したところ、特許文献1の一軸配向ポリエステルフィルムは虹ムラの抑制には効果があるが、偏光板加工工程や塗布工程などの後工程でのフィルム破断の抑制が不十分であり、タッチパネル用のフィルムとしての使用は難しいことがわかった。
[0006] 一方、特許文献2には、ポリエステルフィルムの熱固定温度をTm-35?65℃で熱固定し、140?175℃で熱弛緩処理することで、フィルムの熱収縮を低下させ、均一化し、後工程でのシワ等の故障を改良することが開示されている。特許文献2には、フィルムの低熱収縮化及びその均一化がシワ等の改良に効果的であることが示されている。しかしながら、特許文献2では二軸延伸された二軸配向ポリエステルフィルムについてしか検討されておらず、一軸配向ポリエステルフィルムは二軸配向ポリエステルフィルムと物性も全く異なるため、一軸配向ポリエステルフィルムの偏光板加工工程や塗布工程などの後工程でのフィルム破断の抑制を達成する方法についての知見は得られなかった。
[0007] 本発明の解決しようとする課題は、虹ムラの発生が抑制でき、タッチパネルに用いられる各種フィルムの加工工程でのシワや破断等の問題を解消でき、特にタッチパネル用の各種フィルムの基材としての使用に特に適した厚さの一軸配向ポリエステルフィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用センサーフィルム、飛散防止フィルム、反射防止フィルム、タッチパネルおよび一軸配向ポリエステルフィルムの製造方法を提供することである。」

「[0015]<一軸配向ポリエステルフィルムの特性>
(厚み)
本発明の一軸配向ポリエステルフィルムの厚みは、下記式1を満たす。
20μm≦t≦60μm ・・・式1
式1?7中、tはフィルム厚みを表し、単位はμmである。
フィルム厚みtは、25μm以上55μm以下がより好ましく、30μm以上50μm以下が更に好ましい。20μmを下回ると虹ムラが生じ、60μmを上回ると厚みが厚すぎてタッチパネル用のフィルム基材としては適さなくなる。
一軸配向ポリエステルフィルムの厚みtは、例えば、接触式膜厚測定計を用い、縦延伸した方向(長手方向)に0.5mにわたり等間隔に50点をサンプリングし、さらにフィルム幅方向(長手方向に直交する方向)にフィルム全幅にわたり等間隔(幅方向に50等分)に50点をサンプリングした後、これらの100点の厚みを測定した。これら100点の平均の厚みを求め、一軸配向ポリエステルフィルムの厚みとした。」

「[0087][実施例1]
<原料ポリエステルの合成>
(原料ポリエステル1)
以下に示すように、テレフタル酸及びエチレングリコールを直接反応させて水を留去し、エステル化した後、減圧下で重縮合を行なう直接エステル化法を用いて、連続重合装置により原料ポリエステル1(Sb触媒系PET)を得た。
[0088](1)エステル化反応
第一エステル化反応槽に、高純度テレフタル酸4.7トンとエチレングリコール1.8トンを90分かけて混合してスラリー形成させ、3800kg/hの流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。更に三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を連続的に供給し、反応槽内温度250℃、攪拌下、平均滞留時間約4.3時間で反応を行なった。このとき、三酸化アンチモンはSb添加量が元素換算値で150ppmとなるように連続的に添加した。
[0089] この反応物を第二エステル化反応槽に移送し、攪拌下、反応槽内温度250℃で、平均滞留時間で1.2時間反応させた。第二エステル化反応槽には、酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液と、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を、Mg添加量およびP添加量が元素換算値でそれぞれ65ppm、35ppmになるように連続的に供給した。
[0090](2)重縮合反応
上記で得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給し、攪拌下、反応温度270℃、反応槽内圧力20torr(2.67×10^(-3)MPa)で、平均滞留時間約1.8時間で重縮合させた。
[0091] 更に、第二重縮合反応槽に移送し、この反応槽において攪拌下、反応槽内温度276℃、反応槽内圧力5torr(6.67×10^(-4)MPa)で滞留時間約1.2時間の条件で反応(重縮合)させた。
[0092] 次いで、更に第三重縮合反応槽に移送し、この反応槽では、反応槽内温度278℃、反応槽内圧力1.5torr(2.0×10^(-4)MPa)で、滞留時間1.5時間の条件で反応(重縮合)させ、反応物(ポリエチレンテレフタレート(PET))を得た。
[0093] 次に、得られた反応物を、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリエステルのペレット<断面:長径約4mm、短径約2mm、長さ:約3mm>を作製した。
[0094] 得られたポリマーは、IV=0.63であった(以降、PET1と略す)。このポリマーを原料ポリエステル1とした。
[0095]<ポリエステルフィルムの製造>
-フィルム成形工程-
原料ポリエステル1(PET1)を、含水率20ppm以下に乾燥させた後、直径50mmの1軸混練押出機1のホッパー1に投入した。原料ポリエステル1は、300℃に溶融し、下記押出条件により、ギアポンプ、濾過器(孔径20μm)を介し、ダイから押出した。
溶融樹脂の押出条件は、圧力変動を1%、溶融樹脂の温度分布を2%として、溶融樹脂をダイから押出した。具体的には、背圧を、押出機のバレル内平均圧力に対して1%加圧し、押出機の配管温度を、押出機のバレル内平均温度に対して2%高い温度で加熱した。
ダイから押出した溶融樹脂は、温度25℃に設定された冷却キャストドラム上に押出し、静電印加法を用い冷却キャストドラムに密着させた。冷却キャストドラムに対向配置された剥ぎ取りロールを用いて剥離し、未延伸ポリエステルフィルム1を得た。」

「[0098]-易接着層の形成-
下記化合物を下記の比率で混合し、易接着層用の塗布液H1を作製した。
[0099]易接着層用の塗布液H1
ポリエステル樹脂:(IC) 60質量部
アクリル樹脂:(II) 25質量部
メラミン化合物:(VIB) 10質量部
粒子:(VII) 5質量部
以下に使用化合物の詳細を示す。
ポリエステル樹脂:(IC)
下記組成のモノマーで共重合したポリエステル樹脂のスルホン酸系水分散体モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5-ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4-ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
[0100]アクリル樹脂:(II)
下記組成のモノマーで重合したアクリル樹脂の水分散体
エチルアクリレート/n-ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N-メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(質量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
ウレタン樹脂:(IIIB)
1,6-ヘキサンジオールとジエチルカーボネートからなる数平均分子量が2000のポリカーボネートポリオールを400質量部、ネオペンチルグリコールを10.4質量部、イソホロンジイソシアネート58.4質量部、ジメチロールブタン酸が74.3質量部からなるプレポリマーをトリエチルアミンで中和し、イソホロンジアミンで鎖延長して得られるウレタン樹脂の水分散体。
メラミン化合物:(VIB)ヘキサメトキシメチルメラミン
粒子:(VII)平均粒径150nmのシリカゾル(平均粒径は、一次平均粒子径、すなわち一次粒子径の平均値を意味する。下記表には、粒子大きさとして記載した)。
[0101]-ポリエステルフィルムの両面への易接着層の塗布-
ワイヤーバーを用いるバーコート法にて、未延伸ポリエステルフィルム1の片側に易接着層用の塗布液H1を、延伸後の塗布膜厚が50nmになるように調整しながら、ワイヤーバーを用いて塗布した。
易接着層の表面から粒子が突出する高さを、1mm四方の易接着層中の5点において、株式会社キーエンス社製VHX-5000を用いて求め、その平均値を計算した。その結果を下記表に記載した。
[0102]-横延伸工程-
未延伸ポリエステルフィルム1をテンター(横延伸機)に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、下記の方法、条件にて横延伸した。
[0103](予熱部)
延伸開始点での膜面温度が89℃になるよう、熱風で加熱した。
なお延伸開始点での膜面温度は、延伸を開始する点において、フィルム幅方向の中央部の位置を、放射温度計(林電工製、型番:RT61-2、放射率0.95で使用)により測定した。
[0104](延伸部)
予熱された未延伸ポリエステルフィルム1を熱風で加熱しながら、幅方向に下記の条件にてテンターを用いて横延伸した。
なお、各延伸倍率時点での膜面温度は、各延伸倍率時点において、フィルム幅方向の中央部の位置を、放射温度計(林電工製、型番:RT61-2、放射率0.95で使用)により測定した。
<条件>
・横延伸倍率:4.1倍
・2倍延伸時点での膜面温度:90℃
・3倍延伸時点での膜面温度:94℃
・延伸終了時点での膜面温度:95℃
[0105](熱固定部及び熱緩和部)
次いで、フィルムに対して上下方向からの熱風を熱風吹き出しノズルからフィ
ルムに当て、ポリエステルフィルムの膜面温度を下記範囲に制御しながら、熱固
定及び熱緩和処理を行った。
<条件>
・最高到達膜面温度(熱固定温度):168℃
・熱緩和率:MD方向4%、TD方向1.5%
[0106](冷却部)
次に、フィルムに対して上下方向からの冷風を冷風吹き出しノズルからフィルムに当てることで冷却した。フィルムをテンターのクリップから開放する際の膜面温度が40℃になるように冷却した。
なお膜面温度は、フィルム幅方向の中央部の位置を、放射温度計(林電工製、型番:RT61-2、放射率0.95で使用)により測定した。
[0107](フィルムの回収)
冷却およびクリップからのフィルムの開放の後、ポリエステルフィルムの両端を20cmずつトリミングした。トリミング後のフィルム幅は2mであった。その後、両端に幅10mmで押出し加工(ナーリング)を行なった後、張力18kg/mで、10000mの長さのフィルムをロール形態に巻き取った。
以上のようにして、ロール形態で巻かれた、厚さ39μmの実施例1の一軸配向ポリエステルフィルムを製造した。
[0108][実施例2?8、10、比較例1?5]
実施例1において、下記表に記載のように横延伸倍率、横延伸膜温(膜面温度)、熱固定/緩和時の最高到達膜面温度、MD緩和率、TD緩和率、フィルム厚み、粒子大きさ(日産化学工業株式会社製オルガノシリカゾル、一次平均粒子径60nm)を変更した以外は実施例1と同様にして、各実施例および比較例の一軸配向ポリエステルフィルムを製造した。」

「[0111]<Re、Rth、Re/Rth比率>
面内方向のレターデーションReとは、フィルム上の直交する二軸の屈折率の異方性(△Nxy=|Nx-Ny|)とフィルム厚みd(nm)との積(△Nxy×d)で定義されるパラメーターであり、光学的等方性、異方性を示す尺度である。二軸の屈折率の異方性(△Nxy)は、以下の方法により求めた。二枚の偏光板を用いて、フィルムの配向軸方向を求め、配向軸方向が直交するように4cm×2cmの長方形を切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルについて、直交する二軸の屈折率(Nx,Ny)、及び厚さ方向の屈折率(Nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T、測定波長589nm)によって求め、二軸の屈折率差の絶対値(|Nx-Ny|)を屈折率の異方性(△Nxy)とした。フィルムの厚みd(nm)は電気マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定し、単位をnmに換算した。屈折率の異方性(△Nxy)とフィルムの厚みd(nm)の積(△Nxy×d)より、レターデーション(Re)を求めた。
厚さ方向レターデーションとは、フィルム厚さ方向断面から見たときの2つの複屈折△Nxz(=|Nx-Nz|)、△Nyz(=|Ny-Nz|)にそれぞれフィルム厚さdを掛けて得られるレターデーションの平均を示すパラメーターである。レターデーションの測定と同様の方法でNx、Ny、Nzとフィルム厚みd(nm)を求め、(△Nxz×d)と(△Nyz×d)との平均値を算出して厚さ方向レターデーション(Rth)を求めた。
得られたReおよびRthから、Re/Rth比率を計算した。
結果を、下記表2に示す。」

「[表1]



「[表2]



(イ) 甲第1号証に記載された発明

アの記載、特に実施例2の記載を中心に整理すると、甲第1号証には以下の発明が記載されていると認める。

「以下の工程により、ロール形態で巻かれた、厚さ58μmの一軸配向ポリエステルフィルムを製造するポリエステルフィルムの製造方法。
<原料ポリエステルの合成>
(原料ポリエステル1)
以下に示すように、テレフタル酸及びエチレングリコールを直接反応させて水を留去し、エステル化した後、減圧下で重縮合を行なう直接エステル化法を用いて、連続重合装置により原料ポリエステル1(Sb触媒系PET)を得た。
(1)エステル化反応
第一エステル化反応槽に、高純度テレフタル酸4.7トンとエチレングリコール1.8トンを90分かけて混合してスラリー形成させ、3800kg/hの流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。更に三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を連続的に供給し、反応槽内温度250℃、攪拌下、平均滞留時間約4.3時間で反応を行なった。このとき、三酸化アンチモンはSb添加量が元素換算値で150ppmとなるように連続的に添加した。
この反応物を第二エステル化反応槽に移送し、攪拌下、反応槽内温度250℃で、平均滞留時間で1.2時間反応させた。第二エステル化反応槽には、酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液と、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を、Mg添加量およびP添加量が元素換算値でそれぞれ65ppm、35pmになるように連続的に供給した。
(2)重縮合反応
上記で得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給し、攪拌下、反応温度270℃、反応槽内圧力20torr(2.67×10^(-3)MPa)で、平均滞留時間約1.8時間で重縮合させた。
更に、第二重縮合反応槽に移送し、この反応槽において攪拌下、反応槽内温度276℃、反応槽内圧力5torr(6.67×10^(-4)MPa)で滞留時間約1.2時間の条件で反応(重縮合)させた。
次いで、更に第三重縮合反応槽に移送し、この反応槽では、反応槽内温度278℃、反応槽内圧力1.5torr(2.0×10^(-4)MPa)で、滞留時間1.5時間の条件で反応(重縮合)させ、反応物(ポリエチレンテレフタレート(PET))を得た。
次に、得られた反応物を、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリエステルのペレット<断面:長径約4mm、短径約2mm、長さ:約3mm>を作製した。
得られたポリマーは、IV=0.63であった(以降、PET1と略す)。このポリマーを原料ポリエステル1とした。
<ポリエステルフィルムの製造>
-フィルム成形工程-
原料ポリエステル1(PET1)を、含水率20ppm以下に乾燥させた後、直径50mmの1軸混練押出機1のホッパー1に投入した。原料ポリエステル1は、300℃に溶融し、下記押出条件により、ギアポンプ、濾過器(孔径20μm)を介し、ダイから押出した。
溶融樹脂の押出条件は、圧力変動を1%、溶融樹脂の温度分布を2%として、溶融樹脂をダイから押出した。具体的には、背圧を、押出機のバレル内平均圧力に対して1%加圧し、押出機の配管温度を、押出機のバレル内平均温度に対して2%高い温度で加熱した。
ダイから押出した溶融樹脂は、温度25℃に設定された冷却キャストドラム上に押出し、静電印加法を用い冷却キャストドラムに密着させた。冷却キャストドラムに対向配置された剥ぎ取りロールを用いて剥離し、未延伸ポリエステルフィルム1を得た。
-易接着層の形成-
下記化合物を下記の比率で混合し、易接着層用の塗布液H1を作製した。
易接着層用の塗布液H1
ポリエステル樹脂:(IC) 60質量部
アクリル樹脂:(II) 25質量部
メラミン化合物:(VIB) 10質量部
粒子:(VII) 5質量部
以下に使用化合物の詳細を示す。
ポリエステル樹脂:(IC)
下記組成のモノマーで共重合したポリエステル樹脂のスルホン酸系水分散体モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5-ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4-ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)アクリル樹脂:(II)
下記組成のモノマーで重合したアクリル樹脂の水分散体
エチルアクリレート/n-ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N-メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(質量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
ウレタン樹脂:(IIIB)
1,6-ヘキサンジオールとジエチルカーボネートからなる数平均分子量が2000のポリカーボネートポリオールを400質量部、ネオペンチルグリコールを10.4質量部、イソホロンジイソシアネート58.4質量部、ジメチロールブタン酸が74.3質量部からなるプレポリマーをトリエチルアミンで中和し、イソホロンジアミンで鎖延長して得られるウレタン樹脂の水分散体。
メラミン化合物:(VIB)ヘキサメトキシメチルメラミン
粒子:(VII)平均粒径150nmのシリカゾル(平均粒径は、一次平均粒子径、すなわち一次粒子径の平均値を意味する。下記表には、粒子大きさとして記載した)。
-ポリエステルフィルムの両面への易接着層の塗布-
ワイヤーバーを用いるバーコート法にて、未延伸ポリエステルフィルム1の片側に易接着層用の塗布液H1を、延伸後の塗布膜厚が50nmになるように調整しながら、ワイヤーバーを用いて塗布した。
易接着層の表面から粒子が突出する高さを、1mm四方の易接着層中の5点において、株式会社キーエンス社製VHX-5000を用いて求め、その平均値を計算した。その結果を下記表に記載した。
-横延伸工程-
未延伸ポリエステルフィルム1をテンター(横延伸機)に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、下記の方法、条件にて横延伸した。
(予熱部)
延伸開始点での膜面温度が89℃になるよう、熱風で加熱した。
なお延伸開始点での膜面温度は、延伸を開始する点において、フィルム幅方向の中央部の位置を、放射温度計(林電工製、型番:RT61-2、放射率0.95で使用)により測定した。
(延伸部)
予熱された未延伸ポリエステルフィルム1を熱風で加熱しながら、幅方向に下記の条件にてテンターを用いて横延伸した。
なお、各延伸倍率時点での膜面温度は、各延伸倍率時点において、フィルム幅方向の中央部の位置を、放射温度計(林電工製、型番:RT61-2、放射率0.95で使用)により測定した。
<条件>
・横延伸倍率:4.1倍
・2倍延伸時点での膜面温度:90℃
・3倍延伸時点での膜面温度:94℃
・延伸終了時点での膜面温度:95℃
(熱固定部及び熱緩和部)
次いで、フィルムに対して上下方向からの熱風を熱風吹き出しノズルからフィルムに当て、ポリエステルフィルムの膜面温度を下記範囲に制御しながら、熱固定及び熱緩和処理を行った。
<条件>
・最高到達膜面温度(熱固定温度):168℃
・熱緩和率:MD方向4%、TD方向1.5%
(冷却部)
次に、フィルムに対して上下方向からの冷風を冷風吹き出しノズルからフィルムに当てることで冷却した。フィルムをテンターのクリップから開放する際の膜面温度が40℃になるように冷却した。
なお膜面温度は、フィルム幅方向の中央部の位置を、放射温度計(林電工製、型番:RT61-2、放射率0.95で使用)により測定した。
(フィルムの回収)
冷却およびクリップからのフィルムの開放の後、ポリエステルフィルムの両端を20cmずつトリミングした。トリミング後のフィルム幅は2mであった。その後、両端に幅10mmで押出し加工(ナーリング)を行なった後、張力18kg/mで、10000mの長さのフィルムをロール形態に巻き取った。」(以下、「甲1製造方法発明」という。)

「以下の工程によるポリエステルフィルムの製造方法により製造された、ロール形態で巻かれた、厚さ58μmの一軸配向ポリエステルフィルム。
<原料ポリエステルの合成>
(原料ポリエステル1)
以下に示すように、テレフタル酸及びエチレングリコールを直接反応させて水を留去し、エステル化した後、減圧下で重縮合を行なう直接エステル化法を用いて、連続重合装置により原料ポリエステル1(Sb触媒系PET)を得た。
(1)エステル化反応
第一エステル化反応槽に、高純度テレフタル酸4.7トンとエチレングリコール1.8トンを90分かけて混合してスラリー形成させ、3800kg/hの流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。更に三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を連続的に供給し、反応槽内温度250℃、攪拌下、平均滞留時間約4.3時間で反応を行なった。このとき、三酸化アンチモンはSb添加量が元素換算値で150ppmとなるように連続的に添加した。
この反応物を第二エステル化反応槽に移送し、攪拌下、反応槽内温度250℃で、平均滞留時間で1.2時間反応させた。第二エステル化反応槽には、酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液と、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を、Mg添加量およびP添加量が元素換算値でそれぞれ65ppm、35ppmになるように連続的に供給した。
(2)重縮合反応
上記で得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給し、攪拌下、反応温度270℃、反応槽内圧力20torr(2.67×10^(-3)MPa)で、平均滞留時間約1.8時間で重縮合させた。
更に、第二重縮合反応槽に移送し、この反応槽において攪拌下、反応槽内温度276℃、反応槽内圧力5torr(6.67×10^(-4)MPa)で滞留時間約1.2時間の条件で反応(重縮合)させた。
次いで、更に第三重縮合反応槽に移送し、この反応槽では、反応槽内温度278℃、反応槽内圧力1.5torr(2.0×10^(-4)MPa)で、滞留時間1.5時間の条件で反応(重縮合)させ、反応物(ポリエチレンテレフタレート(PET))を得た。
次に、得られた反応物を、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリエステルのペレット<断面:長径約4mm、短径約2mm、長さ:約3mm>を作製した。
得られたポリマーは、IV=0.63であった(以降、PET1と略す)。このポリマーを原料ポリエステル1とした。
<ポリエステルフィルムの製造>
-フィルム成形工程-
原料ポリエステル1(PET1)を、含水率20ppm以下に乾燥させた後、直径50mmの1軸混練押出機1のホッパー1に投入した。原料ポリエステル1は、300℃に溶融し、下記押出条件により、ギアポンプ、濾過器(孔径20μm)を介し、ダイから押出した。
溶融樹脂の押出条件は、圧力変動を1%、溶融樹脂の温度分布を2%として、溶融樹脂をダイから押出した。具体的には、背圧を、押出機のバレル内平均圧力に対して1%加圧し、押出機の配管温度を、押出機のバレル内平均温度に対して2%高い温度で加熱した。
ダイから押出した溶融樹脂は、温度25℃に設定された冷却キャストドラム上に押出し、静電印加法を用い冷却キャストドラムに密着させた。冷却キャストドラムに対向配置された剥ぎ取りロールを用いて剥離し、未延伸ポリエステルフィルム1を得た。
-易接着層の形成-
下記化合物を下記の比率で混合し、易接着層用の塗布液H1を作製した。
易接着層用の塗布液H1
ポリエステル樹脂:(IC) 60質量部
アクリル樹脂:(II) 25質量部
メラミン化合物:(VIB) 10質量部
粒子:(VII) 5質量部
以下に使用化合物の詳細を示す。
ポリエステル樹脂:(IC)
下記組成のモノマーで共重合したポリエステル樹脂のスルホン酸系水分散体モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5-ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4-ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)アクリル樹脂:(II)
下記組成のモノマーで重合したアクリル樹脂の水分散体
エチルアクリレート/n-ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N-メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(質量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
ウレタン樹脂:(IIIB)
1,6-ヘキサンジオールとジエチルカーボネートからなる数平均分子量が2000のポリカーボネートポリオールを400質量部、ネオペンチルグリコールを10.4質量部、イソホロンジイソシアネート58.4質量部、ジメチロールブタン酸が74.3質量部からなるプレポリマーをトリエチルアミンで中和し、イソホロンジアミンで鎖延長して得られるウレタン樹脂の水分散体。
メラミン化合物:(VIB)ヘキサメトキシメチルメラミン
粒子:(VII)平均粒径150nmのシリカゾル(平均粒径は、一次平均粒子径、すなわち一次粒子径の平均値を意味する。下記表には、粒子大きさとして記載した)。
-ポリエステルフィルムの両面への易接着層の塗布-
ワイヤーバーを用いるバーコート法にて、未延伸ポリエステルフィルム1の片側に易接着層用の塗布液H1を、延伸後の塗布膜厚が50nmになるように調整しながら、ワイヤーバーを用いて塗布した。
易接着層の表面から粒子が突出する高さを、1mm四方の易接着層中の5点において、株式会社キーエンス社製VHX-5000を用いて求め、その平均値を計算した。その結果を下記表に記載した。
-横延伸工程-
未延伸ポリエステルフィルム1をテンター(横延伸機)に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、下記の方法、条件にて横延伸した。
(予熱部)
延伸開始点での膜面温度が89℃になるよう、熱風で加熱した。
なお延伸開始点での膜面温度は、延伸を開始する点において、フィルム幅方向の中央部の位置を、放射温度計(林電工製、型番:RT61-2、放射率0.95で使用)により測定した。
(延伸部)
予熱された未延伸ポリエステルフィルム1を熱風で加熱しながら、幅方向に下記の条件にてテンターを用いて横延伸した。
なお、各延伸倍率時点での膜面温度は、各延伸倍率時点において、フィルム幅方向の中央部の位置を、放射温度計(林電工製、型番:RT61-2、放射率0.95で使用)により測定した。
<条件>
・横延伸倍率:4.1倍
・2倍延伸時点での膜面温度:90℃
・3倍延伸時点での膜面温度:94℃
・延伸終了時点での膜面温度:95℃
(熱固定部及び熱緩和部)
次いで、フィルムに対して上下方向からの熱風を熱風吹き出しノズルからフィルムに当て、ポリエステルフィルムの膜面温度を下記範囲に制御しながら、熱固定及び熱緩和処理を行った。
<条件>
・最高到達膜面温度(熱固定温度):168℃
・熱緩和率:MD方向4%、TD方向1.5%
(冷却部)
次に、フィルムに対して上下方向からの冷風を冷風吹き出しノズルからフィルムに当てることで冷却した。フィルムをテンターのクリップから開放する際の膜面温度が40℃になるように冷却した。
なお膜面温度は、フィルム幅方向の中央部の位置を、放射温度計(林電工製、型番:RT61-2、放射率0.95で使用)により測定した。
(フィルムの回収)
冷却およびクリップからのフィルムの開放の後、ポリエステルフィルムの両端を20cmずつトリミングした。トリミング後のフィルム幅は2mであった。その後、両端に幅10mmで押出し加工(ナーリング)を行なった後、張力18kg/mで、10000mの長さのフィルムをロール形態に巻き取った。」(以下、「甲1製造物発明」という。)

(2)対比・判断

ア 本件発明19について

本件発明19と甲1製造方法発明とを対比する。
甲1製造方法発明における横延伸工程は、未延伸ポリエステルフィルムをテンター(横延伸機)に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら横延伸するものであるから、本件発明19と同じく「フィルム搬送路の両側に設置された一対のレールに沿ってそれぞれ走行する複数のクリップを備えた横延伸装置」を用いているものといえる。
また、甲1製造方法発明では、予熱された未延伸ポリエステルフィルムを熱風で加熱しながら、幅方向にテンターを用いて横延伸するものであるから、本件発明19の「前記予熱されたポリエステルフィルムの両縁を前記複数のクリップで把持した状態で前記フィルム搬送路に対して直交する方向に延伸する横延伸を行」うものであるといえる。
さらに、甲1製造方法発明の延伸条件は、「横延伸倍率:4.1倍、2倍延伸時点での膜面温度:90℃、3倍延伸時点での膜面温度:94℃、延伸終了時点での膜面温度:95℃」であり、その後、最高到達膜温度(熱固定温度):168℃まで加熱することにより熱固定を行った上で、厚さ58μmの一軸配向ポリエステルフィルムを製造していることから、本件発明19の横延伸時の各温度条件、横延伸倍率、熱固定工程における温度条件、ポリエステルフィルムの厚みのいずれの条件も満たすものである。

してみると、本件発明19と甲1製造方法発明とは、
「フィルム搬送路の両側に設置された一対のレールに沿ってそれぞれ走行する複数のクリップを備えた横延伸装置を用い、
未延伸の又は縦延伸したポリエステルフィルムを予熱する予熱工程と、
前記予熱されたポリエステルフィルムの両縁を前記複数のクリップで把持した状態で前記フィルム搬送路に対して直交する方向に延伸する横延伸を行い、前記横延伸開始から前記横延伸終了まで前記ポリエステルフィルムの表面温度を徐々に上昇させ、前記横延伸開始時の前記表面温度を80℃以上95℃以下、かつ、前記横延伸終了時の前記表面温度を93℃以上105℃以下に制御し、横延伸倍率を3.3倍以上4.8倍以下の範囲に制御する横延伸工程と、
前記横延伸工程後のポリエステルフィルムを前記横延伸装置内での最高温度まで加熱することにより熱固定する熱固定工程と、を含み、
を製造するポリエステルフィルムの製造方法。」
で一致し、次の点で一応相違する。

・相違点6
予熱工程における昇温速度について、本件発明19では、「600℃/min以下」であるのに対し、甲1製造方法発明では特定がない点。

・相違点7
製造するポリエステルフィルムの厚みについて、本件発明19では、「60μm?500μm」であって、「但し、厚みが60μm又は65μmであるポリエステルフィルムを除く」ものであるのに対し、甲1製造方法発明では、ポリエステルフィルムの厚みが58μmである点。

事案に鑑み、先ず、相違点7について検討する。
甲第1号証は、タッチパネルに使用される薄手の一軸配向ポリエステルフィルムに関するものであり(段落[0005]ないし[0007])、そのフィルム厚みとして、「25μm以上55μm以下が好ましく」、「60μmを上回ると厚みが暑すぎてタッチパネル用のフィルム基材としては適さない」(段落[0015])旨記載されている。
当該記載をふまえるならば、仮にタッチパネル用のフィルム基材の厚みとして60μmを超えるものが知られていたとしても、甲1製造方法発明において、そのポリエステルフィルムの厚みを60μmを超えるものとすることには、阻害要因があるものといえる。
よって、甲1製造方法発明において、相違点7に係る本件発明19の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。

したがって、他の相違点については検討するまでもなく、本件発明19は、甲1製造方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明20ないし23について
本件発明20ないし23は、いずれも、直接又は間接的に請求項19を引用する発明であり、本件発明19の特定事項を全て有するものである。
そして、上記アのとおり、本件発明19は、甲1製造方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明19の特定事項を全て含む発明である本件発明20ないし23もまた、甲1製造方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明1について

本件発明1と甲1製造物発明とを対比すると、両者は、
「ポリエステルフィルム。」
で一致するものの、次の点で相違する。

・相違点8
ポリエステルフィルムの厚みについて、本件発明1では、「60μm?500μm」であって、「但し、厚みが60μm又は65μmであるポリエステルフィルムを除く」ものであるのに対し、甲1製造物発明では、ポリエステルフィルムの厚みが58μmである点。

・相違点9
ポリエステルフィルムの表層1μmにおける遅相軸方向のせん断面垂直応力Aとフィルム面内で前記遅相軸方向に直交する方向のせん断面垂直応力Bとの平均値が、本件発明1は「30MPa?100MPa」であるのに対し、甲1製造物発明では特定がない点。

上記相違点8について検討する。
相違点8は、実質、上記アの相違点7と同じである。
そして、上記アの相違点7について検討したとおり、甲1製造物発明において、そのポリエステルフィルムの厚みを60μmを超えるものとすることには、阻害要因があるものといえる。
よって、甲1製造物発明において、相違点8に係る本件発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。

したがって、他の相違点については検討するまでもなく、本件発明1は、甲1製造物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明2ないし18について
本件発明2ないし18は、いずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記ウのとおり、本件発明1は、甲1製造物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の特定事項を全て含む発明である本件発明2ないし18もまた、甲1製造物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2) 申立理由2について

本件発明1には、「表層1μmにおける遅相軸方向のせん断面垂直応力Aとフィルム面内で前記遅相軸方向に直交する方向のせん断面垂直応力Bとの平均値が30MPa?80MPaである」と特定されており、その定義・測定方法についても、明細書の段落【0018】ないし【0031】及び【0317】に記載されているとおりである。
そして、明細書の段落【0018】には、「表層1μm」とは、ポリエステルフィルムの表面から深さ1μmまでの領域であることも定義されていることから見れば、本件発明1の上記特定事項は明確である。
また、実施例の記載等を見ても何ら齟齬するものでもない。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する本件発明2ないし18においても、同様である。
よって、本件特許の特許請求の範囲の記載に特許異議申立人の主張するような不備はない。

第7 結語

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし23に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし23に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが60μm?500μmであり、表層1μmにおける遅相軸方向のせん断面垂直応力Aとフィルム面内で前記遅相軸方向に直交する方向のせん断面垂直応力Bとの平均値が30MPa?80MPaであるポリエステルフィルム(但し、厚みが60μm又は65μmであるポリエステルフィルムを除く)。
【請求項2】
ハードコートフィルムの基材フィルム用である請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
一軸配向ポリエステルフィルムである請求項1又は請求項2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記ポリエステルフィルムの測定波長589nmにおけるフィルム面内のレターデーションReが4000nm?50000nmである請求項1?請求項3のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記ポリエステルフィルムの表層1μmにおける遅相軸方向のせん断面降伏応力とフィルム面内で前記遅相軸方向に直交する方向のせん断面降伏応力との平均値が20MPa?60MPaである請求項1?請求項4のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記せん断面垂直応力Bに対する前記せん断面垂直応力Aの比が1.1?2.0である請求項1?請求項5のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記ポリエステルフィルムの測定波長589nmにおけるフィルム厚み方向のレターデーションRthに対するフィルム面内のレターデーションReの比が0.6?1.2である請求項1?請求項6のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記ポリエステルフィルムのNz値の絶対値が2.0以下である請求項1?請求項7のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
ここで、上記Nz値は下記式で表され、下記式中のnxはポリエステルフィルムの面内遅相軸方向の屈折率であり、nyはポリエステルフィルムの面内進相軸方向の屈折率であり、nzはポリエステルフィルムの厚み方向の屈折率である。
Nz=(nx-nz)/(nx-ny)
【請求項9】
少なくとも片面に易接着層を有する請求項1?請求項8のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項10】
前記易接着層の厚みが30nm?300nmである請求項9に記載のポリエステルフィルム。
【請求項11】
前記易接着層が粒子を含有する請求項9又は請求項10に記載のポリエステルフィルム。
【請求項12】
前記易接着層の表面から突出する前記粒子の高さが前記易接着層の膜厚以上である請求項11に記載のポリエステルフィルム。
【請求項13】
請求項1?請求項12のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムを含む基材フィルムと、
前記基材フィルムの少なくとも片面上に積層されたハードコート層と、
を有するハードコートフィルム。
【請求項14】
前記ハードコート層の厚みが5μm以上である請求項13に記載のハードコートフィルム。
【請求項15】
前記ハードコート層の厚みが40μm以下である請求項13又は請求項14に記載のハードコートフィルム。
【請求項16】
前記ハードコート層が、
少なくとも下記a)由来の構造、下記b)由来の構造、下記c)及び下記d)を含み、
前記ハードコート層が、前記ハードコート層の全固形分を100質量%とした場合に下記a)由来の構造を15質量%?70質量%、下記b)由来の構造を25質量%?80質量%、下記c)を0.1質量%?10質量%、下記d)を0.1質量%?10質量%含む請求項13?請求項15のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
a)分子内に1個の脂環式エポキシ基と1個のエチレン性不飽和二重結合を含む基とを有し、分子量が300以下の化合物
b)分子内に3個以上のエチレン性不飽和二重結合を含む基を有する化合物
c)ラジカル重合開始剤
d)カチオン重合開始剤
【請求項17】
画像表示素子及び請求項13?請求項16のいずれか1項に記載のハードコートフィルムを含み、前記ハードコートフィルムが最表面に配置されている画像表示装置。
【請求項18】
請求項13?請求項16のいずれか1項に記載のハードコートフィルムを含み、前記ハードコートフィルムが最表面に配置されているタッチパネル。
【請求項19】
フィルム搬送路の両側に設置された一対のレールに沿ってそれぞれ走行する複数のクリップを備えた横延伸装置を用い、
未延伸の又は縦延伸したポリエステルフィルムを600℃/min以下の昇温速度で予熱する予熱工程と、
前記予熱されたポリエステルフィルムの両縁を前記複数のクリップで把持した状態で前記フィルム搬送路に対して直交する方向に延伸する横延伸を行い、前記横延伸開始から前記横延伸終了まで前記ポリエステルフィルムの表面温度を徐々に上昇させ、前記横延伸開始時の前記表面温度を80℃以上95℃以下、かつ、前記横延伸終了時の前記表面温度を93℃以上105℃以下に制御し、横延伸倍率を3.3倍以上4.8倍以下の範囲に制御する横延伸工程と、
前記横延伸工程後のポリエステルフィルムを前記横延伸装置内での最高温度まで加熱することにより熱固定する熱固定工程と、を含み、
厚みが60μm?500μmであるポリエステルフィルム(但し、厚みが60μm又は65μmであるポリエステルフィルムを除く)を製造するポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項20】
前記横延伸工程において、前記表面温度を60℃/min以下の昇温速度で徐々に上昇させ、
前記横延伸倍率が1倍以上2倍未満の範囲であるときの前記表面温度を80℃以上92℃以下に、
前記横延伸倍率が2倍以上3倍未満の範囲であるときの前記表面温度を85℃以上97℃以下に、及び、
前記横延伸倍率が3倍以上の範囲であるときの前記表面温度を90℃以上102℃以下に制御する請求項19に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項21】
前記横延伸工程の終了から前記熱固定工程における前記最高温度に到達するまでの前記ポリエステルフィルムの表面温度の昇温速度を1000℃/min以下に制御し、
前記熱固定工程における前記ポリエステルフィルムの最高到達表面温度を130℃以上230℃以下に制御し、前記ポリエステルフィルムの表面温度が130℃を越える時間を180秒以下に制御する請求項19又は請求項20に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項22】
前記熱固定工程後のポリエステルフィルムを加熱し、かつ、前記ポリエステルフィルムの少なくとも横方向の長さを縮める熱緩和工程を更に含む請求項19?請求項21のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項23】
請求項19?請求項22のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの製造方法によりポリエステルフィルムを製造する工程と、
前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面上にハードコート層を積層する工程と、
を有するハードコートフィルムの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-09-10 
出願番号 特願2018-500014(P2018-500014)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B29C)
P 1 651・ 537- YAA (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 関口 貴夫  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 岩田 健一
植前 充司
登録日 2019-10-04 
登録番号 特許第6594518号(P6594518)
権利者 富士フイルム株式会社
発明の名称 ポリエステルフィルム及びその製造方法、ハードコートフィルム及びその製造方法、画像表示装置並びにタッチパネル  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  
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