• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C22C
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C22C
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C22C
管理番号 1379799
異議申立番号 異議2020-700259  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-04-14 
確定日 2021-10-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6596236号発明「耐熱性マグネシウム合金及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6596236号の特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1?13〕について訂正することを認める。 特許第6596236号の請求項1,3?13に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6596236号(以下「本件特許」という。)の請求項1?9に係る特許についての出願は,平成27年5月27日に出願され,令和1年10月4日にその特許権の設定登録がなされ,同年10月23日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後,令和2年4月14日に,請求項1,3?9に係る特許に対し,特許異議申立人である三内さち(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ,以降の本件特許異議の申立ての経緯は,以下のとおりである。

令和 2年 8月 5日付け:取消理由通知書
同年10月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提

同年11月27日 :申立人による意見書の提出
令和 3年 3月 1日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 4月30日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以
下「本件訂正請求書」という。)の提出
同年 6月16日 :申立人による意見書の提出


第2 訂正の適否
1 訂正の趣旨及び内容
本件訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求は,本件特許の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?13について訂正することを求めるものであり,その内容は以下のとおりであって,下線は訂正箇所を表す。
なお,令和2年10月5日提出の訂正請求書による訂正の請求は,本件訂正の請求がされたことに伴い,特許法120条の5第7項の規定により,取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金。」とあるのを,「Al+8Ca≧20.5%であり,Mg母相のMg純度が質量%で98.0%以上である,耐熱性マグネシウム合金。」に訂正する。
本件訂正請求書に記載はないが,請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5?9も同様に訂正するものと認められる。

(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「耐熱性マグネシウム合金。」とあるのを,「Mg母相のMg純度が質量%で98.0%以上である,耐熱性マグネシウム合金。」に訂正する。
本件訂正請求書に記載はないが,請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5?9も同様に訂正するものと認められる。

(3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?5のいずれか一項記載」とあるのを,「請求項2,4,5のいずれか一項記載」に訂正する。
請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7?9も同様に訂正する。

(4)訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?6のいずれか一項記載」とあるのを,「請求項2,4?6のいずれか一項記載」に訂正する。
請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8,9も同様に訂正する。

(5)訂正事項5
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9に「請求項1?7のいずれか一項記載」とあるのを,「請求項2,4?7のいずれか一項記載」に訂正する。

(6)訂正事項6
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9に「溶融された金属材料を冷却して,三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相と,Ca-Mg-Si系化合物相と,Mg母相とを晶出させる工程を備える製造方法。」とあるのを,「溶融された金属材料を冷却して,Mg母相と,三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相と,前記Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相とを晶出させる工程を備える製造方法。」に訂正する。

(7)訂正事項7
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?5のいずれか一項記載の耐熱性マグネシウム合金。」とあるうち,本件訂正前の請求項1を引用するものについて,独立形式に改め,「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
Al+8Ca≧20.5%であり,
Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する,耐熱性マグネシウム合金。」と記載し,新たに請求項10とする。

(8)訂正事項8
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?5のいずれか一項記載の耐熱性マグネシウム合金。」とあるうち,本件訂正前の請求項3を引用するものについて,独立形式に改め,「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する,
Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する,耐熱性マグネシウム合金。」と記載し,新たに請求項11とする。

(9)訂正事項9
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9に「請求項1?7のいずれか一項記載の耐熱性マグネシウム合金の製造方法」とあるうち,本件訂正前の請求項1を引用するものについて,上記訂正事項6と同じ訂正をすると共に独立形式に改め,「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,
溶融された金属材料を冷却して,Mg母相と,三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相と,前記Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相とを晶出させる工程を備える製造方法。」と記載し,新たに請求項12とする。

(10)訂正事項10
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9に「請求項1?7のいずれか一項記載の耐熱性マグネシウム合金の製造方法」とあるうち,本件訂正前の請求項3を引用するものについて,上記訂正事項6と同じ訂正をすると共に独立形式に改め,「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する,耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,
溶融された金属材料を冷却して,Mg母相と,三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相と,前記Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相とを晶出させる工程を備える製造方法。」と記載し,新たに請求項13とする。

(11)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1?9について,請求項5?9は,請求項1?4を引用するものであり,上記訂正事項1?10によって訂正される請求項1,3,6?9に連動して訂正されるものが組み合わされて,訂正前の請求項1?9は一群の請求項である。そして,その一群の請求項の一部について別の訂正単位とする旨の求めもないことから,本件訂正は,その一群の請求項について請求がされたものである。

2 訂正の適否に関する当審の判断
(1)訂正の目的の適否,特許請求の範囲の拡張・変更の存否,新規事項の有無
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的の適否,特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1による訂正は,本件訂正前の請求項1に係る「耐熱性マグネシウム合金」について,「Mg母相のMg純度が質量%で98.0%以上である」ものに限定して特定する訂正であることから,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,または変更するものには該当しない。

(イ)新規事項の有無
本件の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0024】には,「Mg母相のMg純度が98.0%以上であると,80.0W/m・K以上の熱伝導率が得られるので好ましい。」と記載されているから,訂正事項1は,本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。

イ 訂正事項2について
訂正事項2による訂正は,訂正事項1による訂正と同様に,訂正前の請求項3の「耐熱性マグネシウム合金。」を「Mg母相のMg純度が質量%で98.0%以上である,耐熱性マグネシウム合金。」に訂正するものであるから,その判断については,上記アと同様である。

ウ 訂正事項3?5について
訂正事項3?5による訂正は,訂正前の請求項6,7,9において引用していた請求項の一部を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,または変更するものには該当しないし,本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。

エ 訂正事項6について
(ア)訂正の目的の適否,特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6による訂正は,本件訂正前の請求項9に記載の「Ca-Mg-Si系化合物相」について,「Mg母相中に」晶出させるものに限定して特定する訂正であることから,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
また,訂正事項6による訂正は,「Ca-Mg-Si系化合物相」が「Mg母相中に」晶出させるものとする訂正に伴い,同じく晶出させるものである「Mg母相」について,本件訂正前の請求項9において「Ca-Mg-Si系化合物相」より後記されていた順序を入れ替える訂正であることから,明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
そして,訂正事項6による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,または変更するものには該当しない。

(イ)新規事項の有無
本件明細書の【0026】には,「本発明のマグネシウム合金は,Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有していることが好ましい。」と記載されているから,訂正事項6は,本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。

オ 訂正事項7について
訂正事項7は,本件訂正前の請求項6において引用されていた本件訂正前の請求項1について,独立形式に改めて新たに請求項10とするものであるから,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
そして,訂正事項7による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,または変更するものには該当せず,さらに,本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。

カ 訂正事項8について
訂正事項8は,本件訂正前の請求項6において引用されていた本件訂正前の請求項3について,独立形式に改めて新たに請求項11とするものであるから,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
そして,訂正事項8による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,または変更するものには該当せず,さらに,本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。

キ 訂正事項9について
訂正事項9は,本件訂正前の請求項9において引用されていた本件訂正前の請求項1について,独立形式に改めて新たに請求項12とするとともに,本件訂正前の請求項9についての訂正である訂正事項6と同じ訂正をするものであるから,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること,特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
そして,訂正事項9による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,または変更するものには該当せず,さらに,本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。

ク 訂正事項10について
訂正事項10は,本件訂正前の請求項9において引用されていた本件訂正前の請求項3について,独立形式に改めて新たに請求項13とするとともに,本件訂正前の請求項9についての訂正である訂正事項6と同じ訂正をするものであるから,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること,特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
そして,訂正事項10による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,または変更するものには該当せず,さらに,本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。

(2)独立特許要件について
本件訂正において,特許異議の申立てがされていない訂正前の請求項2についての訂正はなく,本件訂正により訂正された訂正前の請求項1,3,6?9に対しては特許異議の申立てがなされているので,特許法120条の5第9項で読み替えて準用する特許法126条7項は適用されない。

3 訂正の適否についての結論
以上のとおり,本件訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号,3号又は4号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1?13〕について訂正することを認める。


第3 本件発明
本件訂正は,上記第2で検討したとおり適法なものであるから,本件特許の特許請求の範囲の請求項1?13に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」?「本件発明13」といい,総称して「本件発明」ともいう。)は,本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
Al+8Ca≧20.5%であり,
Mg母相のMg純度が質量%で98.0%以上である,耐熱性マグネシウム合金。
【請求項2】
質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.0%より大きく3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
Al+8Ca≧20.5%であり,
CaとSiとの組成比Ca/Siが1.5未満である,耐熱性マグネシウム合金。
【請求項3】
質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する,
Mg母相のMg純度が質量%で98.0%以上である,耐熱性マグネシウム合金。
【請求項4】
質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,熱伝導度が70W/m・K以上であり,かつ,200℃における引張強さが170MPa以上である,耐熱性マグネシウム合金。
【請求項5】
Al/Caが1.70以下である,請求項1?4のいずれか一項記載の耐熱性マグネシウム合金。
【請求項6】
Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する,請求項2,4,5のいずれか一項記載の耐熱性マグネシウム合金。
【請求項7】
Mg母相のMg純度が質量%で98.0%以上である,請求項2,4?6のいずれか一項記載の耐熱性マグネシウム合金。
【請求項8】
請求項1?7のいずれか一項記載の耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,
溶融された金属材料を10^(3)K/秒未満の速度で冷却する工程を備える製造方法。
【請求項9】
請求項2,4?7のいずれか一項記載の耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,
溶融された金属材料を冷却して,Mg母相と,三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相と,前記Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相とを晶出させる工程を備える製造方法。
【請求項10】
質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
Al+8Ca≧20.5%であり,
Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する,耐熱性マグネシウム合金。
【請求項11】
質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する,
Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する,耐熱性マグネシウム合金。
【請求項12】
質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり, Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,
溶融された金属材料を冷却して,Mg母相と,三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相と,前記Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相とを晶出させる工程を備える製造方法。
【請求項13】
質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり, 三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する,耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,
溶融された金属材料を冷却して,Mg母相と,三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相と,前記Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相とを晶出させる工程を備える製造方法。」


第4 異議申立理由及び取消理由の概要
1 異議申立理由の概要
申立人は,以下(2)の証拠方法における甲第1号証?甲第9号証により,以下(1)を申立ての理由とする特許異議の申立てをしている。

(1)申立ての理由(新規性進歩性)
ア 本件訂正前の請求項1,4,5及び6に係る発明は,甲第1号証?甲第6号証のいずれかに記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないものであり,同発明に係る特許は取り消されるべきものである。

イ 本件訂正前の請求項3に係る発明は,甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないものであり,同発明に係る特許は取り消されるべきものである。

ウ 本件訂正前の請求項1,3,4及び5に係る発明は,甲第1号証?甲第6号証のいずれかに記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,同発明に係る特許は取り消されるべきものである。

エ 本件訂正前の請求項6に係る発明は,甲第1号証?甲第6号証のいずれかに記載された発明と甲第7号証に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,同発明に係る特許は取り消されるべきものである。

オ 本件訂正前の請求項7に係る発明は,甲第1号証?甲第6号証のいずれかに記載された発明と甲第2号証又は甲第8号証に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,同発明に係る特許は取り消されるべきものである。

カ 本件訂正前の請求項8に係る発明は,甲第1号証?甲第6号証のいずれかに記載された発明と甲第9号証に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,同発明に係る特許は取り消されるべきものである。

キ 本件訂正前の請求項9に係る発明は,甲第1号証?甲第6号証のいずれかに記載された発明と甲第1号証,甲第2号証及び甲第7号証?甲第9号証に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,同発明に係る特許は取り消されるべきものである。

(2)証拠方法
・甲第1号証:Alan A. Luo, Michael P. Balogh, and Bob R.Powell, “Creep and Microstructure of Magnesium-Aluminum-Calcium Based Alloys”, Metallurgical and Materials Transactions A, Volume 33A, March 2002, pp.567?574
・甲第2号証:特開2000-319744号公報
・甲第3号証:特公平3-17890号公報
・甲第4号証:特開平10-8160号公報
・甲第5号証:特許第3415987号公報
・甲第6号証:特開2000-104137号公報
・甲第7号証:特許第4852082号公報
・甲第8号証:特許第5674136号公報
・甲第9号証:再公表特許第2006/003899号
以下,「甲第1号証」?「甲第9号証」を,それぞれ「甲1」?「甲9」という。

さらに,申立人は,令和2年11月27日付け意見書において,以下の参考資料1?6を提出した。

・参考資料1:特開2010-116620号公報
・参考資料2:Young-Gil Jung, et al, “EFFECTS OF ALLOYING ELEMENTS AND COOLING RATE ON MORPHOLOGY OF PHASES IN Cao ADDED Mg-Al-Si ALLOYS” Magnesium Technology 2013, p.335-339
・参考資料3:特開2013-19030号公報
・参考資料4:特許第3737440号公報
・参考資料5:特許第6569531号公報(当審注:当該公報の発行日は,本件特許の出願後であるが,当該公報に係る出願の国際公開第2015/060459号は,本件特許の出願前に公開されたものである。)
・参考資料6:米国特許第8123877号明細書
以下,「参考文献1」?「参考文献6」を,それぞれ「参1」?「参6」という。

2 当審から通知した取消理由
(1)当審は,上記1の異議申立理由を検討した結果,上記1(1)ア及びウの一部並びに同イの新規性及び進歩性欠如を採用するとともに,当審が発見したサポート要件違反の記載不備について,取消理由を通知した。

(2)その後,当審は,特許権者が提出した令和2年10月5日付け意見書及び訂正請求書並びに申立人が提出した同年11月27日付け意見書及び当該意見書とともに提出された参考資料1?6を踏まえて検討した結果,サポート要件違反についての取消理由は解消したと判断した。
しかしながら,申立人が提出した参考資料1及び4?6は,実質的に新たな証拠を提示するものであるが,適切な取消理由を構成することが一見して明らかであることから,これを採用し,依然として新規性進歩性の取消理由があると判断して,令和3年3月1日付けで取消理由(決定の予告)を通知した。


第5 当審の判断
当審は,特許権者が提出した令和3年4月30日付け意見書及び訂正請求書並びに申立人が提出した同年6月16日付け意見書を踏まえて検討した結果,以下のとおり,取消理由(決定の予告)は解消するとともに,特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由及びその他の理由によっても,本件請求項1,3?13に係る特許を取り消すべき理由はないと判断した。

1 甲1?9及び参1?6の記載事項と引用発明
(1)甲1の記載事項と引用発明
ア 記載事項
上記甲1には,以下の記載がある。なお,下線は当審が付与したものであり,「・・・」は記載の省略を表すものであって,以下同様である。

a「



(567頁左欄1?17行)
(当審訳:最も有望な軽量材料の1つであるマグネシウムは,過去10年間で自動車の内装やその他の室温または室温近くでの使用に大きな浸透を遂げた。北米で最も目に見えるマグネシウムの用途は,計器盤の梁,トランスファーケース,バルブ/カムカバー,ステアリングコンポーネント,様々なハウジング及びブラケットである。耐クリープ性が低く,コストが高い市販のマグネシウム合金は,動作温度がそれぞれ250℃及び175℃に達することがあり,エンジンブロックやオートマチックトランスミッションケースなどの主要なパワートレインコンポーネントでの使用が妨げられている。そのような用途のための耐クリープ合金を開発する最近の努力は,多くの実験的合金をもたらした。これらの合金のほとんどは,Luoによって最近レビューされたMg?Al?Ca系に基づいている。)

b「


(568頁左欄下から24?14行)
(当審訳:III.実験手順
A.合金の準備及びダイカスト
・・・ACX合金(当審注:ストロンチウム及び/又はケイ素を少量含有するMg-Al-Ca合金のこと(567頁左欄18?21行)。)のダイカストは,700トンのレスター・コールドチャンバー装置で行われた。)

c「


(569頁)
(当審訳:表1.Lexingtonにおける試験合金鋳塊の化学組成
化学組成(重量%)・・・
合金 名称・・・
C AC53・・・
D AC53+0.3Si・・・)

d「


(572頁右欄)
(当審訳:図8-TEMの光輝像は,AC53合金における結晶粒界での(Mg,Al)_(2)Ca相の形成を示す。)

e「


(572頁右欄下から7?3行)
(当審訳:AC53合金における(Mg,Al)_(2)Ca相の形成は,TEMの結果によって確認される。図8は,AC53合金の微細構造の粒界共晶相が,マグネシウムとMg-Al-Ca金属間化合物の交互層からなるラメラ構造を持っていることを示している。)

上記記載から,甲1には,以下の事項が記載されているものと認められる。

f 上記aの記載において,動作温度がそれぞれ250℃及び175℃に達するような用途のためのマグネシウム合金であることから,甲1に記載のマグネシウム合金は,耐熱性を有するものである。

g 上記bの記載から,甲1は,甲1に記載のマグネシウム合金の製造方法が記載されたものである。

h 上記cの表1においてAC53である合金Cは,重量%で,Alを4.5%,Caを3.0%,Mnを0.27%,Feを0.003%,Niを0.002%未満,Cuを0.003%含有するマグネシウム合金であって,当該含有する量から,「Al+8Ca」が4.5+8×3.0=28.5,「Al/Ca」が4.5/3.0=1.5である。

i 上記cの表1においてAC53+0.3Siである合金Dは,重量%で,Alを4.5%,Caを2.9%,Siを0.26%,Mnを0.28%,Feを0.003%,Niを0.002%未満,Cuを0.003%含有するマグネシウム合金であって,当該含有する量から,「Al+8Ca」が4.5+8×2.9=27.7,「Al/Ca」が4.5/2.9=約1.55である。

j 上記d及びeの記載から,AC53合金は,結晶粒界で(Mg,Al)_(2)Ca相が形成されたものである。

イ 引用発明
上記アf?jの甲1に記載されていると認められる事項から,合金C及びDに着目すると,甲1には,以下の4つの発明(以下,それぞれ「甲1A発明」,「甲1B発明」,「甲1C発明」及び「甲1D発明」という。)が記載されているものと認められる。

<甲1A発明>
重量%で,Caを3.0%,Alを4.5%,Mnを0.27%,Feを0.003%,Niを0.002%未満,Cuを0.003%含有するマグネシウム合金であって,
Al+8Ca=28.5であり,
Al/Caが1.5であり,
結晶粒界で(Mg,Al)_(2)Ca相が形成されたものである,耐熱性マグネシウム合金。

<甲1B発明>
重量%で,Caを2.9%,Alを4.5%,Siを0.26%,Mnを0.28%,Feを0.003%,Niを0.002%未満,Cuを0.003%含有するマグネシウム合金であって,
Al+8Ca=27.7であり,
Al/Caが約1.55であり,
結晶粒界で(Mg,Al)_(2)Ca相が形成されたものである,耐熱性マグネシウム合金。

<甲1C発明>
重量%で,Caを3.0%,Alを4.5%,Mnを0.27%,Feを0.003%,Niを0.002%未満,Cuを0.003%含有するマグネシウム合金の製造方法であって,
Al+8Ca=28.5であり,
Al/Caが1.5であり,
結晶粒界で(Mg,Al)_(2)Ca相が形成されたものである,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

<甲1D発明>
重量%で,Caを2.9%,Alを4.5%,Siを0.26%,Mnを0.28%,Feを0.003%,Niを0.002%未満,Cuを0.003%含有するマグネシウム合金の製造方法であって,
Al+8Ca=27.7であり,
Al/Caが約1.55であり,
結晶粒界で(Mg,Al)_(2)Ca相が形成されたものである,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

(2)甲2の記載事項と引用発明
ア 記載事項
上記甲2には,以下の記載がある。

a「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,耐クリープマグネシウム合金のダイカストに関する。特に本発明は,液体として金属ダイまたは鋳型内で成功裏に鋳造できるマグネシウム合金であって,比較的に高温の用途のための耐クリープ性を有する鋳物を提供できるマグネシウム合金に関する。」

b「【0010】・・・本合金は,ダイカストか,または溶融マグネシウム合金をその液相線温度をかなり超える温度で金属鋳型(ダイ)中に導入し,冷却し,溶融体が凝固する時にスクイージングかまたは圧力をかける同様の鋳造方法における使用に特に適している。」

c「【0011】・・・冶金学的ミクロ構造は,マグネシウムに富むマトリックス相及び(Mg,Al)_(2)Caの混入(entrained)相または結晶粒界相の存在を特徴とする。」

d「【0019】・・・
合金をコールドチャンバダイカストで鋳造した。鋳造した組成物を表1に示す。・・・表には報告していないが,各合金はまた,約0.3重量%までのマンガン,並びに非常に少量の鉄,ニッケル及び銅を含んだ。」

e「【0020】
【表1】




f「【0024】
【表2】



g「【0037】新しい金属間相である(Mg,Al)_(2)Caは,比較的に高い融点(715℃)を有し,良好な熱安定性を示す。これは,マグネシウムマトリックスと同じ結晶構造(六方晶)とMg/(Mg,Al)_(2)Ca界面における小さな格子不整合(3%?7%)とを有し,整合な界面を生じる。(Mg,Al)_(2)Caの熱安定性と界面整合性との両方は,マグネシウム結晶粒界におけるピンニング効果(pinning effect)を与え,それによって合金の耐クリープ性を改良する。」

上記記載から,甲2には,以下の事項が記載されているものと認められる。

h 上記aの記載から,甲2に記載のマグネシウム合金は,耐熱性を有するものである。

i 上記cの記載から,甲2に記載のマグネシウム合金は,(Mg,Al)_(2)Caの結晶粒界相を有するものである。

j 上記dの記載から,甲2は,甲2に記載のマグネシウム合金の製造方法が記載されたものである。

k 上記eの表1における合金Cは,重量%で,Alを4.5%,Caを3.0%含有するマグネシウム合金であって,当該含有する量から,「Al+8Ca」が4.5+8×3.0=28.5,「Al/Ca」が4.5/3.0=1.5であり,さらに,上記dの記載から,約0.3重量%までのマンガン,並びに非常に少量の鉄,ニッケル及び銅を含むものである。

l 上記eの表1における合金Dは,重量%で,Alを4.5%,Caを2.9%,Siを0.26%含有するマグネシウム合金であって,当該含有する量から,「Al+8Ca」が4.5+8×2.9=27.7,「Al/Ca」が4.5/2.9=約1.55であり,さらに,上記dの記載から,約0.3重量%までのマンガン,並びに非常に少量の鉄,ニッケル及び銅を含むものである。

m 上記fの表2における合金^(*)AC53は,重量%で,Alを4.4%,Caを2.6%,Srを0.0008%,Mnを0.30%,Feを0.002%,Niを0.002%未満,Cuを0.003%未満含有するマグネシウム合金であって,当該含有する量から,「Al+8Ca」が4.4+8×2.6=25.2,「Al/Ca」が4.4/2.6=約1.69である。

イ 引用発明
上記アh?mの甲2に記載されていると認められる事項から,合金C,D及び^(*)AC53に着目すると,甲2には,以下の6つの発明(以下,それぞれ「甲2A発明」,「甲2B発明」,「甲2C発明」,「甲2D発明」,「甲2E発明」及び「甲2F発明」という。)が記載されているものと認められる。

<甲2A発明>
重量%で,Caを3.0%,Alを4.5%,Mnを約0.3%以下,非常に少量のFe,Ni,Cuを含有するマグネシウム合金であって,
Al+8Ca=28.5であり,
Al/Caが1.5であり,
(Mg,Al)_(2)Caの結晶粒界相を有する,耐熱性マグネシウム合金。

<甲2B発明>
重量%で,Caを2.9%,Alを4.5%,Siを0.26%,Mnを約0.3%以下,非常に少量のFe,Ni,Cuを含有するマグネシウム合金であって,
Al+8Ca=27.7であり,
Al/Caが約1.55であり,
(Mg,Al)_(2)Caの結晶粒界相を有する,耐熱性マグネシウム合金。

<甲2C発明>
重量%で,Caを2.6%,Alを4.4%,Mnを0.30%,Srを0.0008%,Feを0.002%,Niを0.002%未満,Cuを0.003%未満含有するマグネシウム合金であって,
Al+8Ca=25.2であり,
Al/Caが約1.69であり,
(Mg,Al)_(2)Caの結晶粒界相を有する,耐熱性マグネシウム合金。

<甲2D発明>
重量%で,Caを3.0%,Alを4.5%,Mnを約0.3%以下,非常に少量のFe,Ni,Cuを含有するマグネシウム合金の製造方法であって,
Al+8Ca=28.5であり,
Al/Caが1.5であり,
(Mg,Al)_(2)Caの結晶粒界相を有する,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

<甲2E発明>
重量%で,Caを2.9%,Alを4.5%,Siを0.26%,Mnを約0.3%以下,非常に少量のFe,Ni,Cuを含有するマグネシウム合金の製造方法であって,
Al+8Ca=27.7であり,
Al/Caが約1.55であり,
(Mg,Al)_(2)Caの結晶粒界相を有する,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

<甲2F発明>
重量%で,Caを2.6%,Alを4.4%,Mnを0.30%,Srを0.0008%,Feを0.002%,Niを0.002%未満,Cuを0.003%未満含有するマグネシウム合金の製造方法であって,
Al+8Ca=25.2であり,
Al/Caが約1.69であり,
(Mg,Al)_(2)Caの結晶粒界相を有する,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

(3)甲3の記載事項と引用発明
ア 記載事項
上記甲3には,以下の記載がある。

a 「本発明は,成分としてカルシウムと珪素を含有するダイカスト用マグネシウム基合金に関する。使用に際して加熱を受けやすい部品の製造に本発明は有利である。」(1頁左欄16?19行)

b 「本発明の合金の製造においては,従来,マグネシウム合金を溶製,ダイカストする場合に使用している一般的技術が使用できるが,カルシウムを含有するため溶湯が比較的酸化および窒化し易いので,保持中の溶湯はその表面の雰囲気ガスをAr等の不活性ガスにすることが望ましい。」(2頁左欄35?40行)

c「


(第2頁右欄20?27行)

d「

」(3頁)

上記記載から,甲3には,以下の事項が記載されているものと認められる。

e 上記aの記載から,甲3に記載のマグネシウム合金は,耐熱性を有するものである。

f 上記bの記載から,甲3は,甲3に記載のマグネシウム合金の製造方法が記載されたものである。

g 上記c及びdの第1表における実施例2は,重量%で,Caを2.07%,Alを4.0%,Siを0.9%,Mnを0.26%含有し,残部がMgからなる合金であって,当該含有する量から,「Al+8Ca」が4.0+8×2.07=20.56である。

h 上記c及びdの第1表における実施例3は,重量%で,Caを2.83%,Alを3.9%,Siを0.8%,Mnを0.27%含有し,残部がMgからなる合金であって,当該含有する量から,「Al+8Ca」が3.9+8×2.83=26.54,「Al/Ca」が3.9/2.83=約1.38である。

イ 引用発明
上記アe?hの甲3に記載されていると認められる事項から,実施例2及び3に着目すると,甲3には,以下の4つの発明(以下,それぞれ「甲3A発明」,「甲3B発明」,「甲3C発明」及び「甲3D発明」という。)が記載されているものと認められる。

<甲3A発明>
重量%で,Caを2.07%,Alを4.0%,Siを0.9%,Mnを0.26%含有し,残部がMgからなる合金であって,
Al+8Ca=20.56である,耐熱性マグネシウム合金。

<甲3B発明>
重量%で,Caを2.83%,Alを3.9%,Siを0.8%,Mnを0.27%含有し,残部がMgからなる合金であって,
Al+8Ca=26.54であり,
Al/Caが約1.38である,耐熱性マグネシウム合金。

<甲3C発明>
重量%で,Caを2.07%,Alを4.0%,Siを0.9%,Mnを0.26%含有し,残部がMgからなる合金の製造方法であって,
Al+8Ca=20.56である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

<甲3D発明>
重量%で,Caを2.83%,Alを3.9%,Siを0.8%,Mnを0.27%含有し,残部がMgからなる合金の製造方法であって,
Al+8Ca=26.54であり,
Al/Caが約1.38である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

(4)甲4の記載事項と引用発明
ア 記載事項
上記甲4には,以下の記載がある。

a「【発明の属する技術分野】本発明は,マグネシウム合金の製造方法に関し,より詳しくは,例えば自動車・二輪車用及び汎用エンジン部品等の耐熱用途向けのカルシウム含有マグネシウム合金の製造方法に関する。」

b「【0018】55kW低周波誘導加熱装置で鉄鍋に50kgの純マグネシウム溶湯を720℃で保持した。これにマグネシウム(Mg)-3重量%アルミニウム(Al)-3重量%カルシウム(Ca)-0.2重量%マンガン(Mn)合金の製造を以下の条件で実施し,得られた合金を分析した。なお,実施例2及び比較例2では,1重量%ケイ素(Si)を加えて合金を製造した。但し,想定歩留りは100%とした。
【0019】
・・・
実施例2
金属カルシウムをアルミニウム箔で包み,次いでこれをマグネシウム溶湯中に浸漬し,その後アルミニウム,ケイ素及びマンガン母材用合金を添加した。
・・・
比較例2
アルミニウム及びケイ素をマンガン母材用合金に添加し,その後金属カルシウムをアルミニウム箔で包みマグネシウム溶湯中に浸漬した。上記得られた合金の各々の組成を分析した結果を,下記「表1」に示す。」

c「【0020】
【表1】



上記記載から,甲4には,以下の事項が記載されているものと認められる。

d 上記aの記載から,甲4に記載のマグネシウム合金は,耐熱性を有するものであって,甲4は,その製造方法が記載されたものである。

e 上記b及びcの表1における実施例2は,重量%で,Alを2.9±0.1%,Caを2.9±0.1%,Mnを0.2%,Siを0.9±0.1%含有するマグネシウム合金であって,当該含有する量から,「Al+8Ca」が(2.9±0.1)+8×(2.9±0.1)=25.2?27.0,「Al/Ca」が(2.9±0.1)/(2.9±0.1)=約0.93?約1.07である。

f 上記b及びcの表1における比較例2は,重量%で,Alを2.6±0.2%,Caを2.5±0.2%,Mnを0.2%,Siを0.8±0.1%含有するマグネシウム合金であって,「Al+8Ca」が(2.6±0.2)+8×(2.5±0.2)=20.8?24.4,「Al/Ca」が(2.6±0.2)/(2.5±0.2)=約0.89?約1.22である。

イ 引用発明
上記アd?fの甲4に記載されていると認められる事項から,実施例2及び比較例2に着目すると,甲4には,以下の4つの発明(以下,それぞれ「甲4A発明」,「甲4B発明」,「甲4C発明」及び「甲4D発明」という。)が記載されているものと認められる。

<甲4A発明>
重量%で,Caを2.9±0.1%,Alを2.9±0.1%,Siを0.9±0.1%,Mnを0.2%含有するマグネシウム合金であって,
Al+8Ca=25.2?27.0であり,
Al/Caが約0.93?約1.07である,耐熱性マグネシウム合金。

<甲4B発明>
重量%で,Caを2.5±0.2%,Alを2.6±0.2%,Siを0.8±0.1%,Mnを0.2%含有するマグネシウム合金であって,
Al+8Ca=20.8?24.4であり,
Al/Caが約0.89?約1.22である,耐熱性マグネシウム合金。

<甲4C発明>
重量%で,Caを2.9±0.1%,Alを2.9±0.1%,Siを0.9±0.1%,Mnを0.2%含有するマグネシウム合金の製造方法であって,
Al+8Ca=25.2?27.0であり,
Al/Caが約0.93?約1.07である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

<甲4D発明>
重量%で,Caを2.5±0.2%,Alを2.6±0.2%,Siを0.8±0.1%,Mnを0.2%含有するマグネシウム合金の製造方法であって,
Al+8Ca=20.8?24.4であり,
Al/Caが約0.89?約1.22である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

(5)甲5の記載事項と引用発明
ア 記載事項
上記甲5には,以下の記載がある。

a「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐クリープ性を確保しつつ,特に成形性,伸び性に優れる耐熱マグネシウム合金成形部材,その成形に用いる耐熱マグネシウム合金およびその成形方法に関するものである。」

b「【0021】
【表1】



上記記載から,甲5には,以下の事項が記載されているものと認められる。

c 上記aの記載から,甲5に記載のマグネシウム合金は,耐熱性を有するものであって,甲5は,その製造方法が記載されたものである。

d 上記bの表1における実施例3は,重量%で,Alを4.02%,Caを3.06%,Siを0.25%,Mnを0.28%含有し,残部がMgである合金であって,当該含有する量から,「Al+8Ca」が4.02+8×3.06=28.5,「Al/Ca」が4.02/3.06=約1.31である。

e 上記bの表1における比較例4は,重量%で,Alを4.02%,Caを3.96%,Siを0.32%,Mnを0.32%含有し,残部がMgである合金であって,当該含有する量から,「Al+8Ca」が4.02+8×3.96=35.7,「Al/Ca」が4.02/3.96=約1.02である。

f 上記bの表1における比較例5は,重量%で,Alを2.75%,Caを2.71%,Siを0.27%,Mnを0.36%含有し,残部がMgである合金であって,当該含有する量から,「Al+8Ca」が2.75+8×2.71=24.43,「Al/Ca」が2.75/2.71=約1.01である。

イ 引用発明
上記アc?fの甲5に記載されていると認められる事項から,実施例3,比較例4及び5に着目すると,甲5には,以下の6つの発明(以下,それぞれ「甲5A発明」,「甲5B発明」,「甲5C発明」,「甲5D発明」,「甲5E発明」及び「甲5F発明」という。)が記載されているものと認められる。

<甲5A発明>
重量%で,Caを3.06%,Alを4.02%,Siを0.25%,Mnを0.28%含有するマグネシウム合金であって,
Al+8Ca=28.5であり,
Al/Caが約1.31である,耐熱性マグネシウム合金。

<甲5B発明>
重量%で,Caを3.96%,Alを4.02%,Siを0.32%,Mnを0.32%含有するマグネシウム合金であって,
Al+8Ca=35.7であり,
Al/Caが約1.02である,耐熱性マグネシウム合金。

<甲5C発明>
重量%で,Caを2.71%,Alを2.75%,Siを0.27%,Mnを0.36%含有するマグネシウム合金であって,
Al+8Ca=24.43であり,
Al/Caが約1.01である,耐熱性マグネシウム合金。

<甲5D発明>
重量%で,Caを3.06%,Alを4.02%,Siを0.25%,Mnを0.28%含有するマグネシウム合金の製造方法であって,
Al+8Ca=28.5であり,
Al/Caが約1.31である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

<甲5E発明>
重量%で,Caを3.96%,Alを4.02%,Siを0.32%,Mnを0.32%含有するマグネシウム合金の製造方法であって,
Al+8Ca=35.7であり,
Al/Caが約1.02である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

<甲5F発明>
重量%で,Caを2.71%,Alを2.75%,Siを0.27%,Mnを0.36%含有するマグネシウム合金の製造方法であって,
Al+8Ca=24.43であり,
Al/Caが約1.01である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

(6)甲6の記載事項と引用発明
ア 記載事項
上記甲6には,以下の記載がある。

a「【0009】この発明は,上記諸問題に鑑みてなされたもので,常温および高温での機械的特性に優れ,また,鍛造性に優れ,かつ比較的低廉な,マグネシウム合金鍛造素材及び鍛造部材並びに該鍛造部材の製造方法を提供することを目的とする。」

b「【0039】表1は,本実施の形態に係るマグネシウム合金鍛造素材の特性を調べるための各種試験に用いた試料(本発明実施例1?6及び比較例1?4)の化学成分およびCa/Al比(アルミニウム含有量に対するカルシウム含有量の比率)を示している。つまり,表1に示した各試料(鍛造素材)を用いてそれぞれ鍛造部材のサンプルを製作し,以下に述べるような各種試験に供した。尚,表1において,各数値は重量%を示しており,また,Al(アルミニウム),Ca(カルシウム),Mn(マンガン),Si(珪素)及びその他(不純物)以外の残部は,Mg(マグネシウム)である。」

c「【0040】
【表1】



上記記載から,甲6には,以下の事項が記載されているものと認められる。

d 上記aの記載から,甲6に記載のマグネシウム合金は,耐熱性を有するものであって,甲6は,その製造方法が記載されたものである。

e 上記cの表1における実施例1は,重量%で,Alを2.9%,Caを2.8%,Mnを0.34%,Siを0.24%,その他(不純物)を0.01%以下含有し,残部がMgであるマグネシウム合金であって,「Al+8Ca」が2.9+8×2.8=25.3,「Al/Ca」が2.9/2.8=約1.04である。

f 上記cの表1における実施例3は,重量%で,Alを4.0%,Caを2.2%,Mnを0.30%,Siを0.14%,その他(不純物)を0.01%以下含有し,残部がMgであるマグネシウム合金であって,「Al+8Ca」が4.0+8×2.2=21.6である。

g 上記cの表1における実施例4は,重量%で,Alを4.1%,Caを3.2%,Mnを0.35%,Siを0.13%,その他(不純物)を0.01%以下含有し,残部がMgであるマグネシウム合金であって,「Al+8Ca」が4.1+8×3.2=29.7,「Al/Ca」が4.1/3.2=1.25である。

h 上記cの表1における実施例5は,重量%で,Alを4.1%,Caを4.0%,Mnを0.31%,Siを0.15%,その他(不純物)を0.01%以下含有し,残部がMgであるマグネシウム合金であって,「Al+8Ca」が4.1+8×4.0=36.1,「Al/Ca」が4.1/4.0=約1.03である。

i 上記cの表1における実施例7は,重量%で,Alを2.1%,Caを3.2%,Mnを0.32%,Siを0.10%,その他(不純物)を0.01%以下含有し,残部がMgであるマグネシウム合金であって,「Al+8Ca」が2.1+8×3.2=27.7,「Al/Ca」が2.1/3.2=約0.66である。

j 上記cの表1における比較例2は,重量%で,Alを4.0%,Caを5.1%,Mnを0.30%,Siを0.21%,その他(不純物)を0.01%以下含有し,残部がMgであるマグネシウム合金であって,「Al+8Ca」が4.0+8×5.1=44.8,「Al/Ca」が4.0/5.1=約0.78である。

イ 引用発明
上記アd?jの甲6に記載されていると認められる事項から,実施例1,3,4,5,7及び比較例2に着目すると,甲6には,以下の12の発明(以下,それぞれ「甲6A発明」,「甲6B発明」,「甲6C発明」,「甲6D発明」,「甲6E発明」,「甲6F発明」,「甲6G発明」,「甲6H発明」,「甲6I発明」,「甲6J発明」,「甲6K発明」及び「甲6L発明」という。)が記載されているものと認められる。

<甲6A発明>
重量%で,Caを2.8%,Alを2.9%,Siを0.24%,Mnを0.34%,その他(不純物)を0.01%以下含有し,残部がMgである耐熱性マグネシウム合金であって,
Al+8Ca=25.3であり,
Al/Caが約1.04である,耐熱性マグネシウム合金。

<甲6B発明>
重量%で,Caを2.2%,Alを4.0%,Siを0.14%,Mnを0.30%,その他(不純物)を0.01%以下含有し,残部がMgである耐熱性マグネシウム合金であって,
Al+8Ca=21.6である,耐熱性マグネシウム合金。

<甲6C発明>
重量%で,Caを3.2%,Alを4.1%,Siを0.13%,Mnを0.35%,その他(不純物)を0.01%以下含有し,残部がMgである耐熱性マグネシウム合金であって,
Al+8Ca=29.7であり,
Al/Caが1.25である,耐熱性マグネシウム合金。

<甲6D発明>
重量%で,Caを4.0%,Alを4.1%,Siを0.15%,Mnを0.31%,その他(不純物)を0.01%以下含有し,残部がMgである耐熱性マグネシウム合金であって,
Al+8Ca=36.1であり,
Al/Caが約1.03である,耐熱性マグネシウム合金。

<甲6E発明>
重量%で,Caを3.2%,Alを2.1%,Siを0.10%,Mnを0.32%,その他(不純物)を0.01%以下含有し,残部がMgである耐熱性マグネシウム合金であって,
Al+8Ca=27.7であり,
Al/Caが約0.66である,耐熱性マグネシウム合金。

<甲6F発明>
重量%で,Caを5.1%,Alを4.0%,Siを0.21,Mnを0.30%,その他(不純物)を0.01%以下含有し,残部がMgである耐熱性マグネシウム合金であって,
Al+8Ca=44.8であり,
Al/Caが約0.78である,耐熱性マグネシウム合金。

<甲6G発明>
重量%で,Caを2.8%,Alを2.9%,Siを0.24%,Mnを0.34%,その他(不純物)を0.01%以下含有し,残部がMgである耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,
Al+8Ca=25.3であり,
Al/Caが約1.04である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

<甲6H発明>
重量%で,Caを2.2%,Alを4.0%,Siを0.14%,Mnを0.30%,その他(不純物)を0.01%以下含有し,残部がMgである耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,
Al+8Ca=21.6である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

<甲6I発明>
重量%で,Caを3.2%,Alを4.1%,Siを0.13%,Mnを0.35%,その他(不純物)を0.01%以下含有し,残部がMgである耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,
Al+8Ca=29.7であり,
Al/Caが約1.25である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

<甲6J発明>
重量%で,Caを4.0%,Alを4.1%,Siを0.15%,Mnを0.31%,その他(不純物)を0.01%以下含有し,残部がMgである耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,
Al+8Ca=36.1であり,
Al/Caが約1.03である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

<甲6K発明>
重量%で,Caを3.2%,Alを2.1%,Siを0.10%,Mnを0.32%,その他(不純物)を0.01%以下含有し,残部がMgである耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,
Al+8Ca=27.7であり,
Al/Caが約0.66である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

<甲6L発明>
重量%で,Caを5.1%,Alを4.0%,Siを0.21,Mnを0.30%,その他(不純物)を0.01%以下含有し,残部がMgである耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,
Al+8Ca=44.8であり,
Al/Caが約0.78である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

(7)甲7の記載事項
上記甲7には,以下の記載がある。

「【0043】
【表1】



「【0051】
Mg-Al-Ca合金である#C03では,Mg結晶粒と,結晶粒界に晶出したAl-Ca-Mg系化合物と,が観察されたのみであった(図5)。一方,Mg-Al-Ca合金にSiのみを添加した#C04では,粗大なCa-Si-Mg系化合物が観察された(図6)。また,Mg-Al-Ca合金にSnのみを添加した#C05では,粗大なCa-Sn-Mg系化合物が観察された(図7)。粗大な化合物の生成は,鋳造性の低下だけでなく,耐熱性の低下を引き起こした。
【0052】
すなわち,Mg-Al-Ca-Mn合金にSiとSnとを同時に所定の量添加したマグネシウム合金は,優れた耐熱性および鋳造性をもつマグネシウム合金であることがわかった。」

「【図6】



(8)甲8の記載事項
上記甲8には,以下の記載がある。

「【0007】
本発明者らは,マグネシウム合金の鋳造性を維持するために少量のアルミニウム及び/又は亜鉛を含有させるが,アルミニウム及び/又は亜鉛を含有するマグネシウム固溶体を純マグネシウムの状態にできるだけ近づけて熱伝導率の低下を防止し,析出物による析出強化で合金強度を維持することについて鋭意検討した。」

(9)甲9の記載事項
上記甲9には,以下の記載がある。

「【技術分野】
【0001】
本発明は,機械的特性,表面品質に優れるマグネシウム合金鋳造材,マグネシウム合金圧延材などのマグネシウム合金材を安定して製造することができるマグネシウム合金材の製造方法,及びこの製造方法により得られたマグネシウム合金鋳造材,マグネシウム合金圧延材といったマグネシウム合金材に関するものである。また,上記特性に優れる圧延材を用いて得られるマグネシウム合金成形品,及びその製造方法に関するものである。」

「【0028】
溶湯が可動鋳型に接触して凝固する際の冷却速度は,50K/秒以上10000K/秒以下とすることが好ましい。鋳造時の冷却速度が遅いと,粗大な晶析出物が生成されて,圧延などの二次加工性を阻害する恐れがある。従って,晶析出物の成長を抑制するべく,上記のような冷却速度で急冷することが好ましい。冷却速度は,鋳造材の目標板厚や,溶湯や可動鋳型の温度,可動鋳型の駆動速度などを調整することや,鋳型の材質,特に溶湯が接する鋳型表面の材質として,冷却性能に優れたものを利用することで調整することができる。」

(10)参1の記載事項と引用発明
ア 記載事項
上記参1には,以下の記載がある。

a 「【0002】
近年の軽量化ニーズの高まりにより,アルミニウム合金よりさらに軽量なマグネシウム合金(Mg合金)が注目を集めている。マグネシウム合金は,実用金属中で最も軽量であり,航空機用材料の他,自動車用材料等としても使用されつつある。Mg合金製からなる部材(Mg合金部材)は軽量で機能性に優れる。また,Mg合金部材を用いることで,車両等が軽量化し省エネルギー化を図れる。
もっとも,車両等にMg合金部材を利用する場合,その熱伝導性,耐熱強度,クリープ性など,高温環境下での使用に適した高温特性が要求されることが多い。一般的なMg合金部材にはAZ91D等が用いられることが多いが,そのようなMg合金部材はクリープ強度が非常に低く高温環境での使用には適さない。そこで,その高温特性を改善した種々のMg合金が,下記の特許文献などで提案されている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は,上記の引用文献等で提案されている従来のMg合金とは異なり,各種の高温特性に優れた新たなマグネシウム合金(Mg合金)およびそのMg合金からなるマグネシウム合金鋳物(Mg合金鋳物)を提供することを目的とする。」

b 「【0005】《マグネシウム合金》(1)本発明のマグネシウム合金は,全体を100質量%(以下,単に「%」という。)としたときに,2?6%のアルミニウム(Al)と,該Alに対するカルシウム(Ca)の組成比(Ca/Al)が0.5?1.5%となるCaと,0.1?0.7%のマンガン(Mn)と,1?6%のストロンチウム(Sr)と,残部がマグネシウム(Mg)と不可避不純物および/または改質元素とからなり,高温特性に優れることを特徴とする。」

c 「【0023】《試験片の製造》(1)試験片の鋳造(鋳放し材の製作)
電気炉中で予熱した鉄製るつぼの内面に塩化物系のフラックスを塗布し,その中に秤量した原料を投入して溶解し,溶湯を調製した(溶湯調製工程)。原料としては,純Mg塊,純Al塊,純Ca塊,Al-Sr合金塊,Mg-Mn合金塊,Al-Mn合金塊,純Sr塊などを用いた。
この溶湯を十分に攪拌し,配合した原料を完全に溶解させた後,同温度でしばらく沈静保持した。この溶解作業中,Mgの燃焼を防止するため,溶湯表面に炭酸ガスとSF_(6)ガスとの混合ガスを吹き付け,適宜,フラックスを溶湯表面に散布した。
こうして得た各種の合金溶湯を750℃に保持した後,金型に流し込み(注湯工程),大気雰囲気中で凝固させた(凝固工程)。こうして,長さ200mm×高さ40mm×下底幅20mm×上底幅 30mm の舟型インゴット(鋳放し材:マグネシウム合金鋳物)を重力鋳造により製造した。
これら各試験片の化学組成を分析した分析組成を,その試験片を鋳造する際に原料を配合した組成(配合組成)と共に表1Aに示した。」

d 「【0042】
・・・
【表1A】


【0043】
【表1B】



上記記載から,参1には,以下の事項が記載されているものと認められる。

e 上記aの記載から,参1に記載のマグネシウム合金は,耐熱性を有するものである。

f 上記cの記載から,参1は,参1に記載のマグネシウム合金の製造方法が記載されたものである。

g 上記dの表1A及び表1BにおけるNo.1は,分析組成において,質量%で,Alを2.0%,Caを2.8%,Mnを0.5%含有するマグネシウム合金であって,「Al+8Ca」が2.0+8×2.8=24.4,「Al/Ca」が2.0/2.8=約0.71となり,鋳放し材の熱伝導率が110W/m・Kである。

h 上記dの表1A及び表1BにおけるNo.6は,分析組成において,質量%で,Alを3.2%,Caを3.0%,Mnを0.5%含有するマグネシウム合金であって,「Al+8Ca」が3.2+8×3.0=27.2,「Al/Ca」が3.2/3.0=約1.07となり,鋳放し材の熱伝導率が112W/m・Kである。

i 上記dの表1A及び表1BにおけるNo.17は,分析組成において,質量%で,Alを4.0%,Caを3.6%,Mnを0.3%含有するマグネシウム合金であって,「Al+8Ca」が4.0+8×3.6=32.8,「Al/Ca」が4.0/3.6=約1.11となり,鋳放し材の熱伝導率が107W/m・Kである。

イ 引用発明
上記アe?iの参1に記載されていると認められる事項から,表1A及び表1BのNo.1,6及び17に着目すると,参1には,以下の6つの発明(以下,それぞれ「参1A発明」,「参1B発明」,「参1C発明」,「参1D発明」,「参1E発明」及び「参1F発明」という。)が記載されているものと認められる。

<参1A発明>
質量%で,Alを2.0%,Caを2.8%,Mnを0.5%含有するマグネシウム合金であって,
Al+8Ca=24.4であり,
Al/Caが約0.71であり,
熱伝導率が110W/m・Kである,耐熱性マグネシウム合金。

<参1B発明>
質量%で,Alを3.2%,Caを3.0%,Mnを0.5%含有するマグネシウム合金であって,
Al+8Ca=27.2であり,
Al/Caが約1.07であり,
熱伝導率が112W/m・Kである,耐熱性マグネシウム合金。

<参1C発明>
質量%で,Alを4.0%,Caを3.6%,Mnを0.3%含有するマグネシウム合金であって,
Al+8Ca=32.8であり,
Al/Caが約1.11であり,
熱伝導率が107W/m・Kである,耐熱性マグネシウム合金。

<参1D発明>
質量%で,Alを2.0%,Caを2.8%,Mnを0.5%含有するマグネシウム合金の製造方法であって,
Al+8Ca=24.4であり,
Al/Caが約0.71であり,
熱伝導率が110W/m・Kである,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

<参1E発明>
質量%で,Alを3.2%,Caを3.0%,Mnを0.5%含有するマグネシウム合金の製造方法であって,
Al+8Ca=27.2であり,
Al/Caが約1.07であり,
熱伝導率が112W/m・Kである,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

<参1F発明>
質量%で,Alを4.0%,Caを3.6%,Mnを0.3%含有するマグネシウム合金での製造方法あって,
Al+8Ca=32.8であり,
Al/Caが約1.11であり,
熱伝導率が107W/m・Kである,耐熱性マグネシウム合金の製造方法。

(11)参2の記載事項
上記参2には,以下の記載がある。

a 「


(336頁)

b 「


(337頁)

(12)参3の記載事項
上記参3には,以下の記載がある。

a 「【請求項1】
Caを0.5?5質量%,Siを0.5?5質量%有し,母相となるMg相中にCaMgSi相を晶出させて耐熱性を備えさせたことを特徴とする耐熱性及び難燃性を有するマグネシウム合金。」

b 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Caが添加されたマグネシウム合金は,Caが添加されていない場合と比較して,マグネシウム合金の硬さを上昇でき,また耐熱性も有するが,自動車のエンジン材料のように,高温状況下(例えば,200℃以上)で使用できる程度の十分な耐熱性は備えていなかった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので,高温環境下で使用可能な耐熱性及び難燃性を有するマグネシウム合金及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る耐熱性及び難燃性を有するマグネシウム合金は,Caを0.5?5質量%,Siを0.5?5質量%有し,母相となるMg相中にCaMgSi相を晶出させて耐熱性を備えさせた。」

c 【0018】
Mg合金10は,Mg(マグネシウム),Al(アルミニウム),Zn(亜鉛),及びMn(マンガン)を有するMg-Al-Zn系合金に,更にCa(カルシウム)とSi(ケイ素)が添加されたものである。具体的には,Mgを主体(80質量%以上)とし,Alが1?15質量%(ここでは12質量%),Znが0.1?5質量%(ここでは0.7質量%),Mnが0.1?2質量%(ここでは0.3質量%),Caが0.5?5質量%(ここでは1質量%),Siが0.5?5質量%(ここでは1質量%),及び不可避的不純物で構成されたものである。
【0019】
なお,Mg合金は,母相となるMg相(特に,αMg相)中にCaMgSi相を晶出させたものであるため,CaとSiが含まれていれば,Mg合金中のAl,Zn,及びMnの各量は,上記した値に限定されるものではない。」

(13)参4の記載事項
上記参4には,以下の記載がある。

a 「【請求項1】
耐熱性および鋳造性に優れたマグネシウム合金であって,重量%でAlを1.5?6%,Caを0.5?3%,Srを0.21?1%,Mnを0.l?1%含有し,残部がMgおよび不可避不純物からなり,結晶組織がマグネシウム合金からなるマグネシウム合金結晶粒と,該結晶粒の粒界に晶出したAlとCaを含む晶出物とから構成されており,前記結晶組織の断面における前記晶出物の占有面積が5?25%の範囲であるマグネシウム合金からなる鋳造品であることを特徴とする耐熱マグネシウム合金鋳造品。」

b 「【0017】
また,本発明に係る耐熱マグネシウム合金鋳造品は,鋳造工程における冷却速度が,0.1℃/秒以上,100℃/秒以下の範囲とされることが好ましい。これは,上記冷却速度が0.1℃/秒未満であると,Mg結晶粒の粒界に析出する晶出物が多くなり,Al固溶量が少なくなるために強度が低下するからであり,100℃/秒を超えるとMg結晶粒の粒界に晶出する晶出物の面積率が低下してクリープ強度が低下するからである。」

(14)参5の国際公開の記載事項
上記参5の国際公開には,以下の記載がある。

a 「(実施の形態1)
本発明の一態様は,溶質元素を高濃度に添加したマグネシウム合金であるMg-Al-Ca合金を用いて高強度な展伸材を開発したものである。優れた機械的特性を示した本発明の一態様であるMg_(83.75)Al_(10)Ca_(6.25)押出材の引張耐力,伸びはそれぞれ460MPa,3.3%に達しており,従来のMg-Al-Ca合金鋳造材および展伸材の特性を大きく上回るものである。
従来の研究では,Mg-Al-Ca合金においてAlとCaを含む化合物の体積分率が高くなると延性が低下して脆性を示すことが報告されていた。
しかしながら,本発明者らは,化合物の体積分率が高くなるAlおよびCaの高濃度組成域での展伸材開発を目指し,硬質なMg-Al-Ca三元系化合物,例えばC36型化合物である(Mg,Al)2Caを金属組織中に分散させることで,高い強度と比較的大きな延性が得られることを見出した。」(8頁1?12行)

b 「なお,溶解鋳造による鋳造時の冷却速度は1000K/秒以下であり,より好ましくは100K/秒以下である。」(12頁21?22行)

(15)参6の記載事項
上記参6には,以下の記載がある。

a 「Example No. 2
Production of Test Samples
An alloy molten metal whose target composition was Mg-3% Ca-3% Al-0.2% Mn was prepared by the above-described production process (a molten metal preparing step). The thus produced alloy molten metal was held at a temperature of from 620 to 630℃., and then die casting (or pressure casting specifically) was carried out.
A metallic die, which was used for die casting, was made from SKD11 (as per Japanese Industrial Standards (or JIS)). The metallic die was provided with a cavity, which was formed as a cup shape for automotive component part. Moreover, the metallic die's cavity inner peripheral wall had been subjected to a tungsten coating treatment.
Upon carrying out each die-casting operation, a die-releasing agent was applied onto the metallic die's cavity inner peripheral wall. Note that the die-releasing agent was a diluent, which was prepared by diluting a stock solution, “GRAFACE” produced by HANANO SHOJI Co., Ltd., to from 10 to 30 times by volume.
Before pouring the alloy molten metal into the metallic die, the metallic die was preheated to various temperatures. Then, the alloy molten metal was poured into the cavity of the metallic die through a nozzle (a pressure pouring step). Note that the alloy molten metal was pressurized at a plunger rate of from 1 to 1.5 m/min. Moreover, when pouring the alloy molten metal, the nozzle was held at a temperature of from 630 to 640℃.
The metallic die was water cooled. Note that the cooling rate was controlled to fall in a range of from 300 to 400℃./min. Moreover, the die time (hereinafter abbreviated to as “DT” wherever necessary), that is, the time elapsed from the pouring of alloy molten metal to the opening of metallic die, was controlled to fall in a range of from 0.5 to 2 seconds.
The above-described die casting was carried out repeatedly for every preheating temperature (or die temperature). Thus, test samples, which comprised 34 specific magnesium alloy cast products in total, were produced.
Note herein that the die temperature set forth in Example No. 2 designates temperatures which were measured at the inner side by 15 mm from the surface layer of the metallic die's gate.」(14欄48行?15欄24行)
(当審訳:No.2例
試験サンプルの製造
目標組成がMg-3%Ca-3%Al-0.2%Mnである合金溶融金属は,上記の製造プロセス(溶融金属調整工程)によって調製された。
・・・
金属ダイは水冷された。冷却速度は300?400℃/minの範囲となるように制御した。)

2 新規性進歩性について
(1)本件発明1について
(1-1)甲1に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲1A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明1と甲1A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲1A発明における「Ca」,「Al」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明1におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲1A発明においてSiは含有されていないものであるが,本件発明1のSiの含有量は「1.3%以下」であって,Siを含有しない場合も含むことから,Siの含有量についても,本件発明1における含有量の範囲を充足するものである。
さらに,甲1A発明における「Fe」,「Ni」及び「Cu」は,それらの含有量が他の成分と比べて著しく少ないことから,本件発明1における「不可避的不純物」に相当するものと認められる。
してみると,本件発明1と甲1A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点1-1>
Mg母相のMg純度について,本件発明1は,「質量%で98.0%以上」であるのに対し,甲1A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点1-1に係る事項である「Mg母相のMg純度が質量%で98.0%以上」であることについて,甲1A発明が当然に有している事項とは認められないから,相違点1-1は実質的な相違点である。
また,相違点1-1に係る事項が本件発明の属する技術分野における技術常識であるとも認められない。
そして,本件発明1は,相違点1?1に係る事項を特定することにより,Mg母相の熱伝導率が向上する(本件明細書の【0024】)という顕著な効果を奏するものである。
したがって,本件発明1は,甲1A発明でないし,甲1A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲1B発明との対比・判断
本件発明1と甲1B発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明1は,甲1B発明でないし,甲1B発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(1-2)甲2に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲2A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明1と甲2A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲2A発明における「Ca」,「Al」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明1におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲2A発明においてSiは含有されていないものであるが,本件発明1のSiの含有量は「1.3%以下」であって,Siを含有しない場合も含むことから,Siの含有量についても,本件発明1における含有量の範囲を充足するものである。
さらに,甲2A発明における「Fe」,「Ni」及び「Cu」は,非常に少量であることから,本件発明1における「不可避的不純物」に相当するものと認められる。
してみると,本件発明1と甲2A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点1-2>
Mg母相のMg純度について,本件発明1は,「質量%で98.0%以上」であるのに対し,甲2A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点1-2は,相違点1-1と同様であるから,その判断についても,上記(1-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明1は,甲2A発明でないし,甲2A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲2B発明又は甲2C発明との対比・判断
本件発明1と甲2B発明又は甲2C発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明1は,甲2B発明又は甲2C発明でないし,甲2B発明又は甲2C発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(1-3)甲3に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲3A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明1と甲3A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲3A発明における「Ca」,「Al」,「Si」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明1におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲3A発明に係るマグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは,技術常識から明らかなことである。
してみると,本件発明1と甲3A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点1-3>
Mg母相のMg純度について,本件発明1は,「質量%で98.0%以上」であるのに対し,甲3A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点1-3は,相違点1-1と同様であるから,その判断についても,上記(1-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明1は,甲3A発明でないし,甲3A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲3B発明との対比・判断
本件発明1と甲3B発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明1は,甲3B発明でないし,甲3B発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(1-4)甲4に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲4A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明1と甲4A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲4A発明における「Ca」,「Al」,「Si」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明1におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲4A発明に係るマグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは,技術常識から明らかなことである。
してみると,本件発明1と甲4A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点1-4>
Mg母相のMg純度について,本件発明1は,「質量%で98.0%以上」であるのに対し,甲4A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点1-4は,相違点1-1と同様であるから,その判断についても,上記(1-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明1は,甲4A発明でないし,甲4A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲4B発明との対比・判断
本件発明1と甲4B発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明1は,甲4B発明でないし,甲4B発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(1-5)甲5に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲5A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明1と甲5A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲5A発明における「Ca」,「Al」,「Si」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明1におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲5A発明に係るマグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは,技術常識から明らかなことである。
してみると,本件発明1と甲5A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点1-5>
Mg母相のMg純度について,本件発明1は,「質量%で98.0%以上」であるのに対し,甲5A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点1-5は,相違点1-1と同様であるから,その判断についても,上記(1-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明1は,甲5A発明でないし,甲5A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲5B発明又は甲5C発明との対比・判断
本件発明1と甲5B発明又は甲5C発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明1は,甲5B発明又は甲5C発明でないし,甲5B発明又は甲5C発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(1-6)甲6に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲6A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明1と甲6A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲6A発明における「Ca」,「Al」,「Si」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明1におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲6A発明における「その他(不純物)」は,本件発明1における「不可避的不純物」に相当する。
してみると,本件発明1と甲6A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点1-6>
Mg母相のMg純度について,本件発明1は,「質量%で98.0%以上」であるのに対し,甲6A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点1-6は,相違点1-1と同様であるから,その判断についても,上記(1-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明1は,甲6A発明でないし,甲6A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲6B発明?甲6F発明との対比・判断
本件発明1と甲6B発明,甲6C発明,甲6D発明,甲6E発明又は甲6F発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明1は,甲6B発明,甲6C発明,甲6D発明,甲6E発明又は甲6F発明でないし,甲6B発明,甲6C発明,甲6D発明,甲6E発明又は甲6F発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(1-7)参1に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 参1A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明1と参1A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,参1A発明における「Al」,「Ca」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明1におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,参1A発明においてSiは含有されていないものであるが,本件発明1のSiの含有量は「1.3%以下」であって,Siを含有しない場合も含むことから,Siの含有量についても,本件発明1における含有量の範囲を充足するものである。
さらに,参1A発明は,「残部がMg及び不可避的不純物」からなるものとされてはいないが,マグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは技術常識から明らかなことであるから,参1A発明のマグネシウム合金においても,「残部がMg及び不可避的不純物」からなるものといえる。
してみると,本件発明1と参1A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点1-7>
Mg母相のMg純度について,本件発明1は,「質量%で98.0%以上」であるのに対し,参1A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点1-7は,相違点1-1と同様であるから,その判断についても,上記(1-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明1は,参1A発明でないし,参1A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 参1B発明又は参1C発明との対比・判断
本件発明1と参1B発明又は参1C発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明1は,参1B発明又は参1C発明でないし,参1B発明又は参1C発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(1-8)本件発明1についての小括
したがって,本件発明1は,甲1?6,参1に記載された発明でないし,甲1?6,参1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)本件発明3について
(2-1)甲1に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲1A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明3と甲1A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲1A発明における「Ca」,「Al」及び「Mn」の含有量は,本件発明1におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲1A発明にいてSiは含有されていないものであるが,本件発明3のSiの含有量は「3.0%以下」であって,Siを含有しない場合も含むことから,Siの含有量についても,本件発明3における含有量の範囲を充足するものである。
さらに,甲1A発明における「Fe」,「Ni」及び「Cu」は,それらの含有量が他の成分と比べて著しく少ないことから,本件発明1における「不可避的不純物」に相当するものと認められる。
そして,甲1A発明における「(Mg,Al)_(2)Ca相」は,結晶粒界に形成されるものであるところ,結晶粒界は,合金中に三次元網目状に連続して存在するものであることが技術常識であるといえるから,甲1A発明における「(Mg,Al)_(2)Ca相」も,本件発明3における「(Mg,Al)_(2)Ca相」と同様に,三次元網目状に連続したものであると認められる。
してみると,本件発明3と甲1A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点2-1>
Mg母相のMg純度について,本件発明3は,「質量%で98.0%以上」であるのに対し,甲1A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点2-1は,相違点1-1と同様であるから,その判断についても,上記(1)の(1-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明3は,甲1A発明でないし,甲1A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲1B発明との対比・判断
本件発明3と甲1B発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明3は,甲1B発明でないし,甲1B発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(2-2)甲2に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲2A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明3と甲2A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲2A発明における「Ca」,「Al」及び「Mn」の含有量は,本件発明3におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲2A発明においてSiは含有されていないものであるが,本件発明3のSiの含有量は「3.0%以下」であって,Siを含有しない場合も含むことから,Siの含有量についても,本件発明3における含有量の範囲を充足するものである。
さらに,甲2A発明における「Fe」,「Ni」及び「Cu」は,非常に少量であることから,本件発明3における「不可避的不純物」に相当するものと認められる。
そして,甲2A発明における「(Mg,Al)_(2)Ca」は,結晶粒界に相として存在するものであるところ,結晶粒界は,合金中に三次元網目状に連続して存在するものであることが技術常識であるといえるから,甲2A発明における「(Mg,Al)_(2)Ca」の相も,本件発明3における「(Mg,Al)_(2)Ca相」と同様に,三次元網目状に連続したものであると認められる。
してみると,本件発明3と甲2A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点2-2>
Mg母相のMg純度について,本件発明3は,「質量%で98.0%以上」であるのに対し,甲2A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点2-2は,相違点1-1と同様であるから,その判断についても,上記(1)の(1-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明3は,甲2A発明でないし,甲2A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲2B発明又は甲2C発明との対比・判断
本件発明3と甲2B発明又は甲2C発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明3は,甲2B発明又は甲2C発明でないし,甲2B発明又は甲2C発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(2-3)甲3に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲3A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明3と甲3A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲3A発明における「Ca」,「Al」,「Si」及び「Mn」の含有量は,本件発明3におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲3A発明に係るマグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは,技術常識から明らかなことである。
してみると,本件発明1と甲3A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなる,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点2-3-1>
本件発明3は,「三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する」ものであるのに対し,甲3A発明は,そのような特定がない点。

<相違点2-3-2>
Mg母相のMg純度について,本件発明3は,「質量%で98.0%以上」であるのに対し,甲3A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点2-3?2について検討すると,相違点2-3?2は,相違点1-1と同様であるから,その判断についても,上記(1)の(1-1)ア(イ)と同様である。
したがって,他の相違点について検討するまでもなく,本件発明1は,甲3A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

イ 甲3B発明との対比・判断
本件発明3と甲3B発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明3は,甲3B発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

(2-4)甲4に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲4A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明3と甲4A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲4A発明における「Ca」,「Al」,「Si」及び「Mn」の含有量は,本件発明3におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲4A発明に係るマグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは,技術常識から明らかなことである。
してみると,本件発明3と甲4A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなる,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点2-4-1>
本件発明3は,「三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する」ものであるのに対し,甲4A発明は,そのような特定がない点。

<相違点2-4-2>
Mg母相のMg純度について,本件発明3は,「質量%で98.0%以上」であるのに対し,甲4A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点2-4?2について検討すると,相違点2-4?2は,相違点1-1と同様であるから,その判断についても,上記(1)の(1-1)ア(イ)と同様である。
したがって,他の相違点について検討するまでもなく,本件発明3は,甲4A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

イ 甲4B発明との対比・判断
本件発明3と甲4B発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明3は,甲4B発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

(2-5)甲5に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲5A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明3と甲5A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲5A発明における「Ca」,「Al」,「Si」及び「Mn」の含有量は,本件発明3におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲5A発明に係るマグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは,技術常識から明らかなことである。
してみると,本件発明3と甲5A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなる,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点2-5-1>
本件発明3は,「三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する」ものであるのに対し,甲5A発明は,そのような特定がない点。

<相違点2-5-2>
Mg母相のMg純度について,本件発明3は,「質量%で98.0%以上」であるのに対し,甲5A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点2-5?2について検討すると,相違点2-5?2は,相違点1-1と同様であるから,その判断についても,上記(1)の(1-1)ア(イ)と同様である。
したがって,他の相違点について検討するまでもなく,本件発明3は,甲5A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

イ 甲5B発明又は甲5C発明との対比・判断
本件発明3と甲5B発明又は甲5C発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明3は,甲5B発明又は甲5C発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

(2-6)甲6に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲6A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明3と甲6A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲6A発明における「Ca」,「Al」,「Si」及び「Mn」の含有量は,本件発明3におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲6A発明における「その他(不純物)」は,本件発明3における「不可避的不純物」に相当する。
してみると,本件発明3と甲6A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなる,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点2-6-1>
本件発明3は,「三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する」ものであるのに対し,甲6A発明は,そのような特定がない点。

<相違点2-6-2>
Mg母相のMg純度について,本件発明3は,「質量%で98.0%以上」であるのに対し,甲6A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点2-6?2について検討すると,相違点2-6?2は,相違点1-1と同様であるから,その判断についても,上記(1)の(1-1)ア(イ)と同様である。
したがって,他の相違点について検討するまでもなく,本件発明3は,甲6A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

イ 甲6B発明?甲6F発明との対比・判断
本件発明3と甲6B発明,甲6C発明,甲6D発明,甲6E発明又は甲6F発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明3は,甲6B発明,甲6C発明,甲6D発明,甲6E発明又は甲6F発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

(2-7)参1に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 参1A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明3と参1A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,参1A発明における「Al」,「Ca」及び「Mn」の含有量は,本件発明3におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,参1A発明においてSiは含有されていないものであるが,本件発明3のSiの含有量は「1.3%以下」であって,Siを含有しない場合も含むことから,Siの含有量についても,本件発明3における含有量の範囲を充足するものである。
さらに,参1A発明は,「残部がMg及び不可避的不純物」からなるものとされてはいないが,マグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは技術常識から明らかなことであるから,参1A発明のマグネシウム合金においても,「残部がMg及び不可避的不純物」からなるものといえる。
してみると,本件発明3と参1A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなる,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点2-7-1>
本件発明3は,「三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する」ものであるのに対し,参1A発明は,そのような特定がない点。

<相違点2-7-2>
Mg母相のMg純度について,本件発明3は,「質量%で98.0%以上」であるのに対し,参1A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点2-7?2について検討すると,相違点2-7?2は,相違点1-1と同様であるから,その判断についても,上記(1)の(1-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明3は,参1A発明でないし,他の相違点について検討するまでもなく,参1A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 参1B発明又は参1C発明との対比・判断
本件発明3と参1B発明又は参1C発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明3は,参1B発明又は参1C発明でないし,参1B発明又は参1C発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(2-8)本件発明3についての小括
したがって,本件発明3は,甲1,2,参1に記載された発明でないし,甲1?6,参1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件発明4について
(3-1)甲1に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲1A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明4と甲1A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲1A発明における「Ca」,「Al」及び「Mn」の含有量は,本件発明4におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲1A発明にいてSiは含有されていないものであるが,本件発明4のSiの含有量は「3.0%以下」であって,Siを含有しない場合も含むことから,Siの含有量についても,本件発明4における含有量の範囲を充足するものである。
さらに,甲1A発明における「Fe」,「Ni」及び「Cu」は,それらの含有量が他の成分と比べて著しく少ないことから,本件発明4における「不可避的不純物」に相当するものと認められる。
してみると,本件発明4と甲1A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなる,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点3-1-1>
熱伝導度について,本件発明4は,「70W/m・K以上」であるのに対し,甲1A発明は,そのような特定がない点。

<相違点3-1-2>
200℃における引張強さについて,本件発明4は,「170MPa以上」であるのに対し,甲1A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点3-1-2に係る事項である「200℃における引張強さが170MPa以上」であることについて検討すると,相違点3-1-2は,甲1A発明が当然に有している事項とは認められないから,相違点3-1-2は実質的な相違点である。
また,相違点3-1-2に係る事項を備えることが本件発明の属する技術分野における技術常識であるとも認められない。
したがって,本件発明4は,甲1A発明でないし,甲1A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲1B発明との対比・判断
本件発明4と甲1B発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明4は,甲1B発明でないし,甲1B発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(3-2)甲2に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲2A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明4と甲2A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲2A発明における「Ca」,「Al」及び「Mn」の含有量は,本件発明4におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲2A発明においてSiは含有されていないものであるが,本件発明4のSiの含有量は「3.0%以下」であって,Siを含有しない場合も含むことから,Siの含有量についても,本件発明4における含有量の範囲を充足するものである。
さらに,甲2A発明における「Fe」,「Ni」及び「Cu」は,非常に少量であることから,本件発明4における「不可避的不純物」に相当するものと認められる。
してみると,本件発明4と甲2A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなる,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点3-2-1>
熱伝導度について,本件発明4は,「70W/m・K以上」であるのに対し,甲2A発明は,そのような特定がない点。

<相違点3-2-2>
200℃における引張強さについて,本件発明4は,「170MPa以上」であるのに対し,甲2A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点3-2?2について検討すると,相違点3-2?2は,相違点3-1-2と同様であるから,その判断についても,上記(3-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明4は,甲2A発明でないし,他の相違点について検討するまでもなく,甲2A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲2B発明又は甲2C発明との対比・判断
本件発明4と甲2B発明又は甲2C発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明4は,甲2B発明又は甲2C発明でないし,甲2B発明又は甲2C発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(3-3)甲3に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲3A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明4と甲3A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲3A発明における「Ca」,「Al」,「Si」及び「Mn」の含有量は,本件発明4におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲3A発明に係るマグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは,技術常識から明らかなことである。
してみると,本件発明4と甲3A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなる,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点3-3-1>
熱伝導度について,本件発明4は,「70W/m・K以上」であるのに対し,甲3A発明は,そのような特定がない点。

<相違点3-3-2>
200℃における引張強さについて,本件発明4は,「170MPa以上」であるのに対し,甲3A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点3-3?2について検討すると,相違点3-3?2は,相違点3-1-2と同様であるから,その判断についても,上記(3-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明4は,甲3A発明でないし,他の相違点について検討するまでもなく,甲3A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲3B発明との対比・判断
本件発明4と甲3B発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明4は,甲3B発明でないし,甲3B発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(3-4)甲4に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲4A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明4と甲4A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲4A発明における「Ca」,「Al」,「Si」及び「Mn」の含有量は,本件発明3におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲4A発明に係るマグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは,技術常識から明らかなことである。
してみると,本件発明4と甲4A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなる,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点3-4-1>
熱伝導度について,本件発明4は,「70W/m・K以上」であるのに対し,甲4A発明は,そのような特定がない点。

<相違点3-4-2>
200℃における引張強さについて,本件発明4は,「170MPa以上」であるのに対し,甲4A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点3-4?2について検討すると,相違点3-4?2は,相違点3-1-2と同様であるから,その判断についても,上記(3-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明4は,甲4A発明でないし,他の相違点について検討するまでもなく,甲4A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲4B発明との対比・判断
本件発明4と甲4B発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明4は,甲4B発明でないし,甲4B発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(3-5)甲5に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲5A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明4と甲5A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲5A発明における「Ca」,「Al」,「Si」及び「Mn」の含有量は,本件発明4におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲5A発明に係るマグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは,技術常識から明らかなことである。
してみると,本件発明4と甲5A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなる,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点3-5-1>
熱伝導度について,本件発明4は,「70W/m・K以上」であるのに対し,甲5A発明は,そのような特定がない点。

<相違点3-5-2>
200℃における引張強さについて,本件発明4は,「170MPa以上」であるのに対し,甲5A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点3-5?2について検討すると,相違点3-5?2は,相違点3-1-2と同様であるから,その判断についても,上記(3-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明4は,甲5A発明でないし,他の相違点について検討するまでもなく,甲5A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲5B発明又は甲5C発明との対比・判断
本件発明4と甲5B発明又は甲5C発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明4は,甲5B発明又は甲5C発明でないし,甲5B発明又は甲5C発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(3-6)甲6に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲6A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明4と甲6A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲6A発明における「Ca」,「Al」,「Si」及び「Mn」の含有量は,本件発明4におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲6A発明における「その他(不純物)」は,本件発明4における「不可避的不純物」に相当する。
してみると,本件発明4と甲6A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなる,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点3-6-1>
熱伝導度について,本件発明4は,「70W/m・K以上」であるのに対し,甲6A発明は,そのような特定がない点。

<相違点3-6-2>
200℃における引張強さについて,本件発明4は,「170MPa以上」であるのに対し,甲6A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点3-6?2について検討すると,相違点3-6?2は,相違点3-1-2と同様であるから,その判断についても,上記(3-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明4は,甲6A発明でないし,他の相違点について検討するまでもなく,甲6A発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲6B発明?甲6F発明との対比・判断
本件発明4と甲6B発明,甲6C発明,甲6D発明,甲6E発明又は甲6F発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明4は,甲6B発明,甲6C発明,甲6D発明,甲6E発明又は甲6F発明でないし,甲6B発明,甲6C発明,甲6D発明,甲6E発明又は甲6F発明に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(3-7)本件発明4についての小括
したがって,本件発明4は,甲1?6に記載された発明でないし,甲1?6に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)本件発明5について
本件発明5は,本件発明1?4のいずれかを引用し,「Al/Caが1.70以下である」との特定事項を有するものであるが,本件発明1は,甲1?6,参1に記載された発明でないし,甲1?6,参1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもないこと,本件発明3は,甲1,2,参1に記載された発明でないし,甲1?6,参1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもないこと,本件発明4は,甲1?6に記載された発明でないし,甲1?6に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもないことは,上記(1)?(3)のとおりであるから,上記特定事項について検討するまでもなく,本件発明1,3,4のいずれかを引用する本件発明5は,甲1?6,参1に記載された発明でないし,甲1?6,参1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(5)本件発明6について
本件発明6は,本件発明2,4,5のいずれかを引用し,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する」との特定事項を有するものであるが,本件発明4は,甲1?6に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでないこと,本件発明5は,甲1?6,参1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもないことは,上記(3),(4)のとおりであるから,上記特定事項について検討するまでもなく,本件発明4,5のいずれかを引用する本件発明6は,甲1?6,参1に記載された発明と甲7に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(6)本件発明7について
本件発明7は,本件発明2,4?6のいずれかを引用し,「Mg母相のMg純度が質量%で98.0%以上である」との特定事項を有するものであるが,本件発明4は,甲1?6に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではないこと,本件発明5,6は,甲1?6,参1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではないことは,上記(3)?(5)のとおりであるから,上記特定事項について検討するまでもなく,本件発明4?6のいずれかを引用する本件発明7は,甲1?6,参1に記載された発明と甲2又は甲8に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(7)本件発明8について
本件発明8は,本件発明1?7のいずれかに係る耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,「溶融された金属材料を10^(3)K/秒未満の速度で冷却する工程を備える」との特定事項を有するものである。
ここで,本件発明1,3?7に係る耐熱性マグネシウム合金は,上記(1)?(6)のとおり,甲1A・B発明,甲2A?C発明,甲3A・B発明,甲4A・B発明,甲5A?C発明,甲6A?F発明及び参1A?C発明(以下「甲1?6,参1に記載された耐熱性マグネシウム合金の発明」という。)に基いて,当業者が容易に発明することができたものでない。
してみると,甲1?6,参1に記載された耐熱性マグネシウム合金の発明におけるそれぞれの製造方法である,甲1C・D発明,甲2D?F発明,甲3C・D発明,甲4C・D発明,甲5D?F発明,甲6G?L発明及び参1D?F発明から,本件発明8を容易に想到し得るということもできない。
よって,上記特定事項について検討するまでもなく,本件発明1,3?7のいずれかを引用する本件発明8は,甲1?6,参1に記載された発明と甲9に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(8)本件発明9について
本件発明9は,本件発明2,4?7に係る耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,「溶融された金属材料を冷却して,Mg母相と,三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相と,前記Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相とを晶出させる工程を備える」との特定事項を有するものである。
ここで,本件発明4?7に係る耐熱性マグネシウム合金は,上記(3)?(6)のとおり,甲1?6,参1に記載された耐熱性マグネシウム合金の発明に基いて,当業者が容易に発明することができたものでない。
してみると,甲1?6,参1に記載された耐熱性マグネシウム合金の発明におけるそれぞれの製造方法である,甲1C・D発明,甲2D?F発明,甲3C・D発明,甲4C・D発明,甲5D?F発明,甲6G?L発明及び参1D?F発明から,本件発明9を容易に想到し得るということもできない。
よって,上記特定事項について検討するまでもなく,本件発明4?7のいずれかを引用する本件発明9は,甲1?6,参1に記載された発明と甲1,甲2,甲7?9に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(9)本件発明10について
(9-1)甲1に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲1A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明10と甲1A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲1A発明における「Ca」,「Al」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明10におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲1A発明においてSiは含有されていないものであるが,本件発明10のSiの含有量は「1.3%以下」であって,Siを含有しない場合も含むことから,Siの含有量についても,本件発明10における含有量の範囲を充足するものである。
さらに,甲1A発明における「Fe」,「Ni」及び「Cu」は,それらの含有量が他の成分と比べて著しく少ないことから,本件発明1における「不可避的不純物」に相当するものと認められる。
してみると,本件発明10と甲1A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点4-1>
本件発明10は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する」ものであるのに対し,甲1A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点4-1に係る事項である「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する」ことについて,甲1A発明はSiを含有しないものであって,「Ca-Mg-Si系化合物相を有する」ものとはならないことが明らかであるから,相違点4-1は実質的な相違点である。
また,甲1A発明にSiを含有させた上で,さらに「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する」ものとすることが,当業者にとって容易であるということもできない。
そして,本件発明10は,相違点4-1に係る事項を特定することにより,高い高温強度を得ることができる(本件明細書の【0009】)という顕著な効果を奏するものである。
したがって,本件発明10は,甲1A発明でないし,甲1A発明と甲7に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲1B発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明10と甲1B発明との対比について,Siの含有量以外については上記アと同様であって,甲1B発明のSiの含有量は本件発明10を充足するものであるから,一致点及び相違点について同様である。

(イ)相違点についての判断
甲7には,「Mg-Al-Ca合金にSiのみを添加した#C04では,粗大なCa-Si-Mg系化合物が観察された(図6)」(【0051】)と記載されているが,甲7に記載の#C04は,Alを7.0質量%,Caを4.2質量%,Siを1.0質量%,Mnを0.30質量%,残部Mgであるマグネシウム合金であって(【表1】),甲1B発明とは合金組成が異なることから,甲1B発明が当然に「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する」ということはできない。
また,甲7の【0051】及び【0052】には,「Mg-Al-Ca合金にSiのみを添加した#C04では,粗大なCa-Si-Mg系化合物が観察された(図6)。また,Mg-Al-Ca合金にSnのみを添加した#C05では,粗大なCa-Sn-Mg系化合物が観察された(図7)。粗大な化合物の生成は,鋳造性の低下だけでなく,耐熱性の低下を引き起こした。」及び「すなわち,Mg-Al-Ca-Mn合金にSiとSnとを同時に所定の量添加したマグネシウム合金は,優れた耐熱性および鋳造性をもつマグネシウム合金であることがわかった。」と記載されているところ,甲1B発明はSnを含有するものではないから,甲1B発明において,耐熱性の低下を引き起こすことになるSiのみの添加を行う動機付けは認められない。
さらに,申立人は,令和3年6月16日に提出した意見書において,参2及び3に記載のように,Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有することは当業者にとって自明であるため,本件発明10は進歩性を有しない旨主張していることについて,以下検討する。
参2には,Fig.2において,ASO5105合金がCaMgSi層を有することが示されているが,ASO5105合金は,Alを5.0重量%,Siを0.7%,Caを0.5重量%含有し,残部Mgである合金であって,Mnを含有しておらず(Table1),甲1B発明とは合金組成が異なることから,甲1B発明において,参2に記載された事項を適用する動機付けは認められない。
また,参3には,【0007】に「Caを0.5?5質量%,Siを0.5?5質量%有し,母相となるMg相中にCaMgSi相を晶出させて耐熱性を備えさせた」マグネシウム合金が記載されているが,具体的には,【0018】に記載のように,「Mgを主体(80質量%以上)とし,Alが1?15質量%(ここでは12質量%),Znが0.1?5質量%(ここでは0.7質量%),Mnが0.1?2質量%(ここでは0.3質量%),Caが0.5?5質量%(ここでは1質量%),Siが0.5?5質量%(ここでは1質量%),及び不可避的不純物で構成されたもの」であって,【0019】に記載のように「CaとSiが含まれていれば,Mg合金中のAl,Zn,及びMnの各量は,上記した値に限定されるものではない」にしても,【0018】に記載のものはZnの含有が必須であり,【0019】には「また,CaとSiは,例えば,Mg単味,Mg-Al系,Mg-Mn系,Mg-Zn系,Mg-Zn-Zr系等の合金に添加することもできる」と記載されているがMg-Al-Mn系の記載はなく,耐熱性の効果が具体的に確認された【0021】に記載された実施例1,2や,【0027】?【0032】に記載の製造方法で製造されたものもZnを含有していることから,甲1B発明において,甲1B発明と合金組成が異なるものしか記載がない参3に記載された事項を適用する動機付けがあるとは認められない。なお,付言するならば,参3の【0018】において,「ここでは」とされている「Mgを主体(80質量%以上)」とし,Alが「12質量%」,Znが「0.7質量%」,Mnが「0.3質量%」,Caが「1質量%」,Siが「1質量%」及び不可避的不純物で構成されたものは,本件明細書の【0044】の【表1】に記載された比較例9と同じであって,甲1B発明に参3に記載された事項を適用したとしても,本件発明10に至れるものでない。
したがって,本件発明10は,甲1B発明でないし,甲1B発明と甲7に記載された事項又は参2及び参3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(9-2)甲2に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲2A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明10と甲2A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲2A発明における「Ca」,「Al」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明10におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲2A発明においてSiは含有されていないものであるが,本件発明1のSiの含有量は「1.3%以下」であって,Siを含有しない場合も含むことから,Siの含有量についても,本件発明10における含有量の範囲を充足するものである。
さらに,甲2A発明における「Fe」,「Ni」及び「Cu」は,非常に少量であることから,本件発明10における「不可避的不純物」に相当するものと認められる。
してみると,本件発明10と甲2A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点4-2>
本件発明10は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する」ものであるのに対し,甲2A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点4-2は,相違点4-1と同様であって,甲2A発明はSiを含有しないものであるから,その判断については,上記(9-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明10は,甲2A発明でないし,甲2A発明と甲7に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

イ 甲2B発明又は甲2C発明との対比・判断
本件発明10とSiを含有しない甲2C発明との対比・判断については,上記アと同様であり,Siを含有する甲2B発明については,上記(9-1)イと同様であるから,本件発明10は,甲2B発明又は甲2C発明でないし,甲2B発明又は甲2C発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(9-3)甲3に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲3A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明10と甲3A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲3A発明における「Ca」,「Al」,「Si」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明10におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲3A発明に係るマグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは,技術常識から明らかなことである。
してみると,本件発明10と甲3A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点4-3>
本件発明10は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する」ものであるのに対し,甲3A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点4-3は,相違点4-1と同様であり,Siを含有する甲3A発明については,その判断についても,上記(9-1)イと同様である。
したがって,本件発明10は,甲3A発明でないし,甲3A発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲3B発明との対比・判断
本件発明10とSiを含有する甲3B発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明10は,甲3B発明でないし,甲3B発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(9-4)甲4に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲4A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明10と甲4A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲4A発明における「Ca」,「Al」,「Si」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明10におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲4A発明に係るマグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは,技術常識から明らかなことである。
してみると,本件発明10と甲4A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点4-4>
本件発明10は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する」ものであるのに対し,甲4A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点4-4は,相違点4-1と同様であるから,Siを含有する甲4A発明については,その判断についても,上記(9-1)イと同様である。
したがって,本件発明10は,甲4A発明でないし,甲4A発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲4B発明との対比・判断
本件発明10とSiを含有する甲4B発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明10は,甲4B発明でないし,甲4B発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(9-5)甲5に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲5A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明10と甲5A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲5A発明における「Ca」,「Al」,「Si」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明10におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲5A発明に係るマグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは,技術常識から明らかなことである。
してみると,本件発明10と甲5A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点4-5>
本件発明10は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する」ものであるのに対し,甲5A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点4-5は,相違点4-1と同様であるから,Siを含有する甲5A発明については,その判断についても,上記(9-1)イと同様である。
したがって,本件発明10は,甲5A発明でないし,甲5A発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲5B発明又は甲5C発明との対比・判断
本件発明10とSiを含有する甲5B発明又は甲5C発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明10は,甲5B発明又は甲5C発明でないし,甲5B発明又は甲5C発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(9-6)甲6に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲6A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明10と甲6A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲6A発明における「Ca」,「Al」,「Si」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明10におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲6A発明における「その他(不純物)」は,本件発明10における「不可避的不純物」に相当する。
してみると,本件発明10と甲6A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点4-6>
本件発明10は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する」ものであるのに対し,甲6A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点4-6は,相違点4-1と同様であるから,Siを含有する甲6A発明については,その判断についても,上記(9-1)イと同様である。
したがって,本件発明10は,甲6A発明でないし,甲6A発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲6B発明?甲6F発明との対比・判断
本件発明10とSiを含有する甲6B発明,甲6C発明,甲6D発明,甲6E発明又は甲6F発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明10は,甲6B発明,甲6C発明,甲6D発明,甲6E発明又は甲6F発明でないし,甲6B発明,甲6C発明,甲6D発明,甲6E発明又は甲6F発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(9-7)参1に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 参1A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明10と参1A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,参1A発明における「Al」,「Ca」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明10におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,参1A発明においてSiは含有されていないものであるが,本件発明10のSiの含有量は「1.3%以下」であって,Siを含有しない場合も含むことから,Siの含有量についても,本件発明10における含有量の範囲を充足するものである。
さらに,参1A発明は,「残部がMg及び不可避的不純物」からなるものとされてはいないが,マグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは技術常識から明らかなことであるから,参1A発明のマグネシウム合金においても,「残部がMg及び不可避的不純物」からなるものといえる。
してみると,本件発明10と参1A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点4-7>
本件発明10は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する」ものであるのに対し,参1A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点4-7は,相違点4-1と同様であって,参1A発明はSiを含有しないものであるから,その判断については,上記(9-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明10は,参1A発明でないし,参1A発明と甲7に記載された事項又は参2及び参3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 参1B発明又は参1C発明との対比・判断
本件発明10とSiを含有しない参1B発明又は参1C発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明10は,参1B発明又は参1C発明でないし,参1B発明又は参1C発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(9-8)本件発明10についての小括
したがって,本件発明10は,甲1?6,参1に記載された発明でないし,甲1?6,参1に記載された発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(10)本件発明11 について
(10-1)甲1に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲1A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明11と甲1A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲1A発明における「Ca」,「Al」及び「Mn」の含有量は,本件発明11におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲1A発明においてSiは含有されていないものであるが,本件発明11のSiの含有量は「1.3%以下」であって,Siを含有しない場合も含むことから,Siの含有量についても,本件発明11における含有量の範囲を充足するものである。
さらに,甲1A発明における「Fe」,「Ni」及び「Cu」は,それらの含有量が他の成分と比べて著しく少ないことから,本件発明11における「不可避的不純物」に相当するものと認められる。
そして,甲1A発明における「(Mg,Al)_(2)Ca相」は,結晶粒界に形成されるものであるところ,結晶粒界は,合金中に三次元網目状に連続して存在するものであることが技術常識であるといえるから,甲1A発明における「(Mg,Al)_(2)Ca相」も,本件発明11における「(Mg,Al)_(2)Ca相」と同様に,三次元網目状に連続したものであると認められる。
してみると,本件発明11と甲1A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点5-1>
本件発明11は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する」ものであるのに対し,甲1A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点5-1は,相違点4-1と同様であり,甲1A発明はSiを含有しないから,その判断についても,上記(9-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明11は,甲1A発明でないし,甲1A発明と甲7に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲1B発明との対比・判断
甲1B発明はSiを含有するものであるところ,その判断については上記(9-1)イと同様であるから,本件発明11は,甲1B発明でないし,甲1B発明と甲7に記載された事項又は参2及び参3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(10-2)甲2に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲2A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明11と甲2A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲2A発明における「Ca」,「Al」及び「Mn」の含有量は,本件発明11におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲2A発明においてSiは含有されていないものであるが,本件発明11のSiの含有量は「3.0%以下」であって,Siを含有しない場合も含むことから,Siの含有量についても,本件発明11における含有量の範囲を充足するものである。
さらに,甲2A発明における「Fe」,「Ni」及び「Cu」は,非常に少量であることから,本件発明11における「不可避的不純物」に相当するものと認められる。
そして,甲2A発明における「(Mg,Al)_(2)Ca」は,結晶粒界に相として存在するものであるところ,結晶粒界は,合金中に三次元網目状に連続して存在するものであることが技術常識であるといえるから,甲2A発明における「(Mg,Al)_(2)Ca」の相も,本件発明11における「(Mg,Al)_(2)Ca相」と同様に,三次元網目状に連続したものであると認められる。
してみると,本件発明11と甲2A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり,
三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点5-2>
本件発明11は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する」ものであるのに対し,甲2A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点5-2は,相違点4-1と同様であり,甲2A発明はSiを含有しないから,その判断についても,上記(9-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明11は,甲2A発明でないし,甲2A発明と甲7に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲2B発明又は甲2C発明との対比・判断
本件発明11とSiを含有しない甲2C発明との対比・判断については,上記アと同様であり,Siを含有する甲2B発明については,上記(9-1)イと同様であるから,本件発明11は,甲2B発明又は甲2C発明でないし,甲2B発明又は甲2C発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものではない。

(10-3)甲3に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲3A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明11と甲3A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲3A発明における「Ca」,「Al」,「Si」及び「Mn」の含有量は,本件発明11におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲3A発明に係るマグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは,技術常識から明らかなことである。
してみると,本件発明11と甲3A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなる,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点5-3?1>
本件発明11は,「三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する」ものであるのに対し,甲3A発明は,そのような特定がない点。

<相違点5-3-2>
本件発明11は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する」ものであるのに対し,甲3A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点5-3-2について検討すると,相違点5-3-2は,相違点4-1と同様であり,甲3A発明はSiを含有するから,その判断についても,上記(9-1)イと同様である。
したがって,本件発明11は,甲3A発明でないし,甲3A発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲3B発明との対比・判断
本件発明11とSiを含有する甲3B発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明11は,甲3B発明でないし,甲3B発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(10-4)甲4に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲4A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明11と甲4A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲4A発明における「Ca」,「Al」,「Si」及び「Mn」の含有量は,本件発明11におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲4A発明に係るマグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは,技術常識から明らかなことである。
してみると,本件発明11と甲4A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなる,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点5-4-1>
本件発明11は,「三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する」ものであるのに対し,甲4A発明は,そのような特定がない点。

<相違点5-4?2>
本件発明11は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する」ものであるのに対し,甲4A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点5-4-2について検討すると,相違点5-4-2は,相違点4-1と同様であり,甲4A発明はSiを含有するから,その判断についても,上記(9-1)イと同様である。
したがって,本件発明11は,甲4A発明でないし,甲4A発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲4B発明との対比・判断
本件発明11とSiを含有する甲4B発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明11は,甲4B発明でないし,甲4B発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(10-5)甲5に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲5A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明11と甲5A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲5A発明における「Ca」,「Al」,「Si」及び「Mn」の含有量は,本件発明11におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲5A発明に係るマグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは,技術常識から明らかなことである。
してみると,本件発明11と甲5A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなる,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点5-5-1>
本件発明11は,「三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する」ものであるのに対し,甲5A発明は,そのような特定がない点。

<相違点5-5?2>
本件発明11は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する」ものであるのに対し,甲5A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点5-5-2について検討すると,相違点5-5-2は,相違点4-1と同様であり,甲5A発明はSiを含有するから,その判断についても,上記(9-1)イと同様である。
したがって,本件発明11は,甲5A発明でないし,甲5A発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲5B発明又は甲5C発明との対比・判断
本件発明11とSiを含有する甲5B発明又は甲5C発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明11は,甲5B発明又は甲5C発明でないし,甲5B発明又は甲5C発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(10-6)甲6に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲6A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明11と甲6A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲6A発明における「Ca」,「Al」,「Si」及び「Mn」の含有量は,本件発明11におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲6A発明における「その他(不純物)」は,本件発明13における「不可避的不純物」に相当する。
してみると,本件発明11と甲6A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなる,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点5-6-1>
本件発明11は,「三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する」ものであるのに対し,甲6A発明は,そのような特定がない点。

<相違点5-6?2>
本件発明11は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する」ものであるのに対し,甲6A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点5-6-2について検討すると,相違点5-6-2は,相違点4-1と同様であり,甲6A発明はSiを含有するから,その判断についても,上記(9-1)イと同様である。
したがって,本件発明11は,甲6A発明でないし,甲6A発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲6B発明?甲6F発明との対比・判断
本件発明11とSiを含有する甲6B発明,甲6C発明,甲6D発明,甲6E発明又は甲6F発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明11は,甲6B発明,甲6C発明,甲6D発明,甲6E発明又は甲6F発明でないし,甲6B発明,甲6C発明,甲6D発明,甲6E発明又は甲6F発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(10-7)参1に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 参1A発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明11と参1A発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,参1A発明における「Al」,「Ca」及び「Mn」の含有量は,本件発明11におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,参1A発明においてSiは含有されていないものであるが,本件発明11のSiの含有量は「1.3%以下」であって,Siを含有しない場合も含むことから,Siの含有量についても,本件発明11における含有量の範囲を充足するものである。
さらに,参1A発明は,「残部がMg及び不可避的不純物」からなるものとされてはいないが,マグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは技術常識から明らかなことであるから,参1A発明のマグネシウム合金においても,「残部がMg及び不可避的不純物」からなるものといえる。
してみると,本件発明11と参1A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを3.0%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなる,耐熱性マグネシウム合金。」である点。

<相違点5-7-1>
本件発明11は,「三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する」ものであるのに対し,参1A発明は,そのような特定がない点。

<相違点5-7?2>
本件発明11は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する」ものであるのに対し,参1A発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点5-7-2について検討すると,相違点5-7-2は,相違点4-1と同様であり,参1A発明はSiを含有しないから,その判断についても,上記(9-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明11は,参1A発明でないし,参1A発明と甲7に記載された事項又は参2及び参3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 参1B発明又は参1C発明との対比・判断
本件発明11とSiを含有しない参1B発明又は参1C発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明11は,参1B発明又は参1C発明でないし,参1B発明又は参1C発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

(10-8)本件発明11についての小括
したがって,本件発明11は,甲1?6,参1に記載された発明でないし,甲1?6,参1に記載された発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(11)本件発明12について
(11-1)甲1に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲1C発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明12と甲1C発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲1C発明における「Ca」,「Al」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明12におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲1C発明においてSiは含有されていないものであるが,本件発明12のSiの含有量は「1.3%以下」であって,Siを含有しない場合も含むことから,Siの含有量についても,本件発明12における含有量の範囲を充足するものである。
さらに,甲1C発明における「Fe」,「Ni」及び「Cu」は,それらの含有量が他の成分と比べて著しく少ないことから,本件発明12における「不可避的不純物」に相当するものと認められる。
そして,甲1C発明における「(Mg,Al)_(2)Ca相」は,結晶粒界に形成されるものであるところ,結晶粒界は,合金中に三次元網目状に連続して存在するものであることが技術常識であるといえるから,甲1A発明における「(Mg,Al)_(2)Ca相」も,本件発明12における「(Mg,Al)_(2)Ca相」と同様に,三次元網目状に連続したものであると認められる。
また,合金の製造において,溶融された金属材料を冷却することは,通常行われることであって,その際にMg母相が晶出することは当然のことである。
してみると,本件発明12と甲1C発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり, Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,
溶融された金属材料を冷却して,Mg母相と,三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を晶出させる工程を備える製造方法。」である点。

<相違点6-1>
本件発明12は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相」を「晶出させる工程を備える」ものであるのに対し,甲1C発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点6-1は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相」を有する点で相違点4-1と共通し,甲1C発明はSiを含有しないから,その判断についても,上記(9-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明11は,甲1C発明と甲7に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 甲1D発明との対比・判断
甲1D発明はSiを含有するものであるところ,その判断については上記(9-1)イと同様であるから,本件発明11は,甲1D発明と甲7に記載された事項又は参2及び参3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

(11-2)甲2に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲2D発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明12と甲2D発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲2A発明における「Ca」,「Al」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明12におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲2D発明においてSiは含有されていないものであるが,本件発明12のSiの含有量は「3.0%以下」であって,Siを含有しない場合も含むことから,Siの含有量についても,本件発明12における含有量の範囲を充足するものである。
さらに,甲2D発明における「Fe」,「Ni」及び「Cu」は,非常に少量であることから,本件発明11における「不可避的不純物」に相当するものと認められる。
そして,甲2D発明における「(Mg,Al)_(2)Ca」は,結晶粒界に相として存在するものであるところ,結晶粒界は,合金中に三次元網目状に連続して存在するものであることが技術常識であるといえるから,甲2A発明における「(Mg,Al)_(2)Ca」の相も,本件発明12における「(Mg,Al)_(2)Ca相」と同様に,三次元網目状に連続したものであると認められる。
また,合金の製造において,溶融された金属材料を冷却することは,通常行われることであって,その際にMg母相が晶出することは当然のことである。
してみると,本件発明12と甲2D発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり, Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,
溶融された金属材料を冷却して,Mg母相と,三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を晶出させる工程を備える製造方法。」である点。

<相違点6-2>
本件発明12は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相」を「晶出させる工程を備える」ものであるのに対し,甲2D発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点6-2は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相」を有する点で相違点4-1と共通し,甲2D発明はSiを含有しないから,その判断についても,上記(9-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明12は,甲2D発明と甲7に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

イ 甲2E発明又は甲2F発明との対比・判断
本件発明11とSiを含有しない甲2F発明との対比・判断については,上記アと同様であり,Siを含有する甲2E発明については,上記(9-1)イと同様であるから,本件発明12は,甲2E発明又は甲2F発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

(11-3)甲3に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲3C発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明12と甲3C発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲3C発明における「Ca」,「Al」,「Si」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明12におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲3C発明に係るマグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは,技術常識から明らかなことである。
さらに,合金の製造において,溶融された金属材料を冷却することは,通常行われることであって,その際にMg母相が晶出することは当然のことである。
してみると,本件発明12と甲3C発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり, Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,溶融された金属材料を冷却して,Mg母相を晶出させる工程を備える製造方法。」である点。

<相違点6-3?1>
本件発明12は,「三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相」を「晶出させる工程を備える」ものであるのに対し,甲3C発明は,そのような特定がない点。

<相違点6-3-2>
本件発明12は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相」を「晶出させる工程を備える」ものであるのに対し,甲3C発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点6-3-2について検討すると,相違点6-3-2は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相」を有する点で相違点4-1と共通し,甲3C発明はSiを含有するから,その判断についても,上記(9-1)イと同様である。
したがって,本件発明12は,甲3C発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

イ 甲3D発明との対比・判断
本件発明12とSiを含有する甲3D発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明12は,甲3D発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

(11-4)甲4に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲4C発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明12と甲4C発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲4C発明における「Ca」,「Al」,「Si」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明12におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲4A発明に係るマグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは,技術常識から明らかなことである。
さらに,合金の製造において,溶融された金属材料を冷却することは,通常行われることであって,その際にMg母相が晶出することは当然のことである。
してみると,本件発明12と甲4C発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり, Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,溶融された金属材料を冷却して,Mg母相を晶出させる工程を備える製造方法。」である点。

<相違点6-4?1>
本件発明12は,「三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相」を「晶出させる工程を備える」ものであるのに対し,甲4C発明は,そのような特定がない点。

<相違点6-4-2>
本件発明12は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相」を「晶出させる工程を備える」ものであるのに対し,甲4C発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点6-4-2について検討すると,相違点6-4-2は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相」を有する点で相違点4-1と共通し,甲4C発明はSiを含有するから,その判断についても,上記(9-1)イと同様である。
したがって,本件発明12は,甲4C発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

イ 甲4D発明との対比・判断
本件発明12とSiを含有する甲4D発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明12は,甲4D発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

(11-5)甲5に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲5D発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明12と甲5D発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲5D発明における「Ca」,「Al」,「Si」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明12におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲4A発明に係るマグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは,技術常識から明らかなことである。
さらに,合金の製造において,溶融された金属材料を冷却することは,通常行われることであって,その際にMg母相が晶出することは当然のことである。
してみると,本件発明12と甲5D発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり, Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,溶融された金属材料を冷却して,Mg母相を晶出させる工程を備える製造方法。」である点。

<相違点6-5?1>
本件発明12は,「三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相」を「晶出させる工程を備える」ものであるのに対し,甲5D発明は,そのような特定がない点。

<相違点6-5-2>
本件発明12は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相」を「晶出させる工程を備える」ものであるのに対し,甲5D発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点6-5-2について検討すると,相違点6-5-2は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相」を有する点で相違点4-1と共通し,甲5D発明はSiを含有するから,その判断についても,上記(9-1)イと同様である。
したがって,本件発明12は,甲5D発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

イ 甲5E発明又は甲5F発明との対比・判断
本件発明12とSiを含有する甲5E発明又は甲5F発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明12は,甲5E発明又は甲5F発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

(11-6)甲6に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 甲6G発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明12と甲6G発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,甲6A発明における「Ca」,「Al」,「Si」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明12におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,甲6G発明における「その他(不純物)」は,本件発明12における「不可避的不純物」に相当する。
さらに,合金の製造において,溶融された金属材料を冷却することは,通常行われることであって,その際にMg母相が晶出することは当然のことである。

してみると,本件発明12と甲6G発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり, Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,溶融された金属材料を冷却して,Mg母相を晶出させる工程を備える製造方法。」である点。

<相違点6-6?1>
本件発明12は,「三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相」を「晶出させる工程を備える」ものであるのに対し,甲6G発明は,そのような特定がない点。

<相違点6-6-2>
本件発明12は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相」を「晶出させる工程を備える」ものであるのに対し,甲6G発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点6-6-2について検討すると,相違点6-6-2は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相」を有する点で相違点4-1と共通し,甲6G発明はSiを含有するから,その判断についても,上記(9-1)イと同様である。
したがって,本件発明12は,甲6G発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

イ 甲6H発明?甲6L発明との対比・判断
本件発明12とSiを含有する甲6H発明,甲6I発明,甲6J発明,甲6K発明又は甲6L発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明12は,甲6H発明,甲6I発明,甲6J発明,甲6K発明又は甲6L発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

(11-7)参1に記載された発明を主引用例とするものについて
ア 参1D発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明12と参1D発明とを対比すると,成分組成における重量%の値は,質量%の値と結果的に同等であるから,参1A発明における「Ca」,「Al」,「Si」,「Mn」及び「Al+8Ca」の含有量は,本件発明12におけるそれぞれの含有量の範囲を充足するものである。
また,参1D発明においてSiは含有されていないものであるが,本件発明12のSiの含有量は「1.3%以下」であって,Siを含有しない場合も含むことから,Siの含有量についても,本件発明12における含有量の範囲を充足するものである。
さらに,参1D発明は,「残部がMg及び不可避的不純物」からなるものとされてはいないが,マグネシウム合金が不可避的不純物を含有することは技術常識から明らかなことであるから,参1D発明のマグネシウム合金においても,「残部がMg及び不可避的不純物」からなるものといえる。
さらに,合金の製造において,溶融された金属材料を冷却することは,通常行われることであって,その際にMg母相が晶出することは当然のことである。
してみると,本件発明12と参1D発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「質量%で,Caを9.0%未満,Alを0.5%以上5.7%未満,Siを1.3%以下,Mnを0.5%以下含有し,残部がMg及び不可避的不純物からなり, Al+8Ca≧20.5%である,耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって,溶融された金属材料を冷却して,Mg母相を晶出させる工程を備える製造方法。」である点。

<相違点6-7?1>
本件発明12は,「三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相」を「晶出させる工程を備える」ものであるのに対し,参1D発明は,そのような特定がない点。

<相違点6-7-2>
本件発明12は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相」を「晶出させる工程を備える」ものであるのに対し,参1D発明は,そのような特定がない点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み,相違点6-7-2について検討すると,相違点6-7-2は,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相」を有する点で相違点4-1と共通し,参1D発明はSiを含有しないから,その判断についても,上記(9-1)ア(イ)と同様である。
したがって,本件発明12は,参1D発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

イ 参1E発明又は参1F発明との対比・判断
本件発明11とSiを含有しない参1E発明又は参1F発明との対比・判断については,上記アと同様であるから,本件発明11は,参1E発明又は参1F発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得るものでない。

(10-8)本件発明12についての小括
したがって,本件発明12は,甲1?6,参1に記載された発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(11)本件発明13について
本件発明13は,本件発明11に係る耐熱性マグネシウム合金の製造方法であるといえる。
ここで,本件発明11に係る耐熱性マグネシウム合金は,上記(9)のとおり,甲1?6,参1に記載された耐熱性マグネシウム合金の発明に基いて,当業者が容易に発明することができたものでない。
してみると,甲1?6,参1に記載された耐熱性マグネシウム合金の発明におけるそれぞれの製造方法である,甲1C・D発明,甲2D?F発明,甲3C・D発明,甲4C・D発明,甲5D?F発明,甲6G?L発明及び参1D?F発明から,本件発明13を容易に想到し得るということもできない。
よって,本件発明13は,甲1?6,参1に記載された発明と甲7に記載された事項又は参2,3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでない。

3 サポート要件について
令和2年8月5日付け取消理由通知における当審が発見したサポート要件違反は,概略以下のとおりである。

本件発明が解決しようとする課題は「200℃程度の高温域において良好な機械的特性を備えたMg-Al-Ca-Si系の耐熱性マグネシウム合金を提供すること」にあるものと理解できるが,本件訂正前の請求項9に係る発明において,「Ca-Mg-Si系化合物相」は,単に「晶出させる」とされており,Mg母相中に形成することは特定されていないから,本件訂正前の請求項9に係る発明は,上記課題を解決することができない態様を含んでおり,発明の詳細な説明の記載により当業者が本件課題を解決できると認識し得る範囲を超えるものである。

これに対して,本件訂正により,請求項9並びに訂正前の請求項9において引用していた請求項1及び請求項3を独立系式に改めた新たな請求項12及び13において,「Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相」「を晶出」とされたことから,上記サポート要件違反は解消した。

4 記載不備に係る申立人の主張について
申立人は,令和3年6月16日付け意見書において,本件特許の記載不備について,概略以下のとおり主張している。

(1)本件発明10?13において,Alの上限は「5.7%未満」であるが,Alが5質量%を超える実施例は開示されておらず,Alが5質量%を超え5.7%未満の範囲は明細書に記載されていないこと,Alの下限は「0.5%以上」であるが,Alが1質量%を下回る実施例は開示されておらず,Alが0.5質量%以上1%未満の範囲は明細書に記載されていないことから,サポート要件を満たさない。

(2)本件発明10?13における「Ca-Mg-Si系化合物相」について,含有量の下限値および上限値が設定されておらず,また,Siの含有量の下限値も設定されていないことから,明確性要件を満たさない。

(3)本件発明10?13における「Mg母相中」についての定義が十分にされていないため,明確性要件を満たさない。

しかしながら,上記(1)?(3)は,いずれも本件訂正前の特許請求の範囲において記載されていた事項であって,本件訂正により追加された事項についての見解など本件訂正の内容に付随して生じる理由ではないし,適切な取消理由を構成することが一見して明らかなものでもないから,申立人の上記主張は採用しない。


第6 むすび
以上のとおり,取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1,3?13に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許の請求項1,3?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、Caを9.0%未満、Alを0.5%以上5.7%未満、Siを1.3%以下、Mnを0.5%以下含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなり、
Al+8Ca≧20.5%であり、
Mg母相のMg純度が質量%で98.0%以上である、耐熱性マグネシウム合金。
【請求項2】
質量%で、Caを9.0%未満、Alを0.5%以上5.7%未満、Siを1.0%より大きく3.0%以下、Mnを0.5%以下含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなり、
Al+8Ca≧20.5%であり、
CaとSiとの組成比Ca/Siが1.5未満である、耐熱性マグネシウム合金。
【請求項3】
質量%で、Caを9.0%未満、Alを0.5%以上5.7%未満、Siを3.0%以下、Mnを0.5%以下含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなり、
三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する、
Mg母相のMg純度が質量%で98.0%以上である、耐熱性マグネシウム合金。
【請求項4】
質量%で、Caを9.0%未満、Alを0.5%以上5.7%未満、Siを3.0%以下、Mnを0.5%以下含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなり、熱伝導度が70W/m・K以上であり、かつ、200℃における引張強さが170MPa以上である、耐熱性マグネシウム合金。
【請求項5】
Al/Caが1.70以下である、請求項1?4のいずれか一項記載の耐熱性マグネシウム合金。
【請求項6】
Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する、請求項2、4、5のいずれか一項記載の耐熱性マグネシウム合金。
【請求項7】
Mg母相のMg純度が質量%で98.0%以上である、請求項2、4?6のいずれか一項記載の耐熱性マグネシウム合金。
【請求項8】
請求項1?7のいずれか一項記載の耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって、
溶融された金属材料を10^(3)K/秒未満の速度で冷却する工程を備える製造方法。
【請求項9】
請求項2、4?7のいずれか一項記載の耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって、
溶融された金属材料を冷却して、Mg母相と、三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相と、前記Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相とを晶出させる工程を備える製造方法。
【請求項10】
質量%で、Caを9.0%未満、Alを0.5%以上5.7%未満、Siを1.3%以下、Mnを0.5%以下含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなり、
Al+8Ca≧20.5%であり、
Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する、耐熱性マグネシウム合金。
【請求項11】
質量%で、Caを9.0%未満、Alを0.5%以上5.7%未満、Siを3.0%以下、Mnを0.5%以下含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなり、
三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する、
Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相を有する、耐熱性マグネシウム合金。
【請求項12】
質量%で、Caを9.0%未満、Alを0.5%以上5.7%未満、Siを1.3%以下、Mnを0.5%以下含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなり、Al+8Ca≧20.5%である、耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって、
溶融された金属材料を冷却して、Mg母相と、三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相と、前記Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相とを晶出させる工程を備える製造方法。
【請求項13】
質量%で、Caを9.0%未満、Alを0.5%以上5.7%未満、Siを3.0%以下、Mnを0.5%以下含有し、残部がMg及び不可避的不純物からなり、三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相を有する、耐熱性マグネシウム合金の製造方法であって、
溶融された金属材料を冷却して、Mg母相と、三次元網目状に連続した(Mg,Al)_(2)Ca相と、前記Mg母相中にCa-Mg-Si系化合物相とを晶出させる工程を備える製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-09-27 
出願番号 特願2015-107787(P2015-107787)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (C22C)
P 1 652・ 537- YAA (C22C)
P 1 652・ 113- YAA (C22C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 河野 一夫  
特許庁審判長 平塚 政宏
特許庁審判官 亀ヶ谷 明久
増山 慎也
登録日 2019-10-04 
登録番号 特許第6596236号(P6596236)
権利者 本田技研工業株式会社
発明の名称 耐熱性マグネシウム合金及びその製造方法  
代理人 正林 真之  
代理人 正林 真之  
代理人 林 一好  
代理人 林 一好  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ