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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
管理番号 1379824
異議申立番号 異議2020-700968  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-12-09 
確定日 2021-10-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6708316号発明「アクリルゴムの製造方法、および、その製造方法により得られるアクリルゴム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6708316号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-26〕について訂正することを認める。 特許第6708316号の請求項4-6、8に係る特許に対する申立てを却下する。 特許第6708316号の請求項1?3、7、9?26に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6708316号(請求項の数26。以下、「本件特許」という。)は、平成31年4月26日(優先権主張:平成30年4月27日、日本国)を国際出願日とする特許出願(特願2019-562016号)に係るものであって、令和2年5月25日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和2年6月10日である。)。

その後、令和2年12月9日に、本件特許の請求項1?26に係る特許に対して、特許異議申立人である目黒茂(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。

(1)特許異議の申立て以降の経緯
令和2年12月 9日 特許異議申立書
令和3年 3月25日付け 取消理由通知書
同年 5月13日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 5月27日 通知書(申立人あて)

なお、申立人に対して訂正請求があった旨の通知をしたが、申立人からの応答はなかった。

(2)証拠方法
申立人が、特許異議申立書に添付して提出した証拠方法は、以下のとおりである。

・甲第1号証:特開平6-239940号公報
・甲第2号証:特開平8-245853号公報
・甲第3号証:特開2017-114958号公報
・甲第4号証:特開平11-35776号公報
・甲第5号証:特開昭49-75685号公報
・甲第6号証:特公平7-2882号公報
・甲第7号証:国産化学株式会社、安全データシート「硫酸ナトリウム(無水)」、2016年6月15日発行
・甲第8号証:杉山学、「特論講座 ゴムの工業的合成法 第6回 アクリルゴム」、日本ゴム協会誌、第89巻、第1号、第22?27頁、2016年
・甲第9号証:特開2011-88956号公報
・甲第10号証:特開2004-59821号公報
・甲第11号証:特開2004-131545号公報
・甲第12号証:特開2006-249237号公報
・甲第13号証:特開平3-109456号公報


第2 訂正の適否についての判断
令和3年5月13日にした訂正請求は、以下の訂正事項を含むものである。(以下、訂正事項をまとめて「本件訂正」という。また、設定登録時の本件願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件特許明細書等」という。)

1 訂正の内容
(1)各訂正事項について
ア 訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「(メタ)アクリル酸エステルと、カルボキシル基含有単量体、エポキシ基含有単量体及びハロゲン基含有単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性単量体とを含む単量体を」とあるのを、「(メタ)アクリル酸エステルと、架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体とを含む単量体であって、前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルであり、前記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル及び/または(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルである単量体を、」に訂正する。

イ 訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「重合開始剤を用いて」とあるのを、「、還元状態にある金属イオン含有化合物と、当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩との少なくとも2種の還元剤と重合開始剤を用いて」に訂正する。

ウ 訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項4を削除する。

エ 訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項5を削除する。

オ 訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項6を削除する。

カ 訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項8を削除する。

キ 訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項11に「金前記属硫酸塩」とあるのを、「前記金属硫酸塩」に訂正する。

ク 訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項22に「肪族3級アミン系架橋促進剤」とあるのを、「脂肪族3級アミン系架橋促進剤」に訂正する。

ケ 訂正事項9
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に「請求項6記載の」とあるのを、「請求項1?3のいずれかに記載の」に訂正する。

コ 訂正事項10
訂正前の特許請求の範囲の請求項9に「請求項6または7記載の」とあるのを、「請求項1?3、7のいずれかに記載の」に訂正する。

サ 訂正事項11
訂正前の特許請求の範囲の請求項10に「請求項1?9のいずれかに記載の」とあるのを、「請求項1?3、7、9のいずれかに記載の」に訂正する。

シ 訂正事項12
訂正前の特許請求の範囲の請求項11に「請求項1?10のいずれかに記載の」とあるのを、「請求項1?3、7、9、10のいずれかに記載の」に訂正する。

ス 訂正事項13
訂正前の特許請求の範囲の請求項12に「請求項1?11のいずれかに記載の」とあるのを、「請求項1?3、7、9?11のいずれかに記載の」に訂正する。

セ 訂正事項14
訂正前の特許請求の範囲の請求項13に「請求項1?12のいずれかに記載の」とあるのを、「請求項1?3、7、9?12のいずれかに記載の」に訂正する。

ソ 訂正事項15
訂正前の特許請求の範囲の請求項14に「請求項1?13のいずれかに記載の」とあるのを、「請求項1?3、7、9?13のいずれかに記載の」に訂正する。

タ 訂正事項16
訂正前の特許請求の範囲の請求項15に「請求項1?14のいずれかに記載の」とあるのを、「請求項1?3、7、9?14のいずれかに記載の」に訂正する。

チ 訂正事項17
訂正前の特許請求の範囲の請求項16に「請求項1?15のいずれかに記載の」とあるのを、「請求項1?3、7、9?15のいずれかに記載の」に訂正する。

ツ 訂正事項18
訂正前の本件特許明細書等の段落【0008】に「かくして本発明によれば、(メタ)アクリル酸エステルと、カルボキシル基含有単量体、エポキシ基含有単量体及びハロゲン基含有単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性単量体とを含む単量体をノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との存在下に重合開始剤を用いて乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、前記乳化重合液を金属硫酸塩と接触させて凝固し含水クラムを得る凝固工程と、前記含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と、洗浄した前記含水クラムを乾燥する乾燥工程と、を備えるアクリルゴムの製造方法が提供される。」とあるのを、
「かくして本発明によれば、(メタ)アクリル酸エステルと、架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体とを含む単量体であって、前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルであり、前記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル及び/または(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルである単量体を、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との存在下に、還元状態にある金属イオン含有化合物と、当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩との少なくとも2種の還元剤と重合開始剤を用いて乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、前記乳化重合液を金属硫酸塩と接触させて凝固し含水クラムを得る凝固工程と、前記含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と、洗浄した前記含水クラムを乾燥する乾燥工程と、を備えるアクリルゴムの製造方法が提供される。」に訂正する。

テ 訂正事項19
訂正前の本件特許明細書等の段落【0009】に「本発明のアクリルゴムの製造方法においては、前記重合開始剤が、還元剤と組み合わせられるものであることが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、前記還元剤として、少なくとも2種の化合物を用いることが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、前記還元剤として、還元状態にある金属イオン含有化合物と、前記還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤とを組み合わせて用いることが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、前記還元状態にある金属イオン含有化合物が、硫酸第一鉄であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、前記還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤が、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、前記還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤が、アスコルビン酸塩であることが好ましい。」とあるのを、
「本発明のアクリルゴムの製造方法においては、前記還元状態にある金属イオン含有化合物が、硫酸第一鉄であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、前記還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤が、アスコルビン酸塩であることが好ましい。」に訂正する。

ト 訂正事項20
訂正前の本件特許明細書等の段落【0010】に「金前記属硫酸塩」とあるのを、「前記金属硫酸塩」に訂正する。

ナ 訂正事項21
訂正前の本件特許明細書等の段落【0012】に「肪族3級アミン系架橋促進剤」とあるのを、「脂肪族3級アミン系架橋促進剤」に訂正する。

ニ 訂正事項22
訂正前の請求項17に「請求項16記載」、請求項18に「請求項16または17記載」、請求項20に「請求項19記載」、請求項21に「請求項20記載」、請求項22に「請求項21記載」、請求項23に「請求項21または22記載」とあるのを、それぞれ「請求項16に記載」、「請求項16または17に記載」、「請求項19に記載」、「請求項20に記載」、「請求項21に記載」、「請求項21または22に記載」と訂正する。

(2)明細書の訂正と関係する請求項について
訂正事項18?21は、願書に添付した明細書の訂正であるが、これらと関係する請求項は、訂正事項1?2による訂正前の請求項1、訂正事項3?6による訂正前の請求項4?6、8、訂正事項7?8による請求項11及び22であると解される。

(3)一群の請求項
本件訂正前の請求項2?26はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、訂正事項1、2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1?26は一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。

2 判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1による訂正は、訂正前の「架橋性単量体」について、「カルボキシル基含有単量体、エポキシ基含有単量体及びハロゲン基含有単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性単量体」とされていたのを「架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体」と特定・減縮するとともに、「(メタ)アクリル酸エステル」について「前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルであり、前記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル及び/または(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルである」と特定・減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項1による訂正のうち、「架橋性単量体」について「カルボキシル基含有単量体、エポキシ基含有単量体及びハロゲン基含有単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性単量体」とされていたのを「架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体」と特定・減縮する訂正は、「カルボキシル基含有単量体、エポキシ基含有単量体」の選択肢を削除するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であることが明らかである。
また、訂正事項1による訂正のうち、「(メタ)アクリル酸エステル」について「前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルであり、前記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル及び/または(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルである」と特定・減縮する訂正は、本件明細書等の段落【0015】の「主成分である(メタ)アクリル酸エステルとしては、格別な限定はないが、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルなどを挙げることができる」との記載、段落【0017】の「(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、・・・具体的には、・・・、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、・・・などが好ましく、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸2-メトキシエチルがより好ましく、アクリル酸2-メトキシエチルがさらに好ましい」との記載からみて、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であることが明らかである。
さらに、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことも明らかである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2による訂正は、「重合開始剤を用いて」とあるのを、「還元状態にある金属イオン含有化合物と、当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩との少なくとも2種の還元剤と重合開始剤を用いて」と、「乳化重合工程」の条件を特定・減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項2による訂正の「還元状態にある金属イオン含有化合物と、当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩との少なくとも2種の還元剤と重合開始剤を用いて」と「乳化重合工程」の条件を特定・減縮する訂正は、訂正前の請求項4?6、8の記載や本件明細書等の段落【0037】?【0038】の「重合開始剤として有機過酸化物及び/または無機過酸化物を用いるときは、還元剤と組み合わせてレドックス系重合開始剤として使用することが好ましい。・・・これらの還元剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができるが、2種以上を組合せて用いることが好ましく、より好ましくは第一還元剤としての還元状態にある金属イオン含有化合物と第二還元剤として還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤とを組わせること、さらに好ましくは硫酸第一鉄とアスコルビン酸(塩)及び/またはナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートとを組み合わせること・・・本願の目的をより高度に達成することができ好適である」との記載からみて、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であることが明らかである。
さらに、訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことも明らかである。

(3)訂正事項3?6について
ア 訂正の目的
訂正事項3?6による訂正は、それぞれ訂正前の請求項4?6、8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項3?6は、それぞれ訂正前の請求項4?6、8を削除するものであるから、新規事項の追加、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。

(4)訂正事項7について
ア 訂正の目的
訂正事項7による訂正は、訂正前の特許請求の範囲の請求項11の明らかな誤記である「金前記属硫酸塩」を、「前記金属硫酸塩」に訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項7による訂正は、明らかな誤記の訂正を目的とするものであるから、新規事項の追加、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。

(5)訂正事項8について
ア 訂正の目的
訂正事項8による訂正は、訂正前の特許請求の範囲の請求項22の明らかな誤記である「肪族3級アミン系架橋促進剤」とあるのを、「脂肪族3級アミン系架橋促進剤」に訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項8による訂正は、明らかな誤記の訂正を目的とするものであるから、新規事項の追加、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。

(6)訂正事項9?17について
ア 訂正の目的
訂正事項9?17は、上記の訂正事項3?6による訂正前の請求項4?6、8の削除に合わせて、引用請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項9?17は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(7)訂正事項18について
ア 訂正の目的
訂正事項18によるは、訂正事項1?2による訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項18による訂正は、訂正事項1?2による訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、上記(1)?(2)で検討したとおり、訂正事項1?2による訂正は本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことが明らかであるから、訂正事項18による訂正も、同様に本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことが明らかである。

(8)訂正事項19について
ア 訂正の目的
訂正事項19による訂正は、訂正事項3?6による請求項4?6、8を削除する訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項19による訂正は、訂正事項3?6による訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、上記(3)で検討したとおり、訂正事項3?6による訂正は本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことが明らかであるから、訂正事項19による訂正も、同様に本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことが明らかである。

(9)訂正事項20?21について
ア 訂正の目的
訂正事項20?21による訂正は、訂正事項7?8と同様に、明らかな誤記の訂正を目的とするものである。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項20?21による訂正は、訂正事項7?8と同様に、明らかな誤記の訂正を目的とするものであるから、新規事項の追加、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。

(10)訂正事項22について
ア 訂正の目的
訂正事項22は、訂正前の請求項17、18、20?23について、「請求項・・・記載」と記載されていたのを、単に「請求項・・・に記載」と助詞を補うものであるから、誤記の訂正ないしは明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項22は、単に助詞を補うためのものであるから、新規事項の追加、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。

(11)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1?22による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号又は第3号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。


第3 特許請求の範囲の記載
上記「第2 訂正の適否についての判断」のとおり、本件訂正は適法であるので、特許第6708316号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1?26のとおりのものである(以下、請求項1?26に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」?「本件発明26」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件訂正後の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。

「【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステルと、架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体とを含む単量体であって、前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルであり、前記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル及び/または(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルである単量体を、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との存在下に、還元状態にある金属イオン含有化合物と、当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩との少なくとも2種の還元剤と重合開始剤を用いて乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、
前記乳化重合液を金属硫酸塩と接触させて凝固し含水クラムを得る凝固工程と、
前記含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と、
洗浄した前記含水クラムを乾燥する乾燥工程と、
を備えるアクリルゴムの製造方法。
【請求項2】
前記ノニオン性乳化剤と前記アニオン性乳化剤の使用割合が、ノニオン性乳化剤/アニオン性乳化剤の重量比で、1/99?99/1の範囲である請求項1に記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項3】
前記ノニオン性乳化剤と前記アニオン性乳化剤の使用割合が、ノニオン性乳化剤/アニオン性乳化剤の重量比で、50/50?75/25の範囲である請求項1?2のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】
前記還元状態にある金属イオン含有化合物が、硫酸第一鉄である請求項1?3のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項8】(削除)
【請求項9】
前記還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤が、アスコルビン酸塩である請求項1?3、7のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項10】
前記重合開始剤が、有機過酸化物または無機過酸化物である請求項1?3、7、9のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項11】
前記乳化重合液と前記金属硫酸塩との接触を、前記乳化重合液に前記金属硫酸塩を添加するか、前記乳化重合液を前記金属硫酸塩の溶液または分散液に投入するかのいずれかの方法で行う請求項1?3、7、9、10のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項12】
前記乳化重合液と前記金属硫酸塩との接触温度が、60℃以上である請求項1?3、7、9?11のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項13】
前記金属硫酸塩が、1価または2価の金属硫酸塩である請求項1?3、7、9?12のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項14】
前記アニオン性乳化剤が、リン酸エステル塩である請求項1?3、7、9?13のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項15】
前記洗浄が、酸洗浄を含むものである請求項1?3、7、9?14のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項16】
請求項1?3、7、9?15のいずれかに記載の製造方法で製造されるアクリルゴム。
【請求項17】
単量体組成が、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位50?99.9重量%、架橋性単量体単位0.01?20重量%及び共重合可能な他の単量体単位0?49.99重量%である請求項16記載のアクリルゴム。
【請求項18】
ムーニー粘度(ML_(1+4)、100℃)が、10?150の範囲である請求項16または17に記載のアクリルゴム。
【請求項19】
請求項16?18のいずれかに記載のアクリルゴムを含むゴム成分と架橋剤とを含んでなるゴム組成物。
【請求項20】
前記架橋剤が、多価アミン化合物、多価エポキシ化合物、多価カルボン酸、有機カルボン酸アンモニウム塩、有機カルボン酸金属塩、イソシアヌル酸化合物、トリアジン化合物、及び金属石鹸/硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項19に記載のゴム組成物。
【請求項21】
更に架橋促進剤を配合してなる請求項20に記載のゴム組成物。
【請求項22】
架橋促進剤が、グアニジン系架橋促進剤、ジアザビシクロアルケン系架橋促進剤、脂肪族2級アミン系架橋促進剤、脂肪族3級アミン系架橋促進剤及びジチオカルボミン酸塩系加硫促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項21に記載のゴム組成物。
【請求項23】
更にスコーチ抑制剤を配合してなる請求項21または22に記載のゴム組成物。
【請求項24】
更に老化防止剤を配合してなる請求項19?23のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項25】
更に充填剤を配合してなる請求項19?24のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項26】
請求項19?25のいずれかに記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。」


第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 取消理由通知の概要
当審が取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。

(1)取消理由A(明確性)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項11?26の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項11?26に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

ア 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項11の「金前記属硫酸塩」の記載は不明確である。また、請求項11を直接的又は間接的に引用する請求項12?26も同様である(以下「取消理由A-1」という。)。
イ 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項22の「肪族3級アミン系架橋促進剤」の記載について、どのようなものを意図しているのか不明確である。請求項22を直接的又は間接的に引用する請求項23?26も同様である(以下「取消理由A-2」という。)。

(2)取消理由B(新規性)
本件訂正前の請求項1?4、10?13、16?19、21、24?26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の請求項1?4、10?13、16?19、21、24?26に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものに対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

(3)取消理由C(進歩性)
本件訂正前の請求項1?26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明及び本件特許に係る出願の優先日当時に知られた技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の請求項1?26に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

2 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書に記載した申立理由の概要は、以下に示すとおりである。

(1)申立理由1(新規性)
ア 本件訂正前の請求項1、4、10、11、16?26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない(以下「申立理由1-1」という。)。
イ 本件訂正前の請求項1?4、10?13、16、17、24?26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない(以下「申立理由1-2」という。)。
よって、本件訂正前の請求項1?4、10?13、16?26に係る発明の特許は、同法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)申立理由2(進歩性)
ア 本件訂正前の請求項1?26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下「申立理由2-1」という。)。
イ 本件訂正前の請求項1?26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下「申立理由2-2」という。)。
ウ 本件訂正前の請求項1?26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第3号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下「申立理由2-3」という。)。
エ 本件訂正前の請求項1?26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第4号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下「申立理由2-4」という。)。
オ 本件訂正前の請求項1?26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第5号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下「申立理由2-5」という。)。
よって、本件訂正前の請求項1?26に係る発明の特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3)申立理由3(サポート要件)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?26の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項1?26に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

本件発明1の「カルボキシル基含有単量体、エポキシ基含有単量体及びハロゲン基含有単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性単量体」、「ノニオン性乳化剤」、および「アニオン性乳化剤」の種類及び使用量は、本件特許の課題を解決する上で大きく影響するものと考えられるところ、本件明細書の実施例1?6では、これらの種類及び使用量についてごく一部の例しか示されていない。従って、実施例等の記載に基づいて、「架橋性単量体」、「ノニオン性乳化剤」、および「アニオン性乳化剤」の種類及び使用量を特定していない請求項1に係る本件特許の範囲まで、拡張ないし一般化できるとはいえない。同様に、請求項1に直接的又は間接的に従属する請求項2?26に係る発明の範囲まで、拡張ないし一般化できるとはいえない。

(4)申立理由4(明確性)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項11?26の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項11?26に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

ア 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項11には、「金前記属硫酸塩」の記載があるが、該用語「金前記属硫酸塩」の意義が不明確である。また、請求項11に直接的又は間接的に従属する請求項12?26も同様である(以下「申立理由4-1」という。)。
イ 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項16は、物の特許についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合に該当し、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームに該当するが、本件明細書等からは「不可能・非実際的事情」を明瞭に認識することはできないから、不明確である。請求項16に直接的又は間接的に従属する請求項17?26も同様である(以下「申立理由4-2」という。)。
ウ 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項22の「肪族3級アミン系架橋促進剤」との記載があるが、該「肪族3級アミン系架橋促進剤」の意義が不明確である。請求項22に直接的又は間接的に従属する請求項23?26も同様である(以下「申立理由4-3」という。)。


第5 本件明細書及び各甲号証に記載された事項
1 本件明細書に記載された事項
本件明細書には、以下の事項が記載されている。

(本a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴムの製造方法、その製造方法により得られるアクリルゴム、それを含んでなるゴム組成物、及びそのゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物に関し、さらに詳しくは、貯蔵安定性に優れるアクリルゴムの製造方法、その製造方法により得られるアクリルゴム、それを含んだゴム組成物、及びそのゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物に関する。
・・・
【0003】
このようなアクリルゴムは、通常、アクリルゴムを構成する単量体混合物を乳化重合し、得られた乳化重合液に、凝固剤を添加することで凝固させ、凝固により得られた含水クラムを乾燥することで製造される(たとえば、特許文献1参照)。含水クラムの乾燥には、生産性の観点より、連続工程での乾燥が可能なベルトコンベヤー式のバンドドライヤーや押出機などの乾燥装置が用いられている。一方で、このように製造されるアクリルゴムは、長期間の貯蔵においてムーニースコーチや、やけ等の問題が発生することが課題になっていた。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、常態物性を良好に保ちながら、優れた貯蔵安定性を実現できるアクリルゴムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、アクリルゴムの製造方法において特定の2種の乳化剤を組み合わせて乳化重合を行い、得られる乳化重合液を金属硫酸塩を用いて凝固し得られる含水クラムを洗浄・乾燥することで、常態物性を良好に保ちながら、優れた貯蔵安定性を実現できるアクリルゴムを製造できることを見出した。
【0007】
本発明者等は、また、アクリルゴムが架橋性官能基を有すること、特定割合の2種乳化剤と重合開始剤としてレドックス系重合触媒を用いること、特に特定の2種類の還元剤を組み合わせること、凝固剤として、1価または2価の金属硫酸塩を用いること、そして、乳化重合液と金属硫酸塩との接触を加温して行い、酸洗浄を含む洗浄を行うことの少なくとも1つの態様を採用することで、本発明の目的が更に高度に達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
・・・
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、常態物性を良好に保ちながら、優れた貯蔵安定性を実現できるアクリルゴム、ならびに、それを含んだゴム組成物、及びそのゴム架橋物を提供することができる。」

(本b)「【0015】
<単量体>
本発明の乳化重合工程に使用される単量体は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とすることが特徴である。主成分である(メタ)アクリル酸エステルとしては、格別な限定はないが、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルなどを挙げることができる。
【0016】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数1?12のアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステルが用いられ、炭素数1?8のアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、炭素数2?6のアルカノールと(メタ)アクリル酸のエステルがより好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられ、これらの中でも、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルが好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルが特に好ましい。
【0017】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、炭素数2?12のアルコキシアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルなどが好ましく、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸2-メトキシエチルがより好ましく、アクリル酸2-メトキシエチルがさらに好ましい。
【0018】
これら(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合に用いる単量体中の(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、単量体中の主成分であることが好ましく、通常50?99.9重量%、好ましくは60?99.7重量%、より好ましくは70?99.5重量%である。(メタ)アクリル酸エステルの含有量が過度に少ないと、得られるゴム架橋物の耐候性、耐熱性、及び耐油性が低下するおそれがあり、一方、過度に多いと、得られるゴム架橋物の耐熱性が低下するおそれがある。また、(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル30?100重量%、及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル70?0重量%からなるものを用いることが好ましい。」

(本c)「【0019】
本発明の乳化重合工程において重合に用いる単量体としては、上記(メタ)アクリル酸エステル以外に、架橋性単量体、共重合可能な他の単量体を含有させることができる。
【0020】
架橋性単量体としては、格別な限定はなく、例えば、カルボキシル基含有単量体、エポキシ基含有単量体、ハロゲン原子含有単量体、ジエン単量体などが挙げられ、好ましくはカルボキシル基含有単量体、エポキシ基含有単量体、ハロゲン原子含有単量体であり、より好ましくはハロゲン原子含有単量体である。
・・・
【0025】
ハロゲン原子含有単量体としては、格別な限定はないが、例えば、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステル、ハロゲン含有不飽和エーテル、ハロゲン含有不飽和ケトン、ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物、ハロゲン含有不飽和アミド、ハロアセチル基含有不飽和単量体などが挙げられる。
【0026】
ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステルとしては、例えば、クロロ酢酸ビニル、2-クロロプロピオン酸ビニル、クロロ酢酸アリルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸1-クロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸1,2-ジクロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロプロピル、(メタ)アクリル酸3-クロロプロピル、(メタ)アクリル酸2,3-ジクロロプロピルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)プロピルなどが挙げられる。ハロゲン含有不飽和エーテルとしては、例えば、クロロメチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、3-クロロプロピルビニルエーテル、2-クロロエチルアリルエーテル、3-クロロプロピルアリルエーテルなどが挙げられる。ハロゲン含有不飽和ケトンとしては、例えば、2-クロロエチルビニルケトン、3-クロロプロピルビニルケトン、2-クロロエチルアリルケトンなどが挙げられる。ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物としては、例えば、p-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、o-クロロメチルスチレン、p-クロロメチル-α-メチルスチレンなどが挙げられる。ハロゲン含有不飽和アミドとしては、例えば、N-クロロメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。ハロアセチル基含有不飽和単量体としては、例えば、3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルアリルエーテル、p-ビニルベンジルクロロ酢酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステルが好ましく、クロロ酢酸ビニル(モノクロロ酢酸ビニル)がより好ましい。
【0027】
これらの架橋性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。単量体中の架橋性単量体の含有量は、通常0.01?20重量%、好ましくは0.1?10重量%、より好ましくは0.5?5重量%である。架橋性単量体の含有量を上記範囲とすることにより、得られるアクリルゴムを架橋物としたときの機械的特性、及び耐圧縮永久歪み性を高度にバランスさせることができ好適である。」

(本d)「【0030】
<乳化重合工程>
本発明の乳化重合工程は、上記(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体をノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との存在下に重合開始剤を用いて乳化重合し乳化重合液を得ることを特徴とする。
【0031】
ノニオン性乳化剤としては、特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンステアリン酸エステルなどのポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル;ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体;などを挙げることができる。これらの中でも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体などが好ましく、特にポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体が好ましい。ノニオン性乳化剤の重量平均分子量は、格別な限定はないが、通常300?50,000、好ましくは500?30,000、より好ましくは1,000?15,000の範囲である。これらのノニオン性乳化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
アニオン性乳化剤としては、格別な限定はなく、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸などの脂肪酸の塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウムなどの高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステルナトリウムなどのリン酸エステル塩、好ましくは疎水基の炭素数が6以上のアルコールのリン酸エステルナトリウムなどの高級アルコール燐酸エステル塩;アルキルスルホコハク酸塩などを挙げることができる。これらのアニオン性乳化剤の中でも、リン酸エステル塩、高級アルコール硫酸エステル塩が好ましく、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコール硫酸エステル塩がより好ましく、高級アルコール燐酸エステル塩がさらに好ましい。これらのアニオン性乳化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との使用割合は、ノニオン性乳化剤/アニオン性乳化剤の重量比で、通常1/99?99/1、好ましくは10/90?80/20、より好ましくは25/75?75/25、さらに好ましくは50/50?75/25、最も好ましくは65/35?75/25の範囲である。ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との割合をこの範囲にすることで、乳化重合時における重合装置(たとえば、重合槽)へのポリマーなどの付着による汚れの発生を抑制しつつ、凝固剤としての金属硫酸塩の使用量を低減することが可能となり、結果として、最終的に得られるアクリルゴム中における凝固剤量を低減することができ、これにより得られるゴム架橋物の耐水性を向上させることができる。また、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との割合をこの範囲にすることで、乳化作用を高めることができるため、乳化剤自体の使用量をも低減することができ、結果として、最終的に得られるアクリルゴム中に含まれる乳化剤の残留量を低減することができ、これにより、得られるアクリルゴムの耐水性をより高めることができ好適である。
【0034】
乳化剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対する、用いる乳化剤の総量で、通常0.01?10重量部、好ましくは0.1?5重量部、より好ましくは1?3重量部の範囲である。」

(本e)「【0036】
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物;などを用いることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。重合開始剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.001?1.0重量部である。
【0037】
重合開始剤として有機過酸化物及び/または無機過酸化物を用いるときは、還元剤と組み合わせてレドックス系重合開始剤として使用することが好ましい。組み合わせる還元剤としては、特に限定されないが、例えば、硫酸第一鉄、ヘキサメチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオン含有化合物;アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムなどのアスコルビン酸(塩);エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウムなどのエリソルビン酸(塩);糖類;ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムなどのスルフィン酸塩;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アルデヒド亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムの亜硫酸塩;ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸水素カリウムなどのピロ亜硫酸塩;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウムなどのチオ硫酸塩;亜燐酸、亜燐酸ナトリウム、亜燐酸カリウム、亜燐酸水素ナトリウム、亜燐酸水素カリウムの亜燐酸(塩);ピロ亜燐酸、ピロ亜燐酸ナトリウム、ピロ亜燐酸カリウム、ピロ亜燐酸水素ナトリウム、ピロ亜燐酸水素カリウムなどのピロ亜燐酸(塩);ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどが挙げられる。
【0038】
これらの還元剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができるが、2種以上を組合せて用いることが好ましく、より好ましくは第一還元剤としての還元状態にある金属イオン含有化合物と第二還元剤として還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤とを組わせること、さらに好ましくは硫酸第一鉄とアスコルビン酸(塩)及び/またはナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートとを組み合わせること、特に好ましくは硫酸第一鉄とアルコルビン酸塩と組み合わせることで本願の目的をより高度に達成することができ好適である。還元剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して総量として、好ましくは0.0001?0.5重量部の範囲である。」

(本f)「【0039】
水の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは80?500重量部、より好ましくは100?300重量部である。
【0040】
乳化重合に際しては、必要に応じて、分子量調整剤、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合副資材を使用することができる。
【0041】
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれの方法で行ってもよいが、半回分式が好ましい。・・・
【0044】
乳化重合の終了は、必要に応じて重合停止剤を添加して行うことができる。・・・
【0045】
<乳化重合液への配合剤添加>
本発明の乳化重合工程においては、乳化重合により得られた、凝固前の乳化重合液に必要に応じて各種配合剤を添加し、生成したアクリルゴム重合体中に均一分散させることができる。添加する配合剤としては、ゴム用配合剤であれば格別な限定はないが、例えば、老化防止剤、滑剤、アルキレンオキシド系重合体などが効果的に配合でき好適である。」

(本g)「【0054】
<凝固工程>
本発明の凝固工程は、上記、必要に応じて老化防止剤、滑剤及び/またはアルキレンオキシド系重合体を添加した乳化重合液を金属硫酸塩と接触させて凝固し含水クラムを得ることを特徴とする。
【0055】
凝固剤として用いる金属硫酸塩としては、特に限定されないが、例えば、1?3価金属の硫酸塩を好適に用いることができ、より好ましくは1価または2価金属の硫酸塩である。具体的には、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、硫酸チタン、硫酸マンガン、硫酸鉄、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸アルミニウム、硫酸スズなどを挙げることができ、好ましくは硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムであり、より好ましくは硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムである。
【0056】
これらの金属硫酸塩は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。金属硫酸塩の使用量は、乳化重合液中のアクリルゴム成分100重量部に対して、通常0.01?100重量部、好ましくは0.1?50重量部、より好ましくは1?30重量部の範囲である。金属硫酸塩がこの範囲にあるときに、アクリルゴムの凝固を充分なものとしながら、アクリルゴムを架橋した場合の耐圧縮永久歪み性、耐水性及び貯蔵安定性を高度にバランスさせることができ好適である。
・・・
【0058】
乳化重合液と金属硫酸塩とを接触させる方法は、常法に従えばよく、乳化重合液に金属硫酸塩あるいは金属硫酸塩の溶液または分散液を添加するか、乳化重合液を金属硫酸塩の溶液または分散液に投入するかなどで行うことができる。乳化重合液を投入する場合の金属硫酸塩の溶液または分散液としては、通常水溶液が用いられ、水溶液中の金属硫酸塩の濃度は、使用目的に応じて適宜選択され、通常1?50重量%、好ましくは5?40重量%、より好ましくは10?30重量%の範囲である。
【0059】
乳化重合液と金属硫酸塩との接触(凝固)温度は、格別限定されるものではないが、通常60℃以上、好ましくは65?100℃、より好ましくは70?95℃、更に好ましくは78?95℃、最も好ましくは83?95℃の範囲である。」

(本h)「【0060】
<洗浄工程>
本発明の洗浄工程は、上記した凝固工程において得られた含水クラムに対して洗浄を行うものである。
【0061】
洗浄方法としては、特に限定されないが、洗浄液として水を使用し、含水クラムとともに、添加した水を混合することにより水洗を行う方法が挙げられる。水洗時の温度としては、特に限定されないが、好ましくは5?60℃、より好ましくは10?50℃であり、混合時間は1?60分、より好ましくは2?30分である。
【0062】
また、水洗時に、含水クラムに対して添加する水の量としては、特に限定されないが、最終的に得られるアクリルゴム中の凝固剤の残留量を効果的に低減することができるという観点より、含水クラム中に含まれる固形分(主として、アクリルゴム成分)100重量部に対して、水洗1回当たりの水の量が、好ましくは50?9,800重量部、より好ましくは300?1,800重量部である。」

(本i)「【0068】
<乾燥工程>
本発明の乾燥工程は、上記洗浄工程において洗浄を行った含水クラムに対し乾燥を行うものである。
【0069】
乾燥工程における、乾燥方法としては、特に限定されないが、たとえば、スクリュー型押出機、ニーダー型乾燥機、エキスパンダー乾燥機、熱風乾燥機、減圧乾燥機などの乾燥機を用いて、乾燥させることができる。また、これらを組み合わせた乾燥方法を用いてもよい。さらに、乾燥工程により乾燥を行う前に、必要に応じて、含水クラムに対し、回転式スクリーン、振動スクリーンなどの篩;遠心脱水機;などを用いたろ別を行ってもよい。
【0070】
例えば、乾燥工程における乾燥温度は、特に限定されず、乾燥に用いる乾燥機に応じて異なるが、例えば、熱風乾燥機を用いる場合には、乾燥温度は80?200℃とすることが好ましく、100?170℃とすることがより好ましい。」

(本j)「【0071】
[アクリルゴム]
本発明によれば、上記製造方法により、本発明のアクリルゴムを得ることができる。かくして得られる本発明のアクリルゴムは、常態物性を良好に保ちながら、貯蔵安定性に優れるものである。
【0072】
本発明のアクリルゴムは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を主成分する以外は格別な限定はないが、架橋性単量体単位を更に含有するときに本発明の効果を高度に高められ好適である。
【0073】
本発明のアクリルゴム中の単量体組成は、使用目的に応じて適宜選択されるが、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位が、通常50?99.9重量%、好ましくは60?99.7重量%、より好ましくは70?99.5重量%であり、架橋性単量体単位の含有量は、通常0.01?20重量%、好ましくは0.1?10重量%、より好ましくは0.5?5重量%であり、共重合可能な他の単量体の単位の含有量は、通常0?49.99重量%、好ましくは0?39.9重量%、より好ましくは0?29.5重量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体、架橋性単量体及び共重合可能な他の単量体の例示は、前記<単量体>で例示したものと同様である。架橋性単量体単位としては、カルボキシル基含有単量体単位、ハロゲン基含有単量体単位、エポキシ基含有単量体単位などを挙げることができ、ハロゲン基含有単量体単位が好ましい。
【0074】
本発明のアクリルゴムのムーニー粘度(ML_(1+4)、100℃)は、使用目的に応じて選択されるが、通常10?150、好ましくは20?100、より好ましくは25?60の範囲である。
【0075】
本発明のアクリルゴムのガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて選択されるが、通常15℃以下、好ましくは0℃以下である。
【0076】
そして、本発明によれば、このようなアクリルゴムの製造方法、および該製造方法により得られるアクリルゴムを提供するものである。
特に、上記製造方法により得られる、本発明のアクリルゴムによれば、常態物性を良好に保ちながら、優れた貯蔵安定性を備えるものである。ここで、アクリルゴムなどのゴムの分野においては、重合により得られたゴムの溶液あるいは分散液から、固形状のゴムを得る際に凝固を行うのが通常であり、本発明者等の知見によると、凝固時の状態により、得られるアクリルゴムの特性が大きく変化するものである。
【0077】
これに対し、本発明のアクリルゴムは、このような凝固を、凝固剤として金属硫酸塩を用いて行うものである。また、乳化重合をノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との存在下に行うものであるため、凝固時には、ノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤をも含まれているものである。ここで、このような凝固により得られるアクリルゴムには、凝固剤として金属硫酸塩、ノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤が含まれることとなるが、本発明者等の知見によると、アクリルゴム中に、単に、金属硫酸塩、ノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤が含まれていることで、常態物性を維持しつつ、貯蔵安定性を向上させることができるという効果が奏されるものではなく、乳化重合時にノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤を用い、かつ、凝固時に、凝固剤としての金属硫酸塩を用いて行われたものであることが必要であることを見出したものである。そして、本発明のアクリルゴムは、このような工程を経て初めて得られるものであり、単に、金属硫酸塩、ノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤が含まれている、といった文言により一概に特定することができないものである。
【0078】
また、もし仮に、本発明のアクリルゴムについて、その内部状態等を、各種分析機器により解析したとしても、アクリルゴム、アニオン性乳化剤及びノニオン性乳化剤のいずれも、炭素原子および酸素原子を主成分として有するものであり、その分散状態等の特定は極めて困難であり、そのため、本発明のアクリルゴムを製造方法により特定することに、十分な合理性があると言える。」

(本k)「【実施例】
【0110】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。
各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
【0111】
[ムーニー粘度(ML_(1+4)、100℃)]
アクリルゴムのムーニー粘度(ポリマームーニー)をJIS K6300に従って測定した。
【0112】
[ムーニースコーチ試験(ML145℃)]
アクリルゴム組成物のムーニースコーチタイム(t5及びt35)、及びVminをJIS K6300に従って145℃で測定した。本測定においては、ムーニー粘度が、Vminから5M上昇した時間をt5とし、ムーニー粘度が、Vminから35M上昇した時間をt35とした。また、測定に使用したアクリルゴム組成物はJIS K6299に従って作製した。t5及びt35は値が大きいほど加硫にかかる時間がかかることを意味し、ゴム組成物の貯蔵安定性に優れ、加硫促進効果が抑えられている(良好に制御されている)と判断できる。Vminは値が低いほどゴム組成物の初期加硫が少ないことを意味し、貯蔵安定性に優れると判断できる。
さらに貯蔵安定性の促進試験として、40℃、80%湿度下で3日間保管したアクリルゴム組成物について、上記と同様の条件にて、ムーニースコーチ試験(貯蔵後のムーニースコーチ試験)を実施した。貯蔵後のムーニースコーチ試験のVminと、貯蔵前のムーニースコーチ試験のVminの差をΔVminとした。ΔVminの値が小さい程、貯蔵でのゴム組成物の変化が小さく、貯蔵安定性に優れると判断できる。
【0113】
[常態物性(引張強度、伸び、硬度)]
アクリルゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら170℃で20分間プレスすることにより架橋し、シート状のゴム架橋物を得た。得られたゴム架橋物を3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。この試験片について、JIS K6253に従い、デュロメーター硬さ試験機(タイプA)を用いて硬度を測定した。さらに、JIS K6251に従い引張強度および伸びを測定した。
【0114】
[空気熱老化試験]
上記常態物性の評価に用いた試験片と同様にして作製した試験片を、ギヤー式オーブン中で、温度175℃の環境下に70時間置いた後、上記常態物性の評価と同様の方法により、引張強度、伸び、硬度を測定し、得られた結果と、上記方法にしたがって測定した常態物性とを対比することにより、耐熱老化性の評価を行った。
【0115】
[圧縮永久歪み試験]
アクリルゴム組成物を170℃、20分間のプレスによって成型、架橋して、直径29mm、厚さ12.5mmの円柱型試験片を作製し、さらに、150℃にて4時間加熱して二次架橋させた。JIS K6262に準じて、上記にて得られた二次架橋後の試験片を25%圧縮させたまま、150℃の環境下で70時間放置した後、圧縮を解放して圧縮永久歪率(%)を測定した。圧縮永久歪率(%)の値が小さいほど、耐圧縮永久歪み性に優れることを示す。
【0116】
〔実施例1〕
ホモミキサーを備えた混合容器に、純水49.95部、アクリル酸エチル40.9部、アクリル酸n-ブチル35.0部、アクリル酸2-メトキシエチル20.0部、アクリロニトリル1.5部、モノクロロ酢酸ビニル2.6部、アニオン性乳化剤としてのラウリル硫酸ナトリウム(商品名「エマール 2FG」、花王社製)0.57部、及びノニオン性乳化剤としてのポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体(商品名「プロノン208」、日油株式会社製)1.40部、L-アスコルビン酸ナトリウム0.22部を攪拌することで、単量体乳化液を得た。
【0117】
次いで、温度計、攪拌装置を備えた重合反応槽に、純水54.19部、および、上記にて得られた単量体乳化液0.95部を投入し、窒素気流下で温度15℃まで冷却した。次いで、重合反応槽中に、上記にて得られた単量体乳化液44.74部、還元剤としての硫酸第一鉄0.0002部、還元剤としてのアスコルビン酸ナトリウム0.0264部、重合開始剤として過硫酸カリウム0.066部を2時間かけて連続的に滴下した。その後、重合反応槽内の温度を23℃に保った状態にて、1時間反応を継続し、重合転化率が95%に達したことを確認し、重合停止剤としてのハイドロキノンを添加して重合反応を停止し、乳化重合液を得た。
【0118】
重合により得られた乳化重合液100部に対し、老化防止剤としてのモノ(又はジ、又はトリ)(α-メチルベンジル)フェノール(商品名「ノクラックSP」、大内新興化学工業社製)0.03部を混合することで混合液を得た。そして、得られた混合液を凝固槽に移し、この混合液100部に対して、工業用水30部を添加して、85℃に昇温した後、混合液を撹拌しながら、得られた重合体(乳化重合液中に含まれる重合体)100部に対して22部の硫酸マグネシウムを添加することにより、重合体を凝固させ、これによりアクリルゴム(A1)の含水クラムを得た。
【0119】
次いで、得られたアクリルゴム(A1)の含水クラムの固形分100部に対し、工業用水388部を添加し、凝固槽内で、室温、5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出させることで、含水クラムの水洗を行った。なお、本実施例では、このような水洗を4回繰り返した。
【0120】
次いで、上記にて水洗を行った含水クラムの固形分100部に対し、工業用水388部および濃硫酸0.13部を混合してなる硫酸水溶液(pH3)を添加し、凝固槽内で、室温、5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出させることで、含水クラムの酸洗を行った。次いで、酸洗を行った含水クラムの固形分100部に対し、純水388部を添加し、凝固槽内で、室温、5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出させることで、含水クラムの純水洗浄を行い、純水洗浄を行った含水クラムを、熱風乾燥機(ベルトコンベヤー式バンドドライヤー)にて110℃で1時間乾燥させることにより、固形状のアクリルゴム(A1)を得た。なお、この際に、熱風乾燥機へのアクリルゴムの付着は観察されなかった。
【0121】
得られたアクリルゴム(A1)のムーニー粘度(ML_(1+4)、100℃)は33であり、その組成は、アクリル酸エチル単位40.9重量%、アクリル酸n-ブチル単位35.0重量%、アクリル酸メトキシエチル単位20.0重量%、アクリロニトリル単位1.5重量%、モノクロロ酢酸ビニル単位2.6重量%であった。
【0122】
バンバリーミキサーを用いて、上記にて得られたアクリルゴム(A1)100部に、カーボンブラック(商品名「シースト116」、東海カーボン社製)60部、ステアリン酸1部、および4, 4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「ノクラック CD」、大内新興化学工業社製)1部を添加して、50℃で5分間混合した。次いで、得られた混合物を50℃のロールに移して、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(商品名「ノクセラーBZ」、大内新興化学工業社製)1.0部、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン(商品名「ジスネットF」、三協化成株式会社製)0.5部、N-シクロヘキシルチオフタルイミド(商品名「サントガードPVI」、三新化学工業株式会社製)0.3部を配合して、混練することにより、アクリルゴム組成物を得、上記方法に従って、ムーニースコーチ試験、硬度、引張強度及び破断伸びの測定、空気熱老化試験、圧縮永久歪み試験を行い、それらの結果を表1に示した。
【0123】
〔実施例2〕
凝固剤としての硫酸マグネシウム22部に代えて、硫酸ナトリウム100部を使用した以外は実施例1と同様にしてアクリルゴム(A2)を得た。
得られたアクリルゴム(A2)のムーニー粘度(ML_(1+4)、100℃)は33であり、その組成は、アクリル酸エチル単位40.9重量%、アクリル酸n-ブチル単位35.0重量%、アクリル酸メトキシエチル単位20.0重量%、アクリロニトリル単位1.5重量%、モノクロロ酢酸ビニル単位2.6重量%であった。
得られたアクリルゴム(A2)を用いて、実施例1と同様に、アクリルゴム組成物を得て、ムーニースコーチ試験、硬度、引張強度及び破断伸びの測定、空気熱老化試験、圧縮永久歪み試験を行い、それらの結果を表1に示した。
【0124】
〔実施例3〕
モノマー組成及び重合工程は、実施例1と同じとして、乳化重合液を得て、重合により得られた乳化重合液100部に対し、老化防止剤としてのモノ(又はジ、又はトリ)(α-メチルベンジル)フェノール(商品名「ラジテックスSP-50E」、ヒガシ化学社製、50重量%水分散液)0.06部を混合することで混合液を得た。そして、得られた混合液100部に対して工業用水30部を添加し80℃に調整し、凝固剤としての20重量%硫酸マグネシウム水溶液110部(硫酸マグネシウム換算で、22部)へ連続的に添加することにより、重合体を凝固させ、これによりアクリルゴム(A3)の含水クラムを得た。
【0125】
次いで、実施例1と同様に含水クラムの水洗浄、酸洗浄、純水洗、乾燥を行い固形状のアクリルゴム(A3)を得た。なお、この際に、熱風乾燥機へのアクリルゴムの付着は観察されなかった。
【0126】
得られたアクリルゴム(A3)のムーニー粘度(ML_(1+4)、100℃)は33であり、その組成は、アクリル酸エチル単位40.9重量%、アクリル酸n-ブチル単位35.0重量%、アクリル酸メトキシエチル単位20.0重量%、アクリロニトリル単位1.5重量%、モノクロロ酢酸ビニル単位2.6重量%であった。
得られたアクリルゴム(A3)を用いて、実施例1と同様に、アクリルゴム組成物を得て、ムーニースコーチ試験、硬度、引張強度及び破断伸びの測定、空気熱老化試験、圧縮永久歪み試験を行い、それらの結果を表1に示した。
【0127】
〔実施例4〕
凝固剤としての硫酸マグネシウム22部に代えて、20重量%硫酸ナトリウム水溶液500部(硫酸ナトリウム換算で、100部)を使用した以外は、実施例1と同様にしてアクリルゴム(A4)を得た。
【0128】
得られたアクリルゴム(A4)のムーニー粘度(ML_(1+4)、100℃)は33であり、アクリルゴム(A4)の組成は、アクリル酸エチル単位40.9重量%、アクリル酸n-ブチル単位35.0重量%、アクリル酸メトキシエチル単位20.0重量%、アクリロニトリル単位1.5重量%、モノクロロ酢酸ビニル単位2.6重量%であった。
得られたアクリルゴム(A4)を用いて、実施例1と同様に、アクリルゴム組成物を得て、ムーニースコーチ試験、硬度、引張強度及び破断伸びの測定、空気熱老化試験、圧縮永久歪み試験を行い、それらの結果を表1に示した。
【0129】
〔実施例5〕
アニオン性乳化剤としてのラウリル硫酸ナトリウムに代えて、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステルポリオキシエチレンアルキルフェノールリン酸エステルのナトリウム塩(商品名「フォスファノール LO-529」、東邦化学社製、疎水基の炭素数が15である高級アルコールの燐酸エステル塩)を使用した以外は実施例1と同様にして、固形状のアクリルゴム(A5)を得た。
【0130】
得られたアクリルゴム(A5)のムーニー粘度(ML_(1+4)、100℃)は33であり、アクリルゴム(A5)の組成は、アクリル酸エチル単位40.9重量%、アクリル酸n-ブチル単位35.0重量%、アクリル酸メトキシエチル単位20.0重量%、アクリロニトリル単位1.5重量%、モノクロロ酢酸ビニル単位2.6重量%であった。
得られたアクリルゴム(A5)を用いて、実施例1と同様に、アクリルゴム組成物を得て、ムーニースコーチ試験、硬度、引張強度及び破断伸びの測定、空気熱老化試験、圧縮永久歪み試験を行い、それらの結果を表1に示した。
【0131】
〔実施例6〕
アニオン性乳化剤としてのラウリル硫酸ナトリウムに代えて、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(商品名「フォスファノール RA-600」、東邦化学社製、疎水基(アルキル基)の炭素数が6?10である高級アルコールの燐酸エステル塩)のナトリウム塩を使用した以外は実施例1と同様にして、固形状のアクリルゴム(A6)を得た。
【0132】
得られたアクリルゴム(A6)のムーニー粘度(ML_(1+4)、100℃)は33であり、アクリルゴム(A6)の組成は、アクリル酸エチル単位40.9重量%、アクリル酸n-ブチル単位35.0重量%、アクリル酸メトキシエチル単位20.0重量%、アクリロニトリル単位1.5重量%、モノクロロ酢酸ビニル単位2.6重量%であった。
得られたアクリルゴム(A6)を用いて、実施例1と同様に、アクリルゴム組成物を得て、ムーニースコーチ試験、硬度、引張強度及び破断伸びの測定、空気熱老化試験、圧縮永久歪み試験を行い、それらの結果を表1に示した。
【0133】
〔比較例1〕
凝固剤としての硫酸マグネシウム22部に代えて、塩化カルシウム4部を使用した以外は実施例1と同様にして固形状のアクリルゴム(C1)を得た。
【0134】
得られたアクリルゴム(C1)のムーニー粘度(ML_(1+4)、100℃)は33であり、その組成は、アクリル酸エチル単位40.9重量%、アクリル酸n-ブチル単位35.0重量%、アクリル酸メトキシエチル単位20.0重量%、アクリロニトリル単位1.5重量%、モノクロロ酢酸ビニル単位2.6重量%であった。
得られたアクリルゴム(C1)を用いて、実施例1と同様に、アクリルゴム組成物を得て、ムーニースコーチ試験、硬度、引張強度及び破断伸びの測定、空気熱老化試験、圧縮永久歪み試験を行い、それらの結果を表1に示した。
【0135】
〔比較例2〕
凝固剤としての硫酸マグネシウム22部に代えて、塩化ナトリウム80部を使用した以外は実施例1と同様にして固形状のアクリルゴム(C2)を得た。
【0136】
得られたアクリルゴム(C2)のムーニー粘度(ML_(1+4)、100℃)は33であり、その組成は、アクリル酸エチル単位40.9重量%、アクリル酸n-ブチル単位35.0重量%、アクリル酸メトキシエチル単位20.0重量%、アクリロニトリル単位1.5重量%、モノクロロ酢酸ビニル単位2.6重量%であった。
得られたアクリルゴム(C2)を用いて、実施例1と同様に、アクリルゴム組成物を得て、ムーニースコーチ試験、硬度、引張強度及び破断伸びの測定、空気熱老化試験、圧縮永久歪み試験を行い、それらの結果を表1に示した。
【0137】
【表1】


(*1)20重量%水溶液の状態で添加
(*2)20重量%水溶液の状態で添加
【0138】
表1から、架橋性単量体を含んだ単量体をノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤存在下でレドックス触媒を用いて重合し、金属硫酸塩で凝固し製造された架橋性のアクリルゴム(実施例1?6)は、常態物性試験、空気熱老化試験及び架橋物の圧縮永久歪み試験において、従来から使用される凝固剤で凝固したもの(比較例1及び2)とを比べても全く遜色がないことがわかる。
【0139】
一方、ムーニースコーチ試験において、本発明で製造されるアクリルゴムは、初期物性(Vmin:小さいものの方が良い)で、従来技術に比べ1割近くも抑制できていること、及び長期物性(t5、t35:ともに長い方が良い)でも従来技術に比べて1?5割近くも改善されており、貯蔵安定性において顕著に改善されていることがわかる。また、熱老化後のムーニースコーチの試験においては、本発明で製造されるアクリルゴム(実施例1?4)は、上記と同様な結果を示すとともに、Vmin変化においても大変改良されていることがわかる。また、本発明で製造されるアクリルゴムの中でも、2価金属硫酸塩を使用したもの(実施例1、3)は、1価金属硫酸塩を使用したものよりもより高い効果が得られることがわかる。」

2 各甲号証に記載された事項
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。

(甲1a)「【請求項1】 (A)一般式(I)【化1】

〔式中、R^(1 )は水素原子またはメチル基、R^(2 )は炭素数3?20のアルキレン基、R^(3 )は炭素数1?20の炭化水素基またはその誘導体、nは1?20の整数を示す。〕で表される(メタ)アクリル酸エステル5?30重量%、(B)アクリル酸メチル5?55重量%、(C)アクリル酸エチル0?60重量%、(D)アクリル酸ブチル10?50重量%および(E)架橋性単量体0.1?10重量%、および前記(A)?(E)と共重合可能な単量体(F)0?20重量%の重合組成(ただし、(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)=100)を有するムーニー粘度(ML_(1+4 )、100℃)が15以上のアクリル系共重合体ゴム。
【請求項2】 請求項1記載のアクリル系共重合体ゴム100重量部に対し、架橋剤0.1?10重量部を配合してなるゴム組成物。」

(甲1b)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、工業材料用途として優れた耐熱性、耐油性、耐寒性を有するアクリル系共重合ゴムおよびその組成物に関する。
・・・
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記従来技術の課題を背景になされたもので、耐油性、耐寒性を同時に満足し、耐熱性の良好なアクリル系共重合体ゴムおよびその組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、耐熱性の良いアクリル酸メチルを共重合することにより耐熱性を改良し、不足する耐寒性を一般式(I)で表わされるエステル基含有(メタ)アクリル酸エステル(以下、「(A)成分」あるいは「(メタ)アクリル酸エステル(I)という。」)を共重合し補うことにより、従来のアクリルゴムの耐油性、耐寒性を損なわず耐熱性を大幅に改良できることを見い出した。・・・」

(甲1c)「【0008】一般式(I)で表わされる(メタ)アクリル酸エステル(I)の具体例としては、下記の化合物を挙げることができる。
CH_(2)=CHCOO-C_(3)H_(6)COO-CH_(3)
CH_(2)=CHCOO-C_(4)H_(8)COO-CH_(3)
CH_(2)=CHCOO-C_(5)H_(10)COO-CH_(3)
CH_(2)=CHCOO-C_(5)H_(10)COO-C_(2)H_(5)
CH_(2)=CHCOO-C_(5)H_(10)COO-C_(4)H_(9)
CH_(2)=CHCOO-C_(5)H_(10)COO-C_(8)H_(17)
CH_(2)=CHCOO-(C_(3)H_(6)COO)_(2)-C_(2)H_(5)
CH_(2)=CHCOO-(C_(4)H_(8)COO)_(2)-C_(2)H_(5)
CH_(2)=CHCOO-(C_(5)H_(10)COO)_(2)-C_(2)H_(5)
CH_(2)=CHCOO-(C_(5)H_(10)COO)_(3)-C_(2)H_(5)
CH_(2)=CHCOO-(C_(5)H_(10)COO)_(4)-C_(2)H_(5)
CH_(2)=CHCOO-(C_(5)H_(10)COO)_(5)-C_(2)H_(5)
CH_(2)=CHCOO-(C_(5)H_(10)COO)_(2)-C_(8)H_(17)
CH_(2)=CH(CH_(3))-COO-(C_(3)H_(6)COO)_(2)-CH_(3)
CH_(2)=CH(CH_(3))-COO-(C_(4)H_(8)COO)_(2)-CH_(3)
CH_(2)=CH(CH_(3))-COO-(C_(5)H_(10)COO)_(2)-CH_(3)
【0009】共重合体ゴム中の(メタ)アクリル酸エステル(I)の含有量は5?30重量%、好ましくは10?20重量%であり、5重量%未満では得られる共重合体ゴムの低温性改良効果が少なく、一方、30重量%を超えると低温での圧縮永久歪特性および引張強度が悪化する。」

(甲1d)「【0010】次に、共重合体ゴム中の(B)成分のアクリル酸メチルの含有量は5?55重量%、好ましくは10?40重量%であり、5重量%未満では得られる共重合体ゴムの耐熱性改良効果が小さく、一方、55重量%を超えると低温性が著しく悪化する。
【0011】次に、共重合体ゴム中の(C)成分のアクリル酸エチルの含有量は0?60重量%、好ましくは10?50重量%であり、60重量%を超えると低温性が悪化する。
【0012】次に、共重合体ゴム中の(D)成分のアクリル酸ブチルの含有量は10?50重量%、好ましくは20?40重量%であり、10重量%未満では低温性が不十分であり、50重量%を越えると耐油性が著しく悪化する。」

(甲1e)「【0013】次に、(E)成分の架橋性単量体としては下記の化合物を挙げることができる。
ジエン系単量体
不飽和基含有不飽和カルボン酸エステル
エポキシ基含有ビニル単量体
カルボキシル基含有ビニル単量体
反応性ハロゲン原子含有ビニル単量体
水酸基含有ビニル単量体
アミド基含有ビニル単量体
【0014】ここで、・・・反応性ハロゲン原子含有ビニル単量体としては、例えば2-クロルエチルビニルエーテル、クロル酢酸ビニル、クロル酢酸アリル、クロルメチルスチレンなどが、・・・などが挙げられる。
【0015】共重合体ゴム中の(E)架橋性単量体の含有量は0.1?10重量%、好ましくは0.1?5重量%であり、0.1重量%未満では得られる共重合体ゴムの引張強度が劣り、一方、10重量%を超えると伸びが低下する傾向となる。」

(甲1f)「【0017】本発明のアクリル系共重合体ゴムの共重合方法は、ラジカル重合開始剤の存在下に通常の乳化重合、懸濁重合、バルク重合、あるいは溶液重合させることによって容易に製造することができる。乳化重合法により共重合体ゴムを製造する場合の乳化剤としては、陰イオンまたは非イオン界面活性剤を単独あるいは混合物として、さらに種々の分散剤も用いることができる。これらの乳化剤としては、例えばアルキルサルフェート、アルキルアリールスルフォネート、高級脂肪酸の塩、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマーなどが挙げられる。
【0018】共重合反応は、温度-100?200℃、好ましくは0?60℃の条件下で行なうことができる。重合を開始させるためのラジカル開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、パラメンタンハイドロパーオキシドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルで代表されるアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過硫酸塩、有機過酸化物-硫酸鉄の組み合わせで代表されるレドックス系触媒などが挙げられる。これらのラジカル開始剤は、単量体混合物に対して、通常、0.01?2重量%用いられる。分子量調節剤は必要に応じて用いられるが、その具体例としては、t-ドデシルメカプタン、ジメチルキサントゲンジスルフィドなどが挙げられる。
【0019】重合反応は、所定の重合転化率に達した後、N,N-ジエチルヒドロキシアミンなどの反応停止剤を添加して重合反応を停止させ、次いで得られたラテックス中の未反応単量体を水蒸気蒸留などで取り除き、フェノール類、アミン類などの老化防止剤を添加し、通常の凝固方法、例えば硫酸アルミニウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、硫安水溶液などの金属塩水溶液と混合してラテックスを凝固させた後、乾燥させることによって共重合体ゴムを得ることができる。また、懸濁ラジカル重合により共重合体ゴムを製造する場合には、ポリビニルアルコールの酸化物などを分散剤として加え、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイルなどの油溶性ラジカル開始剤を用いて重合を行ない、重合終了後、水を除去することにより共重合体ゴムを得ることができる。さらに、溶液ラジカル重合により共重合体ゴムを製造する場合にも、一般的に知られている方法を採用することができる。なお、重合方式は、連続式、回分式のいずれも可能である。」

(甲1g)「【0020】このようにして得られる本発明の共重合体ゴムの分子量は、分子量調節剤の種類および量、ラジカル開始剤の種類および量、重合温度、溶媒の種類および量、さらには単量体濃度などの反応条件を変更することにより、粘度平均分子量で1万?500万、好ましくは10万?200万のものが得られる。また、得られる共重合体ゴムのムーニー粘度(ML_(1+4 )、100℃)は15以上、好ましくは15?100であり、15未満では共重合体ゴムの引張強度が劣り、一方、100を超えると加工性が低下する場合があり好ましくない。
【0021】本発明のアクリル系共重合体ゴムは、加硫促進剤、架橋剤などを配合して、通常知られている加硫方法で加硫することができる。」

(甲1h)「【0031】
【実施例】以下、実施例を挙げ本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これら実施例に制約されるものでない。なお、実施例中、部および%は特に断らない限り重量基準である。また、実施例中、共重合体ゴムおよび架橋物の諸特性の測定方法は、次の通りである。
クロム酢酸ビニルおよびクロル酢酸アリルの定量
ポリマー中の塩素含量を蛍光X線により測定し求めた。
アリルグリシジルエーテルの定量
ポリマーをクロロホルムに溶解した後、酢酸法によりエポキシ当量を測定して求めた。
共重合体ゴム中のアクリル酸エステルの定量
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステルの定量は、^(13)C-核磁気共鳴スペクトルから求めた。
架橋物の性質
アクリル系共重合体ゴムを含有する組成物よりゴムシートまたはブロックを作製し、架橋プレス装置を用いて所定時間架橋した。また、必要に応じてギヤーオーブンを用いてさらに所定時間架橋した。得られた架橋シートまたはブロックをダンベルカッターで成形し、JIS K6301に準じて耐熱性、耐寒性、圧縮永久歪および耐油性を測定した。
【0032】実施例1?6、比較例1?8(アクリル系共重合体ゴムの製造)
単量体混合物100部、ラウリル硫酸ナトリウム4部、p-メンタンハイドロパーオキシド0.25部、硫酸第一鉄0.01部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.025部およびソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.04部を、窒素置換したオートクレーブに仕込み、反応温度30℃で単量体の転化率が90%に達するまで反応させ、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン0.5部を加え、反応を停止させた。次に、反応生成物を取り出して水蒸気を吹き込み、未反応単量体を除去した。このようにして得たゴムラテックスを、0.25%の塩化カルシウム水溶液に加えて凝固させ、凝固物を十分水洗して約90℃で3時間乾燥させて実施例1に相当する共重合体Aを得た。共重合体Aの組成は、^(13)C-NMRスペクトルの化学シフトから算出した。ただし、クロム酢酸ビニル含量およびクロル酢酸アリル含量は蛍光X線法により求め、アリルグリシジルエーテルについてはエポキシ基の定量から求め、その結果を表1に示した。
【0033】
【表1】


【0034】共重合体ゴムB?Nも同様にして製造した。次いで、得られた各共重合体ゴム100部に、FEFカーボンブラック60部、ステアリン酸1部、各共重合体ゴムの製造に用いた架橋性単量体の種類に応じて表2の過硫促進剤および架橋剤を加え、ロールで混合した後、170℃で20分間、架橋させ架橋シートおよびブロックを作製した。この架橋シートおよびブロックを、オーブン中で175℃で4時間、さらに架橋させた。得られた架橋サンプルは、JIS K6301に準じて、引張強度特性、耐熱性、耐油性および耐寒性を測定した。結果を表2に示す。
【0035】
【表2】




(2)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

(甲2a)「【請求項1】
(1)下記単量体(イ)、(ロ)及び(ハ)を下記重量比で共重合させて得られるアルコキシ基含有アクリル系ゴムポリマー 100重量部
(イ)アルコキシ置換アルキル(メタ)アクリレートの1種又は2種以上 1?25重量%
(ロ)アルキル(メタ)アクリレートの1種又は2種以上 55?99重量%
(ハ)その他のエチレン性不飽和単量体の1種又は2種以上 0?20重量%
[(イ)?(ハ)の合計 100重量%]
(2)不飽和基含有アルコキシシラン 0.1?20重量部
(3)補強性充填剤 10? 200重量部
及び
(4)有機過酸化物 0.1?10重量部
を含有してなる常圧熱風加硫可能なアクリル系ゴム組成物。」

(甲2b)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、常圧熱風で成形物の加硫が可能なアクリル系ゴム組成物に関するものである。本発明のアクリル系ゴム組成物によれば、従来のバッチ式の成形加硫に対し連続成形加硫が可能となり、成形品の生産性が大幅に向上する。
・・・
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような状況から、本発明は従来のバッチ生産とちがって大幅な生産性向上が見込まれる、成形物の常圧熱風加硫による連続生産が可能なアクリル系ゴム組成物を提供するためになされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の課題を解決するため鋭意検討の結果、アルコキシ基含有アクリル系ゴムポリマーを補強性充填剤と共に有機過酸化物で加硫する際、不飽和アルコキシシランを使用するとその相乗効果により前記の課題が解決される可能性のあることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。」

(甲2c)「【0007】以下に本発明について詳しく説明する。本発明に用いる(1)成分のアルコキシ基含有アクリル系ゴムポリマーは、(イ)アルコキシ置換アルキル(メタ)アクリレートに、(ロ)アルキル(メタ)アクリレート、さらには必要に応じて(ハ)その他のエチレン性不飽和単量体を共重合させたものである。この共重合は公知のラジカル重合法により行うことができる。なお、(メタ)アクリルはアクリルとメタクリルの総称である。
【0008】上記単量体(イ)のアルコキシ置換アルキル(メタ)アクリレートは、一般式CH_(2)=C(R^(1))COOR^(2)-O-R^(3) で示され、式中のR^(1)は水素原子又はメチル基であるが、R^(2)が炭素数1?4のアルキレン基、R^(3)が炭素数1?4のアルキル基であるものが通常用いられる。このような単量体(イ)としてはメトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等が例示される。単量体(イ)によりゴムポリマー中へ加硫サイトが導入されるが、この単量体(イ)は1種のみ又は2種以上を組み合わせて用いることができる。単量体(イ)の量は単量体全量のうち1?25重量%とするが、好ましくは5?20重量%である。1重量%未満の場合には加硫速度が遅く常圧熱風加硫が困難となり、25重量%を超える場合には耐熱性が損なわれる。」

(甲2d)「【0009】また、単量体(ロ)のアルキル(メタ)アクリレートは、一般式CH_(2)=C(R^(1))COOR^(4)で示され、式中のR^(1)は水素原子又はメチル基であるが、R^(4)が炭素数1?9のアルキル基であるものが通常用いられる。このような単量体(ロ)としてはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート等が例示される。単量体(ロ)はゴムポリマーを構成させるための主体となる単量体であり、この単量体(ロ)は1種のみ又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の目的を達成するためには、単量体(ロ)の量は単量体全量のうち55?99重量%とするが、好ましくは80?95重量%である。」

(甲2e)「【0010】単量体(ハ)はその他のエチレン性不飽和単量体であり、上記単量体(イ)、(ロ)だけでは発現できない物性を付与するために使用されるが、本発明の目的を損なわないためには単量体全量の20重量%以下が使用される。このような単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、2-クロロエチルビニルエーテル、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が例示される。なお、上記単量体中のアリルグリシジルエーテル、モノクロロ酢酸ビニル、2-クロロエチルビニルエーテル等の加硫サイトを有する単量体を共重合させ、有機過酸化物と共にエポキシ基用又は活性塩素基用加硫剤を併用し、まず常圧熱風加硫後、エポキシ基又は活性塩素基を後加硫させることにより、有機過酸化物加硫物の弱点である引張強度、引裂強度等の改善をはかることができる。」

(甲2f)「【0014】(3)成分の補強性充填剤としては、カーボンブラック、乾式シリカ(商品名エアロジル、キャボシル等で市販されているものに代表される)、アルキルシリケートやけい酸ソーダから湿式法で合成される沈降性シリカなどが例示され、それらの比表面積は30m^(2)/g以上が望ましい。この補強性充填剤の配合量は、(1)成分のアルコキシ基含有アクリル系ゴムポリマー 100重量部に対し、10? 200重量部とされる。10重量部未満では補強効果が不十分で実用的な機械的強度が得られなくなるし、 200重量部を超えると良好な成形加工性が得られず、機械的強度も低下してしまう。
【0015】(4)成分の有機過酸化物は加硫速度を高めるため低温分解型が好ましく、1分間半減期が 100? 160℃のものが特に好ましい。使用される有機過酸化物としては、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)パーオキサイド、ビス(o-クロロベンゾイル)パーオキサイド、ビス(p-クロロベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等が例示される。(4)成分の有機過酸化物系加硫剤の配合量は、前記(1)成分のアルコキシ基含有アクリル系ゴムポリマー 100重量部に対し、 0.1?10重量部とされる。 0.1重量部未満では常圧熱風加硫に不十分であり、10重量部を超えると加硫が早すぎてスコーチを起こしたり、得られた加硫物が硬くもろいものになり、所望の性能の加硫成形物が得られなくなる。また、必要に応じて上記有機過酸化物系加硫剤にトリアリルイソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、N,N’-m-フェニレンビスマレイミドなどの加硫促進剤を併用してもよい。
・・・
【0017】本発明のアクリル系ゴム組成物には必要に応じて酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム等の金属酸化物;グラファイト、炭酸カルシウム、マイカ粉、タルク、石英粉、セライト、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等の充填剤;プロセスオイル、離型剤、着色剤、難燃剤、分散剤などを添加することができる。しかしながら、過酸化物加硫を阻害する恐れのある添加剤、特にアミン系老化防止剤や紫外線吸収剤等のラジカル捕獲作用のあるものは添加しないか又は添加しても最少必要量に制限しないと加硫速度を遅くして加硫不充分となり、実用的な加硫成形物を得ることができなくなる。」

(甲2g)「【0019】
【実施例】次に本発明の実施例をあげて具体的に説明する。なお例中の部及び%はそれぞれ重量部と重量%を示す。
【0020】実施例1
攪拌機、コンデンサー、温度計及び窒素ガス導入口を備えた重合容器に脱イオン水 200部を仕込み、窒素置換後30℃に昇温させた。上記重合容器中へ過硫酸アンモニウム 0.2部、硫酸第1鉄の1%水溶液 0.2部を添加した後、あらかじめメトキシエチルアクリレート10部、エチルアクリレート 130部、ブチルアクリレート60部、10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液20部、10%ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル(HLB約17)40部、酸性亜硫酸ソーダ 0.1部及び脱イオン水 140部をホモミキサーで混合乳化したモノマー乳化液を攪拌下に3時間を要して均一に滴下させ、さらに30℃で1時間反応させ重合を終え、固形分濃度33.0%のエマルジョンを得た。このエマルジョンを80℃に加温し攪拌下で20%芒硝水溶液を添加してエマルジョンを破壊した後、冷却、水洗、乾燥してアクリル系ゴムポリマー 190部を得た。
【0021】次にこのアクリル系ゴムポリマー 100部、ステアリン酸1部、ナウガード445(老化防止剤、ユニロイヤル社製、商品名)1部、ニップシルLP(沈降性シリカ、日本シリカ工業社製、商品名)40部、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2部を加圧ニーダーで充分混練した後、シリカ中の水分除去のため 130℃で10分間加熱混練しベースコンパウンドを得た。さらに8インチロールで、ベースコンパウンドの温度が70℃を超えないように水冷しながら、ベースコンパウンド 100部に対して50%2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイドペースト4部及びN,N’-m-フェニレンビスマレイミド2部を充分混合し、混入空気の泡を充分除去した配合物をつくった。この配合物から厚さ2mm、 120mm角のシートを作製し、200℃のオーブン中で5分間加硫した。加硫シートの状態を観察し、加硫シートの物性をJIS K-6301に準じて測定した。結果を表2に示した。
【0022】実施例2?3
実施例1に準じて表1に示される単量体組成で重合、塩析、水洗、乾燥して得たアクリル系ゴムポリマーを用い、表1に示される配合処方で混練して得た配合物から厚さ2mm、120mm角のシートを作製し、 200℃のオーブン中で5分間加硫した。加硫シートの状態を観察し、加硫シートの物性をJIS K-6301に準じて測定した。結果を表2に示した。
・・・
【0027】
【表1】


【0028】
【表2】




(3)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

(甲3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数1?3のアルキル基または炭素数2?3のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位10?98.9重量%、(B)炭素数4?8のアルキル基または炭素数4?8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位0?88.9重量%、(C)エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルから誘導される構成単位1?30重量%を含有することを特徴とするアクリルゴム。
【請求項2】
エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルがフマル酸またはイタコン酸、のジエステルであることを特徴とする請求項1に記載のアクリルゴム。
【請求項3】
さらに、活性基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導される構成単位を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のアクリルゴム。
【請求項4】
(D)活性基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導される構成単位0.1?20重量部を含有することを特徴とする請求項3に記載のアクリルゴム。
【請求項5】
請求項1?4のいずれかに記載のアクリルゴムに架橋物を添加してなることを特徴とするアクリルゴム組成物。
【請求項6】
請求項5で得られるアクリルゴム組成物を架橋させたことを特徴とするアクリルゴム架橋物。」

(甲3b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴムに係わり、さらに詳しくはロール加工性などの加工性に優れ、耐熱、耐酸性に優れた架橋物を与えることができるアクリルゴムに関する。
・・・
【0006】
しかしながら、自動車関連の分野などに用いられるゴム部品には、さらなる耐熱性、耐酸性が求められており、より品質の高いアクリルゴムが望まれていた。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、本発明の課題はロール加工性に優れ、耐熱性、耐酸性に優れた架橋物を与えることができるアクリルゴムを提供することを目的とする。また、本発明はこのようなアクリルゴムに内部架橋剤を添加してなる架橋性アクリルゴム組成物、およびこの架橋性アクリルゴム組成物を架橋してなるアクリルゴム架橋物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は種々検討の結果、(A)炭素数が少ないアルキル基またはアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位、(B)炭素数が多いアルキル基またはアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位、および(C)エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルから構成される単位とを、所定割合で含有するアクリルゴムにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させたものである。
・・・
【発明の効果】
【0011】
本発明のアクリルゴムによれば、ロール加工性などの加工性に優れ、常態物性、および耐熱性および耐酸性などの諸物性に優れたアクリルゴムを提供することができる。また、本発明のアクリルゴムは、電子写真機器や自動車用途等の当該諸物性が要求される各種ゴム部材やゴム製品に応用することができる。」

(甲3c)「【0012】
はじめに本発明におけるアクリルゴムについて説明する。
アクリルゴムは、アクリル酸アルキルおよび/またはアクリル酸アルコキシアルキルを主成分とするエラストマー状重合体である。
【0013】
本発明のアクリルゴムは、(A)炭素数1?3のアルキル基または炭素数2?3のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位10?98.9重量%、(B)炭素数4?8のアルキル基または炭素数4?8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位0?88.9重量%、(C)エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルから誘導される構成単位1?30重量%を含有するアクリルゴムである。
【0014】
炭素数1?3のアルキル基または炭素数2?3のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、特に(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチルが好ましい。
・・・
【0018】
本発明のアクリルゴム中における構成単位(A)の含有割合は、全構成単位中の10?98.9重量%であり、好ましくは15?98重量%であり、より好ましくは20?97.5重量%である。構成単位(A)の含有割合が低すぎると、アクリルゴムの粘着性、特に架橋性ゴム組成物とした場合の粘着性が高くなりロール加工性が低下する。一方、含有割合が高くなりすぎると耐寒性が低下してしまう。
【0019】
本発明のアクリルゴム中における構成単位(B)の含有割合は、全構成単位中の0?88.9重量%であり、好ましくは0?75重量%であり、より好ましくは0?65重量%である。構成単位(B)の含有割合が高くなりすぎるとロール加工性が低下してしまう。
【0020】
本発明のアクリルゴム中における構成単位(C)の含有割合は、全構成単位中の1?30重量%であり、好ましくは1.5?25重量%であり、より好ましくは2?20重量%である。構成単位(C)の含有割合が低すぎると、構成単位(C)の効力が十分得られず、耐酸性が向上しない。一方、含有割合が高くなりすぎると耐油性および耐寒性が低下してしまう。」

(甲3d)「【0021】
本発明のアクリルゴムは、上記構成単位(A)?(C)以外に、架橋基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導される構成単位(D)を含有することが好ましい。該架橋基は、特に限定するものではないが、例えば、2-クロロエチルビニルエーテル、2-クロロエチルアクリレート、ビニルベンジルクロライド、ビニルクロロアセテート、アリルクロロアセテートなどの活性塩素基を有するもの、また、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、2-ペンテン酸、桂皮酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和ジカルボン酸、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどのエチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルなどのカルボン酸基を有するもの、また、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を有するものが挙げられる。
・・・
【0025】
エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルは重合後、架橋剤と反応して架橋構造を形成する。
・・・
【0035】
これらの共重合可能なその他の単量体構成単位を含有させる場合には、全構成単位における含有割合は0?45重量%、好ましくは0?20重量%である。」

(甲3e)「【0036】
<アクリルゴムの製造方法>
本発明で用いるアクリルゴムは、それぞれ上記の公知の各種モノマーを重合することにより得ることができる。使用するモノマーはいずれも市販品であってよく、特に制約はない。
【0037】
重合反応の形態としては、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、および溶液重合法のいずれも用いることができるが、重合反応の制御の容易性などの点から、従来公知のアクリルゴムの製造法として一般的に用いられている常圧下での乳化重合法によるのが好ましい。
【0038】
乳化重合による重合の場合には、通常の方法を用いればよく、重合開始剤、乳化剤、連鎖移動剤、重合停止剤等は一般的に使用される従来公知のものが使用できる。
【0039】
本発明で用いられる乳化剤は特に限定されず、乳化重合法おいて一般的に用いられるノニオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤等を使用することができる。ノニオン乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等があげられ、アニオン性乳化剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、脂肪酸塩等があげられ、これらを1種または2種以上用いてもよい。アニオン性乳化剤の代表例としてはドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸トリエタノールアミンが挙げられる。
【0040】
本発明で用いられる乳化剤の使用量は乳化重合法おいて一般的に用いられる量であればよい。具体的には、仕込みのモノマー量に対して、0.01?10重量%の範囲であり、好ましくは0.03?7重量%、更に好ましくは0.05?5重量%である。モノマー成分として、反応性界面活性剤を用いる場合は、乳化剤の添加は必ずしも必要でない。
【0041】
本発明で用いられる重合開始剤は特に限定されず、乳化重合法おいて一般的に用いられる重合開始剤を使用することができる。その具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩に代表される無機系重合開始剤、・・・等の有機過酸化物系の重合開始剤、・・・などのアゾ系開始剤等が挙げられる。これら重合開始剤は1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0042】
本発明で用いられる重合開始剤の使用量は乳化重合法おいて一般的に用いられる量であればよい。具体的には、仕込みのモノマー量に対して、0.01?5重量%の範囲であり、好ましくは0.01?4重量%、更に好ましくは0.02?3重量%である。
【0043】
また、重合開始剤としての有機過酸化物および無機過酸化物は、還元剤と組み合わせることにより、レドックス系重合開始剤として使用することができる。組み合わせて用いる還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のメタン化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;アスコルビン酸およびその塩;亜硫酸およびチオ硫酸のアルカリ金属塩などの還元性を有する無機塩などが挙げられる。これらの還元剤は単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、過酸化物100重量部に対して、好ましくは0.0003?10.0重量部である。
・・・
【0049】
このようにして製造される、本発明で用いるアクリルゴムの分子量範囲は、JIS K 6300に定めるムーニースコーチ試験での100℃におけるムーニー粘度(ML_(1+4))表示で、好ましくは10?100、より好ましくは15?90、さらに好ましくは20?80である。」

(甲3f)「【実施例】
【0062】
本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例および比較例では、アクリルゴムの製造及び得られたアクリルゴムと架橋剤を混合し、得られた未架橋ゴム組成物およびゴム架橋物の物性を評価した。
【0063】
[実施例1]
(アクリルゴムAの製造)
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び減圧装置を備えた重合反応器に、水200重量部、ドデシル硫酸ナトリウム3重量部、アクリル酸エチル39.7重量部、アクリル酸n-ブチル49重量部、イタコン酸ジn-ブチル10重量部、およびフマル酸モノエチル1.3重量部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換を繰り返して酸素を十分除去した後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.1重量部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応を継続し、重合停止剤を添加して重合を停止した。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムAを得た。
【0064】
[実施例2]
(アクリルゴムBの製造)
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び減圧装置を備えた重合反応器に、水200重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量部、アクリル酸エチル39.7重量部、アクリル酸n-ブチル49重量部、フマル酸ジイソブチル10重量部、およびフマル酸モノエチル1.3重量部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換を繰り返して酸素を十分除去した後、亜硫酸水素ナトリウム0.18重量部および過硫酸カリウム0.15重量部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応を継続し、重合停止剤を添加して重合を停止した。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムBを得た。【0065】
[実施例3]
(アクリルゴムCの製造)
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び減圧装置を備えた重合反応器に、水200重量部、ドデシル硫酸ナトリウム3重量部、アクリル酸エチル39.2重量部、アクリル酸n-ブチル49.5重量部、フマル酸ジn-ブチル10重量部、およびフマル酸モノエチル1.3重量部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換を繰り返して酸素を十分除去した後、亜硫酸水素ナトリウム0.18重量部および過硫酸カリウム0.15重量部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応を継続し、重合停止剤を添加して重合を停止した。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムCを得た。
【0066】
[実施例4]
(アクリルゴムDの製造)
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び減圧装置を備えた重合反応器に、水200重量部、ドデシル硫酸ナトリウム3重量部、アクリル酸エチル39重量部、アクリル酸n-ブチル50.2重量部、イタコン酸ジn-ブチル7重量部、フマル酸ジエチル2.5重量部、およびフマル酸モノエチル1.3重量部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換を繰り返して酸素を十分除去した後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.1重量部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応を継続し、重合停止剤を添加して重合を停止した。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムDを得た。
【0067】
[実施例5]
(アクリルゴムEの製造)
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び減圧装置を備えた重合反応器に、水200重量部、ドデシル硫酸ナトリウム3重量部、アクリル酸エチル40.2重量部、アクリル酸n-ブチル49.5重量部、イタコン酸ジメチル3重量部、フマル酸ジn-ブチル6重量部、およびフマル酸モノエチル1.3重量部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換を繰り返して酸素を十分除去した後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.1重量部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応を継続し、重合停止剤を添加して重合を停止した。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムEを得た。
・・・
【0072】
(未架橋ゴムシートの作製)
上記で得られた各ゴム組成物をニーダーおよびオープンロールで混練し、厚さ2?2.5mmの未架橋性ゴム組成物である未架橋ゴムシートを作製した。
【0073】
(ムーニースコーチ試験)
得られた未架橋ゴムシートを用い、JIS K 6300に定めるムーニースコーチ試験を行った。
・・・
【0075】
(常態物性の試験)
得られた二次架橋物を用い、引張試験および硬さ試験の評価を行った。引張試験はJIS K 6251、硬さ試験はJIS K 6253に記載の方法に準じて行った。
【0076】
(耐酸性試験)
上記二次架橋物を2cm角に切り耐酸試験用のサンプルを作製した。また、500mlの水に硫酸を1ml、60%硝酸水溶液を1.5ml、酢酸を300μl添加し、pH1の酸性水溶液を調整した。調整した酸性水溶液50mlに上記サンプルを入れ、オートクレーブ中125℃で216時間保管した後、試験前後の体積変化率および常態物性の評価と同様にして硬さの変化の測定を行った。
【0077】
(耐熱老化試験)
上記二次架橋物を用い185℃の条件下で500時間加熱することによって、耐熱老化させた。耐熱老化後に、常態物性の評価と同様にして引張試験および硬さ試験の評価を行った。
【0078】
各試験方法より得られた実施例および比較例の試験結果を表1に示す。 各表中、t_(5)はJIS K6300のムーニースコーチ試験に定めるムーニースコーチ時間、EBはJIS K6251の引張試験に定める伸び、HSはJIS K6253の硬さ試験に定める硬さをそれぞれ意味する。
【0079】
得られた架橋性ゴム組成物を用いた評価の結果を表1に示す。
【表1】




(4)甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。

(甲4a)「【請求項1】
(1)(イ)アルキル基の炭素数が1?8のアルキルアクリレート及び/又はアルコキシアルキル基の炭素数が2?12のアルコキシアルキルアクリレート 95?99.9重量%及び
(ロ)反応性の異なるラジカル反応性不飽和基を2個以上有する重合性単量体0.1?5重量%
をラジカル重合開始剤の存在下に共重合して得られたゲル分率が5重量%以下であるアクリルゴム 100重量部、
(2)補強性充填剤 10? 200重量部及び
(3)有機過酸化物系加硫剤 0.1?10重量部
からなることを特徴とするアクリルゴム組成物。
【請求項2】前記(ロ)の反応性の異なるラジカル反応性不飽和基を2個以上有する重合性単量体がアリル(メタ)アクリレート及び/又はビニルシリルアルキル基を有する(メタ)アクリレートである請求項1記載のアクリルゴム組成物。
【請求項3】(イ)アルキル基の炭素数が1?8のアルキルアクリレート及び/又はアルコキシアルキル基の炭素数が2?12のアルコキシアルキルアクリレート95?99.9重量%及び(ロ)反応性の異なるラジカル反応性不飽和基を2個以上有する重合性単量体0.1?5重量%を水性媒体中でラジカル重合開始剤の存在下に重合中のpHを6?8に調整して共重合することを特徴とするゲル分率が5重量%以下であるアクリルゴムの製造方法。」

(甲4b)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリマー中のゲル分が非常に少なく、優れた加工性を有する有機過酸化物加硫可能なアクリルゴムを含む組成物及びこれに用いるアクリルゴムの製造方法に関するものであり、このアクリルゴムは単独で又は他の有機過酸化物加硫可能な天然ゴム或いは合成ゴムとのブレンドにより、加工性に優れた組成物及び良好な加硫物性を有する加硫成形体を提供することができる。
・・・
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記のような状況から、本発明は、アクリルゴムを製造するためのラジカル共重合の際の重合過程で加硫用ラジカル反応性不飽和基の反応を抑制する方法、また、得られたゴム共重合体に補強剤、有機過酸化物加硫剤等を配合した優れた加工性、加硫特性を有するアクリルゴム組成物を提供しようとしてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の課題を解決するため鋭意検討の結果、ラジカル反応性の異なる2個以上のラジカル反応性不飽和基を有する単量体を用い、アルキルアクリレート及び/又はアルコキシアルキルアクリレートと共重合する際、重合系のpHを6?8に調整することにより、ゲル分率が5重量%以下のゴム共重合体が得られ、これが加工性、加硫特性に優れることを見いだし本発明を完成させた。」

(甲4c)「【0006】
【発明の実施の形態】以下に本発明をさらに詳しく説明する。本発明において用いられる(イ)成分の炭素数1?8のアルキル基を有するアルキルアクリレートには、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n-,iso-)プロピルアクリレート、(n-,iso-,sec-,t- )ブチルアクリレート、(n-,iso-)ペンチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等が例示される。
【0007】また、炭素数2?12のアルコキシ置換アルキル基を有するアルコキシアルキルアクリレートとしては、例えばメトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシプロピルアクリレート、メトキシブチルアクリレート、メトキシペンチルアクリレート、エトキシメチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート、エトキシブチルアクリレート、エトキシペンチルアクリレート、ブトキシメチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート等が例示される。更に上記アルキルアクリレート又はアルコキシアルキルアクリレートの中でエチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレートが好ましい。以上のアルキルアクリレート及びアルコキシアルキルアクリレートは1種のみ又は2種以上を選んで使用することができる。
【0008】(ロ)成分の反応性の異なるラジカル反応性不飽和基を2個以上有するラジカル重合性単量体には、アリル(メタ)アクリレート、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ジシクロペンテニル基含有(メタ)アクリレート及び下記一般式(1)又は(2)で表わされるビニルシリルアルキル基を有する(メタ)アクリレート等が例示される。
・・・
【0010】これらの単量体はラジカル反応性不飽和基を2個以上、好ましくは2?10個含有するが、夫々ラジカル重合性が異なり、ラジカル重合性の大きい不飽和基が重合時に(イ)成分と共重合し、ラジカル重合性の小さい不飽和基は、pH6以上の領域では重合活性が特異的に低下するので、その殆どが不飽和基のまま残存し(ゴム共重合体のゲル分率が小さくなる。)、成形時に 150? 180℃の高温で有機過酸化物と反応しアクリルゴムを適度の速さで好ましい状態に加硫させ得ること、及びpHが8を超える領域ではラジカル重合中に(イ)成分のアルキルアクリレート、アルコキシアルキルアクリレートの一部が加水分解されるので好ましくないことを見いだした。(ロ)成分の単量体の使用量は(イ)成分と(ロ)成分の合計 100重量%に対し、 0.1?5重量%とされる。好ましくは 0.2?1重量%である。 0.1重量%未満では加硫速度が遅く、加硫が不十分となり、5重量%を超えると加硫物がもろくなり実用的でない。
【0011】上記ゴム共重合体には(イ)、(ロ)成分以外に必要に応じてこれら各成分以外のエチレン性不飽和単量体を本発明の目的を損なわないために単量体全量の15重量%以下の量で使用することができる。このような単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン等が例示される。」

(甲4d)「【0012】本発明で使用するアクリルゴム(具体的にはムーニー粘度[ML_(1+4)(100℃)]10?90が好ましい。)は乳化重合法、懸濁重合法のいずれでも製造することができるが、高反応率で、高分子量のポリマーが得られることから乳化重合法が好ましい。乳化重合法においては水性媒体中で界面活性剤、水溶性ラジカル重合開始剤の存在下に、pH調整剤を添加して重合中のpHを6?8に保ちながら重合する必要がある。このpH領域を外れると、加硫用官能基として温存すべきラジカル反応性不飽和基が重合中に反応し、そのためゲル分率が5%を超え易く、加硫特性が低下したり、アルキルアクリレート、アルコキシアルキルアクリレートが加水分解され易いので好ましくない。pH調整剤としては、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、重炭酸ソーダ、アンモニア水等のアルカリ性物質、或いは炭酸ソーダ/ホウ酸等の緩衝剤等が使用でき、pH調整剤を用いて重合中のpHが6?8から外れないようにして重合を行う。
【0013】乳化重合法に用いる界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル等のノニオン性界面活性などが使用できる。また、ラジカル重合開始剤としては、水溶性の開始剤が使われるが、過酸化水素水、過硫酸塩等の無機系の開始剤よりもt-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機系開始剤が好ましい。特にt-ブチルハイドロパーオキサイドは水溶性が高く好ましい開始剤であるが、半減期が10時間となる温度でさえ 160? 170℃と高いため、ロンガリット、L-アスコルビン酸等と組み合わせたレドックス系で使用される。更に硫酸第1鉄と併用すると触媒活性が高くなるが、重合時のpHが6以上では硫酸第1鉄が酸化されて効力が低下するので、エチレンジアミン四酢酸又はエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩、クエン酸等のキレート剤で硫酸第1鉄を保護する必要があり、t-ブチルハイドロパーオキサイド/ロンガリット/エチレンジアミン四酢酸又はエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩/硫酸第1鉄が最も好ましい触媒系である。
・・・
【0015】乳化重合法、懸濁重合法とも重合条件は10?90℃の重合温度で2?10時間程度で行われる。重合完了後、乳化重合品は塩析・水洗・脱水・乾燥し、懸濁重合品は濾過・水洗・脱水・乾燥等公知の方法で固形のアクリルゴムが得られる。本発明のアクリルゴム組成物に使用する(1)成分のアクリルゴムは、上記方法によりゲル分率を5%以下にコントロールすることができ、このゲル分率5%以下のアクリルゴムが該組成物に有効である。ゲル分率が5%を超えると、押出特性が悪く、更に加硫特性の向上がはかれない。」

(甲4e)「【0020】
【実施例】つぎに、本発明を合成例及び比較合成例、さらに実施例及び比較例により、より具体的に説明する。なお例中の部及び%はそれぞれ重量部と重量%を示す。
【0021】合成例1
窒素置換した攪拌機付密閉型反応器に、水 400部、ラウリル硫酸ナトリウム0.83部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(ノイゲンEA-170、第一工業製薬社製、商品名)0.55部、炭酸ナトリウム0.03部及びホウ酸 0.3部を仕込んで反応器内を75℃に調整した後、t-ブチルハイドロパーオキサイド(パーブチルH-69、日本油脂社製、商品名)0.20部、ロンガリット 0.4部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの1%水溶液0.06部、硫酸第一鉄の1%水溶液0.02部を添加し、(この時のpHは 7.1であった。)ついでエチルアクリレート、99.7部とアリルメタクリレート 0.3部の単量体混合物を3時間かけて滴下した。反応器内温を75℃に維持したまま更に1時間攪拌を続け反応を完結させた。上記乳化重合により得られたエマルジョンのpHは 6.8であった。このエマルジョンを硫酸ナトリウム水溶液を用いて塩析し、水洗・乾燥して98.5%の収率でアクリルゴム共重合体P-1(ムーニー粘度[ML_(1+4)(100℃)]は23であった。)を得た。コンデンサー付三角フラスコにP-1 10部及びアセトン50部を加えて加熱し、3時間リフラックス後のアセトン不溶分の量から計算したP-1のゲル分率は 0.5%であった。
【0022】合成例2?4
合成例1と同様にして表1に示される単量体組成で乳化重合し、塩析・水洗・乾燥してアクリルゴム共重合体P-2?4を得た。重合前の水層及び重合エマルジョンのpH、共重合体P-2?4のゲル分率、ムーニー粘度は表1に示すとおりであった。
【0023】合成例5
窒素置換した攪拌機付密閉型反応器に、水 400部、ラウリル硫酸ナトリウム0.83部、ノイゲンEA-170(前出)0.55部、炭酸水素ナトリウム 0.8部を仕込んで反応器内温を30℃に調整した後、過硫酸カリウム 0.2部、L-アスコルビン酸 0.3部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの1%水溶液0.06部、硫酸第一鉄の1%水溶液0.02部を添加し、(この時のpHは 7.8であった。)ついで表1に示される単量体の混合物を3時間かけて滴下した。反応器内温を30℃に維持したまま更に1時間攪拌を続け反応を完結させ、塩析・水洗・乾燥してアクリルゴム共重合体P-5(ムーニー粘度[ML_(1+4)(100℃)]は27であった。)を得た。重合エマルジョンのpH、共重合体P-5のゲル分率は表1に示すとおりであった。
・・・
【0028】
【表1】


【0029】実施例1?6及び比較例1?4
・・・
【0031】【表3】
・・・」

(5)甲第5号証に記載された事項
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。

(甲5a)「2 特許請求の範囲
(1)エチルアクリレート70?90重量%、ブトキシエチルアクリレート5?20重量%およびアリルグリシジルエーテル0.5?10重量%からなる単量体組成物を共重合することを特徴とするアクリル共重合体の製造法。
(2)前記単量体組成物を単量体全量に対し20重重量%以下、なかんづく3?15重量%トリメリット酸アルキルエステル(ただし、アルキルは炭素数が6?18のものを意味する)の存在下において共重合することを特徴とする特許請求の範囲第(1)項記戦の方法。」(第1頁左欄第3?14行)

(甲5b)「3.発明の詳細な説明
本発明はアルキルアタリレート共重合体の製造法に関する。さらに評しくは、エチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレートおよびアリルグリシジルエーテルをトリメリット酸アルキルエステルの存在下または不存在下において共重合することからなる、低温特性および耐油性のすぐれたアルキルアクリレート弾性共重合体を与えうるポリマーの製造法に関する。
・・・
本発明の目的は釣合いのとれた低温特性と高耐油性とを有するアクリレート弾性共重合体を提供することにある。」(第1頁左欄第15行?第2頁左上欄第13行)

(甲5c)「本発明の方法において、エチルアクリレートおよびブトキシエチルアクリレートと共重合される架橋性官能基を有する単量体としてアリルグリシジルエーテルが用いられ、その使用量が10%以上になると共重合体はその配合物がスコーチする傾向があり、また0、5%以下であると加硫が困難になるという問題が生じる。前記範囲内でアリルグリシジルエーテルをエチルアクリレートおよびブトキシエチルアクリレートと共に用いるときは、見られるアクリル共重合体をすぐれた弾性を有する加硫物に加硫することができ、低温特性と耐油性との釣合いのとれたすぐれた共重合体が見られる。
本発明の方法においては前述のごとく架橋性官能基を有する単量体としてアリルグリシジルエーテルを用いることを必須とするのであって、もし他の架橋性官能基を有する単量体、・・・またハロゲン含有単量体を用いるときは加硫の際に金型を汚染する傾向があるため何れも採用しがたい。」(第2頁右下欄第16行?第3頁左上欄第19行)

(甲5d)「共重合体の製造法は、アクリル共重合体を製造するのに通常用いられる方法が何れも可能であり、たとえば溶液重合法、懸濁重合法あるいは乳化重合法などが採用され、なかんづく乳化重合法が好ましい。・・・重合は-5?95℃の広い温度範囲にわたつて行なうことができるが、とくに5?40℃の温度で重合開始剤として遊離基生成触媒または酸化還元触媒系を使用すると良好な結果が見られる。
用いられうる重合触媒は公知の遊離基生成触媒および他の触媒が使用可能であり、たとえば過酸化水素、過酸化ベンゾイルなどの無機および有機の過酸化物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、ジーt-プチルハイドロパーオキサイドなどの有機ハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド-ジエチレントリアミン、パラメンタンハイドロバーオキサイド-硫酸第1鉄などの酸化還元触媒系および還元された金属触媒などがあけられる。
界面活性剤としては、陰イオン性、陽イオン性および非イオン性のものが有効であり、通常重合組成物全量に対し約0.2?5.0%が使用される。典型的な例はアルキルアリール硫酸塩、高級アルコール硫酸エステルソーダ塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ボリエチレングリコールモ/アルキルエステル、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールブロック共重合体およびこれらの混合物である。
生成せる共重合体は、たとえば塩と酸、アルコールなどを添加することによって分離し、析出する固体の共重合体を充分水洗したのち乾燥させる。」(第3頁左下欄第14行?第4頁左上欄第9行)

(甲5e)「つぎに実施例をあけて本発明の詳細な説明する。
実施例1?7
第1表に示す組成の単量体を用い、下記の処方で重合を行なった。
(成分) (重量部)
水 60
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5
ポリ工チレングリコールモノオレエート 2
単量体 40
パラメンタンハイドロパーオキサイド 0.5
アスコルビン酸 1.0
硫酸第1鉄 0.01
反応温度を35℃に保ち、反応容器中に単量体組成物を5時間にわたって連続添加した。生成ラテックスにメチルアルコールを添加して凝固せしめ、分離後洗浄および乾燥を行ない重合体をえた。
・・・


・・・


」(第4頁右上欄第10行?第5頁左下欄)

(6)甲第6号証に記載された事項
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。

(甲6a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】ハロゲン含有アクリレート系エラストマー100重量部にトリチオシアヌル酸0.1?5重量部、ジチオカルバミン酸誘導体0.1?10重量部およびチオウレア誘導体0.05?5重量部を配合してなる加硫可能なアクリレート系エラストマー組成物。」(第1頁左欄第1?6行)

(甲6b)「(産業上の利用分野)
本発明は加硫可能なハロゲン含有アクリレート系エラストマー組成物に関するものであり、更に詳しくは早期加硫に対してすぐれた加工安定性と貯蔵安定性を有し、しかも機械的特性及び圧縮永久ひずみ性にすぐれた加硫物を与えるハロゲン含有アクリレート系エラストマー組成物に関するものである。
・・・
(発明が解決しようとする問題点)
しかし、加硫遅延剤をさらに併用した場合においても数日の貯蔵により、徐々に架橋反応が進行し、配合物粘度が上昇する欠点があり、加工上の問題があった。
本発明の目的は前記欠点を解決し、貯蔵安定性に優れた加硫可能なハロゲン含有アクリレート系エラストマー組成物を提供することにある。」(第1頁左欄第8行?第2頁左欄第5行)

(甲6c)「本発明で使用されるハロゲン含有アクリレート系エラストマーは架橋点としてのハロゲンを含有する単量体と主成分としてのアクリレート系単量体、さらに必要ならば末端ビニルまたはビニリデン基を有する単量体と共重合させたエラストマーである。ハロゲン含有単量体としては、例えば、クロロ酢酸ビニル、ブロム酢酸ビニル、α-クロロプロピオン酸ビニル、クロロ酢酸アリル、ブロム酢酸アリル、アクリル酸クロロエチル、アクリル酸クロロ-n-プロピル、クロロメチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、クロルメチルスチレンなどが挙げられる。全単量体混合物中のハロゲン含有単量体単の使用量は通常0.1?10重量%の範囲であり、好ましくは0.5?5重量%の範囲である。アクリレート系単量体としてはハロゲン含有単量体と共重合可能なアルキルおよびアルコキシアルキルアクリレートから選択される一種以上が使用される。アルキルアクリレートの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレートなどのアルキル基が1?8個の炭素原子を有するアルキルアクリレートが挙げられる。アルコキシアルキルアクリレートの例としては、メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、メトキシエトキシエチルアクリレート、などのアルコキシ基ならびにアルキレン基がそれぞれ1?4個の炭素原子を有するアルコキシアルキルアクリレートが挙げられる。全単量体混合物中のアクリレート系単量体の使用量は通常30?99.9重量%の範囲である。」(第2頁左欄第11?39行)

(甲6d)「(実施例)
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例及び比較例中の部及び%はとくに断りのないかぎり重量基準である。
実施例1
通常の重合法によって合成したハロゲン含有アクリレートエラストマー〔^(13)C-NMR及び酸素燃焼フラスコ法より求めたハロゲン含有量から求めた組成(%):エチルアクリレート48.2、ブチルアクリレート30、メトキシエチルアクリレート20、クロロ酢酸ビニル1.8〕100部、ステアリン酸1部、MAFカーボンブラック(東海カーボン社製品シースト116)60部、アミン系老化防止剤(ユニロイヤル社製品ナウガード445)1部および第1表に示される加硫剤の所定量を6インチロールで混練し配合物を調製した。
得られた各配合物について、JISK-6300に従ってムーニースコーチタイムを測定した。配合物の貯蔵安定性を判定するため40℃80%湿度雰囲気中に3日間放置した後のムーニースコーチタイム、及び23℃50%湿度10日間放置した後のムーニースコーチタイムについて測定した。また各配合物を170℃で20分間プレス加硫を行なった。得られた各加硫物について、JISK-6301に準じて加硫物諸物性を測定した。得られた結果を第2表に示した。」(第3頁右欄第11?33行)

(7)甲第7号証に記載された事項
甲第7号証には、以下の事項が記載されている。

(甲7a)「

」(第1頁の「3.組成及び成分情報」の欄)

(8)甲第8号証に記載された事項
甲第8号証には、以下の事項が記載されている。

(甲8a)「

」(第23頁左欄?第24頁右欄)

(9)甲第9号証に記載された事項
甲第9号証には、以下の事項が記載されている。

(甲9a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a1)炭素数1?8のアルキル基を有するアルキルアクリレートならびに炭素数1?4のアルコキシ基および炭素数1?4のアルキレン基を有するアルコキシアルキルアクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物50?99.9重量%と、
(a2)ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンおよび不飽和カルボン酸のジシクロペンテニル基含有エステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋用単量体20.0?0.1重量%と、
(a3)前記(a1)成分および(a2)成分の単量体と共重合可能な共重合性単量体30?0重量%とからなるアクリル共重合体100重量部に対して、
(B)加硫剤として有機過酸化物0.1?10重量部と、
(C)架橋助剤として少なくとも2以上の(メタ)アクリレートを有する重量平均分子量150?2000のオリゴマー5?30重量部とを含有してなるアクリルエラストマー組成物。
【請求項2】
オリゴマー(C)がアルカンジオールジ(メタ)アクリレート系オリゴマー、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート系オリゴマー、フェノールアルキレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、イソシアヌル酸エチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート系オリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート系オリゴマーおよびグリセロール(メタ)アクリレート系オリゴマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のアクリルエラストマー組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載のアクリルエラストマー組成物を加硫して得られるアクリルエラストマー加硫物。」

(甲9b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルエラストマー組成物および該組成物を加硫して得られる加硫物に関する。
・・・
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のオリゴマーを架橋助剤として使用したアクリルエラストマー組成物が、優れた流動性、スコーチ安定性を有し、加工性が良好であることを見出し、さらに2次加硫の加硫工程を省略しても充分な物性、特に圧縮永久歪み性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
・・・
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2次加硫が不要になるため、加硫工程を省略することができる。また、加工時の流動性が良く、スコーチ安定性が良好であることから加工性に優れ、さらに、得られたアクリルエラストマー加硫物は圧縮永久歪み性に優れる。」

(甲9c)「【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0042】
はじめに、製造例、実施例および比較例で使用した成分を下記に示す。
・・・
【0043】
製造例1?7
表1に示す組成の単量体混合物A?G100部、ポリオキシエチレンドデシルエーテル1部、ドデシル硫酸ナトリウム0.4部および水50部をホモミキサーを用いて攪拌乳化し、あらかじめ水100部を仕込んだ反応容器中に投入し、液温を5℃に保ちつつ攪拌しながら充分に窒素置換した。ついでクメンハイドロパーオキサイド0.05部、硫酸第一鉄0.002部およびナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.05部を順次添加して重合を開始した。内溶液の温度を30℃に保ちながら約3時間攪拌して共重合反応を完結させた。得られた共重合生成物を約80℃の15%食塩水中に投入して共重合体を凝析させ、水洗、乾燥して単量体混合物A?Gを用いたアクリル共重合体A?Gを得た。
【0044】
【表1】


【0045】
実施例1?20および比較例1?4
製造例1?7によって得られたアクリル共重合体A?Gを、表2?4に示される配合処方にしたがって、8インチオープンロールで10分間混練し、実施例1?20および比較例1?4のアクリルエラストマー組成物を得た。得られたアクリルエラストマー組成物のムーニースコーチタイムを測定し、加硫特性をW型キュラストメーター(JSRトレーディング(株)製)を用いて測定した。また、アクリルエラストマー組成物を180℃で10分間加硫し、加硫物の物性を測定した。これらの測定方法を下記に示す。また、評価結果を表5?7に示し、加硫曲線を図1?4に示す。
【0046】
【表2】




(10)甲第10号証に記載された事項
甲第10号証には、以下の事項が記載されている。

(甲10a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋点となるハロゲン原子を有するアクリルゴム(A)100重量部、トリチオシアヌル酸(B)0.1?5重量部、ジチオカルバミン酸化合物(C)0.1?5重量部、チオウレア誘導体(D)0.05?5重量部、pH2?10の白色充填剤(E)5?200重量部およびハロゲン原子または(メタ)アクリロキシ基を有するオルガノシラン化合物(F)0.05?10重量部を含有してなるアクリルゴム組成物。
【請求項2】
架橋点となるハロゲン原子を有するアクリルゴム(A)中の、架橋点となるハロゲン原子を有する単量体単位量が0.1?10重量%である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
白色充填剤(E)の平均粒径が1?1,000nmである請求項1または2記載のアクリルゴム組成物。
【請求項4】
請求項1?3記載のアクリルゴム組成物を架橋してなる架橋物。」

(甲10b)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は架橋点となるハロゲン原子を有するアクリルゴム組成物に関し、詳しくは、貯蔵安定性と迅速な架橋性とを併有し、しかも圧縮永久ひずみの小さい架橋物を与えるアクリルゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
・・・
特に、架橋点となるハロゲン原子を有するアクリルゴムは、架橋速度が速く、その架橋物は圧縮永久歪みが小さく有用であるが、架橋前の貯蔵安定性に欠けるという難点を有している。
・・・
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、貯蔵安定性に優れ、かつ迅速架橋でき、さらに、圧縮永久歪みが小さい架橋物を与えるアクリルゴム組成物および該組成物を架橋して成る架橋物を提供することである。」

(甲10c)「【0006】
【発明の実施の形態】
本発明組成物に使用する架橋点となるハロゲン原子を有するアクリルゴム(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を主成分とし、架橋点となるハロゲン原子を有する単量体及び必要に応じてこれらと共重合可能な単量体とを共重合させて得られるゴムである。
【0007】
該アクリルゴム(A)の主成分である(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、および、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体が挙げられる。
【0008】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、炭素数1?8のアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸エチルおよび(メタ)アクリル酸n-ブチルが、特にアクリル酸エチルおよびアクリル酸n-ブチルが好ましい。
【0009】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、炭素数2?8のアルコキシアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチルなどが挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸2-エトキシエチルおよび(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルが、特に、アクリル酸2-エトキシエチルおよびアクリル酸2-メトキシエチル好ましい。
【0010】
アクリルゴム(A)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、50?99.9重量%、好ましくは60?95重量%、より好ましくは80?92重量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が少なすぎると、架橋物の耐熱性および耐油性が低下するおそれがある。
【0011】
本発明で使用する架橋点となるハロゲン原子を有するアクリルゴム(A)は、さらに、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位30?100重量%及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位70?0重量%からなるものであることが好ましい。
【0012】
架橋点となるハロゲン原子を有する単量体としては特に限定されないが、例えば、クロロ酢酸ビニル、2-クロロプロピオン酸ビニル、クロロ酢酸アリル等のハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル類;(メタ)アクリル酸クロロメチルエステル、(メタ)アクリル酸1-クロロエチルエステル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチルエステル、(メタ)アクリル酸1,2-ジクロロエチルエステル、(メタ)アクリル酸2-クロロプロピルエステル、(メタ)アクリル酸3-クロロプロピルエステル、(メタ)アクリル酸2,3-ジクロロプロピルエステル等の(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステル類;(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)エチルエステル、(メタ)2-(クロロアセトキシ)プロピルアクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセトキシ)プロピルエステル、(メタ)アクリル酸3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルエステル等の(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステル類;(メタ)アクリル酸2-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)エチルエステル、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)プロピルエステル等の(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステル類;クロロメチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、3-クロロプロピルビニルエーテル、2-クロロエチルアリルエーテル、3-クロロプロピルアリルエーテル等のハロゲン含有不飽和エーテル類;
【0013】
2-クロロエチルビニルケトン、3-クロロプロピルビニルケトン、2-クロロエチルアリルケトン等のハロゲン含有不飽和ケトン類;p-クロロメチルスチレン、p-クロロメチル-α-メチルスチレン、p-ビス(クロロメチル)スチレン等のハロメチル基含有芳香族ビニル化合物;N-クロロメチル(メタ)アクリルアミド、N-(クロロアセトアミドメチル)(メタ)アクリルアミド等のハロゲン含有不飽和アミド類;3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルアリルエーテル、p-ビニルベンジルクロロ酢酸エステル等のハロアセチル基含有不飽和単量体類等を挙げることができる。これらのハロゲン含有単量体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
架橋点となるハロゲン原子を有するアクリルゴム(A)中の、架橋点となるハロゲン原子を有する単量体単位の含有量は、通常、0.1?10重量%、好ましくは0.5?5重量%の範囲である。」

(甲10d)「【0018】
架橋点となるハロゲン原子を有するアクリルゴム(A)の例としては、ハロゲン含有(アクリル酸エステル共重合体)ゴム、ハロゲン含有(エチレン-アクリル酸エステル共重合体)ゴム、ハロゲン含有(エチレン-酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体)ゴム、ハロゲン含有(アクリル酸エステル-アクリロニトリル共重合体)ゴム、ハロゲン含有(アクリル酸エステル-酢酸ビニル-アクリロニトリル共重合体)ゴム、ハロゲン含有(アクリル酸エステル-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体)ゴムなどが挙げられるが、特にこれらのゴムに制限されるものではない。
【0019】
本発明で使用する架橋点となるハロゲン原子を有するアクリルゴム(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、ハロゲン含有単量体および必要に応じて用いられるこれらと共重合可能な単量体を含んでなる単量体混合物を重合することにより製造することができる。重合法としては、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法及び溶液重合法のいずれも用いることができるが、重合反応の制御の容易性等から、常圧下での乳化重合法によるのが好ましい。
【0020】
重合開始剤、重合停止剤、乳化剤等はアクリルゴムの重合に一般的に用いられる従来公知のものを使用できる。
【0021】
重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物、無機過酸化物などを用いることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.01?1.0重量部であることが好ましい。
【0022】
また、過酸化物開始剤は還元剤と組み合わせてレドックス系重合開始剤として使用することができる。還元剤としては、特に限定されないが、金属イオンを含有する化合物、スルホン酸化合物、アミン化合物などが挙げられる。これらの還元剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。還元剤の使用量は、過酸化物1重量部に対して0.03?10重量部であることが好ましい。
【0023】
重合停止剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウムなどが挙げられる。重合停止剤の使用量は、特に限定されないが、通常、全単量体100重量部に対して、0.1?2重量部である。
【0024】
乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤が好適に用いられる。これらの乳化剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。乳化剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.1?10重量部である。
【0025】
乳化重合における水の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、80?500重量部、好ましくは100?300重量部である。
【0026】
乳化重合においては、必要に応じて、分子量調整剤、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合副資材を使用することができる。
【0027】
分子量調整剤としては、例えば、メルカプタン類、スルフィド類、α-メチルスチレン2量体、四塩化炭素等が挙げられる。
【0028】
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。重合温度は通常0?70℃、好ましくは5?50℃の温度範囲で行なわれる。」

(甲10e)「【0052】
【実施例】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。これらの例中の(部)及び(%)は、特記しない限り重量基準である。ただし本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
(1)ムーニー粘度
JIS K6300に従って、100℃で測定した。
(2)ムーニースコーチ時間(t5)
アクリルゴム組成物のムーニースコーチ時間(t5)は、組成物調製直後、及び、該組成物を温度40℃、相対湿度80%の恒温恒湿器内に7日間貯蔵後に、JIS K6300に従って125℃で測定した。ムーニースコーチ時間t5の値が大きいほど、スコーチ安定性に優れる。
【0054】
(3)機械的強度
アクリルゴム組成物を170℃、10分間のプレスによって成形、架橋し、15cm×15cm×2mmの架橋シートを得、さらに後架橋のために170℃のオーブン内に4時間放置して作成した架橋シートを所定の形状に打ち抜いた試験片を用い、JIS K6251の引張試験に従って引張強度及び破断伸び(伸び)を、又、JIS K6253の硬さ試験に従って硬さをそれぞれ測定した。
【0055】
(4)圧縮永久歪み率
アクリルゴム組成物を170℃、15分間のプレスによって成形、架橋し、直径29mm、厚さ12.5mmの円柱型試験片を作製し、さらに後架橋のために170℃に4時間放置した。JIS K 6262に従い、上記試験片を25%圧縮させたまま、150℃の環境下で70時間置いた後、圧縮を解放して圧縮永久ひずみ率を測定した。
【0056】
実施例1
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び減圧装置を備えた重合反応器に、水200部、ラウリル硫酸ナトリウム3部、アクリル酸エチル48.2部、アクリル酸ブチル30部、アクリル酸メトキシメチル20部およびクロロ酢酸ビニル1.8部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換をくり返して酸素を十分除去した後、クメンハイドロパーオキシド0.005部およびナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.002部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応させた。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムを得た。
・・・
【0059】
実施例2、比較例1?4
表1に示す成分および部数の配合内容で、実施例1と同様にしてアクリルゴム組成物を調製し、実施例1と同様にして各試験を行った。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】




(11)甲第11号証に記載された事項
甲第11号証には、以下の事項が記載されている。

(甲11a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリル酸エステル単量体単位80?99.9重量%およびα,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位0.1?20重量%からなるアクリルゴム100重量部に対して、(B)合成シリカ5?200重量部、(C)Al_(2)O_(3)の含有率が5重量%以上で、且つ、SiO_(2)の含有率およびAl_(2)O_(3)の含有率の合計が60重量%以上である珪酸アルミニウム5?200重量部ならびに(D)架橋剤0.05?20重量部を配合してなるアクリルゴム組成物。
【請求項2】
架橋剤が多価アミン化合物である請求項1記載のアクリルゴム組成物。
【請求項3】
さらに、シランカップリング剤0.1?10重量部を配合してなる請求項1または2記載のアクリルゴム組成物。
【請求項4】
請求項1?3のいずれかに記載のアクリルゴム組成物を架橋してなる架橋物。」

(甲11b)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、貯蔵安定性が高く、機械的特性、耐熱性および耐圧縮永久歪み特性に優れる架橋物を与えるアクリルゴム組成物を提供することである。」

(甲11c)「【0007】
【発明の実施の形態】
本発明組成物に使用するアクリルゴム(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体〔アクリル酸エステル単量体または/およびメタクリル酸エステル単量体の意。以下、(メタ)アクリル酸メチルなど同様。〕単位80?99.9重量%およびα,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位0.1?20重量%からなるゴムである。
【0008】
該アクリルゴム(A)の主成分である(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体などが挙げられる。
【0009】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、炭素数1?8のアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸エチルおよび(メタ)アクリル酸n-ブチルが好ましい。
【0010】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、炭素数2?8のアルコキシアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチルなどが挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸2-エトキシエチルおよび(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルが、特に、アクリル酸2-エトキシエチルおよびアクリル酸2-メトキシエチルが好ましい。
【0011】
アクリルゴム(A)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、80?99.9重量%、好ましくは90?99.8重量%、より好ましくは95?99.5重量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が少なすぎると、架橋物の耐候性、耐熱性および耐油性が低下するおそれがある。
【0012】
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の内訳は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位30?100重量%及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位70?0重量%であることが好ましい。
・・・
【0016】
アクリルゴム(A)には、カルボキシル基以外の架橋点を有する単量体が共重合されていてもよい。このような単量体としては、ハロゲン原子、エポキシ基または水酸基を有する単量体;ジエン単量体;などが挙げられる。
【0017】
ハロゲン原子含有単量体としては特に限定されないが、例えば、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステル、ハロゲン含有不飽和エーテル、ハロゲン含有不飽和ケトン、ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物、ハロゲン含有不飽和アミド、ハロアセチル基含有不飽和単量体などが挙げられる。
ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステルとしては、クロロ酢酸ビニル、2-クロロプロピオン酸ビニル、クロロ酢酸アリル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステルとしては、メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸1-クロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸1,2-ジクロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロプロピル、(メタ)アクリル酸3-クロロプロピル、(メタ)アクリル酸2,3-ジクロロプロピル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)エチル、(メタ)2-(クロロアセトキシ)プロピルアクリル酸、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピル等が挙げられる。」

(甲11d)「【0026】
本発明で使用するアクリルゴム(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体、必要に応じて用いられるカルボキシル基以外の架橋点を有する単量体、および、必要に応じて用いられるこれらと共重合可能な単量体などの単量体混合物を、公知の方法によって重合することにより製造することができる。重合法としては、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法及び溶液重合法のいずれも用いることができるが、重合反応の制御の容易性等から、常圧下での乳化重合法によるのが好ましい。」

(甲11e)「【0040】
【実施例】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。これらの例中の〔部〕及び〔%〕は、特に断わりのない限り重量基準である。
【0041】
(1)貯蔵安定性
アクリルゴム組成物の貯蔵安定性は、ASTM D5289に従ってロータレス加硫試験機(ムービングダイレオメータMDR2000P、アルファテクノロジーズ社製)を使用して、先ず、混練直後の未架橋組成物の架橋特性(最低トルク)を温度180℃で測定する。次に、温度40℃、相対湿度80%の環境下に7日間放置した未架橋組成物の架橋特性(最低トルク)を温度180℃で測定し、混練直後と放置後との最低トルクの差を求める。差の値が0に近いほど、貯蔵安定性に優れる。
【0042】
(2)機械的特性及び耐熱性
アクリルゴム組成物を温度170℃、20分間のプレスによって成形、架橋し、縦15cm、横15cm、高さ2mmの成形品を得、さらに温度170℃のオーブン内に4時間放置して二次架橋して作成したシートを用い、所定の形状に打ち抜いた試験片を用いて以下の測定を行う。
先ず、JIS K6251の引張試験に従って引張強度及び破断伸び(伸び)を、又、JIS K6253の硬さ試験に従って硬さをそれぞれ測定する。次いで、JIS K6257に従い、温度175℃の環境下で336時間置いて空気加熱による熱老化を行い、再度伸び及び硬度を測定する。熱老化試料の測定値と常態試料(空気加熱老化前)の測定値とを対比し、伸びでは変化率(百分率)を、硬さでは変化量(差)を求める。これらの数値が0に近いほど耐熱性に優れる。
【0043】
(3)圧縮永久歪み率
アクリルゴム組成物を170℃、20分間のプレスによって成形、架橋して直径29mm、高さ12.5mmの円柱型試験片を作製し、さらに温度170℃で4時間放置して二次架橋する。JIS K 6262に従い、上記試験片を25%圧縮させたまま、温度175℃の環境下に70時間置いた後、圧縮を解放して圧縮永久歪み率を測定する。
【0044】
アクリルゴム製造例1
温度計、攪拌装置を備えた重合反応器に、水200部、ラウリル硫酸ナトリウム3部およびアクリル酸エチル50部、アクリル酸n-ブチル34部、アクリル酸2-メトキシエチル14%、フマル酸モノブチル2部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換をくり返して酸素を十分除去した後、クメンハイドロパーオキシド0.005部およびナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.002部を加えて常圧下、温度20℃で乳化重合を開始し、重合転化率が95%に達するまで反応を継続した。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムaを得た。
アクリルゴムaの組成は、アクリル酸エチル単量体単位50%、アクリル酸n-ブチル単量体単位34%、アクリル酸2-メトキシエチル単量体単位14%、フマル酸モノブチル単量体単位2%であり、ムーニー粘度(ML_(1+4)、100℃)は35であった。
・・・
【0046】
実施例1
アクリルゴムaを100部、合成シリカ1(Nipsil ER、日本シリカ社製、湿式シリカ、平均粒径32nm、BET比表面積90m^(2)/g、pH7.8)を30部、(C)成分の珪酸アルミニウム1を40部、ステアリン酸(軟化剤)を3部、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを1部、オクタデシルアミン(加工助剤)を0.5部および4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(ノクラックCD、大内新興社製、老化防止剤)を2部バンバリーに入れて50℃で混練し、その後、ヘキサメチレンジアミンカーバメート(架橋剤)0.6部および1,3-ジ-o-トリルグアニジン(架橋促進剤)2部を加えて40℃にてオープンロールで混練してアクリルゴム組成物を調製した。
得られたアクリルゴム組成物を用いて、貯蔵安定性、機械的特性(引張強度、伸び、硬さ)、耐熱性(伸び変化率、硬さ変化量)および圧縮永久歪み率を試験した。結果を表1に示す。
【0047】
実施例2および比較例1?5
合成シリカ、珪酸アルミニウム又はそれらの代替物として、表1に示す成分を、表1に示す量用いたこと以外は実施例1と同様に操作を行いアクリルゴム組成物を調製した。
得られた各々のアクリルゴム組成物を用いて、貯蔵安定性、機械的特性(引張強度、伸び、硬さ)、耐熱性(伸び変化率、硬さ変化量)および圧縮永久歪み率を試験した。結果を表1に示す。
・・・
【0049】
【表1】




(12)甲第12号証に記載された事項
甲第12号証には、以下の事項が記載されている。

(甲12a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有アクリルゴムと、塩素基含有シランカップリング剤と、シリカとを、有するアクリルゴム組成物。
【請求項2】
前記塩素基含有シランカップリング剤は、一般式X-Si(OR)_(3 )またはX-SiR(OR’)_(2 )で表され、前記式中のXが、塩素基を含有している請求項1に記載のアクリルゴム組成物。
【請求項3】
前記塩素基含有シランカップリング剤の含有量が、前記カルボキシル基含有アクリルゴム100重量部に対して、0.2?5重量部である請求項1または2に記載のアクリルゴム組成物。
【請求項4】
前記シリカが、湿式法で合成され、その後、焼成することにより得られる焼成シリカである請求項1?3のいずれかに記載のアクリルゴム組成物。
【請求項5】
前記シリカの含有量が、前記カルボキシル基含有アクリルゴム100重量部に対して、5?200重量部である請求項1?4のいずれかに記載のアクリルゴム組成物。
【請求項6】
前記アクリルゴム組成物は、架橋剤をさらに含有し、
前記架橋剤が、脂肪族ジアミン化合物、芳香族ジアミン化合物、およびジヒドラジド化合物から選択される1種または2種以上である請求項1?5のいずれかに記載のアクリルゴム組成物。
【請求項7】
請求項1?6のいずれかに記載のアクリルゴム組成物を架橋することにより得られる架橋物。」

(甲12b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴム組成物およびその架橋物に関し、さらに詳しくは、貯蔵安定性、スコーチ安定性、成形性に優れるアクリルゴム組成物、およびこのアクリルゴム組成物を架橋することにより得られ、耐熱性、耐圧縮永久歪み性に優れる架橋物に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、貯蔵安定性に優れ、架橋剤を配合して加工する際のスコーチ安定性が高く、さらに、架橋後においては、高い耐熱性、および耐圧縮永久歪み性を有するアクリルゴム組成物を提供することである。また、本発明は、このアクリルゴム組成物を架橋することにより得られる架橋物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、カルボキシル基含有アクリルゴムと、塩素基含有シランカップリング剤と、シリカとを含有する新規なアクリルゴム組成物が、貯蔵安定性に優れ、架橋剤を配合して加工する際にスコーチが起こり難いとともに、高い成形性を有し、しかも得られる架橋物が耐熱性、耐圧縮永久歪み性に優れることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
・・・
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、架橋剤を配合して加工する際に、貯蔵安定性が高く、スコーチ安定性に優れ、成形性に優れたアクリルゴム組成物を提供することができる。さらに、このアクリルゴム組成物を架橋することにより、耐熱性、耐圧縮永久歪み性に優れた架橋物を提供することができる。したがって、これらの特性を活かして、成形後に架橋して使用するシール、ホース、防振材、チューブ、ベルト、ブーツなどのゴム部品の材料として広い範囲で好適に使用できる。」

(甲12c)「【0018】
アクリルゴム組成物
本発明のアクリルゴム組成物は、少なくとも、カルボキシル基含有アクリルゴムと、塩素基含有シランカップリング剤と、シリカとを、含有する。以下、これらを順に説明する。
・・・
【0021】
本発明に用いるカルボキシル基含有アクリルゴムは、分子中に(メタ)アクリル酸エステル単量体〔アクリル酸エステル単量体および/またはメタクリル酸エステル単量体の意味。以下、(メタ)アクリル酸メチルなど同様。〕単位を好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上含有する重合体である。
・・・
【0023】
カルボキシル基含有アクリルゴムを構成する単量体単位の主原料である(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体などが挙げられる。
【0024】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、炭素数1?8のアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましい。
具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。
これらの中でも(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルが好ましい。
【0025】
上記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、炭素数2?8のアルコキシアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましい。
具体的には、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチルなどが挙げられる。
これらの中でも(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルが好ましく、特に、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸2-メトキシエチルが好ましい。
・・・
【0029】
また、カルボキシル基含有アクリルゴムには、カルボキシル基以外の架橋点を有する単量体が共重合されていてもよい。このような架橋点を有する単量体としては、ハロゲン基含有単量体、エポキシ基含有単量体、水酸基含有単量体、ジエン単量体などが挙げられる。
【0030】
上記ハロゲン基含有単量体としては特に限定されないが、たとえば、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステル、ハロゲン含有不飽和エーテル、ハロゲン含有不飽和ケトン、ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物、ハロゲン含有不飽和アミド、ハロアセチル基含有不飽和単量体などが挙げられる。
【0031】
ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステルとしては、クロロ酢酸ビニル、2-クロロプロピオン酸ビニル、クロロ酢酸アリル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸1-クロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸1,2-ジクロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロプロピル、(メタ)アクリル酸3-クロロプロピル、(メタ)アクリル酸2,3-ジクロロプロピル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)エチル、(メタ)2-(クロロアセトキシ)プロピルアクリル酸、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)プロピル等が挙げられる。
ハロゲン含有不飽和エーテルとしては、クロロメチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、3-クロロプロピルビニルエーテル、2-クロロエチルアリルエーテル、3-クロロプロピルアリルエーテル等が挙げられる。
ハロゲン含有不飽和ケトンとしては、2-クロロエチルビニルケトン、3-クロロプロピルビニルケトン、2-クロロエチルアリルケトン等が挙げられる。
ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物としては、p-クロロメチルスチレン、p-クロロメチル-α-メチルスチレン、p-ビス(クロロメチル)スチレン等が挙げられる。
ハロゲン含有不飽和アミドとしては、N-クロロメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ハロアセチル基含有不飽和単量体としては、3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルアリルエーテル、p-ビニルベンジルクロロ酢酸エステル等が挙げられる。」

(甲12d)「【0041】
カルボキシル基含有アクリルゴムは、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有単量体、必要に応じて用いられるカルボキシル基以外の架橋点を有する単量体およびこれらと共重合可能な単量体などの単量体混合物を、重合することにより製造することができる。重合法としては、公知の乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法および溶液重合法のいずれをも用いることができるが、重合反応の制御の容易性等から、常圧下での乳化重合法が好ましい。」

(甲12e)「【実施例】
【0087】
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。これらの例中の〔部〕および〔%〕は、特に断わりのない限り重量基準である。ただし本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、カルボキシル基含有アクリルゴム、アクリルゴム組成物およびその架橋物は、以下の方法により評価した。
【0088】
ムーニー粘度
JIS K6300の未架橋ゴム物理試験法のムーニー粘度試験に従って、測定温度100℃におけるカルボキシル基含有アクリルゴムのムーニー粘度ML_(1+4)を測定した。
【0089】
ムーニースコーチおよび貯蔵安定性
ムーニースコーチは、JIS K 6300-1に準じて測定した。具体的には、アクリルゴム組成物に対して、混練当日(混練してから30分以上6時間以内)に、温度125℃にて、L形ローターを用いて測定した。そして、この測定結果より、混練当日のアクリルゴム組成物のムーニースコーチ時間t5(単位は、分)、初期粘度V0、最低粘度Vmを求めた。ムーニースコーチ時間t5の値が大きいほど、スコーチ安定性に優れる。
【0090】
貯蔵安定性は、所定条件下に放置したアクリルゴム組成物のムーニースコーチ時間t5、放置前後における初期粘度変化量および最低粘度変化量を求めることにより評価した。以下、評価方法について説明する。
まず、アクリルゴム組成物を温度40℃、相対湿度80%の条件下、6日間放置した。その後、この6日間放置したアクリルゴム組成物に対して、上記と同じ条件にて、6日後(144時間後)のアクリルゴム組成物のムーニースコーチ時間t5、初期粘度V0、最低粘度Vmを測定した。6日後のムーニースコーチ時間が、混練当日のムーニースコーチ時間に近いほど、貯蔵安定性に優れることとなる。
【0091】
さらに、混練当日および6日後のアクリルゴム組成物の初期粘度V0、最低粘度Vmより、初期粘度変化量と、最低粘度変化量とを求めた。なお、初期粘度変化量は、「混練当日の初期粘度の値」から「6日後の初期粘度の値」を減ずることにより求めた。また、最低粘度変化量も、同様に、「混練当日の最低粘度」の値から「6日後の最低粘度の値」を減ずることにより求めた。初期粘度変化量および最低粘度変化量が、0に近いほど貯蔵安定性に優れることとなる。
【0092】
常態物性および耐熱性
アクリルゴム組成物を170℃、20分間のプレスによって成形・架橋し、縦15cm、横15cm、厚さ2mmのシートを作製し、さらに後架橋のために、温度を170℃としたオーブンに4時間放置することにより、シート状の架橋物とした。次いで、このシート状の架橋物を3号形ダンベルで打ち抜き、試験片を得た。
【0093】
そして、得られた試験片を用いて、常温で、引張強度、破断伸び(伸び)、100%引張応力および硬さを測定することにより、常態物性を評価した。
【0094】
次いで、上記と同様の試験片を、温度175℃の環境下に72時間置いた後、引張強度、引張破断伸び、100%引張応力および硬さを測定し、得られた結果と、常態物性とを対比することにより、耐熱性を評価した。引張強度、破断伸び、および100%引張応力は、JIS K6251の引張試験に従って測定した。また、硬さは、JIS K6253(デュロメータ タイプA)の硬さ試験に従って測定した。
【0095】
なお、耐熱性を評価するに際し、引張強度、引張破断伸び、および100%引張応力については、未加熱(常態物性)の試料の測定結果に対する加熱後の試料の測定結果を、変化率(百分率)で求めることにより評価した。また、硬さは、未加熱(常態物性)の試料の測定結果と、加熱後の試料の測定結果との差(変化量)を求めることにより評価した。これらの数値が、0に近いほど耐熱性に優れる。
【0096】
圧縮永久歪み性
架橋物のサイズを直径29mm、高さ12.5mmの円柱型とした以外は、常態物性測定用の架橋物と同様にして、円柱型の架橋物を作製し、円柱型の試験片を得た。そして、JIS K 6262に従い、得られた試験片を25%圧縮させた状態で、150℃の環境下に72時間置いた後、圧縮を解放して圧縮永久歪み率を測定した。圧縮永久歪み率は、数値が小さいほど変形しにくい材料となり優れる。
【0097】
カルボキシル基含有アクリルゴムの製造
温度計、攪拌装置を備えた重合反応器に、水200部、ラウリル硫酸ナトリウム3部、アクリル酸エチル49部、アクリル酸モノn-ブチル49部およびフマル酸モノ-n-ブチル2部を仕込んだ。その後、減圧脱気および窒素置換を2度行って酸素を十分除去した後、クメンハイドロパーオキシド0.005部およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.002部を加えて常圧下、温度30℃で乳化重合を開始し、重合転化率が95%に達するまで反応させた。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固し、水洗、乾燥してカルボキシル基含有アクリルゴムを得た。
得られたカルボキシル基含有アクリルゴムの組成は、アクリル酸エチル単量体単位49%、アクリル酸n-ブチル単量体単位49%およびフマル酸モノn-ブチル単量体単位2%(カルボキシル基含有量1.25×10^(-2)ephr)であり、ムーニー粘度(ML_(1+4)、100℃)は35であった。
【0098】
ハロゲン含有アクリルゴムの製造
温度計、攪拌装置を備えた重合反応器に、水200部、ラウリル硫酸ナトリウム3部、アクリル酸エチル49部、アクリル酸モノn-ブチル49部およびハロゲン含有単量体であるクロロ酢酸ビニル2部を仕込んだ。その後、減圧脱気および窒素置換を2度行って酸素を十分除去した後、クメンハイドロパーオキシド0.005部およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.002部を加えて常圧下、温度30℃で乳化重合を開始し、重合転化率が95%に達するまで反応させた。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固し、水洗、乾燥してハロゲン含有アクリルゴムを得た。
得られたハロゲン含有アクリルゴムの組成は、アクリル酸エチル単量体単位49%、アクリル酸n-ブチル単量体単位49%およびクロロ酢酸ビニル単量体単位2%であり、ムーニー粘度(ML_(1+4)、100℃)は40であった。
・・・
【0106】
比較例6
カルボキシル基含有アクリルゴムの代わりに、ハロゲン含有アクリルゴムを、架橋系として、ヘキサメチレンジアミンカーバメート(架橋剤)および1,3-ジ-o-トリルグアニジン(架橋促進剤)の代わりに、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン(架橋剤)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(架橋助剤)、ハイドロタルサイト(架橋助剤)および無水フタル酸(スコーチ防止剤)を使用した以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を調製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
【表1】




(13)甲第13号証に記載された事項
甲第13号証には、以下の事項が記載されている。

(甲13a)「【特許請求の範囲】
1 (A)シート重合法によってえられる活性塩素基を0.1?0.5重量%含有する加硫性アクリルゴム、
(B)トリチオシアヌール酸、
(C)ジチオカルバミン酸金属塩、
(D)2価の有機カルボン酸のイミド誘導体および(または)1価の有機スルホン酸のアミド誘導体および
(E)オルガノシラン化合物
を含有してなるアクリルゴム組成物。」(第1頁左欄第3?13行)

(甲13b)「[発明が解決しようとする課題]
本発明が解決しようとする課題は、上にも述べたように、貯蔵安定性、スコーチ安定性、迅速加硫性および耐圧縮永久歪み性のバランスのとれたアクリルゴム加硫性組成物をうることにある。
[課題を解決するための手段]
本発明者らは前記の問題点を解決すべく種々のアクリル系エラストマーおよび加硫系について鋭意検討を重ねた結果、分子内に均一に分布された少量の活性塩素基を含有する加硫性アクリルゴムに対し、トリチオシアヌール酸およびジチオカルバミン酸金属塩を加硫剤とし、2価の有機カルボン酸のイミド誘導体および(または)1価の有機スルホン酸のアミド誘導体、およびオルガノシラン化合物を加硫助剤として使用することにより、早期加硫に対してすぐれた貯蔵安定性と加工安定性を有し、しかも耐熱老化性、耐圧縮永久歪み性などの面ですぐれた加硫物がえられることを見出し、本発明を完成するに至った。」(第2頁右上欄第5行?左下欄第5行)

(甲13c)「該加硫性アクリルゴムは、ムーニー粘度(ML_(1+4)(100℃))が20?60であるものが好ましい。ムーニー粘度が20未満のものではゴム配合物をうるばあい、粘着性のため、混練作業性を損う傾向があり、60をこえると配合物のムーニー粘度が高く流動性不足のため、成型加工性を損う傾向がある。
前記加硫性アクリルゴムを構成する活性塩素基含有単量体は、アクリルゴムに架橋点である活性塩素基を導入するためのものであり、このような活性塩素基を含有する単量体であればとくに限定されない。
前記活性塩素基含有単量体の具体例としては、たとえばアリルクロライド、2-クロロエチルビニルエーテル、2-クロロエチルアクリレート、モノクロロ酢酸ビニル、クロロメチルスチレンなどがあげられるが、これらの中でもモノクロロ酢酸ビニル、クロロメチルスチレンが迅速架橋反応性の点から好ましい。これらは1種を用いてもよく、2種以上併用してもよい。
前記アクリル酸エステルにもとくに限定はないが、その具体例としては、たとえばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートなどの炭素数1?8のアルキル基を有するアクリレート、メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレートなどの炭素数1?4のアルコキシ基ならびにアルキレン基を有するアルコキシアルキルアクリレートなどがあげられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
・・・
シード重合の際の活性塩素含有単量体とアクリル酸エステル(要すれば使用されるアクリロニトリルなどを含む)との割合は、通常活性塩素基含有単量体0.3?5.0部(重量部、以下同様)、好ましくは0.5?1.5部に対してアクリル酸エステル95?99.7部、好ましくは98.5?99.5部である。活性塩素基含有単量体の割合が0.3部未満では加硫物に良好な耐圧縮永久歪み性を与える架橋密度を与えることができず、5.0部をこえると、加硫後、過剰な活性塩素基の存在により耐熱性、耐圧縮永久歪み性にわるい影響を与えることとなる。」(第2頁右下欄第16行?第3頁左下欄第6行)

(甲13d)「アクリル酸エステルの重合法としては、乳化重合、懸濁重合、溶液重合などが公知であるが、本発明に用いる加硫性アクリルゴムは前述のように架橋点となる活性塩素基含有単量体を分子内に均一に分布させるために、シード重合法、すなわち、シード重合開始によるモノマーの連続追加法のエマルション重合処方により製造することが必要である。
前記シード重合にはレドックス開始剤が用いられる。該レドックス開始剤系としては、酸化剤としてたとえば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、過酸化水素、クメンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、パラメンタンハイドロパーオキシドなどのハイドロパーオキシドなど、還元剤としてたとえば硫酸第一鉄のような2価の鉄塩など、二次還元剤としてたとえば亜硫酸水素ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、そのナトリウム塩などを用いる系があげられる。これらのうちでは低温域における重合反応性の点からクメンハイドロパーオキシド/硫酸第一鉄/ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの開始剤系が好ましい。
前記重合反応における反応温度は加硫性アクリルゴムの重合度(ムーニー粘度)を調節する点から0?30℃、さらには0?10℃であるのが好ましく、またモノマー連続追加時間は塩素基含有単量体の分子内分布を均一化する点から90?360分間、さらには240?300分間であるのが好ましい。」(第3頁左下欄第7行?右下欄第17行)

(甲13e)「つぎに本発明を製造例および実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はかかる製造例および実施例に限定されるものではない。
製造例1(シード乳化重合)
第1表に示す単量体混合物(A)400部の10%に相当する40部と、ポリオキシエチレンドデシルエーテル6部、ドデシル硫酸ナトリウム2部および水600部を反応容器に仕込み、液温を2℃に保ちつつ撹拌しながら充分にチッ素置換を行なった。
ついでこの混合物にクメンハイドロパーオキシド0.5部、硫酸第一鉄0.01部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部を順次添加し、重合反応が始まり温度が上昇し始めたとき直ちに残りの単量体混合物(A)360部を約5時間にわたって少量ずつ滴下した。その際、内容液の温度は5℃に保ち、滴下終了後も90分間撹拌して共重合反応を完結させた。
えられた共重合体乳化物を約80℃の15%食塩水中に投入して共重合体を凝析させ、加硫性アクリルゴムをえた。
えられた加硫性アクリルゴム100部、ステアリン酸1部、HAFカーボンブラック50部、トリチオシアヌール酸0.5部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛2部を6インチロールで20分間混練し、アクリルゴム組成物(組成物No.1)をえた。
えられた組成物について、JIS K 6300「未加硫ゴム試験方法」に準拠して、ムーニースコーチ試験を行なった。また組成物に180℃で10分間プレス加硫を行なってえられた加硫物を、JIS K 6301「加硫ゴム物理試験方法」に準拠して特性を評価した。えられた結果を、加硫性アクリルゴムのムーニー粘度とともに第2表に示す。なおVmは最低粘度を示す。さらに組成物を180℃で加硫硬化する際の加硫曲線を、オシレイティングディスクレオメーター(東洋精機(株)製)を用いて測定した結果にもとづいて作成した。加硫曲線を第1図に示す。
・・・
第1表


第2表


〔注〕*:エポキシ当量(エポキシ基1個を含む樹脂のグラム数)
第2表、第1図および第2図に示す結果から明らかなように、活性塩素基含有単量体としてモノクロロ酢酸ビニルまたはクロロメチルスチレンを用いてえられた加硫性アクリルゴムを用いたばあいに、加硫の迅速な組成物がえられ、かつシード乳化重合処方によってえられたエラストマーを用いたばあいには、ムーニースコーチ試験においてt_(5)が大きくt_(Δ35-5)が小さいスナッピー(snappy)な加硫特性を示す組成物がえられ、本発明に用いる迅速加硫加能なアクリルゴムは、シード重合法による乳化重合法によってのみえられることが明らかである。
実施例1?7および比較例1?3
製造例1でえられた加硫性アクリルゴム100部、HAFカーボンブラック50部、N-クロロヘキシル-N-クロロメチルチオベンジル-2-スルホンアミド0.5部、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン0.5部および第3表に示される加硫剤を6インチロールで20分間混練してアクリルゴム組成物(組成物No.9?18)を調製し、調製直後および室温で2週間放置したのちの組成物についてムーニースコーチ試験を行なった。また組成物を180℃で10分間加硫してえられた加硫物の特性を評価した。さらに175℃で70時間放置後の特性の変化を調べた。また、150℃、70時間、25%圧縮の条件で圧縮永久歪みを調べた。さらに、実施例1および2、比較例1および3については、製造例1と同様にして加硫曲線を作成した。第4表および第3図にその結果を示す。
第3表


第4表


」(第5頁左下欄第11行?第9頁上欄)


第6 当審の判断
当審は、本件発明4?6、8に係る特許については特許異議申立を却下することとし、また、当審が通知した取消理由A?C及び申立人がした申立理由1?4によっては、いずれも、本件発明1?3、7、9?26に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。

取消理由A-1及びA-2と、申立理由4-1及び4-3とは同じ趣旨であるので、以下「2 取消理由について」「(1)取消理由A(明確性)について」において、併せて検討する。
また、取消理由B及び取消理由Cと申立理由1-2及び申立理由2-2は、いずれも甲第2号証を主引用例とする新規性及び進歩性の理由であるから、以下「取消理由B(新規性)、取消理由C(進歩性)について」において、併せて検討する。

1 申立ての却下
上記「第2 訂正の適否についての判断」及び「第3 特許請求の範囲の記載」で示したとおり、請求項4?6、8は、本件訂正により削除されているので、請求項4?6、8についての申立てを却下する。

2 取消理由について
(1)取消理由A(明確性)について
取消理由A-1及びA-2の概要は、「第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要」「1 取消理由通知の概要」「(1)取消理由A(明確性)」に記載したとおりであるが、以下のアに再掲する。また、申立理由4-1及び申立理由4-3も同じ内容である。

ア 取消理由A
取消理由A-1:本件訂正前の特許請求の範囲の請求項11の「金前記属硫酸塩」の記載は不明確である。また、請求項11を直接的又は間接的に引用する請求項12?26も同様である。
取消理由A-2:本件訂正前の特許請求の範囲の請求項22の「肪族3級アミン系架橋促進剤」の記載について、どのようなものを意図しているのか不明確である。請求項22を直接的又は間接的に引用する請求項23?26も同様である。

イ 判断
取消理由A-1について、本件訂正の訂正事項7により「金前記属硫酸塩」は「前記金属硫酸塩」に訂正され、その意義が明確なものとなった。
また、取消理由A-2についても、本件訂正の訂正事項8により「肪族3級アミン系架橋促進剤」は「脂肪族3級アミン系架橋促進剤」と訂正され、その意義が明確なものとなった。
したがって、取消理由A-1及び取消理由A-2、さらには、申立理由4-1及び申立理由4-3は、本件訂正により解消されたといえる。

ウ 小括
以上のとおり、取消理由A-1、取消理由A-2並びに申立理由4-1及び申立理由4-3は、本件訂正により解消されたといえるから、理由がない。

(2)取消理由B(新規性)、取消理由C(進歩性)について
取消理由B及び取消理由Cと申立理由1-2及び申立理由2-2は、いずれも甲第2号証を主引用例とする新規性及び進歩性の理由であるから、以下併せて検討する。

ア 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証の(甲2g)の段落【0020】及び【0022】及び段落【0027】の【表1】について、実施例3に着目すると、
「攪拌機、コンデンサー、温度計及び窒素ガス導入口を備えた重合容器に脱イオン水 200重量部を仕込み、窒素置換後30℃に昇温させ、
上記重合容器中へ過硫酸アンモニウム 0.2重量部、硫酸第1鉄の1%水溶液 0.2重量部を添加した後、あらかじめメトキシエチルアクリレート30重量部、エチルアクリレート108重量部、ブチルアクリレート60重量部、モノクロロ酢酸ビニル2重量部、10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液20重量部、10%ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル(HLB約17)40重量部、酸性亜硫酸ソーダ 0.1重量部及び脱イオン水 140重量部をホモミキサーで混合乳化したモノマー乳化液を攪拌下に3時間を要して均一に滴下させ、さらに30℃で1時間反応させ重合を終え、エマルジョンを得て、
このエマルジョンを80℃に加温し攪拌下で20%芒硝水溶液を添加してエマルジョンを破壊した後、冷却、水洗、乾燥する、
アクリル系ゴムポリマーの製造方法」の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。

甲2発明の「メトキシエチルアクリレート」は、本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステル」であって「(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルであり、前記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル及び/または(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルである単量体」に相当する。

甲2発明の「エチルアクリレート」及び「ブチルアクリレート」は、本件明細書の(本b)の段落【0015】?【0016】の記載からみて、本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステル」であって「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」である「単量体」に相当する。

甲2発明の「モノクロロ酢酸ビニル」は、本件明細書の(本c)の段落【0025】?【0026】の記載からみて、本件発明1の「架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体」に相当する。

甲2発明の「10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液」の「ラウリル硫酸ナトリウム」は、本件明細書の段落【0032】の記載からみて、本件発明1の「アニオン性乳化剤」に相当する。

甲2発明の「10%ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル(HLB約17)」の「ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル」は、本件明細書の(本d)の段落【0031】の記載からみて、本件発明1の「ノニオン性乳化剤」に相当する。

甲2発明の「過硫酸アンモニウム」は、本件明細書の(本e)の段落【0036】の記載からみて、本件発明1の「重合開始剤」に相当する。

甲2発明の「硫酸第1鉄」は、本件明細書の(本e)の段落【0037】の記載からみて、本件発明1の「還元状態にある金属イオン含有化合物」に相当する。

以上を踏まえると、甲2発明の「・・・重合容器中へ過硫酸アンモニウム 0.2重量部、硫酸第1鉄の1%水溶液 0.2重量部を添加した後、あらかじめメトキシエチルアクリレート30重量部、エチルアクリレート108重量部、ブチルアクリレート60重量部、モノクロロ酢酸ビニル2重量部、10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液20重量部、10%ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル(HLB約17)40重量部、酸性亜硫酸ソーダ 0.1重量部及び脱イオン水 140重量部をホモミキサーで混合乳化したモノマー乳化液を攪拌下に3時間を要して均一に滴下させ、さらに30℃で1時間反応させ重合を終え、エマルジョンを得」る工程は、本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステルと、架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体とを含む単量体であって、前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルであり、前記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル及び/または(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルである単量体を、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との存在下に、還元状態にある金属イオン含有化合物の還元剤と重合開始剤を用いて乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程」に相当する。

甲2発明の「20%芒硝水溶液」の「芒硝」は「硫酸ナトリウム」であるから(甲第7号証の(甲7a)を参照)、本件発明1の「金属硫酸塩」に相当するといえる。
そして、甲2発明の「エマルジョンを80℃に加温し攪拌下で20%芒硝水溶液を添加してエマルジョンを破壊」する工程は、その内容からみて、本件発明1の「前記乳化重合液を金属硫酸塩と接触させて凝固し含水クラムを得る凝固工程」に相当するといえる。

甲2発明の「エマルジョンを破壊した後」の「水洗、乾燥する」工程は、本件発明1の「前記含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と、 洗浄した前記含水クラムを乾燥する乾燥工程」に相当するといえる。

そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
「(メタ)アクリル酸エステルと、架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体とを含む単量体であって、前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルであり、前記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル及び/または(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルである単量体を、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との存在下に、還元状態にある金属イオン含有化合物の還元剤と重合開始剤を用いて乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、
前記乳化重合液を金属硫酸塩と接触させて凝固し含水クラムを得る凝固工程と、
前記含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と、
洗浄した前記含水クラムを乾燥する乾燥工程と、
を備えるアクリルゴムの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:「還元剤」について、本件発明1では、「還元状態にある金属イオン含有化合物と、当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩との少なくとも2種の還元剤」を用いるのに対し、甲2発明では、「還元状態にある金属イオン含有化合物」の「還元剤」である「硫酸第1鉄」のみを用いる点。

(イ)判断
相違点1について検討する。

甲2発明では、「乳化重合工程」において、「硫酸第1鉄」のみを用い、「ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩との少なくとも1種の還元剤」を併用するものではないから、相違点1は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明ということはできない。

次に、甲2発明において、「硫酸第1鉄」ともに、「当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩との少なくとも1種の還元剤」を用いることができるかについて検討する。
甲第2号証には、「乳化重合工程」において、「重合開始剤」とともに用いる「還元剤」の記載は、(甲2g)の実施例以外にはないから、甲第2号証から、甲2発明において、「硫酸第1鉄」ともに、「当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩との少なくとも1種の還元剤」を用いることを動機づけることはできない。

次に他の甲号証の記載をみると、「重合開始剤」とともに2種の「還元剤」を用いることについて、以下の記載がある。
甲第3号証の(甲3e)の段落【0043】には「重合開始剤としての有機過酸化物および無機過酸化物は、還元剤と組み合わせることにより、レドックス系重合開始剤として使用することができる。組み合わせて用いる還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;・・・;アスコルビン酸およびその塩;・・・などの還元性を有する無機塩などが挙げられる。これらの還元剤は単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる」ことが記載されている。
甲第4号証の(甲4d)の段落【0013】には「ラジカル重合開始剤としては、水溶性の開始剤が使われるが、過酸化水素水、過硫酸塩等の無機系の開始剤よりもt-ブチルパーオキシピバレート、・・・等の有機系開始剤が好ましい。・・・、半減期が10時間となる温度でさえ 160? 170℃と高いため、ロンガリット、L-アスコルビン酸等と組み合わせたレドックス系で使用される。更に硫酸第1鉄と併用すると触媒活性が高くなるが、重合時のpHが6以上では硫酸第1鉄が酸化されて効力が低下するので、エチレンジアミン四酢酸又はエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩、クエン酸等のキレート剤で硫酸第1鉄を保護する必要があり、t-ブチルハイドロパーオキサイド/ロンガリット/エチレンジアミン四酢酸又はエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩/硫酸第1鉄が最も好ましい触媒系である」ことが記載されている。
甲第13号証の(甲13d)には、「該レドックス開始剤系としては、酸化剤としてたとえば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、過酸化水素、クメンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、パラメンタンハイドロパーオキシドなどのハイドロパーオキシドなど、還元剤としてたとえば硫酸第一鉄のような2価の鉄塩など、二次還元剤としてたとえば亜硫酸水素ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、そのナトリウム塩などを用いる系があげられる。これらのうちでは低温域における重合反応性の点からクメンハイドロパーオキシド/硫酸第一鉄/ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの開始剤系が好ましい」ことが記載されている。
さらに、甲第1号証の(甲1h)の実施例1?6には、「p-メンタンハイドロパーオキシド」の重合開始剤とともに「硫酸第一鉄」及び「ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート」を用いた例が、甲第4号証の(甲4e)の段落【0021】の合成例1には、「t-ブチルハイドロパーオキサイド」の重合開始剤とともに「硫酸第一鉄」及び「ロンガリット(ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート二水和物)」を用いた例が、甲第5号証の(甲5e)の実施例1?7には、「パラメンタンハイドロパーオキサイド」の重合開始剤とともに「硫酸第一鉄」及び「アスコルビン酸」を用いた例が、甲第9号証の(甲9c)及び甲第13号証の(甲13e)には、「クメンハイドロパーオキサイド」の重合開始剤とともに「硫酸第一鉄」及び「ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート」を用いた例がそれぞれ記載されており、いずれも、「有機過酸化物」である「重合開始剤」と「硫酸第一鉄」と「ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩」の少なくとも1種の組み合わせである。

一方、甲第2号証には、「硫酸第一鉄」と他の還元剤とを併用することも記載されていないし、甲2発明は、「重合開始剤」として「過硫酸アンモニウム」である「無機過酸化物」と「硫酸第一鉄」を用いるものであることから、上記甲第1、4、5、15号証の「有機過酸化物」である「重合開始剤」と「硫酸第一鉄」と「ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩」の少なくとも1種の組み合わせが知られていたとしても、敢えて、「重合開始剤」を「無機酸化物」から「有機酸化物」に代えて、さらに、「硫酸第一鉄」と「ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩」の少なくとも1種とを組み合わせて用いることまでの動機付けがあるとはいえない。
また、上記摘記のほか甲第1号証の(甲1f)の段落【0018】や甲第5号証の(甲5d)の記載からみて「重合開始剤」ともに用いる「還元剤」として、「還元剤」を用いない例や「還元剤」を1種のみ用いる例もあり、その選択肢は多くなるものであることを勘案すると、他の甲号証を参酌したとしても、甲2発明において、「重合開始剤」とともに用いる「還元剤」として「硫酸第一鉄」に加えて、さらに、「還元状態にある金属イオン含有化合物と、当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩との少なくとも2種の還元剤」を用いるものとする積極的な動機付けがあるとはいえない。

したがって、甲2発明において、「還元剤」として、「硫酸第1鉄」のみを用いる代わりに、「還元状態にある金属イオン含有化合物と、当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩との少なくとも2種の還元剤」を用いるものとすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明とはいえず、また、甲第2号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項から容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件発明2?3、7、9?26について
本件発明2?3、7、9?26は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、上記イ(イ)で示した理由と同じ理由により、甲第2号証に記載された発明とはいえず、また、甲第2号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ まとめ
以上のとおり、取消理由B及びC、並びに、申立理由1-2及び2-2は、理由がない。

3 特許異議申立書に記載された申立理由について
申立理由1-2(新規性)、申立理由2-2(進歩性)、申立理由4-1及び申立理由4-3(明確性)は、上記「2 取消理由について」において検討されたので、以下、他の申立理由について検討を行う。

(1)申立理由1-1(新規性)、申立理由2-1(進歩性)について
ア 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の(甲1h)の段落【0032】及び段落【0033】の【表1】について、実施例1に着目すると、
「アクリル酸メチル10部、アクリル酸エチル48部、アクリル酸ブチル31部、メタアクリル酸エステル(I)10部、クロロ酢酸ビニル1.0部から構成される単量体混合物100部、
ラウリル硫酸ナトリウム4部、
p-メンタンハイドロパーオキシド0.25部、
硫酸第一鉄0.01部、
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.025部
およびソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.04部を、
窒素置換したオートクレーブに仕込み、反応温度30℃で単量体の転化率が90%に達するまで反応させ、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン0.5部を加え、反応を停止させ、
次に、反応生成物を取り出して水蒸気を吹き込み、未反応単量体を除去し、
このようにして得たゴムラテックスを、0.25%の塩化カルシウム水溶液に加えて凝固させ、凝固物を十分水洗して約90℃で3時間乾燥させた、共重合体の製造方法」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。

甲1発明の「アクリル酸メチル」、「アクリル酸エチル」、「アクリル酸ブチル」は、本件明細書の(本b)の段落【0015】?【0016】の記載からみて、本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステル」であって「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」である「単量体」に相当する。

甲1発明の「クロロ酢酸ビニル」は、本件明細書の(本c)の段落【0025】?【0026】の記載からみて、本件発明1の「架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体」に相当する。

甲1発明の「ラウリル硫酸ナトリウム」は、本件明細書の段落【0032】の記載からみて、本件発明1の「アニオン性乳化剤」に相当する。

甲1発明の「p-メンタンハイドロパーオキシド」は、本件明細書の(本e)の段落【0036】の記載からみて、本件発明1の「重合開始剤」に相当する。

甲1発明の「硫酸第1鉄」は、本件明細書の(本e)の段落【0037】の記載からみて、本件発明1の「還元状態にある金属イオン含有化合物」に相当する。

甲1発明の「ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート」は、本件発明1の「還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートである還元剤」に相当する。

以上を踏まえると、甲1発明の「アクリル酸メチル10部、アクリル酸エチル48部、アクリル酸ブチル31部、メタアクリル酸エステル10部、クロロ酢酸ビニル1.0部から構成される単量体混合物100部、ラウリル硫酸ナトリウム4部、p-メンタンハイドロパーオキシド0.25部、硫酸第一鉄0.01部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.025部およびソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.04部を、窒素置換したオートクレーブに仕込み、反応温度30℃で単量体の転化率が90%に達するまで反応させ」る工程は、「アニオン性乳化剤」である「ラウリル硫酸ナトリウム」の存在下で、「還元剤」である「硫酸第一鉄」及び「ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート」及び「重合開始剤」である「p-メンタンハイドロパーオキシド」を用いて重合を行っているから、本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステルと、架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体とを含む単量体であって、前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステルである単量体を、アニオン性乳化剤との存在下に、還元状態にある金属イオン含有化合物と、当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートとの2種の還元剤と重合開始剤を用いて乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程」に相当するといえる。

甲1発明の「0.25%の塩化カルシウム水溶液に加えて凝固させ」る工程と、本件発明1の「前記乳化重合液を金属硫酸塩と接触させて凝固し含水クラムを得る凝固工程」とは、「前記乳化重合液を凝固し含水クラムを得る凝固工程」である点で共通する。

甲1発明の「凝固物を十分水洗して約90℃で3時間乾燥させ」る工程は、本件発明1の「前記含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と、 洗浄した前記含水クラムを乾燥する乾燥工程」に相当するといえる。

そして、甲1発明は、「アクリル酸メチル」、「アクリル酸エチル」、「アクリル酸ブチル」であるアクリル酸エステルを主成分とする「アクリル系共重合体」である「共重合体の製造方法」に係る発明であり、(甲1a)の請求項1(甲1b)の段落【0003】の記載からみて「アクリル系共重合体ゴム」を製造するものといえるから、本件発明1と同様に、「アクリルゴムの製造方法」であるといえる。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「(メタ)アクリル酸エステルと、架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体とを含む単量体であって、前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルであり、前記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル及び/または(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルである単量体を、アニオン性乳化剤との存在下に、還元状態にある金属イオン含有化合物と、当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩との少なくとも2種の還元剤と重合開始剤を用いて乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、
前記乳化重合液を凝固し含水クラムを得る凝固工程と、
前記含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と、
洗浄した前記含水クラムを乾燥する乾燥工程と、
を備えるアクリルゴムの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点2:「乳化重合工程」における乳化剤として、本件発明1では、「ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤」を用いるのに対し、甲1発明では、「ラウリル硫酸ナトリウム」である「アニオン性乳化剤」のみしか用いていない点。

相違点3:「乳化重合液を凝固し含水クラムを得る凝固工程」について、本件発明1では、「金属硫酸塩と接触させて」行うのに対し、甲1発明では、「0.25%の塩化カルシウム水溶液に加えて」行う点。

(イ)判断
事案に鑑みて、相違点3について検討する。

本件発明の課題は、本件明細書の(本a)の段落【0005】の記載からみて「常態物性を良好に保ちながら、優れた貯蔵安定性を実現できるアクリルゴムの製造方法を提供すること」であるといえ、段落【0006】には「上記目的を達成するために鋭意研究した結果、アクリルゴムの製造方法において特定の2種の乳化剤を組み合わせて乳化重合を行い、得られる乳化重合液を金属硫酸塩を用いて凝固し得られる含水クラムを洗浄・乾燥することで、常態物性を良好に保ちながら、優れた貯蔵安定性を実現できるアクリルゴムを製造できることを見出した」ことが記載されている。
そして、本件明細書の(本k)には、「凝固剤」として「金属硫酸塩」を用いた実施例1?6は、「金属硫酸塩」ではない「塩化カルシウム」又は「塩化ナトリウム」を用いた比較例1?2に比べて、「常態物性」は両者に大きな差異がないものの、「ムーニースコーチ試験」及び「貯蔵後のムーニースコーチ試験」の結果が改善された「アクリルゴム」を得られたこと、すなわち、本件発明の上記課題を解決できることが確認されている。

甲1発明では、「凝固剤」として「塩化カルシウム」を用いるものであり、「金属硫酸塩」を用いるものではないから、相違点3は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ということはできない。

次に、甲1発明において、「凝固剤」として「塩化カルシウム」に代えて、「金属硫酸塩」を用いることができるかについて検討する。
甲第1号証の(甲1f)には、「凝固方法」について「・・・通常の凝固方法、例えば硫酸アルミニウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、硫安水溶液などの金属塩水溶液と混合してラテックスを凝固させた後、乾燥させることによって共重合体ゴムを得ることができる」ことが記載されているものの、「硫酸アルミニウム」を「塩化カルシウム」と同列に扱っているに過ぎず、敢えて「塩化カルシウム」に代えて「金属硫酸塩」を用いることを動機づけるものとはいえず、特に、「常態物性を良好に保ちながら、優れた貯蔵安定性を実現」することを目的として、「金属硫酸塩」を用いることを積極的に動機づける記載はない。
また、この点について、他の甲号証をみても、甲第2号証の(甲2g)の段落【0020】?【0024】実施例1?5において「芒硝水溶液」すなわち「硫酸ナトリウム水溶液」を用いた例、甲第4号証の(甲4e)の段落【0021】?【0022】の合成例1?4において「硫酸ナトリウム水溶液」を用いた例が記載され、甲第5号証の(甲5d)に「生成せる共重合体に、たとえば塩と酸、アルコールなどを添加することによって分離し、析出する固体の共重合体を充分水洗したのち乾燥させる」ことは記載されるのみであり、甲1発明において、「塩化カルシウム」に代えて「金属硫酸塩」を用いることを積極的に動機づける記載があるとはいえない。
したがって、甲第1?13号証をみても、甲1発明において、「凝固剤」として「塩化カルシウム」に代えて「金属硫酸塩」を用いることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(ウ)小括
したがって、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1号証に記載された発明ではなく、また、甲1号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

ウ 本件発明2?3、7、9?26について
本件発明2?3、7、9?26は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、上記イ(イ)で示した理由と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ まとめ
以上のとおり、申立理由1-1及び2-1は、理由がない。

(2)申立理由2-3(進歩性)について
ア 甲第3号証に記載された発明
甲第3号証の(甲3f)の段落【0063】の実施例1に着目すると、
「重合反応器に、水200重量部、ドデシル硫酸ナトリウム3重量部、アクリル酸エチル39.7重量部、アクリル酸n-ブチル49重量部、イタコン酸ジn-ブチル10重量部、およびフマル酸モノエチル1.3重量部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換を繰り返して酸素を十分除去した後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.1重量部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応を継続し、
重合停止剤を添加して重合を停止し、
得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、
水洗、乾燥する、アクリルゴムの製造方法」の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。

甲3発明の「アクリル酸エチル」、「アクリル酸n-ブチル」は、本件明細書の(本b)の段落【0015】?【0016】の記載からみて、本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステル」であって「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」である「単量体」に相当する。

甲3発明の「ドデシル硫酸ナトリウム」は、甲第3号証の(甲3e)の段落【0039】の記載からみて「アニオン性乳化剤」であるから、本件発明1の「アニオン性乳化剤」に相当する。

甲3発明の「クメンハイドロパーオキサイド」は、本件明細書の(本e)の段落【0036】の記載からみて、本件発明1の「重合開始剤」に相当する。

甲3発明の「ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート」は、本件発明1の「還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートである還元剤」に相当する。

以上を踏まえると、甲3発明の「重合反応器に、水200重量部、ドデシル硫酸ナトリウム3重量部、アクリル酸エチル39.7重量部、アクリル酸n-ブチル49重量部、イタコン酸ジn-ブチル10重量部、およびフマル酸モノエチル1.3重量部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換を繰り返して酸素を十分除去した後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.1重量部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応を継続」する工程は、本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体であって、前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステルである単量体を、アニオン性乳化剤との存在下に、当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートである還元剤と重合開始剤を用いて乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程」に相当するといえる。

甲3発明の「得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ」る工程と、本件発明1の「前記乳化重合液を金属硫酸塩と接触させて凝固し含水クラムを得る凝固工程」とは、「前記乳化重合液を凝固し含水クラムを得る凝固工程」である点で共通する。

甲3発明の「凝固させ」る工程の後の、「水洗、乾燥する」工程は、本件発明1の「前記含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と、 洗浄した前記含水クラムを乾燥する乾燥工程」に相当するといえる。

そうすると、本件発明1と甲3発明とは、
「(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体であって、前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルであり、前記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル及び/または(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルである単量体を、アニオン性乳化剤との存在下に、還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩である還元剤と重合開始剤を用いて乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、
前記乳化重合液を凝固し含水クラムを得る凝固工程と、
前記含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と、
洗浄した前記含水クラムを乾燥する乾燥工程と、
を備えるアクリルゴムの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点4:「(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体」について、本件発明1では、「架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体」を含むのに対し、甲3発明では、含まない点。

相違点5:「乳化重合工程」における乳化剤として、本件発明1では、「ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤」を用いるのに対し、甲3発明では、「ドデシル硫酸ナトリウム」である「アニオン性乳化剤」のみしか用いていない点。

相違点6:「乳化重合工程」において用いる「還元剤」について、本件発明1では、「還元状態にある金属イオン含有化合物と、当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩との少なくとも2種の還元剤」を用いるのに対し、甲3発明では、「ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート」のみを用いる点。

相違点7:「乳化重合液を凝固し含水クラムを得る凝固工程」について、本件発明1では、「金属硫酸塩と接触させて」行うのに対し、甲3発明では、「塩化カルシウム水溶液」を用いて行う点。

(イ)判断
事案に鑑みて、相違点7について、すなわち、甲3発明において、「凝固剤」として「塩化カルシウム」に代えて、「金属硫酸塩」を用いることができるかについて検討する。

甲第3号証には、アクリルゴムの製造方法において、乳化重合後の乳化重合液の「凝固剤」の種類や選択方法について何ら記載されておらず、また、他の甲号証をみても、上記「(1)申立理由1-1(新規性)、申立理由2-1(進歩性)について」「イ 本件発明1について」「(イ)判断」で述べたとおり、「凝固剤」として「塩化カルシウム」に代えて「金属硫酸塩」を用いることを積極的に動機づける記載があるとはいえないから、甲3発明において、「凝固剤」として「塩化カルシウム」に代えて「金属硫酸塩」を用いることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(ウ)小括
したがって、上記相違点4?6について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

ウ 本件発明2?3、7、9?26について
本件発明2?3、7、9?26は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、上記イ(イ)で示した理由と同じ理由により、甲第3号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ まとめ
以上のとおり、申立理由2-3は、理由がない。

(3)申立理由2-4(進歩性)について
ア 甲第4号証に記載された発明
甲第4号証の(甲4e)の段落【0021】の合成例1に着目すると、
「窒素置換した攪拌機付密閉型反応器に、水 400部、ラウリル硫酸ナトリウム0.83部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(ノイゲンEA-170、第一工業製薬社製、商品名)0.55部、炭酸ナトリウム0.03部及びホウ酸 0.3部を仕込んで反応器内を75℃に調整した後、t-ブチルハイドロパーオキサイド(パーブチルH-69、日本油脂社製、商品名)0.20部、ロンガリット 0.4部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの1%水溶液0.06部、硫酸第一鉄の1%水溶液0.02部を添加し、(この時のpHは 7.1であった。)ついでエチルアクリレート、99.7部とアリルメタクリレート 0.3部の単量体混合物を3時間かけて滴下し、
反応器内温を75℃に維持したまま更に1時間攪拌を続け反応を完結させ、エマルジョンを得て、
このエマルジョンを硫酸ナトリウム水溶液を用いて塩析し、
水洗・乾燥した、アクリルゴム共重合体P-1(ムーニー粘度[ML_(1+4)(100℃)]は23であった。)の製造方法」の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲4発明とを対比する。

甲4発明の「エチルアクリレート」は、本件明細書の(本b)の段落【0015】?【0016】の記載からみて、本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステル」であって「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」である「単量体」に相当する。

甲4発明の「ラウリル硫酸ナトリウム」は、本件明細書の段落【0032】の記載からみて、本件発明1の「アニオン性乳化剤」に相当する。

甲4発明の「ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(ノイゲンEA-170、第一工業製薬社製、商品名)」は、本件明細書の(本d)の段落【0031】の記載からみて、本件発明1の「ノニオン性乳化剤」に相当する。

甲4発明の「t-ブチルハイドロパーオキサイド(パーブチルH-69、日本油脂社製、商品名)」は、甲第4号証の(甲4d)の段落【0013】の記載からみて、本件発明1の「重合開始剤」に相当する。

甲4発明の「硫酸第一鉄」は、本件明細書の(本e)の段落【0037】の記載からみて、本件発明1の「還元状態にある金属イオン含有化合物」に相当する。

甲4発明の「ロンガリット」は、「ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート二水和物」の別名であるから、本件発明1の「還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートである還元剤」に相当する。

以上を踏まえると、甲4発明の「窒素置換した攪拌機付密閉型反応器に、水 400部、ラウリル硫酸ナトリウム0.83部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(ノイゲンEA-170、第一工業製薬社製、商品名)0.55部、炭酸ナトリウム0.03部及びホウ酸 0.3部を仕込んで反応器内を75℃に調整した後、t-ブチルハイドロパーオキサイド(パーブチルH-69、日本油脂社製、商品名)0.20部、ロンガリット 0.4部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの1%水溶液0.06部、硫酸第一鉄の1%水溶液0.02部を添加し、(この時のpHは 7.1であった。)ついでエチルアクリレート、99.7部とアリルメタクリレート 0.3部の単量体混合物を3時間かけて滴下し、反応器内温を75℃に維持したまま更に1時間攪拌を続け反応を完結させ、エマルジョンを得」る工程は、「アニオン性乳化剤」である「ラウリル硫酸ナトリウム」及び「ノニオン性乳化剤」である「ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル」の存在下で「エチルアクリレート」等を重合しているから、本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体であって、前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステルである単量体を、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との存在下に、還元状態にある金属イオン含有化合物と、当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの2種の還元剤と重合開始剤を用いて乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程」に相当するといえる。

甲4発明の「エマルジョンを硫酸ナトリウム水溶液を用いて塩析」する工程は、「乳化重合液」である「エマルジョン」を「金属硫酸塩」である「硫酸ナトリウム」に接触させるものであるから、本件発明1の「乳化重合液を金属硫酸塩と接触させて凝固し含水クラムを得る凝固工程」に相当する。

甲4発明の「エマルジョンを硫酸ナトリウム水溶液を用いて塩析」した後の「水洗・乾燥」する工程は、本件発明1の「前記含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と、 洗浄した前記含水クラムを乾燥する乾燥工程」に相当するといえる。

そうすると、本件発明1と甲4発明とは、
「(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体であって、前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルであり、前記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル及び/または(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルである単量体を、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との存在下に、還元状態にある金属イオン含有化合物と、当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩との少なくとも2種の還元剤と重合開始剤を用いて乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、
前記乳化重合液を金属硫酸塩と接触させて凝固し含水クラムを得る凝固工程と、
前記含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と、
洗浄した前記含水クラムを乾燥する乾燥工程と、
を備えるアクリルゴムの製造方法」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点8:「(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体」について、本件発明1では、「架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体」を含むのに対し、甲4発明では、含まない点。

(イ)判断
相違点8について検討する。

甲第4号証の(甲4a)の請求項1には、「アクリルゴム」について、「(イ)アルキル基の炭素数が1?8のアルキルアクリレート及び/又はアルコキシアルキル基の炭素数が2?12のアルコキシアルキルアクリレート」ともに、「(ロ)反応性の異なるラジカル反応性不飽和基を2個以上有する重合性単量体」を共重合して得ることが記載されている。
この「(ロ)反応性の異なるラジカル反応性不飽和基を2個以上有する重合性単量体」について、(甲4c)の段落【0008】には「(ロ)成分の反応性の異なるラジカル反応性不飽和基を2個以上有するラジカル重合性単量体には、アリル(メタ)アクリレート、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ジシクロペンテニル基含有(メタ)アクリレート及び・・・ビニルシリルアルキル基を有する(メタ)アクリレート等が例示される」と記載されており、また、段落【0011】には、「(イ)、(ロ)成分以外に必要に応じてこれら各成分以外のエチレン性不飽和単量体」について、「スチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン等が例示される」と記載されているが、本件明細書の(本c)の段落【0025】?【0026】に列記される「架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体」を用いることは記載されていない。
また、(甲4c)の段落【0011】の「塩化ビニル」も「架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体」と解したとしても、「塩化ビニル」は「(イ)、(ロ)成分以外に必要に応じてこれら各成分以外のエチレン性不飽和単量体」であって、かつ、複数列記される成分の1つにすぎず、甲4発明において、「(イ)、(ロ)成分以外に必要に応じてこれら各成分以外のエチレン性不飽和単量体」を用いるものとし、さらに、「塩化ビニル」を選択することを積極的に動機づける記載があるとはいえない。

次に他の甲号証の記載をみると、甲第1号証の(甲1e)の段落【0013】?【0014】、甲第2号証の(甲2e)の段落【0010】、甲第3号証の(甲3d)の段落【0021】、甲第6号証の(甲6a)(甲6c)、甲第10号証の(甲10a)、(甲10c)の段落【0011】?【0013】、甲第11号証の(甲11c)の段落【0016】?【0017】、甲第12号証の(甲12c)の段落【0029】?【0031】、甲第13号証の(甲13c)には、クロロ酢酸ビニル等の「架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体」について、アクリルゴムを製造するための単量体として用いることが例示され、さらに、甲第1号証の(甲1h)の実施例1?5、甲第2号証の実施例3、甲第6号証の(甲6d)の実施例1、甲第10号証の(甲10e)の実施例1?2、甲第13号証の(甲13e)の実施例1?2、5、7?8には、実際に、クロロ酢酸ビニル等の「架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体」について、アクリルゴムを製造するための単量体として用いた例も記載されている。
一方で、甲第10号証の(甲10b)には、「特に、架橋点となるハロゲン原子を有するアクリルゴムは、架橋速度が速く、その架橋物は圧縮永久歪みが小さく有用であるが、架橋前の貯蔵安定性に欠けるという難点を有している」ことが記載され、甲第5号証の(甲5c)には「本発明の方法においては前述のごとく架橋性官能基を有する単量体としてアリルグリシジルエーテルを用いることを必須とするのであって、もし他の架橋性官能基を有する単量体、・・・またハロゲン含有単量体を用いるときは加硫の際に金型を汚染する傾向があるため何れも採用しがたい」ことも記載されており、「架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体」を用いることについての問題点も記載されている。

以上を踏まえると、甲第4号証には、アクリルゴムを製造するための単量体として「架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体」を積極的に用いる動機付けとなる記載はないから、他の甲号証には、アクリルゴムを製造するための単量体として、クロロ酢酸ビニル等の「架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体」を用い得ることは記載されているものの、甲4発明において、積極的に用いることを動機づける記載まではあるとはいえない。

(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲4号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

ウ 本件発明2?3、7、9?26について
本件発明2?3、7、9?26は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、上記イ(イ)で示した理由と同じ理由により、甲第4号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ まとめ
以上のとおり、申立理由2-4は、理由がない。

(4)申立理由2-5(進歩性)について
ア 甲第5号証に記載された発明
甲第5号証の(甲5e)の実施例1に着目すると、
「水 60重量部
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5重量部
ポリエチレングリコールモノオレエート 2重量部
エチルアクリレート88部、ブトキシエチルアクリレート6部及びアリルグリシジルエーテル6部の組成の単量体 40重量部
パラメンタンハイドロパーオキサイド 0.5重量部
アスコルビン酸 1.0重量部
硫酸第1鉄 0.01重量部
を用い、反応温度を35℃に保ち、反応容器中に単量体組成物を5時間にわたって連続添加し、生成ラテックスにメチルアルコールを添加して凝固せしめ、分離後洗浄および乾燥を行う、アクリル共重合体の製造方法」の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲5発明とを対比する。

甲5発明の「エチルアクリレート」は、本件明細書の(本b)の段落【0015】?【0016】の記載からみて、本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステル」であって「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」である「単量体」に相当する。

甲5発明の「ブトキシエチルアクリレート」と、本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステル」であって「(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルであり、前記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル及び/または(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルである単量体」とは、「(メタ)アクリル酸エステル」であって「(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル」である点で共通する。

甲5発明の「ラウリル硫酸ナトリウム」は、本件明細書の段落【0032】の記載からみて、本件発明1の「アニオン性乳化剤」に相当する。

甲5発明の「ポリエチレングリコールモノオレエート」は、本件発明1の「ノニオン性乳化剤」に相当する。

甲5発明の「パラメンタンハイドロパーオキサイド」は、本件明細書の(本e)の段落【0036】の記載からみて、本件発明1の「重合開始剤」に相当する。

甲5発明の「硫酸第1鉄」は、本件明細書の(本e)の段落【0037】の記載からみて、本件発明1の「還元状態にある金属イオン含有化合物」に相当する。

甲5発明の「アスコルビン酸」は、本件発明1の「還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるアスコルビン酸である還元剤」に相当する。

以上を踏まえると、甲5発明の「水60重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.5重量部ポリエチレングリコールモノオレエート2重量部、エチルアクリレート80部、ブトキシエチルアクリレート6部及びアリルグリシジルエーテル6部の組成の単量体40重量部、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.5重量部、アスコルビン酸1.0重量部、硫酸第1鉄0.01重量部を用い、反応温度を35℃に保ち、反応容器中に単量体組成物を5時間にわたって連続添加」する工程は、本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体であって、前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルである単量体を、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との存在下に、還元状態にある金属イオン含有化合物と、当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるアスコルビン酸の2種の還元剤と重合開始剤を用いて乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程」に相当するといえる。

甲5発明の「生成ラテックスにメチルアルコールを添加して凝固せしめ」る工程と、本件発明1の「前記乳化重合液を金属硫酸塩と接触させて凝固し含水クラムを得る凝固工程」とは、「前記乳化重合液を凝固し含水クラムを得る凝固工程」である点で共通する。

甲5発明の「凝固せしめ」た後の「分離後洗浄および乾燥を行う」工程は、本件発明1の「前記含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と、 洗浄した前記含水クラムを乾燥する乾燥工程」に相当するといえる。

そうすると、本件発明1と甲5発明とは、
「(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体であって、前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルである単量体を、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との存在下に、還元状態にある金属イオン含有化合物と、当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩との少なくとも2種の還元剤と重合開始剤を用いて乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、
前記乳化重合液を凝固し含水クラムを得る凝固工程と、
前記含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と、
洗浄した前記含水クラムを乾燥する乾燥工程と、
を備えるアクリルゴムの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点9:「(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体」について、本件発明1では、「架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体」を含むのに対し、甲5発明では、含まない点。

相違点10:「(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル」について、本件発明1では、「(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル及び/または(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル」であるのに対し、甲5発明では、「ブトキシエチルアクリレート」である点。

相違点11:「乳化重合液を凝固し含水クラムを得る凝固工程」について、本件発明1では、「金属硫酸塩と接触させて」行うのに対し、甲5発明では、「メチルアルコール」を用いて行う点。

(イ)判断
事案に鑑みて、相違点11について、すなわち、甲5発明において、「凝固剤」として「メチルアルコール」に代えて、「金属硫酸塩」を用いることができるかについて検討する。

甲第5号証には、アクリルゴムの製造方法において、乳化重合後の乳化重合液の「凝固剤」の種類や選択方法について、(甲5d)に「生成せる共重合体に、たとえば塩と酸、アルコールなどを添加することによって分離し、析出する固体の共重合体を充分水洗したのち乾燥させる」と記載されるのみであり、他の甲号証をみても、「凝固剤」として「メチルアルコール」に代えて「金属硫酸塩」を用いることを積極的に動機づける記載があるとはいえないから、甲5発明において、「凝固剤」として「メチルアルコール」に代えて「金属硫酸塩」を用いることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(ウ)小括
したがって、上記相違点9?10について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

ウ 本件発明2?3、7、9?26について
本件発明2?3、7、9?26は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、上記イ(イ)で示した理由と同じ理由により、甲第5号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ まとめ
以上のとおり、申立理由2-5は、理由がない。

(5)申立理由3(サポート要件)について
申立理由3の概要は、「第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要」「2 特許異議申立理由の概要」「(3)申立理由3(サポート要件)」に記載したとおりであるが、以下のアに再掲する。

ア 申立理由3の概要
本件発明1の「カルボキシル基含有単量体、エポキシ基含有単量体及びハロゲン基含有単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性単量体」、「ノニオン性乳化剤」、および「アニオン性乳化剤」の種類及び使用量は、本件特許の課題を解決する上で大きく影響するものと考えられるところ、本件明細書の実施例1?6では、これらの種類及び使用量についてごく一部の例しか示されていない。従って、実施例等の記載に基づいて、「架橋性単量体」、「ノニオン性乳化剤」、および「アニオン性乳化剤」の種類及び使用量を特定していない請求項1に係る本件特許の範囲まで、拡張ないし一般化できるとはいえない。同様に、請求項1に直接的又は間接的に従属する請求項2?26に係る発明の範囲まで、拡張ないし一般化できるとはいえない。

イ 判断
a 特許法第36条第6項第1号の考え方について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って検討する。

b 本件発明の課題
本件発明の課題は、本件明細書の(本a)の段落【0005】の記載からみて、「常態物性を良好に保ちながら、優れた貯蔵安定性を実現できるアクリルゴムの製造方法を提供すること」であるといえる。

c 判断
上記申立理由3の「架橋性単量体」について、本件訂正により、「架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体」と「ハロゲン基含有単量体」のみに特定された。そして、本件明細書の(本c)の段落【0025】?【0026】には本件発明1の「アクリルゴムの製造方法」に用いる「ハロゲン基含有単量体」の具体例が記載されている。段落【0027】には、その使用量について「単量体中の架橋性単量体の含有量は、通常0.01?20重量%、好ましくは0.1?10重量%、より好ましくは0.5?5重量%である。架橋性単量体の含有量を上記範囲とすることにより、得られるアクリルゴムを架橋物としたときの機械的特性、及び耐圧縮永久歪み性を高度にバランスさせることができ好適である」と記載されており、この「単量体中の架橋性単量体の含有量」は、「アクリルゴム」を製造する際に配合する一般的な量であるといえる。

また、上記申立理由3の「ノニオン性乳化剤」および「アニオン性乳化剤」について、本件明細書の(本d)の段落【0031】には「ノニオン性乳化剤」の具体例に記載され、段落【0032】には「アニオン性乳化剤」の具体例に記載され、これらの「ノニオン性乳化剤」および「アニオン性乳化剤」の具体例は、「乳化重合」に用いる乳化剤として一般的なものであるといえる。
さらに、段落【0033】には、「ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との使用割合」みついて、「ノニオン性乳化剤/アニオン性乳化剤の重量比で、通常1/99?99/1、好ましくは10/90?80/20、より好ましくは25/75?75/25、さらに好ましくは50/50?75/25、最も好ましくは65/35?75/25の範囲である。ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との割合をこの範囲にすることで、乳化重合時における重合装置(たとえば、重合槽)へのポリマーなどの付着による汚れの発生を抑制しつつ、凝固剤としての金属硫酸塩の使用量を低減することが可能となり、結果として、最終的に得られるアクリルゴム中における凝固剤量を低減することができ、これにより得られるゴム架橋物の耐水性を向上させることができる。また、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との割合をこの範囲にすることで、乳化作用を高めることができるため、乳化剤自体の使用量をも低減することができ、結果として、最終的に得られるアクリルゴム中に含まれる乳化剤の残留量を低減することができ、これにより、得られるアクリルゴムの耐水性をより高めることができ」ることが記載されている。
また、段落【0034】には、「乳化剤の使用量」について、「重合に用いる単量体100重量部に対する、用いる乳化剤の総量で、通常0.01?10重量部、好ましくは0.1?5重量部、より好ましくは1?3重量部の範囲である」ことが記載されており、この使用量は、「乳化重合」を行う際の「乳化剤の使用量」として一般的な範囲内のものである。

そして、本件明細書の(本k)の実施例において本件発明の具体的な実施例・比較例が示され、実施例1?6において、「架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体」として「モノクロロ酢酸ビニル」を、「ノニオン性乳化剤」として「ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体」を、「アニオン性乳化剤」として「ラウリル硫酸ナトリウム」、「ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステルポリオキシエチレンアルキルフェノールリン酸エステルのナトリウム塩」及び「ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル」を用いた例が記載されている。そして、「凝固剤」として「金属硫酸塩」を用いた実施例1?6は、「金属硫酸塩」ではない「塩化カルシウム」又は「塩化ナトリウム」を用いた比較例1?2に比べて、「常態物性」は両者に大きな差異ものの、「ムーニースコーチ試験」及び「貯蔵後のムーニースコーチ試験」の結果が改善された「アクリルゴム」を得られたこと、すなわち、本件発明の上記課題を解決できることが確認されている。

以上を踏まえると、本件発明1の「架橋性単量体」として、本件明細書の(本c)の段落【0025】?【0026】に列記されるような「ハロゲン基含有単量体」を、段落【0027】に記載されるような「アクリルゴム」を製造する際に使用する一般的な量を用いれば、「得られるアクリルゴムを架橋物としたときの機械的特性、及び耐圧縮永久歪み性を高度にバランスさせること」ができ、本件発明の課題を解決し得ることは当業者であれば理解できる。
また、本件発明1の「ノニオン性乳化剤」と「アニオン性乳化剤」についても、本件明細書の(本d)の段落【0031】?【0032】に記載された「乳化重合」に用いる乳化剤として一般的な乳化剤を、段落【0033】?【0034】に記載されるような一般的な使用量で用いれば、本件発明の課題を解決し得ることは当業者であれば理解できる。
これに対して、申立人は、具体的な反証、例えば、具体的に製造できない例を挙げた上で発明の課題が解決できるといえないことを主張している訳ではない。
そうすると、申立理由3を採用することはできない。

ウ 小括
以上のとおり、申立理由3は、理由がない。

(6)申立理由4(明確性)について
申立理由4のうち、申立理由4-1及び申立理由4-3については、上記「2 取消理由について」「(1)取消理由A(明確性)について」で検討したとおりである。
申立理由4-2の概要は、「第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要」「2 特許異議申立理由の概要」「(4)申立理由4(明確性)」に記載したとおりであるが、以下のアに再掲する。

ア 申立理由4-2の概要
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項16は、物の特許についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合に該当し、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームに該当するが、本件明細書等からは「不可能・非実際的事情」を明瞭に認識することはできないから、不明確である。請求項16に直接的又は間接的に従属する請求項17?26も同様である。

イ 判断
本件発明16は、「請求項1?3、7、9?15のいずれかに記載の製造方法で製造されるアクリルゴム」に係る発明であり、物である「アクリルゴム」に係る発明についての請求項に、その物の製造方法が記載されている、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームに該当するものである。
本件発明の課題は、上記「(5)申立理由3(サポート要件)について」「イ 判断」「b 本件発明の課題」で検討したとおり、「常態物性を良好に保ちながら、優れた貯蔵安定性を実現できるアクリルゴムの製造方法を提供すること」である。そして、本件明細書の(本k)には、「凝固剤」として「金属硫酸塩」を用いた実施例1?6は、「金属硫酸塩」ではない「塩化カルシウム」又は「塩化ナトリウム」を用いた比較例1?2に比べて、「常態物性」は両者に大きな差異ものの、「ムーニースコーチ試験」及び「貯蔵後のムーニースコーチ試験」の結果が改善された「アクリルゴム」を得られたこと、すなわち、本件発明の上記課題を解決できることが確認されている。
本件発明16の「アクリルゴム」について、本件明細書の(本j)の段落【0077】には「・・・、本発明のアクリルゴムは、このような凝固を、凝固剤として金属硫酸塩を用いて行うものである。・・・、本発明者等の知見によると、アクリルゴム中に、単に、金属硫酸塩、ノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤が含まれていることで、常態物性を維持しつつ、貯蔵安定性を向上させることができるという効果が奏されるものではなく、乳化重合時にノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤を用い、かつ、凝固時に、凝固剤としての金属硫酸塩を用いて行われたものであることが必要であることを見出したものである。そして、本発明のアクリルゴムは、このような工程を経て初めて得られるものであり、単に、金属硫酸塩、ノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤が含まれている、といった文言により一概に特定することができないものである」と記載され、段落【0078】には「また、もし仮に、本発明のアクリルゴムについて、その内部状態等を、各種分析機器により解析したとしても、アクリルゴム、アニオン性乳化剤及びノニオン性乳化剤のいずれも、炭素原子および酸素原子を主成分として有するものであり、その分散状態等の特定は極めて困難であり、そのため、本発明のアクリルゴムを製造方法により特定することに、十分な合理性があると言える」と記載されている。

ここで、本件明細書の(本k)の実施例・比較例をみると、いずれの実施例・比較例とも、段落【0116】?【0122】に記載の「重合体を凝固させ、これによりアクリルゴム(A1)の含水クラムを得た」後に、「・・・本実施例では、このような水洗を4回繰り返した。・・・次いで、上記にて水洗を行った含水クラムの固形分100部に対し・・・含水クラムの酸洗を行った。次いで、酸洗を行った含水クラムの固形分100部に対し・・・含水クラムの純水洗浄を行い、純水洗浄を行った含水クラムを、・・・110℃で1時間乾燥させることにより、固形状のアクリルゴム(A1)を得た」ものであることが記載されており、「水洗」、「酸洗」、「純水洗浄」を行えば「金属硫酸塩」、「ノニオン性乳化剤」及び「アニオン性乳化剤」は相当程度流し出されるといえるから、本件発明16の「アクリルゴム」は、本件明細書の上記摘記の「アクリルゴム中に、単に、金属硫酸塩、ノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤が含まれていることで、常態物性を維持しつつ、貯蔵安定性を向上させることができるという効果が奏されるものではなく、乳化重合時にノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤を用い、かつ、凝固時に、凝固剤としての金属硫酸塩を用いて行われたものであることが必要である」ことが理解できる。
そして、本件発明の課題である「常態物性を良好に保ちながら、優れた貯蔵安定性を実現できる」アクリルゴムについて、本件明細書の上記摘記の「その内部状態等を、各種分析機器により解析したとしても、アクリルゴム、アニオン性乳化剤及びノニオン性乳化剤のいずれも、炭素原子および酸素原子を主成分として有するものであり、その分散状態等の特定は極めて困難」であることも当業者であれば容易に理解できるから、本件発明16の「アクリルゴム」をその構造又は特性により直接特定することに、不可能・非実際的事情があるということができる。
したがって、本件明細書には、本件発明16の「アクリルゴム」をその構造又は特性により直接特定することについて「不可能・非実際的事情」があることが記載されているといえるから、申立理由4-2を採用することはできない。

ウ 小括
以上のとおり、申立理由4-2も理由がない。

(7)まとめ
以上のとおりであるから、申立人がした申立理由1?4によっても、本件発明1?3、7、9?26を取り消すことはできない。

第7 むすび
特許第6708316号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-26〕について訂正することを認める。
本件発明4?6、8に係る特許に対する申立ては、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により却下する。
当審が通知した取消理由および申立人がした申立理由によっては、本件発明1-3、7、9?26に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件発明1-3、7、9?26に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
アクリルゴムの製造方法、および、その製造方法により得られるアクリルゴム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴムの製造方法、その製造方法により得られるアクリルゴム、それを含んでなるゴム組成物、及びそのゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物に関し、さらに詳しくは、貯蔵安定性に優れるアクリルゴムの製造方法、その製造方法により得られるアクリルゴム、それを含んだゴム組成物、及びそのゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とする重合体であり、一般に耐熱性、耐油性及び耐オゾン性に優れたゴムとして知られ、自動車関連の分野などで広く用いられている。
【0003】
このようなアクリルゴムは、通常、アクリルゴムを構成する単量体混合物を乳化重合し、得られた乳化重合液に、凝固剤を添加することで凝固させ、凝固により得られた含水クラムを乾燥することで製造される(たとえば、特許文献1参照)。含水クラムの乾燥には、生産性の観点より、連続工程での乾燥が可能なベルトコンベヤー式のバンドドライヤーや押出機などの乾燥装置が用いられている。一方で、このように製造されるアクリルゴムは、長期間の貯蔵においてムーニースコーチや、やけ等の問題が発生することが課題になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-145291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、常態物性を良好に保ちながら、優れた貯蔵安定性を実現できるアクリルゴムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、アクリルゴムの製造方法において特定の2種の乳化剤を組み合わせて乳化重合を行い、得られる乳化重合液を金属硫酸塩を用いて凝固し得られる含水クラムを洗浄・乾燥することで、常態物性を良好に保ちながら、優れた貯蔵安定性を実現できるアクリルゴムを製造できることを見出した。
【0007】
本発明者等は、また、アクリルゴムが架橋性官能基を有すること、特定割合の2種乳化剤と重合開始剤としてレドックス系重合触媒を用いること、特に特定の2種類の還元剤を組み合わせること、凝固剤として、1価または2価の金属硫酸塩を用いること、そして、乳化重合液と金属硫酸塩との接触を加温して行い、酸洗浄を含む洗浄を行うことの少なくとも1つの態様を採用することで、本発明の目的が更に高度に達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
かくして本発明によれば、(メタ)アクリル酸エステルと、架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体とを含む単量体であって、前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルであり、前記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル及び/または(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルである単量体を、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との存在下に、還元状態にある金属イオン含有化合物と、当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩との少なくとも2種の還元剤と重合開始剤を用いて乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、前記乳化重合液を金属硫酸塩と接触させて凝固し含水クラムを得る凝固工程と、前記含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と、洗浄した前記含水クラムを乾燥する乾燥工程と、を備えるアクリルゴムの製造方法が提供される。
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、前記ノニオン性乳化剤と前記アニオン性乳化剤の使用割合が、ノニオン性乳化剤/アニオン性乳化剤の重量比で、1/99?99/1の範囲あることが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、前記ノニオン性乳化剤と前記アニオン性乳化剤の使用割合が、ノニオン性乳化剤/アニオン性乳化剤の重量比で、50/50?75/25の範囲であることが好ましい。
【0009】
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、前記還元状態にある金属イオン含有化合物が、硫酸第一鉄であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、前記還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤が、アスコルビン酸塩であることが好ましい。
【0010】
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、前記重合開始剤が、有機過酸化物または無機過酸化物であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、前記乳化重合液と前記金属硫酸塩との接触を、前記乳化重合液に前記金属硫酸塩を添加するか、前記乳化重合液を前記金属硫酸塩の溶液または分散液に投入するかのいずれかの方法で行うことが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、前記乳化重合液と前記金属硫酸塩とを接触する温度が、60℃以上であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、前記金属硫酸塩が、1価または2価の金属硫酸液であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、前記アニオン性乳化剤が、リン酸エステル塩であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、前記洗浄が、酸洗浄を含むものであることが好ましい。
【0011】
また、本発明によれば、上記製造方法で製造されるアクリルゴムが提供される。
本発明のアクリルゴムにおいては、単量体組成が、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位50?99.9重量%、架橋性単量体単位0.01?20重量%及び共重合可能な他の単量体単位0?49.99重量%であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムにおいては、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が、10?150の範囲であることが好ましい。
【0012】
また、本発明によれば、上記アクリルゴムを含むゴム成分と架橋剤とを含んでなるゴム組成物が提供される。
本発明のゴム組成物においては、前記架橋剤が、多価アミン化合物、多価エポキシ化合物、多価カルボン酸、有機カルボン酸アンモニウム塩、有機カルボン酸金属塩、イソシアヌル酸化合物、トリアジン化合物、及び金属石鹸/硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明のゴム組成物においては、更に、架橋促進剤を配合してなることが好ましい。
本発明のゴム組成物においては、前記架橋促進剤が、グアニジン系架橋促進剤、ジアザビシクロアルケン系架橋促進剤、脂肪族2級アミン系架橋促進剤、脂肪族3級アミン系架橋促進剤及びジチオカルボミン酸塩系加硫促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
本発明のゴム組成物においては、更に、スコーチ抑制剤を配合してなることが好ましい。
本発明のゴム組成物においては、更に、老化防止剤を配合してなることが好ましい。
本発明のゴム組成物においては、更に、充填剤を配合してなることが好ましい。
また、本発明によれば、上記ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、常態物性を良好に保ちながら、優れた貯蔵安定性を実現できるアクリルゴム、ならびに、それを含んだゴム組成物、及びそのゴム架橋物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[製造方法]
本発明のアクリルゴムの製造方法は、(メタ)アクリル酸エステル〔アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの意。以下、(メタ)アクリル酸メチルなど同様。〕と、カルボキシル基含有単量体、エポキシ基含有単量体及びハロゲン基含有単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性単量体とを含む単量体をノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との存在下に重合開始剤を用いて乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、乳化重合液を金属硫酸塩と接触させて凝固し含水クラムを得る凝固工程と、含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と、洗浄した含水クラムを乾燥する乾燥工程とを備える。
【0015】
<単量体>
本発明の乳化重合工程に使用される単量体は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とすることが特徴である。主成分である(メタ)アクリル酸エステルとしては、格別な限定はないが、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルなどを挙げることができる。
【0016】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数1?12のアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステルが用いられ、炭素数1?8のアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、炭素数2?6のアルカノールと(メタ)アクリル酸のエステルがより好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられ、これらの中でも、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルが好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルが特に好ましい。
【0017】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、炭素数2?12のアルコキシアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルなどが好ましく、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸2-メトキシエチルがより好ましく、アクリル酸2-メトキシエチルがさらに好ましい。
【0018】
これら(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合に用いる単量体中の(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、単量体中の主成分であることが好ましく、通常50?99.9重量%、好ましくは60?99.7重量%、より好ましくは70?99.5重量%である。(メタ)アクリル酸エステルの含有量が過度に少ないと、得られるゴム架橋物の耐候性、耐熱性、及び耐油性が低下するおそれがあり、一方、過度に多いと、得られるゴム架橋物の耐熱性が低下するおそれがある。また、(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル30?100重量%、及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル70?0重量%からなるものを用いることが好ましい。
【0019】
本発明の乳化重合工程において重合に用いる単量体としては、上記(メタ)アクリル酸エステル以外に、架橋性単量体、共重合可能な他の単量体を含有させることができる。
【0020】
架橋性単量体としては、格別な限定はなく、例えば、カルボキシル基含有単量体、エポキシ基含有単量体、ハロゲン原子含有単量体、ジエン単量体などが挙げられ、好ましくはカルボキシル基含有単量体、エポキシ基含有単量体、ハロゲン原子含有単量体であり、より好ましくはハロゲン原子含有単量体である。
【0021】
カルボキシル基含有単量体としては、格別な限定はないが、例えば、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸を好適に用いることができる。α,β-エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、炭素数3?12のα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸、炭素数4?12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸、炭素数4?12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1?8のアルカノールとのモノエステルなどが挙げられる。α,β-エチレン性不飽和カルボン酸を用いることにより、得られるアクリルゴムをゴム架橋物とした場合の耐圧縮永久歪み性をより高めることができ好ましい。
【0022】
炭素数3?12のα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などを挙げることができる。炭素数4?12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸などのブテンジオン酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸などが挙げられる。炭素数4?12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1?8のアルカノールとのモノエステルとしては、例えば、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn-ブチルなどのブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘキセニル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘキセニルなどの脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノn-ブチル、イタコン酸モノシクロヘキシルなどのイタコン酸モノエステル;などが挙げられる。
【0023】
カルボキシル基含有単量体としては、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸が好ましく、炭素数4?12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1?8のアルカノールとのモノエステルがより好ましく、ブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル、脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステルが特に好ましい。好ましい具体的としては、フマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノn-ブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘキシルなどが挙げられ、フマル酸モノn-ブチルが特に好ましい。なお、上記単量体のうち、ジカルボン酸には、無水物として存在しているものも含まれる。
【0024】
エポキシ基含有単量体としては、格別な限定はないが、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;p-ビニルベンジルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有スチレン;アリルグリシジルエーテルおよびビニルグリシジルエーテル、3,4-エポキシ-1-ペンテン、3,4-エポキシ-1-ブテン、4,5-エポキシ-2-ペンテン、4-ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、3,4-エポキシ-1-ビニルシクロヘキセンおよびアリルフェニルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有エーテル;などが挙げられる。
【0025】
ハロゲン原子含有単量体としては、格別な限定はないが、例えば、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステル、ハロゲン含有不飽和エーテル、ハロゲン含有不飽和ケトン、ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物、ハロゲン含有不飽和アミド、ハロアセチル基含有不飽和単量体などが挙げられる。
【0026】
ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステルとしては、例えば、クロロ酢酸ビニル、2-クロロプロピオン酸ビニル、クロロ酢酸アリルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸1-クロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸1,2-ジクロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロプロピル、(メタ)アクリル酸3-クロロプロピル、(メタ)アクリル酸2,3-ジクロロプロピルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)プロピルなどが挙げられる。ハロゲン含有不飽和エーテルとしては、例えば、クロロメチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、3-クロロプロピルビニルエーテル、2-クロロエチルアリルエーテル、3-クロロプロピルアリルエーテルなどが挙げられる。ハロゲン含有不飽和ケトンとしては、例えば、2-クロロエチルビニルケトン、3-クロロプロピルビニルケトン、2-クロロエチルアリルケトンなどが挙げられる。ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物としては、例えば、p-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、o-クロロメチルスチレン、p-クロロメチル-α-メチルスチレンなどが挙げられる。ハロゲン含有不飽和アミドとしては、例えば、N-クロロメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。ハロアセチル基含有不飽和単量体としては、例えば、3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルアリルエーテル、p-ビニルベンジルクロロ酢酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステルが好ましく、クロロ酢酸ビニル(モノクロロ酢酸ビニル)がより好ましい。
【0027】
これらの架橋性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。単量体中の架橋性単量体の含有量は、通常0.01?20重量%、好ましくは0.1?10重量%、より好ましくは0.5?5重量%である。架橋性単量体の含有量を上記範囲とすることにより、得られるアクリルゴムを架橋物としたときの機械的特性、及び耐圧縮永久歪み性を高度にバランスさせることができ好適である。
【0028】
共重合可能な他の単量体としては、共重合可能であれば格別な限定はないが、例えば、芳香族ビニル単量体、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体、アクリルアミド系単量体、その他のオレフィン系単量体などが挙げられる。芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。アクリルアミド系単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられる。その他のオレフィン系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。これら共重合可能な他の単量体の中でも、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレンおよび酢酸ビニルが好ましく、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレンがより好ましい。
【0029】
これら共重合可能な他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。単量体中のこれら共重合可能な他の単量体の含有量は、通常49.99重量%以下、好ましくは39.9重量%以下、より好ましくは29.5重量%以下である。
【0030】
<乳化重合工程>
本発明の乳化重合工程は、上記(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体をノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との存在下に重合開始剤を用いて乳化重合し乳化重合液を得ることを特徴とする。
【0031】
ノニオン性乳化剤としては、特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンステアリン酸エステルなどのポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル;ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体;などを挙げることができる。これらの中でも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体などが好ましく、特にポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体が好ましい。ノニオン性乳化剤の重量平均分子量は、格別な限定はないが、通常300?50,000、好ましくは500?30,000、より好ましくは1,000?15,000の範囲である。これらのノニオン性乳化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
アニオン性乳化剤としては、格別な限定はなく、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸などの脂肪酸の塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウムなどの高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステルナトリウムなどのリン酸エステル塩、好ましくは疎水基の炭素数が6以上のアルコールのリン酸エステルナトリウムなどの高級アルコール燐酸エステル塩;アルキルスルホコハク酸塩などを挙げることができる。これらのアニオン性乳化剤の中でも、リン酸エステル塩、高級アルコール硫酸エステル塩が好ましく、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコール硫酸エステル塩がより好ましく、高級アルコール燐酸エステル塩がさらに好ましい。これらのアニオン性乳化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との使用割合は、ノニオン性乳化剤/アニオン性乳化剤の重量比で、通常1/99?99/1、好ましくは10/90?80/20、より好ましくは25/75?75/25、さらに好ましくは50/50?75/25、最も好ましくは65/35?75/25の範囲である。ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との割合をこの範囲にすることで、乳化重合時における重合装置(たとえば、重合槽)へのポリマーなどの付着による汚れの発生を抑制しつつ、凝固剤としての金属硫酸塩の使用量を低減することが可能となり、結果として、最終的に得られるアクリルゴム中における凝固剤量を低減することができ、これにより得られるゴム架橋物の耐水性を向上させることができる。また、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との割合をこの範囲にすることで、乳化作用を高めることができるため、乳化剤自体の使用量をも低減することができ、結果として、最終的に得られるアクリルゴム中に含まれる乳化剤の残留量を低減することができ、これにより、得られるアクリルゴムの耐水性をより高めることができ好適である。
【0034】
乳化剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対する、用いる乳化剤の総量で、通常0.01?10重量部、好ましくは0.1?5重量部、より好ましくは1?3重量部の範囲である。
【0035】
本発明においては、乳化剤として、必要に応じて、その他の乳化剤を用いることができる。その他の乳化剤としては、例えば、カチオン性乳化剤などが挙げられ、具体的には、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライドなどである。これらのその他の乳化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。
【0036】
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物;などを用いることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。重合開始剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.001?1.0重量部である。
【0037】
重合開始剤として有機過酸化物及び/または無機過酸化物を用いるときは、還元剤と組み合わせてレドックス系重合開始剤として使用することが好ましい。組み合わせる還元剤としては、特に限定されないが、例えば、硫酸第一鉄、ヘキサメチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオン含有化合物;アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムなどのアスコルビン酸(塩);エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウムなどのエリソルビン酸(塩);糖類;ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムなどのスルフィン酸塩;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アルデヒド亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムの亜硫酸塩;ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸水素カリウムなどのピロ亜硫酸塩;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウムなどのチオ硫酸塩;亜燐酸、亜燐酸ナトリウム、亜燐酸カリウム、亜燐酸水素ナトリウム、亜燐酸水素カリウムの亜燐酸(塩);ピロ亜燐酸、ピロ亜燐酸ナトリウム、ピロ亜燐酸カリウム、ピロ亜燐酸水素ナトリウム、ピロ亜燐酸水素カリウムなどのピロ亜燐酸(塩);ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどが挙げられる。
【0038】
これらの還元剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができるが、2種以上を組合せて用いることが好ましく、より好ましくは第一還元剤としての還元状態にある金属イオン含有化合物と第二還元剤として還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤とを組わせること、さらに好ましくは硫酸第一鉄とアスコルビン酸(塩)及び/またはナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートとを組み合わせること、特に好ましくは硫酸第一鉄とアルコルビン酸塩と組み合わせることで本願の目的をより高度に達成することができ好適である。還元剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して総量として、好ましくは0.0001?0.5重量部の範囲である。
【0039】
水の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは80?500重量部、より好ましくは100?300重量部である。
【0040】
乳化重合に際しては、必要に応じて、分子量調整剤、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合副資材を使用することができる。
【0041】
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれの方法で行ってもよいが、半回分式が好ましい。具体的には、重合開始剤および還元剤を含む反応系中に、重合に用いる単量体を、重合反応開始から任意の時間まで、重合反応系に連続的に滴下しながら重合反応を行うなど、重合に用いる単量体、重合開始剤、および還元剤のうち少なくとも1種については、重合反応開始から任意の時間まで、重合反応系に連続的に滴下しながら重合反応を行うことが好ましく、重合に用いる単量体、重合開始剤、および還元剤の全てについて、重合反応開始から任意の時間まで、重合反応系に連続的に滴下しながら重合反応を行うことがより好ましい。これらを連続的に滴下しながら重合反応を行うことにより、乳化重合を安定的に行うことができ、これにより、重合反応率を向上させることができる。なお、重合は通常0?70℃、好ましくは5?50℃の温度範囲で行なわれる。
【0042】
また、重合に用いる単量体を連続的に滴下しながら重合反応を行う場合には、重合に用いる単量体を、乳化剤および水と混合し、単量体乳化液を得て(乳化液調製工程)、単量体乳化液の状態で連続的に滴下することが好ましい。単量体乳化液の調製方法としては特に限定されず、重合に用いる単量体の全量と、乳化剤の全量と、水とをホモミキサーやディスクタービンなどの攪拌機などを用いて攪拌する方法などが挙げられる。単量体乳化液中の水の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは10?70重量部、より好ましくは20?50重量部である。
【0043】
また、重合に用いる単量体、重合開始剤、および還元剤の全てについて、重合反応開始から任意の時間まで、重合反応系に連続的に滴下しながら重合反応を行う場合には、これらは別々の滴下装置を用いて重合系に滴下してもよいし、あるいは、少なくとも重合開始剤と還元剤とについては、予め混合し、必要に応じて水溶液の状態として同じ滴下装置から重合系に滴下してもよい。滴下終了後は、さらに重合反応率向上のため、任意の時間反応を継続してもよい。
【0044】
乳化重合の終了は、必要に応じて重合停止剤を添加して行うことができる。重合停止剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノンなどが挙げられる。重合停止剤の使用量は、特に限定されないが、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.1?2重量部である。
【0045】
<乳化重合液への配合剤添加>
本発明の乳化重合工程においては、乳化重合により得られた、凝固前の乳化重合液に必要に応じて各種配合剤を添加し、生成したアクリルゴム重合体中に均一分散させることができる。添加する配合剤としては、ゴム用配合剤であれば格別な限定はないが、例えば、老化防止剤、滑剤、アルキレンオキシド系重合体などが効果的に配合でき好適である。
【0046】
例えば、老化防止剤を、凝固を行う前の乳化重合液に予め含有させておくことにより、後述する乾燥工程における乾燥時の熱によるアクリルゴムの劣化を有効に抑制することができるものである。具体的には、乾燥時の加熱による劣化に起因するムーニー粘度の低下を効果的に抑制することができ、これにより、ゴム架橋物とした場合における、常態の引張強度や破断伸びなどを効果的に高めることができるものである。加えて、凝固を行う前の乳化重合液の状態において、老化防止剤を配合することにより、老化防止剤を適切に分散させることができるため、老化防止剤の配合量を低減させた場合でも、その添加効果を充分に発揮させることができるものである。具体的には、老化防止剤の配合量を、乳化重合液中のアクリルゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1?2重量部、より好ましくは0.2?1.2重量部と比較的少ない配合量としても、その添加効果を充分に発揮させることができるものである。なお、老化防止剤を、凝固を行う前の乳化重合液中に含有させた場合でも、後の凝固や洗浄、乾燥などにおいて、添加した老化防止剤は、実質的に除去されることはないため、その添加効果を充分発揮できるものである。また、老化防止剤を乳化重合液に含有させる方法としては、乳化重合後であって、かつ、凝固を行う前の乳化重合液に添加する方法や、乳化重合を行う前の溶液に添加する方法が挙げられるが、乳化重合を行う前の溶液に添加した場合には、乳化重合時に凝集物が発生し、これにより、重合装置の汚れなどが発生するおそれがあるため、乳化重合後であって、かつ、凝固を行う前の乳化重合液に添加する方法の方が好ましい。
【0047】
老化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-α-ジメチルアミノ-p-クレゾール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、モノ(又はジ、又はトリ)(α-メチルベンジル)フェノールなどのスチレン化フェノール、2,2’-メチレン-ビス(6-α-メチルベンジル-p-クレゾール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフノール)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、アルキル化ビスフェノール、p-クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物などの硫黄原子を含有しないフェノール系老化防止剤;2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-6-メチルフェノール、2,2’-チオビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス-(6-t-ブチル-o-クレゾール)、2,6-ジ-t-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノールなどのチオフェノール系老化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジホスファイトなどの亜燐酸エステル系老化防止剤;チオジプロピオン酸ジラウリルなどの硫黄エステル系老化防止剤;フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)-ジフェニルアミン、4,4’-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、ブチルアルデヒド-アニリン縮合物などのアミン系老化防止剤;2-メルカプトベンズイミダゾールなどのイミダゾール系老化防止剤;6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;2,5-ジ-(t-アミル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン系老化防止剤;などが挙げられる。これらの老化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
滑剤としては、格別な限定はなく、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックスなどの炭化水素系滑剤;ステアリン酸アルキルエステルなどの脂肪酸エステル系滑剤;テアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミド系滑剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸系滑剤;ポリオキエチレンステアリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸などのポリオキエチレン高級アルコールリン酸などの燐酸エステル系滑剤;炭素数10?30、好ましくは炭素数12?20の脂肪酸などの高級脂肪酸系滑剤;などが挙げられる。
【0049】
これらの中でも、脂肪酸エステル系、脂肪酸アミド系、燐酸エステル系、及び高級脂肪酸系などの滑剤、好ましくは燐酸エステル系滑剤及び高級脂肪酸系滑剤、より好ましくはポリオキエチレンステアリルエーテルリン酸を用いた時に、製造されるアクリルゴムの乾燥時の取り扱い性とロール加工性が高度に改善され好適である。
【0050】
これらの滑剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その添加量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、乳化重合液に含まれるアクリルゴム成分100重量部に対して、通常0.0001?10重量部、好ましくは0.001?5重量部、より好ましくは0.01?1重量部の範囲である。
【0051】
滑剤を、凝固を行う前の乳化重合液に予め含有させておくことにより、滑剤を、凝固を行う前の乳化重合液中に良好に分散させることができるため、これにより、凝固後のアクリルゴム中に、滑剤を良好に分散させた状態にて含有させることができる。そして、その結果として、得られるアクリルゴム中に、滑剤を適切に含ませることができ(好適には、均一に分散させた状態で含ませることができ)、これにより、得られるアクリルゴムを、乾燥時の取り扱い性、およびロール加工性に優れたものとすることができる。なお、滑剤を、凝固を行う前の乳化重合液に含有させた場合でも、後の凝固や洗浄、乾燥などにおいて、添加した滑剤は、実質的に除去されることはないため、その添加効果を充分発揮できるものである。一方で、凝固後に、滑剤を添加した場合には、アクリルゴム中に、滑剤を分散させることが困難となり、そのため、アクリルゴム中に滑剤を含ませることができず(特に、均一に分散させた状態で含ませることができず)、滑剤を配合することによる効果、たとえば、アクリルゴム製造時の乾燥時の付着等の抑制効果が得難くなってしまう。
【0052】
アルキレンオキシド系重合体としては、アルキレンオキシドの重合体であれば格別な限定はないが、通常は低級アルキレンオキシドの重合体が用いられる。具体的には、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体などが挙げられ、この中でもポリエチレンオキシドが好適である。アルキレンオキシド系重合体の重量平均分子量は、使用目的に応じて選択されるが、通常10,000?6,000,000、好ましくは30,000?1,000,000、より好ましくは50,000?500,000、特に好ましくは50,000?300,000、最も好ましくは80,000?200,000の範囲である。アルキレンオキシド系重合体の重量平均分子量がこの範囲にあるときに、本発明の目的を高度に達成でき好適である。
【0053】
これらのアルキレンオキシド系重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、乳化重合液中のアクリルゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.01?1重量部、より好ましくは0.01?0.6重量部、さらに好ましくは0.02?0.5重量部の範囲である。アルキレンオキシド系重合体を、凝固前の乳化重合液中に予め含有させておくことにより、乳化重合液の凝固性を向上させることができ、これにより、凝固工程における凝固剤量を低減させることができることから、最終的に得られるアクリルゴム中の残留量を低減でき、ゴム架橋物とした場合における、耐圧縮永久歪み性および耐水性を高めることができ好適である。
【0054】
<凝固工程>
本発明の凝固工程は、上記、必要に応じて老化防止剤、滑剤及び/またはアルキレンオキシド系重合体を添加した乳化重合液を金属硫酸塩と接触させて凝固し含水クラムを得ることを特徴とする。
【0055】
凝固剤として用いる金属硫酸塩としては、特に限定されないが、例えば、1?3価金属の硫酸塩を好適に用いることができ、より好ましくは1価または2価金属の硫酸塩である。具体的には、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、硫酸チタン、硫酸マンガン、硫酸鉄、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸アルミニウム、硫酸スズなどを挙げることができ、好ましくは硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムであり、より好ましくは硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムである。
【0056】
これらの金属硫酸塩は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。金属硫酸塩の使用量は、乳化重合液中のアクリルゴム成分100重量部に対して、通常0.01?100重量部、好ましくは0.1?50重量部、より好ましくは1?30重量部の範囲である。金属硫酸塩がこの範囲にあるときに、アクリルゴムの凝固を充分なものとしながら、アクリルゴムを架橋した場合の耐圧縮永久歪み性、耐水性及び貯蔵安定性を高度にバランスさせることができ好適である。
【0057】
本発明の凝固工程において、必要に応じてその他の凝固剤を金属硫酸塩と組み合わせて用いることができる。その他の凝固剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、塩化チタン、塩化マンガン、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化アルミニウム、塩化スズなどの金属塩化物;硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛、硝酸チタン、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸アルミニウム、硝酸スズなどの金属硝酸塩;等が挙げられる。これらのその他の凝固剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。
【0058】
乳化重合液と金属硫酸塩とを接触させる方法は、常法に従えばよく、乳化重合液に金属硫酸塩あるいは金属硫酸塩の溶液または分散液を添加するか、乳化重合液を金属硫酸塩の溶液または分散液に投入するかなどで行うことができる。乳化重合液を投入する場合の金属硫酸塩の溶液または分散液としては、通常水溶液が用いられ、水溶液中の金属硫酸塩の濃度は、使用目的に応じて適宜選択され、通常1?50重量%、好ましくは5?40重量%、より好ましくは10?30重量%の範囲である。
【0059】
乳化重合液と金属硫酸塩との接触(凝固)温度は、格別限定されるものではないが、通常60℃以上、好ましくは65?100℃、より好ましくは70?95℃、更に好ましくは78?95℃、最も好ましくは83?95℃の範囲である。
【0060】
<洗浄工程>
本発明の洗浄工程は、上記した凝固工程において得られた含水クラムに対して洗浄を行うものである。
【0061】
洗浄方法としては、特に限定されないが、洗浄液として水を使用し、含水クラムとともに、添加した水を混合することにより水洗を行う方法が挙げられる。水洗時の温度としては、特に限定されないが、好ましくは5?60℃、より好ましくは10?50℃であり、混合時間は1?60分、より好ましくは2?30分である。
【0062】
また、水洗時に、含水クラムに対して添加する水の量としては、特に限定されないが、最終的に得られるアクリルゴム中の凝固剤の残留量を効果的に低減することができるという観点より、含水クラム中に含まれる固形分(主として、アクリルゴム成分)100重量部に対して、水洗1回当たりの水の量が、好ましくは50?9,800重量部、より好ましくは300?1,800重量部である。
【0063】
水洗回数としては、特に限定されず、1回でもよいが、最終的に得られるアクリルゴム中の凝固剤の残留量を低減するという観点より、複数回行うのがよく、好ましくは2?10回、より好ましくは3?8回である。なお、最終的に得られるアクリルゴム中の凝固剤の残留量を低減するという観点からは、水洗回数が多い方が望ましいが、上記範囲を超えて洗浄を行っても、凝固剤の除去効果が小さい一方で、工程数が増加してしまうことにより生産性の低下の影響が大きくなってしまうため、水洗回数は上記範囲とすることが好ましい。
【0064】
また、本発明においては、水洗を行った後、さらに洗浄液として酸を使用した酸洗浄を行ってもよい。酸洗浄を行うことにより、アクリルゴムの貯蔵安定性を高度に高め、さらにゴム架橋物とした場合における耐圧縮永久歪み性も高めることができるものであり好適である。
【0065】
酸洗浄に用いる酸としては、特に限定されず、硫酸、塩酸、燐酸などを制限なく用いることができる。また、酸洗浄において、含水クラムに酸を添加する際には、水溶液の状態で添加することが好ましく、好ましくはpH=6以下、より好ましくはpH=5以下、さらに好ましくはpH=4以下の水溶液の状態で添加すること好ましい。また、酸洗浄の方法としては、特に限定されないが、たとえば、含水クラムとともに、添加した酸の水溶液を混合する方法が挙げられる。
【0066】
また、酸洗浄時の温度としては、特に限定されないが、好ましくは5?60℃、より好ましくは10?50℃であり、混合時間は1?60分、より好ましくは2?30分である。酸洗浄の洗浄水のpHは、特に限定されないが、好ましくはpH=6以下、より好ましくはpH=5以下、さらに好ましくはpH=4以下である。なお、酸洗浄の洗浄水のpHは、例えば、酸洗浄後の含水クラムに含まれる水のpHを測定することにより求めることができる。
【0067】
酸洗浄を行った後には、さらに水洗を行うことが好ましく、水洗の条件としては上述した条件と同様とすればよい。
【0068】
<乾燥工程>
本発明の乾燥工程は、上記洗浄工程において洗浄を行った含水クラムに対し乾燥を行うものである。
【0069】
乾燥工程における、乾燥方法としては、特に限定されないが、たとえば、スクリュー型押出機、ニーダー型乾燥機、エキスパンダー乾燥機、熱風乾燥機、減圧乾燥機などの乾燥機を用いて、乾燥させることができる。また、これらを組み合わせた乾燥方法を用いてもよい。さらに、乾燥工程により乾燥を行う前に、必要に応じて、含水クラムに対し、回転式スクリーン、振動スクリーンなどの篩;遠心脱水機;などを用いたろ別を行ってもよい。
【0070】
例えば、乾燥工程における乾燥温度は、特に限定されず、乾燥に用いる乾燥機に応じて異なるが、例えば、熱風乾燥機を用いる場合には、乾燥温度は80?200℃とすることが好ましく、100?170℃とすることがより好ましい。
【0071】
[アクリルゴム]
本発明によれば、上記製造方法により、本発明のアクリルゴムを得ることができる。かくして得られる本発明のアクリルゴムは、常態物性を良好に保ちながら、貯蔵安定性に優れるものである。
【0072】
本発明のアクリルゴムは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を主成分する以外は格別な限定はないが、架橋性単量体単位を更に含有するときに本発明の効果を高度に高められ好適である。
【0073】
本発明のアクリルゴム中の単量体組成は、使用目的に応じて適宜選択されるが、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位が、通常50?99.9重量%、好ましくは60?99.7重量%、より好ましくは70?99.5重量%であり、架橋性単量体単位の含有量は、通常0.01?20重量%、好ましくは0.1?10重量%、より好ましくは0.5?5重量%であり、共重合可能な他の単量体の単位の含有量は、通常0?49.99重量%、好ましくは0?39.9重量%、より好ましくは0?29.5重量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体、架橋性単量体及び共重合可能な他の単量体の例示は、前記<単量体>で例示したものと同様である。架橋性単量体単位としては、カルボキシル基含有単量体単位、ハロゲン基含有単量体単位、エポキシ基含有単量体単位などを挙げることができ、ハロゲン基含有単量体単位が好ましい。
【0074】
本発明のアクリルゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、使用目的に応じて選択されるが、通常10?150、好ましくは20?100、より好ましくは25?60の範囲である。
【0075】
本発明のアクリルゴムのガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて選択されるが、通常15℃以下、好ましくは0℃以下である。
【0076】
そして、本発明によれば、このようなアクリルゴムの製造方法、および該製造方法により得られるアクリルゴムを提供するものである。
特に、上記製造方法により得られる、本発明のアクリルゴムによれば、常態物性を良好に保ちながら、優れた貯蔵安定性を備えるものである。ここで、アクリルゴムなどのゴムの分野においては、重合により得られたゴムの溶液あるいは分散液から、固形状のゴムを得る際に凝固を行うのが通常であり、本発明者等の知見によると、凝固時の状態により、得られるアクリルゴムの特性が大きく変化するものである。
【0077】
これに対し、本発明のアクリルゴムは、このような凝固を、凝固剤として金属硫酸塩を用いて行うものである。また、乳化重合をノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との存在下に行うものであるため、凝固時には、ノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤をも含まれているものである。ここで、このような凝固により得られるアクリルゴムには、凝固剤として金属硫酸塩、ノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤が含まれることとなるが、本発明者等の知見によると、アクリルゴム中に、単に、金属硫酸塩、ノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤が含まれていることで、常態物性を維持しつつ、貯蔵安定性を向上させることができるという効果が奏されるものではなく、乳化重合時にノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤を用い、かつ、凝固時に、凝固剤としての金属硫酸塩を用いて行われたものであることが必要であることを見出したものである。そして、本発明のアクリルゴムは、このような工程を経て初めて得られるものであり、単に、金属硫酸塩、ノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤が含まれている、といった文言により一概に特定することができないものである。
【0078】
また、もし仮に、本発明のアクリルゴムについて、その内部状態等を、各種分析機器により解析したとしても、アクリルゴム、アニオン性乳化剤及びノニオン性乳化剤のいずれも、炭素原子および酸素原子を主成分として有するものであり、その分散状態等の特定は極めて困難であり、そのため、本発明のアクリルゴムを製造方法により特定することに、十分な合理性があると言える。
【0079】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、上記アクリルゴムを含むゴム成分と架橋剤とを含むことを特徴とする。ゴム成分中における、本発明のアクリルゴムの含有量は、使用目的に応じて選択されればよく、例えば、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上であり、特に好ましくは100重量%である。
【0080】
ゴム成分としては、上記アクリルゴム単独、あるいは上記アクリルゴムとその他のゴムと組み合わせて用いることができる。
その他のゴムとしては、本発明のアクリルゴム以外のアクリルゴム、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリシロキサン系エラストマーなどを挙げることができる。
【0081】
これらのその他のゴムは、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。ゴム成分中のその他のゴムの含有量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択され、例えば、通常70重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0082】
本発明のゴム組成物に使用される架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、ジアミン化合物、ジチオカルバミン酸などの多価アミン化合物、及びその炭酸塩;硫黄化合物;硫黄共与体;多価エポキシ化合物;有機カルボン酸アンモニウム塩;多価カルボン酸;イソシアヌル酸化合物;有機過酸化物;トリアジン化合物;などの従来公知の架橋剤を用いることができる。これらの中でも、多価アミン化合物、トリアジン化合物が好ましく、トリアジン化合物が特に好ましい。
【0083】
多価アミン化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミンなどの脂肪族多価アミン化合物;4,4’-メチレンジアニリン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,3,5-ベンゼントリアミンなどの芳香族多価アミン化合物;などが挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、2,2’-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンなどが好ましい。これらの多価アミン化合物は、特に、カルボキシル基含有のアクリルゴム(架橋性単量体単位として、カルボキシル基含有単量体単位を含有するアクリルゴム)と組み合わせて好適に用いられる。
【0084】
トリアジン化合物としては、例えば、6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-アニリノ-4,6-ジチオール-s-トリアジン、1-ジブチルアミノ-3,5-ジメルカプトトリアジン、2-ジブチルアミノ-4,6-ジチオール-s-トリアジン、1-フェニルアミノ-3,5-ジメルカプトトリアジン、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン、1-ヘキシルアミノ-3,5-ジメルカプトトリアジンなどが挙げられる。これらのトリアジン化合物は、特に、ハロゲン基含有のアクリルゴム(架橋性単量体単位として、ハロゲン基含有単量体単位を含有するアクリルゴム)と組み合わせて好適に用いられる。
【0085】
有機カルボン酸アンモニウム塩としては、例えば、安息香酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム;ジチオカルバミン酸化合物としては、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛;多価カルボン酸としては、例えば、テトラデカンニ酸;イソシアヌル酸化合物としては、例えば、イソシアヌル酸、イソシアヌル酸アンモニウム:などが挙げられる。これらの中でも、安息香酸アンモニウム、ジメチルジチオカルバミン酸、およびイソシアヌル酸は、特に、エポキシ基含有アクリルゴム(架橋性単量体単位として、エポキシ基含有単量体単位を含有するアクリルゴム)と組み合わせて好適に用いられる。
【0086】
これらの架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、ゴム成分100重量部に対し、通常0.001?20重量部、好ましくは0.1?10重量部、より好ましくは0.1?5重量部である。架橋剤の配合量をこの範囲とすることにより、ゴム弾性を充分なものとしながら、ゴム架橋物としての機械的強度を優れたものとすることができ好適である。
【0087】
本発明のゴム組成物は、更に架橋促進剤を配合することにより、本発明の効果を高度に改善でき好適である。架橋促進剤としては、特に限定されないが、例えば、グアニジン系架橋促進剤、ジアザビシクロアルケン系架橋促進剤、脂肪族2級アミン系架橋促進剤、脂肪族3級アミン系架橋促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などを好適なものとして挙げることができる。これらの中でも、特に、グアニジン系架橋促進剤、ジチオカルバミン酸塩系架橋促進剤が好ましく、ジチオカルバミン酸塩系架橋促進剤がより好ましい。
【0088】
グアニジン系加硫促進剤の具体例としては、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられ、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン及び1-o-トリルビグアニドは反応性が高いので好ましく、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)は反応性がより高いので特に好ましい。
【0089】
ジアザビシクロアルケン系加硫促進剤の具体例としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ-7-セン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノ-5-ネンなどを挙げることができる。
【0090】
脂肪族2級アミン系加硫促進剤としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジアリルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジセチルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン、ジオクタデシルアミンなどを挙げることができる。
【0091】
脂肪族3級アミン系加硫促進剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-t-ブチルアミン、トリ-sec-ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミンなどを挙げることができる。
【0092】
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤の具体例としては、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジペンチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、N-エチル-N-フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオカルバミン酸銅、ジイソプロピルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジイソプロピルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸第二鉄等が挙げられる。これらの中で、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、N-エチル-N-フェニルジチオカルバミン酸亜鉛などが好ましい。
【0093】
本発明に使用される架橋促進剤としては、上記以外その他の架橋促進剤を用いることもできる。その他の架橋促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N.N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系加硫促進剤;ジエチルチオウレアなどのチオウレア系加硫促進剤;2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩などのチアゾール系加硫促進剤;イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系加硫促進剤;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどのイミダゾール系加硫促進剤;テトラn-ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリn-ブチルアンモニウムブロマイドなどの第4級オニウム塩系加硫促進剤;トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィンなどの第3級ホスフィン系加硫促進剤;などを挙げることができる。
【0094】
これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、ゴム成分100重量部に対して、通常0.01?20重量部、好ましくは0.1?10重量部、より好ましくは1?5重量部である。架橋促進剤の含有量がこの範囲であるときに、得られるゴム架橋物の引張強度及び耐圧縮永久歪み性をより向上させることができ好適である。
【0095】
本発明のゴム組成物は、更にスコーチ防止剤を配合することにより、架橋物性が良好になり好適である。スコーチ防止剤としては、格別な限定はないが、例えば、N-シクロヘキシルチオフタルイミドなどのイミド化合物、アルキルアミンアルキルフェノール化合物、ヒドロキノン・キノン化合物、2,4-ジ(3-イソプロピルフェニル)-4-メチル-1-ペンテンなどを挙げることができ、好ましくはイミド化合物である。
【0096】
これらのスコーチ防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、ゴム成分100重量部に対して、0,01?5重量部、好ましくは0.05?1重量部、より好ましくは0.1?0.5重量部の範囲である。
【0097】
本発明のゴム組成物は、更に充填剤を含有していることが好適である。充填剤としては、格別な限定はないが、例えば、補強性充填剤、非補強性充填剤などが挙げられ、好ましくは補強性充填剤である。
【0098】
補強性充填剤としては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、およびグラファイトなどのカーボンブラック;湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカなどのシリカ;などを挙げることができる。非補強性充填剤としては、石英粉末、ケイソウ土、亜鉛華、塩基性炭酸マグネシウム、活性炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、タルク、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどを挙げることができる。
【0099】
これらの充填剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択され、ゴム成分100重量部に対して、通常1?200重量部、好ましくは10?150重量部、より好ましくは20?100重量部の範囲である。
【0100】
本発明のゴム組成物は、更にシランカップリング剤を含有していてもよい。使用できるシランカップリング剤としては、格別な限定はないが、例えば、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール、3-オクタノイルチオ-1-プロピル-トリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0101】
これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、使用目的に応じて適宜選択され、ゴム成分100重量部に対して、通常0.01?10重量部、好ましくは0.1?5重量部、より好ましくは0.5?3重量部の範囲である。
【0102】
本発明のゴム組成物は、上記架橋剤、ならびに必要に応じて用いられる、架橋促進剤、スコーチ防止剤、充填剤及びシランカップリング剤以外のその他の配合剤を含んでもよい。その他の配合剤としては、例えば、高級脂肪酸及びその金属アミン塩剤などの分散剤、フタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、セバシン酸誘導体などの可塑剤、潤滑油、プロセスオイル、コールタール、ヒマシ油、ステアリン酸カルシウムなどの軟化剤、老化防止剤、光安定剤、加工助剤、粘着剤、滑剤、難燃剤、防黴剤、帯電防止剤、着色剤、架橋遅延剤、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂などの樹脂などが挙げられる。これらのその他の配合剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択される。
【0103】
本発明のゴム組成物の配合方法としては、従来ポリマー加工分野において利用されている通常の手段、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類などを利用することができる。
【0104】
その配合手順としては、ポリマー加工の分野において行われている通常の手順で行えばよく、例えば、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応や分解しやすい成分である架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合することが好ましい。
【0105】
[ゴム架橋物]
本発明のゴム架橋物は、上記ゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、およびロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、ゴム架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常10?200℃、好ましくは25?150℃である。架橋温度は、通常100?250℃、好ましくは130?220℃、より好ましくは150?200℃であり、架橋時間は、通常0.1分?10時間、好ましくは1分?5時間である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、および熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。
【0106】
本発明のゴム架橋物は、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、更に加熱して二次架橋を行ってもよい。二次架橋は、加熱方法、架橋温度、形状などにより異なるが、好ましくは1?48時間行う。加熱方法、加熱温度は適宜選択すればよい。
【0107】
本発明のゴム架橋物は、引張強度、伸び、硬さなどのゴムとしての基本特性を維持しながら、優れた耐圧縮永久歪み性を有するものである。本発明のゴム架橋物のJIS K6262に準拠して測定される圧縮永久歪み率は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常1?50%、好ましくは5?25%、より好ましくは8?20%の範囲である。
【0108】
本発明のゴム架橋物は、上記特性を活かして、例えば、O-リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、べアリングシール、メカニカルシール、ウエルヘッドシール、電気・電子機器用シール、空気圧縮機器用シールなどのシール材;シリンダブロックとシリンダヘッドとの連結部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダヘッドあるいはトランスミッションケースとの連結部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板及び負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着された燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;緩衝材、防振材;電線被覆材;工業用ベルト類;チューブ・ホース類;シート類;等として好適に用いられる。
【0109】
また、本発明のゴム架橋物は、自動車用途に用いられる押し出し成形型品及び型架橋製品として、例えば、燃料ホース、フィラーネックホース、ベントホース、ペーパーホース、オイルホース等の燃料タンクまわりの燃料油系ホース、ターボエアーホース、エミッションコントロールホース等のエアー系ホース、ラジエターホース、ヒーターホース、ブレーキホース、エアコンホースなどの各種ホース類に好適に用いられる。
【実施例】
【0110】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。
各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
【0111】
[ムーニー粘度(ML1+4、100℃)]
アクリルゴムのムーニー粘度(ポリマームーニー)をJIS K6300に従って測定した。
【0112】
[ムーニースコーチ試験(ML145℃)]
アクリルゴム組成物のムーニースコーチタイム(t5及びt35)、及びVminをJIS K6300に従って145℃で測定した。本測定においては、ムーニー粘度が、Vminから5M上昇した時間をt5とし、ムーニー粘度が、Vminから35M上昇した時間をt35とした。また、測定に使用したアクリルゴム組成物はJIS K6299に従って作製した。t5及びt35は値が大きいほど加硫にかかる時間がかかることを意味し、ゴム組成物の貯蔵安定性に優れ、加硫促進効果が抑えられている(良好に制御されている)と判断できる。Vminは値が低いほどゴム組成物の初期加硫が少ないことを意味し、貯蔵安定性に優れると判断できる。
さらに貯蔵安定性の促進試験として、40℃、80%湿度下で3日間保管したアクリルゴム組成物について、上記と同様の条件にて、ムーニースコーチ試験(貯蔵後のムーニースコーチ試験)を実施した。貯蔵後のムーニースコーチ試験のVminと、貯蔵前のムーニースコーチ試験のVminの差をΔVminとした。ΔVminの値が小さい程、貯蔵でのゴム組成物の変化が小さく、貯蔵安定性に優れると判断できる。
【0113】
[常態物性(引張強度、伸び、硬度)]
アクリルゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら170℃で20分間プレスすることにより架橋し、シート状のゴム架橋物を得た。得られたゴム架橋物を3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。この試験片について、JIS K6253に従い、デュロメーター硬さ試験機(タイプA)を用いて硬度を測定した。さらに、JIS K6251に従い引張強度および伸びを測定した。
【0114】
[空気熱老化試験]
上記常態物性の評価に用いた試験片と同様にして作製した試験片を、ギヤー式オーブン中で、温度175℃の環境下に70時間置いた後、上記常態物性の評価と同様の方法により、引張強度、伸び、硬度を測定し、得られた結果と、上記方法にしたがって測定した常態物性とを対比することにより、耐熱老化性の評価を行った。
【0115】
[圧縮永久歪み試験]
アクリルゴム組成物を170℃、20分間のプレスによって成型、架橋して、直径29mm、厚さ12.5mmの円柱型試験片を作製し、さらに、150℃にて4時間加熱して二次架橋させた。JIS K6262に準じて、上記にて得られた二次架橋後の試験片を25%圧縮させたまま、150℃の環境下で70時間放置した後、圧縮を解放して圧縮永久歪率(%)を測定した。圧縮永久歪率(%)の値が小さいほど、耐圧縮永久歪み性に優れることを示す。
【0116】
〔実施例1〕
ホモミキサーを備えた混合容器に、純水49.95部、アクリル酸エチル40.9部、アクリル酸n-ブチル35.0部、アクリル酸2-メトキシエチル20.0部、アクリロニトリル1.5部、モノクロロ酢酸ビニル2.6部、アニオン性乳化剤としてのラウリル硫酸ナトリウム(商品名「エマール 2FG」、花王社製)0.57部、及びノニオン性乳化剤としてのポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体(商品名「プロノン208」、日油株式会社製)1.40部、L-アスコルビン酸ナトリウム0.22部を攪拌することで、単量体乳化液を得た。
【0117】
次いで、温度計、攪拌装置を備えた重合反応槽に、純水54.19部、および、上記にて得られた単量体乳化液0.95部を投入し、窒素気流下で温度15℃まで冷却した。次いで、重合反応槽中に、上記にて得られた単量体乳化液44.74部、還元剤としての硫酸第一鉄0.0002部、還元剤としてのアスコルビン酸ナトリウム0.0264部、重合開始剤として過硫酸カリウム0.066部を2時間かけて連続的に滴下した。その後、重合反応槽内の温度を23℃に保った状態にて、1時間反応を継続し、重合転化率が95%に達したことを確認し、重合停止剤としてのハイドロキノンを添加して重合反応を停止し、乳化重合液を得た。
【0118】
重合により得られた乳化重合液100部に対し、老化防止剤としてのモノ(又はジ、又はトリ)(α-メチルベンジル)フェノール(商品名「ノクラックSP」、大内新興化学工業社製)0.03部を混合することで混合液を得た。そして、得られた混合液を凝固槽に移し、この混合液100部に対して、工業用水30部を添加して、85℃に昇温した後、混合液を撹拌しながら、得られた重合体(乳化重合液中に含まれる重合体)100部に対して22部の硫酸マグネシウムを添加することにより、重合体を凝固させ、これによりアクリルゴム(A1)の含水クラムを得た。
【0119】
次いで、得られたアクリルゴム(A1)の含水クラムの固形分100部に対し、工業用水388部を添加し、凝固槽内で、室温、5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出させることで、含水クラムの水洗を行った。なお、本実施例では、このような水洗を4回繰り返した。
【0120】
次いで、上記にて水洗を行った含水クラムの固形分100部に対し、工業用水388部および濃硫酸0.13部を混合してなる硫酸水溶液(pH3)を添加し、凝固槽内で、室温、5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出させることで、含水クラムの酸洗を行った。次いで、酸洗を行った含水クラムの固形分100部に対し、純水388部を添加し、凝固槽内で、室温、5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出させることで、含水クラムの純水洗浄を行い、純水洗浄を行った含水クラムを、熱風乾燥機(ベルトコンベヤー式バンドドライヤー)にて110℃で1時間乾燥させることにより、固形状のアクリルゴム(A1)を得た。なお、この際に、熱風乾燥機へのアクリルゴムの付着は観察されなかった。
【0121】
得られたアクリルゴム(A1)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、その組成は、アクリル酸エチル単位40.9重量%、アクリル酸n-ブチル単位35.0重量%、アクリル酸メトキシエチル単位20.0重量%、アクリロニトリル単位1.5重量%、モノクロロ酢酸ビニル単位2.6重量%であった。
【0122】
バンバリーミキサーを用いて、上記にて得られたアクリルゴム(A1)100部に、カーボンブラック(商品名「シースト116」、東海カーボン社製)60部、ステアリン酸1部、および4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「ノクラック CD」、大内新興化学工業社製)1部を添加して、50℃で5分間混合した。次いで、得られた混合物を50℃のロールに移して、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(商品名「ノクセラーBZ」、大内新興化学工業社製)1.0部、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン(商品名「ジスネットF」、三協化成株式会社製)0.5部、N-シクロヘキシルチオフタルイミド(商品名「サントガードPVI」、三新化学工業株式会社製)0.3部を配合して、混練することにより、アクリルゴム組成物を得、上記方法に従って、ムーニースコーチ試験、硬度、引張強度及び破断伸びの測定、空気熱老化試験、圧縮永久歪み試験を行い、それらの結果を表1に示した。
【0123】
〔実施例2〕
凝固剤としての硫酸マグネシウム22部に代えて、硫酸ナトリウム100部を使用した以外は実施例1と同様にしてアクリルゴム(A2)を得た。
得られたアクリルゴム(A2)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、その組成は、アクリル酸エチル単位40.9重量%、アクリル酸n-ブチル単位35.0重量%、アクリル酸メトキシエチル単位20.0重量%、アクリロニトリル単位1.5重量%、モノクロロ酢酸ビニル単位2.6重量%であった。
得られたアクリルゴム(A2)を用いて、実施例1と同様に、アクリルゴム組成物を得て、ムーニースコーチ試験、硬度、引張強度及び破断伸びの測定、空気熱老化試験、圧縮永久歪み試験を行い、それらの結果を表1に示した。
【0124】
〔実施例3〕
モノマー組成及び重合工程は、実施例1と同じとして、乳化重合液を得て、重合により得られた乳化重合液100部に対し、老化防止剤としてのモノ(又はジ、又はトリ)(α-メチルベンジル)フェノール(商品名「ラジテックスSP-50E」、ヒガシ化学社製、50重量%水分散液)0.06部を混合することで混合液を得た。そして、得られた混合液100部に対して工業用水30部を添加し80℃に調整し、凝固剤としての20重量%硫酸マグネシウム水溶液110部(硫酸マグネシウム換算で、22部)へ連続的に添加することにより、重合体を凝固させ、これによりアクリルゴム(A3)の含水クラムを得た。
【0125】
次いで、実施例1と同様に含水クラムの水洗浄、酸洗浄、純水洗、乾燥を行い固形状のアクリルゴム(A3)を得た。なお、この際に、熱風乾燥機へのアクリルゴムの付着は観察されなかった。
【0126】
得られたアクリルゴム(A3)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、その組成は、アクリル酸エチル単位40.9重量%、アクリル酸n-ブチル単位35.0重量%、アクリル酸メトキシエチル単位20.0重量%、アクリロニトリル単位1.5重量%、モノクロロ酢酸ビニル単位2.6重量%であった。
得られたアクリルゴム(A3)を用いて、実施例1と同様に、アクリルゴム組成物を得て、ムーニースコーチ試験、硬度、引張強度及び破断伸びの測定、空気熱老化試験、圧縮永久歪み試験を行い、それらの結果を表1に示した。
【0127】
〔実施例4〕
凝固剤としての硫酸マグネシウム22部に代えて、20重量%硫酸ナトリウム水溶液500部(硫酸ナトリウム換算で、100部)を使用した以外は、実施例1と同様にしてアクリルゴム(A4)を得た。
【0128】
得られたアクリルゴム(A4)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A4)の組成は、アクリル酸エチル単位40.9重量%、アクリル酸n-ブチル単位35.0重量%、アクリル酸メトキシエチル単位20.0重量%、アクリロニトリル単位1.5重量%、モノクロロ酢酸ビニル単位2.6重量%であった。
得られたアクリルゴム(A4)を用いて、実施例1と同様に、アクリルゴム組成物を得て、ムーニースコーチ試験、硬度、引張強度及び破断伸びの測定、空気熱老化試験、圧縮永久歪み試験を行い、それらの結果を表1に示した。
【0129】
〔実施例5〕
アニオン性乳化剤としてのラウリル硫酸ナトリウムに代えて、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステルポリオキシエチレンアルキルフェノールリン酸エステルのナトリウム塩(商品名「フォスファノール LO-529」、東邦化学社製、疎水基の炭素数が15である高級アルコールの燐酸エステル塩)を使用した以外は実施例1と同様にして、固形状のアクリルゴム(A5)を得た。
【0130】
得られたアクリルゴム(A5)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A5)の組成は、アクリル酸エチル単位40.9重量%、アクリル酸n-ブチル単位35.0重量%、アクリル酸メトキシエチル単位20.0重量%、アクリロニトリル単位1.5重量%、モノクロロ酢酸ビニル単位2.6重量%であった。
得られたアクリルゴム(A5)を用いて、実施例1と同様に、アクリルゴム組成物を得て、ムーニースコーチ試験、硬度、引張強度及び破断伸びの測定、空気熱老化試験、圧縮永久歪み試験を行い、それらの結果を表1に示した。
【0131】
〔実施例6〕
アニオン性乳化剤としてのラウリル硫酸ナトリウムに代えて、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(商品名「フォスファノール RA-600」、東邦化学社製、疎水基(アルキル基)の炭素数が6?10である高級アルコールの燐酸エステル塩)のナトリウム塩を使用した以外は実施例1と同様にして、固形状のアクリルゴム(A6)を得た。
【0132】
得られたアクリルゴム(A6)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A6)の組成は、アクリル酸エチル単位40.9重量%、アクリル酸n-ブチル単位35.0重量%、アクリル酸メトキシエチル単位20.0重量%、アクリロニトリル単位1.5重量%、モノクロロ酢酸ビニル単位2.6重量%であった。
得られたアクリルゴム(A6)を用いて、実施例1と同様に、アクリルゴム組成物を得て、ムーニースコーチ試験、硬度、引張強度及び破断伸びの測定、空気熱老化試験、圧縮永久歪み試験を行い、それらの結果を表1に示した。
【0133】
〔比較例1〕
凝固剤としての硫酸マグネシウム22部に代えて、塩化カルシウム4部を使用した以外は実施例1と同様にして固形状のアクリルゴム(C1)を得た。
【0134】
得られたアクリルゴム(C1)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、その組成は、アクリル酸エチル単位40.9重量%、アクリル酸n-ブチル単位35.0重量%、アクリル酸メトキシエチル単位20.0重量%、アクリロニトリル単位1.5重量%、モノクロロ酢酸ビニル単位2.6重量%であった。
得られたアクリルゴム(C1)を用いて、実施例1と同様に、アクリルゴム組成物を得て、ムーニースコーチ試験、硬度、引張強度及び破断伸びの測定、空気熱老化試験、圧縮永久歪み試験を行い、それらの結果を表1に示した。
【0135】
〔比較例2〕
凝固剤としての硫酸マグネシウム22部に代えて、塩化ナトリウム80部を使用した以外は実施例1と同様にして固形状のアクリルゴム(C2)を得た。
【0136】
得られたアクリルゴム(C2)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、その組成は、アクリル酸エチル単位40.9重量%、アクリル酸n-ブチル単位35.0重量%、アクリル酸メトキシエチル単位20.0重量%、アクリロニトリル単位1.5重量%、モノクロロ酢酸ビニル単位2.6重量%であった。
得られたアクリルゴム(C2)を用いて、実施例1と同様に、アクリルゴム組成物を得て、ムーニースコーチ試験、硬度、引張強度及び破断伸びの測定、空気熱老化試験、圧縮永久歪み試験を行い、それらの結果を表1に示した。
【0137】
【表1】

【0138】
表1から、架橋性単量体を含んだ単量体をノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤存在下でレドックス触媒を用いて重合し、金属硫酸塩で凝固し製造された架橋性のアクリルゴム(実施例1?6)は、常態物性試験、空気熱老化試験及び架橋物の圧縮永久歪み試験において、従来から使用される凝固剤で凝固したもの(比較例1及び2)とを比べても全く遜色がないことがわかる。
【0139】
一方、ムーニースコーチ試験において、本発明で製造されるアクリルゴムは、初期物性(Vmin:小さいものの方が良い)で、従来技術に比べ1割近くも抑制できていること、及び長期物性(t5、t35:ともに長い方が良い)でも従来技術に比べて1?5割近くも改善されており、貯蔵安定性において顕著に改善されていることがわかる。また、熱老化後のムーニースコーチの試験においては、本発明で製造されるアクリルゴム(実施例1?4)は、上記と同様な結果を示すとともに、Vmin変化においても大変改良されていることがわかる。また、本発明で製造されるアクリルゴムの中でも、2価金属硫酸塩を使用したもの(実施例1、3)は、1価金属硫酸塩を使用したものよりもより高い効果が得られることがわかる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステルと、架橋性単量体であるハロゲン基含有単量体とを含む単量体であって、前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルであり、前記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル及び/または(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルである単量体を、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との存在下に、還元状態にある金属イオン含有化合物と、当該還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤であるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩との少なくとも2種の還元剤と重合開始剤を用いて乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、
前記乳化重合液を金属硫酸塩と接触させて凝固し含水クラムを得る凝固工程と、
前記含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と、
洗浄した前記含水クラムを乾燥する乾燥工程と、
を備えるアクリルゴムの製造方法。
【請求項2】
前記ノニオン性乳化剤と前記アニオン性乳化剤の使用割合が、ノニオン性乳化剤/アニオン性乳化剤の重量比で、1/99?99/1の範囲である請求項1に記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項3】
前記ノニオン性乳化剤と前記アニオン性乳化剤の使用割合が、ノニオン性乳化剤/アニオン性乳化剤の重量比で、50/50?75/25の範囲である請求項1?2のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】
前記還元状態にある金属イオン含有化合物が、硫酸第一鉄である請求項1?3のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項8】(削除)
【請求項9】
前記還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤が、アスコルビン酸塩である請求項1?3、7のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項10】
前記重合開始剤が、有機過酸化物または無機過酸化物である請求項1?3、7、9のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項11】
前記乳化重合液と前記金属硫酸塩との接触を、前記乳化重合液に前記金属硫酸塩を添加するか、前記乳化重合液を前記金属硫酸塩の溶液または分散液に投入するかのいずれかの方法で行う請求項1?3、7、9、10のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項12】
前記乳化重合液と前記金属硫酸塩との接触温度が、60℃以上である請求項1?3、7、9?11のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項13】
前記金属硫酸塩が、1価または2価の金属硫酸塩である請求項1?3、7、9?12のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項14】
前記アニオン性乳化剤が、リン酸エステル塩である請求項1?3、7、9?13のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項15】
前記洗浄が、酸洗浄を含むものである請求項1?3、7、9?14のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項16】
請求項1?3、7、9?15のいずれかに記載の製造方法で製造されるアクリルゴム。
【請求項17】
単量体組成が、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位50?99.9重量%、架橋性単量体単位0.01?20重量%及び共重合可能な他の単量体単位0?49.99重量%である請求項16に記載のアクリルゴム。
【請求項18】
ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が、10?150の範囲である請求項16または17に記載のアクリルゴム。
【請求項19】
請求項16?18のいずれかに記載のアクリルゴムを含むゴム成分と架橋剤とを含んでなるゴム組成物。
【請求項20】
前記架橋剤が、多価アミン化合物、多価エポキシ化合物、多価カルボン酸、有機カルボン酸アンモニウム塩、有機カルボン酸金属塩、イソシアヌル酸化合物、トリアジン化合物、及び金属石鹸/硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項19に記載のゴム組成物。
【請求項21】
更に架橋促進剤を配合してなる請求項20に記載のゴム組成物。
【請求項22】
架橋促進剤が、グアニジン系架橋促進剤、ジアザビシクロアルケン系架橋促進剤、脂肪族2級アミン系架橋促進剤、脂肪族3級アミン系架橋促進剤及びジチオカルボミン酸塩系加硫促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項21に記載のゴム組成物。
【請求項23】
更にスコーチ抑制剤を配合してなる請求項21または22に記載のゴム組成物。
【請求項24】
更に老化防止剤を配合してなる請求項19?23のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項25】
更に充填剤を配合してなる請求項19?24のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項26】
請求項19?25のいずれかに記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-09-30 
出願番号 特願2019-562016(P2019-562016)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08F)
P 1 651・ 113- YAA (C08F)
P 1 651・ 121- YAA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岡谷 祐哉  
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 佐藤 玲奈
杉江 渉
登録日 2020-05-25 
登録番号 特許第6708316号(P6708316)
権利者 日本ゼオン株式会社
発明の名称 アクリルゴムの製造方法、および、その製造方法により得られるアクリルゴム  
代理人 有我 栄一郎  
代理人 有我 軍一郎  
代理人 有我 栄一郎  
代理人 有我 軍一郎  
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