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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E03C
管理番号 1379829
異議申立番号 異議2021-700242  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-03-05 
確定日 2021-10-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6752573号発明「排水管継手」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6752573号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第6752573号の請求項3に係る特許を維持する。 特許第6752573号の請求項1、2、4に係る特許についての特許異議申立を却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6752573号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成27年12月28日に出願され、令和2年8月21日にその特許権の設定登録がされ、同年9月9日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和3年3月5日に特許異議申立人奥村一正により特許異議の申立てがされ、当審は、同年7月1日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年9月1日に意見書の提出及び訂正の請求を行ったものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「請求項2に記載された排水管継手であって、
前記胴部のパーツは、前記上部受け口を備える上胴部用パーツと、前記下端接続部を備える下胴部用パーツとを有しており、
前記排水受け部は、排水を旋回させる旋回羽根を備え、前記上胴部用パーツの下部に形成されて、前記下胴部用パーツの内側に位置決めされており、
前記排水受け部を備える上胴部用パーツは、前記耐衝撃性硬質塩化ビニルにより成形されており、前記下胴部用パーツは、前記硬質塩化ビニルにより成形されている排水管継手。」と記載されているのを、
請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、
「 排水管を接続する排水管継手であって、
複数のパーツから構成される胴部と、
前記胴部内において流下する排水が衝突する部位に形成されている排水受け部とを有しており、
前記排水受け部を構成するパーツと別体の前記胴部のパーツは、硬質塩化ビニルにより形成されており、
前記排水受け部を構成するパーツ、あるいは前記排水受け部と一体で成形される前記胴部のパーツは、前記硬質塩化ビニルよりも耐衝撃性が高い耐衝撃性硬質塩化ビニルにより形成されており、
前記排水管継手は、建物の上階と下階とを仕切る床スラブを貫通して各階に設置されており、上階の排水立て管と下階の排水立て管とを連結する継手であり、
前記胴部は、上階の排水立て管が接続される上部受け口と、下階の排水立て管が接続される下端接続部と備えており、
前記排水受け部は、前記胴部内に設けられて、流下する排水が衝突することで、その排水の流れ方向を予め決められた方向に変えられるように構成されており、
前記胴部のパーツは、前記上部受け口を備える上胴部用パーツと、前記下端接続部を備える下胴部用パーツとを有しており、
前記排水受け部は、排水を旋回させる旋回羽根を備え、前記上胴部用パーツの下部に形成されて、前記下胴部用パーツの内側に位置決めされており、
前記排水受け部を備える上胴部用パーツは、前記耐衝撃性硬質塩化ビニルにより成形されており、前記下胴部用パーツは、前記硬質塩化ビニルにより成形されている排水管継手。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項2を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項3の記載が、訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載をさらに引用するものであったのを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項3は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項3は、実質的な内容の変更を伴うものではない。
したがって、訂正事項3は、明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項4を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 一群の請求項について
訂正前の請求項1?4について、請求項2ないし4は、請求項1を直接または間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?4に対応する訂正後の請求項1?4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項3に係る発明(以下、「本件訂正発明3」という。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
本件訂正発明3
「【請求項3】
排水管を接続する排水管継手であって、
複数のパーツから構成される胴部と、
前記胴部内において流下する排水が衝突する部位に形成されている排水受け部とを有しており、
前記排水受け部を構成するパーツと別体の前記胴部のパーツは、硬質塩化ビニルにより形成されており、
前記排水受け部を構成するパーツ、あるいは前記排水受け部と一体で成形される前記胴部のパーツは、前記硬質塩化ビニルよりも耐衝撃性が高い耐衝撃性硬質塩化ビニルにより形成されており、
前記排水管継手は、建物の上階と下階とを仕切る床スラブを貫通して各階に設置されており、上階の排水立て管と下階の排水立て管とを連結する継手であり、
前記胴部は、上階の排水立て管が接続される上部受け口と、下階の排水立て管が接続される下端接続部と備えており、
前記排水受け部は、前記胴部内に設けられて、流下する排水が衝突することで、その排水の流れ方向を予め決められた方向に変えられるように構成されており、
前記胴部のパーツは、前記上部受け口を備える上胴部用パーツと、前記下端接続部を備える下胴部用パーツとを有しており、
前記排水受け部は、排水を旋回させる旋回羽根を備え、前記上胴部用パーツの下部に形成されて、前記下胴部用パーツの内側に位置決めされており、
前記排水受け部を備える上胴部用パーツは、前記耐衝撃性硬質塩化ビニルにより成形されており、前記下胴部用パーツは、前記硬質塩化ビニルにより成形されている排水管継手。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1、2及び4に係る特許に対して令和3年7月1日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(進歩性)本件特許の請求項1、2及び4に係る発明は、甲1発明及び甲第10号証ないし甲第12号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易になし得ることである。したがって、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件特許の請求項1、2及び4に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
<引用文献等>
甲第1号証 :特開2014-58849号公報
甲第10号証:特開2011-153478公報
甲第11号証:特開2011?247372号公報
甲第12号証:特開2012-97551号公報

2 各甲号証の記載
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証の記載(下線は、当審が付した。以下同様。)
(ア)「【0001】
本発明は、建物の上階と下階とを仕切る床スラブを貫通して各階に設置されており、上階の排水管と下階の排水管とを水密な状態で連通させる排水管継手に関する。」

(イ)「【0014】
[実施形態1]
以下、図1?図9に基づいて本発明の実施形態1に係る排水管継手の説明を行なう。
本実施形態に係る排水管継手20は、マンション等の集合住宅やオフィスビル等における排水設備10に使用される排水管継手である。
【0015】
<排水設備10の概要について>
排水設備10は、図1に示すように、集合住宅の上階と下階とを仕切る床スラブCを貫通して各階に設置されている排水管継手20と、各階の排水管継手20を相互につなぐ樹脂製の排水立て管70と、各階の床上に配管されて各階の排水管継手に接続される樹脂製の排水横枝管(図示省略)とから構成されている。
排水設備10は、下階の排水管継手20の上部受け口32に排水立て管70の下端挿し口71sを挿入接続した後、その排水立て管70の上端挿し口71uに上階の排水管継手20の下端部(小径円筒部45)を接続するように、下から上に順番に積み上ながら施工する。
そして、排水立て管70の配管後に各階の排水横枝管が各階の排水管継手20の横枝管受け口35に挿入接続される。
【0016】
<排水管継手20の概要、及び上胴部30について>
前記排水管継手20は、上階の排水立て管70及び排水横枝管(図示省略)により導かれた排水を合流させて下階の排水立て管70に流入させる継手であり、排水立て管70及び排水横枝管と同様に樹脂により成形されている。排水管継手 20は、図2、及び図5?図7に示すように、上胴部30と、下胴部40と、内装部材50とから構成されている。
排水管継手20の上胴部30は、排水管継手20の上部を構成する部材であり、図1に示すように、床スラブC上に配置される。上胴部30は、図2、図5等に示すように、上端部に形成された上部受け口32と上胴部本体33とから構成されている。
上部受け口32は、図1に示すように、排水立て管70の下端挿し口71sが挿入接続される部分であり、図2、図5に示すように、円筒部32eと、その円筒部32eの下端位置で上胴部本体33との境界位置に設けられた内フランジ部32fとを備えている。そして、上部受け口32の円筒部32e内にゴム製のシール材26が収納されている。シール材26は、図2に示すように、筒壁部261と、その筒壁部261の上端内周面側に形成された襞状のシール本体部263と、前記筒壁部261の下端に形成された内フランジ状の立て管受け部265とから構成されている。そして、シール材26の立て管受け部265が上部受け口32の内フランジ部32fによって下方から支えられている。
【0017】
これにより、排水立て管70の下端挿し口71sはシール材26の立て管受け部265に当接するまで、上部受け口32内に挿入可能となる。そして、この状態で、シール材26のシール本体部263が排水立て管70の下端挿し口71sによって半径方向外側に押圧されて弾性変形し、上部受け口32と排水立て管70との間がシールされる。さらに、排水立て管70の温度による伸縮はシール材26の立て管受け部265等により吸収されるようになる。
上部受け口32の円筒部32eには、シール材26が収納された状態で、そのシール材26の筒壁部261の上端面を押さえるシール材保持リング24が被せられて接着等により固定される。
【0018】
上胴部30の上胴部本体33の側面には、図5等に示すように、排水横枝管(図示省略)が挿入接続される複数の横枝管受け口35が横向きに90°間隔で形成されている。横枝管受け口35は、前記上部受け口32と径寸法が異なるだけで、基本的には等しい構造である。即ち、横枝管受け口35は、円筒部35eと、その円筒部35eの基端位置の形成された内フランジ部35fとから構成されている。横枝管受け口35には、排水横枝管が直接的に挿入されて接着剤等により固定されるようになっている。
さらに、上胴部本体33の内壁面には、図2、図5に示すように、横枝管受け口35の開口35hを挟んで両側に縦方向に延びる流入防止壁37が形成されている。流入防止壁37は、排水立て管70を介して上部受け口32から流入した旋回排水が横枝管受け口35の開口35h側に逆流したり、隣の横枝管受け口35から流入した排水が別の横枝管受け口35の開口35h側(排水横枝管側)に逆流するのを防止するための壁であり、図3に示すように、断面山形をした突条状に形成されている。
【0019】
また、上胴部本体33の下端部33dは、図2に示すように、下胴部40の大径円筒部41に嵌め込まれるように円筒形に形成されている。さらに、上胴部本体33の下端部33dの外周面には、円周方向における所定位置に位置決め用の突起33tが180°間隔で形成されている。突起33tは断面角形をした扁平な突条であり、後記する下胴部40の位置決め溝47に嵌合可能なように構成されている。
ここで、180°間隔で形成された一対の突起33tは、異なる幅寸法に設定されている。
【0020】
<排水管継手20の下胴部40について>
排水管継手20の下胴部40は、排水管継手20の中央部から下部を構成する部材であり、図1に示すように、その下端部(小径円筒部45)が下方に突出するように床スラブCに埋設される。下胴部40は、上から順番に大径円筒部41とテーパ部43と小径円筒部45とを備えており、前記大径円筒部41、テーパ部43、小径円筒部45が同軸に形成されている。
大径円筒部41は、その内径寸法が上胴部本体33の下端部33dの外径寸法とほぼ等しくなるように設定されている。また、大径円筒部41の軸方向の長さ寸法が、上胴部本体33の軸方向の長さ寸法よりも若干小さな値に設定されている。
テーパ部43は、肉厚寸法を変化させずに下側が小径になるように管体を徐々に絞った部分であり、軸方向の長さ寸法が上胴部本体33の軸方向の長さ寸法とほぼ等しく設定されている。
【0021】
小径円筒部45は、図1に示すように、下階の排水立て管70の上端挿し口71uが挿入接続される部分であり、床スラブCの天井面から一定寸法だけ突出するように構成されている。小径円筒部45の内側には、図2に示すように、排水立て管70の上端挿し口71uの上端面が当接するストッパ部45sが前記テーパ部43の延長線上に形成されている。そして、ストッパ部45sの周囲に、図4に示すように、そのストッパ部45s、及びその近傍における肉厚寸法の増加を抑える肉ぬすみ部45kが形成されている。
また、下胴部40の内壁面には、図6に示すように、円周方向おける所定位置に軸方向に延びる位置決め溝47が180°間隔で形成されている。位置決め溝47は、大径円筒部41の上端からテーパ部43の途中位置まで形成された断面角形の浅い溝であり、下方に行くにつれて幅狭となるように形成されている。さらに、180°間隔で形成された一対の位置決め溝47は、異なる幅寸法に設定されており、各々の位置決め溝47の幅寸法が上胴部本体33の対応する突起33tの幅寸法にほぼ等しくなるように設定されている。
ここで、位置決め溝47を断面角形の溝状に形成し、突起33tを断面角形の突条状に形成する例を示したが、位置決め溝47を開口側が狭い溝状に形成し、突起33tを先端側が広い突条状に形成して、位置決め溝47と突起33tとが半径方向に係合する構成とすることも可能である。
即ち、下胴部40の大径円筒部41が本発明における下胴部の上端接続部に相当し、下胴部40の小径円筒部45が本発明における下胴部の下端接続部に相当する。
【0022】
<排水管継手20の内装部材50について>
排水管継手20の内装部材50は、図2に示すように、下胴部40の内側に嵌め込まれてその下胴部40に固定される部材であり、流下する排水を減速させて旋回させられるように構成されている。内装部材50は、図7に示すように、筒状部52と、その筒状部52の下側で位相を180°ずらした状態で形成された減速ガイド54と、旋回ガイド56とから構成されている。
内装部材50の筒状部52は、図7(A)(B)に示すように、下胴部40の大径円筒部41に嵌め込まれる筒本体52mと、減速ガイド54を支持する減速ガイド支持部52xと、旋回ガイド56を支持する旋回ガイド支持部52yとから構成されている。即ち、筒状部52の筒本体52mの外径寸法は、上胴部30(上胴部本体33)の下端部33dの外径寸法と等しい値で、下胴部40の大径円筒部41の内径寸法とほぼ等しく設定されている。
そして、筒状部52の筒本体52mの外周面には、下胴部40の位置決め溝47と嵌合可能な嵌合リブ52tが位相を180°ずらした状態で形成されている。嵌合リブ52tは、下胴部40の位置決め溝47と等しい断面形状(断面角形)をした扁平突条であり、下方に行くにつれて幅狭となるように形成されている。さらに、180°間隔で形成された一対の嵌合リブ52tは、異なる幅寸法に設定されており、各々の嵌合リブ52tの幅寸法が下胴部40の対応する位置決め溝47の幅寸法にほぼ等しくなるように設定されている。
ここで、嵌合リブ52tを断面角形に形成する例を示したが、位置決め溝47を開口側が狭い溝状に形成した場合には、嵌合リブ52tの断面形状を位置決め溝47を形状に合わせるようにする。
上記構成により、筒本体52mの嵌合リブ52tが対応する下胴部40の位置決め溝47と嵌合し、その筒本体52mの外周面が下胴部40の内周面と嵌合した状態で、内装部材50は下胴部40に対して円周方向、上下方向に位置決めされるようになる。
【0023】
内装部材50の旋回ガイド56は、図3の平面図に示すように、扁平半円形をした羽根状部材であり、流下する排水をさほど減速させずに旋回させられるように構成されている。このため、旋回ガイド56は、羽根の面積が減速ガイド54と比較して小さく、傾斜角度が、図7(A)に示すように、減速ガイド54より大きくなるように設定されている。また、旋回ガイド56の下面側には、その旋回ガイド56を補強するための補強桁56rが旋回ガイド56の幅方向に延びるように形成されている。
減速ガイド54は、旋回ガイド56と同様に扁平半円形をした羽根状部材であり、流下する排水を主に減速させつつ、旋回させられるように構成されている。このため、減速ガイド54は、旋回ガイド56と比較して羽根の面積が大きく、傾斜角度が旋回ガイド56より小さくなるように設定されている。また、減速ガイド54の下面側には、同様にその減速ガイド54を補強するための補強桁54rが減速ガイド54の幅方向に延びるように形成されている。
即ち、前記減速ガイド54が本発明の減速羽根に相当し、旋回ガイド56が本発明の旋回羽根に相当する。
【0024】
<排水管継手20の組立について>
次に、排水管継手20の成形、及び組立について簡単に説明する。
前記排水管継手20を構成する上胴部30、下胴部40、内装部材50、及びシール材保持リング24は、射出成形機により樹脂を成形型内に圧入することにより所定の形状に成形される。ここで、排水管継手20の樹脂材料としては、熱可塑性樹脂である硬質塩化ビニルが好適に使用される。
排水管継手20の組立では、先ず、内装部材50を下胴部40に固定する。即ち、内装部材50の嵌合リブ52tを対応する下胴部40の位置決め溝47に嵌合させた状態で、その内装部材50を下胴部40の内側に嵌め込んで、接着剤等により内装部材50を下胴部40に固定する。
次に、上胴部30の上胴部本体33の突起33tを対応する下胴部40の位置決め溝47に嵌合させつつ、その上胴部本体33の下端部33dを下胴部40の大径円筒部41に挿入し、接着剤等により上胴部30を下胴部40に固定する。このとき、上胴部30の上胴部本体33の下端部33dは、図2に示すように、内装部材50の筒状部52に当接するまで下胴部40の大径円筒部41に挿入される。
この状態で、内装部材50と上胴部30とを下胴部40に対して一定の位置関係で位置決めできるようになる。
次に、上胴部30の上部受け口32にシール材26を収納し、その上部受け口32の上端部にシール材保持リング24を被せて、接着剤等によりシール材保持リング24を上部受け口32に固定する。この状態で、排水管継手20の組立が完了する。
ここで、上胴部30の上部受け口32にシール材保持リング24を固定した後で、シール材26を上胴部30の上部受け口32に嵌め込むことも可能である。また、シール材26及びシール材保持リング24を上部受け口32に装着した後、上胴部30を下胴部40に固定することも可能である。
即ち、内装部材50の嵌合リブ52tと下胴部40の位置決め溝47とが本発明における下胴部と内装部材とを相対的に位置決めする凹凸に相当し、上胴部30の上胴部本体33の突起33tと下胴部40の位置決め溝47とが本発明における上胴部と下胴部とを相対的に位置決めする凹凸に相当する。」

(ウ)図面
a 図1




上記図1より、排水管継手20が、上階の排水立て管70と下階の排水立て管70を接続している点が看取できる。

b 図2





上記図2から以下の点が看取できる。
(a)内装部材50は、筒状部52と減速ガイド54及び旋回ガイド56とが接続して構成されている点。
(b)減速ガイド54及び旋回ガイド56は、内装部材50内に設けられている点。

(エ)上記(イ)の段落【0024】の「内装部材50」が「射出成形機により樹脂を成形型内に圧入することにより所定の形状に成形される」ことと、上記(ウ)b(a)から、内装部材50は、筒状部52と減速ガイド54及び旋回ガイド56とが一体で形成されているといえる。

イ 甲第1号証に記載された発明
上記アより、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「マンション等の集合住宅やオフィスビル等における排水設備10に使用され、建物の上階と下階とを仕切る床スラブを貫通して各階に設置されており、上階の排水管と下階の排水管とを連通させる排水管継手20であって、
排水管継手20は、上階の排水立て管70と下階の排水立て管70を接続し、上階の排水立て管70及び排水横枝管により導かれた排水を合流させて下階の排水立て管70に流入させる継手であり、排水立て管70及び排水横枝管と同様に樹脂により成形され、上胴部30と、下胴部40と、内装部材50とから構成されており、
上胴部30は、排水管継手20の上部を構成する部材であり、床スラブC上に配置され、上端部に形成された上部受け口32と上胴部本体33とから構成されており、上部受け口32は、上階の排水立て管70の下端挿し口71sが挿入接続される部分であり、
下胴部40は、排水管継手20の中央部から下部を構成する部材であり、その下端部(小径円筒部45)が下方に突出するように床スラブCに埋設され、上から順番に大径円筒部41とテーパ部43と小径円筒部45とを備えており、前記大径円筒部41、テーパ部43、小径円筒部45が同軸に形成されていて、小径円筒部45は、下階の排水立て管70の上端挿し口71uが挿入接続される部分であり、
内装部材50は、下胴部40の内側に嵌め込まれてその下胴部40に固定される部材であり、流下する排水を減速させて旋回させられるように構成されていて、筒状部52と、その筒状部52の下側で位相を180°ずらした状態で形成された減速ガイド54と、旋回ガイド56とから構成されており、筒状部52は、下胴部40の大径円筒部41に嵌め込まれる筒本体52mと、減速ガイド54を支持する減速ガイド支持部52xと、旋回ガイド56を支持する旋回ガイド支持部52yとから構成されており、旋回ガイド56及び減速ガイド54が、内装部材50内に設けられており、
旋回ガイド56は、扁平半円形をした羽根状部材であり、流下する排水をさほど減速させずに旋回させられるように構成されており、旋回ガイド56の下面側には、その旋回ガイド56を補強するための補強桁56rが旋回ガイド56の幅方向に延びるように形成され、減速ガイド54は、旋回ガイド56と同様に扁平半円形をした羽根状部材であり、流下する排水を主に減速させつつ、旋回させられるように構成されており、減速ガイド54の下面側には、減速ガイド54を補強するための補強桁54rが減速ガイド54の幅方向に延びるように形成されていて、筒状部52と減速ガイド54及び旋回ガイド56とは一体で形成されていて、
前記上胴部30、下胴部40、内装部材50は、射出成形機により樹脂を成形型内に圧入することにより所定の形状に成形され、樹脂材料としては、熱可塑性樹脂である硬質塩化ビニルが使用される、
排水管継手20。」

(2)甲第10号証
ア 甲第10号証の記載
(ア)「【0001】
本発明は、耐火排水集合継手に関する。」

(イ)「【0015】
本発明において、耐火熱膨張性樹脂パイプとしては、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1?10重量部の割合で含む耐火熱膨張性樹脂組成物からなる耐火膨張層の単層構造であるもの、あるいは、耐火熱膨張性樹脂パイプが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1?15重量部の割合で含む耐火熱膨張性樹脂組成物からなる耐火膨張層と、この耐火膨張層の内外面を覆うように設けられる熱膨張性黒鉛非含有のポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなる被覆層とからなる3層構造であるものが好ましい。
上記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル単独重合体;塩化ビニルモノマーと、該塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体;塩化ビニル以外の(共)重合体に塩化ビニルをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。又、必要に応じて上記ポリ塩化ビニル系樹脂を塩素化してもよい。」

(ウ)「【0030】
また、耐火膨張層を形成する耐火熱膨張性樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて安定剤、無機充填剤、難燃剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマーなどの添加剤が添加されていてもよい。
上記安定剤としては、特に限定されないが、鉛系安定剤、有機スズ安定剤、高級脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらが単独であるいは複合して用いられる。」

(エ)「【0042】
上記衝撃改質剤としては特に限定されず、例えばメタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、アクリルゴムなどが挙げられる。」

(オ)「【0053】
また、上記耐火熱膨張性樹脂パイプ以外の継手構成部材を構成する樹脂組成物中には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて耐火熱膨張性樹脂パイプと同様の安定剤、無機充填剤、難燃剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマーなどの添加剤が添加されていてもよい。」

(カ)「【0059】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1?図4は、本発明にかかる耐火排水集合継手の第1の実施の形態をあらわしている。
図1及び図2に示すように、この耐火排水集合継手Aは、第1継手構成部材10?第11継手構成部材20の11の継手構成部材と、第1パッキン31?第3パッキン33の3つのパッキンを組み立てることによって形成されている。
詳しく説明すると、第1継手構成部材10は、胴部の一部を構成し、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1?15重量部の割合で含む耐火熱膨張性樹脂組成物で形成された耐火膨張層と、この耐火膨張層の内外面を覆う熱膨張性耐火材料非含有のポリ塩化ビニル系樹脂組成物で形成された被覆層で覆われた3層構造となった押出成形で得られるパイプ(例えば、積水化学工業社エスロン耐火VPパイプ等の耐火管であり、三層構造の塩ビ管で、内外面の硬質ポリ塩化ビニル層と、高温になると大きく膨張し断熱・耐火層を形成する熱膨張性黒鉛含有特殊配合の中間層からなるパイプで、特開2008-180367号公報に開示されている。)であって、後述する排水立管P1より大径になっている。
【0060】
第2継手構成部材11?第11継手構成部材20は、それぞれポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、非膨張性黒鉛を0.1?1.0重量部の割合で含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物を射出成形することによって得られる。
そして、第2継手構成部材11は、図1?図3に示すように、胴部の一部を構成する本体部11aと、3つの横枝管接続部形成用筒部11bと、を備えている。
本体部11aは、第1継手構成部材10の外径と略同じ内径をした筒状をしていて、上側に第3継手構成部材12の下端部が嵌合する上部嵌合部11c、下側に後述する第4継手構成部材13のリング状嵌合部12a及び第1継手構成部材10の上端部が嵌合する下部嵌合部11dを備えるとともに、上部嵌合部11cの下端から下部嵌合部12dの上端に達する3本の内面補強リブ51が内面に形成されている。
【0061】
内面補強リブ51は、本体部11aの内壁面の、3つの横枝管接続部形成用筒部11bの開口部を及び後述する第3継手構成部材12の旋回羽根形成部12cを避けた位置で管軸に平行に設けられている。
また、内面補強リブ51は、その高さ(本体部11aの内壁面から本体部11aの中心軸方向の寸法)が、テストボールの通過可能な高さになっている。
【0062】
横枝管接続部形成用筒部11bは、本体部11aの同じ高さ位置で本体部11aの中心軸を中心に90度ずつずれて本体部11aの外壁面から円筒状に突出するように設けられている。
【0063】
第3継手構成部材12は、リング状嵌合部12aと、旋回羽根形成部12bとを備えている。
リング状嵌合部12aは、上記第2継手構成部材11の本体部11aの内径とほぼ同じ外径をしていて、内面補強リブ51の高さとほぼ同じ肉厚のリング状をしている。
【0064】
旋回羽根形成部12bは、羽根本体12cと、羽根本体支持脚部12dとを備えている。
羽根本体支持脚部12dは、リング状嵌合部12aの下端から延出していて、上下方向の寸法が第1継手構成部材10の上下方向(管軸方向)の寸法とほぼ同じになっている。
また、羽根本体12cは、テストボールの通過を妨げないとともに、上方からの排水を受けることができるように、その傾斜角が管軸に対して20?50°、管軸方向の投影面積が排水立管の内断面積の5?25%となるように羽根本体支持脚部12dに一体化されている。
【0065】
第4継手構成部材13は、胴部の一部を構成し、上部受口13aと、テーパ筒部13bと、下部受口13cとを備えている。
上部受口13aは、第1継手構成部材10の下端が嵌り込むようになっていて、その内径が第1継手構成部材10の外径とほぼ同じになっている。
【0066】
テーパ筒部13bは、上端から下端に向かって徐々に縮径するとともに、上端が第1継手構成部材10の内径とほぼ同じ内径となっていて、下端が接続される排水立管P1の内径とほぼ同じになっている。
また、テーパ筒部13bは、図1及び図5に示すように、その壁面の一部が内側に凹設されることによって、その内側に旋回羽根52を一体に備えた構造となっている。
旋回羽根52は、傾斜角がテーパ筒部13bの管軸に対して15?40°、管軸方向の投影面積が排水立管の内断面積の3?25%となるようにテーパ筒部13bの内壁面に一体化されている。
【0067】
第5継手構成部材14は、胴部の一部を構成する本体部14aと、旋回羽根形成部14bとを備えている。
本体部14aは、上部筒部14cと、下部筒部14dとを備えている。
上部筒部14cは、その外径が第2継手構成部材11の本体部11aの内径より大きくなっていて、その上端部外周面に、後述する第6継手構成部材15が抜け止め状態で嵌合する嵌合突条14eがリング状に設けられている。
【0068】
下部筒部14dは、上部筒部14cの下端から段状に縮径し、その外径が第2継手構成部材11の本体部11aの内径とほぼ同じになっている。
また、下部筒部14dは、その下端に内側に鍔状に張り出し、後述する第1パッキン31の立管受部31bを介して排水立管P1の荷重を受けるリブ14fをリング状に備えている。
【0069】
リブ14fの内径は、排水立管P1の内径とほぼ同じになっている。
旋回羽根形成部14bは、羽根本体14gと、羽根支持脚部14hとを備えている。
旋回羽根支持脚部14hは、羽根本体14g水平方向の幅と略同じ幅で下部筒部14dの下端から下方延出し、羽根本体14gを下端縁から少し上側で支持している。
【0070】
羽根本体14gは、管軸方向にみた投影面積が排水立管P1の内部横断面積に対して5%?30%の大きさで、傾斜角が20°?50°となるように旋回羽根支持脚部14hに支持されている。
第1パッキン31は、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等の通常排水設備に使用されているゴム材料からなるパッキンであって、上端部に、例えば、図4に示すように、呼び径100Aの排水立管P1の外周面に水密に密着するリップ部31aを有し、その上端面が、第5継手構成部材14の上端面とほぼ一致するように第5継手構成部材14の本体部14aに嵌合されている。
また、リップ部31aは、下端側に向かって徐々に小径となるように設けられ、上端側が排水立管P1の外径と略同じか少し大径になっていて、下端側が排水立管P1の外径より小径となって段状に立管受部31bを有している。そして、この立管受部31bが排水立管P1の管端部を受けて、排水立管P1の熱伸縮を吸収するようになっている。
【0071】
第6継手構成部材15は、第5継手構成部材14の上端部に外嵌され、一端に設けられたフランジ部15aによって、第1パッキン31の第5継手構成部材14からの離脱を防止するようになっている。
そして、第5継手構成部材14、第1パッキン31及び第6継手構成部材15は、図4に示すように、予め、組み立てた一体化したのち、第5継手構成部材14の下部筒部14dを第2継手構成部材11の本体部11aに設けられた上部嵌合部11cに嵌合接着することができる。
【0072】
第7継手構成部材16は、一端に嵌着部16aを有し、他端にパッキン装着部16bを備えている。
嵌着部16aは、第2継手構成部材11の横枝管接続部形成用筒部11bに嵌合接着される。
パッキン装着部16bは、嵌着部16aより外径が少し大径になっていて、後述する第2パッキン32が嵌着される。
【0073】
第2パッキン32は、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等の通常排水設備に使用されているゴム材料からなるパッキンであって、パッキン装着部16bに嵌着され、例えば、図4に示すように、呼び径80Aの横枝管P2の外周面に水密に密着するリップ部32aを有している。
【0074】
第8継手構成部材17は、第7継手構成部材16のパッキン装着部16bに外嵌され、一端に設けられたフランジ部17aによって、第2パッキン32の第7継手構成部材16からの離脱を防止するようになっている。
【0075】
第9継手構成部材18は、一端に嵌着部18aを有し、他端にパッキン装着部18bを備えている。
嵌着部18aは、第2継手構成部材11の横枝管接続部形成用筒部11bに嵌合接着される。
パッキン装着部18bは、嵌着部18aより外径が少し大径になっていて、後述する第2パッキン32が嵌着される。
また、嵌着部18a及びパッキン装着部18bを貫通する後述する横枝管P3が挿通される孔18cは、第9継手構成部材1の横枝管接続部形成用筒部11bへの第9継手構成部材18の中心軸から下方に偏芯している。
【0076】
第3パッキン33は、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等の通常排水設備に使用されているゴム材料からなるパッキンであって、パッキン装着部18bに嵌着され、例えば、図4に示すように、呼び径50Aの横枝管P3の外周面に水密に密着するリップ部33aを有している。
【0077】
第10継手構成部材19は、第9継手構成部材18のパッキン装着部18bに外嵌され、一端に設けられたフランジ部19aによって、第3パッキン33の第9継手構成部材18からの離脱を防止するようになっている。
【0078】
第11継手構成部材20は、図2に示すように、蓋部20aと嵌合部20bとを備え、嵌合部20bが第2継手構成部材11の横枝管P2を接続しない横枝管接続部形成用筒部11bに嵌合接着されて横枝管接続部形成用筒部11bを封止している。」

(キ)「【0090】
A,B 耐火排水集合継手
B1 継手本体
10 第1継手構成部材(耐火熱膨張性パイプ)
・・・
P1 排水立管
P2,P3 横枝管」

(ク)図2





(3)甲第11号証
ア 甲第11号証の記載
(ア)「【0001】
本発明は、排水管継手に関する。」

(イ)「【0015】
本発明において、耐火熱膨張性樹脂パイプとしては、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1?10重量部の割合で含む耐火熱膨張性樹脂組成物からなる耐火膨張層の単層構造であるもの、あるいは、耐火熱膨張性樹脂パイプが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1?15重量部の割合で含む耐火熱膨張性樹脂組成物からなる耐火膨張層と、この耐火膨張層の内外面を覆うように設けられる熱膨張性黒鉛非含有のポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなる被覆層とからなる3層構造であるものが好ましい。
上記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル単独重合体;塩化ビニルモノマーと、該塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体;塩化ビニル以外の(共)重合体に塩化ビニルをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。又、必要に応じて上記ポリ塩化ビニル系樹脂を塩素化してもよい。」

(ウ)「【0030】
また、耐火膨張層を形成する耐火熱膨張性樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて安定剤、無機充填剤、難燃剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマーなどの添加剤が添加されていてもよい。
上記安定剤としては、特に限定されないが、鉛系安定剤、有機スズ安定剤、高級脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらが単独であるいは複合して用いられる。」

(エ)「【0042】
上記衝撃改質剤としては特に限定されず、例えばメタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、アクリルゴムなどが挙げられる。」

(オ)「【0053】
また、上記耐火熱膨張性樹脂パイプ以外の継手構成部材を構成する樹脂組成物中には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて耐火熱膨張性樹脂パイプと同様の安定剤、無機充填剤、難燃剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマーなどの添加剤が添加されていてもよい。」

(4)甲第12号証
ア 甲第12号証の記載
(ア)「【0001】
本発明は、排水管継手に関する。」

(イ)「【0018】
本発明において、耐火熱膨張性樹脂パイプとしては、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1?10重量部の割合で含む耐火熱膨張性樹脂組成物からなる耐火膨張層の単層構造であるもの、あるいは、耐火熱膨張性樹脂パイプが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1?15重量部の割合で含む耐火熱膨張性樹脂組成物からなる耐火膨張層と、この耐火膨張層の内外面を覆うように設けられる熱膨張性黒鉛非含有のポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなる被覆層とからなる3層構造であるものが好ましい。
上記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル単独重合体;塩化ビニルモノマーと、該塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体;塩化ビニル以外の(共)重合体に塩化ビニルをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。又、必要に応じて上記ポリ塩化ビニル系樹脂を塩素化してもよい。」

(ウ)「【0033】
また、耐火膨張層を形成する耐火熱膨張性樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて安定剤、無機充填剤、難燃剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマーなどの添加剤が添加されていてもよい。
上記安定剤としては、特に限定されないが、鉛系安定剤、有機スズ安定剤、高級脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらが単独であるいは複合して用いられる。」

(エ)「【0045】
上記衝撃改質剤としては特に限定されず、例えばメタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、アクリルゴムなどが挙げられる。」

(オ)「【0056】
また、上記耐火熱膨張性樹脂パイプ以外の継手構成部材を構成する樹脂組成物中には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて耐火熱膨張性樹脂パイプと同様の安定剤、無機充填剤、難燃剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマーなどの添加剤が添加されていてもよい。」

3 取消理由についての当審の判断
(1)請求項1、2及び4に係る特許について
上記第2のとおり本件訂正請求による訂正により請求項1、請求項2及び請求項4は削除された。
その結果、請求項1、請求項2及び請求項4に係る特許についての特許異議申立ては、その対象を欠くこととなったので、不適法な申立てであり、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人が主張する特許異議申立理由
申立人が主張する申立ての理由は、以下の(1)ないし(6)のとおりである(以下、(1)ないし(6)にかかる理由を、申立理由(1)ないし(6)という。)。

(1)本件の請求項1乃至4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証に記載された周知技術(排水用部材において耐衝撃性が求められる部位を耐衝撃性硬質塩化ビニルで形成すること。以下「周知技術1」という。)、及び、甲第10号証、甲第11号証、甲第12号証に記載された周知技術(旋回羽根が上胴部用パーツの下部に形成され、かつ、下胴部用パーツの内側に位置決めされること。以下「周知技術4」という。)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件の請求項1乃至4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第1号証、甲第13号証、甲第14号証に記載された周知技術(旋回羽根が補強を要する部位であること。以下「周知技術2」という。)、甲第10号証、甲第11号証、甲第12号証に記載された周知技術(必要に応じて樹脂製の排水管継手の一部に、衝撃改質剤を添加すること。以下「周知技術3」という。)、及び周知技術4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件の請求項1乃至4に係る発明は、甲第15号証に記載された発明、甲第1号証、甲第14号証、甲第16号証に記載された周知技術(排水管継手を硬質塩化ビニルで形成すること。以下「周知技術5」という。)、甲第1号証、甲第14号証に記載された周知技術(旋回羽根を、排水管継手の胴下部の内側に位置決めされた内装部材に形成すること。以下、「周知技術6」という。)、周知技術1及び周知技術4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件の請求項1乃至4に係る発明は、甲第15号証に記載された発明、周知技術5、周知技術2、周知技術3、周知技術4及び周知技術6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件の請求項1乃至4に係る発明は、甲第16号証に記載された発明、周知技術2、周知技術3、周知技術4及び周知技術6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)本件の請求項1乃至4に係る発明は、甲第16号証に記載された発明、周知技術2、周知技術1、周知技術4及び周知技術6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

申立人より提出された証拠は以下のとおりである。
甲第1号証 :特開2014-58849号公報
甲第2号証 :特開平11-229482号公報
甲第3号証 :特開平8-27883号公報
甲第4号証 :特開平7-173868号公報
甲第5号証 :「クボタ接着剤・接合剤・滑剤」、株式会社クボタ、2 004年8月
甲第6号証 :「エスロン接着剤」、積水化学工業株式会社、1975 年
甲第7号証 :「エスロンHI電線管」、積水化学工業株式会社、19 75年
甲第8号証 :「JIS K 6815-2(ISO 6259-2) 熱可塑性プラスチック管-引張特性の求め方- 第2部 :硬質塩化ビニル(PVC-U)管,耐熱性硬質塩化ビ ニル(PVC-C)及び耐衝撃性硬質塩化ビニル(PV C-HI)管」、財団法人日本規格協会、平成14年4 月30日
甲第9号証 :特開平8-3402号公報
甲第10号証:特開2011-153478公報
甲第11号証:特開2011?247372号公報
甲第12号証:特開2012-97551号公報
甲第13号証:特開2012-82621号公報
甲第14号証:特開2015-175187号公報
甲第15号証:特開平11-222891号公報
甲第16号証:特開2013-2479号公報

2 取消理由で採用していない各甲号証の記載
令和3年7月1日付けで通知した取消理由で採用していない各甲号証の記載は、以下のとおりである。

(1)甲第15号証
ア 甲第15号証の記載
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、中高層集合住宅等において用いられる、汚水と雑排水を集合して流す一管式排水管の排水集合管等の排水管に関する。」

(イ)「【0006】本発明における課題解決のための第2の具体的手段は、排水管の内周面から突出した水案内部に減振用リブを形成していることである。これによって、水案内部の剛性が高められて撓みが減少し、水案内部に排水が衝突した場合の胴部の振動が減少し、排水管の騒音が低減する。本発明における課題解決のための第3の具体的手段は、胴部に下細りのテーパ部を有する排水管において、前記テーパ部を前記胴部の他の部分より肉厚に形成していることである。
【0007】発明者らは、音響放射面となっていた胴部のうち、騒音低減に最も重要なのは排水が強く衝突する下細りのテーパ部であるとの知見を得た。かかる知見に基づき、テーパ部を他の部分より肉厚にすることにより、他の部分も肉厚にする場合に比べて、排水管全体で余り重量を増やすことなく効果的に振動を低減できる。ここで、テーパ部を前記胴部の他の部分より肉厚にするには、前記テーパ部を全体的に肉厚にしても良いし、前記テーパ部に減衰用リブを形成して、テーパ部を部分的に肉厚にしても良い。すなわち、前記テーパ部の剛性が胴部の他の部分と同じ厚みのときより高まっていれば良い。
【0008】また、好ましくは、前記テーパ部を前記胴部の他の部分より全体的に肉厚に形成し、さらに前記テーパ部に減振用リブも形成することにより、剛性がより高くなり、騒音を効果的に低減することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1、2に示す第1の実施の形態において、1は排水集合管で、胴上部1Aには、上排水立管2を接続する立接続部3と、便器、流し台、洗面所等からの排水を排水集合管1に流す横枝管4、5が接続される1又は複数の横接続部6、7とが設けられ、胴下部1Bは下細りテーパ状に形成されていてスラブ8に形成した通孔に挿通状とされて、モルタル9によって固定され、下排水立管10と接続可能な下接続部11が形成されている。
【0010】排水集合管1の胴下部1Bは、上部が円筒状で下部が下細りテーパ状に形成され、円筒状部1a及びテーパ状部1bの内周面は、上排水立管2、横枝管4、5等から流れてくる排水が勢いよく衝突する水衝突面となっている。また、テーパ状部1bの下部にも円筒状に形成された円筒状部1cを備えている。この円筒状部1a及びテーパ状部1bの外周面にはネット形状のリブ14が形成されており、胴下部1Bの剛性を高めて水衝突により発生する振動を低減している。このリブ14は格子形状でもよく、振動を効果的に低減する突出量となっていて、胴下部1Bの肉厚を厚くして剛性を高める場合よりも、重量増加を十分に抑えている。
【0011】前記胴下部1Bのテーパ状部1b又は円筒状部1aからテーパ状部1bにかけて、その内周面には、管軸方向に対して傾斜した或いは管軸廻りに螺旋状とされた旋回羽根13が設けられ、この旋回羽根13が水案内部材を構成し、その上面が水衝突面となっている。この旋回羽根13は、排水集合管1内に流下した排水を旋回流に変化させ、かつ管壁に沿って流し、排水管の中央部に排水流のない空間、すなわち空気コアを生じせ、旋回流及び空気コアによって、「ゴボゴボ音」の原因である管内の空気圧変動を軽減等し、スムーズで静かな排水流下性能を発揮するものである。
【0012】前記旋回羽根13は、図2にも示すように、水衝突面の裏面側に複数本の略横歩行の直線状のリブ15が形成されており、旋回羽根13の重量を余り増加させることなく、撓みを低下させて振動を低減するようにしている。なお、排水集合管1は、胴下部1Bのリブ14と旋回羽根13のリブ15の内のどちらか一方だけでもよいが、両方形成しておくほうが、より確実に振動・騒音を低減できる。」

(ウ)「【0023】また、排水管は、その内周面から突出した水案内部に減振用リブを形成しているので、水案内部の剛性を高めて撓みを減少することができ、排水が衝突しても水案内部の振動が減少し、騒音を低減できる。また、胴部に下細りのテーパ部を有する排水管において、テーパ部を胴部の他の部分より肉厚に形成したことにより、騒音を発生している音響放射面のうち、最も重要なテーパ部の剛性だけが高くなり、不必要に排水管全体の重量が増加することを防止しつつ、騒音を低減できる。」

(エ)図面
a 図1




上記図1から、以下の点を看取することができる。
(a) 排水集合管1が、上胴部1Aと下胴部1Bとを備えている点。
(b) 下胴部1Bが、円筒状部1a及びテーパ状部1bを備えている点。

b 図2







イ 甲第15号証に記載された発明
上記アより、甲第15号証には、以下の発明(以下「甲15発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲15発明)
「上胴部1Aと
下胴部1Bとを備え、
胴上部1Aには、上排水立管2を接続する立接続部3と、便器、流し台、洗面所等からの排水を排水集合管1に流す横枝管4、5が接続される1又は複数の横接続部6、7とが設けられ、
胴下部1Bは下細りテーパ状に形成されていてスラブ8に形成した通孔に挿通状とされて、モルタル9によって固定され、下排水立管10と接続可能な下接続部11が形成されて、下胴部1Bが、円筒状部1a及びテーパ状部1bを備えているとともに、テーパ状部1bの下部にも円筒状に形成された円筒状部1cを備えており、円筒状部1a及びテーパ状部1bの外周面にはネット形状のリブ14が形成されており、胴下部1Bの剛性を高めて水衝突により発生する振動を低減し、前記胴下部1Bのテーパ状部1b又は円筒状部1aからテーパ状部1bにかけて、その内周面には、管軸方向に対して傾斜した或いは管軸廻りに螺旋状とされた旋回羽根13が設けられていて、
この旋回羽根13は、水案内部材を構成し、その上面が水衝突面となっていて、排水集合管1内に流下した排水を旋回流に変化させ、かつ管壁に沿って流しているものであり、水衝突面の裏面側に複数本の略横歩行の直線状のリブ15が形成されている、
排水集合管。」

(2)甲第16号証
ア 甲第16号証の記載
(ア)「【0001】 本発明は、建造物の防火区画に貫通して設けられた耐火性管継手の更新方法に関する。」

(イ)「【0014】 図面に基づき本発明の方法を耐火性の管継手である耐火二層管継手に適用した場合の実施の形態を説明すると、図1及び図2は、本発明の実施に使用した耐火二層管継手の側面図及びその切断側面図を示し、符号1は耐火二層管継手、符号2は硬質塩化ビニールなどの合成樹脂製の内管、符号3は該内管2の外周面を覆った繊維混入モルタル製の外管である。この内管2は、上下両端に排水縦管4、4を接続するための配管接続口5、6を有し、その中間部から下方の配管接続口6にかけて漏斗状に次第に外周が小径となるように形成されている。これら図示した例では、内管2を、上方の配管接続口5を形成した上部内管7と、内部に通過流体に旋回を与える羽根17および下方の配管接続口6を形成した下部内管8と、横管9の配管接続口10を管継手の円周方向に90度間隔で4個形成した中間の横管用内管11と、この横管用内管11と下部内管8の間に長さ調整のために設けられる調整内管12とで構成した。耐火二層管継手1は、この内管2の外周面を、繊維混入モルタルからなる外管3で被覆することで耐火性が付与される。そして、図3に示すように、建築構造物の防火区画を構成する床スラブ14に形成した貫通孔15内に設置され、外管3の周囲にモルタル16を充填して床スラブ14に固定される。」

(ウ)図面
a 図2




上記図2から、耐火二層管継手1が、内管2と外管3とを備えている点が看取できる。

b 図3





イ 甲第16号証に記載された発明
上記アより、甲第16号証には、以下の発明(以下「甲16発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲16発明)
「硬質塩化ビニールなどの合成樹脂製の内管2と、
該内管2の外周面を覆った繊維混入モルタル製の外管3とを備え、
内管2は、上下両端に排水縦管4、4を接続するための配管接続口5、6を有し、その中間部から下方の配管接続口6にかけて漏斗状に次第に外周が小径となるように形成さており、上方の配管接続口5を形成した上部内管7と、内部に通過流体に旋回を与える羽根17および下方の配管接続口6を形成した下部内管8と、横管9の配管接続口10を管継手の円周方向に90度間隔で4個形成した中間の横管用内管11と、この横管用内管11と下部内管8の間に長さ調整のために設けられる調整内管12とで構成されており、
建築構造物の防火区画を構成する床スラブ14に形成した貫通孔15内に設置され、外管3の周囲にモルタル16を充填して床スラブ14に固定される、
耐火性二層管継手1。」

(3)甲第2号証
ア 甲第2号証の記載
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、滝落とし可能な公共ますに関する。」

(イ)「【0022】インバート部材3は底部本体31の側面に短管状の流出管部32が一体に突設されているものであり、耐衝撃性にすぐれた樹脂材料にて射出成形されたものである。この耐衝撃性にすぐれた樹脂材料とは、たとえば硬質塩化ビニル樹脂にABS樹脂、AES樹脂、MBS樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂などの耐衝撃改質材を配合したものが使用される。なお、AES樹脂などは単独で使用してもよい。耐衝撃性の目安としては、23°Cにおけるシャルピー衝撃値が20kgf・cm/cm以上となるようにするのが望ましい。
【0023】底部本体31の上面には、図1および図4に示すように、ます内に流入した汚水を流出管部32側にスムースに導くための、ほぼ球面状(あるいはすり鉢状)に窪んだ湾曲面を有するインバート33が形成されており、このインバート33は流出管部32に連通している。流出管部32の基部側のインバート部材3の側壁34は丸みを有して上方に延設されている。底部本体31の下端には、立ち上がり管2の下端面が当接するフランジ35が延設されている。」

(ウ)「【0037】請求項2記載の本発明では、インバート部材が耐衝撃強度にすぐれた樹脂材料から射出成形されたものであるので、排水中に固形物などが含まれていても、落下衝撃によりインバート部材の破損を防止できる。」

(エ)図2




(4)甲第3号証
ア 甲第3号証の記載
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、下水道管等の配管途中に設けられた排水ますに関するものである。」

(イ)「【0023】また、インバート13は、排水ます本体12の立上げ管15と相対する管底の下側開口部15b内に嵌合されるもので、硬質塩化ビニル樹脂に耐衝撃改質材(MBS樹脂、塩素化ポリエチレン)が配合され、23゜Cにおけるシャルピー衝撃値が20kgf・cm/cm程度の耐衝撃性硬質塩化ビニル樹脂製である。そして、このインバート13は、中空形状を呈し、水平断面が円形に形成され、下部に円形の開口13aが形成され、この開口13aの周縁部にフランジ部13bが形成されている。また、このインバート13には、上側に案内溝13cが設けられ、この案内溝13cは、各分岐管16,17から連続する断面形状を呈し、一方の分岐管16から流入した汚水等を他方の分岐管17に良好に案内するために、分岐管16,17の径と同じ内径に設定されている。・・・」

(ウ)「【0031】このように成形された排水ます11は、インバート13が耐衝撃性の材質で形成されていると共に、このインバート13の当接リブ13dが底板14に当接しているため、上方から物を落とした場合の強度を確保できる。」

(エ)図1




(5)甲第4号証
ア 甲第4号証の記載
(ア)「【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】本発明は、排水ますに関する。」

(イ)「【0018】〔実施例3=請求項2記載の発明の実施例〕図4は本発明排水ますの更に他の一例を示す平面図、図5は図4に示す本発明排水ますのV-V線における断面図である。図4、5において、1bは本発明排水ますであり、本発明排水ます1bは、その内径約320mm、肉の厚さt1は約9.5mmの立上管11bの上方に受口12bが設けられ、立上管11bの下半部に3箇所の接続口13b、14a、15bが設けられ、これらの接続口13b、14b、15bから分岐管2b、3b、4bが分岐されている。
【0019】立上管11bの底部には底壁5bが嵌合された上、接着により取付けられている。底壁5bの厚さはt2は約6mmである。立上管11b及び分岐管2b、3b、4bは、23℃におけるシャルピー衝撃値が4.5kgf・cm/cmの通常の硬質塩化ビニル樹脂製であり、底壁5bは硬質塩化ビニル樹脂に衝撃改質材(MBS樹脂、塩素化ポリエチレン等)が配合され、23℃におけるシャルピー衝撃値が20kgf・cm/cmの耐衝撃性硬質塩化ビニル樹脂製である。」

(ウ)図5




(6)甲第13号証
ア 甲第13号証の記載
(ア)「【0001】
本発明は、継手用アダプター及び該継手用アダプターを用いた旋回羽根付き排水管継手に関する。」

(イ)「【0083】
上述してきたように、本実施の形態の前記アダプター1aでは、図14に示す様に、嵌合部21が管継手5の上部受口52に嵌着され、旋回羽根22及び旋回羽根支持脚部23が継手本体5a内に挿入されるので、管継手5にアダプター1aを予め接着一体化した状態でも小型化でき、施工性に優れている。
【0084】
そして、前記旋回羽根22が、裏面側22aに、複数本の補強リブ部22b…を一体に形成すると共に、この旋回羽根22を支持する旋回羽根支持脚部23が、図5に示す様に、前記嵌合部21の内直管部端縁21cから、前記嵌合部21の内直管部21bに位置する内側面の曲率で、しかも、前記旋回羽根22の外周縁22cに沿って、所定幅寸法h1を有して一体に立設されている。
【0085】
そして、この所定幅寸法h1のまま、内周面に沿うように斜めに下降して、旋回羽根22の先端部22dに至るまで螺旋状を呈する様に形成されている。
【0086】
このため、充分な取付強度を、前記旋回羽根22に与えることが出来、例えば、図7に示す様な立管の内部横断面積に対する水平投影面積が5%?30%となる大きさに設定して、立管の内部横断面積に対して、最も好ましいとされている旋回羽根22の水平投影面積を、最適な大きさとして設定することが出来る。」

(ウ)図14





(7)甲第14号証
ア 甲第14号証の記載
(ア)「【0001】
本発明は、排水管継手に関する。より詳しくは、建物の上階と下階とを仕切る床スラブを貫通して埋め戻され、上階の排水管と下階の排水管とを水密な状態で連通させる排水管継手に関する。」

(イ)「【0015】
(実施形態1)
以下、図1?図7を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。本実施形態に係る排水管継手20は、マンション等の集合住宅やオフィスビル等の建造物における排水設備10に使用される排水管継手である。
【0016】
<排水設備10の概要について>
排水設備10は、図1に示されるように、建造物の上階と下階とを仕切る床スラブCを貫通して各階に設置されている排水管継手20と、各階の排水管継手20を相互につなぐ樹脂製の排水立て管70と、各階の床面に沿って配管されて各階の排水管継手に接続される樹脂製の排水横枝管(図示省略)とから構成されている。
【0017】
<排水管継手20の概要>
排水管継手20は、上階の排水立て管70及び排水横枝管(図示省略)により導かれた排水を合流させて下階の排水立て管70に流入させる継手である。排水管継手20は、図2等に示されるように、上胴部30と、下胴部40と、内装部材50とから構成されている。排水管継手20は、上胴部30と、下胴部40とが上下に接続されて外形が形成されている。内装部材50は下胴部40の内側に嵌め込まれている。
【0018】
<排水管継手20の上胴部30について>
上胴部30は、硬質塩化ビニルからなる。上胴部30は、排水管継手20の上部を構成する部材であり床スラブC上に配置される。上胴部30は、図2、図5等に示されるように、上端部に形成された上部受け口32と上胴部本体33とを備える。上部受け口32は、図1に示されるように、排水立て管70の下端挿し口71sが挿入接続される部分であり、図2、図5に示されるように、円筒部32eと、その円筒部32eの下端位置で上胴部本体33との境界位置に設けられた内フランジ部32fとを備えている。そして、図2に示されるように、上部受け口32の円筒部32e内にゴム製のシール材26が収納されている。
・・・
【0023】
<排水管継手20の下胴部40について>
下胴部40も硬質塩化ビニルからなる。下胴部40は、排水管継手20の中央部から下部を構成する部材であり、図1等に示されるように、その下端部(小径円筒部45)が下方に突出するように床スラブCに埋設される。下胴部40は、上から順番に大径円筒部41とテーパ部43と小径円筒部45とを備えている。前記大径円筒部41、テーパ部43、小径円筒部45が同軸に形成されている。
・・・
【0028】
<排水管継手20の内装部材50について>
排水管継手20の内装部材50は、図2に示されるように、下胴部40の内側に嵌め込まれてその下胴部40に固定される部材である。内装部材50は、図7に示されるように、本体部51と、熱膨張部61とで構成されている。
【0029】
本体部51は、硬質塩化ビニルからなる。本体部51は、筒状部52と、減速ガイド54と、旋回ガイド56と、筒状部52の下側に減速ガイド54を支持する減速ガイド支持部52xと、筒状部52の下側に旋回ガイド56を支持する旋回ガイド支持部52yと、から構成されている。筒状部52は、下胴部40の大径円筒部41に嵌め込まれる円筒形状の部分である。減速ガイド54と、旋回ガイド56は、筒状部52の下側で位相を180°ずらした状態で配置されている。減速ガイド支持部52xと旋回ガイド支持部52yは、筒状部52の下端から下方に延びて形成されており、下胴部40の内周面に沿う形状とされており、その下端から下胴部40の内方に張り出して減速ガイド54又は旋回ガイド56が形成されている。
・・・
【0033】
旋回ガイド56は、扁平半円形をした羽根状部材であり、流下する排水をさほど減速させずに旋回させられるように構成されている。このため、旋回ガイド56は、羽根の面積が減速ガイド54と比較して小さく、傾斜角度が、図7(A)に示すように、減速ガイド54より大きくなるように設定されている。また、旋回ガイド56の下面側には、その旋回ガイド56を補強するための補強桁56rが旋回ガイド56の幅方向に延びるように形成されている。
【0034】
減速ガイド54は、旋回ガイド56と同様に扁平半円形をした羽根状部材であり、流下する排水を主に減速させつつ、旋回させられるように構成されている。このため、減速ガイド54は、旋回ガイド56と比較して羽根の面積が大きく、傾斜角度が旋回ガイド56より小さくなるように設定されている。また、減速ガイド54の下面側には、同様にその減速ガイド54を補強するための補強桁54rが減速ガイド54の幅方向に延びるように形成されている。
【0035】
熱膨張部61は、火災の熱により膨張する熱膨張性材料からなる。・・・」

(ウ)図2






(8)甲第5号証
ア 甲第5号証の記載
(ア)7頁下段
「接着受口用(耐衝撃性TS用)
日本水道協会規格 JWWA S101-2000
接着剤の初期強度を高めたHI専用接着剤。
タフダインHI 品番1039
低粘度速乾性(粘度500mPa・s)
※HIの全サイズに適応。
※一般管にもご使用いただけます。」

(イ)8頁下段
「タフダインHI(白)品番1039
低粘度速乾性(粘度500mPa・s)
※HIの全サイズに適応。
※一般管にもご使用いただけます。」

(9)甲第6号証
ア 甲第6号証の記載
(ア)2頁下段
「No.75
日本水道協会規格品A
低粘度速乾性/粘度-150CP
■用途・使用法
同じく硬質塩化ビニル管のTS接続専用の接着剤です。・・・」

(10)甲第7号証
ア 甲第7号証の記載
(ア)1枚目
「耐衝撃性硬質塩化ビニル管
エスロン(○の中にR)HI電線管」

(イ)2枚目左欄第1?11行
「●HI電線管の施工法
エスロンHI電線管の施工は、従来のエスロン電線管と同様の方法でおこなわれます。
【パイプと継手の接続】
接続はすべてTS工法、接着剤を塗布して差し込むだけで完全に接合できます。
(1)パイプの差込表面と継手の受口内面をウエスなどで清浄にし、冷間接合用エスロン接着剤No.75を、薄く均一に塗布します。
(2)接着剤の塗布が終れば、すばやくねじ込むように挿入してください。」

(11)甲第8号証
ア 甲第8号証の記載
(ア)表紙、まえがき第1、2頁、本編第1、3、4、7、9頁
「耐衝撃性硬質塩化ビニル(PVC-HI)管」

(イ)本編第1頁
「high-impact poly(vinyl chloride)(PVC-HI)」

(12)甲第9号証
ア 甲第9号証の記載
(ア)「【0003】特に耐衝撃性硬質塩化ビニル樹脂管(以下HIパイプと略称する)においては、耐衝撃改質材としてメチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン三元共重合体(以下MBSと略称する)が多用されている。・・・」

3 当審の判断
上記第2のとおり、請求項1、請求項2及び請求項4を削除する訂正を認めたので、以下、本件訂正発明3に係る申立理由(1)ないし(6)の理由の有無につき検討する。

(1)甲第1号証を主引用例とするもの(申立理由(1)・(2))
ア 対比
本件訂正発明3と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明の「上階の排水立て管70と下階の排水立て管70を接続」する「排水管継手20」は、本件訂正発明3の「排水管を接続する排水管継手」に相当する。

(イ)甲1発明の「排水管継手20」は、「上胴部30と、下胴部40と、内装部材50」を具備しており、これらの部材により排水管継手の胴体部分を構成しているから、「上胴部30」、「下胴部40」及び「内装部材50」の3つの部材から構成される胴体部分は、本件訂正発明3の「複数のパーツから構成される胴部」に相当する。

(ウ)甲1発明において、「排水」は、「排水管継手20」の胴体部分の内部を流下していることは明らかであり、甲1発明の「減速ガイド54」及び「旋回ガイド56」は、「排水」を減速させたり旋回させたりするものであるから、前記「排水」に衝突するように「内装部材50内に設け」られている部分であることは明らかである。
そうすると、甲1発明の「減速ガイド54」及び「旋回ガイド56」は、本件訂正発明3の「前記胴部内において流下する排水が衝突する部位に形成されている排水受け部」に相当する。

(エ)甲1発明の「内装部材50」は、「筒状部52」、「減速ガイド54」及び「旋回ガイド56」とから構成されており、「減速ガイド54」及び「旋回ガイド56」は、上記(ウ)のとおり、「前記胴部内において流下する排水が衝突する部位に形成されている排水受け部」に相当することから、本件訂正発明3の「前記排水受け部を構成するパーツ」に相当する。
甲1発明の「上胴部30」及び「下胴部40」は、いずれも「内装部材50」とは別体であって、排水管継手の胴体部分を構成する部材であるから、本件訂正発明3の「前記排水受け部を構成するパーツと別体の前記胴部のパーツ」に相当する。
さらに、甲1発明の「上胴部30」及び「下胴部40」は、「樹脂」により成形され、「樹脂材料としては、熱可塑性樹脂である硬質塩化ビニルが使用され」ている。
そうすると、甲1発明の「上胴部30」及び「下胴部40」は「樹脂」により成形され、「樹脂材料としては、熱可塑性樹脂である硬質塩化ビニルが使用され」ていることは、本件訂正発明3の「前記排水受け部を構成するパーツと別体の前記胴部のパーツは、硬質塩化ビニルにより形成されて」いることに相当する。

(オ)甲1発明の「内装部材50」が「樹脂」により成形され、「樹脂材料として、熱可塑性樹脂である硬質塩化ビニルが使用」されていることと、本件訂正発明3の「排水受け部を構成するパーツ」が「硬質塩化ビニルよりも耐衝撃性が高い耐衝撃性硬質塩化ビニルにより形成されていることとは、 「排水受け部を構成するパーツ」が、「硬質塩化ビニル」により形成されている点で共通する。
そうすると、甲1発明の「旋回ガイド56」を構成として含んでいる「内装部材50」が、「樹脂」により成形され、「樹脂材料としては、熱可塑性樹脂である硬質塩化ビニルが使用」されていることと、本件訂正発明3の「前記排水受け部を構成するパーツ、あるいは前記排水受け部と一体で成形される前記胴部のパーツは、前記硬質塩化ビニルよりも耐衝撃性が高い耐衝撃性硬質塩化ビニルにより形成されて」いることとは、「前記排水受け部を構成するパーツ」が硬質塩化ビニルで成形されている点で共通する。

(カ)甲1発明の「排水管継手20」が、「建物の上階と下階とを仕切る床スラブを貫通して各階に設置されており、上階の排水管と下階の排水管とを連通させる排水管継手20で」あることは、本件訂正発明3の「排水管継手」が「建物の上階と下階とを仕切る床スラブを貫通して各階に設置されており、上階の排水立て管と下階の排水立て管とを連結する継手で」あることに相当する。

(キ)甲1発明の「上階の排水立て管70の下端挿し口71sが挿入接続される部分」である「上部受け口32」は、本件訂正発明3の「上階の排水立て管が接続される上部受け口」に相当し、
甲1発明の「下階の排水立て管70の上端挿し口71uが挿入接続される部分」である「小径円筒部45」は、本件訂正発明3の「下階の排水立て管が接続される下端接続部」に相当する。
そして、甲1発明の「上胴部30」は「上部受け口32」を備え、「下胴部40」は「小径円筒部45」を備えており、また、甲1発明の「上胴部30」及び「下胴部40」の両者を併せたものは、排水管継手20の胴体部分を構成しているといえる。
そうすると、甲1発明は、本件訂正発明3の「前記胴部は、上階の排水立て管が接続される上部受け口と、下階の排水立て管が接続される下端接続部と備えており」の構成を有しているといえる。

(ク)甲1発明の「旋回ガイド56」は、本件訂正発明3の「前記排水受け部」を構成しており、
甲1発明の「旋回ガイド56」が、「内装部材50内に設けられて」おり、「羽根状部材であり、流下する排水をさほど減速させずに旋回させられるように構成され」ていることは、本件訂正発明3の「前記排水受け部は、前記胴部内に設けられて、流下する排水が衝突することで、その排水の流れ方向を予め決められた方向に変えられるように構成されて」いることに相当する。

(ケ)上記(キ)で説示したことをふまえると、甲1発明の「上胴部30」は、胴体部分を構成するパーツのうち上方に位置するとともに、「上端部」に「上部受け口32」が形成されているから、本件訂正発明3の「上部受け口を備える上胴部用パーツ」に相当するといえる。
また、甲1発明の「下胴部40」は、「下階の排水立て管70の上端挿し口71uが挿入接続される部分」である「小径円筒部45」を備えていることから、本件訂正発明3の「下端接続部を備える下胴部用パーツ」に相当するといえる。

(コ)甲1発明の「内装部材50」は「下胴部40の内側に嵌め込まれてその下胴部40に固定される部材」であり、「内装部材50内」に「旋回ガイド56」が設けられているから、「下胴部40」の内側に「旋回ガイド56」が位置決めされているといえる。また、甲1発明の「旋回ガイド56」は、「羽根状部材」であって、「流下する排水をさほど減速させずに旋回させられるように構成されて」いるといえる。
そうすると、甲1発明は、本件訂正発明3の「前記排水受け部は、排水を旋回させる旋回羽根を備え、前記下胴部用パーツの内側に位置決めされて」いるとの構成を有しているといえる。

(サ)甲1発明の「下胴部40」が「射出成形機により樹脂を成形型内に圧入することにより所定の形状に成形され、樹脂材料としては、熱可塑性樹脂である硬質塩化ビニルが使用」されていることは、本件訂正発明3の「前記下胴部用パーツは、前記硬質塩化ビニルにより成形されている」ことに相当する。

そうすると、本件訂正発明3と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「排水管を接続する排水管継手であって、
複数のパーツから構成される胴部と、
前記胴部内において流下する排水が衝突する部位に形成されている排水受け部とを有しており、
前記排水受け部を構成するパーツと別体の前記胴部のパーツは、硬質塩化ビニルにより形成されており、
前記排水受け部を有するパーツが硬質塩化ビニルにより形成されており、
前記排水管継手は、建物の上階と下階とを仕切る床スラブを貫通して各階に設置されており、上階の排水立て管と下階の排水立て管とを連結する継手であり、
前記胴部は、上階の排水立て管が接続される上部受け口と、下階の排水立て管が接続される下端接続部と備えており、
前記排水受け部は、前記胴部内に設けられて、流下する排水が衝突することで、その排水の流れ方向を予め決められた方向に変えられるように構成されており、
前記胴部のパーツは、前記上部受け口を備える上胴部用パーツと、前記下端接続部を備える下胴部用パーツとを有しており、
前記排水受け部は、排水を旋回させる旋回羽根を備え、前記下胴部用パーツの内側に位置決めされており、
前記下胴部用パーツは、前記硬質塩化ビニルにより成形されている排水管継手。」

<相違点1>
本件訂正発明3は、「排水受け部」が、「前記排水受け部と一体で成形される前記胴部のパーツ」である「前記上胴部用パーツ」の「下部に形成されて」いて、「前記排水受け部を備える上胴部用パーツ」は「耐衝撃性硬質塩化ビニルにより成形されて」いるのに対して、甲1発明では、「旋回ガイド56」が、本件訂正発明3の上胴部用パーツに相当する「上胴部30」とは別体の「内装部材50」に設けられ、「射出成形機により樹脂を成形型内に圧入することにより所定の形状に成形され、樹脂材料としては、熱可塑性樹脂である硬質塩化ビニルが使用され」ている点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
「前記排水受け部と一体で成形される前記胴部のパーツ」である「前記上胴部用パーツ」(排水受け部が一体で成型された上胴部用パーツ)を「耐衝撃性硬質塩化ビニルにより成形」することは、申立理由(1)及び(2)における本件の請求項3に係る発明に対する周知技術(周知技術1及び4または周知技術2、3及び4)として例示された証拠のいずれにも記載も示唆もされていないし、申立人より提出された甲第5ないし9号証のいずれにも記載も示唆もされていない。
また、甲1発明において別体の「内装部材50」と「上胴部30」を耐衝撃性硬質塩化ビニルにより一体で成形するようにすることについては、甲1発明において、「内装部材50」を「上胴部30」と「下胴部40」とに分けて形成するのは、排水管継手を射出成形する際の成形精度を高くすることを目的としたものであることに鑑みると(甲第1号証の段落【0007】参照)、「内装部材50」と「上胴部30」とを一体で成形すること自体に阻害要因があるものと認められる。
よって、申立理由(1)及び(2)で挙げられた証拠からは、甲1発明において、相違点1に係る本件訂正発明3の構成とすることはできない。

ウ 申立人の主張
申立人は、甲第10?12号証を示し、排水管継手の技術分野では、旋回羽根が上胴部用パーツの下部に形成され、かつ、下胴部用パーツの内側に位置決めされることは、本件特許の出願時において周知の技術事項であり、甲1発明の「旋回羽根」を「内装部材」に設けることに代えて、「上胴部」の下部に形成するとともに、「下胴部」の内側に位置決めすることは、当業者にとって容易に想到しうる。その際、「旋回羽根」が設けられた「上胴部」全体を耐衝撃性硬質塩化ビニルにより成形することは、当業者が適宜成し得る設計変更に過ぎない旨主張する。(特許異議申立書第60頁第11?27行)
しかしながら、甲第10ないし12号証に示されているのは、「旋回羽根」が継手の中間に位置する構成部材に形成されているものであって、上胴部用パーツに相当するものに形成されているものではないから、「旋回羽根」を「上胴部」の下部に形成することが周知の技術事項であるとはいえない。
また、その他の証拠をみても、「前記排水受け部と一体で成形される前記胴部のパーツ」である「前記上胴部用パーツ」において、「排水受け部」を「上胴部」の下部に形成すること、及び、両者を耐衝撃性硬質塩化ビニルにより一体で成形することは、記載も示唆もされていないことは上記イで説示したとおりである。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。

エ 小括
したがって、本件訂正発明3は、甲1発明並びに周知技術1及び4に基いて、または、甲1発明並びに周知技術2、3及び4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)甲第15号証を主引用例とするもの(申立理由(3)・(4))
ア 対比
本件訂正発明3と甲15発明を対比する。
(ア)甲15発明の「排水集合管1」は、「胴上部1Aと胴下部1Bとを備え」ており、「胴上部1A」には「上排水立管2を接続する立接続部3」が設けられており、「胴下部1B」には「下排水立管10と接続可能な下接続部11」が形成されていることから、「排水管」を接続するものであることは明らかである。
よって、甲15発明の「排水集合管1」は、本件訂正発明3の「排水管を接続する排水管継手」に相当する。

(イ)甲15発明の「排水集合管1」は、「胴上部1Aと胴下部1Bとを備え」ており、これらの部材により「排水集合管1」の胴体部分を構成しているから、「胴上部1A」及び「胴下部1B」の2つの部材からなる胴体部分は、本件訂正発明3の「複数のパーツから構成される胴部」に相当する。

(ウ)甲15発明において、「排水」は胴体部分の内部を流下していることは明らかであり、甲15発明の「旋回羽根13」は、「排水」を旋回させるものであるから、前記「排水」に衝突するように「下胴部1B」内に設けられている部分であることは明らかである。
そうすると、甲15発明の「旋回羽根13」は、本件訂正発明3の「前記胴部内において流下する排水が衝突する部位に形成されている排水受け部」に相当する。

(エ)甲15発明の「胴上部1A」は、「旋回羽根13」を構成するパーツではなく、すなわち、「旋回羽根13」を構成するパーツとは別体のものであることは明らかであって、「排水集合管1」の胴部を構成するパーツである。
そうすると、甲15発明において、「胴上部1A」が構成されていることと、本件訂正発明3において、「前記排水受け部を構成するパーツと別体の前記胴部のパーツは、硬質塩化ビニルにより形成されて」いることとは、「前記排水受け部を構成するパーツと別体の前記胴部のパーツ」が構成されている点で共通する。

(オ)甲15発明の「胴下部1B」は胴部を構成するパーツであり、また「胴下部1B」の「内周面」に「旋回羽根13」が設けられているから、「旋回羽根13」は「胴下部1B」と一体になっているといえる。
そうすると、甲15発明において、「内周面」に「旋回羽根13」を設けた「胴下部1B」が構成されていることと、本件訂正発明3において、「前記排水受け部を構成するパーツ、あるいは前記排水受け部と一体で成形される前記胴部のパーツは、前記硬質塩化ビニルよりも耐衝撃性が高い耐衝撃性硬質塩化ビニルにより形成されて」いることとは、「前記排水受け部と一体の前記胴部のパーツ」が、構成されている点で共通する。

(カ)甲15発明の「排水集合管1」は、「上排水立管2を接続する立接続部3」が設けられる「胴上部1A」と、「下排水立管10と接続可能な下接続部11が形成されて」いる「胴下部1B」とを備え、「胴下部1Bは下細りテーパ状に形成されていてスラブ8に形成した通孔に挿通状」とされているので、「上排水立管2」と「下排水立管10」の継手として機能することは明らかである。よって、甲15発明は、本件訂正発明3の「排水管継手」が「建物の上階と下階とを仕切る床スラブを貫通して各階に設置されており、上階の排水立て管と下階の排水立て管とを連結する継手で」あるという構成を有しているといえる。

(キ)甲15発明の「上排水立管2を接続する立接続部3」は、本件訂正発明3の「上階の排水立て管が接続される上部受け口」に相当し、
甲15発明の「下排水立管10と接続可能な下接続部11」は、本件訂正発明3の「下階の排水立て管が接続される下端接続部」に相当する。
そして、甲15発明の「胴上部1A」は「立接続部3」が設けられ、「胴下部1B」は「下接続部11」が形成されおり、甲15発明の「胴上部1A」及び「胴下部1B」の両者を併せたものは、胴体部分を構成したものといえる。
そうすると、甲15発明は、本件訂正発明3の「前記胴部は、上階の排水立て管が接続される上部受け口と、下階の排水立て管が接続される下端接続部と備えており」の構成を有しているといえる。

(ク)甲15発明の「旋回羽根13」が、「胴下部1B」内に設けられていて、「水案内部材を構成し、その上面が水衝突面となっていて、排水集合管1内に流下した排水を旋回流に変化させ、かつ管壁に沿って流し」ていることは、本件訂正発明3の「前記排水受け部は、前記胴部内に設けられて、流下する排水が衝突することで、その排水の流れ方向を予め決められた方向に変えられるように構成されて」いることに相当する。

(ケ)甲15発明の「胴上部1A」は、胴体部分を構成するパーツのうち上方に位置するとともに、「上排水立管2を接続する立接続部3」が形成されているから、本件訂正発明3の「上部受け口を備える上胴部用パーツ」に相当する。
また、甲15発明の「胴下部1B」は、胴体部分を構成するパーツのうち下方に位置すると共に、「下排水立管10と接続可能な下接続部11が形成されて」いることから、本件訂正発明3の「下端接続部を備える下胴部用パーツ」に相当する。

(コ)甲15発明の「旋回羽根13」は「胴下部1B」の内周に設けられている位置決めされた羽根であることは明らかであり、「排水集合管1内に流下した排水を旋回流に変化させ」るものである。
そうすると、甲15発明の「旋回羽根13」が、「排水集合管1内に流下した排水を旋回流に変化させ」るものであり、「胴下部1B」の内周に設けられることと、本件訂正発明3の「前記排水受け部は、排水を旋回させる旋回羽根を備え、前記上胴部用パーツの下部に形成されて、前記下胴部用パーツの内側に位置決めされて」いることとは、「前記排水受け部は、排水を旋回させる旋回羽根を備え、前記下胴部用パーツの内側に位置決めされて」いる点で共通する。

そうすると、本件訂正発明3と甲15発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「排水管を接続する排水管継手であって、
複数のパーツから構成される胴部と、
前記胴部内において流下する排水が衝突する部位に形成されている排水受け部とを有しており、
前記排水受け部を構成するパーツと別体の前記胴部のパーツが構成されており、
前記排水受け部と一体の前記胴部のパーツが構成されており、
前記排水管継手は、建物の上階と下階とを仕切る床スラブを貫通して各階に設置されており、上階の排水立て管と下階の排水立て管とを連結する継手であり、
前記胴部は、上階の排水立て管が接続される上部受け口と、下階の排水立て管が接続される下端接続部と備えており、
前記排水受け部は、前記胴部内に設けられて、流下する排水が衝突することで、その排水の流れ方向を予め決められた方向に変えられるように構成されており、
前記胴部のパーツは、前記上部受け口を備える上胴部用パーツと、前記下端接続部を備える下胴部用パーツとを有しており、
前記排水受け部は、排水を旋回させる旋回羽根を備え、前記下胴部用パーツの内側に位置決めされている排水管継手。」

<相違点2>
本件訂正発明3は、「排水受け部」が、「前記排水受け部と一体で成形される前記胴部のパーツ」である「前記上胴部用パーツ」の「下部に形成されて」いて、「前記排水受け部を備える上胴部用パーツ」は「耐衝撃性硬質塩化ビニルにより成形されて」いるのに対して、甲15発明は、「旋回羽根13」が「胴下部1B」の「内周面」に設けられていて、どのよう材料でどのように造られているか特定されていない点。

<相違点3>
排水受け部を構成するパーツと別体の胴部のパーツが、本件訂正発明3では、「硬質塩化ビニルにより形成されて」いるのに対して、甲15発明では、「上胴部1A」であって、どのような材料でどのように造られているか特定されていない点。

イ 判断
上記相違点2について。
「前記排水受け部と一体で成形される前記胴部のパーツ」である「前記上胴部用パーツ」(「前記排水受け部を備える上胴部用パーツ」)が、「耐衝撃性硬質塩化ビニルにより成形」されたものは、申立理由(3)及び(4)における本件の請求項3に係る発明に対する周知技術(周知技術5、1及び4、または周知技術5、2、3及び4)として例示された証拠のいずれにも記載も示唆もされていない。また、申立人より提出された甲第5?9号証にも、記載も示唆もされていない。
よって、甲15発明において、相違点2に係る本件訂正発明3の構成とすることはできない。

ウ 申立人の主張
申立人は、甲第10?12号証を示し、排水管継手の技術分野では、旋回羽根が上胴部用パーツの下部に形成され、かつ、下胴部用パーツの内側に位置決めされることは、本件特許の出願時において周知の技術事項であり、甲15発明の「旋回羽根」を「胴下部」に設けることに代えて、「胴上部」の下部に形成するとともに、「胴下部」の内側に位置決めすることは、当業者にとって容易に想到しうる。その際、「旋回羽根」が設けられた「胴上部」全体を耐衝撃性硬質塩化ビニルにより成形することは、当業者が適宜成し得る設計変更に過ぎない旨主張する。(特許異議申立書第66頁下から1行?第67頁第27行)
しかしながら、提示された甲第10?12号証に記載された「旋回羽根」が形成されているのは、いずれも、継手の中間に位置する構成部材であって、上胴部用パーツではないから、旋回羽根が上胴部用パーツの下部に形成されることが周知の技術事項であるということはできない。
また、その他の証拠をみても、「前記排水受け部と一体で成形される前記胴部のパーツ」である「前記上胴部用パーツ」において、「排水受け部」を「上胴部」の下部に形成すること、及び、両者を耐衝撃性硬質塩化ビニルにより一体で成形することは、記載も示唆もされていないことは上記イで説示したとおりである。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。

エ 小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、甲15発明並びに周知技術5、1及び4に基いて、または、甲15発明並びに周知技術5、2、3及び4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)甲第16号証を主引用例とするもの(申立理由(5)・(6))
ア 対比
本件訂正発明3と甲16発明を対比する。
(ア)甲16発明の「耐火性二層管継手1」が備える「内管2」は「上下両端に排水縦管4、4を接続するための配管接続口5、6」を有している。前記「排水縦管4」は、本件訂正発明3の「排水管」に相当する。
よって、甲16発明の「上下両端に排水縦管4、4を接続するための配管接続口5、6」を有する「内管2」を備えた「耐火性二層管継手1」は、本件訂正発明3の「排水管を接続する排水管継手」に相当する。

(イ)甲16発明の「耐火性二層管継手1」は、「上部内管7」、「下部内管8」、「横管用内管11」及び「調整内管12」を備えており、これらの部材により「耐火性二層管継手1」の胴体部分を構成しているから、「上部内管7」、「下部内管8」、「横管用内管11」及び「調整内管12」からなる胴体部分は、本件訂正発明3の「複数のパーツから構成される胴部」に相当する。

(ウ)甲16発明において、「排水」は胴体部分の内部を流下していることは明らかであり、甲16発明の「羽根17」は、「通過流体に旋回を与える」ものだから、前記「排水」に衝突するように「下部内管8」内に設けられて部分であることは明らかである。
そうすると、甲16発明の「羽根17」は、本件訂正発明3の「前記胴部内において流下する排水が衝突する部位に形成されている排水受け部」に相当する。

(エ)甲16発明の「上部内管7」、「横管用内管11」及び「調整内管12」は、「羽根17」を構成するパーツではなく、すなわち、「羽根17」を構成するパーツとは別体であることは明らかであって、「耐火性二層管継手1」の胴部を構成するパーツである。また、前記「上部内管7」、「横管用内管11」及び「調整内管12」は、硬質塩化ビニールで製造されている。
そうすると、甲16発明の、「耐火性二層管継手1」の胴部のパーツとして「上部内管7」、「横管用内管11」及び「調整内管12」が、硬質塩化ビニールで製造されていることは、本件訂正発明3の「前記排水受け部を構成するパーツと別体の前記胴部のパーツは、硬質塩化ビニルにより形成されて」いることに相当する。

(オ)甲16発明の「下部内管8」は胴体部分を構成するパーツであり、また「下部内管8」の「内部」に「羽根17」が形成されているから、「羽根17」は「下部内管8」と一体になっているといえる。さらに、「下部内管8」は、硬質塩化ビニルで製造されている。
そうすると、甲16発明の「内部」に「羽根17」が形成された「下部内管8」が、硬質塩化ビニールで製造されていることと、本件訂正発明3の「前記排水受け部を構成するパーツ、あるいは前記排水受け部と一体で成形される前記胴部のパーツは、前記硬質塩化ビニルよりも耐衝撃性が高い耐衝撃性硬質塩化ビニルにより形成されて」いることとは、「前記排水受け部と一体の前記胴部のパーツ」が、硬質塩化ビニルで構成されている点で共通する。

(カ)甲16発明の「耐火性二層管継手1」は、上下の「排水縦管4、4」の継手となることは明らかであり、「建築構造物の防火区画を構成する床スラブ14に形成した貫通孔15内に設置され」とされている。
よって、甲16発明は、本件訂正発明3の「排水管継手」が「建物の上階と下階とを仕切る床スラブを貫通して各階に設置されており、上階の排水立て管と下階の排水立て管とを連結する継手」であるという構成を有しているといえる。

(キ)甲16発明の「上部内管7」は、胴体部分を構成するパーツのうち上方に位置するとともに、上方の「配管接続口5」を有しているから、本件訂正発明3の「上部受け口を備える上胴部用パーツ」に相当する。
また、甲16発明の「下部内管8」は、胴体部分を構成するパーツのうち下方に位置するとともに、下方の「配管接続口6」を有しているから、本件訂正発明3の「下端接続部を備える下胴部用パーツ」に相当する。
甲16発明の「上部内管7」及び「下部内管8」は、耐火性二層管継手1の胴体部分のパーツであるから、本件訂正発明3の「前記胴部」に相当する。
そして、甲16発明の「上部内管7」は、「配管接続口5」を有しており、「下部内管8」は、「配管接続口6」を有している。
そうすると、甲16発明は、本件訂正発明3の「前記胴部は、上階の排水立て管が接続される上部受け口と、下階の排水立て管が接続される下端接続部と備えており」の構成を有しているといえる。

(ク)甲16発明の「羽根17」が、「下部内管8」を形成していて、「通過流体に旋回を与え」ていることは、本件訂正発明3の「前記排水受け部は、前記胴部内に設けられて、流下する排水が衝突することで、その排水の流れ方向を予め決められた方向に変えられるように構成されて」いることに相当する。

(ケ)甲16発明の「上部内管7」は、胴体部分を構成するパーツのうち上方に位置するとともに、「配管接続口5」を有しているから、本件訂正発明3の「上部受け口を備える上胴部用パーツ」に相当する。
また、甲16発明の「下部内管8」は、胴体部分を構成するパーツのうち下方に位置するとともに、「配管接続口6」を有していることから、本件訂正発明3の「下端接続部を備える下胴部用パーツ」に相当する。

(コ)甲16発明の「羽根17」は、「下部内管8」の内部に形成されていることから、位置決めされた羽根であることは明らかであり、「通過流体に旋回を与える」ものである。
そうすると、甲16発明の「羽根17」が、「通過流体に旋回を与える」ものであり、「下部内管8」の内部に形成されることと、本件訂正発明3の「前記排水受け部は、排水を旋回させる旋回羽根を備え、前記上胴部用パーツの下部に形成されて、前記下胴部用パーツの内側に位置決めされて」いることとは、「前記排水受け部は、排水を旋回させる旋回羽根を備え、前記下胴部用パーツの内側に位置決めされて」いる点で共通する。

そうすると、本件訂正発明3と甲16発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「排水管を接続する排水管継手であって、
複数のパーツから構成される胴部と、
前記胴部内において流下する排水が衝突する部位に形成されている排水受け部とを有しており、
前記排水受け部を構成するパーツと別体の前記胴部のパーツは、硬質塩化ビニルにより形成されており、
前記排水受け部と一体の前記胴部のパーツは、硬質塩化ビニルで構成されており、
排水管継手は、建物の上階と下階とを仕切る床スラブを貫通して各階に設置されており、上階の排水立て管と下階の排水立て管とを連結する継手であり、
前記胴部は、上階の排水立て管が接続される上部受け口と、下階の排水立て管が接続される下端接続部と備えており、
前記排水受け部は、前記胴部内に設けられて、流下する排水が衝突することで、その排水の流れ方向を予め決められた方向に変えられるように構成されており、
前記胴部のパーツは、前記上部受け口を備える上胴部用パーツと、前記下端接続部を備える下胴部用パーツとを有しており、
前記排水受け部は、排水を旋回させる旋回羽根を備え、前記下胴部用パーツの内側に位置決めされており、
前記下胴部用パーツは、前記硬質塩化ビニルにより成形されている排水管継手。」

<相違点4>
本件訂正発明3は、「排水受け部」が、「前記排水受け部と一体で成形される前記胴部のパーツ」である「前記上胴部用パーツ」の「下部に形成されて」いて、「前記排水受け部を備える上胴部用パーツ」は「耐衝撃性硬質塩化ビニルにより成形されて」いるのに対して、甲16発明では、「羽根17」が「下部内管8」の内部に形成されていて、「下部内管8」が硬質塩化ビニールで造られている点。

イ 判断
上記相違点4について。
「前記排水受け部と一体で成形される前記胴部のパーツ」である「前記上胴部用パーツ」(「前記排水受け部を備える上胴部用パーツ」)が、「耐衝撃性硬質塩化ビニルにより成形」されたものは、申立理由(5)及び(6)における本件の請求項3に係る発明に対する周知技術(周知技術2、3及び4または周知技術2、1及び4)として例示された証拠のいずれにも記載も示唆もされていない。また、申立人より提出された甲第5?9号証にも、記載も示唆もされていない。
よって、甲16発明において、相違点4に係る本件訂正発明3の構成とすることはできない。

ウ 申立人の主張
申立人は、甲第10?12号証を示し、排水管継手の技術分野では、旋回羽根が上胴部用パーツの下部に形成され、かつ、下胴部用パーツの内側に位置決めされることは、本件特許の出願時において周知の技術事項であり、甲16発明の「通過流体に旋回を与える羽根」を「下部内管」に設けることに代えて、「上部内管」と「横管用内管」と「調整内管」とからなる部分の下部である「調整内管」に形成するとともに、「下部内管」の内側に位置決めすることは、当業者にとって容易に想到しうる。その際、「旋回羽根」が設けられた「上部内管」と「横管用内管」と「調整内管」とからなる部分を耐衝撃性硬質塩化ビニルにより成形することは、当業者が適宜成し得る設計変更に過ぎない旨主張する。(特許異議申立書第73頁第9?26行)
しかしながら、提示された甲第10?12号証に記載された「旋回羽根」が形成されているのは、いずれも、継手の中間に位置する構成部材であって、上胴部用パーツではないから、旋回羽根が上胴部用パーツの下部に形成されることが周知の技術事項であるということはできない。
また、その他の証拠をみても、「前記排水受け部と一体で成形される前記胴部のパーツ」である「前記上胴部用パーツ」において、「排水受け部」を「上胴部」の下部に形成すること、及び、両者を耐衝撃性硬質塩化ビニルにより一体で成形することは、記載も示唆もされていないことは上記イで説示したとおりである。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。

エ 小括
したがって、本件訂正発明3は、甲16発明並びに周知技術2、3及び4に基いて、または、甲16発明並びに周知技術2、1及び4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由を採用することができない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、及び各証拠によっては、本件請求項3に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

また、本件特許の請求項1、2及び4は、本件訂正請求による訂正で削除された。これにより、請求項1、2及び4に対する本件特許異議の申立ては、申立の対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
排水管を接続する排水管継手であって、
複数のパーツから構成される胴部と、
前記胴部内において流下する排水が衝突する部位に形成されている排水受け部とを有しており、
前記排水受け部を構成するパーツと別体の前記胴部のパーツは、硬質塩化ビニルにより形成されており、
前記排水受け部を構成するパーツ、あるいは前記排水受け部と一体で成形される前記胴部のパーツは、前記硬質塩化ビニルよりも耐衝撃性が高い耐衝撃性硬質塩化ビニルにより形成されており、
前記排水管継手は、建物の上階と下階とを仕切る床スラブを貫通して各階に設置されており、上階の排水立て管と下階の排水立て管とを連結する継手であり、
前記胴部は、上階の排水立て管が接続される上部受け口と、下階の排水立て管が接続される下端接続部と備えており、
前記排水受け部は、前記胴部内に設けられて、流下する排水が衝突することで、その排水の流れ方向を予め決められた方向に変えられるように構成されており、
前記胴部のパーツは、前記上部受け口を備える上胴部用パーツと、前記下端接続部を備える下胴部用パーツとを有しており、
前記排水受け部は、排水を旋回させる旋回羽根を備え、前記上胴部用パーツの下部に形成されて、前記下胴部用パーツの内側に位置決めされており、
前記排水受け部を備える上胴部用パーツは、前記耐衝撃性硬質塩化ビニルにより成形されており、前記下胴部用パーツは、前記硬質塩化ビニルにより成形されている排水管継手。
【請求項4】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-10-01 
出願番号 特願2015-256109(P2015-256109)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (E03C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 舟木 淳  
特許庁審判長 長井 真一
特許庁審判官 土屋 真理子
西田 秀彦
登録日 2020-08-21 
登録番号 特許第6752573号(P6752573)
権利者 株式会社小島製作所
発明の名称 排水管継手  
代理人 特許業務法人岡田国際特許事務所  
代理人 特許業務法人岡田国際特許事務所  
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