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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A47B
管理番号 1379835
異議申立番号 異議2020-700129  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-02-28 
確定日 2021-09-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6566552号発明「天板付什器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6566552号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6566552号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 特許第6566552号の請求項4及び5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6566552号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、令和1年8月9日にその特許権の設定登録がされ、令和1年8月28日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和2年 2月28日 :特許異議申立人高松直樹による請求項1ない し5に係る特許に対する特許異議の申立て
令和2年 7月17日付け:取消理由通知書
令和2年 9月 4日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求 (以下、「本件訂正請求」という。)
令和2年 11月9日 :特許異議申立人による意見書の提出
令和3年 2月22日付け:取消理由通知書(決定の予告)

なお、上記令和3年 2月22日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もなかった。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「各上面に作業面を有し、互いに対向して配置される一対の天板と、
前記一対の天板の対向方向と略直交する方向に離間して配置され、前記一対の天板を高さ調整可能に支持する一対の支持構造体と、
一対の前記支持構造体を連結する連結体と、を備え、
前記支持構造体は、床面上に設置されて前記一対の天板の対向する方向に沿って延出するベース部材と、該ベース部材の延出方向の両端位置から夫々上方に向かって立設され、前記一対の天板の夫々を高さ調整可能に支持する一対の伸縮脚と、を備え、
前記連結体は、各前記支持構造体の前記ベース部材の延出方向の略中間部同士を相互に連結することを特徴とする天板付什器。」と記載されているのを、
「各上面に作業面を有し、互いに対向して配置される一対の天板と、
前記一対の天板の対向方向と略直交する方向に離間して配置され、前記一対の天板を高さ調整可能に支持する一対の支持構造体と、
一対の前記支持構造体を連結する連結体と、を備え、
前記支持構造体は、床面上に設置されて前記一対の天板の対向する方向に沿って延出するベース部材と、該ベース部材の延出方向の両端位置から夫々上方に向かって立設され、前記一対の天板の夫々を高さ調整可能に支持する一対の伸縮脚と、を備え、
前記連結体は、各前記支持構造体の前記ベース部材の延出方向の略中間部同士を相互に連結し、前記連結体が有する架設部は前記天板付什器の幅方向に沿って延出する断面略U字状で樋状に形成された梁部材を備えていると共に、前記一対の天板の下面の奥行方向の奥側から下方に引き出された機器側の電源配線が前記梁部材の上方に向かって開口する配線挿通部を通して前記梁部材の内部に挿入されていることを特徴とする天板付什器。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?5も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
明細書の段落【0009】を
「【0009】
この発明に係る天板付什器は、上記課題を解決するために以下の構成を採用した。
この発明に係る天板付什器は、各上面に作業面を有し、互いに対向して配置される一対の天板と、前記一対の天板の対向方向と略直交する方向に離間して配置され、前記一対の天板を高さ調整可能に支持する一対の支持構造体と、一対の前記支持構造体を連結する連結体と、を備え、前記支持構造体は、床面上に設置されて前記一対の天板の対向する方向に沿って延出するベース部材と、該ベース部材の延出方向の両端位置から夫々上方に向かって立設され、前記一対の天板の夫々を高さ調整可能に支持する一対の伸縮脚と、を備え、前記連結体は、各前記支持構造体の前記ベース部材の延出方向の略中間部同士を相互に連結し、前記連結体が有する架設部は前記天板付什器の幅方向に沿って延出する断面略U字状で樋状に形成された梁部材を備えていると共に、前記一対の天板の下面の奥行方向の奥側から下方に引き出された機器側の電源配線が前記梁部材の上方に向かって開口する配線挿通部を通して前記梁部材の内部に挿入されているようにした。」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の連結体に関して、「前記連結体が有する架設部は前記天板付什器の幅方向に沿って延出する断面略U字状で樋状に形成された梁部材を備えていると共に、前記一対の天板の下面の奥行方向の奥側から下方に引き出された機器側の電源配線が前記梁部材の上方に向かって開口する配線挿通部を通して前記梁部材の内部に挿入されている」と具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正後の請求項1に記載の「前記連結体が有する架設部は前記天板付什器の幅方向に沿って延出する断面略U字状で樋状に形成された梁部材を備えている」ことについては、明細書の段落【0024】に「連結体12は、幅方向両側の支持構造体10のベース部材15間に架設されている。具体的には、連結体12は、左右の各支持構造体10のベース部材15の前後方向の略中間位置から上方に立設される角筒状の支柱部19と、両端部が各支柱部19の上部に結合される架設部20と、を有している。」と記載されているとともに、同段落【0025】に「架設部20は、図2,図3に示すように、デスク装置1の幅方向に沿って延出する樋状(断面略U字状)の梁部材22」と記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
また、訂正後の請求項1に記載の「機器側の電源配線」が「前記一対の天板の下面の奥行方向の奥側から下方に引き出された」ことについては、明細書の段落【0026】に「一方の支柱部19から架設部20内に引き入れられた電源配線21は、第1の天板部11Aと第2の天板部11Bの各奥行方向の奥側から下方に引き出された機器側の電源配線に架設部20の内部において接続されている。」と記載されている。
また、訂正後の請求項1に記載の「機器側の電源配線が前記梁部材の上方に向かって開口する配線挿通部を通して前記梁部材の内部に挿入されている」ことについては、明細書の段落【0025】に「梁部材22の前後の側壁部22bとセンターカバー25の間には、デスク装置1の幅方向に沿って延出し、上方に向かって開口する一対のスリット状の開口26A,26B(配線挿通部)が形成されている。」、また段落【0027】に「第1の天板部11Aと第2の天板部11Bに連結された各ケーブルベア27は、これらの下面から夫々下方に垂れ下がり、架設部20上の前後の開口26A,26Bを通して梁部材22の内部に挿入されている。」と記載されている。
さらに、下記図3からは、「ケーブルベア27」が「天板14A」及び「天板14B」の下面の奥行方向の奥側から下方に引き出された点、「梁部材22」が断面略U字状であること、及び、「ケーブルベア27」が「開口26A、26B」を通って梁部材22の内部に挿入されている点を看取することができる。

図3



よって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

4 一群の請求項、及び独立特許要件について
訂正前の請求項2ないし5は請求項1を引用しているから、請求項2ないし5は、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正がされるものである。そのため、請求項1ないし5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当する。
よって、訂正事項1及び2の訂正は、一群の請求項〔1-5〕に対して請求されたものである。

そして、本件においては、訂正前の請求項1ないし5について特許異議の申立てがされているから、訂正事項1及び2の訂正は、いずれも特許異議の申立てがされている請求項に係る訂正であり、訂正事項1により特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正後の請求項1ないし5に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

5 まとめ
したがって、特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正発明
上記第2のとおり本件訂正請求による訂正を認めるので、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、各々を「本件訂正発明1」等といい、本件訂正発明1ないし5をまとめて「本件訂正発明」という。)は、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

1 本件訂正発明1
「【請求項1】
各上面に作業面を有し、互いに対向して配置される一対の天板と、
前記一対の天板の対向方向と略直交する方向に離間して配置され、前記一対の天板を高さ調整可能に支持する一対の支持構造体と、
一対の前記支持構造体を連結する連結体と、を備え、
前記支持構造体は、床面上に設置されて前記一対の天板の対向する方向に沿って延出するベース部材と、該ベース部材の延出方向の両端位置から夫々上方に向かって立設され、前記一対の天板の夫々を高さ調整可能に支持する一対の伸縮脚と、を備え、
前記連結体は、各前記支持構造体の前記ベース部材の延出方向の略中間部同士を相互に連結し、前記連結体が有する架設部は前記天板付什器の幅方向に沿って延出する断面略U字状で樋状に形成された梁部材を備えていると共に、前記一対の天板の下面の奥行方向の奥側から下方に引き出された機器側の電源配線が前記梁部材の上方に向かって開口する配線挿通部を通して前記梁部材の内部に挿入されていることを特徴とする天板付什器。」

2 本件訂正発明2
「【請求項2】
前記連結体は、各前記支持構造体の前記ベース部材の延出方向の略中間位置から上方に立設される支柱部と、各前記支柱部の上部間に架設される架設部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の天板付什器。」

3 本件訂正発明3
「【請求項3】
前記架設部は、内部に配線収容空間が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の天板付什器。」

4 本件訂正発明4
「【請求項4】
前記架設部の上面には、一対の前記天板の間を仕切る平板状のパネル体が上方に向かって立設されていることを特徴とする請求項2または3に記載の天板付什器。」

5 本件訂正発明5
「【請求項5】
前記架設部の上面には、前記パネル体の前後で前記架設部の内部の配線収容空間と外部を連通させる配線挿通部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の天板付什器。」

第4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び証拠について
1 取消理由(決定の予告)の概要
当審が令和3年2月22日付け取消理由通知書(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。
本件訂正発明1乃至3は、甲1発明及び周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正発明1乃至3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件訂正発明1乃至3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

[証拠]
甲第1号証:国際公開第2013/037072号
甲第4号証:特開2009-56329号公報
甲第7号証(参考資料4):Steelcase inc.「Series Height-Adjustable Bench」、[online]、インターネット:
<URL:http://www.steelcase.com/products/benching/series-bench/>
(Internet Archive Wayback Machineによる保存日:2015年3月5日、[2020年2月25日検索]、インターネット:
<URL:https:web.archive.org/web/20150305131438/http://www.steelcase.com:80/products/benching/series-bench/>)
参考資料3:Webページ「Steelcase Series5 Electric Benching System」(Google LLC社 ユーチューブ(Youtube))、2014年4月20日、(URL:https://youtu.be/y5cMZ4--jc8)
参考資料1:特開平11-266933号公報

2 取消理由(決定の予告)に採用した証拠について
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証に記載の事項(下線は当審で付した。以下同様。仮訳は申立人が提出した甲第1号証の抄訳を援用した。)

(ア)第1頁第1-10行「


(仮訳)
「ワークテーブル
本発明の適用分野
本発明は、上面と下面を有するテーブルトップが載るベースを備えた作業テーブルに関する。作業台には、供給電源と放電電源および/または通信ケーブルを接続するための電気設備が装備されている。テーブルトップの下に配置された収集容器は、ケーブルと接続部品を受け入れるためのものであり、収集容器は、繰り返し動作可能な閉鎖手段が設けられた開口部を有する。」

(イ)第2頁第1-10行



(仮訳)
「発明の目的
本発明は、その目的のために、供給および放電電源および/または通信線の配線のためのサービスに優しい解決策を提供することを有する。ここでは、ユーザは、時々変更したり、補助的な配線をしたりして、簡単にアクセスできる必要がある。安全性と人間工学の基準は、作業台で遵守する必要がある。作業台全体は、効率的な材料およびアセンブリコストで大量生産できなければならず、設置場所の音響環境にプラスの影響を与える必要がある。別のタスクは、コンフォートバリアントの追加機能をワークテーブルに提供することを目指している。」

(ウ)第7頁下から8行-第8頁第3行



(仮訳)
「実施例
本発明の作業台の2つの例示的な実施形態の詳細な説明は、それらの機器の異なる変形例とともに、添付の図面を用いて以下に与えられる。
以下の定義は、詳細な説明全体に適用されます。図面を明確にするために参照番号が図に含まれているが、直接関連する説明テキストで説明されていない場合は、前の図の説明で言及されている。明確にするために、以下の図のコンポーネントの繰り返しの指定は、コンポーネントが「繰り返している」ことを図面で明確に見ることができれば、ほとんど省略される。」

(エ)第13頁第9行-第14頁第2行





(仮訳)
「図6Aから7C
図4Aによる2つの作業テーブルから形成されるテーブルの組み合せにおいて、これらは、それらの長辺がユーザから離れる方向を向いて一緒に結合され、第3の変形スクリーン4が2つの作業テーブルの間に垂直に立っている。したがって、ベース1は組み合わせとして設計される。支持部14および一対の脚部10は各作業台に属し、両方の作業台の4つの脚部10は現在、拡張フロアブラケット100上で支持されている。ホルダー42は、今ではポストとして設計されている各フロアブラケット100の中央に延びており、その上にパネル状スクリーン4が取り付けられている。スクリーン4は、テーブルトップ3のそれぞれの狭い側面とほぼ同一平面で有利に閉じる。2つの別々のテーブルトップ3が各サポート14と結合ベースフレーム1に配置されている。
収集容器2は、各テーブルトップ下面31に固定されている。ケーブルダクト79は、両方のテーブルトップ3の下、好ましくはスクリーン4の前面40および背面41(ここでは背面41にのみ示されている)に設置されている。それぞれの場合において、ケーブルハーネス8’は、関連するケーブルダクト79からそれぞれの収集容器2内に延びている。ケーブルハーネス8’は、組立部品でケーブルダクト79の出口に固定することができる。
ケーブルダクト79の代替として、収集容器2の近くの脚部10に取り付け部品を設けることができ、そこからケーブルハーネス8’が固定されて、ここから各収集容器2内に延びる。部屋へのケーブルハーネス8’の経路は、明確にするために示されていない。上記のソケットインサート75は、両方のテーブルトップ3にある。」

(オ)第14頁第4-21行



(仮訳)
「図8Aから8D
テーブルの組み合わせの2つの作業テーブルの高さは、互いに独立して調整できる。したがって、両方のテーブル、つまりテーブルトップ3は、たとえば座位での作業の低い設定(図6Aを参照)、立位での作業の高い設定(図8C,8Dを参照)、またはテーブルに座って非常に異なる他のテーブルでの作業(図8A,8Bを参照)を配置できる。2つの組み合わせの中で、調整対象のテーブルに割り当てられた第1、第2、第3のコラムチューブ11-13を使用して脚10のみを伸縮式に調整することで、各テーブルの独立した高さ調整が可能になる。高さ調整のために、関連する制御装置を備えた電動機駆動装置が有利に提供される。フロアブラケット100のポスト型ホルダー42でスクリーン4をサポートしているため、共通の固定スクリーン4は、調整時にそれぞれのテーブルが垂直に移動する前側または後側40、41の2つの組み合わせに十分である。ケーブルより線8’は、ケーブルチェーンで通常達成されるように、最低と最高の高さ設定の間のテーブルの設定範囲に対して適切な長さと十分な自由度を持っている。」

(カ)図面
a Fig.7A



上記Fig.7Aから、以下の点が見て取れる。
(a)ケーブルダクト79は、上方部材と下方部材の2つの構成要素からなり、下方部材は、棒状部材であって、断面U字状をしている点。

b Fig.8A



上記Fig.8Aから、以下の点が見て取れる。
(a)一対のテーブルトップ3が、対向して配置されて、それぞれがソケットインサート75を有している点。

c Fig.8B



上記Fig.8A及びFig.8Bから、以下の点が看取できる。
(a)テーブルトップ3を支持する2つの脚部10が、拡張フロアブラケット100の延出方向の両端位置からそれぞれ上方に向かって立設されており、脚部10及び拡張フロアブラケット100からなる構造体が、一対のテーブルトップ3の対向する方向と略直交する方向に離間して、2つ配置されている点。
(b)ホルダー42が、2つの拡張フロアブラケット100の略中間部の位置でそれぞれ立ち上がっている点。
(c)パネル状スクリーン4が、2つのホルダー42の上部間において架設され、2つのテーブルトップ3の間を仕切っている点。
(d)ケーブルダクト79の内部に空間が設けられている点。

上記(エ)の記載を踏まえると、(カ)のFig.7A及びFig.8Bから、以下の点が看取できる。
(e)ケーブルハーネス8’の一端がケーブルダクト79の下方部材の下面の出口に設けられ、他端が収集容器2のパネル状スクリーン4近傍の部位に設けられた点。

イ 甲第1号証に記載された発明
上記ア(ア)ないし(カ)からみて、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「上面と下面を有するテーブルトップ3が載るベースを備えた作業テーブルであって、
2つの作業テーブルから形成されるテーブルの組み合せにおいて、パネル状スクリーン4が2つの作業テーブルの間に垂直に立っていて、一対のテーブルトップ3が、対向して配置されており、それぞれがソケットインサート75を有しており、
ベース1は組み合わせとして設計され、両方の作業台の4つの脚部10は、拡張フロアブラケット100上で支持されており、テーブルトップ3を支持する2つの脚部10が、拡張フロアブラケット100の延出方向の両端位置からそれぞれ上方に向かって立設されており、脚部10及び拡張フロアブラケット100からなる支持構造体が、一対のテーブルトップ3の対向する方向と略直交する方向に離間して、2つ配置されており、
ホルダー42は、ポストとして設計されていて、2つの拡張フロアブラケット100の略中間部の位置でそれぞれ立ち上がっており、パネル状スクリーン4が2つのホルダー42の上部間において架設され、2つのテーブルトップ3の間を仕切っており、
収集容器2は、各テーブルトップ下面31に固定され、ケーブルダクト79は、パネル状スクリーン4の前面40および背面41に設置され、上方部材と下方部材の2つの構成要素からなり、下方部材は、棒状部材であって、断面U字状をしており、それぞれの場合において、ケーブルハーネス8’の一端がケーブルダクト79の下方部材の下面の出口に設けられ、他端が収集容器2のパネル状スクリーン4近傍の部位に設けられ、また、ケーブルダクト79の内部に空間が設けられており、
テーブルの組み合わせの2つの作業テーブルの高さは、互いに独立して調整でき、
2つの組み合わせの中で、調整対象のテーブルに割り当てられた第1、第2,第3のコラムチューブ11-13を使用して脚10のみを伸縮式に調整することで、各テーブルの独立した高さ調整が可能になる、
作業テーブル。」

(2)甲第4号証
ア 甲第4号証に記載の事項
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な形状並びに形態の天板を選択的に組込むことができると共に、様々な形態,機能を有するオプションパーツの選択的装着を可能にすることにより、オフィスにおける多様なデスク形態、或は、ワークステーション形態などに容易かつ迅速に自在かつシステマティックな展開を可能にするデスクに関する。」

(イ)「【0022】
上記ブロック状結合体における左右の側壁ブロック1,2における下面の2つのボルト穴による結合部1c(2c)には、自立脚部材5を形成する2本の脚柱5a,5b が当てがわれ、両脚柱5a,5bの上端部に形成したボルト受(図1?図5には表われない固定ナット部材5c,5d、図16参照)に、前記接合部1c,2cの穴から挿入されたボルト杆(図示せず)が螺入緊締されて、このブロック結合体に自立脚部材5が取付けられ、これにより本発明デスクに専用される横長溝型状をなし、その溝の内部を配線スペースとする配線コア体BCの一例が形成される(図1?図5参照)。なお、図3,図5においてTcは、配線コア体BCの壁状梁部材3,4の内面における下方の凹部3d,4dに縁辺を係止させて着脱自在に配置した配線トレーで、該トレー同士の隙間gや側壁ブロック1,2の内面と当該トレーTcの左,右外側辺との隙間gを通して床からの配線を、配線コア体BCがなす溝部内に導入して、このトレーTcの上に置いたりトレー上を左右に通したりすることが出来る。前記トレーは、後述の図16,図34にも示されている。
・・・・
【0024】
上記の単独又は連結された配線コア体BCの前後面には、図8?図11により説明する天板支持脚部材6、或は、図12?図15により説明する長さが異なる2種類の天板支持腕部材7を、図16や図17に例示するように、側壁ブロック1,2の前,後面の凹溝による接合部1d,1e、乃至、当該接合部1d,1eに連続した壁状梁部材3,4の凹溝3a,4aの任意の位置において結合させて取付ける。前記支持部材6,7は、連結された配線コア体BCに跨って結合させて取付けることもできる。従って、図19に例示した本発明デスクのレイアウト例の各デスクに用いている種々の平面形状を有する主天板8?12、或は、図20?図23に例示した補助天板13?16を、前記支持脚部材6及び/又は支持腕部材7に支持させて当該配線コア体BCに取付け、基本的構成の本発明デスクの例を形成することが出来る(図16?図18参照)。そこで、天板支持脚部材6と天板支持腕部材7について、次に説明する。」

(ウ)「【0040】
本発明デスクにおける配線コア体BCにおける前後の壁状梁部材3,4が形成する溝には、図29?図31に示す形態の各パネル21,22,23を立設して設けることができる。ここで、図29と図30のパネル21,22は、配線コア体BCの壁状梁部材3,4がなす溝に立設した支柱に、当該コア体BCと略同幅のパネル21とパネル22をそれぞれに支持させた位置固定タイプのパネルであるが、図30の固定パネル22は、その下半部22aが着脱自在の構造を具備したパネルである。この着脱構造の点については図34?図36により後に詳述する。一方、図31は、図24の移動フレーム18の場合と同様に配線コア体BCの長さ方向において移動可能にして設けたパネル23である。上記の各パネル21?23に共通した取付構造については、図33,図34により説明する。
【0041】
即ち、上記の各パネル21?23は、図33と図34に例示したように、配線コア体BCにおける壁状梁部材3,4が形成する溝内面側の凸部3e,4eに載架され、当該凸部3e,4eを上下から挟持する上ベース24aと下ベース24bをビス等によって緊締することにより前記凸部3e,4eに着脱可能に取付けられる当該取付ベース24に、水平な基部25aにおいて固定立設されるほぼ逆T状をなす左右の支柱25が、前記各パネル21?23を支持することにより、配線コア体BCに取付けられる。Tcは、先にも述べたが配線コア体BCの溝内部における下方の凹部3e,4eに架設した着脱式の配線用トレーである。
【0042】
次に、上記固定パネル22における下半部22aの着脱構造の一例について、図35?図37により説明する。図30と図32のパネル22の下半部22aは、図35?図37に示すように、パネル22の上部本体側の下部内面と支柱25の外面に形成した隙間26に挿込まれる挿込片22bを上部に有し、下部内面に、支柱25の外面に設けた係止ボタン27の細くなった首部27aに係止される穴22cを設けて、パネル下半部22aを形成する表と裏のパネル体22a′が形成されている。従って、図36の断面図に示す状態で装着されているパネル下半部22aの表と裏のパネル体22a′をそれぞれ図36に矢印で示す上方へ少し持上げて穴22cの中央に係止ボタン27を位置付けると、図37の状態になるので、当該下半部のパネル体22a′の下部を手前側に引くと、穴22cが係止ボタン27から外れるので、この状態でパネル下半部22aを形成している表と裏のパネル体22a′を、逐次、図36に矢印で示す下方へ引けば、パネル下半部22aを形成する表と裏のパネル体22a′は支柱25並びにパネル22の上部本体側から離脱させることができる。
【0043】
図30,図32に示した下半部22aが取外せる固定パネル22においては、の下半部22aが取外せるので、パネル22を配線コア体BCに取付けたままで下半部22aを取外すことにより、当該配線コア体BCの壁状梁部材3,4がなす溝をコード類の収容部として利用するとき、図38に例示するようにそのコード類CaやコンセントCoなどの付属機器を出入れするための上下方向のスペースが形成でき、従って、このパネル22の下半部22aがいわゆる投入み配線等のアクセスの邪魔になることがない。また、上記固定パネル22の下半部22aは、内部が中空の表,裏のパネル体22a′により内部中空のサンドイッチ構造であるから、図39に例示するように、下半部22aを形成する表裏のパネル体22a′の表面に、挿込口を略45度など、適宜角度の傾斜面に形成したコンセントボックスCbを設けることができる。このコンセントボックスCbは、図29,図31に示したパネル21と23に設けることも可能である。」

(エ)図面
a 図29



上記図29から、以下の点が看て取れる。
(a)デスクが、2つの自立脚部材5と各自立脚部材5の上部間に架設される配線コア体BCを有している点。

b 図34



上記図34から、以下の点が看て取れる。
(a)上方に向かって立設されている平板状のパネル21が、一対の主天板8の間を仕切っている点。
(b)平板状のパネル21は、配線コア体BCの壁状梁部材3,4が形成する溝内面側の凸部3e,4eに載架される取付ベース24の上面に取り付けられるほぼ逆T状をなす支柱25を介して、上方に向かって立設されている点。

上記(b)より以下のことがいえる。
配線コア体BCに取付ベース24が載置され、前記取付ベース24の上面に取り付けられる支柱25を介して、平面上のパネルが、上方に向かって立設されることから、配線コア体BCの上面において、平板状のパネル21が、上方に向かって立設されていること。

c 図38



上記図38から、以下の点が看て取れる。
配線コア体BCに立設された平面状のパネル22の手前の側において、配線コア体BCの壁状梁部材がなす溝をコード類の収容部として利用するとき、コード類CaやコンセントCoなどの付属機器を出入れするための上下方向の空間が形成されていること。

d 上記a、b及びcから推認できること
aの図29及びbの図34から配線コア体BCにパネル21が立設され、前記パネルが一対の主天板8の間を仕切っている点が認められる。cの図38は、配線コア体BCに立設されているものがパネル22であるが、aの図29,bの図34及びcの図38に記載された構造は、いずれも、配線コア体BCにパネルが立設され、前記パネルが一対の主天板8の間を仕切っている点で類似している構造であることから、上記aの図29及びbの図34に記載された構造にも、上記cの図38の、配線コア体BCの壁状梁部材がなす溝をコード類の収容部として利用する際の、コード類CaやコンセントCoなどの付属機器を出入れするための上下方向の空間が、同様に形成されていることが推認できる。さらに、上記bの図34に記載された構造が対称的であることから、図34に記載された構造には、平面状のパネル21の左右両側から、上記付属機器を出し入れするための上下方向の空間が形成されていることが推認できる。言い換えれば、平板状のパネル体21の前後に、配線コア体BCの内部の空間と外部を連通させる部位が設けられていることが推認できる。

イ 甲第4号証に記載された技術事項
上記ア(ア)ないし(エ)からみて、甲第4号証には、次の技術事項(以下、「甲4記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲4記載の技術事項)
様々な形状並びに形態の天板を選択的に組込むことができるデスクにおいて、デスクが、2つの自立脚部材5と各自立脚部材5の上部間に架設される配線コア体BCを有し、配線コア体BCの上面において、平板状のパネル21が、上方に向かって立設されており、当該平板状のパネル21が、一対の主天板8の間を仕切っており、配線コア体BCの上面において、上方に向かって立設されているパネル21の前後に、配線コア体BCの内部の空間と外部を連通させる部位が設けられている点。

(3)甲第7号証(参考資料4)
ア(2/9頁)紫色の椅子と机が掲載された写真



上記写真から、天板の下面側から梁状の部材の上方側に向ってケーブル状のものが設けられている点が看取できる。

イ(4/9頁)淡い青色の椅子と机が掲載された写真



上記写真から、天板の下面側から梁状の部材の上方側に向ってケーブル状のものが設けられている点が看取できる。

ウ(7/9頁)配線と横方向部材が含まれる背景が橙色の写真



上記画像から、横方向部材の上方側から下方に向かってケーブル状のものが設けられている点が看取できる。

(4)参考資料3
天板の下に配線と横方向部材が含まれる画像



上記画像から、天板の下面側から梁状の部材の上方に向かってケーブル状のものを設けることが看取できる。

(5)参考資料1
ア「【0012】図1は、本発明の配線機能付き机の斜視図、図2は、同じく図1におけるA-A線の縦断側面図を示す。両図において、1は天板、2,2は天板1の左右両端下面に固着された支持脚である。
【0013】支持脚2の中央に形成された枠状の開口部2a内には、図4に示すように、前端縁部に上下方向を向く配線ダクト孔3を有するパネル4が嵌合されている。各配線ダクト孔3の上端は開口され、かつ下端隅部には、配線取出し用の切欠孔5が形成されている。
【0014】天板1の上面中央には、天板1を前後に仕切る2個の仕切りパネル6,6が立設されている。両仕切りパネル6は、図3に示すように、その下部に形成された1対の支持孔7を、天板1の裏面にビス8により固着された支持金具9における天板1を貫通する支持ピン10に嵌合することにより、天板1の上面に着脱可能として取付けられている。」

イ「【0018】天板1の上面における仕切りパネル6の近傍の両側には、複数(実施例では2個)の配線挿通部16が、天板1を貫通するようにして設けられている。
【0019】上記実施例の配線機能付き机において、各配線挿通部16を挿通して、コンセント17やパソコン等との接続アダプタ18などが取付けられたコード類19を配線する際は、図2に示すように、コード類19を天板1の下方に突出させてから、配線ダクト15内に収容して左右方向に向かって這わせ、パネル4の配線ダクト孔3内に挿入して、その下端の切欠孔5より引き出せばよい。
【0020】このように配線することにより、配線挿通部16より天板1の下方に突出させたコード類19が、外部に露出したり垂れ下がったりすることが防止される。すなわち、天板1の下方より配線ダクト15内に収容されるまでのコード類19は、前後の補強杆11との間にあって両補強杆11により目隠しされるとともに、配線ダクト15の左右両端より突出したコード類19は、すぐにパネル4の配線ダクト孔3内に挿入され、支持脚2の下部より引出されるため、外部に露出することはなくなる。」

ウ 図面
(ア)図1



上記図1から、天板1において、その上面中央に立設された、天板1を前後に仕切る2個の仕切りパネル6,6の近傍に、コード類19が入る配線挿通部16が設けられた点が看取できる。

(イ)図2



上記図2から、配線挿通部16からコード類19が下方に直接的に引き出されている点が看取できる。

エ 上記アないしウから、参考資料1には次の技術事項(以下「参考資料1に記載の技術事項」という。)が記載されている。
(参考資料1に記載の技術事項)
配線挿通部16が、天板1の上面中央に立設された、天板1を前後に仕切る2個の仕切りパネル6,6の近傍に設けられ、配線挿通部16に入れられたコード類19が、天板1の下面の下方から直接的に引き出されている点。

第5 取消理由(決定の予告)についての判断
1 本件訂正発明1
(1)対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比すると、
ア 甲1発明の「テーブルトップ3」と各テーブルトップ下面31に固定される「収集容器2」とからなる構造体は、本件訂正発明1の「天板」に相当する。甲1発明の「2つの作業テーブルから形成されるテーブルの組み合せ」になっている作業テーブルは、天板を備えたテーブルであるから、本件訂正発明1の「天板付什器」に相当する。

イ 甲1発明の「2つの」「作業テーブル」の「テーブルトップ3」が「上面」を「有する」ことは、本件訂正発明1の「各上面に作業面を有」することに相当する。

ウ 甲1発明の「対向して配置されて」いる「一対のテーブルトップ3」は、本件訂正発明1の「互いに対向して配置される一対の天板」に相当する。

エ 甲1発明の「一対のテーブルトップの対向する方向と略直交する方向に離間して」「配置され」、「テーブルトップを支持する2つの脚部10及び拡張フロアブラケットからなる」「2つの」「支持構造体」は、本件訂正発明1の「前記一対の天板の対向方向と略直交する方向に離間して配置され」、「前記一対の天板を」「支持する一対の支持構造体」に相当する。
また、甲1発明の、「第1、第2,第3のコラムチューブ11-13を使用して」「伸縮式に調整」し、「テーブルトップ3」を支持することは、本件訂正発明1の「天板を高さ調整可能に支持する」ことに相当する。
そうすると、甲1発明は、本件訂正発明1の「前記一対の天板の対向方向と略直交する方向に離間して配置され、前記一対の天板を高さ調整可能に支持する一対の支持構造体」の構成を有しているといえる。

オ 甲1発明の「ホルダー42」は、「2つの拡張フロアブラケット100の略中間部の位置でそれぞれ立ち上がっており、パネル状スクリーン4が2つのホルダー42の上部間において架設されて」おり、また、「ケーブルダクト79は、スクリーン4の前面40および背面41に設置される」ことから、「2つ」の「脚部10及び拡張フロアブラケットからなる支持構造体」は、「ホルダー42」、「パネル状スクリーン4」及び「ケーブルダクト79」により、連結されているといえる。
したがって、甲1発明の「ホルダー42」、「パネル状スクリーン4」及び「ケーブルダクト79」の全体は、本件訂正発明1の「一対の前記支持構造体を連結する連結体」に相当する。
また、甲1発明の前記「パネル状スクリーン4」及び「ケーブルダクト79」は、2つの拡張フロアブラケット100の略中間部で立ち上がるホルダー42の上部間に架設されている。したがって、甲1発明の前記「パネル状スクリーン4」及び「ケーブルダクト79」の全体は、本件訂正発明1の「架設部」に相当する。
さらに、甲1発明の「ケーブルダクト79」は、パネル状スクリーン4と一体となって脚部10及び拡張フロアブラケット100を連結する連結体を構成しているところ、「ケーブルダクト79」の構成要素である「下方部材」は、棒状部材であって、「断面U字状」をしている。
したがって、甲1発明の連結体を構成する「ケーブルダクト79」の「下方部材」は、本件訂正発明1の「連結体」が備えている「断面U字状で樋状」の「梁部材」に相当する。

カ 甲1発明の「支持構造体」の「拡張フロアブラケット100」は、本件訂正発明1の「ベース部材」に相当し、また、甲1発明の「支持構造体」の、「拡張フロアブラケット100の延出方向の両端位置からそれぞれ上方に向かって立設されており」、「一対の」「テーブルトップ3を支持」し、「伸縮式に調整」される「脚10」は、本件訂正発明1の「該ベース部材の延出方向の両端位置から夫々上方に向かって立設され、前記一対の天板の夫々を高さ調整可能に支持する一対の伸縮脚」に相当する。
そうすると、甲1発明は、本件訂正発明1の「前記支持構造体は、床面上に設置されて前記一対の天板の対向する方向に沿って延出するベース部材と、該ベース部材の延出方向の両端位置から夫々上方に向かって立設され、前記一対の天板の夫々を高さ調整可能に支持する一対の伸縮脚と、を備え」という構成を有しているといえる。

キ 甲1発明の「ホルダー42」は、「2つの拡張フロアブラケット100の略中間部の位置でそれぞれ立ち上がって」いることから、「2つの拡張フロアブラケット100」は、略中間部の位置同士で、「ホルダー42」、「パネル状スクリーン4」及び「ケーブルダクト79」により相互に連結されていることは明らかである。
したがって、甲1発明は、本件訂正発明1の「前記連結体は、各前記支持構造体の前記ベース部材の延出方向の略中間部同士を相互に連結」するという構成を有しているといえる。

ク 甲1発明の「ケーブルハーネス8’」は、その他端が、各テーブルトップ下面31に固定される収集容器2のパネル状スクリーン4近傍の部位に設けられるものであり、技術常識を踏まえればソケットインサート75に接続される配線、すなわち機器側の電源に接続される配線であるから、本件訂正発明1の「機器側の電源配線」に相当する。
また、甲1発明の「ケーブルハーネス8’」が、「ケーブルダクト79」の下面の出口に設けられていることから、前記「ケーブルダクト79」が備える「断面U字状で樋状」の「下方部材」には、配線を挿通する部位が開口しているといえる。甲1発明の上記「下面の出口」すなわち、配線を挿通する部位に、ケーブル(配線)が挿入されているという構成を有していることは明らかである。
そうすると、甲1発明の上記構成と、本件訂正発明1の「機器側の電源配線が前記梁部材の上方に向かって開口する配線挿通部を通して前記梁部材の内部に挿入されている」こととは、「機器側の電源配線」が「前記梁部材」の「開口する配線挿通部を通して前記梁部材の内部に挿入されている」点で共通する。

そうすると、本件訂正発明1と甲1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「各上面に作業面を有し、互いに対向して配置される一対の天板と、
前記一対の天板の対向方向と略直交する方向に離間して配置され、前記一対の天板を高さ調整可能に支持する一対の支持構造体と、
一対の前記支持構造体を連結する連結体と、を備え、
前記支持構造体は、床面上に設置されて前記一対の天板の対向する方向に沿って延出するベース部材と、該ベース部材の延出方向の両端位置から夫々上方に向かって立設され、前記一対の天板の夫々を高さ調整可能に支持する一対の伸縮脚と、を備え、
前記連結体は、各前記支持構造体の前記ベース部材の延出方向の略中間部同士を相互に連結し、前記連結体が有する架設部は前記天板付什器の幅方向に沿って延出する断面略U字状で樋状に形成された梁部材を備えていると共に、機器側の電源配線が前記梁部材の開口する配線挿通部を通して前記梁部材の内部に挿入されている天板付什器。」

<相違点>
相違点1
「機器側の電源配線」について、本件訂正発明1では、「前記一対の天板の下面の奥行方向の奥側から下方に引き出され」ているのに対して、甲1発明では、そのような特定がなされていない点。
相違点2
「機器側の電源配線」が挿入される「開口する配線挿通部」について、本件訂正発明1では、「前記梁部材の上方に向かって開口する」のに対して、甲1発明では、ケーブルダクト79の下方部材の下面の出口である点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
相違点1について
甲1発明において、それぞれの収集容器2は、各テーブルトップ下面31に固定されており、ケーブルハーネス8’の他端が、収集容器2のスクリーン4近傍の部位に延びている。この状態を「テーブルトップ3」と「収集容器2」とからなる構造体を起点にケーブルハーネス8’を表現すると、ケーブルハーネス8’、すなわち、機器側の電源配線は、「テーブルトップ3」と「収集容器2」とからなる構造体のスクリーン4近傍の部位の下方から引き出されているということができる。また、この「テーブルトップ3」と「収集容器2」とからなる構造体におけるスクリーン4近傍の部位は、本件訂正発明1の天板の下面の奥行き方向の奥側の部位に相当するものといえる。以上のとおりであるから、相違点1は、実質的な相違点ではない。
仮に、本件訂正発明1の「天板の下面の奥行方向の奥側から下方に引き出された機器側の電源配線」が、「天板」の奥行方向の奥側の下面から「収集容器2」を介することなく直接的に引き出される機器側の電源配線を意味していると解して、相違点1が実質的な相違点であるとしても、機器側の電源配線を天板における奥行方向の奥側の下面から直接的に引き出すことは、例えば、上記第4の2(5)で例示したとおり周知慣用技術であるから、甲1発明に上記周知慣用技術を適用し、相違点1に係る本件訂正発明1の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易になし得ることである。

相違点2について
例えば、上記第4の2(3)及び(4)で示したように、天板付什器の分野において、天板の下面側から下方に設けた梁状の部材ないしは横方向部材に向かってケーブル状のものを設ける場合に、梁状の部材ないしは横方向部材の上方側に設けることは、周知慣用技術であるから、甲1発明においてケーブルダクト79の上方側にケーブルダクト79(電源配線)を設けることは、当業者であれば容易に想到しうることである。
そして、甲1発明の「ケーブルダクト79」は「下方部材」が「断面U字状」であるから、甲1発明に上記周知慣用技術を適用すれば、例えば、甲4記載の技術事項のように、配線挿通部は「下方部材」の上方に向かって開口することになる。
なお、甲1発明の「ケーブルダクト79」は「上方部材」を有するものであるが、甲1発明がケーブルダクト79の下方部材の下面に「出口」を設けていることに鑑みれば、ケーブルダクト79の上方側に電源配線を設ける際に「上方部材」に「出口」を設けることにも困難性はない。

(3)小括
したがって、本件訂正発明1は、甲1発明及び周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 本件訂正発明2
(1)対比・判断
本件訂正発明2と甲1発明とを対比すると、本件訂正発明2が有する本件訂正発明1の構成については、上記1(1)ア?クの点と同様である。
加えて、
甲1発明の「ホルダー42」は、本件訂正発明2の「支柱部」に相当し、また、甲1発明の「パネル状スクリーン4」及び「ケーブルダクト79」は、「ホルダー42」の上部間において架設されていることから、本件訂正発明2の「架設部」に相当する。
そうすると、本件訂正発明2と甲1発明とは、上記相違点1及び2で相違し、その余の点で一致する。

相違点1及び2については、上記1(2)で検討したとおりである。

(2)小括
したがって、本件訂正発明2は、甲1発明及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 本件訂正発明3
(1)対比・判断
本件訂正発明3と甲1発明とを対比すると、本件訂正発明3が有する本件訂正発明2の構成については、上記1及び2の点と同様である。
加えて、
甲1発明の「ケーブルダクト79の内部」に「設けられている」「空間」は、ケーブルが配置される空間であることは明らかであるから、本件訂正発明3の「架設部」の「内部」に「設けられ」た「配線収容空間」に相当する。
そうすると、本件訂正発明3と甲1発明とは、上記相違点1及び2で相違し、その余の点で一致する。
相違点1及び2については、上記1(2)で検討したとおりである。

(2)小括
したがって、本件訂正発明3は、甲1発明及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明1乃至3は、甲1発明及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 特許異議申立理由の概要
1 申立人がした申立の理由の概要は以下のとおりである。
(1)本件の請求項1乃至4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、本件の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であり、 また、本件の請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件の請求項1乃至4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)本件の請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証及び甲第6号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
また、本件の請求項2乃至5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、並びに甲第1号証、甲第4号証、甲第5号証及び甲第6号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
また、本件の請求項2乃至5に係る発明は、甲第3号証に記載された発明並びに甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証及び甲第6号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項2乃至5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2 申立人の証拠方法は以下のとおりである。

甲第1号証:国際公開第2013/037072号
甲第2号証:欧州特許出願公開第2443962号
甲第3号証:欧州特許出願公開第0861620号
甲第4号証:特開2009-56329号公報
甲第5号証:欧州連合意匠公報第001770298-0014
甲第6号証:欧州連合意匠公報第000855895-0001
甲第7号証:Steelcase inc.「Series Height-Adjustable Bench」,[on line],2015年3月5日,[2020年2月25日検索 ],インターネット
<URL:https://web.archive.org/web/20150305131438/https://www.steelcase.com:80/products/benching/series-bench/>
甲第8号証の1:Knol,l inc.「Antenna Telescope」,[online],20 14年10月10日,[2020年2月25日検索], インターネット
<URL:https://web.archive.org/web/20141010053054/https://www.knoll.com/product/antenna-telescope%3Fsection=Design>
甲第8号証の2: Knoll,inc.「Knoll NeoCon 2014 Video Tour」,
[online],2014年8月2日,[2020年2月2 5日検索],インターネット
<URL:https://web.archive.org/web/20140802204039/http://knoll.com/knollnewsdetail/knoll-neocon-2014-video-tour-telescope>
甲第8号証の3:Knoll,inc.「Antenna Telescope Scope Preview」,[o nline],2015年4月16日,[2020年2月2 5日検索],インターネット
WayBackMachineにおける検索URLとして、<http://www.knoll.com/media/366/487/antenna_telescope_overview.pdf>を入力して得た画面
甲第8号証の4:「Knoll NeoCon 2014」Knoll,inc. 2014年、p.15

3 申立人は令和2年11月9日提出の意見書で、以下の参考資料を提出している。

参考資料1 :特開平11-266933号公報
参考資料2-1:「360 THE PRIVACY CRISIS」S teelcase社
参考資料2-2:独立行政法人工業所有権情報・研修館J-PlatPa tの「意匠検索」の「公知資料」において、公知資料番 号がHC2650060700、HC2650060 600及びHC2650060500である文献(【文 献名】「座席予約端末機 360 THE PRIVA CY CRISIS」及び「一人掛けいす 360 T HE PRIVACY CRISIS」)についての検 索結果とその番号に関する書誌事項,[online],[令 和2年10月29日検索],インターネット
<URL:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/d0100>、<URL:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/d0200 >
参考資料3 :「Steelcase Series5 Electr ic Benching System」(Google LLC 社ユーチューブ(YouTube)),[online],2 014年4月20日、インターネット
<https://youtu.be/y5cMZ4--jc8>
参考資料4 :甲第7号証の第1、2、4、7頁の抜粋


第7 取消理由(決定の予告)に採用しなかった証拠について
1 甲第2号証
(1)甲第2号証に記載の事項


・・・


<仮訳>(注:この仮訳は、当審で作成した。)
[0001]この発明は、・・・2つの土台板を備えた仕事台を対象とする。
・・・
[0014]図1には、全体として1が付された仕事台が表され、2つの土台板2が示されている。その下には伸縮できる支持脚4上に長軸方向の横木3が設けられ、一対の支持脚4は図1中で、4a及び4bで示され、横杆5によって連結されることにより桟枠6が形成される。以下ではこのような桟枠に符号6を付す。
[0015]図1には、・・・スクリーンあるいは内張り7・・・。上方の横杆5同士・・・トラフ8・・・。
[0016]・・・
[0017]図2・・・支持脚4が中空の箱部材として設計されており、41は中空状の外箱部材であり、・・・42は没入する中空部材である。これらの2つの箱状部材は、内部圧縮バネまたはクランクギアによる上下調節または電動モータによる駆動を可能にする。・・・
[0018]図3および4・・・分離継ぎ目レベル10で、桟枠6の上方の横杆5に支持されて・・・、目隠しの部材12が、位置している。
[0019]図4・・・ケーブル・ガイダンス・エレメントは・・・トラフ8又は11にそれぞれ位置することができる。

イ 図面
(ア)Fig3





上記Fig3から以下の点が看取できる。
a 上方に面を有し、互いに対向して配置されている一対の土台板2を備えている点。
b 桟枠6の下方の横杆5は、略床面上に設置されていて、一対の土台板2の対向する方向に沿って延出している点。

(イ)Fig4





上記Fig4から以下の点が看取できる。
a 桟枠6は、2つの中空状の外箱部材41を上方及び下方の横方向の横杆で連結して構成されている点。
b 桟枠6の下方の横杆の延出方向の両端位置からそれぞれ上方に向かって、外箱部材41が立設されている点。
c 一対の土台板2の対向方向と略直交する方向に離間して配置された一対の桟枠6が備えられている点。
d 支持脚4が、中空状の外箱部材41及び中空部材42で構成され、中空状の外箱部材41に中空部材42が没入している点。
e 一対の桟枠6の各上方の横杆の中間部同士をトラフ8により連結している点。
f トラフ8が、仕事台の幅方向に沿って延出する断面略U字状で樋状に形成された梁部材である点。
g 一対の桟枠6のうちの上方の横杆の中央部分及びトラフ8の上面において、平板状の目隠しの部材12が、略垂直に架設されている点。


(ア)上記アの「2つの土台板2」「の下に」「横木3が設けられ」、「横木3」が「伸縮できる支持脚4」上にあること([0014])及び支持脚の構成要素(41及び42)が上下調節可能であること、並びに上記イ(イ)dより、桟枠6の中空状の外箱部材41とこれに没入する中空部材42によって、一対の土台板2を高さ調整可能に支持しているといえる。

(2)甲第2号証に記載された発明
上記(1)より、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲2発明)
「2つの土台板2を備えた仕事台1において、
上方に面を有し、互いに対向して配置されている一対の土台板2を備え、
一対の土台板2の対向方向と略直交する方向に離間して配置された、一対の桟枠6を備え、前記桟枠6は2つの中空状の外箱部材41を上方及び下方の横杆5で連結して構成されており、前記中空状の外箱部材41には、中空部材42が没入しており、桟枠6の中空状の外箱部材41とこれに没入する中空部材42によって、一対の土台板2を上下調整可能に支持しており、
一対の桟枠6の各上方の横杆5の中間部同士をトラフ8により連結しており、
桟枠6の下方の横杆5は、略床面上に設置されていて、一対の土台板2の対向する方向に沿って延出しており、桟枠6の下方の横杆5の延出方向の両端位置からそれぞれ上方に向かって、中空状の外箱部材41が立設されており、支持脚4が、前記中空状の外箱部材41及び前記中空部材42で構成されていて、伸縮できるものであり、
トラフ8が、仕事台の幅方向に沿って延出する断面略U字状で樋状に形成された梁部材であり、
一対の桟枠6のうちの上方の横杆5の中央部分及びトラフ8の上面において、平板状の目隠しの部材12が、略垂直に設けられている、
仕事台1。」

2 甲第3号証
(1)甲第3号証に記載の事項


・・・

(仮訳)
[0001]本発明は仕事台に関するものである・・・。
・・・
[0019]・・・
図1 仕事台の遠景
図2 仕事台の正面図
図3 仕事台の平面図
図4 仕事台の側面図
図5 別実施例の正面図
図6 図5の仕事台の平面図
図7 図5の仕事台の側面図

[0020]
図1?4・・・仕事台は、2つの板部材2からなる土台板1を有している。2つの板部材2は、互いに距離を有して平行に並べられている。

[0021]
板部材2は・・横ばり8及び接続横ばり10の上に置かれており、・・・。

[0022]
ラック脚5が横ばり8と一致する位置に走っており、このラック脚5に電動モーターによって駆動される平たいストロークエレメント4が固定される。・・・。

[0023]
これらストロークエレメントは、・・・板部材2の長手方向に対して45°で並べられている。

[0024]
各接続横ばり10には、平たいストロークエレメント6が、固定されている。・・・(図4)

[0025]
図1に見られるように、ラック脚5は、トラバース3にしっかりと接続されており、仕事台が一つのユニットであることを示している。・・・板部材2の前端部は、凹状のカーブが付けられており、例えば、筆記用の表面を形成することができる・・・


[0026]
さらに図1に見られるように、キーフィールド7が有ることが分かり、板部材2の前端部において統合されている。・・・それを用いて各々の平たいストロークエレメントは、操作可能である。

イ 図面
(ア)Fig1






上記Fig1から以下の点が看取できる。
a ラック脚5が、床面上に設置されていて、2つの板部材2の対向する方向と直交する方向に離間し、仕事台の内側に屈曲して配置されている点。
b トラバース3が、ラック脚5と同じ高さで、2つの板部材2の対向する方向と直交する方向に配置され、両側のラック脚5の屈曲部位同士を連結している点。

(イ)Fig2






(ウ)Fig3





上記Fig3から、平たいストロークエレメント4が、板部材2の長手方向に対して傾斜している点が看て取れる。

(エ)Fig4





上記Fig4から以下の点が看取できる。
a ストロークエレメント4が下方の部材と、上方の部材とを有していて、下方の部材はラック脚5に接着しており、上方の部材は横ばり8に接着している点。

(オ)
a 上記Fig4及び上記アの[0022]より、このラック脚5に、電動モーターによって駆動される平たいストロークエレメント4が固定されているといえる。
b 上記アの[0023]と上記イの(ウ)より、平たいストロークエレメント4が、板部材2の長手方向に対して45°で並べられているといえる。

(2)甲第3号証に記載された発明
上記(1)より、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲3発明)
「仕事台において、
2つの板部材2からなる土台板1を有し、
2つの板部材2は、互いに距離を有して平行に並べられていて、接続横ばり10と横ばり8の上に置かれており、
ラック脚5が、床面上に設置されていて、2つの板部材2の対向する方向と直交する方向に離間して両側に、仕事台の内側に屈曲して配置されており、
ラック脚5が横ばり8と一致する位置に走っており、このラック脚5に、電動モーターによって駆動される平たいストロークエレメント4が固定されており、
ストロークエレメント4は、下方の部材と、上方の部材とを有していて、下方の部材は、前記ラック脚5に接着しており、上方の部材は前記横ばり8に接着しており、板部材2の長手方向に対して45°で並べられており、
トラバース3が、ラック脚5と同じ高さで、2つの板部材2の対向する方向と直交する方向に配置され、前記両側のラック脚5の屈曲部位同士を連結している、
仕事台。」

3 甲第5号証
(1)1/4頁の図





上記図から、一対の天板と、一対の天板を支える4本の脚と、2本の脚を連結するバーとを有した天板付什器が看て取れる。

(2)2/4頁の上から3つめの図





上記図から、2本の脚を連結するバー同士を更に連結する部材が看て取れる。

4 甲第6号証
(1)2/6頁の上から2番目の図





上記図から、一対の天板と、一対の天板を支える4本の脚と、2本の脚を連結するバーとを有した天板付什器が看て取れる。

5 甲第8号証の1乃至甲第8号証の4
インターネット又はカタログにおいて、一対の天板と、一対の支持構造体と、前記天板の間に配置されたパネルとを備えた、天板付什器が掲載又は記載されている。

6 参考資料2
参考資料2-1のカタログにおいて、天板と、天板の奥側に配置されたパネルと、天板から下方に向かっている長尺の部材とを備えた天板付什器が記載されている。

参考資料2-1の143頁の写真の要部





なお、参考資料2-2は、参考資料2-1のカタログの公知日を示す目的で提出された資料である。

第8 取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由についての判断
取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由のうち、取消理由(決定の予告)を通知していない本件訂正発明4及び5に係る特許についての特許法第29条第1項第3号及び第29条第2項に関する申立理由について検討する。

1 甲第1号証を主引用例として
(1)本件訂正発明4
ア 対比・判断
本件訂正発明4と甲1発明とを対比すると、本件訂正発明4が有する本件訂正発明2の構成については、上記第5の1(1)及び2(1)の点と同様である。
そうすると、本件訂正発明4と甲1発明とは、上記相違点1及び2に加えて、次の相違点3で相違し、その余の点で一致する。

相違点3
本件訂正発明4は、「架設部の上面には、一対の前記天板を仕切る平板上のパネル体が上方に向かって立設されている」のに対して、甲1発明では、「パネル状スクリーン4」及び「ケーブルダクト79」(両者併せて「架設部」)の上面には、何も立設されていない点。

上記相違点3は、具体的な構成上の相違であるから、実質的な相違点であることは明らかである。
したがって、本件訂正発明4は、甲第1号証に記載された発明ではない。

上記相違点3について検討する。
甲第4号証には、上記第4の2(2)イのとおりの甲4記載の技術事項が記載されており、2つの自立脚部材5の上部間に架設される配線コア体BCの上面には、「平板状のパネル21」が立設されている。当該「平板状のパネル21」は、一対の主天板8の間を仕切っていることから、本件訂正発明4の「平板状のパネル体」に相当するといえる。
しかしながら、甲1発明の「パネル状スクリーン4」は、架設部の一部であるところ、「2つの作業テーブルの間に垂直に立って」いて、2つの作業テーブルを仕切る機能を有していることから、当該部材の上面に、さらに、甲第4号証に記載の「一対の主天板8の間を仕切」る「平板状パネル21」を適用する動機付けはない。
また、周知技術として例示した、甲第7号証(参考資料4)、参考資料3、参考資料1(上記第4の2(3)イ、(4)、(5)ウ参照)にも、天板付什器においてパネルを設けた点が記載されているが、上記と同様に、甲1発明の「パネル状スクリーン4」(架設部の一部)の上面に、前記パネルを適用する動機付けはない。
よって、甲1発明において、相違点3に係る本件訂正発明4の構成とすることは当業者が容易に想到することができたものではない。

イ 小括
したがって、上記相違点3に係る本件訂正発明4の構成が、容易に想到できたものではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明4は、甲1発明、甲第4号証に記載された事項及び周知技術(甲第7号証(参考資料4)、参考資料3、参考資料1)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件訂正発明5
本件訂正発明5は、本件訂正発明4の発明特定事項を全て含み、さらに付加的な発明特定事項によって技術的範囲を限定したものである。
したがって、本件訂正発明5は、本件訂正発明4と同じ理由により、甲1発明、甲第4号証に記載された事項及び周知技術(甲第7号証(参考資料4)、参考資料3、参考資料1)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明4は、甲第1号証に記載されたものではなく、また、甲1発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
また、本件訂正発明5は、甲1発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 甲第2号証を主引用例として
(1)本件訂正発明4について
ア 対比
本件訂正発明4と甲2発明とを対比すると、
(ア)甲2発明の「仕事台1」の「土台板2」の上方に有する「面」は、各種の作業に用いられる面であることから「作業面」であることは明らかである。
よって、甲2発明の「上方に面を有し、互いに対向して配置されている一対の土台板2」は、本件訂正発明4の「各上面に作業面を有し、互いに対向して配置される一対の天板」に相当する。

(イ)甲2発明は、「一対の土台板2の対向方向と略直交する方向に離間して配置され」る、「一対の桟枠6」の「中空状の外箱部材41」と「これに没入する中空部材42」によって、「一対の土台板2」を「上下調整可能に支持」している。
よって、甲2発明の「一対の桟枠6」及び、各桟枠6の「中空状の外箱部材41」に没入する「中空部材42」は、本件訂正発明4の「前記一対の天板の対向方向と略直交する方向に離間して配置され、前記一対の天板を高さ調整可能に支持する一対の支持構造体」に相当する。

(ウ)甲2発明の「一対の桟枠6の各上方の横杆5」を「連結」した「トラフ8」は、本件訂正発明4の「一対の前記支持構造体を連結する連結体」に相当する。

(エ)甲2発明の「桟枠6」の、「略床面上に設置されていて、一対の土台板2の対向する方向に沿って延出して」いる「下方の横杆5」は、本件訂正発明4の「前記支持構造体」が備える「床面上に設置されて前記一対の天板の対向する方向に沿って延出するベース部材」に相当する。

(オ)甲2発明は、「桟枠6の下方の横杆5の延出方向の両端位置からそれぞれ上方に向かって、中空状の外箱部材41が立設されており」、「中空状の外箱部材41とこれに没入する中空部材42によって、一対の土台板2を上下調整可能に支持して」いる。
よって、甲2発明の「前記中空状の外箱部材41」及び「前記中空部材42」で構成されている「伸縮できる」「支持脚4」は、本件訂正発明4の「該ベース部材の延出方向の両端位置から夫々上方に向かって立設され、前記一対の天板の夫々を高さ調整可能に支持する一対の伸縮脚」に相当する。

(カ)甲2発明の「トラフ8」が、「一対の桟枠6の各上方の横杆5」を「連結して」いて、「仕事台の幅方向に沿って延出する断面略U字状で樋状に形成された梁部材であ」ることは、本件訂正発明4の「前記連結体」は、「前記天板付什器の幅方向に沿って延出する断面略U字状で樋状に形成された梁部材を備えている」ことに相当する。

(キ)甲2発明の「平板状の目隠しの部材12」は、「一対の土台板2」の間を仕切ることは明らかであり、また、「平板状のパネル体」であるといえる。
よって、甲2発明の「トラフ8の上面」において、「平板状の目隠しの部材12が、略垂直に設けられている」ことと、本件訂正発明4の「前記架設部の上面には、一対の前記天板の間を仕切る平板状のパネル体が上方に向かって立設されている」こととは、本件訂正発明4においては、「連結体」が「架設部」を有していることを考慮すれば、「連結体には、一対の前記天板の間を仕切る平板状のパネル体が上方に向かって立設されている」点で共通する。

そうすると、本件訂正発明4と甲2発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「各上面に作業面を有し、互いに対向して配置される一対の天板と、 前記一対の天板の対向方向と略直交する方向に離間して配置され、前記一対の天板を高さ調整可能に支持する一対の支持構造体と、
一対の前記支持構造体を連結する連結体と、を備え、
前記支持構造体は、床面上に設置されて前記一対の天板の対向する方向に沿って延出するベース部材と、該ベース部材の延出方向の両端位置から夫々上方に向かって立設され、前記一対の天板の夫々を高さ調整可能に支持する一対の伸縮脚と、を備え、
前記連結体は、前記天板付什器の幅方向に沿って延出する断面略U字状で樋状に形成された梁部材を備えており、
連結体には、一対の前記天板の間を仕切る平板状のパネル体が上方に向かって立設されている、
天板付什器。」

相違点4
連結体について、本件訂正発明4では、「各前記支持構造体の前記ベース部材の延出方向の略中間部同士を相互に連結し」、「各前記支持構造体の前記ベース部材の延出方向の略中間位置から上方に立設される支柱部と、各前記支柱部の上部間に架設される架設部と、を有し」、「連結体が有する架設部は前記天板付什器の幅方向に沿って延出する断面略U字状で樋状に形成された梁部材を備えていると共に、前記一対の天板の下面の奥行方向の奥側から下方に引き出された機器側の電源配線が前記梁部材の上方に向かって開口する配線挿通部を通して前記梁部材の内部に挿入されている」うえで、「平板状のパネル体」は「前記架設部の上面」に立設されているのに対して、甲2発明では、「トラフ8」は、桟枠6の上方の横杆5の中間部同士を連結しており、下方の横杆5の中間位置から上方に立設される支柱部の上部間に架設される架設部とはなっていない点。

イ 判断
上記相違点4について検討する。
甲第4号証乃至甲第6号証のいずれにも、相違点4に係る本件訂正発明4の構成は記載も示唆もされていない。
一方、甲1発明は、第4の2(1)イのとおりであって、その「2つの拡張フロアブラケット100の略中間部の位置でそれぞれ立ち上がって」いる「ホルダー42」、「パネル状スクリーン4」及び「ケーブルダクト79」を含む構成(架設部)が記載されている。
しかしながら、甲1発明では、「パネル状スクリーン4」が「ホルダー42の上部間において架設」されたうえで、「ケーブルダクト79」が「パネル状スクリーン4の前面40及び背面41に設置」されているから、相違点4に係る本件訂正発明4における「架設部」とは、構成が異なると共に、甲2発明における「トラフ8」とも基本的な構成が異なる。そのため、甲2発明において、甲1発明における「ホルダー42」、「パネル状スクリーン4」及び「ケーブルダクト79」の構成を採用する動機付けはなく、採用したとしても上記相違点4に係る本件訂正発明4の構成に至るものではない。
なお、甲第4号証乃至甲第6号証の他、申立人が提出した甲第7号証、甲第8号証の1乃至甲第8号証の4、参考資料1乃至参考資料4には、本件訂正発明4に関する構造が部分的に記載されているものの、甲2発明における「トラフ8」を、下方の「横杆5」の略中間部から立設される支柱部の上部間に架設された構成とすることは、何ら動機付けが存在しないことから、相違点4に係る本件訂正発明4の構成とすることは、当業者にとって困難なことである。
よって、甲2発明において、相違点4に係る本件訂正発明4の構成とすることはできない。

ウ 小括
したがって、本件訂正発明4は、甲2発明、甲1発明、甲第4号証乃至甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証の1乃至甲第8号証の4、及び参考資料1乃至参考資料4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件訂正発明5について
本件訂正発明5は、本件訂正発明4の構成を全部含み、さらに付加的な発明特定事項によって技術的範囲を限定したものである。
したがって、本件訂正発明5は、本件訂正発明4と同様に、甲2発明、甲1発明、甲第4号証乃至甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証の1乃至甲第8号証の4、及び参考資料1乃至参考資料4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明4及び5は、甲2発明、甲1発明、甲第4号証乃至甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証の1乃至甲第8号証の4、及び参考資料1乃至参考資料4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 甲第3号証を主引用例として
(1)本件訂正発明4について
ア 対比
(ア)甲3発明の「仕事台」における各「板部材2」は、各種の作業に用いられるものであるから上面に「作業面」を有していることは明らかである。
よって、甲3発明の「互いに距離を有して平行に並べられてい」る「2つの板部材2」は、本件訂正発明4の「各上面に作業面を有し、互いに対向して配置される一対の天板」に相当する。

(イ)甲3発明の「ラック脚5」は、床面上に設置されていて、2つの板部材2の対向する方向と直交する方向に離間して両側に配置され」、「このラック脚5」に「電動モーターによって駆動される平たいストロークエレメント4」が固定されている。前記「ストロークエレメント4」は、「下方の部材と、上方の部材とを有していて、下方の部材は、前記ラック脚5に接着しており、上方の部材は前記横ばり8に接着しており」、「横ばり8の上に」「2つの板部材2」が、「置かれて」いることから、「2つの板部材2」を、「ラック脚5」、「ストロークエレメント4」及び「横ばり8」により支持しており、前記「ストロークエレメント4」が高さ調整可能にしていることは明らかである。
よって、甲3発明の「2つの板部材2の対向する方向と直交する方向に離間」して配置された、一方の側の「ラック脚5」、2つの「ストロークエレメント4」及び2つの「横ばり8」と、他方の側の「ラック脚5」、2つの「ストロークエレメント4」及び2つの「横ばり8」は、本件訂正発明4の「前記一対の天板の対向方向と略直交する方向に離間して配置され、前記一対の天板を高さ調整可能に支持する一対の支持構造体」に相当する。

(ウ)甲3発明の「トラバース3」は、「2つの板部材2の対向する方向と直交する方向に配置され」、「両側のラック脚5の屈曲部位同士を連結」するものであるから、本件訂正発明4の「一対の前記支持構造体を連結する連結体」に相当する。

(エ)甲3発明の「床面上に設置」した「ラック脚5」と、本件訂正発明4の「床面上に設置されて前記一対の天板の対向する方向に沿って延出するベース部材」とは、「床面上に設置されるベース部材」である点で共通する。

(オ)甲3発明の「ラック脚5」に固定される2つの「ストロークエレメント4」は、ラック脚5から上方に向かって立設し、伸縮して2つの板部材2を高さ調整することができることは明らかである。
よって、甲3発明の「ラック脚5」に固定されていて、伸縮して高さ調整することができる2つの「ストロークエレメント4」と、本件訂正発明4の「該ベース部材の延出方向の両端位置から夫々上方に向かって立設され、前記一対の天板の夫々を高さ調整可能に支持する一対の伸縮脚」とは、「該ベース部材から夫々上方に向かって立設され、前記一対の天板の夫々を高さ調整可能に支持する一対の伸縮脚」の点で共通する。

(カ)甲3発明の「ラック脚5の屈曲部位」は、ラック脚5の略中間部である。
よって、甲3発明の「トラバース3」が、「ラック脚5の屈曲部位同士を連結している」ことは、本件訂正発明4の「前記連結体」が、「前記支持構造体の前記ベース部材の略中間部同士を相互に連結し」ていることに相当する。

そうすると、本件訂正発明4と甲3発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「各上面に作業面を有し、互いに対向して配置される一対の天板と、
前記一対の天板の対向方向と略直交する方向に離間して配置され、前記一対の天板を高さ調整可能に支持する一対の支持構造体と、
一対の前記支持構造体を連結する連結体と、を備え、
前記支持構造体は、床面上に設置されるベース部材と、該ベース部材から夫々上方に向かって立設され、前記一対の天板の夫々を高さ調整可能に支持する一対の伸縮脚と、を備え、
前記連結体は、各前記支持構造体の前記ベース部材の略中間部同士を相互に連結する天板付什器。」

相違点5
本件訂正発明4は、
「ベース部材」が「床面上に設置されて前記一対の天板の対向する方向に沿って延出」し、
「連結体」が「各前記支持構造体の前記ベース部材の延出方向の略中間位置から上方に立設される支柱部と、各前記支柱部の上部間に架設される架設部と、を有」し、「各前記支持構造体の前記ベース部材の延出方向の略中間部同士を相互に連結し、前記連結体が有する架設部は前記天板付什器の幅方向に沿って延出する断面略U字状で樋状に形成された梁部材を備えていると共に、前記一対の天板の下面の奥行方向の奥側から下方に引き出された機器側の電源配線が前記梁部材の上方に向かって開口する配線挿通部を通して前記梁部材の内部に挿入され」、「前記架設部の上面には、一対の前記天板の間を仕切る平板状のパネル体が上方に向かって立設されている」のに対して、
甲3発明は、
「ラック脚5」が「仕事台1の内側に屈曲」しており、2つの板部材2の対向する方向に沿って延出していないとともに、「トラバース3」が、ラック脚5の「延出方向の略中間位置から上方に立設される支柱部と各前記支柱部の上部間に架設される架設部と」を有していない点。

イ 判断
相違点5について検討する。
甲第2号証、甲第4号証乃至甲第6号証のいずれにも、相違点5に係る本件訂正発明4の構成は記載も示唆もされていない。
一方、甲1発明は、第4の2(1)イのとおりであって、その「2つの拡張フロアブラケット100の略中間部の位置でそれぞれ立ち上がって」いる「ホルダー42」、「パネル状スクリーン4」及び「ケーブルダクト79」を含む構成(架設部)が記載されている。
しかしながら、甲1発明では、「パネル状スクリーン4」が「ホルダー42の上部間において架設」されたうえで、「ケーブルダクト79」が「パネル状スクリーン4の前面40及び背面41に設置」されているから、相違点5に係る本件訂正発明4における「架設部」とは、構成が異なると共に、甲3発明における「トラバース3」とも基本的な構成が異なる。そのため、甲3発明において、甲1発明における「ホルダー42」、「パネル状スクリーン4」及び「ケーブルダクト79」の構成を採用する動機付けはなく、採用したとしても上記相違点5に係る本件訂正発明4の構成に至るものではない。
なお、甲第2号証、甲第4号証乃至甲第6号証の他、申立人が提出した甲第7号証、甲第8号証の1乃至甲第8号証の4、参考資料1乃至参考資料4には、本件訂正発明4に関する構造が部分的に記載されているものの、甲3発明における「トラバース3」を、「ラック脚5」の略中間部から立設される支柱部の上部間に架設された構成とすることは、何ら動機付けが存在しないことから、相違点5に係る本件訂正発明4の構成とすることは、当業者にとって困難なことである。
よって、甲3発明において、相違点5に係る本件訂正発明4の構成とすることはできない。

ウ 小括
したがって、本件訂正発明4は、甲3発明、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証乃至甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証の1乃至甲第8号証の4、及び参考資料1乃至参考資料4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件訂正発明5について
本件訂正発明5は、本件訂正発明4の構成を全部含み、さらに付加的な発明特定事項によって技術的範囲を限定したものである。
したがって、本件訂正発明5は、本件訂正発明4と同様に、甲3発明、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証乃至甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証の1乃至甲第8号証の4、及び参考資料1乃至参考資料4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明4及び5は、甲3発明、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証乃至甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証の1乃至甲第8号証の4、及び参考資料1乃至参考資料4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 申立人の主張について
(1)申立人は、本件訂正発明4及び5は、甲1発明及び甲4記載の事項、並びに周知技術(甲第4号証、甲第7号証、甲第8号証の3、甲第8号証の4、参考資料1、参考資料2-1、参考資料3等)に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。(意見書第8頁下から2行?第9頁第3行)
しかしながら、第8の1(1)アで説示したとおり、甲4記載の事項及び周知技術(甲第4号証、甲第7号証(参考資料4)、参考資料1、参考資料3)には天板付什器のパネルが記載されているものの、これを甲1発明に適用する動機付けがなく、また、周知技術としてさらに例示した甲第8号証の3、甲第8号証の4及び参考資料2-1にも、天板付什器のパネルが記載されているが、同様に、これを甲1発明に適用する動機付けがない。
よって、本件訂正発明4及び5は、甲1発明及び甲4記載の事項、並びに周知技術(甲第4号証、甲第7号証、甲第8号証の3、甲第8号証の4、参考資料1、参考資料2-1、参考資料3等)に基づき、当業者が容易に発明をすることができたということができない。

(2)申立人は、本件訂正前の請求項4に係る発明に関して、甲2発明の土台付き作業台は、土台2(「天板」に相当)の対向方向と略直交する方向に離間して配置され、前記一対の土台2を高さ調整可能に支持する一対の支持構造体を備えており、該支持構造体は、床面上に設置されて前記一対の土台2の対向する方向に沿って延出する、上下の横杆(Tie bars)5(横桟6)及び内張り(lining)7からなる桟枠(Framework)6(「ベース部材」に相当)と、該桟枠6の延出方向の両端位置から夫々上方に向かって立設され、前記一対の土台2の夫々を高さ調整可能に支持する一対のサポート脚(support leg)4(「伸縮脚」に相当)を備えており、一対の前記支持構造体を連結する配線挿通材(troughing)8(「連結体」に相当)を備えており、配線挿通材8は、各支持構造体の上下の横杆(Tie bars)5(横桟6)及び内張り(lining)7からなる桟枠(Framework)6(「ベース部材」に相当)の延出方向の中間部同士(横枠6の上側の横杆(tie bars)5の中央部同士)を相互に連結している旨主張し(特許異議申立書第19頁24?32行、第20頁第1?7行)、
また、甲第1号証のテーブルトップ付き作業台のスクリーン板4が、ホルダー42の上端部に直接固定され、架設部の主要部を構成していること、ケーブルダクトを直接の架設部としてテーブル左右の支持構造体を連結する連結体を構成し、一対の支持構造体を安定させることが周知技術(甲第4号証、甲第2号証、甲第5号証、甲第6号証)であること、さらにケーブルダクトの上面に一対の天板の間を仕切る平板状のパネル体を上方に向かって立設することが甲第4号証、甲第2号証に記載されていることから、本件特許の請求項4に記載された発明は、甲2発明、甲第1号証に記載された事項、及び、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された事項に基づき、当業者が容易に想到し得たものである旨主張する。(特許異議申立書第21頁下から7?第22頁第10行)
しかしながら、本件特許の請求項4に係る発明は、本件訂正により訂正されており、上記第8の2(1)アで説示したとおり、甲2発明の「下の横杆(Tie bars)5」が、本件訂正発明4の「ベース部材」に相当するものであり、また、甲2発明の「トラフ8」が、本件訂正発明4の「連結体」に相当するものの、甲2発明の「トラフ8」は、「上の横杆(Tie bars)5」の中間部同士を連結しているものと認められるから、甲2発明においては、「連結体」が、「ベース部材」の延出方向の中間部同士に相互に連結する構成に相当する構成を有しているということはできない。
また、上記第8の2(1)イで説示したとおり、甲2発明において、甲1発明の構成や、その他の各甲号証の構造を採用する動機付けがないことから、本件訂正発明4は、甲2発明、甲第1号証に記載された事項及び甲第4号証ないし甲第6号証に記載された事項に基づき、当業者が容易に想到し得たものであるということができない。

(3)申立人は、本件訂正前の請求項4に係る発明に関して、甲3発明の土台付き作業台は、土台2(「天板」に相当)の対向方向と略直交する方向に離間して配置され、前記一対の土台2を高さ調整可能に支持する一対の支持構造体を備えており、該支持構造体は、床面上に設置されて前記一対の土台2の対向する方向に沿って略くの字状に延出する脚(feet)5(「ベース材」に相当)と、該脚(feet)5の延出方向の両端位置(端部から若干内側位置)から夫々上方に向かって立設され、前記一対の土台2の夫々を高さ調整可能に支持する一対の伸縮脚(stroke element)4(「伸縮脚」に相当)を備えている旨主張(特許異議申立書第24頁第10?18行)し、
また、甲第1号証のテーブルトップ付き作業台のスクリーン板4が、ホルダー42の上端部に直接固定され、架設部の主要部を構成していること、ケーブルダクトを直接の架設部としてテーブル左右の支持構造体を連結する連結体を構成し、一対の支持構造体を安定させることが甲第2号証、甲第4号証?甲第6号証に記載されていること、さらにケーブルダクトの上面に一対の天板の間を仕切る平板状のパネル体を上方に向かって立設することが甲第2号証、甲第4号証に記載されてことから、本件特許の請求項4に記載された発明は、甲3発明、甲第1号証に記載された事項、甲第2号証に記載された事項、及び、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された事項に基づき、当業者が容易に想到し得たものである旨主張する。(特許異議申立書第26頁18?32行)
しかしながら、本件特許の請求項4に係る発明は、本件訂正により訂正されており、上記第8の3(1)アで説示したとおり、甲3発明の「ラック脚5」は、「仕事台1の内側に屈曲」していることから、本件訂正発明4の「前記一対の天板の対向する方向に沿って延出するベース部材」には、相当するものではない。
また、上記第8の3(1)イで説示したとおり、甲3発明において、甲1発明の構成や、その他の各甲号証の構造を採用する動機付けがないことから、本件訂正発明4は、甲3発明、甲第1号証に記載された事項、甲第2号証に記載された事項、及び、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された事項に基づき、当業者が容易に想到し得たものであるということができない。

(4)小括
以上のとおりであるから、申立人の主張について検討しても、本件訂正発明4、及び本件訂正発明4の構成を有しさらに限定された本件訂正発明5について、上記第8の1ないし3の判断を変更すべき事情は見出せない。

第9 むすび
以上のとおり、本件訂正発明1ないし3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件訂正発明4及び5に係る特許は、異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、特許を取り消すことができない。
さらに、他に本件訂正発明4及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
天板付什器
【技術分野】
【0001】
この発明は、昇降式の天板を備えたデスク装置、テーブル装置、カウンター装置等の天板付什器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフィスや公共施設等においては、各種作業を行うことのできる天板を備えたデスク装置、テーブル装置、カウンター装置等の天板付什器が用いられている。
このような天板付什器においては、使用者の姿勢、体格、性別、好み等によって、作業のしやすい天板の高さは個々に異なる。このため、天板の高さを上下に変更可能とする昇降機能を備えた天板付什器が多用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、執務空間においては、複数のデスク装置を前後に対向させて配置するのが一般的であり、昇降機能を備えた天板付什器においても、このような使用形態が望まれることがある。この場合、構造を簡素化して製品コストを削減するため、共通の支持構造体に前後の天板を高さ調整可能に支持させることが考えられている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献2に記載の天板付什器は、昇降機構を内蔵する支持構造体のブロックが前側の天板と後側の天板の設置部間に配置され、前側の天板と後側の天板が前後方向中央の共通の支持構造体のブロックに高さ調整可能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特許第3391285号公報
【特許文献2】 特開2014-217740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の天板付什器は、前側の天板と後側の天板で支持構造体が共用されているため、構造を簡素化して製品コストを削減することができるものの、前側の天板と後側の天板が支持構造体のブロックに片持ち状態で支持されることから、各天板を強固にかつ安定的に支持することが難しい。
【0007】
また、特許文献2に記載の天板付什器は、前側の天板と後側の天板が前後方向の中央付近で片持ち状態で支持構造体のブロックに支持されているため、支持構造体の前後方向の支持バランスを維持するために、支持構造体の前後に支持脚を延出させて設ける必要がある。このため、支持脚が使用者の足元近くに張り出し、天板付什器の使用時に支持脚が邪魔になることが懸念される。
【0008】
そこでこの発明は、高さ調整可能な一対の天板を共通の支持構造体に強固にかつ安定的に支持させることができるとともに、使用者の使い勝手を良好なものとすることができる天板付什器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る天板付什器は、上記課題を解決するために以下の構成を採用した。
この発明に係る天板付什器は、各上面に作業面を有し、互いに対向して配置される一対の天板と、前記一対の天板の対向方向と略直交する方向に離間して配置され、前記一対の天板を高さ調整可能に支持する一対の支持構造体と、一対の前記支持構造体を連結する連結体と、を備え、前記支持構造体は、床面上に設置されて前記一対の天板の対向する方向に沿って延出するベース部材と、該ベース部材の延出方向の両端位置から夫々上方に向かって立設され、前記一対の天板の夫々を高さ調整可能に支持する一対の伸縮脚と、を備え、前記連結体は、各前記支持構造体の前記ベース部材の延出方向の略中間部同士を相互に連結し、前記連結体が有する架設部は前記天板付什器の幅方向に沿って延出する断面略U字状で樋状に形成された梁部材を備えていると共に、前記一対の天板の下面の奥行方向の奥側から下方に引き出された機器側の電源配線が前記梁部材の上方に向かって開口する配線挿通部を通して前記梁部材の内部に挿入されているようにした。
【0010】
この構成により、一対の天板は、床面上に設置されるベース部材の延出方向の端部に立設された各伸縮脚に支持されることになる。このため、各天板は支持構造体に強固にかつ安定的に支持されることになる。また、床面上に設置されるベース部材の延出方向の端部からは部材が前後に突出しなくなる。
【0012】
この場合、一対の支持構造体のベース部材同士が連結体を介して一体化されるため、一対の支持構造体をより安定させることができる。
【0013】
前記連結体は、各前記支持構造体の前記ベース部材の延出方向の略中間位置から上方に立設される支柱部と、各前記支柱部の上部間に架設される架設部と、を有する構成としても良い。
この場合、架設部が下方に空間を残した状態で幅方向両側のベース部材の略中間部同士が連結される。このため、架設部の下方空間を有効利用することができる。
【0014】
前記架設部は、内部に配線収容空間が設けられるようにしても良い。
この場合、架設部を配線ダクトとしても機能させることができる。
【0015】
前記架設部の上面には、一対の前記天板の間を仕切る平板状のパネル体が上方に向かって立設されるようにしても良い。
この場合、架設部の上面のスペースが一対の天板間を仕切るパネル体の設置部となる。一対の天板間がパネル体によって仕切られることにより、各天板の使用者夫々に個別の作業エリアを提供することが可能になる。
【0016】
前記架設部の上面には、前記パネル体の前後で前記架設部の内部の配線収容空間と外部を連通させる配線挿通部が設けられるようにしても良い。
この場合、各天板から垂れ下がった配線を、パネル体の前後の各配線挿通部を通して架設部内の配線収容空間に収容することが可能になる。このため、配線の撓み等が外部から見え難くなり、見栄えが向上する。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、幅方向に離間して配置される一対の支持構造体が、前後方向に沿って延出するベース部材と、ベース部材の延出方向の両端位置から上方に向かって立設される一対の伸縮脚と、を有し、各伸縮脚に一対の天板の夫々が高さ調整可能に支持されている。このため、一対の天板を共通の支持構造体に強固にかつ安定的に支持することができ、しかも、ベース部の延出方向の端部から部材が前後に突出しないことから、使用者の使い勝手を良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施形態に係るデスク装置の斜視図である。
【図2】この発明の一実施形態に係るデスク装置の連結体の斜視図である。
【図3】この発明の一実施形態に係るデスク装置のIII-III線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、天板付什器の一形態であるデスク装置1の構成を示す斜視図である。図2は、デスク装置1の連結体12部分を示す斜視図であり、図3は、デスク装置1の図1のIII-III線に沿う断面図である。
図1に示すように、デスク装置1は、一対の支持構造体10と、この支持構造体10に支持される第1の天板部11A、及び、第2の天板部11Bと、一対の支持構造体10を相互に連結する連結体12と、連結体12に取り付けられて第1の天板部11Aと第2の天板部11Bの間を仕切る平板状のパネル体13と、を備えている。
【0020】
この実施形態において、第1の天板部11Aと第2の天板部11Bは、平面視が略長方形状で、各上面14fを作業面とされる第1の天板14Aと第2の天板14Bを夫々備えている。第1の天板14Aと第2の天板14Bは、夫々平面視の状態で短辺に沿う方向において互いに対向している。以下の説明においては、第1の天板14Aと第2の天板14Bが互いに対向する方向(短辺に沿う方向)を前後方向、第1の天板14Aと第2の天板14Bの長辺に沿う方向を幅方向、デスク装置1が設置される床面Fに直交する方向を上下方向と称する。また、説明の便宜上、前後方向に関して、図1の手前側を前、奥側を後と称する。
【0021】
一対の支持構造体10は、デスク装置1の幅方向の両端部に位置するように、幅方向に所定距離離間して配置されている。各支持構造体10は、床面Fに沿って前後方向に延出する角柱状のベース部材15と、ベース部材15の前後方向の両端位置から鉛直上方に向かって延出する一対の伸縮脚16A,16Bと、を備えている。ベース部材15の延出長さは、前後の延出端が第1の天板14A(第1の天板部11A)と第2の天板14B(第2の天板部11B)の各前後方向の略中心位置(望ましくは、各前後方向の重心位置)に達する長さに設定されている。また、各ベース部材15の下面には、床面に接地する接地部材15dが設けられている。各ベース部材15は、接地部材15dによって上下方向の高さと水平レベルを適宜調整できるようになっている。
【0022】
各伸縮脚16A,16Bは、ベース部材15上に固定された第1筒部17xと、第1筒部17x内に上下方向に移動可能に挿入された第2筒部17yと、第2筒部17y内に上下方向に移動可能に挿入された第3筒部17zと、を有している。第1筒部17x、第2筒部17y,第3筒部17zは、夫々角筒状をなしている。各伸縮脚16A,16Bは、第1筒部17xに対し、第2筒部17y、第3筒部17zが上下方向に沿って出没することで、上下方向の長さが調整可能となっている。この実施形態の場合、各伸縮脚16A,16Bは、図示しない電動式駆動ユニットによって昇降操作される。
なお、各伸縮脚16A,16Bは、第1筒部17xの一側面がベース部材15の前後方向の各端面と面一になるようにベース部材15の各端部の上面に固定されている。
【0023】
第1の天板部11Aと第2の天板部11Bは、第1の天板14Aと第2の天板14Bの幅方向両端部の下面に、前後方向に延びる支持ブラケット18を夫々有している。第1の天板14Aと第2の天板14Bは、これらの支持ブラケット18を介して、幅方向両端部に位置する伸縮脚16A,16Bの第3筒部17zの上端に連結されている。なお、各伸縮脚16A,16Bの第3筒部17zの上端は、図3にも示すように、第1の天板部11Aと第2の天板部11Bの各前後方向の略中央となる位置に連結されている。
【0024】
連結体12は、幅方向両側の支持構造体10のベース部材15間に架設されている。具体的には、連結体12は、左右の各支持構造体10のベース部材15の前後方向の略中間位置から上方に立設される角筒状の支柱部19と、両端部が各支柱部19の上部に結合される架設部20と、を有している。
この実施形態の場合、一方の支持構造体10(図1中の左側の支持構造体10)に設けられる支柱部19の内部には、第1の天板14Aと第2の天板14Bの上で使用される機器や、伸縮脚16A,16Bを昇降操作するための電動式駆動ユニット等に電力を供給するための電源配線21が挿通されている。電源配線21の下端部は、支柱部19の内壁の下端に設けられた切欠き19aを通して外部に引き出され、床面Fの下方に設けられた図示しない電力供給部に接続されている。電源配線21の上部側は架設部20内に引き入れられている。
【0025】
架設部20は、図2,図3に示すように、デスク装置1の幅方向に沿って延出する樋状(断面略U字状)の梁部材22と、梁部材22の延出方向の両端部を閉塞する端部プレート23と、梁部材22の底板部22aの延出方向(デスク装置1の幅方向)の両端部から上方に立設された各支持部材24に固定されて、梁部材22の上部の前後方向の中央領域を覆うセンターカバー25と、を備えている。梁部材22の前後の側壁部22bとセンターカバー25の間には、デスク装置1の幅方向に沿って延出し、上方に向かって開口する一対のスリット状の開口26A,26B(配線挿通部)が形成されている。架設部20の内部は、配線収容空間30とされている。
【0026】
ところで、一方の支柱部19から架設部20内に引き入れられた電源配線21は、第1の天板部11Aと第2の天板部11Bの各奥行方向の奥側から下方に引き出された機器側の電源配線に架設部20の内部において接続されている。この実施形態の場合、機器側の電源配線の一部は、ケーブルベア(登録商標)27によって構成されている。ケーブルベア27は、多数のチェーンコマをリンクピンで回動自在に連結したもので、その内部に実際の配線が収容される。各ケーブルベア27は、一端側が第1の天板部11Aや第2の天板部11Bの各下面に連結され、他端側が梁部材22の内部に連結されている。各ケーブルベア27の他端側の配線は梁部材22の内部でコネクタ28を介して電源配線21に接続されている(図1参照)。
【0027】
第1の天板部11Aと第2の天板部11Bに連結された各ケーブルベア27は、これらの下面から夫々下方に垂れ下がり、架設部20上の前後の開口26A,26Bを通して梁部材22の内部に挿入されている。各ケーブルベア27は、第1の天板部11Aや第2の天板部11Bの昇降に伴って弛み量が変動し、第1の天板部11Aや第2の天板部11Bが下降すると、ケーブルベア27の弛み量が大きくなる。ケーブルベア27の弛み部分は、梁部材22の底板部22a上にデスク装置1の幅方向に延びるように横たわる。なお、図3中の符号29は、架設部20上の前後の開口26A,26Bを通して梁部材22の内部に挿入されたケーブルベア27を案内するためのケーブルガイドである。
【0028】
また、架設部20のセンターカバー25の上面には、第1の天板部11Aと第2の天板部11Bの間を仕切る上記のパネル体13が立設されている。パネル体13は、デスク装置1の幅方向に沿って延在し、延出方向の両端部の下端が支持部材24を介して梁部材22に結合されている。梁部材22の前後の側壁部22bとセンターカバー25の間に形成される開口26A,26Bは、パネル体13の前後位置において、架設部20内の配線収容空間30と外部を連通している。
【0029】
以上のように、この実施形態に係るデスク装置1は、幅方向に離間して配置される各支持構造体10が、床面F上に設置されて前後方向に延出するベース部材15と、ベース部材15の延出方向の各端部からそれぞれ上方に立設される伸縮脚16A,16Bと、を備えた構成とされている。このため、各ベース部材15の延出方向の両端部から上方に突設された各伸縮脚16A,16Bにより、第1の天板14A(第1の天板部11A)と第2の天板14B(第1の天板部11A)の各前後方向の中心部付近を鉛直下方から支持することができる。したがって、この実施形態に係るデスク装置1によれば、第1の天板14A(第1の天板部11A)と第2の天板14B(第1の天板部11A)を共通の支持構造体10によって強固にかつ安定的に支持することができる。
【0030】
また、この実施形態に係るデスク装置1は、上述のように、第1の天板14A(第1の天板部11A)と第2の天板14B(第1の天板部11A)の各前後方向の中心部付近を伸縮脚16A,16Bによって鉛直下方から安定的に支持することができるため、ベース部材15の前後の端部から支持部材を突出させる必要がない。このため、作業者の足先が支持構造体10に接触しにくくなり、使用者の使い勝手が良好になる。
【0031】
また、この実施形態に係るデスク装置1においては、一対の支持構造体10のベース部材15の前後方向の略中間部同士が連結体12によって相互に連結されているため、離間した一対の支持構造体10同士を一体化して、床面上により安定して設置することができる。
【0032】
特に、この実施形態に係るデスク装置1では、連結体12が、各ベース部材15の前後方向の略中間位置から上方に立設される支柱部19と、各支柱部19の上部同士を連結する架設部20と、を備えた構成とされているため、架設部20の下方に空間を確保することができる。したがって、この構造を採用することにより、架設部20の下方空間を物品の配置スペース等として有効利用することができる。
【0033】
また、この実施形態に係るデスク装置1においては、架設部20の内部が配線収容空間30とされているため、架設部20に、一対の支持構造体10を相互に連結する構造部材としての機能だけでなく、配線ダクトとしての機能も持たせることができる。したがって、構造部材と配線ダクトを別々に設ける場合に比較して、全体の小型・軽量化と製品コストの低減を図ることができる。
【0034】
さらに、この実施形態に係るデスク装置1では、架設部20の上面に平板状のパネル体13が設置されているため、第1の天板14Aと第2の天板14Bの間を仕切るパネル体13を支持するための専用の部材を別に設ける必要がない。したがって、デスク装置1の全体の小型・軽量化と製品コストの低減を図りつつ、第1の天板14Aと第2の天板14Bの間をパネル体13によって仕切って、各天板14A,14Bを使用するの使用者夫々に個別の作業エリアを提供することができる。
【0035】
さらに、この実施形態の場合、連結体12を構成する架設部20の上面に、パネル体13の前後で架設部20内の配線収容空間30と外部を連通する開口26A,26Bが設けられている。このため、第1の天板14Aと第2の天板14Bの奥行方向の奥側から下方に垂れ下がったケーブルベア27(電源配線)を、各開口26A,26Bを通して架設部20内の配線収容空間30に収容することができる。したがって、この構造を採用することにより、第1の天板14Aと第2の天板14Bから下方に垂れ下がったケーブルベア27の撓み等を外部から見え難くし、外観体裁を良好にすることができる。
【0036】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、一対の支持構造体10を相互に連結する連結体12が、各ベース部材15に立設される支柱部19と、その支柱部19の上部間を連結する架設部20によって構成されているが、連結体は左右のベース部を直線的に連結する部材であっても良い。また、架設部20には、必ずしも配線収容空間30を設ける必要はなく、パネル体13も架設部20の上部に設けなくても良い。
また、上記の実施形態においては、天板付什器の一形態であるデスク装置について説明したが、天板付什器は、テーブル装置やカウンター装置等であっても良い。
【符号の説明】
【0037】
1 デスク装置
10 支持構造体
12 連結体
13 パネル体
14A 第1の天板(天板)
14B 第2の天板(天板)
15 ベース部材
16A,16B 伸縮脚
19 支柱部
20 架設部
26A,26B 開口(配線挿通部)
30 配線収容空間
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各上面に作業面を有し、互いに対向して配置される一対の天板と、
前記一対の天板の対向方向と略直交する方向に離間して配置され、前記一対の天板を高さ調整可能に支持する一対の支持構造体と、
一対の前記支持構造体を連結する連結体と、を備え、
前記支持構造体は、床面上に設置されて前記一対の天板の対向する方向に沿って延出するベース部材と、該ベース部材の延出方向の両端位置から夫々上方に向かって立設され、前記一対の天板の夫々を高さ調整可能に支持する一対の伸縮脚と、を備え、
前記連結体は、各前記支持構造体の前記ベース部材の延出方向の略中間部同士を相互に連結し、前記連結体が有する架設部は前記天板付什器の幅方向に沿って延出する断面略U字状で樋状に形成された梁部材を備えていると共に、前記一対の天板の下面の奥行方向の奥側から下方に引き出された機器側の電源配線が前記梁部材の上方に向かって開口する配線挿通部を通して前記梁部材の内部に挿入されていることを特徴とする天板付什器。
【請求項2】
前記連結体は、各前記支持構造体の前記ベース部材の延出方向の略中間位置から上方に立設される支柱部と、各前記支柱部の上部間に架設される架設部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の天板付什器。
【請求項3】
前記架設部は、内部に配線収容空間が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の天板付什器。
【請求項4】
前記架設部の上面には、一対の前記天板の間を仕切る平板状のパネル体が上方に向かって立設されていることを特徴とする請求項2または3に記載の天板付什器。
【請求項5】
前記架設部の上面には、前記パネル体の前後で前記架設部の内部の配線収容空間と外部を連通させる配線挿通部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の天板付什器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-08-16 
出願番号 特願2015-119506(P2015-119506)
審決分類 P 1 651・ 121- ZDA (A47B)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 河本 明彦  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 西田 秀彦
有家 秀郎
登録日 2019-08-09 
登録番号 特許第6566552号(P6566552)
権利者 株式会社オカムラ
発明の名称 天板付什器  
代理人 松沼 泰史  
代理人 松沼 泰史  
代理人 鈴木 三義  
代理人 鈴木 三義  

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