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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
管理番号 1379838
異議申立番号 異議2020-700965  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-12-09 
確定日 2021-10-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6708275号発明「フッ素樹脂材料、高周波伝送用フッ素樹脂材料および高周波伝送用被覆電線」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6708275号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第6708275号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

1.手続の経緯
本件特許第6708275号(請求項の数3。以下「本件特許」という。)は、平成31年2月13日を出願日とする特許出願(特願2019-23272号、優先権主張:平成30年3月26日(JP)日本国)であって、令和2年5月25日に特許権の設定登録がされ、令和2年6月10日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和2年12月9日に、本件特許の請求項1?3に係る特許に対して、特許異議申立人 三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
以降の手続の経緯は、以下のとおりである。

令和3年4月19日付け 取消理由通知
同年6月16日 訂正請求書、意見書(特許権者)
同年6月30日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知)
同年8月10日 意見書(申立人)

2.証拠方法
(1)申立人が、特許異議申立書に添付した証拠方法は、以下のとおりである。

・甲第1号証:デュポン^(TM)テフロン^(○R)実用ハンドブック(当審注:○Rは丸付き文字。以下同様。)、2015年(平成27年)3月改訂
・甲第2号証:ふっ素樹脂ハンドブック、1990年11月30日発行
・甲第3号証:Teflon^(TM) PFA HP Plus Fluoropolymer Resins Properties Handbook、2018年発行
・甲第4号証:Technical Information DuPont Fluoroproducts, SEMICON West 2000、2000年発行
・甲第5号証:DuPont^(TM) Teflon^( ○R) PFA 940HP Plus、2012年11月発行
・甲第6号証:DuPont^(TM) Teflon ^(○R) PFA 945HP Plus、2012年11月発行
・甲第7号証:DuPont^(TM) Teflon ^(○R) PFA 950HP Plus、2012年11月発行
・甲第8号証:特開平03-184209号公報
・参考資料1:三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社 一之瀬 和弥による実験成績証明書
・参考資料2:米国特許第4743658号明細書

(2)申立人が、意見書に添付した証拠方法は、以下のとおりである。
・甲第9号証:特表2008-503857号公報
・参考資料3:デュポン^(TM)テフロン^(○R)実用ハンドブック 第80頁
・参考資料4:デュポン^(TM)テフロン^(○R)実用ハンドブック 第63頁の図42の拡大

(以下、上記「甲第1号証」?「甲第9号証」、「参考資料1」?「参考資料4」を、それぞれ「甲1」?「甲9」、「参1」?「参4」と略す。)

第2 訂正の適否

1.訂正の内容
令和3年6月16日提出の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下のとおりである。(また、本件特許の設定登録時の明細書を「本件明細書」という。)

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「溶融加工性のフッ素樹脂を含有し、12GHzにおける比誘電率が2.1以下であり、誘電正接が0.00030以下であるフッ素樹脂材料」と記載されているのを、
「溶融加工性のフッ素樹脂を含有し、12GHzにおける比誘電率が2.1以下であり、誘電正接が0.00020以下であるフッ素樹脂材料」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記フッ素樹脂の主鎖炭素数10^(6)個当たりの官能基数が、6個以下であるフッ素樹脂材料。」と記載されているのを、
「前記フッ素樹脂の主鎖炭素数10^(6)個当たりの-CF=CF_(2)、-CF_(2)H、-COF、-COOH、-COOCH_(3)、-CONH_(2)および-CH_(2)OHの官能基数が、6個以下であるフッ素樹脂材料。」に訂正する。

(3)一群の請求項について
訂正前の請求項1?3について、請求項2および3は請求項1を引用しているものであるから、訂正前の請求項1?3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否の検討
以下の検討において、本件訂正前の請求項1ないし3をそれぞれ項番に従い「旧請求項1」のようにいい、訂正後の請求項1?3をそれぞれ項番に従い「新請求項1」のようにいう。

(1)訂正事項1に係る訂正
訂正事項1に係る訂正では、旧請求項1の「誘電正接が0.00030以下」を本件明細書の【0019】の記載に基づいて「誘電正接が0.00020以下」と限定することにより、旧請求項1に対してその特許請求の範囲を減縮して新請求項1としていることから、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2に係る訂正
訂正事項2に係る訂正では、旧請求項1の「官能基数」を本件明細書の【0027】の記載に基づいて、「-CF=CF_(2)、-CF_(2)H、-COF、-COOH、-COOCH_(3)、-CONH_(2)および-CH_(2)OHの官能基数」と限定することにより、旧請求項1に対してその特許請求の範囲を減縮して新請求項1としていることから、訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3.独立特許要件について
本件訂正は、本件特許異議の申立てがされている旧請求項1?3についてするものであるから、いわゆる独立特許要件につき検討することを要しない。

4.訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6号の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正を認める。

第3 本件訂正発明

本件訂正後の請求項1?3に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明3」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された以下の事項によって特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
溶融加工性のフッ素樹脂を含有し、12GHzにおける比誘電率が2.1以下であり、誘電正接が0.00020以下であるフッ素樹脂材料であって、前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン/(パー)フルオロ(アルキルビニルエーテル)共菫合体、および、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体であり、前記フッ素樹脂の主鎖炭素数10^(6)個当たりの-CF=CF_(2)、-CF_(2)H、-COF、-COOH、-COOCH_(3)、-CONH_(2)および-CH_(2)OHの官能基数が、6個以下であるフッ素樹脂材料。
【請求項2】
請求項1に記載のフッ素樹脂材料を含有する高周波伝送用フッ素樹脂材料。
【請求項3】
絶縁被覆層として、 請求項1に記載のフッ素樹脂材料を備え、前記絶縁被覆層が中実の絶縁被覆層である高周波伝送用被覆電線。」

第4 取消理由通知よる取消理由の概要及び特許異議申立理由の概要

1.取消理由通知による取消理由の概要
当審が取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。

(1)取消理由1(明確性)
本件訂正請求前の請求項1?3の記載は、いずれも記載不備であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていないから、本件訂正請求前の請求項1?3に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(2)取消理由2A(新規性)
本件訂正請求前の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、本件訂正請求前の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(3)取消理由3A(進歩性)
本件訂正請求前の請求項1?3に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正請求前の請求項1?3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(4)取消理由2B(新規性)
本件訂正請求前の請求項1に係る発明は、甲3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、本件訂正請求前の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(5)取消理由3B(進歩性)
本件訂正請求前の請求項1?3に係る発明は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正請求前の請求項1?3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2.申立理由の概要
申立人が特許異議申立書で申立てた取消理由の概要は、以下に示すとおりである。

(1)申立理由1A(新規性)
本件訂正請求前の請求項1及び2に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、本件訂正請求前の請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。

(2)申立理由2A(進歩性)
本件訂正請求前の請求項1及び2に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正請求前の請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。

(3)申立理由1B(新規性)
本件訂正請求前の請求項1?3に係る発明は、甲3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、本件訂正請求前の請求項1?3に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。

(4)申立理由2B(進歩性)
本件訂正請求前の請求項1?3に係る発明は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正請求前の請求項1?3に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。

(5)申立理由1C(新規性)
本件訂正請求前の請求項1?3に係る発明は、甲8に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、本件訂正請求前の請求項1?3に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。

(6)申立理由2C(進歩性)
本件訂正請求前の請求項1?3に係る発明は、甲8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正請求前の請求項1?3に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。

(7)申立理由3A(明確性)
本件訂正請求前の請求項1?3の記載は、いずれも記載不備であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていないから、本件訂正請求前の請求項1?3に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(8)申立理由3B(実施可能要件)
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載では、記載不備であり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件訂正請求前の請求項1?3に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(9)申立理由3C(サポート要件)
本件訂正請求前の請求項1?3の記載は、いずれも記載不備であり、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていないから、本件訂正請求前の請求項1?3に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第5 当審の判断

上記適法になされた本件訂正請求により訂正された請求項1?3について、審理を行う。
そして、当審は、当審が令和3年4月19日付けで通知した取消理由1、2A、3A、2B、3B、及び、申立理由1A?1C、2A?2C、3A?3Cのいずれによっても、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。

なお、申立理由1A、2Aと取消理由2A、3Aは、甲1を主引用例とする点で同趣旨であり、申立理由1B、2Bと取消理由2B、3Bとは、甲3を主引用例とする点で同趣旨であるから、以下では、併せて検討を行う。

1.取消理由1(明確性)について

(1)取消理由1の概要
当審が通知した取消理由1は、訂正前の本件発明1における「フッ素樹脂の主鎖炭素数10^(6)個当たりの官能基数が、6個以下である」との特定について、概略、以下のア、イの点をいうものである。

ア.訂正前の請求項1における「主鎖炭素数10^(6)個当たり」の「主鎖炭素」とは、フッ素樹脂の「主鎖」に存在する炭素のみを意味し、フッ素樹脂の側鎖の炭素は含まないと解されるところ、本件明細書の【0027】には、「側鎖末端」にも官能基が存在することが記載されているから、どのようにして、主鎖炭素と側鎖炭素を区別して、主鎖炭素のみを10^(6)個カウントするのかが不明であり、「フッ素樹脂の主鎖炭素数10^(6)個当たりの官能基数」の定義が不明確であるから、本件発明1が、明確であるとはいえない。

イ.訂正前の請求項1における「官能基数」について、本件明細書の【0027】には、「官能基」の具体例が示されているものの、本件発明1で特定される「官能基数」に包含される官能基が明示的に定義されていないから、本件明細書に開示される具体例のうち、どの官能基が上記「官能基数」にカウントされ、どの官能基がカウントされないのかが判然とせず、「官能基数」に包含される官能基の定義が不明確であるから、本件発明1が、明確であるとはいえない。

(2)検討
ア.本件発明1について
(ア)上記(1)アの点について
上記(1)アの点について検討するに、特許権者は、意見書において、以下のように説明している。
「1分子あたりの(当審注:末端基の)官能基数が同じであっても・・・TFE/PAVE共重合体の組成によって、炭素数当たりの官能基数の算出値が異なることになってしまうため、本件発明1の官能基数の測定においては、(パー)フルオロアルキル基(すなわち側鎖構造)中の炭素原子の数の影響を排除できる測定方法を採用しております。
明細書の【0023】および【0084】に記載のとおり、本件発明1の官能基数の測定方法においては、同一の組成を有するフッ素樹脂であって、「完全にフッ素化されて官能基が存在しない」もの、すなわち、R_(1)およびR_(2)が完全にFに置換されたものを作製し、赤外吸収スペクトル(ベーススペクトル)を取得しておきます。同様にして、官能基数を測定すべきTFE/PAVE共重合体の赤外吸収スペクトルも取得します。
次に、2つの赤外吸収スペクトルに現れたポリマー主鎖のC-Fに由来する吸収スペクトルの強度を同一強度に補正した後、2つの赤外吸収スペクトルから差スペクトルを取得することにより、(パー)フルオロアルキル基(すなわち側鎖構造)中のC-Fの吸収スペクトルを排除すると同時に、官能基に由来する吸収スペクトルの強度を測定することができます。そして、ポリマー主鎖のC-F結合の吸収スペクトルの強度に対する、官能基の吸収スペクトルの強度から、「主鎖炭素数10^(6)個当たりの官能基数」を算出することができます。
つまり、本件発明1の官能基数の測定方法を実施することにより得られる官能基数は、「主鎖炭素数10^(6)個当たりの官能基数」であり、このことは測定方法から当業者が把握できることであります。」

上記主張を踏まえると、本件発明1における「フッ素樹脂の主鎖炭素数10^(6)個当たりの・・・の官能基数」について、カウントする官能基数については、【0027】にあるように、主鎖末端、側鎖末端を区別せずに官能基をカウントし、それを「フッ素樹脂の主鎖炭素数10^(6)個当たり」に換算する際には、主鎖の炭素数のみを考慮し、側鎖の炭素数の影響を排除する方法により行っており、本件明細書の【0023】、【0084】に記載の測定方法がそれを体現しているものと理解することができる。
したがって、本件発明1における「主鎖炭素数10^(6)個当たりの・・・官能基数」は、本件明細書の【0023】、【0084】に記載される測定方法により得られる値であることは明らかであり、本件発明1は、明確であるといえる。

(イ)上記(1)イの点について
上記(1)イの点について検討するに、本件訂正請求により、「官能基数」が、「-CF=CF_(2)、-CF_(2)H、-COF、-COOH、-COOCH_(3)、-CONH_(2)および-CH_(2)OHの官能基数」と減縮規定され、「官能基数」に包含される官能基が明確となったから、本件発明1は、明確であるといえる。

イ.本件発明2?3について
本件発明2は、本件発明1を引用し、更に明確に特定された「フッ素樹脂材料」に関するものであり、本件発明3は、本件発明1を引用し、更に明確に特定された「高周波伝送用被覆電線」に関するものであるから、上記アで本件発明1について述べたのと同じ理由により、本件発明2?3は、明確である。

(3)まとめ
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、取消理由1によっては取り消すことはできない。


2.取消理由2A、3A、申立理由1A、2A(甲1を主引用例とする新規性進歩性)について

・請求項 1?3
・引用文献等 甲1、甲8、参1、引用文献A、引用文献B

(1)甲1に記載された事項
申立人が提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲1には、下記の事項が記載されている。

ア「


(第2頁表1)

イ「


(第11頁上部)

ウ「


(第11頁表8)

エ「


(第59頁)

オ「


(第63頁)

カ「



(第81頁)

(2)甲1に記載された発明
甲1の上記(1)アには、「表1 ふっ素樹脂特性一覧」として、「PFA」が記載されていることから、PFAは、ふっ素樹脂であることが理解できる。
そして、甲1の上記(1)カの表45の440HP-Jに着目すると、甲1には、以下の発明が記載されているといえる。

「炭素10^(6)個あたりの不安定末端基数が0個であり、「440HP-J」なる商品名のPFAであるふっ素樹脂」(以下、「甲1発明」という。)

(3)参1に記載された事項
申立人が提出した参1は、申立人が行った実験結果に係るものと認められるところ、以下の事項が記載されている。

ア「



」(第1頁?第2頁)

(4)甲8に記載された事項
申立人が提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲8には、下記の事項が記載されている。

ア「特許請求の範囲
1.少なくとも一つの細長い金属性導電機素及び該導体と接触しており、且つテトラフルオロエチレンと、共重合体の重量を基準として約11.5%よりも少なく、及び共重合体の融点が少なくとも約250℃であるように充分に少ない量のテトラフルオロエチレン以外の少なくとも一種の共重合可能なペルフルオロ化コモノマーとの、少なくとも一種の本質的に熔融加工可能な共重合体を含んで成り、該共重合体は重合後に高温で弗素化されている、細長い絶縁体を含んで成る細長い物品。」

イ「本発明は広範囲の周波数に互って改良された電気絶縁特性を有する絶縁ケーブルに関する。
本発明を要約すれば、本質的にテトラフルオロエチレンと約11.5%以下のコモノマーとの熔融加工可能な共重合体から成り、該共重合体が重合後に高温で弗素化されている、発泡した又は発泡していない絶縁体を有する同軸ケーブルは、広い周波数範囲に互って改善された電気的特性を有していることである。
本発明の技術的背景
フルオロカーボン樹脂は電気絶縁体として、特に誘電損失の小さい(low-1oss)同軸ケーブル及び他の高周波伝送媒体又は回路部品用の絶縁体として使用されている。例えばテトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体はこうした用途に使用されてきた。該共重合体は優れた高温特性及び耐環境性を有しているが、こうした樹脂の電気的性質、特に誘電正接(dissipation factor)は或種のマイクロ波及び無線周波数用として使用されるケーブルについては、要望される域に達する程良好ではない。従って本発明は広範囲の周波数に互って改善された高周波伝送特性を有するケーブルを提供する。」(第2頁左上欄第11行?右上欄第13行)

ウ「本発明の重合体はかようなTFE及びペルフルオロ化コモノマーの共重合体を基材としている。適当なコモノマーは式
R_(F)CF=CF_(2)
上式中、
R_(F)はへキサフルオロプロピレンのような1-5炭素原子を有するペルフルオロアルキル基;アルキル基が1ないし5炭素原子を有する、ペルフルオロ(n-アルキルビニル)エーテル;及びそれらの混合物である、
のペルフルオロアルケンを含んでいる。好適にはn-アルキル基はプロピルである。勿論該重合体の配合物も等しく良好に使用できる。」(第2頁右下欄第19行?第3頁左上欄第11行)

(5)引用文献Aに記載された事項
当審が職権調査で発見した引用文献A(特開2002-265522号公報)には、以下の記載がある。

ア「【0010】PFA樹脂は熱安定性や化学的安定性向上の目的で、通常は分子末端が-CF_(3)や-CONH_(2)のような形で安定化されるが、本発明で使用するPFA樹脂は、末端基の安定化処理を行っていないPFA樹脂が使用される。
ここで末端基の安定化処理を行っていないPFA樹脂とは、末端が-CF=CF_(2)、-CH_(2)OH、-COF、-COOCH_(3)、-COOHのような構造を残存しているものをいう。」

イ「【0018】・・・
(4)末端-CH_(2)OH基の数の測定
PFA樹脂の厚さ約200μmのプレスフィルムを用いて、FT-IRにより赤外吸収スペクトルを測定した。末端基の定量は、試料スペクトルと完全フッ素化された標準試料との差スペクトルにより算出した。炭素数106個当たりの末端基を計算するための補正係数をモデル化合物から決定し、補正係数を差スペクトルの吸収ピークの高さに乗ずることによって対象とするPFAの末端基数を算出した。使用した吸収ピークと補正係数は次の通りである:
【0019】
【表1】



ウ「【0021】・・・
PFA樹脂として・・・「テフロン 440-HP」〔三井デュポン・フロロ・ケミカル社製商品;末端基が安定化されたPFA樹脂;炭素数10^(6)個当たりの-CH_(2)OH末端基の数=0〕」

(6)引用文献Bに記載された事項
当審が職権調査で発見した引用文献B(特開2016-124913号公報)には、以下の記載がある。

ア「【0031】
半導体用途においては、フッ素樹脂に由来する汚染物質を削減するため、予めフッ素化処理されたPFAを用いることが好ましい。PFAをフッ素化する方法としては、従来公知の方法を採用することができる。例えば、特公平4-83号公報、特公平7-30134号公報、特開平4-20507号公報に記載されたフッ素化法を挙げることができる。」

イ「【0054】
・・・
(4)不安定末端基の個数
特公平4-83に従い、不安定末端基の個数を測定した。
【0055】
B.原料
(1)PFA(1)
三井・デュポンフロロケミカル株式会社製PFA[テトラフルオロエチレン/パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体、MFR2g/10分、融点320℃、不安定末端基(-CH_(2)OH末端基、-CONH_(2)末端基、-COF末端基)が炭素数106個あたり6個未満]。
(2)PFA(2)
三井・デュポンフロロケミカル株式会社製PFA[テトラフルオロエチレン/パーフルオロプロピルビニルエーテル共重合体、MFR 2g/10分、融点310℃、不安定末端基(-CH_(2)OH末端基、-CONH_(2)末端基、-COF末端基)が炭素数106個あたり6個未満]。」
(下線は当審で付与した。【0054】に記載される特公平4-83の記載からみて、下線部は、10^(6)の誤記であるといえる。)

(7)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1の上記(1)イには、「PFAは、PTFEと同等の性能を持つ溶融タイプの樹脂である」と記載されていることから、PFAは溶融加工性であるといえ、甲1発明は、本件発明1に係る「溶融加工性のフッ素樹脂」に相当する。
また、本件明細書の【0035】には、「テトラフルオロエチレン単位(TFE単位)と(パー)フルオロ(アルキルビニルエーテル)単位(PAVE単位)とを含有する共重合体(以下、TFE/PAVE共重合体(または、PFA)という)」(下線は当審で付与した)と記載されているように、PFAは、「テトラフルオロエチレン/(パー)フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体」を示すことは技術常識であるから、甲1発明の「PFA」は、本件発明1に係る「テトラフルオロエチレン/(パー)フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体」に相当する。
そして、本件発明1の「フッ素樹脂材料」は、フッ素樹脂の他に「必要に応じて他の成分を含んでいてもよい」(【0057】)ものであり、フッ素樹脂自体であってもよいから、甲1発明の「ふっ素樹脂」は、本件発明1の「フッ素樹脂材料」に相当するといえる。

そうすると、本件発明1と甲1発明は、
「溶融加工性のフッ素樹脂を含有するフッ素樹脂材料であって、前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン/(パー)フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体であるフッ素樹脂材料」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1A:本件発明1では、該フッ素樹脂材料が「12GHzにおける比誘電率が2.1以下であり、誘電正接が0.00020以下である」のに対し、甲1発明では、これらの値が特定されていない点。

相違点2A:本件発明1では、該フッ素樹脂の「主鎖炭素数10^(6)個当たりの-CF=CF_(2)、-CF_(2)H、-COF、-COOH、-COOCH_(3)、-CONH_(2)および-CH_(2)OHの官能基数が、6個以下である」のに対し、甲1発明では、「炭素10^(6)個あたりの不安定末端基数が0個」である点。

イ 検討
上記相違点1Aについて検討する。
参1には、「440HP-J」を350℃で20分間保持して溶融して加熱・加圧処理し、その後、プレス機で加圧して成形した測定用試料を用い、シンセサイズドスイーパー8340B(YHP社製)、ネットワークアナライザー8510B(YHP社製)及び円筒空洞共振器を用いる空洞共振器法により、室温(23℃±2℃/50±5%RH)で、12GHz近傍での比誘電率、誘電正接を2カ所で測定し、比誘電率が2.036及び2.038であり、誘電正接が0.000278及び0.000287であったことが記載されている。そして、参1に記載された実験結果は、本件明細書に記載された測定条件(【0020】及び【0089】)と略同1条件で測定されたものといえる。
そうすると、甲1発明の「440HP-J」は、本件発明1の「12GHzにおける・・・誘電正接が0.00020以下である」との点を満足していないから、相違点1Aは、実質的な相違点であり、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

次に、容易想到性について検討する。
甲1には、甲1発明の12GHzでの誘電正接を0.00020以下に低減することは記載されていないし、甲1発明の誘電正接を0.00020以下にして使用することが周知の事項ではないから、甲1発明に、甲1に記載された事項又は周知技術を組み合わせても、相違点1Aに至ることができるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明1の効果について
本件明細書の【0012】には、溶融加工により製造することが可能であり、高周波電気特性にも優れたフッ素樹脂材料を提供することができるという効果が記載され、高周波電気特性の指標として、本件発明1には、「12GHzにおける比誘電率が2.1以下であり、誘電正接が0.00020以下」であることが特定され、本件明細書の実施例1?5、7、8において具体的なデータとともに上記効果が確認されている。
これに対し、甲1および他の甲号証をみても、12GHzにおける誘電正接が0.00020以下との点を予測できるとはいえないから、本件発明1の効果は、当業者が予測し得ない効果である。

エ 申立人の主張
(ア)主張の内容
申立人は令和3年8月10日付け意見書において、概略、以下のように主張している。

甲1における「440HP-J」はテフロン○R PFAの一つの銘柄であり、甲1の第63頁の「・・・ふっ素樹脂テフロン○Rの誘電正接は、他に類を見ないほど小さく電気的に安定している・・・」という記載や甲1の第63頁の図42は、「440HP-J」にも当てはまるものであり、甲1の図42からふっ素化PFAの12GHzにおける誘電正接が0.00020以下であることを読み取ることは困難であるとしても、その値は0.00020に近似していることは明らかである。
確かに、参1の実験結果から「440HP-J」の誘電正接が0.00020よりも大きい値であることが示されているとしても、これは甲1に記載されたテフロン○R PFAの一つの銘柄に過ぎず、甲1に記載された不安定末端基数が0の他の銘柄の誘電正接がすべて0.00020より大きい値を示すという根拠にはならないのであり、依然として訂正後の本件発明1は本件出願時において存在したフッ素樹脂材料をその権利範囲に含んでしまうおそれがあると考えられる。
従って、訂正後の本件発明1は、依然として甲1に記載の発明と同一であり、また仮にこれらの間に相違点があったとしても、その相違は微差であり、訂正後の本件発明1は甲1に基いて当業者が容易に発明できたものである。

(イ)検討
甲1の図42(参4に拡大図があり。)が甲1発明とどのような関係にあるのかは不明であり、甲1の図42が甲1発明のものであるともいえないから、甲1の図42を根拠に、訂正後の本件発明1は、甲1に記載の発明と同一であるとはいえない。
また、甲1の図42が12GHzにおいて0.00020以下であるか否かは不明であるから、甲1の図42をもってしても、甲1発明の誘電正接を0.00020以下とすることは動機付けられないから、訂正後の本件発明1は、甲1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、申立人の主張は採用できない。

オ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
また、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(8)本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1を引用するものであるが、上記(7)のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明2、3も同様に、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(9)甲1を主引用例とする取消理由2A、3A、申立理由1A、2Aに係る検討のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?3は、甲1に記載された発明ではないし、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。


3.取消理由2B、3B、申立理由1B、2B(甲3を主引用例とする新規性進歩性)について

・請求項 1?3
・引用文献等 甲3、甲1、甲5、甲8、引用文献A、引用文献B

(1)甲3に記載された事項
申立人が提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲3には、下記の事項が記載されている。日本語訳は、当審により付した(以下、同様。)。

ア「

」(表紙)
(当審による訳)
「Teflon^(TM) PFA HP Plus フルオロポリマー樹脂
物性ハンドブック
PFA 940HP Plus
PFA 945HP Plus
PFA 950HP Plus」

イ「

」(第4頁)
(当審による訳)
「表1.Teflon^(TM) PFA HP Plus フルオロポリマー樹脂の典型的な物理的、機械的物性
・・・
PFA 940HP Plus
・・・
融点 D-4591
摂氏(華氏)
290(554)」

ウ「

」(第9頁)
(当審による訳)
「電気的特性
電気的な利用は、ケーブルジャケット・・・の数多くのケーブル構造のための押出コーティングを含んでいる。・・・Teflon^(TM) PFA HP Plusフルオロポリマー樹脂は、電気的なスイッチ部品、コネクターインサート、絶縁ブッシングやスタンドオフ型の絶縁体に射出成形される。」
「図8 Teflon^(TM) PFA HP Plusフルオロポリマー樹脂の様々な周波数での誘電率(ASTM D-150とD-2520による)」
「図9 Teflon^(TM) PFA HP Plusフルオロポリマー樹脂の様々な周波数での誘電正接(ASTM D-150とD-2520による)」

(2)甲3に記載された発明
甲3には、上記(1)イには、PFA940HP Plusの融点が290℃であることが記載されているから、以下の発明が記載されているといえる。

「PFA 940HP Plusであり、融点が290℃であるフルオロポリマー」(以下、「甲3発明」という。)

(3)甲5に記載された事項
申立人が提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲5には、下記の事項が記載されている。

ア「

Product Information
・・・
The high purity and fully fluorinated molecule end groups of Teflon^(○R) PFA 940HP Plus ・・・」
(当審による訳)
「DuPontTM Teflon^(○R) PFA 940HP Plus
成形用、押出用樹脂

製品情報
・・・
Teflon^(○R) PFA 940HP Plusの高純度で完全にフッ素化された分子末端基・・・」

(4)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲3発明を対比する。
甲3発明におけるフルオロポリマーの融点が290℃であることから、溶融加工性を有するといえるから、甲3発明における「フルオロポリマー」は、本件発明1の「溶融加工性のフッ素樹脂」に相当する。
また、上記2(7)アで述べたのと同様に、甲3発明の「PFA」は、本件発明1に係る「テトラフルオロエチレン/(パー)フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体」に相当する。
そして、本件発明1の「フッ素樹脂材料」は、フッ素樹脂の他に「必要に応じて他の成分を含んでいてもよい」(【0057】)ものであり、フッ素樹脂自体であってもよいから、甲3発明の「フルオロポリマー」は、本件発明1の「フッ素樹脂材料」に相当するといえる。

本件発明1と甲3発明を対比すると、以下の点で一致し、以下の点で相違している。

一致点:「溶融加工性のフッ素樹脂を含有するフッ素樹脂材料であって、前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン/(パー)フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体であるフッ素樹脂材料」

相違点1B:本件発明1では、該フッ素樹脂材料が「12GHzにおける比誘電率が2.1以下であり、誘電正接が0.00020以下である」のに対し、甲3発明では、これらの値が特定されていない点。

相違点2B:本件発明1では、該フッ素樹脂の「主鎖炭素数10^(6)個当たりの-CF=CF_(2)、-CF_(2)H、-COF、-COOH、-COOCH_(3)、-CONH_(2)および-CH_(2)OHの官能基数が、6個以下である」のに対し、甲3発明では、当該値が特定されていない点。

イ 検討
上記相違点1Bについて検討する。
甲3の上記(1)ウで摘記した図8、図9には、PFA HP Plusのフッ素ポリマーの誘電率と誘電正接が記載され、10^(10)Hzでは誘電率2.04を下回ること、誘電正接10^(10)Hzでは0.00020と0.00030の間であることが示されている。ここで、図8には、誘電率は、ASTM D-150、D-2520によって測定することが記載され、ASTM D-2520は比誘電率の測定方法を示しているから、図8の縦軸である誘電率とは、比誘電率を示しているといえる。
また、これらの図8、図9について測定されているポリマーの品番が明記されていないものの、甲3が「PFA 940HP Plus」、「PFA 945HP Plus」、「PFA 950HP Plus」の物性ハンドブックであることから(上記(1)ア)、これらの品番のポリマーに共通する性質を示しているといえ、甲3発明における「PFA 940HP Plus」も図8、図9に示された物性を有しているといえる。
ここで、本件発明1における比誘電率、誘電正接は、12GHz、すなわち、1.2×10^(10)Hzである場合の値であるから、10^(10)Hzでの値と同程度の値であるといえる。
そうすると、甲3発明における「PFA 940HP Plus」は、甲3の図8、図9に示された10^(10)Hzでの比誘電率、誘電正接の値からみて、本件発明1における「12GHzにおける比誘電率が2.1以下」は満足しているといえるものの、「誘電正接が0.00020以下」を満足しているとはいえないから、相違点1Bは、実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえない。

次に容易想到性について検討する。
甲3及び他の甲号証を見ても、12GHzにおける誘電正接を0.00020以下とすることは記載されておらず、また、甲3発明の「PFA 940HP Plus」という具体的商品について、当業者がその構成を変更する動機付けも記載されていないから、甲3発明において、誘電正接を0.00020以下とすることが動機付けられない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明1の効果について
本件明細書の【0012】には、溶融加工により製造することが可能であり、高周波電気特性にも優れたフッ素樹脂材料を提供することができるという効果が記載され、高周波電気特性の指標として、本件発明1には、「12GHzにおける比誘電率が2.1以下であり、誘電正接が0.00020以下」であることが特定され、本件明細書の実施例1?5、7、8において具体的なデータとともに上記効果が確認されている。
これに対し、甲3及び他の甲号証をみても、12GHzにおける誘電正接が0.00020以下との点を予測できるとはいえないから、本件発明1の効果は、当業者が予測し得ない効果である。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえない。
また、本件発明1は、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1を引用するものであるが、上記(4)のとおり、本件発明1は、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明2、3も同様に、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(6)甲3を主引用例とする取消理由2B、3B、申立理由1B、2Bに係る検討のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?3は、甲3に記載された発明ではないし、また、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 取消理由通知において採用しなかった申立理由

申立理由1C、2C、3A?3Cについて、以下に検討する。

1.申立理由1C、2C(甲8を主引用例とする新規性進歩性)について

(1)甲8に記載された発明
甲8の実施例3に着目すると、以下の発明が記載されている。

「4.0重量%のHFP及び1.25重量%のPPVEとTFEの共重合体を弗素化した共重合体であって、10GHzで2.70×10^(-4)の誘電正接を有する共重合体」(以下、「甲8発明」という。)

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲8発明を対比する。
甲8の請求項1には、「本質的に熔融加工可能な共重合体」と記載されているから、甲8発明における「共重合体」は、熔融加工可能であるといえ、本件発明1における「溶融加工性のフッ素樹脂」に相当する。
また、甲8発明は、HFP、PPVE、TFEの共重合体であり、本件明細書の【0044】には、「TFE/HFP共重合体は、さらに、(パー)フルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)単位を含有することができる」と記載されているから、甲8発明における「共重合体」は、本件発明1における「テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲8発明は、以下の点で一致し、以下の点で相違している。

一致点:「溶融加工性のフッ素樹脂を含有するフッ素樹脂材料であって、前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体であるフッ素樹脂材料」

相違点1C:本件発明1では、該フッ素樹脂材料が「12GHzにおける比誘電率が2.1以下であり、誘電正接が0.00020以下である」のに対し、甲8発明では、10GHzで2.70×10^(-4)の誘電正接であり、12GHzでの比誘電率、誘電正接が特定されていない点。

相違点2C:本件発明1では、該フッ素樹脂の「主鎖炭素数10^(6)個当たりの-CF=CF_(2)、-CF_(2)H、-COF、-COOH、-COOCH_(3)、-CONH_(2)および-CH_(2)OHの官能基数が、6個以下である」のに対し、甲8発明では、当該特定がない点。

イ 検討
上記相違点1Cについて検討する。
甲8発明において、10GHzでの誘電正接が2.70×10^(-4)であることからして、12GHzでの誘電正接が0.00020以下となることを示す根拠はなく、また、これが本件優先日時点の技術常識でもないから、相違点1Cは実質的な相違点であり、本件発明1は、甲8に記載された発明であるとはいえない。

次に容易想到性について検討するに、甲8には、12GHzにおける誘電正接を0.00020以下とすることが記載も示唆もされていない。
また、他の甲号証にも、12GHzにおける誘電正接を0.00020以下とすることが記載も示唆もされていない。
してみると、甲8発明において、12GHzにおける誘電正接を0.00020以下とすることを当業者が容易に想到することができたとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明の効果について
本件明細書の【0012】には、溶融加工により製造することが可能であり、高周波電気特性にも優れたフッ素樹脂材料を提供することができるという効果が記載され、高周波電気特性の指標として、本件発明1には、「12GHzにおける比誘電率が2.1以下であり、誘電正接が0.00020以下」であることが特定され、本件明細書の実施例1?5、7、8において具体的なデータとともに上記効果が確認されている。
これに対し、甲8および他の甲号証をみても、12GHzにおける誘電正接が0.00020以下との点を予測できるとはいえないから、本件発明1の効果は、当業者が予測し得ない効果である。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲8に記載された発明であるとはいえない。
また、本件発明1は、甲8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1を引用するものであるが、上記(2)のとおり、本件発明1は、甲8に記載された発明ではなく、また、甲8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明2、3も同様に、甲8に記載された発明ではなく、また、甲8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)甲8を主引用例とする申立理由1C、2Cに係る検討のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?3は、甲8に記載された発明ではなく、また、甲8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。


2.申立理由3A?3C(明確性実施可能要件、サポート要件)について

(1)申立理由3A?3Cの内容
申立人は、以下のように異議申立書で述べている。

「本件特許明細書の段落【0016】には、以下の記載がある。
「・・・溶融加工性のフッ素樹脂に対して、適切な照射条件で放射線照を射すると、特異な比誘電率および誘電正接を有するフッ素樹脂材料が得られること、あわせて、このような比誘電率および誘電正接を有するフッ素樹脂材料を用いると、従来の溶融加工性のフッ素樹脂に比べて、高周波信号の減衰率が大きく低咸することが、見出された。本開示のフッ素樹脂材料は、この知見に基づき完成された。」
その一方、本件請求項1には、本件特許発明1であるフッ素樹脂材料を構成するフッ素樹脂として、「テトラフルオロエチレン/(パー)フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、および、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1 種の共重合体」が規定されているだけであり、かかるフッ素樹脂が放射線照射されたものであるか否かについては記載がない。
しかしながら、高分子材料に放射線照射を行った時、橋架けや崩壊又は切断等、何らかの物理的又は化学的変化が生じ、その結果、物理性的質や機械的性質が変化すると考えられ、もはや元の高分子材料と同じ物質ではないと考えられる。事実、本件特許明細書の比較例2と実施例1?5、比較例4と実施例6?7、比較例6と実施例8、を対比することから明らかなように、放射線照射により破断強度や強度保持率が著顕に低下している。更に、放射線照射されていない比較例2及び比較例4は、本件請求項1の要件(C)を満たしていないことが分かる。
また本件特許明細書には、本件請求項1で規定するフッ素樹脂材料の製造方法として、放射線照射による方法のみが記載され、放射線照射を行うことなく、前記(A)?(D)を満足するフッ素樹脂材料を製造する方法は一切記載されていない。これに対して、本件特許発明1は、放射線照射の有無を問わず、前述した(A)?(D)を満足するすべてのフッ素樹脂材料を含むものであるから、本件請求項1は、発明の詳細な説明に記載されていないものを含んでいるか、或いは本件明細書の発明の詳細な説明には、放射線照射を行っていないフッ素樹脂材料について、当業者が実施できる程度に記載されていない。
そうすると、本件請求項1では、放射線照射後の物質については何ら規定されていないのであるから、本件請求項1は、特許を受けようとする発明が明確に記載されていないか、或いは特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではないので、特許法第36条第6項第1号又は2号、或いは特許法第36条第4項第1号の要件を満たしていない。」

(2)申立理由3A(明確性)についての検討
ア 特許法第36条第6項第2号の考え方について
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきことはいうまでもない、とされている。(平成21年(行ケ)第10434号判決参照。)
以下、この観点に従って検討する。

イ 検討
本件発明1は「溶融加工性のフッ素樹脂を含有し、12GHzにおける比誘電率が2.1以下であり、誘電正接が0.00020以下であるフッ素樹脂材料であって、前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン/(パー)フルオロ(アルキルビニルエーテル)共菫合体、および、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体であり、前記フッ素樹脂の主鎖炭素数10^(6)個当たりの-CF=CF_(2)、-CF_(2)H、-COF、-COOH、-COOCH_(3)、-CONH_(2)および-CH_(2)OHの官能基数が、6個以下であるフッ素樹脂材料」を発明特定事項としているところ、【0014】には、「溶融加工性とは、押出機および射出成形機などの従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する」と記載され、「12GHzにおける比誘電率」及び「誘電正接」について、【0089】にその測定方法が記載されており、「官能基数」についても、【0022】?【0027】、【0084】?【0087】にその測定方法が記載されているから、本件発明1における発明特定事項のそれぞれは明確であるといえる。

ウ 申立人の主張の検討
申立人は、「高分子材料に放射線照射を行った時、橋架けや崩壊又は切断等、何らかの物理的又は化学的変化が生じ、その結果、物理性的質や機械的性質が変化すると考えられ、もはや元の高分子材料と同じ物質ではないと考えられ」、「本件請求項1では、放射線照射後の物質については何ら規定されていないのであるから、本件請求項1は、特許を受けようとする発明が明確に記載されていない」と主張している。
しかしながら、本件明細書をみても、放射線処理が、「テトラフルオロエチレン/(パー)フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、および、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体」である「フッ素樹脂」を含有する「フッ素樹脂材料」ではなくなるほどの物理的、化学的変化を与えるものであるとはいえし、また、もはや元の高分子と同じ物質ではないと考えられる具体的な根拠が示されているとはいえないから、放射線照射後の物質が本件発明1に特定されていないから、特許を受けようとする発明が明確に記載されていないとする申立人の主張には理由がない。

(3)申立理由3B(実施可能要件)についての検討
ア 特許法第36条第4項第1号の考え方について
一般に「方法の発明における発明の実施とは,その方法の使用をすることをいい(特許法2条3項2号),物の発明における発明の実施とは,その物を生産,使用等をすることをいうから(同項1号),方法の発明については,明細書にその方法を使用できるような記載が,物の発明については,その物を製造する方法についての具体的な記載が,それぞれ必要があるが,そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその方法を使用し,又はその物を製造することができるのであれば,上記の実施可能要件を満たすということができる。」とされている〔平成22年(行ケ)10348号判決参照。〕。
以下、この観点に立って検討する。

イ 検討
本件発明1における発明特定事項を満足するフッ素樹脂について、【0016】には、溶融加工性のフッ素樹脂に対して、適切な照射条件で放射線を照射すると、特異な比誘電率および誘電正接を有するフッ素樹脂材料が得られること、【0029】には、フッ素化処理することによって、特定の範囲内の官能基数を有するフッ素樹脂を得ることができることが記載され、【0058】?【0065】には、放射線照射の方法や条件が、【0030】?【0033】には、フッ素化処理の方法や条件が記載され、本件明細書の実施例には、フッ素化処理と放射線照射を行う具体的な製造方法とともに、本件発明1における発明特定事項を満足するフッ素樹脂が具体的なデータとともに開示されている。
してみれば、発明の詳細は説明には、本件発明1における「フッ素樹脂材料」を製造することができるように記載されているといえ、実施可能要件を満たすといえる。

ウ 申立人の主張の検討
申立人は、本件特許明細書には、本件請求項1で規定するフッ素樹脂材料の製造方法として、放射線照射による方法のみが記載され、放射線照射を行うことなく、前記(A)?(D)を満足するフッ素樹脂材料を製造する方法は一切記載されておらず、放射線照射を行っていないフッ素樹脂材料について、当業者が実施できる程度に記載されていないと主張しているものの、具体的に、放射線照射を用いないと誘電正接が0.00020以下という物性が得られないという合理的な根拠を示しているわけではなく(むしろ令和3年8月10日付け意見書の第3頁第1行?第2行では、「訂正後の本件発明1は本件出願時において存在したフッ素樹脂材料をその権利範囲に含んでしまうおそれがあると考えられる」と主張している。)、申立人の主張に理由がない。

(4)申立理由3C(サポート要件)についての検討
ア 特許法第36条第6項第1号の考え方について
一般に「特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、明細書のサポート要件の存在は、特許出願人・・・が証明責任を負うと解するのが相当である。」とされている。(平成17年(行ケ)10042号判決参照。)
以下、この観点に立って検討する。

イ 本件発明の課題について
本件発明の課題は【0006】の記載からみて、「溶融加工により製造することが可能であり、高周波電気特性にも優れたフッ素樹脂材料を提供すること」である。

ウ 検討
本件発明1は、「溶融加工性のフッ素樹脂を含有」することを発明特定事項として有し、本件明細書の【0014】には、「溶融加工性とは、押出機および射出成形機などの従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融加工することが可能であることを意味する」と記載されているから、この特定事項を有すれば、「溶融加工により製造することが可能」との課題を解決できるものと理解することができる。

また、「高周波電気特性」について、本件明細書の【0003】には、従来技術として、12GHzにおける比誘電率が2.2以下で誘電正接が1.90×10^(-4)以下の成形品を与えるテトラフルオロエチレン系樹脂成形用材料が挙げられており、これが高周波電気特性に優れると記載されていることから、この程度の値であれば、高周波電気特性に優れるといえる。
また、【0016】には、「このような(当審注:本件発明1で特定される)比誘電率および誘電正接を有するフッ素樹脂材料を用いると、従来の溶融加工性のフッ素樹脂に比べて、高周波信号の減衰率が大きく低減することが、見出された」ことが記載され、【0069】?【0070】には、高周波信号の誘電損失αは、


(kは定数、ε_(r)は比誘電率、tanδは誘電正接、fは信号周波数、Aは誘電損失寄与)
で表されることが記載され、12GHzでの比誘電率ε_(r)、誘電正接tanδがいずれも小さい値であれば、高周波信号の誘電損失αは小さくなり、高周波の伝送損失が極めて小さい高周波伝送用製品の実現が期待できることが記載されているといえる。
そうすると、本件発明1における「12GHzにおける比誘電率が2.1以下であり、誘電正接が0.00020以下」との物性を満たす「フッ素樹脂材料」であれば、高周波電気特性にも優れるという課題を解決することができると理解することができる。

そして、本件明細書の実施例では、「溶融加工性のフッ素樹脂を含有し、12GHzにおける比誘電率が2.1以下であり、誘電正接が0.00020以下」との条件を満足するフッ素樹脂材料が具体的に製造され、誘電損失寄与Aが小さくなることが具体的なデータとともに示されている。
そうすると、本件発明1?6は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。

したがって、本件発明1?6は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、また、当業者が、上記課題を解決できると認識できる範囲のものと認められる。

エ 申立人の主張の検討
申立人は、本件特許発明1は、放射線照射の有無を問わず、前述した(A)?(D)を満足するすべてのフッ素樹脂材料を含むものであるから、本件請求項1は、発明の詳細な説明に記載されていないものを含んでいると主張しているものの、上記ウで述べたとおり、本件発明1に包含されるフッ素樹脂について、少なくとも具体例が記載され、また、上記のとおり、本件発明1における条件を満たせば課題を解決できると理解できるから、サポート要件は満たすといえ、申立人の主張は理由がない。

(5)申立理由3A?3Cに係る検討のまとめ
以上のとおりであるから、申立理由3A?3Cによっては、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできない

第7 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融加工性のフッ素樹脂を含有し、12GHzにおける比誘電率が2.1以下であり、誘電正接が0.00020以下であるフッ素樹脂材料であって、前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン/(パー)フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、および、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体であり、前記フッ素樹脂の主鎖炭素数10^(6)個当たりの-CF=CF_(2)、-CF_(2)H、-COF、-COOH、-COOCH_(3)、-CONH_(2)および-CH_(2)OHの官能基数が、6個以下であるフッ素樹脂材料。
【請求項2】
請求項1に記載のフッ素樹脂材料を含有する高周波伝送用フッ素樹脂材料。
【請求項3】
絶縁被覆層として、請求項1に記載のフッ素樹脂材料を備え、前記絶縁被覆層が中実の絶縁被覆層である高周波伝送用被覆電線。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-09-30 
出願番号 特願2019-23272(P2019-23272)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C08F)
P 1 651・ 537- YAA (C08F)
P 1 651・ 121- YAA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 飛彈 浩一  
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 橋本 栄和
佐藤 玲奈
登録日 2020-05-25 
登録番号 特許第6708275号(P6708275)
権利者 ダイキン工業株式会社
発明の名称 フッ素樹脂材料、高周波伝送用フッ素樹脂材料および高周波伝送用被覆電線  
代理人 とこしえ特許業務法人  
代理人 小野 尚純  
代理人 奥貫 佐知子  
代理人 とこしえ特許業務法人  

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