• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H04N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H04N
管理番号 1379840
異議申立番号 異議2020-700911  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-27 
確定日 2021-10-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6700341号発明「データストリームにおいて符号化された変換係数ブロックを復号する装置および方法、ならびにビデオに関連するデータを記憶するための非一時コンピュータ可読媒体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6700341号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第6700341号の請求項1から21に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6700341号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?21に係る特許についての出願は、2011年(平成23年)4月11日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2010年4月13日 欧州特許庁、2010年4月13日 欧州特許庁)を国際出願日とする特願2013-504229号の一部を平成26年1月15日に出願した特願2014-005353号の一部を平成27年4月28日に出願した特願2015-092239号の一部を平成29年2月17日に出願した特願2017-027407号の一部を平成30年7月11日に特願2018-131150号として出願したものであって、令和2年5月7日にその特許権の設定登録(特許公報発行日 令和2年5月27日)がされ、令和2年11月27日に特許異議申立人ユニファイド パテンツ エルエルシーにより請求項1?21に対して特許異議の申立てがされたものである。
その後、令和3年4月28日付けで当審において取消理由通知がなされ、これに対して令和3年7月9日に特許権者より意見書が提出されるとともに、訂正請求がなされたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による本件特許の訂正(以下、「本件訂正」という。)は、以下のとおりである。
(なお、下線は、訂正個所を示す。)

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項17において、
「コンテキスト適応エントロピー復号を介してシンタックス要素が、前記データストリームから抽出するステップであって」と記載されているのを、
「コンテキスト適応エントロピー復号を介してシンタックス要素を、前記データストリームから抽出するステップであって」に訂正する。
請求項17を引用する請求項18?21についても同様である。

2 一群の請求項について
訂正前の請求項17?21について、請求項18?21は、請求項17を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項17に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項17?21に対応する訂正後の請求項17?21は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

3 訂正の適否について
ア 訂正事項1
a 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項17の記載において、「シンタックス要素が」何かを「データストリームから抽出する」という事項が指し示す技術内容が理解できず、発明として不明確であったものを、「シンタックス要素を、前記データストリームから抽出する」と訂正することにより、当該事項が指し示す技術内容を明確にしたものである。
よって、当該訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項但し書き第3号に規定する『明瞭でない記載の釈明』を目的とするものである。

b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aの理由から明らかなように、訂正事項1に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明であって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1に係る訂正は、本件特許請求の範囲の請求項1の「コンテキスト適応エントロピー復号を介して前記データストリームからシンタックス要素を抽出する」という記載や、本件明細書の発明の詳細な説明のうち、少なくとも【0044】の「データストリームからのそのような有意マップを復号するための、またはデータストリームからの対応する有意変換係数値に沿う有意マップを復号するための装置は、図7に示すように実施され、上述のエントロピーデコーダ、すなわちデコーダ50およびエントロピーデコーダ150の各々は、図7に示す装置を構成する。」、【0045】の「図7の装置は、マップ/係数エントロピーデコーダ250・・・を備える。」及び【0070】の「デコーダ250は、・・・有意マップシンタックス要素の各々について、・・・コンテキスト適応的にエントロピー復号化を行うことによって、有意マップシンタックス要素をシーケンシャルに抽出するように構成される。」という記載を根拠とするものであるから、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

4 まとめ
したがって、本件訂正の訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するので、本件訂正請求にかかる訂正を認める。

第3 本件訂正発明
訂正後の本件特許の請求項1?21に係る発明(以下「本件訂正発明1?21」等という。また、本件訂正発明1?21を総称して「本件訂正発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?21に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(符号A1?D1-2、A9?D9-2、A17?D17-2、E3は合議体が付した。以下、構成A1?D17-2、構成E3等という。)

(本件訂正発明1)
【請求項1】
A1 データストリームにおいて符号化された変換係数ブロックを復号するための装置であって、
B1 コンテキスト適応エントロピー復号を介して前記データストリームからシンタックス要素を抽出するように構成されたデコーダであって、
B1-1 各々の前記シンタックス要素が、前記変換係数ブロック内の対応する位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか、および前記変換係数ブロック内の前記有意変換係数の値を示す、
B1 前記デコーダと、
C1 複数の走査順に基づいて決定される走査順で各々の前記シンタックス要素を前記変換係数ブロック内のそれぞれの位置に関連付けるように構成されたアソシエータと
を備え、
B1 前記デコーダが、
D1-1 前記変換係数ブロックのサイズ、前記変換係数ブロック内の前記シンタックス要素の位置、および前記シンタックス要素の前記位置の近隣から以前に抽出された前のシンタックス要素に関する情報に少なくとも基づいて
D1-2 各々の前記シンタックス要素について選択されたコンテキストを、前記シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー復号において、使用するように構成される、
A1 装置。

(本件訂正発明2)
【請求項2】
前記近隣から以前に抽出された前記前のシンタックス要素に関する前記情報が、前記前のシンタックス要素の値に関連する、請求項1に記載の装置。

(本件訂正発明3)
【請求項3】
E3 前記近隣から以前に抽出された前記前のシンタックス要素に関する前記情報が、前のシンタックス要素が有意変換係数の存在を示す位置の数に関連する、
A1 請求項1に記載の装置。

(本件訂正発明4)
【請求項4】
各々の前記シンタックス要素の前記コンテキストが、前記走査順にさらに基づいて選択される、請求項1に記載の装置。

(本件訂正発明5)
【請求項5】
現在のシンタックス要素の前記近隣が、前記現在のシンタックス要素の前記位置に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項1に記載の装置。

(本件訂正発明6)
【請求項6】
前記位置の数が、可能性のあるコンテキストインデックスの組を指すコンテキストインデックスに対応する、請求項3に記載の装置。

(本件訂正発明7)
【請求項7】
前記近隣が、前記シンタックス要素の前記位置に横方向に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項6に記載の装置。

(本件訂正発明8)
【請求項8】
前記近隣が、前記シンタックス要素の前記位置に縦方向に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項5に記載の装置。

(本件訂正発明9)
【請求項9】
A9 変換係数ブロックをデータストリームに符号化するための装置であって、
A9 前記装置は、
B9 コンテキスト適応エントロピー符号化を介してシンタックス要素を前記データストリームに符号化するように構成され、
B9-1 各々の前記シンタックス要素が、前記変換係数ブロック内の対応する位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか、および前記変換係数ブロック内の前記有意変換係数の値に関する情報を示し、
A9 前記装置が、
C9 複数の走査順の中から決定された走査順で前記シンタックス要素を前記データストリームに符号化するように構成され、
A9 前記装置が、
D9-1 前記変換係数ブロックのサイズ、前記変換係数ブロック内の前記シンタックス要素の位置、および前記シンタックス要素の前記位置の近隣において以前に符号化された前のシンタックス要素に関する情報に少なくとも基づいて
D9-2 各々の前記シンタックス要素について選択されたコンテキストを、各々の前記シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー符号化において、使用するように構成される、
A9 装置。

(本件訂正発明10)
【請求項10】
前記近隣から以前に符号化された前記前のシンタックス要素に関する前記情報が、前記前のシンタックス要素の値に関連する、請求項9に記載の装置。

(本件訂正発明11)
【請求項11】
前記近隣から以前に符号化された前記前のシンタックス要素に関する前記情報が、前のシンタックス要素が有意変換係数の存在を示す位置の数に関連する、請求項9に記載の装置。

(本件訂正発明12)
【請求項12】
各々の前記シンタックス要素の前記コンテキストが、前記走査順にさらに基づいて選択される、請求項9に記載の装置。

(本件訂正発明13)
【請求項13】
現在のシンタックス要素の前記近隣が、前記現在のシンタックス要素の前記位置に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項9に記載の装置。

(本件訂正発明14)
【請求項14】
前記位置の数が、可能性のあるコンテキストインデックスの組を指すコンテキストインデックスに対応する、請求項11に記載の装置。

(本件訂正発明15)
【請求項15】
前記近隣が、前記シンタックス要素の前記位置に横方向に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項13に記載の装置。

(本件訂正発明16)
【請求項16】
前記近隣が、前記シンタックス要素の前記位置に縦方向に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項13に記載の装置。

(本件訂正発明17)
【請求項17】
A17 データストリームにおいて符号化された変換係数ブロックを復号するための方法であって、
B17 コンテキスト適応エントロピー復号を介してシンタックス要素を、前記データストリームから抽出するステップであって、
B17-1 各々の前記シンタックス要素が、前記変換係数ブロック内の対応する位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか、および前記変換係数ブロック内の前記有意変換係数の値を示す、
B17 前記抽出するステップと、
C17 複数の走査順に基づいて決定される走査順で各々の前記シンタックス要素を前記変換係数ブロック内のそれぞれの位置に関連付けるステップと、
D17-1 前記変換係数ブロックのサイズ、前記変換係数ブロック内の前記シンタックス要素の位置、および前記シンタックス要素の前記位置の近隣から以前に抽出された前のシンタックス要素に関する情報に少なくとも基づいて
D17-2 各々の前記シンタックス要素について選択されるコンテキストを、前記シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー復号において、使用するステップと
を含む、
A17 方法。

(本件訂正発明18)
【請求項18】
前記近隣から以前に抽出された前記前のシンタックス要素に関する前記情報が、前記前のシンタックス要素の値に関する、請求項17に記載の方法。

(本件訂正発明19)
【請求項19】
前記近隣から以前に抽出された前記前のシンタックス要素に関する前記情報が、前のシンタックス要素が有意変換係数の存在を示す位置の数に関連する、請求項17に記載の方法。

(本件訂正発明20)
【請求項20】
各々の前記シンタックス要素の前記コンテキストが、前記走査順にさらに基づいて選択される、請求項17に記載の方法。

(本件訂正発明21)
【請求項21】
現在のシンタックス要素の前記近隣が、前記現在のシンタックス要素の位置に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項17に記載の方法。

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1.取消理由通知の概要
特許査定時の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その請求項17に記載された発明である本件特許発明17の「コンテキスト適応エントロピー復号を介してシンタックス要素が、前記データストリームから抽出するステップ」という記載は、「シンタックス要素が」何かを「データストリームから抽出する」という事項を意味するものであるが、当該事項が指し示す技術内容が理解できず、発明として不明確であって、本件特許発明17は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである。
本件の請求項18?21に係る特許発明は、請求項17を引用するものであり、本件特許発明17と同様の不備があることから、本件特許発明17同様に特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない特許出願に対して特許されたものである。

2.当審の判断
上記取消理由通知に対して、本件訂正の訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項17において、
「コンテキスト適応エントロピー復号を介してシンタックス要素が、前記データストリームから抽出するステップであって」と記載されているのを、
「コンテキスト適応エントロピー復号を介してシンタックス要素を、前記データストリームから抽出するステップであって」に訂正するものであり、請求項17を引用する請求項18?21についても同様に訂正するものである。
これにより、請求項17?21は、「シンタックス要素を、前記データストリームから抽出する」という記載を含むようになり、「シンタックス要素」を「データストリームから抽出する」という事項が指し示す技術内容が明確になった。
したがって、本件訂正発明17?21は、特許法第36条第6項第2号に規定された要件を満たしている。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立書に記載された特許異議申立理由のうち、取消理由通知において採用しなかったものの概要は、以下のとおりである。

1.特許異議申立理由
(1)申立理由1
本件発明1?21は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許1?21は、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

(2)申立理由2
仮に本件発明1?21と、甲第1号証記載の発明との間に相違点があったとしても、本件発明1?21は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、または甲第1号証に記載された発明と周知技術に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許1?21は同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

(3)申立理由3
(ア)本件発明3、11、19について
本件発明3、11、19には、「前記近隣から以前に抽出(符号化)された前記前のシンタックス要素に関する前記情報が、前のシンタックス要素が有意変換係数の存在を示す位置の数に関連する」という構成要件が含まれているが、当該構成要件は、本件特許明細書の発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていない。また、出願時の技術常識に照らしても、本件発明3、11、19の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
また、当該「位置の数」が何を指しているのが不明でありその技術的意味が明確でないため、本件発明3、11、19が明確でない。
従って、本件発明3、11、19は、サポート要件を満たしておらず、また明確でないから、本件特許3、11、19は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に違反し、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。

(イ)本件発明6、14について
本件発明6は、「前記位置の数が、可能性のあるコンテキストインデックスの組を指すコンテキストインデックスに対応する、請求項3に記載の装置。」であり、本件発明14は、「前記位置の数が、可能性のあるコンテキストインデックスの組を指すコンテキストインデックスに対応する、請求項11に記載の装置。」である。
これらはいずれも前述の通りサポート要件違反及び明確性違反の取消理由のある本件発明3及び11に従属する請求項であり、本件発明6及び本件発明14もサポート要件を満たしておらず、また明確でないから、本件特許6及び本件特許14は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に違反し、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。

(ウ)本件発明17について
本件発明17には、「コンテキスト適応エントロピー復号を介してシンタックス要素が、前記データストリームから抽出するステップであって、」という構成要件があるが、シンタックス要素が、何かをデータストリームから抽出する処理は本件明細書に記載がない。
従って、本件発明17は、サポート要件を満たしておらず、本件特許17は、特許法第36条第6項第1号に違反し、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。

2.証拠方法
(1) 甲第1号証:米国特許公開第2008/0219578号公報
(2) 甲第2号証:インプレス標準教科書シリーズ 改訂三版 H.264/AVC教科書、第1版、2009年1月1日発行、株式会社インプレスR&D、p.85-94、p.109-110、p.143-162、p.325-327、p.336-345
(3) 甲第3号証:米国特許公開第2008/0310745号公報(特表2010-530183号公報に対応する)
(4) 甲第4号証:国際公開第2008/157268号公報(特表2010-530183号公報に対応する)
(5) 甲第5号証:国際公開第2008/157431号公報(特表2010-530190号公報に対応する)
(6) 甲第6号証:特表2009-522968号公報

3.当審の判断
(1)申立理由1、2について
(1-1)甲第1号証及び甲1発明について

甲第1号証には、コンテキストベースのバイナリ算術符号化及び復号化のための方法及び装置に関して以下の記載がある。

「[0006] H.264 uses context adaptive binary arithmetic coding (CABAC) which is an arithmetic coding technique with enhanced compression efficiency. The CABAC is an entropy encoding method of compressing data by using probabilities of symbols.
[0007] FIG. 1 is a block diagram illustrating an apparatus for CABAC according to conventional technology. In an encoding process according to H.264, a discrete cosine transform is performed in units of residual blocks, each of which has a size of 4x4, and then, a syntax element is generated in relation to each 4x4 residual block.
[0008] Referring to FIG. 1, the CABAC encoding apparatus according to the conventional technology broadly includes a binarizer 10, a context modeler 20, and a binary arithmetic coder 30. Also, the arithmetic coder 30 includes a regular coding engine 32 and a bypass coding engine 34.
[0009] If a non-binary valued syntax element is input, the binarizer 10 maps the syntax element into a sequence of binary values, thereby outputting a bin string.
[0010] In order to increase the processing speed of the encoding process, the bin string obtained by mapping into binary values by the binarizer 10 or predetermined bin values selected from a syntax element having binary values therein is encoded by the bypass coder 34 without being input to the context modeler 20, and is output as a bitstream. Other bins are input to the context modeler 20.Here, a bin indicates each bit of a bin string.
[0011] Based on the input bin values or a previously encoded syntax element, the context modeler 20 determines a probability model required for encoding a currently input bin.
[0012] The regular coding engine 32 arithmetic-encodes the input bin value, based on the probability model determined in the context modeler 20, and generates a bitstream.
[0013] According to the H.264 standard draft, a block which is currently encoded is classified into one of roughly five types as illustrated in table 1 below, and in order to encode a syntax element in relation to a block belonging to each type, a different context is applied:」
(仮訳:
[0006]H.264は、圧縮効率が向上した算術符号化手法であるコンテキスト適応型バイナリ算術符号化(CABAC)を使用する。CABACは、シンボルの確率を使用してデータを圧縮するエントロピー符号化方式である。
[0007]図1は、従来技術によるCABAC用の装置を示すブロック図である。H.264に準拠したエンコード処理では、4×4のサイズの残差ブロックの単位で離散コサイン変換が実行され、それぞれの4×4の残差ブロックに関連してシンタックス要素が生成される。
[0008]図1を参照すると、従来技術によるCABAC符号化装置は、大まかには、バイナリ化器10、コンテキストモデラ20、及びバイナリ算術符号化器30を含む。また、算術符号化器30は、正規符号化エンジン32とバイパス符号化エンジン34とを含む。
[0009]非バイナリ値のシンタックス要素が入力されると,バイナリ化器10はシンタックス要素をバイナリ値の列にマッピングし,それによってビン文字列を出力する。
[0010]符号化処理の処理速度を向上させるために、バイナリ化器10によってバイナリ値にマッピングされて得られたビン文字列、または、その中にバイナリ値を有するシンタックス要素から選択された所定のビン値は、コンテキストモデラ20に入力されることなく、バイパス符号化器34によって符号化され、ビットストリームとして出力される。それ以外のビンは、コンテキストモデラ20に入力される。ここで、ビンとは、ビン文字列の各ビットを示す。
[0011]入力ビン値または以前に符号化されたシンタックス要素に基づいて、コンテキストモデラ20は、現在入力されているビンを符号化するために必要な確率モデルを決定する。
[0012]正規符号化エンジン32は、コンテキストモデラ20で決定された確率モデルに基づいて、入力ビン値を算術符号化し、ビットストリームを生成する。
[0013]H.264標準の草案によると、現在符号化されるブロックは、以下の表1にしめすような、およそ5つの種類のタイプに分類され、各ブロックタイプに属するブロックに関連するシンタックス要素を符号化するために、異なるコンテキストが適用される。)





(仮訳:
表1
ブロックタイプ 係数の数 コンテキストタイプ

INTRA16×16モードの輝度DCブロック 16 0:輝度-Intra16-DC
INTRA16×16モードの輝度ACブロック 15 1:輝度-Intra16-AC
INTRA4×4モードの輝度ブロック 16 2:輝度4×4
INTERモードの輝度ブロック 16
INTRAモードのU-色差DCブロック 4 3:色差-DC
INTRAモードのV?色差DCブロック 4
INTERモードのU-色差DCブロック 4
INTERモードのV-色差DCブロック 4
INTRAモードのU-色差ACブロック 15 4:色差-AC
INTRAモードのV?色差ACブロック 15
INTERモードのU-色差ACブロック 15
INTERモードのV-色差ACブロック 15)

「[0017] In operation 220, if a non-zero coefficient value (hereinafter referred to as a significant coefficient) exists in the current 4x4 residual block, a significance map indicating the position of the significant coefficient is encoded. The significance map is formed with significant bits and an end-of-block (EOB). A significant bit indicates whether a coefficient according to each scan index is a significant coefficient or 0, and is expressed by significant_coeff_flag[i]. Here, significant_coeff_flag[i] indicates whether or not the coefficient value of an i-th scan index among 16 coefficients of a 4x4 residual block is 0.
[0018] FIGS. 3A and 3B are diagrams illustrating a significance map of a 4x4 residual block according to conventional technology.
[0019] Referring to FIG. 3A, it is assumed that coefficients at the positions marked by X among coefficients in the 4x4 residual block 31 have predetermined non-zero values. In this case, as illustrated in FIG. 3B, a significance map 32 is obtained by expressing each significant coefficient among the coefficients in the 4x4 residual block as 1, and each insignificant coefficient having zero value as 0. The significance map is scanned in a predetermined scan order, and thus context-based arithmetic encoding is performed. For example, in the case of raster scanning in which contents are scanned from the left-hand side to the right-hand side, and from the top to the bottom, when the significance map as illustrated in FIG. 3A is encoded, a bin string of ‘1111111110101000’ is context-based encoded. In order to encode a significance map, 15 different probability models are used for significant_coeff_flag and last_significant_coeff_flag. A context used for encoding a significance map is determined according to a scanning position of a predetermined scan order. That is, according to the conventional technology, when the significance map as illustrated in FIG. 3B is encoded, a context to be used for encoding is determined according to the position of each coefficient.」
(仮訳:
[0017]動作220において、非ゼロの係数値(以下、有意係数と呼ぶ)が現在の4×4の残差ブロックに存在する場合、有意係数の位置を示す有意マップが符号化される。有意マップは、有意ビットとend-of-block(EOB)で形成される。有意ビットは、各スキャンインデックスに従った係数が有意係数であるか0であるかを示し、significant_coeff_flag[i]で表される。ここで、significant_coeff_flag[i]は、4×4の残差ブロックの16個の係数のうちi番目のスキャンインデックスの係数値が0であるかどうかを示す。
[0018]図3A及び3Bは、従来技術による4×4の残差ブロックの有意マップを示す図である。
[0019]図3Aにおいて、4×4の残差ブロック31内の係数のうち、Xでマークされた位置の係数は、所定の非ゼロ値を有すると仮定される。この場合、図3Bに示す有意マップ32は、4×4の残差ブロック内の係数のうちの各有意係数を1として表現し、ゼロの値を有する各非有意係数を0として表現することによって得られる。有意マップは、所定のスキャン順序でスキャンされ、コンテキストベースの算術符号化が実行される。例えば、コンテンツが左側から右側へ、そして上から下へとスキャンされるラスタースキャンの場合、図3Aに示される有意マップが符号化され、「1111111110101000」というビン文字列がコンテキストベースで符号化される。有意マップを符号化するために、15の異なる確率モデルがsignificant_coeff_flagとlast_significant_coeff_flagに使用される。有意マップを符号化するために使用されるコンテキストは、所定のスキャン順序のスキャン位置に従って決定される。すなわち、従来技術によれば、図3Bに示される有意マップが符号化されるとき、それぞれの係数の位置に従って符号化に使用されるコンテキストが決定される。)

「[0027] The present invention provides a method of and apparatus for context-based binary arithmetic coding and decoding, in which when a significance map indicating the positions of significant coefficients of a residual block is encoded, context modeling using a correlation with a previous residual block is further divided and the difference between an MPS and an LPS is made to be larger such that the performance of binary arithmetic coding can be improved.」
(仮訳:
[0027]本発明は、コンテキストベースのバイナリ算術符号化及び復号化のための方法及び装置を提供するものであり、残差ブロックの有意係数の位置を示す有意マップが符号化されるとき、以前の残差ブロックとの関連を使用するコンテキストモデリングがさらに分割され、MPSとLPSの間の差が大きくなるようにすることで、バイナリ算術符号化の性能が向上するようになる。)

「[0052] … Also, a scan index is an index indicating the position of each coefficient in a residual block, and indicates the positions of coefficients in a residual block or binary values of a significant map according to a predetermined scan order. For example, when it is assumed that a 4x4 residual block is scanned in a zigzag scan order, each coefficient in the 4x4 residual block can be defined as a value existing at a position expressed by any one of scan indexes 1 through 16 according to the scan order.」
(仮訳:
[0052]・・・また、スキャンインデックスは、残差ブロック内の各係数の位置を示す指標であり、所定のスキャン順序に従って、残差ブロック内の係数の位置または有意マップのバイナリ値を示す。例えば、4×4の残差ブロックがジグザグスキャン順序でスキャンされると仮定すると、4×4の残差ブロックの各係数は、そのスキャン順序に従うスキャンインデックス1?16のいずれかで示される位置に存在する値として定義される。)

「[0054] For example, as illustrated in FIG. 8, assuming that there are significance maps 81, 82, 83, and 84, generated by expressing significant coefficients that are not 0 in a residual block, as 1, and expressing insignificant coefficients as 0, encoding of the significance maps 81 through 84 will now be explained. Being scanned in the zigzag scan order as illustrated in the residual block 1 of FIG. 7, the significance maps 81 through 84 of the residual blocks are context-based binary arithmetic coded. According to the present invention, when binary values of a significance map of a current residual block, i.e., significant_coeff_flag[i], are encoded, a context to be used for encoding binary values 0 and 1 of the significance map being currently encoded is determined according to whether corresponding binary values in significance maps of at least one or more previous residual blocks are 0 or 1. For example, when 0, which is the binary value of the first scan index 89 of significance map 4, is encoded, a different context is selected according to whether the corresponding binary value of the first scan index 88 of the significance map 3 of a previous residual block. Here, a context is formed with the probability values of an MPS and an LPS, and a binary value identical to the binary value of the corresponding scan index in the previous significance map becomes the MPS. That is, if the binary value of a corresponding scan index in the previous significance map is 0, 0 becomes the MPS and if the binary value of the corresponding scan index is 1, 1 becomes the MPS.」
(仮訳:
[0054]例えば図8に示すように、残差ブロック内で0ではない有意係数を1として表現し、非有意係数を0として表現することによって生成された有意マップ81、82、83、及び84があると仮定して、有意マップ81から84の符号化を、ここに説明する。図7の残差ブロック1に示されるように、ジグザグスキャン順序でスキャンされることで、有意マップ81?84はコンテキストベースのバイナリ算術符号化がされている。本発明によれば、現在の残差ブロックの有意マップのバイナリ値、すなわち、significant_coeff_flag[i]が符号化されるとき、少なくとも1つ以上の以前の残差ブロックの有意マップの対応するバイナリ値が0か1かに応じて、現在符号化されている有意マップのバイナリ値0及び1を符号化するために使用されるコンテキストが決定される。例えば、有意マップ4の第1のスキャンインデックス89のバイナリ値である0が符号化される場合に、以前の残差ブロックの有意マップ3の第1のスキャンインデックス88のバイナリ値に対応するかどうかに従って、異なるコンテキストが選択される。ここで、MPSとLPSの確率値に基づいてコンテキストが形成され、以前の有意マップの対応するスキャンインデックスのバイナリ値と同一のバイナリ値がMPSになる。つまり、以前の有意マップの対応するスキャンインデックスのバイナリ値が0の場合、0がMPSになり、また、もし対応するスキャンインデックスのバイナリ値が1の場合、1がMPSになる。)






「[0063] However, according to the present invention, in
order to encode the significance map of the current residual block, a case where a corresponding coefficient of the previous residual block is a significant coefficient and a case where the corresponding coefficient is an insignificant coefficient are divided, and a different context, i.e., a different probability model, is applied.
・・・
[0067] FIG. 11 is a detailed diagram illustrating a process of determining a context which is used when a significance map of a current residual block is encoded according to an embodiment of the present invention.
[0068] As described above, in order to determine the significance maps of the previous residual blocks that are considered when a context for encoding the significance map of the current residual block, the significance map of one residual block that is encoded before the current residual block, or the significance maps of at least two residual blocks that are encoded previously, or the significance maps of two adjacent residual blocks positioned above and to the left of the current residual block, respectively, may be used.」
(仮訳:
[0063]しかしながら、本発明によれば、現在の残差ブロックの有意マップを符号化するために、以前の残差ブロックの対応する係数が有意係数である場合と、対応する係数が非有意係数である場合とが分離され、異なるコンテキスト、すなわち、異なる確率モデルが適用される。
・・・
[0067]図11は、本発明の一実施形態に従って、現在の残差ブロックの有意マップが符号化されるときに用いられるコンテキストを決定する処理を示す詳細図である。
[0068]上述のように、現在の残差ブロックの有意マップを符号化するためのコンテキストが決定されるときに考慮される、以前の残差ブロックの有意マップを決定するために、現在の残差ブロックの以前に符号化された1つの残差ブロックの有意マップ、または以前に符号化された少なくとも2つの残差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上と左に位置する2つの隣接する残差ブロックの有意マップ、をそれぞれ使用することができる。)






「[0080] FIG. 13 is a block diagram illustrating a structure of an apparatus for encoding an image to which a context-based binary arithmetic coding apparatus according to an embodiment of the present invention is applied. The context-based binary arithmetic coding apparatus according to the present invention is applied to an entropy encoding unit 1340 of FIG.13.
・・・
[0084] The entropy encoding unit 1340 performs context-based binary arithmetic coding in units of residual blocks of a predetermined size, thereby generating a bitstream.」
(仮訳:
[0080]図13は、本発明の一実施形態によるコンテキストベースのバイナリ算術符号化装置が適用される画像を符号化するための装置の構成を示すブロック図である。本発明によるコンテキストベースのバイナリ算術符号化装置は、図13のエントロピー符号化ユニット1340に適用される。
・・・
[0084]エントロピー符号化ユニット1340は、所定のサイズの残差ブロックの単位でコンテキストベースのバイナリ算術符号化を実行し、それによってビットストリームを生成する。)

「[0085] FIG. 14 is a block diagram illustrating a structure of a context-based binary arithmetic coding apparatus according to an embodiment of the present invention.
[0086] Referring to FIG. 14, the context-based binary arithmetic coding apparatus 1400 according to the current embodiment includes a context selection unit 1410, an arithmetic coding unit 1420 and a storage unit 1430.
[0087] The storage unit 1430 stores information on syntax elements of residual blocks processed before a current residual block and significance maps of the previous residual blocks.
[0088] The context selection unit 1410 selects a context to be used for encoding the significance map of the current residual block according to whether or not a corresponding coefficient of a previous residual block is a significant coefficient, by using the information on the significance maps of the previous residual blocks stored in the storage unit 1430.
[0089] The arithmetic coding unit 1420 performs binary arithmetic coding of each binary value forming the significance map of the current residual block, by using the selected context.」
(仮訳:
[0085]図14は、本発明の一実施形態によるコンテキストベースのバイナリ算術符号化装置の構造を示すブロック図である。
[0086]図14を参照すると、本実施形態によるコンテキストベースのバイナリ算術符号化装置1400は、コンテキスト選択部1410、算術符号化部1420、及び記憶部1430を含む。
[0087]記憶部1430は、現在の残差ブロックの前に処理された残差ブロックのシンタックス要素の情報と、以前の残差ブロックの有意マップを記憶する。
[0088]コンテキスト選択部1410は、記憶部1430に記憶されている以前の残差ブロックの有意マップの情報を用いて、以前の残差ブロックの対応する係数が有意係数であるか否かに応じて、現在の残差ブロックの有意マップの符号化に使用するコンテキストを選択する。
[0089]算術符号化部1420は、選択されたコンテキストを用いて、現在の残差ブロックの有意マップを形成する各バイナリ値のバイナリ算術符号化を行う。)





上記記載から、甲第1号証には以下の発明(以下、甲1発明という)が記載されているものと認められる。(記号は本件訂正発明9の記号に対応させた。)

(甲1発明)
a9 コンテキストベースのバイナリ算術符号化のための装置であって([0027]、[0080])、エントロピー符号化ユニット1340を有し、([0080])、エントロピー符号化ユニット1340は、所定のサイズの残差ブロックの単位でコンテキストベースのバイナリ算術符号化を実行し、それによってビットストリームを生成するものであり([0084])、

b9、b9-1、c9 コンテキスト適応型バイナリ算術符号化(CABAC)を使用するものであり、CABACは、シンボルの確率を使用してデータを圧縮するエントロピー符号化方式であり([0006])、シンタックス要素が入力されて、出力されたビン文字列は、コンテキストモデラに入力されることなく、ビットストリームとして出力され、またはコンテキストモデラに入力され、コンテキストモデラで決定された確率モデルに基づいて、ビットストリームを生成し、([0009]、[0010]、[0012])、
各ブロックタイプに属するブロックに関連するシンタックス要素を符号化するために、異なるコンテキストが適用され、ブロックタイプとして、INTRA16×16モードの輝度DCブロック、INTRA16×16モードの輝度ACブロック、INTRA4×4モードの輝度ブロック、INTERモードの輝度ブロック、INTRAモードの色差DCブロックであって係数の数が4のもの、INTERモードの色差DCブロックであって係数の数が4のもの、INTRAモードの色差ACブロックであって係数の数が15のもの、INTERモードの色差ACブロックであって係数の数が15のものがあり、([0013]、表1)
有意マップは、有意ビットとEOBで形成され、有意ビットは、significant_coeff_flag[i]で表され、ここで、significant_coeff_flag[i]は、4×4の残差ブロックの16個の係数のうちi番目のスキャンインデックスの係数値が0であるかどうかを示し、([0017])
有意マップは、所定のスキャン順序でスキャンされ、コンテキストベースの算術符号化が実行されるものであり、([0019])、有意マップを符号化するために使用されるコンテキストは、所定のスキャン順序のスキャン位置に従って決定される、すなわち、有意マップが符号化されるとき、それぞれの係数の位置に従って符号化に使用されるコンテキストが決定されるものであり([0019])、有意マップは、4×4の残差ブロック内の係数のうちの各有意係数を1として表現し、ゼロの値を有する各非有意係数を0として表現することによって得られるものであり([0019])、
4×4の残差ブロック内の係数のうち、Xでマークされた位置の係数は、所定の非ゼロ値を有し([0019])、
4×4の残差ブロックがジグザグスキャン順序でスキャンされると仮定すると、4×4の残差ブロックの各係数は、そのスキャン順序に従うスキャンインデックス1?16のいずれかで示される位置に存在する値として定義されるものであり[0052]、ジグザグスキャン順序でスキャンされることで、有意マップ81?84はコンテキストベースのバイナリ算術符号化がされ([0054]、FIG.8)、
現在の残差ブロックの有意マップを形成する各バイナリ値のバイナリ算術符号化の出力はビットストリームとして出力され([0089]、FIG.14)、

d9-1、d9-2 現在の残差ブロックの有意マップを符号化するためのコンテキストが決定されるときに考慮される、以前の残差ブロックの有意マップを決定するために、現在の残差ブロックの以前に符号化された1つの残差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上と左に位置する2つの隣接する残差ブロックの有意マップ、をそれぞれ使用する([0068]、FIG.11)ものである、

a9 符号化装置。

(1-2)本件訂正発明9と甲1発明との対比
本件訂正発明9と甲1発明とを対比する。

(a) 甲1発明の構成a9の「バイナリ算術符号化のための装置」は、「所定のサイズの残差ブロックの単位で」「ビットストリームを生成するものであ」り、本件訂正発明9の構成A9の「変換係数ブロックをデータストリームに符号化するための装置」に相当する。

(b) 甲1発明の構成b9、b9-1、c9の「有意マップ」を「形成」する「有意ビット」である「significant_coeff_flag[i]」、及び「4×4の残差ブロック内の係数のうち、Xでマークされた位置の係数は所定の非ゼロ値を有」するものは、それぞれ、本件訂正発明9の構成B9の「シンタックス要素」に相当するものであって、構成B9-1の「各々の前記シンタックス要素が前記変換係数ブロック内の対応する位置に対して」、「有意変換係数が存在するかどうか」および「前記変換係数ブロック内の前記有意変換係数の値」「に関する情報を示」すといえる。
また、甲1発明は「コンテキスト適応型バイナリ算術符号化(CABAC)を使用するものであ」るところ、「CABACは、シンボルの確率を使用してデータを圧縮するエントロピー符号化方式であ」るから、上記(a)と合わせると、甲1発明は、コンテキスト適応エントロピー符号化を介してデータストリームに符号化するよう構成されているといえる。
そうすると、甲1発明は、本件訂正発明9の構成B9と同様に「コンテキスト適応エントロピー符号化を介してシンタックス要素を前記データストリームに符号化するように構成され」ており、本件訂正発明9の構成B9-1と同様に、「各々のシンタックス要素が」「変換係数ブロック内の対応する位置に関して」、「有意変換係数が存在するかどうか、および前記変換係数ブロック内の前記の有意変換係数の値に関する情報を示」すように構成されているといえる。

(c) また、甲1発明は構成b9、b9-1、c9にあるように「有意マップのsignificant_coeff_flagを符号化するために使用されるコンテキストは、所定のスキャン順序のスキャン位置に従って決定される」ものであり、「現在の残差ブロックの有意マップを形成する各バイナリ値のバイナリ算術符号化の出力はビットストリームとして出力され」ることから、甲1発明の有意マップのsignificant_coeff_flagは「所定のスキャン順序」における「有意シンタックス要素」であり、バイナリ算術符号化されてビットストリームとして出力されるものといえる。
そうすると、甲1発明は、本件訂正発明9の構成のC9と同様に、「複数の走査順に中から決定された走査順で前記シンタックス要素を前記データストリームに符号化するように構成され」ているといえる。

(d) 甲1発明の構成d9-1、d9-2の「残差ブロックの有意マップ」について、上記「有意マップ」を、「有意マップ」のシンタックス要素である「significant_coeff_flag」、すなわち、有意変換係数が存在するかどうかを示すシンタックス要素、と読み替えても、同様のことがいえる。

そうすると、構成d9-1、d9-2の「現在の残差ブロックの有意マップを符号化するためのコンテキストが決定されるときに考慮される」、「現在の残差ブロックの以前に符号化された1つの残差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上と左に位置する2つの隣接する残差ブロックの有意マップ」を使用して決定される「以前の残差ブロックの有意マップ」について、現在の残差ブロックのシンタックス要素「significant_coeff_flag」が符号化されるときのコンテキストが決定されるときに考慮されるシンタックス要素は、以前に符号化された残差ブロックであり、現在の残差ブロックに隣接している場合がある残差ブロックのシンタックス要素「significant_coeff_flag」を含むといえる。

一方、本件訂正発明の構成D9-1における「前記シンタックス要素の前記位置の近隣において以前に符号化された前のシンタックス要素に関する情報」とは、構成B9-1の「変換係数ブロック内の対応する位置」に対し、当該変換係数ブロック内における近隣にあって、当該シンタックス要素より以前に符号化されたシンタックス要素に関する情報のことである。

そうすると、「前記シンタックス要素」を符号化する際に使用するコンテキストを選択することについて、甲1発明の構成d9-1、d9-2は、本件訂正発明9の構成D9-1、D9-2と、
D9-1’ 前記シンタックス要素の位置と所定の位置関係において以前に符号化された前のシンタックス要素に少なくとも基づいて
D9-2 各々の前記シンタックス要素について選択されたコンテキストを、各々の前記シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー符号化において、使用するように構成されている、
という点で共通する。

ただし、本件訂正発明9の構成D9-1は「前記変換係数ブロックのサイズ」に基づいてコンテキストが選択されるのに対して、甲1発明はそのような構成を有するものではない点で相違する。
また、本件訂正発明9の構成D9-1は「前記変換係数ブロック内の前記シンタックス要素の位置」に基づいてコンテキストが選択されるのに対して、甲1発明はそのような構成を有するものではない点において相違する。
加えて、本件訂正発明9は、構成D9-1は「前記シンタックス要素の前記位置の近隣」、すなわち、前記シンタックス要素の位置から変換係数ブロック内の「近隣」、において以前に符号化された前のシンタックス要素に関する情報に少なくとも基づいてコンテキストが選択されるのに対して、甲1発明は「現在の残差ブロックに隣接する残差ブロック内の位置」において以前に符号化された前のシンタックス要素に関する情報に少なくとも基づいてコンテキストが選択される点で相違する。

(e)以上のことから、本件訂正発明9と甲1発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

(一致点)
A9 変換係数ブロックをデータストリームに符号化するための装置であって、
A9 前記装置が、
B9 コンテキスト適応エントロピー符号化を介してシンタックス要素を前記データストリームに符号化するように構成され、
B9-1 各々の前記シンタックス要素が、前記変換係数ブロック内の対応する位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか、および前記変換係数ブロック内の前記有意変換係数に関する情報を示し、
A9 前記装置が、
C9 複数の走査順に中から決定された走査順で前記シンタックス要素を前記データストリームに符号化するように構成され、
A9 前記装置が、
D9-1’ 前記シンタックス要素の位置と所定の位置関係において以前に符号化された前のシンタックス要素に少なくとも基づいて
D9-2 各々の前記シンタックス要素について選択されたコンテキストを、各々の前記シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー符号化において、使用するように構成される、
A9 装置。

(相違点)
前記シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー符号化において、使用するコンテキストを選択することについて、
本件訂正発明9は、構成D9-1を有する、すなわち、
・「前記変換係数ブロックのサイズ」に少なくとも基づいて、
・「前記変換係数ブロック内の前記シンタックス要素の位置」に少なくとも基づいて、
・「および前記シンタックス要素の前記位置の近隣」、すなわち、前記シンタックス要素の位置から変換係数ブロック内の「近隣」、において以前に符号化された前のシンタックス要素に関する情報、に少なくとも基づいて
コンテキストが選択されるのに対して、
甲1発明は、
・変換係数ブロックのサイズに少なくとも基づいて、
・変換係数ブロック内の前記シンタックス要素の位置に少なくとも基づいて、
コンテキストが選択されるものではなく、
・さらに、前記シンタックス要素の隣接する残差ブロックにおいて以前に符号化された前のシンタックス要素に関する情報に少なくとも基づいて、
コンテキストが選択されるものである点。

(1-3)判断
上記相違点について検討する。
まず、
・変換係数ブロックのサイズに基づいてコンテキストが選択されること、
・変換ブロック内の前記シンタックス要素の位置に基づいてコンテキストが選択されること、
は、甲第1号証には何ら記載はなく、単なる周知慣用技術や自明の事項であって、甲第1号証に記載されていると同然である事項ということはできない。
さらに、
・前記シンタックス要素の位置から変換係数ブロック内の近隣において以前に符号化された前のシンタックス要素に関する情報に基づいてコンテキストが選択されること、
も、甲第1号証には何ら記載はなく、単なる周知慣用技術や自明の事項であって、甲第1号証に記載されていると同然である事項ということはできない。

なお、甲1発明の構成b9、b9-1、c9に含まれる、「各ブロックタイプに属するブロックに関連するシンタックス要素を符号化するために、異なるコンテキストが適用され、ブロックタイプとして、INTRA16×16モードの輝度DCブロック、INTRA16×16モードの輝度ACブロック、INTRA4×4モードの輝度ブロック、INTERモードの輝度ブロック、INTRAモードの色差DCブロックであって係数の数が4のもの、INTERモードの色差DCブロックであって係数の数が4のもの、INTRAモードの色差ACブロックであって係数の数が15のもの、INTERモードの色差ACブロックであって係数の数が15のものがあ」ることについて、当該シンタックス要素は符号化されるブロックの大きさ(サイズ)に関するものであって、変換係数ブロックのサイズに関するものではない。
そうすると、甲1発明の上記事項は、上記相違点のうち、「変換係数ブロックのサイズに基づいて」「選択されたコンテキストを」「使用する」ことを充足するものではない。

したがって、本件訂正発明9と甲1発明は実質的に同一の発明ということはできない。

また、特許異議申立書の「4 申立ての理由」の「(4)具体的理由」のうち、「エ 取消理由2」には、「仮に、本件発明1?21と甲1発明が相違するとしても、その相違点は、単なる設計変更もしくは周知技術の単なる寄せ集めであって新たな効果を奏するものではない。また、同じ符号化の技術分野におけるものであれば、組み合わせることに阻害要因も無い。」、「従って、本件発明1?本件発明21は、甲第1号証に記載された、または記載されているに等しい発明から、若しくは甲第1号証に記載された、または記載されているに等しい発明及び周知技術から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、進歩性を欠き、本件特許1?本件特許21には、特許法第29条第2項に違反する取消理由(同法第113条第1項第2号)がある。」と記載されている。

さらに、「6 証拠方法」には、甲第1号証に加えて、甲第2号証から甲第6号証が示されており、これらはエントロピー符号化/復号化のコンテキスト適応型バイナリ算術符号化(CABAC(Context-Based Adaptive Binary Arithmetic Coding))に関する周知技術を示すものといえる。

しかしながら、特許異議申立書中には、甲第2号証から甲第6号証の引用箇所を具体的に指摘する記載は無く、加えて、これら各甲号証には、「前記変換係数ブロックのサイズ、前記変換係数ブロック内の前記シンタックス要素の位置、および前記シンタックス要素の前記位置の近隣において以前に符号化された前のシンタックス要素に関する情報」に少なくとも基づいてコンテキストが選択される、ことについて、何らの記載も見当たらない。
また、当該事項により、本件訂正発明9は、変換係数ブロックのシンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー符号化において、より適切なコンテキストを選択できるという新たな効果を奏するものであって、上記主張における「単なる設計変更もしくは周知技術の単なる寄せ集めであって新たな効果を奏するものではない」という程度のものではなく、上記主張は採用できない。

したがって、甲第2号証から甲第6号証には、上記相違点について記載されているということはできず、甲1発明に甲第2号証から甲第6号証に記載された事項を適用したとしても、上記相違点に係る本件訂正発明9の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

(1-4)小括
したがって、本件訂正発明9は甲1発明と同一の発明ではなく、甲1発明及び甲第2号証から甲第6号証記載の事項に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

(1-5)本件訂正発明1、17、2?8、10?16、18?21について
本件訂正発明1は、本件訂正発明9の「変換係数ブロックをデータストリームに符号化するための装置」について、構成C9の「複数の走査順の中から決定された走査順で前記シンタックス要素を前記データストリームに符号化するように構成され」たものを、構成C1の「複数の走査順に基づいて決定される走査順で各々の前記シンタックス要素を前記変換係数ブロック内のそれぞれの位置に関連付けるように構成されたアソシエータ」として、符号化するための装置とサブコンビネーションをなすところの「データストリームにおいて符号化された変換係数ブロックを復号するための装置」として、特定したものである。

そして、本件訂正発明9とサブコンビネーションをなすところの「復号するための装置」である本件訂正発明1と、甲1発明とサブコンビネーションをなすところの「復号するための装置」について検討すると、両者は上記相違点で相違するといえる。

ここで、上記(1-3)によれば、当該相違点は甲第1号証には何ら記載はなく、単なる周知慣用技術や、自明の事項ということもできないから、本件訂正発明1と甲1発明は実質的に同一の発明ということはできない。

また、甲第2号証から甲第6号証によっては、上記相違点を充足することはできず、甲1発明及び甲第2号証から甲第6号証に記載された事項を適用したとしても、当該相違点に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

したがって、本件訂正発明1は甲1発明と同一の発明ではなく、また、甲1発明及び甲第2号証から甲第6号証記載の事項に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

また、本件訂正発明17は、本件訂正発明1の「復号するための装置」という物のカテゴリの発明を、「復号するための方法」という方法のカテゴリの発明として特定したものであり、本件訂正発明17についても本件訂正発明1と同様の理由により、甲1発明と実質的に同一の発明ということはできず、また、甲1発明及び甲第2号証から甲第6号証に記載の事項に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

さらに、本件訂正発明1、9、17を引用する本件訂正発明2?8、10?16、18?21についても、本件訂正発明1、9、17と同様の理由により、甲1発明と実質的に同一の発明ということはできず、また、甲1発明及び甲第2号証から甲第6号証に記載の事項に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

(1-6)申立理由1、2についてのまとめ
以上(1-1)?(1-5)のとおり、本件訂正発明1?21に係る特許について、特許法第29条第1号第3項または特許法第29条第2項の規定に反してなされたものであり、取り消されるべきものであるという申立理由1、2(同法第113条第2号)は存在しない。

(2)申立理由3について
(2-1)本件訂正発明3について

本件訂正発明1の構成B1、B1-1、D1-1を踏まえると、本件訂正発明3の構成E3の「前記近隣から以前に抽出された前記前のシンタックス要素に関する前記情報」とは、
・「データストリームから」「抽出された」「シンタックス要素」であって、
・「変換係数ブロック内の対応する位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか」、「および前記変換係数ブロック内の前記有意変換係数の値に関する情報を示す」「シンタックス要素」であり、
・「前記シンタックス要素の位置の近隣から以前に抽出された前のシンタックス要素」「に関する情報」であるといえる。

これらを総合すると、上記構成D1-1、D-2を踏まえた上記構成E3の「前のシンタックス要素が有意変換係数の存在を示す位置の数に関連する」とは、変換係数ブロック内の対応する位置のシンタックス要素について、当該対応する位置のシンタックス要素に対しての近隣であって、既に符号化された箇所に、有意変換係数が存在し(0ではないレベルを有する)コンテキストの選択に関係するものがいくつあるか、によって、当該対応する位置のシンタックス要素のコンテキストが選択されること、を示すものと言える。

(2-2)サポート要件について
そこで、上記構成E3の「前のシンタックス要素が有意変換係数の存在を示す位置の数に関連する」ことが、本件明細書の発明の詳細な説明中に裏付けられているかどうかについて検討する。

(2-2-1)本件明細書の記載
上記構成E3に関連して、本件明細書には以下の記載がある。

「【0067】
次に、どのようにしてエントロピーデコーダ250がコンテキストをモデリングするのかについての実施の形態を説明する。
【0068】
ひとつの望ましい実施の形態では、significant_coeff_flagについてのコンテキストモデリングが、以下のように行われる。4×4のブロックに対して、コンテキストモデリングは、H.264に規定されているように行われる。8×8のブロックに対しては、変換ブロックは16個の2×2の標本のサブブロックに分離され、これらサブブロックの各々が、個別のコンテキストに関連付けられる。なお、この概念は、上述のように、より大きなブロックサイズ、異なるサブブロック数、および非長方形のサブ領域にも拡張できる。
【0069】
さらに望ましい実施の形態では、大きい変換ブロックについての(たとえば、8×8よりも大きいブロックについての)コンテキストモデル選択は、(変換ブロック内の)所定の近隣における既に符号化された有意変換係数の数に基づく。本発明の望ましい実施の形態に対応する近隣の定義の一例が図9に示される。×を○で囲ったものは、評価のために常に考慮に入れられる利用可能な近隣であり、×と△のものは、現在の走査位置および現在の走査方向に応じて評価される近隣であり):
・現在の走査位置が2×2の左角304内にある場合、個別のコンテキストモデルが各走査位置に使用され(図9、左図)、
・現在の走査位置が2×2の左角内になく、かつ変換ブロックの第1行または第1列に位置しない場合には、図9の右側に示す近隣が、その周りに何もない現在の走査位置「x」の近隣において有意変換係数の数を評価するために使用され、
・その周りに何もない現在の走査位置「x」が変換ブロックの第1行にあたる場合には、図10の右図で特定される近隣が使用され、
・現在の走査位置「x」がブロックの第1列にあたる場合には、図10の左図で特定される近隣が使用される。
【0070】
言い換えると、デコーダ250は、以前に抽出および関連付けられた有意マップシンタックス要素に従って有意変換係数が配置される多数の位置、およびそれぞれの現在の有意マップシンタックス要素が関連付けられる位置(図9の右側および図10の両側の「x」、および図9の左側の印をつけられた位置のいずれか)の近隣にあるものに制限される位置に応じて、有意マップシンタックス要素の各々について、個々に選択されるコンテキストの使用によってコンテキスト適応的にエントロピー復号化を行うことによって、有意マップシンタックス要素をシーケンシャルに抽出するように構成される。
・・・
【0071】
望ましい実施の形態では、特定のsignificant_coeff_flagを符号化するために使用されるコンテキストモデルは、定義される近隣において既に符号化された有意変換係数レベルの数に応じて選択される。ここで、利用可能なコンテキストモデルの数は、定義された近隣における有意変換係数レベルの数の可能な値よりも小さくなることができる。エンコーダおよびデコーダは、定義された近隣における有意変換係数レベルの数をコンテキストモデルのインデックスにマッピングするためのテーブル(または異なるマッピングメカニズム)を含むことができる。」

また、図9及び図10には以下の記載がある。






(2-2-2)構成E3が明細書中に裏付けられているかどうかの判断
【0068】には「significant_coeff_flagについてのコンテキストモデリングが、以下のように行われる。」という記載があり、さらに、【0069】の特に下線部から、「変換ブロックについての」「コンテキストモデル選択は、」「所定の近隣における既に符号化された有意変換係数の数に基づく」ことが読み取れる。
ここで、「所定の近隣における既に符号化された有意変換係数の数」に関して、
【0069】には近隣の定義として、
「近隣の定義の一例が図9に示される。×を○で囲ったものは、評価のために常に考慮に入れられる利用可能な近隣であり、×と△のものは、現在の走査位置および現在の走査方向に応じて評価される近隣であり
・現在の走査位置が2×2の左角304内にある場合、個別のコンテキストモデルが各走査位置に使用され(図9、左図)、
・現在の走査位置が2×2の左角内になく、かつ変換ブロックの第1行または第1列に位置しない場合には、図9の右側に示す近隣が、その周りに何もない現在の走査位置「x」の近隣において有意変換係数の数を評価するために使用され、
・その周りに何もない現在の走査位置「x」が変換ブロックの第1行にあたる場合には、図10の右図で特定される近隣が使用され、
・現在の走査位置「x」がブロックの第1列にあたる場合には、図10の左図で特定される近隣が使用される。」という記載が、
【0070】には「言い換えると、デコーダ250は、現在の有意マップシンタックス要素が関連付けられる位置(図9の右側および図10の両側の「x」、および図9の左側の印をつけられた位置のいずれか)の近隣にあるものに制限される位置に応じて、有意マップシンタックス要素の各々について、個々に選択されるコンテキストの使用によってコンテキスト適応的にエントロピー復号化を行う」という記載がある。

ところで、図9及び図10には、記号「x」の走査位置の近隣には、記号×を記号〇で囲ったものは存在しない上、記号×と記号△のものも存在せず、記号+を記号〇で囲ったものと、記号+を記号△で囲ったものが存在する。
してみると、図9と【0069】の両方の記載から、【0069】における「×を〇で囲ったもの」とは「+を〇で囲ったもの」、「×と△のもの」とは「+を△で囲ったもの」の誤記であることは、当業者ならば理解できるものといえる。

これらを総合すると、現在の走査位置に関する現在の有意マップシンタックス要素に関して、significant_coeff_flagについては、変換ブロック内の各々について個別のコンテキストに関連付けられており、さらに、現在の走査位置が、
(i)図9左図の2×2の左角304内にある場合は、個別のコンテキストモデルが、
(ii)図9右図のxの位置にある場合(2×2の左角内になく、かつ変換ブロックの第1行または第1列に位置しない場合)は、図9右図の+を〇で囲った場所と、+を△で囲った場所(すなわち、変換ブロック内のxの位置の近隣であって、xの位置にあるシンタックス要素より以前に符号化されたシンタックス要素と関連する場所)におけるシンタックス要素に基づくコンテキストモデルが、
(iii)図10右図のxの位置にある場合(「x」が変換ブロックの第1行にある場合)は、図10右図の+を〇で囲った場所と、+を△で囲った場所(すなわち、変換ブロック内のxの位置の近隣であって、xの位置にあるシンタックス要素より以前に符号化されたシンタックス要素と関連する場所)におけるシンタックス要素に基づくコンテキストモデルが、
(iv)図10左図のxの位置にある場合(「x」がブロックの第1列にある場合)は、図10左図の+を〇で囲った場所と、+を△で囲った場所(すなわち、変換ブロック内のxの位置の近隣であって、xの位置にあるシンタックス要素より以前に符号化されたシンタックス要素と関連する場所)におけるシンタックス要素に基づくコンテキストモデルが、
それぞれ選択されてコンテキスト適応エントロピー復号化に使用されるといえる。

ところで、図9、10においては、xの位置に応じて、+を〇で囲った場所の数と、+を△で囲った場所(xの位置の近隣であって以前に符号化されたシンタックス要素と関連する場所の数)の和は異なる(例えば、上記(i)の場合はゼロ、上記(ii)の場合は10個、(iii)と(iv)の場合は4個)といえる。

さらに、上記段落【0071】の特に下線部から、「特定のsignificant_coeff_flagを符号化するために使用されるコンテキストモデルは、定義される近隣において既に符号化された有意変換係数レベルの数に応じて選択される」ことが読み取れる。

したがって、上記記載から、現在の有意マップシンタックス要素の変換ブロック内における位置の近隣に存在する有意変換係数レベルの数(有意変換係数の値が0でないものの数)に基づいて、当該有意マップシンタックス要素のコンテキストモデルが選択されてコンテキスト適応エントロピー復号化に使用されるといえる。

以上より、上記構成E3は、明細書中にサポートされているといえる。

(2-3)明確性について
また、本件訂正発明1の構成D-1を踏まえた本件訂正発明3の構成E3が示す事項は、変換ブロック係数内のシンタックス要素をコンテキスト適応エントロピー復号する時のコンテキストが、変換係数ブロック内の当該シンタックス要素の位置の近隣に存在する有意変換係数(有意変換係数の値が0でないもの)がいくつ存在するかによって決定されるということであり、その技術的意味に不明確な点はない。

(2-4)本件訂正発明3についてのまとめ
以上から、本件訂正発明3は発明の詳細な説明に記載されたものであり、かつ本件訂正発明3の各構成が何を指しているのは明確であって、その技術的意味に不明確な点はなく、本件訂正発明3は明確である。

(2-5)本件訂正発明11、19、6、14について
本件訂正発明11は、本件訂正発明1の「データストリームにおいて符号化された変換係数ブロックを復号するための装置」について、復号するための装置とサブコンビネーションをなすところの「変換係数ブロックをデータストリームに符号化するための装置」として特定した本件訂正発明9を引用し、本件訂正発明3と同等の発明特定事項を有しているものであるところ、本件明細書の【0037】の「図4のコーダは、予測変換ベースのブロック符号器である。」、「変換係数ブロックは、・・・データストリームが・・・出力されるように・・・符号化される。」という記載、【0083】の「上述の実施の形態は、・・・画像および映像デコーダ及びエンコーダに適用できる」という記載を踏まえると、「復号するための装置」である本件訂正発明3とサブコンビネーションをなすところの「符号化するための装置」である本件訂正発明11についても同様に、発明の詳細な説明に記載されたものであり、かつ本件訂正発明11の各構成が何を指しているのは明確であって、その技術的意味に不明確な点はなく、本件訂正発明11は明確である。

また、本件訂正発明19は、本件訂正発明1の「復号するための装置」という物のカテゴリの発明を、「復号するための方法」という方法のカテゴリの発明として特定した本件訂正発明17を引用し、本件訂正発明3と同等の発明特定事項を有しているものであるところ、本件明細書の【0084】の「いくつかの側面を装置の文脈において説明したが、これらの側面は、対応する方法の説明も表していることは明らかであり、ここで、ブロックまたは装置は方法ステップまたは方法ステップの特徴に対応する。」という記載を踏まえると、本件訂正発明19についても同様に、発明の詳細な説明に記載されたものであり、かつ本件訂正発明19の各構成が何を指しているのは明確であって、その技術的意味に不明確な点はなく、本件訂正発明19は明確である。

さらに、本件訂正発明3、11を引用する本件訂正発明6、14についても、発明の詳細な説明に記載されたものであり、かつ本件訂正発明6、14の各構成が何を指しているのは明確であって、その技術的意味に不明確な点はなく、本件訂正発明6、14は明確である。

(2-6)本件訂正発明17について
本件訂正発明17に関して、上記「第2 訂正の適否についての判断」の「3.訂正の適否について」のとおり、訂正事項1は、本件特許請求の範囲の請求項1および本件明細書の発明の詳細な説明の【0044】、【0045】、【0070】をその裏付けとするものとして認められていることから、本件訂正発明17は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものといえる。

(2-7)申立理由3についてのまとめ
以上の(2-1)?(2-5)から、本件訂正発明3、6、9、11、14に係る特許について、特許法第36条第6号第1項及び第2項を満たさない発明に対してなされたものであり、取り消されるべきものであるという申立理由3(同法第113条第4号)は存在しない。
また、本件訂正発明17に係る特許について、以上の(2-6)のとおり、特許法第36条第6号第1項を満たさない発明に対してなされたものであり、取り消されるべきものであるという申立理由3(同法第113条第4号)は存在しない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立の申立理由1?3及び証拠によっては、本件訂正発明1?21に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正発明1?21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データストリームにおいて符号化された変換係数ブロックを復号するための装置であって、
コンテキスト適応エントロピー復号を介して前記データストリームからシンタックス要素を抽出するように構成されたデコーダであって、各々の前記シンタックス要素が、前記変換係数ブロック内の対応する位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか、および前記変換係数ブロック内の前記有意変換係数の値を示す、前記デコーダと、
複数の走査順に基づいて決定される走査順で各々の前記シンタックス要素を前記変換係数ブロック内のそれぞれの位置に関連付けるように構成されたアソシエータとを備え、
前記デコーダが、前記変換係数ブロックのサイズ、前記変換係数ブロック内の前記シンタックス要素の位置、および前記シンタックス要素の前記位置の近隣から以前に抽出された前のシンタックス要素に関する情報に少なくとも基づいて各々の前記シンタックス要素について選択されたコンテキストを、前記シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー復号において、使用するように構成される、装置。
【請求項2】
前記近隣から以前に抽出された前記前のシンタックス要素に関する前記情報が、前記前のシンタックス要素の値に関連する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記近隣から以前に抽出された前記前のシンタックス要素に関する前記情報が、前のシンタックス要素が有意変換係数の存在を示す位置の数に関連する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
各々の前記シンタックス要素の前記コンテキストが、前記走査順にさらに基づいて選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
現在のシンタックス要素の前記近隣が、前記現在のシンタックス要素の前記位置に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記位置の数が、可能性のあるコンテキストインデックスの組を指すコンテキストインデックスに対応する、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記近隣が、前記シンタックス要素の前記位置に横方向に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記近隣が、前記シンタックス要素の前記位置に縦方向に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
変換係数ブロックをデータストリームに符号化するための装置であって、前記装置は、コンテキスト適応エントロピー符号化を介してシンタックス要素を前記データストリームに符号化するように構成され、各々の前記シンタックス要素が、前記変換係数ブロック内の対応する位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか、および前記変換係数ブロック内の前記有意変換係数の値に関する情報を示し、
前記装置が、複数の走査順の中から決定された走査順で前記シンタックス要素を前記データストリームに符号化するように構成され、
前記装置が、前記変換係数ブロックのサイズ、前記変換係数ブロック内の前記シンタックス要素の位置、および前記シンタックス要素の前記位置の近隣において以前に符号化された前のシンタックス要素に関する情報に少なくとも基づいて各々の前記シンタックス要素について選択されたコンテキストを、各々の前記シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー符号化において、使用するように構成される、装置。
【請求項10】
前記近隣から以前に符号化された前記前のシンタックス要素に関する前記情報が、前記前のシンタックス要素の値に関連する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記近隣から以前に符号化された前記前のシンタックス要素に関する前記情報が、前のシンタックス要素が有意変換係数の存在を示す位置の数に関連する、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
各々の前記シンタックス要素の前記コンテキストが、前記走査順にさらに基づいて選択される、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
現在のシンタックス要素の前記近隣が、前記現在のシンタックス要素の前記位置に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記位置の数が、可能性のあるコンテキストインデックスの組を指すコンテキストインデックスに対応する、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記近隣が、前記シンタックス要素の前記位置に横方向に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記近隣が、前記シンタックス要素の前記位置に縦方向に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項13に記載の装置。
【請求項17】
データストリームにおいて符号化された変換係数ブロックを復号するための方法であって、
コンテキスト適応エントロピー復号を介してシンタックス要素を、前記データストリームから抽出するステップであって、各々の前記シンタックス要素が、前記変換係数ブロック内の対応する位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか、および前記変換係数ブロック内の前記有意変換係数の値を示す、前記抽出するステップと、
複数の走査順に基づいて決定される走査順で各々の前記シンタックス要素を前記変換係数ブロック内のそれぞれの位置に関連付けるステップと、
前記変換係数ブロックのサイズ、前記変換係数ブロック内の前記シンタックス要素の位置、および前記シンタックス要素の前記位置の近隣から以前に抽出された前のシンタックス要素に関する情報に少なくとも基づいて各々の前記シンタックス要素について選択されるコンテキストを、前記シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー復号において、使用するステップと
を含む、方法。
【請求項18】
前記近隣から以前に抽出された前記前のシンタックス要素に関する前記情報が、前記前のシンタックス要素の値に関する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記近隣から以前に抽出された前記前のシンタックス要素に関する前記情報が、前のシンタックス要素が有意変換係数の存在を示す位置の数に関連する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
各々の前記シンタックス要素の前記コンテキストが、前記走査順にさらに基づいて選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
現在のシンタックス要素の前記近隣が、前記現在のシンタックス要素の位置に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項17に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-09-27 
出願番号 特願2018-131150(P2018-131150)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (H04N)
P 1 651・ 113- YAA (H04N)
P 1 651・ 121- YAA (H04N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岩井 健二  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 川崎 優
千葉 輝久
登録日 2020-05-07 
登録番号 特許第6700341号(P6700341)
権利者 ジーイー ビデオ コンプレッション エルエルシー
発明の名称 データストリームにおいて符号化された変換係数ブロックを復号する装置および方法、ならびにビデオに関連するデータを記憶するための非一時コンピュータ可読媒体  
代理人 竹本 如洋  
代理人 田村 啓  
代理人 岡部 英隆  
代理人 小倉 博  
代理人 荒川 聡志  
代理人 荒川 聡志  
代理人 田村 啓  
代理人 岡部 英隆  
代理人 鈴木 康弘  
代理人 鈴木 康弘  
代理人 中谷 剣一  
代理人 近田 暢朗  
代理人 小倉 博  
代理人 田中 拓人  
代理人 田中 拓人  
代理人 近田 暢朗  
代理人 中谷 剣一  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ