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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A23L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A23L |
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管理番号 | 1379842 |
異議申立番号 | 異議2020-700776 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-10-08 |
確定日 | 2021-10-11 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6742710号発明「苦味及び/又は渋味がマスキングされたポリフェノール含有飲食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6742710号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める。 特許第6742710号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6742710号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成27年10月8日(優先権主張 平成26年10月14日)に出願され、令和2年7月31日にその特許権の設定登録がされ、令和2年8月19日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和2年10月8日に特許異議申立人 田中眞喜子(以下、「申立人」という。)は、以下の甲第1号証?甲第3号証を提出して、特許異議の申立てをした。 甲第1号証:国際公開第2013/062015号 甲第2号証:国際公開第2013/047613号 甲第3号証:特開2008-99677号公報 特許異議の申立て以降の手続の経緯は、以下のとおりである。 令和2年10月 8日 特許異議申立書の提出 令和3年 4月23日付け 取消理由通知書 同 年 6月24日 訂正請求書、意見書の提出(特許権者) 同 年 7月 5日付け 通知書 同 年 7月27日 意見書の提出(申立人)(以下の参考資料を添付) 参考資料1:味の素株式会社 2014年6月18日付けプレスリリース (https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/presscenter/press/detail/2014_06_18.html) 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 令和3年6月24日提出の訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1?3のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。 [訂正事項1] 特許請求の範囲の請求項1に 「ポリフェノールが、カテキン類、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、又はアントシアニンである」とあるのを、 「ポリフェノールが、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、又はアントシアニンである」 に訂正する。 [訂正事項2] 特許請求の範囲の請求項2に 「ポリフェノールが、カテキン類、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニンである」とあるのを、 「ポリフェノールが、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニンである」 に訂正する。 [訂正事項3] 特許請求の範囲の請求項3に 「ポリフェノールが、カテキン類、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニンである」とあるのを、 「ポリフェノールが、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニンである」 に訂正する。 2.訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「カテキン類、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、又はアントシアニン」から「カテキン類、」を削除することにより、訂正前の請求項1に記載された「ポリフェノール」の選択肢を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項2及び訂正事項3は、それぞれ、訂正前の請求項2、請求項3に記載された「カテキン類、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニン」から「カテキン類、」を削除することにより、訂正前の請求項2、請求項3に記載された「ポリフェノール」の選択肢を減縮するものであるから、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 3.願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1について、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1には、「カテキン類、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、又はアントシアニン」との記載があり、選択肢として「酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、又はアントシアニン」の場合が記載されているといえるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 訂正事項2及び訂正事項3について、願書に添付した特許請求の範囲の請求項2、請求項3には、「カテキン類、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニン」との記載があり、選択肢として「酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニン」の場合が記載されているといえるから、訂正事項2及び訂正事項3は、いずれも、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 4.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと 上記2.に示したとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る「カテキン類、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、又はアントシアニン」の範囲を減縮するものであり、カテゴリーを変更するものでもない。また、訂正事項2及び訂正事項3は、それぞれ、訂正前の請求項2、請求項3に係る「カテキン類、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニン」の範囲を減縮するものであり、カテゴリーを変更するものでもない。 したがって、訂正事項1、訂正事項2及び訂正事項3は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 5.小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 本件訂正は、上記第2で検討したとおり適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」?「本件訂正発明3」といい、これらをまとめて「本件訂正発明」ということがある。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 アドバンテームを含有することを特徴とする、ポリフェノールの苦味及び/又は渋味がマスキングされたポリフェノール含有飲食品であって、ポリフェノールが、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、又はアントシアニンである、ポリフェノールの苦味及び/又は渋味がマスキングされたポリフェノール含有飲食品。 【請求項2】 アドバンテームを添加することを特徴とする、ポリフェノール含有飲食品の苦味及び/又は渋味のマスキング方法であって、ポリフェノールが、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニンである、ポリフェノール含有飲食品の苦味及び/又は渋味のマスキング方法。 【請求項3】 アドバンテームを有効成分とすることを特徴とする、ポリフェノール含有飲食品の苦味及び/又は渋味のマスキング剤であって、ポリフェノールが、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニンである、ポリフェノール含有飲食品の苦味及び/又は渋味のマスキング剤。」 第4 令和3年4月23日付け取消理由通知書で通知した取消理由について 1.取消理由の概要 令和3年4月23日付け取消理由通知書により、以下の理由1、2の取消理由が通知された。 理由1(新規性欠如) 本件特許の請求項1?3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1?3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に反してされたものである。 理由2(進歩性欠如) 本件特許の請求項1?3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1?3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に反してされたものである。 記 引用文献1:国際公開第2013/062015号(甲第1号証) 2.当審の判断 (1)引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明 ア 引用文献1の記載事項 引用文献1には、以下の事項が記載されている。 (記載事項1) 「[請求項1] 下記の式(1)で示されるアスパルチルジペプチドエステル誘導体およびその塩から選択される1種または2種以上の甘味料(A)を、苦味を呈する成分を含有する摂取対象物に、摂取時にその甘味を呈する閾値以下の濃度となるように配合することによる、苦味の抑制方法。 [化1] ![]() [式中、R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)およびR_(5)はそれぞれ同一または異なって、水素原子、水酸基、メチル基またはメトキシ基を示し、R_(6)およびR_(7)は同一または異なって、水素原子又はメチル基を示す。R_(6)とR_(7)が異なる置換基を表す場合、これらの置換基が結合する炭素原子の立体配置は(R)、(S)および(RS)のいずれでもよい。] [請求項2] アスパルチルジペプチドエステル誘導体が、N-[N-[3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロピル]-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン 1-メチルエステルである、請求項1に記載の苦味の抑制方法。 [請求項3] 苦味を呈する成分が、苦味を有する甘味料、苦味を呈する無機塩類、苦味アミノ酸、苦味ペプチドおよびカテキン類から選択される1種以上の成分である、請求項1または2に記載の苦味の抑制方法。 [請求項4] 苦味を有する甘味料がステビア抽出物である、請求項3に記載の苦味の抑制方法。 [請求項5] 甘味を呈する閾値以下の濃度が、N-[N-[3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロピル]-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン 1-メチルエステルの濃度にして0.02ppm?1.5ppmである、請求項1?4のいずれか1項に記載の苦味の抑制方法。 [請求項6] 苦味を呈する成分とともに、下記の式(1)で示されるアスパルチルジペプチドエステル誘導体およびその塩から選択される1種または2種以上の甘味料(A)を、摂取時に甘味料(A)がその甘味を呈する閾値以下の濃度で含まれるように含有してなる、飲食品または医薬品もしくは医薬部外品。 [化2] ![]() [式中、R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)およびR_(5)はそれぞれ同一または異なって、水素原子、水酸基、メチル基またはメトキシ基を示し、R_(6)およびR_(7)は同一または異なって、水素原子又はメチル基を示す。R_(6)とR_(7)が異なる置換基を表す場合、これらの置換基が結合する炭素原子の立体配置は(R)、(S)および(RS)のいずれでもよい。] [請求項7] アスパルチルジペプチドエステル誘導体が、N-[N-[3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロピル]-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン 1-メチルエステルである、請求項6に記載の飲食品または医薬品もしくは医薬部外品。 [請求項8] 苦味を呈する成分が、苦味を有する甘味料、苦味を呈する無機塩類、苦味アミノ酸、苦味ペプチドおよびカテキン類から選択される1種以上の成分である、請求項6または7に記載の飲食品または医薬品もしくは医薬部外品。 ……。」(請求の範囲) (記載事項2) 「[0024] 本発明は、苦味を有する甘味料の苦味が低減され、後味等甘味の質が改善されて、嗜好性も良好な甘味組成物を提供する。 本発明の甘味組成物は、苦味を有する甘味料とともに、下記式(1)で示されるアスパルチルジペプチドエステル誘導体およびその塩から選択される1種または2種以上の甘味料(A)を、摂取時に甘味料(A)がその甘味を呈する閾値以下の濃度で摂取対象物に含まれるように含有してなる。 [0025][化4] ![]() [0026][式中、R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)およびR_(5)はそれぞれ同一または異なって、水素原子、水酸基、メチル基またはメトキシ基を示し、R_(6)およびR_(7)は同一または異なって、水素原子又はメチル基を示す。R_(6)とR_(7)が異なる置換基を表す場合、これらの置換基が結合する炭素原子の立体配置は(R)、(S)および(RS)のいずれでもよい。] [0027] 上記式(1)において、ベンゼン環上のR_(1)?R_(5)で示される基のいずれかが、水酸基、メチル基またはメトキシ基であることが好ましく、R_(2)で示される基が水酸基であり、R_(3)で示される基がメトキシ基であることがより好ましい。また式(1)において、R_(6)またはR_(7)で示される基は水素原子またはメチル基であるが、水素原子であることが好ましい。 なお、本発明の目的には、R_(1)、R_(4)、R_(5)、R_(6)およびR_(7)がそれぞれ水素原子であり、R_(2)が水酸基、R_(3)がメトキシ基である、N-[N-[3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロピル]-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン 1-メチルエステル(すなわち、アドバンテーム)が最も好ましく使用できる。」(段落0024-段落0027) (記載事項3) 「[0051] また、本発明は、上記式(1)で示されるアスパルチルジペプチドエステル誘導体およびその塩から選択される1種または2種以上の甘味料(A)を、苦味を呈する成分を含有する摂取対象物に、摂取時にその甘味を呈する閾値以下の濃度となるように配合することにより、苦味を抑制する方法を提供する。 [0052] 本発明において、「苦味を呈する成分」としては、苦味を有する甘味料、苦味を呈する無機塩類、苦味アミノ酸、苦味ペプチドおよびカテキン類が挙げられ、これらの1種または2種以上が摂取対象物に含有され得る。 …… [0061] カテキン類としては、(+)-カテキン(3,4-ジヒドロ-2α-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2H-1-ベンゾピラン-3β,5,7-トリオール)、エピカテキン(3,4-ジヒドロ-2α-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2H-1-ベンゾピラン-3α,5,7-トリオール)、エピガロカテキン(3,4-ジヒドロ-2α-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)-2H-1-ベンゾピラン-3α,5,7-トリオール)、エピカテキンガラート(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸[(2R)-2α-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3,4-ジヒドロ-5,7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン]-3α-イル)、エピガロカテキンガラート(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸[(2R,3R)-3,4-ジヒドロ-5,7-ジヒドロキシ-2α-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)-2H-1-ベンゾピラン-3α-イル])等の茶カテキンなどが挙げられ、血圧上昇抑制作用、血中コレステロール抑制作用、血糖値調節作用、抗酸化作用等の種々の生理作用を有することが報告されている。これらは、カテキン類の摂取を目的とする飲食品または医薬品もしくは医薬部外品等の摂取対象物において、通常0.01(w/v)%?0.5(w/v)%程度、好ましくは0.05(w/v)%?0.2(w/v)%程度含有される。これに対し、甘味料(A)は、摂取対象物における摂取時のN-[N-[3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロピル]-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン 1-メチルエステルの濃度として、0.02ppm?1.5ppmの範囲で含有させることが好ましく、0.1ppm?1.0ppmの範囲で含有させることがより好ましく、0.6ppm?1.0ppmの範囲で含有させることがさらに好ましい。 …… [0063] さらに本発明は、苦味を有する甘味料等の上記した苦味を呈する成分とともに、上記式(1)で示されるアスパルチルジペプチドエステル誘導体およびその塩から選択される1種または2種以上の甘味料(A)を、摂取時に甘味料(A)がその甘味を呈する閾値以下の濃度で含まれるように含有してなる、飲食品または医薬品もしくは医薬部外品(以下、本明細書において「飲食品等」ということがある)を提供する。 [0064] 本発明において、「飲食品」とは、食品衛生法第4条に定義される「食品」、すなわち飲食物をいうが、固形状食品、半固形状食品、液体状食品または飲料であることが好ましい。 [0065] 固形状食品としては、特に限定されないが、具体的にはチューインガム;キャンディー等の飴類;チョコレート;卓上甘味剤;粉末ジュース、粉末ココア、粉末コーラ、インスタントコーヒー等の粉末即席飲料;アイスクリーム、アイスキャンディー等の冷菓;ラムネ等の錠剤様口中清涼菓子;ケーキ、クッキーなどの焼成菓子;饅頭などの蒸菓子;スナック菓子;乾燥果実類;固形状サプリメントなどを挙げることができる。 [0066] 半固形状食品としては、特に限定されないが、ヨーグルト、クリーム、ゼリー、ジャム等を挙げることができる。 [0067] 液体状食品としては、特に限定されないが、スープ、果実や野菜等のソース類を挙げることができる。 [0068] 飲料としては、炭酸飲料、果汁飲料、フレーバー飲料、スポーツ飲料、エネルギー飲料、栄養補給飲料、コーヒー、ココア、紅茶、日本茶、中国茶、乳飲料、乳酸菌飲料、ミネラルウォーター、液体状サプリメント等を挙げることができる。 [0069] なお、本発明の飲食品には、特定保健用食品、栄養機能食品等の保健機能食品;病者用食品、高齢者用食品等の特別用途食品;健康補助食品なども含まれる。」(段落0051-段落0069) (記載事項4) 「[0083] [表3] ![]() 」(段落0083) (記載事項5) 「[0097] [実施例6]カテキン含有飲料 表8に実施例6および比較例17?19のカテキン含有飲料(カテキン含有量=154mg/100mL)の組成を示した。 [0098][表8] ![]() [0099] 実施例6および比較例17?19は、市販のカテキン含有飲料に各苦味抑制成分を混合し、均一に溶解して、全量を400.0gとして調製した。カテキン含有飲料における各苦味抑制成分の濃度は、表8に示す通りである。」(段落0097-段落0099) (記載事項6) 「[0109] [実験例6]カテキン含有飲料における苦味抑制効果の評価 上記実施例6および比較例17?19の各カテキン含有飲料の苦味について、官能評価を行った。 実施例および比較例の各カテキン含有飲料を訓練された7名のパネラーに摂取させ、苦味抑制成分を添加しない対照と比較した苦味の強さを、一対比較法により上記表3に示す評価基準に従って評価させた。 [0110] 実施例および比較例の各カテキン含有飲料について、7名のパネラーの評価点の平均値を算出し、図5に示した。図5のグラフ中のバーは標準偏差を示す。 なお、苦味抑制成分としてアドバンテームを含有する実施例6のカテキン含有飲料についての評価点と、比較例17?19の各カテキン含有飲料についての評価点との間で、対応のあるt検定を行った。 [0111] 図5より、実施例6のカテキン含有飲料では、比較例17?19のカテキン含有飲料に比べて、摂取時に感じる苦味が低減されていることが示された。 また、実施例6のカテキン含有飲料について、余分な甘味や後味の悪さを感じたパネラーは見られなかった。」(段落0109-段落0111) (記載事項7) 「[図5] ![]() 」(図5) イ 引用文献1に記載された発明 記載事項1に示される請求項1には、特定構造のアスパルチルジペプチドエステル誘導体およびその塩から選択される1種または2種以上の甘味料(A)を、苦味を呈する成分を含有する摂取対象物に、摂取時にその甘味を呈する閾値以下の濃度となるように配合することによる、苦味の抑制方法の発明が記載されており、請求項1を引用する請求項2では、当該特定構造のアスパルチルジペプチドエステル誘導体を「N-[N-[3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロピル]-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン 1-メチルエステル」に特定しているところ、これは、「アドバンテーム」とも呼ばれるものであることが記載事項2に示されており、請求項2を引用する請求項3では、苦味を呈する成分の選択肢としてカテキン類を明記している。 以上より、引用文献1には、 「アドバンテームを、摂取時にその甘味を呈する閾値以下の濃度となるように配合することを特徴とする、カテキン類を含有する摂取対象物の苦味の抑制方法」の発明(以下、「引用苦味抑制方法発明」という。)、及び 「アドバンテームを有効成分とすることを特徴とし、摂取時にその甘味を呈する閾値以下の濃度となるように配合される、カテキン類を含有する摂取対象物の苦味の抑制剤」の発明(以下、「引用苦味抑制剤発明」という。)が記載されているといえる。 また、記載事項1に示される請求項6には、苦味を呈する成分とともに、特定構造のアスパルチルジペプチドエステル誘導体およびその塩から選択される1種または2種以上の甘味料(A)を、摂取時に甘味料(A)がその甘味を呈する閾値以下の濃度で含まれるように含有してなる、飲食品または医薬品もしくは医薬部外品の発明が記載されており、請求項6を引用する請求項7では、当該特定構造のアスパルチルジペプチドエステル誘導体を「N-[N-[3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロピル]-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン 1-メチルエステル」に特定しているところ、これは、「アドバンテーム」とも呼ばれるものであることが記載事項2に示されており、請求項7を引用する請求項8では、苦味を呈する成分の選択肢としてカテキン類を明記している。 以上より、引用文献1には、 「アドバンテームを、摂取時にその甘味を呈する閾値以下の濃度で含まれるように、含有することを特徴とする、カテキン類含有飲食品」の発明(以下、「引用飲食品発明」という。) も記載されているといえる。 (2)取消理由1(新規性欠如)及び取消理由2(進歩性欠如)についての判断 ア 本件訂正発明1について 本件訂正発明1と引用飲食品発明とを対比する。 記載事項3?記載事項7には、引用飲食品発明は、含有されるカテキン類の苦味が抑制されたものであることが示されており、「カテキン類」は技術常識に照らして「ポリフェノール」に該当し、この「苦味が抑制された」は本件訂正発明1にいう「苦味及び/又は渋味がマスキングされた」に相当すると認められることから、引用飲食品発明は、本件訂正発明1にいう「ポリフェノールの苦味及び/又は渋味がマスキングされたポリフェノール含有飲食品」に相当する。 一方、本件訂正発明1においては「ポリフェノールが、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、又はアントシアニンである」とされており、そのポリフェノールの選択肢に「カテキン類」に該当するものは含まれない。 したがって、両者は、 [一致点1] 「アドバンテームを含有することを特徴とする、ポリフェノールの苦味及び/又は渋味がマスキングされたポリフェノール含有飲食品」である点で一致し、 [相違点1] 本件訂正発明1においては「ポリフェノール」が、「酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、又はアントシアニン」である一方、 引用飲食品発明においては「ポリフェノール」が、「カテキン類」である点 で相違する。 「酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、又はアントシアニン」は「カテキン類」と異なるものであるので、上記相違点1は、実質的な相違点である。 また、甲第1号証(引用文献1)、甲第2号証?甲第3号証及び参考資料1の記載を検討しても、飲食品に含有されるカテキン類の苦味を抑制する化合物であれば、飲食品に含有される酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、又はアントシアニンの苦味も抑制できるといえる根拠を見出すことはできず、当業者の技術常識であるということもできないので、引用飲食品発明における「カテキン類」を「酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、又はアントシアニン」に変更する動機づけはなく、引用飲食品発明並びに甲第1号証(引用文献1)、甲第2号証?甲第3号証及び参考資料1の記載に基いて、当業者が本件訂正発明1を容易に想到し得たとすることはできない。 したがって、本件訂正発明1は、引用飲食品発明ではなく、引用飲食品発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、本件訂正発明1は、引用飲食品発明並びに甲第1号証(引用文献1)、甲第2号証?甲第3号証及び参考資料1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件訂正発明2について 本件訂正発明2と引用苦味抑制方法発明とを対比する。 引用苦味抑制方法発明における「アドバンテームを、……配合する」ことは、本件訂正発明2における「アドバンテームを添加する」ことに相当し、「苦味の抑制」は本件訂正発明2にいう「苦味及び/又は渋味のマスキング」に相当する。 また、「カテキン類」は技術常識に照らして「ポリフェノール」に該当し、記載事項3から、引用苦味抑制方法発明における「カテキン類を含有する摂取対象物」は本件訂正発明2にいう「ポリフェノール含有飲食品」に相当する。 一方、本件訂正発明2においては「ポリフェノールが、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニンである」とされており、そのポリフェノールの選択肢に「カテキン類」に該当するものは含まれない。 したがって、両者は、 [一致点2] 「アドバンテームを添加することを特徴とする、ポリフェノール含有飲食品の苦味及び/又は渋味のマスキング方法」である点で一致し、 [相違点2] 本件訂正発明2においては「ポリフェノール」が、「酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニン」である一方、 引用苦味抑制方法発明においては「ポリフェノール」が、「カテキン類」である点 で相違する。 「酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、又はアントシアニン」は「カテキン類」と異なるものであるので、上記相違点2は、実質的な相違点である。 また、甲第1号証(引用文献1)、甲第2号証?甲第3号証及び参考資料1の記載を検討しても、飲食品に含有されるカテキン類の苦味を抑制する化合物であれば、飲食品に含有される酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、又はアントシアニンの苦味も抑制できるといえる根拠を見出すことはできず、当業者の技術常識であるということもできないので、引用苦味抑制方法発明における「カテキン類」を「酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、又はアントシアニン」に変更する動機づけはなく、引用苦味抑制方法発明並びに甲第1号証(引用文献1)、甲第2号証?甲第3号証及び参考資料1の記載に基いて、当業者が本件訂正発明2を容易に想到し得たとすることはできない。 したがって、本件訂正発明2は、引用苦味抑制方法発明ではなく、引用苦味抑制方法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、本件訂正発明2は、引用苦味抑制方法発明並びに甲第1号証(引用文献1)、甲第2号証?甲第3号証及び参考資料1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 本件訂正発明3について 本件訂正発明3と引用苦味抑制剤発明とを対比する。 引用苦味抑制剤発明における「苦味の抑制」は本件訂正発明3にいう「苦味及び/又は渋味のマスキング」に相当する。 また、「カテキン類」は技術常識に照らして「ポリフェノール」に該当し、記載事項3から、引用苦味抑制剤発明における「カテキン類を含有する摂取対象物」は本件訂正発明3にいう「ポリフェノール含有飲食品」に相当する。 一方、本件訂正発明3においては「ポリフェノールが、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニンである」とされており、そのポリフェノールの選択肢に「カテキン類」に該当するものは含まれない。 したがって、両者は、 [一致点3] 「アドバンテームを有効成分とすることを特徴とする、ポリフェノール含有飲食品の苦味及び/又は渋味のマスキング剤」である点で一致し、 [相違点3] 本件訂正発明3においては「ポリフェノール」が、「酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニン」である一方、 引用苦味抑制剤発明においては「ポリフェノール」が、「カテキン類」である点 で相違する。 「酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、又はアントシアニン」は「カテキン類」と異なるものであるので、上記相違点3は、実質的な相違点である。 また、甲第1号証(引用文献1)、甲第2号証?甲第3号証及び参考資料1の記載を検討しても、カテキン類を含有する飲食品の苦味を抑制する化合物であれば、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニンを含有する飲食品の苦味も抑制できるといえる根拠を見出すことはできず、当業者の技術常識であるということもできないので、引用苦味抑制剤発明における「カテキン類」を「酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、又はアントシアニン」に変更する動機づけはなく、引用苦味抑制剤発明並びに甲第1号証(引用文献1)、甲第2号証?甲第3号証及び参考資料1の記載に基いて、当業者が本件訂正発明3を容易に想到し得たとすることはできない。 したがって、本件訂正発明3は、引用苦味抑制剤発明ではなく、引用苦味抑制剤発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、本件訂正発明3は、引用苦味抑制剤発明並びに甲第1号証(引用文献1)、甲第2号証?甲第3号証及び参考資料1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書及び令和3年7月27日提出の意見書において、 「甲第1号証には、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、アントシアニンについての記載はないが、これらは苦味及び/又は渋味を有するポリフェノールとして周知の成分であり、スクラロース等の高甘味度甘味料を用いて苦味や渋味を抑制できることも一般に広く知られていることである(要すれば、甲第2号証の請求項5、段落0009、0010、0013、0033、0034、表1の実施例9、甲第3号証の請求項1、段落0009、0011、0018、表1)。 このように、高甘味度甘味料を用いてポリフェノールの苦味及び/又は渋味を抑制できることが本件出願当時において技術常識であったのであるから、高甘味度甘味料であるアドバンテームを用いたカテキン類(ポリフェノール)の苦味抑制作用が示されている甲第1号証の記載に接した当業者であれば、同様にアドバンテームを用いて他のポリフェノールの苦味及び/又は渋味の抑制を行うことも当然に動機付けられることである。」(特許異議申立書21頁8?20行)、 「高甘味度甘味料としてアドバンテームを用いてポリフェノールの苦味や渋味を抑制することについては、甲第1号証(カテキン類の苦味抑制)だけでなく、本件の審査において挙げられた引用文献1(国際公開第01/25262号)にもコーヒーエキスに含まれるコーヒーポリフェノール(クロロゲン酸)の苦味抑制が示唆されており、これも技術常識である。……。しかしながら、甲第3号証の段落0011では、スクラロースを添加することで渋味等が改善されるポリフェノールとして、大豆イソフラボン、ヤマモモ抽出物、酵素処理イソクエルシトリン、赤ワインポリフェノール(アントシアニンが含まれていると考えられる)等が、甲第1号証で苦味抑制されたカテキン類や、引用文献1(国際公開第01/25262号)で苦味抑制されたクロロゲン酸と同様のものとして位置づけられていることが分かる。してみると、高甘味度甘味料を用いて苦味や渋味が改善されるポリフェノールという観点からは、いずれも同様の成分として捉えるのが合理的であり、「まったく異なるものである」とはいえない。従って、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、アントシアニンについての苦味や渋味を抑制できたことについても甲第1?3号証や引用文献1(国際公開第01/25262号)の記載から十分に予測できる程度のことであり、格別顕著な効果を奏するものでもない。」(特許異議申立書21頁24行?22頁19行)、 「酵素処理イソクエルシトリン等のポリフェノールを含有する飲食品において、更にアドバンテームを含有させた飲食品とすることは甲第2号証、甲第3号証、参考資料1において明確に示唆されていることであるから、積極的に動機付けられることであり、当業者であれば容易になし得たことであるといえる。」(令和3年7月27日提出の意見書2頁5?9行)、 「甲第3号証においては、酵素処理イソクエルシトリン等のポリフェノールの渋味や収斂味について、高甘味度甘味料であるスクラロースを用いて抑制できることが開示されているのであるから(甲第3号証の請求項1)、高甘味度甘味料であるアドバンテームを用いて、スクラロースと同様に渋味や収斂味の抑制効果が得られるか否かを試みることも積極的に動機付けられることであり、その効果も予測し得た程度のものに過ぎない。」(令和3年7月27日提出の意見書2頁10?15行)、 「訂正後の本件特許発明に係る効果について、本件明細書の段落0012では、「ポリフェノール含有飲食品の本来の風味やおいしさを損ねることなく、ポリフェノール含有飲食品におけるポリフェノールの苦味や渋味をマスキングして、飲用しやすくできるという優れた効果を奏する。」とされているが、訂正後の本件特許発明で規定されるポリフェノールに関する実施例5?10では、いずれも、アドバンテームの量が多すぎる場合や少なすぎる場合にはマスキング効果が減少する傾向がみられる。例えば、表10では0.3ppmで評価:△となっており、0.3ppmを超えて使用した場合においてまで、マスキング効果が得られるとは理解できない。このように、本件明細書の記載からは、如何なる量のアドバンテームを用いた場合においても所望の効果が得られるとは理解できない。」(令和3年7月27日提出の意見書2頁22行?3頁7行)、及び 「アドバンテームは、ショ糖の約30,000倍の甘味を有するのであるから(本件明細書の段落0004)、多量用いた場合には、飲食品の本来の風味やおいしさを損ねる蓋然性が高いといえる。従って、如何なる量のアドバンテームを用いた場合においても「ポリフェノール含有飲食品の本来の風味やおいしさを損ねることなく」マスキング効果が得られるとは理解できない。」(令和3年7月27日提出の意見書3頁8行?12行) などと主張する。 しかし、甲第1号証(引用文献1)、甲第2号証?甲第3号証及び参考資料1の記載を検討しても、カテキン類の苦味を抑制する効果を奏する化合物であれば、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニン、あるいは、それらを含有する飲食品の苦味も抑制できるといえる根拠を見出すことはできず、また、甲第2号証及び甲第3号証の頒布日よりも後に上市されたアドバンテーム(参考資料1参照)が、甲第2号証及び甲第3号証に記載されたアドバンテームとは異なる高甘味度甘味料の苦味・渋味成分に対する作用効果と同様の作用効果を、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニン、あるいは、それらを含有する飲食品の苦味に対しても奏するといえる根拠を見出すこともできない。 また、アドバンテームが、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニン、あるいはそれらを含有する飲食品の苦味を抑制できるということが、当業者の技術常識であるという根拠を見出すこともできない。 したがって、当業者が、甲第1号証(引用文献1)、甲第2号証?甲第3号証及び参考資料1に記載された発明に基いて、本件訂正発明1?3を容易に想到し得たとすることはできない。 さらに、飲食品に対するアドバンテームの添加量が、過多量または過少量の場合には、それ以外の場合と比べて、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニンの苦味及び/渋味をマスキングする効果が弱くなることがあるとしても、アドバンテームを添加しない場合に比してアドバンテームによるマスキング効果があることは明らかであるから、本件訂正発明1?3の効果を否定する根拠にはなり得ない。 また、飲食品に対するアドバンテームの添加量が、過多量の場合には、アドバンテーム自体の味による影響が相対的に強くなって、飲食品の本来の風味やおいしさを損ねることがあるとしても、技術常識に照らせば、飲食品に対するアドバンテームの添加量は、当業者がその飲食品の種類・特性等に応じて決定するものであるといえるから、本件訂正発明1?3の効果を否定する根拠にはなり得ない。 以上のとおりであるから、申立人の主張によって、上記(2)の判断を覆すことはできない。 3.小括 以上のとおり、令和3年4月23日付け取消理由通知書で通知した取消理由は、いずれも解消している。 これらの取消理由以外に、特許異議申立書に記載された申立ての理由はなく、他の取消理由も発見しない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立ての理由によっては、請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。また、他に当該特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 アドバンテームを含有することを特徴とする、ポリフェノールの苦味及び/又は渋味がマスキングされたポリフェノール含有飲食品であって、ポリフェノールが、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、大豆イソフラボン、又はアントシアニンである、ポリフェノールの苦味及び/又は渋味がマスキングされたポリフェノール含有飲食品。 【請求項2】 アドバンテームを添加することを特徴とする、ポリフェノール含有飲食品の苦味及び/又は渋味のマスキング方法であって、ポリフェノールが、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニンである、ポリフェノール含有飲食品の苦味及び/又は渋味のマスキング方法。 【請求項3】 アドバンテームを有効成分とすることを特徴とする、ポリフェノール含有飲食品の苦味及び/又は渋味のマスキング剤であって、ポリフェノールが、酵素処理イソクエルシトリン、ヤマモモ抽出物、ナリンジン、クロロゲン酸、大豆イソフラボン、又はアントシアニンである、ポリフェノール含有飲食品の苦味及び/又は渋味のマスキング剤。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-09-30 |
出願番号 | 特願2015-200170(P2015-200170) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小金井 悟 |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
村上 騎見高 関 美祝 |
登録日 | 2020-07-31 |
登録番号 | 特許第6742710号(P6742710) |
権利者 | 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 |
発明の名称 | 苦味及び/又は渋味がマスキングされたポリフェノール含有飲食品 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |