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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B65B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B65B 審判 全部申し立て 特174条1項 B65B 審判 全部申し立て 2項進歩性 B65B 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B65B 審判 全部申し立て 発明同一 B65B |
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管理番号 | 1379866 |
異議申立番号 | 異議2021-700427 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-04-30 |
確定日 | 2021-11-09 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6807091号発明「卵パックの移載ロボットシステム、および移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6807091号の請求項1?2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許6807091号の請求項1?2に係る特許についての出願は、令和元年12月13日に出願した特願2019-224975号の一部を令和2年8月18日に新たな特許出願としたものであって、令和2年12月9日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月6日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年4月30日に共和機械株式会社(以下「申立人」という。)が、本件特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 特許6807091号の請求項1?2に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 卵パックを把持する把持部を備えたロボットヘッドと、 前記ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能なロボットアームと、 前記ロボットヘッドとロボットアームの動きを制御する制御部とを備え、 前記制御部は、前記把持部で把持される卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に前記ロボットアームの先端を位置させて、移動式のラックに設けられた折り畳み式の棚板の下方の空間に、前記把持部で把持した卵パックを移動させる、卵パックの移載ロボットシステム。 【請求項2】 移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法であって、 卵パックを把持する把持部を備えたロボットヘッドが届く範囲に前記移動式のラックを配置するステップと、 前記把持部で把持される卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に、前記ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能なロボットアームの先端を位置させるステップと、 前記ロボットヘッドを移動させて、前記移動式のラックに設けられた折り畳み式の棚板の下方の空間に卵パックを配置するステップとを備える、移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法。」 第3 申立理由の概要 1.申立人は、以下の甲号証を提出し、本件発明1?2に係る特許は、以下の理由により、取り消すべきものである旨を主張する。 甲第1号証(特願2019-210262号(特開2021-50038号)。以下「甲1」という。)、 甲第2号証(Pluimveekrant,(蘭),2018年12月。以下「甲2」という。)、 甲第3号証(“Beursfilm LIV Venray 2017”,[online],2017年3月21日,YouTube,[2021年3月30日検索],インターネット 甲第4号証(“Universal Robots, Eggs packaging. Confezionamento uova”,[online],2012年10月2日,YouTube ,[2021年4月2日検索],インターネット 甲第5号証(登録実用新案第3209255号公報。以下「甲5」という。)、 甲第6号証(“不二越 搬送ロボットとアームロボットによる倉庫作業 #iREX2015”,[online],2015年12月14日,YouTube,[2021年3月30日検索],インターネット 甲第7号証(“Bakery and Food Industry Robotics! Featuring the ARTISAN ROBOT”,[online],2017年5月18日,YouTube,[2021年3月30日検索],インターネット 甲第8号証(特開2014-176925号公報。以下「甲8」という。)、 甲第9号証(再公表特許第2016/113836号。以下「甲9」という。)、 甲第10号証(米国特許出願公開第2015/0274447号明細書。以下「甲10」という。)、 甲第11号証(特願2018-247346号(特許第6716177号)。以下「甲11」という。) 2.理由1(拡大先願) 本件発明1?2は、その出願の日前の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開がされた甲1の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面、又は本件特許の出願後に特許公報の発行がされた甲11の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 よって、本件発明1?2は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3.理由2(新規性) 本件発明1?2は、甲2に記載された発明、もしくは甲3または甲4により電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である。 よって、本件発明1?2は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 4.理由3(進歩性) 本件発明1?2は、甲2に記載された発明、もしくは甲3または甲4により電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、本件発明1?2は、甲5に記載された発明及び甲2、甲8?10のいずれかに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件発明1?2は、甲5に記載された発明及び甲3?4、甲6?7のいずれかにより電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本件発明1?2は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 5.理由4(明確性) 本件発明1?2は、請求項の記載と、発明の詳細な説明および図4?図5の記載との間に矛盾があり、どのように理解すべきか不明であり、明確でない。また、同様な理由により本件発明2は、発明として明確でない。 よって、本件発明1?2についての特許は、特許法36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 6.理由5(実施可能要件) 本件発明1?2は、本件特許明細書に、当業者が実施可能な程度に記載されていない。 よって、本件発明1?2についての特許は、特許法36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 7.理由6(サポート要件) 本件特許の請求項1及び2の記載は、発明の詳細な説明および図4?図5の記載と矛盾している。したがって、本件発明1?2は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。 よって、本件発明1?2についての特許は、特許法36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 8.理由7(新規事項) 令和2年10月13日提出の手続補正書による請求項1および請求項2に係る補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、新規事項の追加に該当するものである。 よって、本件特許は、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。 第4 証拠の記載及び引用発明 1.本件特許の出願日前の他の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開がされた甲1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等1」という。)には、以下(1)?(8)の事項が記載されている。なお、下線は理解の便のため当審で付与した。以下同様。 (1)「【0014】 本実施形態において、収容体6は、四段の一般的なラック(図5、6参照)であり、積載幅が580mmで、一段の高さが270mmであるが、これに限定するものではない。収容体6であるラックに卵容器2を積載し、各納入店舗に輸送することにより、卵容器2の商品棚への陳列が不要(ラックに積載した状態で販売可能)となる。これにより、例えば、卵容器2の陳列が不要となるので、労働コストを下げることができる。」 (2)「【0016】 卵容器移送装置4は、卵容器2を整列する整列コンベヤ9と、卵容器2を載せるハンド部10と、整列コンベヤ9上の卵容器2をハンド部10に押して載せる整列プッシュ部11と、先端にハンド部10が取り付けられ、ハンド部10を所定の位置に移送するハンド移送部12と、を備える。」 (3)「【0022】 図3に示すように、ハンド部10は、卵容器2を載せる下板部10aと、下板部10aの上側に卵容器2を載せるスペースを設けて配置された上板部10bと、下板部10aと上板部10bとが平行にかつ相対的に卵容器2の一方方向に離れるように移動させる板駆動部10cと、を備える。本実施形態では、上板部10bと板駆動部10cとは、ハンド移送部12に取り付けられ、下板部10aは、板駆動部10cに取り付けられるが、これに限定するものではない。ここで、卵容器2の一方方向は、卵容器2の長手方向又は短手方向、ヒンジ蓋を開ける方向と平行又は直交する方向のことをいう。」 (4)「【0030】 図3(a)に示すように、板駆動部10cの駆動により、下板部10aをハンド移送部12側に移動すると、下板部10aに載せた卵容器2も下板部10aと共に移動する。そして、図3(b)に示すように、卵容器2が押出部101bに当たると、卵容器2は、下板部10aと共にそれ以上移動できず、下板部10aの上を滑る。これにより、卵容器2が下板部10aに載る部分が減少していき、卵容器角度αで収容体6に卵容器2を降ろすことができる。これにより、例えば、高さ方向に制約がある収容体6でも卵容器2を下板部10aから降ろすことができる。」 (5)「【0032】 上部分が凹凸形状の卵容器2の場合、卵容器2は、収容体6に先に積載した卵容器2上部分の凹凸形状の凹部に、次の卵容器2下部分の凹凸形状の凸部を嵌めて積載する。卵容器角度αを設定することにより、卵容器2の先端の凸部を凹部に嵌めることが容易となる。なお、凹部と凸部とは、それぞれ傾斜しているので、それぞれの中心から±15mm以内のずれであれば、凸部と凹部とは、それぞれの傾斜に沿って嵌めることができる。 【0033】 図1に示すように、ハンド移送部12は、床に取り付けられ左右方向D1で移動可能な第1スライド部12aと、第1スライド部12aの可動部(図示しない)に取り付けられ上下方向D3で移動可能な第2スライド部12bと、第2スライド部12bの可動部(図示しない)に取り付けられ前後方向D2に移動可能な第3スライド部12cと、スライド部12a?12cの動きを制御するスライド制御部(図示しない)を備える。本実施形態において、スライド部12a?12cは、アルミ製の電動スライダーであるが、これに限定するものではない。」 (6)「【図3】 ![]() 」 (7)「【図5】 ![]() 」 (8)上記(4)、(7)より、移動式の収容体に設けられた棚板の下方の空間に、卵容器が移動されると解される。 (9)上記事項を総合すると、先願明細書等1には次の発明(以下、「甲1発明の1」及び「甲1発明の2」という。)が記載されている。 「卵容器を載せる下板部を備えたハンド部と、 ハンド部を所定の位置に移送するハンド移送部と、 ハンド移送部の動きを制御するスライド制御部とを備え、 スライド制御部は、移動式の収容体に設けられた棚板の下方の空間に、卵容器を移動させる、卵容器移送装置。」(甲1発明の1) 「卵容器を載せる下板部を備えたハンド部が届く範囲に移動式の収容体を配置し、 ハンド部を移動させて、移動式の収容体に設けられた棚板の下方の空間に卵容器を配置する、移動式の収容体に複数段に積まれた状態の卵容器を生産する方法。」(甲1発明の2) 2.甲2には、以下の事項(1)?(2)が記載されている。 (1)1ページ上欄の図に、当審で補足説明を加えた図 「 ![]() 」 (2)上記(1)より、ロボットヘッドに備えられた把持部が、卵容器を把持している様子が見て取れる。また、ロボットアームは、ロボットヘッドの位置姿勢を変更させることで、ラックに卵容器を移動させていることも見て取れる。 (3)上記事項を総合すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明の1」及び「甲2発明の2」という。)が記載されている。 「卵容器を把持する把持部を備えたロボットヘッドと、ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能なロボットアームとを備え、ラックに卵容器を移動させる、卵容器の移載ロボットシステム。」(甲2発明の1) 「卵容器を把持する把持部を備えたロボットヘッドが届く範囲にラックを配置し、ロボットヘッドを移動させて、ラックに卵容器を配置する、ラックに積まれた状態の卵容器を生産する方法。」(甲2発明の2) 3.甲3の動画は、以下の画像(1)が含まれている。 (1)2:01/3:18の時点の画像に、当審で補足説明を加えた図 「 ![]() 」 (2)上記(1)より、ロボットヘッドに備えられた把持部が、卵容器を把持している様子が見て取れる。また、ロボットアームは、ロボットヘッドの位置姿勢を変更させることで、ラックに卵容器を移動させていることも見て取れる。 (3)上記事項を総合すると、甲3により次の発明(以下、「甲3発明の1」及び「甲3発明の2」という。)を認定することができる。 「卵容器を把持する把持部を備えたロボットヘッドと、ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能なロボットアームとを備え、ラックに卵容器を移動させる、卵容器の移載ロボットシステム。」(甲3発明の1) 「卵容器を把持する把持部を備えたロボットヘッドが届く範囲にラックを配置し、ロボットヘッドを移動させて、ラックに卵容器を配置する、ラックに積まれた状態の卵容器を生産する方法。」(甲3発明の2) 4.甲4の動画は、以下の画像(1)?(2)が含まれている。 (1)0:41/1:35の時点の画像に、当審で補足説明を加えた図 「 ![]() 」 (2)0:20/1:35の時点の画像に、当審で補足説明を加えた図 「 ![]() 」 (3)上記(1)、(2)より、ロボットヘッドに備えられた把持部が、卵パックを把持している様子が見て取れる。また、ロボットアームは、ロボットヘッドの位置姿勢を変更させることで、把持部で把持した卵パックを移動させていることも見て取れる。また、ロボットアームの先端は、把持部で把持される卵パックの重心よりも一端側にずれた場所に位置していることも見て取れる。また、卵パックが段ボール箱に複数段に積まれることも見て取れる。 (4)上記事項を総合すると、甲4により次の発明(以下、「甲4発明の1」及び「甲4発明の2」という。)を認定することができる。 「卵パックを把持する把持部を備えたロボットヘッドと、 ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能なロボットアームと、 把持部で把持される卵パックの重心よりも一端側にずれた場所にロボットアームの先端を位置させて、段ボール箱の中に、把持部で把持した卵パックを移動させる、卵パックの移載ロボットシステム。」(甲4発明の1) 「卵パックを把持する把持部を備えたロボットヘッドが届く範囲に段ボール箱を配置し、 把持部で把持される卵パックの重心よりも一端側にずれた場所に、ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能なロボットアームの先端を位置させ、 ロボットヘッドを移動させて、段ボール箱に卵パックを配置する、段ボールに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法。」(甲4発明の2) 5.甲5には、以下の事項(1)?(4)が記載されている。 (1)「【0018】 以下、本考案の第一実施形態である搬送用ラック1について、図1乃至図7を用いて説明する。搬送用ラック1は、一対の側部フレーム60と、背部フレーム70と、複数段の棚板80と、扉10と、扉10の閉状態を保持する閉ロック機構と、扉10の開状態を保持する開ロック機構とを備える、キャスター90付きのラックである。」 (2)「【0022】 それぞれの棚板80は、前後二枚の板からなる。二枚の板は、左右方向に延びる軸を有するヒンジ85を介して組み付けられており、二枚の板の相対的な回動により、山形に折り畳まれる(図1及び図3において上から一段目、二段目の棚板80を参照)。棚板80は、上方に向かって湾曲している略コ字形の前枠81を前端に有していると共に、同じく上方に向かって湾曲している略コ字形の後ろ枠82を後端に有している。」 (3)「【0034】 棚板80上に鶏卵ケースを積み重ねたら、回動バー31を上方に回動させた状態として他方の扉10との干渉を避け、二枚の扉10を突き合わせるように閉じる(図2参照)。その後、回動バー31を下方に回動させて、そのフック32を他方の扉10の固定バー33に上方から引掛ける。これにより、扉10の閉状態がロックされる。この状態で、キャスター90によって搬送用ラック1を移動させ、或いは、車両に搬送用ラック1を積載して移動することにより、搬送用ラック1によって鶏卵ケースを搬送することができる。」 (4)「【図1】 ![]() 」 (5)上記事項を総合すると、甲5には次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。 「折り畳まれる棚板を備え、棚板上に鶏卵ケースが積み重ねられる、搬送用ラック。」 6.本件特許の出願日前の他の特許出願であって、本件特許の出願後に特許公報の発行がされた甲11の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等11」という。)には、以下の事項(1)?(10)が記載されている。 (1)「【請求項1】 コンベヤから移送された物品を上面に載置しうる、略水平方向に延伸する、中央部の固定フォークと両側の可動フォークとからなるフォーク群と、 前記フォーク群を保持するロボットハンドと、 前記フォーク群と前記ロボットハンドとの間に設けられ連続的に前記両側の可動フォーク間の間隔を調整できるフォーク間隔調整部と、 前記コンベヤから略水平状態のまま前記物品を前記フォーク群の上面に押し出す第1のプッシャと、 前記ロボットハンドを3次元の移動回転可能に保持するマニピュレータと、 前記第1のプッシャ及び前記マニピュレータを制御する制御部と を有する物品移載装置。」 (2)「【0083】 図1は本発明の一実施形態の物品移載装置及び物品移載システムの斜視図であり、本発明の範囲外のローラコンベヤ90によって搬送されてくる物品G(特に段ボールなどに梱包された物品が主であるがそれに限定されない。)を、マニュピレータ10のアームの先端のロボットハンド11に取り付けられた3本のフォークからなるフォーク群20に移載し、それを仮置棚60に仮置きする物品移載装置1を示しており、更に、この物品移載装置1と、仮置棚60からの物品Gを積載するかご車110とを含む物品移載システムも示している。」 (3)「【0094】 図2は本発明の一実施形態の物品移載装置のフォーク群20及び第2のプッシャ50を示す斜視図である。この部分は、ロボットハンド11の前面に設けられており、略同一水平面上を略同一方向(図中Y方向)に延伸する固定フォーク21、可動フォーク22(両側はほぼ同一構造であるので、以下、同一符号で説明する)と、可動フォーク22の上面に設けられた溝部23と、第2のプッシャ50とを有している。」 (4)「【0107】 フォーク群20及び第2のプッシャ50を保持しているロボットハンド11は、マニピュレータ10のアーム部に取り付けられ、多関節のマニピュレータ10によって3次元で6軸に移動回転自在に保持される。」 (5)「【0108】 制御部80は、マニピュレータ10及びマニピュレータ10に連結されているフォーク群20、第2のプッシャ50などの動作を制御する。更に、マニピュレータ11とは連結されない第1のプッシャ30の動作についても制御する。」 (6)「【0112】 仮置棚60の枠体61は、L字状の山形鋼を組み合わせて形成したものであり、各段の鋼板よりなる棚板62が敷設されている。なお、このような構造に限定されるものではなく、物品を保持できるようになっていればどのような材質、形状であってもよい。 【0113】 その各段の棚板62の上には、仮置棚60の奥行方向に延伸する、高さを有する仕切板63が多数設けられており、隣接する仕切板63の間隔は、フォーク群20の進入が可能なような間隔に設定されている。この間隔部分をフォーク挿入溝部64と呼ぶ。」 (7)「【0150】 物品の押し出し進行方向先端側が吸着パッド51に到達すると、制御部80によって、第1のプッシャ30の押圧が解除され、かつ、第1のプッシャ30が当初位置に戻される。また、吸着パッド51は、内部の空気が排気され、真空状態となり、フォーク群20の上の物品の保持を支援する。」 (8)「【0159】 フォーク群20に載置されて仮置棚60の近傍に到着した物品は仮置棚60に移載される。ここでは、フォーク群20の位置は、仮置棚60の予め定められた物品を載置すべき段及び間口の、フォーク挿入溝部64にフォーク群20が挿入できる位置が制御される。 【0160】 フォーク群20の高さは、物品の底面がフォーク挿入溝部64を構成する仕切板63の上面で構成される物品載置面65よりごく僅かに高い位置となるように制御される。 【0161】 なお、物品を載置すべき段及び間口は、この工程及び次工程、更に前後に移送されてくる物品などを勘案して空きスペースの中から選択される。 【0162】 次に、フォーク群20がフォーク挿入溝部64に挿入され、物品のフォーク群20の後端部側が、仮置棚60の前面と略同一位置あるいはそれより内側まで到達すると、一旦フォーク群20を垂直下方に移動させ、物品を仕切板63で保持させるようにしてから、フォーク20群を抜去する。 【0163】 物品は、フォーク群20の下方移動時には、物品載置面65とのごく僅かな空隙をフォーク群20とともに下方に移動して、物品載置面65に載置されるが、衝撃はなく、安全に仮置棚60への移載が完了する。」 (9)「【図1】 ![]() 」 (10)「【図4】 ![]() 」 (11)上記(6)、(8)?(10)より、仮置棚に設けられた棚板の下方の空間に物品を移動させること、が見て取れる。 (12)上記事項を総合すると、先願明細書等11には次の発明(以下、「甲11発明の1」及び「甲11発明の2」という。)が記載されている。 「物品を載置しうる固定フォークと可動フォークからなるフォーク群と、物品の保持を支援する吸着パッドとを備えたロボットハンドと、 ロボットハンドを移動回転自在に保持するアーム部と、 ロボットハンドとアーム部の動作を制御する制御部とを備え、 制御部は、仮置棚に設けられた棚板の下方の空間に物品を移動させる、マニピュレータ。」(甲11発明の1) 「物品の保持を支援する吸着パッドを備えたロボットハンドが届く範囲に仮置棚を配置し、 ロボットハンドを移動させて、仮置棚に設けられた棚板の下方の空間に物品を配置する、仮置棚に積まれた状態の物品を生産する方法。」(甲11発明の2) 第5 当審の判断 1.理由1(拡大先願)について (1)甲1発明の1及び2との対比、判断 ア.本件発明1について (ア)本件発明1と甲1発明の1とを対比すると、甲1発明の1の「ハンド部」は、本件発明1の「ロボットヘッド」に相当し、以下同様に、「スライド制御部」は「制御部」に、「卵容器」は「卵パック」に、「収容体」は「ラック」に、「卵容器移送装置」は「卵パックの移載ロボットシステム」にそれぞれ相当する。 甲1発明の1の「ハンド部を所定の位置に移送する」ことは、本件発明1の「ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能な」ことに相当する。 また、甲1発明の1の「卵容器を載せる下板部」と本件発明1の「卵パックを把持する把持部」とは、「卵パックを受ける受け部」の限りで一致し、以下同様に、「ハンド移送部」と「ロボットアーム」とは、「移送部」である限りで、「棚板」と「折り畳み式の棚板」とは、「棚板」の限りで一致する。 そうすると、本件発明1と甲1発明の1とは、以下の<一致点>で一致し、<相違点1>?<相違点5>で相違する。 <一致点> 卵パックを受ける受け部を備えたロボットヘッドと、 ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能な移送部と、 移送部の動きを制御する制御部とを備え、 制御部は、移動式のラックに設けられた棚板の下方の空間に、卵パックを移動させる、卵パックの移載ロボットシステム。 <相違点1> 「卵パックを受ける受け部」に関して、本件発明1は、「卵パックを把持する把持部」であるのに対して、甲1発明の1は、「卵容器を載せる下板部」である点。 <相違点2> 「移送部」に関して、本件発明1は、「ロボットアーム」であるのに対して、甲1発明の1は、「ハンド移送部」である点。 <相違点3> 本件発明1は、制御部がロボットヘッドの動きを制御するのに対して、甲1発明の1は、スライド制御部がハンド部の動きを制御するか不明である点。 <相違点4> 「棚板」に関して、本件発明1は、「折り畳み式の棚板」であるのに対して、甲1発明の1は、「棚板」である点。 <相違点5> 本件発明1は、把持部で把持される卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所にロボットアームの先端を位置させるのに対して、甲1発明の1は、ハンド移送部の先端が、卵容器の重心よりも棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に位置しているか不明である点。 (イ)上記<相違点1>について検討する。 甲1発明の1の課題は、高さ方向に制約がある収容体にも卵容器を運ぶことができる卵容器移送装置を提供すること(段落0004参照。)であり、課題解決のための具体化手段として、下板部が卵容器を載置する構成を採用している。 ここで、下板部が卵容器を載置する構成は、上記課題を解決するために必要不可欠な、甲1発明の1に特有の構成であって、周知技術、慣用技術とはいえないから、当該構成を把持部に置き換えることは、課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえない。 よって、<相違点2>?<相違点5>について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明の1と同一又は実質的に同一であるとはいえない。 イ.本件発明2について (ア)本件発明2と甲1発明の2とを対比すると、以下の<一致点>で一致し、<相違点6>?<相違点9>で相違する。 <一致点> 移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法であって、 卵パックを受ける受け部を備えたロボットヘッドが届く範囲に移動式のラックを配置するステップと、 ロボットヘッドを移動させて、移動式のラックに設けられた棚板の下方の空間に卵パックを配置するステップとを備える、移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法。 <相違点6> 「卵パックを受ける受け部」に関して、本件発明2は、「卵パックを把持する把持部」であるのに対して、甲1発明の2は、「卵容器を載せる下板部」である点。 <相違点7> 「移送部」に関して、本件発明2は、「ロボットアーム」であるのに対して、甲1発明の2は、「ハンド移送部」である点。 <相違点8> 本件発明2は、把持部で把持される卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所にロボットアームの先端を位置させるのに対して、甲1発明の2は、ハンド移送部の先端が、卵容器の重心よりも棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に位置しているか不明である点。 <相違点9> 本件発明2は、棚板が折り畳み式であるのに対して、甲1発明の2は、棚板が折り畳み式か不明である点。 (イ)上記<相違点6>について検討する。 甲1発明の2の課題は、高さ方向に制約がある収容体にも卵容器を運ぶことができる卵容器移送装置を提供すること(段落0004参照。)であり、課題解決のための具体化手段として、下板部が卵容器を載置する構成を採用している。 ここで、下板部が卵容器を載置する構成は、上記課題を解決するために必要不可欠な、甲1発明の2特有の構成であって、周知技術、慣用技術とはいえないから、当該構成を把持部に置き換えることは、課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえない。 よって、<相違点7>?<相違点9>について検討するまでもなく、本件発明2と甲1発明の2とは実質的に同一であるとはいえない。 (2)甲11発明の1及び2との対比、判断 ア.本件発明1について (ア)本件発明1と甲11発明の1とを対比すると、甲11発明の1の「ロボットハンド」は、本件発明1の「ロボットヘッド」に相当し、以下同様に、「アーム部」は「ロボットアーム」に、「制御部」は「制御部」に、「マニピュレータ」は「移載ロボットシステム」にそれぞれ相当する。 甲11発明の1の「ロボットハンドを移動回転自在に保持する」ことは、「ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能な」ことに相当する。 また、甲11発明の1の「物品」と本件発明1の「卵パック」とは、「物品」である限りにおいて一致し、同様に、「物品を載置しうる固定フォークと可動フォークからなるフォーク群、物品の保持を支援する吸着パッド」と「卵パックを把持する把持部」とは、「物品を受ける受け部」の限りで、「棚板」と「折り畳み式の棚板」とは、「棚板」の限りで、「仮置棚」と「移動式のラック」とは、「ラック」の限りで一致する。 そうすると、本件発明1と甲11発明の1とは、以下の<一致点>で一致し、<相違点10>?<相違点14>で相違する。 <一致点> 物品を受ける受け部を備えたロボットヘッドと、 ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能なロボットアームと、 ロボットヘッドとロボットアームの動きを制御する制御部とを備え、 制御部は、ラックに設けられた棚板の下方の空間に物品を移動させる、移載ロボットシステム。 <相違点10> 「物品」に関して、本件発明1は、「卵パック」であるのに対して、甲11発明の1は、「物品」である点。 <相違点11> 「物品を受ける受け部」に関して、本件発明1は、「卵パックを把持する把持部」であるのに対して、甲11発明の1は、「物品を載置しうる固定フォークと可動フォークとからなるフォーク群と、物品の保持を支援する吸着パッド」である点。 <相違点12> 「棚板」に関して、本件発明1は、「折り畳み式の棚板」であるのに対して、甲11発明の1は、「棚板」である点。 <相違点13> 「ラック」に関して、本件発明1は、「移動式のラック」であるのに対して、甲11発明の1は、「仮置棚」である点。 <相違点14> 本件発明1は、把持部で把持される卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所にロボットアームの先端を位置させるのに対して、甲11発明の1は、アーム部の先端が、物品の重心よりも棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に位置しているか不明である点。 (イ)上記<相違点11>について検討する。 甲11発明の1の課題は、サイズや重量が異なる物品をコンベヤ・仮置棚などから仮置棚・かご車(台車)などに、効率よく、確実に、かつ安全に移載することができる物品移載装置を提供すること(段落0010参照。)である。そして、課題解決のための具体化手段として、中央部の固定フォークと両側の可動フォークとからなるフォーク群の上面に、物品を載置する構成を採用している。ここで、固定フォークと可動フォークに物品を載置する構成は、上記課題を解決するために必要不可欠な、甲11発明の1に特有の構成であって、周知技術、慣用技術とはいえないから、当該構成を把持部に置き換えることは、課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえない。 よって、<相違点10>、<相違点12>?<相違点14>について検討するまでもなく、本件発明1は、甲11の1発明と同一又は実質的に同一であるとはいえない。 イ.本件発明2について (ア)本件発明2と甲11発明の2とは、以下の<一致点>で一致し、<相違点15>?<相違点20>で相違する。 <一致点> 「ラックに積まれた状態の物品を生産する方法であって、 ロボットヘッドが届く範囲にラックを配置するステップと、 ロボットヘッドを移動させて、ラックに設けられた棚板の下方の空間に物品を配置するステップとを備える、ラックに積まれた状態の物品を生産する方法。」 <相違点15> 「物品」に関して、本件発明2は、「卵パック」であるのに対して、甲11発明の2は、「物品」である点。 <相違点16> 本件発明2は、卵パックが複数段に積まれるのに対して、甲11発明の2は、物品が複数段に積まれない点。 <相違点17> 「物品を受ける受け部」に関して、本件発明2は、「卵パックを把持する把持部」であるのに対して、甲11発明の2は、「物品を載置しうる固定フォークと可動フォークとからなるフォーク群と、物品の保持を支援する吸着パッド」である点。 <相違点18> 「ラック」に関して、本件発明2は、「移動式のラック」であるのに対して、甲11発明の2は、「仮置棚」である点。 <相違点19> 「棚板」に関して、本件発明2は、「折り畳み式の棚板」であるのに対して、甲11発明の2は、「棚板」である点。 <相違点20> 本件発明2は、把持部で把持される卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所にロボットアームの先端を位置させるのに対して、甲11発明の2は、アーム部の先端が、物品の重心よりも棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に位置しているか不明である点。 (イ)上記<相違点17>について検討する。 甲11発明の2の課題は、サイズや重量が異なる物品をコンベヤ・仮置棚などから仮置棚・かご車(台車)などに、効率よく、確実に、かつ安全に移載することができる物品移載装置を提供すること(段落0010参照。)である。そして、課題解決のための具体化手段として、中央部の固定フォークと両側の可動フォークとからなるフォーク群の上面に、物品を載置する構成を採用している。ここで、固定フォークと可動フォークに物品を載置する構成は、上記課題を解決するために必要不可欠な、甲11発明の2特有の構成であって、周知技術、慣用技術とはいえないから、当該構成を把持部に置き換えることは、課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえない。 よって、<相違点15>?<相違点16>、<相違点18>?<相違点20>について検討するまでもなく、本件発明2は、甲11発明の2と実質的に同一であるとはいえない。 2.理由2(新規性)及び理由3(進歩性)について (1)甲2発明の1及び2との対比、判断 ア.本件発明1について (ア)本件発明1と甲2発明の1とを対比すると、甲2発明の1の「把持部」は、本件発明1の「把持部」に相当し、以下同様に、「ロボットヘッド」は「ロボットヘッド」に、「ロボットアーム」は「ロボットアーム」に、「ラック」は「ラック」に、「移載ロボットシステム」は「移載ロボットシステム」にそれぞれ相当する。 また、「卵容器」と「卵パック」とは、「卵容器」である限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と甲2発明の1とは、以下の<一致点>で一致し、<相違点21>?<相違点25>で相違する。 <一致点> 卵容器を把持する把持部を備えたロボットヘッドと、ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能なロボットアームとを備え、ラックに卵容器を移動させる、卵容器の移載ロボットシステム。 <相違点21> 本件発明1は、移動させる対象が卵パックであるのに対して、甲2発明の1は、移動させる対象が卵容器である点。 <相違点22> 本件発明1は、ロボットヘッドとロボットアームの動きを制御する制御部を備えているのに対して、甲2発明の1は、制御部を備えているか不明である点。 <相違点23> 本件発明1は、棚板が折り畳み式であるのに対して、甲2発明の1は、棚板が存在するか不明である点。 <相違点24> 本件発明1は、ラックが移動式であるのに対して、甲2発明の1は、ラックが移動式か不明である点。 <相違点25> 本件発明1は、把持部で把持される卵パックの重心よりも、折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に、ロボットアームの先端を位置させるのに対して、甲2発明の1は、ロボットアームの先端を位置させる場所が不明である点。 (イ)上記<相違点23>について検討する。 甲2発明の1のラックにおいて、卵容器の支持構造は、棚板といえるような板状の構造ではなく、折り畳み式の棚板と置き換える動機が存在しない。 したがって、本件発明1の上記<相違点23>に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明1は、<相違点21>?<相違点22>、<相違点24>?<相違点25>について検討するまでもなく、甲2発明の1ではなく、甲2発明の1に基いて当業者が容易になし得たものであるともいえない。 イ.本件発明2について (ア)本件発明2と甲2発明の2とは、以下の<一致点>で一致し、<相違点26>?<相違点29>で相違する。 <一致点> ラックに積まれた状態の卵容器を生産する方法であって、 卵容器を把持する把持部を備えたロボットヘッドが届く範囲にラックを配置するステップと、 ロボットヘッドを移動させて、ラックに卵容器を配置するステップとを備える、ラックに積まれた状態の卵容器を生産する方法。 <相違点26> 本件発明2は、移動させる対象が卵パックであり、卵パックが複数段に積まれるのに対して、甲2発明の2は、移動させる対象が卵容器であり、卵容器が複数段に積まれない点。 <相違点27> 本件発明2は、棚板が折り畳み式であるのに対して、甲2発明の2は、棚板が存在するか不明である点。 <相違点28> 本件発明2は、ラックが移動式であるのに対して、甲2発明の2は、ラックが移動式か不明である点。 <相違点29> 本件発明2は、把持部で把持される卵パックの重心よりも、折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に、ロボットアームの先端を位置させるのに対して、甲2発明の2は、ロボットアームの先端を位置させる場所が不明である点。 (イ)上記<相違点27>について検討する。 甲2発明の2のラックにおいて、卵容器の支持構造は、棚板といえるような板状の構造ではなく、折り畳み式の棚板と置き換える動機が存在しない。 したがって、本件発明2の上記<相違点27>に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明2は、<相違点26>、<相違点28>?<相違点29>について検討するまでもなく、甲2発明の2ではなく、甲2発明の2に基いて当業者が容易になし得たものであるともいえない。 (2)甲3発明の1及び2との対比、判断 ア.本件発明1について (ア)本件発明1と甲3発明の1とは、以下の<一致点>で一致し、<相違点30>?<相違点34>で相違する。 <一致点> 卵容器を把持する把持部を備えたロボットヘッドと、ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能なロボットアームとを備え、ラックに卵容器を移動させる、卵容器の移載ロボットシステム。 <相違点30> 本件発明1は、移動させる対象が卵パックであるのに対して、甲3発明の1は、移動させる対象が卵容器である点。 <相違点31> 本件発明1は、ロボットヘッドとロボットアームの動きを制御する制御部を備えているのに対して、甲3発明の1は、制御部を備えているか不明である点。 <相違点32> 本件発明1は、棚板が折り畳み式であるのに対して、甲3発明の1は、棚板が存在しない点。 <相違点33> 本件発明1は、ラックが移動式であるのに対して、甲3発明の1は、ラックが移動式であるか不明である点。 <相違点34> 本件発明1は、把持部で把持される卵パックの重心よりも、折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に、ロボットアームの先端を位置させるのに対して、甲3発明の1は、ロボットアームの先端を位置させる場所が不明である点。 (イ)上記<相違点32>について検討する。 甲3発明の1のラックにおいて、卵容器の支持構造は、棚板といえるような板状の構造ではなく、折り畳み式の棚板と置き換える動機が存在しない。 したがって、本件発明1の上記<相違点32>に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明1は、<相違点30>?<相違点31>、<相違点33>?<相違点34>について検討するまでもなく、甲3発明の1ではなく、甲3発明の1に基いて当業者が容易になし得たものであるともいえない。 イ.本件発明2について (ア)本件発明2と甲3発明の2とは、以下の<一致点>で一致し、<相違点35>?<相違点39>で相違する。 <一致点> ラックに積まれた状態の卵容器を生産する方法であって、 卵容器を把持する把持部を備えたロボットヘッドが届く範囲にラックを配置するステップと、 ロボットヘッドを移動させて、ラックに卵容器を配置するステップとを備える、ラックに積まれた状態の卵容器を生産する方法。 <相違点35> 本件発明2は、移動させる対象が卵パックであり、卵パックが複数段に積まれるのに対して、甲3発明の2は、移動させる対象が卵容器であり、卵容器が複数段に積まれない点。 <相違点36> 本件発明2は、ロボットヘッドとロボットアームの動きを制御する制御部を備えているのに対して、甲3発明の2は、制御部を備えているか不明である点。 <相違点37> 本件発明2は、棚板が折り畳み式であるのに対して、甲3発明の2は、棚板が存在しない点。 <相違点38> 本件発明2は、ラックが移動式であるのに対して、甲3発明の2は、ラックが移動式であるか不明である点。 <相違点39> 本件発明2は、把持部で把持される卵パックの重心よりも、折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に、ロボットアームの先端を位置させるのに対して、甲3発明の2は、ロボットアームの先端を位置させる場所が不明である点。 (イ)上記<相違点37>について検討する。 甲3発明の2のラックにおいて、卵容器の支持構造は、棚板といえるような板状の構造ではなく、折り畳み式の棚板と置き換える動機が存在しない。 したがって、本件発明2の上記<相違点37>に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明2は、<相違点35>?<相違点36>、<相違点38>?<相違点39>について検討するまでもなく、甲3発明の2ではなく、甲3発明の2に基いて当業者が容易になし得たものであるともいえない。 (3)甲4発明の1及び2との対比、判断 ア.本件発明1について (ア)本件発明1と甲4発明の1とは、以下の<一致点>で一致し、<相違点40>?<相違点41>で相違する。 <一致点> 卵パックを把持する把持部を備えたロボットヘッドと、 ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能なロボットアームと、 把持部で把持される卵パックの重心よりも一端側にずれた場所にロボットアームの先端を位置させて、把持部で把持した卵パックを移動させる、卵パックの移載ロボットシステム。 <相違点40> 本件発明1は、ロボットヘッドとロボットアームの動きを制御する制御部を備えているのに対して、甲4発明の1は、制御部を備えているか不明である点。 <相違点41> 本件発明1は、把持部で把持される卵パックの重心よりも、折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に、ロボットアームの先端を位置させて、移動式のラックに設けられた折り畳み式の棚板の下方の空間に、把持部で把持した卵パックを移動させるのに対して、甲4発明の1は、折り畳み式の棚板、移動式のラックが存在しない点。 (イ)上記<相違点41>について検討する。 甲4発明の1は、卵パックを移動させる対象が段ボール箱であり、段ボール箱と、折り畳み式の棚板を備える移動式のラックとは、全く異なる形状を有している。してみれば、段ボール箱を、折り畳み式の棚板を備える移動式のラックに置き換える動機が存在しない。 したがって、本件発明1の上記<相違点41>に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明1は、<相違点40>について検討するまでもなく、甲4発明の1ではなく、甲4発明の1に基いて当業者が容易になし得たものであるともいえない。 イ.本件発明2について (ア)本件発明2と甲4発明の2とは、以下の<一致点>で一致し、<相違点42>で相違する。 <一致点> 複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法であって、 把持部で把持される卵パックの重心よりも一端側にずれた場所に、ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能なロボットアームの先端を位置させるステップと、 ロボットヘッドを移動させて、卵パックを配置するステップとを備える、複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法。 <相違点42> 本件発明2は、ロボットヘッドが届く範囲に移動式のラックを配置するステップと、卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に、ロボットアームの先端を位置させるステップと、移動式のラックに設けられた折り畳み式の棚板の下方の空間に卵パックを配置するステップとを備えるのに対して、甲4発明の2は、移動式のラック、折り畳み式の棚板が存在しない点。 (イ)上記<相違点42>について検討する。 甲4発明の2は、卵パックを移動させる対象が段ボール箱であり、段ボール箱と、折り畳み式の棚板を備える移動式のラックとは、全く異なる形状を有している。してみれば、段ボール箱を、折り畳み式の棚板を備える移動式のラックに置き換える動機が存在しない。 したがって、本件発明2の上記<相違点42>に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明2は、甲4発明の2ではなく、甲4発明の2に基いて当業者が容易になし得たものであるともいえない。 3.理由3(進歩性)について (1)甲5発明との対比、判断 ア.本件発明1について (ア)本件発明1と甲5発明とを対比すると、甲5発明の「折り畳まれる棚板」は、本件発明1の「折り畳み式の棚板」に相当し、以下同様に、「鶏卵ケース」は「卵パック」に、「搬送用ラック」は「移動式のラック」にそれぞれ相当する。 そうすると、本件発明1と甲5発明とは、以下の<相違点43>で相違する。 <相違点43> 本件発明1は、卵パックを把持する把持部を備えたロボットヘッドと、 前記ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能なロボットアームと、 前記ロボットヘッドと前記ロボットアームの動きを制御する制御部とを備え、 前記制御部は、前記把持部で把持される卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に前記ロボットアームの先端を位置させて、移動式のラックに設けられた折り畳み式の棚板の下方の空間に、前記把持部で把持した卵パックを移動させる、卵パックの移載ロボットシステムであるのに対して、甲5発明は、折り畳まれる棚板を備え、棚板上に鶏卵ケースが積み重ねられる、搬送用ラックである点。 (イ)上記<相違点43>について検討する。 甲5発明の搬送用ラックには、ロボットヘッドで卵パックを移載する際に障害物となる、扉10、上方に向かって湾曲している略コ字形の前枠81、折り畳まれた棚板80などが存在する(図1参照。)。そうすると、甲2?4、甲6?10に示されたように、移載ロボットシステムが周知であったとしても、障害物が存在する甲5発明の搬送用ラックに適用することには動機付けがない。 もし仮に、甲5発明に甲2?4、甲6?10に示された移載ロボットシステムを適用できたとしても、甲2?4、甲6?10には、上記<相違点40>に係る構成が記載されてないので、本件発明1には想到しない。 したがって、本件発明1の上記<相違点43>に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明1は、甲5発明及び甲2?4、甲6?10に開示された事項に基いて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。 イ.本件発明2について (ア)本件発明2と甲5発明とは、以下の<相違点44>で相違する。 <相違点44> 本件発明2は、卵パックを把持する把持部を備えたロボットヘッドが届く範囲に前記移動式のラックを配置するステップと、 把持部で把持される卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に、ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能なロボットアームの先端を位置させるステップと、 ロボットヘッドを移動させて、移動式のラックに設けられた折り畳み式の棚板の下方の空間に卵パックを配置するステップとを備える、移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法であるのに対して、甲5発明は、把持部、ロボットヘッド、ロボットアームを有しない点。 (イ)上記<相違点44>について検討する。 甲5発明の搬送用ラックには、ロボットヘッドで卵パックを移載する際に障害物となる、扉10、上方に向かって湾曲している略コ字形の前枠81、折り畳まれた棚板80などが存在する(図1参照。)。そうすると、甲2?4、甲6?10に示されたように、移載ロボットシステムが周知であったとしても、障害物が存在する甲5発明の搬送用ラックに適用することには動機付けがない。 もし仮に、甲5発明に甲2?4、甲6?10に示された移載ロボットシステムを適用できたとしても、甲2?4、甲6?10には、上記<相違点44>に係る構成が記載されてないので、本件発明2には想到容易であるとはいえない。 したがって、本件発明2の上記<相違点44>に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明2は、甲5発明及び甲2?4、甲6?10に開示された事項に基いて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。 4.理由4(明確性) (1)請求項1には、「前記制御部は、前記把持部で把持される卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に前記ロボットアームの先端を位置させて、移動式のラックに設けられた折り畳み式の棚板の下方の空間に、前記把持部で把持した卵パックを移動させる」と記載されている。 また、請求項2には、「前記把持部で把持される卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に、前記ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能なロボットアームの先端を位置させるステップ」と記載されている。 ここで「把持される卵パック」と「把持した卵パック」との記載の違いについて検討する。本件特許公報の段落0024には、「制御部3は、把持部11で把持される卵パックPの重心よりも長手方向一端側にずれた場所に、ロボットアーム2の先端21を位置させて卵パックPを移動させる。」と記載されていることより、移動状態にある卵パック、すなわち、既に把持されている状態の卵パックについても、「把持される卵パック」と表現されている。つまり、「把持される卵パック」、「把持した卵パック」との記載は、両者とも、既に把持されている状態の卵パックのことを意味していると理解できる。 そのように用語を理解して、本件特許公報の図4をみれば、ロールインナー内に位置する卵パックについて、ロボットアームの先端の位置は、把持部で既に把持されている状態の卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に位置していることが見て取れる。 そうすると、上記請求項1及び2の記載自体は、明確であり、本件発明1?2は、発明の詳細な説明に記載されている事項とも整合している。 よって、本件発明1?2は、明確である。 (2)本件発明2は「移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法」であり、前記方法は、「ロボットヘッドが届く範囲に前記移動式のラックを配置するステップ」、「前記把持部で把持される卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に、前記ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能なロボットアームの先端を位置させるステップ」及び「前記ロボットヘッドを移動させて、前記移動式のラックに設けられた折り畳み式の棚板の下方の空間に卵パックを配置するステップ」から構成されている。前記各ステップの記載について検討しても、不明確な点はない。 また、本件発明2は、「前記ロボットヘッドを移動させて、前記移動式のラックに設けられた折り畳み式の棚板の下方の空間に卵パックを配置するステップ」を備えることで、「移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する」(【0014】)ことができることは明らかであり、その役割を果たすために、不足している事項はない。 よって、本件発明1?2は、明確である。 5.理由5(実施可能要件)及び理由6(サポート要件) 上記4.(1)で示したように、本件発明1の「前記制御部は、前記把持部で把持される卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に前記ロボットアームの先端を位置させて、移動式のラックに設けられた折り畳み式の棚板の下方の空間に、前記把持部で把持した卵パックを移動させる」、本件発明2の「前記把持部で把持される卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に、前記ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能なロボットアームの先端を位置させるステップ」は、発明の詳細な説明の【0024】、【図4】に記載されている事項である。 よって、本件発明1?2について、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、また、本件発明1?2は、発明の詳細な説明に記載したものである。 6.理由7(新規事項) 令和2年10月13日提出の手続補正書により、請求項1に記載された「前記制御部は、前記把持部で把持される卵パックの重心よりも長手方向一端側にずれた場所に前記ロボットアームの先端を位置させて、移動式のラックに設けられた折り畳み式の棚板の下方の空間に、前記把持部で把持した卵パックを移動させる」は、「前記制御部は、前記把持部で把持される卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に前記ロボットアームの先端を位置させて、移動式のラックに設けられた折り畳み式の棚板の下方の空間に、前記把持部で把持した卵パックを移動させる」と補正された。また、請求項2に記載された「前記把持部で把持される卵パックの重心よりも長手方向一端側にずれた場所に、前記ロボットヘッドの位懺姿勢を変更可能なロボットアームの先端を位置させるステップと」は、「前記把持部で把持される卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所に、前記ロボットヘッドの位懺姿勢を変更可能なロボットアームの先端を位置させるステップと」と補正された。 ここで、願書に最初に添付された明細書の段落【0034】、【0039】及び同図面の【図8】を参照すると、ロボットアーム2の先端21が、卵パックPの重心よりも折り畳み式の棚板R1から遠ざかる方向へ、卵パックPの長手方向一端側にずれた場所に位置することが見て取れる一方で、ロボットヘッド1は、前記ずれた場所に位置することは見て取れない。そうすると、ロボットヘッドの位置をずらすことなく、ロボットアームの先端の位置をずらすことによって、折り畳み式の棚板が存在する空間内であっても卵パックを適切に移動させて配置できるという、本件発明の課題は解決されるものと解される。 よって、上記請求項1および請求項2に係る補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。 なお、申立人は、特許異議申立書において、「令和2年10月13日付け提出の意見書において、補正の根拠として『請求項1及び2の補正は、明細書の段落【0030】【図1】等の記載から自明な範囲のものです。』と記載されている。 ・・・ 明細書の段落0030には『【0030】なお、卵パックPを移動させるロールインナーR内の収納空間R2には、先に積まれた卵パックPの上面と収納状態の棚板R1の下面に囲まれた空間(奥側の空間)が含まれる。図4に示すように、奥側の空間に卵パックPを移動させる際には、ロボットアーム2の先端21およびロボットヘッド1は、奥側の柵R3から離れた側(手前側)に位置する。そして、卵パックPは、奥側の空間に縦向きに配置される。』と記載されている。図1、8、10においても、「ロボットアーム2の先端21およびロボットヘッド1は、奥側の柵R3から離れた側(手前側)に位置」している。つまり、ロボットアームの先端のみならずロボットヘッドも同様に、「把持部で把持される卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所にロボットアームの先端およびロボットヘッドを位置させる」ことが必要であり、この構成によって意見書で主張された『折り畳み式の棚板が存在する空間内であっても、把持部で把持される卵パックの重心よりも折り畳み式の棚板から遠ざかる方向へ長手方向一端側にずれた場所にロボットアームの先端を位置させることで、卵パックを適切に移動させて配置できる』との効果が奏されるものである。 従って、補正された事項は、当初明細書および特許請求の範囲に記載された範囲を超えてなされたものであって、いわゆる新規事項の追加に該当する。」と主張している。 ここで、願書に最初に添付された明細書の段落【0034】、【0039】及び同図面の【図8】を参照すると、ロボットアーム2の先端21が、卵パックPの重心よりも折り畳み式の棚板R1から遠ざかる方向へ、卵パックPの長手方向一端側にずれた場所に位置することが見て取れる一方で、ロボットヘッド1は、前記ずれた場所に位置することは見て取れない。そうすると、ロボットヘッドの位置をずらすことなく、ロボットアームの先端の位置をずらすことによって、折り畳み式の棚板が存在する空間内であっても卵パックを適切に移動させて配置できるという、本件発明の課題は解決されるものと解される。 よって、上記申立人の主張は、採用できない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2021-10-27 |
出願番号 | 特願2020-137712(P2020-137712) |
審決分類 |
P
1
651・
536-
Y
(B65B)
P 1 651・ 55- Y (B65B) P 1 651・ 121- Y (B65B) P 1 651・ 161- Y (B65B) P 1 651・ 537- Y (B65B) P 1 651・ 113- Y (B65B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 加藤 信秀 |
特許庁審判長 |
久保 克彦 |
特許庁審判官 |
藤井 眞吾 矢澤 周一郎 |
登録日 | 2020-12-09 |
登録番号 | 特許第6807091号(P6807091) |
権利者 | 株式会社ナベル |
発明の名称 | 卵パックの移載ロボットシステム、および移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法 |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |