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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
管理番号 1379875
異議申立番号 異議2021-700732  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-27 
確定日 2021-11-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第6820808号発明「硬化性組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6820808号の請求項1乃至10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6820808号(請求項の数10。以下、「本件特許」という。)は、2017年(平成29年)7月20日にされた出願に係る特許であって、令和3年1月7日に設定登録がされ(特許掲載公報の発行日は同年1月27日である。)、令和3年7月27日に、本件特許の請求項1?10に係る特許に対して、特許異議申立人である林法子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
請求項1?10に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、請求項1?10に係る発明を、順に「本件発明1」等という。)。

「【請求項1】
(A)ポリオキシアルキレン骨格を有する加水分解性シリル基含有ポリマー、(B)反応性可塑剤および(C)重量平均分子量が400?5000であり、ポリオキシアルキレン骨格を有し、加水分解性シリル基を含有しない可塑剤を含む硬化性組成物であって、反応性可塑剤(B)は、以下の式(1):
R(CH_(3)O)_(2)Si- (1)
〔式中、Rは、水素原子または炭素原子数が1または2であるアルキル基を示す〕
で示されるジメトキシシリル基を含有し、およびアクリル骨格を有するポリマー(B-1)、ならびにトリメトキシシリル基を含有し、およびアクリル骨格を有するポリマー(B-2)を含み、(B)中の式(1)で示されるジメトキシシリル基のモル比は、ジメトキシシリル基とトリメトキシシリル基のモル数の合計に対して20モル%以上80モル%以下である硬化性組成物。
【請求項2】
加水分解性シリル基含有ポリマー(A)の加水分解性シリル基は、式(1)で示されるジメトキシシリル基である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
加水分解性シリル基含有ポリマー(A)の平均加水分解性シリル基数は1以上である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
加水分解性シリル基含有ポリマー(A)は、重量平均分子量が5000?50000である、請求項1?3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
反応性可塑剤(B)の平均加水分解性シリル基数は0.5以上である、請求項1?4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項6】
反応性可塑剤(B)の重量平均分子量は1000?20000である、請求項1?5のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項7】
可塑剤(C)は末端OH基を含む、請求項1?6のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項8】
可塑剤(C)は2個の末端OH基を含む、請求項1?7のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項9】
硬化性組成物は、硬化性組成物の質量を基準に、加水分解性シリル基含有ポリマー(A)10?50質量%、反応性可塑剤(B)1?40質量%、可塑剤(C)1?20質量%を含む、請求項1?8のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項10】
JIS A 1439 5.17「耐久性試験」(2010)における耐久性区分8020を満たす、請求項1?9のいずれかに記載の硬化性組成物。」

第3 特許異議申立ての申立理由
申立人は、本件発明1?10は下記1?7のとおりの理由があるから、本件特許の請求項1?10に係る特許は、特許法第113条第2号及び第4号に該当し、取り消されるべきものであると主張し、証拠方法として、下記8の甲第1号証?甲第6号証(以下、順に「甲1」等という。)を提出した。

1 申立理由1-1(甲1を主引用文献とする新規性)
請求項1?10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1?10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2 申立理由1-2(甲1を主引用文献とする進歩性)
請求項1?10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3 申立理由2(実施可能要件)
発明の詳細な説明に、本件発明1において特定された可塑剤(C)が備える特徴が、本件発明の課題の解決にどのように貢献するのかについて明確かつ十分な説明がなされていないので、当業者が上記課題を解決できる硬化性組成物を実施するには過度の試行錯誤を要する。
したがって、本件特許は、明細書の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
4 申立理由3(明確性要件)
本件発明1には、ポリマー(B-1)がトリメトキシシリル基を含有しないこと、および、ポリマー(B-2)がジメトキシシリル基を含有しないことが規定されていないから、ジメトキシシリル基およびトリメトキシシリル基を含有し、アクリル骨格を有するポリマーが、ポリマー(B-1)に該当するのか、ポリマー(B-2)に該当するのか、あるいは両方に該当するのかが不明である。
したがって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
5 申立理由4(サポート要件)
実施例1?4の硬化性組成物は、可塑剤(C)として、〔C-1〕または〔C-2〕と共に、〔C-3〕を含有しているし、発明の詳細な説明には、〔C-3〕を用いることの技術的意味について何ら説明されていないから、本件発明1?10の硬化性組成物が〔C-3〕を含有しない場合に、実施例1?4と同じように上記課題を解決できることを具体的に確認できない。
したがって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
6 申立理由5-1(甲2を主引用文献とする新規性)
請求項1?10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1?10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
7 申立理由5-2(甲2を主引用文献とする進歩性)
請求項1?10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲2に記載された発明及び甲2?甲6に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

8 証拠方法
甲1:再公表2016/035718号公報
甲2:特開2004-83606号公報
甲3:AGC EXCENOLの製品カタログ、
甲4:特開2009-67857号公報
甲5:再公表2007/094274号公報
甲6:再公表2007/094275号公報

第4 当審の判断
1 申立理由3(明確性要件)
事案に鑑みて、申立理由3から判断する。
(1)本件発明1について
本件発明1は、反応性可塑剤(B)がポリマー(B-1)とポリマー(B-2)を含むことを発明特定事項とするものであるから、反応性可塑剤(B)はポリマー(B-1)とポリマー(B-2)という二種のポリマーの混合物であると解される。また、本件明細書の【0040】にも同内容の記載がある。
そして、本件明細書には、ポリマー(B-1)の例として、(i)(a)アクリル酸アルキルエステルと、(b)ビニルジメトキシシラン、必要に応じてビニルトリメトキシシラン等の他のビニルアルコキシシランとの混合物とを、ラジカル共重合させて製造されるポリマー、(ii)(a)ビニル系モノマーと、(b)ジメトキシシリル基含有ジスルフィド化合物、必要に応じてビス(トリメトキシシリルメチル)ジスルフィド等との混合物とを光重合に付すことによって製造されるポリマーであること(【0038】)が記載され、ポリマー(B-1)がトリメトキシシリル基を含有してもよいことが示唆されているが、以上の記載は、ポリマー(B-1)が、トリメトキシシリル基を含む場合があっても、必要に応じて含有可能なことを示すものに過ぎないと解される。
一方、本件明細書の【0040】?【0042】には、ポリマー(B-2)の原料モノマーや分子構造について記載されているが、ポリマー(B-2)がジメトキシシリル基を含有することは記載も示唆もされておらず、ポリマー(B-2)はジメトキシシリル基含有モノマーを実質的に含まないポリマーであると解するのが相当である。そして、実施例1?4においても、反応性可塑剤(B)として、ジメトキシシリル基とトリメトキシシリル基のうち、ジメトキシシリル基のみを含有するポリマーとトリメトキシシリル基のみを含有するポリマーの混合物であるアクリル系反応性可塑剤A?Cを用いることが記載されている(【0098】)。
そうすると、本件発明1の「反応性可塑剤(B)」におけるポリマー(B-1)とポリマー(B-2)とは、ジメトキシシリル基含有モノマーの有無により構造上明確に区別され、ジメトキシシリル基および必要に応じてトリメトキシシリル基を含有し、アクリル骨格を有するポリマーは、ポリマー(B-1)に該当するものであって、ポリマー(B-2)に該当しないことは明らかであるといえる。
したがって、本件発明1は明確である。

(2)本件発明2?10について
本件発明2?10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明1について上記(1)で述べたのと同じ理由により、明確である。

(3)まとめ
以上のことから、申立理由3(明確性要件)によっては、本件発明1?10に係る特許を取り消すことはできない。

2 申立理由1-1(新規性)及び申立理由1-2(進歩性)
(1)甲1に記載された事項及び甲1発明
甲1には、特許請求の範囲の請求項1に、「架橋性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位を有する加水分解性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)と、分子鎖末端もしくは分子鎖末端部位のみに架橋性シリル基を有する有機重合体(B)を含有する硬化性組成物であって、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)が非ニトリル系アゾ系重合開始剤に由来する基を有する硬化性組成物」が記載されており、当該硬化性組成物について、【0014】(発明の効果)、【0055】及び【0056】(上記有機重合体(B)の分子量)、【0114】?【0119】(高分子可塑剤)、【0170】(硬化性組成物の用途)、【0178】及び【0179】(上記重合体(A)の合成例)、【0180】及び【0181】(上記重合体(B)の合成例)、【0199】及び【0200】(硬化性組成物の実施例)の記載がある。
そして、甲1には、請求項1に係る硬化性組成物の具体例である実施例8に着目し、上記硬化性組成物を構成する上記重合体(A)の合成例2および上記重合体(B)の合成例(B-1)を参照すると、以下の発明が記載されているといえる。

「フラスコでイソブタノールを105℃に加熱し、窒素雰囲気下で攪拌しながら、メタクリル酸メチル(MMA)3.0重量部、アクリル酸ブチル(BA)73.2重量部、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル(TSMA)1.9重量部、メタクリル酸3-(メチルジメトキシシリル)プロピル(DSMA)1.9重量部、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)20.0重量部からなるアクリル酸エステル系単量体と、重合開始剤であるジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(V-601)と、イソブタノール(IBA)からなる溶液を滴下した後に重合を行い、加熱減圧下でイソブタノールを除去して得た、透明で粘稠なポリアクリル系重合体の液体(以下、「合成例2のポリアクリル系重合体」という。) 50重量部、
ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量約2,000)を開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行って、両末端に水酸基を有する、数平均分子量27,900(末端基換算分子量17700)、分子量分布Mw/Mn=1.21のポリオキシプロピレン重合体(P-1)を得て、この重合体(P-1)の水酸基に対して1.2モル当量のナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液を添加しメタノールを留去した後、この重合体(P-1)の水酸基に対して1.5モル当量の塩化アリルを添加して未精製のアリル基末端ポリオキシプロピレンを得て、これにn-ヘキサンと水を混合攪拌して精製し、末端部位にアリル基を有するポリオキシプロピレン重合体(Q-1)を得て、重合体(Q-1)500gに対して白金ジビニルジシロキサン錯体溶液150μlを加え、撹拌しながらジメトキシメチルシラン4.8gを滴下して、6%酸素条件下、100℃で6時間反応させて得た、ジメトキシメチルシリル基を1つの末端に平均0.8個、1分子中に平均1.6個有する、数平均分子量約28,500のポリオキシプロピレン(B-1) 50重量部、
PPG3000(分子量3000のジオール型ポリプロピレングリコール) 20重量部、
表面処理膠質炭酸カルシウム(白艶華CCR) 50重量部、
重質炭酸カルシウム(ホワイトンSB) 50重量部、
チクソ性付与剤(ディスパロン6500) 2重量部
を混練りした後、120℃で2時間減圧脱水して50℃以下に冷却し、脱水剤であるビニルトリメトキシシラン(Silquest A-171)2重量部、接着性付与剤であるγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(Silquest A-1120)3重量部、硬化触媒であるジブチル錫ビスアセチルアセトナート(ネオスタンU-220H)1重量部を加えて混練して得た硬化性組成物」(以下、「甲1発明」という。)

(3)本件発明1について
ア 対比
本件発明1の「反応性可塑剤(B)」は「ポリマー(B-1)」及び「ポリマー(B-2)」を含むものであり、「1 申立理由3(明確性要件)」で述べたように、「ポリマー(B-1)」と「ポリマー(B-2)」はジメトキシシリル基含有モノマーの有無により、構造上明確に区別されるもの同士であって、「ポリマー(B-1)」はジメトキシシリルを含有するのに対し、「ポリマー(B-2)」はジメトキシシリルを含有しないものと解される。
甲1発明の「ジメトキシメチルシリル基を1つの末端に平均0.8個、1分子中に平均1.6個有する、数平均分子量約28,500のポリオキシプロピレン(B-1)」における「ジメトキシメチルシリル基」及び「ポリオキシプロピレン」は、それぞれ本件発明1の「加水分解性シリル基」及び「ポリオキシアルキレン骨格」に相当し、甲1発明の上記「ポリオキシプロピレン(B-1)」は、本件発明1の「(A)ポリオキシアルキレン骨格を有する加水分解性シリル基ポリマー」に相当する。
甲1発明の「PPG3000(分子量3000のジオール型ポリプロピレングリコール)」は、申立書の20頁下6?下2行に示された特開2017-115046号公報(【0055】)等からみて、上記「分子量」が重量平均分子量を意味することは明らかであるといえるから、本件発明1の「(C)重量平均分子量が400?5000であり、ポリオキシアルキレン骨格を有し、加水分解性シリル基を含有しない可塑剤」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「(A)ポリオキシアルキレン骨格を有する加水分解性シリル基含有ポリマー、および(C)重量平均分子量が400?5000であり、ポリオキシアルキレン骨格を有し、加水分解性シリル基を含有しない可塑剤を含む硬化性組成物。」の点で一致し、次の点で相違するといえる。

相違点1:本件発明1は、「(B)反応性可塑剤」を含み、「反応性可塑剤(B)は、以下の式(1):
R(CH_(3)O)_(2)Si- (1)
〔式中、Rは、水素原子または炭素原子数が1または2であるアルキル基を示す〕
で示されるジメトキシシリル基を含有し、およびアクリル骨格を有するポリマー(B-1)、ならびにトリメトキシシリル基を含有し、およびアクリル骨格を有するポリマー(B-2)を含み、(B)中の式(1)で示されるジメトキシシリル基のモル比は、ジメトキシシリル基とトリメトキシシリル基のモル数の合計に対して20モル%以上80モル%以下である」のに対して、甲1発明は、「合成例2のポリアクリル系重合体」を含むものである点

イ 検討
相違点1について検討する。
「1 申立理由3(明確性要件)」で述べたように、本件発明1の「(B)反応性可塑剤」は「ジメトキシシリル基を含有し、およびアクリル骨格を有するポリマー(B-1)」と、実質的にジメトキシシリル基を含まない「ポリマー(B-2)」との混合物である。そして、「アクリル骨格」は「(メタ)アクリル酸エステル構造単位を含むもの」(本件明細書【0036】)である。
一方、甲1発明の「合成例2のポリアクリル系重合体」は、その原料モノマーからみて、メタクリル酸3-(メチルジメトキシシリル)プロピル(DSMA)に由来するメチルジメトキシシリル基と、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル(TSMA)に由来するトリメトキシシリル基と、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸ブチル(BA)及びアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造とを有する単一のポリマーであり、甲1発明は、少なくとも本件発明1の「ポリマー(B-2)」に相当する成分を含まないものである。
このことから、甲1発明の「合成例2のポリアクリル系重合体」は、本件発明1の「(B)反応性可塑剤」に相当するものではなく、相違点1は実質的な相違点であるといえる。
そうすると、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。

次に、申立理由1-2(進歩性)について検討する。
甲1には、甲1発明の「合成例2のポリアクリル系重合体」である「加水分解性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)」の構造単位及び合成方法が【0017】?【0039】に記載され、上記重合体(A)の具体例である合成例1?6が【0178】、【0179】及び【0181】の表1に記載されているが、上記重合体(A)を、本件発明1の「ジメトキシシリル基を含有し、およびアクリル骨格を有するポリマー(B-1)、ならびにトリメトキシシリル基を含有し、およびアクリル骨格を有するポリマー(B-2)を含」む混合物とすることは記載されていないし、ましてや、本件発明1の「(B)中の式(1)で示されるジメトキシシリル基のモル比は、ジメトキシシリル基とトリメトキシシリル基のモル数の合計に対して20モル%以上80モル%以下である」ものとすることは記載も示唆もされていない。また、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項が本件出願時の技術常識であるとはいえない。
そうすると、甲1発明において、「合成例2のポリアクリル系重合体」に代えて、本件発明1の「ジメトキシシリル基を含有し、およびアクリル骨格を有するポリマー(B-1)、ならびにトリメトキシシリル基を含有し、およびアクリル骨格を有するポリマー(B-2)を含」むものとすること、さらに「(B)中の式(1)で示されるジメトキシシリル基のモル比は、ジメトキシシリル基とトリメトキシシリル基のモル数の合計に対して20モル%以上80モル%以下である」ものとすることが、甲1の記載から動機付けられるとはいえず、本件発明1は、甲1発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件発明1は、「硬化後の耐候性および塗料適性が良好であり、同時に優れた動的耐久性をも発揮することができるため、建築用シーリング材、特に目地の動きに対する追従性が要求される中高層ビル等に用いるシーリング材として好適である」(本件明細書の【0008】)という効果を奏するものであり、前記効果は本件明細書の実施例と比較例からも確認できるものであるところ、甲1には、本件発明1の発明特定事項により奏される前記効果について、具体的な記載は存しない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲1に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明2?10について
本件発明2?10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記(3)で述べたのと同じ理由により、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?10は、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由1-1(新規性)及び申立理由1-2(進歩性)によっては、本件発明1?10に係る特許を取り消すことはできない。

3 申立理由5-1(新規性)及び申立理由5-2(進歩性)
(1)甲2に記載された事項及び甲2発明
甲2には、特許請求の範囲の請求項1に、「シロキサン結合を形成することによって架橋しうるケイ素含有官能基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)、シロキサン結合を形成することによって架橋しうるケイ素含有官能基を有し、分子鎖がアクリル酸アルキルエステル単量体単位及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単量体単位からなる共重合体(B)を含む硬化性組成物において、ケイ素含有官能基を有し、分子鎖がアクリル酸アルキルエステル単量体単位及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単量体単位からなる共重合体(B)のケイ素含有官能基のうち、少なくとも一部がジアルコキシシリル基であり、かつ、少なくとも一部がトリアルコキシシリル基であることを特徴とする硬化性組成物」が記載されており、上記硬化性組成物について、請求項4(硬化性組成物の具体例)、【0009】(発明の課題)、【0045】(共重合体(B)の分子量)、【0066】(上記重合体(A)と上記共重合体(B)の使用割合)、【0088】(可塑剤)、【0103】(上記重合体(A)の合成例2)、【0105】(上記共重合体(B)の合成例8及び9)、【0113】(実施例4)の記載がある。
そして、甲2には、請求項1に係る硬化性組成物の具体例である実施例4に着目し、上記硬化性組成物を構成する上記重合体(A)の合成例2および上記共重合体(B)の合成例8及び9を参照すると、以下の発明が記載されているといえる。

「トルエン700gを110℃に加熱し、モノマー混合物(アクリル酸ブチル250部、メタクリル酸メチル600部、メタクリル酸ステアリル50部、γ-メタキリロキシプロピルメチルジメトキシシランを100部)に、重合開始剤(ノルマルドデシルメルカプタンを70部、アゾビス-2-メチルブチロニトリルを20部)を溶解した溶液を6時間かけて滴下した後、2時間、後重合を行って得た、アクリル樹脂溶液(以下、「合成例8の共重合体(B)」という。)30重量部、及び、
トルエン700gを110℃に加熱し、モノマー混合物(アクリル酸ブチル250部、メタクリル酸メチル600部、メタクリル酸ステアリル50部、γ-メタキリロキシプロピルメチルトリメトキシシランを100部)に、重合開始剤(ノルマルドデシルメルカプタン70部、アゾビス-2-メチルブチロニトリル20部)を溶解した溶液を6時間かけて滴下した後、2時間、後重合を行って得た、アクリル樹脂溶液(以下、「合成例9の共重合体(B)」という。)10重量部に、
Mnが2000のポリオキシプロピレングリコール900gとMnが3000のポリオキシプロピレントリオール100gに、ナトリウムメトキサイドのメタノール溶液を添加し、加熱減圧下メタノールを留去してポリプロピレンオキシドの末端をナトリウムアルコキシドに変換した後、ジクロロメタンを添加して高分子量し、その後、次に塩化アリルを反応させて、未反応の塩化アリルを除去し、精製して、末端にアリル基を有するポリプロピレンオキシド(Mnが約12000、Mw/Mnが2.3)を得て、これにヒドロシリル化合物であるメチルジメトキシシランを白金触媒の存在下反応させて得た、末端にメチルジメトキシシリル基を有するポリプロピレンオキシド(以下、「合成例2の重合体(A)」という。)60重量部を、分割して加えて均一に混合した後、キシレンを留去して得たアクリル・変成シリコーン樹脂組成物 100重量部、
炭酸カルシウム 50重量部、
N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン 2重量部、
ビニルトリメトキシシラン 3重量部、
「ネオスタンU-220」(ジブチルスズビスアセチルアセトナト) 2重量部、
からなる硬化性組成物」(以下、「甲2発明」という。)

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「合成例2の重合体(A)」における「メチルジメトキシシリル基」及び「ポリプロピレンオキシド」は、本件発明1の「(A)ポリオキシアルキレン骨格を有する加水分解性シリル基含有ポリマー」における「加水分解性シリル基」及び「ポリオキシアルキレン骨格」に相当し、甲2発明の「合成例2の重合体(A)」は、本件発明1の「(A)ポリオキシアルキレン骨格を有する加水分解性シリル基含有ポリマー」に相当する。
甲2発明の「合成例8の共重合体(B)」は、「γ-メタキリロキシプロピルメチルジメトキシシラン」に由来するジメトキシシリル基を含有し、「アクリル酸ブチル」、「メタクリル酸メチル」及び「メタクリル酸ステアリル」に由来する(メタ)アクリル骨格の主鎖を有すると解されるから、本件発明1の「式(1)で示されるジメトキシシリル基を含有し、およびアクリル骨格を有するポリマー(B-1)」に相当する。これと同様に、甲2発明の「合成例9の共重合体(B)」は、本件発明1の「トリメトキシシリル基を含有し、およびアクリル骨格を有するポリマー(B-2)」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
「(A)ポリオキシアルキレン骨格を有する加水分解性シリル基含有ポリマー、(B)反応性可塑剤を含む硬化性組成物であって、反応性可塑剤(B)は、以下の式(1):
R(CH_(3)O)_(2)Si- (1)
〔式中、Rは、水素原子または炭素原子数が1または2であるアルキル基を示す〕
で示されるジメトキシシリル基を含有し、およびアクリル骨格を有するポリマー(B-1)、ならびにトリメトキシシリル基を含有し、およびアクリル骨格を有するポリマー(B-2)を含む、硬化性組成物。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点2A:本件発明1は「(C)重量平均分子量が400?5000であり、ポリオキシアルキレン骨格を有し、加水分解性シリル基を含有しない可塑剤」を含有するのに対して、甲2発明は、これを含有しない点
相違点2B:本件発明1は、「(B)中の式(1)で示されるジメトキシシリル基のモル比は、ジメトキシシリル基とトリメトキシシリル基のモル数の合計に対して20モル%以上80モル%以下である」のに対して、甲2発明は、これが不明である点

イ 検討
まず、相違点2Aについて検討する。
(ア)上記アで述べたように、甲2発明は、本件発明1の(C)成分である可塑剤を含有しないものであり、相違点2Aは実質的な相違点であるから、本件発明1は甲2に記載された発明ではない。

(イ)そして、甲2には、「一般的な可塑剤を使用しうる。…中でもフタル酸エステル系可塑剤が性能、経済性の点で最も好ましい。しかし、…近年忌避される傾向にある。性能だけでなく安全衛生上の理由から低分子量タイプに替えて高分子量タイプの可塑剤を使用しうる。高分子量タイプの可塑剤としては…などが挙げられる。具体的には、旭硝子(株)製のエクセノール5030(分子量約5100のポリエーテルポリオール)…等が例示される」(【0088】)と記載されており、甲2に記載された硬化性組成物に可塑剤が使用し得ること、及び、可塑剤の具体例として「エクセノール5030」が示されている。
しかしながら、甲2の【0088】には、フタル酸エステル類を始めとする低分子又は高分子の多種多様な可塑剤が列記されており、「エクセノール5030」は上記列記された可塑剤の一例示に過ぎないものであるから、このような例示に基づき、甲2発明に「エクセノール5030」を添加することが動機付けられるとはいえない。
仮に、【0088】の記載から、甲2発明への「エクセノール5030」の配合が動機付けられるとしても、甲2には、「分子量約5100」と記載されているから、甲2の記載に基づき、本件発明1の「重量平均分子量が400?5000」である可塑剤の配合が当業者にとって容易に想到し得たことであるとは認められない。
そして、甲2と同様に、「エクセノール5030」の製品カタログである甲3にも分子量が5100である旨の記載はあるが、これらが本件発明1の「重量平均分子量が400?5000」を満たすか否かは外観上明らかでないし、甲2及び甲3の記載に接した当業者が、「エクセノール5030」の重量平均分子量が400?5000の範囲内であることを本件出願時の技術常識として認識していたとも認められない。
なお、申立人は、申立書の37頁5?12行に特開2004-231751号公報等の文献を提示して、「エクセノール5030」の重量平均分子量が5000である旨を主張するが、上記文献は、同一出願人による、ほぼ同時期に頒布された公開公報であって、甲2及び甲3に上記記載があることも考慮すると、かかる公開公報の記載により、「エクセノール5030」の重量平均分子量が5000であると認定することはできないし、当業者が、本件出願時の技術常識として、そのように認識していたとも解されない。
そうすると、甲2発明において、甲2の記載に基づき、「重量平均分子量が400?5000であり、ポリオキシアルキレン骨格を有し、加水分解性シリル基を含有しない可塑剤」を添加することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

(ウ)また、甲4には、【0005】?【0009】(発明が解決しようとする課題)、【0032】(可塑剤の添加量)、【0034】(可塑剤の重量平均分子量)の記載があり、甲4に記載された発明は、内燃機関のインテークマニホールドに好適に用いられ、マグネシウム系素材等の軽量化素材への接着性及び高い燃焼ガスシール性を満たす液状ガスケット組成物に関するものであって、甲2発明とは課題も技術分野も異なるものであるし、甲5には、【0012】(発明が解決しようとする課題)、【0143】?【0165】(可塑剤)、【0183】(用途)の記載があり、甲6には、【0011】(発明が解決しようとする課題)、【0122】?【0144】(可塑剤)、【0238】?【0241】(用途)の記載があり、甲5及び甲6に記載された発明は、毒性の高い有機錫系硬化触媒を使用しないことを課題とするものであって、「ネオスタンU-220」(ジブチルスズビスアセチルアセトナト)を用いる甲2発明とは相反する課題を有するものである。そして、甲4?甲6の記載は、甲2の【0088】に記載された可塑剤の分子量を、「重量平均分子量が400?5000」の範囲に設定することを動機付けるものとも認められない。
そうすると、甲2発明において、甲4?甲6の記載に基づき、「重量平均分子量が400?5000であり、ポリオキシアルキレン骨格を有し、加水分解性シリル基を含有しない可塑剤」を添加することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

(エ)したがって、本件発明1は、相違点2Bについて検討するまでもなく、甲2発明及び甲2?甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明2?10について
本件発明2?10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記(3)で述べたのと同じ理由により、甲2に記載された発明ではないし、甲2に記載された発明及び甲2?甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?10は、甲2に記載された発明でないし、甲2に記載された発明及び甲2?甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由5-1及び5-2によっては、本件発明1?10に係る特許を取り消すことはできない。

4 申立理由2(実施可能要件)
(1)実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)の判断について
特許法第36条第4項第1号は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」と定めている。
これは、当業者が、明細書に記載した事項と出願時の技術常識とに基づき、物の発明については、その物を作れ、かつ、その物を使用することができ、物を生産する方法の発明については、その方法により物を生産することができる程度に、発明の詳細な説明を記載しなければならないことを意味するものである。そこで、この点について以下に検討する。

(2)本件発明1について
本件明細書には、【0010】?【0017】、【0031】及び【0032】((A)成分)、【0033】?【0045】((B)成分)、【0046】?【0051】((C)成分)の記載があり、本件発明1における(A)?(C)の各成分として用いられる化合物、各成分の製造方法や入手先が示されている。また、本件明細書には、実施例1?4として本件発明1の具体例である硬化性組成物及びその構成成分が記載され、それらの物性も記載されている(【0095】?【0104】)。そして、当業者であれば、これらの記載に基づき、本願出願時の技術常識を参酌することにより、本件発明1に係る硬化性組成物を過度の試行錯誤を要することなく、製造することができると解される。
そうすると、発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

(3)本件発明2?10について
本件発明2?8は、本件発明1の発明特定事項をさらに具体化するものであるし、本件発明9は、本件発明1における各成分の含有量を特定するものであるから、本件発明1について上記(2)で述べたのと同じ理由により、当業者であれば、本件明細書の記載に基づき、本件出願時の技術常識を参酌することにより、本件発明2?9に係る硬化性組成物を製造することができると解される。
また、本件発明10は、本件発明に係る硬化性組成物が満たす「耐久性試験」における物性を特定したものであり、実施例1?4には、「耐久性試験」において優れた動的耐久性を示す硬化性組成物が記載されている。
そうすると、発明の詳細な説明には、当業者が、本件発明2?10の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

(4)申立人の主張について
申立人は、「可塑剤(C)」の発明特定事項が、後記5(2)で示す、本件発明の課題の解決にどのように貢献するのかが明確かつ十分に記載されていないから、実施可能要件を満たさない旨を主張する。
しかしながら、特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)に規定する要件の判断は上記(1)のとおりに行われ、その手法に従って上記(2)及び(3)で判断したように、発明の詳細な説明には、当業者が本件発明1?10を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているから、申立人の上記主張を採用することはできない。

(5)まとめ
以上のことから、申立理由2(実施可能要件)によっては、本件発明1?10に係る特許を取り消すことはできない。

5 申立理由4(サポート要件)
(1)特許法第36条第6項第1号の判断について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この観点に立って判断する。

(2)本件発明の課題
本件発明が解決しようとする課題は、「硬化後の耐候性および塗料適性に優れると共に、十分な動的耐久性を発揮するシーリング材として用いることができる硬化性組成物を提供すること」(本件明細書の【0006】)であると解される。

(3)本件発明1について
発明の詳細な説明には、「シーリング材の動的耐久性について鋭意検討を行った結果、シーリング材の架橋密度が動的耐久性に大きく影響を及ぼすこと、およびジメトキシシリル基を含有し、およびアクリル骨格を有する反応性可塑剤を用いた場合、上記目的を達成することができることを見出した。」(本件明細書の【0007】)、及び、「本発明の硬化性組成物は、硬化後の耐候性および塗料適性が良好であり、同時に優れた動的耐久性をも発揮することができるため、建築用シーリング材、特に目地の動きに対する追従性が要求される中高層ビル等に用いるシーリング材として好適である。」(同【0008】)と記載されている。そして、実施例1?4では、【0088】?【0091】に記載された試験法により、本件発明1の具体例である硬化性組成物の塗料適性、耐候性および動的耐久性の評価を行い、いずれの組成物も優れた特性を有するものであることが具体的に示されている。
そうすると、発明の詳細な説明は、本件発明1が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。

(4)本件発明2?10について
本件発明2?10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明1について上記(3)で述べたのと同じ理由により、発明の詳細な説明は、本件発明2?10が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。

(5)申立人の主張について
申立人は、実施例1?4の硬化性組成物は、可塑剤として〔C-1〕又は〔C-2〕と共に、〔C-3〕(炭化水素系可塑剤NAS5H(日本油化産業))を含有するものであるから、上記〔C-3〕を含有することを発明特定事項としていない本件発明1?10が、実施例1?4と同様に上記課題を解決できることを確認できない旨を主張する(申立書31?32頁)。
しかしながら、発明の詳細な説明に、本件発明1?10が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されていることは、上記(3)及び(4)で述べたとおりである。また、発明の詳細な説明には、「硬化性組成物は、加水分解性シリル基を含有しない可塑剤(C)を更に含むことができる。…また、公知のパラフィン系、ナフテン系、ポリブテンなどの炭化水素を、引火点、粘度、塗料付着性などに支障のない範囲の量で使用することができる。」(【0047】)と記載されており、上記〔C-3〕はこのパラフィン系等の炭化水素に該当するものであり、発明の詳細な説明の【0048】及び【0049】の記載によれば、〔C-3〕は、〔C-1〕又は〔C-2〕とは異なり、好ましい可塑剤とは位置づけられていないものである。
そうすると、本件明細書の記載に接した当業者は、〔C-3〕の存否が上記課題の解決を左右することを認識するとは認められない。
したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。

(6)まとめ
以上のことから、申立理由4(サポート要件)によっては、本件発明1?10に係る特許を取り消すことはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、請求項1?10に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-11-08 
出願番号 特願2017-141029(P2017-141029)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (C08L)
P 1 651・ 113- Y (C08L)
P 1 651・ 121- Y (C08L)
P 1 651・ 536- Y (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤本 保  
特許庁審判長 福井 悟
特許庁審判官 近野 光知
土橋 敬介
登録日 2021-01-07 
登録番号 特許第6820808号(P6820808)
権利者 サンスター技研株式会社
発明の名称 硬化性組成物  
代理人 森住 憲一  
代理人 松谷 道子  
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