ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B60C 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B60C 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B60C |
---|---|
管理番号 | 1379884 |
異議申立番号 | 異議2021-700720 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-07-27 |
確定日 | 2021-11-12 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6819028号発明「空気入りタイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6819028号の請求項1ないし18に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6819028号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし18に係る特許についての出願は、令和 2年 8月20日の出願であって、令和 3年 1月 6日にその特許権の設定登録(請求項の数18)がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年 7月27日に特許異議申立人 家田 亘久(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし18)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし18に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、これらを併せて「本件特許発明」という場合がある。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 トレッド部よりもタイヤ半径方向内側にベルト層を有する空気入りタイヤであって、 前記ベルト層を構成するゴム組成物の、70℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下で測定された損失正接(tanδ)と複素弾性率(E^(*):MPa)との比(tanδ/E^(*))が、0.002以上、0.017以下であり、 タイヤ周方向に連続して延びる複数本の周方向溝をトレッド部に有しており、前記複数本の周方向溝の断面積の合計が、前記トレッド部の断面積の10?30%であり、 正規リムに組み込み、内圧を250kPaとした際のタイヤの断面幅をWt(mm)、外径をDt(mm)とし、タイヤが占める空間の体積を仮想体積V(mm^(3))としたとき、下記(式1)および(式2)を満足することを特徴とする空気入りタイヤ。 1700≦(Dt^(2)×π/4)/Wt≦2827.4 (式1) [(V+1.5×10^(7))/Wt]≦2.88×10^(5) (式2) 【請求項2】 下記(式3)を満足することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。 [(V+2.0×10^(7))/Wt]≦2.88×10^(5) (式3) 【請求項3】 下記(式4)を満足することを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。 [(V+2.5×10^(7))/Wt]≦2.88×10^(5) (式4) 【請求項4】 正規リムに組み込み、内圧を250kPaとした際のタイヤの外径をDt(mm)、タイヤの断面高さHt(mm)としたとき、(Dt-2×Ht)が、470(mm)以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 【請求項5】 扁平率が、40%以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 【請求項6】 扁平率が、45%以上であることを特徴とする請求項5に記載の空気入りタイヤ。 【請求項7】 扁平率が、47.5%以上であることを特徴とする請求項6に記載の空気入りタイヤ。 【請求項8】 扁平率が、50%以上であることを特徴とする請求項7に記載の空気入りタイヤ。 【請求項9】 前記ベルト層を構成するゴム組成物の損失正接と複素弾性率の比(tanδ/E^(*))が0.009以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 【請求項10】 下記(式5)を満足することを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 [(tanδ/E^(*))/Wt]×1000≦0.60 (式5) 【請求項11】 下記(式6)を満足することを特徴とする請求項10に記載の空気入りタイヤ。 [(tanδ/E^(*))/Wt]×1000≦0.55 (式6) 【請求項12】 トレッド表面から前記ベルト層までの距離をT(mm)としたとき、下記(式7)を満足することを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 (tanδ/E^(*))×T≦1.00 (式7) 【請求項13】 下記(式8)を満足することを特徴とする請求項12に記載の空気入りタイヤ。 (tanδ/E^(*))×T≦0.85 (式8) 【請求項14】 タイヤ周方向に連続して延びる周方向溝をトレッド部に有しており、 前記トレッド部の接地面における前記周方向溝の溝幅L_(0)に対する前記周方向溝の最大の深さの80%の深さにおける溝幅L_(80)の比(L_(80)/L_(0))が、0.3?0.7であることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 【請求項15】 タイヤ軸方向に延びる複数本の横溝をトレッド部に有しており、 前記複数本の横溝の容積の合計が、前記トレッド部の体積の2.0?5.0%であることを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 【請求項16】 正規リムに組み込み、内圧を250kPaとした際のタイヤの外径をDt(mm)としたとき、Dtが、685(mm)未満であることを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 【請求項17】 前記断面幅Wt(mm)が、205mm未満であることを特徴とする請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 【請求項18】 前記断面幅Wt(mm)が、200mm未満であることを特徴とする請求項17に記載の空気入りタイヤ。」 第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和 3年 1月22日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし18に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第9号証に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし18に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし18に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明1に記載の要件におけるトレッド部の断面積、周方向溝の断面積を算出する条件、トレッド部の断面積がどこまでの断面積なのかが記載されていないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明1ないし18について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。 3 申立理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし18に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件特許発明1には「タイヤ周方向に連続して延びる複数本の周方向溝をトレッド部に有しており、前記複数本の周方向溝の断面積の合計が、前記トレッド部の断面積の10?30%であ」ることを要件としているが、実施例では、トレッド部の断面積が22%の場合が記載されるのみであるから、特許請求の範囲の記載の発明は、明細書に記載された発明を超えるものである。 4 証拠方法 甲第1号証:特開2016-074408号公報 甲第2号証:特開2019-104256号公報 甲第3号証:特開2009-143981号公報 甲第4号証:特開2020-093680号公報 甲第5号証:再表2015-182153号公報 甲第6号証:ETRTO STANDARDS MANUAL 2019 甲第7号証:JATMA YEAR BOOK 2019 甲第8号証:特許第6699794号公報 甲第9号証:特開2017-013693号公報 なお、証拠の表記は、おおむね特許異議申立書の記載に従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 第4 当審の判断 1 申立理由1(甲1に基づく進歩性)について (1)主な証拠に記載された事項 ア 甲1に記載された事項等 (ア)甲1に記載された事項 甲1には、次の事項が記載されている。下線は当審において付与した。以下同様。 「【0008】 そこで、本発明は、狭幅、大径のラジアルタイヤにおいて、ウェット性能および転がり抵抗性能を向上させることができる乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。」 「【0019】 本発明に係るタイヤ1は、例えば、図1のタイヤ幅方向断面図に示すように、一対のビード部2間でトロイダル状に跨るラジアル配列コードのカーカスプライからなるカーカス3と、当該カーカス3のタイヤ半径方向外側に設けられたトレッドゴム4とを少なくとも備えている。 より具体的には、トレッド部5と、トレッド部5の側部に連続してタイヤ半径方向内側に延びる一対のサイドウォール部6と、各サイドウォール部6のタイヤ半径方向の内端に連続するビード部2とを備えるとともに、一方のビード部2から他方のビード部2までトロイダル状に延びて上記各部を補強する1枚以上のカーカスプライからなるカーカス3を備えている。ビード部2にはビードコアが埋設されている。そしてさらに、上記ビード部2の補強部材として、ビード部2の外側面にゴムチェーファを備え、カーカス3のクラウン部に1枚以上のベルトプライからなるベルトを備えている。また、カーカス3のクラウン部のタイヤ半径方向外側にはトレッドゴム4が設けられている。」 「【0051】 [実施例1] 実施例1のタイヤは、図1および2に示すような、タイヤサイズ165/60R19であるタイヤであって、表1に示す諸元の構成を有し、トレッド踏面Tに、2本の周方向主溝が配設されている。また、実施例1のタイヤは、当該2本の周方向主溝で区画されるセンター陸部において、複数本のサイプ(センターサイプ)がタイヤ周方向に沿って測った所定ピッチ長Lで配設されるとともに、当該陸部の陸部幅W(mm)と、1つのピッチ長L(mm)の範囲内に配設された当該陸部内のサイプのタイヤ幅方向サイプ成分総長Ws(mm)と、ピッチ長L(mm)と、1つのピッチ長L(mm)の範囲内に配設された当該陸部内のサイプのタイヤ周方向サイプ成分総長Ls(mm)との関係が、0.6W≦Ws≦1.2W、および、L≦Ls≦3Lを満たしている。なお、実施例1のタイヤは、サイプ(センターサイプ)の平均ピッチ長Lが30mm(タイヤ周長の1.4%)であり、センター陸部の陸部幅Wが、25mm(トレッド幅の19%)である。また、周方向主溝は、溝幅が9mm、溝深さが7mmであり、当該センターサイプは、幅が0.7mmであり、深さが3mmである。 [実施例2?6] 実施例2?6のタイヤは、各諸元を表1に示すように変化させるとともに、小穴を配設した以外、実施例1のタイヤと同様である。」 「【0052】 上記の各供試タイヤを以下に示す方法で評価した。 [ウェット性能] 上記の各供試タイヤを、下記の条件でリムに装着し内圧を充填して、車両に装着した後、ウェット路面を時速80km/hで走行させた。そして、上記状態で走行後、フルブレーキを行った際の、停止距離(m)を計測し、このときの平均減速度(m/s^(2))=V^(2)/25.92Lを算出した(ウェット時の摩擦係数(wet μ))。評価結果は、各供試タイヤについての値を逆数にして、比較例1に記載のタイヤを100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどウェット性能がよいことを意味する。 実施例1?6、比較例3?4:リムサイズ5.5J-19、内圧300kPa 比較例1、2:リムサイズ6.5J-15、内圧220kPa [転がり抵抗性能] 上記の各供試タイヤを、ウェット性能の測定条件と同じ条件で、リムに装着し内圧を充 填して、各タイヤに規定される最大荷重を負荷して、ドラム回転速度100km/hの条件にて転がり抵抗値を測定した。 評価結果は、各供試タイヤについての値を逆数にして、比較例1に記載のタイヤを100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど転がり抵抗性能がよいことを意味する。 [コーナリングパワー] コーナリングパワーは、フラットベルト式コーナリング試験機を用いて測定した。具体的には、上記の各供試タイヤを、ウェット性能の測定条件と同じ条件で、リムに装着し内圧を充填して、フラットベルト式コーナリング試験機取り付けて測定を行った。ベルト速度を100km/hとして、タイヤの転動方向ドラムの円周方向との間のスリップアングル(SA)を1°の状態でコーナリングフォースを測定した。 評価結果は、比較例1のコーナリングフォースを100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど、スリップアングルにおけるコーナリングフォース、すなわちスリップアングルにおけるコーナリングパワーが良好であることを意味する。 【0053】 なお、動的貯蔵弾性率E’および損失正接tanδは、株式会社東洋精機製作所製のスペクトロメータを用いて、厚さ:2mm、幅:5mm、長さ:20mmの試験片に初期荷重:160gを与え、初期歪み:1%、振動数:50Hzの条件で測定し、ここで、動的貯蔵弾性率E’は、30℃で測定し、損失正接tanδは、0℃および60℃で測定した。 【0054】 」 「【図1】 」 「【図2】 」 (イ) 甲1発明 甲1に記載された事項を実施例1に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「タイヤサイズ165/60R19であるタイヤであって、ベルトを備えており、トレッド踏面Tに2本の周方向主溝が配設されている、空気入りラジアルタイヤ。」 イ 甲2に記載された事項等 甲2には、次の事項が記載されている。 「【0005】 本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、操縦安定性、耐久性をバランス良く改善できるスチールブレーカートッピングゴムを有する空気入りタイヤを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明は、ゴム組成物を用いて作製したスチールブレーカートッピングゴムを有する空気入りタイヤであって、該ゴム組成物の加硫後のゴム物性が、下記式(1)を満たす空気入りタイヤに関する。 【0007】 24000<EB×E*/tanδ (1)」 「【0166】 (実施例及び比較例) 表2に示す配合処方に従って、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得る。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得る。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間、0.5mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得る。また、上記のようにして得られる未加硫ゴム組成物をスチールブレーカーにトッピングして成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて、150℃で30分間の条件下で加硫することにより、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造できる。 このようにして得られる加硫ゴム組成物、試験用タイヤは、下記の評価方法において、下記表2のような結果が得られる。 【0167】 (粘弾性測定) 粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、周波数10Hz、初期歪み10%及び動歪み2%の条件下で、加硫ゴム組成物の動的弾性率(E*〔MPa〕)及び損失正接(tanδ)を測定する。」 「【0175】 」 ウ 甲3に記載された事項等 甲3には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 本発明はタイヤ用ゴム組成物に関し、空気入りタイヤのケース部およびブレーカー部を構成するゴムとして好適なタイヤ用ゴム組成物である。また、本発明は、該タイヤ用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。」 「【0014】 すなわち、本発明の空気入りタイヤTは、図1に例示されるように、トレッド部3と、そのトレッド部3からタイヤ半径方向内方に延びるサイドウォール部2と、各サイドウォール部2の内方端に位置するビード部1とを備える構造を有するのが一般的である。また、ビード部1間にはケース5が架け渡され、このケース5の外側かつトレッド部3の内側に、タガ効果を有してトレッド部3を補強するブレーカー6(ベルト層)が配される。」 「【0019】 <ケース部およびブレーカー部> 上記空気入りタイヤのケース部およびブレーカー部の少なくとも一方を構成するケース接着用ゴムおよびブレーカー接着用ゴムの少なくとも一方は、タイヤ周方向の複素弾性率E^(*)aとタイヤラジアル方向の複素弾性率E^(*)_(b)との比E^(*)_(a)/E^(*)_(b)が1.5以上であるであることが好ましい。」 「【0025】 本発明のタイヤ用ゴム組成物は、複素弾性率E^(*)が5?20MPaであることが好ましく、7?13MPaであることがより好ましい。タイヤ用ゴム組成物の複素弾性率E^(*)が5MPa以上であれば、操縦性および耐久性が良好となる。また複素弾性率E^(*)が、20MPa以下であれば、この範囲を外れる場合に比べて、剛性を高めながらも乗り心地性能をより良好なものとすることができる。 【0026】 また、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、損失正接tanδが0.04?0.2であることが好ましく、0.04?0.15であることがより好ましい。タイヤ用ゴム組成物の損失正接tanδが0.04以上であれば、上記複素弾性率比を良好な範囲に調整することが容易でり、0.2以下であれば発熱を抑えることができる。」 「【0057】 」 「【0058】 表1および表2中、実施例、従来例および比較例で使用した各種配合成分の詳細は以下のとおりである。 NR:天然ゴム(タイ製、「RSS#3」) SBR:スチレンブタジエンゴム(「SBR1502」、JSR社製) カーボンブラック:「N220」、三菱化学社製 紙繊維:クラフト紙粉砕品(「ミルファイブ100」、三共精粉社製、平均長さL=10μm、L/D=100) 有機繊維:ビニロン繊維(「PVA(ポリビニルアルコール)短繊維」、クラレ社製、平均長さL=5μm、L/D=100) 硬化レジン:「スミライトレジンPR12686」、住友デュレツ社製 シランカップリング剤:「Si266」、デグサ社製 プロセスオイル:「ダイアナプロセスAH40」、出光興産社製 ワックス:「サンノックワックス」、大内新興化学工業社製 ナフテン酸コバルト:「パーメック」、日本油脂製 老化防止剤:「オゾノン6C」、精工化学社製 ステアリン酸:「桐」、日本油脂社製 酸化亜鉛:「銀嶺R」、東邦亜鉛社製 硫黄:粉末硫黄、鶴見化学社製 加硫促進剤:「ノクセラーNS」(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)、大内新興化学工業社製 <空気入りタイヤの作製> 上記で得られた各タイヤ用ゴム組成物を用いて各ゴムシート(厚み:1.0mm、大きさ:50mm×1240mm)を作製後、これを他の部材とともに張り合わせ、150℃で35分間、25kgfでプレス加硫することにより、実施例1?8、従来例1?2および比較例1?8のタイヤ用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤ(サイズ:195/65R15)を作製した。」 「【0062】 <複素弾性率> 上記で得られたシート状のゴム組成物から短冊状試料(幅4mm×長さ30mm×厚み1.5mm)を作製し、岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用いて、温度70℃、周波数10Hz、初期歪10%、動歪±2%の条件で損失正接tanδ、複素弾性率比E^(*)_(a)およびE^(*)_(b)を測定した。その結果を表1および表2に示す。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明における「空気入りラジアルタイヤ」は、本件特許発明1の「空気入りタイヤ」に相当する。 甲1発明における「ベルト」は、カーカス3のクラウン部に設けられるものであるから、本件特許発明1の「ベルト層」に相当し、さらに本件特許発明1で特定する「トレッド部よりもタイヤ半径方向内側にベルト層を有する」事項を満たすものである。 甲1発明におけるトレッド踏面Tに配設された「2本の周方向主溝」は、本件特許発明1のトレッド部に有する「タイヤ周方向に連続して延びる複数本の周方向溝」に相当する。 してみると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「トレッド部よりもタイヤ半径方向内側にベルト層を有する空気入りタイヤであって、タイヤ周方向に連続して延びる複数本の周方向溝をトレッド部に有している、空気入りタイヤ。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1> 本件特許発明1のタイヤは、ベルト層を構成するゴム組成物が、「70℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下で測定された損失正接(tanδ)と複素弾性率(E^(*):MPa)との比(tanδ/E^(*))が、0.002以上、0.017以下」であると同時に「正規リムに組み込み、内圧を250kPaとした際のタイヤの断面幅をWt(mm)、外径をDt(mm)とし、タイヤが占める空間の体積を仮想体積V(mm^(3))としたとき、(式1)および(式2)」を満たすことを特定するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。 <相違点2> 本件特許発明1のタイヤは、複数本の周方向溝の断面積の合計が、「トレッド部の断面積の10?30%」と特定するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。 イ 相違点についての判断 まず、相違点1について判断する。 タイヤの形状に関し、甲1発明における「タイヤサイズ165/60R19であるタイヤ」は、一般的に通常の内圧下におけるタイヤ断面幅が165mm、扁平率が60%、リム径が19インチの寸法を有するタイヤであり、上記タイヤ断面幅、扁平率及びリム径から算出されるタイヤの外径(リム径×25.4+タイヤ断面幅×扁平率×0.01×2)は約680.6mm、タイヤの外径及びリム径から算出されるタイヤの断面高さ((タイヤ外径-リム径×25.4)/2)は約99mmである。 そうすると、タイヤの仮想体積を、本件明細書の【0035】に記載の式にしたがって算出すると、約2.98×10^(7)mm^(3)となる。以上の点をふまえ、甲1発明について同様に(式1)、(式2)の値を求めてみると、(Dt^(2)×π/4)/Wtは約2205、[V+1.5×10^(7))/Wt]は約2.72×10^(5)と算出されるから、甲1発明の空気入りラジアルタイヤは、(式1)および(式2)を満たすものといえる。 しかし、甲1発明のタイヤのベルト層を構成するゴム組成物の性状は明らかではない。 この点について、甲2の実施例及び甲3の実施例には、本件特許発明1で特定する(tanδ/E^(*))の数値範囲を満たす例が示されている。 しかしながら、本件特許発明1は、上記形状を満たすタイヤにおいて、タイヤの低速走行時と高速走行時とで操縦安定性の変化を抑制するために、ベルト層を構成するゴム組成物の比(tanδ/E^(*))を「0.002以上、0.017以下」とするものであって、形状とともにベルト層のゴム組成物の(tanδ/E^(*))を特定のものとすることは甲1ないし3には、いずれも記載されておらず、示唆もされていない。 してみると、甲1発明において、低速走行時と高速走行時とで操縦安定性の変化を抑制するために、ベルト層を構成するゴム組成物の(tanδ/E^(*))値を「0.002以上、0.017以下」とすることの動機付けはなく、当業者が容易に想到し得たものではない。 そして、本件特許発明1は、(式1)および(式2)を満たす形状のタイヤにおいて、ベルト層を構成するゴム組成物の比(tanδ/E^(*))を「0.002以上、0.017以下」とすることによって、低速走行時と高速走行時とでの操縦安定性の変化が十分に抑制される(本件特許の発明の詳細な説明の段落【0028】、【表1】ないし【表6】等を参照。)という、甲1発明及び甲2ないし甲9に記載された事項から予測できない顕著な効果を奏するものである。 したがって、相違点2について判断するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2ないし9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 特許異議申立人の主張の検討 特許異議申立人は、特許異議申立書において甲2及び甲3には、本件特許発明1で特定する「tanδ/E^(*)が0.002以上、0.017以下である」ことが記載されており、甲1、甲2、甲3はいずれも空気入りタイヤに関するものであり、技術分野を一にするものであるから、甲2の記載事項、甲3の記載事項を甲1発明に組み合わせることは容易に想到し得るものである旨主張する。 しかしながら、甲2に記載されるのは「24000<EB×E*/tanδ」を満たすタイヤであり、(tanδ/E^(*))の関係を特定するものではない。 また、甲2の実施例で測定されたtanδ及びE^(*)の値を選択し、甲1発明に採用する動機付けがあるとはいえない。 甲3においても、(tanδ/E^(*))の関係を特定する記載はなく、実施例で測定されたtanδ及びE^(*)の数値を選択し、甲1発明に採用する動機付けがあるとはいえない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 エ まとめ 以上のことから、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、及び、甲2ないし甲9に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2ないし18について 本件特許発明2ないし18は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1に記載された発明、甲2ないし甲9に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)申立理由1のまとめ したがって、本件特許の請求項1ないし18に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明、及び、甲2ないし甲9に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、本件特許の請求項1ないし18に係る特許は同法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。 2 申立理由2(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要する。 (2)発明の詳細な説明の記載 発明の詳細な説明の記載には、以下の記載がある。 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、空気入りタイヤに関する。」 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、上記した従来技術で製造されたタイヤは、転がり抵抗の低減を図ることはできるものの、低速走行時と高速走行時とでは、操縦安定性が大きく変化する恐れがある。そして、これらのタイヤは、耐久性も十分とは言えない。 【0007】 そこで、本発明は、低速走行時と高速走行時とでの操縦安定性の変化が十分に抑制され、また、耐久性も十分に改善された空気入りタイヤを提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者は、上記課題の解決について鋭意検討を行い、以下に記載する発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。」 「【発明の効果】 【0028】 本発明によれば、低速走行時と高速走行時とでの操縦安定性の変化が十分に抑制され、また、耐久性も十分に改善された空気入りタイヤを提供することができる。 【発明を実施するための形態】 【0029】 [1]本発明に係るタイヤの特徴 最初に、本発明に係るタイヤの特徴について説明する。 【0030】 1.概要 本発明に係るタイヤは、トレッド部よりもタイヤ半径方向内側にベルト層を有する空気入りタイヤであり、まず、ベルト層を構成するゴム組成物が、70℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下で測定された損失正接(tanδ)と複素弾性率(E^(*):MPa)との比(tanδ/E^(*))が、0.002以上、0.017以下であることを特徴としている。 【0031】 そして、本発明に係るタイヤは、さらに、正規リムに組み込み、内圧を250kPaとした際のタイヤの断面幅をWt(mm)、外径をDt(mm)とし、タイヤが占める空間の体積を仮想体積V(mm^(3))としたとき、下記(式1)および(式2)を満足していることも特徴としている。 1700≦(Dt^(2)×π/4)/Wt≦2827.4 ・・・・・・(式1) [(V+1.5×10^(7))/Wt]≦2.88×10^(5) ・・・・・・(式2) 【0032】 ベルト層を形成するゴム組成物の物性およびタイヤの形状について、上記のような特徴を備えることにより、低速走行時と高速走行時とでの操縦安定性の変化が十分に抑制され、また、耐久性も十分に改善された空気入りタイヤを提供することができる。 【0033】 なお、上記記載において、「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける標準リム、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association, Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている“Design Rim”を指す。そして、規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。 【0034】 そして、上記記載において、タイヤの外径Dtとは、タイヤを正規リムに組付け、内圧を250kPaにして無負荷とした状態のタイヤの外径であり、タイヤの断面幅Wtとは、タイヤを正規リムに組付け、内圧を250kPaにして無負荷とした状態のタイヤにおいて、タイヤ側面の模様や文字など全てを含むサイドウォール間の直線距離(タイヤの総幅)からタイヤの側面の模様、文字などを除いた幅である。 【0035】 また、タイヤの仮想体積V(mm^(3))は、具体的には、タイヤを正規リムに組付け、内圧を250kPaにして無負荷とした状態のタイヤにおけるタイヤの外径Dt(mm)、タイヤの断面高さ(ビード部底面からトレッド最表面までの距離であり、タイヤの外径とリム径の呼びとの差の1/2)Ht(mm)、タイヤの断面幅Wt(mm)に基づいて、以下の式により求めることができる。 V=[(Dt/2)^(2)-{(Dt/2)-Ht}^(2)]×π×Wt 【0036】 2.本発明に係るタイヤにおける効果発現のメカニズム 本発明に係るタイヤにおける効果発現のメカニズム、即ち、低速走行時と高速走行時とでの操縦安定性の変化が十分に抑制され、また、耐久性が十分に改善されるメカニズムについては、以下のように推測される。 【0037】 (1)タイヤの形状 上記したように、本発明においては、前記タイヤの断面幅Wt(mm)と外径Dt(mm)とが、1700≦(Dt^(2)×π/4)/Wt≦2827.4(式1)を満足するようにしている。 【0038】 上記(式1)は、タイヤの断面幅Wtに対して、タイヤを横方向から見たときの面積[(Dt/2)^(2)×π)=(Dt^(2)×π/4)]を大きくして、式1に規定する数値範囲を満足することにより、タイヤの転動時の慣性モーメントを大きくすることができるため、操縦安定性が向上すると考えられる。なお、(式1)において、(Dt^(2)×π/4)/Wtは、1963.4以上であるとより好ましい。 【0039】 しかしながら、このような幅の狭いタイヤは、転動時の遠心力が大きくなるため、転動中にタイヤの半径が大きく成長し、それに合わせて薄くなったトレッド部に対して衝撃が加わった際、損傷が生じる恐れがある。また、高速走行時には、遠心力によって外径が大きく成長し易くなるため、通常の低速走行時に比べて、操縦安定性が大きく変化する恐れがある。 【0040】 そこで、本発明においては、さらに、タイヤの仮想体積V(mm^(3))および断面幅Wt(mm)が、[(V+1.5×10^(7))/Wt]≦2.88×10^(5)(式2)を満足するようにしている。 【0041】 このように、タイヤの断面幅Wtの減少に合わせてタイヤの仮想体積Vを減少させ、タイヤそのものの体積を減らすことにより、遠心力による外径成長率を低減させることができ、トレッド部に衝撃が加わった際の耐損傷性を改善できると考えられる。併せて、タイヤの外径成長を抑制することにより、高速走行時における操縦安定性の変化も小さくできると考えられる。 【0042】 このとき、[(V+2.0×10^(7))/Wt]≦2.88×10^(5)(式3)であるとより好ましく、[(V+2.5×10^(7))/Wt]≦2.88×10^(5)(式4)であると、さらに好ましい。 【0043】 (2)ベルト層を構成するゴム組成物 本発明においては、さらに、ベルト層を構成するゴム組成物の、70℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下で測定された損失正接(tanδ)と複素弾性率(E^(*):MPa)との比(tanδ/E^(*))を、0.002以上、0.017以下としている。 【0044】 これにより、転動時のトレッド部の変形によるベルト層の発熱を抑制して、軟化が抑制されると共に、ベルト層の剛性を良好に確保することができるため、タイヤの外径の成長をより抑制することが可能となり、低速走行時と高速走行時とでの操縦安定性の変化を十分に抑制でき、耐久性の向上も十分に図ることができると考えられる。 【0045】 前記(tanδ/E^(*))は0.015以下であるとより好ましく、0.01以下であるとさらに好ましく、0.009以下であると特に好ましい。これにより、転動時のトレッド部の変形による発熱をより抑制し、ベルト層の剛性を良好に確保することができると考えられる。 【0046】 なお、上記した損失正接(tanδ)と複素弾性率(E^(*))とは、例えば、GABO社製「イプレクサー(登録商標)」などの粘弾性測定装置を用いて、測定することができる。」 「【0058】 4.トレッド部の溝 本発明に係るタイヤは、タイヤ周方向に連続して延びる周方向溝をトレッド部に有しており、トレッド部の接地面における周方向溝の溝幅L0に対する周方向溝の最大の深さの80%の深さにおける溝幅L_(80)の比(L_(80)/L^(0))が、0.3?0.7であることが好ましい。これにより、トレッド部の陸部の底面で陸部全体の動きを抑制して、高速走行におけるトレッド部の偏摩耗の抑制と耐久性の向上を十分に図ることができる。0.35?0.65であるとより好ましく、0.40?0.60であるとさらに好ましく、0.45?0.55であると特に好ましい。 【0059】 上記したL_(0)およびL_(80)は、正規リムに装着し、内圧を250kPaとし、無負荷の状態としたタイヤのトレッド周方向溝のトレッド表面部における溝端部の直線距離(L_(0))、および、溝深さ80%の位置での溝壁部の最小距離(L_(80))を指しており、簡易的には、タイヤを幅2?4cmで半径方向に切り出したセクションのビード部間を、リム幅に合わせて押さえつけた状態にすることで求めることができる。 【0060】 そして、トレッド部が、複数本の周方向溝を有して、複数本の周方向溝の断面積の合計が、トレッド部の断面積の10?30%であることが好ましい。これにより、トレッド部の動きを抑制して、高速走行におけるトレッド部の偏摩耗の抑制と耐久性の向上を十分に図ることができる。15?27%であるとより好ましく、18?25%であるとさらに好ましく、21?23%であると特に好ましい。 【0061】 上記した周方向溝の断面積は、正規リムに装着し、内圧を250kPaとし、無負荷の状態としたタイヤにおいて、トレッド周方向溝の端部を繋いだ直線と溝壁とにより構成される面積の合計値を指しており、簡易的には、タイヤを幅2?4cmで半径方向に切り出したセクションのビード部間を、リム幅に合わせて押さえつけた状態にすることで求めることができる。 【0062】 また、トレッド部が、タイヤ軸方向に延びる複数本の横溝を有しており、複数本の横溝の容積の合計が、トレッド部の体積の2.0?5.0%であることが好ましい。これにより、トレッド部の動きを抑制して、トレッド部の偏摩耗の抑制と耐久性の向上を十分に図ることができる。2.2?4.0%であるとより好ましく、2.5?3.5%であるとさらに好ましく、2.7?3.0%であると特に好ましい。 【0063】 上記した横溝の容積は、正規リムに装着し、内圧を250kPaとし、無負荷の状態としたタイヤにおいて、横溝の端部を繋いだ面と溝壁とにより構成される容積の合計値を指しており、簡易的には、タイヤを幅2?4cmで半径方向に切り出したセクションのビード部間をリム幅に合わせて押さえつけた状態で、個々の横溝の容積を算出し、溝の数を乗じることで求めることができる。また、トレッド部の体積は、前記セクションからトレッド部の横溝を含まない部分の面積を算出して外径を乗じたものから、前記横溝の容積との差を求めることにより、算出することができる。 【0064】 なお、トレッド部の偏摩耗の抑制と耐久性のさらなる向上を図るためには、これらの横溝に、溝深さGdに対する溝幅Gwの比(Gw/Gd)が、0.50?0.80である横溝が含まれていることが好ましく、0.53?0.77であるとより好ましく、0.55?0.75であるとさらに好ましく、0.60?0.70であると特に好ましい。 【0065】 上記した横溝の溝幅、溝深さは、内圧を250kPaとし、無負荷の状態としたタイヤにおいて、横溝のトレッド表面端部を繋いだ直線のうち、溝方向に対して垂直かつ最大であるもの、および、横溝の最大深さを指しており、簡易的には、タイヤを幅2?4cmで半径方向に切り出したセクションのビード部間をリム幅に合わせて押さえつけた状態から算出することができる。」 「【0164】 本実施の形態においては、(式1)および(式2)を満足し得るタイヤの内でも、乗用車用空気入りタイヤに適用することが好ましく、これらの各式を満足することにより、高速走行時における転がり抵抗が十分に低減されるだけではなく、低速時と高速時でのハンドリング性の変化および耐久性が十分に改善された空気入りタイヤを提供するという本発明における課題の解決に対して、より好適に貢献することができる。 【実施例】 【0165】 以下、実施例により、本発明についてさらに具体的に説明する。 【0166】 [実験1] 本実験においては、175サイズのタイヤを作製し、評価した。 【0167】 1.ベルト用ゴム組成物の製造 最初に、ベルト用ゴム組成物の製造を行った。 【0168】 (1)配合材料 まず、以下に示す各配合材料を準備した。 【0169】 (a)ゴム成分 NR:RSS3 【0170】 (b)ゴム成分以外の配合材料 (イ)カーボンブラック-1:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN326 (N2SA:78m^(2)/g) (ロ)カーボンブラック-2:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN550 (N2SA:42m^(2)/g) (ハ)硬化性樹脂成分-1:住友ベークライト(株)製のPR12686 (カシューオイル変性フェノール樹脂) (ニ)硬化性樹脂成分-2:田岡化学工業(株)製のスミカノール620 (変性レゾルシン樹脂) (ホ)硬化剤:田岡化学工業(株)製のスミカノール507 (メチレン供与体) (ヘ)有機酸コバルト:DIC(株)製のDICNATE NBC-2 (ネオデカン酸ホウ素コバルト、コバルト含有量22.5質量%) (ト)酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号 (チ)老化防止剤-1:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C (N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン) (リ)老化防止剤-2:川口化学工業(株)製のアンテージRD (2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン) (ヌ)ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」 (ル)架橋剤および加硫促進剤、架橋助剤 硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄 加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラー DZ (N,N-ジシクロヘキシル-2-べンゾチアゾリルスルフェンアミド) 架橋助剤:フレキシス社製のデュラリンクHTS 【0171】 (2)ゴム組成物の製造 表1および表2に示す各配合内容に従い、バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りして、混練物を得た。なお、各配合量は、質量部である。 【0172】 次に、得られた混練物に、硫黄および加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、ベルト用ゴム組成物を得た。 【0173】 2.タイヤの製造 フィラメント径0.3mm、2本撚りのスチールコードを、5cmあたり42本となるように引き出して配列させ、得られたベルト用ゴム組成物を用いて、その上下に、トータル厚みが0.95mmとなるようにトッピングした後、加硫後にタイヤ周方向に対してスチールコードが24°となるように切り出してベルト部材を得た。 【0174】 その後、他のタイヤ部材と共に、ベルト部材を互いに交差するように2層貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で10分間プレス加硫して、サイズが175タイプの各試験用タイヤ(実施例1-1?実施例1-5および比較例1-1?比較例1-5)を製造した。 【0175】 なお、各試験用タイヤにおいて、前記した(L_(80)/L_(0))は0.5、周方向溝の断面積の合計はトレッド部の断面積の22%とし、溝幅/溝深さが0.65の横溝を含んでいる横溝の容積の合計はトレッド部の体積の3.5%とした。 【0176】 3.パラメータの算出 その後、各試験用タイヤの外径Dt(mm)、断面幅Wt(mm)、断面高さHt(mm)、扁平率(%)、トレッド表面からベルト層までの距離T(mm)を求めるとともに、仮想体積V(mm3)を求めた。併せて、各試験用タイヤのベルト層間からゴムを切り出して、長さ40mm、幅4mmの粘弾性測定用ゴム試験片を作製し、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、70℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下でtanδおよびE*を測定し、(tanδ/E*)を算出した。結果を、表1および表2に示す。 【0177】 そして、(Dt-2×Ht)、(Dt^(2)×π/4)/Wt、(V+1.5×10^(7))/Wt、(V+2.0×10^(7))/Wt、(V+2.5×10^(7))/Wt、[(tanδ/E^(*))/Wt]×1000、(tanδ/E^(*))×Tを算出した。結果を、表1および表2に示す。 【0178】 4.性能評価試験 (1)操縦安定性の評価 各試験用タイヤを車輌(国産のFF車、排気量2000cc)の全輪に装着させて、内圧が250kPaとなるように空気を充填した後、乾燥路面のテストコース上を、40km/hおよび120km/hで走行し、走行速度を変えたことによるハンドリング性の変化を、1(大幅な変化を感じる)から5(殆ど変化を感じない)までの5段階で、ドライバーが官能にて評価した。そして、20人のドライバーによる評価の合計点を算出した。 【0179】 次いで、比較例1-4における結果を100として、下式に基づいて指数化し、操縦安定性の評価とした。数値が大きいほど、操縦安定性が優れていることを示す。 操縦安定性=[(試験用タイヤの結果)/(比較例1-4の結果)]×100 【0180】 (2)耐久性能の評価 各試験用タイヤを車輌(国産のFF車、排気量2000cc)の全輪に装着させて内圧が250kPaとなるように空気を充填した後、過積載状態にて、乾燥路面のテストコース上を、50km/hの速度で10周走行し、80km/hの速度で路面に設けた凹凸に乗り上げる動きを繰り返し行った。そして、再度、50km/hの速度で周回を行い、その後、速度を徐々に上げて、ドライバーが異変を感じた時点における速度を計測した。 【0181】 次いで、比較例1-5における結果を100として、下式に基づいて指数化し、耐久性能を相対的に評価した。数値が大きいほど、耐久性が優れていることを示す。 耐久性能=[(試験用タイヤの結果)/(比較例1-5の結果)]×100 【0182】 (3)総合評価 上記(1)、(2)の評価結果を合計して総合評価とした。 【0183】 (4)評価結果 各評価の結果を、表1および表2に示す。 【0184】 【0185】 【0186】 [実験2] 本実験においては、195サイズのタイヤを作製し、評価した。 【0187】 実験1と同様にして、表3および表4に示す実施例2-1?実施例2-5および比較例2-1?比較例2-5の各試験用タイヤを製造した後、同様に、各パラメータを求めた。そして、同様に、性能評価試験を行い評価した。なお、操縦安定性については比較例2-4における結果を100とし、耐久性能については、比較例2-5における結果を100として評価を行った。各評価の結果を、表3および表4に示す。 【0188】 【0189】 【0190】 [実験3] 本実験においては、225サイズのタイヤを作製し、評価した。 【0191】 実験1と同様にして、表5および表6に示す実施例3-1?実施例3-5および比較例3-1?比較例3-5の各試験用タイヤを製造した後、同様に、各パラメータを求めた。そして、同様に、性能評価試験を行い評価した。なお、操縦安定性(ハンドリング性)変化については比較例3-4における結果を100とし、耐久性能については、比較例3-5における結果を100として評価を行った。各評価の結果を、表5および表6に示す。 【0192】 【0193】 【0194】 [実験1?3のまとめ] 実験1?3の結果(表1?表6)より、175サイズ、195サイズ、225サイズ、いずれのサイズのタイヤにおいても、(tanδ/E^(*))が0.002以上、0.017以下であって、上記した(式1)および(式2)が満たされている場合、操縦安定性が十分に改善され、また、耐久性も十分に改善された空気入りタイヤを提供できることが分かった。 【0195】 そして、請求項2以降に規定する各要件を満たすことにより、操縦安定性の変化および耐久性能がさらに改善されたタイヤを提供できることが分かった。 【0196】 一方、(tanδ/E^(*))が0.002以上、0.017以下を満たさない場合や、(式1)、(式2)のいずれかを満たしていない場合には、低速時と高速時でのハンドリング性の変化を十分に小さくすることができず、耐久性も十分には改善できないことが分かった。 【0197】 [実験4] 次に、仮想体積Vと断面幅Wtの関係性に大きな差がない3種類(実施例4-1?実施例4-3)のタイヤを、同じ配合で作製し、同様に評価した。なお、ここでは、操縦安定性(ハンドリング性)変化については実施例4-1における結果を100とし、耐久性能については、実施例4-3における結果を100として評価を行った。 【0198】 そして、本実験においては、上記した操縦安定性および耐久性能の評価に加えて、低燃費性についても評価した。 【0199】 具体的には、各試験用タイヤを車輌(国産のFF車、排気量2000cc)の全輪に装着させて、内圧が250kPaとなるように空気を充填した後、乾燥路面のテストコース上を、80km/hの速度で10km周回した後、アクセルを離し、アクセルをオフにしてから車両が止まるまでの距離を、各試験用タイヤにおける転がり抵抗として、計測した。 【0200】 次いで、実施例4-3における結果を100として、下式に基づいて指数化し、高速走行時における転がり抵抗を相対的に評価することにより、低燃費性の評価とした。数値が大きいほど、アクセルオフにしたタイミングから車両が止まるまでの距離が長く、定常状態での転がり抵抗が小さく、低燃費性が優れていることを示す。 低燃費性=[(試験用タイヤの計測結果)/(実施例4-3の計測結果)]×100 【0201】 (総合評価) 実験1?3と同様に、各評価結果を合計して総合評価とした。各評価の結果を表7に示す。 【0202】 【0203】 表7より、仮想体積Vと断面幅Wtの関係性に大きな差がない場合、断面幅Wtが205mm未満、200mm未満と小さくなるにつれて、また、扁平率が高くなるにつれて、操縦安定性、耐久性能、低燃費性のいずれも改善されて、顕著な効果が発揮されることが分かる。 【0204】 以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。」 (3)判断 発明の詳細な説明には、本件特許発明1の「タイヤ周方向に連続して延びる複数本の周方向溝をトレッド部に有しており、前記複数本の周方向溝の断面積の合計が、前記トレッド部の断面積の10?30%」との特定事項に関し、トレッド部の断面積の算出条件の記載はないが、タイヤの各寸法の測定条件としてタイヤを「正規リムに装着し、内圧を250kPaとし、無負荷の状態」(【0030】-【0035】、【0058】-【0065】)とすることが記載されているから、トレッド部の断面積は、上記測定条件のもと、当業者であれば当然に算出することができるといえる。 したがって、本件特許発明に関して、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があるといえ、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 (4)特許異議申立人の主張の検討 特許異議申立人は、発明の詳細な説明にトレッド部の断面積の算出条件の記載がないから、本件特許発明は実施できない旨主張するが、上記(3)で述べたとおりであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。 (5)申立理由2のまとめ したがって、本件特許の請求項1ないし18に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取り消すことはできない。 3 申立理由3(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)サポート要件についての判断 ア 本件特許発明の記載 上記第2において記載したとおりである。 イ 発明の詳細な説明の記載 上記第3 2(2)において記載したとおりである。 ウ 判断 本件明細書の【0006】に記載されるように、本件特許発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は「低速走行時と高速走行時とでの操縦安定性の変化が十分に抑制され、また、耐久性も十分に改善された空気入りタイヤを提供すること」と認められる。 そして、【0036】ないし【0041】に記載されるように、本発明に係るタイヤにおける効果発現のメカニズムとして、「1700≦(Dt^(2)×π/4)/Wt≦2827.4(式1)」を満足するようにすることによってタイヤの転動時の慣性モーメントを大きくすることができるため、操縦安定性が向上することができる一方で、転動時の遠心力が大きくなるため、[(V+1.5×10^(7))/Wt]≦2.88×10^(5)(式2)を満足するようにすることによって、タイヤの断面幅Wtの減少に合わせてタイヤの仮想体積Vを減少させ、タイヤそのものの体積を減らすことにより、遠心力による外径成長率を低減させることができ、トレッド部に衝撃が加わった際の耐損傷性を改善し、併せて、タイヤの外径成長を抑制することにより、高速走行時における操縦安定性の変化も小さくできると記載されている。 そして、【0043】ないし【0046】には、タイヤにおけるベルト層を構成するゴム組成物の、70℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下で測定された損失正接(tanδ)と複素弾性率(E^(*):MPa)との比(tanδ/E^(*))を、0.002以上、0.017以下とすることにより、転動時のトレッド部の変形によるベルト層の発熱を抑制して、軟化が抑制されると共に、ベルト層の剛性を良好に確保することができるため、タイヤの外径の成長をより抑制することが可能となり、低速走行時と高速走行時とでの操縦安定性の変化を十分に抑制でき、耐久性の向上も十分に図ることができることが記載されており、実施例においても、上記(式1)及び(式2)を満たし、かつ、(tanδ/E^(*))を特定範囲とすることによって、操縦安定性及び耐久性能が向上した例が示されている。 そうすると、上記発明の課題は、上記(式1)及び(式2)を満たし、かつ、(tanδ/E^(*))を特定範囲とすることにより解決できると、当業者は理解する。 そして、本件特許発明1は(式1)、(式2)及びタイヤにおけるベルト層を構成するゴム組成物についての(tanδ/E^(*))の条件に係る事項を発明特定事項として有するものであるから、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できるものと認識できる。 よって、本件特許発明1は特許法第36条第6項第1号に規定する要件、いわゆるサポート要件を満たすものであり、本件の請求項1を引用する本件特許発明2ないし18についても、同様にサポート要件を満たすものである。 (3)特許異議申立人の主張の検討 特許異議申立人は、本件特許の発明の詳細な説明において、効果について説明されている態様は、タイヤにおける周方向溝の断面積の合計をトレッド部の断面積の22%とした場合のみであるから、本件特許発明1は、その全域にわたって上記発明の課題を解決できないものであり、サポート要件を満たさない旨主張している。 しかしながら、上記(2)で検討したとおり、本件特許発明1ないし18は妥当であって、当業者は発明の課題を解決できると認識するものであり、「タイヤにおける周方向溝の断面積の合計をトレッド部の断面積の22%とした」事項は、発明の課題の解決手段とは関係がなく、特許異議申立人の主張は採用できない。 (4)申立理由3のまとめ したがって、本件特許の請求項1ないし18についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取り消すことはできない。 第5 むすび 上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし18に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2021-11-04 |
出願番号 | 特願2020-139407(P2020-139407) |
審決分類 |
P
1
651・
536-
Y
(B60C)
P 1 651・ 121- Y (B60C) P 1 651・ 537- Y (B60C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 松岡 美和 |
特許庁審判長 |
大島 祥吾 |
特許庁審判官 |
植前 充司 相田 元 |
登録日 | 2021-01-06 |
登録番号 | 特許第6819028号(P6819028) |
権利者 | 住友ゴム工業株式会社 |
発明の名称 | 空気入りタイヤ |
代理人 | 神野 直美 |
代理人 | 清水 敏 |
代理人 | 上代 哲司 |