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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01F
管理番号 1380690
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-18 
確定日 2021-12-07 
事件の表示 特願2020− 21055「コイル部品」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月14日出願公開、特開2020− 74486、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年3月7日に出願した特願2017−42940号の一部を令和2年2月11日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年 5月26日付け:拒絶理由通知
令和 2年 7月15日 :意見書の提出
令和 2年12月22日付け:拒絶査定
令和 3年 1月18日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年 7月28日付け:当審における拒絶理由通知
令和 3年 8月19日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年12月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
【分割要件について】
本願の請求項2では、「エッジ部分の面取り全体が凸状アール面」であって、「前記エッジ部分は、複数点において前記ワイヤに接触する形状を有する」事項を含むこととなり、そのような事項は、原出願の当初の明細書等に記載されておらず、また、当該当初明細書等の記載から、自明な事項ともいえない。
したがって、本願は、原出願の当初の明細書等の範囲内でない事項を含むこととなることから、分割要件を満たしておらず、出願日は遡及しない。

●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について

・請求項 1,3−8
・引用文献等 A

●理由2(進歩性)について

・請求項 2−8
・引用文献等 A

<引用文献等一覧>
A.特開2018−148081号公報

第3 当審の拒絶理由の概要
当審において令和3年7月28日付けで通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1
・引用文献等1

・請求項2、3
・引用文献等1、2

・請求項4ないし6
・引用文献等1ないし3

・請求項7
・引用文献等1ないし4

<引用文献等一覧>
1.特開2012−119554号公報
2.特開2003−332139号公報
3.特開2009−272315号公報
4.特開2006−261572号公報

第4 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、令和3年8月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
巻芯部ならびに前記巻芯部の互いに逆の第1および第2の端部にそれぞれ設けられた第1および第2の鍔部を有する、コアと、
線状の中心導体と前記中心導体の周面を覆う絶縁被覆層とを有し、前記巻芯部上に螺旋状に巻回された、ワイヤと、
前記ワイヤの両端部分において前記中心導体と電気的にそれぞれ接続され、前記第1および第2の鍔部に取り付けられた、金属板からなる複数の端子電極と、
を備え、
前記端子電極は、前記ワイヤの端部に沿うとともに、溶接によって前記ワイヤを電気的かつ機械的に接続する部分となる受け部を備え、
前記受け部は、前記鍔部から所定の間隔を置いて位置しており、かつエッジ部分を有し、
前記ワイヤは、前記巻芯部から前記端子電極に至る間、前記鍔部に接触しないが、前記端子電極の前記エッジ部分に接触する部分を有し、
前記端子電極の前記エッジ部分全体に、凸状アール面をなす面取りが施されている、
コイル部品。
【請求項2】
前記端子電極は、厚み寸法が0.15mm以下である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記ワイヤの前記中心導体の径は35μm以下である、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記ワイヤの前記絶縁被覆層の厚み寸法は6μm以下である、請求項1ないし3のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項5】
前記ワイヤにおける前記エッジ部分に接触する部分では、前記中心導体が前記絶縁被覆層から露出していない、請求項1ないし4のいずれかに記載のコイル部品。」

第5 引用文献の記載及び引用発明
令和3年7月28日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。以下同様。)
「【0016】
以下、本発明の実施の形態を図1から図13に基づき説明する。図1に示されるコイル部品1は、実装基板10上のランドパターン10A、10Aにハンダで実装されるアンテナコイルであり、長手方向(後述の巻芯部3の軸方向)の長さが約8.0mm、長手方向と直交する上下方向(実装基板10からコイル部品1に向かう方向を上方と定義)、上下方向及び長手方向と直交する幅方向がそれぞれ約2.7mmである。コイル部品1は、本体1Aと、本体1Aを覆うケース1Bとから構成されている。ケース1Bは、一面が開口して内部に本体1Aを収容する空間が画成された略直方体状の絶縁樹脂ケースであり、内部に本体1Aを固定する爪が複数設けられている。
【0017】
図2に示されるように、本体1Aは、コア2と、一対の端子金具6、7と、導線8とから主に構成されており、長手方向、幅方向、上下方向でそれぞれ7.0mm、2.0mm、1.8mmになるように構成されている。
【0018】
コア2は、図3(a)に示されるように、巻芯部3と、巻芯部3の長手方向一端及び他端に設けられ、互いに同形状の一対の鍔部4、鍔部5より構成されている。鍔部4、鍔部5は同形状・同構成であるため、代表として鍔部4について説明する。
【0019】
巻芯部3は、長手方向に直交する断面が略方形に構成され、図3(b)に示されるように一対の鍔部4、鍔部5に対して、それぞれの幅方向の中央に位置するように配置されている。
【0020】
鍔部4は、コイル部品1が実装基板10に実装された状態で実装基板10に対面すると共に、図3(a)に示されるように、巻芯部3の軸と略平行な実装面41と、巻芯部3の軸を鍔部4側に延長した仮想線Xに対して実装面41の反対側に位置し実装面41と平行な継線面42と、幅方向と交差し実装面41と継線面42との間に位置する側面43、43(図3(d))を有している。図3(b)に示されるように、実装面41には、幅方向に並んだ一対の実装側凹部41a、41aが形成されている。図3(c)に示されるように、継線面42には、その幅方向において中心位置に一の継線側凹部42aが形成されている。また図3(d)に示されるように、鍔部4において、側面43、43には、それぞれ段部43a、43aが設けられている。これら段部43a、43aは、本体1Aがケース1B内に挿入された際にケース1B内の図示せぬ爪に掛止され、本体1Aがケース1Bから脱落するのを防いでいる。
【0021】
一対の端子金具6、7は、リン青銅の板材から形成されており、互いに同形状、同構成を成している。よって代表として端子金具6について説明する。
【0022】
端子金具6は、図4(a)に示されるように、互いに略平行に伸びる実装部61及び継線部62と、実装部61と継線部62とを接続する連結部63とから略コの字状に構成されている。実装部61と継線部62とは、それぞれ実装面41と継線面42とに接した状態で、その間に鍔部4を挟持可能な距離に配置されている。」

「【0025】
継線部62は、導線8の端部が継線される部材であり、台座部62Aと、保持部64と、溶接片62Bとを主に備えて構成されている。台座部62Aは、連結部63と接続され実装部61と略平行な平板であり、上述の略コの字状の一部を構成している。台座部62Aにおいて、略コの字状の内周面になる面には、図4(b)に示されるように、ボッチである凸部62Cを有している。この凸部62Cは、端子金具6を鍔部4に装着した状態で、継線側凹部42a内に挿入される。また凸部62Cは、図5に示されるように、台座部62Aの内周面が継線面42から僅かに離間して台座部62A内周面と継線面42との間に隙間が形成されるように、継線側凹部42a内に完全に収まらない程度の大きさに構成されている。また台座部62Aにおいて、上面の巻芯部3側に位置し幅方向に延びる縁部は、面取加工されている。」

「【0030】
導線8は、ポリアミドイミド等を被覆とする耐熱絶縁被覆導線であって30μm程度の線径の導線であり、図2に示されるように、巻芯部3へと巻回されて両端がそれぞれ端子金具6及び端子金具7の保持部64、74で保持されると共に溶接部65、75に溶接により接続されている。導線8において、巻芯部3に巻回されている部分の大部分は単線であり、巻芯部3への巻初め一ターン〜数ターン及び巻き終わり数ターン〜一ターンと、巻芯部3から保持部64、74までの間とは三本の導線8が撚られて構成されている(撚り線8A)。この撚り線8Aは、図8に示されるように、図8(a)に示される一本の導線8を、図8(b)に示されるように折り返して三本重なるようにし、その後に、図8(c)に示されるように撚ることにより構成される線であり、一本の線より強度を増し、破断等に対して強くなっている線である。またこの撚り線8Aの径は、図7に示されるようにaより小さくbより大きくなるように構成されている。」

「【0032】
以下、上記構成のコイル部品1の製造方法について説明する。この説明においても、特に言及しない限りは、代表として鍔部4及び端子金具6についてのみ説明する。またコイル部品1の完成形状において導線8は、巻芯部3に毎回されている箇所を上流側とし、そこから端子金具6、7に延出された端部を下流側として説明する。先ず端子金具6、7がそれぞれ鍔部4、5に装着されたコア2を準備し(準備工程)、このコア2を図示せぬ治具に取り付ける。またノズルから吐出される導線8から撚り線8Aを形成しておく。その状態で、図9に示されるように、撚り線8Aを、台座部62A上に載置して保持部64で保持する(導線保持工程)。具体的には、撚り線8Aを、離間部64Cの開口部分から受け部64Aと台座部62Aとの間の隙間に押し込み、受け部64Aと台座部62Aとで挟持する。尚、撚り線8Aは、長手方向において反巻芯部3側の、溶接片62Bの反巻芯部3側の先端と同じ位置まで保持部64から延びるように構成される。」

「【0034】
撚り線8Aが挿入される離間部64Cと台座部62Aとの間(図7のa)は、撚り線8Aの径より大きいため、容易に受け部64Bと台座部62Aとの間まで撚り線8Aを押し込むことができる。また保持部64から巻芯部3に向けて撚り線8Aが引き回されるが、保持部64において撚り線8Aを挟持する面及び台座部62A上面の巻芯部3側は、それぞれ面取されているため、端子金具6から巻芯部3に引き回される撚り線8Aに傷が入ることは抑制される。」

「【0037】
次に図12に示されるように、保持部64より反巻芯部3側(下流側)の撚り線8Aの撚りをほぐしていく(撚り解し工程)。撚りをほぐす手段としては、図示せぬ櫛状の治具で撚り線8Aを櫛ほどくことにより行われる。この時に、保持部64で撚り線8Aが保持されているため、保持部64から巻芯部3側(上流側)の撚り線8Aの撚りが解けることは抑制される。
【0038】
次に、撚り線8Aの撚りをほぐした箇所であって、溶接片62Bを台座部62Aに向けて折り曲げた際に重なる箇所に、図示せぬレーザ照射装置によりレーザ光を照射し、絶縁被覆層を剥離する(被覆剥離工程)。予め撚りほぐし工程で撚り線8Aはほどかれた状態にあるため、導線8が過度に重なることはない。よってレーザ照射により容易に撚り線8Aの解かれた箇所の絶縁被覆を剥離することができる。
【0039】
次に図13に示されるように、溶接片62Bを撚り線8Aの剥離箇所を覆うように折り曲げて溶接し、図2に示される溶接部65を形成する(溶接工程)。撚り線8Aの溶接される箇所は絶縁被覆が剥離されているため、溶接時に絶縁被覆が溶接箇所に入り込むことが抑制され、好適に溶接片62Bと撚り線8Aとを溶接することができる。また保持部64で撚り線8Aを押さえているため、保持部64から巻芯部3側の撚り線8Aがほぐれた
り、溶接されることはない。これにより、保持部64から巻芯部3までの間の導線8を、確実に撚り線8Aとして保持することができ、保持部64から巻芯部3までの間の導線8の強度を確実に確保することができる。」

「【0043】
更に細かくは、凸部61A、凸部62Aが実装側凹部41a、継線側凹部42aに挿入されて、実装部61、継線部62がそれぞれ実装面41、継線面42から離間して隙間が形成されている。この隙間から磁束がコア2外に出ることができるため、更に過電流損を低減することができる。また上述のように凹凸が係合するため、コア2に対する端子金具6の位置を正確に規定することができ、かつコア2から端子金具6がずれることを抑制することができる。」





以上によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献の記載箇所を示す。)。
「コア2と、一対の端子金具6、7と、導線8とから構成されているコイル部品1であって(【0016】、【0017】)、
コア2は、巻芯部3と、巻芯部3の長手方向一端及び他端に設けられた一対の鍔部4、鍔部5より構成され(【0018】)、
鍔部4は、実装面41と、継線面42と、実装面41と継線面42との間に位置する側面43、43を有し、
継線面42には、継線側凹部42aが形成され(【0020】)、
端子金具6、7は、それぞれ鍔部4、5に装着されるもので(【0032】)、リン青銅の板材から形成され(【0021】)、
端子金具6は、実装部61及び継線部62と、実装部61と継線部62とを接続する連結部63とから略コの字状に構成され(【0022】)、
継線部62は、導線8の端部が継線される部材であり、台座部62Aと、保持部64と、溶接片62Bとを備え、
台座部62Aにおいて、略コの字状の内周面になる面には、凸部62Cを有し、この凸部62Cは、端子金具6を鍔部4に装着した状態で、継線側凹部42a内に挿入され、
台座部62Aの上面の巻芯部3側に位置し幅方向に延びる縁部は、面取加工されており(【0025】)、
導線8は、耐熱絶縁被覆導線であって、巻芯部3へと巻回されて両端がそれぞれ端子金具6及び端子金具7の保持部64、74で保持されると共に溶接部65、75に溶接により接続されるものであり(【0030】)、
導線8から撚り線8Aを形成し(【0032】)、
撚り線8Aを、台座部62A上に載置して保持部64で保持して、保持部64から巻芯部3に向けて撚り線8Aを引き回し(【0032】、【0034】)、
保持部64より反巻芯部3側(下流側)の撚り線8Aの絶縁被覆層を剥離して、溶接片62Bを撚り線8Aの剥離箇所を覆うように折り曲げて溶接して溶接部65を形成した(【0037】−【0039】)、
コイル部品1。」

第6 対比、判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「巻芯部3と、巻芯部3の長手方向一端及び他端に設けられた一対の鍔部4、鍔部5より構成され」る「コア2」は、本願発明1の「巻芯部ならびに前記巻芯部の互いに逆の第1および第2の端部にそれぞれ設けられた第1および第2の鍔部を有する、コア」に相当する。

イ 引用発明の「耐熱絶縁被覆導線であって、巻芯部3へと巻回され」た「導線8」は、本願発明1の「線状の中心導体と前記中心導体の周面を覆う絶縁被覆層とを有し、前記巻芯部上に螺旋状に巻回された、ワイヤ」に相当する。

ウ 引用発明は「撚り線8Aの絶縁被覆層を剥離して、溶接片62Bを撚り線8Aの剥離箇所を覆うように折り曲げて溶接」しているので、「端子金具6及び端子金具7」は「耐熱絶縁被覆導線」である「導線8」の中心導体と接続しているといえる。
そうすると、引用発明の「導線8」の「両端がそれぞれ」「溶接により接続され」「鍔部4、5に装着される」「リン青銅の板材から形成され」る「端子金具6及び端子金具7」は、本願発明の「前記ワイヤの両端部分において前記中心導体と電気的にそれぞれ接続され、前記第1および第2の鍔部に取り付けられた、金属板からなる複数の端子電極」に相当する。

エ 引用発明は「端子金具6は、実装部61及び継線部62と、実装部61と継線部62とを接続する連結部63とから略コの字状に構成され、継線部62は、導線8の端部が継線される部材であり、台座部62Aと、保持部64と、溶接片62Bとを備え」ているので、「端子金具6」の「継線部62」である「台座部62A」は、「導線8の端部」に沿っているといえる。このことは、本願発明1の「受け部」が「前記ワイヤの端部に沿う」ことに相当する。
また、引用発明は「導線8から撚り線8Aを形成し、撚り線8Aを、台座部62A上に載置して保持部64で保持して、保持部64から巻芯部3に向けて撚り線8Aを引き回し、保持部64より反巻芯部3側(下流側)の撚り線8Aの絶縁被覆層を剥離して、溶接片62Bを撚り線8Aの剥離箇所を覆うように折り曲げて溶接し溶接部65を形成し」ているので、「台座部62A上」に「導線8から」「形成」された「撚り線8A」を「載置して」、「台座部62A上」で「撚り線8Aの絶縁被覆層を剥離して」「溶接して溶接部65を形成し」ている。そうすると、引用発明の「台座部62A」は、本願発明1の「溶接によって前記ワイヤを電気的かつ機械的に接続する部分となる受け部」に相当する。
したがって、引用発明の「台座部62A」は、本願発明1の「前記ワイヤの端部に沿うとともに、溶接によって前記ワイヤを電気的かつ機械的に接続する部分となる受け部」に相当する。
また、引用発明の「端子金具6」が「台座部62A」を備えることは、本願発明1の「前記端子電極は、」「受け部を備え」ることに相当する。

オ 引用発明の「台座部62Aの上面の巻芯部3側に位置し幅方向に延びる縁部」は、本願発明1の「エッジ部分」に相当する。
そうすると、引用発明の「台座部62A」と本願発明1とは、「前記受け部は、エッジ部分を有」する点で共通する。
但し、本願発明1は「前記受け部は、前記鍔部から所定の間隔を置いて位置して」いるのに対して、引用発明は「台座部62Aにおいて、略コの字状の内周面になる面には、凸部62Cを有し、この凸部62Cは、端子金具6を鍔部4に装着した状態で、継線側凹部42a内に挿入され」ている点で相違する。

カ ワイヤについて、本願発明1は「前記ワイヤは、前記巻芯部から前記端子電極に至る間、前記鍔部に接触しないが、前記端子電極の前記エッジ部分に接触する部分を有」するのに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。

キ 引用発明の「台座部62Aの上面の巻芯部3側に位置し幅方向に延びる縁部は、面取加工されて」いることは、本願発明の「前記端子電極の前記エッジ部分全体に、」「面取りが施されてい」ることに相当する。
但し、端子電極の面取りが、本願発明は「凸状アール面」であるのに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。

ク 引用発明の「コイル部品1」は、本願発明1の「コイル部品」に相当する。

上記アないしクによれば、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるといえる。
(一致点)
「巻芯部ならびに前記巻芯部の互いに逆の第1および第2の端部にそれぞれ設けられた第1および第2の鍔部を有する、コアと、
線状の中心導体と前記中心導体の周面を覆う絶縁被覆層とを有し、前記巻芯部上に螺旋状に巻回された、ワイヤと、
前記ワイヤの両端部分において前記中心導体と電気的にそれぞれ接続され、前記第1および第2の鍔部に取り付けられた、金属板からなる複数の端子電極と、
を備え、
前記端子電極は、前記ワイヤの端部に沿うとともに、溶接によって前記ワイヤを電気的かつ機械的に接続する部分となる受け部を備え、
前記受け部は、エッジ部分を有し、
前記端子電極の前記エッジ部分全体に、面取りが施されている、
コイル部品。」

(相違点1)
本願発明1は「前記受け部は、前記鍔部から所定の間隔を置いて位置して」いるのに対して、引用発明は「台座部62Aにおいて、略コの字状の内周面になる面には、凸部62Cを有し、この凸部62Cは、端子金具6を鍔部4に装着した状態で、継線側凹部42a内に挿入され」ている点。
(相違点2)
本願発明1は「前記ワイヤは、前記巻芯部から前記端子電極に至る間、前記鍔部に接触しないが、前記端子電極の前記エッジ部分に接触する部分を有」するのに対して、引用発明はそのような特定がない点。
(相違点3)
端子電極の面取りが、本願発明1は「凸状アール面」であるのに対して、引用発明はそのような特定がない点。

(2)相違点についての判断
相違点1ついて検討する。
引用発明は「台座部62Aにおいて、略コの字状の内周面になる面には、凸部62Cを有し、この凸部62Cは、端子金具6を鍔部4に装着した状態で、継線側凹部42a内に挿入され」ている。
ここで、引用文献1には「また上述のように凹凸が係合するため、コア2に対する端子金具6の位置を正確に規定することができ、かつコア2から端子金具6がずれることを抑制することができる。」(【0043】)と記載されているので、「凸部62C」と「継線側凹部42a」をなくすことにより「凸部62C」を「継線側凹部42a内に挿入」し係合することをやめて、「台座部62A」と「鍔部4」を離間させることは、コア2に対する端子金具6の位置決めやずれの抑制ができなくなるので、当業者に動機付けられないことである。

なお、引用文献2ないし4にも、受け部を、鍔部から所定の間隔を置いて配置することは記載されていない。

したがって、上記相違点1に係る構成は、引用発明、引用文献2ないし4に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5は、本願発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、引用文献2ないし4に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第7 原査定について
審判請求時の補正により、請求項2の「前記エッジ部分は、複数点において前記ワイヤに接触する形状を有する」事項は削除された。また、令和3年8月19日の補正においても同様である。
そうすると、本願は、原出願の当初の明細書等の範囲内でない事項を含まないものであって、分割要件を満たしており出願日が遡及する。

したがって、原出願で引用された引用文献Aは、本願の出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物ではないから、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-11-16 
出願番号 P2020-021055
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 須原 宏光
永井 啓司
発明の名称 コイル部品  
代理人 小柴 雅昭  
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