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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1380746
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-16 
確定日 2021-12-09 
事件の表示 特願2016−219650「顕微鏡用スタビライザー」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月17日出願公開、特開2018− 77386〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年11月10日の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

令和 2年 8月21日付け:拒絶理由通知書
令和 2年10月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年11月24日付け:拒絶査定(原査定)
令和 3年 2月16日 :審判請求書の提出

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、令和2年10月20日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
顕微鏡用スタビライザーであって、
基部と、
前記基部に設けられ、観察対象物側において開口する第1開口部及び前記第1開口部と反対側において開口する第2開口部を有する少なくとも1つの吸着孔とを備え、
前記第1開口部の開口幅は、前記第2開口部の開口幅よりも大きく、
前記吸着孔の高さは、3mm以下である、
顕微鏡用スタビライザー。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の請求項1に係る発明の拒絶の理由の概要は、
1.(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、
2.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。



引用文献1.特開2014−048549号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 原査定の拒絶の理由で引用された出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同様。)。

「【実施例2】
【0032】
図6は、本実施例に係る観察部位固定装置の構成を示す図である。本実施例に係る観察部位固定装置50は、浸液保持具20の代わりに浸液保持具60を備えている点、及び、負圧(つまり、大気圧より低い圧力状態)によってマウス2を浸液保持具60に固定するためのポンプ51及びチューブ52を備えている点が、実施例1に係る観察部位固定装置10と異なっている。また、図示しない本実施例に係る顕微鏡は、観察部位固定装置10の代わりに観察部位固定装置50を含む点が、実施例1に係る顕微鏡1と異なっている。その他の点は、顕微鏡1と同様である。
【0033】
浸液保持具60は、浸液9を保持するための浸液保持部61とマウス2の観察部位を固定するための固定部62を備えていて、カバーガラス23が浸液保持部61に形成された凹部の底面を構成する点は、実施例1に係る浸液保持具20と同様である。
【0034】
図7Aは、本実施例に係る浸液保持具の構成を示す図であり、図7A(a)に示す浸液保持具の上面図と図7(b)に示す浸液保持具の断面図とを併記したものである。図7Bは、図7Aに示す浸液保持具のBB断面における断面図である。図7Cは、図7Aに示す浸液保持具を矢印Cに沿って見た図である。図7Aから図7Cを参照しながら、試料固定装置50に含まれる浸液保持具60の構成について詳細に説明する。
【0035】
図7A及び図7Bに示されるように、浸液保持具60は、カバーガラス23がOリング25及び押さえ部材26により浸液保持部本体64に固定されている点は、浸液保持具20と同様である。浸液保持具60は、浸液保持具60がマウス2に装着された状態でマウス2の観察部位を臨む貫通穴69(第1の貫通穴)に加えて、浸液保持具60がマウス2に装着された状態で固定部62とカバーガラス23とマウス2とにより囲まれる空間と浸液保持具60の外側面との間を貫通する貫通穴67(第2の貫通穴)が形成されている点が、浸液保持具20と異なっている。・・・(略)・・・
【0037】
チューブ52は、穴67cにつながっていて、ポンプ51は、貫通穴67及びチューブ52を介して、固定部62とカバーガラス23とマウス2とにより囲まれた空間内の気体を吸引する吸引部として機能する。これにより、上述した空間には負圧が発生して、マウス2がカバーガラス23及び固定部62に吸着されることで、浸液保持具60に観察部位が固定される。なお、ポンプ51の吸引力は、調整可能であることが望ましい。」

「【実施例3】
【0040】
図9は、本実施例に係る観察部位固定装置の構成を示す図である。本実施例に係る観察部位固定装置80は、支持部30の代わりに支持部90を備えている点が、実施例2に係る試料固定装置50と異なっている。また、図示しない本実施例に係る顕微鏡は、観察部位固定装置10の代わりに観察部位固定装置80を含む点が、実施例1に係る顕微鏡1と異なっている。その他の点は、顕微鏡1と同様である。・・・(略)・・・
【0042】
本実施例に係る試料固定装置80によれば、3つの駆動部を操作してマウス2に対する浸液保持具60の位置を変化させることで、例えば、図10A及び図10Bに示されるように、マウス2の任意の部位に浸液保持具60を装着して固定することができる。また、図10Cに示されるように、マウス2を仰向けにしてマウス2の腹部に浸液保持具60を装着して固定しても良い。そして、3つの駆動部による浸液保持具60に移動に合わせてステージ3も移動させることで液浸系対物レンズ4をカバーガラス23上に位置させることができる。なお、長時間浸液9を保持することができるとともに、弱い押圧力でまたは押圧力を付与することなく観察期間中に生じるマウス2の呼吸や心拍などによる観察部位の動きを抑えることができる点については、実施例2に係る観察部位固定装置50と同様である。」

図6、図7A、図9、図10A、図10B及び図10Cは以下のとおりである。
図6、図7A(貫通穴69(第1の貫通穴))及び本願明細書【0035】を参照しつつ、図9、図10A、図10B及び図10Cを見ると、図9、図10A、図10B及び図10Cの記載から、固定部62と、固定部62に設けられ、マウス2側において開口する第1開口部及び前記第1開口部と反対側のカバーガラス23側において開口する第2開口部を有する第1の貫通穴とを備え、前記第1開口部の開口幅は前記第2開口部の開口幅より大きい観察部位固定装置80が、把握できる。
また、本願明細書【0035】及び【0037】を参照しつつ、図9を見ると、図9に記載から、第2の貫通穴及びチューブ52を介して、固定部62とカバーガラス23とマウス2とにより囲まれた空間内の気体を吸引する吸引部として機能するポンプ51が、把握できる。

【図6】

【図7A】

【図9】

【図10A】

【図10B】

【図10C】


2 引用発明
したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「固定部と、
固定部に設けられ、マウス側において開口する第1開口部及び前記第1開口部と反対側のカバーガラス側において開口する第2開口部を有する第1の貫通穴とを備え、
前記第1開口部の開口幅は前記第2開口部の開口幅より大きく、
固定部とカバーガラスとマウスとにより囲まれた空間内の気体が吸引される、
観察部位固定装置。」

第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 引用発明の「観察部位固定装置」は、本願発明の「顕微鏡用スタビライザー」に、
引用発明の「固定部」は、本願発明の「基部」に、
それぞれ相当する。

2 引用発明は「固定部とカバーガラスとマウスとにより囲まれた空間内の気体が吸引される」と特定されていることから、引用発明の「固定部に設けられ、マウス側において開口する第1開口部及び前記第1開口部と反対側のカバーガラス側において開口する第2開口部を有する第1の貫通穴」は、気体が吸引されマウスに吸着される部分といえる。
そうすると、引用発明の「固定部に設けられ、マウス側において開口する第1開口部及び前記第1開口部と反対側のカバードガラス側において開口する第2開口部を有する第1の貫通穴」は、本願発明の「前記基部に設けられ、観察対象物側において開口する第1開口部及び前記第1開口部と反対側において開口する第2開口部を有する少なくとも1つの吸着孔」に、
引用発明の「前記第1開口部の開口幅は前記第2開口部の開口幅より大きく」は、本願発明の「前記第1開口部の開口幅は、前記第2開口部の開口幅よりも大きく」に、
それぞれ相当する。

3 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「顕微鏡用スタビライザーであって、
基部と、
前記基部に設けられ、観察対象物側において開口する第1開口部及び前記第1開口部と反対側において開口する第2開口部を有する少なくとも1つの吸着孔とを備え、
前記第1開口部の開口幅は、前記第2開口部の開口幅よりも大きい、
顕微鏡用スタビライザー。」

【相違点】
吸着孔について、本願発明は「高さは、3mm以下である」のに対し、引用発明はそのようなものか明らかでない点。

第6 判断
新規性について
(1)図10Cの記載から、マウスと比較して固定部は極めて薄いこと、また、固定部とカバーガラス23とは、高さ方向において同程度の厚さであることが把握できる。
そうすると、引用発明の固定部に設けられ、マウス側において開口する第1開口部及び前記第1開口部と反対側のカバーガラス側において開口する第2開口部を有する第1の貫通穴の高さは、3mm以下の蓋然性が高いといえ、相違点は実質的な相違点とはいえない。
また、図10Cはあくまで模式図であって、「固定部とカバーガラス23とは、高さ方向において同程度の厚さである」ことまでは把握できないとしても、図10A〜図10Cの記載から、少なくとも、観察したい部位(マウスの観察部位)等に応じて、固定部の大きさが異なる観察部位固定装置を用いることが可能であることが見て取れる。そして、マウスの観察部位の大きさも考慮すれば、「第1の貫通穴の高さは、3mm以下」は、引用文献1に実質的に開示されているといえる。

(2)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明である。

進歩性について
仮に、上記相違点が実質的な相違点である場合について検討する。
(1)相違点について
ア 引用文献1には「弱い押圧力でまたは押圧力を付与することなく観察期間中に生じるマウス2の呼吸や心拍などによる観察部位の動きを抑えることができる」と記載されていることから、引用発明の「固定部とカバーガラスとマウスとにより囲まれた空間内の気体が吸引される」ことによって、観察期間中に生じるマウスの呼吸や心拍などによる観察部位の動きを抑えることができるといえる。
そうすると、観察期間中に生じるマウスの呼吸や心拍などによる観察部位の動きを抑えることを考慮して、吸着固定が容易なように固定部とカバーガラスとマウスとにより囲まれた空間を少なくすることが示唆されているといえる。

イ また、引用文献1には、マウスの任意の部位に浸液保持具を装着して固定することができること、マウスを仰向けにしてマウスの腹部に浸液保持具を装着して固定しても良いことが記載されている。そして、図10A〜Cの記載から、少なくとも、観察したい部位(マウスの観察部位)等に応じて、固定部の大きさが異なる観察部位固定装置を用いることが可能であることが見て取れる。

ウ 上記ア及びイから、観察期間中に生じるマウスの呼吸や心拍などによる観察部位の動きを抑えることを考慮し、さらに、マウスの観察部位に合わせて、第1の貫通穴の高さが3mm以下のものを選択することは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。
なお、本願の明細書を参照しても、「吸着孔の高さは、3mm以下である」ことに、臨界的意義があるとは解せない。

(2)効果について
そして、相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたものである。

3 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において「引用文献1の段落[0020]の「固定部22は、全体として、底面に貫通穴が設けられた凹面を試料側に向けた椀形状を呈している。マウス2との十分な大きさの接触面を確保してしっかりとマウス2の観察部位を固定するためには、凹面の面積は少なくとも1mm2以上であることが望ましい。」(下線は引用時に付加)という記載が参照されています。しかしながら、「1mm2以上」という表現から明らかなように、段落[0020]の記載は面積の下限を示すものであり、図3Aの例において凹面の面積が当該下限1mm2に等しいことを示すものではありません。」、「拒絶査定におけるご認定に沿って引用文献1の図3Aにおいて固定部22の凹面の面積が1mm2であるとすると、他の図との整合性が失われます。・・・(略)・・・たとえば図2に当てはめると、図2のマウス2の大きさは、頭部先端から尾部末端まで10mm未満となり、小さすぎて技術常識に整合いたしません。このように、引用文献1の図3Aにおいて固定部22の凹面の面積が1mm2であるとする解釈は、他の図との整合性を損ない不条理なものと言えます。」、「引用文献1の段落[0020]には、「マウス2との十分な大きさの接触面を確保してしっかりとマウス2の観察部位を固定するためには、凹面の面積は少なくとも1mm2以上であることが望ましい。」という記載がありますが、この記載には、「十分な大きさの接触面を確保」するという観点から、凹面の面積は大きいほうが好ましいという思想が表現されています。したがって、この記載は、凹面の面積を拡大する方向への示唆であると言えますが、これは、図3Aの保持具のサイズを小さいものに限定するような思想に対しては逆方向の教示であると言えます。このような記載は、引用文献1の発明において、図3Aの保持具のサイズ(当然に吸着孔の高さを含みます)の上限を設定することへの阻害要因となります。」旨主張している。

しかしながら、上記1及び2で検討したとおりである。
なお、引用文献1の「マウス2との十分な大きさの接触面を確保してしっかりとマウス2の観察部位を固定するためには、凹面の面積は少なくとも1mm2以上であることが望ましい。」との記載は、望ましい範囲を述べているだけであって、当該記載から、引用発明の第1の貫通穴の高さは限定解釈されない。また、図10Cのように第1の貫通穴が小さいものも、引用文献1は想定している。
したがって、審判請求人の主張は採用することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-10-08 
結審通知日 2021-10-12 
審決日 2021-10-25 
出願番号 P2016-219650
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 野村 伸雄
松川 直樹
発明の名称 顕微鏡用スタビライザー  
代理人 特許業務法人平木国際特許事務所  
代理人 特許業務法人平木国際特許事務所  
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