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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B62D 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B62D |
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管理番号 | 1380810 |
総通号数 | 1 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-03-24 |
確定日 | 2022-01-12 |
事件の表示 | 特願2016−246678号「ハンドルの芯金」拒絶査定不服審判事件〔平成30年6月28日出願公開、特開2018−99977号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年12月20日の出願であって、令和2年9月10日付けで拒絶理由が通知され、同年10月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和3年1月6日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)され、これに対して、同年3月24日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、同年7月27日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年9月16日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 当審拒絶理由について 当審は、令和3年7月27日付けで、請求項1の「前記ボス芯金部、前記リム芯金部、及び、前記連結部は、前記操向用シャフトの軸方向に互いに位置が異なるとともに互いに略平行な仮想平面に沿って配置され、前記連結部は、前記操向用シャフトの軸方向において前記ボス芯金部と前記リム芯金部との間に位置する」という記載は明確でないから、この出願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨の拒絶の理由を通知したが、令和3年9月16日の手続補正により、以下の第3のとおり、特許請求の範囲の請求項1において「前記ボス芯金部は、ボス芯金本体部と、前記各弱部に並行する位置に両側部の前記スポーク芯金部と下部の前記スポーク芯金部とを連結する連結部と、を備え、前記ボス芯金部のボス芯金本体部、前記リム芯金部、及び、前記ボス芯金部の連結部は、前記操向用シャフトの軸方向に互いに位置が異なるとともに互いに略平行な仮想平面に沿って配置され、前記ボス芯金部の連結部は、前記操向用シャフトの軸方向において前記ボス芯金部のボス芯金本体部と前記リム芯金部との間に位置する」と補正された結果、請求項1の記載は明確になった。 したがって、当審拒絶理由は解消した。 第3 本願発明 本願の請求項1及び2に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、令和3年9月16日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりの発明である。 「 【請求項1】 操向用シャフトと接続されるボス芯金部と、 このボス芯金部を囲んで位置するリム芯金部と、 これらボス芯金部とリム芯金部とを両側部及び下部でそれぞれ連結する複数のスポーク芯金部とを具備し、 前記リム芯金部は、両側部の前記スポーク芯金部と下部の前記スポーク芯金部との間の位置にそれぞれ弱部を備え、 前記ボス芯金部は、ボス芯金本体部と、前記各弱部に並行する位置に両側部の前記スポーク芯金部と下部の前記スポーク芯金部とを連結する連結部と、を備え、 前記ボス芯金部のボス芯金本体部、前記リム芯金部、及び、前記ボス芯金部の連結部は、前記操向用シャフトの軸方向に互いに位置が異なるとともに互いに略平行な仮想平面に沿って配置され、 前記ボス芯金部の連結部は、前記操向用シャフトの軸方向において前記ボス芯金部のボス芯金本体部と前記リム芯金部との間に位置する ことを特徴とするハンドルの芯金。 【請求項2】 下部のスポーク芯金部は、複数設けられた ことを特徴とする請求項1記載のハンドルの芯金。」 第4 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 1 理由1 (新規性)この出願の以下の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2 理由2 (進歩性)この出願の以下の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項1−2 ・刊行物等 1.特開平9−104349号公報 以下刊行物等1を引用文献1という。 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)引用文献1に記載された事項 引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様である。)。 (1a) 「【0005】そこで本発明の課題は、車両が衝撃を受けた際に、ステアリングホイールのリング部が運転者の下腹部を圧迫することがなく、更にエアバッグ装置をその展開初期においては運転者の頭部及び胸部を確実に支持すると共に、展開後期においても運転者に向けて適切な方向で膨張するように取り付けることのできるステアリングホイールとその効率的な製造方法とを開発することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するため、本発明は、円環状をなすリング部と、ステアリングシャフトの取付部であるボスをもつボスプレートと、同ボスプレートと前記リング部とを連結する複数のスポーク芯金とを有する金属ハブコアを備えてなるステアリングホイールであって、前記リング部は前記ボスプレートを介した下側半分の所望の部位が他の部位よりも塑性変形しやすく構成されてなることを特徴とするステアリングホイールを主要な構成としている。 ・・・ 【0011】このようにリング部に至る樹脂圧を変化させることで、樹脂圧の低い部分においてはリング部を変形させることなく第1樹脂材料がその周囲を被覆するが、樹脂圧の高い部分においてはその樹脂圧によりリング部を押し潰すように塑性変形させて被覆する。この押し潰された箇所は外力により容易に変形する。」 (1b) 「【0017】図1は本発明のステアリングホイールの中間部材である第1樹脂材料を所定部位に被覆成形した金属ハブコアを示している。金属ハブコア1は全体が円環形状をなす断面が円形の中空リング11と、同中空リング11の中心部に配されたボスプレート3と、中空リング11とボスプレート3とを連結する複数のスポーク芯金2とから構成されている。ボスプレート3は中空リング11の中心部に配置され、その4隅部において中空リング11の下半部と、左右対称の上下スポーク芯金21,22を介して連結されている。 【0018】中空リング11は鋼材のシーム管であり、外径は15ミリ、板厚は1.2ミリである。中空リング11の下側半部は内側半周面が第1樹脂材料により被覆された半周被覆部11aを構成しており、その複数箇所において局部的に全周を同一樹脂材料により被覆した全周被覆部11bが形成されている。本実施例によれば、第1樹脂材料としてガラス繊維を40重量%混入した繊維強化ポリプロピレンが使用されている。もちろん、この第1樹脂材料としては前述の材料に限定されず、例えばガラス繊維入りポリエステル等も使用できる。 【0019】ボスプレート3は板厚が数ミリのプレス鋼材からなる板体からなり、その中心部に鍛造などで形成した鋼鉄製のボス3aが一体に取り付けられている。ボスプレート3はボス3aを除く略全面が前述の第1樹脂材料により被覆されており、その樹脂被覆部3bの上端には成形の際に形成されるゲート切断端31が残存している。 【0020】上下スポーク芯金21,22は中実の鋼鉄棒材で、外径は8〜10数ミリであり、各端部はボスプレート3及び中空リング11に熔接により一体に接合されている。上スポーク芯金21は全体に第1樹脂材料で被覆された被覆部21aを有し、中空リング11との接合部の付近には、図2に示すように、上スポーク芯金21の一部を第1樹脂材料により全周を被覆していない非被覆部23が形成されている。一方、下スポーク芯金22は中空リング11の上記半周被覆部11aに連続する同じく第1樹脂材料により全面を被覆された被覆部22aを有している。 【0021】これら上スポーク芯金21と下スポーク芯金22のそれぞれ略中心部はバイパス連結部24により連結されている。この連結部24は第1樹脂材料からなり、また、上下スポーク芯金21,22はエアバッグ装置の一部をなす図示せぬベースプレートの取付部である取付フランジ25を有している。上スポーク芯金21及び下スポーク芯金22の第1樹脂材料による被覆部21a及び22aの成形時において、前記連結部24は上スポーク芯金21から下スポーク芯金22への第1樹脂材料の樹脂流路を構成する。 【0022】図3〜図7は、本発明のステアリングホイールのリング部における各部位での断面図である。図3及び図6に示すように、図1のB−B断面及びE−E断面、即ち中空リング11とスポーク芯金2とが熔接により接合されている箇所においては、中空リング11はその断面が略真円であり、スポーク芯金2の全体及び中空リング11の半周が第1樹脂により均一な厚みで被覆されている。 【0023】図4に示すように、上スポーク芯金21に近接する図1のC−C断面においては、中空リング11は樹脂圧により内側が外側に向けて押し潰され半円状に変形しているが、断面の外周形状は上述のB−B断面及びE−E断面と同一であり、押し潰された部分には樹脂が肉厚で存在している。 【0024】更に図5に示すように、下スポーク芯金22に近接する図1のD−D断面においては、中空リング11は内側が更に押し潰されて三日月状に変形し、押し潰された部分には樹脂が充填され、より肉厚に被覆されている。」 (1c) 「【0045】・・・ ・・・ 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明のステアリングホイールの中間部材である第1樹脂材料を所定部位に被覆成形した金属ハブコアを示す上面図である。 【図2】図1のステアリングホイールにおける中空リングと上スポーク芯金との接合部を拡大して示す斜視図である。 【図3】図1におけるB−B断面図である。 ・・・」 (1d) 図1〜7、9、11、12は、以下のとおりである。 (2)引用文献1に記載された発明 ア 摘記(1b)の段落【0017】の「中空リング11とボスプレート3とを連結する複数のスポーク芯金2」及び「ボスプレート3は中空リング11の中心部に配置され、その4隅部において中空リング11の下半部と、左右対称の上下スポーク芯金21,22を介して連結されている」という記載における「複数のスポーク芯金2」すなわち「左右対称の上下スポーク芯金21,22」は、当該記載に併せて図1を参照すると、ボスプレート3の4隅部において中空リング11の下半部と連結され、中空リング11とボスプレート3とを連結する、左右対称の、ボスプレート3の右上隅部と中空リング11の下半部の右上部とを連結する右上スポーク芯金21及びボスプレート3の左上隅部と中空リング11の下半部の左上部とを連結する左上スポーク芯金21、並びに、左右対称の、ボスプレート3の右下隅部と中空リング11の下半部の右下部とを連結する右下スポーク芯金22及びボスプレート3の左下隅部と中空リング11の下半部の左下部とを連結する左下スポーク芯金22、として特定できる。 イ 摘記(1b)の段落【0023】の「図4に示すように、上スポーク芯金21に近接する図1のC−C断面においては、中空リング11は樹脂圧により内側が外側に向けて押し潰され半円状に変形している」という記載及び段落【0024】の「図5に示すように、下スポーク芯金22に近接する図1のD−D断面においては、中空リング11は内側が更に押し潰されて三日月状に変形し」ているという記載における「中空リング11」は、これらの記載と上記アに併せて、図1、図4、図5を参照すると、中空リング11は、右上スポーク芯金21が連結する部分と右下スポーク芯金22が連結する部分との間及び左上スポーク芯金21が連結する部分と左下スポーク芯金22が連結する部分との間において、内側が外側に向けて押し潰され半円状に変形しているものとして、特定できる。 ウ 摘記(1b)の段落【0021】の「これら上スポーク芯金21と下スポーク芯金22のそれぞれ略中心部はバイパス連結部24により連結されている」という記載と上記アに併せて、図1を参照すると、右上スポーク芯金21と右下スポーク芯金22の略中心部はバイパス連結部24により連結され、左上スポーク芯金21と左下スポーク芯金22の略中心部はバイパス連結部24により連結されていることが、明らかである。 エ 上記ア〜ウ、摘記(1a)、(1b)及び図1〜7(摘記(1d)参照)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「全体が円環形状をなす断面が円形の中空リング11と、 中空リング11の中心部に配された、ステアリングシャフトの取付部であるボスをもつボスプレート3と、 ボスプレート3の4隅部において中空リング11の下半部と連結され、中空リング11とボスプレート3とを連結する、左右対称の、ボスプレート3の右上隅部と中空リング11の下半部の右上部とを連結する右上スポーク芯金21及びボスプレート3の左上隅部と中空リング11の下半部の左上部とを連結する左上スポーク芯金21、並びに、左右対称の、ボスプレート3の右下隅部と中空リング11の下半部の右下部とを連結する右下スポーク芯金22及びボスプレート3の左下隅部と中空リング11の下半部の左下部とを連結する左下スポーク芯金22と、から構成され、 中空リング11は、右上スポーク芯金21が連結する部分と右下スポーク芯金22が連結する部分との間及び左上スポーク芯金21が連結する部分と左下スポーク芯金22が連結する部分との間において、内側が外側に向けて押し潰され半円状に変形し、 右上スポーク芯金21と右下スポーク芯金22の略中心部はバイパス連結部24により連結され、左上スポーク芯金21と左下スポーク芯金22の略中心部はバイパス連結部24により連結されている、 ステアリングホイールの中間部材である金属ハブコア1。」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「中空リング11」及び「ボスプレート3」は、「金属ハブコア1」を「構成」する部材であるから、いずれも、金属であることが明らかである。 引用発明の「ステアリングシャフト」は、本願発明1の「操向用シャフト」に相当する。 そうすると、引用発明の「中空リング11の中心部に配された、ステアリングシャフトの取付部であるボスをもつボスプレート3」は、本願発明1の「操向用シャフトと接続されるボス芯金部」に相当する。 イ 上記アを踏まえると、引用発明の「ステアリングシャフトの取付部であるボスをもつボスプレート3」が「中心部に配された」「全体が円環形状をなす断面が円形の中空リング11」は、本願発明1の「このボス芯金部を囲んで位置するリム芯金部」に相当する。 ウ 上記ア、イを踏まえると、引用発明の「ボスプレート3の4隅部において中空リング11の下半部と連結され、中空リング11とボスプレート3とを連結する、左右対称の、ボスプレート3の右上隅部と中空リング11の下半部の右上部とを連結する右上スポーク芯金21及びボスプレート3の左上隅部と中空リング11の下半部の左上部とを連結する左上スポーク芯金21、並びに、左右対称の、ボスプレート3の右下隅部と中空リング11の下半部の右下部とを連結する右下スポーク芯金22及びボスプレート3の左下隅部と中空リング11の下半部の左下部とを連結する左下スポーク芯金22」は、本願発明1の「これらボス芯金部とリム芯金部とを両側部及び下部でそれぞれ連結する複数のスポーク芯金部」に相当する。 エ 上記ア〜ウを踏まえると、引用発明の「中空リング11と、」「ボスプレート3と、」「右上スポーク芯金21及び」「左上スポーク芯金21、並びに、」「右下スポーク芯金22及び」「左下スポーク芯金22と、から構成され」ることは、本願発明1の「ボス芯金部と、」「リム芯金部と、」「複数のスポーク芯金部とを具備」することに相当する。 オ 上記ウと、摘記(1a)の段落【0011】の「押し潰された箇所は外力により容易に変形する」という記載、及び、同段落【0006】の「リング部は前記ボスプレートを介した下側半分の所望の部位が他の部位よりも塑性変形しやすく構成されてなる」という記載とを参照すると、引用発明の「中空リング11」の「右上スポーク芯金21が連結する部分と右下スポーク芯金22が連結する部分との間及び左上スポーク芯金21が連結する部分と左下スポーク芯金22が連結する部分との間において、内側が外側に向けて押し潰され半円状に変形」する部分が、弱部となっていることは、明らかである。 そうすると、引用発明の「中空リング11は、右上スポーク芯金21が連結する部分と右下スポーク芯金22が連結する部分との間及び左上スポーク芯金21が連結する部分と左下スポーク芯金22が連結する部分との間において、内側が外側に向けて押し潰され半円状に変形」することは、本願発明1の「前記リム芯金部は、両側部の前記スポーク芯金部と下部の前記スポーク芯金部との間の位置にそれぞれ弱部を備える」ことに相当する。 カ 引用発明の「ステアリングホイールの中間部材である金属ハブコア1」は、本願発明1の「ハンドルの芯金」に相当する。 以上から、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「操向用シャフトと接続されるボス芯金部と、 このボス芯金部を囲んで位置するリム芯金部と、 これらボス芯金部とリム芯金部とを両側部及び下部でそれぞれ連結する複数のスポーク芯金部とを具備し、 前記リム芯金部は、両側部の前記スポーク芯金部と下部の前記スポーク芯金部との間の位置にそれぞれ弱部を備える、 ハンドルの芯金。」 <相違点> 本願発明1では、 「前記ボス芯金部は、ボス芯金本体部と、前記各弱部に並行する位置に両側部の前記スポーク芯金部と下部の前記スポーク芯金部とを連結する連結部と、を備え、 前記ボス芯金部のボス芯金本体部、前記リム芯金部、及び、前記ボス芯金部の連結部は、前記操向用シャフトの軸方向に互いに位置が異なるとともに互いに略平行な仮想平面に沿って配置され、 前記ボス芯金部の連結部は、前記操向用シャフトの軸方向において前記ボス芯金部のボス芯金本体部と前記リム芯金部との間に位置する」のに対して、 引用発明では、 「右上スポーク芯金21と右下スポーク芯金22の略中心部はバイパス連結部24により連結され、左上スポーク芯金21と左下スポーク芯金22の略中心部はバイパス連結部24により連結されている」点。 (2)判断 ア 上記(1)のとおり、本願発明1と引用発明とを対比すると、上記相違点が存在し、この相違点は実質的な相違点であるから、本願発明1は引用発明であるとはいえない。 イ 上記相違点について以下検討する。 (ア) 引用発明の「バイパス連結部24」は、「スポーク」同士を連結する部材であり、「ボスプレート3」に連結される部材ではなく、「ボスプレート3」(ボス芯金)とは別々の部材であって「ボスプレート3」(ボス芯金)から離れているから、本願発明1の「ボス芯金部」が「備え」る「連結部」ではないし、当該「連結部」になり得る構造ではない。 (イ) 上記アのとおりであるが、仮に、引用発明の「バイパス連結部24」が本願発明1の「ボス芯金部」が「備え」る「連結部」に相当し、引用発明の「ボスプレート3」が本願発明1の「ボス芯金部」が「備え」る「ボス芯金本体部」に相当するといえたとしても、引用文献1(特に、摘記(1b)の段落【0020】〜【0023】、摘記(1c)の記載、及び、図1〜3等を参照)には、ステアリングシャフト(操向用シャフト)の軸方向において、「ボスプレート3」(ボス芯金本体部)、「中空リング11」(リム芯金部)、及び、「バイパス連結部24」(連結部)が、互いに位置が異なるとともに互いに略平行な仮想平面に沿って配置されている、といえる根拠は記載も示唆もされていない。 (ウ) 上記(ア)、(イ)のとおりであって、引用文献1には、上記相違点に係る本願発明1の「前記ボス芯金部は、ボス芯金本体部と、前記各弱部に並行する位置に両側部の前記スポーク芯金部と下部の前記スポーク芯金部とを連結する連結部と、を備え、前記ボス芯金部のボス芯金本体部、前記リム芯金部、及び、前記ボス芯金部の連結部は、前記操向用シャフトの軸方向に互いに位置が異なるとともに互いに略平行な仮想平面に沿って配置され、前記ボス芯金部の連結部は、前記操向用シャフトの軸方向において前記ボス芯金部のボス芯金本体部と前記リム芯金部との間に位置する」という構成は、記載も示唆もされていない。 また、引用文献1には、当該構成が容易想到といえる根拠も記載も示唆もされていない。 (エ) したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献1に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (オ) そして、本願発明1は、「ボックス形状の剛体部となるボス芯金部32が強固となり、リム部21に乗員が当接したときには変形容易部38に応力集中させることが可能となるため、変形容易部38の断面積、換言すれば切削量の変更のみでステアリングホイール10(リム部21)から乗員への反力を容易に調整できる」(本願明細書の段落【0042】)という格別に顕著な作用効果を奏するものである。 2 本願発明2について 本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに請求項2の発明特定事項を付加して限定したものであるから、上記1と同じ理由により、引用発明であるとはいえないし、引用発明び引用文献1に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 まとめ 上記1、2のとおりであるから、本願発明1及び2は、引用発明であるとはいえないし、引用発明及び引用文献1に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審の理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-12-23 |
出願番号 | P2016-246678 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(B62D)
P 1 8・ 121- WY (B62D) |
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
一ノ瀬 覚 |
特許庁審判官 |
出口 昌哉 八木 誠 |
発明の名称 | ハンドルの芯金 |
代理人 | 樺澤 聡 |
代理人 | 山田 哲也 |
代理人 | 樺澤 襄 |