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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B |
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管理番号 | 1380838 |
総通号数 | 1 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-04-06 |
確定日 | 2021-12-24 |
事件の表示 | 特願2016−212916号「形状測定装置及び形状測定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年5月10日出願公開、特開2018−72202号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年10月31日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和 2年 7月 2日付け:拒絶理由通知書 同年 9月 4日 :意見書及び手続補正書の提出 同年10月 8日付け:拒絶理由通知書(最後) 同年12月16日 :意見書及び手続補正書の提出 令和 3年 1月 7日付け:補正の却下の決定 同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月18日:原査定の謄本の送達) 同年 4月 6日 :審判請求書及び手続補正書の提出 同年 6月 8日 :上申書の提出 第2 令和3年4月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和3年4月6日にされた補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 本件補正の概要 令和3年4月6日にされた特許請求の範囲についての補正(以下「本件補正」という。)は、以下の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。 (1) 本件補正前 「【請求項1】 測定対象物に接触して前記測定対象物の測定ポイントの座標を測定する接触式の測定センサと、 前記測定対象物に非接触で前記測定対象物の測定ポイントの座標を測定する非接触式の測定センサと、 を備え、 同一の前記測定対象物の全ての前記測定ポイントの一部を前記接触式の測定センサで測定し、残りの前記測定ポイントを前記非接触式の測定センサで測定する形状測定装置。」 (2) 本件補正後 「【請求項1】 測定対象物に接触して前記測定対象物の測定ポイントの座標を測定する接触式の測定センサと、 前記測定対象物に非接触で前記測定対象物の測定ポイントの座標を測定する非接触式の測定センサであって、前記接触式の測定センサよりも繰り返し精度が低く且つ単位時間当たりの測定数が多い非接触式の測定センサと、 を備え、 前記測定対象物の形状測定の測定精度の確保と測定時間の短縮とを両立するために、同一の前記測定対象物の全ての前記測定ポイントの一部を前記接触式の測定センサで測定し、残りの前記測定ポイントを前記非接触式の測定センサで測定する形状測定装置。」 2 本件補正についての当審の判断 本件補正は、請求項1において、本件補正前の「非接触式の測定センサ」が「前記接触式の測定センサよりも繰り返し精度が低く且つ単位時間当たりの測定数が多い」ことを限定することを含むものである。 また、本件補正は、請求項1において、本件補正前の「同一の前記測定対象物の全ての前記測定ポイントの一部を前記接触式の測定センサで測定し、残りの前記測定ポイントを前記非接触式の測定センサで測定する」のが、「前記測定対象物の形状測定の測定精度の確保と測定時間の短縮とを両立するため」であることを限定することを含むものである。 そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、以下では、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか否か、について検討する。 (1) 本件補正発明 本件補正発明は、次に特定されるとおりのものである。 「測定対象物に接触して前記測定対象物の測定ポイントの座標を測定する接触式の測定センサと、 前記測定対象物に非接触で前記測定対象物の測定ポイントの座標を測定する非接触式の測定センサであって、前記接触式の測定センサよりも繰り返し精度が低く且つ単位時間当たりの測定数が多い非接触式の測定センサと、 を備え、 前記測定対象物の形状測定の測定精度の確保と測定時間の短縮とを両立するために、同一の前記測定対象物の全ての前記測定ポイントの一部を前記接触式の測定センサで測定し、残りの前記測定ポイントを前記非接触式の測定センサで測定する形状測定装置。」 (2) 引用文献等 ア 引用文献2 原査定の拒絶の理由において引用された特開2009−58459号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。下線は当審が付した。 「【0013】 図1に示される形状測定装置1は、1軸ステージ11、スリット光源ユニット12、拡散光源ユニット13、撮像部14Aおよび14B、コントローラ15、並びにタッチプローブ23を含む。1軸ステージ11上には、計測の対象となる被検物20が載置されている。」 「【0019】 タッチプローブ23は、その先端に接触センサーを有している。なお、タッチプローブ23は、1軸ステージ11の平面と平行な面でx軸に垂直なy軸、鉛直方向のz軸、z軸を軸中心とする回転軸であるθ軸、z軸を基準とする鉛直方向の傾きとなるφ軸を含む4軸以上の駆動が可能なロボットアーム(図示せず)に固定されており、被検物20を任意の位置から接触することが可能である。また、タッチプローブ23の接触センサーからの信号、およびロボットアームからのタッチプローブ23の移動変位量は常にコントローラ15に入力可能となっている。コントローラ15は、タッチプローブ23の接触センサーからの信号をトリガーにロボットアームからの移動変位量を入力することで、タッチプローブ23が被検物20に接触した位置を取得することができる。 【0020】 以上のように構成される形状測定装置1においては、被検物20に対して照射されたスリット光の形状を撮像部14Aまたは14Bで撮像し、そのスリット像から被検物20の形状を測定する光学測定(非接触式測定)と、タッチプローブ23を接触させ、その変位から被検物20の形状を測定する接触式測定の両方により、被検物20の所望の測定部分の形状を測定することができる。」 「【0022】 形状測定装置1は、1軸ステージ11、スリット光源ユニット12、拡散光源ユニット13、撮像部14Aおよび14B、コントローラ15、操作部21、表示部22、並びにタッチプローブ23及びロボットアームにより構成されている。また、コントローラ15は、ステージ制御部31、光源制御部32、カメラ制御部33、UI(User Interface)制御部34、判定部35、光学形状演算部36、接触形状演算部37、および記憶部38を有する。なお、コントローラ15内の各部は、必要に応じて各種のデータを互いに授受することが可能となされている。」 「【0025】 判定部35は、ユーザによって指定された被検物20の測定部分が光学測定に適している部分であるかを判定する。 【0026】 スリット像を用いた計測は、多点のデータを短時間に(一度に)取得することができるという利点を有する。反面、スリット像を用いた計測では、スリット光が被検物20に反射された反射光を利用するが、その反射光が正反射光の強い成分(Specular Spike)として入ってくると、測定誤差が大きいまま測定してしまう(誤検出してしまう)という問題もある。従って、正反射光によるスリット像を含む画像を、計測するための画像から除外する必要があるが、光学測定の適否を光量の多寡によって判断すると、この正反射光によるスリット像を含む画像を除外することができない。 【0027】 そこで、形状測定装置1では、正反射光は所定の一方向だけに反射され、拡散光は、方向によらず一定(ランバートの余弦則)であるという性質を利用し、異なる2以上の方向からスリット像を撮像し、そのスリット像の強度(輝度)を比較することによって、正反射光の画像を除外し、光学測定を行う。 【0028】 すなわち、判定部35は、撮像部14Aと撮像部14Bでそれぞれ撮像された画像の測定部分におけるスリット像の強度(輝度)の差を演算し、求められた差が所定の閾値THAより大きい場合には、一方の画像が正反射光によるスリット像が含まれた画像の可能性があると判断し、その測定部分については光学測定に適していないと判定する。また、判定部35は、スリット像の強度の差が所定の閾値THA以下であっても、2つのスリット像の強度がいずれも所定の閾値THB以下である場合には、強度が足りないため、その測定部分については光学測定に適していないと判定する。被検物20の測定部分が光学測定に適した部分でないと判定された場合には、その部分が、測定不適位置として記憶部38に供給される。 【0029】 光学形状演算部36は、カメラ制御部33を介して撮像部14Aおよび14Bから供給された画像に含まれるスリット像から、被検物20の形状データを生成(演算)する。形状データは、スリット光が照射されたライン状(点群)のデータとして取得される。接触形状演算部37は、接触センサーからの信号をトリガーにして、ロボットアームの各関節に設けられたエンコーダの出力を取り込んで、タッチプローブ23の移動変位情報を得る。そして、形状演算部37は、そのタッチプローブ23の移動変位から、被検物20の形状データを生成(演算)する。」 「【0046】 そして、ステップS14で、現在のステージ位置が終了位置であると判定された場合、処理はステップS16に進み、接触形状演算部37は、測定不適位置が記憶部38に記憶されているかを判定する。ステップS16で、測定不適位置が記憶部38に記憶されていると判定された場合、処理はステップS17に進み、接触形状演算部37は、ロボットアームを制御し、記憶部38に記憶されている測定不適位置をタッチプローブ23に測定させ、タッチプローブ23による測定不適位置の測定結果(移動変位)を取得する。そして、接触形状演算部37は、取得された測定結果から、測定不適位置の形状データを生成する。 【0047】 タッチプローブ23で測定済みの測定不適位置は記憶部38から消去され、記憶部38に測定不適位置がなくなるまで、すなわち、記憶部38に記憶されているすべての測定不適位置についてタッチプローブ23による測定が終了するまで、ステップS16およびS17の処理が繰り返される。 【0048】 そして、ステップS16で、記憶部38に測定不適位置がないと判定された場合、処理はステップS18に進み、光学形状演算部36は、スリット像から得られた形状データと、タッチプローブ23により得られた形状データを合成する。合成された被検物20の測定範囲全体の形状データは、表示部22に表示されるか、または記憶部38に記憶された後、処理は終了する。 【0049】 なお、タッチプローブ23により得られた形状データがない場合には、すなわち、ユーザにより指定された測定部分のすべてについてスリット像による計測ができた場合には、ステップS18の処理は省略される。 【0050】 以上のように、形状測定装置1では、異なる2方向から撮像された被検物20の画像から、スリット像の強度(輝度)の差を演算し、求められた強度の差が所定の閾値THAより大きいか、または、2つのスリット像の強度がいずれも所定の閾値THB以下である場合に、光学測定に適した部分でないと判定するので、測定部分が光切断による計測に適しているかを適切に(自動で)判断し、適している測定部分のみを光学測定により測定することができる。換言すれば、形状測定装置1では、正反射光によるスリット像を用いて計測することによる誤検出を防止することができる。 【0051】 さらに、形状測定装置1では、光切断による計測に適していない測定部分については、タッチプローブ23で測定することができるので、ユーザに指定された測定部分のすべてを正確に測定することができる。」 「【図1】 」 「【図3】 」 イ 引用発明の認定 上記アの記載内容を総合すると、引用文献2には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「被検物20に対して照射されたスリット光の形状を撮像部14Aまたは14Bで撮像し、そのスリット像から被検物20の形状を測定する光学測定(非接触式測定)と、タッチプローブ23を接触させ、その変位から被検物20の形状を測定する接触式測定の両方により、被検物20の所望の測定部分の形状を測定することができる形状測定装置1であって、(【0020】) 形状測定装置1は、1軸ステージ11、スリット光源ユニット12、拡散光源ユニット13、撮像部14Aおよび14B、コントローラ15、並びにタッチプローブ23を含み、(【0013】) タッチプローブ23は、その先端に接触センサーを有し、タッチプローブ23の接触センサーからの信号、およびロボットアームからのタッチプローブ23の移動変位量は常にコントローラ15に入力可能となっており、コントローラ15は、タッチプローブ23の接触センサーからの信号をトリガーにロボットアームからの移動変位量を入力することで、タッチプローブ23が被検物20に接触した位置を取得することができ、(【0019】) コントローラ15は、ステージ制御部31、光源制御部32、カメラ制御部33、UI(User Interface)制御部34、判定部35、光学形状演算部36、接触形状演算部37、および記憶部38を有し、(【0022】) 判定部35は、ユーザによって指定された被検物20の測定部分が光学測定に適している部分であるかを判定するものであり、(【0025】) 判定部35は、撮像部14Aと撮像部14Bでそれぞれ撮像された画像の測定部分におけるスリット像の強度(輝度)の差を演算し、求められた差が所定の閾値THAより大きい場合には、一方の画像が正反射光によるスリット像が含まれた画像の可能性があると判断し、その測定部分については光学測定に適していないと判定し、また、スリット像の強度の差が所定の閾値THA以下であっても、2つのスリット像の強度がいずれも所定の閾値THB以下である場合には、強度が足りないため、その測定部分については光学測定に適していないと判定し、被検物20の測定部分が光学測定に適した部分でないと判定された場合には、その部分が、測定不適位置として記憶部38に供給され、(【0028】) 光学形状演算部36は、カメラ制御部33を介して撮像部14Aおよび14Bから供給された画像に含まれるスリット像から、被検物20の形状データを生成(演算)するものであり、形状データは、スリット光が照射されたライン状(点群)のデータとして取得され、 接触形状演算部37は、接触センサーからの信号をトリガーにして、ロボットアームの各関節に設けられたエンコーダの出力を取り込んで、タッチプローブ23の移動変位情報を得て、タッチプローブ23の移動変位から、被検物20の形状データを生成(演算)するものであり、(【0029】) 接触形状演算部37は、測定不適位置が記憶部38に記憶されているかを判定し、測定不適位置が記憶部38に記憶されていると判定された場合、ロボットアームを制御し、記憶部38に記憶されている測定不適位置をタッチプローブ23に測定させ、タッチプローブ23による測定不適位置の測定結果(移動変位)を取得し、取得された測定結果から、測定不適位置の形状データを生成し、(【0046】) タッチプローブ23で測定済みの測定不適位置は記憶部38から消去され、記憶部38に記憶されているすべての測定不適位置についてタッチプローブ23による測定が終了するまで処理が繰り返され、(【0047】) 記憶部38に測定不適位置がないと判定された場合、光学形状演算部36は、スリット像から得られた形状データと、タッチプローブ23により得られた形状データを合成し、合成された被検物20の測定範囲全体の形状データは、表示部22に表示されるか、または記憶部38に記憶された後、処理は終了し、(【0048】) スリット像を用いた計測は、多点のデータを短時間に(一度に)取得することができるという利点を有する反面、スリット光が被検物20に反射された反射光が正反射光の強い成分として入ってくると、測定誤差が大きいまま測定してしまう(誤検出してしまう)という問題があるところ、このような誤検出を防止することができ、(【0026】、【0050】) 光切断による計測に適していない測定部分については、タッチプローブ23で測定することができるので、ユーザに指定された測定部分のすべてを正確に測定することができる、(【0051】) 形状測定装置1。」 (3) 対比・判断 本件補正発明と引用発明を対比する。 ア 引用発明の「形状測定装置1」は、本件補正発明の「形状測定装置」に相当する。また、引用発明の「被検物20」は、本件補正発明の「測定対象物」に相当する。 イ 引用発明の「接触式測定」は、「タッチプローブ23を接触させ、その変位から被検物20の形状を測定する」ものであり、「タッチプローブ23の接触センサーからの信号、およびロボットアームからのタッチプローブ23の移動変位量は常にコントローラ15に入力可能となっており、コントローラ15は、タッチプローブ23の接触センサーからの信号をトリガーにロボットアームからの移動変位量を入力することで、タッチプローブ23が被検物20に接触した位置を取得することができ」、「接触形状演算部37は、接触センサーからの信号をトリガーにして、ロボットアームの各関節に設けられたエンコーダの出力を取り込んで、タッチプローブ23の移動変位情報を得て、タッチプローブ23の移動変位から、被検物20の形状データを生成(演算)」している。 ここで、引用発明の「接触式測定」において、「タッチプローブ23」が「接触」する「被検物20」の箇所は、本件補正発明の「前記測定対象物の測定ポイント」に相当し、引用発明の「タッチプローブ23が被検物20に接触した位置」は、本件補正発明の「前記測定対象物の測定ポイントの座標」に相当する。 そうすると、引用発明の「タッチプローブ23」と「接触センサー」の組み合わせは、本件補正発明の「測定対象物に接触して前記測定対象物の測定ポイントの座標を測定する接触式の測定センサ」に相当する。 ウ 引用発明の「光学測定(非接触式測定)」では、「被検物20に対して照射されたスリット光の形状を撮像部14Aまたは14Bで撮像し、そのスリット像から被検物20の形状を測定する」ものであり、「光学形状演算部36は、カメラ制御部33を介して撮像部14Aおよび14Bから供給された画像に含まれるスリット像から、被検物20の形状データを生成(演算)」している。 ここで、引用発明の「光学測定(非接触式測定)」において、「形状データは、スリット光が照射されたライン状(点群)のデータとして取得され」るから、「スリット光が照射」される「被検物20」の箇所は、本件補正発明の「前記測定対象物の測定ポイント」に相当し、引用発明の「形状データ」は、本件補正発明の「前記測定対象物の測定ポイントの座標」に相当する。 そうすると、引用発明の「スリット光源ユニット12」と「撮像部14Aおよび14B」の組み合わせは、本件補正発明の「前記測定対象物に非接触で前記測定対象物の測定ポイントの座標を測定する非接触式の測定センサ」に相当する。 エ 引用発明では、「スリット像を用いた計測は、多点のデータを短時間に(一度に)取得することができるという利点を有する反面、スリット光が被検物20に反射された反射光が正反射光の強い成分として入ってくると、測定誤差が大きいまま測定してしまう(誤検出してしまう)という問題がある」としている。 ここで、上記「多点のデータを短時間に(一度に)取得することができる」ことは、本件補正発明の「単位時間当たりの測定数が多い」ことに相当し、上記「測定誤差が大きいまま測定してしまう(誤検出してしまう)」ことは、本件補正発明の「繰り返し精度が低」いことに相当する。また、引用発明の前記「多点のデータを短時間に(一度に)取得することができる」及び「測定誤差が大きい」という表現が、接触式測定との対比を前提とするものであることは明らかといえる。 そうすると、引用発明の「光学測定(非接触式測定)」において用いられるセンサ(「スリット光源ユニット12」と「撮像部14Aおよび14B」の組み合わせ)は、本件補正発明の「前記接触式の測定センサよりも繰り返し精度が低く且つ単位時間当たりの測定数が多い非接触式の測定センサ」に相当する。 オ 引用発明の「測定不適位置」は、「光学測定に適した部分でないと判定された」「被検物20の測定部分」であり、「タッチプローブ23」により測定される「測定部分」である。 また、引用発明の「光学測定に適している部分」は、「光学測定(非接触式測定)」により測定される「測定部分」である。 そして、引用発明では、「すべての測定不適位置についてタッチプローブ23による測定が終了するまで処理が繰り返され」、「測定不適位置がないと判定された場合、光学形状演算部36は、スリット像から得られた形状データと、タッチプローブ23により得られた形状データを合成し、合成された被検物20の測定範囲全体の形状データは、表示部22に表示されるか、または記憶部38に記憶された後、処理は終了」するから、引用発明の「被検物20の測定範囲全体」は、本件補正発明の「同一の前記測定対象物の全ての前記測定ポイント」に相当し、引用発明の「タッチプローブ23」により測定される「測定部分」である「測定不適位置」は、本件補正発明の「前記接触式の測定センサで測定」される「同一の前記測定対象物の全ての前記測定ポイントの一部」に相当し、引用発明の「光学測定(非接触式測定)」により測定される「測定部分」である「光学測定に適している部分」は、本件補正発明の「前記非接触式の測定センサで測定」される「残りの前記測定ポイント」に相当する。 そうすると、本件補正発明と引用発明は、「同一の前記測定対象物の全ての前記測定ポイントの一部を前記接触式の測定センサで測定し、残りの前記測定ポイントを前記非接触式の測定センサで測定する」という点で一致する。 カ 引用発明では、「スリット像を用いた計測」は「測定誤差が大きいまま測定してしまう(誤検出してしまう)という問題」があり、「光切断による計測に適していない測定部分については、タッチプローブ23で測定することができるので、ユーザに指定された測定部分のすべてを正確に測定することができる」としているから、このことは、本件補正発明の「前記測定対象物の形状測定の測定精度の確保」をすることに相当する。 また、引用発明では、「光学測定に適している部分」については「多点のデータを短時間に(一度に)取得することができる」「光学測定(非接触式測定)」により測定しているから、このことは、本件補正発明の「測定時間の短縮」をすることに相当する。 よって、引用発明の「光学測定(非接触式測定)」と「接触式測定の両方により」「被検物20の所望の測定部分の形状を測定」する構成により、本件補正発明の「前記測定対象物の形状測定の測定精度の確保と測定時間の短縮とを両立する」ことに相当する課題が解決されることは明らかといえる。 したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記測定対象物の形状測定の測定精度の確保と測定時間の短縮とを両立するために、同一の前記測定対象物の全ての前記測定ポイントの一部を前記接触式の測定センサで測定し、残りの前記測定ポイントを前記非接触式の測定センサで測定する」という点で一致する。 キ 上記ア〜カの対比内容をまとめると、本件補正発明の構成は、全て引用発明に含まれるから、本件補正発明は引用文献2に記載された発明である。 また、本件補正発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4) 請求人の主張について ア 請求人は、審判請求書において次の主張をしている。 「(ロ)一方、本願発明1と引用文献2に記載の発明とは、接触式の測定センサと非接触式の測定センサとを組み合わせて測定対象物の形状測定を行う点では一致しています。 (ハ)しかしながら、引用文献2に記載の発明は、測定対象物に対してスリット光を走査して光切断による測定対象物の画像計測を行う際に、測定対象物が金属鏡面を有していると、スリット光が金属鏡面にて正反射することで撮像素子に強い光が入射して正確に計測を行えないことを技術課題として着目し(段落[0008]参照)、この技術課題を解決するための手段として、金属鏡面のような画像計測に不適箇所の形状測定をタッチプローブで行うことを特徴としています(段落[0046]参照)。 (ニ)このように引用文献2に記載の発明は、画像計測による測定対象物の形状測定を行う場合に画像計測に不適箇所の形状測定をタッチプローブで行うことを目的とする発明に過ぎず、本願発明1のように常に「同一の測定対象物の全ての前記測定ポイントの一部を接触式の測定センサで測定し、残りの測定ポイントを非接触式の測定センサで測定する」構成を有するものではなく、本願発明1とは異なる技術思想を有するものです。 (ホ)従って、引用文献2に記載の発明において、本願発明1の「測定対象物の形状測定の測定精度の確保と測定時間の短縮とを両立するために、同一の測定対象物の全ての前記測定ポイントの一部を接触式の測定センサで測定し、残りの測定ポイントを非接触式の測定センサで測定すること」について何らの動機付けが存在するものではありません。 (へ)つまり、引用文献2に記載の発明において「測定対象物の形状測定の測定精度の確保と測定時間の短縮とを両立するために、同一の測定対象物の全ての前記測定ポイントの一部を接触式の測定センサで測定し、残りの測定ポイントを非接触式の測定センサで測定すること」が容易であるというためには、それなりの動機付けを必要としますが、そのような動機付けは引用文献2には何も示されておらず、当業者が通常なし得る技術事項であるということもできないものです。 (ト)これに対して本願発明1は、接触式の測定センサ及び非接触式の測定センサには相反するメリットとデメリットがあり、測定精度の確保と測定時間の短縮との両立が困難であることを技術課題として着目し、この技術課題を解決するための手段として「同一の前記測定対象物の全ての前記測定ポイントの一部を前記接触式の測定センサで測定し、残りの前記測定ポイントを前記非接触式の測定センサで測定する」ことを採用しています。 (チ)このように本願発明1と引用文献2に記載の発明とは技術課題が相違しており、さらに引用文献2には本願発明1の技術課題が開示及び示唆されていないので、たとえ引用文献2に接した当業者であったとしてもこの引用文献2の記載から「測定対象物の形状測定の測定精度の確保と測定時間の短縮とを両立するために、同一の測定対象物の全ての前記測定ポイントの一部を接触式の測定センサで測定し、残りの測定ポイントを非接触式の測定センサで測定すること」、すなわち上記相違点Aに係る事項を想起することは困難であると考えます。 (リ)また、本願発明1は、相違点Aに係る特定事項の採用により、前記「(2)」の「ア」に記載したように、接触式の測定センサと非接触式の測定センサの双方のメリットを生かして、測定精度の確保と測定時間の短縮とを両立することができるという格別な効果を奏します(段落[0092]参照)。この効果は各引用文献に記載された発明から予想できるものではないと考えます。 (ヌ)よって、本願発明1は、引用文献2に記載された発明ではなく、さらに引用文献1−2に記載された発明に基づいても当業者が容易に発明をすることができたものでないと考えます。」 イ 請求人は、令和3年6月8日に提出された上申書において次の主張をしている。 「また、同審判請求書に記載した通り、引用文献2に記載の発明は、画像計測による測定対象物の形状測定を行う場合に画像計測に不適箇所の形状測定をタッチプローブで行うことを目的とする発明に過ぎず、本願発明1のように常に「同一の測定対象物の全ての前記測定ポイントの一部を接触式の測定センサで測定し、残りの測定ポイントを非接触式の測定センサで測定する」構成を有するものではなく、本願発明1、7とは異なる技術思想を有するものです。 従って、引用文献2に記載の発明において「測定対象物の形状測定の測定精度の確保と測定時間の短縮とを両立するために、同一の測定対象物の全ての前記測定ポイントの一部を接触式の測定センサで測定し、残りの測定ポイントを非接触式の測定センサで測定すること」が容易であるというためには、それなりの動機付けを必要としますが、そのような動機付けは引用文献2には何も示されておらず、当業者が通常なし得る技術事項であるということもできないものです。 このように本願発明1、7と引用文献2に記載の発明とは技術課題が相違しており、さらに引用文献2には本願発明1、7の技術課題が開示及び示唆されていないので、たとえ引用文献2に接した当業者であったとしてもこの引用文献2の記載から上記相違点に係る事項を想起することは困難であると考えます。」 ウ 請求人の主張を検討すると、上記(3)カにおいて説示したとおり、引用発明では、光学測定に適していない部分についてはタッチプローブ測定により測定部分のすべてを正確に測定できるから、測定精度の確保を目的にしている。また、光学測定に適している部分については多点のデータを短時間に(一度に)取得することができる光学測定により測定時間の短縮を図っている。すなわち、引用発明も、測定精度の確保と測定時間の短縮を両立させている。 したがって、本件補正発明は、構成上全て引用発明に含まれるのであって、請求項1の記載ぶりでは、引用発明との相違する点を見いだすことはできない。 請求人の上記主張は、結局のところ、請求項の記載に基づかないものであるから、これにより当審の判断が左右されることはない。 (5) 小括 以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条1項3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。また、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記第2において説示したとおり却下されたので、本願の請求項1〜7に係る発明は、令和2年9月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次に特定されるとおりである。 「測定対象物に接触して前記測定対象物の測定ポイントの座標を測定する接触式の測定センサと、 前記測定対象物に非接触で前記測定対象物の測定ポイントの座標を測定する非接触式の測定センサと、 を備え、 同一の前記測定対象物の全ての前記測定ポイントの一部を前記接触式の測定センサで測定し、残りの前記測定ポイントを前記非接触式の測定センサで測定する形状測定装置。」 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、次のとおりである。 理由1(新規性) 本願発明は、下記の引用文献2に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。 理由2(進歩性) 本願発明は、下記の引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献2:特開2009−58459号公報(再掲) 3 引用文献に記載された事項 上記引用文献2には、[引用発明]において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる(第2の2(2)イを参照。)。 4 対比・判断 本願発明は、本件補正発明の「非接触式の測定センサ」が「前記接触式の測定センサよりも繰り返し精度が低く且つ単位時間当たりの測定数が多い」という限定を省き、「同一の前記測定対象物の全ての前記測定ポイントの一部を前記接触式の測定センサで測定し、残りの前記測定ポイントを前記非接触式の測定センサで測定する」のが、「前記測定対象物の形状測定の測定精度の確保と測定時間の短縮とを両立するため」であるという限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成を全て含み、さらに他の構成を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の2において説示したとおり、引用文献2に記載された発明であり、また、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、引用文献2に記載された発明であり、また、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 第4 むすび 以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。 また、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2021-10-25 |
結審通知日 | 2021-10-26 |
審決日 | 2021-11-08 |
出願番号 | P2016-212916 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01B)
P 1 8・ 575- Z (G01B) P 1 8・ 113- Z (G01B) |
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
居島 一仁 |
特許庁審判官 |
濱野 隆 中塚 直樹 |
発明の名称 | 形状測定装置及び形状測定方法 |
代理人 | 松浦 憲三 |