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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G10K
審判 全部申し立て 2項進歩性  G10K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G10K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G10K
管理番号 1380929
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-01-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-03 
確定日 2021-10-11 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6646267号発明「積層吸音材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6646267号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−8〕について訂正することを認める。 特許第6646267号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6646267号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成31年3月22日に出願されたものであって、令和2年1月15日に特許権の設定登録がなされ、同年2月14日にその特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和2年 8月 3日:特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所(
以下「申立人1」という。)による請求項1〜8
に係る特許に対する特許異議の申立て
令和2年 8月 7日:特許異議申立人内藤博仁(以下「申立人2」とい
う。)による請求項1、4〜8に係る特許に対す
る特許異議の申立て
令和2年 8月12日:特許異議申立人帝人フロンティア株式会社(以下
「申立人3」という。)による請求項1〜8に係
る特許に対する特許異議の申立て
令和2年 8月14日:特許異議申立人旭化成株式会社(以下「申立人4
」という。)による請求項1〜8に係る特許に対
する特許異議の申立て
令和2年11月17日付け:取消理由通知書
令和3年 1月14日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
差出日不明、令和3年3月3日受付:申立人3による意見書の提出
令和3年 3月 8日 :申立人2による意見書の提出
令和3年 3月 8日 :申立人4による意見書の提出

なお、訂正請求の後、申立人1による意見書の提出はなかった。

第2 本件訂正請求による訂正の適否についての判断
1 本件訂正請求の内容
本件訂正請求は、その請求の趣旨を「特許第6646267号の特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜8について訂正することを求める。」とするものであり、その内容は次のとおりである。

(1)訂正事項
特許請求の範囲の請求項1に「前記繊維層は、平均流量細孔径が1.0〜60μm、フラジール形法による通気度が30〜220cc/cm2・sであり、」とあるのを、「前記繊維層は、平均流量細孔径が1.0〜60μm、フラジール形法による通気度が30〜220cc/cm2・s、平均繊維径が30nm〜2.6μm、かつ、目付けが0.1〜24g/m2であり、」に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2〜8についても同様に訂正する。

(2)一群の請求項について
訂正前の請求項1〜8について、請求項2〜8はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1〜8に対応する訂正後の請求項1〜8は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2 本件訂正請求による訂正の適否についての当審の判断
(1)目的について
訂正事項による訂正は、本件訂正前の「繊維層」が「平均流量細孔径が1.0〜60μm、フラジール形法による通気度が30〜220cc/cm2・s」であるのを、「平均流量細孔径が1.0〜60μm、フラジール形法による通気度が30〜220cc/cm2・s、平均繊維径が30nm〜2.6μm、かつ、目付けが0.1〜24g/m2」であるとして、「繊維層」の物性をさらに限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項の追加、特許請求の範囲の拡張又は変更について
本件特許明細書には、

「【0021】
(各層の構成:繊維層)
本発明の積層吸音材に含まれる繊維層は、平均繊維径が30nm〜30μmである繊維からなる層である。好ましくは、平均繊維径が50nm〜30μmである繊維からなる層である。平均繊維径が30nm〜30μmであるとは、平均繊維径がこの数値範囲内であることを意味する。繊維径が30nm〜30μmの範囲であれば、高い吸音性が得られるため好ましい。繊維径の測定は、公知の方法によることができる。例えば、繊維層表面の拡大写真から測定ないし算出することによって得られる値であり、詳細な測定方法は実施例に詳述される。
【0022】
本発明の積層吸音材に含まれる繊維層は、1層の繊維層が一つの繊維集合体からなっていてもよく、また、1層の繊維層中に複数の繊維集合体を含み、繊維集合体の層が重ね合わされたものが1層の繊維層を形成していてもよい。なお、本明細書において、繊維集合体とは、一つの連続体となった繊維集合体のことを意味している。繊維層の目付けは、0.01〜500g/m2であることが好ましく、0.1〜200g/m2であればより好ましい。目付けが0.1g/m2以上であれば、繊維層と多孔質層との密度差による流れ抵抗の制御が良好となり、500g/m2未満であれば、吸音材として生産性に優れる。吸音材としての厚みを低減する観点から繊維層の厚みは薄い方が好ましく、具体的には、2.9mm未満が好ましく、より好ましくは2.0mm未満、さらに好ましくは1.5mm未満、特に好ましくは1mm未満である。」

「【0054】
繊維層M(メルトブローン不織布)
繊維層の原料のポリプロピレン樹脂として、ポリプロピレンホモポリマー1(MFR=70g/10分)を用い、不織布製造装置の2機の押出機にポリプロピレン樹脂を投入し、押出機を240℃で加熱溶融させ、ギアポンプの質量比が50/50になる様に設定し、紡糸口金から単孔あたり0.3g/minの紡糸速度で溶融樹脂を吐出させた。吐出した繊維を400℃に加熱した98kPa(ゲージ圧)の圧縮空気によって紡糸口金から60cmの距離で、捕集コンベアー上に吹き付け、繊維層を形成した。捕集コンベアーの速度を調整することによって、任意に目付を設定した。平均繊維径は、2.6μmであり、繊維層の目付けは、24g/m2、厚みは0.9mmであった。繊維層Mの平均流量細孔径は11μm、フラジール形法による通気度は144cc/cm2・sであった。」

と記載されている。
これらの記載からみれば、「繊維層」の物性をさらに「平均繊維径が30nm〜2.6μm、かつ、目付けが0.1〜24g/m2」と限定する訂正事項による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、訂正事項による訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

なお、「平均繊維径が30nm〜2.6μm」であることについて、申立人2は令和3年3月8日提出の意見書において、
「訂正請求書で、上限を2.6μmと訂正した根拠として、本件特許明細書の段落【0054】において、繊維層Mの平均繊維径が2.6μmである記載を根拠にしていることが記載されているが、明細書に記載の実施例5(【0075】、【表1】)、実施例13(【0094】、【表7】)、実施例21(【0108】、【表10】)には、繊維層Mの繊維径は3μmと記載されている。繊維層Mはメルトブローン不織布であり、メルトブローン不織布の構成繊維の繊維径にはバラつきがあるため、一義的に繊維径を定めることができないことが技術常識であり、また、本件明細書に繊維径に関する説明がないことから、【表1】、【表7】、【表10】の繊維径は平均繊維径を指している。このように、同じ繊維層Mであるにも関わらず、平均繊維径は異なる値である。このことから、繊維層Mの平均繊維径を特定できないことから、繊維層Mの平均繊維径は明示的に記載されておらず、また自明でもない。
平均繊維径が明確でない繊維層Mの平均繊維径の記載を基に、請求項1で積層吸音材を構成する繊維層の平均繊維径を2.6μm以下に訂正することは、新規事項を追加する訂正であるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものではない。」旨主張している。
しかしながら、本件特許明細書の【0021】を参照すると、繊維層の「平均繊維径が30nm〜30μm」の数値範囲内において本件発明を実施し得ることが明らかにされており、繊維層Mの平均繊維径に関する【0054】の2.6μmという記載と、表中の実施例5、13、21の3μmという記載が異なっていたとしても、2.6μmまたは3μmに臨界的意義があるわけではなく、この場合は、単に発明の範囲を規定したものと解されるので新規事項を追加する訂正であるとはいえない。
よって、申立人2の主張は採用することができない。

(3)独立特許要件について
本件は、訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1−8]について訂正を認める。

第3 本件発明
上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明8」という。また、全ての請求項をまとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
少なくとも繊維層と、多孔質層とを含む積層吸音材であって、
前記繊維層は、平均流量細孔径が1.0〜60μm、フラジール形法による通気度が30〜220cc/cm2・s、平均繊維径が30nm〜2.6μm、かつ、目付けが0.1〜24g/m2であり、
前記多孔質層は、発泡樹脂、不織布及び織布からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる層であって、厚みが3〜40mm、密度が繊維層よりも低く、かつ3〜50kg/m3であり、
前記繊維層が音の入射側となるように配置される、積層吸音材。
【請求項2】
前記繊維層として、第一の繊維層と第二の繊維層とを含み、
前記第一の繊維層と前記第二の繊維層は、通気度が互いに同じであるか、前記第二の繊維層が前記第一の繊維層よりも通気度が低いものであり、
音の入射側から透過側に、前記第一の繊維層、前記多孔質層、前記第二の繊維層の順に配置される、請求項1に記載の積層吸音材。
【請求項3】
前記多孔質層として、第一の多孔質層と第二の多孔質層とを含み、
前記第一の多孔質層と前記第二の多孔質層は、通気度が互いに同じであるか、前記第二の多孔質層が前記第一の多孔質層より密度が高いものであり、
音の入射側から透過側に、前記第一の繊維層、前記第一の多孔質層、前記第二の繊維層、前記第二の多孔質層の順に配置される、請求項2に記載の積層吸音材。
【請求項4】
前記多孔質層が、ポリエチレンフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、及びガラス繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維、又は、2種以上が複合化された複合繊維からなる不織布又は織布からなる層である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層吸音材。
【請求項5】
前記繊維層が、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン6,6、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維を含む、請求項1〜4に記載のいずれか1項に記載の積層吸音材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層吸音材であって、500〜1000Hzの周波数における垂直入射吸音率測定法による吸音率が、当該積層吸音材に含まれる多孔質層1層のみである場合の吸音率と比較して、0.03以上向上する、積層吸音材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層吸音材であって、1600〜2500Hzの周波数における垂直入射吸音率測定法による吸音率が、当該積層吸音材に含まれる多孔質層1層のみである場合の吸音率と比較して、0.03以上向上する、積層吸音材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層吸音材であって、5000〜10000Hzの周波数における垂直入射吸音率測定法による吸音率が、当該積層吸音材に含まれる多孔質層1層のみである場合の吸音率と比較して、0.03以上向上する、積層吸音材。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和2年11月17日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

(1)(明確性)請求項1ないし8に係る発明は「平均流量細孔径」の定義が明確でなく、本件特許の発明の詳細な説明を参照しても明らかにならないため、請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
(2)(実施可能要件)本件特許の明細書の記載は「平均流量細孔径」の測定方法、測定条件等について何ら説明がなく、当該技術分野の技術常識を参酌しても、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないため、請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
(3)(新規性)請求項1、2、4ないし8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、4ないし8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
また、請求項1、5ないし8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された文献3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、5ないし8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(4)(進歩性)請求項3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された文献1に記載された発明及び周知の技術事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
また、請求項2ないし4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された文献3に記載された発明及び周知の技術事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

<引用文献等一覧>
文献1:国際公開第2016/143857号(申立人4が提出した甲第1号証、申立人1が提出した甲第2号証)
文献2:特許第6364454号公報(申立4が提出した甲第2号証)
文献3:特開2006−28709号公報(申立人4が提出した甲第4号証)
文献4:特開2005−266445号公報(申立人4が提出した甲第8号証)
文献5:特開2018−199253号公報(申立人3が提出した甲第3号証)
文献6:特開2006−224007号公報(申立人2が提出した甲第7号証)

実験成績証明書:特開2006−28709号公報(文献3)の実施例2及び9を追試した実験成績証明書(申立人4が提出した甲第5号証)

第5 取消理由についての判断
1 取消理由1(明確性)について
本件発明の繊維層の「平均流量細孔径」は、技術常識を考慮すると、「流量」、すなわち液体や気体が通り抜ける量に関係する測定方法であり、かつ、本件発明の「1.0〜60μm」を含む範囲を測定可能な方法によって測定したものである。
そうすると、μmレベルで多孔質材料の平均流量細孔径を測定する方法としては、パームポロメーター等を用いたバブルポイント法(ASTM F316−86、JIS K 3832)、ハーフドライ法(ASTM E1294−89)によってガスや液体の透過性の測定が行われており、これらの方法によって細孔径分布、最大細孔径、平均流量細孔径等を測定することが可能である(特開2000−255645号公報の【0015】、特開2006−26002号公報の【0027】、特開2011−41640号公報の【0104】、特開2013−206717号公報の【0033】等参照)。
したがって、本来、出願当初の明細書に「平均流量細孔径」の測定値を一義的に特定できるように測定方法を記載しておくべきではあるが、本件発明の繊維層の「平均流量細孔径」については、明細書の記載事項及び技術常識を考慮すると、JISまたはASTMに準拠したバブルポイント法、ハーフドライ法に基づいて測定したものと考えて矛盾がなく、他に流体を用いてμmレベルで平均流量細孔径を測定できる適切な方法が見当たらないから、本件発明の繊維層の「平均流量細孔径」はJISまたはASTMに準拠したバブルポイント法、ハーフドライ法に基づいて測定したものと認められる。
よって、本件発明1ないし8に係る特許は明確でないとはいえず、本件発明1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。

2 取消理由2(実施可能要件)について
上記1で述べたとおり、本件発明の「平均流量細孔径」はJIS及びASTMに準拠したバブルポイント法、ハーフドライ法に基づいて計測するものであり、規格に準拠した測定機器により測定が可能であるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないということはできない。
したがって、本件発明1ないし8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。

なお、特許権者は令和3年1月14日提出の意見書において「本件発明1の『平均流量細孔径』がASTM F316−86(またはJIS K 3832、ASTM E1294−89)に準拠した測定によるものであることは、本件特許の出願時において当該当業者の技術常識であったと認識しています。」旨主張している。
これに対して、申立人3は令和3年3月3日受付の意見書において「本件特許発明が『吸音材』に関するものであるのに対し、特許権者が主張する『ASTM F316−86』等は、その規格の表題等からも明らかなように『濾過膜またはフィルター』に関する測定方法である。例えば対応する『JIS K 3832』のタイトルは『精密ろ過膜エレメント及びモジュールのバブルポイント試験方法』である。・・・本件発明の『吸音材』と『濾過膜またはフィルター』とは技術分野が異なるため、上記特許権者の主張と異なり、到底『当該当業者の技術常識』とは言えない。」旨主張している。
しかしながら、上記1で例示した特開2000−255645号公報、特開2006−26002号、特開2011−41640号公報、特開2013−206717号公報が、食品搬送用シート、皮膚用あぶらとりシート、骨再生医療材料、燃料電池の拡散層構造といった技術分野のものであるように、ASTM F316−86(またはJIS K 3832、ASTM E1294−89)に準拠した測定方法が「濾過膜またはフィルター」に限らない多くの技術分野において多孔質材料の平均流量細孔径の測定に使用できる技術であることは明らかである。
したがって、申立人3の主張は採用できない。

3 取消理由3(新規性)について
(1)文献1を主引用例とした場合
ア 文献1記載事項、引用発明1
文献1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。また、「目付け」または「目付」の表記揺れは、各文献の記載に合わせたものである。ただし、本件発明との対比に係る場合には、本件発明に合わせて「目付け」と表記する場合がある(以下、同様)。

(ア)「[請求項1] 表皮層及び基材層を有する積層不織布であり、
前記表皮層が不織布Aを有し、この不織布Aの密度が100〜500kg/m3、厚みが0.5〜2.5mm、及び、通気度が4〜40cm3/cm2/sであり、
前記基材層が不織布Bを有し、この不織布Bの目付けが200〜500g/m2、及び、厚みが5〜40mmである、積層不織布。」

(イ)「[請求項7] 請求項1〜6のいずれかに記載の積層不織布を有する、吸音材。」

(ウ)「[0011] 本発明の積層不織布は、表皮層及び基材層を有し、前記表皮層が不織布Aを有し、前記不織布Aの密度が100〜500kg/m3であり、前記不織布Aの厚みが0.5〜2.5mmであり、前記不織布Aの通気度が4〜40cm3/cm2/sであり、前記基材層が不織布Bを有し、前記不織布Bの目付け200〜500g/m2であり、前記不織布Bの厚みが5〜40mmである。
−(中略)−
[0013] ここで、不織布Aは密度が100〜500kg/m3であることが必要である。100kg/m3以上とすることで、音によって表皮層が共振し、それでいわゆる板振動が起き、低周波領域の吸音率を上がる。また、500kg/m3以下とすることで一定の柔軟性をもった表皮層となる。上記の観点から、その150kg/m3以上が好ましく、300Kg/m3以下が好ましい。
[0014] また、不織布Aの厚みは0.5〜2.5mmであることが好ましい。上記範囲内であれば柔軟性に優れた表皮層となる。上記の観点から、その下限は0.6mmが好ましく、その上限は1.6mm以下が好ましい。
[0015] さらに、不織布Aの通気度は4〜40cm3/cm2/sであることが必要である。ここで、通気度とは、実施例の項で述べるようにJIS L 1096−1999 8.27.1 A法(フラジール形法)に準じて測定したものをいう。4cm3/cm2/s以上とすることで、音が一定の流速で繊維と繊維の空隙を通過するときに。空隙の周辺の繊維材料との空気摩擦によって音を熱に効率よく変換することができる。また高周波領域の音を反射させることなく積層不織布内部に音を通すことができる。一方40cm3/cm2/s以下とすることで低周波領域の吸音率を上げることができる。上記の観点から、さらに10cm3/cm2/s以上であることが好ましく、30cm3/cm2/s以下であることが好ましい。
[0016] また、不織布Aは孔の分布についても空気摩擦によるエネルギー損失を増加させるために一定の範囲とすることが好ましく、細孔径分布度数で0を超え10μm以下の孔径分散度が1〜20、10〜20μmの孔径分散度が15〜60とすることが好ましい。
[0017] また、不織布Aの目付は、100〜400g/m2が好ましく、130g/m2以上であることが好ましい。さらに好ましいのは150g/m2以上である。」

(エ)「[0027] 次に、不織布Bについて説明する。不織布Bの目付は200〜500g/m2である。目付を200g/m2以上とすることで、連続した孔を有する多孔質の積層不織布が得られる。また、目付を500g/m2以下とすることで、軽量で柔軟性を持った不織布が得られる。その結果、積層不織布を凹凸部に貼り付ける時などに追従性がよく、施工性に優れたものとなる。
[0028] また、不織布Bの厚みは5〜40mmである。厚みを5mm以上とすることで、表皮層の下に一定の厚みがあり空気を含んだ層ができ、表皮層と空気を含む層とでヘルムホルツ共鳴が起こることで低周波領域を吸音できる。かつ、連続孔を有する多孔質であるから高周波領域の吸音性がよくなる。上記のメカニズムにより、低周波領域に加え高周波領域の吸音性が更に向上するとの観点から、不織布Bの厚みは10mm以上であることが好ましく、12mm以上であることがより好ましい。また、40mm以下にすることで、自動車などで空隙に取り付ける時などに作業性が良くなる。不織布Bの厚みの上限は30mm以下であることがより好ましい。」

(オ)「[0044] 又、表裏の差をなくす必要がある場合には、基材層を中間層として、順に表皮層/中間層/表皮層の構造とすることも可能である。」

(カ)「[0059] (11)細孔径分布度数
ASTMF316−86に規定される方法によって測定した。
測定装置としてはPorous Materials,Inc(米国)社製“パームポロメーター”を用い、測定試薬としてはPMI社製の“ガルヴィック”を用い、シリンダー圧力を100kPaとし、測定モードとしてはWETUP−DRYUPの条件にて測定した。
[0060] 得られた細孔径分布(ヒストグラム)から10nm刻み(階級)とする分布において、0〜10、10〜20の細孔径分布度数(%)の値を求めた。なお、細孔径分布はy軸を細孔径分布としx軸を細孔径とする分布図で、x軸の範囲は0〜100nmとし、各10nmの刻みの度数を合計した全度数は100%となる。」

(キ)「[0067] (表皮層) 次に海島構造繊維を60g/m2と、平均繊維長51mm、単糸繊度2.2デシテックスのポリエチレンテレフタレート短繊維(東レ(株)“テトロン”(登録商標))を60g/m2の2層構造となるようカードで開繊した後、クロスラップウエーバーでウエブとした。このウエッブに、ウォータジェットパンチ機で加工を実施し、目付が120g/m2、厚みが0.8mmの不織布を得た。
[0068] 次に上記不織布に対して、1%水酸化ナトリウム水溶液で温度95℃、浴比1:40にて処理することにより、ポリ乳酸を脱海し、単繊維直径が100〜250nm、平均繊維径が150nmのN6ナノファイバーとポリエチレンテレフタレート糸とからなる目付が74g/m2、厚み0.4mmの不織布1を得た。
[0069] さらに不織布1の裏面に低融点パウダーを5g/m2載せて、3枚を重ね合わせて130℃の加熱ロールで貼り合せて不織布Aを得た。不織布Aの厚みは1.2mm、密度185kg/m3、通気度21cm3/cm2/sであった。また、表皮層中のナノファイバー比率は29質量%であった。この不織布Aを表皮層とした。」

(ク)「[0078] [実施例3]
(表皮層)
ポリアミド6の領域と複数のポリエチレンテレフタレートの領域とが長さ方向に連続して並ぶ割繊複合タイプの短繊維(単糸繊度3.3デシテックス、長さ51mm)をカードで開繊した後、クロスラップウエーバーでウエブとした。このウエブに、ウォータジェットパンチ機で加工を実施し、厚みが0.5mm、密度260kg/m3、通気度10cm3/cm2/s、単繊維直径が1800〜2300nm、平均繊維径が2000nmの不織布Aを得た。この不織布Aを表皮層とした。」

(ケ)「[0091] 〔実施例6〕
(表皮層)
次に海島構造繊維を180g/m2と、平均繊維長51mm、単糸繊度2.2デシテックスのポリエチレンテレフタレート短繊維(東レ(株)“テトロン”(登録商標))を180g/m2の2層構造となるようカードで開繊した後、クロスラップウエーバーでウエッブとした。このウエブに、ニードルパンチ機で加工を実施し、目付が360g/m2、厚みが0.8mmの不織布を得た。
[0092] 次に上記不織布に対して、1%水酸化ナトリウム水溶液で温度95℃、浴比1:40(質量比)にて処理することにより、ポリ乳酸を脱海し、単繊維直径が100〜250nm、平均繊維径が150nmのN6ナノファイバーとポリエチレンテレフタレート糸とからなり、目付が252g/m2、厚み1.8mmの不織布1を得た。
[0093] (積層不織布)
実施例1と同じ接合方法で積層不織布を得た。」

上記(ア)ないし(ケ)から、文献1には以下の事項が記載されている。・上記(ア)及び(イ)によれば、吸音材は、積層不織布を有するものである
・上記(ウ)によれば、積層不織布は、表皮層及び基材層を有し、前記表皮層が不織布Aを有し、前記基材層が不織布Bを有するものである。
・上記(ウ)によれば、不織布Aは、密度が150〜300kg/m3、厚みが0.6〜1.6mm、通気度がJIS L 1096−1999 8.27.1 A法(フラジール形法)に準じて測定して10〜30cm3/cm2/sである。
・上記(エ)によれば、不織布Bは、目付が200〜500g/m2、厚みが12〜30mmである。
・上記(ウ)によれば、不織布Aは孔の分布についても空気摩擦によるエネルギー損失を増加させるために一定の範囲とすることが好ましく、細孔径分布度数で0を超え10μm以下の孔径分散度が1〜20、10〜20μmの孔径分散度が15〜60とするものである。
・上記(カ)によれば、細孔径分布度数はASTMF316−86に規定される方法によって測定したものである。
・上記(ウ)によれば、不織布Aの目付は、100〜400g/m2である。
・上記(キ)ないし(ケ)によれば、不織布Aには平均繊維径が150nmまたは2000nmのものを用いることができる。
・上記(オ)によれば、表裏の差をなくす必要がある場合には、基材層を中間層として、順に表皮層/中間層/表皮層の構造とするものである。

したがって、上記摘記事項を総合勘案すると、文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「積層不織布を有する、吸音材であって、
積層不織布は、表皮層及び基材層を有し、前記表皮層が不織布Aを有し、前記基材層が不織布Bを有し、
前記不織布Aは、密度が150〜300kg/m3、厚みが0.6〜1.6mm、通気度がJIS L 1096−1999 8.27.1 A法(フラジール形法)に準じて測定して10〜30cm3/cm2/sであり、
前記不織布Bは、目付が200〜500g/m2、厚みが12〜30mmであり、
前記不織布Aは孔の分布についても空気摩擦によるエネルギー損失を増加させるために一定の範囲とすることが好ましく、細孔径分布度数で0を超え10μm以下の孔径分散度が1〜20、10〜20μmの孔径分散度が15〜60とし、
細孔径分布度数はASTMF316−86に規定される方法によって測定したものであり、
前記不織布Aの目付は、100〜400g/m2であり、
前記不織布Aには平均繊維径が150nmまたは2000nmのものを用いることができ、
表裏の差をなくす必要がある場合には、基材層を中間層として、順に表皮層/中間層/表皮層の構造とする、吸音材。」

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
a 引用発明1は「基材層を中間層として、順に表皮層/中間層/表皮層の構造とする」から、「表皮層」は音の入射側にあるものと認められ、本件発明1の「繊維層」に相当する。
また、引用発明1の「基材層を中間層として、順に表皮層/中間層/表皮層の構造とする」ことは本件発明1の「前記繊維層が音の入射側となるように配置される」ことに相当する。

b 引用発明1の「基材層」は不織布Bを有するから、多孔質の構造であり、本件発明1の「多孔質層」に相当する。
また、引用発明1の「基材層」が「不織布B」を有することは、本件発明1の「前記多孔質層は、発泡樹脂、不織布及び織布からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる層であ」ることに相当する。

c 引用発明1の表皮層が不織布Aを有し、前記不織布Aの「通気度がJIS L 1096−1999 8.27.1 A法(フラジール形法)に準じて測定して10〜30cm3/cm2/sであ」ることは、本件発明1の数値範囲と重なり、本件発明1の繊維層が「フラジール形法による通気度が30〜220cc/cm2・s」であるとの条件を満たす。
また、引用発明1の不織布Aに「平均繊維径が150nmまたは2000nmのもの」を用いることは、本件発明1の繊維層が「平均繊維径が30nm〜2.6μm」であることに相当する。
ただし、本件発明1の繊維層は平均流量細孔径が1.0〜60μm、かつ、目付けが0.1〜24g/m2であるのに対し、引用発明1の不織布Aは平均流量細孔径についてその旨の特定がなく、目付が100〜400g/m2である点で相違する。

d 引用発明1の不織布Aは「密度が150〜300kg/m3」であり、不織布Bは「目付が200〜500g/m2」、「厚みが12〜30mm」であるところ、不織布Bの密度は、下記計算式で求められ、
(目付200〜500g/m2)÷(厚み12〜30mm)
=(目付0.2〜0.5kg/m2)÷(厚み12〜30×10−3m)
≒ 6.7〜42kg/m3
不織布Bの密度6.7〜42kg/m3は、不織布Aの密度よりも低いから、本件発明1の多孔質層が「厚みが3〜40mm、密度が繊維層よりも低く、かつ3〜50kg/m3」であるとの条件を満たす。

e 引用発明1の不織布Aを有する表皮層及び不織布Bを有する基材層からなる「積層不織布」は、本件発明1の「少なくとも繊維層と、多孔質層とを含む積層吸音材」に相当する。

f そうすると、本件発明1と引用発明1とは、
「少なくとも繊維層と、多孔質層とを含む積層吸音材であって、
前記繊維層は、フラジール形法による通気度が30〜220cc/cm2・s、平均繊維径が30nm〜2.6μmであり、
前記多孔質層は、発泡樹脂、不織布及び織布からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる層であって、厚みが3〜40mm、密度が繊維層よりも低く、かつ3〜50kg/m3であり、
前記繊維層が音の入射側となるように配置される、積層吸音材。」である点で一致し、
以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1の繊維層は平均流量細孔径が1.0〜60μm、かつ、目付けが0.1〜24g/m2であるのに対し、
引用発明1の不織布Aは平均流量細孔径についてその旨の特定がなく、目付が100〜400g/m2である点。

(イ)判断
上記相違点1について検討する。
文献2には「平均流量細孔径」について下記の記載がある。なお、下線は当審で付与した。

「【0056】
濾材のFDP(および場合により他の同種の燃料汚染物)隔離に関与する特性を表すさらなる評価手段は、濾材の細孔構造に関連するものである。一般に、多孔質濾材の特性は、平均流量細孔、モード流量細孔、最大流量細孔等のパラメータという観点で特徴付けることができる。「モード細孔径」は、材料中の細孔径の最頻値である。図4に、本発明に従い作製された例示的な濾材材料の流量細孔径の密度分布(FlowPoreSizeDensityDistribution)を示す。曲線の最も高いピークとして示されるのが「モード細孔径」(矢印で示す)である。「平均細孔径」は、材料中の細孔の平均径であり、「累積流量細孔径(cumulativeflowporesize)」は、濾材を通過した流量の百分率の合計を細孔径の関数として測定したものであり、キャピラリー・フロー・ポロメーター装置を用いて測定される。「平均流量細孔径」は、濾材を通過した累積流量が50%となる細孔径として定義される。「空隙率」は、材料中の空隙の量として定義される。図5に流量細孔径の累積分布を示す。「平均流量細孔径」(矢印で示す)は、この曲線がy軸の50%と交差する点である。」

上記記載によると、「平均流量細孔径」は、濾材を通過した累積流量が50%以上となる細孔径として定義されるものである。
引用発明1の不織布Aは「細孔径分布度数で0を超え10μm以下の孔径分散度が1〜20、10〜20μmの孔径分散度が15〜60」であるから、その累積分布は0を超え10μm以下の範囲で1〜20%、10〜20μmの範囲で16〜80%である。
そうすると、引用発明1の不織布Aは10〜20μmの孔径の範囲に累積分布50%以上となる「平均流量細孔径」を有するものであり、本件発明1の「平均流量細孔径が1.0〜60μm」の範囲内にあるものである。
しかしながら、引用発明1の不織布Aは目付が100〜400g/m2であり、本件発明1の繊維層の目付け0.1〜24g/m2とは異なる数値範囲のものを用いており、上記相違点1は実質的な相違である。
したがって、本件発明1は引用発明1ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

ウ 本件発明2、4ないし8について
本件発明2、4ないし8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、上記イと同様の理由により、本件発明2、4ないし8は引用発明1ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

(2)文献3を主引用例とした場合
ア 文献3記載事項、引用発明3
文献3には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

(ア)「【0001】
本発明は、中程度の周波数の吸音性に優れ、薄く、軽量で、形態安定性に優れた自動車内装用などに好適な吸音材およびその製造法に関する。」

(イ)「【0004】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、熱圧着された緻密構造の表面材と、粗な構造の裏面材とをホットメルト接着剤等により接合することにより、表面材の小さな空隙に侵入した音を裏面材の繊維単糸に伝達して振動させ、効率よく熱エネルギーに変化させることができるため、音エネルギーが減少し、大幅な吸音性の向上が図れることを見いだし、本発明に到達した。」

(ウ)「【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の吸音材は、熱圧着された熱可塑性合成繊維不織布からなる表面材と合成繊維不織布からなる裏面材との接合不織布で構成される。
本発明に用いられる表面材は、厚みが0.03〜1mm、好ましくは0.04〜0.7mmであり、平均みかけ密度が0.3g/cm3以上、好ましくは0.35〜1.0g/m2であり、さらに目付けが20〜250g/m2、好ましくは30〜200g/m2である。このような構成とすることにより、表面材が高密度構造となり、侵入する音の波長を細孔中の摩擦抵抗で小さくできる。表面材の厚みが0.03mm未満、平均みかけ密度が0.3g/cm3未満、また目付けが20g/m2未満では、強度、剛性、取扱性、繊維密度などが低下し、吸音効果が低下する。一方、厚みが1mmを超え、目付けが250g/m2を超えると、強度、繊維密度は大きくなるが、剛性が大きすぎて裁断性、取扱性が低下する。」

(エ)「【0017】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中の特性は下記の方法で測定した。
1)目付け(g/m2) :JIS−1913に準ずる。
2)平均繊維径(μm):顕微鏡で500倍の拡大写真を取り、10本の平均値で求める。
3)平均みかけ密度(g/cm3):(目付け)/(厚み)から算出し、単位容積あたりの重量を求める。
4)厚み(mm):JIS−L−1913−B法に準ずる。荷重0.02kPaの圧力の厚みを3カ所以上測定し、その平均値で示す。ただし、表面材の厚みは、荷重20kPaで測定した。
5)吸音性(%):JIS−1405に準じ、垂直の入射法の測定機で周波数2000〜4000Hzを測定する。
6)通気性(cc/cm2/sec):JIS−L−1906フラジュール形法で測定する。」

(オ)【0018】−【0024】記載の実施例2及び9をみてみると、【表1】に示されるように、表面材は、繊維径が14μm(実施例2)または15μm(実施例9)、目付けが60g/m2(実施例2)または100g/m2(実施例9)、みかけ密度が0.35g/cm3(実施例2)または0.33g/cm3(実施例9)、通気性が63cc/cm2/sec(実施例2)または45cc/cm2/sec(実施例9)であり、裏面材は、厚みが17mm(実施例2及び9)、みかけ密度が0.01g/cm3(実施例2及び9)である。

上記(ア)ないし(オ)から、文献3には以下の事項が記載されている。・上記(ア)によれば、吸音材は、自動車内装用に使用できるものである。・上記(イ)によれば、吸音材は、熱圧着された緻密構造の表面材と、粗な構造の裏面材とを接合することにより、表面材の小さな空隙に侵入した音を裏面材の繊維単糸に伝達して振動させ、効率よく熱エネルギーに変化させることができるため、音エネルギーが減少し、大幅な吸音性の向上が図れるものである。
・上記(ウ)によれば、吸音材は、熱圧着された熱可塑性合成繊維不織布からなる表面材と合成繊維不織布からなる裏面材との接合不織布で構成されるものである。
・上記(エ)によれば、通気性はJIS−L−1906フラジュール形法で測定している。
・上記(オ)によれば、表面材は、繊維径が14μm(実施例2)または15μm(実施例9)、目付けが60g/m2(実施例2)または100g/m2(実施例9)、みかけ密度が0.35g/cm3(実施例2)または0.33g/cm3(実施例9)、通気性が63cc/cm2/sec(実施例2)または45cc/cm2/sec(実施例9)であり、裏面材は、厚みが17mm(実施例2及び9)、みかけ密度が0.01g/cm3(実施例2及び9)である。

したがって、上記摘記事項を総合勘案すると、文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。

「自動車内装用に使用する吸音材であって、
熱圧着された緻密構造の表面材と、粗な構造の裏面材とを接合することにより、表面材の小さな空隙に侵入した音を裏面材の繊維単糸に伝達して振動させ、効率よく熱エネルギーに変化させることができるため、音エネルギーが減少し、大幅な吸音性の向上が図れるものであり、
吸音材は、熱圧着された熱可塑性合成繊維不織布からなる表面材と合成繊維不織布からなる裏面材との接合不織布で構成され、
通気性はJIS−L−1906フラジュール形法で測定しており、
表面材は、繊維径が14μm(実施例2)または15μm(実施例9)、目付けが60g/m2(実施例2)または100g/m2(実施例9)、みかけ密度が0.35g/cm3(実施例2)または0.33g/cm3(実施例9)、通気性が63cc/cm2/sec(実施例2)または45cc/cm2/sec(実施例9)であり、
裏面材は、厚みが17mm(実施例2及び9)、みかけ密度が0.01g/cm3(実施例2及び9)である、吸音材。」

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明3とを対比する。
a 引用発明3の「表面材の小さな空隙に侵入した音を裏面材の繊維単糸に伝達して振動させ」る構成から、「表面材」は音の入射側にあるものと認められ、本件発明1の「繊維層」に相当する。
また、引用発明3の「表面材の小さな空隙に侵入した音を裏面材の繊維単糸に伝達して振動させ」る構成は、本件発明1の「前記繊維層が音の入射側となるように配置される」ことに相当する。

b 引用発明3の「裏面材」は合成繊維不織布からなるから、多孔質の構造であり、本件発明1の「多孔質層」に相当する。
また、引用発明3の「裏面材」が「合成繊維不織布」からなることは、本件発明1の「前記多孔質層は、発泡樹脂、不織布及び織布からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる層であ」ることに相当する。

c 引用発明3の「表面材」は、JIS−L−1906「フラジュール形法」で測定した「通気性」が「63cc/cm2/sec」または「45cc/cm2/sec」であるから、本件発明1の数値範囲と重なり、本件発明1の繊維層が「フラジール形法による通気度が30〜220cc/cm2・s」であるとの条件を満たす。
ただし、本件発明1の繊維層は、平均流量細孔径が1.0〜60μm、平均繊維径が30nm〜2.6μm、かつ、目付けが0.1〜24g/m2であるのに対し、引用発明3の表面材は平均流量細孔径についてその旨の特定がなく、繊維径が14μm(実施例2)または15μm(実施例9)、目付けが60g/m2(実施例2)または100g/m2(実施例9)である点で相違する。

d 引用発明3の表面材は、みかけ密度が0.35または0.33g/cm3、すなわち350または330kg/m3であり、裏面材は、厚みが17mm、みかけ密度が0.01g/cm3、すなわち10kg/m3であるから、本件発明1の多孔質層が「厚みが3〜40mm、密度が繊維層よりも低く、かつ3〜50kg/m3」であるとの条件を満たす。

e 引用発明3の熱可塑性合成繊維不織布からなる表面材と合成繊維不織布からなる裏面材との接合不織布で構成された「吸音材」は、本件発明1の「少なくとも繊維層と、多孔質層とを含む積層吸音材」に相当する。

f そうすると、本件発明1と引用発明3とは、
「少なくとも繊維層と、多孔質層とを含む積層吸音材であって、
前記繊維層は、フラジール形法による通気度が30〜220cc/cm2・sであり、
前記多孔質層は、発泡樹脂、不織布及び織布からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる層であって、厚みが3〜40mm、密度が繊維層よりも低く、かつ3〜50kg/m3であり、
前記繊維層が音の入射側となるように配置される、積層吸音材。」である点で一致し、
以下の点で相違する。

<相違点2>
本件発明1の繊維層は、平均流量細孔径が1.0〜60μm、平均繊維径が30nm〜2.6μm、かつ、目付けが0.1〜24g/m2であるのに対し、
引用発明3の表面材は平均流量細孔径についてその旨の特定がなく、繊維径が14μm(実施例2)または15μm(実施例9)、目付けが60g/m2(実施例2)または100g/m2(実施例9)である点。

(イ)判断
上記相違点2について検討する。
申立人4が行った実験成績証明書は、文献3の実施例2及び9と同様の方法で作製した表面材(以下、「追試品」という。)について、物性(目付け、平均繊維径、平均みかけ密度、厚み、通気性)が同等であることを確認した上で、PMI社製のパームポロメーター(形式:CFP−1200AEXS)を用い、浸液にPMI社製のGALWICKを用いて、本件発明の「平均流量細孔径」と同じくASTM F316−86、JIS K 3832、ASTM E1294−89に準拠した測定を行っている。
そして、引用発明3(文献3の実施例2及び9)と同等のものを用いた追試品は、平均流量細孔径の測定値が「24(μm)」及び「22(μm)」であるから、本件発明1の「平均流量細孔径が1.0〜60μm」の範囲内にあるものである。
しかしながら、引用発明3の表面材は繊維径が14μm(実施例2)または15μm(実施例9)、目付が60g/m2(実施例2)または100g/m2(実施例9)であり、本件発明1の繊維層の平均繊維径30nm〜2.6μm、目付け0.1〜24g/m2とは異なる数値範囲のものを用いており、上記相違点2は実質的な相違である。
したがって、本件発明1は引用発明3ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

ウ 本件発明5ないし8について
本件発明5ないし8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、上記イと同様の理由により、本件発明5ないし8は引用発明3ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

4 取消理由4(進歩性)について
(1)文献1を主引用例とした場合
ア 本件発明3について
本件発明3は、請求項1を引用する請求項2を引用する発明であるところ、上記「3(1)イ」で検討したとおり、相違点1は実質的な相違である。
そして、文献1は、不織布Aの目付の下限「100g/m2」について「130g/m2以上であることが好ましい。さらに好ましいのは150g/m2以上である。」(3(1)ア(ウ)の[0017])と記載されており、不織布Aの目付を本件発明1のように「0.1〜24g/m2」にする動機はない。
また、文献1の他の記載、取消理由で参照した他の文献の記載、及び申立人1及び申立人4による他の甲号証の記載を検討しても、引用発明1の不織布Aに相違点1に係る構成を採用することは記載も示唆もなく、引用発明1が属する積層吸音材の技術分野において、相違点1に係る構成が公知または周知の技術であるとの証拠もない。
したがって、本件発明1は、文献1記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。本件特許3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、同様の理由により、文献1記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)文献3を主引用例とした場合
ア 本件発明2ないし4について
上記「3(2)イ」で検討したとおり、相違点2は実質的な相違である。
そして、文献3の他の記載、取消理由で参照した他の文献の記載、及び申立人4による他の甲号証の記載を検討しても、引用発明3の表面材の繊維径14μmまたは15μm、目付け60g/m3または100g/m3を本件発明1のように平均繊維径30nm〜2.6μm、目付け0.1〜24g/m2にすることは記載も示唆もない。
また、引用発明3が属する積層吸音材の技術分野において、相違点2に係る構成が公知または周知の技術であるとの証拠もない。
したがって、本件発明1は、文献3記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。本件特許2ないし4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、同様の理由により、文献1記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)申立人の意見について
ア 申立人2の意見
申立人2は、令和3年3月8日提出の意見書において、参考文献1(黒沢良夫、極細繊維材の吸音率予測手法の開発、日本機械学会論文集、Vol.82,No.837(2016))には、繊維径がそれぞれ1μm、2μm、4μm、30μmの4種類の不織布(すべて厚さ10mm、目付300g/m2)の垂直入射吸音率の吸音結果が記載されており、この結果から繊維径が細かいほど不織布の吸音性能が向上することがわかることから、文献1に開示された積層不織布を構成する不織布A、または文献3に開示された吸音材を構成する表面材の平均繊維径を細くすることは、当業者が容易に想到できることに過ぎない旨主張している。
また、吸音材の分野で部材の軽量化と省スペース化を行うことは本件特許発明の出願以前から行われていることであり(文献3の【0003】)、文献1に開示された積層不織布を構成する不織布A、または文献3に開示された吸音材を構成する表面材の目付を小さくしようとすることは当業者が適宜なし得る数値の最適化に過ぎない旨主張している。

イ 申立人3の意見
申立人3は、令和3年3月3日受付の意見書において、取消理由通知の文献4には、積層吸音材の表面層に平均繊維径が約1μm、目付が20g/m2のメルトブローン不織布等が用いられることが明記されており、また新たに提出する参考資料1(特開2019−1012号公報)には、積層吸音材の表面層に平均繊維径180nm、目付が1.0g/m2であるPVDF―HFP極細繊維層等が用いられることが明記されており(請求項1、3、【0076】)、さらに新たに提出する参考資料2(特開2006−28708号公報)には、積層吸音材の表面層に平均繊維径2μm、目付が2〜16g/m2であるメルトブロー微細繊維層が用いられることが明記されており(請求項1、4、【0023】)、文献3に「平均繊維径が30nm〜2.6μm、かつ、目付が0.1〜24g/m2」との要件を適用することは単なる設計事項に過ぎない旨主張している。

ウ 申立人4の意見
申立人4は、令和3年3月8日提出の意見書において、吸音性を確保しながら軽量化することは周知の課題であり、文献1に記載された発明より本件訂正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである旨主張している。
また、新たに提出する甲第12号証(特開2017−82346号公報)には、平均繊維径が310nm〜820nm、かつ、目付が3g/m2の繊維層と、多孔質層とが積層された積層吸音材が開示されており(請求項1ないし3、実施例1〜12)、文献1に記載された発明に甲第12号証に記載された発明の繊維層の平均繊維層及び目付を適用して、本件訂正発明を容易に想到し得るため、本件訂正発明は進歩性を有しない旨主張している。
さらに、新たに提出する甲第13号証(特開2010−248666号公報)には、平均繊維径が93nm〜220nm、かつ、目付が0.5〜15g/m2の繊維層と、多孔質層とが積層された積層吸音材が開示されており(請求項6、【0012】、実施例1〜7)、文献1に記載された発明に甲第13号証に記載された発明の繊維層の平均繊維層及び目付を適用して、本件訂正発明を容易に想到し得るため、本件訂正発明は進歩性を有しない旨主張している。

エ 各主張についての判断
上記アないしウの各申立人の主張について検討する。上記アないしウで提示された文献には、いずれも平均繊維径と目付の記載はあるが平均流量細孔径の記載がない。
そうすると、平均繊維径や目付について、提示された文献に記載された数値となるように調整することがあったとしても、同時に平均流量細孔径を所定の数値となるように調整する動機はない。
また、引用発明1の吸音材の不織布Aや引用発明3の表面材の目付を0.1〜24g/m2になるように調整したときに、平均流量細孔径や通気度が本件発明の数値範囲の要件を満たすことができるという証拠がなく、引用発明1における相違点1に係る事項、または引用発明3における相違点2に係る事項を当業者が容易になし得たとすることはできない。
よって、各申立人の上記主張はいずれも採用できない。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 採用しなかった特許異議申立理由
取消理由に採用しなかった申立人1ないし4による特許異議申立書に記載された申立の理由の概要は、次の(1)ないし(4)のとおりである。

(1)申立人1による申立理由及び証拠
ア 申立理由1−1(特許法第29条第2項
本件発明1ないし8は、甲1−1を主たる証拠として、甲1−1及び甲1−2に記載の発明に基づいて容易想到である。

甲1−1:国際公開第2017/170686号
甲1−2:国際公開第2016/143857号

(2)申立人2による申立理由及び証拠
イ 申立理由2−1(特許法第29条第1項第3号、同法第29条第2項
本件発明1、4ないし8は甲2−1に記載された発明と同一の発明である。仮に差異があるとしても、甲2−1及び周知の知見(甲2−2〜甲2−8)から容易想到である。

甲2−1:特開2015−121631号公報
甲2−2:特開平7−144109号公報
甲2−3:国際公開第2016/148174号
甲2−4:特開2016−175074号公報
甲2−5:特開2018−110674号公報
甲2−6:特開2006−109984号公報
甲2−7:特開2006−224007号公報
甲2−8:特開2009−112887号公報

ウ 申立理由2−2(特許法第36条第6項第1号
積層吸音材に含まれる繊維層のフラジール形法による通気度が30〜220cc/cm3・sと記載されているが、発明の詳細な説明の実施例及び比較例において、繊維層の通気度が30cc/cm2・s以上47cc/cm2・s未満の積層吸音材は検討していない。繊維層の通気度が30cc/cm2・s以上47cc/cm2・s未満の積層吸音材が、繊維層の通気度が47cc/cm2・s以上の積層吸音材と同様に効率よく吸音できる技術常識があるとも認められないことから、本件発明1、4ないし8は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
また、令和3年3月8日提出の意見書において、
「平均繊維径が80nm〜2.6μmの繊維層を有することで高い吸音性能が得られたことをもって、平均繊維径が30μm以上80μm未満(当審注:「30μm以上80μm未満」は「30nm以上80nm未満」の誤記と認められる。)の繊維層を有することで効率よく吸音できる技術常識があるとも認められず、目付けが0.2〜24g/m2の繊維層を有することで高い吸音性能が得られたことをもって、目付けが0.1g/m2以上0.2g/m2未満の繊維層を有することで効率よく吸音できる技術常識があるとも認められない。特に、本件特許発明の請求項1の平均繊維径と目付けの上限は、明細書の【0054】に記載されている繊維層Mの記載を基に訂正請求で訂正していることから、繊維層Mよりも大きい平均流量細孔径(11μmを超える)、フラジール形法による通気度(144cc/cm2・sを超える)を有する繊維層で効率よく吸音できる技術常識があるとは認められない。
したがって、本件特許発明の請求項1は、出願時の技術常識に照らしても、本件特許発明1にかかる発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。」旨主張している。

(3)申立人3による申立理由及び証拠
エ 申立理由3−1(特許法第29条第1項第3号
本件発明1、4ないし7は甲3−1に記載された発明と同一である。

オ 申立理由3−2(特許法第29条第2項
本件発明1ないし8は、甲3−1を主引例に、甲3−2及び甲3−3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

甲3−1:特開2009−186825号公報
甲3−2:特表2013−535024号公報
甲3−3:特開2018−199253号公報
甲3−4:国際公開第2011/155963号(甲3−2に対応する国際公開公報)

(4)申立人4による申立理由及び証拠
カ 申立理由4−1(特許法第29条第1項第3号
本件発明2、4は、甲4−5を参照して、甲4−4に記載された発明と同一の発明である。

キ 申立理由4−2(特許法第29条第2項
(ア)本件発明1、2、4ないし8は、甲4−1に基づき、または甲4−1に甲4−8〜甲4−11を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)本件発明1、5ないし8は、甲4−4に基づき、または甲4−4に甲4−8〜甲4−11を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ)本件発明1ないし8は、甲4−6または甲4−7に甲4−8〜甲4−11を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(エ)本件発明1ないし8は、甲4―8に甲4―1または甲4−4を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものである。

甲4−1:国際公開第2016/143857号
甲4−2:特許第6364454号公報
甲4−3:別件(特願2018−42044)の審査において提出された令和1年12月28日付意見書
甲4−4:特開2006−28709号公報
甲4−5:実験成績証明書
甲4−6:特表2013−535024号公報
甲4−7:特開2009−114600号公報
甲4−8:特開2005−266445号公報
甲4−9:特開2009−157060号公報
甲4−10:特開2014−232281号公報
甲4−11:特開2015−121631号公報

ク 申立理由4−3(特許法第36条第4項第1号
本件特許明細書の実施例は、それに基づき、当業者が本件発明1の全範囲において効果を奏する物を作れるように記載されていないため、実施可能要件を満たさない。

ケ 申立理由4−4(特許法第36条第6項第1号
本件明細書の実施例4,7,9,12,15,20,23,28,30は、本件発明1の範囲内であるか範囲外であるかが不明であり、発明の詳細な説明や技術常識を参酌しても、本件発明1が解決しようとする課題を解決することができるような記載となっていないため、本件発明1ないし8はサポート要件を満たさない。
また、令和3年3月8日提出の意見書において、
「本件訂正発明における『平均繊維径』は30nm〜2.6μmである。他方、本件特許公報の実施例の[表1]〜[表15]において、平均繊維径が30nm〜2.6μmである例としては、平均繊維径が0.08μm(80nm)である例しか開示されておらず、実施例5、13、21での平均繊維径は3μmであり、本件訂正発明の技術範囲以外である。従って、本件訂正発明は、平均繊維径が0.08μm以外の場合でも発明の課題が解決できることを当業者が認識することができないため、サポート要件を満たさない。」旨主張している。

2 採用しなかった申立理由についての判断
(1)特許法第29条第1項第3号、同法第29条第2項について
上記「第5 4」で検討したとおり、相違点1及び2に共通する本件発明の構成である、音の発生源側の側となる繊維層を「平均流量細孔径が1.0〜60μm」かつ「目付けが0.1〜24g/m2」とすることは公知または周知であるとの根拠がないところ、申立理由1−1、2−1、3−1、3−2、4−1、4−2であげた各文献は、いずれも下記アないしエのとおり、積層吸音材の繊維層の「平均流量細孔径が1.0〜60μm」かつ「目付けが0.1〜24g/m2」という構成について記載も示唆もない。

ア 申立理由1−1(特許法第29条第2項)について
甲1−1に記載の積層体は、音の発生源側の側となる「織物層」の目付が100〜400g/m2であり([0010]、[0013]、[0024])、本件発明の0.1〜24g/m2の範囲にない。
また、甲1−2は上記文献1(「第5 3(1)」参照)であり、音の発生源側の側となる「不織布A」の目付は100〜400g/m2であり、本件発明の0.1〜24g/m2の範囲にない。
したがって、本件発明は、甲1−1に記載された発明、甲1−2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 申立理由2−1(特許法第29条第1項第3号、同法第29条第2項)について
甲2−1に記載の吸音材は、通気性表皮材に用いるメルトブロー不織布A〜Cの目付がそれぞれ83g/m2、84g/m2、85g/m2であり(【0040】)、本件発明の0.1〜24g/m2の範囲になく、また、平均流量細孔径については記載がない。
したがって、本件発明は甲2−1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
また、周知技術としてあげた甲2−2〜甲2−8には、平均細孔径、通気度、平均繊維径、目付けの全てについて本件発明の数値範囲に含まれる実施例の記載はない。また、甲2−2〜甲2−8はいずれもフィルター、濾過材、皮膚添付用シート、対物用液体塗布シートといった、甲2−1の吸音材とは技術分野が異なるものであり、甲2−1の吸音材に甲2−2〜甲2−8記載の周知技術を適用する動機はない。
したがって、本件発明は、甲2−1に記載された発明、及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 申立理由3−1(特許法第29条第1項第3号)及び申立理由3−2(特許法第29条第2項)について
甲3−1に記載の吸音構造体は、音源側に配される不織布の平均流量細孔径について記載も示唆もない。
したがって、本件発明は甲3−1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
次に、甲3−2の音響面材(吸音面材)はASTM E 1294−89、F316に準拠して測定した平均細孔径が「約8〜約40ミクロン」(【0046】、【0047】)であるが、坪量(目付)は「約1.5〜約5.0オンス毎平方ヤード(osy)」(【請求項1】、【0019】等)と記載されており、図4を参照すると吸音材に0.94〜5.18osyのものを使用しており、本件発明の目付け0.1〜24g/m2の範囲にない。なお、0.94〜5.18osyは単位変換すると、約32〜176g/m2である。
また、甲3−3は平均流量細孔径について記載がない。
したがって、本件発明は、甲3−1に記載された発明、及び甲3−2、甲3−3記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 申立理由4−1(特許法第29条第1項第3号
甲4−4及び甲4−5は、上記文献3及び文献3の実施例2及び9を追試した実験成績証明書である(「第5 3(2)」参照)。
本件発明2、4は請求項1を引用する発明であり、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、上記相違点2についてでの検討と同様の理由により、本件発明2、4は文献3(甲4−4)に記載された発明ではない。

オ 申立理由4−2(特許法第29条第2項)について
(ア)最初に、主引用例とされる甲4−1、甲4−4、甲4−6〜甲4−8の記載について確認する。
甲4―1は上記文献1(「第5 3(1)」参照)であり、不織布Aの平均流量細孔径は本件発明1の1.0〜60μmの範囲内にあるものと認められる。一方、目付は100〜400g/m2であり、本件発明の0.1〜24g/m2の範囲にない。
甲4−4は上記文献3(「第5 3(2)」参照)であり、表面材の平均流量細孔径は本件発明1の1.0〜60μmの範囲内にあるものと認められる。一方、目付けは60g/m2(実施例2)または100g/m2(実施例9)であり、いずれも本件発明の平均繊維径30nm〜2.6μm、目付け0.1〜24g/m2の範囲にない。
甲4−6は甲3−2と同じ文献であり、上記ウで述べたとおり、吸音材に坪量(目付)0.94〜5.18osyのものを使用しており、本件発明の目付0.1〜24g/m2の範囲にない。
甲4−7に記載の積層不織布は、吸音材に使用することの記載や示唆がない。また、繊維径0.1〜7μmの極細繊維層と繊維径10〜30μmの繊維層からなる積層不織布(【請求項1】)であるが、積層不織布の平均繊維径について記載がなく、本件発明の平均繊維径30nm〜2.6μmの範囲にあるとはいえない。
甲4−8は平均流量細孔径について記載がない。

(イ)次に、副引用例とされる甲4−8〜甲4−11、甲4−1及び甲4−4の記載について確認する。
甲4−8〜甲4−11は、音の入射面となる表皮材に緻密な繊維層を用い、これに疎な繊維層を積層一体化して、優れた吸音性を得ることが当業者に一般的に知られた事項であることの証拠としてあげられたものであり、いずれも平均流量細孔径は記載されていない。
また、甲4―1及び甲4−4は、上記(ア)のとおり、それぞれ文献1及び文献3である。

(ウ)そうすると、甲4−1または甲4−4には、音の発生源側の側となる繊維層を「平均流量細孔径が1.0〜60μm」かつ「目付けが0.1〜24g/m2」とする構成がなく、平均流量細孔径について記載のない甲4−8〜甲4−11を適用しても、本件発明の構成になるとはいえない。
また、甲4−6を主引用例にして甲4−8〜甲4−11を適用しても、吸音材の坪量(目付)0.94〜5.18osyを本件発明の0.1〜24g/m2の範囲にする動機はなく、甲4−7を主引用例にして甲4−8〜甲4−11を適用しても、積層不織布の平均繊維径を本件発明の30nm〜2.6μmの範囲にする動機はない。
さらに、甲4−8を主引用例にして甲4−1または甲4−4を適用しても、積層不織布の表面に積層される極細繊維層について、平均流量細孔径、平均繊維径及び目付けを本件発明の数値範囲にする動機はない。

(2)特許法第36条第4項第1号、同法第36条第6項第1号について
ア 申立理由2−2(特許法第36条第6項第1号)について
(ア)通気度について
本件明細書の発明の詳細な説明には、積層吸音材の通気度について以下の記載がある。

「【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
(積層吸音材の構造)
本発明の積層吸音材は、少なくとも繊維層と、多孔質層とを含む積層吸音材であって、前記繊維層は、平均流量細孔径が1.0〜60μm、フラジール形法による通気度が30〜220cc/cm2・sであり、前記多孔質層は、発泡樹脂、不織布及び織布からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる層であって、厚みが3〜40mm、密度が繊維層よりも低く、かつ3〜50kg/m3であり、前記の繊維層が音の入射側となるように配置される、積層吸音材である。」

「【0019】
積層吸音材の通気度は、所望の吸音性能が得られる限り特に制限されるものではないが、30〜500cc/cm2・sとすることができ、30〜220cc/cm2・sであれば好ましく、45〜220cc/cm2・sであればより好ましい。通気度が30cc/cm2・s以上であれば、吸音材の表面で音が反射することによる吸音率の低下がなく、また、通気度が500cc/cm2・s以下であれば、吸音材内部での迷路度が低下し、吸音材内部での消失するエネルギーの低下がない。」

「【0023】
繊維層の通気度は、30〜220cc/cm2・sであり、40〜220cc/cm2・sが好ましい。通気度が30cc/cm2・s以上であれば音源から発生した音を吸音材料内部に導入できるため効率よく吸音でき、220cc/cm2・s以下であれば、内部の多孔質層との音波の流れを調節できるため好ましいと考えられている。また、繊維層の平均流量細孔径は1.0〜100μmとすることができ、1.0〜60μmであればより好ましい。平均流量細孔径が1.0μmであれば反射波を抑え、音を吸音材内部に取り入れることができ、100μm以下であれば、密度により制御した繊維層と多孔質層において、吸音材内部に閉じこめることにより、吸音材内部で効率よく消失させることができるため好ましいと考えられている。」

また、申立人2が記載が十分でないと指摘する、繊維層の通気度「30cc/cm2・s以上47cc/cm2・s未満」の範囲については、その近傍の値として、実施例1及び17に「47cc/cm2・s」のものを、比較例6、11及び13に「22cc/cm2・s」のものを使用し、それぞれ吸音率の評価を行っている。

そうすると、通気度の数値範囲に関する技術的意義を説明する記載や、それを裏付ける具体的な結果等の記載を参考することによって、本件発明の課題が解決できると認識できるといえ、本件発明1、4ないし8は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

(イ)平均繊維径及び目付け
本件明細書の発明の詳細な説明には、積層吸音材の平均繊維径及び目付けについて以下の記載がある。

「【0021】
(各層の構成:繊維層)
本発明の積層吸音材に含まれる繊維層は、平均繊維径が30nm〜30μmである繊維からなる層である。好ましくは、平均繊維径が50nm〜30μmである繊維からなる層である。平均繊維径が30nm〜30μmであるとは、平均繊維径がこの数値範囲内であることを意味する。繊維径が30nm〜30μmの範囲であれば、高い吸音性が得られるため好ましい。繊維径の測定は、公知の方法によることができる。例えば、繊維層表面の拡大写真から測定ないし算出することによって得られる値であり、詳細な測定方法は実施例に詳述される。
【0022】
本発明の積層吸音材に含まれる繊維層は、1層の繊維層が一つの繊維集合体からなっていてもよく、また、1層の繊維層中に複数の繊維集合体を含み、繊維集合体の層が重ね合わされたものが1層の繊維層を形成していてもよい。なお、本明細書において、繊維集合体とは、一つの連続体となった繊維集合体のことを意味している。繊維層の目付けは、0.01〜500g/m2であることが好ましく、0.1〜200g/m2であればより好ましい。目付けが0.1g/m2以上であれば、繊維層と多孔質層との密度差による流れ抵抗の制御が良好となり、500g/m2未満であれば、吸音材として生産性に優れる。吸音材としての厚みを低減する観点から繊維層の厚みは薄い方が好ましく、具体的には、2.9mm未満が好ましく、より好ましくは2.0mm未満、さらに好ましくは1.5mm未満、特に好ましくは1mm未満である。」

また、申立人2が記載が十分でないと指摘する、繊維層の平均繊維径「30nm〜80nm」、目付け「0.1〜0.2g/m2」の範囲については、その近傍の値として、実施例1及び17等に繊維径「0.08μm(80nm)」、目付け「0.2g/m2」のものを使用し、それぞれ吸音率の評価を行っている。

そうすると、平均繊維径及び目付けの数値範囲に関する技術的意義を説明する記載や、それを裏付ける具体的な結果等の記載を参考することによって、本件発明の課題が解決できると認識できるといえ、本件発明1、4ないし8は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

イ 申立理由4−3(特許法第36条第4項第1号)について
発明の詳細な説明が、物の発明について実施可能要件を満たしているというためには「その物を作れる」ように記載されていなければならないことから、この観点で以下検討する。
本件発明の数値限定を満たす実施例として、本件明細書の発明の詳細な説明には、繊維層A(平均流量細孔径5.8μm、フラジール形法通気度47cc/cm2・s、平均繊維径80nm、目付け0.2g/m2)及び多孔質層α(PU発泡材料)を用いた実施例1(【0059】参照)と、繊維層M(平均流量細孔径11μm、フラジール形法通気度144cc/cm2・s、平均繊維径2.6μm、目付け24g/m2)及び多孔質層αを用いた実施例5(【0063】参照)が記載されている。
そして、繊維層A、繊維層M、多孔質層αの準備について、下記の記載がある。

「【0052】
<繊維層の準備>
繊維層A、B、C
Arkema製のポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(以下、「PVDF」と略記する。)であるKynar(商品名)3120を、N,N−ジメチルアセトアミドとアセトンの共溶媒(60/40(w/w))に15質量%の濃度で溶解し、電界紡糸溶液を調製し、導電助剤として0.01質量%を添加した。保護層の上に前記PVDF−HFP溶液を電界紡糸して、保護層とPVDF−HFP極細繊維との2層からなる繊維積層体を作製した。電界紡糸の条件は、24Gニードルを使用し、単孔溶液供給量は3.0mL/h、印加電圧は35kV、紡糸距離は17.5cmとした。
繊維積層体におけるPVDF極細繊維については、その層の目付けは0.2g/m2であり、平均繊維径は80nmであり、融解温度は168℃であった。これを繊維層Aとした。平均流量細孔径を評価したところ5.8μm、フラジール形法による通気度は47cc/cm2・sであった。
また保護層の搬送速度を変化させ、目付けが0.6g/m2となるように調節した。得られた繊維層の平均繊維径は80nmであり、融解温度は168℃であった。これを繊維層Bとした。平均流量細孔径を評価したところ1.5μm、フラジール形法による通気度は10cc/cm2・sであった。
さらに目付けが3.0g/m2となるように調節した。このとき平均繊維径は80nmであり、融解温度は168℃であった。これを繊維層Cとした。平均流量細孔径を評価したところ0.7μm、フラジール形法による通気度は0.7cc/cm2・sであった。」

「【0054】
繊維層M(メルトブローン不織布)
繊維層の原料のポリプロピレン樹脂として、ポリプロピレンホモポリマー1(MFR=70g/10分)を用い、不織布製造装置の2機の押出機にポリプロピレン樹脂を投入し、押出機を240℃で加熱溶融させ、ギアポンプの質量比が50/50になる様に設定し、紡糸口金から単孔あたり0.3g/minの紡糸速度で溶融樹脂を吐出させた。吐出した繊維を400℃に加熱した98kPa(ゲージ圧)の圧縮空気によって紡糸口金から60cmの距離で、捕集コンベアー上に吹き付け、繊維層を形成した。捕集コンベアーの速度を調整することによって、任意に目付を設定した。平均繊維径は、2.6μmであり、繊維層の目付けは、24g/m2、厚みは0.9mmであった。繊維層Mの平均流量細孔径は11μm、フラジール形法による通気度は144cc/cm2・sであった。」

「【0056】
[多孔質層の準備]
多孔質層α、β、γ(ウレタン発泡フォーム)
市販されているウレタン発泡樹脂材料として、イノアック社製カームフレックス F−2(密度25kg/m3)、厚み25mmを多孔質層α、厚み20mmを多孔質層β、厚み5mmを多孔質層γとした。フラジール形法による通気度はそれぞれ、多孔質層αが50cc/cm2・s、多孔質層βが70cc/cm2・s、多孔質層γが180cc/cm2・sであった。」

本件明細書の上記記載、及び必要に応じて本件出願時の技術常識を参照すれば、当業者が本件発明の積層吸音材を製造することができるといえ、本件発明は十分に実施可能であるといえる。

また、申立人4は、本件発明3の第一及び第二の多孔質層の通気度が互いに同じであることについて、【0016】には「密度が互いに同じであってもよい」ことは記載されているが、「通気度が互いに同じであってもよい」ことは記載されておらず、実施例25〜31は本件発明3を裏付ける実施例とはいえない旨主張している。
しかしながら、本件明細書の実施例で使用する多孔質層α、β、γは、いずれも同じ材料を厚みを変えて使用するものであり(【0056】参照)、厚みを同じにすれば、多孔質層の通気度を同じにできることは明らかであり、当業者が十分に実施可能であるといえる。

よって、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1〜8を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえる。

ウ 申立理由4−4(特許法第36条第6項第1号)について
本件明細書の実施例4,7,9,12,15,20,23,28,30は、いずれも目付が100g/m2または30g/m2であり、本件発明1の「目付けが0.1〜24g/m2」に含まれず、本件発明1の範囲外である。
また、上記「ア(イ)」で述べたとおり、本件特許明細書の【0021】を参照すると、繊維層の平均繊維径が「30nm〜30μm」の数値範囲内において本件発明を実施し得ることが明らかにされている。
そのため、繊維層Mの平均繊維径に関する【0054】の2.6μmという記載と、表中の実施例5、13、21の3μmという記載が異なっていたとしても、2.6μmまたは3μmに臨界的意義が認められない場合には、どちらも「平均繊維径が30nm〜30μm」の数値範囲内のものであり、発明の課題が解決できることを当業者が認識することができないとはいえない。
よって、申立人4の主張は採用することができない。

第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも繊維層と、多孔質層とを含む積層吸音材であって、
前記繊維層は、平均流量細孔径が1.0〜60μm、フラジール形法による通気度が30〜220cc/cm2・s、平均繊維径が30nm〜2.6μm、かつ、目付けが0.1〜24g/m2であり、
前記多孔質層は、発泡樹脂、不織布及び織布からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる層であって、厚みが3〜40mm、密度が繊維層よりも低く、かつ3〜50kg/m3であり、
前記繊維層が音の入射側となるように配置される、積層吸音材。
【請求項2】
前記繊維層として、第一の繊維層と第二の繊維層とを含み、
前記第一の繊維層と前記第二の繊維層は、通気度が互いに同じであるか、前記第二の繊維層が前記第一の繊維層よりも通気度が低いものであり、
音の入射側から透過側に、前記第一の繊維層、前記多孔質層、前記第二の繊維層の順に配置される、請求項1に記載の積層吸音材。
【請求項3】
前記多孔質層として、第一の多孔質層と第二の多孔質層とを含み、
前記第一の多孔質層と前記第二の多孔質層は、通気度が互いに同じであるか、前記第二の多孔質層が前記第一の多孔質層より密度が高いものであり、
音の入射側から透過側に、前記第一の繊維層、前記第一の多孔質層、前記第二の繊維層、前記第二の多孔質層の順に配置される、請求項2に記載の積層吸音材。
【請求項4】
前記多孔質層が、ポリエチレンフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、及びガラス繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維、又は、2種以上が複合化された複合繊維からなる不織布又は織布からなる層である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層吸音材。
【請求項5】
前記繊維層が、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン6,6、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維を含む、請求項1〜4に記載のいずれか1項に記載の積層吸音材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層吸音材であって、500〜1000Hzの周波数における垂直入射吸音率測定法による吸音率が、当該積層吸音材に含まれる多孔質層1層のみである場合の吸音率と比較して、0.03以上向上する、積層吸音材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層吸音材であって、1600〜2500Hzの周波数における垂直入射吸音率測定法による吸音率が、当該積層吸音材に含まれる多孔質層1層のみである場合の吸音率と比較して、0.03以上向上する、積層吸音材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層吸音材であって、5000〜10000Hzの周波数における垂直入射吸音率測定法による吸音率が、当該積層吸音材に含まれる多孔質層1層のみである場合の吸音率と比較して、0.03以上向上する、積層吸音材。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-09-27 
出願番号 P2019-054647
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (G10K)
P 1 651・ 121- YAA (G10K)
P 1 651・ 536- YAA (G10K)
P 1 651・ 113- YAA (G10K)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 五十嵐 努
渡辺 努
登録日 2020-01-15 
登録番号 6646267
権利者 JNCファイバーズ株式会社 JNC株式会社
発明の名称 積層吸音材  
代理人 中村 和広  
代理人 特許業務法人みのり特許事務所  
代理人 為山 太郎  
代理人 青木 篤  
代理人 齋藤 都子  
代理人 特許業務法人みのり特許事務所  
代理人 特許業務法人みのり特許事務所  
代理人 三間 俊介  
代理人 三橋 真二  
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