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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1381286
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-22 
確定日 2022-01-21 
事件の表示 特願2015−256762「印刷システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月 6日出願公開,特開2017−119564〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件査定不服審判事件に係る出願(以下,「本件出願」という。)は,平成27年12月28日の出願であって,令和1年8月21日付けで拒絶理由が通知され,同年10月11日に手続補正書及び意見書が提出されたが,令和2年3月26日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされた。
本件査定不服審判事件は,「原査定を取り消す。本願は特許をすべきものである,との審決を求める。」との趣旨で,同年6月22日に請求されたものであって,本件審判の請求と同時に手続補正書が提出された。
なお,同年10月6日に上申書が提出されている。

第2 補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
令和2年6月22日提出の手続補正書による手続補正を却下する。

〔理由〕
1 令和2年6月22日に提出された手続補正書による補正の内容
(1)補正後の請求項1の記載
令和2年6月22日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は,令和1年10月11日に提出された手続補正書による補正後(以下「本件補正前」という。)の特許請求の範囲について補正するものであるところ,本件補正後の請求項1は,次のとおりである。(下線は補正箇所を表す。)

「複数の印刷装置と,前記各印刷装置間に配置され,前記印刷装置間で用紙を搬送する少なくとも1つの中間装置とを備え,用紙を前記各印刷装置に順次搬送しつつ印刷する印刷システムであって,
前記複数の印刷装置はそれぞれ,
用紙に印刷する印刷部と,
前記印刷部へ用紙を搬送するレジストローラと,
前記レジストローラへ用紙を搬送する少なくとも1つのレジ前ローラと,
前記レジ前ローラにより用紙を前記レジストローラに突き当て,その後,前記レジストローラを駆動させるとともに前記レジ前ローラで前記レジストローラをアシストして用紙を前記印刷部へ搬送するよう制御する制御部とを備え,
用紙搬送方向における最上流の前記印刷装置以外の前記印刷装置は,
前記レジストローラの上流側に配置され,用紙を検出する用紙検出部をさらに備え,
最上流の前記印刷装置以外の前記印刷装置の前記制御部は,前記用紙検出部で用紙が検出されたタイミングに基づき,前記レジ前ローラおよび前記レジストローラの動作を制御し,前記レジストローラを,最上流の前記印刷装置の前記印刷装置の前記レジストローラと搬送速度に関し同じ動作パターンで動作させ,
前記中間装置は,
下流側に隣接する前記印刷装置へ用紙を搬送する少なくとも1つの搬送ローラと,
前記搬送ローラを制御する中間装置制御部とを備え,
前記中間装置制御部は,
用紙サイズが所定サイズ以上である場合,前記搬送ローラが,用紙を前記レジストローラに突き当てる動作,および前記レジストローラによる用紙の搬送をアシストする動作を,用紙が前記搬送ローラを抜けるまで,下流側に隣接する前記印刷装置の前記レジ前ローラと同期して行うよう制御し,
用紙サイズが前記所定サイズ未満である場合,前記レジ前ローラが前記レジストローラに突き当てる動作,および前記レジストローラによる用紙の搬送をアシストする動作を行う間も,前記搬送ローラが,前記レジ前ローラの動作に同期せず,前記レジ前ローラおよび前記搬送ローラによる用紙の受入速度で駆動し続けるよう制御し,
前記所定サイズは,用紙が下流側に隣接する前記印刷装置の前記レジストローラに突き当てられたときに用紙の後端部が前記搬送ローラを抜けていないサイズであることを特徴とする印刷システム。」

(2)本件補正のうち請求項1に係る補正の内容
本件補正のうち請求項1に係る補正は,最上流の印刷装置以外の印刷装置の制御部に関する記載中に,「前記レジストローラを,最上流の前記印刷装置の前記印刷装置の前記レジストローラと搬送速度に関し同じ動作パターンで動作させ,」という記載を付加する補正である。

2 補正の目的について
本件補正のうち請求項1に係る補正は,最上流の印刷装置以外の印刷装置の制御部について,補正前には,レジストローラを,最上流の印刷装置のレジストローラと搬送速度に関し同じ動作パターンで動作させるもの,及び異なるパターンで動作させるもののいずれをも包含していたものを,同じ動作パターンで動作させるものに限定する補正である(なお,本件補正後の「最上流の前記印刷装置の前記印刷装置の前記レジストローラ」という記載は,「最上流の前記印刷装置の前記レジストローラ」の誤記と解しておく。)。
また,本件補正前後の請求項1に係る発明について,発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であると認められる。
したがって,本件補正のうち請求項1に係る補正は,特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

新規事項の追加について
レジストローラを,最上流の印刷装置のレジストローラと搬送速度に関し同じ動作パターンで動作させることは,本件出願の願書に最初に添付した明細書の【0098】の記載及び図3,図4に図示された事項から自明の事項であるから,当該事項により請求項1を減縮する補正は,当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって,本件補正のうち請求項1に係る補正は,特許法17条の2第3項の規定に適合する。

4 独立特許要件について
前記2で述べたとおり,本件補正は,特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから,本件補正後の請求項1に係る発明が,同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するのか否か(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否か)について判断する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)は,本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ,本件補正後の請求項1の記載は前記1(1)に示したとおりである。。

(2)明確性要件違反について
本件補正後の請求項1には,「前記レジストローラを,最上流の前記印刷装置の前記印刷装置の前記レジストローラと搬送速度に関し同じ動作パターンで動作させ,」なる発明特定事項が記載されているが,当該発明特定事項中の「最上流の前記印刷装置の前記印刷装置の前記レジストローラ」とは,印刷システム中のどの印刷装置のレジストローラのことを指しているのか,請求項1の記載からは明確に理解することができない。
したがって,本件補正発明は,明確でない。
よって,本件補正後の請求項1の記載は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないから,本件補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)進歩性欠如について
本欄においては,前記(2)で指摘した本件補正後の請求項1の「最上流の前記印刷装置の前記印刷装置の前記レジストローラ」なる記載は誤記であり,正しくは,「最上流の前記印刷装置の前記レジストローラ」であると解して,判断を行う。
ア 引用例
(ア)特開2012−108209号公報
a 特開2012−108209号公報の記載
原査定の拒絶の理由において「引用文献1」として引用された特開2012−108209号公報(以下,原査定と同様に「引用文献1」という。)は,本件出願の出願前である平成24年6月7日に頒布された刊行物であるところ,当該引用文献1には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)
(a) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,複数台の画像形成装置を直列に接続して両面印刷等を行うタンデム式の画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,複数台の画像形成装置を直列に接続して両面印刷等を行うタンデム式の画像形成システムが実用化されている。例えば,2台の画像形成装置を接続したタンデム式の画像形成システムでは,前段の画像形成装置で用紙の表面に画像を形成し,前段と後段の画像形成装置間に設けられた中間搬送装置により用紙を表裏反転し,後段の画像形成装置により用紙の裏面に画像を形成している。なお,中間搬送装置を用いずに前段の画像形成装置により表裏反転させて後段の画像形成装置に搬送することもできる。このような画像形成システムによれば,1台の画像形成装置で両面印刷を行う場合と比べて,スイッチバック搬送時のタイムロスを解消できるので,印刷スピードの向上を図ることができるようになる。
【0004】
上記タンデム式の画像形成システムの各画像形成装置では,用紙に画像を転写する前に,画像転写位置の上流側に設けられたレジストローラにより用紙の曲がり補正(斜行や片寄り)補正を行っている。用紙の曲がり補正では,レジストローラに搬送される用紙をレジストセンサにより検出し,この検出に基づく信号をCPUを介して用紙搬送用の各モータに供給して各モータを減速,一時停止,再起動させて用紙にループ等を形成することで用紙の曲がり補正を実行している。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,上記特許文献1および2等に開示される画像形成システムでは以下のような問題がある。後段の画像形成装置のレジスト補正において,例えば用紙サイズが大きい用紙を用いる場合には,用紙が前段の画像形成装置と後段の画像形成装置とに跨った状態となってしまう。そのため,用紙の曲がり補正を行う際には,後段側の各モータの用紙搬送制御に加えて,前段側の各モータの用紙搬送制御も必要となってくる。
【0007】
従来では,後段側のレジストセンサにより用紙が検出されると,この検出に基づく検出信号が後段側のCPUに供給され,検出信号を受けた後段側のCPUは,後段側の各モータに駆動用の信号を供給すると共に,前段側のCPUと通信を行って前段側のCPUにレジストセンサが検出された旨の信号を送信している。そのため,前段側の各モータには,後段側の各モータよりも若干遅れたタイミングで,モータ駆動用の信号が供給されることになり,用紙搬送制御の際には,後段側の各モータが最初に駆動し,後段側の各モータの駆動に遅れて前段側の各モータが駆動することになる。これにより,前段側の各モータと後段側の各モータとの間の動作タイミング差により用紙の引っ張り合いが生じ,その結果,用紙の給紙不良が発生してしまうという問題がある。
【0008】
そこで,本発明は,上記課題に鑑みてなされたものであり,複数台の画像形成装置が直列に接続されたタンデム式の画像形成システムにおいて,後段の画像形成装置で用紙の曲がり補正を行う場合に,用紙の給紙不良を防止することが可能な画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために,本発明に係る画像形成システムは,用紙に第1の画像を形成する第1の画像形成装置と用紙に第2の画像を形成する第2の画像形成装置とを備え,第1の画像形成装置と第2の画像形成装置とが直列に接続された画像形成システムであって,第1の画像形成装置は,用紙を第2の画像形成装置に給紙する第1の搬送部と,第1の搬送部を駆動する第1の駆動部と,第1の駆動部を制御する第1の制御部とを備え,第2の画像形成装置は,第1の画像形成装置から給紙される用紙を搬送する第2の搬送部と,第2の搬送部により搬送される用紙の斜行補正を行うレジストローラと,第2の搬送部からレジストローラに向けて搬送される用紙を検出して検出信号を出力するレジストセンサ部と,第2の搬送部およびレジストローラを駆動する第2の駆動部と,第2の駆動部を制御する第2の制御部とを備え,第1の制御部および第2の制御部は,レジストローラによる斜行補正を行う際に用紙が第1の画像形成装置と第2の画像形成装置とに跨る場合,レジストセンサ部から入力される検出信号に基づいて,第1の駆動部および第2の駆動部の減速,停止,再起動の少なくとも1以上のタイミングを同期させるよう制御するものである。
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,第2の画像形成装置において用紙の斜行や片寄り等の補正を行う場合に,第1の画像形成装置または搬送装置と第2の画像形成装置との間に用紙が跨ったとしても,第2の画像形成装置側のレジストセンサ部により検出された用紙の検出信号が第1の制御部と第2の制御部とに同時に供給されるため,この共通した検出信号をトリガーとして第1の駆動部と第2の駆動部とを同じタイミングで(同期して)動作させることができる。その結果,第1の駆動部と第2の駆動部との駆動時の動作タイミング差による用紙の引っ張り合いを防止でき,給紙不良を回避することができる。」

(b) 「【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成システムの構成例を示す図である。
【図2】前段の画像形成装置の排紙側と後段の画像形成装置の搬入側を示す図である。
・・・(中略)・・・
【図4】画像形成システムの駆動制御例を示すタイミングチャートである。
・・・(中略)・・・
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る画像形成システムの構成例を示す図である。
【図10】中間搬送装置の排紙側と後段の画像形成装置の搬入側を示す図である。」

(c) 「【発明を実施するための形態】
【0018】
以下,発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明する。
<1.第1の実施の形態>
[画像形成システムの構成例]
図1は,本発明に係る画像形成システム500Aの構成の一例を示している。図2は,前段の画像形成装置100Aの排出部側と後段の画像形成装置200Aの搬入部側の構成の一例を示している。図1および図2に示すように,画像形成システム500Aは,前段に配置された画像形成装置100Aと後段(下流側)に配置された画像形成装置200Aとを備えている。前段の画像形成装置100Aと後段の画像形成装置200Aとは,同一の構成および機能を有する画像形成装置であって,互いに直列(タンデム)に接続されている。
【0019】
前段の画像形成装置100Aは,第1の画像形成装置の一例であり,用紙Pの表面に所定の画像(第1の画像)を形成して定着処理を施した後に排紙する。本例では,画像形成装置100A内に設けられたスイッチバック経路Tで用紙Pの表裏を反転させて後段の画像形成装置200Aに搬送する。後段の画像形成装置200Aは,第2の画像形成装置の一例であり,用紙Pの裏面に所定の画像(第2の画像)を形成して排出部から外部に排出する。このように,2台の画像形成装置100A,200Aをタンデム構成として両面印刷を行うことにより,印刷の高速化を図ることができるようになっている。
【0020】
(前段の画像形成装置の構成例)
前段の画像形成装置100Aは,図1に示すように,自動原稿搬送装置106と図示しない画像読取部と画像形成部110と定着部120と給紙部130と反転排紙モータ140と反転排紙センサ142と排紙モータ144と排紙センサ146とを備えている。
・・・(中略)・・・
【0022】
画像形成部110は,感光体ドラム112と現像ユニット114とを有している。・・・(中略)・・・
【0023】
給紙部130は,複数の給紙トレイから構成されている。各給紙トレイには,A4サイズ,B5サイズ等の用紙Pが収容され,ユーザによって選択された用紙Pが搬送ローラにより画像形成部110に搬送される。給紙部130から搬送された用紙Pは,レジストローラによってトナー像との同期がとられ,転写部において用紙Pの表面にトナー像(画像)が転写され,下流側に設けられた定着部120に搬送される。
【0024】
定着部120は,加熱ローラと加圧ローラとから構成されている。加熱ローラには,図示しない熱源が内蔵されており,加熱ローラを一定の温度に制御する。定着部120は,用紙Pの表面に転写されたトナー像を加熱・加圧することで,トナー画像を溶融して用紙Pにトナー像を定着させる。定着部120により定着処理が施された用紙Pは,排紙ローラ180によって隣接する後段の画像形成装置200Aに搬送される。
・・・(中略)・・・
【0029】
(後段の画像形成装置の構成例)
後段の画像形成装置200Aは,図1に示すように,自動原稿搬送装置206と図示しない画像読取部と画像形成部210と定着部220と給紙部230と給紙センサ254と給紙モータ252とレジストセンサ262とレジストモータ256とを備えている。
・・・(中略)・・・
【0031】
画像形成部210は,感光体ドラム212と現像ユニット214とを有している。・・・(中略)・・・
【0032】
給紙部230は,複数の給紙トレイから構成されている。各給紙トレイには,A4サイズ,B5サイズ等の用紙Pが収容され,ユーザによって選択された用紙Pが搬送ローラにより画像形成部210に搬送される。給紙部230から搬送された用紙Pは,レジストローラによってトナー像との同期がとられ,転写部において用紙Pの表面にトナー像(画像)が転写され,下流側に設けられた定着部220に搬送される。なお,タンデム接続では,前段の画像形成装置100Aの給紙部130等から用紙Pが給紙されることが前提となる。
【0033】
定着部220は,加熱ローラと加圧ローラとから構成されている。加熱ローラには,図示しない熱源が内蔵されており,加熱ローラを一定の温度に制御する。定着部220は,用紙Pの表面に転写されたトナー像を加熱・加圧することで,トナー画像を溶融して用紙Pにトナー像を定着させる。定着部220により定着処理が施された用紙Pは,排出ローラ280により図示しない排紙トレイに排紙される。
【0034】
給紙センサ254は,例えば光センサから構成され,用紙Pの搬入口近傍に設けられている。給紙センサ254は,給紙部230から給紙される用紙Pを検出したり,前段の画像形成装置100Aから給紙される用紙Pを検出する。給紙センサ254は,第2のセンサ部の一例を構成している。
【0035】
給紙モータ252は,例えばステッピングモータから構成され,給紙ローラ234に接続されている。給紙モータ252は,給紙部230から給紙される用紙Pや前段の画像形成装置100Aから給紙される用紙Pを下流側のレジストローラ290に給紙ローラ232を介して搬送する。給紙モータ252は,第2の駆動部の一例を構成している。
・・・(中略)・・・
【0037】
レジストローラ290は,一対のローラから構成されており,一方のローラがレジストモータ256に接続され,レジストモータ256の駆動により回転する。レジストローラ290は,先端が突き当てられる用紙Pを一端停止させることで用紙Pの斜行を補正し,感光体ドラム212上のトナー像と画像位置が一致するタイミングで用紙Pを転写位置に給紙する。
【0038】
レジストセンサ262は,例えば光センサから構成され,レジストローラ290の上流側近傍に設けられている。レジストセンサ262は,レジストローラ290に搬送される用紙Pを検出する。
・・・(中略)・・・
【0040】
(前段の画像形成装置の構成例)
前段の画像形成装置100Aには,表面制御基板102が実装されている。表面制御基板102は,画像形成装置100Aの全体の動作を制御するCPU(CentralProcessingUnit)104を有している。CPU104には,反転排紙モータ140,反転排紙センサ142,排紙モータ144,排紙センサ146および後段のレジストセンサ262のそれぞれが電気的に接続されている。
・・・(中略)・・・
【0044】
(後段の画像形成装置の構成例)
後段の画像形成装置200Aには,表面制御基板202が実装されている。表面制御基板202は,画像形成装置200Aの全体の動作を制御するCPU204を有している。CPU204には,給紙モータ252,レジストモータ256および給紙センサ254のそれぞれが電気的に接続されている。
・・・(中略)・・・
【0049】
[画像形成システムのモータ駆動制御例]
図4は,本発明の第1の実施の形態に係る画像形成システム500Aの各モータ駆動の制御例を示すタイミングチャートである。前段の画像形成装置100Aにおいて給紙部130から給紙された用紙Pは,用紙Pの表面に画像が形成され,スイッチバック経路Tで表裏反転された後に,後段の画像形成装置200Aに給紙される。後段の画像形成装置200Aに給紙された用紙Pは,給紙ローラ234を経由してレジストローラ290に搬送される。このとき,図2に示したように,用紙Pは前段の画像形成装置100Aと後段の画像形成装置200Aとの間に跨った状態となり,前段側ではスイッチバック経路Tに用紙Pの後段側が残っているものとする。
【0050】
レジストローラ290に用紙Pが搬送される時刻をt1とすると,図4のMで示すように,時刻t1でレジストセンサ262により用紙Pが検出される(図4A〜図4D)。レジストセンサ262により用紙Pが検出されると,この検出に基づく検出信号Srが前段のCPU104および後段のCPU204のそれぞれに入力される。前段のCPU104および後段のCPU204は,レジストセンサ262からほぼ同時に供給される検出信号Srをトリガーとして,後述する各モータの駆動制御を実行する。
【0051】
時刻t2で,前段のCPU104は,レジストセンサ262からの検出信号Srに基づいて前段の反転排紙モータ140および排紙モータ144の駆動の停止制御を開始して減速させ,時刻t3で反転排紙モータ140および排紙モータ144の駆動を停止させる(図4A,図4B)。また,時刻t2で,後段のCPU204は,レジストセンサ262からの検出信号Srに基づいて給紙モータ252の駆動の停止制御を開始して減速させ,時刻t3で給紙モータ252の駆動を停止させる(図4C)。このモータの停止制御開始時刻t2から時刻t4の間において,用紙Pの先端がレジストローラ290に突き当てられてループが形成され,用紙Pの斜行補正が行われる。なお,レジストモータ256は,用紙Pの斜行補正が終了するまで停止した状態とされる(図4D)。
【0052】
このように,本例では,レジストセンサ262により用紙Pが検出されると,検出信号Srが前段のCPU104および後段のCPU204に同時に入力されるので,前段側の反転排紙モータ140および排紙モータ144と,後段側の給紙モータ252およびレジストモータ256とを同じタイミングで減速させたり,停止できる。これにより,ループを正確,かつ,確実に形成して斜行補正を行うことができる。
・・・(中略)・・・
【0055】
時刻t4から時刻t5で,前段のCPU104は,反転排紙モータ140および排紙モータ144の線速を加速して線速V1に設定する(図4A,図4B)。同様に,後段のCPU204は,給紙モータ252およびレジストモータ256の線速を加速させて線速V1に設定する(図4C,図4D)。線速V1は,画像形成を良好に行うために,レジストローラ290への給紙時や前段の画像形成装置100Aからの排紙時の線速V2よりも遅い線速に設定される。
・・・(中略)・・・
【0060】
[画像形成システムの動作例]
・・・(中略)・・・
【0061】
また,後段のCPU204は,前段の画像形成装置100Aで給紙される用紙Pのサイズに基づいて,後段での用紙Pの斜行補正時に前段の画像形成装置100Aと後段の画像形成装置200Aとの間に用紙Pの跨りが発生するか否かを判断する。そして,用紙Pの跨りが発生すると判断した場合には,用紙Pの引っ張り合いが発生しないように前段および後段の各モータの駆動制御を実行する。例えば,用紙Pが前段と後段とに跨らないようなサイズ(A4,B5サイズ)の場合には,用紙Pが前段と後段に跨らないと判断して前段および後段の各モータの同期駆動制御を実行しない。これに対し,用紙Pが前段と後段とに跨ってしまうようなサイズ(A3サイズ等)の場合には,用紙Pが前段と後段とに跨ると判断して前段および後段の各モータの同期駆動制御を実行する。
・・・(中略)・・・
【0088】
以上説明したように,第1の実施の形態によれば,後段の画像形成装置200Aにおいて用紙Pの斜行補正を行う際に,前段の画像形成装置100Aと後段の画像形成装置200Aとに用紙Pが跨ってしまうような場合でも,後段のレジストセンサ262により検出された用紙Pの検出信号Srを前段のCPU104と後段のCPU204とに同時に供給するため,この検出信号Srをトリガーとして前段側の各モータと後段側の各モータとの駆動タイミングを同期させることができる。これにより,前段の各モータと後段の各モータとの動作タイミング差により発生する用紙Pの引っ張り合いを防止でき,その結果,給紙不良を回避することができる。」

(d) 「【0112】
<3.第3の実施の形態>
第3の実施の形態では,前段の画像形成装置100Cと後段の画像形成装置200Cとの間に中間搬送装置300Cを配置した場合における斜行補正時の各モータの駆動制御について説明する。なお,前段の画像形成装置100Cおよび後段の画像形成装置200Cの構成は,上記第1の実施の形態の前段の画像形成装置100Aおよび後段の画像形成装置200Aと同様であるため,共通の構成要素には同一の符号を付し,詳細な説明は省略する。
【0113】
[画像形成システムの構成例]
図9および図10は,本発明の第3の実施の形態に係る画像形成システム500Cの構成の一例を示している。図9および図10に示すように,画像形成システム500Cは,前段の画像形成装置100Cと中間搬送装置300Cと後段の画像形成装置200Cとを備えている。前段の画像形成装置100Cと後段の画像形成装置200Cとは,同一の構成および機能を有する画像形成装置であって,中間搬送装置300Cを介して直列に接続されている。
【0114】
前段の画像形成装置100Cは,用紙Pの表面に所定の画像を形成して定着処理を施した後に中間搬送装置300Cに搬送する。中間搬送装置300Cは,スイッチバック機構部を備えており,前段の画像形成装置100Cから搬送された用紙Pの表裏を反転させて後段の画像形成装置200Cに搬送する。後段の画像形成装置200Cは,用紙Pの裏面に所定の画像を形成して排出部から外部に排出する。
【0115】
(中間搬送装置の構成例)
中間搬送装置300Cは,搬送装置の一例であり,前段の画像形成装置100Cの下流側であって,前段の画像形成装置100Cと後段の画像形成装置200Cとの間に配置されている。中間搬送装置300Cは,用紙搬入部310と積載部320と用紙搬出部312とバイパス搬送部314と反転排紙モータ340と反転排紙センサ342と中間排紙モータ344と中間排紙センサ346とを備えている。
【0116】
用紙搬入部310は,搬送ローラとガイド板とを有し,前段の画像形成装置100Cの排紙ローラ180によって排出された用紙Pを中間搬送装置300Cに順次搬入して積載部320に搬送する。
【0117】
積載部320は,鉛直方向に平行配置された2枚のガイド板と停止部材と縦横整合部材と搬入駆動ローラと搬出駆動ローラとを有し,用紙搬入部310から搬入された用紙Pの表裏を反転(スイッチバック)させて上方の用紙搬出部312に搬送する。また,積載部320は,用紙搬入部310から搬入された複数枚の用紙Pを重ね合わせて整合した後に,用紙Pを表裏反転させて上方の用紙搬出部312に搬出する。
・・・(中略)・・・
【0122】
中間排紙モータ344は,例えばステッピングモータから構成され,中間排紙ローラ380の近傍に設けられている。中間排紙モータ344は,中間排紙ローラ380を回転駆動させて積載部320で表裏が反転された用紙Pを後段の画像形成装置200Cに搬送する。中間排紙モータ344は,第1の駆動部の一例を構成している。
【0123】
中間排紙センサ346は,例えば光センサにより構成され,中間排紙ローラ380の下流側近傍に設けられている。中間排紙センサ346は,中間排紙ローラ380によって中間搬送装置300Cから排出される用紙Pを検出する。中間排紙センサ346は,第1のセンサ部の一例を構成している。
【0124】
[画像形成システムのブロック構成例]
・・・(中略)・・・
【0125】
中間搬送装置300Cには,表面制御基板302が実装されている。表面制御基板302は,中間搬送装置300Cの全体の動作を制御するCPU304を有している。CPU304には,反転排紙モータ340,反転排紙センサ342,中間排紙モータ344および中間排紙センサ346のそれぞれが電気的に接続されている。CPU104は,第1の制御部の一例であり,レジストセンサ262から入力される検出信号Srに基づいて反転排紙モータ340および中間排紙モータ344の駆動制御を行う。
・・・(中略)・・・
【0130】
[画像形成システムの動作例]
本発明の第3の実施の形態に係る画像形成システム500Cの動作は,上記第1の実施の形態に係る画像形成システム500Aの動作と同様であるため,図9〜図11を参照しながら簡単に説明する。
【0131】
前段の画像形成装置100Cにおいて給紙部130から給紙された用紙Pは,用紙Pの表面に画像が形成され,中間搬送装置300Cに搬送される。中間搬送装置300Cに搬送された用紙Pは,積載部330で表裏反転され,後段の画像形成装置200Cに給紙される。後段の画像形成装置200Cに給紙された用紙Pは,給紙ローラ232,234によりレジストローラ290に搬送される。
【0132】
レジストローラ290に用紙Pが搬送されると,レジストセンサ262により用紙Pが検出され,この検出に基づく検出信号Srが中間搬送装置300CのCPU304および後段のCPU204のそれぞれに入力される。中間搬送装置300CのCPU304および後段のCPU204は,レジストセンサ262からほぼ同時に供給される検出信号Srをトリガーとして,後述する各モータの駆動制御を実行する。
【0133】
中間搬送装置300CのCPU304は,レジストセンサ262からの検出信号Srに基づいて中間搬送装置300C側の反転排紙モータ340および中間排紙モータ344の駆動の停止制御を開始し,反転排紙モータ340および中間排紙モータ344を減速した後に停止させる。また,中間搬送装置300C側の各モータの停止制御に同期して,後段のCPU204は,レジストセンサ262からの検出信号Srに基づいて後段の給紙モータ252の駆動の停止制御を開始し,給紙モータ252を減速した後に停止させる。これにより,用紙Pの先端がレジストローラ290に突き当てられてループが形成され,用紙Pの斜行補正が行われる。
【0134】
各モータの停止から一定時間が経過したら,中間搬送装置300CのCPU304は,中間搬送装置300C側の反転排紙モータ340および中間排紙モータ344の駆動を再開させる。そして,反転排紙モータ340および中間排紙モータ344を加速させて線速を線速V1に設定する。また,この各モータの再起動と同じタイミングで,後段のCPU204は,後段の給紙モータ252およびレジストモータ256の駆動を再開させる。そして,後段のCPU204は,給紙モータ252およびレジストモータ256を加速させて線速を線速V1に設定する。
【0135】
用紙Pの搬送が再開されると,用紙Pが積載部330から排出されるので,反転排紙センサ342の出力がオフとなる。中間搬送装置300CのCPU304は,反転排紙センサ342の出力がオフになると,反転排紙モータ340の駆動を加速させて線速を排紙時の線速V2とする。
【0136】
用紙Pの搬送により用紙Pがさらに下流側に移動いていくと,中間排紙センサ346がオフとなる。中間搬送装置300CのCPU304は,中間排紙センサ346の出力がオフになると,中間排紙モータ344の駆動を加速させて線速を排紙時の線速V2とする。
【0137】
続けて,用紙Pが跨った状態から用紙Pの後端が後段の画像形成装置200Cの搬入口まで移動していくと,後段の画像形成装置200Cの給紙センサ254の出力がオフとなる。後段のCPU204は,給紙センサ254がオフになると,給紙モータ252の駆動を加速させて線速を給紙時の線速V2とする。
【0138】
用紙Pがさらに下流側に移動していき,用紙Pがレジストローラ290を通過すると,レジストセンサ262がオフとなる。後段のCPU204は,レジストセンサ262がオフになると,レジストモータ256の駆動の停止制御を行い,レジストモータ256の駆動を停止させる。
【0139】
以上説明したように,第3の実施の形態によれば,後段の画像形成装置200Aにおいて用紙Pの斜行補正を行う際に,中間搬送装置300Cと後段の画像形成装置200Aとの間に用紙Pが跨ってしまうような場合でも,後段のレジストセンサ262により検出された用紙Pの検出信号Srを中間搬送装置300CのCPU104と後段のCPU204とに同時に供給するため,この検出信号Srをトリガーとして中間搬送装置300Cの各モータと後段の各モータとの駆動タイミングを同期させることができる。これにより,中間搬送装置300Cの各モータと後段の各モータとの動作タイミング差により発生する用紙Pの引っ張り合いを防止でき,その結果,給紙不良を回避することができる。」

(e) 「【図1】

【図2】

・・・(中略)・・・
【図4】

・・・(中略)・・・
【図9】

【図10】



b 引用文献1に記載された発明
前記a(a)ないし(e)で摘記した引用文献1の記載から,第3の実施の形態に係る画像形成システム500Cについての発明を把握することができるところ,前記a(d)の【0112】の記載から,第3の実施の形態に係る画像形成システム500Cの前段の画像形成装置100C及び後段の画像形成装置200Cの構成が,前記a(c)に記載された第1の実施の形態に係る画像システム100Aの前段の画像形成装置100A及び後段の画像形成装置200Aと同様であることが理解されるから,第3の実施の形態に係る画像形成システム500Cにおいて,前段の画像形成装置100Cは,感光ドラム112を有する画像形成部110と,定着部120と,給紙部130と,搬送ローラと,前段レジストローラ(後段の画像形成装置200Cが備えるレジストローラ290と明確に区別できるようにするために,前段の画像形成装置100Cが備えるレジストローラを「前段レジストローラ」と表現した。)とを備えるとともに,画像形成装置100Cの全体の動作を制御するCPU104を有しており(【0020】,【0022】,【0023】,【0040】),ユーザによって選択された用紙Pを,給紙部130から搬送ローラにより画像形成部110に搬送し,前段レジストローラによってトナー像との同期をとり,画像形成部110の転写部において用紙Pの表面にトナー像を転写し,下流側に設けられた前記定着部120に搬送し,前記定着部120が,用紙Pにトナー像を定着させ,排紙ローラ180によって前記中間搬送装置300Cに搬送するよう構成されており(【0023】,【0024】,【0114】),後段の画像形成装置200Cは,感光体ドラム212を有する画像形成部210と,定着部220と,給紙部230と,給紙ローラ234と,給紙される用紙Pを下流側のレジストローラ290に搬送する給紙ローラ232と,用紙Pの搬入口近傍に設けられて給紙される用紙Pを検出する給紙センサ254と,レジストローラ290と,レジストローラ290の上流側近傍に設けられて前記ストローラ290に搬送される用紙Pを検出するレジストセンサ262とを備えるとともに,画像形成装置200Cの全体の動作を制御するCPU204を有しており(【0029】,【0031】,【0035】,【0037】,【0038】,【0044】),中間搬送装置300Cから給紙された用紙Pを給紙ローラ234,232によりレジストローラ290に搬送し,レジストローラ290により,先端が突き当てられる用紙Pを一端停止させることで用紙Pの斜行を補正し,感光体ドラム212上のトナー像と画像位置が一致するタイミングで用紙Pを転写位置に給紙し,前記画像形成部210の転写部において用紙Pの表面にトナー像を転写し,下流側に設けられた前記定着部220に搬送し,前記定着部220により,用紙Pにトナー像を定着させ,前記排紙ローラ280によって排紙トレイに排紙するよう構成されている(【0032】,【0033】,【0037】,【0131】)と認められる。
また,引用文献1の【0055】の「線速V1は,・・・レジストローラ290への給紙時・・・の線速V2よりも遅い」という記載や,画像形成システムの駆動制御例を示すタイミングチャートを示す図4に,時刻t1から時刻t2までの期間における排紙モータ及び給紙モータの線速がv2であることが図示されていることに照らせば,第1の実施の形態では,後段の画像形成装置200Aへ用紙Pを搬送する排紙ローラ180及びレジストローラ290へ用紙を搬送する給紙ローラ232は,レジストローラ290へ用紙を給紙する際には,線速V1よりも早い線速V2で駆動されるものと理解されるところ,技術的にみて,第3の実施の形態における中間排紙ローラ380及び給紙ローラ232も,第1の実施の形態と同様に,レジストローラ290へ用紙を給紙する際には,線速V1よりも早い線速V2で駆動されるものと認められる。
以上によれば,前記a(a)ないし(e)で摘記した引用文献1の記載から把握される画像形成システム500Cについての発明は,次のとおりのものと認められる。

「前段の画像形成装置100Cと中間搬送装置300Cと後段の画像形成装置200Cとを備えたタンデム式の画像形成システム500Cであって,
前記前段の画像形成装置100Cと前記後段の画像形成装置200Cとは,同一の構成および機能を有する画像形成装置であり,
前記前段の画像形成装置100Cは,感光ドラム112を有する画像形成部110と,定着部120と,給紙部130と,搬送ローラと,前段レジストローラとを備えるとともに,前記画像形成装置100Cの全体の動作を制御するCPU104を有し,ユーザによって選択された用紙Pを,前記給紙部130から前記搬送ローラにより前記画像形成部110に搬送し,前記前段レジストローラによってトナー像との同期をとり,前記画像形成部110の転写部において用紙Pの表面にトナー像を転写し,下流側に設けられた前記定着部120に搬送し,前記定着部120が,用紙Pの表面にトナー像を定着させ,排紙ローラ180によって前記中間搬送装置300Cに搬送するよう構成されており,
前記中間搬送装置300Cは,用紙搬入部310と,積載部320と,用紙搬出部312と,中間排紙ローラ380と,前記中間排紙ローラ380の下流側近傍に設けられて前記中間排紙ローラ380によって前記中間搬送装置300Cから排出される用紙Pを検出する中間排紙センサ346とを備えるとともに,前記中間搬送装置300Cの全体の動作を制御するCPU304を有し,前記用紙搬入部310により,前記前段の画像形成装置100Cの前記排紙ローラ180によって排出された用紙Pを前記中間搬送装置300Cに順次搬入して前記積載部320に搬送し,前記積載部320により,前記用紙搬入部310から搬入された用紙Pの表裏を反転させて上方の前記用紙搬出部312に搬送し,中間排紙ローラ380により,前記積載部320で表裏が反転された用紙Pを前記後段の画像形成装置200Cに搬送するよう構成されており,
前記後段の画像形成装置200Cは,感光体ドラム212を有する画像形成部210と,定着部220と,給紙部230と,給紙ローラ232と,用紙Pの搬入口近傍に設けられて給紙される用紙Pを検出する給紙センサ254と,レジストローラ290と,前記レジストローラ290の上流側近傍に設けられて前記レジストローラ290に搬送される用紙Pを検出するレジストセンサ262とを備えるとともに,前記後段の画像形成装置200Cの全体の動作を制御するCPU204を有し,前記中間搬送装置300Cから給紙された用紙Pを前記給紙ローラ232により前記レジストローラ290に搬送し,前記レジストローラ290により,先端が突き当てられる用紙Pを一端停止させることで用紙Pの斜行を補正し,感光体ドラム212上のトナー像と画像位置が一致するタイミングで用紙Pを転写位置に給紙し,前記画像形成部210の転写部において用紙Pの裏面にトナー像を転写し,下流側に設けられた前記定着部220に搬送し,前記定着部220により,用紙Pにトナー像を定着させ,前記排紙ローラ280によって排紙トレイに排紙するよう構成されており,
前記後段の画像形成装置200Cにおける用紙Pの斜行の補正及び画像形成部210への用紙Pの搬送を行う際には,前記中間搬送装置300Cから前記後段の画像形成装置200Cに給紙された用紙Pが,前記給紙ローラ232により線速V2で搬送され,前記レジストセンサ262により検出されると,この検出に基づく検出信号Srが前記CPU304および前記CPU204のそれぞれに入力され,前記CPU304が,前記レジストセンサ262からの検出信号Srに基づいて前記中間排紙ローラ380を線速V2で駆動する中間排紙モータ344を減速した後に停止させ,また,このモータの停止制御に同期して,前記CPU204が,前記レジストセンサ262からの検出信号Srに基づいて前記給紙ローラ232を線速V2で駆動する給紙モータ252を減速した後に停止させ,これにより,用紙Pの先端を前記レジストローラ290に突き当ててループを形成し,用紙Pの斜行補正を行い,各モータの停止から一定時間が経過したら,前記CPU304が,前記中間排紙モータ344を加速させて線速を線速V2よりも遅い線速V1に設定し,このモータの再起動と同じタイミングで,前記CPU204は,前記給紙モータ252および前記レジストローラ290を駆動するレジストモータ256を加速させて線速を線速V1に設定し,前記中間排紙センサ346の出力がオフになると,前記CPU304は,前記中間排紙モータ344の駆動を加速させて線速V2とし,前記給紙センサ254がオフになると,前記CPU204は,前記給紙モータ252の駆動を加速させて線速V2とし,前記レジストセンサ262がオフになると,前記CPU204は,前記レジストモータ256の駆動を停止させるよう動作する,
画像形成システム500C。」(以下,「引用発明」という。)

イ 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア) 引用発明の「前段の画像形成装置100C,後段の画像形成装置200C」,「中間搬送装置300C」,「画像形成システム500C」,「画像形成部110,210」,「前段レジストローラ,レジストローラ290」,「搬送ローラ,給紙ローラ232」,「CPU104,204」,「画像形成装置100C」,「画像形成装置200C」,「レジストセンサ262」,「中間排紙ローラ380」及び「CPU304」は,技術的にみて,本件補正発明の「印刷装置」,「中間装置」,「印刷システム」,「印刷部」,「レジストローラ」,「レジ前ローラ」,「制御部」,「最上流の印刷装置」,「最上流の印刷装置以外の印刷装置」,「用紙検出部」,「搬送ローラ」及び「中間装置制御部」にそれぞれ対応する。

(イ) 引用発明の「画像形成システム500C」(本件補正発明の「印刷システム」に対応する。以下,「イ 対比」欄において,引用発明の構成を囲むカギ括弧に続く丸括弧内の文言は,当該引用発明の構成に対応する本件補正発明の発明特定事項を表す。)は,用紙Pの表面にトナー像を形成して「中間搬送装置300C」(中間装置)に搬送する「前段の画像形成装置100C」(印刷装置)と,前段の画像形成装置100Cの前記排紙ローラ180によって排出された用紙Pの表裏を反転させて後段の画像形成装置200Cに搬送する「中間搬送装置300C」(中間装置)と,中間搬送装置300Cから給紙された用紙Pの裏面に所定の画像を形成して排出部から外部に排出する「後段の画像形成装置200C」(印刷装置)とを備えているから,2つの「画像形成装置」(印刷装置)と,前記各「画像形成装置」(印刷装置)間に配置され,前記「画像形成装置」(印刷装置)間で用紙を搬送する「中間搬送装置」(中間装置)とを備え,用紙Pを前記各「画像形成装置」(印刷装置)に順次搬送しつつ印刷する「画像形成システム」(印刷システム)であるといえる。
したがって,引用発明は,本件補正発明の「複数の印刷装置と,前記各印刷装置間に配置され,前記印刷装置間で用紙を搬送する少なくとも1つの中間装置とを備え,用紙を前記各印刷装置に順次搬送しつつ印刷する印刷システムであって,」なる発明特定事項に相当する構成を具備している。

(ウ) 引用発明の「前段の画像形成装置100C」(最上流の印刷装置)及び「後段の画像形成装置200C」(最上流の印刷装置以外の印刷装置)は,それぞれ,「画像形成部110」(印刷部)及び「画像形成部210」(印刷部)と,「画像形成部110」(印刷部)及び「画像形成部210」(印刷部)へ用紙Pを搬送する「前段レジストローラ」(レジストローラ)及び「レジストローラ290」(レジストローラ)と,「前段レジストローラ」(レジストローラ)及び「レジストローラ290」(レジストローラ)へ用紙Pを搬送する「搬送ローラ」(レジ前ローラ)及び「給紙ローラ232」(レジ前ローラ)と,「画像形成装置100C」(最上流の印刷装置)の全体の動作を制御する「CPU104」(制御部)及び「画像形成装置200C」(最上流の印刷装置以外の印刷装置)の全体の動作を制御する「CPU204」(制御部)を有している。
また,引用発明の「後段の画像形成装置200C」(最上流の印刷装置以外の印刷装置)の「CPU204」(制御部)は,「給紙ローラ232」(レジ前ローラ)により搬送されている用紙Pのレジストセンサ262による検出信号Srに基づいて「給紙ローラ232」(レジ前ローラ)を駆動する給紙モータ252を減速した後に停止させ,これにより,用紙Pの先端を「レジストローラ290」(レジストローラ)に突き当ててループを形成し,用紙Pの斜行補正を行い,モータの停止から一定時間が経過したら,「給紙ローラ232」(レジ前ローラ)を駆動する給紙モータ252および「レジストローラ290」(レジストローラ)を駆動するレジストモータ256を加速させて線速を線速V1に設定する制御を行っているから,「CPU204」(制御部)は,「給紙ローラ232」(レジ前ローラ)により用紙Pを「レジストローラ290」(レジストローラ)に突き当て,その後,「レジストローラ290」(レジストローラ)を駆動させるとともに「給紙ローラ232」(レジ前ローラ)で「レジストローラ290」(レジストローラ)をアシストして用紙Pを「画像形成部210」(印刷部)へ搬送するよう制御するものといえる。
そして,引用発明の「前段の画像形成装置100C」(最上流の印刷装置)と「後段の画像形成装置200C」(最上流の印刷装置以外の印刷装置)とは,同一の構成及び機能を有する画像形成装置であるから,「前段の画像形成装置100C」(最上流の印刷装置)の「CPU104」(制御部)は,「後段の画像形成装置200C」(最上流の印刷装置以外の印刷装置)の「CPU204」(制御部)と同様に,少なくとも前段レジストローラの直前の「搬送ローラ」(レジ前ローラ)により用紙Pを「前段レジストローラ」(レジストローラ)に突き当て,その後,「前段レジストローラ」(レジストローラ)を駆動させるとともに少なくとも前段レジストローラの直前の「搬送ローラ」(レジ前ローラ)で「前段レジストローラ」(レジストローラ)をアシストして用紙Pを「画像形成部110」(印刷部)へ搬送するよう制御するものと解するのが相当である。
以上によれば,引用発明は,本件補正発明の「前記複数の印刷装置はそれぞれ,用紙に印刷する印刷部と,前記印刷部へ用紙を搬送するレジストローラと,前記レジストローラへ用紙を搬送する少なくとも1つのレジ前ローラと,前記レジ前ローラにより用紙を前記レジストローラに突き当て,その後,前記レジストローラを駆動させるとともに前記レジ前ローラで前記レジストローラをアシストして用紙を前記印刷部へ搬送するよう制御する制御部とを備え,」なる発明特定事項に相当する構成を具備している。

(エ) 引用発明の「後段の画像形成装置200C」(最上流の印刷装置以外の印刷装置)は,「レジストローラ290」(レジストローラ)の上流側近傍に設けられてレジストローラ290に搬送される用紙Pを検出する「レジストセンサ262」(用紙検出部)を備えているから,引用発明は,本件補正発明の「用紙搬送方向における最上流の印刷装置以外の印刷装置は,レジストローラの上流側に配置され,用紙を検出する用紙検出部をさらに備え,」なる発明特定事項に相当する構成を具備している。

(オ) 引用発明の「後段の画像形成装置200C」(最上流の印刷装置以外の印刷装置)の「CPU204」(制御部)は,用紙Pが「レジストセンサ262」(用紙検出部)により検出されると,この検出に基づく検出信号Srに基づいて「給紙ローラ232」(レジ前ローラ)を駆動する給紙モータ252を減速した後に停止させ,モータの停止から一定時間が経過したら,「給紙ローラ232」(レジ前ローラ)を駆動する給紙モータ252および「レジストローラ290」(レジストローラ)を駆動するレジストモータ256を加速させて線速を線速V1に設定するよう制御するから,「レジストセンサ262」(用紙検出部)で用紙Pが検出されたタイミングに基づき,「給紙ローラ232」(レジ前ローラ)及び「レジストローラ290」(レジストローラ)の動作を制御しているといえる。
また,引用発明において,前段の画像形成装置100Cと後段の画像形成装置200Cとは,同一の構成および機能を有する画像形成装置であるから,「後段の画像形成装置200C」(最上流の印刷装置以外の印刷装置)の「CPU204」(制御部)は,「レジストローラ290」(レジストローラ)を,「前段の画像形成装置100C」(最上流の印刷装置)の「前段レジストローラ」(レジストローラ)と搬送速度に関し同じ動作パターンで動作させるものと認められる。
したがって,引用発明は,本件補正発明の「最上流の前記印刷装置以外の印刷装置の制御部は,用紙検出部で用紙が検出されたタイミングに基づき,レジ前ローラおよびレジストローラの動作を制御し,レジストローラを,最上流の印刷装置のレジストローラと搬送速度に関し同じ動作パターンで動作させ,」なる発明特定事項に相当する構成を具備している。

(カ) 引用発明の「中間搬送装置300C」(中間装置)は,用紙Pを「後段の画像形成装置200C」(印刷装置)に搬送する「中間排紙ローラ380」(搬送ローラ)と,「中間排紙ローラ380」(搬送ローラ)を駆動する中間排紙モータ344の停止制御や再起動等を行う「CPU304」(中間装置制御部)とを有しており,「後段の画像形成装置200C」(印刷装置)は,「中間搬送装置300C」(中間装置)からみて,下流側に隣接する画像形成装置といえるから,引用発明は,本件補正発明の「中間装置は,下流側に隣接する印刷装置へ用紙を搬送する少なくとも1つの搬送ローラと,搬送ローラを制御する中間装置制御部とを備え,」なる発明特定事項に相当する構成を具備している。

(キ) 引用発明では,前記後段の画像形成装置200Cにおける用紙Pの斜行の補正及び画像形成部210への用紙Pの搬送を行う際には,給紙ローラ232により搬送されている用紙Pが,レジストセンサ262により検出されると,この検出に基づく検出信号SrがCPU304およびCPU204のそれぞれに入力され,「CPU304」(中間装置制御部)が,レジストセンサ262からの検出信号Srに基づいて「中間排紙ローラ380」(搬送ローラ)を駆動する中間排紙モータ344を減速した後に停止させ,また,このモータの停止制御に同期して,CPU204が,レジストセンサ262からの検出信号Srに基づいて「給紙ローラ232」(レジ前ローラ)を駆動する給紙モータ252を減速した後に停止させ,これにより,用紙Pの先端を「レジストローラ290」(レジストローラ)に突き当ててループを形成し,用紙Pの斜行補正を行い,各モータの停止から一定時間が経過したら,「CPU304」(中間装置制御部)が,「中間排紙ローラ380」(搬送ローラ)を駆動する中間排紙モータ344を加速させて線速を線速V1に設定し,このモータの再起動と同じタイミングで,CPU204は,「給紙ローラ232」(レジ前ローラ)を駆動する給紙モータ252およびレジストローラ290を駆動するレジストモータ256を加速させて線速を線速V1に設定し,中間排紙センサ346の出力がオフになると,「CPU304」(中間装置制御部)は,「中間排紙ローラ380」(搬送ローラ)を駆動する中間排紙モータ344の駆動を加速させて線速を排紙時の線速V2とし,給紙センサ254がオフになると,CPU204は,「給紙ローラ232」(レジ前ローラ)を駆動する給紙モータ252の駆動を加速させて線速を給紙時の線速V2とするよう動作するところ,中間排紙センサ346の出力がオフになるとは,用紙Pが「中間排紙ローラ380」(搬送ローラ)を抜けることにほかならないから,「CPU304」(中間装置制御部)は,用紙Pを「レジストローラ290」(レジストローラ)に突き当てる動作,および「レジストローラ290」(レジストローラ)による用紙Pの搬送をアシストする動作を,用紙Pが「中間排紙ローラ380」(搬送ローラ)を抜けるまで,「後段の画像形成装置200C」(下流側に隣接する印刷装置)の「給紙ローラ232」(レジ前ローラ)と同期して行うよう制御するものといえる。
したがって,本件補正発明の「中間装置制御部」と,引用発明の「CPU304」は,「前記搬送ローラが,用紙を前記レジストローラに突き当てる動作,および前記レジストローラによる用紙の搬送をアシストする動作を,用紙が前記搬送ローラを抜けるまで,下流側に隣接する前記印刷装置の前記レジ前ローラと同期して行う」という制御(以下,便宜上「特定制御」という。)を行う点で共通する。

(ク) 前記(ア)ないし(キ)に照らせば,本件補正発明と引用発明とは,
「複数の印刷装置と,前記各印刷装置間に配置され,前記印刷装置間で用紙を搬送する少なくとも1つの中間装置とを備え,用紙を前記各印刷装置に順次搬送しつつ印刷する印刷システムであって,
前記複数の印刷装置はそれぞれ,
用紙に印刷する印刷部と,
前記印刷部へ用紙を搬送するレジストローラと,
前記レジストローラへ用紙を搬送する少なくとも1つのレジ前ローラと,
前記レジ前ローラにより用紙を前記レジストローラに突き当て,その後,前記レジストローラを駆動させるとともに前記レジ前ローラで前記レジストローラをアシストして用紙を前記印刷部へ搬送するよう制御する制御部とを備え,
用紙搬送方向における最上流の前記印刷装置以外の前記印刷装置は,
前記レジストローラの上流側に配置され,用紙を検出する用紙検出部をさらに備え,
最上流の前記印刷装置以外の前記印刷装置の前記制御部は,前記用紙検出部で用紙が検出されたタイミングに基づき,前記レジ前ローラおよび前記レジストローラの動作を制御し,前記レジストローラを,最上流の前記印刷装置の前記印刷装置の前記レジストローラと搬送速度に関し同じ動作パターンで動作させ,
前記中間装置は,
下流側に隣接する前記印刷装置へ用紙を搬送する少なくとも1つの搬送ローラと,
前記搬送ローラを制御する中間装置制御部とを備え,
前記中間装置制御部は,
前記搬送ローラが,用紙を前記レジストローラに突き当てる動作,および前記レジストローラによる用紙の搬送をアシストする動作を,用紙が前記搬送ローラを抜けるまで,下流側に隣接する前記印刷装置の前記レジ前ローラと同期して行うという特定制御を行う印刷システム。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:
本件補正発明の中間装置制御部は,特定制御を,用紙サイズが,用紙が下流側に隣接する印刷装置のレジストローラに突き当てられたときに用紙の後端部が搬送ローラを抜けていないサイズである所定サイズ以上である場合に行い,用紙サイズが前記所定サイズ未満である場合,レジ前ローラがレジストローラに突き当てる動作,および前記レジストローラによる用紙の搬送をアシストする動作を行う間も,前記搬送ローラが,前記レジ前ローラの動作に同期せず,前記レジ前ローラおよび前記搬送ローラによる用紙の受入速度で駆動し続けるよう制御するのに対して,
引用発明のCPU304は,用紙サイズにかかわらず特定制御を行う点。

ウ 相違点1の容易想到性について
引用発明は,中間搬送装置300Cから後段の画像形成装置200Cに用紙Pを搬送するときには,中間搬送装置300Cの中間排紙ローラ380と後段の画像形成装置200Cの給紙ローラ232によって線速V2で用紙Pを搬送し,レジストセンサ262により用紙Pが検出されると,前記中間排紙ローラ380及び前記給紙ローラ232を減速して停止させることで,用紙Pの先端をレジストローラ290に突き当ててループを形成することによって,斜行補正を行い,停止から一定時間経過後に,前記中間排紙ローラ380と前記給紙ローラ232と前記レジストローラ290を加速して線速V2よりも遅い線速V1で用紙Pを搬送し,中間排紙センサ346の出力がオフになると,前記中間排紙ローラ380を線速V2まで加速するよう動作するものであるところ,用紙Pの先端をレジストローラ290に突き当ててループを形成することによって,斜行補正を行う動作における中間排紙ローラ380と給紙ローラ232の同期した駆動・停止や,駆動を再開してから中間排紙センサ346の出力がオフになるまでの,用紙Pの搬送における斜行補正を行う動作における中間排紙ローラ380と給紙ローラ232とレジストローラ290の同期した駆動が,後段の画像形成装置200Cにおいて用紙Pの斜行補正を行う際に,中間搬送装置300Cの中間排紙モータと,後段の画像形成装置200Cの給紙モータやレジストモータとの間の動作タイミング差等により発生する用紙Pの引っ張り合いを防止するために行われるものであることは,引用文献1の【0139】(前記ア(ア)a(d)を参照。)の記載から明らかである。
ここで,後段の画像形成装置200Cにおいて用紙Pの斜行補正を行う際に,用紙Pの引っ張り合いが発生するのは,用紙Pの先端をレジストローラ290に突き当てたときに,用紙Pの後端が中間搬送装置300Cの中間排紙ローラ380を抜けていない場合であって,用紙Pの先端をレジストローラ290に突き当てたときに,用紙Pの後端が中間搬送装置300Cの中間排紙ローラ380を抜けているような小サイズの用紙の場合,給紙ローラ232を停止したり再駆動したりする時には,中間排紙ローラ380は用紙Pを挟持していないのであるから,中間排紙ローラ380の駆動を給紙ローラ232の駆動に同期させる必要がないことは明らかである。
このことは,中間搬送装置からでなく前段の画像形成装置から後段の画像形成装置に用紙を搬送する第1の実施の形態についての記載ではあるものの,引用文献1の【0061】に「CPU204は,前段の画像形成装置100Aで給紙される用紙Pのサイズに基づいて,後段での用紙Pの斜行補正時に前段の画像形成装置100Aと後段の画像形成装置200Aとの間に用紙Pの跨りが発生するか否かを判断する。・・・(中略)・・・用紙Pが前段と後段とに跨らないようなサイズ(A4,B5サイズ)の場合には,用紙Pが前段と後段に跨らないと判断して前段および後段の各モータの同期駆動制御を実行しない。これに対し,用紙Pが前段と後段とに跨ってしまうようなサイズ(A3サイズ等)の場合には,用紙Pが前段と後段とに跨ると判断して前段および後段の各モータの同期駆動制御を実行する。」(なお,「後段での用紙Pの斜行補正時に前段の画像形成装置100Aと後段の画像形成装置200Aとの間に用紙Pの跨りが発生するか否かを判断する」とは,用紙Pの先端をレジストローラ290に突き当てたときに,用紙Pの後端が前段の画像形生成装置100Aの排紙ローラ180を抜けていないか抜けているかを判断することにほかならない。)と記載されていることからも,当業者が直ちに理解できることである。
そうすると,引用発明において,後段の画像形成装置200Cに搬送された用紙Pのサイズが,当該用紙Pの先端をレジストローラ290に突き当てたときに,用紙Pの後端が中間搬送装置300Cの中間排紙ローラ380を抜けないサイズであるのか否かを判断し,抜けないサイズである場合には,CPU304に特定制御を実行させ,抜けてしまうサイズである場合には,給紙ローラ232がレジストローラ290に用紙Pを突き当てる動作,及びレジストローラ290による用紙Pの搬送をアシストする動作を行う間も,中間排紙ローラ380が,給紙ローラ232の動作に同期せず,線速V2で駆動し続けるような制御を実行するよう構成すること,すなわち,相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

エ 引用発明の搬送ローラ及び前段レジストローラの構成についての予備的見解
前記イ(ウ)で述べたように,引用発明の前段の画像形成装置100Cと後段の画像形成装置200Cとは,同一の構成及び機能を有する画像形成装置であるから,前段の画像形成装置100CのCPU104は,後段の画像形成装置200CCPU204と同様に,少なくとも前段レジストローラの直前の搬送ローラにより用紙Pを前段レジストローラに突き当て,その後,前段レジストローラを駆動させるとともに少なくとも前段レジストローラの直前の搬送ローラで前段レジストローラをアシストして用紙Pを画像形成部110へ搬送するよう制御するものと解するのが相当であるが,仮に,そうとまで断定できないとした場合について,以下に判断する。
(ア) 本件補正発明と引用発明を対比すると,両者は,前記イ(ク)で認定した相違点1に加えて次の点で相違し,その余の点で一致する。

相違点2:
本件補正発明の最上流の印刷装置では,レジ前ローラにより用紙をレジストローラに突き当て,その後,レジストローラを駆動させるとともにレジ前ローラでレジストローラをアシストして用紙を印刷部へ搬送するのに対して,
引用発明の前段の画像形成装置100Cでは,斜行補正及び画像形成部110への搬送時に,搬送ローラと前段レジストローラがどのような動作をするのか定かでない点。

(イ) 原査定の拒絶の理由において「引用文献2(周知技術を示す文献)」として引用された特開2013−249177号公報(特に,【0062】ないし【0067】,図4等を参照。)等にみられるように,画像形成装置において,用紙をレジストローラに突き当て,その後,レジストローラを駆動させるとともにレジ前ローラでレジストローラをアシストして用紙を印刷部へ搬送する技術は,本件出願の出願前に周知であったと認められる(以下,当該技術を「周知技術」という。)。
引用発明の前段の画像形成装置100Cにおいて,搬送ローラと前段レジストローラにどのような動作をさせて,斜行補正及び画像形成部110への搬送を実現するのかは,技術の具体的適用に伴い当業者が適宜採用できる事項であるから,搬送ローラ及び前段レジストローラの動作として,前記周知技術を採用し,相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項のごとく構成することは,当業者が適宜なし得たことである。

オ 効果について
本件補正発明が有する効果は,本件出願の出願当時本件補正発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができたものであり,当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものではない。

カ 小括
以上のとおり,本件補正発明は,引用発明に基づいて,又は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 補正却下の決定のむすび
したがって,本件補正は,同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,〔補正却下の決定の結論〕のとおり決定する。

第3 本件出願の請求項1に係る発明について
1 請求項1に係る発明
本件補正は前記第2のとおり却下されたので,本件出願の請求項1に係る発明は,令和1年10月11日に提出された手続補正書による補正後の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ,当該請求項1の記載は,次のとおりである。

「複数の印刷装置と,前記各印刷装置間に配置され,前記印刷装置間で用紙を搬送する少なくとも1つの中間装置とを備え,用紙を前記各印刷装置に順次搬送しつつ印刷する印刷システムであって,
前記複数の印刷装置はそれぞれ,
用紙に印刷する印刷部と,
前記印刷部へ用紙を搬送するレジストローラと,
前記レジストローラへ用紙を搬送する少なくとも1つのレジ前ローラと,
前記レジ前ローラにより用紙を前記レジストローラに突き当て,その後,前記レジストローラを駆動させるとともに前記レジ前ローラで前記レジストローラをアシストして用紙を前記印刷部へ搬送するよう制御する制御部とを備え,
用紙搬送方向における最上流の前記印刷装置以外の前記印刷装置は,
前記レジストローラの上流側に配置され,用紙を検出する用紙検出部をさらに備え,
最上流の前記印刷装置以外の前記印刷装置の前記制御部は,前記用紙検出部で用紙が検出されたタイミングに基づき,前記レジ前ローラおよび前記レジストローラの動作を制御し,
前記中間装置は,
下流側に隣接する前記印刷装置へ用紙を搬送する少なくとも1つの搬送ローラと,
前記搬送ローラを制御する中間装置制御部とを備え,
前記中間装置制御部は,
用紙サイズが所定サイズ以上である場合,前記搬送ローラが,用紙を前記レジストローラに突き当てる動作,および前記レジストローラによる用紙の搬送をアシストする動作を,用紙が前記搬送ローラを抜けるまで,下流側に隣接する前記印刷装置の前記レジ前ローラと同期して行うよう制御し,
用紙サイズが前記所定サイズ未満である場合,前記レジ前ローラが前記レジストローラに突き当てる動作,および前記レジストローラによる用紙の搬送をアシストする動作を行う間も,前記搬送ローラが,前記レジ前ローラの動作に同期せず,前記レジ前ローラおよび前記搬送ローラによる用紙の受入速度で駆動し続けるよう制御し,
前記所定サイズは,用紙が下流側に隣接する前記印刷装置の前記レジストローラに突き当てられたときに用紙の後端部が前記搬送ローラを抜けていないサイズであることを特徴とする印刷システム。」(以下,「本件発明」という。)

2 原査定の拒絶の理由の概要
本件発明に対する原査定の拒絶の理由は,概略,本件発明は,本件出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載及び引用発明については,前記第2〔理由〕4(3)ア(ア)及び(イ)で認定したとおりである。

4 対比・判断
本件補正発明は,上記第2〔理由〕2のとおり,実質上,本件発明の発明特定事項を限定したものである。
そうすると,本件発明の発明特定事項を全て含み,さらに限定を付加したものに相当する本件補正発明が,上記第2〔理由〕4(3)カで述べたとおり,引用発明に基づいて,又は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明も同様の理由により,引用発明に基づいて,又は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
前記第3のとおり,本件発明は,引用発明に基づいて,又は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは,この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は,その日数を附加します。)以内に,特許庁長官を被告として,提起することができます。
 
審理終結日 2021-11-16 
結審通知日 2021-11-24 
審決日 2021-12-07 
出願番号 P2015-256762
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65H)
P 1 8・ 121- Z (B65H)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 畑井 順一
清水 康司
発明の名称 印刷システム  
代理人 三好 秀和  

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