• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
管理番号 1381661
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-12-17 
確定日 2021-11-05 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6710302号発明「吸水性樹脂粒子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6710302号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−2〕について訂正することを認める。 特許第6710302号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6710302号(以下、「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成31年3月22日(優先権主張 平成30年12月12日)の出願であって、令和2年5月28日にその特許権の設定登録(請求項の数2)がされ、同年6月17日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年12月17日に特許異議申立人 株式会社日本触媒(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1及び2)がされ、令和3年3月26日付けで取消理由が通知され、同年5月31日に特許権者から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年6月21日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年7月21日に異議申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和3年5月31日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「しみわたり指数が10.0以上で、前記無加圧DWの1分値が7.0mL/g以上で、前記10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上であり」とあるのを、「しみわたり指数が14.0以上で、前記無加圧DWの1分値が7.0mL/g以上で、前記10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下であり」と訂正する。
併せて、請求項1を引用する請求項2についても同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「生理食塩水の吸水量が50.0g/g以上である」とあるのを、「生理食塩水の吸水量が57g/g以上であり、荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/gである」と訂正する。
併せて、請求項1を引用する請求項2についても同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に、「前記しみわたり指数が13.0以上である」とあるのを「前記しみわたり指数が14.0以上30.0以下である」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「しみわたり指数」の数値範囲を狭くするものであると共に、「10倍膨潤時の人工尿通液速度」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2による請求項1についての訂正は、「生理食塩水の吸水量」の数値範囲を狭くするものであると共に、「荷重下における生理食塩水保水量」に関する限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、訂正事項1及び2による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)請求項2についての訂正について
訂正事項1及び2による請求項2についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3による請求項2についての訂正は、「しみわたり指数」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、訂正事項1ないし3による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおり、請求項1及び2についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。

なお、訂正前の請求項1及び2は一群の請求項に該当するものである。
そして、請求項1及び2についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

そして、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1及び2に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−2〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子であって、
下記式(1):
しみわたり指数=無加圧DWの1分値(mL/g)+10倍膨潤時の人工尿通液速度(g/分) ・・・(1)
で表される、しみわたり指数が14.0以上で、前記無加圧DWの1分値が7.0mL/g以上で、前記10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下であり、
生理食塩水の吸水量が57g/g以上であり、
荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/gである、吸水性樹脂粒子。
【請求項2】
前記しみわたり指数が14.0以上30.0以下である、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和2年12月17日に異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)異議申立理由1(甲第1ないし10、21及び22号証のいずれかに基づく新規性
本件特許発明1及び2は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1ないし10、21及び22のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)異議申立理由2(甲第1、2、4ないし6号証のいずれかに基づく進歩性
本件特許発明1及び2は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1、2、4ないし6のいずれかに記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)異議申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
概略は以下の通り。
ア 本件請求項1における「無機粒子」の量の欠如
本件特許発明1には、「無機粒子」の量が欠如しており、本件特許発明の課題を解決しない範囲(特にDWの1分値≧7ml/gを達成できない範囲)までもが含まれていることになる。したがって、本件特許発明1及びこれを引用する本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
イ 本件請求項1、2における「無機粒子」の種類の欠如
無機粉末として非晶質のシリカのみを開示する本件において、甲第23号証の[請求項1]に記載の疎水性無機粉末も含むすべての無機粉末を添加した場合、およびどのような量の無機粉末を添加した場合にも、吸水性樹脂粒子の無加圧DW1分値が7ml/g以上であるとは言えない。したがって、本件特許発明1およびこれを引用する本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
ウ 「10倍膨潤時の人工尿通液速度」の上限の欠如
本件請求項1の10倍膨潤時の人工尿通液速度(1ml/分以上)については上限が規定されていない。しかし、本件明細書の[0106]に記載の測定法によれば、「20gの人工尿」すなわち約20mlの人工尿が「30秒間」で流れる絶対量から、[図2]に示される測定装置で通液中の吸水性樹脂が人工尿をまったく吸収しないとしても、理論的に上限は40ml/分(図 2で吸水性樹脂上部から注ぐ人工尿を吸わず20ml全量が通液)であるので、本件実施例の10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.6〜12.3ml/分であることからも、本件特許発明1は実施不能な範囲を含む。
実際には図2で吸水性樹脂が上部から注ぐ人工尿を吸水するから、比較例4の31mL/分(15.5ml/30秒)では4.5mlの人工尿を吸水性樹脂が吸収しているため、理論的な上限は40ml/分よりも小さい。
したがって、10倍膨潤時の人工尿通液速度の上限を規定しない本件特許発明1およびこれを引用する本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
エ 中和率/架橋剤量の欠如
本件特許権者は甲第24号証、すなわち、本件の審査過程で通知された拒絶理由通知書(起案日:令和1年7月25日)のサポート要件に関する拒絶理由に対して提出した意見書(提出日:令和1年11月27日)にて、吸水性樹脂粒子の吸水力については「イオンの浸透圧」、「高分子電解質の水との親和力」、及び「橋かけ密度」が支配的であるという技術常識があると述べている。それにも関わらず、本件請求項1では「イオンの浸透圧」、「高分子電解質の水との親和力」及び「橋かけ密度」に影靱するアクリル酸の中和率と架橋剤量をなんら規定していない。
本件実施例では“所定の架橋剤量を使用した中和率75モル%のポリアクリル酸ナトリウム”のみが開示されているが、「“(吸水性樹脂の官能基COOH同士が互い水素結合する)中和率0%のポリアクリル酸と“(側鎖COONa同士が静電反発する)中和率100%のアクリル酸ナトリウム」では、「イオンの浸透圧」や、「高分子電解質の水との親和力」が全く異なること、さらに、「架橋剤量0.01%と架橋剤量1%」でまったく「橋かけ密度」が異なることは技術常識である。
よって、出願人の意見書およびその参考文献(「高吸水性ポリマー」)に基づけば、中和率や架橋剤量を規定しない本件特許発明1およびこれを引用する本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
(4)異議申立理由4(実施可能要件
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
概略は以下の通り。
ア 本件請求項1における「無機粒子」の量の欠如
本件請求項1には無機微粒子の添加量または含有量がなんら規定されていない。それゆえ、当業者は、無機粒子の添加量または含有量が規定されていない場合に、どのようにして、本件特許発明1及び2に規定の物性を有する吸水性樹脂粒子を製造することができるかを理解することができない。 したがって、本件明細書には本件特許発明の課題を解決するための手段が開示されているとは言えず、当業者は本件特許発明1及び2を実施することができない。
(5)証拠方法
・甲第1号証:国際公開第2016/104374号
・甲第2号証:特開2009−19065号公報
・甲第3号証:特開2006−068731号公報
・甲第4号証:特開2005−111474号公報
・甲第5号証:国際公開第2017/170605号
・甲第6号証:国際公開第2018/155591号
・甲第7号証:特開平9−124955号公報
・甲第8号証:国際公開第2008/015980号
・甲第9号証:特表2009−531158号公報
・甲第10号証:国際公開第2015/129917号
・甲第11号証:甲第3号証の実施例2の実験成績証明書
・甲第12号証:甲第4号証の実施例32の実験成績証明書
・甲第13号証:甲第5号証の実施例2及び実施例11−5の実験成績証明書
・甲第14号証:甲第7号証の実施例3の実験成績証明書
・甲第15号証:甲第8号証の実施例3の実験成績証明書
・甲第16号証:特開2020−93244号公報
・甲第17号証:国際公開第2004/110328号
・甲第18号証:Modern Superabsorbent Polymer Technology (1998) p. 69-74, p. 97-103, p. 210-213, p. 251- 257及び抄訳
・甲第19号証:本件特許権者の特許出願である特願2019−55281号の拒絶理由通知書(発送日:令和1年7月30日)に対し、特許権者が令和1年11月28日付けで提出した意見書
・甲第20号証:特開2020−121089号公報(本件特許権者の特許出願である特願2019−55281号の公開特許公報)
・甲第21号証:国際公開第2012/043821号
・甲第22号証:特開2004−261797号公報
・甲第23号証:特許第5485805号公報
・甲第24号証:本件の審査過程で通知された拒絶理由通知書(発送日:令和1年7月25日)に対し、特許権者が令和1年11月27日付けで提出した意見書
・甲第25号証:特開2012−12451号公報
なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
また、異議申立人は、令和3年7月21日に提出した意見書に添付して以下の参考資料1を提出している。
・参考資料1:国際公開第2006/123561号

2 取消理由の概要
令和3年3月26日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。
(1)取消理由1(甲1ないし甲8のいずれかに基づく新規性及び進歩性
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1ないし甲8のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1ないし甲8に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

第5 取消理由についての当審の判断
1 取消理由1(甲1ないし甲8のいずれかに基づく新規性及び進歩性)について
(1)甲1ないし8に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項及び甲1発明
(ア)甲1に記載された事項
甲1には、「吸水性樹脂組成物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。
・「[0008] 本発明は、従来になく薄型にされた吸収体に用いられた時にも、排尿時の液漏れ頻度や液の逆戻り量を著しく低減することができる吸水性樹脂組成物を提供することを課題とする。」
・「[0014] 本発明において用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(本明細書においては「アクリ」及び「メタクリ」を合わせて「(メタ)アクリ」と表記する。以下同様。)、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のα,β−不飽和カルボン酸及びその塩;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体;N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体及びその4級化物等;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸及びそれらの塩等のスルホン酸系単量体等が挙げられる。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[0015] 前記水溶性エチレン性不飽和単量体のなかでも、工業的に入手が容易である点から、(メタ)アクリル酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドが好適に用いられる。さらに、得られる吸水性樹脂の吸水性能が高いという観点から、(メタ)アクリル酸及びその塩がより好適に用いられる。前記(メタ)アクリル酸及びその塩に、他の水溶性エチレン性不飽和単量体を共重合させて用いる場合もある。この場合、前記(メタ)アクリル酸及びその塩は、主となる水溶性エチレン性不飽和単量体として、総水溶性エチレン性不飽和単量体に対して70〜100モル%用いられることが好ましい。」
・「[0057] このようにして、水溶性エチレン性不飽和単量体をアゾ系重合開始剤存在下で重合させることにより得られる吸水性樹脂に、湿潤促進剤を添加することで、以下(A)〜(D)の性能を満たす吸水性樹脂組成物が得られる。
(A)生理食塩水保水能が、38〜44g/g
(B)無加圧DWの5分値が、50mL/g以上
(C)無加圧DWの60分値が、60mL/g以上
(D)生理食塩水通液速度が、5g/分以上
[0058] 本発明の吸水性樹脂組成物の生理食塩水保水能(A)は、吸収性物品の吸収容量を高める観点から38g/g以上であり、39g/g以上が好ましく、40g/g以上がより好ましい。一方、ゲルブロッキングを防止する観点から44g/g以下であり、43g/g以下が好ましく、42g/g以下がより好ましい。なお、吸水性樹脂の生理食塩水保水能(A)は、後述する「(1)生理食塩水保水能」に記載されている測定方法により測定した値である。
[0059] 本発明の吸水性樹脂組成物の無加圧DWの5分値(B)は、本発明の吸水性樹脂組成物が用いられた吸収体の初期吸収速度を高める観点から50mL/g以上であり、53mL/g以上が好ましく、55mL/g以上がより好ましく、56mL/g以上がさらに好ましい。一方、液漏れが発生しにくくなることで、使用者の快適性を保つ観点から、100mL/g以下が好ましく、90mL/g以下がより好ましく、80mL/g以下がさらに好ましい。また、無加圧DWの60分値(C)は、前記(B)と同様な観点から60mL/g以上であり、63mL/g以上が好ましく、65mL/g以上がより好ましく、66mL/g以上がさらに好ましい。110mL/g以下が好ましく、100mL/g以下がより好ましく、90mL/g以下がさらに好ましい。なお、吸水性樹脂の無加圧DWの5分値(B)及び無加圧DWの60分値(C)は、後述する「(2)無加圧DW」に記載されている測定方法により測定した値である。
[0060] 本発明の吸水性樹脂組成物の生理食塩水通液速度(D)は、本発明の吸水性樹脂組成物が用いられた吸収性物品における液体拡散性を高める観点から5g/分以上であり、6g/分以上が好ましく、7g/分以上がより好ましく、8g/分以上がさらに好ましい。一方、液体の漏れが発生しにくくなることで、使用者の快適性を保つ観点から、20g/分以下が好ましく、15g/分以下がより好ましく、13g/分以下がさらに好ましい。なお、吸水性樹脂組成物の生理食塩水通液速度(D)は、後述する「(3)生理食塩水通液速度」に記載されている測定方法により測定した値である。」
・「[0064](1)生理食塩水保水能
500mL容のビーカーに、生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水溶液)500gを量り取り、600rpmで撹拌させながら、吸水性樹脂組成物2.00gを、ママコが発生しないように分散させた。撹拌させた状態で30分間放置し、吸水性樹脂組成物を十分に膨潤させた。その後、綿袋(メンブロード6060番、横100mm×縦200mm)中にビーカーの中身(膨潤ゲルと生理食塩水)を全て注ぎ込み、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、遠心力が167Gとなるよう設定した脱水機(国産遠心機株式会社製、品番:H−122)を用いて綿袋を1分間脱水し、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂組成物を添加せずに同様の操作を行ない、綿袋の湿潤時の空質量Wb(g)を測定し、以下の式から保水能を算出した。
生理食塩水保水能(g/g)=[Wa−Wb](g)/2.00(g)
[0065](2)無加圧DW
吸水性樹脂組成物の無加圧DWは、図1に示す測定装置を用いて測定した。なお、測定は1種類の吸水性樹脂組成物に対して5回実施し、最低値と最高値とを除いた3点の平均値を用いた。
当該測定装置は、ビュレット部1と導管2、測定台3、ナイロンメッシュシート4、架台6、クランプ7からなる。ビュレット部1は、上側から0〜100mLまで0.2mL単位で目盛が記載されたビュレット10の上部にゴム栓14、下部に空気導入管11とコック12とが連結され、さらに、ビュレット10の下部の先端にコック13を有する。ビュレット部1はクランプ7で固定した。ビュレット部1と測定台3との間に、内径6mmの導管2を取り付けた。測定台3の中央部には、直径2mmの穴があいており、導管2を連結した。測定台3は架台6によって支持した。
このような測定装置を用いて、無加圧DWの測定は以下の手順によって実施した。測定は温度25±1℃、湿度60±10%の室内にて、25±1℃に調節された生理食塩水を用いて行なった。生理食塩水をゴム栓14をはずして供給し、導管2を液封状態にし、かつビュレット部1の導管2との接続部からビュレット部1の目盛の上部まで、気泡を含まないように生理食塩水を満たした。この時、空気導入管に前記生理食塩水が入り込まないようにした。ゴム栓14で封した後、コック13及びコック12を開放し、測定台3中心部の導管口から出てくる前記生理食塩水の水面と、測定台3の上面とが同じ高さになるように測定台3の高さの調整を行った。調整後、ビュレット10の目盛を読んで、ゼロ点を確認した。(このとき水面の目盛の指示値は0〜20mLの範囲であることを確認した。)
別途、ナイロンメッシュシート4(100mm×100mm、250メッシュ、厚さ約50μm)を用意し、中央部に内径30mmのシリンダーを載置した。吸水性樹脂組成物5を1.00g量りとり、前記シリンダー内部に全量を均一に投入した後、シリンダーを注意深く取り除いた。このようにして、中央部に吸水性樹脂組成物5が散布されたナイロンシート4を、前記測定台3の導管口上に、吸水性樹脂組成物5が散逸しない程度にすばやく移動させ、測定を開始した。なお、空気導入管11からビュレット10への最初の気泡発生が見られた時点を吸水開始とした。
ビュレット10内の生理食塩水の減少量(即ち、吸水性樹脂組成物5が吸水した生理食塩水量)を順次読み取り、吸水性樹脂組成物5の吸水開始から起算して5分後の生理食塩水の減量分Wc(mL)を吸水性樹脂組成物1.00gあたりの無加圧DWとして読み取り、5分間の無加圧DWを、以下の式により求めた。
5分間の無加圧DW(mL/g)=Wc/1.00
なお、同様にして、吸水性樹脂組成物5の吸水開始から起算して60分後における生理食塩水の減量分Wd(mL)を吸水性樹脂組成物1.00gあたりの無加圧DWとして読み取り、60分間の無加圧DWを、以下の式により求めた。
60分間の無加圧DW(mL/g)=Wd/1.00
[0066](3)生理食塩水通液速度
図2に概略構成を示す測定装置を用いて測定した。測定部は、ナイロンメッシュシート(250メッシュ)が接着された、内径19mm、外径25mm、高さ120mmで、約30gの重さを有するプレキシグラス製の円筒状容器(A)21と、同様のナイロンメッシュシートが接着された、内径26mm、外径40mm、高さ80mmのプレキシグラス製円筒状容器(B)22と膨潤ゲル23とから成る。測定部が載置されている金網24は、100mm×100mmのサイズで、2mm四方の格子状開口部を有する。シャーレ25の内径は約90mmである。
測定は、約25℃の室温で行った。円筒状容器(B)22に、あらかじめ250〜500μmのサイズに分級した吸水性樹脂組成物0.20gを均一に入れ、上部から円筒状容器(A)21を挿入し、測定部とした。生理食塩水を適量入れたシャーレに、測定部のメッシュ側を浸漬して30分間膨潤させ、膨潤ゲル23を形成した。
次に、測定部全体を空のシャーレ上に移動させ、200gの重りを円筒状容器(A)21の上部にゆっくりと載置し、膨潤ゲル23を3分間荷重した。
あらかじめ空の質量を測定したシャーレ(We)25上に、目開き2mmの金網24を載置し、さらに膨潤ゲル23を含む測定部を載置した。次いで、円筒状容器(A)21の上部から生理食塩水を添加すると同時にストップウォッチをスタートさせた。以降、測定終了まで、液面の高さが円筒状容器(A)の下端から6〜7cmを保つように、生理食塩水を適宜追加した。投入から30秒間(0.5分間)が経過するまでに、膨潤ゲル23を通過して流出した生理食塩水を含むシャーレ質量(Wf)を測定し、通液速度(g/分)を、以下の式により求めた。
通液速度(g/分)=(Wf−We)/0.5」
・「[0072]実施例1
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン340gをとり、界面活性剤としてHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルS−370)0.8gを添加し、60℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、50℃まで冷却した。
[0073] 別途、500mLの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92gをとり、外部より冷却しつつ、イオン交換水6.8gを加え、更に30質量%の水酸化ナトリウム水溶液102.0gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、室温にて撹拌して完全に溶解させた。さらに、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.11g、エチレングリコールジグリシジルエーテル20.2mgをイオン交換水36.9gに溶解し加えて、第1段目の単量体水溶液を調製した。
[0074] 撹拌機の回転数を450rpmとして、前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行うことにより、第1段目の重合後スラリーを得た。
[0075] また、別途、別の500mLの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8gをとり、外部より冷却しつつ、イオン交換水9.7gを加え、更に30質量%の水酸化ナトリウム水溶液143.0gを滴下して75モル%の中和を行なったのち、溶解させた。さらに、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.15g、エチレングリコールジグリシジルエーテル11.6mgをイオン交換水6.45gに溶解して加え、第2段目の単量体水溶液を調製した。
[0076] 前記重合後スラリーの撹拌回転数を1000rpmに変更した後、22℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持したのち、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行うことにより、第2段目の重合後スラリーを得た。
[0077] 次いで、125℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンとを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、分留管に溜まった水の抜き出し量が計245gになった時点で後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液4.42gを添加し、内温80℃で2時間保持し反応させた。その後、更に加熱してn−ヘプタンと水とを留去させて乾燥させたものを、850μmの篩を通過させ、球状の1次粒子が凝集した粒子の形態を有する吸水性樹脂220gを得た。この吸水性樹脂100gを分取し、親水性シリカ(エボニックデグサジャパン社:カープレックス#80)を1.00g(吸水性樹脂に対して1.0質量%)添加し、卓上クロスロータリー混合機で30分混合して、実施例1の吸水性樹脂組成物とした。得られた吸水性樹脂組成物の中位粒子径は460μmであった。各性能の測定結果を表1に示す。
[0078]実施例2
実施例1において、疎水性物質の無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学社製、ハイワックス1105A)3.4gをn−ヘプタン30.6gに事前に熱溶解し保温した溶液を、2時間の後架橋反応後に系内に加え、10分間81℃で攪拌混合した後、更に加熱してn−ヘプタンと水とを留去させて乾燥させたものを、850μmの篩を通過させ、球状の1次粒子が凝集した粒子の形態を有する吸水性樹脂224gを得た。この吸水性樹脂100gを分取し、親水性シリカ(エボニックデグサジャパン社:カープレックス#80)を0.60g(吸水性樹脂に対して0.6質量%)添加し、卓上クロスロータリー混合機で30分混合して、実施例2の吸水性樹脂組成物とした。得られた吸水性樹脂組成物の中位粒子径は450μmであった。各性能の測定結果を表1に示す。」
・「[0099][表1]


・「特許請求の範囲
[請求項1] 水溶性エチレン性不飽和単量体をアゾ系重合開始剤存在下で重合させることにより得られる吸水性樹脂と、湿潤促進剤とを含む吸水性樹脂組成物であって、以下(A)〜(D)の性能を満たす吸水性樹脂組成物。
(A)生理食塩水保水能が、38〜44g/g
(B)無加圧DWの5分値が、50mL/g以上
(C)無加圧DWの60分値が、60mL/g以上
(D)生理食塩水通液速度が、5g/分以上
[請求項2] アゾ系開始剤が、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、及び2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]四水和物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の吸水性樹脂組成物。
[請求項3] 吸水性樹脂が逆相懸濁重合法により得られるものである、請求項1または2に記載の吸水性樹脂組成物。
[請求項4] 湿潤促進剤が二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミ、カオリン、タルク、ベントナイト、及びゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。」
・「[図1]


・「[図2]



(イ)甲1発明
甲1に記載された事項を、特に実施例1に関して整理すると、甲1には次の発明が記載されていると認める。
「還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン340gをとり、界面活性剤としてHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルS−370)0.8gを添加し、60℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、50℃まで冷却し、別途、500mLの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92gをとり、外部より冷却しつつ、イオン交換水6.8gを加え、更に30質量%の水酸化ナトリウム水溶液102.0gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、室温にて撹拌して完全に溶解させ、さらに、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.11g、エチレングリコールジグリシジルエーテル20.2mgをイオン交換水36.9gに溶解し加えて、第1段目の単量体水溶液を調製し、撹拌機の回転数を450rpmとして、前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行うことにより、第1段目の重合後スラリーを得、また、別途、別の500mLの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8gをとり、外部より冷却しつつ、イオン交換水9.7gを加え、更に30質量%の水酸化
ナトリウム水溶液143.0gを滴下して75モル%の中和を行なったのち、溶解させ、さらに、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.15g、エチレングリコールジグリシジルエーテル11.6mgをイオン交換水6.45gに溶解して加え、第2段目の単量体水溶液を調製し、前記重合後スラリーの撹拌回転数を1000rpmに変更した後、22℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持したのち、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行うことにより、第2段目の重合後スラリーを得、次いで、125℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンとを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、分留管に溜まった水の抜き出し量が計245gになった時点で後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液4.42gを添加し、内温80℃で2時間保持し反応させた後、更に加熱してn−ヘプタンと水とを留去させて乾燥させたものを、850μmの篩を通過させ、球状の1次粒子が凝集した粒子の形態を有する吸水性樹脂220gを得、この吸水性樹脂100gを分取し、親水性シリカ(エボニックデグサジャパン社:カープレックス#80)を1.00g(吸水性樹脂に対して1.0質量%)添加し、卓上クロスロータリー混合機で30分混合して得られた、吸水性樹脂組成物。」(以下、「甲1発明」という。)

イ 甲2に記載された事項及び甲2発明
(ア)甲2に記載された事項
甲2には、「重合体粒子の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載され
ている。
・「【請求項1】
重合に不活性な疎水性有機溶媒と水溶性モノマーを用いて該水溶性モノマーを重合させるに際し、分散剤として一般式(I)で表される陰イオン界面活性剤及び一般式(II)で表される陰イオン界面活性剤を存在させる、重合体粒子の製造方法。
【化1】

(式中、R1は直鎖又は分岐鎖の炭素数5〜29のアルキル基、アルケニル基又は2−ヒドロキシアルキル基を示し、M1及びM2はそれぞれ独立に、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン又は水素原子を示し、nは1又は2を示す。)
R2O[(PO)p(EO)q]SO3M3 (II)
(式中、R2は直鎖又は分岐鎖の炭素数6〜22のアルキル基若しくはアルケニル基を示すか、又は総炭素数12〜28のアリール基を示す。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示し、POとEOはブロック結合をしており、POとEOの結合順序は(PO)p(EO)qの順、(EO)q(PO)pの順の何れでも良い。pはオキシプロピレン基の平均付加モル数を示す0より大きく22以下の数、qはオキシエチレン基の平均付加モル数を示す0より大きく22以下の数である。M3はアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン又は水素原子を示す。)
【請求項2】
重合が、疎水性有機溶媒を含有する溶媒中へモノマーを供給する逆相懸濁重合法で行われる、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
一般式(I)で表される陰イオン界面活性剤をモノマーと混合しておき、一般式(II)で表される陰イオン界面活性剤を疎水性有機溶媒に混合させておく、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
表面処理剤により重合体粒子表面を処理する工程を含む、請求項1〜3いずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
表面処理剤が、無機粒子である請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の製造方法により得られる重合体粒子。
【請求項7】
平均粒径が200〜550μm、嵩比重が0.6〜0.9g/mL、吸水量(対生理食塩水)が27g/g以上、吸水速度(対生理食塩水)が2.8mL/分以上、加圧通液速度(対生理食塩水)が300mL/分以上の、不飽和カルボン酸又はその塩由来の構成単位を含む架橋重合体粒子である、請求項6記載の重合体粒子。」
・「【0007】
本発明の課題は、水性液体や体液を吸収した後でも分解/劣化の程度が小さく安定性が良好で、しかも吸水量が高く、吸水速度や加圧通液速度の速い重合体粒子及びその製造方法を提供することにある。」
・「【0018】
これらモノマーの中では、オレフィン系不飽和カルボン酸又はその塩が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、それらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩がより好ましく、アクリル酸、アクリル酸アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アクリル酸アンモニウム塩が更に好ましい。」
・「【0056】
また、本発明の製造方法は、重合体粒子の通液性向上の観点から、表面処理剤により重合体粒子表面を処理する工程を含むことが好ましい。
【0057】
表面処理剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、カリウム明礬、アンモニウム明礬、ナトリウム明礬、(ポリ)塩化アルミニウム、これらの水和物などの多価金属化合物;ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどのポリカチオン化合物;メチルシロキサン(メチコンとも呼ばれる)、ジメチルシロキサン(ジメチコンとも呼ばれる)、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーンなどのシリコーン化合物;シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、ベントナイトなどの無機微粒子などが挙げられ、これらの1種のみ用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
これらの中でも、シリカなどの無機微粒子が、重合体粒子の吸水速度や通液性を向上する点で好ましい。
【0059】
本発明において、表面処理は、架橋前、同時、架橋後のいずれに行っても良いが、本発明の効果をより発揮するために、架橋後であることが好ましい。表面処理剤の添加方法は、特に限定されず、ドライブレンドでもよいし、水溶液や分散液として添加しても良い。表面処理剤は、重合体粒子に対して、0.001〜10重量%の割合で用いることが好ましく、0.01〜5重量%の割合で用いることがより好ましい。」
・「【0067】
本発明の重合体粒子の吸水量は、おむつ等の吸収体当たりの重合体粒子の使用量を抑え、例えば、おむつ等が厚くなるのを抑制する観点から、27g/g以上が好ましく、30g/g以上がより好ましい。なお、本発明の重合体粒子の吸水量は、実施例に示す方法により測定した値である。
【0068】
本発明の重合体粒子の吸水速度は、尿等を素早く吸収し、漏れを防止する観点から、2.8mL/分以上が好ましく、3.0mL/分以上がより好ましい。なお、本発明の重合体粒子の吸水速度は、実施例に示す方法により測定した値である。
【0069】
本発明の重合体粒子の加圧通液速度は、膨潤した重合体粒子によるゲルブロキング(ゲル粒子の目詰まり)を抑制して尿等を素早く拡散し、漏れを防止する観点から、300mL/分以上が好ましく、320mL/分以上がより好ましい。
なお、本発明の重合体粒子の加圧通液速度は、実施例に示す方法により測定した値である。
【0070】
本発明の重合体粒子は、平均粒径が200〜550μm、嵩比重が0.6〜0.9g/mL、吸水量(対生理食塩水)が27g/g以上、吸水速度が2.8mL/分以上、加圧通液速度(対生理食塩水)が300mL/分以上であるといった5つの物性をバランス良く保つことにより、吸水性樹脂粒子としての効果を十分に発揮できる。このため、おむつなどの衛生材料の吸収体、簡易トイレ用の吸水剤、廃液の固化剤、農業用保水剤などの用途に好適に用いられ、特におむつなどの衛生材料の吸収体に好適に用いることができる。」
・「【実施例】
【0071】
以下に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。例中「%」、「部」は特に説明が無い場合には、全て「重量%」、「重量部」である。
【0072】
なお、実施例及び比較例で行った試験方法は次の通りである。
・平均粒径の測定法
重合体粒子100gをJIS Z−8801−1982準拠のフルイを用いて分級し、各フラクションの重量分率より平均粒径を求めた。
・嵩比重の測定法
筒井理化学器械(株)製カサ比重測定器(JIS K−3362)を用いて、重合体粒子のゆるめ嵩比重を求めた。
・吸水量の測定法
重合体粒子1gを生理食塩水(0.9%NaCl水溶液、大塚製薬製)150mLで30分間膨潤させた後、250メッシュの不織布袋に入れ、遠心分離機にて143Gで10分間脱水し、脱水後の総重量(全体重量)を測定する。そして、次式(1)に従って、遠心脱水後の保持量を測定する。
【0073】
【数1】

【0074】
ここで、不織布袋液残り量=(遠心脱水後の不織布重量)−(不織布袋重量)である。
・吸水速度の測定法
DW法を実施する装置として一般的に知られている図1に示す装置1(Demand Wettability Tester)を用いる。生理食塩水2の液面を等水位にセットした重合体粒子散布台3(70mmφ、No.2濾紙4をガラスフィルター(No.1)5の上に置いた台)上に、重合体粒子6を0.3g散布し、重合体粒子を散布した時点の吸水量を0とし、60秒後の吸水量(この吸水量は、生理食塩水の水位の低下量を示すビュレット7の目盛りで測定される)を測定し、この値を、吸水速度(mL/分)とした。
・加圧通液速度の測定法
重合体粒子1.0gを0.9%食塩水約150mLの入ったビーカー中に30分間浸漬し、十分に膨潤させる。膨潤させた重合体粒子10を、金網(83メッシュ)16付きの円筒(内径61mm)11内に、図2(a)に示すようにして均一に充填する。この円筒11を図2(b)に示すようにビーカーから取り出し、図2(c)に示すように、受け容器(バット)18上に置き、ガラスフィルター(GIグレード,外径60mm,厚さ5mm)12をのせ、更にその上にリング状のおもり(外径50mm,内径30mm,重さ150g)13及び加圧用のおもり(外径60mm,重さ960g)14を順にのせて、5分間加圧する。5分間の加圧後、図2(d)に示すように、加圧用のおもり14を取り除き、40mLの0.9%食塩水15を一気に注ぎ入れ、液の注入開始時からガラスフィルター12上の液がなくなるまでの時間(S1)を測定する。次いで、再度加圧用のおもり14をのせて5分間加圧し、5分間の加圧後、上記の操作を行い同様にガラスフィルター12上の液がなくなるまでの時間(S2)を測定する。この操作を合計3回繰り返して時間S1,S2,S3を測定し、平均時間S=(S1+S2+S3)/3を求める。求めた平均時間Sから次式により加圧通液速度を算出する。尚、図2中、17は、円筒11の下方が密閉空間とならないようにするスペーサーである。
【0075】
加圧通液速度(mL/分)=(40/S)×60
・重合体粒子の安定性の評価法
0.05重量%濃度のL−アスコルビン酸を含有した生理食塩水45gで1gの重合体粒子を膨潤させ、これをスクリュー管に入れ、40℃の恒温槽中に置き、3時間後のゲルの様子を観察した。安定性評価の尺度は次の4段階とした。
◎;膨潤粒子は、流動性も曳糸性もなく、そのままの形状を示す。
○;膨潤粒子は、若干の流動性と曳糸性を有するが、そのままの形状を示す。
△;溶解までには至らないが、膨潤粒子は、流動性と曳糸性を有し、形状が不明瞭化する。
×;溶解が一部生じ、液状のものが見られ半数以上の粒子は形状を残さない。
【0076】
この評価において、○以上は生理用ナプキン、紙おむつ、成人シーツ、タンポン、衛生綿等に用いられる吸水性ポリマーとして好適であることを示す。
【0077】
実施例1
撹拌機,還流冷却管,モノマー滴下口,窒素ガス導入管,温度計を取り付けたSUS304製5L反応容器(アンカー翼使用)に分散剤として下記式(II−1)で表される陰イオン界面活性剤を0.10%[対アクリル酸重量]仕込み、重合溶媒ヘプタン1600mLを加えた。溶存酸素を追い出す目的で窒素ガスを吹き込み、アンカー翼を300r/minで撹拌し、内温88℃まで昇温した。
【0078】
C12H25O(PO)0.2(EO)2SO3Na (II−1)
一方、2L三つ口フラスコ中に、東亞合成(株)製80%アクリル酸506.2g、イオン交換水200.2gを仕込み、氷冷しながら旭硝子(株)製48%苛性ソーダ水溶液347.1gを滴下し、モノマー水溶液としてのアクリル酸ナトリウム水溶液1053.5gを得た。このモノマー水溶液に、N−パーム油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ソーダ(味の素(株)製、商品名 アミソフトPS−11)0.245gをイオン交換水3gに溶解させたものを添加し、暫く撹拌した後、264g、264g、528gに三分割した。
【0079】
次いで、和光純薬工業(株)製2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(商品名V−50)0.0408g、花王(株)製ポリエチレングリコール(PEG6000)0.204g、イオン交換水9gを混合溶解し、開始剤(A)水溶液を調製した。また、和光純薬工業(株)製過硫酸ナトリウム0.61gをイオン交換水10gに溶解し、開始剤(B)水溶液を調製した。さらに、クエン酸チタン水溶液(クエン酸/Tiモル比1.0、固形分19.0%、Ti量0.039%[対アクリル酸])を調製した。
【0080】
三分割したモノマー水溶液の1つ(264g)に、開始剤(A)水溶液2.31gを加えた(モノマー(1))。また、三分割したもう1つのモノマー水溶液(264g)に、開始剤(A)水溶液6.93gとクエン酸チタン水溶液1.57gを加えた(モノマー(2))。三分割した残りのモノマー水溶液(528g)に、開始剤(B)水溶液10.61gとクエン酸チタン水溶液3.15gを加えた(モノマー(3))。
【0081】
前述の5L反応容器の内温が88℃であることを確認した後、モノマー滴下口からマイクロチューブポンプを用いて、モノマー(1)を15分かけて滴下し重合した。引き続き、モノマー(2)を15分かけて滴下し重合した。さらに引き続き、モノマー(3)を30分かけて滴下し重合した。重合終了後、脱水管を用いて共沸脱水を行い、重合体粒子の含水量を重合体粒子100部に対して60部に調整した。その後、架橋剤としてナガセ化成工業(株)製エチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名デナコールEX−810)0.122gを水10gに溶解したものを添加した。その後、更に共沸脱水を行い、重合体粒子の含水量を重合体粒子100部に対して40部に調整した。冷却後、ヘプタンをデカンテーションで除き、130℃、約6.7kPa、14時間の条件で乾燥させることにより重合体粒子を得た。得られた重合体粒子について、平均粒径及び嵩比重を測定した。
【0082】
この重合体粒子100部に対し日本アエロジル(株)製アエロジル2000.5部をドライブレンドすることにより表面処理を行った。この表面処理後の重合体粒子について、吸水量、吸水速度、加圧通液速度及び安定性の評価を行った。
これらの結果を表1に示す。」
・「【0086】
【表1】



(イ)甲2発明
甲2に記載された事項を、特に実施例1に関して整理すると、甲2には次の発明が記載されていると認める。
「撹拌機,還流冷却管,モノマー滴下口,窒素ガス導入管,温度計を取り付けたSUS304製5L反応容器(アンカー翼使用)に分散剤として式C12H25O(PO)0.2(EO)2SO3Naで表される陰イオン界面活性剤を0.10%[対アクリル酸重量]仕込み、重合溶媒ヘプタン1600mLを加え、溶存酸素を追い出す目的で窒素ガスを吹き込み、アンカー翼を300r/minで撹拌し、内温88℃まで昇温する一方、2L三つ口フラスコ中に、東亞合成(株)製80%アクリル酸506.2g、イオン交換水200.2gを仕込み、氷冷しながら旭硝子(株)製48%苛性ソーダ水溶液347.1gを滴下し、モノマー水溶液としてのアクリル酸ナトリウム水溶液1053.5gを得、このモノマー水溶液に、N−パーム油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ソーダ(味の素(株)製、商品名 アミソフトPS−11)0.245gをイオン交換水3gに溶解させたものを添加し、暫く撹拌した後、264g、264g、528gに三分割し、次いで、和光純薬工業(株)製2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(商品名V−50)0.0408g、花王(株)製ポリエチレングリコール(PEG6000)0.204g、イオン交換水9gを混合溶解し、開始剤(A)水溶液を調製し、また、和光純薬工業(株)製過硫酸ナトリウム0.61gをイオン交換水10gに溶解し、開始剤(B)水溶液を調製し、さらに、クエン酸チタン水溶液(クエン酸/Tiモル比1.0、固形分19.0%、Ti量0.039%[対アクリル酸])を調製し、三分割したモノマー水溶液の1つ(264g)に、開始剤(A)水溶液2.31gを加え(モノマー(1))、また、三分割したもう1つのモノマー水溶液(264g)に、開始剤(A)水溶液6.93gとクエン酸チタン水溶液1.57gを加え(モノマー(2))、三分割した残りのモノマー水溶液(528g)に、開始剤(B)水溶液10.61gとクエン酸チタン水溶液3.15gを加え(モノマー(3))、前述の5L反応容器の内温が88℃であることを確認した後、モノマー滴下口からマイクロチューブポンプを用いて、モノマー(1)を15分かけて滴下し重合し、引き続き、モノマー(2)を15分かけて滴下し重合し、さらに引き続き、モノマー(3)を30分かけて滴下し重合し、重合終了後、脱水管を用いて共沸脱水を行い、重合体粒子の含水量を重合体粒子100部に対して60部に調整し、その後、架橋剤としてナガセ化成工業(株)製エチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名デナコールEX−810)0.122gを水10gに溶解したものを添加し、その後、更に共沸脱水を行い、重合体粒子の含水量を重合体粒子100部に対して40部に調整し冷却後、ヘプタンをデカンテーション
で除き、130℃、約6.7kPa、14時間の条件で乾燥させることにより重合体粒子を得、この重合体粒子100部に対し日本アエロジル(株)製アエロジル200 0.5部をドライブレンドすることにより表面処理を行った、表面処理後の重合体粒子。」(以下、「甲2発明」という。)

ウ 甲3に記載された事項及び甲3発明
(ア)甲3に記載された事項
甲3には、「吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤、その製造方法及び吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸基及び/又はその塩含有不飽和モノマーを重合してなり、略球状体、その凝集体又は略球状体由来の凝集体のうちの少なくとも1種である吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、下記(a)、(b)、(c)及び(d)を満たす粒子状吸水剤。
(a)生理食塩水への無加圧下吸収倍率(CRC)が32g/g以上
(b)質量平均粒子径(D50)が200μm以上400μm以下
(c)粒子径150μm未満の粒子の含有量が0質量%以上5質量%以下
(d)ガス検知管により測定される雰囲気濃度としての揮発性有機物の含有量が0ppm以上100ppm以下
【請求項2】
酸基及び/又はその塩含有不飽和モノマーを重合してなり、略球状体、その凝集体又は略球状体由来の凝集体のうちの少なくとも1種である吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、下記(a)、(b)、(c)及び(e)を満たす粒子状吸水剤。
(a)生理食塩水への無加圧下吸収倍率(CRC)が32g/g以上
(b)質量平均粒子径(D50)が200μm以上400μm以下
(c)粒子径150μm未満の粒子の含有量が0質量%以上5質量%以下
(e)180℃で3時間加熱したのちの残存モノマーの含有量が0ppm以上500ppm以下
【請求項3】
酸基及び/又はその塩含有不飽和モノマーを逆相懸濁重合してなる吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、下記(a)、(b)、(c)及び(d)を満たす粒子状吸水剤。
(a)生理食塩水への無加圧下吸収倍率(CRC)が32g/g以上
(b)質量平均粒子径(D50)が200μm以上400μm以下
(c)粒子径150μm未満の粒子の含有量が0質量%以上5質量%以下
(d)ガス検知管により測定される雰囲気濃度としての揮発性有機物の含有量が0ppm以上100ppm以下
【請求項4】
酸基及び/又はその塩含有不飽和モノマーを逆相懸濁重合してなる吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、下記(a)、(b)、(c)及び(e)を満たす粒子状吸水剤。
(a)生理食塩水への無加圧下吸収倍率(CRC)が32g/g以上
(b)質量平均粒子径(D50)が200μm以上400μm以下
(c)粒子径150μm未満の粒子の含有量が0質量%以上5質量%以下
(e)180℃で3時間加熱したのちの残存モノマーの含有量が0ppm以上500ppm以下
【請求項5】
少なくとも一部が造粒粒子である請求項1から4のいずれかに記載の粒子状吸水剤。
【請求項6】
さらに、水不溶性無機微粒子を含んでなる請求項1から5のいずれかに記載の粒子状吸水剤。」
・「【0011】
上記のように多くの技術が提案されているが、近年、紙オムツ等の吸収体において吸水性樹脂の使用量が多くなって、吸水性樹脂濃度が高い(吸水性樹脂の質量比が高い)吸収体となる傾向を示しており、従来の吸水性樹脂では、高濃度での使用に十分な性能が示されず、また高濃度では消臭性能も十分とはいえないという問題がある。また、オムツ中の吸水性樹脂の使用量が増加するに伴い、残存モノマーの低減がより求められるようになっている。
【0012】
本発明の目的は、優れた吸収性物品を与えるため、オムツ等の吸収体における高濃度での実使用に好適な吸水性樹脂を含む粒子状吸水剤及びその製造方法の提供にある。すなわち、課題(優れた吸収性物品)の解決手段として、本発明はさらなる付加機能を有する吸水剤であって、消臭性能に優れ、膨潤後に発生する臭気が無く、実使用に好適な吸水剤及びその製造方法の提供にある。」
・「【0026】
本発明では吸水性樹脂として、本発明を達成する上で、酸基及び/又はその塩含有不飽和モノマーを架橋重合した吸水性樹脂(架橋重合した構造である吸水性樹脂であれば良く、酸基及び/又はその塩含有不飽和モノマーを重合後に、架橋剤により架橋反応して得られる吸水性樹脂でも良い)が必須に用いられる。好ましくは、アクリル酸及び/又はその塩(中和物)を主成分とする不飽和モノマーを重合・架橋することにより得られるポリアクリル酸(部分)中和物ポリマーが用いられる。」
・「【0030】
本発明でアクリル酸(塩)以外のモノマーを用いる場合、本発明を達成するため、該アクリル酸(塩)以外のモノマー(但し、下記の架橋モノマーを除く)の使用割合は、主成分として用いるアクリル酸及びその塩との合計量に対して、好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜10モル%、最も好ましくは0〜5モル%とされる。」
・「【0094】
本発明の(a)無加圧下吸収倍率(CRC)は32g/g以上、下限が、より好ましくは35g/g、さらに好ましくは40g/g、特に好ましくは45g/g、上限が、より好ましくは70g/g、さらに好ましくは65g/g、特に好ましくは60g/gとされる。吸収倍率が32g/g未満である場合、オムツに使用した場合、高物性が示されない。」
・「【0112】
(1)生理生理食塩水(0.90質量%塩化ナトリウム水溶液)に対する無加圧下吸収倍率(CRC/Cenrifuge Retension Capacity) 吸水剤0.20gを不織布製の袋(60mm×85mm)に均一に入れ、25±2℃に調温した生理食塩水中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン製、型式H−122小型遠心分離機)を用いて250G(250×9.81m/s2)で3分間水切りを行った後、袋の質量W2 (g)を測定した。また吸水剤を用いないで同様の操作を行い、そのときの質量W1(g)を測定した。そして、これら質量W1 、W2 から、次式に従って、吸収倍率(g/g)を算出した。
無加圧下吸収倍率(g/g)=((質量W2 (g)−質量W1 (g))/吸水剤の質量(g))−1」
・「【0148】
[アクリル酸の製造例1]
市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm含有)を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)等の除去後、さらに晶析を行なうことで、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm含有)を得た。」
・「【0151】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却機、温度計、窒素ガス導入管及び滴下漏斗を付した2Lの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(第一工業薬品株式会社製、DK−エステルF−50、HLB=6)3.8gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。フラスコ中に、製造例1のアクリル酸の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、製造例1のアクリル酸21.6g及びN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらにヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC−ダイセルEP−850)0.4gを溶解させ、モノマー濃度35質量%のモノマー水溶液を調製した。このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する酸素を追い出した。次いでこのフラスコ内のモノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて攪拌することにより分散させた。その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了した。重合終了後、シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去した後、ろ過し、80℃で減圧乾燥し、球状のポリマー粉体を得た。得られたポリマー粉体の含水率は、5.6%であった。
【0152】
上記ポリマー100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部と、1,4−ブタンジオール0.3質量部と、水2.7質量部とからなる表面架橋剤3.53質量部とを混合した。上記の混合物を210℃で45分間加熱処理した。表面架橋後さらに、水3質量部を添加して60℃で30分密閉して加熱し、850μmで分級することで造粒された粒子状吸水剤(1)を得た。得られた粒子状吸水剤(1)の無加圧下吸収倍率、1.9kPaでの加圧下吸収倍率、粒度分布、質量平均粒子径(D50)、対数標準偏差(σζ)及び粒子径150μm未満の質量百分率、水可溶分、耐尿性評価、吸収速度、吸湿ブロッキング率、揮発性有機溶媒、及び180℃での3時間加熱後の残存モノマーの含有量が表1及び表2に示される。」
・「【0155】
[実施例2]
実施例1で得られた粒子状吸水剤(1)100質量部に微粒子状の二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製、アエロジル200(1次粒子の平均粒子径12nm))0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)して、粒子状吸水剤(2)を得た。」

(イ)甲3発明
甲3に記載された事項を、特に実施例2に関して整理すると、甲3には次の発明が記載されていると認める。
「攪拌機、還流冷却機、温度計、窒素ガス導入管及び滴下漏斗を付した2Lの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(第一工業薬品株式会社製、DK−エステルF−50、HLB =6)3.8gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出し、フラスコ中に、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm含有)の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、製造例1のアクリル酸21.6g及びN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらにヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC−ダイセルEP−850)0.4gを溶解させ、モノマー濃度35質量%のモノマー水溶液を調製し、このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する酸素を追い出し、次いでこのフラスコ内のモノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて攪拌することにより分散させた後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了後、シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去した後、ろ過し、80℃で減圧乾燥し、球状のポリマー粉体を得、得られた上記ポリマー100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部と、1,4−ブタンジオール0.3質量部と、水2.7質量部とからなる表面架橋剤3.53質量部とを混合し、上記の混合物を210℃で45分間加熱処理し、表面架橋後さらに、水3質量部を添加して60℃で30分密閉して加熱し、850μmで分級することで造粒された粒子状吸水剤(1)を得、得られた粒子状吸水剤(1)100質量部に微粒子状の二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製、アエロジル200(1次粒子の平均粒子径12nm))0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)して得られた、粒子状吸水剤(2)」(以下、「甲3発明」という。)

エ 甲4に記載された事項及び甲4発明
(ア)甲4に記載された事項
甲4には、「吸水剤およびその製法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸およびその塩を含む単量体を重合して得られる架橋構造を有する吸水性樹脂が表面架橋された吸水性樹脂粒子を主成分とする吸水剤であって、該吸水剤が、下記(a)〜(e)の要件を満たす吸水剤。
(a)850μm未満で150μm以上の粒子が全体の90重量%以上
(b)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45
(c)0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)が20g/g以上
(d)0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)が29g/g以上、39g/g未満の範囲
(e)以下の式1で表される化学架橋指数が160以上
化学架橋指数=(CRCs)/(CRCdw)×1000 (式1)
CRCs(g/g):0.9重量%食塩水の吸収倍率
CRCdw(g/g):純水の吸収倍率
・・・<略>・・・
【請求項8】
前記吸水剤が液透過性向上剤(F)を含む請求項1〜7のいずれか一つに記載の吸水剤。
・・・<略>・・・
【請求項16】
吸水性樹脂粒子100重量部あたり液透過性向上剤0.001〜5重量部をさらに混合する、請求項10〜15の何れか一つに記載の吸水剤の製造方法。
・・・<略>・・・
【請求項18】
前記液透過性向上剤が無機粒子または多価金属化合物の少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする請求項13、16、17の何れか一つに記載の吸水剤の製造方法。」
・「【0014】
従って、本発明の目的は、上述した問題点を解決し、優れたゲル特性(すなわち特定の粒度分布、特定の0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)、特定の0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)、特定の化学架橋指数または加圧下化学架橋指数)を有し、紙おむつ等の衛生材料の吸水体に使用された場合、優れた性能を示す吸水剤およびその製法を提供することにある。
【0015】
また、本発明の他の目的は、上述した問題を解決し、吸水性樹脂含有量の多い薄型の衛生材料・吸収性物品に用いられるのに適した、高い吸収倍率を有し、かつ本質的なゲル安定性が高く、より高い液透過特性を有し、かつ安全性に優れた吸水剤及びその製法を提供することにある。」
・「【0035】
本発明にかかる吸水剤の製法は、ある特定の吸水性樹脂を合成し、この吸水性樹脂を特定の粒度分布とし、さらに特定の表面処理剤で表面処理する製法である。また、本発明にかかる吸水剤は、必要に応じて、通液性向上剤を添加する製法である。(1)吸水性樹脂粒子の製法(1−1)単量体(A) 本発明で用いる単量体(A)は、アクリル酸および/またはその塩を主成分として含有してなっている。上記単量体(A)中におけるアクリル酸および/またはその塩の含有率は、吸水剤の吸収特性およびゲル特性をさらに向上させるために、70〜100モル%であるのが好ましく、80〜100モル%であるのがより好ましく、90〜100モル%であるのが最も好ましい。」
・「【0084】
本発明で使用される液透過性向上剤(F)は、例えば、親水性の無機化合物が挙げられ、水不溶性親水性の無機微粒子や水溶性の多価金属塩などが好ましく用いられる。本発明でいう親水性とは例えば、EP0629411に記載されている親水性度が70%以上のものが挙げられる。本発明において、カチオン性高分子化合物(US5797893のカラム11に例示されているものなど)や疎水性の無機微粒子などは液透過性を向上させ、液透過性向上剤(F)として使用可能であるが、吸水剤の接触角を増加させ、CSFの低下を招く場合があるため、使用されることは好ましくない場合がある。吸水剤の表面張力を低下させるような界面活性剤は、CSFの低下を招くため、本発明に使用されることは好ましくない。本発明で使用される液透過性向上剤(F)が無機微粒子の場合、その粒子径は取り扱い性や添加効果の点から、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることが最も好ましい。前記粒子径は、1次粒子の粒子径である場合と2次粒子(造粒物、凝集体)の粒子径である場合の両方の場合を含む。非凝集体(1次粒子)のシリカやアルミナなどのように粒子の硬度が高く、衝撃力で容易に壊れない化合物の粒子を使用する場合は、凝集体や造粒物の1次粒子の粒子径は好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下、最も好ましくは0.1μm以下である。」
・「【0164】
なお、衛生材料などの最終製品として使用された吸水剤の場合は、吸水剤は吸湿しているので、適宜、吸水剤を最終製品から分離して減圧低温乾燥後(例えば、1mmHg以下、60℃で12時間)に測定すればよい。また、本発明の実施例および比較例において使用された吸水剤の含水率はすべて6重量%以下であった。(1)0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs) 0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)は0.9重量%食塩水に対する無加圧下で30分の吸収倍率を示す。本発明において、0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)と無加圧下吸収倍率とは同義である。
【0165】
吸水性樹脂または、吸水剤0.20gを不織布製(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP−22)の袋(85mm×60mm)に均一に入れてシールした後、室温で大過剰(通常500ml程度)の0.9重量%食塩水中に浸漬した。(吸水性樹脂のCRCsを測定する場合には、300〜500μmに分級したものを使用する。該当する粒度範囲が存在しないサンプルの場合には、分級せずにそのままの粒度で測定に用いる)。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H−122)を用いてedana ABSORBENCY II 441.1−99に記載の遠心力(250G)で3分間水切りを行った後、袋の重量W1(g)を測定した。また、同様の操作を、吸水性樹脂あるいは吸水剤を用いずに行い、その時の重量W0(g)を測定した。そして、これらW1、W0から、次式に従って0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)(g/g)を算出した。
【0166】
0.9重量%食塩水の吸収倍率(g/g)
=(W1(g)−W0(g))/(吸水剤の重量(g))−1
(2)純水の吸収倍率(CRCdw)
純水の吸収倍率(CRCdw)は純水に対する無加圧下で30分の吸収倍率を示す。なお、純水の電気伝導率は25℃において、1.0〜2.0μS/cmとする。」
・「【0175】
特表平9−509591の塩水流れ誘導性(SFC)試験に準じて行った。
【0176】
図1に示す装置を用い、容器40に均一に入れた吸水剤(0.900g)を人工尿(1)中で0.3psi(2.07kPa)の加圧下、60分間膨潤させ、ゲル44のゲル層の高さを記録し、次に0.3psi(2.07kPa)の加圧下、0.69重量%食塩水33を、一定の静水圧でタンク31から膨潤したゲル層を通液させる。このSFC試験は室温(20〜25℃)で行った。コンピューターと天秤を用い、時間の関数として20秒間隔でゲル層を通過する液体量を10分間記録する。膨潤したゲル44(の主に粒子間)を通過する流速Fs(T)は増加重量(g)を増加時間(s)で割ることによりg/sの単位で決定する。一定の静水圧と安定した流速が得られた時間をTsとし、Tsと10分間の間に得たデータだけを流速計算に使用して、Tsと10分間の間に得た流速を使用してFs(T=0)の値、つまりゲル層を通る最初の流速を計算する。Fs(T=0)はFs(T)対時間の最小2乗法の結果をT=0に外挿することにより計算される。
【0177】
0.69重量%食塩水流れ誘導性
=(Fs(T=0)×L0)/(ρ×A×ΔP)
=(Fs(T=0)×L0)/139506
ここで、
Fs(T=0):g/sで表した流速
L0:cmで表したゲル層の高さ
ρ:NaCl溶液の密度(1.003g/cm3)
A:セル41中のゲル層上側の面積(28.27cm2)
ΔP:ゲル層にかかる静水圧(4920dyne/cm2)
およびSFC値の単位は(10−7・cm3・s・g−1)である。
【0178】
図1に示す装置としては、タンク31には、ガラス管32が挿入されており、ガラス管32の下端は、0.69重量%食塩水33をセル41中の膨潤ゲル44の底部から、5cm上の高さに維持できるように配置した。タンク31中の0.69重量%食塩水33は、コック付きL字管34を通じてセル41へ供給された。セル41の下には、通過した液を補集する容器48が配置されており、補集容器48は上皿天秤49の上に設置されていた。セル41の内径は6cmであり、下部の底面にはNo.400ステンレス製金網(目開き38μm)42が設置されていた。ピストン46の下部には液が通過するのに十分な穴47があり、底部には吸水剤あるいはその膨潤ゲルが、穴47へ入り込まないように透過性の良いガラスフィルター45が取り付けてあった。セル41は、セルを乗せるための台の上に置かれ、セルと接する台の面は、液の透過を妨げないステンレス製の金網43の上に設置した。
【0179】
人工尿(1)は、塩化カルシウムの2水和物0.25g、塩化カリウム2.0g、塩化マグネシウムの6水和物0.50g、硫酸ナトリウム2.0g、りん酸2水素アンモニウム0.85g、りん酸水素2アンモニウム0.15g、および、純水994.25gを加えたものを用いた。」
・「【0248】
(実施例15)
断熱材である発泡スチロールで覆われた内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸192.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)2.79g、およびジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.01gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液156.8gと40℃に調温したイオン交換水239.3gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系で一気に加え混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液(単量体濃度39重量%、中和率71.3モル%が得られた。さらに、この単量体水溶液に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液8.89gを加え、数秒攪拌した後すぐに、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。
【0249】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生し上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、3分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0250】
この細分化された含水重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で40min間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級することにより、重量平均粒子径325μm、対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは31.4g/g、ゲル層膨潤圧は40.1kdyne/cm2であった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0251】
得られた吸水性樹脂粒子100重量部にエチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール1重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を190℃で35分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(15)の諸物性を表12に示した。」
・「【0270】
(実施例20)
実施例15に記載の方法においてポリエチレングリコールジアクリレートを0.05モル%に変更した以外は同様の操作を行い、重量平均粒子径323μm、対数標準偏差(σζ)0.37の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは43.5g/g、ゲル層膨潤圧は35.1kdyne/cm2であった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0271】
得られた吸水性樹脂100重量部に1,4−ブタンジオール0.5重量部、プロピレングリコール0.5重量部、純水4重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を200℃で35分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(20)の諸物性を表12に示した。」
・「【0282】
(実施例32)
実施例20で得られた吸水剤(20)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた吸水剤の諸物性を表14、15に示した。」
・「【0296】
【表14】



(イ)甲4発明
甲4に記載された事項を、特に実施例32に関して整理すると、甲4には次の発明が記載されていると認める。
「断熱材である発泡スチロールで覆われた内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸192.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.05モル%、およびジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.01gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液156.8gと40℃に調温したイオン交換水239.3gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系で一気に加え混合し、中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液(単量体濃度39重量%、中和率71.3モル%が得られ、さらに、この単量体水溶液に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液8.89gを加え、数秒攪拌した後すぐに、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注ぎ、単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始し、水蒸気を発生し上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮し、この膨張収縮は約1分以内に終了し、3分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出し、この細分化された含水重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で40min間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級することにより、重量平均粒子径323μm、対数標準偏差(σζ)0.37の不定形破砕状の吸水性樹脂を得、得られた吸水性樹脂100重量部に1,4−ブタンジオール0.5重量部、プロピレングリコール0.5重量部、純水4重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を200℃で35分間加熱処理し、さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂(20)を得、得られた吸水剤(20)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合して得られた、吸水剤。」(以下、「甲4発明」という。)

オ 甲5に記載された事項及び甲5発明
(ア)甲5に記載された事項
甲5には、「粒子状吸水剤」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「請求の範囲
[請求項1]遠心分離機保持容量(CRC)が30〜50g/gである、粒子状吸水剤であって、重量平均粒子径(D50)が200〜600μmであり、以下の式であらわされるDRC指数が43以下である、粒子状吸水剤:
DRC指数(Index of DRC)=(49−DRC5min[g/g])/(D50[μm]/1000)。・・・<略>・・・
[請求項4]食塩水流れ誘導性(SFC)が0〜30未満(×10−7・cm3・s・g−1)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。 ・・・<略>・・・
[請求項17]ハイドロタルサイト構造を有する2価及び3価の2種類の金属カチオンと水酸基とを含有する多元金属化合物、およびリン酸類のアニオンと2価あるいは3価の金属カチオンとからなる水不溶性金属リン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの吸湿流動性改善剤をさらに含有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。」
・「[0011] 本発明者らは、鋭意検討をした結果、重合後の含水ゲルの粉砕(ゲル粉砕)における粉砕エネルギーを大きくする事によって、高吸水倍率と高吸水速度を両立した粒子状吸水剤を製造できることを見出し、可能になることを見出した。」
・「[0017] 本発明により、従来の製造方法で得られた吸水剤に比べて、吸水倍率と吸水速度の双方が優れた粒子状吸水剤が開発された。本発明によりまた、従来の製造方法で得られた吸水剤に比べて、吸水倍率と吸水速度の双方が優れ、高湿条件下でのブロッキング抑制(吸湿流動性)および/または高加圧下吸収量を備えた粒子状吸水剤が開発された。」
・「[0028] (1−3)「ポリアクリル酸(塩)」
本発明における「ポリアクリル酸(塩)」とは、ポリアクリル酸及び/又はその塩を指し、主成分として、アクリル酸及び/又はその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)を繰り返し単位として含み、任意成分としてグラフト成分を含む重合体を指す。ポリアクリル酸はポリアクリルアミドやポリアクリニトリルなどの加水分解で得てもよいが、好ましくはアクリル酸(塩)の重合で得られる。
[0029] なお、上記「主成分」とは、アクリル酸(塩)の使用量(含有量)が、重合に用いられる単量体(内部架橋剤を除く)全体に対して、通常50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、更に好ましくは実質100モル%であることをいう。」
・「[0031] (1−4−1)「CRC」(ERT441.2−02)
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、粒子状吸水剤または吸水性樹脂の無加圧下吸水倍率(「吸水倍率」と称する場合もある)を意味する。
[0032] 具体的には、粒子状吸水剤または吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)で水切りした後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。」
・「[0043] (1−5)「浸漬保持容量5分値」(DRC5min、Dunk Retention Capacity 5minutes)
「DRC5min」は、5分での無加圧下での吸水倍率を意味する。具体的には、粒子状吸水剤または吸水性樹脂1.0gを、上記AAPの測定と同様に、底面にメッシュを有する円筒形のセルに均一に散布し、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に5分間接触させて自由膨潤させた後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。測定方法の詳細は実施例の項に記述する。」
・「[0045] (1−7)「通液性」
本発明における粒子状吸水剤または吸水性樹脂の「通液性」とは、荷重下又は無荷重下での膨潤ゲルの粒子間を通過する液の流れ性のことをいい、代表的な測定方法として、SFC(Saline Flow Conductivity/食塩水流れ誘導性)やGBP(Gel Bed Permeability/ゲル床透過性)がある。
[0046] 「SFC」は、2.07kPa荷重下での粒子状吸水剤または吸水性樹脂に対する0.69重量%塩化ナトリウム水溶液の通液性をいい、米国特許第5669894号に開示されるSFC試験方法に準拠して測定される。
「GBP」は、荷重下膨潤GBP(国際公開第2005/016393号)ないし自由膨潤GBP(国際公開第2004/096304号)があり、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液での荷重70.3psiでの通液性が評価される。」
・「[0163] DRC5min(浸漬保持容量5分値)
本発明の粒子状吸水剤のDRC5minは、上記DRC指数を満たせば特に限定されないが、好ましくは35g/g以上、38g/g以上、40g/g以上である。上限も特に限定されないが、通常60g/g以下、55g/g以下である。」
・「[0260] (a)遠心分離機保持容量(CRC)
本発明の粒子状吸水剤または吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(無加圧下吸水倍率、CRC)は、EDANA法(ERT441.2−02)に準拠して測定した。」
・「[0264] (e)食塩水流れ誘導性(SFC)
本発明の粒子状吸水剤または吸水性樹脂の食塩水流れ誘導性(SFC)は、米国特許第5669894号に開示された測定方法に準拠して測定した。
[0265] (f)浸漬保持容量5分値:Dunk Retention Capacity(DRC5min)
図1に示す装置を用い、内径60mmのプラスチックの支持円筒100の底に、ステンレス製400メッシュの金網101(目の大きさ38μm)を融着させ、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、該網上に粒子状吸水剤または吸水性樹脂1.000±0.005gを均一に散布し、この測定装置一式の重量Wa(g)を測定した。
[0266] 底面積が400cm2の円形もしくは正方形のペトリ皿103の内側に直径120mmのガラスフィルター104(株式会社相互理化学硝子製作所社製、細孔直径:100〜120μm)を置き、0.90重量%食塩水106(23±0.5℃)をガラスフィルターの上面と同じレベル(ガラスフィルターの外周上に液が表面張力でわずかに浮き上がっている状態、もしくはガラスフィルターの表面の50%程度が液に覆われている状態)になるように加えた。その上に、直径110mmの濾紙105(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を1枚載せ、濾紙の全面が濡れるようにした。
[0267] 上記測定装置一式を前記湿った濾紙上に載せ、液を吸収させた(測定中も液温度は厳密に23±0.5℃に管理される)。厳密に5分(300秒)後、測定装置一式を持ち上げ、その質量Wb(g)を測定した。そして、Wa、Wbから、下記の式に従ってDRC5min(g/g)を算出した。DRC5min[g/g]={(Wb−Wa)/(粒子状吸水剤または吸水性樹脂の重量)}」
・「[0294] [ペイントシェーカーテスト]
ペイントシェーカーテスト(PS−test)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で30分間、振盪するものであり、装置詳細は特開平9−235378号公報に開示されている。」
・「[0331] [製造例2]
アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61重量部、1.0重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5重量部、脱イオン水346.1重量部からなる単量体水溶液(2)を作製した。
[0332] 次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(2)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングした。尚、この時、中和熱によって単量体水溶液(2)の液温は81℃まで上昇した。
[0333] 更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(2)を得た。得られた帯状の含水ゲル(2)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲル(2)を得た。含水ゲル(2)は、CRC36.0[g/g]、樹脂固形分48.1重量%であった。」
・「[0351] [実施例1]
(ゲル粉砕)
上記製造例1で得られた含水ゲル(1)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕した。該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径9.5mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mmのミートチョッパーを使用した。該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rpmとした状態で、含水ゲル(1)を4640[g/min]、同時に、水蒸気を83[g/min]でそれぞれ供給する。この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は26.9[J/g]、GGE(2)は13.6[J/g]であった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(1)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粉砕ゲル、即ち粒子状含水ゲル(1)の温度は85℃に上昇していた。
[0352] 上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(1)は、樹脂固形分49.1重量%、重量平均粒子径(D50)994μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)1.01であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(1)の物性を表2に示す。
[0353](乾燥)
次に、上記粒子状含水ゲル(1)をゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲル(1)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(1)を得る。熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]である。尚、熱風の風速は、日本カノマックス株式会社製定温度熱式風速計アネモマスター 6162で測定する。
[0354](粉砕・分級)
次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(1)全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(1)を得る。吸水性樹脂粒子(1)は、重量平均粒子径(D50)348μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32であり、CRC42.1[g/g]、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.5重量%である。
[0355](表面処理・添加剤添加)
次に、上記吸水性樹脂粒子(1)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、1,4−ブタンジオール0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(1)のCRCが35g/gとなるように加熱処理する。その後冷却を行い、上記ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合する。60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4重量部を均一に添加する。こうして、粒子状吸水剤(1)を得た。粒子状吸水剤(1)の諸物性を表3〜6に示す。なお、ペイントシェーカーテスト後の150μm通過粒子増加量は粒子状吸水剤に対して、さらにペイントシェーカーテストを実施した際(おむつなどの吸収体製造時のプロセスダメージを想定したもの)の150μm通過粒子の増加量を示す。
[0356] [実施例2]
実施例1と以下に示す操作以外は同様の操作を行う。含水ゲル(1)のかわりに上記製造例2で得られた含水ゲル(2)を用いる。スクリュー押出機の先端部の多孔板の孔径を8mmに変更する。この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9[J/g]、GGE(2)は17.5[J/g]であった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(2)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粉砕ゲル、即ち粒子状含水ゲル(2)の温度は84℃に上昇していた。
[0357] 上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(2)は、樹脂固形分47.5重量%、重量平均粒子径(D50)860μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.95であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(2)の物性を表2に示す。
[0358] 次いで、実施例1と同様の乾燥・粉砕・分級操作を行い、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(2)を得る。吸水性樹脂粒子(2)は、重量平均粒子径(D50)355μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32であり、CRC48.2[g/g]、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子
の割合)0.4重量%である。
[0359] 次に、上記吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(2)のCRCが38g/gとなるように加熱処理する。その後、実施例1と同様の操作を行う。こうして、粒子状吸水剤(2)を得た。粒子状吸水剤(2)の諸物性を表3〜6に示す。」
・「[0380] [実施例11−5]
実施例11−1の表面処理条件を、以下のとおり変更した。
吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.030重量部、プロピレングリコール1.0重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、100℃で45分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(11−5)のCRCが35〜36g/gとなるように加熱処理した。その後冷却を行い、上記ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、ハイドロタルサイト(製品名:DHT−6、協和化学工業株式会社製、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O[一般式(1)のx=0.25、m=0.50]、体積平均粒子径0.5μm)0.3重量部を均一に混合した。こうして、粒子状吸水剤(11−5)を得た。
粒子状吸水剤(11−5)の諸物性を表3〜5に示す。なお、ペイントシェーカーテスト後の150μm通過粒子増加量は粒子状吸水剤に対して、さらにペイントシェーカーテストを実施した際(おむつなどの吸収体製造時のプロセスダメージを想定したもの)の150μm通過粒子の増加量を示す。」
・「[表3-1]



(イ)甲5発明
甲5に記載された事項を、特に実施例3、実施例11−5に関して整理すると、甲5には次の発明が記載されていると認める。
「アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61重量部、1.0重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5重量部、脱イオン水346.1重量部からなる単量体水溶液(2)を作製し、次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(2)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングし(尚、この時、中和熱によって単量体水溶液(2)の液温は81℃まで上昇した。)、更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給し、その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(2)を得、得られた帯状の含水ゲル(2)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲル(2)を得、得られた含水ゲル(2)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕し(該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径8mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mmのミートチョッパーを使用した。該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rp
mとした状態で、含水ゲル(2)を4640[g/min]、同時に、水蒸気を83[g/min]でそれぞれ供給した。)、粒子状含水ゲル(2)を得、次に、上記粒子状含水ゲル(2)をゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲル(2)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(2)を得(熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]である。)、次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(2)全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(2)を得、次に、上記吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(2)のCRCが38g/gとなるように加熱処理し、その後冷却を行い、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で30分間、振盪し、製造プロセス相当のダメージを付与した
後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合し、60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4重量部を均一に添加して得られた、粒子状吸水剤(3)。」(以下、「甲5−実施例3発明」という。)
「アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61重量部、1.0重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5重量部、脱イオン水346.1重量部からなる単量体水溶液(2)を作製し、次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(2)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングし(尚、この時、中和熱によって単量体水溶液(2)の液温は81℃まで上昇した。)、更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給し、その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(2)を得、得られた帯状の含水ゲル(2)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲル(2)を得、得られた含水ゲル(2)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕し(該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径8mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mmのミートチョッパーを使用した。該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rp
mとした状態で、含水ゲル(1)を4640[g/min]、同時に、水蒸気を83[g/min]でそれぞれ供給した。)、次に、上記粒子状含水ゲル(2)をゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲル(2)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(2)を得(熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]である。)、次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(2)全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(2)を得、次に、上記吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、加熱処理し、その後冷却を行い、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で30分間、振盪し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合し、60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、ハイドロタルサイト(製品名:DHT−6、協和化学工業株式会社製、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O[一般式(1)のx=0.25、m=0.50]、体積平均粒子径0.5μm)0.3重量部を均一に混合して得られた、粒子状吸水剤(11−5)。」(以下、「甲5−実施例11−5発明」という。)

カ 甲6に記載された事項及び甲6発明
(ア)甲6に記載された事項
甲6には、「吸水性シート、長尺状吸水性シートおよび吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「[0563] [製造例b]
アクリル酸300質量部、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61質量部、1.0質量%のエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5質量部及び脱イオン水346.1質量部からなる単量体水溶液(b)を調製した。
[0564] 次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(b)を定量ポンプで連続供給した後、さらに48質量%の水酸化ナトリウム水溶液150.6質量部を連続的にラインミキシングした。なお、この時、中和熱によって単量体水溶液(b)の液温は81℃まで上昇した。
[0565] 次に、4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液14.6質量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚さが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(b)を得た。得られた帯状の含水ゲル(b)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、短冊状の含水ゲル(b)を得た。当該含水ゲル(b)は、CRCが36.0g/g、含水率が51.9質量%(樹脂固形分が48.1重量%)であった。」
・「[0585] [製造例2]
上記製造例bで得られた短冊状の含水ゲル(b)について、下記の条件変更以外は製造例1と同様のゲル粉砕を行い、粒子状含水ゲル(2)を得た。
[0586] 製造例2において、スクリュー押出機の多孔板の孔径を9.5mmから8mmに変更した。該変更によって、多孔板の開孔率は25.6%となった。なお、製造例2でのゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9J/g、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は17.5J/gであった。また、ゲル粉砕前の含水ゲル(b)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲル(2)の温度は84℃であった。
[0587] 上記ゲル粉砕後に得られた粒子状含水ゲル(2)は、含水率が52.5質量%、質量平均粒子径(D50)が860μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.95であった。表2にゲル粉砕条件及び粒子状含水ゲル(2)の物性を示した。
[0588] 次いで、製造例1と同様の乾燥、粉砕、分級を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(2)を得た。該吸水性樹脂粉末(2)は、質量平均粒子径(D50)が355μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.32、CRCが48.2g/g、粒子径150μm未満の粒子の割合(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)が0.4質量%であった。
[0589] 次に、上記吸水性樹脂粉末(2)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、エチレンカーボネート0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部及び脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液(2)を添加して、均一になるまで混合した。その後、得られる吸水性樹脂粒子(2)のCRCが38g/gとなるように、190℃で30分間程度、加熱処理した。その後、60℃まで強制冷却した。
[0590] その後、製造例1と同様の操作を行うことによって、粒子状吸水剤(2)を得た。表3〜5に粒子状吸水剤(2)の物性を示した。
[0591] [製造例3]
上記製造例2で得られた乾燥重合体(2)について、下記の条件変更以外は製造例2と同様の粉砕及び分級を行い、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(3)を得た。つまり、製造例3の分級においては、目開き710μmの篩を目開き850μmの篩に変更した。
[0592] 上記吸水性樹脂粉末(3)は、質量平均粒子径(D50)が431μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.35、CRCが48.2g/g、粒子径150μm未満の粒子の割合(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)が0.3質量%であった。
[0593] その後、製造例2と同様の表面架橋を行い、目開き850μmの篩に通過させた後、さらに製造例2と同様に処理を行って、粒子状吸水剤(3)を得た。表3〜5に粒子状吸水剤(3)の物性を示した。」
・「[表3-1]


・「[表4-1]


・「[0682] [製造例11−1]
製造例2で得られた吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、175℃で40分間程度加熱処理した。このとき、得られる吸水性樹脂粉末(11−1)のCRCが38〜40g/gとなるように加熱処理した。その後冷却を行い、上記ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、ハイドロタルサイト(製品名:DHT−6、協和化学工業株式会社製、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O[一般式のx=0.25、m=0.50]、体積平均粒子径0.5μm)0.3重量部を均一に混合した。こうして、粒子状吸水剤(11−1)を得た。粒子状吸水剤(11−1)の諸物性を表3、4、13に示す。」
・「[0688] [製造例11−5]
製造例11−1の表面処理条件を、以下のとおり変更した。
[0689] 吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.030重量部、プロピレングリコール1.0重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、100℃で45分間程度加熱処理した。このとき、得られる吸水性樹脂粉末(11−5)のCRCが35〜36g/gとなるように加熱処理した。その後冷却を行い、上記ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、ハイドロタルサイト(製品名:DHT−6、協和化学工業株式会社製、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O[一般式のx=0.25、m=0.50]、体積平均粒子径0.5μm)0.3重量部を均一に混合した。こうして、粒子状吸水剤(11−5)を得た。粒子状吸水剤(11−5)の諸物性を表3、4、13に示す。なお、ペイントシェーカーテスト後の150μm通過粒子増加量は、粒子状吸水剤に対してさらにペイントシェーカーテストを実施した際の、150μm通過粒子の増加量を示す。このペイントシェーカーテストにより粒子状吸水剤
に与えられるダメージは、紙オムツ等の吸収体製造時のプロセスダメージを想定したものである。」

(イ)甲6発明
甲6に記載された事項を、特に実施例3、実施例11−5に関して整理すると、甲6には次の発明が記載されていると認める。
「アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61重量部、1.0重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5重量部、脱イオン水346.1重量部からなる単量体水溶液(b)を作製し、次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(b)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングし(尚、この時、中和熱によって単量体水溶液(b)の液温は81℃まで上昇した。)、更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給し、その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(b)を得、得られた帯状の含水ゲル(b)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、短冊状の含水ゲル(b)を得、得られた含水ゲル(b)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕し(該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径8mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mm
のミートチョッパーを使用した。該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rpmとした状態で、含水ゲル(b)を4640[g/min]、同時に、水蒸気を83[g/min]でそれぞれ供給した。)、粒子状含水ゲル(2)を得、次に、上記粒子状含水ゲル(2)をゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲル(2)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(2)を得(熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]である。)、次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(2)全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(2)を得、次に、上記吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(2)のCRCが38g/gとなるように加熱処理し、その後冷却を行い、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cy
cle/min(CPM)で30分間、振盪し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合し、60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4重量部を均一に添加して得られた、粒子状吸水剤(3)。」(以下、「甲6−実施例3発明」という。)
「アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61重量部、1.0重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5重量部、脱イオン水346.1重量部からなる単量体水溶液(b)を作製し、次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(b)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングし(尚、この時、中和熱によって単量体水溶液(b)の液温は81℃まで上昇した。)、更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給し、その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(b)を得、得られた帯状の含水ゲル(b)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、短冊状の含水ゲル(b)を得、得られた含水ゲル(b)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕し(該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径8mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mmのミートチョッパーを使用した。該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rpmとした状態で、含水ゲル(b)を4640[g/min]、同時に、水蒸気を83[g/min]でそれぞれ供給した。)、粒子状含水ゲル(2)を得、次に、上記粒子状含水ゲル(2)をゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲル(2)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(2)を得(熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]である。)、次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(2)全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(2)を得、次に、上記吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、加熱処理し、その後冷却を行い、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で30分間、振盪し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合し、60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、ハイドロタルサイト(製品名:DHT−6、協和化学工業株式会社製、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O[一般式(1)のx=0.25、m=0.50]、体積平均粒子径0.5μm)0.3重量部を均一に混合して得られた、粒子状吸水剤(11−5)。」(以下、「甲6−実施例11−5発明」という。)

キ 甲7に記載された事項及び甲7発明
(ア)甲7に記載された事項
甲7には、「吸収剤組成物および吸収体、並びに、吸収体を含む吸収物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】20g/cm2 の荷重下における、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収指数が1.5g/g・min以上であることを特徴とする吸収剤組成物。
・・・<略>・・・
【請求項4】請求項1ないし3の何れか1項に記載の吸収剤組成物を含み、かつ、該吸収剤組成物の含有量が40重量%以上であることを特徴とする吸収体。
【請求項5】請求項4に記載の吸収体を含む吸収層を、透液性を有するシートと、不透液性を有するシートとで挟持してなることを特徴とする吸収物品。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、紙オムツ(使い捨てオムツ)や生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料等に好適に用いられる吸収剤組成物および吸収体、並びに、吸収体を含む吸収物品に関するものである。」
・「【0009】従って、本発明の目的は、上述した問題点を解決し、例えば、吸収体や吸収物品における吸水性樹脂の重量%を高くしても、常時、非常に高い液拡散性を維持すると共に、吸収体や吸収物品の単位重量当たりの吸収量を保持する等の優れた性能(吸収特性)を示すことができる吸収剤組成物、および、吸収体、並びに、吸収体を含む吸収物品を提供することにある。」
・「【0027】上記の吸水性樹脂としては、例えば、カルボキシル基を含有する吸水性架橋重合体が好適である。該吸水性架橋重合体は、例えば、アクリル酸またはその塩を主成分とする親水性不飽和単量体を(共)重合(以下、単に重合と記す)させることにより得られる。そして、該吸水性架橋重合体のうち、ポリアクリル酸塩の架橋重合体がさらに好ましい。また、ポリアクリル酸塩の架橋重合体は、該架橋重合体中の酸基のうち、50モル%〜90モル%が、例えば、アルカリ金属塩やアンモニウム塩、アミン塩等によって中和されていることがより好ましい。」
・「【0029】上記の親水性不飽和単量体は、必要に応じて、アクリル酸またはその塩以外の不飽和単量体(以下、他の単量体と記す)を含有していてもよい。他の単量体としては、具体的には、例えば、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸等の、アニオン性不飽和単量体およびその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン等の、ノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、および、これらの四級塩等の、カチオン性不飽和単量体;等が挙げられるが、特に
限定されるものではない。これら他の単量体を併用する場合の使用量は、親水性不飽和単量体全体の30モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい
。」
・「【0049】本発明にかかる吸収剤組成物に必要に応じて含まれる水不溶性無機粉体としては、具体的には、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、タルク、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、珪酸、珪酸塩、粘土、珪藻土、ゼオライト、ベントナイト、カオリン、ハイドロタルサイト、活性白土等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら水不溶性無機粉体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。上記例示の水不溶性無機粉体のうち、微細な非晶質二酸化ケイ素がより好ましい。また、該非晶質二酸化ケイ素の粒子径は、1,000μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、10μm以下が特に好ましい。
【0050】水不溶性無機粉体の使用量は、吸収剤組成物の用途等にもよるが、吸水性樹脂100重量部に対して、0.05重量部〜2重量部の範囲内が好ましく、0.1重量部〜1重量部の範囲内がより好ましい。水不溶性無機粉体の使用量が0.05重量部よりも少ない場合には、所望の拡散吸収指数を備えた吸収剤組成物が得られないおそれがある。また、水不溶性無機粉体の使用量を2重量部よりも多くしても、該使用量に見合った効果が得られ難いので、経済的に不利となるおそれがある。」
・「【0075】(a)吸収倍率
吸収剤組成物0.2gを不織布製の袋(60mm×60mm)に均一に入れ、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)中に室温で浸漬した。60分後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250Gで3分間水切りを行った後、袋の重量W1 (g)を測定した。また、同様の操作を吸収剤組成物を用いないで行い、そのときの重量W0 (g)を測定した。そして、これら重量W1 ・W0 から、次式、
吸収倍率(g/g)=(重量W1 (g)−重量W0 (g))/吸収剤組成物の重量(g)に従って吸収倍率(g/g)を算出した。」
・「【0084】(c)拡散吸収指数
拡散吸収指数は、上記拡散吸収倍率の測定に用いた測定装置を用い、シート8上 に支持円筒9を載置した時点から、吸収剤組成物が60分間かけて吸収していく生理食塩水12の重量を、天秤1を用いて経時的に測定することによって求めた。つまり、天秤1を用いて生理食塩水12の重量を分単位、より好ましくは秒単位で測定し、これら測定結果から、単位時間当たりの最大吸収量を求め、その値を拡散吸収指数(g/g・min)とした。」
・「【0096】(f)吸収物品の性能評価(キューピー人形テスト)
測定すべき吸収物品は、下記の方法により作成した。即ち、先ず、吸収剤組成物50重量部と、木材粉砕パルプ50重量部とを、ミキサーを用いて乾式混合した。次いで、得られた混合物を、400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されたワイヤースクリーン上にバッチ型空気抄造装置を用いて空気抄造することにより、120mm×400mmの大きさのウェブに成形した。さらに、このウェブを圧力2kg/cm2 で5秒間プレスすることにより、坪量が約0.047g/cm2 の吸収体を得た。
【0097】続いて、不透液性のポリプロピレンからなり、いわゆるレッグギャザーを有するバックシート(液不透過性シート)、上記の吸収体、および、透液性のポリプロピレンからなるトップシート(液透過性シート)を、両面テープを用いてこの順に互いに貼着すると共に、この貼着物に2つのいわゆるテープファスナーを取り付けることにより、吸収物品(つまり、紙オムツ)を得た。」
・「【0100】〔実施例1〕中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(親水性不飽和単量体)39重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのトリメチロールプロパントリアクリレート3.59gを溶解させて反応液とした。次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。」
・「【0108】〔実施例3〕アクリル酸20重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのN,N’−メチレンビスアクリルアミド2.35gを溶解させて反応液とした。次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。次いで、実施例1の反応器と同様の反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。
【0109】続いて、反応液を攪拌しながら、過硫酸アンモニウム1.5gおよびL−アスコルビン酸0.07gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、30℃〜80℃で重合を行い、重合を開始してから60分後に、中和剤である炭酸ナトリウム606.7gを加えて攪拌し、中和した。その後、反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出した。
【0110】得られた含水ゲル状重合体は、中和率が75モル%であり、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュの金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュの金網で分級することにより、平均粒子径が390μmで、しかも、粒子径が106μm未満の粒子の割合が4重量%の不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体を得た。
【0111】得られた吸水性樹脂前駆体100重量部に、第一表面架橋剤としてのプロピレングリコール〔SP値:δ=12.6(cal/cm3)1/2〕0.75重量部と、第二表面架橋剤としてのプロピレングリコールジグリシジルエーテル〔SP値:δ=10.1(cal/cm3 )1/2 〕0.05重量部と、水3重量部と、エチルアルコール0.75重量部とからなる表面架橋剤溶液を混合した。上記の混合物を195℃で40分間加熱処理することにより、吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂の平均粒子径は390μmであり、粒子径が106μm未満の粒子の割合は3重量%であった。
【0112】次に、上記の吸水性樹脂100gに、水不溶性無機粉体としての微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・レオロシールQS−20;徳山曹達株式会社(現・株式会社トクヤマ)製)0.3gを添加・混合することにより、本発明にかかる吸収剤組成物を得た。」
・「【0137】
【表1】



(イ)甲7発明
甲7に記載された事項を、特に実施例3に関して整理すると、甲7には次の発明が記載されていると認める。
「アクリル酸20重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのN,N’−メチレンビスアクリルアミド2.35gを溶解させて反応液とし、次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気し、次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、続いて、反応液を攪拌しながら、過硫酸アンモニウム1.5gおよびL−アスコルビン酸0.07gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始し、そして、30℃〜80℃で重合を行い、重合を開始してから60分後に、中和剤である炭酸ナトリウム606.7gを加えて攪拌し、中和し、その後、反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体は、中和率が75モル%であり、その径が約5mmに細分化されており、この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュの金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥し、次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュの金網で分級することにより、平均粒子径が390μmで、しかも、粒子径が106μm未満の粒子の割合が4重量%の不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体を得、得られた吸水性樹脂前駆体100重量部に、第一表面架橋剤としてのプロピレングリコール〔SP値:δ=12.6(cal/cm3)1/2〕0.75重量部と、第二表面架橋剤としてのプロピレングリコールジグリシジルエーテル〔SP値:δ=10.1(cal/cm3 )1/2 〕0.05重量部と、水3重量部と、エチルアルコール0.75重量部とからなる表面架橋剤溶液を混合し、上記の混合物を195℃で40分間加熱処理することにより、吸水性樹脂を得、次に、上記の吸水性樹脂100gに、水不溶性無機粉体としての微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・レオロシールQS−20;徳山曹達株式会社(現・株式会社トクヤマ)製)0.3gを添加・混合することにより、得られた吸収剤組成物。」(以下、「甲7発明」という。)

ク 甲8に記載された事項及び甲8発明
(ア)甲8に記載された事項
甲8には、「吸水性樹脂粒子、その製造方法、およびそれを用いた吸収体」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「[0009] 本発明の目的は、高い水分率において粉体流動性に優れ、粒子強度に優れ、機械的な衝撃を受けた後でも粒子径の保持率および加圧吸水能の保持率が高い吸水性樹脂粒子、その製造方法、およびそれを用いた吸収体を提供することにある。」
・「[0019] 水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸〔「(メタ)アタリ」 とは「アタリ」または「メタタリ」を意味する。以下同じ〕、 2−(メタ)アクリルアミド− 2−メ チルプロパンスルホン酸またはその塩;(メタ)アクリルアミド、 N, N−ジメチルアクリルアミド、 2−ヒドロキシエチル (メタ)アタリレート、 N−メチロール (メタ)アクリルアミド等のノニオン性モノマー;ジエチルアミノエチル(メタ)アタリレート、ジエチルアミノプロピ ル (メタ)アタリレート等のアミノ基含有不飽和モノマーまたはその四級化物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。」
・「[0037] 以下に本発明の吸水性樹脂粒子が用いられた吸収体について説明する。本発明の吸収体は、吸水性樹脂粒子、親水性繊維および透水性のシートからなる。なお、本発明の吸収体は、紙おむつ、失禁パッド、生理用ナプキン、ペットシート等の使い捨ての吸収性物品に好ましく用いられる。」
・「[0041] また、本発明の吸収体が用いられる吸収性物品は、水性液体が透過しうる液体透過性シート(トップシート)と、水性液体が透過しない液体不透過性シート(バックシー ト)との間に保持された構造を有する。液体透過性シートは、身体と接触する側に配され、液体不透過性シートは、身体と接触する側の反対側に配される。」
・「[0045] 製造例1
内容積500mlの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92gを入れ、氷冷しながら20.0質量%水酸化ナトリウム水溶液154.1gを滴下してアクリル酸の中和を行い、アクリル酸部分中和塩水溶液を調製した。得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、架橋剤としてN, N'−メチレンビスアクリルアミド9.2mgおよび水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.11gを添加し、これを単量体水溶液とした。
一方、攪拌機、2段パドル翼、還流冷却器、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた内容積 2リットルの五つ口円筒型丸底フラスコに、n−ヘプタン340gと、界面活性剤として、ショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社の商品名;リョート一シュガーエステル S−370) 0. 92gを加えてn−ヘプタンに溶解させた後、上記の重合用の単量体水溶液を加えて 35℃に保ち攪拌下で懸濁した。その後、系内を窒素で置換後、70℃の水浴を用いて昇温して逆相懸濁重合を行った。
[0046] 次いで、別に、内容積500mlの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8gを入れ、氷冷しながら24.7質量%水酸化ナトリウム水溶液173.8gを滴下してアクリル酸の中和を行い、アクリル酸部分中和塩水溶液を調製した。得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、架橋剤としてN, N'−メチレンビスアクリルアミド12.9mgおよび水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.16gを添加し、これを第2段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液とした。
第1段目の逆相懸濁重合の終了後、重合スラリーを冷却し、第2段目重合用の単量体水溶液を系内に滴下し、23℃に保ちながら30分間攪拌を行った。その後、系内を窒素で置換し、70℃の水浴を用いて昇温して第2段目の逆相懸濁重合を行った。重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により、266gの水を系外に除去し、2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.83gを添加し、80℃で2時間保持し、後架橋処理を行った。さらに水およびn−ヘプタンを蒸留により除去して乾燥し、質量平均粒子径が360μm、水分率5%の吸水性樹脂粒子227.2gを得た。
・・・<略>・・・
[0049] 実施例3
製造例1と同様にして得られた吸水性樹脂粒子200gに非晶質シリカ粒子2g ((株)トクヤマ製、トクシールNP)を添加、混合後、内容積2リットルのセパラブルフラスコに入れ、撹拌しながら室温下、加湿機((株)トヨトミ製、ハイブリッド加湿器)により水添加量0.4L/hで45分間、セパラブルフラスコ内を加湿し、水分率17%の吸水性樹脂粒子を得た。」
・「[0057] (2)生理食塩水保水能
吸水性樹脂粒子2.00gを、綿袋(メンブロード60番、横100mmX縦200mm)に入れ、500mLのビーカー内に入れた。この綿袋内に生理食塩水500gを注ぎ込み、開口部を輪ゴムで縛り、1時間放置した。その後、遠心力167Gの脱水機(国産遠心機 (株)製、品番H−122)を用いて、前記綿袋を1分間脱水し、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時空質量Wb(g)を測定し、次式により生理食塩水保水能を算出した。
生理食塩水保水能(g/g) = [Wa-Wb](g)/2.00(g)」
・「[0067] [表1]


・「請求の範囲
[1] 水溶性エチレン性不飽和単量体を水溶性ラジカル重合開始剤を用いて、要すれば架橋剤の存在下に重合し、吸水性樹脂粒子前駆体を得た後、後架橋剤を添加して粒子の表面層を架橋し、非晶質シリカ粒子を添加して得られる吸水性樹脂粒子であって、水分率が10〜20%であり、粒子衝突試験前後における粒子径保持率が90%以上であることを特徴とする吸水性樹脂粒子。
[2] 粒子衝突試験前後における加圧吸水能保持率が60%以上であることを特徴とする請求項1記載の吸水性樹脂粒子。
[3] 水溶性エチレン性不飽和単量体を水溶性ラジカル重合開始剤を用いて、要すれば架橋剤の存在下に重合し、吸水性樹脂粒子前駆体を得た後、後架橋剤を添加して前記粒子の表面層を架橋し、非晶質シリカ粒子を添加して得られる吸水性樹脂粒子の水分率を10〜20%に調整することを特徴とする、粒子衝突試験前後における粒子径保持率が90%以上である吸水性樹脂粒子の製造方法。」

(イ)甲8発明
甲8に記載された事項を、特に実施例3に関して整理すると、甲8には次の発明が記載されていると認める。
「内容積500mlの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92gを入れ、氷冷しながら20.0質量%水酸化ナトリウム水溶液154.1gを滴下してアクリル酸の中和を行い、アクリル酸部分中和塩水溶液を調製し、得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、架橋剤としてN, N'−メチレンビスアクリルアミド9.2mgおよび水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.11gを添加し、これを単量体水溶液とする一方、攪拌機、2段パドル翼、還流冷却器、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた内容積2リットルの五つ口円筒型丸底フラスコに、n−ヘプタン340gと、界面活性剤として、ショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社の商品名;リョートーシュガーエステル S−370)0.92gを加えてn−ヘプタンに溶解させた後、上記の重合用の単量体水溶液を加えて35℃に保ち攪拌下で懸濁し、その後、系内を窒素で置換後、70℃の水浴を用いて昇温して逆相懸濁重合を行い、次いで、別に、内容積500mlの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8gを入れ、氷冷しながら24.7質量%水酸化ナトリウム水溶液173.8gを滴下してアクリル酸の中和を行い、アクリル酸部分中和塩水溶液を調製し、得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、架橋剤としてN, N'−メチレンビスアクリルアミド12.9mgおよび水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.16gを添加し、これを第2段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液とし、第1段目の逆相懸濁重合の終了後、重合スラリーを冷却し、第2段目重合用の単量体水溶液を系内に滴下し、23℃に保ちながら30分間攪拌を行った後、系内を窒素で置換し、70℃の水浴を用いて昇温して第2段目の逆相懸濁重合を行い、重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により、266gの水を系外に除去し、2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.83gを添加し、80℃で2時間保持し、後架橋処理を行い、さらに水およびn−ヘプタンを蒸留により除去して乾燥し、質量平均粒子径が360μm、水分率5%の吸水性樹脂粒子を得、得られた吸水性樹脂粒子200gに非晶質シリカ粒子2g((株)トクヤマ製、トクシールNP)を添加、混合後、内容積2リットルのセパラブルフラスコに入れ、撹拌しながら室温下、加湿機((株)トヨトミ製、ハイブリッド加湿器)により水添加量0.4L/hで45分間、セパラブルフラスコ内を加湿して得られた、水分率17%の吸水性樹脂粒子。」(以下、「甲8発明」という。)

ケ 参考資料1に記載された事項
参考資料1には、「吸水性樹脂粒子の製造方法、それにより得られる吸水性樹脂粒子、およびそれを用いた吸収体および吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「[0006] 本発明の目的は、高い保水能(吸収容量)、高い加圧下吸水能およびゲル強度を有し、かつ、水可溶分が少なぐ衛生材料に好適に使用できる吸水性#脂粒子の製造方法、それにより得られる吸水性#脂粒子、およびそれを用いた吸収体および吸収性物品を提供することにある。」
・「[0048] 実施例1
工程1:吸水性脂粒子前駆体の調製
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた1000mL容の五つ口円筒型丸底フラスコ内に、n―ヘプタン340gおよびHLBが3.0のショ糖脂肪酸エステル〔三菱化学フーズ株式会社製、商品名:S―370〕0.92gを加え、分散させながら70℃まで昇温して溶解させた後、55℃まで冷却した。
[0049] これとは別に、500mL容の三角フラスコ内に、80.5質量%アクリル酸水溶液92g(1.02モル)を加えた。外部から冷却しつつ、このフラスコ内に、30質量%水酸化ナトリウム水溶液102.2g(0.77モル)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和した。さらに、水50. 2g、水溶性ラジカル重合開始剤の過硫酸カリウム0.11g(0.00041モル)および架橋剤のエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg(0.000047モル)を添加し、1段目重合用の単量体水溶液を調製した。
この1段目重合用の単量体水溶液の全量を、前記五つ口円筒型丸底フラスコに、撹拌下で加えて分散させ、系内を窒素ガスで十分に置換し、浴温を70℃に保持し、重合反応を1時間行った。その後、得られたスラリー状の反応混合物を室温まで冷却した。
[0050] これとは別の500mL容の三角フラスコ内に、80. 5質量%アクリル酸水溶液119.1g(1.32モル)を加え、冷却しつつ30質量%水酸化ナトリウム水溶液132.2g(0.99モル)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和し、さらに水27. 4gおよび過硫酸カリウム0.14g(0.00052モル)を添加し、2段目重合用の単量体水溶液を調製し、氷水浴内で冷却した。
この2段目重合用の単量体水溶液の全量を、前記で得られた反応混合物に添加した後、再び系内を窒素ガスで十分に置換し、浴温を70℃に保持し、2段目の重合反応を2時間行った。
[0051] 重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水234gのみを系外に除去し、吸水性樹脂粒子前駆体を得た。この時の吸水性樹脂粒子前駆体の残存水分量は84gであり、水分率は40%であった(本実施例の理論樹脂固形分量は209gである)
[0052] 工程2:吸水性樹脂粒子の製造
得られた吸水性樹脂粒子前駆体に、後架橋剤として2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.22g(0.00049モル)を添加して混合した。
この混合物を120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水のみを系外に除去しながら第1の後架橋反応を行った。この時28gの水分が除去され、残存水分量は60gで、水分率29%となった。
引続き、後架橋剤として2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液2.53g(0.00029モル)を添加して混合した。
この混合物を120℃の油浴で加熱し、得られたゲル状物の水分およびn―ヘプタンを蒸留により除去、乾燥しながら第2の後架橋反応を行い、質量平均粒子径が381μmの吸水性樹脂粒子222.5gを得た。なお、この吸水性樹脂粒子の最終水分率(乾燥減量)は5%であった。」
・「[0054] 実施例3
工程1:吸水性樹脂粒子前駆体の調製
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた1000mL容の五つ口円筒型丸底フラスコ内に、n―ヘプタン340gおよびHLBが3.0のショ糖脂肪酸エステル〔三菱化学フーズ株式会社製、商品名:S―370〕0.92gを加え、分散させながら70℃まで昇温して溶解させた後、55℃まで冷却した。
[0055] これとは別に、500mL容の三角フラスコ内に、80.5質量%アクリル酸水溶液92g(1.02モル)を加えた。外部から冷却しつつ、このフラスコ内に、30質量%水酸化ナトリウム水溶液102.2g(0.77モル)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和した。さらに、水50.2g、水溶性ラジカル重合開始剤の過硫酸カリウム 0.11g(0.00041モル)および架橋剤のエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg(0.000047モル)を添加し、1段目重合用の単量体水溶液を調製した。
この1段目重合用の単量体水溶液の全量を、前記五つ口円筒型丸底フラスコに、撹拌下で加えて分散させ、系内を窒素ガスで十分に置換し、浴温を70℃に保持し、重合反応を1時間行った。その後、得られたスラリー状の反応混合物を室温まで冷却した。
[0056] これとは別の500mL容の三角フラスコ内に、80.5質量%アクリル酸水溶液119.1g(1.32モル)を加え、冷却しつつ30質量%水酸化ナトリウム水溶液132.2g(0.99モル)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和し、さらに水27.4g、過硫酸カリウム0.14g(0.00052モル)および亜リン酸二ナ卜リウム−五水和物0.54g(0.0025モル)を添加し、2段目重合用の単量体水溶液を調製し、氷水浴内で冷却した。
この2段目重合用の単量体水溶液の全量を、前記で得られた反応混合物に添加した後、再び系内を窒素ガスで十分に置換し、浴温を70℃に保持し、2段目の重合反応を2時間行った。
[0057] 重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水224gのみを系外に除去し、吸水性樹脂粒子前駆体を得た。この時の吸水性樹脂粒子前駆体の残存水分量は94gであり、水分率は45%であった(本実施例の理論樹脂固形分量は209gである)。
[0058] 工程2:吸水性樹脂粒子の製造
得られた吸水性樹脂粒子前駆体に、後架橋剤として2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.22g(0.00049モル)を添加して混合した。
この混合物を120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水のみを系外に除去しながら第1の後架橋反応を行った。この時36gの水分が除去され、残存水分量は62gで、水分率30%となった。
引き続き、後架橋剤として、2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液1.48g(0.00017モル)を添加して混合した。
この混合物を120℃の油浴で加熱し、得られたゲル状物の水分およびn―ヘプタンを蒸留により除去、乾燥しながら第2の後架橋反応を行い、質量平均粒子径が380μmの吸水性樹脂粒子223.1gを得た。なお、この吸水性樹脂粒子の最終水分率(乾燥減量)は5%であった。」
・「請求の範囲
[1] 水溶性エチレン性不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子前駆体に、少なくとも2段階で後架橋剤を添加して後架橋反応を行う工程を含むことを特徴とする吸水性樹脂粒子の製造方法。
・・・
[5] 生理食塩水保水能が40〜60g/g、4.14kPa加圧下の生理食塩水吸水能が 15ml/g以上、ゲル強度が500Pa以上、水可溶分が15質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法で得られる吸水性樹脂粒子。」

(2)対比・判断
ア 甲1に基づく新規性進歩性について
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「親水性シリカ(エボニックデグサジャパン社:カープレックス#80)」は、本件特許発明1の「無機粒子」に相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
そして、両者は以下の点で相違又は一応相違する。
<相違点1−1−1>
本件特許発明1が「下記式(1):
しみわたり指数=無加圧DWの1分値(mL/g)+10倍膨潤時の人工尿通液速度(g/分) ・・・(1)
で表される、しみわたり指数が14.0以上」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1−1−2>
本件特許発明1が「無加圧DWの1分値が7.0mL/g以上」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1−1−3>
本件特許発明1が「10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1−1−4>
本件特許発明1が「生理食塩水の吸水量が57g/g以上」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1−1−A>
本件特許発明1が「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。
そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点1−1−A>から検討する。
甲1には、「荷重下における生理食塩水の吸水量」について何らの記載もなく、甲1発明が「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」である蓋然性が高いとは言えない。
したがって、<相違点1−1−A>は実質的な相違点である。
そして、甲1の段落[0008]によると、甲1発明は、「液漏れ頻度や液の逆戻り量を著しく低減することができる吸水性樹脂組成物を提供すること」を課題とするものであるから、甲1には、甲1発明において、「荷重下における生理食塩水の吸水量」を特定の値とする動機付けとなるような記載があるとはいえない。
したがって、甲1発明において、<相違点1−1−A>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年7月21日付けの意見書において、参考資料1を提出し、「荷重下における生理食塩水の吸水量」は吸水性樹脂に一般的に求められている物性であり、参考資料1は高い保水能と高い加圧下吸水能とを両立する技術であり、その製法は逆相懸濁重合に適用されていることを理由に、甲1発明に参考資料1を組み合わせる動機付けがある旨主張している。
しかしながら、甲1発明は、「液漏れ頻度や液の逆戻り量を著しく低減することができる吸水性樹脂組成物を提供すること」を課題とするものであるところ、「荷重下における生理食塩水の吸水量」が当該課題を解決する手段であるとは言えないのであるから、やはり参考資料1を参照しても、甲1発明において、「荷重下における生理食塩水の吸水量」を特定の値とする動機付けはない。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

イ 甲2に基づく新規性進歩性について
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「日本アエロジル(株)製アエロジル」は、本件特許発明1の「無機粒子」に相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
そして、両者は以下の点で相違又は一応相違する。
<相違点2−1−1>
本件特許発明1が「下記式(1):
しみわたり指数=無加圧DWの1分値(mL/g)+10倍膨潤時の人工尿通液速度(g/分) ・・・(1)
で表される、しみわたり指数が14.0以上」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2−1−2>
本件特許発明1が「無加圧DWの1分値が7.0mL/g以上」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2−1−3>
本件特許発明1が「10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2−1−4>
本件特許発明1が「生理食塩水の吸水量が57g/g以上」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2−1−A>
本件特許発明1が「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点2−1−A>から検討する。
甲2には、「荷重下における生理食塩水の吸水量」について何らの記載もなく、甲2発明が「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」である蓋然性が高いとは言えない。
したがって、<相違点2−1−A>は実質的な相違点である。
そして、甲2の段落【0007】によると、甲2発明は、「水性液体や体液を吸収した後でも分解/劣化の程度が小さく安定性が良好で、しかも吸水量が高く、吸水速度や加圧通液速度の速い重合体粒子及びその製造方法を提供すること」を課題とするものであるから、甲2には、甲2発明において、「荷重下における生理食塩水の吸水量」を特定の値とする動機付けとなるような記載があるとはいえない。
したがって、甲2発明において、<相違点2−1−A>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲2に記載された発明であるとはいえないし、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年7月21日付けの意見書において、参考資料1を提出し、「荷重下における生理食塩水の吸水量」は吸水性樹脂に一般的に求められている物性であり、参考資料1は高い保水能と高い加圧下吸水能とを両立する技術であり、その製法は逆相懸濁重合に適用されていることを理由に、甲2発明に参考資料1を組み合わせる動機付けがある旨主張している。
しかしながら、甲2発明は、「水性液体や体液を吸収した後でも分解/劣化の程度が小さく安定性が良好で、しかも吸水量が高く、吸水速度や加圧通液速度の速い重合体粒子及びその製造方法を提供すること」を課題とするものであるところ、「荷重下における生理食塩水の吸水量」が当該課題を解決する手段であるとは言えないのであるから、やはり参考資料1を参照しても、甲2発明において、「荷重下における生理食塩水の吸水量」を特定の値とする動機付けはない。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

ウ 甲3に基づく新規性進歩性について
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明を対比する。
甲3発明の「微粒子状の二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製、アエロジル200(1次粒子の平均粒子径12nm))」は、本件特許発明1の「無機粒子」に相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
そして、両者は以下の点で相違又は一応相違する。
<相違点3−1−1>
本件特許発明1が「下記式(1):
しみわたり指数=無加圧DWの1分値(mL/g)+10倍膨潤時の人工尿通液速度(g/分) ・・・(1)
で表される、しみわたり指数が14.0以上」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3−1−2>
本件特許発明1が「無加圧DWの1分値が7.0mL/g以上」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3−1−3>
本件特許発明1が「10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3−1−4>
本件特許発明1が「生理食塩水の吸水量が57g/g以上」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3−1−A>
本件特許発明1が「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
<相違点3−1−1>について検討する。
甲3発明を追試した実験成績証明書である甲11によると、甲3発明の「しみわたり指数」は「13.4」であるため、「しみわたり指数が14.0以上」である要件を満たさない。
したがって、<相違点3−1−1>は実質的な相違点である。
そして、甲3の段落【0012】によると、甲3発明は、「優れた吸収性物品を与えるため、オムツ等の吸収体における高濃度での実使用に好適な吸水性樹脂を含む粒子状吸水剤及びその製造方法の提供」を課題とするものであるから、甲3には、甲3発明において、「しみわたり指数が14.0以上」とする動機付けとなるような記載があるとはいえない。
また、異議申立人が提出したいずれの証拠にも、実験結果以外には、しみわたり指数について言及されておらず、また、「しみわたり指数が14.0以上」とする動機付けとなるような記載があるとはいえない。
したがって、甲3発明において、<相違点3−1−1>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲3発明であるとはいえないし、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲3に記載された発明であるとはいえないし、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年7月21日付けの意見書において、「本件の当初明細書にはしみわたり指数の下限の例示として14.0は記載されているが、しみわたり指数が14.0であることが13.4であることに対して臨界的意義を有することは読み取れない。よって訂正発明1は進歩性を有しない。」と主張している。
しかしながら、上記(ア)で述べたように、甲3には、甲3発明において、「しみわたり指数が14.0以上」とする動機付けとなるような記載があるとはいえず、また、その他の証拠にも、「しみわたり指数が14.0以上」とする動機付けとなるような記載がないのであるから、本件特許発明の「しみわたり指数」について、14.0以上であることの臨界的意義の如何を問わず、本件特許発明1及び2は進歩性を有するものである。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

エ 甲4に基づく新規性進歩性について
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4発明を対比する。
甲4発明の「ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)」は、本件特許発明1の「無機粒子」に相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
そして、両者は以下の点で相違又は一応相違する。
<相違点4−1−1>
本件特許発明1が「下記式(1):
しみわたり指数=無加圧DWの1分値(mL/g)+10倍膨潤時の人工尿通液速度(g/分) ・・・(1)
で表される、しみわたり指数が14.0以上」と特定されているのに対し、甲4発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点4−1−2>
本件特許発明1が「無加圧DWの1分値が7.0mL/g以上」と特定されているのに対し、甲4発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点4−1−3>
本件特許発明1が「10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下」と特定されているのに対し、甲4発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点4−1−4>
本件特許発明1が「生理食塩水の吸水量が57g/g以上」と特定されているのに対し、甲4発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点4−1−A>
本件特許発明1が「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」と特定されているのに対し、甲4発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点4−1−3>から検討する。
甲4発明を追試した実験成績証明書である甲12によると、甲4発明の「10倍膨潤時の人工尿通液速度」は「15.7g/分」であるため、「10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下」である要件を満たさない。
したがって、<相違点4−1−3>は実質的な相違点である。
そして、甲4の段落【0015】によると、甲4発明は、「吸水性樹脂含有量の多い薄型の衛生材料・吸収性物品に用いられるのに適した、高い吸収倍率を有し、かつ本質的なゲル安定性が高く、より高い液透過特性を有し、かつ安全性に優れた吸水剤及びその製法を提供すること」を課題とするものの、吸水性樹脂は、目的とするすべての物性を同時に満足させることが困難である、という技術常識を踏まえると、甲4発明において、他の吸水剤の物性値に影響を与えずに、「10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下」とすることは当業者にとって容易であるとはいえない。また、仮に10倍膨潤時の人工尿通液速度を変化させることができたとしても、変化後の他の物性がどのようになるかわからないから、その場合にも甲12を参照することができないため、<相違点4−1−3>は実質的な相違点となり、同様に「10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下」とすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、甲4発明において、<相違点4−1−3>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲4発明であるとはいえないし、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲4に記載された発明であるとはいえないし、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年7月21日付けの意見書において、「本件の10倍膨潤時の人工尿通液速度を15.0g/分以下とすることも甲4に基づき当業者が適宜なし得る設計事項であると言える。さらに、本件特許明細書には10倍膨潤時の人工尿通液速度の上限について15.0g/分以下、等の例示はあるものの([0017])、当該上限値の課題に対する貢献は読み取れない。従って10倍膨潤時の人工尿通液速度の上限を15.0g/分に特定しても訂正発明1が進歩性を有すると主張することはできない。」と主張している。
しかしながら、上記(ア)で述べたように、甲4には、甲4発明において、「10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下」とすることは当業者にとって容易であるとはいえないのであるから、本件特許発明1及び2において、「10倍膨潤時の人工尿通液速度」が15.0g/分以下であることの課題に対する貢献の有無を問わず、本件特許発明1及び2は進歩性を有するものである。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

オ 甲5(甲5−実施例3発明)に基づく新規性進歩性について
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲5−実施例3発明を対比する。
甲5−実施例3発明の「二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)」は、本件特許発明1の「無機粒子」に相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
そして、両者は以下の点で相違又は一応相違する。
<相違点5−1−1>
本件特許発明1が「下記式(1):
しみわたり指数=無加圧DWの1分値(mL/g)+10倍膨潤時の人工尿通液速度(g/分) ・・・(1)
で表される、しみわたり指数が14.0以上」と特定されているのに対し、甲5−実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点5−1−2>
本件特許発明1が「無加圧DWの1分値が7.0mL/g以上」と特定されているのに対し、甲5−実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点5−1−3>
本件特許発明1が「10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下」と特定されているのに対し、甲5−実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点5−1−4>
本件特許発明1が「生理食塩水の吸水量が57g/g以上」と特定されているのに対し、甲5−実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。
そこで、上記相違点について検討する。
<相違点5−1−A>
本件特許発明1が「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」と特定されているのに対し、甲5−実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点5−1−A>から検討する。
甲5−実施例3発明を追試した実験成績証明書である甲13(当審注:目開き850μmのJIS標準篩を用いていることから、甲5の実施例2ではなく、甲5の実施例3に記載の粒子状吸収剤を調整し実験したものの実験成績証明書であると認める。)によると、甲5−実施例3発明の「荷重下における生理食塩水の吸水量」は「15mL/g」であるため、「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」である要件を満たさない。
したがって、<相違点5−1−A>は実質的な相違点である。
そして、甲5の段落[0011]によると、甲5−実施例3発明は、「高吸水倍率と高吸水速度を両立した粒子状吸水剤」を提供することを課題とするものであるから、甲5には、甲5−実施例3発明において、「荷重下における生理食塩水の吸水量」を20〜40mL/gとする動機付けとなるような記載があるとはいえない。
したがって、甲5−実施例3発明において、<相違点5−1−A>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲5−実施例3発明であるとはいえないし、甲5−実施例3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲5−実施例3に記載された発明であるとはいえないし、甲5−実施例3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年7月21日付けの意見書において、「実施例2のAAPは28.1g/g、実施例3のAAPは27.1g/gであり、最も好ましい範囲は30〜40g/g([0175])である。AAPを最も好ましい範囲に調整したとき、本件訂正請求項1の荷重下における生理食塩水の吸水量の数値範囲を満たす蓋然性が高い。よって訂正発明1は新規性を有しない。また上述したように甲4には0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)が20g/g以上であることが開示されている。さらに、甲9にも、本件の荷重下における生理食塩水の吸水量と類似する、4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が18g/g以上、好ましくは20g/g以上であることが開示されている(請求項1、[0121]、[0237]〜[0241])。AAPsの荷重は4.83kPaであり、本件の荷重4.14kPaよりも大きいため、AAPが20g/g以上であれば、当然本件の荷重下における生理食塩水の吸水量も20mL/g以上である蓋然性が高い。よって、甲5を、甲4または甲9と組み合わせてAAPを向上させることにより 、訂正発明1の荷重下における生理食塩水の吸水量の数値範囲を満たす蓋然性が高いことから訂正発明1は進歩性を有しない。」と主張している。
しかしながら、上記(ア)で述べたように、甲5−実施例3発明の「荷重下における生理食塩水の吸水量」は「15mL/g」であるから、本件特許発明は甲5−実施例3発明に対し新規性を有するし、甲5には、甲5−実施例3発明において、「荷重下における生理食塩水の吸水量」を20〜40mL/gとする動機付けとなるような記載があるとはいえないのであるから、本件特許発明は甲5−実施例3発明に対し進歩性を有する。
さらに、吸水性樹脂は、目的とするすべての物性を同時に満足させることが困難である、という技術常識(甲5―実施例11−5発明では、「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」である物性を満たすものの、「生理食塩水の吸水量は57g/g以上」である物性は満たさない。)を踏まえると、たとえ甲4や甲9を参照したとしても、甲5−実施例3発明において、他の物性をそのままに、荷重下における生理食塩水の吸水量を「15mL/g」から「20〜40mL/g」とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

カ 甲5(甲5−実施例11−5発明)に基づく新規性進歩性について
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲5−実施例11−5発明を対比する。
甲5−実施例11−5発明の「ハイドロタルサイト(製品名:DHT−6、協和化学工業株式会社製、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O[一般式(1)のx=0.25、m=0.50]、体積平均粒子径0.5μm)」は、本件特許発明1の「無機粒子」に相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
そして、両者は以下の点で相違又は一応相違する。
<相違点5−2−1>
本件特許発明1が「下記式(1):
しみわたり指数=無加圧DWの1分値(mL/g)+10倍膨潤時の人工尿通液速度(g/分) ・・・(1)
で表される、しみわたり指数が14.0以上」と特定されているのに対し、甲5−実施例11−5発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点5−2−2>
本件特許発明1が「無加圧DWの1分値が7.0mL/g以上」と特定されているのに対し、甲5−実施例11−5発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点5−2−3>
本件特許発明1が「10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下」と特定されているのに対し、甲5−実施例11−5発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点5−2−4>
本件特許発明1が「生理食塩水の吸水量が57g/g以上」と特定されているのに対し、甲5−実施例11−5発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点5−2−A>
本件特許発明1が「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」と特定されているのに対し、甲5−実施例11−5発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点5−2−4>から検討する。
甲5−実施例11−5発明を追試した実験成績証明書である甲13によると、甲5−実施例11−5発明の「生理食塩水の吸水量」は「55.2g/g」であるため、「生理食塩水の吸水量が57g/g以上」である要件を満たさない。
したがって、<相違点5−2−4>は実質的な相違点である。
そして、甲5の段落[0011]によると、甲5−実施例11−5発明は、「高吸水倍率と高吸水速度を両立した粒子状吸水剤」を提供することを課題とするものであるところ、吸水性樹脂は、目的とするすべての物性を同時に満足させることが困難である、という技術常識(甲5―実施例3発明では、「生理食塩水の吸水量が57g/g以上」の物性を満たすものの、「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」の物性を満たさない。)を踏まえると、甲5−実施例11−5発明において、他の物性をそのままに、生理食塩水の吸水量を「55.2g/g」から「57g/g以上」とする動機付けはない。
したがって、甲5−実施例11−5発明において、<相違点5−2−4>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲5−実施例11−5発明であるとはいえないし、甲5−実施例11−5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲5−実施例11−5に記載された発明であるとはいえないし、甲5−実施例11−5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年7月21日付けの意見書において、「生理食塩水の吸水量が57g/g以上であることは、実質甲5発明に基づく調整範囲である。以上より、訂正発明1は進歩性を有しない。」と主張している。
しかしながら、上記(ア)で述べたように、甲5−実施例11−5発明において、他の物性をそのままに、生理食塩水の吸水量を「55.2g/g」から「57g/g以上」とすることは調整範囲とはいえない。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

キ 甲6に基づく新規性進歩性について
甲6−実施例3発明は、甲5−実施例3発明と同一である。また、甲6−実施例11−5発明は、甲5−実施例11−5発明と同一である。
よって、上記カで検討したように、本件特許発明1、2は甲6に記載された発明であるとはいえないし、甲6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ク 甲7に基づく新規性進歩性について
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲7発明を対比する。
甲7発明の「微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・レオロシールQS−20;徳山曹達株式会社(現・株式会社トクヤマ)製)」は、本件特許発明1の「無機粒子」に相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
そして、両者は以下の点で相違又は一応相違する。
<相違点7−1−1>
本件特許発明1が「下記式(1):
しみわたり指数=無加圧DWの1分値(mL/g)+10倍膨潤時の人工尿通液速度(g/分) ・・・(1)
で表される、しみわたり指数が14.0以上」と特定されているのに対し、甲7発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点7−1−2>
本件特許発明1が「無加圧DWの1分値が7.0mL/g以上」と特定されているのに対し、甲7発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点7−1−3>
本件特許発明1が「10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下」と特定されているのに対し、甲7発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点7−1−4>
本件特許発明1が「生理食塩水の吸水量が57g/g以上」と特定されているのに対し、甲7発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点7−1−A>
本件特許発明1が「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」と特定されているのに対し、甲7発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点7−1−A>から検討する。
甲7発明を追試した実験成績証明書である甲14によると、甲7発明の「荷重下における生理食塩水の吸水量」は「17mL/g」であるため、「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」である要件を満たさない。
したがって、<相違点7−1−A>は実質的な相違点である。
そして、甲7の段落【0009】によると、甲7発明は、「吸収体や吸収物品における吸水性樹脂の重量%を高くしても、常時、非常に高い液拡散性を維持すると共に、吸収体や吸収物品の単位重量当たりの吸収量を保持する等の優れた性能(吸収特性)を示すことができる吸収剤組成物、および、吸収体、並びに、吸収体を含む吸収物品を提供すること」を課題とするものの、吸水性樹脂は、目的とするすべての物性を同時に満足させることが困難である、という技術常識を踏まえると、甲7発明において、「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」とすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、甲7発明において、<相違点7−1−A>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲7発明であるとはいえないし、甲7発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲7に記載された発明であるとはいえないし、甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年7月21日付けの意見書において、「甲7を、甲4または甲9と組み合わせた場合 、訂正発明1の荷重下における生理食塩水の吸水量20〜40mL/gを満たす蓋然性が高いから、訂正発明1は進歩性を有しない。」と主張している。
しかしながら、上記(ア)で述べたように、吸水性樹脂は、目的とするすべての物性を同時に満足させることが困難である、という技術常識を踏まえると、たとえ甲4や甲9を参照したとしても、甲7発明において、他の物性をそのままに、荷重下における生理食塩水の吸水量を「17mL/g」から「20〜40mL/g」とすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

カ 甲8に基づく新規性進歩性について
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲8発明を対比する。
甲8発明の「非晶質シリカ粒子 ( (株) トクヤマ製、トクシール NP)」は、本件特許発明1の「無機粒子」に相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
そして、両者は以下の点で相違又は一応相違する。
<相違点8−1−1>
本件特許発明1が「下記式(1):
しみわたり指数=無加圧DWの1分値(mL/g)+10倍膨潤時の人工尿通液速度(g/分) ・・・(1)
で表される、しみわたり指数が14.0以上」と特定されているのに対し、甲8発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点8−1−2>
本件特許発明1が「無加圧DWの1分値が7.0mL/g以上」と特定されているのに対し、甲8発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点8−1−3>
本件特許発明1が「10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下」と特定されているのに対し、甲8発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点8−1−4>
本件特許発明1が「生理食塩水の吸水量が57g/g以上」と特定されているのに対し、甲8発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点8−1−A>
本件特許発明1が「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」と特定されているのに対し、甲8発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点8−1−4>から検討する。
甲8発明を追試した実験成績証明書である甲15によると、甲8発明の「生理食塩水の吸水量」は「53.3g/g」であるため、「生理食塩水の吸水量が57g/g以上」である要件を満たさない。
したがって、<相違点8−1−4>は実質的な相違点である。
そして、甲8の段落[0009]によると、甲8発明は、「高い水分率において粉体流動性に優れ、粒子強度に優れ、機械的な衝撃を受けた後でも粒子径の保持率および加圧吸水能の保持率が高い吸水性樹脂粒子、その製造方法、およびそれを用いた吸収体を提供すること」を課題とするものであるところ、吸水性樹脂は、目的とするすべての物性を同時に満足させることが困難である、という技術常識を踏まえると、甲8発明において、他の物性をそのままに、「生理食塩水の吸水量を「53.3g/g」から「57g/g以上」とする動機付けはない。
したがって、甲8発明において、<相違点8−1−4>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲8発明であるとはいえないし、甲8発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲8に記載された発明であるとはいえないし、甲8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年7月21日付けの意見書において、「訂正発明1で規定された生理食塩水の吸水量「57g/g以上」が好ましいことは本件特許の当初明細書から読み取れない。以上より訂正発明1は進歩性を有しない。」と主張している。
しかしながら、上記(ア)で述べたように、生理食塩水の吸水量について、「57g/g以上」であることの臨界的意義の有無にかかわらず、甲8発明において、他の物性をそのままに、「生理食塩水の吸水量を「53.3g/g」から「57g/g以上」とすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

(3)取消理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1及び2は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、取消理由1によっては取り消すことはできない。

第6 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、異議申立理由1のうち甲9、甲10、甲21、甲22に基づく理由、異議申立理由3(サポート要件)、異議申立理由4(実施可能要件)である。
そこで、これらの申立理由について検討する。

1 異議申立理由1のうち甲9、甲10、甲21及び甲22に基づく理由について
(1)甲9、甲10、甲21及び甲22に記載された事項等
ア 甲9に記載された事項及び甲9発明
(ア)甲9に記載された事項
甲9には、「吸水剤及びこれを用いた吸水体、並びに吸水剤の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【請求項17】
水溶性不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子を含む吸水剤であって、
下記(A)〜(D)の条件、
(A)該吸水性樹脂粒子の表面近傍は、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する表面架橋剤によって架橋又は被覆されていること、
(B)該吸水性樹脂粒子は、その表面及びその近傍の少なくとも何れか一方に多価金属塩及び水不溶性無機粒子を含んでいること、
(C)該吸水剤の質量平均粒子径は200μm以上500μm以下であること、
(D)該吸水剤の全質量に対し、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合は5質量%以下であること、
を満たすことを特徴とする吸水剤。
・・・
【請求項19】
上記水不溶性無機粒子を吸水剤に対し、0.001質量%以上0.4質量%以下含むことを特徴とする請求項17又は18に記載の吸水剤。
【請求項20】
上記水不溶性無機粒子が、二酸化ケイ素であることを特徴とする請求項17〜19の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項21】
遠心分離機保持容量が30(g/g)以上50(g/g)未満であり、且つ、食塩水流れ誘導性(SFC)が10(10−7・cm3・s・g−1)以上であることを特徴とする請求項17〜20の何れか1項に記載の吸水剤。」
・「【0021】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、優れた物性を備え、かつ、粉塵の生じ難い吸水剤及び吸水体、並びに吸水剤の製造方法を提供することにある。」
・「【0083】
本実施の形態に係る吸水性樹脂粒子のCRCは、好ましくは5(g/g)以上であり、より好ましくは10(g/g)以上であり、より好ましくは15(g/g)以上であり、さらに好ましくは25(g/g)以上であり、特に好ましくは28(g/g)以上であり、最も好ましくは30(g/g)以上である。CRCの上限値は、特に限定されないが、好ましくは50(g/g)以下であり、より好ましくは45(g/g)以下であり、さらに好ましくは40(g/g)以下である。CRCが10(g/g)未満の場合、吸水性樹脂粒子を吸水剤に用いた場合、吸収量が少なすぎ、オムツ等の衛生材料の使用に適さない。また、CRCが50(g/g)よりも大きい場合、吸水性樹脂粒子が吸水体に使用された場合、吸水体への液の取り込み速度に優れる吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。」
・「【0085】
本実施の形態に係る吸水性樹脂粒子のSFCは、好ましくは10(10−7・cm3・s・g−1)以上であり、より好ましくは15(107・cm3・s・g−1)以上であり、より好ましくは30(10−7・cm3・s・g−1)以上であり、さらに好ましくは50(10−7・cm3・s・g−1)以上、さらに好ましくは70(10−7・cm3・s・g−1)以上であり、最も好ましくは100(10−7・cm3・s・g−1)以上である。SFCが10(10−7・cm3・s・g−1)未満の場合、後述する二酸化ケイ素等の水不溶性無機粒子を含んでいたとしても通液性が向上せず、吸水性樹脂粒子が吸水剤に使用された場合に、吸水体への液の取り込み速度に優れる吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。」
・「【0087】
<水不溶性無機粒子>
本実施の形態に係る吸水性樹脂粒子は、その表面及びその近傍の少なくとも何れか一方に、水不溶性無機粒子を含んでいる。上記吸水性樹脂粒子の表面とは、外気にさらされている部分であり、また吸水性樹脂粒子の表面近傍とは、吸水性樹脂粒子の表面から粒子径(短径)の10分の1程度内部までの部分を示すものとする。具体的には、上記吸水性樹脂粒子の表面近傍とは、表面架橋処理された吸水性樹脂粒子の場合、表面架橋層近傍であり、その厚さは走査型電子顕微鏡(SEM)等で確認することができる。
【0088】
吸水性樹脂粒子の表面及び表面近傍の少なくとも何れか一方に水不溶性無機粒子を含んでいることによって、吸水剤の通液性が向上することとなる。そのため、上記吸水性樹脂粒子を含む吸水剤のSFCを向上させることができる。尚、上記通液性向上のため、水不溶性無機粒子は、吸水性樹脂粒子の表面及び表面近傍の少なくとも何れか一方に含まれていればよいが、表面近傍よりも表面に含まれていることがより吸水剤の物性を向上させることができる。尚、後述する実施例においては、水不溶性無機粒子は、少なくとも表面に含まれている。また、水不溶性無機粒子の添加時期を重合工程以降にすることにより、表面に含まれる水不溶性無機粒子の割合を高くすることができる。
【0089】
また、本実施の形態で用いる水不溶性無機粒子は、吸水性樹脂粒子表面の官能基とイオン結合し得る官能基を少なくとも表面に有する水不溶性無機粒子であることが好ましい。より好ましくは上記イオン結合し得る官能基がカチオン性基であり、さらに好ましくはアミノ基(4級アミノ基を含む)である。
【0090】
好ましい吸水剤の形態は上記吸水性樹脂粒子表面に存在する官能基がカルボキシル基であり、上記水不溶性無機粒子の少なくとも表面に存在する官能基がアミノ基である吸水剤である。
【0091】
本実施の形態で使用できる水不溶性無機粒子の具体例としては、例えば、タルク、クレー、カオリン、フラー土、ベントナイト、活性白土、重晶石、天然アスファルタム、ストロンチウム鉱石、イルメナイト、パーライト等の鉱産物;二酸化珪素、酸化チタン等の金属酸化物;天然ゼオライトや合成ゼオライト等の珪酸(塩);硫酸カルシウム、酸化アルミニウム等の水不溶性多価金属塩類;親水性のアモルファスシリカ(例、乾式法:トクヤマ社ReolosilQS−20、沈殿法:DEGUSSA社 Sipernat22S, Sipernat2200)類;亜鉛と珪素、又は、亜鉛とアルミニウムを含む複合含水酸化物(例えば、国際公開WO2005/010102号に例示);酸化ケイ素・酸化アルミニウム・酸化マグネシウム複合体(例、ENGELHARD社Attagel#50)、酸化ケイ素・酸化アルミニウム複合体、酸化ケイ素・酸化マグネシウム複合体等の酸化物複合体類、等を挙げることが出来る。また、米国特許第5164459号公報、欧州特許第761241号公報等に例示されたものも使用可能である。このうち二酸化ケイ素及び珪酸(塩)がより好ましく、コールターカウンター法により測定された平均粒子径が0.001〜200μmの範囲の微粒子である二酸化ケイ素及び珪酸(塩)がさらに好ましい。
【0092】
本実施の形態で最も好ましく使用される水不溶性無機粒子の具体例としては、WACKER社のHDK(登録商標)H2015EP、H2050EP、H2150VP、H05TA、H13TA、H30TA等のアモルファスシリカ表面にアミノ基(4級アミノ基を含む)が導入されたものが挙げられる。同様に、日本アエロジル社のRA200HS等も使用可能である。
【0093】
本実施の形態で用いる水不溶性無機粒子は、水:メタノールの容量比が1:1の溶液中に4質量%分散させたときのpHが7〜10を示すものが好ましい。
【0094】
本実施の形態で用いる水不溶性無機粒子は、一次粒子の質量平均粒子径が5〜50nmであり、かつ90質量%以上が1次粒子の凝集粒子であるものが好ましい。また、1次粒子の凝集粒子の質量平均粒子径が20μm以下であるものが好ましい。
【0095】
本実施の形態で用いる水不溶性無機粒子は、表面の残存シラノール基が20%以下であることが好ましい(残存シラノール基100%における表面のシラノール基量は2SiOH/nm2である)。
【0096】
本実施の形態で用いる水不溶性無機粒子は、BET法による比表面積が30〜330m2/gであるものが好ましい。
【0097】
<二酸化ケイ素>
上述したように、本実施の形態では、上記水不溶性無機粒子として二酸化ケイ素を含んでいることがより好ましい。
【0098】
吸水性樹脂粒子の表面及び表面近傍の少なくとも何れか一方に二酸化ケイ素を含んでいることによって、吸水剤の通液性が向上することとなる。そのため、上記吸水性樹脂粒子を含む吸水剤のSFCを向上させることができる。尚、上記通液性向上のため、二酸化ケイ素は、吸水性樹脂粒子の表面及び表面近傍の少なくとも何れか一方に含まれていればよいが、表面近傍よりも表面に含まれていることがより吸水剤の物性を向上させることができる。」
・「【0161】
<吸水体>
本実施の形態に係る吸水体は、上記吸水剤を含むものである。上記吸水体を適当な素材と組み合わせることにより、たとえば、衛生材料の吸収層として好適な吸水体とすることができる。以下、吸水体について説明する。」
・「【0166】
吸水体は、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に用いられる場合、(a)着用者の体に隣接して配置される液体透過性のトップシート、(b)着用者の身体から遠くに、着用者の衣類に隣接して配置される、液体に対して不透過性のバックシート、及び(c)トップシートとバックシートの間に配置された吸水体、を含んでなる構成で使用されることが好ましい。吸水体は二層以上であってもよいし、パルプ層等とともに用いてもよい。」
・「【0264】・・・
<ペイントシェーカーテスト>
ペイントシェーカーテスト(PS)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂粒子又は吸水剤30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で振盪するものであり、装置詳細は特開平9−235378号公報に開示されている。
【0265】
振盪時間を30分間としたものをペイントシェーカーテスト1、10分間としたものをペイントシェーカーテスト2とする。」
・「【0376】
(実施例10)
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、アクリル酸425.2g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液4499.5g、純水538.5g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)6.17gを溶解させて反応液とした。次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、20分間脱気した。続いて、反応液に10質量%過硫酸ナトリウム水溶液28.3g及び0.1質量%L−アスコルビン酸水溶液23.6gを攪拌しながら添加したところ、およそ25秒後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、25℃以上95℃以下で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mm以下に細分化されていた。
・・・
【0382】
(実施例12)
実施例10において、細分化された含水ゲル状架橋重合体を得るまでは同様の手法を用いて、細分化された含水ゲル状架橋重合体を得た。
【0383】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、170℃で65分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径(D50)330μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(12)を得た。吸水性樹脂粒子(12)の遠心分離機保持容量(CRC)は42(g/g)、水可溶分は13質量%であった。
【0384】
得られた吸水性樹脂粒子(12)100質量部に1,4−ブタンジオール0.35質量部、プロピレングリコール0.55質量部、純水3.0質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を212℃で40分間加熱処理した。その後、得られた粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、解砕された粒子にペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋又は被覆された吸水性樹脂粒子(12)を得た。
【0385】
表面が架橋又は被覆された吸水性樹脂粒子(12)の100質量部に、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.9質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.134質量部、プロピレングリコール0.025質量部からなる混合液を添加した。添加後、無風条件下、60℃で1時間乾燥した後、これらの粒子をそれぞれ目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。こうして、得られた吸水性樹脂粒子(12)から得られたものを吸水性樹脂粒子(12−A)とした。
【0386】
得られたこれらの吸水性樹脂粒子(12−A)100質量部に、日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)200を0.20質量部添加し混合したものを吸水剤(3C)とした。得られた吸水剤(12)について、添加した水不溶性無機粒子、水不溶性無機粒子の添加量、CRC、AAP、SFC、D50、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合、粉塵量について測定した結果を表8に示した。」
・「【0389】
(実施例14)
実施例12で得られた、表面が架橋又は被覆された吸水性樹脂粒子(12)の100質量部に、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.9質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.134質量部、プロピレングリコール0.025質量部、植物成分としてポリフェノール及びカフェインを含んだツバキ科植物の葉抽出物の15質量%水溶液(製品名:FS−80MO、販売者:白井松薪薬株式会社(所在地:滋賀県黄河群水口町宇川37−1))0.5質量部からなる混合物を添加した。添加後、無風条件下、60℃で1時間乾燥させた後、これらの粒子をそれぞれ目開き850μmのJIS標準ふるいを通過するまで解砕し、吸水性樹脂粒子(14−A)を得た。
【0390】
得られたこれらの吸水性樹脂粒子(14−A)100質量部に、日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)200を0.20質量部添加し混合したものを吸水剤(14)とした。得られた吸水剤(14)について、添加した水不溶性無機粒子、水不溶性無機粒子の添加量、CRC、AAP、SFC、D50、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合、粉塵量について測定した結果を表8に示した。」
・「【0398】
【表8】



(イ)甲9発明
甲9に記載された事項を、特に実施例12に関して整理すると、甲9には次の発明が記載されていると認める。
「シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、アクリル酸425.2g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液4499.5g、純水538.5g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)6.17gを溶解させて反応液とし、次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、20分間脱気し続いて、反応液に10質量%過硫酸ナトリウム水溶液28.3g及び0.1質量%L−アスコルビン酸水溶液23.6gを攪拌しながら添加して重合を開始し、生成したゲルを粉砕しながら、25℃以上95℃以下で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出して得られた含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、170℃で65分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径(D50)330μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(12)を得、得られた吸水性樹脂粒子(12)100質量部に1,4−ブタンジオール0.35質量部、プロピレングリコール0.55質量部、純水3.0質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を212℃で40分間加熱処理し、その後、得られた粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、次に、解砕された粒子にペイントシェーカーテスト1(直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂粒子又は吸水剤30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で30分間振盪するもの)を行って表面が架橋又は被覆された吸水性樹脂粒子(12)を得、表面が架橋又は被覆された吸水性樹脂粒子(12)の100質量部に、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.9質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.134質量部、プロピレングリコール0.025質量部からなる混合液を添加後、無風条件下、60℃で1時間乾燥した後、これらの粒子をそれぞれ目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、こうして得られたこれらの吸水性樹脂粒子(12−A)100質量部に、日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)200を0.20質量部添加し混合して得られた吸水剤(3C)。」(以下、「甲9発明」という。)

イ 甲10に記載された事項及び甲10発明
(ア)甲10に記載された事項
甲10には、「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系粒子状吸水剤及び製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「[0019] 多湿な地域での紙おむつ製造において不具合が無いと共に、戻り量が少なく、吸液時間の短い紙おむつを低コストで提供することである。」
・「[0025] 本発明によれば、近年紙おむつの需要増加が著しい多湿な地域においても、紙おむつの製造工程でのトラブルが少なく、従来より性能が向上した紙おむつが製造できるようになる。」
・「[0229] 〔4〕吸収性物品
本発明の粒子状吸水剤の用途は特定に限定されないが、好ましくは、紙おむつや生理用ナプキンに使用される吸収体に好適に使用される。
[0230] 本発明で吸収体とは、本発明の粒子状吸水剤と親水性繊維とを主成分して成型された吸収材のことであり、本発明の吸収体において、粒子状吸水剤と親水性繊維との合計重量に対する粒子状吸水剤の含有量(コア濃度)は好ましくは20〜95%重量%であり、さらには好ましくは30〜95重量%であり、特に好ましくは35〜90重量%である。
[0231] また、本発明の吸収体が薄型の場合には、吸収体の厚みが0.1〜5mmの薄型であることが好ましい。このような薄型の吸収体を使用して、薄型吸収性物品とすることができる。たとえば、上記した本発明の薄型の吸収体、液透過性を有する表面シート、及び液不透過性を有する背面シートを備える吸収性物品とする。
[0232] 本発明の薄型吸収性物品の製造方法は、例えば繊維基材と粒子状吸水剤とをブレンドないしサンドイッチすることで吸収体(吸収コア)を作成し、液透過性を有する表面シートなどの基材と液不透過性を有する背面シートなどの基材で吸収体をサンドイッチして、必要に応じて、弾性部材、拡散層、粘着テープ等を装備することで、吸収性物品、特に紙おむつや生理用ナプキンとすればよい。かかる吸収性物品は密度0.06〜0.50g/cc、坪量0.01〜0.20g/cm2の範囲に圧縮成形される。なお、用いられる繊維基材としては、親水性繊維、例えば、粉砕された木材パルプ、その他、コットンリンターや架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート、ビニロン等を例示できる。好ましくはそれらをエアレイドしたものである。」
・「[0234] 以下、実施例に従って発明を説明するが、本発明は実施例に限定されて解釈されるものではない。また、本発明の特許請求の範囲や実施例に記載の諸物性は、以下の測定法(a)〜(k)に従って求めた。なお、特に断りのない限り、各実施例での各工程は実質常圧(大気圧の±5%、更に好ましくは1%以内)で行なわれ、同一工程では意図的な加圧又は減圧による圧力変化は加えずに実施した。
[0235] (a)無加圧下吸水倍率(CRC)(ERT441.1−02) 本発明に係る粒子状吸水剤の無加圧下吸水倍率(CRC)は、ERT441.2−02に準じて測定した。
[0236] 即ち、粒子状吸水剤0.200g(重量W0[g])を秤量し、不織布製の袋(60×85mm)に均一に入れヒートシールした後、23±2℃に調温した0.90重量%塩化ナトリウム水溶液500mL中に浸漬した。30分経過後、袋を引上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製遠心機:形式H−122)を用いて、250G、3分間の条件で水切りを行った。その後、袋の重量(W1[g])を測定した。
[0237] 同様の操作を、粒子状吸水剤を入れずに行い、そのときの袋の重量(W2[g])を測定した。得られたW0[g]、W1[g]、W2[g]から下記(式1)にしたがって、無加圧下吸水倍率(CRC)を算出した。[0238] (式1) CRC(g/g)={(W1−W2)/W0}−1」
・「[0249]・・・
(h)GCA(Gel Capillary Absorption) 図11を参照してGCAを測定する装置及び方法を記載する。この測定法で使用されるガラスフィルター2はISO4793(1980)で規定される通りの500mlガラス濾過器であり、孔径がP40(16〜40μm)、厚さ7mmであり、例えばSchott社のDuranガラス製濾過器のグレード3である。また20℃で30cm半径のフィルターが50mbarの圧力差にて50ml/minの水流能力を持たなければならない。このガラスフィルター付きの濾過器1の下部にシリコン製チューブ3をつなぎ、さらにガラス管5及びストップコック4を完備しているタンク6の下部につなぐ。このとき、ガラスフィルターの上面を、タンク内のガラス管の下部のメニスカスより10cm高い位置で固定する。系に0.90重量%塩化ナトリウム水溶液を満たす。内径60mmのプラスチックの支持円筒7の底に、8cmの正方形に切断された高湿潤強度セルロースティッシュ8を金属リングにより固定する。該ティッシュは坪量max24.6g/m2、湿潤引っ張り強度Min0.32N/cm(CD方向)、0.8N/cm(MD方向)(抄紙機で抄かれる際の流れ方向をMD方向、これに垂直な方向をCD方向)であり、例えばドイツのフリパ社(Fripa)から入手可能である。室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、該ティッシュ上に粒子状吸水剤100.2g(重量W11[g])を均一に散布し、その上に、吸水剤に対して0.39kPa(0.05psi)の荷重を均一に加えることができるよう調整された、外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒との隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないピストン9を載置し、この測定装置一式の重量(W12[g])を測定した。
[0250] 上記測定装置一式をガラスフィルター上に載せ、マリオット管付き流体貯槽のバルブを開けて、10分間吸収させる。その後測定装置一式を持ち上げ、その重量(W13[g])を測定した。W11、W12、W13から下記(式7)に従って、GCA(g/g)を算出した。
[0251] (式7) GCA(g/g)=(W13−W12)/W11」
・「[0266] (吸水性樹脂の製造例)
(製造例1)発泡重合体以外の形態の吸水性樹脂の製造例
アクリル酸ナトリウム(中和率75モル%)の38重量%水溶液5500重量部に、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=9)4.4重量部を溶解させて単量体水溶液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。次いで、開閉可能な蓋付きのシグマ型羽根を2本有するジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウム2.8重量部およびL−アスコルビン酸0.12重量部を添加したところ、凡そ1分後に重合が開始した。そして、30〜90℃で重合を行い、重合を開始して60分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。
[0267] 得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、160℃で60分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミル(有限会社井ノ口技研社製、WML型ロール粉砕機)を用いて粉砕し、吸水性樹脂粒子(A)を得た。さらに吸水性樹脂粒子(A)を目開き850μmの金網と180μmの金網で分級することにより、850μmの金網を通過し、180μmの金網を通過しなかった分画である吸水性樹脂粒子(A1)と180μmの金網を通過した分画である吸水性樹脂微粒子(A2)を得た。このとき、吸水性樹脂粒子(A)における粒子径が150μm未満の粒子の割合は10.5重量%であり、分級することにより得られた吸水性樹脂粒子(A1)では、粒子径が150μm未満の粒子の割合を1.9重量%まで減少することができた。得られた吸水性樹脂粒子(A1)及び吸水性樹脂微粒子(A2)のCRC、含水率、粒度分布およびD50を表1に示す。
・・・
[0274] (製造例4)造粒物の形態の吸水性樹脂の製造例(1)
製造例1で得られた吸水性樹脂微粒子(A2)300gを西日本試験機製作所製5Lモルタルミキサー(5L容器は80℃のバスで保温されている)に入れ、該モルタルミキサーの攪拌羽根を60Hz/100Vで高速回転させながら、90℃に加熱した脱イオン水300gを一気に投入した。
[0275] 吸水性樹脂微粒子(A2)と脱イオン水とは10秒以内に混合され、内容物全体が粒子径約3〜10mmの含水ゲル状造粒物となった。モルタルミキサー中で、該含水ゲル状造粒物はバラバラの状態で、攪拌羽根の混合によって混練される様子はなかった。1分間モルタルミキサー中で高速攪拌した後、得られたバラバラの含水ゲル状造粒物を50メッシュの金網上に広げ、150℃で60分間熱風乾燥した。次いで、乾燥造粒物をロールミルを用いて粉砕し、吸水性樹脂造粒物(A3’)を得た。さらに吸水性樹脂造粒物(A3’)をさらに目開き850μmの金網と150μmの金網で分級することにより、850μmの金網を通過し、150μmの金網を通過しなかった分画である吸水性樹脂造粒物(A3)を得た。このとき、吸水性樹脂造粒物(A3’)における粒子径が150μm未満の粒子の割合は21.8重量%であり、分級することにより得られた吸水性樹脂造粒物(A3)では、150μm未満の粒子の割合を2.0重量%まで減少することができた。吸水性樹脂造粒物(A3)の形状をSEMにて観察したところ、原料に使用した吸水性樹脂微粒子の形状を部分的に維持しながら、大きな粒子に造粒されており、粒子表面に多数の凹凸を有する表面積の大きい粒子であった。得られた吸水性樹脂造粒物(A3)のCRC、含水率、粒度分布およびD50を表1に示す。
・・・
[0278] (実施例1)造粒物の形態の吸水性樹脂を用いる製造方法1による吸水剤
製造例4で得られた吸水性樹脂造粒物(A3)100重量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部と、エチレンカーボネート0.3重量部と、プロピレングリコール0.5重量部と、脱イオン水2.0重量部とからなる表面架橋剤溶液を混合した。上記の混合物を200℃で35分間加熱処理することにより、表面架橋された吸水性樹脂造粒物(A4)を得た。
[0279] 表面架橋された吸水性樹脂造粒物(A4)を0.90重量%の塩化ナトリウム水溶液で膨潤させて光学顕微鏡にて観察したところ、表面架橋の結果、吸水後でも粒子形状を維持できるようになっていることが確認された。
[0280] 表面架橋された吸水性樹脂造粒物(A4)100重量部に対して、1重量%のDTPA水溶液1重量部を攪拌しながら添加し、1分間混合した。次いで60℃の熱風乾燥機中に30分間放置してから、目開き850μmの金網を通過させ、吸水性樹脂造粒物(A4’)を得た。更に、得られた吸水性樹脂造粒物(A4’)100重量部に対して、ハイドロタルサイト(製品名DHT−6、協和化学工業株式会社製)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mlのマヨネーズ瓶にハイドロタルサイトと共に入れ、ペイントシェーカー(No.488/東洋製機製作所製)を用いて800(cycle/min(CPM))の条件下3分間振とうし、粒子状吸水剤(EX−1)を得た。」
「請求の範囲
[請求項1] ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、重量平均粒子径が300〜500μmの粒度分布を有し、25℃、相対湿度90%の状態で1時間放置した時の吸湿ブロッキング率が20%以下であり、表面張力が60mN/m以上であり、GCA(Gel Capillary Absorption)が28.0g/g以上であることを特徴とする、粒子状吸水剤。
[請求項2] 表面架橋されている、請求項1に記載の粒子状吸水剤。
[請求項3] 無加圧下吸水倍率(CRC)が28g/g以上である、請求項1又は2に記載の粒子状吸水剤。
・・・
[請求項8] 水不溶性無機微粒子を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
[請求項9] 前記水不溶性無機微粒子の含有量が、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂(固形分)100重量%に対して0.01〜1.0重量%である、請求項8に記載の粒子状吸水剤。
[請求項10] 前記水不溶性無機微粒子の体積平均粒子径が0.01〜3μmである、請求項8又は9に記載の粒子状吸水剤。
・・・
[請求項16] (a1)平均粒子径10〜180μmのポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂を造粒して造粒物を得る造粒工程と、
(b)前記造粒物を表面架橋する表面架橋工程と、
(c)前記表面架橋工程の前及び/又は後に、前記造粒物の全粒子100重量%に占める粒子径が150〜850μm(標準篩で規定)の粒子の割合を95〜100重量%とする整粒工程と、
(d)水不溶性無機微粒子を混合する混合工程と、
を順次、又は前記工程(a1)〜工程(d)の少なくとも一部を同時に実施することを特徴とする、吸水剤の製造方法。」

(イ)甲10発明
甲10に記載された事項を、特に実施例1に関して整理すると、甲10には次の発明が記載されていると認める。
「アクリル酸ナトリウム(中和率75モル%)の38重量%水溶液5500重量部に、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=9)4.4重量部を溶解させて単量体水溶液とし、次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で30分間脱気し、次いで、開閉可能な蓋付きのシグマ型羽根を2本有するジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウム2.8重量部およびL−アスコルビン酸0.12重量部を添加して重合を開始後、30〜90℃で重合を行い、重合を開始して60分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出し、この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、160℃で60分間熱風乾燥し、次いで、乾燥物をロールミル(有限会社井ノ口技研社製、WML型ロール粉砕機)を用いて粉砕し、吸水性樹脂粒子(A)を得、さらに吸水性樹脂粒子(A)を目開き850μmの金網と180μmの金網で分級することにより、850μmの金網を通過し、180μmの金網を通過しなかった分画である吸水性樹脂粒子(A1)と180μmの金網を通過した分画である吸水性樹脂微粒子(A2)を得、得られた吸水性樹脂微粒子(A2)300gを西日本試験機製作所製5Lモルタルミキサー(5L容器は80℃のバスで保温されている)に入れ、該モルタルミキサーの攪拌羽根を60Hz/100Vで高速回転させながら、90℃に加熱した脱イオン水300gを一気に投入し、吸水性樹脂微粒子(A2)と脱イオン水とは10秒以内に混合され、内容物全体が粒子径約3〜10mmの含水ゲル状造粒物となり、1分間モルタルミキサー中で高速攪拌した後、得られたバラバラの含水ゲル状造粒物を50メッシュの金網上に広げ、150℃で60分間熱風乾燥し、次いで、乾燥造粒物をロールミルを用いて粉砕し、吸水性樹脂造粒物(A3’)を得、さらに吸水性樹脂造粒物(A3’)をさらに目開き850μmの金網と150μmの金網で分級することにより、850μmの金網を通過し、150μmの金網を通過しなかった分画である吸水性樹脂造粒物(A3)を得、得られた吸水性樹脂造粒物(A3)100重量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部と、エチレンカーボネート0.3重量部と、プロピレングリコール0.5重量部と、脱イオン水2.0重量部とからなる表面架橋剤溶液を混合し、上記の混合物を200℃で35分間加熱処理することにより、表面架橋された吸水性樹脂造粒物(A4)を得、得られた表面架橋された吸水性樹脂造粒物(A4)100重量部に対して、1重量%のDTPA水溶液1重量部を攪拌しながら添加し、1分間混合し、次いで60℃の熱風乾燥機中に30分間放置してから、目開き850μmの金網を通過させ、吸水性樹脂造粒物(A4’)を得、更に、得られた吸水性樹脂造粒物(A4’)100重量部に対して、ハイドロタルサイト(製品名DHT−6、協和化学工業株式会社製)0.3重量部を混合し、混合は吸水性樹脂30gを容量225mlのマヨネーズ瓶にハイドロタルサイトと共に入れ、ペイントシェーカー(No.488/東洋製機製作所製)を用いて800(cycle/min(CPM))の条件下3分間振とうして得られた、粒子状吸水剤(EX−1)。」(以下、「甲10発明」という。)

ウ 甲21に記載された事項及び甲21発明
(ア)甲21に記載された事項
甲21には、「粒子状吸水剤及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「[0017] 即ち、本発明はかかる問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、紙オムツにおいても吸収量が高く、かつ液拡散性、通液性が改善され、更に戻り量が少ない吸収体を提供することができる吸水剤を安価に提供することにある。
[0018] 又、本発明は、従来、無加圧下吸水倍率(CRC)に加えて、加圧下吸水倍率(例えば、AAP)や通液性(例えば、SFC、GBP)で評価されてきた吸水性樹脂について、紙オムツでの吸液時間、戻り量や絶対吸収量が向上する吸水剤及びその製造方法を提供することにある。」
・「[0022] 本発明の粒子状吸水剤によれば、安価に製造でき、紙オムツ等の吸収体に使用した場合、吸収体での吸収量や戻り量(Re−wet)、吸液時間を改善し、更にはレベルで両立する。又、吸収物品(特に紙オムツ)とした場合、紙オムツの吸収量を高くできるため、紙オムツ一枚あたりの吸水性樹脂(粒子状吸水剤)の使用量削減効果もあり、環境面でも、紙オムツや吸水性樹脂の廃棄量も軽減される。」
・「[0127] (c)水不溶性微粒子
本発明の第四の製造方法では、上記特定CRC及びAAPの吸水性樹脂と少量の水不溶性微粒子を混合する。水不溶性微粒子は特定CRC及びAAPの吸水性樹脂粒子の表面に存在して粒子間の立体的なスペーサーとして作用して、吸水剤のFSC及びVDAUPを向上させることが見出された。
[0128] 水不溶性微粒子としては、吸水剤が水性液体と接触した際に吸水剤の粒子同士が密着するのを抑制し、水性液体の流れをよくするものであれば特に限定されるものではない。有機微粒子としては金属石鹸なども例示できるが、中でも水不溶性無機微粉末が好ましい。特に、水不溶性微粒子が無機微粒子であるのが好ましく、ベントナイト、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム等の無機系微粒子、更には珪素系微粒子が無加圧下吸収倍率(FSC)を向上させるので好ましい。また、水不溶性微粒子としては親水性でもよく、疎水性でもよいが、好ましくは、水分散性を示す親水性微粒子が使用できる。親水性微粒子特に珪素系微粒子は例えば欧州特許0629411号公報に例示されている。
[0129] 又、水不溶性微粒子としては、好ましくは体積平均粒子径で10μm以下、5μm以下、1μm以下、特に0.5μm以下の微粒子が用いられる。
[0130] 吸水性樹脂と水不溶性微粒子の混合方法はドライブレンドでもよく、水不溶性微粒子を水分散液としたスラリーで混合してもよいが、好ましくはドライブレンドされ、その際の混合機は適宜選択される。
[0131] 吸水性樹脂と水不溶性微粒子の割合は、水不溶性微粒子の添加によって加圧下吸収倍率(AAP)やVDAUPが極端に低下しない程度、特にAAPの低下が5.0[g/g]以下であればよく、その量は適宜決定されるが、吸水性樹脂100重量部に対して0.4重量部以下、0.3重量部以下、0.2重量部以下、特に0.1重量部以下が好ましく、下限は0.001重量部以上、更には0.01重量部以上の範囲である。
[0132] 吸水性樹脂100重量部に対して水不溶性微粒子が0.001重量部よりも少ない場合、FSCの向上が十分ではなく、又0.4重量部より多い場合は混合によってAAPやVDAUPが本願を満たさないほど低下する可能性がある。」
・「[0162] (4−2)吸収性物品
本発明の一形態としては、上述した吸収体を含む吸収性物品を含む。
[0163] 本発明における吸収性物品は、吸水やゲル化、保湿、止水、吸湿等を目的とした最終消費材である。当該最終消費材は、上記吸収体、液透過性を有する表面シート、液不透過性の背面シートを備えた吸収性物品であり、具体的には紙オムツ、失禁パット、生理用ナプキン等が挙げられ、特に好ましくは紙オムツである。尚、他の衛生材料にも適用することができる。」
・「[0173] (6−1)無加圧下吸水倍率(CRC)
本発明に係る粒子状吸水剤の無加圧下吸水倍率(CRC)は、ERT441.2−02に準じて測定した。
[0174] 即ち、粒子状吸水剤0.200g(重量W0[g])を秤量し、不織布製の袋(60×85mm)に均一に入れヒートシールした後、25±3℃に調温した0.90wt%塩化ナトリウム水溶液500mL中に浸漬した。30分経過後、袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製遠心機:形式H−122)を用いて、250G、3分間の条件で水切りを行った。その後、袋の重量(W1[g])を測定した。
[0175] 同様の操作を、粒子状吸水剤を入れずに行い、そのときの袋の重量(W2[g])を測定した。得られたW0[g]、W1[g]、W2[g]から次式にしたがって、無加圧下吸水倍率(CRC)を算出した。
[0176] [数2]
CRC(g/g)={(W1−W2)/W0}−1
[0177] (6−2)無加圧下吊り下げ吸水倍率(FSC)
本発明に係る粒子状吸水剤の無加圧下吊り下げ吸水倍率(FSC)は、ERT440.2−02に準じて測定した。
[0178] 即ち、粒子状吸水剤0.200g(重量W3[g])を秤量し、不織布製の袋(60×85mm)に均一に入れヒートシールした後、25±3℃に調温した0.90wt%塩化ナトリウム水溶液500mL中に浸漬した。30分経過後、袋を引き上げ、10分間吊り下げて水切りを行った。その後、袋の重量(W4[g])を測定した。
[0179] 同様の操作を、粒子状吸水剤を入れずに行い、そのときの袋の重量(W5[g])を測定した。得られたW3[g]、W4[g]、W5[g]から次式にしたがって、無加圧下吊り下げ吸水倍率(FSC)を算出した。[0180] [数3]
FSC(g/g)={(W4−W5)/W3}−1」
・「[0253] [製造例1]
内容積10Lのシグマ型羽根を2本有する双腕型のジャケット付きステンレス製ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、アクリル酸425.2g、37重量%のアクリル酸ナトリウム水溶液4499.5g、純水538.5g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)6.17g及びジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.21gを投入して反応液とした後、窒素ガス雰囲気下で20分間脱気した。
[0254] 続いて、10重量%の過硫酸ナトリウム水溶液28.3g及び0.1重量%のL−アスコルビン酸水溶液23.6gをそれぞれ別個に、上記反応液を攪拌しながら添加したところ、約25秒後に重合が開始した。そして、生成した含水ゲル状架橋重合体を解砕しながら25〜95℃で重合し、重合開始から30分経過後に含水ゲル状架橋重合体を反応器から取り出した。尚、得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mm以下に細粒化されていた。
[0255] 上記細粒化された含水ゲル状架橋重合体を、目開き300μm(50メッシュ)の金網上に広げ、170℃で65分間熱風乾燥をした後、ロールミルで粉砕し、更に目開きが850μmのJIS標準篩で分級、調合した。この一連の操作により、重量平均粒子径(D50)が458μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.40である不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(1)を得た。得られた吸水性樹脂粒子(1)の無加圧下吸水倍率(CRC)は42[g/g]、水可溶分(Ext)は13重量%であった。
・・・
[0274] [実施例1]
表面架橋処理として、製造例1で得られた吸水性樹脂粒子(1)100重量部に、プロピレングリコール0.5重量部、1,4−ブタンジオール0.3重量部及び純水1.0重量部からなる表面架橋剤水溶液を均一に混合し、210℃で40分間加熱処理を行うことで表面架橋された吸水性樹脂(以下、「吸水性樹脂粉末」と表記する)(1)を得た。尚、当該加熱処理は、オイルバスに浸漬したステンレス製容器中で上記混合物を攪拌することで行った。得られた吸水性樹脂粉末(1)の諸性能を表2に示す。
[0275] 次いで、ポリカチオン添加処理として、上記吸水性樹脂粉末(1)100重量部に、27.5重量%(酸化アルミニウム換算で8重量%)の硫酸アルミニウム水溶液0.9重量部、60重量%の乳酸ナトリウム水溶液0.13重量部及びプロピレングリコール0.025重量部からなる混合液を添加した後、無風下、60℃で1時間乾燥した。その後、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕して粒子状吸水剤(1)を得た。得られた粒子状吸水剤(1)の諸性能を表3に示す。
・・・
[0300] [実施例11]
実施例1のポリカチオン添加処理に代えて、水不溶性微粒子(Aerosil(登録商標)200;日本アエロジル社製)0.10重量部を添加し混合した以外は、実施例1と同様の操作を行い、粒子状吸水剤(11)を得た。得られた粒子状吸水剤(11)の諸性能を表3に示す。」

(イ)甲21発明
甲21に記載された事項を、特に実施例11に関して整理すると、甲21には次の発明が記載されていると認める。
「内容積10Lのシグマ型羽根を2本有する双腕型のジャケット付きステンレス製ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、アクリル酸425.2g、37重量%のアクリル酸ナトリウム水溶液4499.5g、純水538.5g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)6.17g及びジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.21gを投入して反応液とした後、窒素ガス雰囲気下で20分間脱気し、続いて、10重量%の過硫酸ナトリウム水溶液28.3g及び0.1重量%のL−アスコルビン酸水溶液23.6gをそれぞれ別個に、上記反応液を攪拌しながら添加して重合を開始し、そして、生成した含水ゲル状架橋重合体を解砕しながら25〜95℃で重合し、重合開始から30分経過後に含水ゲル状架橋重合体を反応器から取り出し、細粒化された含水ゲル状架橋重合体を、目開き300μm(50メッシュ)の金網上に広げ、170℃で65分間熱風乾燥をした後、ロールミルで粉砕し、更に目開きが850μmのJIS標準篩で分級、調合して重量平均粒子径(D50)が458μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.40である不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(1)を得、得られた吸水性樹脂粒子(1)100重量部に、プロピレングリコール0.5重量部、1,4−ブタンジオール0.3重量部及び純水1.0重量部からなる表面架橋剤水溶液を均一に混合し、210℃で40分間加熱処理を行うことで表面架橋された吸水性樹脂(以下、「吸水性樹脂粉末」と表記する)(1)を得、次いで、上記吸水性樹脂粉末(1)100重量部に、水不溶性微粒子(Aerosil(登録商標)200;日本アエロジル社製)0.10重量部を添加した後、無風下、60℃で1時間乾燥した。その後、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕して得られた粒子状吸水剤(11)。」(以下、「甲21発明」という。)

エ 甲22に記載された事項及び甲22発明
(ア)甲22に記載された事項
甲22には、「吸水剤」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸および/またはその塩を含む単量体を架橋重合して得られた、不定形破砕状粒子の表面がさらに架橋処理されてなる吸水性樹脂粒子(α)および液透過性向上剤(β)を含む粒子状吸水剤であって、
該粒子状吸水剤の質量平均粒子径が234〜394μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45、無加圧下吸収倍率が15g/g以上、水可溶成分が15質量%以下であり、
液透過性向上剤(β)の含有量が該吸水性樹脂粒子(α)100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲である、吸水剤。
・・・
【請求項5】
前記吸水剤の0.90質量%生理食塩水への毛管吸収倍率が15g/g以上である、請求項1から4までのいずれかに記載の吸水剤。
【請求項6】
前記吸水剤の0.69質量%生理食塩水流れ誘導性が50(10−7・cm3・s・g−1)以上である、請求項1から5までのいずれかに記載の吸水剤。
【請求項7】
前記吸水剤の無加圧下吸収倍率が29g/g未満である、請求項1から6までのいずれかに記載の吸水剤。
【請求項8】
前記液透過性向上剤(β)が水不溶性親水性の無機微粒子および/または水溶性の多価金属塩である、請求項1から7までのいずれかに記載の吸水剤。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記特許文献1〜22などの従来技術の吸水性樹脂および/または吸水剤は、液透過性が改良されているが、それと同時に毛管吸引力の低下という性能の低下を引き起こしている。これによって、衛材等などの構成材である吸水体中での拡散性・液透過性は改善されるものの、逆にドライ性や、液保持性が低下するという性能低下を引き起こしており、必ずしも満足すべきものではなかった。つまり、一方の性能を向上させても、もう一方の性能が低下するという問題が発生していた。この問題を解決するために、液透過性と毛管吸引力の両方の性能を併せ持つ、吸水剤の登場が期待されていた。
すなわち本発明は、毛管吸引力と液透過性の両方の性能を併せ持つ吸水剤を提供することを課題とする。」
・「【0068】
吸水体とは血液や体液、尿などを吸収する、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に用いられる、吸水性樹脂または吸水剤、とその他の素材からなる成形された組成物のことであり、用いられる素材の例としては、たとえば、セルロース繊維が挙げられる。セルロース繊維の具体例としては、木材からのメカニカルパルプ、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ、溶解パルプ等の木材パルプ繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維等を例示できる。好ましいセルロース繊維は木材パルプ繊維である。これらセルロース繊維はナイロン、ポリエステル等の合成繊維を一部含有していてもよい。本発明の吸水剤を吸水体の一部として使用する際には、吸水体中に含まれる本発明の吸水剤の質量が、好ましくは20〜100質量%の範囲である。吸水体中に含まれる本発明の吸水剤の質量が、20質量%未満になると、十分な効果が得られなくなるおそれがある。
・・・
【0071】
吸水体は、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に用いられる場合、(a)着用者の体に隣接して配置される液体透過性のトップシート、(b)着用者の身体から遠くに、着用者の衣類に隣接して配置される、液体に対して不透過性のバックシート、および(c)トップシートとバックシートの間に配置された吸水体を含んでなる構成で使用されることが好ましい。吸水体は二層以上であっても良いし、パルプ層などとともに用いても良い。
より好ましい構成では、吸水体中の吸水剤は、坪量が60g/m2〜1500g/m2であることが好ましく、より好ましくは100g/m2〜1000g/m2、さらに好ましくは200g/m2〜800g/m2である。
「【0077】
人工尿(1)は、塩化カルシウムの2水和物0.25g、塩化カリウム2.0g、塩化マグネシウムの6水和物0.50g、硫酸ナトリウム2.0g、りん酸2水素アンモニウム0.85g、りん酸水素2アンモニウム0.15g、および、純水994.25gを混合したものを用いた。
(5)0.90質量%生理食塩水への毛管吸収倍率(CSF)
CSFは吸水剤の毛管吸引力をあらわす指標である。
本発明における毛管吸収倍率は、水柱20cmの負の圧力勾配における所定時間内での吸収体の液体の吸収能力を0.06psi荷重下で測定する。図3を参照して、これらの毛管吸収能力を測定するための装置および方法を記載する。
【0078】
多孔質ガラス板1(グラスフィルター粒子番号#3; (株)相互理化学硝子製作所製のBuchner型フィルター TOP 17G‐3(code no.1175−03))の液吸収面を有する直径60mmのグラスフィルター2の下部に導管3をつなぎ、この導管3を直径10cmの液溜容器4の下部に備え付けられている口に接続した。前記グラスフィルターの多孔質ガラス板は平均孔径が20〜30μmであって、その毛管力によって60cmの液面高さの差を付けた状態でも水柱の負圧に抗して多孔質ガラス板内に水を保持することが出来、空気の導入が無い状態を保てるものである。グラスフィルター2に高さを上下させるための支持リング5をはめ、系に0.90質量%生理食塩水6を満たし、液溜容器を天秤上7に載せた。導管中、およびグラスフィルターの多孔質ガラス板の下部に空気がないことを確認してから液溜容器4中の0.90質量%生理食塩水6上部の液面レベルと多孔質ガラス板1の上面の高低差が20cmになるように調節してグラスフィルターをスタンド8に固定した。
【0079】
多孔質ガラス板1上に測定試料9(吸水性樹脂粒子または吸水剤)0.44gをロート中のガラスフィルター上に均一にすばやく散布し、さらにその上に直径59mmの荷重10(0.06psi)を載せ、30分後に測定試料9に吸収された0.90質量%生理食塩水の値(W20)を測定した。
毛管吸収倍率は以下の式で求められる。
吸水性樹脂粒子または吸水剤の20cm高さでの毛管吸収倍率D1(g/g)
=吸収量(W20)(g)/0.44(g)
(6)可溶分(水可溶成分)量
250ml容量の蓋付きプラスチック容器に0.90質量%生理食塩水184.3gを測り取り、その水溶液中に吸水性樹脂粒子または吸水剤1.00gを加え16時間攪拌することにより樹脂中の可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過することにより得られた濾液の50.0gを測り取り測定溶液とした。」
・「【0082】
(実施例1)
(1)重合
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、71.3モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5438g(単量体濃度39質量%)にポリエチレングリコールジアクリレート9.36g(0.08モル%)を溶解させて反応液とした。次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、30分間脱気した。続いて、反応液に10質量%過硫酸ナトリウム水溶液29.34gおよび0.1質量%L−アスコルビン酸水溶液24.45gを攪拌しながら添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、20〜95℃で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体(1)を取り出した。
【0083】
得られた含水ゲル状架橋重合体(1)は、その径が約5mm以下に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状架橋重合体(1)を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥した。このようにして、不定形で、容易に粉砕される粒子状や粉末状や粒子状乾燥物凝集体の吸水性樹脂(A1)を得た。
(2)粉砕・分級
得られた吸水性樹脂(A1)をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級した。次に、前記の操作で600μmを通過した粒子を目開き180μmのJIS標準篩で分級することで、目開き180μmのJIS標準篩を通過した吸水性樹脂粒子(B1F)を除去した。このようにして吸水性樹脂粒子(B1)を得た。
【0084】
(3)微粉造粒前記(2)の粉砕・分級において除去された吸水性樹脂粒子(B1F)をUS6228930に記載されたGranulation Example 1の方法に準じて造粒した。この造粒物を前記(2)と同様の手順で粉砕・分級した。このようにして造粒された吸水性樹脂粒子(B1A)を得た。この造粒された吸水性樹脂粒子(B1A)を写真撮影して得た図を図4に示す。ここに見られるように、吸水性樹脂粒子(B1A)は多孔質構造を有していた。
(4)微粉造粒品の混合吸水性樹脂粒子(B1)90質量部と吸水性樹脂粒子(B1A)10質量部を均一に混合し、吸水性樹脂粒子(B1A10)を得た。吸水性樹脂粒子(B1A10)のCRCは33.4g/gであった。
【0085】
(5)表面処理
前記で得られた吸水性樹脂粒子(B1A10)100gに1,4−ブタンジオール1.0g、純水4.0gの混合液からなる表面処理剤を混合した後、混合物を195℃で20分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋処理された吸水性樹脂粒子(C1−1A10)を得た。吸水性樹脂粒子(C1−1A10)のCRCは28.3g/g、SFCは50(10−7・cm3・s・g−1)、CSFは24.1g/gであった。
次に、吸水性樹脂粒子(C1−1A10)100質量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3質量部を均一に混合し、吸水剤(D1−1A10)を得た。得られた吸水剤(D1−1A10)も粉末形状であり、その諸物性を測定した結果を表1、表2、表3に示した。また、D50およびσζを求める際に使用した対数正規確率紙についても図5に示した。」

(イ)甲22発明
甲22に記載された事項を、特に実施例1に関して整理すると、甲22には次の発明が記載されていると認める。
「シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、71.3モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5438g(単量体濃度39質量%)にポリエチレングリコールジアクリレート9.36g(0.08モル%)を溶解させて反応液とし、この反応液を窒素ガス雰囲気下で、30分間脱気し、続いて、反応液に10質量%過硫酸ナトリウム水溶液29.34gおよび0.1質量%L−アスコルビン酸水溶液24.45gを攪拌しながら添加して重合を開始し、生成したゲルを粉砕しながら、20〜95℃で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体(1)を取り出し、この細分化された含水ゲル状架橋重合体(1)を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥して不定形で、容易に粉砕される粒子状や粉末状や粒子状乾燥物凝集体の吸水性樹脂(A1)を得、得られた吸水性樹脂(A1)をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級し、前記の操作で600μmを通過した粒子を目開き180μmのJIS標準篩で分級することで、目開き180μmのJIS標準篩を通過した吸水性樹脂粒子(B1F)を除去して吸水性樹脂粒子(B1)を得ると共に、前記粉砕・分級において除去された吸水性樹脂粒子(B1F)をUS6228930に記載されたGranulation Example 1の方法に準じて造粒し、この造粒物を前記と同様の手順で粉砕・分級して造粒された吸水性樹脂粒子(B1A)を得た後、吸水性樹脂粒子(B1)90質量部と吸水性樹脂粒子(B1A)10質量部を均一に混合し、吸水性樹脂粒子(B1A10)を得、得られた吸水性樹脂粒子(B1A10)100gに1,4−ブタンジオール1.0g、純水4.0gの混合液からなる表面処理剤を混合した後、混合物を195℃で20分間加熱処理し、さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋処理された吸水性樹脂粒子(C1−1A10)を得、次に、吸水性樹脂粒子(C1−1A10)100質量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3質量部を均一に混合して得られた、吸水剤(D1−1A10)。」(以下、「甲22発明」という。)

(2)対比・判断
ア 甲9に基づく新規性について
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲9発明を対比すると、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
そして、両者は以下の点で相違又は一応相違する。
<相違点9−1−1>
本件特許発明1が「下記式(1):
しみわたり指数=無加圧DWの1分値(mL/g)+10倍膨潤時の人工尿通液速度(g/分) ・・・(1)
で表される、しみわたり指数が14.0以上」と特定されているのに対し、甲9発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点9−1−2>
本件特許発明1が「無加圧DWの1分値が7.0mL/g以上」と特定されているのに対し、甲9発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点9−1−3>
本件特許発明1が「10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下」と特定されているのに対し、甲9発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点9−1−4>
本件特許発明1が「生理食塩水の吸水量が57g/g以上」と特定されているのに対し、甲9発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点9−1−A>
本件特許発明1が「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」と特定されているのに対し、甲9発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討するに、甲9の他の記載を参照しても、甲9発明が上記各相違点に係る物性を満たす証拠や根拠はない。
したがって、上記<相違点9−1−1>ないし<相違点9−1−A>は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は、甲9に記載された発明であるとはいえない。

(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲9に記載された発明であるとはいえない。

(ウ)異議申立人の主張について
異議申立人は、特許異議申立書において、「甲第4号証の吸水剤と甲9号証の吸水剤は類似の組成および諸物性であるから、甲第9号証も本願を満たす蓋然性が高い」と主張している。
しかしながら、上記第5 1(2)エで述べたように、本件特許発明1及び2は、甲4に記載された発明であるとはいえないのであるから、異議申立人の上記主張は首肯できない。

イ 甲10に基づく新規性について
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲10発明を対比すると、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
そして、両者は以下の点で相違又は一応相違する。
<相違点10−1−1>
本件特許発明1が「下記式(1):
しみわたり指数=無加圧DWの1分値(mL/g)+10倍膨潤時の人工尿通液速度(g/分) ・・・(1)
で表される、しみわたり指数が14.0以上」と特定されているのに対し、甲10発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点10−1−2>
本件特許発明1が「無加圧DWの1分値が7.0mL/g以上」と特定されているのに対し、甲10発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点10−1−3>
本件特許発明1が「10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下」と特定されているのに対し、甲10発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点10−1−4>
本件特許発明1が「生理食塩水の吸水量が57g/g以上」と特定されているのに対し、甲10発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点10−1−A>
本件特許発明1が「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」と特定されているのに対し、甲10発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討するに、甲10の他の記載を参照しても、甲10発明が上記各相違点に係る物性を満たす証拠や根拠はない。
したがって、上記<相違点10−1−1>ないし<相違点10−1−A>は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は、甲10に記載された発明であるとはいえない。

(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲10に記載された発明であるとはいえない。

(ウ)異議申立人の主張について
異議申立人は、特許異議申立書において、「甲第5号証の吸水剤と甲10号証の吸水剤は類似の組成および諸物性であるから、甲第10号証も本願を満たす蓋然性が高い」と主張している。
しかしながら、上記第5 1(2)オ及びカで述べたように、本件特許発明1及び2は、甲5に記載された発明であるとはいえないのであるから、異議申立人の上記主張は首肯できない。

ウ 甲21に基づく新規性について
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲21発明を対比すると、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点21−1−1>
本件特許発明1が「下記式(1):
しみわたり指数=無加圧DWの1分値(mL/g)+10倍膨潤時の人工尿通液速度(g/分) ・・・(1)
で表される、しみわたり指数が14.0以上」と特定されているのに対し、甲21発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点21−1−2>
本件特許発明1が「無加圧DWの1分値が7.0mL/g以上」と特定されているのに対し、甲21発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点21−1−3>
本件特許発明1が「10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下」と特定されているのに対し、甲21発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点21−1−4>
本件特許発明1が「生理食塩水の吸水量が57g/g以上」と特定されているのに対し、甲21発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点21−1−A>
本件特許発明1が「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」と特定されているのに対し、甲21発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討するに、甲21の他の記載を参照しても、甲21発明が上記各相違点に係る物性を満たす証拠や根拠はない。
したがって、上記<相違点21−1−1>ないし<相違点21−1−A>は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は、甲21に記載された発明であるとはいえない。

(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲21に記載された発明であるとはいえない。

(ウ)異議申立人の主張について
異議申立人は、特許異議申立書において、「甲第22号証(当審注:以下、「甲第21号証」の誤記と認められる。)の実施例11の(遠心分離脱水なしでの)吸水倍率FSC=57g/gである。甲第22号証の実施例11も本願を満たす蓋然性が高い」と主張している。
しかしながら、甲21発明が、吸水倍率FSC=57g/gだからといって、上記(ア)で述べたように、甲21の他の記載を参照しても、甲21発明が上記各相違点に係る物性を満たす証拠や根拠はないのであるから、異議申立人の上記主張は首肯できない。

エ 甲22に基づく新規性について
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲22発明を対比すると、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点22−1−1>
本件特許発明1が「下記式(1):
しみわたり指数=無加圧DWの1分値(mL/g)+10倍膨潤時の人工尿通液速度(g/分) ・・・(1)
で表される、しみわたり指数が14.0以上」と特定されているのに対し、甲22発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点22−1−2>
本件特許発明1が「無加圧DWの1分値が7.0mL/g以上」と特定されているのに対し、甲22発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点22−1−3>
本件特許発明1が「10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下」と特定されているのに対し、甲22発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点22−1−4>
本件特許発明1が「生理食塩水の吸水量が57g/g以上」と特定されているのに対し、甲22発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点22−1−A>
本件特許発明1が「荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/g」と特定されているのに対し、甲22発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討するに、甲22の他の記載を参照しても、甲22発明が上記各相違点に係る物性を満たす証拠や根拠はない。
したがって、上記<相違点22−1−1>ないし<相違点22−1−A>は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は、甲22に記載された発明であるとはいえない。

(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲22に記載された発明であるとはいえない。

(ウ)異議申立人の主張について
異議申立人は、特許異議申立書において、「甲第4号証の吸水剤と甲22号証の吸水剤は類似の組成および諸物性であるから、甲第9号証も本願を満たす蓋然性が高い」と主張している。
しかしながら、上記第5 1(2)エで述べたように、本件特許発明1及び2は、甲4に記載された発明であるとはいえないのであるから、異議申立人の上記主張は首肯できない。

(3)異議申立理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1及び2は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、異議申立理由1によっては取り消すことはできない。

2 異議申立理由3(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりである。

(3)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細の記載は次のとおりである。
・「【背景技術】
【0002】
従来、尿等の水を主成分とする液体を吸収するための吸収性物品には、吸水性樹脂粒子を含有する吸収体が用いられている。例えば下記特許文献1には、おしめなどの吸収性物品に好適に用いられる粒子径を有する吸水性樹脂粒子の製造方法が、また特許文献2には、尿の様な体液を収容するのに効果的な吸収性部材として、特定の食塩水流れ誘導性、圧力下性能等を有するヒドロゲル吸収性重合体を使用する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−345819号公報
【特許文献2】特表平09−510889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の吸収体を用いた吸収性物品では、吸液対象の液が吸収体に十分吸収されずに、余剰の液が吸収体表面を流れる現象(液走り)が起こりやすく、結果として液が吸収性物品の外に漏れるという漏れ性の点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、吸収体の液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することを目的とする。 」
・「【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、吸収体の液体漏れを改善するには、吸収体に含まれる吸水性樹脂粒子の集合体に接触した液体を、集合体全体にしみわたり易くすることが重要であると考え、鋭意研究の結果、液体が吸水性樹脂粒子の集合体に接触してから短時間の間(初期)における吸水性樹脂粒子の吸水速度(DW)と通液速度とが吸収体の液体漏れに影響を及ぼすことを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、下記式(1): しみわたり指数=無加圧DWの1分値(mL/g)+10倍膨潤時の人工尿通液速度(g/分) ・・・(1)で表されるしみわたり指数が10.0以上であり、生理食塩水の吸水量が50.0g/g以上である、吸水性樹脂粒子を提供する。
【0008】
無加圧DWは、吸水性樹脂粒子が、無加圧下で、生理食塩水(濃度0.9質量%の食塩水)と接触してから所定の時間経過するまでに生理食塩水を吸収した量で表される吸水速度である。無加圧DWは、生理食塩水の吸収前の吸水性樹脂粒子1g当たりの吸収量(mL)で表される。無加圧DWの1分値は、吸水性樹脂粒子が生理食塩水と接触してから1分後の吸収量を意味する。無加圧DWの1分値は、液体と接触後、短時間の間(初期)での吸水速度を表す指標であり、10倍膨潤時の人工尿通液速度は、初期においてある程度吸水した吸水性樹脂粒子の通液性を表す指標である。したがって、これら両者の和であるしみわたり指数の値は、初期の吸水速度と吸水後の通液性を反映する。本発明者の知見によれば、当該しみわたり指数が大きいことは、吸水性樹脂粒子の集合体に接触した液体が、集合体全体にしみわたり易いことを意味する。液体が吸水性樹脂粒子の集合体全体にしみわたり易いことにより、吸収性樹脂粒子が液体漏れを抑制できると考えられる。すなわち、上記吸水性樹脂粒子は、吸収性物品からの液体漏れの発生を抑制することに効果的に寄与できる。
【0009】
上記しみわたり指数は13.0以上であってよい。この場合、液体漏れがより一層抑制される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」
・「【0015】
しみわたり指数は、10.0以上であり、液体漏れがより抑制される観点から、11.0以上、12.0以上、13.0以上、14.0以上、15.0以上、16.0以上、17.0以上、18.0以上、19.0以上、20.0以上、21.0以上、又は21.5以上であってよく、30.0以下、25.0以下、又は22.0以下であってよい。
【0016】
式(1)における無加圧DWの1分値は、液体漏れがより一層抑制可能となる観点から、3.0mL/g以上、5.0mL/g以上、7.0mL/g以上、9.0mL/g以上、11.0mL/g以上、13.0mL/g以上、15.0mL/g以上、17.0mL/g以上、又は18.0mL/g以上であってよく、30mL/g以下、25mL/g以下、又は20mL/g以下であってよい。無加圧DWの1分値(mL/g)は、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0017】
式(1)における10倍膨潤時の人工尿通液速度は、液体漏れがより一層抑制可能となる観点から、0.5g/分以上、1.0g/分以上、1.5g/分以上、2.0g/分以上、又は3.0g/分以上であってよく、20.0g/分以下、15.0g/分以下、又は12.5g/分以下であってよい。10倍膨潤時の人工尿通液速度は、後述する実施例に記載の方法で測定される値として定義される。なお、本明細書において、人工尿は、0.780質量%の塩化ナトリウム、0.022質量%の塩化カルシウム、及び0.038質量%の硫酸マグネシウム、及び0.002質量%の青色一号と、水とからなる水溶液である。
【0018】
生理食塩水の吸水量は、50.0g/g以上であり、液体漏れがより一層抑制可能となる観点から、51.0g/g以上、又は55.0g/g以上であってよく、70g/g以下、65g/g以下、又は60g/g以下であってよい。生理食塩水の吸水量は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0019】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の荷重下における生理食塩水の吸水量は、例えば10〜40mL/g、15〜35mL/g、20〜30mL/g、又は22〜28mL/gであってよい。荷重下における生理食塩水の吸水量としては、荷重4.14kPaにおける吸水量(25℃)を用いることができる。吸水量は、後述する実施例に記載の方法によって測定できる。」
・「【0021】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含むことができる。架橋重合体は、エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する。
【0022】
吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体を含む単量体を重合させる工程を含む方法により、製造することができる。重合方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。これらの中では、得られる吸水性樹脂粒子の良好な吸水特性の確保、及び、重合反応の制御が容易である観点から、逆相懸濁重合法又は水溶液重合法が好ましい。以下においては、エチレン性不飽和単量体を重合させる方法として、逆相懸濁重合法を例にとって説明する。
【0023】
エチレン性不飽和単量体は水溶性であることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸及びその塩、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体がアミノ基を有する場合、当該アミノ基は4級化されていてもよい。エチレン性不飽和単量体は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。上述の単量体のカルボキシル基、アミノ基等の官能基は、後述する表面架橋工程において架橋が可能な官能基として機能し得る。
【0024】
これらの中でも、工業的に入手が容易である観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、並びに、N,N−ジメチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに、アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましい。吸水特性を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
【0025】
エチレン性不飽和単量体は、通常、水溶液として用いることが好適である。エチレン性不飽和単量体を含む水溶液(以下、単に「単量体水溶液」という)におけるエチレン性不飽和単量体の濃度は、20質量%以上飽和濃度以下が好ましく、25〜70質量%がより好ましく、30〜55質量%が更に好ましい。水溶液において使用される水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
【0026】
吸水性樹脂粒子を得るための単量体としては、上述のエチレン性不飽和単量体以外の単量体が使用されてもよい。このような単量体は、例えば、上述のエチレン性不飽和単量体を含む水溶液に混合して用いることができる。エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量に対して70〜100モル%であることが好ましい。中でも、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70〜100モル%であることがより好ましい。
【0027】
単量体水溶液は、エチレン性不飽和単量体が酸基を有する場合、その酸基をアルカリ性中和剤によって中和して用いてもよい。エチレン性不飽和単量体における、アルカリ性中和剤による中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高くし、吸水特性(吸水量等)を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体中の酸性基の10〜100モル%であることが好ましく、50〜90モル%であることがより好ましく、60〜80モル%であることが更に好ましい。アルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニアなどが挙げられる。アルカリ性中和剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。アルカリ性中和剤は、中和操作を簡便にするために水溶液の状態で用いられてもよい。エチレン性不飽和単量体の酸基の中和は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を上述の単量体水溶液に滴下して混合することにより行うことができる。
【0028】
逆相懸濁重合法においては、界面活性剤の存在下、炭化水素分散媒中で単量体水溶液を分散し、ラジカル重合開始剤等を用いてエチレン性不飽和単量体の重合を行うことができる。ラジカル重合開始剤としては、水溶性ラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0029】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(「(ポリ)」とは、「ポリ」の接頭語がある場合及びない場合の双方を意味するものとする。以下同じ。)、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0030】
W/O型逆相懸濁の状態が良好であり、好適な粒子径を有する吸水性樹脂粒子が得られやすく、工業的に入手が容易である観点から、界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。得られる吸水性樹脂粒子の吸水特性が向上しやすい観点から、界面活性剤は、ショ糖脂肪酸エステルを含むことが好ましく、ショ糖ステアリン酸エステルがより好ましい。
【0031】
界面活性剤の使用量は、使用量に対する効果が充分に得られる観点、及び、経済的である観点から、単量体水溶液100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.08〜5質量部がより好ましく、0.1〜3質量部が更に好ましい。
【0032】
逆相懸濁重合では、上述の界面活性剤と共に高分子系分散剤を併せて用いてもよい。高分子系分散剤としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。高分子系分散剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。高分子系分散剤としては、単量体の分散安定性に優れる観点から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、及び、酸化型エチレン・プロピレン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0033】
高分子系分散剤の使用量は、使用量に対する効果が充分に得られる観点、及び、経済的である観点から、単量体水溶液100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.08〜5質量部がより好ましく、0.1〜3質量部が更に好ましい。
【0034】
炭化水素分散媒は、炭素数6〜8の鎖状脂肪族炭化水素、及び、炭素数6〜8の脂環式炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。炭化水素分散媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、n−オクタン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans−1,2−ジメチルシクロペンタン、cis−1,3−ジメチルシクロペンタン、trans−1,3−ジメチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。炭化水素分散媒は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0035】
工業的に入手が容易であり、かつ、品質が安定している観点から、炭化水素分散媒は、n−ヘプタン及びシクロヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい。また、同様の観点から、上述の炭化水素分散媒の混合物としては、例えば、市販されているエクソールヘプタン(エクソンモービル社製:n−ヘプタン及び異性体の炭化水素75〜85%含有)を用いてもよい。
【0036】
炭化水素分散媒の使用量は、重合熱を適度に除去し、重合温度を制御しやすい観点から、単量体水溶液100質量部に対して、30〜1000質量部が好ましく、40〜500質量部がより好ましく、50〜300質量部が更に好ましい。炭化水素分散媒の使用量が30質量部以上であることにより、重合温度の制御が容易である傾向がある。炭化水素分散媒の使用量が1000質量部以下であることにより、重合の生産性が向上する傾向があり、経済的である。
【0037】
ラジカル重合開始剤は水溶性であることが好ましく、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、過酸化水素等の過酸化物;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(N−フェニルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(N−アリルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物などが挙げられる。ラジカル重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]2塩酸塩、及び、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}2塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0038】
ラジカル重合開始剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体1モルに対して0.00005〜0.01モルであってよい。ラジカル重合開始剤の使用量が0.00005モル以上であると、重合反応に長時間を要さず、効率的である。ラジカル重合開始剤の使用量が0.01モル以下であると、急激な重合反応が起こることを抑制しやすい。
【0039】
上述のラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸等の還元剤と併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0040】
重合反応の際、重合に用いる単量体水溶液は、連鎖移動剤を含んでいてもよい。連鎖移動剤としては、次亜リン酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等が挙げられる。
【0041】
吸水性樹脂粒子の粒子径を制御するために、重合に用いる単量体水溶液は、増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。なお、重合時の撹拌速度が同じであれば、単量体水溶液の粘度が高いほど、得られる粒子の中位粒子径は大きくなる傾向にある。
【0042】
重合の際に自己架橋による架橋が生じるが、更に内部架橋剤を用いることで架橋を施してもよい。内部架橋剤を用いると、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御しやすい。内部架橋剤は、通常、重合反応の際に反応液に添加される。内部架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類のジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;上述のポリオール類と不飽和酸(マレイン酸、フマール酸等)とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;ポリイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)と(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、N,N’,N”−トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等の,重合性不飽和基を2個以上有する化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;イソシアネート化合物(2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)などの、反応性官能基を2個以上有する化合物などが挙げられる。内部架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。内部架橋剤としては、ポリグリシジル化合物が好ましく、ジグリシジルエーテル化合物がより好ましく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種が更に好ましい。
【0043】
内部架橋剤の使用量は、得られる重合体が適度に架橋されることにより水溶性の性質が抑制され、充分な吸水量が得られやすい観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、0ミリモル以上、0.02ミリモル以上、0.03ミリモル以上、0.04ミリモル以上、又は0.05ミリモル以上であってもよく、0.1モル以下であってもよい。特に、多段の逆相懸濁重合の重合、1段目の重合において、内部架橋剤の量がエチレン性不飽和単量体1モル当たり0.03ミリモル以上であると、しみわたり指数の大きな吸水性樹脂粒子が得られ易い。
【0044】
エチレン性不飽和単量体、ラジカル重合開始剤、必要に応じて内部架橋剤等を含む水相と、炭化水素系分散剤と必要に応じて界面活性剤、高分子系分散剤等を含む油相を混合した状態において撹拌下で加熱し、油中水系において逆相懸濁重合を行うことができる。
【0045】
逆相懸濁重合を行う際には、界面活性剤(必要に応じて更に、高分子系分散剤)の存在下で、エチレン性不飽和単量体を含む単量体水溶液を炭化水素分散媒に分散させる。このとき、重合反応を開始する前であれば、界面活性剤、高分子系分散剤等の添加時期は、単量体水溶液の添加の前後どちらであってもよい。
【0046】
その中でも、得られる吸水性樹脂に残存する炭化水素分散媒の量を低減しやすい観点から、高分子系分散剤を分散させた炭化水素分散媒に単量体水溶液を分散させた後に界面活性剤を更に分散させてから重合を行うことが好ましい。
【0047】
逆相懸濁重合は、1段、又は、2段以上の多段で行うことができる。逆相懸濁重合は、生産性を高める観点から、2〜3段で行うことが好ましい。
【0048】
2段以上の多段で逆相懸濁重合を行う場合には、1段目の逆相懸濁重合を行った後、1段目の重合反応で得られた反応混合物にエチレン性不飽和単量体を添加して混合し、1段目と同様の方法で2段目以降の逆相懸濁重合を行えばよい。2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、エチレン性不飽和単量体の他に、上述のラジカル重合開始剤を、2段目以降の各段における逆相懸濁重合の際に添加するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行うことが好ましい。なお、2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、必要に応じて内部架橋剤を用いてもよい。内部架橋剤を用いる場合は、各段に供するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行うことが好ましい。
【0049】
重合反応の温度は、使用するラジカル重合開始剤によって異なるが、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより、経済性を高めると共に、容易に重合熱を除去して円滑に反応を行う観点から、20〜150℃が好ましく、40〜120℃がより好ましい。反応時間は、通常、0.5〜4時間である。重合反応の終了は、例えば、反応系内の温度上昇の停止により確認することができる。これにより、エチレン性不飽和単量体の重合体は、通常、含水ゲル状重合体の状態で得られる。
【0050】
重合後、得られた含水ゲル状重合体に架橋剤を添加して加熱することで、重合後架橋を施してもよい。重合後架橋を行なうことで含水ゲル状重合体の架橋度を高め、それにより吸水性樹脂粒子の吸水特性を更に向上させることができる。
【0051】
重合後架橋を行うための架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等の2個以上のエポキシ基を有する化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、及びα−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等の2個以上のイソシアネート基を有する化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物等が挙げられる。これらの中でも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物が好ましい。これらの架橋剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0052】
重合後架橋に用いられる架橋剤の量は、得られる含水ゲル状重合体が適度に架橋されることにより好適な吸水特性を示すようにする観点から、水溶性エチレン性不飽和単量体1モル当たり、0〜0.03モルであることが好ましく、0〜0.01モルであることがより好ましく、0.00001〜0.005モルであることが更に好ましい。重合後架橋に用いられる架橋剤の量が上記範囲内であれば、しみわたり指数の大きな吸水性樹脂粒子が得られ易い。
【0053】
重合後架橋の添加時期としては、重合に用いられるエチレン性不飽和単量体の重合後であればよく、多段重合の場合は、多段重合後に添加されることが好ましい。なお、重合時および重合後の発熱、工程遅延による滞留、架橋剤添加時の系の開放、及び架橋剤添加に伴う水の添加等による水分の変動を考慮して、重合後架橋の架橋剤は、含水率(後述)の観点から、[重合直後の含水率±3質量%]の領域で添加することが好ましい。
【0054】
引き続き、得られた含水ゲル状重合体から水分を除去するために乾燥を行う。乾燥により、エチレン性不飽和単量体の重合体を含む重合体粒子が得られる。乾燥方法としては、例えば、(a)含水ゲル状重合体が炭化水素分散媒に分散した状態で、外部から加熱することにより共沸蒸留を行い、炭化水素分散媒を還流させて水分を除去する方法、(b)デカンテーションにより含水ゲル状重合体を取り出し、減圧乾燥する方法、(c)フィルターにより含水ゲル状重合体をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。中でも、製造工程における簡便さから、(a)の方法を用いることが好ましい。
【0055】
重合反応時の撹拌機の回転数を調整することによって、あるいは、重合反応後又は乾燥の初期において凝集剤を系内に添加することによって吸水性樹脂粒子の粒子径を調整することができる。凝集剤を添加することにより、得られる吸水性樹脂粒子の粒子径を大きくすることができる。凝集剤としては、無機凝集剤を用いることができる。無機凝集剤(例えば粉末状無機凝集剤)としては、シリカ、ゼオライト、ベントナイト、酸化アルミニウム、タルク、二酸化チタン、カオリン、クレイ、ハイドロタルサイト等が挙げられる。凝集効果に優れる観点から、凝集剤としては、シリカ、酸化アルミニウム、タルク及びカオリンからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0056】
逆相懸濁重合において、凝集剤を添加する方法としては、重合で用いられるものと同種の炭化水素分散媒又は水に凝集剤を予め分散させてから、撹拌下で、含水ゲル状重合体を含む炭化水素分散媒中に混合する方法が好ましい。
【0057】
凝集剤の添加量は、重合に使用するエチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0.001〜1質量部であることが好ましく、0.005〜0.5質量部であることがより好ましく、0.01〜0.2質量部であることが更に好ましい。凝集剤の添加量が上述の範囲内であることによって、目的とする粒度分布を有する吸水性樹脂粒子が得られやすい。
【0058】
吸水性樹脂粒子の製造においては、乾燥工程又はそれ以降のいずれかの工程において、架橋剤を用いて含水ゲル状重合体の表面部分の架橋(表面架橋)が行われることが好ましい。表面架橋を行うことで、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御しやすい。表面架橋は、含水ゲル状重合体が特定の含水率であるタイミングで行われることが好ましい。表面架橋の時期は、含水ゲル状重合体の含水率が5〜50質量%である時点が好ましく、10〜40質量%である時点がより好ましく、15〜35質量%である時点が更に好ましい。なお、含水ゲル状重合体の含水率(質量%)は、次の式で算出される。
含水率=[Ww/(Ww+Ws)]×100
Ww:全重合工程の重合前の単量体水溶液に含まれる水分量から、乾燥工程により系外部に排出された水分量を差し引いた量に、凝集剤、表面架橋剤等を混合する際に必要に応じて用いられる水分量を加えた含水ゲル状重合体の水分量。
Ws:含水ゲル状重合体を構成するエチレン性不飽和単量体、架橋剤、開始剤等の材料の仕込量から算出される固形分量。
【0059】
表面架橋を行うための架橋剤(表面架橋剤)としては、例えば、反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができる。架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、3−ブチル−3−オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物などが挙げられる。架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。架橋剤としては、ポリグリシジル化合物が好ましく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、及び、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましい。
【0060】
表面架橋剤の使用量は、得られる含水ゲル状重合体が適度に架橋されることにより好適な吸水特性を示すようにする観点から、通常、重合に使用するエチレン性不飽和単量体1モルに対して、0.00001〜0.02モルが好ましく、0.00005〜0.01モルがより好ましく、0.0001〜0.005モルが更に好ましい。表面架橋剤の使用量が0.00001モル以上であると、吸水性樹脂粒子の表面部分における架橋密度が充分に高められ、吸水性樹脂粒子のゲル強度を高めやすい。表面架橋剤の使用量が0.02モル以下であると、吸水性樹脂粒子の吸水量を高めやすい。また、表面架橋剤の使用量が上記範囲内であれば、しみわたり指数の大きな吸水性樹脂粒子が得られ易い。
【0061】
表面架橋後において、公知の方法で水及び炭化水素分散媒を留去することにより、表面架橋された吸水性樹脂粒子の乾燥品である重合体粒子を得ることができる。
【0062】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、重合体粒子のみから構成されていてもよいが、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤(エチレンジアミン4酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン5酢酸及びその塩、例えばジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム等)、及び流動性向上剤(滑剤)等から選ばれる各種の追加の成分を更に含むことができる。追加の成分は、重合体粒子の内部、重合体粒子の表面上、又はそれらの両方に配置され得る。追加の成分としては、流動性向上剤(滑剤)が好ましく、そのなかでも無機粒子がより好ましい。無機粒子としては、例えば、非晶質シリカ等のシリカ粒子が挙げられる。
【0063】
吸水性樹脂粒子は、重合体の表面上に配置された複数の無機粒子を含んでいてもよい。例えば、重合体粒子と無機粒子とを混合することにより、重合体粒子の表面上に無機粒子を配置することができる。この無機粒子は、非晶質シリカ等のシリカ粒子であってもよい。吸水性樹脂粒子が重合体粒子の表面上に配置された無機粒子を含む場合、重合体粒子の質量に対する無機粒子の割合は、0.2質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、又は1.5質量%以上であってもよく、5.0質量%以下、又は3.5質量%以下であってもよい。ここでの無機粒子は、通常、重合体粒子の大きさと比較して微小な大きさを有する。例えば、無機粒子の平均粒子径が、0.1〜50μm、0.5〜30μm、又は1〜20μmであってもよい。ここでの平均粒子径は、動的光散乱法、又はレーザー回折・散乱法によって測定される値であることができる。無機粒子の添加量が上述の範囲内であることによって、吸水性樹脂粒子の吸水特性、なかでも、しみわたり指数が好適な吸水性樹脂粒子が得られ易い。」
・「【実施例】
【0080】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0081】
<吸水性樹脂粒子の製造>
実施例1
第1段目の重合反応 還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、並びに、攪拌機として、翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、n−ヘプタン293g、及び、高分子系分散剤としての無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、ハイワックス1105A)0.736gを入れた。フラスコ内の反応液を攪拌しつつ80℃まで昇温して、高分子系分散剤をn−へプタンに溶解させた。その後、反応液を50℃まで冷却した。
【0082】
内容積300mLのビーカーに、濃度80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(1.03モル)を入れた。ビーカーを外部より冷却しつつ、アクリル酸水溶液に対して濃度20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gを滴下し、それにより75モル%のアクリル酸を中和した。次いで、アクリル酸溶液に、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HECAW−15F)、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.010g(0.057ミリモル)を溶解させて、第1段目の単量体水溶液を調製した。
【0083】
第1段目の単量体水溶液をセパラブルフラスコ内の上述の反応液に添加し、反応液を10分間攪拌した。次いで、n−ヘプタン6.62g及びショ糖ステアリン酸エステル(HLB:3、三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS−370)0.736gを含む界面活性剤溶液を、反応液に添加し、撹拌翼の回転数を550rpmとして反応液を攪拌しながら、系内を窒素で十分に置換した。その後、セパラブルフラスコを70℃の水浴中で加熱しながら、60分間かけて重合反応を進行させた。この重合反応により、含水ゲル状重合体を含む第1段目の重合スラリー液を得た。
【0084】
第2段目の重合反応
内容積500mLのビーカーに濃度80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)を入れた。ビーカーを外部より冷却しつつ、アクリル酸水溶液に対して、濃度27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下し、それにより75モル%のアクリル酸を中和した。次いで、アクリル酸水溶液に、過硫酸カリウム0.090g(0.334ミリモル)を溶解させて、第2段目の単量体水溶液を調製した。
【0085】
セパラブルフラスコ内の第1段目の重合スラリー液を、撹拌翼の回転数を1000rpmとして撹拌しながら、25℃に冷却した。そこに、第2段目の単量体水溶液の全量を添加し、続いて系内を窒素で30分間かけて置換した。その後、セパラブルフラスコを70℃の水浴中で加熱しながら、60分間かけて重合反応を進行させた。重合後架橋のための架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液0.580g(0.067ミリモル)を添加し、含水ゲル状重合体を得た。
【0086】
含水ゲル状重合体を含む反応液に、濃度45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.265gを攪拌下で添加した。その後、125℃に設定した油浴にフラスコを浸漬し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留により、247.9gの水を系外へ抜き出した。その後、反応液に表面架橋剤として濃度2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(0.507ミリモル)を添加し、83℃で2時間かけて、表面架橋剤による架橋反応を進行させた。
【0087】
表面架橋反応後の反応液から、125℃での加熱により、n−ヘプタンを留去して、重合体粒子(乾燥品)を得た。この重合体粒子を目開き850μmの篩に通過させた。その後、重合体粒子の質量に対して0.5質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP−S)を重合体粒子に混合し、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子を231.0g得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は355μmであった。
【0088】
実施例2
共沸蒸留により含水ゲル状重合体を含む反応液から抜き出した水の量が239.7gであったこと以外は、実施例1と同様の手順で、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子229.2gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は377μmであった。
【0089】
実施例3
第1段目の重合反応における水溶性ラジカル重合開始剤を2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)、および過硫酸カリウム0.018g(0.068ミリモル)に変更し、第2段目の重合反応における水溶性ラジカル重合開始剤を2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)、および過硫酸カリウム0.026g(0.095ミリモル)に変更し、共沸蒸留により含水ゲル状重合体を含む反応液から抜き出した水の量が238.5gであったこと、非晶質シリカの添加量を0.2質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順で、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子を232.1g得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は396μmであった。
【0090】
実施例4
第1段目の重合反応における水溶性ラジカル重合開始剤を2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)、および過硫酸カリウム0.018g(0.068ミリモル)に変更し、第2段目の重合反応における水溶性ラジカル重合開始剤を2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)、および過硫酸カリウム0.026g(0.095ミリモル)に変更し、共沸蒸留により含水ゲル状重合体を含む反応液から抜き出した水の量が238.5gであったこと以外は、実施例1と同様の手順で、重合体粒子(乾燥品)を得た。
重合体粒子(乾燥品)の質量に対して2.0質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP−S)を重合体粒子に混合し、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子232.2gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は393μmであった。
【0091】
比較例1
第2段目の重合反応において、アクリル酸水溶液に、過硫酸カリウム0.090g(0.334ミリモル)とともに、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)を溶解させたこと、重合後架橋のための架橋剤を添加しなかったこと、共沸蒸留により含水ゲル状重合体を含む反応液から抜き出した水の量が256.1gであったこと以外は、実施例1と同様の手順で、重合体粒子(乾燥品)を得た。
重合体粒子(乾燥品)の質量に対して、0.1質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP−S)を重合体粒子に混合し、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子230.8gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は349μmであった。
【0092】
比較例2
第1段目の重合反応において、水溶性ラジカル重合開始剤を2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)、および過硫酸カリウム0.018g(0.068ミリモル)に、内部架橋剤をエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0046g(0.026ミリモル)に変更したこと、第2段目の重合反応において、水溶性ラジカル重合開始剤を2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)、および過硫酸カリウム0.026g(0.095ミリモル)に、内部架橋剤をエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)に変更したこと、重合後架橋のための架橋剤を添加しなかったこと、共沸蒸留により含水ゲル状重合体を含む反応液から抜き出した水の量が234.2gであったこと以外は、実施例1と同様の手順で、重合体粒子(乾燥品)を得た。
重合体粒子の質量に対して0.2質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP−S)を重合体粒子に混合し、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子229.6gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は355μmであった。
【0093】
比較例3
第1段目の重合反応において、水溶性ラジカル重合開始剤を2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)、および過硫酸カリウム0.018g(0.068ミリモル)に、内部架橋剤をエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0046g(0.026ミリモル)に変更したこと、第2段目の重合反応において、水溶性ラジカル重合開始剤を2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)、および過硫酸カリウム0.026g(0.095ミリモル)に、内部架橋剤をエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)に変更したこと、重合後架橋剤を添加しなかったこと、共沸蒸留により含水ゲル状重合体を含む反応液から抜き出した水の量が223.7gであったこと以外は、実施例1と同様の手順で、重合体粒子(乾燥品)を得た。
重合体粒子の質量に対して0.2質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP−S)を重合体粒子に混合し、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子229.6gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は346μmであった。
【0094】
比較例4
第1段目の重合反応において、水溶性ラジカル重合開始剤を2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)、および過硫酸カリウム0.018g(0.068ミリモル)に、内部架橋剤をエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0046g(0.026ミリモル)に変更したこと、第2段目の重合反応において、水溶性ラジカル重合開始剤を2,2’−アゾビス(2?アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)、および過硫酸カリウム0.026g(0.095ミリモル)に変更し、内部架橋剤をエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)に変更したこと、重合後架橋のための架橋剤を添加しなかったこと、共沸蒸留により含水ゲル状重合体を含む反応液から抜き出した水の量が219.2gであったこと、後架橋剤を濃度2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液6.62g(0.761ミリモル)に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順で、重合体粒子(乾燥品)を得た。
重合体粒子の質量に対して0.2質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP−S)を重合体粒子に混合し、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子229.6gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は356μmであった。
【0095】
<中位粒子径>
吸水性樹脂粒子50gを中位粒子径測定用に用いた。
【0096】
JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、及び受け皿の順に組み合わせた。
【0097】
組み合わせた最上の篩に、吸水性樹脂粒子を入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。分級後、各篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量を全量に対する質量百分率として算出し粒度分布を求めた。この粒度分布に関して粒子径の大きい方から順に篩上を積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径とした。
【0098】
<生理食塩水の吸水量(g/g)>
500mL容のビーカーに、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)500gを量り取り、600r/minで撹拌させながら、吸水性樹脂粒子2.0gを、ママコが発生しないように分散させた。撹拌させた状態で60分間放置し、吸水性樹脂粒子を十分に膨潤させた。その後、あらかじめ目開き75μm標準篩の質量Wa(g)を測定しておき、これを用いて、前記ビーカーの内容物をろ過し、篩いを水平に対して約30度の傾斜角となるように傾けた状態で、30分間放置することにより余剰の水分をろ別した。膨潤ゲルの入った篩いの質量Wb(g)を測定し、以下の式により、生理食塩水吸水能を求めた。
生理食塩水の吸水量=(Wb−Wa)/2.0
【0099】
<吸水性樹脂粒子の荷重下の吸水量>
吸水性樹脂粒子の荷重下(加圧下)の生理食塩水の吸水量(室温、25℃±2℃)を、図4に示す測定装置Yを用いて測定した。測定装置Yは、ビュレット部71、導管72、測定台73、及び、測定台73上に置かれた測定部74から構成される。ビュレット部71は、鉛直方向に伸びるビュレット71aと、ビュレット71aの上端に配置されたゴム栓71bと、ビュレット71aの下端に配置されたコック71cと、コック71cの近傍において一端がビュレット71a内に伸びる空気導入管71dと、空気導入管71dの他端側に配置されたコック71eとを有している。導管72は、ビュレット部71と測定台73との間に取り付けられている。導管72の内径は6mmである。測定台73の中央部には、直径2mmの穴があいており、導管72が連結されている。測定部74は、円筒74a(アクリル樹脂(プレキシグラス)製)と、円筒74aの底部に接着されたナイロンメッシュ74bと、重り74cとを有している。円筒74aの内径は20mmである。ナイロンメッシュ74bの目開きは75μm(200メッシュ)である。そして、測定時にはナイロンメッシュ74b上に測定対象の吸水性樹脂粒子75が均一に撒布される。重り74cの直径は19mmであり、重り74cの質量は120gである。重り74cは、吸水性樹脂粒子75上に置かれ、吸水性樹脂粒子75に対して4.14kPaの荷重を加えることができる。
【0100】
測定装置Yの円筒74aの中に0.100gの吸水性樹脂粒子75を入れた後、重り74cを載せて測定を開始した。吸水性樹脂粒子75が吸水した生理食塩水と同容積の空気が、空気導入管より、速やかにかつスムーズにビュレット71aの内部に供給されるため、ビュレット71aの内部の生理食塩水の水位の減量が、吸水性樹脂粒子75が吸水した生理食塩水量となる。ビュレット71aの目盛は、上から下方向に0mLから0.5mL刻みで刻印されており、生理食塩水の水位として、吸水開始前のビュレット71aの目盛りVaと、吸水開始から60分後のビュレット71aの目盛りVbとを読み取り、下記式より荷重下の吸水量を算出した。結果を表1に示す。
荷重下吸水量[mL/g]=(Vb−Va)/0.1
【0101】
<無加圧DW(DemandWettability)の1分値の測定>
吸水性樹脂の粒子の無加圧DWは、図1に示す測定装置を用いて測定した。測定は1種類の吸水性樹脂粒子に関して5回実施し、最低値と最高値とを除いた3点の測定値の平均値を求めた。
当該測定装置は、ビュレット部1、導管5、測定台13、ナイロンメッシュシート15、架台11、及びクランプ3を有する。ビュレット部1は、目盛が記載されたビュレット管21と、ビュレット管21の上部の開口を密栓するゴム栓23と、ビュレット管21の下部の先端に連結されたコック22と、ビュレット管21の下部に連結された空気導入管25及びコック24とを有する。ビュレット部1はクランプ3で固定されている。平板状の測定台13は、その中央部に形成された直径2mmの貫通孔13aを有しており、高さが可変の架台11によって支持されている。測定台13の貫通孔13aとビュレット部1のコック22とが導管5によって連結されている。導管5の内径は6mmである。
【0102】
測定は温度25℃、湿度60±10%の環境下で行なわれた。まずビュレット部1のコック22とコック24を閉め、25℃に調節された0.9質量%食塩水50をビュレット管21上部の開口からビュレット管21に入れた。食塩水の濃度0.9質量%は、食塩水の質量を基準とする濃度である。ゴム栓23でビュレット管21の開口の密栓した後、コック22及びコック24を開けた。気泡が入らないよう導管5内部を0.9質量%食塩水50で満たした。貫通孔13a内に到達した0.9質量%食塩水の水面の高さが、測定台13の上面の高さと同じになるように、測定台13の高さを調整した。調整後、ビュレット管21内の0.9質量%食塩水50の水面の高さをビュレット管21の目盛で読み取り、その位置をゼロ点(0秒時点の読み値)とした。
【0103】
測定台13上の貫通孔13の近傍にて、ナイロンメッシュシート15(100mm×100mm、250メッシュ、厚さ約50μm)を敷き、その中央部に、内径30mm、高さ20mmのシリンダーを置いた。このシリンダーに、1.00gの吸水性樹脂粒子10aを均一に散布した。その後、シリンダーを注意深く取り除き、ナイロンメッシュシート15の中央部に吸水性樹脂粒子10aが円状に分散されたサンプルを得た。次いで、吸水性樹脂粒子10aが載置されたナイロンメッシュシート15を、その中心が貫通孔13aの位置になるように、吸水性樹脂粒子10aが散逸しない程度にすばやく移動させて、測定を開始した。空気導入管25からビュレット管21内に気泡が最初に導入された時点を吸水開始(0秒)とした。
【0104】
ビュレット管21内の0.9質量%食塩水50の減少量(すなわち、吸水性樹脂粒子10aが吸水した0.9質量%食塩水の量)を0.1mL単位で順次読み取り、吸水性樹脂粒子10aの吸水開始から起算して1分後の0.9質量%食塩水50の減量分Wc(g)を読み取った。Wcから、下記式(1)により無加圧DWの1分値を求めた。無加圧DWは、吸水性樹脂粒子10aの1.00g当たりの吸水量である。
無加圧DWの1分値(mL/g)=Wc/1.00 ・・・(1)
【0105】
<人工尿の調製>
イオン交換水に、下記の通りに無機塩が存在するように配合して溶解させたものに、さらに少量の青色1号を配合して人工尿(試験液)を調製した。下記の濃度は、人工尿の全質量を基準とする濃度である。
人工尿組成
NaCl:0.780質量%
CaCl2:0.022質量%
MgSO4:0.038質量%
青色一号:0.002質量%
【0106】
<10倍膨潤時の人工尿通液速度>
(a)測定装置の設置
測定装置として、図2に概略構成を示したものを用いた。測定部は、ナイロンメッシュシート(250メッシュ)64が接着された、内径19mm、外径25mm、高さ120mmで、約30gの重さを有するアクリル樹脂製の円筒状容器(A)61と、同様のナイロンメッシュシート63が接着された、内径26mm、外径40mm、高さ140mmのアクリル樹脂製円筒状容器(B)62と膨潤させた吸水性樹脂粒子10aとから形成され、円筒状容器(B)は円筒状容器(A)の内部を上下に抵抗無く動くことができる。シャーレ66は、内径が約70mmの大きさを有している。
(b)通液速度の測定
測定は、約25℃、湿度60±10%の室内で行った。円筒状容器(B)62に、吸水性樹脂粒子0.20gを均一に入れ、上部から円筒状容器(A)61を挿入し、測定部を形成した。人工尿1.8g入れた内径30mmのシャーレに、測定部のメッシュ側を浸漬して10分間膨潤させ、吸水性樹脂粒子を10倍膨潤させた。
空のシャーレ66上に、乾燥した目開き1.4mm(100mm×100mm)の金網67を載置した状態で質量(Wd)を測定した。次に、金網67の中心部に膨潤させた吸水性樹脂粒子10aを含む測定部を載置した。次いで、円筒状容器(A)61の上部から人工尿20gを添加すると同時にストップウォッチをスタートさせた。人工尿投入から30秒後、吸水性樹脂粒子10aを含む測定部を金網67上から外し、投入から30秒間(0.5分間)が経過するまでに、膨潤させた吸水性樹脂粒子10aを通過して流出した人工尿65を含むシャーレ66と金網67の合計質量(We)を測定し、人工尿通液速度(g/分)を、以下の式により求めた。
人工尿通液速度(g/分)=(We−Wd)/0.5
【0107】
<しみわたり指数>
しみわたり指数=無加圧DWの1分値+10倍膨潤時の人工尿通液速度で表されるしみわたり指数を求めた。
【0108】
<傾斜漏れ試験>
以下のi)、ii)、iii)、iv)及びv)の手順により、吸水性樹脂粒子の漏れ性を評価した。
i)長さ15cm、幅5cmの短冊状の粘着テープ(ダイヤテックス株式会社製、パイオランテープ)を粘着面が上になるよう実験台上に置き、その粘着面上に、吸水性樹脂粒子3.0gを均一に散布した。散布された吸水性樹脂粒子の上部に、ステンレス製ローラー(質量4.0kg、径10.5cm、幅6.0cm)を載せ、ローラーを、粘着テープの長手方向における両端の間で3回往復させた。これにより、吸水性樹脂粒子からなる吸水層を粘着テープの粘着面上に形成した。
ii)粘着テープを垂直に立てて持ち上げ、余剰の吸水性樹脂粒子を吸水層から除いた。再度、吸水層に前記ローラーを載せ、粘着テープの長手方向における両端の間で3回往復させた。
iii)温度25±2℃の室内において、長さ30cm、幅55cmの長方形の平坦な主面を有するアクリル樹脂板を、その幅方向が水平面に平行で、その主面と水平面とが30度をなすように固定した。固定されたアクリル板の主面に、吸水層が形成された粘着テープを、吸水層が露出し、その長手方向がアクリル樹脂板の幅方向に対して垂直になる向きで貼り付けた。
iV)吸水層の上端から約1cmの位置で表面から約1cmの高さから、液温25℃の試験液0.25mLを、マイクロピペット(エムエス機器社製ピペットマン・ネオP1000N)を用いて、1秒以内に全て注入した。
v)試験液の注入開始から30秒後に、吸水層に注入された試験液の移動距離の最大値を読み取り、拡散距離Dとして記録した。なお、拡散距離Dは、主面上において、滴下点(注入点)と最長到達点とを、アクリル樹脂板の短辺水平面に対して垂直方向の直線で結んだ距離である。なお、拡散距離Dが14cm以上の場合は液体漏れが発生していた。
【0109】
【表1】


【0110】
表1の結果から、実施例にて得られた吸水性樹脂粒子によれば、比較例にて得られた吸水性樹脂粒子に比べ、液体漏れの抑制が可能となることが示された。」

(4)サポート要件の判断
発明の詳細な説明の段落【0005】によると、本件特許発明1及び2の解決しようとする課題は、「吸収体の液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供すること」である。
そして、上記(3)のとおり、発明の詳細な説明の段落【0015】には、「しみわたり指数は、10.0以上であり、液体漏れがより抑制される観点から、11.0以上・・・であってよい。」、同【0016】には、「式(1)における無加圧DWの1分値は、液体漏れがより一層抑制可能となる観点から、3.0mL/g以上・・・であってよい。」、同【0017】には、「式(1)における10倍膨潤時の人工尿通液速度は、液体漏れがより一層抑制可能となる観点から、0.5g/分以上・・・であってよい。」、同【0018】には、「生理食塩水の吸水量は、50.0g/g以上であり、液体漏れがより一層抑制可能となる観点から、51.0g/g以上・・・であってよい。」、同【0019】には、「本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の荷重下における生理食塩水の吸水量は、例えば10〜40mL/g・・・であってよい。」と本件特許発明1の各発明特定事項について具体的に記載されている。
そして、実施例・比較例について、傾斜漏れ試験により液体漏れの有無を確認しており、本件特許発明1の各物性をすべて満足する実施例は、拡散距離が14cm以内で液体漏れが発生しておらず、本件特許発明の課題を解決しているのに対し、本件特許発明1の各物性のいずれかを満たさない比較例は、拡散距離が14cm以上となり、液体漏れが発生している。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
また、本件特許発明2についても同様である。
よって、本件特許発明1及び2に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

(5)異議申立人の主張について
異議申立人は、特許異議申立書において、上記第4(3)アないしエの主張をしているので、以下検討する。
ア(本件請求項1における「無機粒子」の量の欠如)、イ(本件請求項1における「無機粒子」の種類の欠如)及びエ(中和率/架橋剤量の欠如)について
上記(4)で検討したとおり、本件特許発明1の各物性を満たすことにより、本件特許発明1及び2の課題を解決できるものである。してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件特許の出願時における吸水性樹脂粒子の分野の技術常識に鑑みれば、本件特許発明1及び2が「無機粒子」の量及び種類、並びに中和率/架橋剤量についての特定が欠如していたとしても、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
よって、上記主張ア、イ及びエは採用できない。

ウ(「10倍膨潤時の人工尿通液速度」の上限の欠如)について
本件特許発明1は、訂正により、10倍膨潤時の人工尿通液速度について、「15.0g/分以下」と上限が規定された。
よって、主張ウの理由は解消した。

(6)異議申立理由3についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、異議申立理由3によっては取り消すことはできない。

3 異議申立理由4(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
本件特許発明1及び2は何れも物の発明であるところ、物の発明の実施とは、その物の生産及び使用等をする行為であるから、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。

(2)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明の記載は、上記第5 2(3)のとおりである。

(3)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の段落【0014】ないし【0019】には、本件特許発明1及び2の各発明特定事項についての具体的な記載があり、同【0021】ないし【0063】には本件特許発明1及び2に使用する原料及びその量並びに製造方法について具体的な記載があり、同【0080】ないし【0110】には、実施例1ないし4として、吸水性樹脂粒子の具体的な製造方法及び得られた吸水性樹脂粒子が記載されている。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1及び2に係る物を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1及び2に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。

(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、上記第4(4)の主張をしているので、以下検討する。
本件特許発明1の各物性を維持しながら、吸水性樹脂粒子の製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で「無機粒子」の量を調整を行うことにより、高い蓋然性をもって本件特許発明1及び2の各物性を満たす吸水性樹脂粒子を得ることが可能であることを、当業者は理解し得るものである。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(5)異議申立理由4についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、異議申立理由4によっては、取り消すことはできない。

第7 結語
上記第5及び6のとおり、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子であって、
下記式(1):
しみわたり指数=無加圧DWの1分値(mL/g)+10倍膨潤時の人工尿通液速度(g/分)・・・(1)
で表される、しみわたり指数が14.0以上で、前記無加圧DWの1分値が7.0mL/g以上で、前記10倍膨潤時の人工尿通液速度が1.0g/分以上15.0g/分以下であり、
生理食塩水の吸水量が57g/g以上であり、
荷重下における生理食塩水の吸水量が20〜40mL/gである、吸水性樹脂粒子。
【請求項2】
前記しみわたり指数が14.0以上30.0以下である、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-10-25 
出願番号 P2019-055270
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08F)
P 1 651・ 536- YAA (C08F)
P 1 651・ 113- YAA (C08F)
P 1 651・ 537- YAA (C08F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 加藤 友也
細井 龍史
登録日 2020-05-28 
登録番号 6710302
権利者 住友精化株式会社
発明の名称 吸水性樹脂粒子  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 福島 直樹  
代理人 吉住 和之  
代理人 吉住 和之  
代理人 清水 義憲  
代理人 清水 義憲  
代理人 沖田 英樹  
代理人 沖田 英樹  
代理人 福島 直樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ