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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1381668
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-02-15 
確定日 2022-01-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第6742911号発明「油中水型乳化日焼け止め化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6742911号の請求項1〜7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6742911号の請求項1〜7に係る特許についての出願は、平成27年10月30日に出願され、令和2年7月31日にその特許権の設定登録がされ、令和2年8月19日に特許掲載公報が発行された。
その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 3年 2月15日 :特許異議申立人 吉田 浩子(以下、「申
立人」という。)による特許異議の申立て
令和 3年 6月 7日付け:取消理由通知書
同 年 8月13日 :特許権者による意見書
(受付日:同年8月16日)

第2 本件発明
本件の請求項1〜7に係る発明は、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明7」といい、これらの発明をまとめて「本件発明」ということもある。)

「【請求項1】
(A)6〜40質量%の紫外線防御剤、(B)有機変性粘土鉱物、(C)前記(B)以外の油相増粘剤、及び(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤を含有し、前記(A)紫外線防御剤が紫外線散乱剤のみからなり、[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比が0.04以上0.68未満であり、前記(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤が、下記式(3)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーン:
【化1】

(Rは炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基、R1は水素又は炭素数1〜12のアルキル基、qは1〜50、mは1〜100、n及びxは各々1〜50、yは0〜50である)、及び下記式(5)で表されるポリグリセリン変性シリコーン:
【化2】

(R1は直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜12のアルキル基またはフェニル基、R2は炭素数2〜11のアルキレン基であり、pは10〜120、qは1〜11である)から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項2】
(C)油相増粘剤が、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、及び脂肪酸又はその塩である、請求項1記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項3】
(B)有機変性粘土鉱物が、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライトである、請求項1又は2記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項4】
(C)油相増粘剤が、2種以上配合される、請求項1から3のいずれか一項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項5】
(F)油溶性被膜剤を含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項6】
[(F)成分の配合量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比が0.01以上0.5未満である、請求項5に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項7】
(G)ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンジアルキルエーテルを含有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。」


第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由
1 申立ての理由
令和3年2月15日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

(1) 特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)について
ア 本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するので、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

イ 本件特許の請求項2及び3に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するので、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

ウ 本件特許の請求項4に係る発明は、甲第2、3、5、6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するので、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

エ 本件特許の請求項5、6に係る発明は、甲第3、4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するので、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2) 特許法第29条第2項(同法第113条第2号)について
ア 本件特許の請求項1〜6に係る発明は、甲第1〜9号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これら請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

イ 本件特許の請求項7に係る発明は、甲第1〜10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、この請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(3) 特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)について
本件の発明の詳細な説明は、 出願時の技術常識に基づいても、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものとすることはできないので、 実施可能要件の規定を満たしていない。
よって、請求項1〜7に係る発明の特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(4) 特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)について
本件の請求項1〜7に記載の発明は、 出願時の技術常識に基づいても、本件請求項1〜7に係る発明の範囲にまで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、発明の詳細な説明に記載したものではないので、 サポート要件の規定を満たしていない。
よって、請求項1〜7に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(5) 特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)について
本件の特許請求項1〜7の範囲の記載が、 不明確であるので、 明確性要件の規定を満たしていない。
よって、請求項1〜7に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

2 証拠方法
甲第1号証:特開2008−63330号公報
甲第2号証:特開2008−63331号公報
甲第3号証:特開2006−306868号公報
甲第4号証:WO2011/102123号
甲第5号証:特開2013−43875号公報
甲第6号証:「信越シリコーン 化粧品用シリコーン オリジナル原料」、信越化学工業株式会社、2005年2月/6月発行)、1〜20頁
甲第7号証:特開2013−227246号公報
甲第8号証:W02007/114463号
甲第9号証:特開2000−63233号公報
甲第10号証:特開2004−83541号公報
(以下、甲第1〜10号証を、「甲1〜10」という。)


第4 令和3年6月7日付けで通知した取消理由の概要

1(新規性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2(進歩性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3(明確性) 下記の請求項に係る本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
4(サポート要件) 下記の請求項に係る本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

理由1、2について
・請求項 1、3、5、6/理由1、2/引用文献1、2
・請求項 2、4 /理由2/引用文献1、2
・請求項 7 /理由2/引用文献1〜3

理由3について
・請求項 1−7

理由4について
・請求項 1−7

<引用文献等一覧>
1.特開2006−306868号公報(甲3)
2.「信越シリコーン 化粧品用シリコーン オリジナル原料」、信越化学工業株式会社、2005年2月/6月発行)、1〜20頁(甲6)
3.特開2002−83541号公報(甲10)

第5 当審の判断:令和3年6月7日付けで通知した取消理由について
1 理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
(1) 引用文献に記載された事項及び引用発明
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には以下の記載がされている。
(ア) 「【請求項1】
次の成分(A)〜(C);(A)下記一般式(1)で示されるモノマー(a)55〜65質量%と
【化1】

(式中、R1はH又はCH3、pは2〜6の整数である。)下記一般式(2)で示されるモノマー(b)20〜30質量%と
【化2】

(式中、R2はH又はCH3、R3は炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基である。)モノマー(c)として、アクリル酸及び/又はメタクリル酸 15〜20質量%とを重合してなる、シロキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体(B)揮発性シリコーン(C)HLBが10以下のポリオキシエチレン鎖を有するシリコーン系界面活性剤を配合することを特徴とする油中水型乳化化粧料。
・・・
【請求項3】
更に成分(D)として、有機変性粘土鉱物、煙霧状疎水化シリカ、デキストリン脂肪酸エステル、フラクトオリゴ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上の油ゲル化剤を配合することを特徴とする請求項1又は2に記載の油中水型乳化化粧料。」

(イ) 「【0004】
油中水型乳化化粧料を含む化粧料は塗布部に動きがあるため、化粧膜がその動きに追随できず動いてしまったり(ヨレたり)、崩れたりしないことが重要である。また、油中水型乳化化粧料はその目的により多種多様の成分を配合するため、他の成分との相溶性も重要な要素となる。油中水型乳化化粧料においては、密着性や、耐水、耐油性の樹脂の配合検討は多くなされているが、通気性を持つ樹脂の検討はあまりなされていないのが現状である。そのため、樹脂自身の耐水、耐油性はあるものの、化粧料に配合した場合には期待した程には化粧持ちが向上しないことがあった。そのためより通気性を高め、優れた肌への密着性、化粧持続性を併せ持ちながら肌への負担感が無く、滑らかに伸び広がり均一で薄い化粧塗膜を形成でき、経時安定性が良好である油中水型乳化化粧料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる事情に鑑み、本発明者らは鋭意検討した結果、従来高い気体透過性を有しているとされ安全性が高いシリコーン系樹脂の分子構造内に、より空間を付与するため嵩高い構造のモノマーを特定量導入することで、化粧料成分との相溶性及び気体透過性を更に高めた樹脂成分を配合することで優れた化粧持続性、肌への負担感の無さを有する化粧料を具現化するに至った。」

(ウ) 「【0029】
本発明の油中水型乳化化粧料における、成分(A)のシロキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体の配合量は、特に制限されないが、0.1〜30%、更に好ましくは1〜15%である。この範囲であると、良好な密着性、化粧持続性、肌への負担感の無さ、滑らかな伸び広がりに優れる油中水型乳化化粧料を得ることができる。 成分(A)のシロキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体の、油中水型乳化化粧料への配合方法としては、ハンドリングの都合上、化粧料に配合する油剤、例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンといったシリコーン油、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、軽質流動イソパラフィンといった油剤に事前溶解し用いることが望ましい。
【0030】
本発明で用いられる成分(B)の揮発性シリコーンは、通常化粧料に用いられるものであればいずれのものも使用することができ、例えば、25℃での粘度が2mm2/s以下のジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどが挙げられる。
【0031】
本発明で用いられる成分(B)の揮発性シリコーンは、本発明の油中水型乳化化粧料中に、5〜60%配合するのが好ましく、更に好ましくは10〜40%である。この範囲内で用いれば、さっぱりとした感触や滑らかな使用性が得られる。」

(エ) 「【0032】
本発明で用いられる成分(C)HLBが10以下のポリオキシエチレン鎖を有するシリコーン系界面活性剤は、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、長鎖アルキル含有ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン系界面活性剤が挙げられる。例えば、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンとしては、以下に示す構造のものが挙げられ、市販品としては、ABIL EM97(ゴールドシュミット社製)、SH−3772C、SH3775C(東レ・ダウコーニング社製)、KF−6012、KF−6015、KF−6016、KF−6017(信越化学工業社製)等を好適に用いることができる。
【0033】
【化9】

【0034】
[式中、R2は、炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基を示す。R3は、−Q1−O−(C2H4O)h−(C3H6O)i−R4(但し、Q1は、炭素数1〜5の2価の炭化水素基を示し、R4は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はアセチル基を示す。hは、1〜50の整数、iは、0〜50の整数である。)G1及びG2は、同一でも異なっても良く、それぞれR2又はR3を示す。jは、0〜150の整数、kは0〜50の整数を示す。但し、k=0のとき、G1、G2の少なくとも一方は、R3である。]
【0035】
長鎖アルキル含有ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンとしては、以下に示す構造のものが挙げられ、市販品としては、特にABIL EM90(ゴールドシュミット社製)等が好適に用いられる。
【0036】
【化10】

【0037】
[式中,R5は炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基を示す。R7は、−Q2−O−(C2H4O)c−(C3H6O)d−R9で示され、Q2は炭素数1〜5の2価の炭化水素基を示し、R9は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はアセチル基を示す。cは1〜50の整数、dは0〜50の整数である。R6は−(C3H6O)e−R10で示され、eは0〜5の整数、R10は6〜16の炭化水素基である。lは5〜150の整数、mは5〜40の整数、nは2〜40の整数である。]
【0038】
本発明で用いられる成分(C)HLBが10以下のポリオキシエチレン鎖を有するシリコーン系界面活性剤は、本発明の油中水型乳化化粧料中に、0.5〜10%配合、更に好ましくは、1〜6%配合するのが好ましい。この範囲内で用いれば、乳化剤特有のベタつき感を感じずに十分安定な乳化効果が得られる。また、これらHLBが10以下のポリオキシエチレン鎖を有するシリコーン系界面活性剤は、必要に応じて1種又は2種以上使用することができる。
【0039】
本発明では、本発明の油中水型乳化化粧料の安定性を更に向上させる為に、成分(D)の油ゲル化剤を配合することが好ましい。油ゲル化剤は、有機変性粘土鉱物、煙霧状疎水化シリカ、デキストリン脂肪酸エステル、フラクトオリゴ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種又2種以上を用いることができる。
【0040】
有機変性粘土鉱物としては、水膨潤性粘土鉱物をジメチルジステアリルアンモニウムクロライド及びブロミド、ジメチルベンジルステアリルアンモニウムクロライド及びブロミド等で有機変性して得られるものである。水膨潤性粘土鉱物としては三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムの一種で、具体的にはモンモリロナイト、ラポナイト及びヘクトライト等の天然又は合成のモンモリロナイト群、及びナトリウムシリシックマイカやナトリウム又はリチウムテニオライトの名で知られる合成雲母等が挙げられる。水膨潤性粘土鉱物としては、特にモンモリロナイト、ヘクトライトが好ましい。市販品としては、ベントン27、ベントン38(エレメンティス社製)が挙げられる。安定性向上のために配合する量としては0.2〜3%であり、より好ましくは0.4〜2%である。この範囲であれば十分な効果が得られる。
【0041】
煙霧状疎水化シリカとしては、粒径が5〜50nmの微細なシリカで、その表面をジメチルジクロロシラン、ジメチルポリシロキサン等の処理剤にて疎水化処理したものである。具体的には、AEROSIL R−972、R−974、R976−S、RX−300(日本エアロジル社製)、CAB−O−SIL TS−530(キャボット社製)等が例示できる。安定性向上のために配合する量としては0.2〜5%であり、より好ましくは0.4〜3%である。この範囲であれば十分な効果が得られる。
【0042】
デキストリン脂肪酸エステルとしては、油溶性のもので炭素数8〜24(好ましくは14〜18)の直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和脂肪酸と平均重合度10〜50(好ましくは20〜30)のデキストリンとのエステル化合物である。具体例としてはパルミチン酸デキストリン、パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、パルミチン酸/ステアリン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、イソパルミチン酸デキストリン、イソステアリン酸デキストリン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。市販品としてはパルミチン酸デキストリン(レオパールKL、レオパールTL)やパルミチン酸/2-エチルヘキサン酸デキストリン(レオパールTT)(いずれも千葉製粉社製)等が挙げられる。安定性向上のために配合する量としては0.2〜5%であり、より好ましくは0.4〜3%である。この範囲であれば十分な効果が得られる。
【0043】
フラクトオリゴ糖脂肪酸エステルとしては、具体的に、特開平3−197409号公報や特開2002−193732号公報に記載されているものが挙げられる。炭素数8〜32の直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和脂肪酸とフラクトオリゴ糖とのエステル化合物で、フラクトオリゴ糖の平均分子量は300〜10,000の範囲が好ましく、これらを1種又は2種以上を用いることができる。市販品としては、レオパールISK(千葉製粉社製)等が挙げられる。安定性向上のために配合する量としては0.2〜5%であり、より好ましくは0.4〜3%である。この範囲であれば十分な効果が得られる。
【0044】
本発明の油中水型乳化化粧料には、上記成分の他に、水を必須に配合する。本発明の油中水型乳化化粧料における、水の配合量は、5〜60%が好ましく、より好ましくは10〜40%である。
【0045】
本発明の化粧料には、本発明の効果を妨げない範囲で、上記必須成分の他に通常化粧料に用いられる成分を配合できる。
・・・
【0047】
油性成分としては、成分(B)以外で、軽質流動イソパラフィン、ポリブテン、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン等の炭化水素油、液状ラノリン、エステル油、モノグリセライド油、ジグリセライド油、トリグリセライド油等の液体油、パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル等の紫外線吸収剤、ワセリン、ラノリン等の半固形油、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレンポリプロピレンコポリマー、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ビーズワックス、モクロウ、モンタンワックス等の固形油、ロジン酸ペンタエリスリット等の油溶性樹脂成分、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステアリル・2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)等のアミノ酸系油剤、シリコーン油として非揮発性のものでジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルジフェニルポリシロキサン、メトキシフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、フッ素系油剤としてはパーフルオロポリエーテル、トリフルオロプロピルシクトテトラシロキサン、トリフルオロプロピルシクペンタシロキサン、並びにステアリン酸等の高級脂肪酸などが挙げられる。油剤成分は、エモリエント性の付与、様々な使用性の実現、紫外線防御効果といった目的で配合する。」

(オ) 「【0053】
合成例2:シロキシ基含有メタクリル酸系共重合体溶液2 500mLフラスコにトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート60部、メタクリル酸20部、メチルメタクリレート20部、溶媒として酢酸ブチル100部、酢酸エチル100部、イソプロパノール30部、ジクミルパーオキサイド1部を仕込み、溶存酸素を除くために窒素ガスバブリングを行い、密封した。反応容器を恒温槽中に移し、60℃で攪拌しながら6時間かけて重合を行った。重合終了後、デカメチルシクロペンタシロキサンへ溶媒置換を行い、シロキシ基含有メタクリル酸系共重合体溶液2(固形分濃度20%)を得た。」

(カ) 「【0066】
実施例7:日焼け止め化粧料(乳液状)
(成分) (%)
1.パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 5
2.シロキシ基含有メタクリル酸系共重合体溶液1 30
3.デカメチルシクロペンタシロキサン 20
4.シリコーン系界面活性(注3) 3
5.シリコーン処理微粒子酸化チタン(注11) 5
6.シリコーン処理微粒子酸化亜鉛(注12) 5
7.有機変性粘土鉱物(注13) 0.5
8.有機変性粘土鉱物(注14) 0.5
9.シリコーン処理シリカ(注15) 2
10.精製水 残量
11.エチルアルコール 5
12.グリセリン 1
13.キサンタンガム 0.1
14.香料 適量
(注11)SI−TTO−S−1 LHC(6%)
(注12)SI−UFZO−350 LHC(3%)
(注13)ベントン27(エレメンティス社製)
(注14)ベントン38(エレメンティス社製)
(注15)SA−SB−300(7%)
【0067】
(製造方法)A:成分1〜9をホモミキサーにて均一に分散混合する。B:成分10〜14を均一に混合する。C:AとBを乳化し、容器に充填して日焼け止め化粧料を得た。 以上のようにして得られた実施例7の日焼け止め化粧料は、肌への密着性、化粧持続性(長時間日焼け止め効果が持続)に優れ、肌への負担感が無く、滑らかな伸び広がりで、経時安定性に優れた化粧料であった。」

(キ) 「【0070】
実施例9:ファンデーション(液状)
(成分) (%)
1.イソノナン酸イソトリデシル 5
2.ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール 5
3.イヌリンステアレート(注23) 1
4.メチル・トリフロロプロピルシクロポリシロキサン 3
5.デカメチルシクロペンタシロキサン 20
6.シロキシ基含有メタクリル酸系共重合体溶液2 20
7.シリコーン系界面活性(HLB=4.5)(注24) 3
8.ポリグリセリン変性シリコーン(HLB=4.5)(注25) 2
9.有機変性粘土鉱物(注13) 0.5
10.有機変性粘土鉱物(注14) 0.5
11.シリコーン処理微粒子酸化チタン(注11) 5
12.シリコーン処理微粒子酸化亜鉛(注12) 5
13.シリコーン処理マイカ(注17) 3
14.シリコーン処理酸化チタン(注5) 5
15.シリコーン処理ベンガラ(注19) 0.3
16.シリコーン処理黄色酸化鉄(注19) 1.5
17.シリコーン処理黒色酸化鉄(注20) 0.2
18.シリコーンパウダー(注26) 2
19.精製水 残量
20.エチルアルコール 10
21.1,3−ブチレングリコール 3
22.キサンタンガム 0.1
23.防腐剤(フェノキシエタノール) 0.3
24.香料 0.2
(注23)レオパール ISK(千葉製粉社製)
(注24)KF−6028P(信越化学工業社製)
(注25)KF−6105(信越化学工業社製)
(注26)KSP−100(信越化学工業社製)
【0071】
(製造方法)A:成分1〜3を90℃にて溶解後、成分4〜18を加えデスパミキサーにて均一に分散混合する。B:成分19〜24を均一に混合する。C:AとBを乳化し、容器に充填してファンデーションを得た。 以上のようにして得られた実施例9のファンデーションは、肌への密着感が高く、化粧持続性に優れ、肌への負担感が無く、滑らかな伸び広がりで、経時安定性にも優れた化粧料であった。」

イ 引用発明
引用文献1には、摘記事項(ア)〜(キ)、特に摘記事項(ア)、(ウ)から油中水型化粧料に関するものであること、摘記事項(キ)から特定の組成の乳化ファンデーションが記載されており、成分の含有割合は質量%の単位と解されるから、以下の発明が記載されていると認められる。

「以下の成分からなる油中水型乳化ファンデーション。
(成分) (質量%)
1.イソノナン酸イソトリデシル 5
2.ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール 5
3.イヌリンステアレート(注23) 1
4.メチル・トリフロロプロピルシクロポリシロキサン 3
5.デカメチルシクロペンタシロキサン 20
6.シロキシ基含有メタクリル酸系共重合体溶液2 20
7.シリコーン系界面活性(HLB=4.5)(注24) 3
8.ポリグリセリン変性シリコーン(HLB=4.5)(注25)2
9.有機変性粘土鉱物(注13) 0.5
10.有機変性粘土鉱物(注14) 0.5
11.シリコーン処理微粒子酸化チタン(注11) 5
12.シリコーン処理微粒子酸化亜鉛(注12) 5
13.シリコーン処理マイカ 3
14.シリコーン処理酸化チタン 5
15.シリコーン処理ベンガラ 0.3
16.シリコーン処理黄色酸化鉄 1.5
17.シリコーン処理黒色酸化鉄 0.2
18.シリコーンパウダー 2
19.精製水 残量
20.エチルアルコール 10
21.1,3−ブチレングリコール 3
22.キサンタンガム 0.1
23.防腐剤(フェノキシエタノール) 0.3
24.香料 0.2
(注13)ベントン27(エレメンティス社製)
(注14)ベントン38(エレメンティス社製)
(注23)レオパール ISK(千葉製粉社製)
(注24)KF−6028P(信越化学工業社製)
(注25)KF−6105(信越化学工業社製)
(注26)KSP−100(信越化学工業社製)」(以下、「引用発明」という。)

(2) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明を対比する。
引用発明の「シリコーン処理微粒子酸化チタン」、「シリコーン処理微粒子酸化亜鉛」は、本件発明1の「紫外線防御剤」である「紫外線散乱剤」に相当する。また、引用発明では、他に紫外線吸収剤は含まれていないので、本件発明1の「(A)紫外線防御剤が紫外線散乱剤のみからなり」との要件も満たし、紫外線防御剤の配合量についても本件発明1の範囲内のものである。
引用発明の「有機変性粘土鉱物(注13)」、「有機変性粘土鉱物(注14)」は、ともに本件発明1の「(B)有機変性粘土鉱物」に相当する。
引用発明の「イヌリンステアレート(注23)」は、「(注23)レオパール ISK(千葉製粉社製)」であり、摘記事項(エ)の段落【0039】、【0043】から、フラクトオリゴ糖脂肪酸エステルである油ゲル化剤であって、油相を増粘させるものであるから、本件発明1の「(C)油相増粘剤」に相当する。
引用発明の「ポリグリセリン変性シリコーン(HLB=4.5)(注25)」は、「(注25)KF−6105(信越化学工業社製)」であり、これは、引用文献2の第6頁の「ポリグリセリン変性シリコーン[分岐タイプ]」の表によれば、「ラウリルポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン」であるところ、引用発明の「ポリグリセリン変性シリコーン(HLB=4.5)(注25)」と本件発明1の式(5)で表されるポリグリセリン変性シリコーンとは、「(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤」の「ポリグリセリン変性シリコーン」との点に限り、一致する。
そして、引用発明の「油中水型乳化ファンデーション」と本件発明1の「油中水型乳化日焼け止め化粧料」は、「油中水型乳化化粧料」との点に限り、一致する。
また、本件発明1の「[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比」について、引用発明では、「イソノナン酸イソトリデシル」、「ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール」が本件発明1の(E)成分に相当するので配合量から計算すると
[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比=[0.5+0.5+1]/[5+5]=0.2
となり、本件発明1で規定する範囲内のものとなる。
そうすると、本件発明1と引用発明は、
「(A)6〜40質量%の紫外線防御剤、
(B)有機変性粘土鉱物、
(C)前記(B)以外の油相増粘剤、及び
(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤を含有し、
前記(A)紫外線防御剤が紫外線散乱剤のみからなり、
[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比が0.04以上0.68未満であり、
前記(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤が、ポリグリセリン変性シリコーン
であることを特徴とする、油中水型乳化化粧料。」
の発明である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
油中水型乳化化粧料の用途について、本件発明1は油中水型乳化「日焼け止め化粧料」であるのに対し、引用発明は油中水型乳化「ファンデーション」である点。

<相違点2>
ポリグリセリン変性シリコーンについて、本件発明1では、式(5)の構造のものであるのに対し、引用発明では、「KF−6105(信越化学工業社製)」である点。

イ 判断
まず、本件発明1と引用発明とは相違点1及び2が存在するから、本件発明1は、引用発明、すなわち引用文献1に記載された発明ではない。

次に、進歩性に関して、上記相違点2について検討する。
引用発明1のKF−6105(信越化学工業社製)は、引用文献2の第6頁の「ポリグリセリン変性シリコーン[分岐タイプ]」の表によれば、「ラウリルポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン」であるところ、特許権者が令和3年8月13日提出した意見書及び乙第1号証(日本化粧品連合会のホームページの化粧品の成分表示名称リストにおける当該化合物名による検索結果)(https://www.jcia.org/user/business/ingredients/namelist)によれば、

の構造式を有するものであって、本件発明1の式(5)の構造のものとは相違するものである。
また、引用文献1には、引用発明のポリグリセリン変性シリコーンに代えて、本件発明1の式(5)の構造のものを用いることについて記載はなく、さらに、他の文献をみてもこの点についての記載はないから、引用発明において、相違点2につき、本件発明1の構成を採用することは当業者にとって容易になし得たこととはいえない。
そして、本件発明1は、本件発明1の構成とすることにより、水や汗等と接触した後の紫外線防御効果が、化粧料を肌に塗布した直後よりも顕著に向上する、即ち、本発明に係る油中水型乳化日焼け止め化粧料は、従来の日焼け止め化粧料において効果劣化の原因とされていた水分との接触により紫外線防御効果が向上するという、格別顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点1を検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件発明1に対する新規性及び進歩性に係る理由1及び2は、その理由がない。

(3) 本件発明2〜7について
請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明2〜7についても、上記(2)と同様であって、本件発明2〜7に対する引用発明を主発明とした新規性及び進歩性に係る理由1及び2は、その理由がない。

(4) 小括
本件発明1〜7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。

2 理由3(明確性)について
(1) 理由の概要
ア 「(C)前記(B)以外の油相増粘剤」について
請求項1に係る発明の「(C)前記(B)以外の油相増粘剤」成分については、本件明細書の段落【0026】に「油相の粘度を調整することができる物質(ただし、前記(B)成分に該当する物質以外)」といった漠然とした説明と、同【0026】〜【0028】におけるデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸又はその塩の例示があるのみであり、また、実施例で用いられているのも、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、常温で固形の脂肪酸又はその塩のみである。しかし、実際には、これらショ糖脂肪酸エステル等以外にも、「(B)有機変性粘土鉱物」以外の、「油相増粘」作用をもたらす任意の成分がこれに包含されるものと解される(例えば、引用文献1の段落【0039】〜【0043】)。
ここで、油相成分の種類(シリコーン以外の不揮発性液状油分、シリコーン)によっても粘度を調整することができる物質は異なるものと推測されるところ、【0026】〜【0028】に例示されたデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、常温で固体の脂肪酸又はその塩以外に、「(C)前記(B)以外の油相増粘剤」成分にどのような物質まで含むことができるのか発明の詳細な説明をみても明らかではなく、また、下記で指摘するように、「(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分」との違いも明らかではないから、「(C)前記(B)以外の油相増粘剤」との記載では、明確であるとはいえない。
請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項2〜7についても同様である。

イ [(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比について
請求項1に規定される「(C)前記(B)以外の油相増粘剤」成分については、本件明細書の段落【0026】に「油相の粘度を調整することができる物質(ただし、前記(B)成分に該当する物質以外)」といった漠然とした説明と、同【0026】〜【0028】におけるデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸又はその塩の例示があるのみであるところ、実際には、これらショ糖脂肪酸エステル等以外にも、「(B)有機変性粘土鉱物」以外の、「油相増粘」作用をもたらす任意の成分がこれに包含されるものと解される(例えば、引用文献1の段落【0039】〜【0043】)。
また、「(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分」成分については、本件明細書の段落【0038】に常温常圧で揮発性を示さず、流動性を示し、固体でない液状の油分を意味し、シリコーン油以外の不揮発性油であるとの説明があり、段落【0039】に、「例えば、炭化水素油、植物油、エステル油、高分子量のポリオキシアルキレングリコールなどが含まれる。」との記載と共に例示があるものの、これら例示以外の任意の成分がこれに含まれるものである。
ここで、例えば、上記(C)成分には脂肪酸が含まれるところ、これは(E)成分に該当するものもあり、(C)成分と(E)成分との区別が明確ではない。
そうすると、上記質量比を計算するに当たり、(C)成分、(E)成分の両方に該当する成分は上記式においてどのように対応させるのかが本件明細書をみても明らかではないから、請求項1における「(C)前記(B)以外の油相増粘剤」、「(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分」との特定では、両者の区別がつかずに上記質量比が算出できない場合を含むので明確ではない。
請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項2〜7についても同様である。

ウ 「(A)紫外線防御剤」と「(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分」との関係について
請求項1には、「(A)紫外線防御剤が紫外線散乱剤のみからなり」と特定があるので、紫外線防御剤に「紫外線吸収剤」が含まれないものと解される。一方 、「(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分」は、請求項1において何ら特定がなく、本件明細書の段落【0038】に
「本発明においては、シリコーン油以外の不揮発性液状油分を成分(E)と呼ぶこととし、この成分(E)には、前記成分(A)に該当する油性の紫外線吸収剤も含まれる。従って、(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分が全て紫外線吸収剤からなる場合もある。」
との説明があるので、「紫外線吸収剤」を(A)成分としてではなく、単に(E)成分の「シリコーン油以外の不揮発性液状油分」としての配合を許容するものと理解することもできる。
そうすると、(A)成分としては配合されない「紫外線吸収剤」が、(E)成分の「シリコーン油以外の不揮発性液状油分」として配合されることとなり、請求項1に係る発明の範囲に「紫外線吸収剤」が含まれるのかが明らかではないから、請求項1に係る発明における(E)成分の特定は明確ではない。
請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項2〜7についても同様である。

(2) 判断
ア 上記理由アについて
特許権者は、意見書において、乙第2、3号証を挙げ、「油相増粘剤」は技術用語として特段の説明なしで用いることのできる周知の技術用語であることを主張している。
そこで、乙第2号証をみると、乙第2号証は、本件出願の出願日前に発行された特許公報(特許第4215918号公報)であり、その特許請求の範囲の請求項1に係る油中水型乳化タイプの化粧料の発明の構成成分として「油相増粘剤」との用語が記載されている。そして、その用語の説明として、段落【0011】にデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリンエステル等が挙げられている。
同様に、乙第3号証も特許公報(特許第5911664号公報)であり、本件出願の出願日前に出願及び公開された出願についての、本件出願日以後に特許された公報ではあるが、その特許請求の範囲には、化粧品又は皮膚化学的組成物に関する「生物学的に許容される組成物」に係る発明が記載されており、請求項10には、該組成物に配合できる成分として「油相増粘剤」との用語が記載されており、この用語は当該特許の公開公報(特開2006−219490号公報)の特許請求の範囲の請求項14にも記載されているものである。
これらの証拠によれば、たしかに、「油相増粘剤」との用語は、技術用語であることは理解できるし、その範囲については、乙第2号証で記載された範囲が、本件明細書の段落【0026】で「例えば」として挙げられた成分の範囲と大部で重複することからも、本件の請求項1における「(C)前記(B)以外の油相増粘剤」の範囲が不明確とまではいえないし、また、「(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分」との違いも自ずと明らかであり、当該理由3にはその理由がない。

イ 上記理由イについて
この理由は、脂肪酸に関して、(C)成分に配合されるものと(E)成分に配合されるものとの区別が明確ではないことに起因した理由であったところ、特許権者の意見書において、(C)成分に属する脂肪酸は、本件明細書の段落【0028】に「常温で固形のもの」と具体例で挙げられており、一方、(E)成分に相当するものは、段落【0038】に、常温常圧で「固形ではない液状の油分を意味する」と定義があるから、区別できる旨の主張をしている。
この点について、特許権者の主張のとおり区別ができるものと認められるから、それに起因した当該理由3にはその理由はない。

ウ 上記理由ウについて
当該理由は、(A)成分としては配合されない「紫外線吸収剤」が、(E)成分の「シリコーン油以外の不揮発性液状油分」として配合されるのか否かが明らかでないことに起因した理由であったところ、特許権者は意見書において、本件発明1には「(液状の)紫外線吸収剤」が配合されることはない旨を主張しているから、(A)成分としては配合されない「紫外線吸収剤」が、(E)成分に配合されることはないことが明確となった。
よって、当該理由3にはその理由はない。

3 理由4(サポート要件)について
(1)本件発明が、本願明細書に記載された課題を解決できるか否かについて
ア 本件発明の解決しようとする課題
本件明細書の段落【0009】の記載からみて、本件発明の解決しようとする課題は、「水分と接触することにより紫外線防御効果が向上するという従来にない革新的な特性を有する日焼け止め化粧料を提供すること」である。

イ 本件明細書の記載
本件発明1に係る(A)、(B)、(C)、(D)、(E)成分について、本件明細書にはそれぞれ段落【0015】〜【0019】、【0020】〜【0025】、【0026】〜【0029】、【0030】〜【0037】、【0038】に説明があり、具体的な実施例として、以下の記載がある。

(ア) 「【0074】

【0075】
表8に示されるように、(A)紫外線防御剤が紫外線散乱剤のみからなる(有機紫外線吸収剤を含まない)場合であっても、水浴後の紫外線防御効果が水浴前よりも向上するという本発明特有の効果が得られた。」

ウ 本件発明が課題を解決できることについて
本件発明の解決しようとする課題は、上記アに記載したとおりであるところ、本件明細書には上記摘記イ(ア)の記載があるから、本件発明の構成により、その課題が達成できることは理解できる。
また、本件明細書における紫外線吸収剤を含む他の実施例に関するものではあるが、これらの結果も参酌すれば、
a 段落【0058】表1:[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比が0.04以上0.68未満の範囲とすることについて、
b 段落【0061】表2:被膜剤の比率について、
c 段落【0063】表3、【0064】の表4:(C)前記(B)以外の油相増粘剤の有無及び油相増粘剤の比率について、
d 段落【0068】表6:(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤のHLBの数値範囲について、
e 段落【0071】表7:(F)油溶性被膜剤について、[(F)成分の配合量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比が0.01以上0.5未満の範囲とすることについて、
本件発明の構成とすることにより、その課題が達成できることが理解できる。

(2) 取消理由の概要
ア 「(C)前記(B)以外の油相増粘剤」について
請求項1に係る発明の「(C)前記(B)以外の油相増粘剤」について、請求項1において具体的な特定はないので、発明の詳細な説明をみると、段落【0026】に「油相の粘度を調整することができる物質(ただし、前記(B)成分に該当する物質以外)」といった漠然とした説明と、段落【0026】〜【0028】におけるデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸又はその塩の例示があるのみである。
そして、実施例をみると、実施例28及び他の実施例(現在の請求項1に対応した実施例ではない)において、上記段落で具体的に例示されているデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸やステアリン酸アルミニウム等の常温で固体の脂肪酸又はその塩を用いられた日焼け止め化粧料が記載され、実施例28では化粧料の水浴後の紫外線防御効果が向上することが示されているものの、この効果において「(C)前記(B)以外の油相増粘剤」が発揮する作用が明細書中に説明されているわけでもなく、具体的に例示された化合物以外にどのような油相増粘剤が使用できるのかも明細書中で明らかではないこともあり、油相増粘剤であれば実施例と同様の効果を奏するのかも不明である。
そうすると、「(C)前記(B)以外の油相増粘剤」について、実施例で具体的に用いられたもの以外の任意の油相増粘剤を用いた場合を含む請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえず、サポート要件を満たさない。
請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項2〜7に係る発明についても同様である。

イ [(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比について
上記1で述べたように、請求項1に係る発明の「(C)前記(B)以外の油相増粘剤」は、実施例で具体的に用いられたもの以外の任意の油相増粘剤を用いた場合を含むので、請求項1に係る発明はサポート要件を満たさないものであるところ、請求項1に係る発明の[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比の値には、実施例で具体的に用いられたもの以外の任意の(C)成分を用いた値を含むから、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえず、サポート要件を満たしているとは認められない。
請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項2〜7に係る発明についても同様である。

(3) 判断
ア 上記理由ア、イについて
特許権者は、意見書において、実施例には、「(C)前記(B)以外の油相増粘剤」の代表例として、「パルミチン酸デキストリン」、「ステアリン酸」、「ステアリン酸アルミニウム」が配合されていること、また、「油相増粘剤」は、「油相を増粘する」との共通の機能を有するものであって、技術用語としても使用されるものであり、明細書で確認された効果を他の前記(B)以外の油相増粘剤では発揮できないとの具体的な根拠もないから、これらの理由ア、イについての理由はない旨を主張している。
たしかに、上記理由ア、イは、油相増粘剤の技術的な範囲が明らかではないことに起因して、明確性違反に加えて、サポート要件違反の理由も通知されていたところ、上記2(2)で検討したとおり、「油相増粘剤」は、「油相を増粘する」との共通の機能を有する物質群であって、その範囲は明らかであり、「油相増粘剤」との用語は明確であるし、また、その機能として、「油相を増粘する」との共通の機能を発揮するものであれば、実施例で用いられた以外のものであっても同様の効果を奏することが推認できるから、上記理由ア、イについてもその理由はない。

4 まとめ
以上のとおり、令和3年6月7日付けで通知した取消理由はその理由がなく、これらの理由により本件発明1〜7に係る特許を取り消すことはできない。


第6 当審の判断:取消理由で採用されなかった申立ての理由について
1 取消理由で採用されなかった申立ての理由の概要
取消理由で採用されなかった申立ての理由は、第3 1に記載されたもののうち、具体的には、以下の理由である。
(1) 特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)について
ア 本件特許の請求項1に係る発明は、甲1、2、4〜6に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するので、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

イ 本件特許の請求項2及び3に係る発明は、甲1、2、4、5に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するので、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

ウ 本件特許の請求項4に係る発明は、甲2、5、6に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するので、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

エ 本件特許の請求項5、6に係る発明は、甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するので、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2) 特許法第29条第2項(同法第113条第2号)について
ア 本件特許の請求項1〜6に係る発明は、甲1〜9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これら請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

イ 本件特許の請求項7に係る発明は、甲1〜10に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、この請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(3) 特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)について
本件の発明の詳細な説明は、 出願時の技術常識に基づいても、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものとすることはできないので、 実施可能要件の規定を満たしていない。
よって、請求項1〜7に係る発明の特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(4) 特許法第36条第6項第1号((同法第113条第4号)について
本件の請求項1〜7に記載の発明は、 出願時の技術常識に基づいても、本件請求項1〜7に係る発明の範囲にまで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、 発明の詳細な説明に記載したものではないので、 サポート要件の規定を満たしていない。
よって、請求項1〜7に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(5) 特許法第36条第6項第2号((同法第113条第4号)について
本件の特許請求項1〜7の範囲の記載が、以下の点で不明確であるので、 明確性要件の規定を満たしていない。
よって、請求項1〜7に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

2 特許法第36条第6項第2号の理由について
(1) 理由の概要
ア 「(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤」について、本件明細書の段落【0032】の記載からみて、本件発明1の式(3)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーンの外縁が不明である。
イ 本件発明2の「デキストリン脂肪酸エステル」と、甲4に記載の油ゲル可能を有しない新規な「デキストリン脂肪酸エステル」の区別がつかない。

(2) 判断
ア 上記理由アについて
本件の請求項1では、「(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤」は、
「下記式(3)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーン:
【化1】

(Rは炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基、R1は水素又は炭素数1〜12のアルキル基、qは1〜50、mは1〜100、n及びxは各々1〜50、yは0〜50である)、及び下記式(5)で表されるポリグリセリン変性シリコーン:
【化2】

(R1は直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜12のアルキル基またはフェニル基、R2は炭素数2〜11のアルキレン基であり、pは10〜120、qは1〜11である)から選択される少なくとも1種である」ことが特定されており、請求項1に係る発明の当該記載は明確である。
そして、段落【0030】には、「(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤」として幅広い例示が有り、そのうちの「ポリオキシアルキレン変性シリコーン」として、直鎖又は分岐鎖のポリオルガノシロキサンを主骨格として、側鎖にポリオキシアルキレン基を有するものを有するものが例示されており、申立人が指摘する段落【0032】には、「別のオルガノシロキサン鎖を側鎖に有していてもよい」ものついて記載されているのであり、当該説明があったとしても、請求項1に係る発明の式(3)のポリオキシアルキレン変性シリコーンが不明確とはならない。

イ 上記理由イについて
本件発明2で記載された「デキストリン脂肪酸エステル」は、本件発明1の「(C)油相増粘剤」を具体的に限定したものであり、一方、甲4に記載の油ゲル可能を有しない新規な「デキストリン脂肪酸エステル」は、「油ゲル可能を有さない」、つまり、油相増粘作用を有さないものであるから、機能の面からみて両者は区別されるものであり、また、構造面からみても、前者と後者はともに「デキストリン脂肪酸エステル」と総称される化合物に属するものではあるが、後者は分岐脂肪酸の割合が高いものであって(甲4の[0004])、前者と構造は異なるから(本件明細書の段落【0026】)、両者は区別できるものであり、本件発明2の「(C)油相増粘剤」を特定した「デキストリン脂肪酸エステル」との記載は明確である。

よって、上記理由ア、イは、採用できない。

3 特許法第36条4項第1号、同条第6項第1号について
(1) 理由の概要
本件発明1〜7に係る実施例は実施例28のみであるところ、
ア 実施例28では、「(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤」として式(3)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーンを用いることが裏付けられていない。
イ 実施例28の「ジメチルポリシロキサンポリエチレングリコール共重合体」は商品名、製造方法も不明であり、具体的な構造が不明なため、実施できない。
ウ ステアリン酸アルミニウムには、モノ、ジ、トリの3つが存在することが周知であり、それぞれの増粘等の性質が異なると解されるが、実施例28では「ステアリン酸アルミニウム」と記載されているだけで、いずれなのか不明であり、「ステアリン酸アルミニウム」まで拡張又は一般化できるのか不明であり、さらに「脂肪酸塩」まで拡張又は一般化できない。
エ 実施例28は、「(F)油溶性被膜剤」に相当するのは「シクロメチコン/トリメチルシロキシケイ酸 1%」であるが、配合される1%中のトリメチルシロキシケイ酸の含有量が不明であり、当業者が実施できる程度に明確且つ十分に記載されていない。また、請求項6において、「(F)成分の配合量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比が0.01以上0.5未満」の範囲に臨界的意義があるとはいえず、請求項に記載された範囲まで、拡張乃至一般化できるとはいえない。

(2) 判断
ア 上記理由アについて
実施例28には、式(5)で表されるポリグリセリン変性シリコーンである「ビスブチルジメチコンポリグリセリル−3」が配合されており、シリコーン界面活性剤は、式(3)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーンか、あるいは式(5)のものから少なくとも1種含有すればよいのだから、を請求項1に係る発明はサポートされている。
また、紫外線吸収剤を含む実施例ではあるが、式(3)のポリオキシアルキレン変性シリコーンである「PEG−10ジメチコン」(段落【0031】の説明も参照)を含む実施例21(表5)と、式(5)ので表されるポリグリセリン変性シリコーンである「ビスブチルジメチコンポリグリセリル−3」を含む実施例23(表6)の結果を見比べると、両実施例はシリコーン系界面活性剤以外の成分等は同じであることから、シリコーン界面活性剤の効果を比較できる例であるところ、両実施例ともに水浴後のAbs積算値が向上していることが示されているから、いずれのシリコーン界面活性剤を用いても本件発明に係る効果が奏されることが理解できる。
よって、式(3)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーンについては、実施例28以外の実施例から、裏付けられているといえるから、上記理由アの理由はない。

イ 上記理由イについて
確かに、実施例28の「ジメチルポリシロキサンポリエチレングリコール共重合体」の商品名、製造方法、具体的な構造が不明であるものの、その共重合体名からみて、ジメチルシロキサン単位と、ポリエチレングリコール鎖を有するメチルシロキサン単位とからなる直鎖のポリオキシアルキレン変性シリコーンであって、当該分野でよく使用されるものであり、ポリオキシエチレングリコール鎖の長さやこの鎖を含む単位の割合によりHLB値が異なるものであり(必要であれば、甲6第5頁参照)、適宜選択可能なものであるし、本願明細書の全体的な記載からみて、HLB値8以下の式(3)のシリコーン系界面活性剤に該当すると推測されるものである。
そうすると、本件の発明の詳細な説明の記載は、実施例28の「ジメチルポリシロキサンポリエチレングリコール共重合体」の詳細が不明であるとしても、これにより当業者が本件発明を実施できない程に明確ではなく十分でないといえるものではない。

ウ 上記理由ウについて
確かに、ステアリン酸アルミニウムは、モノ、ジ、トリの3種が存在し、これら3つの油相増粘効果は多少異なるものの、その種類を特定せずとも、「油相増粘剤」なのであるから、その機能が発揮される範囲のものである。 そして、実施例28でその種類を特定しなくとも、「ステアリン酸アルミニウム」として市販の油相増粘剤又は油ゲル化剤を使用すればよいのであって、本件の発明の詳細な説明の実施例28の記載により、油相増粘剤として機能する「ステアリン酸アルミニウム」まで、あるいは、さらに「脂肪酸塩」との範囲まで拡張又は一般化できないとする理由はない。

エ 上記理由エについて
実施例28では、配合される1%中のトリメチルシロキシケイ酸の含有量が不明であり、また、請求項6に係る「(F)成分の配合量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比が0.01以上0.5未満」との技術的意義はこの実施例のみでは明らかではないが、紫外線吸収剤を含む他の実施例、例えば、段落【0061】の表2の比較例5と実施例10の被膜剤比率が0.500、0.364の結果、【0071】の表7の実施例24〜27には、トリシロキシケイ酸の含有量のみ変化させた被膜剤比率0.014〜0.175の結果をみれば、請求項6に記載された上記質量比の範囲まで、拡張乃至一般化できるものといえる。

よって、上記理由ア〜エは、採用できない。

4 特許法第29条第1項第3号新規性)、同法同条第2項(進歩性)の理由について
(1) 甲1に記載された発明に基づく理由について
ア 甲1に記載された発明
甲1の段落【0082】には、化粧料4として以下の発明が記載されている。
「以下の成分からなる乳化ファンデーション
(質量%)
(1)ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト
/デカメチルシクロペンタシロキサン(1/20)のゾル組成物 21
(2)ジメチルポリシロキサン(5.6cs/25℃) 15
(3)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体
(一般式(I)型、HLB 4.5、POE含有率 約20%、
400〜800cs、R’=H、p=3、y=0) 5
(4)パルミチン酸 0.5
(5)2−エチルヘキサン酸セチル 5
(6)シリコーン被覆黄酸化鉄 2
(7)シリコーン被覆ベンガラ 1
(8)シリコーン被覆黒酸化鉄 0.3
(9)シリコーン被覆酸化チタン 10
(10)シリコーン被覆タルク 1.5
(11)シリコーン被覆紡錘状酸化チタン 3
(12)球状ナイロン末 1
(13)マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル 0.1
(14)酢酸DL−α−トコフェロール 0.1
(15)グリセリン 5
(16)1,3−ブチレングリコール 10
(17)パラオキシ安息香酸エステル 適量
(18)精製水 残余
(19)香料 適量」
(以下「甲1発明」という。)

イ 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト」、「パルミチン酸」は、本件発明1の「(B)有機変性粘土鉱物」、「(C)前記(B)以外の油相増粘剤」に相当する。
甲1発明の「ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(一般式(I)型、HLB 4.5、POE含有率 約20%、400〜800cs、R’=H、p=3、y=0)は、甲1の段落【0034】の式(I)の構造を有するから、本件発明1の「(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤」である「式(3)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーン」に相当する。
甲1発明の「(5)2−エチルヘキサン酸セチル」、「(14)酢酸DL−α−トコフェロール」は、本件発明1の「(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分」に相当するから、[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比について、甲1発明では
(1+0.5)/(5+0.1)=0.29
と計算されるので、この数値範囲についても本件発明1の範囲と重複している。
そして、甲1発明の「乳化ファンデーション」と本件発明1の「油中水型乳化日焼け止め化粧料」は、両発明のシリコーン系界面活性剤のHLB値が一致し、かつ、甲1の段落【0007】に、その目的の1つとしてW/O乳化物を提供すること旨の記載があるから、両発明は「油中水型化粧料」である点に限り、一致している。

そうすると、本件発明1と甲1発明は、
「(B)有機変性粘土鉱物、(C)前記(B)以外の油相増粘剤、及び(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤を含有し、
[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比が0.04以上0.68未満であり、前記(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤が、下記式(3)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーン:【化1】

(Rは炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基、R1は水素又は炭素数1〜12のアルキル基、qは1〜50、mは1〜100、n及びxは各々1〜50、yは0〜50である)、及び下記式(5)で表されるポリグリセリン変性シリコーン:【化2】

(R1は直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜12のアルキル基またはフェニル基、R2は炭素数2〜11のアルキレン基であり、pは10〜120、qは1〜11である)から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、油中水型乳化化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1では、「(A)6〜40質量%の紫外線防御剤」を含み、「紫外線防御剤は紫外線散乱剤のみからなる」のに対し、甲1発明では、「シリコーン被覆酸化チタン」、「シリコーン被覆紡錘状酸化チタン」を含むものの、これらが紫外線散乱剤であるかは不明な点。

<相違点2>
「油中水型乳化化粧料」が、本件発明1の用途は、「日焼け止め」であるのに対し、甲1発明は、「ファンデーション」である点。

(イ) 判断
まず、本件発明1と甲1発明の間には相違点1及び2が存在するから、本件発明1は、甲1に記載された発明ではない。
次に、上記相違点1、2について検討する。
本件発明1の「紫外線散乱剤」とは、本件明細書の第【0017】に説明があるとおり、微粒状の酸化チタン等の金属酸化物である。そして、甲1には、段落【0080】のサンスクリーンの処方において、「(6)シリコーン被覆微粒子酸化チタン(20nm)」、「(7)シリコーン被覆微粒子酸化亜鉛(20nm)」が配合されており、これらは微粒子であって粒径が小さく、「紫外線散乱剤」に相当するものと理解できるところ、一方で、甲1発明の「シリコーン被覆酸化チタン」、「シリコーン被覆紡錘状酸化チタン」は、粒径や微粒子についての記載はないから、「紫外線散乱剤」ではなく、顔料の「酸化チタン」に相当すると解するのが妥当である。
また、甲1発明の「シリコーン被覆酸化チタン」、「シリコーン被覆紡錘状酸化チタン」を「紫外線散乱剤」とすることについて、甲1には記載や示唆がなく、また、他の文献においても同様に記載や示唆はなく、甲1発明において、本件発明1の相違点1、2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。
そして、本件発明1は、本件発明の構成とすることにより、日焼け止め化粧料において、水や汗等の接触により、紫外線防御効果が低下せず、逆に向上するとの格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、甲1発明及び他の甲1〜9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、新規性進歩性に係る申立ての理由は採用できない。

ウ 本件発明2〜7について
本件発明2〜7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるところ、請求項1に係る発明の本件発明1が上記イで検討したとおりであるから、同様に、本件発明2、3について、甲1に記載された発明ではなく、また、本件発明2〜7についても甲1発明及び他の甲1〜9又は甲1〜10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、新規性進歩性に係る申立ての理由は採用できない。

(2) 甲2に記載された発明に基づく理由について
ア 甲2に記載された発明
甲2の段落【0075】には、化粧料3として以下の発明が記載されている。

「以下の成分からなる乳化ファンデーション
(1)ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト/ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(一般式(I)タイプ、HLB 4.5、POE含有率 20%、400〜800cs、R’=H、p=3、y=0)/デカメチルシクロペンタシロキサン(1/0.5/19.5) 21
(2)ジメチルポリシロキサン(5.6cs/25℃) 5
(3)パルミチン酸 0.5
(4)スクワラン 5
(5)デキストリン脂肪酸処理二酸化チタン 15
(6)デキストリン脂肪酸処理黄酸化鉄 3
(7)デキストリン脂肪酸処理ベンガラ 1.5
(8)デキストリン脂肪酸処理黒酸化鉄 0.5
(9)金属石鹸処理タルク 3
(10)シリコーン被覆紡錘状酸化チタン 3
(11)架橋型シリコーン末(トレフィルE−506) 0.1
(12)ベンガラ被覆雲母チタン 0.5
(13)N−ラウロイル−L−リジン 2
(14)酢酸DL−α−トコフェロール 0.1
(15)グリセリン 3
(16)1,3−ブチレングリコール 5
(17)パラオキシ安息香酸エステル 適量
(18)精製水 残余
(19)香料 適量。」
(以下「甲2発明」という。)

イ 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト」は、本件発明1の「(B)有機変性粘土鉱物」に相当する。
甲2発明の「ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(一般式(I)型、HLB 4.5、POE含有率 約20%、400〜800cs、R’=H、p=3、y=0)は、甲1の段落【0034】の式(I)の構造を有するから、本件発明1の「(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤」である「式(3)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーン」に相当する。
そして、甲2発明の「乳化ファンデーション」と本件発明1の「油中水型乳化日焼け止め化粧料」は、両発明のシリコーン系界面活性剤のHLB値が一致し、かつ、甲1の段落【0007】に、その目的の1つとしてW/O乳化物を提供すること旨の記載があるから、両発明は「油中水型化粧料」である点に限り、一致している。
なお、甲2発明のデキストリン脂肪酸処理二酸化チタン等における「デキストリン脂肪酸」や「金属石鹸処理タルク」の「金属石鹸」は、無機粒子の表面処理剤であって「油相増粘剤」に相当するものではない。
そうすると、本件発明1と甲2発明は、
「(B)有機変性粘土鉱物、及び(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤を含有し、
前記(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤が、下記式(3)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーン:【化1】

(Rは炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基、R1は水素又は炭素数1〜12のアルキル基、qは1〜50、mは1〜100、n及びxは各々1〜50、yは0〜50である)、及び下記式(5)で表されるポリグリセリン変性シリコーン:【化2】

(R1は直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜12のアルキル基またはフェニル基、R2は炭素数2〜11のアルキレン基であり、pは10〜120、qは1〜11である)から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、油中水型乳化化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1a>
本件発明1では、「(A)6〜40質量%の紫外線防御剤」を含み、「紫外線防御剤は紫外線散乱剤のみからなる」のに対し、甲2発明では、「シリコーン被覆酸化チタン」、「シリコーン被覆紡錘状酸化チタン」を含むものの、これらが紫外線散乱剤であるかは不明な点。

<相違点2a>
「油中水型乳化化粧料」が、本件発明1の用途は、「日焼け止め」であるのに対し、甲2発明は「ファンデーション」である点。

<相違点3a>
本件発明1では、「(C)前記(B)以外の油相増粘剤」を含有するのに対し、甲2発明では、これを含有しない点。

<相違点4a>
本件発明1では、「[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比が0.04以上0.68未満」と特定するのに対し、甲2発明では、このような特定がない点。

(イ) 判断
まず、本件発明1と甲2発明の間には相違点1a〜4aが存在するから、本件発明1は、甲2に記載された発明ではない。
次に、上記相違点1a、2aについて検討する。
本件発明1の「紫外線散乱剤」とは、本件明細書の第【0017】に説明があるとおり、微粒状の酸化チタン等の金属酸化物である。そして、甲2には、段落【0073】、【0077】のサンスクリーンの処方において、「(5)シリコーン被覆微粒子酸化チタン(20nm)」、が配合されており、これらは微粒子であって粒径が小さく、「紫外線散乱剤」に相当するものと理解できるところ、一方で、甲2発明の「デキストリン脂肪酸処理二酸化チタン」、「シリコーン被覆紡錘状酸化チタン」は、粒径や微粒子についての記載はないから、「紫外線散乱剤」ではなく、顔料の「酸化チタン」に相当するものと解するのが妥当である。
また、甲2発明の「「シリコーン被覆酸化チタン」、「シリコーン被覆紡錘状酸化チタン」を「紫外線散乱剤」とすることについて、甲2には記載や示唆がなく、また、他の文献においても同様に記載や示唆はなく、甲2発明において、本件発明1の相違点1a、2aに係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。
そして、本件発明1は、本件発明の構成とすることにより、日焼け止め化粧料において、水や汗等の接触により、紫外線防御効果が低下せず、逆に向上するとの格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、他の相違点3a、4aについて検討するまでもなく、甲2発明及び他の甲1〜9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、新規性進歩性に係る申立ての理由は採用できない。

ウ 本件発明2〜7について
本件発明2〜7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるところ、請求項1に係る発明の本件発明1が上記イで検討したとおりであるから、同様に、本件発明2〜4について、甲2に記載された発明ではなく、また、本件発明2〜7についても甲2発明及び他の甲1〜9又は甲1〜10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、新規性進歩性に係る申立ての理由は採用できない。

(3) 甲4に記載された発明に基づく理由について
ア 甲4に記載された発明
甲4の段落[0075]〜[0076]の例1には、以下の発明が記載されている。
「以下の組成からなるリキッドファンデーション
(成分) (質量%)
1.本発明のデキストリン脂肪酸エステル(製造例1) 3
2.デカメチルシクロペンタシロキサン 7
3.リンゴ酸ジイソステアリル 2
4.流動パラフィン 5
5.ミリスチン酸オクチルドデシル 5
6.イヌリンステアリン酸エステル(注1) 3
7.ジメチルポリシロキサン(注2) 7
8.シリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーン(注3) 2
9.有機変性ベントナイト(注4) 1
10.球状シリカ 5
11.酸化チタン 7
12.微粒子酸化チタン 2
13.ベンガラ 0.2
14.黄酸化鉄 1
15.黒酸化鉄 0.2
16.タルク 3
17.1,3−ブチレングリコール 3
18.エタノール 5
19.防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル) 0.1
20.精製水 残量
21.香料 0.1
注1:レオパールISL2(千葉製粉社製)
注2:KF96A−6cs(信越化学工業社製)
注3:KF−6028P(信越化学工業社製)
注4:ベントン38V(エレメンティス社製)」
(以下「甲4発明」という。)

イ 本件発明1について
(ア) 対比
甲4発明の「9.有機変性ベントナイト」は、本件発明1の「(B)有機粘土鉱物に相当する。
甲4発明の「12.微粒子酸化チタン」は、本件発明1の「志願線防御剤」、「紫外線散乱剤」に相当し、甲4発明では他の紫外線防御剤は含まれていないから、本件発明1の「前記(A)紫外線防御剤が紫外線散乱剤のみからなり」との条件を満たす。
甲4発明の「8.シリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーン(注3)」は、注3によれば「KF−6028P」であり、甲3の【0070】の「7.シリコーン系界面活性剤(HLB=4.5)(注24)」、「(注24)KF−6028P]との記載や、本件明細書の【0030】、【0032】によれば、「「KF−6028」が「(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤」であるから、って、本件発明1の「(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤」に相当する。
甲4発明の「6.イヌリンステアリン酸エステル(注1)」は、注1によれば、「レオパールISL2(千葉製粉社製)」であり、これは、甲3の【0039】、【0043】の記載によれば、油ゲル化剤に相当するものと推測される。
甲4発明の「リキッドファンデーション」は、甲4の段落[0076]の当該リキッドファンデーションの製造方法の記載から乳化したものであり、「シリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーン」のHLB値の値から、本件発明1の「油中水型乳化日焼け止め化粧料」とは、「油中水型乳化」「化粧料」との点に限り、一致している。
また、甲4発明の「3.リンゴ酸ジイソステアリル」、「4.流動パラフォン」。「5.ミリスチン酸オクチルドデシル」は、本件発明1の「(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分」に相当するから、甲4発明の「本件発明1の「[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比を計算すると、
(1+5)/(2+5+5)=0.5
となり、本件発明1の「[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比が0.04以上0.68未満」と特定を満たすものである。
そうすると、本件発明1と甲4発明は、
「(A)紫外線防御剤、(B)有機変性粘土鉱物、(C)前記(B)以外の油相増粘剤、及び(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤を含有し、前記(A)紫外線防御剤が紫外線散乱剤のみからなり、[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比が0.04以上0.68未満である、油中水型乳化化粧料」
との点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1b>
紫外線防御剤の化粧料全体における含有量について、本件発明1では、「6〜40質量%」であるのに対し、甲4発明では「2重量%」である点。

<相違点2b>
油中水型乳化化粧料が、本件発明1の用途は、「日焼け止め」であるのに対し、甲2発明は、「ファンデーション」である点。

<相違点3b>
HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤について、本件発明1では、式(3)又は式(5)の構造式を有するものであるのに対し、甲4発明では、「KF−6028Pであるシリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーン」なるものである点。

(イ) 判断
まず、本件発明1と甲4発明の間には相違点1b〜3bが存在するから、本件発明1は、甲4に記載された発明ではない。 また、相違点1b〜3bについて検討するに、甲4には、これらの相違点について、本件発明1の構成を採用するような記載や指摘はないし、他の甲号証をみても同様であるから、本件発明4は、甲4に記載された発明及び他の甲1〜9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、新規性進歩性に係る申立ての理由は採用できない。

ウ 本件発明2〜7について
本件発明2〜7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるところ、請求項1に係る発明の本件発明1が上記イで検討したとおりであるから、同様に、本件発明2、3、5、6について、甲4に記載された発明ではなく、また、本件発明2〜7についても甲4に記載された発明及び他の甲1〜9又は甲1〜10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、新規性進歩性に係る申立ての理由は採用できない。

(4) 甲5に記載された発明に基づく理由について
ア 甲5に記載された発明
甲5の段落【0038】の実施例7には、以下の発明が記載されている。
「以下の成分からなるW/O日焼け止め化粧料(乳液)
配合成分 質量%
(1)グリセリン 5
(2)1,3−ブチレングリコール 5
(3)有機変性粘土鉱物
(商品名:ベントン38VCG:NLインダストリー社) 0.3
(4)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体
(商品名:KF−6028:信越化学工業株式会社) 2
(5)セスキイソステアリン酸ソルビタン 1
(6)イソステアリン酸 0.5
(7)シクロメチコン 38
(8)トリエチルヘキサノイン 2
(9)テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスチル 5
(10)ジメチコン(6cs) 1
(11)N−ラウロイルL−グルタミンジ(フィトステリル、2−オクチルドデシル)
2
(12)オクチルトリメトキシシラン処理酸化亜鉛(20nm) 10
(13)ステアリン酸・酸化アルミニウム処理酸化チタン(10-30n) 4
(14)ポリメタクリル酸メチル 4
(15)ポリメチルシルセスキオキサン 1
(16)フェノキシエタノール 0.5
(17)メタリン酸Na 0.1
(18)精製水 残余」
(以下「甲5発明」という。)

イ 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲5発明を対比する。
甲5発明の「(12)オクチルトリメトキシシラン処理酸化亜鉛(20nm)」、「(13)ステアリン酸・酸化アルミニウム処理酸化チタン(10-30n)」は、本件発明1の「紫外線防御剤」、「紫外線散乱剤」に相当し、甲5発明では他の紫外線防御剤は含まれていないから、本件発明1の「前記(A)紫外線防御剤が紫外線散乱剤のみからなり」との条件を満たし、また、その含有量についても本件発明1の範囲を満たす。
甲5発明の「(3)有機変性粘土鉱物」は、本件発明1の「(B)有機変性粘土鉱物」に相当する。
甲5発明の「ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(商品名:KF−6028:信越化学工業株式会社)」は、本件明細書の段落【0032】、甲6の第4頁に記載のあるとおり、側鎖にオルガノシロキサン鎖を有する分岐鎖を有するものであり、本件発明1の式(3)又は(5)のポリオキシアルキレン変性シリコーンではないから、甲5発明と本件発明1とは、「(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤」を含有するとの点に限り、一致する。
甲5発明の「W/O日焼け止め化粧料(乳液)」は、本件発明1の「油中水型乳化日焼け止め化粧料」に相当する。
また、甲4発明の「(6)イソステアリン酸」、「(8)トリエチルヘキサノイン」、「(9)テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスチル」は、本件発明1の「(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分」に相当する。
なお、「(13)ステアリン酸・酸化アルミニウム処理酸化チタン(10-30n)」において表面処理に用いた「ステアリン酸」は、表面処理剤であって、「油相増粘剤」に相当するものではない。
そうすると、本件発明1と甲5発明は、
「(A)紫外線防御剤、(B)有機変性粘土鉱物、及び(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤を含有し、前記(A)紫外線防御剤が紫外線散乱剤のみからなる、油中水型乳化化粧料」
との点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1c>
HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤について、本件発明1では、式(3)又は式(5)の構造式を有するものであるのに対し、甲5発明では、「ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(商品名:KF−6028:信越化学工業株式会社)」なるものである点。

<相違点2c>
本件発明1では、「(C)前記(B)以外の油相増粘剤」を含むのに対し、甲5発明はこれを含まない点。

<相違点3c>
本件発明1では、「[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比が0.04以上0.68未満」との特定があるのに対し、甲5発明はこの特定がない点。

(イ) 判断
まず、本件発明1と甲5発明の間には相違点1c〜3cが存在するから、本件発明1は、甲5に記載された発明ではない。
また、相違点1c〜3cについて検討するに、甲5には、これらの相違点について、本件発明1の構成を採用するような記載や指摘はないし、他の甲号証をみても同様であるから、本件発明1は、甲5に記載された発明及び他の甲1〜9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、新規性進歩性に係る申立ての理由は採用できない。

ウ 本件発明2〜7について
本件発明2〜7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるところ、請求項1に係る発明の本件発明1が上記イで検討したとおりであるから、同様に、本件発明2〜4について、甲5に記載された発明ではなく、また、本件発明2〜7についても甲5に記載された発明及び他の甲1〜9又は甲1〜10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、新規性進歩性に係る申立ての理由は採用できない。

(5) 甲6に記載された発明に基づく理由について
ア 甲6に記載された発明
甲6の第19頁には、第6,9頁の記載も加味すれば、以下の発明が記載されている。
「以下の成分からなるW/Oリキッドファンデーション
1.KSG-210*1 3.5wt%
2.KSG-15*1 5.0wt%
3.KF-6028*1 2.0wt%
4.有糧変性ベントナイト 1.2wt%
5.トリエチルヘキサノイン 5.0wt%
6.KF-96A-6cs*1 6.5wt%
7.KF-995*1 21.6wt%
8.KP-575 (KP-545) *1 1.5wt%
9.顔料(KF-9909*1処理) 10.0wt%
10.ジプロピレングリコール 5.0wt%
11.クエン酸ナトリウム 0.2wt%
12.精製水 38.5wt%
*1:信越(Shin-Etus)」(以下、「甲6発明」という。)

イ 本件発明1について
(ア) 対比
甲6発明の「3.KF-6028」は、甲6の第4、6頁からみて、ポリエーテル変性シリコーン[分岐タイプ]の「PEG−9−ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(HLB4.0)」であり、から、甲6発明と本件発明1とは、「(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤」を含有するとの点に限り、一致する。
甲6発明の「4.有糧変性ベントナイト」は、本件発明1の「(B)有機変性粘土鉱物」に相当する。
甲6発明の「W/Oリキッドファンデーション」と本件発明1の「油中水型乳化日焼け止め化粧料」は、「油中水型乳化化粧料」との点に限り一致する。
なお、甲6発明の「ジメチコン/(PEG−10/15)クロスポリマ−」について、甲6の第8頁第1〜4行に、「KSGシリーズはオイルを増粘・ゲル化したもので、安定性の良い化粧料を得ることができます。ポリエーテルやポリグリセリンの親水性部分を導入することにより、W/Oの活性剤としても有用です。」との記載はあるものの、甲6の第9頁第1〜2行に「なめらかな感触の自己乳化剤でユニークなW/Si、W/Oクリームを作ることができます。」との記載があり、その下に「KSG-210」は、「ジメチコン/(PEG−10/15)クロスポリマ−」とジメチコンを含むペースト状のものであると記載されていることから、「ジメチコン/(PEG−10/15)クロスポリマ−」は、自己乳化剤であると認められる。
また、甲6発明の「9.顔料(KF-9909処理)」について、甲7の【0075】の表1に配合成分として「11.アルキル・シリコーン分岐型処理酸化チタン(注8)」とあり、「(注8)アルキル・シリコーン分岐型シリコーン:KF−9909信越化学工業(株)製)」との記載はあるが、これは、甲6発明の「KF-9909処理」の「KF9909」に関する説明であって、顔料の種類を説明するものではない。
そうすると、本件発明1と甲6発明は、
「(B)有機変性粘土鉱物、及び(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤を含有し、前記(A)紫外線防御剤が紫外線散乱剤のみからなる、油中水型乳化化粧料」
との点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1d>
HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤について、本件発明1では、式(3)又は式(5)の構造式を有するものであるのに対し、甲6発明では、ポリエーテル変性シリコーン[分岐タイプ]の「PEG−9−ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(HLB4.0)」なるものである点。

<相違点2d>
本件発明1では、「(C)前記(B)以外の油相増粘剤」を含むのに対し、甲6発明はこれを含まない点。

<相違点3d>
本件発明1では、「[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比が0.04以上0.68未満」との特定があるのに対し、甲6発明はこの特定がない点。

<相違点4d>
本件発明1は、「(A)紫外線防御剤」を含み、「(A)紫外線防御剤が紫外線散乱剤のみからなる」のに対し、甲6発明は、「9.顔料(KF-9909処理)」を含むもののあくまでも顔料であって、本件発明1のような特定はない点。

<相違点5d>
油中水型乳化化粧料について、本件発明1は、日焼け止め化粧料」であるのに対し、甲6発明はファンデーションである点。

(イ) 判断
まず、本件発明1と甲6発明の間には相違点1d〜5dが存在するから、本件発明1は、甲6に記載された発明ではない。
また、相違点1d〜5dについて検討するに、甲6には、これらの相違点について、本件発明1の構成を採用するような記載や指摘はないし、他の甲号証をみても同様であるから、本件発明1は、甲6に記載された発明及び他の甲1〜9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、新規性進歩性に係る申立ての理由は採用できない。

ウ 本件発明2〜7について
本件発明2〜7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるところ、請求項1に係る発明の本件発明1が上記イで検討したとおりであるから、同様に、本件発明2について、甲6に記載された発明ではなく、また、本件発明2〜7についても甲6に記載された発明及び他の甲1〜9又は甲1〜10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、新規性進歩性に係る申立ての理由は採用できない。

(6) 甲8に記載された発明に基づく理由について
ア 甲8に記載された発明
甲8の第18頁下から第1〜4行、第19頁表1の実施例4の記載からみて、以下の発明が記載されている。
「以下の成分からなるW/O型乳化組成物(日焼け止め製剤)
ドデカメチルシクロヘキサン 35.00
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 2.00
微粒子酸化チタン 5.00
イソステアリン酸イソセチル 15.00
天然ビタミンE 0.10
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 0.10
調製例1 1 0 質量%ベントナイト液 4.00
パルミチン酸デキストリン 0.40
精製水 38.15
硫酸マグネシウム 0.10
フェノキシエタノールS 0.15」(以下、「甲8発明」という。)

イ 本件発明1について
本件発明1と甲8発明を対比する。
甲8発明の「微粒子酸化チタン」は、本件発明1の「(A)紫外線防御剤」であり、また、「紫外線散乱剤」にも相当するし、甲6発明では他の紫外線防御剤は含まれていないから、本件発明1の「前記(A)紫外線防御剤が紫外線散乱剤のみからなり」との条件を満たす。
甲8発明の「調製例1 1 0 質量%ベントナイト液」は、第18頁第6〜10行の記載からみて、ベントナイトとココイルアルギニンエチルピロリドンカルボン酸塩を混合して製造した変性ベントナイト液であるから、本件発明1の「(B)有機変性粘土鉱物」に相当する。
甲8発明の「ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体」は、第17頁に「メチルポリシロキサン共重合体(非イオン性界面活性剤:株式会社日本エマルジョン製「Emalex SS−5050K(商品名)」との説明があるので、本件発明1と甲8発明とは、「シリコーン系界面活性剤」を含有するとの点に限り、一致する。
甲8発明の「パルミチン酸デキストリン」は、本件発明1の「(C)前記(B)以外の油相増粘剤」に相当する。
甲8発明の「W/O型乳化組成物(日焼け止め製剤)」は、本件発明1の「油中水型乳化日焼け止め化粧料」に相当する。
また、甲8発明において、イソステアリン酸イソセチル、天然ビタミンEは、本件発明1の「(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分」に相当するので、「[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比を計算すると
(4.00×0.10+0.40)/(15.00+0.10)=0.0529
であるから、本件発明1の「[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比が0.04以上0.68未満」を満たす。
そうすると、本件発明1と甲8発明は、
「(A)紫外線防御剤、(B)有機変性粘土鉱物、(C)前記(B)以外の油相増粘剤、及びシリコーン系界面活性剤を含有し、前記(A)紫外線防御剤が紫外線散乱剤のみからなり、[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比が0.04以上0.68未満である、油中水型乳化日焼け止め化粧料」
との点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1e>
紫外線防御剤の化粧料全体における含有量について、本件発明1では、「6〜40質量%」であるのに対し、甲8発明では「5重量%」である点。

<相違点2e>
シリコーン系界面活性剤について、本件発明1では、HLBが8未満の、式(3)又は式(5)の構造式を有するものであるのに対し、甲8発明では、HLB値及び構造が不明な「メチルポリシロキサン共重合体(非イオン性界面活性剤:株式会社日本エマルジョン製「Emalex SS−5050K(商品名)」なるものである点。

(イ) 判断
相違点1eについて検討するに、甲8には、紫外線防御剤である微粒子状酸化チタンの含有量を6重量%以上に増加させることは何ら記載がないが、甲1や甲2等のサンスクリーン剤の紫外線防御剤の含有量の記載からみて、甲8発明において、当業者であれば適宜になし得たことと認められる(甲1:【0079】、【0080】、甲2:【0073】)。
相違点2eについて検討するに、甲8発明において、シリコーン界面活性剤を、本件発明1の条件のもの、つまり、HLB値8以下であり、式(3)又は式(5)の構造式のものとすることについては、申立人は異議申立書をみても何ら説明しておらず、他の甲号証をみても同様であるから、当業者が容易になし得たことと判断することはできない。
よって、本件発明1は、甲8に記載された発明及び他の甲1〜9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、進歩性に係る申立ての理由は採用できない。

ウ 本件発明2〜7について
本件発明2〜7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるところ、請求項1に係る発明の本件発明1が上記イで検討したとおりであるから、本件発明2〜7についても甲8に記載された発明及び他の甲1〜9又は甲1〜10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、進歩性に係る申立ての理由は採用できない。

5 小括
よって、取消理由で採用しなかった異議申立書に記載した申立ての理由は、採用できない。

第7 まとめ
以上のとおり、請求項1〜7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に、請求項1〜7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2021-12-21 
出願番号 P2016-556661
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61K)
P 1 651・ 537- Y (A61K)
P 1 651・ 536- Y (A61K)
P 1 651・ 113- Y (A61K)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 原田 隆興
特許庁審判官 岡崎 美穂
大久保 元浩
登録日 2020-07-31 
登録番号 6742911
権利者 株式会社 資生堂
発明の名称 油中水型乳化日焼け止め化粧料  
代理人 内田 直人  

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