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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
管理番号 1381669
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-02-18 
確定日 2021-11-22 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6744792号発明「水性液体吸収性樹脂粒子の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6744792号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1−10]について訂正することを認める。 特許第6744792号の請求項1、3、4及び7ないし10に係る特許を維持する。 特許第6744792号の請求項2、5及び6に係る特許に対する特許異議申立を却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6744792号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、平成28年 9月 8日を出願日とする出願であって、令和 2年 8月 4日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年同月19日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和 3年 2月18日に特許異議申立人 椎名 一男(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年 5月28日付けで取消理由が通知され、同年 7月28日に特許権者 SDPグローバル株式会社(以下、「特許権者」という。)より意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年 8月27日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を特許異議申立人に行ったところ、同年10月 1日に特許異議申立人より意見書が提出されたものである。

第2 訂正の可否についての判断

1 訂正の内容

本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「要件(1)〜(3)を満たす水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法:」と記載されているのを、「要件(1)〜(3)を満たす水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法であって、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて表面処理する際に、前記多価金属塩(d)を添加した後、多価金属塩(d)の融点温度以上にし、表面処理が、以下の方法[I]〜[III]:
方法[I]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有する混合液(W1)を用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法。
方法[II]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び水を含有し、多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W3)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、以下の(1)〜(3)の工程のいずれかを含む方法:
(1)混合液(W2)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行い又は加熱処理を行わずに、混合液(W3)で更に表面処理する工程;
(2)混合液(W3)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行い又は加熱処理を行わずに、混合液(W2)で更に表面処理する工程;
(3)混合液(W2)と混合液(W3)で同時に表面処理する工程。
方法[III]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、多価金属塩(d)及び水を含有し、炭素数4以下の多価アルコール(c)及び多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W4)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、以下の(4)〜(6)の工程のいずれかを含む方法:
(4)混合液(W2)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行わずに混合液(W4)で更に表面処理する工程;
(5)混合液(W4)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行い又は加熱処理を行わずに、混合液(W2)で更に表面処理する工程;
(6)混合液(W2)と混合液(W4)で同時に表面処理する工程、のいずれかで行われる、製造方法:」に訂正する。
あわせて、請求項1を直接又は間接的に引用する、請求項3、4及び7ないし10も同様に訂正する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「請求項1又は2に記載の製造方法。」と記載されているのを、「請求項1に記載の製造方法。」と訂正する。
あわせて、請求項3を直接又は間接的に引用する、請求項4及び8ないし10も同様に訂正する。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、「請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。」と記載されているのを、「請求項1、3のいずれかに記載の製造方法。」と訂正する。
あわせて、請求項4を直接又は間接的に引用する、請求項8ないし10も同様に訂正する。

(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に、「請求項5又は6に記載の製造方法。」と記載されているのを、「請求項1に記載の製造方法。」と訂正する。
あわせて、請求項7を直接又は間接的に引用する、請求項8ないし10も同様に訂正する。

(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に、「請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。」と記載されているのを、「請求項1、3、4、7のいずれかに記載の製造方法。」と訂正する。
あわせて、請求項8を直接又は間接的に引用する、請求項9及び10も同様に訂正する。

(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に、「請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。」と記載されているのを、「請求項1、3、4、7〜8のいずれかに記載の製造方法。」と訂正する。
あわせて、請求項9を引用する、請求項10も同様に訂正する。

(10) 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10に、「請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。」と記載されているのを、「請求項1、3、4、7〜9のいずれかに記載の製造方法。」と訂正する。

(11) 一群の請求項について
本件訂正請求による訂正前の請求項1ないし10について、訂正前の請求項2ないし10は訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正請求による訂正後の請求項1ないし10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1) 訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて表面処理する際に、「前記多価金属塩(d)を添加した後、多価金属塩(d)の融点温度以上」とすること、及び、表面処理が「方法[I]〜[III]」のいずれかであることを限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて表面処理する際に、「前記多価金属塩(d)を添加した後、多価金属塩(d)の融点温度以上」とすることは、訂正前の請求項2に、また、表面処理が「方法[I]〜[III]」のいずれかであることは、訂正前の請求項5に記載されている。
してみると、訂正事項1に係る請求項1に係る訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項1を直接または間接的に引用する、請求項3、4及び7ないし10についても、同様である。

(2) 訂正事項2、5及び6について
訂正事項2に係る請求項2の訂正、訂正事項5に係る請求項5の訂正及び訂正事項6に係る請求項6の訂正はいずれも、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当該訂正が願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

(3) 訂正事項3、4及び8ないし10について
訂正事項3、4及び8ないし10に係る請求項3、4及び8ないし10の訂正はいずれも、請求項2、5及び6が削除されたことに伴い、引用する請求項からそれらの請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当該訂正が願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

(4) 訂正事項7について
訂正事項7に係る請求項7の訂正は、訂正前の請求項7が引用していた請求項5及び6のうち、請求項5の発明特定事項が請求項1の発明特定事項として組み込まれた上で、請求項5が削除されたことに伴い、引用先請求項を請求項1のみに変更するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正が願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

(5) まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1−10]について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、順に「本件発明1」のようにいう。また、本件発明1ないし本件発明10を総称して、「本件発明」という場合がある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子(B)を、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて表面処理する際に、前記表面処理で用いる炭素数4以下の多価アルコール(c)が樹脂粒子(B)の重量に基づいて0.1〜1.0重量%である表面処理工程を含む、
下記要件(1)〜(3)を満たす水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法であって、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて表面処理する際に、前記多価金属塩(d)を添加した後、多価金属塩(d)の融点温度以上にし、表面処理が、以下の方法[I]〜[III]:
方法[I]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有する混合液(W1)を用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法。
方法[II]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び水を含有し、多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W3)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、以下の(1)〜(3)の工程のいずれかを含む方法:
(1)混合液(W2)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行い又は加熱処理を行わずに、混合液(W3)で更に表面処理する工程;
(2)混合液(W3)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行い又は加熱処理を行わずに、混合液(W2)で更に表面処理する工程;
(3)混合液(W2)と混合液(W3)で同時に表面処理する工程。
方法[III]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、多価金属塩(d)及び水を含有し、炭素数4以下の多価アルコール(c)及び多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W4)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、以下の(4)〜(6)の工程のいずれかを含む方法:
(4)混合液(W2)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行わずに混合液(W4)で更に表面処理する工程;
(5)混合液(W4)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行い又は加熱処理を行わずに、混合液(W2)で更に表面処理する工程;
(6)混合液(W2)と混合液(W4)で同時に表面処理する工程、のいずれかで行われる、製造方法:
(1)保水量が42〜50(g/g)、
(2)クロット率が0〜30%、
(3)動摩擦が1000〜4000mJ。
【請求項2】 (削除)
【請求項3】
表面処理する際に用いる炭素数4以下の多価アルコール(c)と多価金属塩(d)の重量比(c)/(d)が0.1〜2.0である請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
表面処理する際に用いる多価アルコール(c)が、樹脂粒子(B)の重量に基づいて0.1〜0.8重量%である請求項1、3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】 (削除)
【請求項6】 (削除)
【請求項7】
方法[I]における混合液(W1)が無機粒子(f)を含有し、方法[II]における混合液(W2)及び/又は混合液(W3)が無機粒子(f)を含有し、方法[III]における混合液(W2)及び/又は混合液(W4)が無機粒子(f)を含有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
多価金属塩(d)がジルコニウム、アルミニウム又はチタニウムの無機酸塩である請求項1、3、4、7のいずれか記載の製造方法。
【請求項9】
エネルギー分散型X線分析法を用いた元素マッピングにより求められる粒子表面の多価金属塩(d)による被覆率が50〜100%である請求項1、3、4、7〜8のいずれか記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1、3、4、7〜9のいずれかの製造方法により製造される水性液体吸収性樹脂粒子(P)を用いる吸収性物品の製造方法。」

第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について

特許異議申立人が特許異議申立書において、請求項1ないし10に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。

申立理由1−1(新規性) 本件特許の請求項1〜10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由1−2(新規性) 本件特許の請求項1、3、5及び8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由2(進歩性) 本件特許の請求項1〜10に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1〜10についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

なお、申立理由3の具体的理由は次のとおりである。

(申立理由3−1)
本件特許発明2は、本件課題を解決するにあたり適当な融点を有する多価金属塩(d)を特定していないため、本件特許明細書の詳細な説明に記載したものとはいえない。
請求項2を引用する本件特許発明3〜10も同様である。

(申立理由3−2)
多価金属塩の添加方法によっては、動摩擦やクロット数が大きく異なるものと考えられるから、多価金属塩の添加方法を特定していない本件特許発明1は、本件特許明細書の詳細な説明に記載したものとはいえない。
請求項1を引用する本件特許発明2〜10も同様である。

(申立理由3−3)
吸水樹脂表面がシリカ粒子で覆われていれば、動摩擦が上昇し問題が発生することが合理的に予想できるから、無機粒子(f)の添加方法や添加量を規定しない本件特許発明6はサポート要件に反する。
請求項6を引用する本件特許発明7〜10も同様である。

申立理由4(明確性要件) 本件特許の請求項1〜10についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

なお、申立理由4の具体的理由は次のとおりである。

(申立理由4−1)
実施例4は保水量41g/gで、本件特許発明1を満たしていない。よって、本件特許発明1の保水量の範囲についての要件に疑義があるため、本件特許発明1は明確ではない。
請求項1を引用する本件特許発明2〜10も同様である。

(申立理由4−2)
本件特許発明1の「クロット率」なる用語は一般的ではないし、明細書の記載の方法でも、タッピングの強度や方向などの特定がなく一義的に定まるものともいえないから、本件特許発明1は明確ではない。
請求項1を引用する本件特許発明2〜10も同様である。

(申立理由4−3)
請求項5には、多価金属を添加後に加熱処理しない形態も含まれているにもかかわらず、融点温度以上に加熱する事を規定した請求項2を引用している。よって、本件特許発明5は不明瞭である。
請求項5を引用する本件特許発明6〜10も同様である。

<証拠方法>
・甲第1号証:国際公開第2014/021388号
・甲第2号証:国際公開第2014/181859号
・甲第3号証:特表2010−539272号公報
・甲第4号証:特表2010−520948号公報
・甲第5号証:特開2005−113117号公報
・甲第6号証:国際公開第2012/102407号
・甲第7号証:edana 2002 EDANA RECOMMENDED TEST METHODS
(発行者:EUROPEAN DISPOSABLES AND NONWOVENS ASSOCIA
TION、発行年:2002年)表紙、第303頁〜第309頁
および第319頁〜第324頁
・甲第8号証:化学辞典(第1版、第1刷:1994年10月1日発行、第
6刷:2000年10月2日発行、編集:大木道則・大沢利
昭・田中元治・千原秀昭、発行者:小澤美奈子、発行株式会
社東京化学同人)表紙、第198頁、および奥付
・甲第9号証:粉体機器・装置ハンドブック(1995年5月30日初版1
刷発行、編者:粉体機器・装置ハンドブック編集委員会、発
行者:藤吉敏生、発行所:日刊工業新聞社)表紙、第165
頁、および奥付
・甲第10号証:粉体のフルイ分け(昭和40年8月20日初版発行、著者
:三輪茂雄、発行者:増田顕邦、発行所:日刊工業新聞社)
表紙、第287頁、および奥付
・甲第11号証:増補・篩分編(昭和58年1月20日増補版発行、編集兼
発行人:三澤忠則、発行所:株式会社化学工業社)表紙、
第130頁、および奥付

なお、甲号証の記載はおおむね特許異議申立書の記載にしたがった。
以下、順に「甲1」のようにいう。

第5 取消理由通知に記載した取消理由について

請求項1ないし10に係る特許に対して、当審が令和 3年 5月28日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。(なお、特許異議申立理由のうち、申立理由1−1及び申立理由2のうち請求項1、3、4、6、8ないし10の部分、申立理由1−2、申立理由3−2、申立理由3−3、申立理由4−2はいずれも取消理由に包含される。)

取消理由1−1(新規性) 本件特許の請求項1、3、4、6及び8〜10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

取消理由1−2(新規性) 本件特許の請求項1、3、5及び8〜10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

取消理由2−1(進歩性) 本件特許の請求項1、3、4、6及び8〜10に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

取消理由2−2(進歩性) 本件特許の請求項1、3、5及び8〜10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

取消理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1〜4及び6〜10についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

なお、取消理由3の具体的理由は次のとおりである。

(1) 多価金属塩の添加方法について

本件特許発明1には、「炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて表面処理する」と特定されているが、「多価金属塩(d)」をどのように添加するかについては何ら特定されていない。
この点について、明細書の発明の詳細な説明の実施例には、多価金属塩(d)として「硫酸ナトリウムアルミニウム12水和物」を混合した「混合液」を用いた例は記載されているものの、多価金属塩(d)を粉体として用いることについては記載されていない。
樹脂粒子を表面処理するにあたり、多価金属塩(d)を「混合液」として用いるか「粉体」として用いるかにより、処理後の樹脂粒子表面の性状が異なることは当業者にとって明らかであり、得られる「水性液体吸収性樹脂粒子(P)」の性状である保水量、クロット率、動摩擦にも大きく影響することも明らかである。
してみれば、本件特許発明1の「水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法」のうち、多価金属塩(d)を「混合液」として用いる場合以外(例えば、粉体として表面処理に供する場合)については、当業者が本件特許発明の課題(段落【0004】)を解決すると認識できる程度に明細書に記載されているものとはいえない。
請求項1の記載を直接または間接的に引用する本件特許発明2ないし4及び6ないし10についても同様である。

(2) 無機粒子(f)を用いて樹脂粒子を表面処理する工程を有する点について

本件特許発明6は、「無機粒子(f)を用いて樹脂粒子を表面処理する工程を含む」と特定するものの、無機粒子(f)の材質や無機粒子(f)を用いて樹脂粒子を表面処理する工程が、工程中のどの順であるかは何ら特定されておらず、シリカを用いて樹脂粒子を表面処理する工程を、最後の工程としてなされるものを含むものであると解される。
最後の工程として、無機粒子(f)としてシリカを用いて樹脂粒子を表面処理する場合、得られる水性液体吸収性樹脂粒子(P)の最表面は、「無機粒子(f)」で覆われることになる。
この点について、本件特許明細書の段落【0002】には、「従来、樹脂粒子表面にシリカ粒子を添加することでクロット率低下を図っていたが、動摩擦が上昇するため、製造工程中に機械の詰まりが発生し、、生産効率が悪いという問題があった(特許文献1)。」と記載されていることから見て、最後の工程として、無機粒子(f)としてシリカを用いて樹脂粒子を表面処理する場合、本願特許明細書の段落【0002】に記載されているような問題が生じ、結果として、本願特許明細書の段落【0004】に記載の課題を解決しないものとなるものと考えられる。
してみれば、本件特許発明6の「水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法」のうち、最後の工程として、無機粒子(f)を用いて樹脂粒子を表面処理する場合については、当業者が本件特許発明の課題(段落【0004】)を解決すると認識できる程度に明細書に記載されているものとはいえない。
請求項6の記載を直接または間接的に引用する本件特許発明8ないし10についても同様である。

取消理由4(明確性要件) 本件特許の請求項1〜10についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

なお、取消理由4の具体的理由は次のとおりである。

・「クロット率」について
本件特許発明1では、「クロット率」についての特定がある。
クロット率について、本件特許の明細書の段落【0083】には、
「<クロット率(%)>
吸水性樹脂のうち、目開き4.0mm、直径8cmの金属ふるいを5回タッピングしてパスする粒子を測定試料とした。この測定試料10gを、直径5cm、高さ7cmのPP(ポリプロピレン)製ディスポカップに均一になるように入れて、70±1℃、90±5%RHの恒温恒湿槽内で1.5時間静置した。1.5時間後、測定試料の重量(TW)を
計測してから、4.0mmの金属ふるいで5回タッピングして、金属フルイに残った測定試料の重量(OW)を計測し、次式からクロット率(%)を算出した。
(クロット率(%))=(OW)×100/(TW)」
と記載されている。
ここで、金属ふるいをタッピングする際に、どのような条件で行うかにより、試料が金属ふるいを通過するか残るか影響があると考えられるところ、本件特許の明細書には、タッピングの際の強度や方向などの条件が明らかではないし、また、クロット率を算出する際のタッピング条件が当該技術分野においてよく知られたものであるということもできない。
してみれば、本件特許発明1で特定する「クロット率」とは、その具体的な算出条件が明らかではないため、結果として、本件特許発明1の発明特定事項は明確ではない。
請求項1の記載を直接または間接的に引用する本件特許発明2ないし10についても同様である。

第6 当審の判断

1 取消理由について

(1) 取消理由1−1(甲1を根拠とする新規性)及び取消理由2−1(甲1を主引用例とする進歩性)について

ア 甲1の記載事項

甲1には次の記載がある。(なお、下線は合議体が付したものである。以下、他の証拠についても同様。)

「技術分野
[0001] 本発明はポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末を用いる吸水剤及びその製造方法に関する。更に詳しくは、残存原料(特に表面架橋剤及びその副生物)の少ない、かつ、吸湿時の耐ブロッキング性に優れた高物性のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末(吸水剤)、及び、その安定的な連続製造方法に関する。」

「[0010] したがって本発明の目的は、残存エポキシ化合物(特にグリシジル系架橋剤)を低減し、吸水性樹脂含有量の多い薄型の衛生材料・吸収性物品に用いられるのに適した吸水剤であって、吸水倍率、加圧下吸水倍率などの物性に優れた安全性の高い吸水剤を提供することにあり、かつ、その製造方法に関するものである。」

「発明の効果
[0014] 本発明に係るポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法によると、高生産性で、残存エポキシ化合物の少ない吸水性樹脂(粒子状吸水剤)を安定的に製造することができる。更に以下の(1)〜(3)の効果も奏する。
[0015] (1)吸水性樹脂粉末に対する残存エポキシ化合物量を0〜5ppmの範囲まで低減することができる。
[0016] (2)吸収倍率(CRC)や加圧下吸収倍率(AAP)のバランスに優れる吸水性樹脂(粒子状吸水剤)を安定的に提供できる。
[0017] (3)さらに、無機粉末、及び/又は、多価金属表面架橋剤を添加することで、吸湿時の流動性に優れる吸水性樹脂(粒子状吸水剤)を安定的に提供できる。」

「[0073] (2−5)任意に粉砕・分級工程
本工程は、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体を、粉砕及び/又は分級して、好ましくは特定粒度の吸水性樹脂粉末を得る工程である。尚、上記(2−3)ゲル粉砕工程とは、粉砕対象物が乾燥工程を経ている点で異なる。また、粉砕工程後の吸水性樹脂粉末を粉砕物と称することもある。なお、逆相重合、噴霧重合・液滴重合などを用いて、上記重合や乾燥にて目的粒度に制御できれば、粉砕・分級工程は必要なく任意工程であるが、好ましくは分級工程が行われ、必要に応じて、(2−5−1粒度)に記載の物性に調整するために粉砕工程を行うことがある。
[0074] (2−5−1粒度)
表面架橋前の吸水性樹脂粉末の重量平均粒子径(D50)は、吸水速度や通液性、加圧下吸水倍率等の観点から、200〜600μmが好ましく、200〜550μmがより好ましく、250〜500μmが更に好ましく、350〜450μmが特に好ましい。
[0075] ここで、表面架橋前の吸水性樹脂粉末は、150μm以上850μm未満の粒子の含有量(粒子含有量)が95重量%以上(上限:100重量%)である。ここで、上記粒子含有量が95重量%未満であると、表面架橋後の粒子状吸水剤は、エポキシ化合物(特にグリシジル系架橋剤)の残存量が多く、吸収倍率(CRC)と加圧下吸収倍率(AAP)とのバランスに劣る。好ましくは、表面架橋前の吸水性樹脂粉末は、150μm以上850μm未満の粒子の含有量(粒子含有量)が、70〜100重量%であり、80〜100重量%、90〜100重量%、95〜100重量%であることがより好ましい。
[0076] また、標準篩分級で規定される粒子径150μm未満の微粒子は少ない程よく、通液性等の観点から、0〜5重量%が好ましく、0〜3重量%がより好ましく、0〜1重量%が更に好ましい。
[0077] 更に、標準篩分級で規定される粒子径850μm以上、好ましくは710μm以上の粗大粒子も少ない程よく、吸水速度等の観点から、0〜5重量%が好ましく、0〜3重量%がより好ましく、0〜1重量%が更に好ましい。またさらに好ましくは、710μm非通過物が0〜5重量%、0〜3重量%がより好ましく、0〜1重量%がさらにより好ましい。
[0078] また、粒子径が好ましくは150μm以上850μm未満、より好ましくは150μm以上710μm未満の割合が、吸水速度や通液性、加圧下吸水倍率等の面から、95重量%以上が好ましく、98重量%以上がより好ましく、99重量%以上が更に好ましい(上限は100重量%)。
[0079] また、150μm以上600μm未満の粒子の割合(標準ふるい分級で規定)が80重量%以上が好ましく、さらには85重量%以上、90重量%以上、92重量%以上である(上限は100重量%)。更に、500〜150μmの粒子の割合(標準ふるい分級で規定)は、60重量%以上が好ましく、65重量%以上がより好ましく、67重量%以上が更に好ましく、80重量%以上が特に好ましい(上限は100重量%)。
[0080] また、かかる粒度制御は必要により重合時の粒子径制御に加えて、粉砕工程、分級工程、分級後の調合工程(所定粒度分布への粒子混合)、その他必要により、造粒工程(複数の粒子を結着させて大きな粒子を得る工程)、微粉リサイクル工程(分級後の微粉、例えば150μm通過物を分級工程以前の工程、例えば、重合工程や乾燥工程で再使用する工程)を経て表面架橋前に粒度が制御される。かかる粒度範囲から外れると、本発明の吸水剤が得られにくく、残存グリシジル系架橋剤も増加するため、本発明の製造方法では好ましくは、表面架橋前の第1分級工程を含み、さらに好ましくは、及び表面架橋後の第2分級工程を含む。
[0081] 尚、上記粒子径は表面架橋前の吸水性樹脂粉末のみならず、後記(3)で説明する最終の吸水剤にもそのまま適用される。
[0082] また、本発明に用いられる吸水性樹脂粉末の形状としては、球状やその凝集物、不定形破砕状が好ましく、吸水速度の観点から、不定形破砕状又はその造粒物がより好ましい。」

「[0133] (2−7−8水不溶性無機微粒子)
グリシジル系架橋剤の混合と同時又は別途、水不溶性無機微粒子をさらに併用してもよい。すなわち、本発明に係る吸水剤は、水不溶性無機微粒子を含むことが好ましい。ここで、水不溶性無機微粒子を、グリシジル系架橋剤の混合工程と同時又は別の工程で添加することが可能である。より具体的には、水不溶性無機微粒子はグリシジル系架橋剤及び/又は水溶液中に予め分散させていてもよいし、架橋剤を混合する前の吸水性樹脂粉末に予め混合していてもよいし、架橋剤と水不溶性無機微粒子とを同時に混合してもよいし、表面架橋後の吸水性樹脂(粒子状吸水剤)にさらに水不溶性無機微粒子を混合してもよい。特に好ましくは、水不溶性無機微粒子を、表面架橋後の吸水性樹脂(粒子状吸水剤)にさらに混合する。」

「[0156] (2−7−18吸水性樹脂粉末の加熱)
表面架橋剤を混合後の吸水性樹脂粉末は、加熱処理されることにより反応(表面架橋反応)し、必要によりその後、冷却処理される。
[0157] 本発明では、グリシジル系架橋剤及び常温で固体の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)ならびに必要であれば第3の架橋剤および/または第4の架橋剤を含む水溶液を吸水性樹脂粉末に添加したのち加熱処理する。さらには、グリシジル系架橋剤、及び常温で固体の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)ならびに必要であれば第3の架橋剤および/または第4の架橋剤がそれぞれ別々の水溶液、又は、混合水溶液として吸水性樹脂粉末に添加したのち、加熱処理する。
[0158] 前記加熱温度は、好ましくは70〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃であり、更に好ましくは150〜250℃、さらには170〜230℃であり、該温度における加熱時間は、好ましくは1分〜2時間、5分〜1時間の範囲である。
[0159] 表面架橋剤後の冷却温度は表面架橋温度未満、特に10℃以上に冷却され、例えば、100℃以下、さらには30〜90℃、特に40〜80℃の範囲に冷却されるのが好ましい。
[0160] 上記粒度制御後の吸水性樹脂粉末に前記条件での表面架橋を施すことによって、後述の加圧下吸水倍率(AAP)が後述の範囲、好ましくは20[g/g]以上、更に好ましくは20〜35[g/g]の吸水剤を得ることが出来る。]

「[0192] (3−7)吸収体、吸収性物品
本発明の粒子状吸水剤は、吸水を目的とした用途に用いられ、特にシート状、テープ状の加工した用途に使用される。シート状、テープ状の加工した本発明の吸水剤は、止水ゴム、止水テープ、キッチンシート、ペットシート、止血シート、その他、紙オムツ、ナプキン等の吸収物品(最終消費財)に使用できる。また、本発明の吸水剤は、耐衝撃性や吸湿流動性に優れるため、吸収体や吸収性物品に使用する際、吸収性物品の製造工程でのトラブル減少や作業環境の改善が望めると共に、ダメージによる吸水性能の低下が抑えられ、粒子状吸水剤本来の性能を吸収性物品等で十分に発揮することができる。」

「[0224] [製造例1]
中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム水溶液5500g(単量体濃度35重量%)に、トリメチロールプロパントリアクリレート(分子量296)0.38g(0.006モル%対単量体)を溶解し、単量体水溶液(a)とした後、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。
[0225] 次に、内容積10Lのシグマ型羽根を2本有する双腕型のジャケット付きステンレス製ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記単量体水溶液(a)を投入し、液温を30℃に保ちながら反応器内に窒素ガスを吹き込み、系内の溶存酸素が1ppm以下となるように窒素置換した。
[0226] 続いて、10重量%の過硫酸ナトリウム水溶液24.6g及び0.2重量%のL−アスコルビン酸水溶液21.8gをそれぞれ別個に、上記単量体水溶液(a)を攪拌させながら添加したところ、約1分後に重合が開始した。そして、生成した含水ゲル状架橋重合体(a)を解砕しながら30〜90℃で重合し、重合開始から60分経過後に含水ゲル状架橋重合体(a)を反応器から取り出した。尚、得られた含水ゲル状架橋重合体(a)は、その径が5mm程度に細粒化されていた。
[0227] 上記細粒化された含水ゲル状架橋重合体(a)を、目開き300μm(50メッシュ)の金網上に広げ180℃で45分間熱風乾燥して、乾燥物を得た。なお、この乾燥物の含水率は、3.7重量%であった。次に、この乾燥物をロールミルで粉砕し、更に目開きが850μmと150μmのJIS標準篩で分級した。この一連の操作により、吸水性樹脂粉末(a)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(a)中の粒子径150μm以上850μm未満の粒子含有量は、97.3重量%であった。また、得られた吸水性樹脂粉末(a)の重量平均粒子径(D50)は、386μmであった。尚、吸水性樹脂粉末(a)のCRC(無加圧下吸水倍率)は53.0[g/g]、AAPは9.8〔g/g〕であった。
[0228] [製造例2]
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸291g、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(分子量 523)0.43g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対し0.02モル%)、および1.0重量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.80g、IRGACURE(登録商標)184の1.0重量%アクリル酸溶液3.60gを混合した溶液(A)と、48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液247gと50℃に調温したイオン交換水255gを混合した溶液(B)を作成した。長さ5cmのマグネチックスターラーを用い800r.p.m.で攪拌した溶液(A)に、溶液(B)をすばやく加え混合することで単量体水溶液(C)を得た。単量体水溶液(C)は、中和熱と溶解熱により、液温が約100℃まで上昇した。なお、アクリル酸の中和率は、73.5モル%であった。
[0229] 次に、単量体水溶液(C)に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液1.8gを加え、約1秒間攪拌した後すぐに、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けたステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。また、ステンレス製バット型容器に単量体水溶液を注ぎ込むと同時に紫外線を照射した。
[0230] 単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合が開始し、重合は約1分以内にピーク温度となった。3分後、紫外線の照射を停止し、含水重合物を取り出した。なお、これら一連の操作は大気中に開放された系で行った。
[0231] 得られた含水重合物を、ミート・チョッパー(MEAT−CHOPPER TYPE:12VR−400KSOX 飯塚工業株式会社、ダイ孔径:6.4mm、孔数:38、ダイ厚み8mm)により粉砕し、細分化された粉砕含水重合物粒子を得た。尚、得られた粉砕含水重合物粒子は2mm以下に細粒化(細分化)されていた。
[0232] この細分化された粉砕含水重合物粒子を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、180℃で45分間熱風乾燥を行い、乾燥物を得た。なお、この乾燥物の含水率は、3.8重量%であった。次に、この乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmと目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂(固形分96重量%)である吸水性樹脂粉末(b)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(b)中の粒子径150μm以上850μm未満の粒子含有量は、97.1重量%であった。また、得られた吸水性樹脂粉末(b)の重量平均粒子径(D50)は、435μmであった。尚、吸水性樹脂粉末(b)のCRC(無加圧下吸水倍率)は47.3[g/g]、AAPは9.8〔g/g〕であった。」

「[0236] [実施例2]
製造例2記載の吸水性樹脂粉末(b)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、予め45℃に加熱して溶融させたエチレンカーボネート0.3重量部、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)(融点−59℃)0.5重量部、水3.0重量部からなる表面処理剤(3成分)を均一に混合して、架橋剤水溶液を調製し、当該架橋剤水溶液を調製してから約10秒で吸水性樹脂粉末に混合し、175℃で40分間加熱処理した。なお、混合時の(加熱処理前の)表面架橋剤水溶液の温度は、45℃であった。その後、目開きが850μmのJIS標準篩を通過させることで吸水性樹脂粉末(b−2)を得た。吸水性樹脂粉末(b−2)100重量部に日本アエロジル社製のヒュームドシリカAEROSIL200(BET比表面積=200±25m2/g、一次平均粒子径=約12nm)を0.3重量部加え均一に混合することで吸水性樹脂粉末(2)を得た。吸水性樹脂粉末(2)の諸物性を表1に示す。
[0237] [実施例3]
実施例2記載の吸水性樹脂粉末(b−2)100重量部に、第4の架橋剤(多価金属カチオン;無機イオン性架橋剤)として50重量%硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム分として8重量%)を1.0重量部加え均一に混合することで吸水性樹脂粉末(3)を得た。吸水性樹脂粉末(3)の諸物性を表1に示す。」

「[0247]
[表1]



「[請求項1] ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末をグリシジル系架橋剤で表面架橋されてなる粒子状吸水剤の製造方法において、吸水性樹脂粉末中の粒子径150μm以上850μm未満の粒子含有量を95重量%以上とし、かつ常温で固体(融点25℃以上)の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)を併用する製造方法。
[請求項2] 常温で液体(融点25℃未満)の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)をさらに併用する、請求項1に記載の製造方法。
[請求項3] 常温で固体の無機カチオン性表面架橋剤として多価金属カチオンを、グリシジル系架橋剤の混合工程と同時又は別の工程で添加する、請求項1又は2に記載の製造方法。
[請求項4] 水不溶性無機微粒子を、グリシジル系架橋剤の混合工程と同時又は別の工程で添加する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項5] 常温で固体(融点25℃以上)の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)が溶融状態で貯蔵又は混合されてなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項6] 吸水性樹脂粉末100重量部に対して、グリシジル系架橋剤が0.001〜10重量部、常温で固体の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)0.001〜10重量部、常温で液体の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)0〜10重量部、常温で固体の無機カチオン性表面架橋剤0〜3重量部(多価金属カチオン量で規定)、水不溶性無機微粒子0〜3重量部で添加される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項7] グリシジル系架橋剤及び常温で固体の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)をそれぞれの水溶液として、又は、両架橋剤を含む水溶液として吸水性樹脂粉末に添加したのち、加熱処理する請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項8] グリシジル系架橋剤及び常温で固体の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)を含む水溶液を吸水性樹脂粉末に添加したのち、加熱処理する請求項7に記載の製造方法。
[請求項9] 吸水性樹脂粉末及び前記グリシジル系架橋剤および常温で固体(融点25℃以上)の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)の少なくとも一方を含む架橋剤水溶液が混合前に予め加熱されてなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項10] グリシジル系架橋剤及び常温で固体の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)の水溶液が連続的に調製され、該水溶液調製後180秒以内に吸水性樹脂粉末に混合される請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項11] グリシジル系架橋剤および常温で固体(融点25℃以上)の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)の少なくとも一方を含む架橋剤水溶液中の架橋剤の混合比がコリオリ式質量流量計で制御されてなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項12] 常温を超えて固体(融点25℃以上)の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)が環状炭酸エステル及び環状炭酸アミドから選ばれる請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項13] 環状炭酸エステル及び環状炭酸アミドがアルキレンカーボネート及びオキサゾリジノン化合物からばれる請求項12に記載の製造方法。
[請求項14] 常温で液体の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)が多価アルコール及びアミノアルコールから選ばれる請求項2に記載の製造方法。
[請求項15] 常温で液体(融点25℃未満)の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)の炭素数が3〜6のジオールである、請求項2に記載の製造方法。
[請求項16] 無機カチオン性表面架橋剤が3価又は4価カチオンの無機酸塩又は有機酸塩である、請求項3に記載の製造方法。
[請求項17] 吸水剤が標準ふるいでの150μm通過物が5重量%以下、及び/又は、710μm非通過物が5重量%以下で、600〜150μmの粒子の割合(標準ふるい分級で規定)が80重量%以上である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項18] ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末をグリシジル系架橋剤で表面架橋した吸水剤であって、粒子径150μm以上850μm未満を95重量%以上で残存グリシジル系架橋剤が5ppm以下、吸湿ブロッキング率が20重量%以下である粒子状吸水剤。
[請求項19] 多価アルコールを0.1〜1重量%含む請求項18に記載の吸水剤。
[請求項20] 無加圧下吸水倍率(CRC)が25g/g以上、加圧下吸水倍率(AAP0.3psi)が20g/g以上である、請求項18又は19に記載の吸水剤。
[請求項21] 水不溶性無機微粒子を含む、請求項18〜20のいずれか1項に記載の吸水剤。
[請求項22] 多価金属カチオンを含む、請求項18〜21のいずれか1項に記載の吸水剤。
[請求項23] 標準ふるいでの150μm通過物が5重量%以下、及び/又は、710μm非通過物が5重量%以下で、600〜150μmの粒子の割合(標準ふるい分級で規定)が80重量%以上である、請求項18〜22のいずれか1項に記載の吸水剤。
[請求項24] 請求項18〜23のいずれか1項に記載の吸水剤を含む、衛生材料。」

イ 甲1に記載された発明

上記アの記載、特に実施例3の記載を中心に整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸291g、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(分子量 523)0.43g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対し0.02モル%)、および1.0重量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.80g、IRGACURE(登録商標)184の1.0重量%アクリル酸溶液3.60gを混合した溶液(A)と、48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液247gと50℃に調温したイオン交換水255gを混合した溶液(B)を作成し、長さ5cmのマグネチックスターラーを用い800r.p.m.で攪拌した溶液(A)に、溶液(B)をすばやく加え混合することで単量体水溶液(C)を得、次に、単量体水溶液(C)に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液1.8gを加え、約1秒間攪拌した後すぐに、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けたステンレス製バット型容器中に開放系で注ぎ込むと同時に紫外線を照射し、得られた含水重合物を、ミート・チョッパー(MEAT−CHOPPER TYPE:12VR−400KSOX 飯塚工業株式会社、ダイ孔径:6.4mm、孔数:38、ダイ厚み8mm)により粉砕し、細分化された粉砕含水重合物粒子を得、この細分化された粉砕含水重合物粒子を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、180℃で45分間熱風乾燥を行い、乾燥物を得、この乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmと目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、得られた不定形破砕状の吸水性樹脂(固形分96重量%)である吸水性樹脂粉末(b)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、予め45℃に加熱して溶融させたエチレンカーボネート0.3重量部、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)(融点−59℃)0.5重量部、水3.0重量部からなる表面処理剤(3成分)を均一に混合して、架橋剤水溶液を調製し、当該架橋剤水溶液を調製してから約10秒で吸水性樹脂粉末に混合し、175℃で40分間加熱処理し、その後、目開きが850μmのJIS標準篩を通過させることで吸水性樹脂粉末(b−2)を得、該吸水性樹脂粉末(b−2)100重量部に日本アエロジル社製のヒュームドシリカAEROSIL200(BET比表面積=200±25m2/g、一次平均粒子径=約12nm)を0.3重量部加え均一に混合することで吸水性樹脂粉末(2)を得、該吸水性樹脂粉末(b−2)100重量部に、第4の架橋剤(多価金属カチオン;無機イオン性架橋剤)として50重量%硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム分として8重量%)を1.0重量部加え均一に混合することで得られる吸水性樹脂粉末(3)の製造方法。」

ウ 対比・判断

(ア) 本件特許発明1について

甲1発明の「アクリル酸」、「内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート」を原料とする「吸水性樹脂粉末(b)」は、本件特許発明1の「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子(B)」に相当する。
また、甲1発明の「エチレングリコールジグリシジルエーテル」、「1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)」、「硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム分として8重量%)」を「吸水性樹脂粉末(b)」と混合する処理は、本件特許発明1の「樹脂粒子(B)を、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて表面処理」する工程に相当する。
そして、甲1発明の「1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)」は、吸水性樹脂粉末(b)100重量部に対して0.5重量部用いられるから、本件特許発明1の「炭素数4以下の多価アルコール(c)が樹脂粒子(B)の重量に基づいて0.1〜1.0重量%」との特定事項を満たすことも明らかである。
すると、両者は、
「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子(B)を、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて表面処理する際に、前記表面処理で用いる炭素数4以下の多価アルコール(c)が樹脂粒子(B)の重量に基づいて0.1〜1.0重量%である表面処理工程を含む、水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法に関し、本件特許発明1は、「炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて表面処理する際に、前記多価金属塩(d)を添加した後、多価金属塩(d)の融点温度以上」にすることが特定されるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。

(相違点2)
水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法に関し、本件特許発明1は、表面処理が、方法[I]〜[III]のいずれかで行われることが特定されるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。

(相違点3)
水性液体吸収性樹脂粒子について、本件特許発明1は、
「(1)保水量が42〜50(g/g)、
(2)クロット率が0〜30%、
(3)動摩擦が1000〜4000mJ」
との要件を満たすものであるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。

以下相違点について検討する。
(相違点1について)
甲1発明は、「多価金属塩(d)」にあたる「硫酸アルミニウム」について、その融点温度以上の温度で加熱する点については何ら特定されておらず、また甲第1号証にもそのような記載もない。また、甲1発明では、硫酸アルミニウムを含む溶液で吸水性樹脂粒子を処理した後、180℃で45分間熱風乾燥するものであるが、硫酸アルミニウムの融点は、おおむね770℃であるから、「融点温度以上」での熱処理にはあたらない。
よって、相違点1は実質的な相違点である。
してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明ではない。

また、甲第1号証の記載を見ても、甲1発明における熱処理は乾燥を目的とするものであることからみて、硫酸アルミニウムの融点を超える温度で熱処理をする動機付けがあるともいえない。
よって、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
そうすると、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明に基づいて当業者が容易になし得たものでもない。

なお、特許異議申立人は、令和 3年10月 1日提出の意見書において、「多価金属塩(d)の融点温度以上」に加熱する点について、本件特許明細書の段落【0048】の記載を挙げつつ、「訂正発明1は、方法[I]〜方法[III]のいずれの場合であっても多価金属塩(d)を水溶液で添加することで限定されている」ものであり、「融点は多価金属塩(d)単体の性質であるので、ポリマー中に分散した多価金属塩(d)において融点は意味をなさない」旨主張する。
しかし、本件特許明細書の段落【0048】には、「方法[I]により表面処理した後、加熱処理を行う。加熱処理は、多価金属塩(d)の融点以上に加熱することが好ましい。融点以上に加熱することで樹脂粒子状面に多価金属塩(d)が融着し、クロット率を低下することが期待できる。」と記載され、さらに、段落【0051】には、「方法[II]及び[III]により表面処理した後、加熱処理を行う。その際の加熱温度及び加熱時間は上記方法[I]の表面処理後の加熱処理における加熱温度及び加熱時間と同様である。」と記載されている。
これらの記載からみるに、本件特許発明1における「多価金属塩(d)の融点温度以上」に加熱することは、方法[I]〜[III]のいずれかにより表面処理が行われた後になされる加熱であることは明らかであるから、特許異議申立人の上記主張は失当であり、採用できない。

したがって、本件特許発明1は甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(イ) 本件特許発明3、4及び8ないし10について

本件特許発明3、4及び8ないし10は、請求項1を直接又は間接的に引用する発明であり、本件特許発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1は、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明1の特定事項を全て含む発明である本件特許発明3、4及び8ないし10もまた、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2) 取消理由1−2(甲2を根拠とする新規性)及び取消理由2−2(甲2を主引用例とする進歩性)について

ア 甲2に記載された事項

甲2には次の記載がある。

「技術分野
[0001] 本発明は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法に関する。詳しくは、表面架橋処理時の反応条件を制御することによって、耐ダメージ性に優れ、かつ高性能な吸水性樹脂を安定的に連続生産することができる、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法に関する。」

「[0013] つまり、本発明の課題は、耐ダメージ性に優れる吸水性樹脂を、高生産性で、かつ低コストで安定的に製造する方法を提供することである。」

「[0028] (1−3)「EDANA」及び「ERT」
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and NonwovensAssociations)の略称であり、「ERT」は、欧州標準(ほぼ世界標準)の吸水性樹脂の測定法(EDANARecommendedTestMethods)の略称である。
[0029] 本発明では、特に断りのない限り、ERT原本(2002年改定/公知文献)に準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
[0030] (1−3−1)「CRC」(ERT441.2−02)
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、無加圧下吸水倍率(「吸水倍率」と称することもある)を意味する。
[0031] 具体的には、不織布中の吸水性樹脂0.2gを大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液で30分間自由膨潤させた後、遠心分離機(250G)で水切りした後の吸水倍率(単位;g/g)である。」

「[0162] 〔4〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の用途
本発明のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、特に限定されないが、好ましくは、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パット等の吸収性物品に用いられる吸収体として、使用される。特に、原料由来の臭気や着色等が問題となっていた高濃度紙オムツに使用した場合、更には吸収性物品中の吸収体上層部に使用した場合に優れた性能が発揮される。」

「[0172]
・・・
[製造例1]
アクリル酸、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液、イオン交換水、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシド単位数;平均9)及びキレート剤としてエチレンジアミン5酢酸・3ナトリウムを含む単量体水溶液(a)を作成した。当該単量体水溶液(a)は、単量体濃度が43重量%、中和率が75モル%であった。また、上記内部架橋剤及びキレート剤の使用量は、単量体に対して、それぞれ0.02モル%、100ppmであった。
[0173] 次に、上記単量体水溶液(a)を加熱し、液温が95℃となった時点で、重合開始剤として過硫酸ナトリウムを単量体に対して0.05モル%を添加、混合した。次いで、連続ベルト式重合機に連続供給した。供給後、約30秒間経過後に重合が開始し、シート状の含水ゲル状架橋重合体(a)を得た。
[0174] 上記操作で得られたシート状の含水ゲル状架橋重合体(a)は、ミートチョッパーを用いてゲル粉砕し、粒子状の含水ゲル状架橋重合体(a)とした。その後、バンド乾燥機の多孔板上に薄く広げて載せ、180℃で40分間、熱風乾燥して、ブロック状の乾燥重合体(a)を得た。次いで、当該乾燥重合体(a)を連続的にロールミルに供給して粉砕し、その後、目開き850μm及び150μmのJIS標準篩を有する篩い分け装置を用いて連続的に分級した。
[0175] 上記一連の操作により、粒子径が150μm以上、850μm未満である粒子の含有量が90重量%以上である吸水性樹脂粉末(A)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(A)は、受領平均粒子径(D50)が380μm、無加圧下吸水倍率(CRC)が51(g/g)、含水率が5.1重量%であった。
[0176] [実施例1]
上記製造例1で得られた吸水性樹脂粉末(A)を処理量50(kg/hr)で、高速攪拌型混合機(タービュライザー/ホソカワミクロン(株)製)に連続供給した。その後、予め作成しておいた表面架橋剤溶液(1)を当該混合機中に添加、混合し、湿潤された混合物(1)を得た。なお、当該表面架橋剤溶液(1)は、吸水性樹脂粉末(A)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.015重量部、プロピレングリコール1.0重量部及びイオン交換水3.0重量部を混合したものを用いた。
[0177] 上記操作で得られた混合物(1)を、雰囲気温度130℃、雰囲気露点80℃(相対湿度18%RH)に調温調湿したパドル式間接加熱反応機(パドルドライヤー/奈良機械製作所製)に連続供給し、表面架橋反応を行った。なお、当該パドルドライヤーの内壁面(パドル及びジャケット)は120℃の熱媒で加熱し、天板も0.2MPaの蒸気(約120℃)で保温した。当該表面架橋反応における加熱処理時間は42分間であり、パドルドライヤーから排出された直後の吸水性樹脂粒子(1)の温度は101℃であった。
[0178] 続いて、上記パドルドライヤーから排出された吸水性樹脂粒子(1)を、目開き850μmのJIS標準篩に通過させて整粒し、吸水性樹脂(1)とした。得られた吸水性樹脂(1)の含水率は7.9重量%であった。その他の物性は表1に示した。」

「[0199] [実施例6]
上記実施例1で得られた吸水性樹脂(1)に対して、更に硫酸アルミニウム水溶液を添加、混合し、その後、乾燥、整粒することで、吸水性樹脂(6)を得た。得られた吸水性樹脂(6)の含水率は8.0重量%であった。その他の物性は表1に示した。
[0200] なお、上記硫酸アルミニウム水溶液は、27重量%の硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)、60重量%の乳酸ナトリウム水溶液及び1,2−プロピレングリコールの混合比率(重量比)が1.0:0.3:0.025であり、また、吸水性樹脂(1)100重量部に対して2.5重量部を添加した。
[0201] また、上記乾燥は、無風状態で60℃、1時間で行い、上記整粒は目開き850μmのJIS標準篩を使用した。」

「[0228]
[表1]



「[請求項1] 表面架橋工程を含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、
上記表面架橋工程の反応工程において、用いられる反応装置の内壁面温度が100〜250℃であり、当該反応装置内部の雰囲気露点が60〜100℃であり、かつ、吸水性樹脂混合物を加熱処理して粉温を90〜130℃とすることを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法。
[請求項2] 上記反応装置内部の雰囲気温度が100〜150℃である、請求項1に記載の製造方法。
[請求項3] 上記表面架橋工程の反応工程において、粉相対湿度が15〜100%である、請求項1又は2に記載の製造方法。
[請求項4] 上記表面架橋工程の反応工程において、加熱処理時間が5〜60分間である、請求項1〜3の何れか1項に記載の製造方法。
[請求項5] 上記表面架橋工程において、エポキシ化合物、ハロエポキシ化合物、オキセタン化合物から選ばれる少なくとも1種を表面架橋剤として用いる、請求項1〜4の何れか1項に記載の製造方法。
[請求項6] 上記表面架橋剤が水溶液状態で吸水性樹脂粉末に添加され、当該水溶液の水含有量が吸水性樹脂粉末100重量部に対して1〜15重量部である、請求項5に記載の製造方法。
[請求項7] 上記表面架橋工程後に得られる吸水性樹脂の含水率が6〜15重量%である、請求項1〜6の何れか1項に記載の製造方法。」

イ 甲2に記載された発明

上記アの記載、特に実施例6の記載を中心に整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。

「アクリル酸、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液、イオン交換水、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシド単位数;平均9)及びキレート剤としてエチレンジアミン5酢酸・3ナトリウムを含む単量体水溶液(a)を作成し、次に、上記単量体水溶液(a)を加熱し、液温が95℃となった時点で、重合開始剤として過硫酸ナトリウムを単量体に対して0.05モル%を添加、混合し、次いで、連続ベルト式重合機に連続供給し、シート状の含水ゲル状架橋重合体(a)を得、
上記操作で得られたシート状の含水ゲル状架橋重合体(a)を、ミートチョッパーを用いてゲル粉砕し、粒子状の含水ゲル状架橋重合体(a)とし、その後、バンド乾燥機の多孔板上に薄く広げて載せ、180℃で40分間、熱風乾燥して、ブロック状の乾燥重合体(a)を得、次いで、当該乾燥重合体(a)を連続的にロールミルに供給して粉砕し、その後、目開き850μm及び150μmのJIS標準篩を有する篩い分け装置を用いて連続的に分級し、粒子径が150μm以上、850μm未満である粒子の含有量が90重量%以上である吸水性樹脂粉末(A)を得、
得られた吸水性樹脂粉末(A)を処理量50(kg/hr)で、高速攪拌型混合機(タービュライザー/ホソカワミクロン(株)製)に連続供給し、その後、吸水性樹脂粉末(A)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.015重量部、プロピレングリコール1.0重量部及びイオン交換水3.0重量部を混合し予め作成しておいた表面架橋剤溶液(1)を当該混合機中に添加、混合し、湿潤された混合物(1)を得、
上記操作で得られた混合物(1)を、雰囲気温度130℃、雰囲気露点80℃(相対湿度18%RH)に調温調湿したパドル式間接加熱反応機(パドルドライヤー/奈良機械製作所製)に連続供給し、表面架橋反応を行い、続いて、上記パドルドライヤーから排出された吸水性樹脂粒子(1)を、目開き850μmのJIS標準篩に通過させて整粒し、吸水性樹脂(1)とし、
得られた吸水性樹脂(1)に対して、更に硫酸アルミニウム水溶液を添加(27重量%の硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)、60重量%の乳酸ナトリウム水溶液及び1,2−プロピレングリコールの混合比率(重量比)が1.0:0.3:0.025であり、また、吸水性樹脂(1)100重量部に対して2.5重量部を添加)、混合し、その後、乾燥、整粒することで、得る吸水性樹脂(6)の製造方法。」

ウ 対比・判断

(ア) 本件特許発明1について

甲2発明の「アクリル酸」、「内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート」を原料とする「吸水性樹脂(6)」は、本件特許発明1の「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子(B)」に相当する。
また、甲2発明の「エチレングリコールジグリシジルエーテル」、「プロピレングリコール」、「硫酸アルミニウム水溶液」を「吸水性樹脂」と混合する処理は、本件特許発明1の「樹脂粒子(B)を、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて表面処理」する工程に相当する。
そして、甲2発明の「プロピレングリコール」は、吸水性樹脂粉末(A)100重量部に対して1.0重量部用いられるから、本件特許発明1の「炭素数4以下の多価アルコール(c)が樹脂粒子(B)の重量に基づいて0.1〜1.0重量%」との特定事項を満たすことも明らかである。
すると、両者は、
「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子(B)を、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて表面処理する際に、前記表面処理で用いる炭素数4以下の多価アルコール(c)が樹脂粒子(B)の重量に基づいて0.1〜1.0重量%である表面処理工程を含む、水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点4)
水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法に関し、本件特許発明1は、「炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて表面処理する際に、前記多価金属塩(d)を添加した後、多価金属塩(d)の融点温度以上」にすることが特定されるのに対し、甲2発明にはそのような特定がない点。

(相違点5)
水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法に関し、本件特許発明1は、表面処理が、方法[I]〜[III]のいずれかで行われることが特定されるのに対し、甲2発明にはそのような特定がない点。

(相違点6)
水性液体吸収性樹脂粒子について、本件特許発明1は、
「(1)保水量が42〜50(g/g)、
(2)クロット率が0〜30%、
(3)動摩擦が1000〜4000mJ」
との要件を満たすものであるのに対し、甲2発明にはそのような特定がない点。

以下相違点について検討する。
(相違点4について)
甲2発明は、「多価金属塩(d)」にあたる「硫酸アルミニウム」について、その融点温度以上の温度で加熱する点については何ら特定されておらず、また甲第2号証にもそのような記載がない。また、甲2発明では、硫酸アルミニウムを含む溶液で吸水性樹脂粉末を処理した後、乾燥するものであるが、硫酸アルミニウムの融点は、おおむね770℃であるから、「融点温度以上」での熱処理にはあたらないことも明らかである。
よって、相違点4は実質的な相違点である。
してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明ではない。

また、甲第2号証の記載を見ても、甲2発明において、硫酸アルミニウム水溶液を含む溶液で処理した後は乾燥を目的とする熱処理が示されているにすぎないから、硫酸アルミニウムの融点を超える温度で熱処理をする動機付けがあるともいえない。
よって、甲2発明において、相違点4に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
そうすると、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明に基づいて当業者が容易になし得たものでもない。

なお、特許異議申立人は、令和 3年10月 1日提出の意見書において、「多価金属塩(d)の融点温度以上」に加熱する点について、本件特許明細書の段落【0048】の記載を挙げつつ、「訂正発明1は、方法[I]〜方法[III]のいずれの場合であっても多価金属塩(d)を水溶液で添加することで限定されている」ものであり、「融点は多価金属塩(d)単体の性質であるので、ポリマー中に分散した多価金属塩(d)において融点は意味をなさない」旨主張するが、この点については、(1)ウ(ア)で検討したとおりである。

したがって、本件特許発明1は甲2発明ではなく、また、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(イ) 本件特許発明3及び8ないし10について

本件特許発明3及び8ないし10は、請求項1を直接又は間接的に引用する発明であり、本件特許発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1は、甲2発明ではなく、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明1の特定事項を全て含む発明である本件特許発明3及び8ないし10もまた、甲2発明ではなく、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3) 取消理由3(サポート要件)について

ア 多価金属塩の添加方法について

訂正により、本件特許発明1には、方法[I]〜[III]のいずれかにより表面処理することが特定され、その中で、「多価金属塩(d)」をどのように添加するかについて特定された。

イ 無機粒子(f)を用いて樹脂粒子を表面処理する工程を有する点について

訂正により、請求項6は削除された。

(4) 取消理由4(明確性要件)について

「クロット率」の測定については、本件特許の明細書の段落【0083】に、
「<クロット率(%)>
吸水性樹脂のうち、目開き4.0mm、直径8cmの金属ふるいを5回タッピングしてパスする粒子を測定試料とした。この測定試料10gを、直径5cm、高さ7cmのPP(ポリプロピレン)製ディスポカップに均一になるように入れて、70±1℃、90±5%RHの恒温恒湿槽内で1.5時間静置した。1.5時間後、測定試料の重量(TW)を
計測してから、4.0mmの金属ふるいで5回タッピングして、金属フルイに残った測定試料の重量(OW)を計測し、次式からクロット率(%)を算出した。
(クロット率(%))=(OW)×100/(TW)」
と記載されている。
ここで、金属ふるいをタッピングする際の条件が明示されてはいないが、金属ふるいをタッピングするのは、樹脂粒子のうち、重力により金属ふるいを通過することを補助するためのものであることに鑑みれば、ブロッキングした試料がほぐれるような力を加えるのではなく、あくまで、単に、金属ふるいを通過することができる樹脂粒子の金属ふるいの通過を補助する程度にとどまることは当業者であれば明らかである。
なお、この点について、特許異議申立人は令和 3年10月 1日提出の意見書において、「クロット率の測定におけるタッピングの強さについて、当業者の技術常識は存在しないことをあげ、タッピング条件が定まらないことによって、クロット率を一義的に決めることができない旨主張する。
しかしながら、上述のように、タッピングする目的が、あくまで、金属ふるいを通過することができる樹脂粒子の金属ふるいの通過を補助する程度(ブロッキングした試料がほぐれてしまうような力を加えるものではない)ことからすれば、タッピング条件(タッピングの際に加える力)は、当業者であれば試料に応じて自ずと同じ程度のものになると考えられるから、特許異議申立人の主張は採用しない。
したがって、「クロット率」の算出条件が不明確であるとまでいうことはできない。

2 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について

(1) 申立理由1−1及び申立理由2のうち、請求項2、5及び7に係る部分について

ア 請求項2及び5に係る部分について
訂正により請求項2及び5が削除されたため、申立理由1−1及び申立理由2のうち、請求項2及び5に係る部分については、理由がない。

イ 請求項7に係る部分について
本件特許発明7は、請求項1を引用する発明であり、本件特許発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記1(1)ウ(ア)とおり、本件特許発明1は、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明1の特定事項を全て含む発明である本件特許発明7は甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2) 申立理由3−1について

訂正により、請求項2は削除されたため、申立理由3−1は、理由がない。
なお、訂正により、訂正後の請求項1には、訂正前の請求項2の特定事項が含まれるが、本件発明は、要件(1)ないし(3)を満たすことにより、「高保水量の吸水性樹脂粒子であっても、動摩擦を適切範囲内に維持しながらクロット率の低下を達成することができ、高保水量とクロット率低減の両立が可能な、水性液体吸水性樹脂粒子の製造方法を提供する」(【0004】)との課題を達成するものであるから、多価金属塩(d)の特定に関わらず、本件発明は、本件課題を解決するものと認識できる。

(3) 申立理由3−2のうち、請求項5に係る部分について

訂正により、請求項5は削除されたため、申立理由3−2のうち請求項5に係る部分については、理由がない。
なお、訂正により、訂正後の請求項1には、訂正前の請求項5の特定事項が含まれるが、本件発明は、要件(1)ないし(3)を満たすことにより、「高保水量の吸水性樹脂粒子であっても、動摩擦を適切範囲内に維持しながらクロット率の低下を達成することができ、高保水量とクロット率低減の両立が可能な、水性液体吸水性樹脂粒子の製造方法を提供する」(【0004】)との課題を達成するものであるから、多価金属塩の添加方法に関わらず、本件発明は、本件課題を解決するものと認識できるし、そもそも、工程(I)ないし(III)として、添加方法が特定されているものともいえる。

(4) 申立理由4−1について
「実施例4」は「実施例」と記載されているものの、その条件から見て、本件特許においては「参考例」にあたるものであることは明らかである。

(5) 申立理由4−3について
訂正により、請求項5は削除されたため、申立理由3−3については、理由がない。
なお、訂正により、訂正後の請求項1には、訂正前の請求項2及び5の特定事項がともに含まれることで、多価金属塩の融点以上に加熱するものであることが明確となった。

第7 結語

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1、3、4及び7ないし10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、3、4及び7ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項2、5及び6に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項2、5及び6に係る特許異議の申立ては、いずれも、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子(B)を、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて表面処理する際に、前記表面処理で用いる炭素数4以下の多価アルコール(c)が樹脂粒子(B)の重量に基づいて0.1〜1.0重量%である表面処理工程を含む、
下記要件(1)〜(3)を満たす水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法であって、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて表面処理する際に、前記多価金属塩(d)を添加した後、多価金属塩(d)の融点温度以上にし、表面処理が、以下の方法[I]〜[III]:
方法[I]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有する混合液(W1)を用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法。
方法[II]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び水を含有し、多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W3)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、以下の(1)〜(3)の工程のいずれかを含む方法:
(1)混合液(W2)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行い又は加熱処理を行わずに、混合液(W3)で更に表面処理する工程;
(2)混合液(W3)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行い又は加熱処理を行わずに、混合液(W2)で更に表面処理する工程;
(3)混合液(W2)と混合液(W3)で同時に表面処理する工程。
方法[III]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、多価金属塩(d)及び水を含有し、炭素数4以下の多価アルコール(c)及び多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W4)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、以下の(4)〜(6)の工程のいずれかを含む方法:
(4)混合液(W2)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行わずに混合液(W4)で更に表面処理する工程;
(5)混合液(W4)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行い又は加熱処理を行わずに、混合液(W2)で更に表面処理する工程;
(6)混合液(W2)と混合液(W4)で同時に表面処理する工程、のいずれかで行われる、製造方法:
(1)保水量が42〜50(g/g)、
(2)クロット率が0〜30%、
(3)動摩擦が1000〜4000mJ。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
表面処理する際に用いる炭素数4以下の多価アルコール(c)と多価金属塩(d)の重量比(c)/(d)が0.1〜2.0である請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
表面処理する際に用いる多価アルコール(c)が、樹脂粒子(B)の重量に基づいて0.1〜0.8重量%である請求項1、3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】
方法[I]における混合液(W1)が無機粒子(f)を含有し、方法[II]における混合液(W2)及び/又は混合液(W3)が無機粒子(f)を含有し、方法[III]における混合液(W2)及び/又は混合液(W4)が無機粒子(f)を含有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
多価金属塩(d)がジルコニウム、アルミニウム又はチタニウムの無機酸塩である請求項1、3、4、7のいずれか記載の製造方法。
【請求項9】
エネルギー分散型X線分析法を用いた元素マッピングにより求められる粒子表面の多価金属塩(d)による被覆率が50〜100%である請求項1、3、4、7〜8のいずれか記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1、3、4、7〜9のいずれかの製造方法により製造される水性液体吸収性樹脂粒子(P)を用いる吸収性物品の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照
異議決定日 2021-11-11 
出願番号 P2016-175483
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08J)
P 1 651・ 536- YAA (C08J)
P 1 651・ 113- YAA (C08J)
P 1 651・ 121- YAA (C08J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 植前 充司
細井 龍史
登録日 2020-08-04 
登録番号 6744792
権利者 SDPグローバル株式会社
発明の名称 水性液体吸収性樹脂粒子の製造方法  
代理人 古谷 信也  
代理人 古谷 信也  
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