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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E04B
管理番号 1381670
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-03-01 
確定日 2021-11-26 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6748904号発明「上下開閉機構付き多機能ダブルスキンシステムの運転方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6748904号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3について訂正することを認める。 特許第6748904号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6748904号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成28年3月29日に出願され、令和2年8月13日にその特許権の設定登録がされ、同年9月2日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後の特許異議の申立ての経緯は以下のとおりである。

令和 3年 3月 1日 特許異議申立人岡林 茂(以下「申立人」
という。)による請求項1ないし3に係る
発明の特許に対する特許異議の申立て
同年 6月21日付け 取消理由通知
同年 8月 3日 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年 9月22日 意見書の提出(申立人)

第2 訂正の適否についての判断

1.訂正の内容
令和3年8月3日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。

特許請求の範囲の請求項3に
「建物の全階層又は複数階層にわたって設けられるダブルスキンカーテンウォールと、
前記ダブルスキンカーテンウォールによって形成され、空気を導入するための下部換気口を下方に、前記下部換気口から取り入れ、上方に流通した空気を外部に排気するための上部換気口を上方に備えるとともに、前記建物の全階層又は複数階層にわたって上下方向に延設されたダブルスキン換気路と、
前記上部換気口と前記下部換気口をそれぞれ開閉する上部ダンパー及び下部ダンパーとを備え、
夏期と冬期の間の中間期には、前記上部換気口が開状態、前記下部換気口が閉状態とされ、且つ前記上部換気口、及び室内と前記ダブルスキン換気路の間の壁に設けられた開口を通じて、建物の屋外又は日射を受けない別のダブルスキンカーテンウォールから室内、室内からダブルスキン換気路、ダブルスキン換気路から屋外に空気が流通されるように構成されていることを特徴とする上下開閉機構付き多機能ダブルスキンシステムの運転方法。」
とあるのを、
「建物の全階層又は複数階層にわたって設けられるダブルスキンカーテンウォールと、
前記ダブルスキンカーテンウォールによって形成され、空気を導入するための下部換気口を下方に、前記下部換気口から取り入れ、上方に流通した空気を外部に排気するための上部換気口を上方に備えるとともに、前記建物の全階層又は複数階層にわたって上下方向に延設されたダブルスキン換気路と、
前記上部換気口と前記下部換気口をそれぞれ開閉する上部ダンパー及び下部ダンパーとを備え、
夏期と冬期の間の中間期には、前記上部換気口が開状態、前記下部換気口が閉状態とされ、且つ前記上部換気口、及び室内と前記ダブルスキン換気路の間の壁に設けられた開口を通じて、日射を受けない別のダブルスキンカーテンウォールから室内、室内からダブルスキン換気路、ダブルスキン換気路から屋外に空気が流通されるように構成されていることを特徴とする上下開閉機構付き多機能ダブルスキンシステムの運転方法。」
に訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正の目的について
本件訂正は、「上下開閉機構付き多機能ダブルスキンシステム」における空気の流通に関する発明特定事項のうち、訂正前の「建物の屋外又は日射を受けない別のダブルスキンカーテンウォール」という二者択一の選択肢から、「建物の屋外」という選択肢を削除して「日射を受けない別のダブルスキンカーテンウォール」という選択肢のみに限定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件訂正は、上記「(1)」のとおり、選択肢の一部を削除するものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)小括
以上のとおり、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件特許発明

上記「第2」のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明3」といい、これらを合わせて「本件特許発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

【請求項1】
建物の全階層又は複数階層にわたって設けられるダブルスキンカーテンウォールと、
前記ダブルスキンカーテンウォールによって形成され、空気を導入するための下部換気口を下方に、前記下部換気口から取り入れ、上方に流通した空気を外部に排気するための上部換気口を上方に備えるとともに、前記建物の全階層又は複数階層にわたって上下方向に延設されたダブルスキン換気路と、
前記上部換気口と前記下部換気口をそれぞれ開閉する上部ダンパー及び下部ダンパーとを備え、
夏期には、前記上部換気口と前記下部換気口が開状態とされるとともに建物の室内の空気が前記ダブルスキン換気路に排気され、
夏期と冬期の間の中間期には、前記上部換気口が開状態、前記下部換気口が閉状態とされ、且つ前記上部換気口、及び室内と前記ダブルスキン換気路の間の壁に設けられた開口を通じて、建物の屋外又は日射を受けない別のダブルスキンカーテンウォールから室内、室内からダブルスキン換気路、ダブルスキン換気路から屋外に空気が流通され、
冬期には、日射量が少ないときに前記上部換気口と前記下部換気口が閉状態とされ、日射量が多いときに前記上部換気口が開かれ、前記下部換気口が閉じられ、前記ダブルスキン換気路内の暖かい空気が空調機あるいは外調機に取り入れられて暖房用エネルギーとして利用するように構成されていることを特徴とする上下開閉機構付き多機能ダブルスキンシステムの運転方法。
【請求項2】
請求項1に記載の上下開閉機構付き多機能ダブルスキンシステムの運転方法において、
建物の一方に日射が当たるときに他方に日射が当たらないような建物の一方位側と該一方位側の反対の他方位側とにそれぞれ、前記ダブルスキン換気路を建物内と連通させるように前記ダブルスキンカーテンウォールが設けられ、
日射取得の多い一方のダブルスキンカーテンウォールと、日射取得の少ない他方のダブルスキンカーテンウォールと、を備え、
前記一方のダブルスキンカーテンウォールの上部換気口を開状態、下部換気口を閉状態とし、
前記他方のダブルスキンカーテンウォールの上部換気口を閉状態、下部換気口を開状態となるように構成され、
建物内の自然換気を促進するように構成されていることを特徴とする上下開閉機構付き多機能ダブルスキンシステムの運転方法。
【請求項3】
建物の全階層又は複数階層にわたって設けられるダブルスキンカーテンウォールと、
前記ダブルスキンカーテンウォールによって形成され、空気を導入するための下部換気口を下方に、前記下部換気口から取り入れ、上方に流通した空気を外部に排気するための上部換気口を上方に備えるとともに、前記建物の全階層又は複数階層にわたって上下方向に延設されたダブルスキン換気路と、
前記上部換気口と前記下部換気口をそれぞれ開閉する上部ダンパー及び下部ダンパーとを備え、
夏期と冬期の間の中間期には、前記上部換気口が開状態、前記下部換気口が閉状態とされ、且つ前記上部換気口、及び室内と前記ダブルスキン換気路の間の壁に設けられた開口を通じて、日射を受けない別のダブルスキンカーテンウォールから室内、室内からダブルスキン換気路、ダブルスキン換気路から屋外に空気が流通されるように構成されていることを特徴とする上下開閉機構付き多機能ダブルスキンシステムの運転方法。

第4 特許異議申立理由及び取消理由通知で通知した取消理由の概要
1.特許異議申立理由の概要
申立人は、本件訂正前の本件特許の請求項1ないし3に係る発明に対して、証拠として下記甲第1号証ないし甲第4号証を提出し、次の特許異議申立理由を申し立てている。

(1)(明確性)本件特許の発明にかかる特許請求の範囲において用いられている季節を意味する用語は、そもそも技術用語ではなく用語自体において、期間の範囲が不明確であり、当業者が技術的範囲を理解することができない。したがって、本件特許発明は明確ではない。
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(2)(新規性)本件特許の請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同じ発明であるから、特許を受けることができない。

(3)(進歩性)本件特許の請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

甲第1号証 特開2013−177756号公報
甲第2号証 本件特許出願(特願2016−65998号)の
令和1年11月13日付け拒絶理由通知書
甲第3号証 特開2002−194826号公報
甲第4号証 特開2000−320031号公報

2.取消理由通知で通知した取消理由の概要
本件訂正前の請求項3に係る特許に対して、当審が令和3年6月21日付けの取消理由通知において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

(1)(新規性)本件特許の請求項3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

(2)(進歩性)本件特許の請求項3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、取り消されるべきものである。

第5 取消理由通知で通知した取消理由についての当審の判断

1.甲号証について
(1)甲第1号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。

ア.「【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のダブルスキンカーテンウォールおよび空調システムの実施形態を説明する。
図1は本発明のダブルスキンカーテンウォール1の基本的な第1実施形態を示すものである。本実施形態のダブルスキンカーテンウォール1は、多層の建物の外壁部に各階層に亘って取り付けられてこの建物の外壁面を構成するもので、基本的には特許文献1に示されるものと同様に、外側面材2と、外側面材2の室内側に間隔をおいて設けられた内側面材3とを備えて、それら外側面材2と内側面材3との間に上下方向に連通して空気が流通可能な中空層4を有するものである。
【0013】
上述した特許文献1に示されるダブルスキンカーテンウォールでは、中空層を複数の階層毎に区画して各区画毎に下換気口と上換気口を設けていたのであるが、本実施形態のダブルスキンカーテンウォール1ではそのような区画を設けず、中空層4全体の最下部および最上部のみにそれぞれ屋外に開口する下部換気口5および上部換気口6を設けている。
したがって本実施形態のダブルスキンカーテンウォール1においては中空層4全体に煙突効果が生じ、最下部の下部換気口5から外気が中空層4内に流入して最上部の上部換気口6から外部に流出するという、中空層4の全体に亘る一連の上昇気流が確実に形成され、これにより中空層4内が自ずと十分に換気されて夏期に日射を受けても中空層4内の空気やダブルスキンカーテンウォール1自体が過度に高温になることが抑制されるようになっている。
【0014】
なお、下部換気口5や上部換気口6の双方もしくはいずれか一方に適宜の開閉機構を設けることも好ましく、その開閉機構には開度調整機構を設けることも好ましい。それにより、必要に応じて下部換気口5や上部換気口6を閉じて中空層4内の換気を停止したり、あるいは換気量を適切に調整することが可能である。」

イ.「【0017】
さらに、本実施形態のダブルスキンカーテンウォール1には、各階層のそれぞれに対して室内と屋外との間で直接的に換気を行うための室内換気機構10が設けられている。
本実施形態における室内換気機構10は、外側面材2に開口する外部換気口11と、室内の天井面に開口する内部換気口12と、中空層4内を横断する状態で設置されてそれら外部換気口11と内部換気口12とを接続する換気ダクト13により構成されていて、この室内換気機構10によって必要に応じて外気が直接的に室内に取り入れられ、あるいは逆に室内空気が屋外に直接的に排気されるようになっている。
【0018】
このような室内換気機構10は外壁面の各面に複数設けることが好ましく、それにより風向や風力等の気象条件に応じていずれかの室内換気機構10に外気の流入あるいは室内空気の流出が生じ、それによる自然換気が効果的に生じる。
また、室内換気機構10を通して室内への外気の流入量を確保するためには、建物内にボイド空間(たとえば後述するボイド40)を設けておいて、そこで生じる煙突効果を利用して室内換気機構10を通して外気を建物内に誘因することも好ましい。」

ウ.「【0027】
また、本発明のダブルスキンカーテンウォール1では、上記第1実施形態のように室内と屋外との間で換気を行うための室内換気機構10を設けることに加えて、図5に示す第2実施形態のように、室内からダブルスキンカーテンウォール1の中空層4に対して排気するための排気機構15を設けることも好ましい。
そのような排気機構15を設ける場合には、その排気機構15にも適宜の開閉機構や開度調整機構を設けることが好ましく、それにより室内から中空層4への排気を必要時にのみ自由に行うことが可能であるし、排気量を適切に調整することも可能である。
【0028】
図6は排気機構15を設けた第2実施形態のダブルスキンカーテンウォール1を利用して自然換気を行う場合の運転パターンを示す。
この場合、室内換気機構10および排気機構15の双方を開いて、室内換気機構10により外気を取り入れ、排気機構15で排気を行う。
この場合においては、中空層4の上部換気口6の開口面積を中空層4の断面積より大きく開けることで、上部換気口6での圧力損失を極小にすることが好ましい。また、下部換気口5は閉じるか、もしくは僅かに開ける程度として、下部換気口5での圧力損失を極大にすることが好ましい。
また、上部換気口6は、外側面材2を上方に立ち上げて形成した屋上冠壁2aの下部内側に設置しておいて、負の風圧力を受けるようにすることが好ましい。」

エ.「【0030】
本第2実施形態のダブルスキンカーテンウォール1では、第1実施形態のダブルスキンカーテンウォール1による図2に示したような基本的な運転パターンに加えて、図7に示すようなシーズン毎の空調運転パターンも可能である。なお、図7では日射遮蔽材9の図示は省略している。
すなわち、夏期の冷房時においては、ダブルスキンカーテンウォール1の上部換気口6からの高温空気を屋上に設置したデシカント外調機50に導くことにより、その排熱をデシカント外調機50のデシカントローターの再生に利用することができる。この運転パターンは第1実施形態のダブルスキンカーテンウォール1の場合にも同様に適用できる。
冬期の暖房時には、ダブルスキンカーテンウォール1の上部換気口6からの高温空気を外調機60に導入することにより、外気負荷を低減させることができる。この運転パターンは第1実施形態のダブルスキンカーテンウォール1の場合にも同様に適用できる。
中間期においては、図6に示したように室内換気機構10および排気機構15を利用した自然換気が可能である。この場合、第1実施形態の場合と同様に建物内にボイド40を設けておくことにより、ボイド40による煙突効果も利用したより効果的な自然換気が可能である。
【0031】
なお、本第2実施形態のように排気機構15を設ける場合には、上記の室内換気機構10を室内への給気専用としても良く、その場合においては必要に応じて図5に破線で示しているように換気ダクト13に給気ファン16を組み込むことも考えられる。
その給気ファン16による外気を取り入れる場合において、冬期において外気温が低すぎる場合には、必要に応じて室内空気と外気を適度に混合して適温に調整してから室内に導入するように構成することも好ましい。」

オ.図5ないし図7は次のものである。
【図5】

【図6】

【図7】

カ.上記「エ.」の記載を参照すると、図7には、「シーズン毎の空調運転パターン」として「夏期」、「冬期」及び「中間期」の「空調運転パターン」が示されていることが分かる。そして、「シーズン」が「夏期」、「冬期」及び「中間期」の3つであることから、「中間期」は「夏期」と「冬期」との中間の「シーズン」であることが理解できる。

キ.上記「エ.」の段落【0030】に「中間期においては、図6に示したように室内換気機構10および排気機構15を利用した自然換気が可能である。」と記載され、上記「ウ.」の段落【0028】には「図6は排気機構15を設けた第2実施形態のダブルスキンカーテンウォール1を利用して自然換気を行う場合の運転パターンを示す。」と記載されていることからすれば、段落【0028】は図6の態様の空調運転を説明したものであって、中間期においては、段落【0028】に記載された態様で空調運転が行われるものと認められる。

ク.上記「ウ.」及び「エ.」には、「ダブルスキンカーテンウォール1」の「運転パターン」が示されているから、甲第1号証には「ダブルスキンカーテンウォール1」の運転方法が記載されているといえる。

ケ.上記「オ.」の図6からは、「ダブルスキンカーテンウォール1」が「最下層から最上層までの複数階層に亘って取り付けられる」点、及び、「中空層4」が「最下層から最上層までの複数階層に亘って上下方向に連通する」点を看取することができる。

コ.上記「オ.」の図5及び図6からは、
・室内から「排気機構15」を通って「中空層4」に至る矢印
・「中空層4」内で上方に向いた矢印
・「中空層4」から「上部換気口6」を通って屋外に至る矢印
を看取することができ、これらの矢印は空気の流れを示すものと理解できる。
そうすると、当該図5及び図6からは、空気は室内から「排気機構15」を通って「中空層4」に排出されること、及び、空気は「中空層4」を上昇して「上部換気口6」から屋外に排出されることを看取することができる。
また、当該図5及び図6からは、「排気機構15」が「内側面材3」に設けられる点を看取することができる。

サ.以上を総合すると、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「多層の建物の外壁部に最下層から最上層までの複数階層に亘って取り付けられたダブルスキンカーテンウォールは、
外側面材と、外側面材の室内側に間隔をおいて設けられた内側面材とを備えて、それら外側面材と内側面材との間に最下層から最上層までの複数階層に亘って上下方向に連通して空気が流通可能な中空層を有し、
中空層全体の最下部および最上部のみにそれぞれ屋外に開口する下部換気口および上部換気口を設け、最下部の下部換気口から外気が中空層内に流入して最上部の上部換気口から外部に流出し、
下部換気口や上部換気口の双方に適宜の開閉機構を設け、
夏期と冬期との中間のシーズンである中間期においては、
中空層の上部換気口の開口面積を中空層の断面積より大きく開け、下部換気口は閉じ、
室内換気機構および排気機構の双方を開いて、室内換気機構により外気を取り入れ、排気機構で排気を行い、
室内換気機構は、外側面材に開口する外部換気口と、室内の天井面に開口する内部換気口と、中空層内を横断する状態で設置されてそれら外部換気口と内部換気口とを接続する換気ダクトにより構成されており、
排気機構を設ける場合には、室内換気機構を室内への給気専用としても良く、
排気機構は、室内からダブルスキンカーテンウォールの中空層に対して排気するためのものであり、内側面材に設けられ、
空気は室内から排気機構を通って中空層に排出され、中空層を上昇して上部換気口から屋外に排出される、
ダブルスキンカーテンウォールの運転方法。」

2.対比
本件特許発明3と甲1発明とを対比する。

(1)甲1発明の「多層の建物の外壁部に最下層から最上層までの複数階層に亘って取り付けられたダブルスキンカーテンウォール」は、本件特許発明3の「建物の全階層又は複数階層にわたって設けられるダブルスキンカーテンウォール」に相当する。

(2)甲1発明の「外側面材と、外側面材の室内側に間隔をおいて設けられた内側面材」は「ダブルスキンカーテンウォール」が備えるものであるから、甲1発明の「それら外側面材と内側面材との間に最下層から最上層までの複数階層に亘って上下方向に連通して空気が流通可能な中空層」は、本件特許発明3の「前記ダブルスキンカーテンウォールによって形成され」、「前記建物の全階層又は複数階層にわたって上下方向に延設されたダブルスキン換気路」に相当する。

(3)甲1発明の「中空層全体の最下部および最上部のみにそれぞれ屋外に開口する下部換気口および上部換気口を設け、最下部の下部換気口から外気が中空層内に流入して最上部の上部換気口から外部に流出し」は、本件特許発明3の「空気を導入するための下部換気口を下方に、前記下部換気口から取り入れ、上方に流通した空気を外部に排気するための上部換気口を上方に備える」に相当する。

(4)「ダンパー」の通常の意味は「ダクトなどに取り付けて,空気の流量を調節(風量ダンパー)したり,火災時の空気の流動を遮断する装置(防火ダンパー).」(日本建築学会編、岩波書店発行『建築学用語辞典』)であるから、甲1発明の「下部換気口」及び「上部換気口」に設けた「開閉機構」は「ダンパー」であるといえる。
そうすると、甲1発明の「下部換気口や上部換気口の双方に適宜の開閉機構を設け」は、本件特許発明3の「前記上部換気口と前記下部換気口をそれぞれ開閉する上部ダンパー及び下部ダンパーとを備え」に相当する。

(5)甲1発明の「夏期と冬期との中間のシーズンである中間期においては、中空層の上部換気口の開口面積を中空層の断面積より大きく開け、下部換気口は閉じ」は、本件特許発明3の「夏期と冬期の間の中間期には、前記上部換気口が開状態、前記下部換気口が閉状態とされ」に相当する。

(6)甲1発明の「排気機構」は、「室内からダブルスキンカーテンウォールの中空層に対して排気するためのものであり、内側面材に設けられ、空気は室内から排気機構を通って中空層に排出され」るから、本件特許発明3の「室内とダブルスキン換気路の間の壁に設けられた開口」に相当する。
そして、甲1発明の「室内換気機構および排気機構の双方を開いて、室内換気機構により外気を取り入れ、排気機構で排気を行い、室内換気機構は、外側面材に開口する外部換気口と、室内の天井面に開口する内部換気口と、中空層内を横断する状態で設置されてそれら外部換気口と内部換気口とを接続する換気ダクトにより構成されており、排気機構は、室内からダブルスキンカーテンウォールの中空層に対して排気するためのものであり、内側面材に設けられ、空気は室内から排気機構を通って中空層に排出され、中空層を上昇して上部換気口から屋外に排出される」と、本件特許発明3の「前記上部換気口、及び室内と前記ダブルスキン換気路の間の壁に設けられた開口を通じて、日射を受けない別のダブルスキンカーテンウォールから室内、室内からダブルスキン換気路、ダブルスキン換気路から屋外に空気が流通されるように構成されている」とは、「前記上部換気口、及び室内と前記ダブルスキン換気路の間の壁に設けられた開口を通じて、室内、室内からダブルスキン換気路、ダブルスキン換気路から屋外に空気が流通されるように構成されている」で共通する。

(7)甲1発明の「下部換気口や上部換気口の双方に適宜の開閉機構を設け」た「ダブルスキンカーテンウォール」は、「下部換気口」及び「上部換気口」の「開閉」等によって複数の機能を有することが明らかであるから、本件特許発明3の「上下開閉機構付き多機能ダブルスキンシステム」に相当する。

(8)以上を総合すると、本件特許発明3と甲1発明とは次の点で一致する。
(一致点)
「建物の全階層又は複数階層にわたって設けられるダブルスキンカーテンウォールと、
前記ダブルスキンカーテンウォールによって形成され、空気を導入するための下部換気口を下方に、前記下部換気口から取り入れ、上方に流通した空気を外部に排気するための上部換気口を上方に備えるとともに、前記建物の全階層又は複数階層にわたって上下方向に延設されたダブルスキン換気路と、
前記上部換気口と前記下部換気口をそれぞれ開閉する上部ダンパー及び下部ダンパーとを備え、
夏期と冬期の間の中間期には、前記上部換気口が開状態、前記下部換気口が閉状態とされ、且つ前記上部換気口、及び室内と前記ダブルスキン換気路の間の壁に設けられた開口を通じて、室内、室内からダブルスキン換気路、ダブルスキン換気路から屋外に空気が流通されるように構成されている上下開閉機構付き多機能ダブルスキンシステムの運転方法。」

また、両者は次の点で相違する。
(相違点)
本件特許発明3においては、「日射を受けない別のダブルスキンカーテンウォールから」室内に空気が流通されるのに対して、甲1発明はそのようなものでない点。

3.判断
(1)新規性について
本件特許発明3と甲1発明とは上記相違点において相違するから、本件特許発明3は甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

(2)進歩性について
ア.上記相違点について検討する。
日射を受けない別のダブルスキンカーテンウォールを設けて、当該別のダブルスキンカーテンウォールから室内に空気を流通することは、甲第1号証には記載されておらず、また、後記「(3)」でも検討するように、本件特許が属する技術分野において本件特許出願前に周知の技術的事項であるともいえない。
そうすると、甲1発明において上記相違点に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることを、当業者が容易に想到することができたということはできない。

イ.そして、本件特許発明3は、上記相違点に係る発明特定事項を備えることにより、明細書に記載の「中間期には、図3右図に示すように、他方位側のダブルスキンシステムA7’と組み合わせ、2つのダブルスキンシステムA、A’(一方位側のダブルスキンカーテンウォールA1と他方位側のダブルスキンカーテンウォールA1)を利用することにより、より効果的に自然換気が可能になる。」(段落【0023】)、「一方のダブルスキンシステムAは日射取得が多いため温度上昇し上部換気口4から排気されるため、屋外→他方のダブルスキンシステムA’→室内→一方のダブルスキンシステムA→屋外という流れができ自然換気を行える。また、他方のダブルスキンシステムA’は日射取得が少ないため、外気温に比べ大きな温度上昇は起こらない。」(段落【0025】)という効果を奏するものである。

ウ.以上のとおりであるから、本件特許発明3は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立人の主張について
ア.申立人は、令和3年9月22日提出の意見書において「当該技術分野においてダブルスキンカーテンウォール自体は、本件特許発明の明細書【背景技術】に記載があるように周知技術であるところ、甲1発明において、外部換気口11に代え、別のダブルスキンカーテンウォールを、ダブルスキンカーテンウォール1が設置されていない建物の外壁面に適用することは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。」(第4ページ第2〜7行)と主張している。

イ.しかしながら、請求人が周知の技術的事項であると主張するダブルスキンカーテンウォールは、甲1発明の「ダブルスキンカーテンウォール」に相当するものであって、当該ダブルスキンカーテンウォールに加えて、日射を受けない別のダブルスキンカーテンウォールをさらに設け、そこから室内に空気を流通するという技術的事項は、各甲号証には記載されておらず、本件特許が属する技術分野において周知であるとは認められないし、当該技術的事項を採用することは当業者が適宜なし得たことでもない。

ウ.以上のとおりであるから、申立人の主張は採用することができない。

第6 取消理由通知で採用しなかった異議申立理由についての当審の判断

1.明確性について
(1)申立人は特許法第36条第6項第2号明確性)に関し、「本件特許発明にかかる特許請求の範囲における「夏期には」、「夏期と冬期の間の中間期には」、「冬期には」とは、明細書や図面において技術的に定義されていないから、一般用語における季節(年間における所定期間、いわゆる「夏」「春秋」「冬」)を意味するものと解される。
上記季節を意味する用語は、そもそも技術用語ではなく用語自体において、期間の範囲が不明確である。具体的には、例えば、夏期と中間期の境目は不明確であるし、また夏期の北海道の寒い夜や冬期の沖縄の暑い日中には、発明にかかる方法が効果を奏せず、当業者が技術的範囲を理解することができない。
したがって、本件特許発明は明確ではない。」(申立書第8ページ第18行〜最下行)と主張している。

(2)そこで、本件特許発明の「夏期には」、「夏期と冬期の間の中間期には」及び「冬期には」との記載について検討する。
本件特許明細書に、例えば、【背景技術】の項に「環境配慮型ビルなどには、建物の外壁の一部あるいは全面をガラスで被覆し、外壁とガラスの間に空気を流通/換気させることにより、夏期に室内への日射侵入熱の軽減効果、冬期に室内への断熱効果を発揮し、建物内部、特にペリメーターゾーンの温熱環境を向上させ、空調の省エネルギー化を可能にするダブルスキンカーテンウォールが用いられている。」(段落【0002】)と、夏期及び冬期における日射及び断熱に関する効果について記載され、また、「例えば特許文献1、特許文献2に開示されるようなダブルスキンシステムでは、外側のガラス面の下部に空気(外気)を導入する下部換気口(導入口)、上部に空気を排出する上部換気口(排出口)を設け、ダブルスキンカーテンウォール内が日射熱により温められることで下部換気口から空気を取り入れ、外壁とガラスの間のダブルスキン換気路(中空層)を温められた空気が上昇して上部換気口から排気され、自動的に換気することができる。」(段落【0003】)と、日射熱による昇温に関する作用について記載されていること等からすれば、本件特許発明における「夏期」、「冬期」及び「中間期」が、日射や気温等の環境条件によって区分される期間を指すことは明らかであって、当業者であれば、年間の環境条件についての技術常識を踏まえて、「夏期」、「冬期」及び「中間期」がいかなる期間であるのかを理解することができるものと認められる。

(3)そうすると、本件特許の請求項1ないし3における「夏期には」、「夏期と冬期の間の中間期には」、「冬期には」との記載は明確であるといえるから、本件特許発明は明確である。

2.進歩性について
(1)甲号証について
ア.甲第3号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、竪シャフト(ボイドシャフト)を利用して建物内部の換気を行う建物の自然換気システムに関するものである。」

(イ)「【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態の自然換気システムを適用した中層建物の断面図であり、この建物1は、建物本体2と、太陽からの日射Tを受ける建物南面の外壁部に設けられた竪シャフト3とから概略構成されている。竪シャフト3は、角筒状の周壁によって構成され、その最上端は屋根5で塞がれ、屋根5の下側には自然風Fの通過可能な換気口6が設けられている。
(中略)
【0016】一方、建物本体2の各階には、各部屋21に対して外気を導入・排出するための給気通路22と排気通路23とが設けられている。給気通路22は、建物本体2の北側外壁に設けた外気取入口24を通して屋外に連通し、排気通路23は、蓄熱壁7に形成した開口25を通して竪シャフト3の内部に連通している。」

(ウ)図1は次のものである。


(エ)上記「(イ)」の「太陽からの日射Tを受ける建物南面の外壁部」及び「建物本体2の北側外壁に設けた外気取入口24」との記載を踏まえると、図1からは、「建物本体2の北側外壁」が太陽からの日射Tを受けないことが看て取れる。

(オ)以上を総合すると、甲第3号証には次の技術的事項(以下「甲3技術的事項」という。)が記載されている。

「竪シャフト(ボイドシャフト)を利用して建物内部の換気を行う建物の自然換気システムにおいて、
建物は、建物本体と、太陽からの日射を受ける建物南面の外壁部に設けられた竪シャフトとから概略構成されており、
建物本体の各階には、各部屋に対して外気を導入・排出するための給気通路と排気通路とが設けられており、
給気通路は、太陽からの日射を受けない建物本体の北側外壁に設けた外気取入口を通して屋外に連通し、排気通路は、蓄熱壁に形成した開口を通して竪シャフトの内部に連通している点。」

イ.甲第4号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、吹き抜けを外壁側に有した建物に係り、詳しくはこの吹き抜けを自然換気装置として利用した建物に関する。」

(イ)「【0012】また、吹き抜け3には、前記の透明ガラスを覆う状態に多数のロールスクリーン5…が開閉可能に設けられている。(中略)
【0013】また、これらロールスクリーン5…は、外壁2を形成する前記透明ガラスから離間した状態に配設されており、これによってロールスクリーン5…が開かれ透明ガラスが覆われた際、日射により生じた熱がロールスクリーン5…に遮られ、これらと外壁2の透明ガラスとの間に溜まり、居室4側にまで到達するのが抑えられるようになっている。」

(ウ)「【0016】前記の各居室4には、前記吹き抜け3と反対の側の外壁部に外気を取り入れるための給気口11が設けられている。(後略)」

(エ)図1は次のものである。


(オ)上記「(イ)」の記載によれば、「日射により生じた熱が」「吹き抜け3」に設けられた「ロールスクリーン5…に遮られ」るところ、これを踏まえると、図1からは、「吹き抜け3」がある側の「外壁2」が「日射」を受ける一方、上記「(ウ)」記載の「吹き抜け3と反対の側の外壁部」は、「日射」を受けないことが看て取れる。

(カ)以上を総合すると、甲第4号証には次の技術的事項(以下「甲4技術的事項」という。)が記載されている。

「吹き抜けを外壁側に有し、この吹き抜けを自然換気装置として利用した建物において、
各居室には、日射を受けない吹き抜けと反対の側の外壁部に外気を取り入れるための給気口が設けられている点。」

(2)対比及び判断
ア.本件特許発明3と甲1発明とを対比すると、両者は上記「第5 2.」の一致点で一致し、相違点で相違する。

イ.当該相違点について検討する。
甲3技術的事項及び甲4技術的事項のように、建物の日射を受けない側に空気を流通する給気口を設けることは、本件特許出願前に公知又は周知の技術的事項(以下「周知技術」という。)であると認められる。
しかしながら、甲1発明に甲3技術的事項、甲4技術的事項又は周知技術を適用したとしても、甲1発明の「外側面材に開口する外部換気口」を日射を受けない側に設けるものになるものの、別のダブルスキンカーテンウォールに設けて、当該別のダブルスキンカーテンウォールから室内に空気を流通するものとはならないから、上記相違点に係る本件特許発明3の構成には至らない。
また、上記「第5 3.(2)ア.及び(3)」で説示したように、日射を受けない別のダブルスキンカーテンウォールを設けて、当該別のダブルスキンカーテンウォールから室内に空気を流通することが、本件特許が属する技術分野における周知の技術的事項であるともいえない。
そうすると、甲3技術的事項、甲4技術的事項又は周知技術を勘案しても、甲1発明において相違点に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることを、当業者が容易に想到することができたということはできない。
そして、本件特許発明3は、上記相違点に係る発明特定事項を備えることにより、上記「第5 3.(2)イ.」に摘記した明細書に記載の効果を奏するものである。

ウ.以上のとおりであるから、本件特許発明3は、甲1発明に基づいて、甲1発明及び甲3技術的事項に基づいて、又は、甲1発明及び甲4技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第7 むすび

以上のとおり、本件特許発明1ないし3に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件特許発明1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の全階層又は複数階層にわたって設けられるダブルスキンカーテンウォールと、
前記ダブルスキンカーテンウォールによって形成され、空気を導入するための下部換気口を下方に、前記下部換気口から取り入れ、上方に流通した空気を外部に排気するための上部換気口を上方に備えるとともに、前記建物の全階層又は複数階層にわたって上下方向に延設されたダブルスキン換気路と、
前記上部換気口と前記下部換気口をそれぞれ開閉する上部ダンパー及び下部ダンパーとを備え、
夏期には、前記上部換気口と前記下部換気口が開状態とされるとともに建物の室内の空気が前記ダブルスキン換気路に排気され、
夏期と冬期の間の中間期には、前記上部換気口が開状態、前記下部換気口が閉状態とされ、且つ前記上部換気口、及び室内と前記ダブルスキン換気路の間の壁に設けられた開口を通じて、建物の屋外又は日射を受けない別のダブルスキンカーテンウォールから室内、室内からダブルスキン換気路、ダブルスキン換気路から屋外に空気が流通され、
冬期には、日射量が少ないときに前記上部換気口と前記下部換気口が閉状態とされ、日射量が多いときに前記上部換気口が開かれ、前記下部換気口が閉じられ、前記ダブルスキン換気路内の暖かい空気が空調機あるいは外調機に取り入れられて暖房用エネルギーとして利用するように構成されていることを特徴とする上下開閉機構付き多機能ダブルスキンシステムの運転方法。
【請求項2】
請求項1に記載の上下開閉機構付き多機能ダブルスキンシステムの運転方法において、
建物の一方に日射が当たるときに他方に日射が当たらないような建物の一方位側と該一方位側の反対の他方位側とにそれぞれ、前記ダブルスキン換気路を建物内と連通させるように前記ダブルスキンカーテンウォールが設けられ、
日射取得の多い一方のダブルスキンカーテンウォールと、日射取得の少ない他方のダブルスキンカーテンウォールと、を備え、
前記一方のダブルスキンカーテンウォールの上部換気口を開状態、下部換気口を閉状態とし、
前記他方のダブルスキンカーテンウォールの上部換気口を閉状態、下部換気口を開状態となるように構成され、
建物内の自然換気を促進するように構成されていることを特徴とする上下開閉機構付き多機能ダブルスキンシステムの運転方法。
【請求項3】
建物の全階層又は複数階層にわたって設けられるダブルスキンカーテンウォールと、
前記ダブルスキンカーテンウォールによって形成され、空気を導入するための下部換気口を下方に、前記下部換気口から取り入れ、上方に流通した空気を外部に排気するための上部換気口を上方に備えるとともに、前記建物の全階層又は複数階層にわたって上下方向に延設されたダブルスキン換気路と、
前記上部換気口と前記下部換気口をそれぞれ開閉する上部ダンパー及び下部ダンパーとを備え、
夏期と冬期の間の中間期には、前記上部換気口が開状態、前記下部換気口が閉状態とされ、且つ前記上部換気口、及び室内と前記ダブルスキン換気路の間の壁に設けられた開口を通じて、日射を受けない別のダブルスキンカーテンウォールから室内、室内からダブルスキン換気路、ダブルスキン換気路から屋外に空気が流通されるように構成されていることを特徴とする上下開閉機構付き多機能ダブルスキンシステムの運転方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照
異議決定日 2021-11-12 
出願番号 P2016-065998
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (E04B)
P 1 651・ 121- YAA (E04B)
P 1 651・ 537- YAA (E04B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 森次 顕
長井 真一
登録日 2020-08-13 
登録番号 6748904
権利者 清水建設株式会社
発明の名称 上下開閉機構付き多機能ダブルスキンシステムの運転方法  
代理人 松沼 泰史  
代理人 川渕 健一  
代理人 西澤 和純  
代理人 松沼 泰史  
代理人 佐伯 義文  
代理人 川渕 健一  
代理人 佐伯 義文  
代理人 西澤 和純  

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