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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
管理番号 1381677
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-03-23 
確定日 2022-01-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第6759648号発明「ポリウレタンインテグラルスキンフォーム及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6759648号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
(1)特許異議申立の経緯
特許第6759648号(請求項の数10。以下、「本件特許」という。)は、平成28年3月23日(優先権主張:平成27年4月15日、日本国)の出願(特願2016−58313号、以下、「本願」という。)であって、令和2年9月7日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和2年9月23日である。)。
その後、令和3年3月23日に、本件特許の請求項1〜10に係る特許に対して、特許異議申立人である加藤 三千代(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 3月23日 特許異議申立書
同年 7月29日付け 取消理由通知書
同年10月 6日 意見書(特許権者)
(以下、当該意見書を単に「意見書」という。)

(2)証拠方法
ア 申立人が提出した証拠方法は以下のとおりである。
甲第1号証 特開2011−38005号公報
甲第2号証 牧 廣 ほか編「プラスチックフォームハンドブック」初版、日刊工業新聞社、1973年 2月28日、表紙、奥付、548頁
甲第3号証 岩田 敬治編、「ポリウレタン樹脂ハンドブック」初版1刷、日刊工業新聞社、1987年9月25日、90〜98、211頁
甲第4号証 望月 美代子作成 実験成績証明書 令和3年3月19日付け
甲第5号証 特開2004−161987号公報
甲第6号証 特表平10−501830号公報
甲第7号証 特開平11−35652号公報
甲第8号証 市川 俊之ほか著、“熱硬化性樹脂の最近の進歩(6) 熱硬化性ポリウレタンエラストマー”、熱硬化性樹脂、1981年、2巻、3号、149〜164頁
甲第9号証 特開2008−133343号公報
甲第10号証 特開2006−37099号公報
甲第11号証 特開平6−157700号公報
甲第12号証 特開平8−104724号公報
甲第13号証 特表2002−507642号公報
甲第14号証 特開平7−173388号公報
甲第15号証 特開2003−147044号公報
甲第16号証 特開平10−218968号公報
甲第17号証 特表2005−507964号公報
甲第18号証 本願について提出された令和2年2月17日付け意見書の写し
参考資料1 三洋化成工業株式会社のウェブサイトに公開された「総合カタログ」、表紙及び72頁、インターネット、<URL: https://www.sanyo-chemical.co.jp/wp/wp-content/uploads/2019/03/pdf007.pdf>
参考資料2 特開2007−332241号公報
参考資料3 特開2008−69068号公報
参考資料4 特開2015−52106号公報
以下、「甲第1号証」〜「甲第18号証」を「甲1」〜「甲18」という。

イ 特許権者が提出した意見書に添付した証拠方法は以下のとおりである。
乙第1号証 岩田 敬治編、「ポリウレタン樹脂ハンドブック」初版3刷、日刊工業新聞社、1991年5月20日、211〜221頁
乙第2号証 今井 嘉夫著、「ポリウレタンフォーム」、(株)高分子刊行会、1版1刷、1987年5月20日、93〜99頁
乙第3号証 田口享史作成、実験成績証明書、令和3年10月5日付け
(以下、「乙第1号証」〜「乙第3号証」を「乙1」〜「乙3」という。)

ウ 令和3年7月29日付け取消理由通知書において採用した証拠方法は以下のとおりである。
参考文献A 岩田 敬治編、「ポリウレタン樹脂ハンドブック」初版4刷、日刊工業新聞社、1992年8月25日、220〜221頁
なお、当該参考文献Aは、同一の書籍名かつ同じ初版で刷数のみ異なる乙1の220〜221頁と実質的に同一の内容である。

第2 特許請求の範囲の記載
特許第6759648号の特許請求の範囲の記載は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1〜10に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1〜10に係る発明を「本件発明1」〜「本件発明10」といい、これらを総称して「本件発明」ともいう。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)

「【請求項1】
少なくとも有機ポリイソシアネート組成物(A)、ポリオール成分(B)、触媒(C)、および発泡剤(D)を原料とするポリウレタンインテグラルスキンフォームであって、有機ポリイソシアネート組成物(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートと数平均分子量1,000〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコールとのウレタン変性体であり、イソシアネート基含有率7〜25質量%の有機ポリイソシアネート(a1)であること、およびポリオール成分(B)が、数平均分子量600〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコール(b1)を含み、ポリオール成分(B)中の(b1)の比率が50質量%以上であること、を特徴とするポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【請求項2】
有機ポリイソシアネート組成物(A)が、常温において液状であるジフェニルメタンジイソシアネートと数平均分子量1,000〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコールとのウレタン変性体であり、イソシアネート基含有率7〜25質量%の有機ポリイソシアネート(a2)であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【請求項3】
有機ポリイソシアネート組成物(A)中に粘度低減剤(F)を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【請求項4】
ポリオール成分(B)が、(b1)以外のポリエーテルポリオール(b2)を含み、(b2)が、平均官能基数2〜4の重合開始剤と、プロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合生成物であり、水酸基当量1,000〜3,000のポリエーテルポリオールであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【請求項5】
フォーム密度が150〜500kg/m3であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【請求項6】
反発弾性率が60%以上であり、伸び率が200%以上であり、且つ引裂強さが30N/cm以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【請求項7】
有機ポリイソシアネート組成物(A)とポリオール成分(B)とを、触媒(C)、および発泡剤(D)の存在下で反応させるポリウレタンインテグラルスキンフォームの製造方法において、有機ポリイソシアネート組成物(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートを数平均分子量1,000〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコールにてウレタン変性したイソシアネート基含有率7〜25質量%の有機ポリイソシアネート(a1)であること、および、ポリオール成分(B)が、数平均分子量600〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコール(b1)を含み、ポリオール成分(B)中の(b1)の比率が50質量%以上であること、を特徴とするポリウレタンインテグラルスキンフォームの製造方法。
【請求項8】
有機ポリイソシアネート組成物(A)が、常温で液状であるジフェニルメタンジイソシアネートを数平均分子量1,000〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコールにてウレタン変性したイソシアネート基含有率7〜25質量%の有機ポリイソシアネート(a2)であることを特徴とする請求項7に記載のポリウレタンインテグラルスキンフォームの製造方法。
【請求項9】
有機ポリイソシアネート組成物(A)中に粘度低減剤(F)を含むことを特徴とする請求項7又は8に記載のポリウレタンインテグラルスキンフォームの製造方法。
【請求項10】
ポリオール成分(B)が、(b1)以外のポリエーテルポリオール(b2)を含み、(b2)が、平均官能基数2〜4の重合開始剤に、プロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも1種を重合した、水酸基当量1,000〜3,000のポリエーテルポリオールであることを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載のポリウレタンインテグラルスキンフォームの製造方法。」

第3 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 取消理由通知の概要
当審が取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。
(1)取消理由1(明確性
本件特許の請求項1〜10の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、概略、下記の点で明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。
よって、本件発明1〜10の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

本件発明1〜10における発明特定事項である「インテグラルスキンフォーム」にはどのようなものが含まれ、どのようなものが含まれないのかが明確でない。

(2)取消理由2(新規性
本件発明1、4〜7、10は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、本件発明1、4〜7、10の特許は、特許法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

(3)取消理由3(進歩性
本件発明1〜10は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第1号証及び他の甲号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、本件発明1〜10の特許は、特許法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

2 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書でした申立の理由の概要は、以下に示すとおりである。
(1)申立理由1
本件発明1、4〜7、10は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、本件発明1、4〜7、10の特許は、特許法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
これは、上記取消理由2と同旨である。

(2)申立理由2
本件発明1〜10は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第1号証及び他の甲号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、本件発明1〜10の特許は、特許法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
これは、上記取消理由3と同旨である。

第4 各甲号証及び各乙号証に記載された事項
1 各甲号証に記載された事項
(1)甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
「【0034】
[原料および符号の説明]
(ポリオール)
1.PTG-2000SN:ポリテトラメチレンエーテルグリコール、保土谷化学工業(株)製、数平均分子量=2,000、開始剤:1,4-ブタンジオール、平均官能基数:2.0。
2.GL-3000:ポリオキシプロピレンポリオール、商品名:サンニックスGL-3000、三洋化成工業(株)製、開始剤:グリセリン、数平均分子量=3000、末端エチレンオキサイドキャップ品エチレンオキサイド含有量=20%、1級OH率=77質量%、平均官能基数:3.0。
3.PL-2100:ポリオキシプロピレングリコール,商品名:サンニックスPL-2100,三洋化成工業(株)製,数平均分子量=2000,末端エチレンオキサイドキャップ品、平均官能基数:2.0。
4.1,4-BG:1,4-ブタンジオール。
5.EG:エチレングリコール
(イソシアネート)
6.MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-体含有量=99%
7.MT:ピュアMDIのこと。製品名:ミリオネートMT,日本ポリウレタン工業(株)製,ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-体含有量=99%。
(その他の成分など)
8.TINUVIN B75:紫外線吸収剤,光安定剤,酸化防止剤等の効果を示す添加剤,チバ・ジャパン製。
9.SZ-1649:シリコーン整泡剤、東レ・ダウコーニング製
10.DOTDL:ジオクチル錫ジラウレート
OHv:水酸基価
【0035】
[密度、高度、機械的強度などの測定]
・・・
【0036】
実施例1〜9および比較例1〜8における、イソシアネート基末端プレポリマー(A)の配合およびポリオール(B)成分の配合比は表1〜4に記載したとおりである。また、ウレタン形成性組成物としての上記(A)および(B)の配合比についても同表に記載したとおりである。
次に、イソシアネート基末端プレポリマー(A)とポリオール(B)成分の処方および発泡ポリウレタンエラストマーの製造について実施例1を例として説明するが、他の実施例および比較例においてもこれらの処方および製造方法に準じて行なった。
【0037】
[実施例1のポリオール(B)成分の配合]
表1の実施例1に示す処方に従って、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)[商品名PTG-2000SN(保土谷化学工業(株)製)]85部、ポリオキシプロピレンポリオール(分子量3000)[商品名GL-3000(三洋化成工業(株)製)]10部、1,4-ブタンジオール[1,4-BG]5部、水0.31部、シリコーン整泡剤[商品名SZ-1649(東レ・ダウコーニング製)]1部、紫外線吸収剤(TINUVIN B75)0.8部、ジオクチル錫ジラウレート(DOTDL)0.005を45℃で混合して、ポリオール(B)成分を得た。
【0038】
[実施例1のイソシアネート基末端プレポリマー(A)の合成]
表1の実施例1に示す処方に従って、ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250,4,4´-体含有量99%)[商品名ミリオネートMT(日本ポリウレタン工業製)40.0質量部と、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)[商品名PTG-2000SN(保土谷化学工業(株)製)]66.1質量部とを、80℃で4時間ウレタン化反応させることにより、NCO含量が10.0質量%のイソシアネート基末端プレポリマー(A)を得た。
【0039】
[実施例1の発泡ポリウレタンエラストマーの製造]
メカニカルフロス発泡機のミキシングヘッド内において、45℃に加温した上記イソシアネート基末端プレポリマー(A)103.8重量部と、45℃に加温した上記ポリオール(B)成分100重量部とを混合することにより、前者のイソシアネート基のモル数を後者の水を含めたイソシアネート反応性活性水素基の合計モル数で割った値(〔NCO〕/〔OH〕)に100を掛けた値であるイソシアネートインデックスが105となしたウレタン形成性組成物とした。このウレタン形成性組成物60容量部に対して40容量部の割合で供給した乾燥空気の雰囲気下(ミキシングヘッド内の圧力=0.2〜0.3MPa)、90〜120秒間にわたり機械的攪拌することにより、当該ウレタン形成性組成物中に乾燥空気を微分散させてフロス状の原料を調製し、この原料を、常圧下、金型(260mm×220mm×30mm)に注入し、密閉後、当該金型を90℃のオーブン内に30分間放置することにより、注入されたフロス状の原料を硬化させて、発泡ポリウレタンエラストマーを形成し、これを金型から取り出した。なお、設定密度は0.400g/cm3とした。その後、90℃、12時間オーブン中で更に硬化したものについて物性を決定した。
45℃に加温した上記イソシアネート基末端プレポリマー(A)103.8重量部と、45℃に加温した上記ポリオール(B)成分100重量部とを混合することにより、前者のイソシアネート基のモル数を後者の水を含めたイソシアネート反応性活性水素基の合計モル数で割った値(〔NCO〕/〔OH〕)に100を掛けた値であるイソシアネートインデックスが105となしたウレタン形成性組成物とした。このウレタン形成性組成物を攪拌機にて90〜120秒間機械的攪拌することにより、当該ウレタン形成性組成物中に空気を取り込ませ微分散させたフロス状の原料を調製した。この原料を、常圧下、金型(250mm×180mm×20mm)に注入した。密閉後、当該金型を120℃のオーブン内に30分間放置することにより、注入されたフロス状の原料を硬化させ発泡ポリウレタンエラストマーを形成させた。これを金型から取り出し,発泡ポリウレタンエラストマーを得た。なお、設定密度は0.400g/cm3とした。その後、80℃、12時間オーブン中で更に硬化したものについて物性を測定した。
【0040】
実施例1〜9および比較例1〜8において製造した発泡ポリウレタンエラストマーについて密度、硬度、機械的強度、CS、反発弾性率などの項目について測定・評価した結果について表1〜4に示す。
【0041】
[ウレタン形成性組成物中における水の量]
ウレタン形成性組成物中における水の量を検討した。実施例1〜9、比較例1〜8の原料配合比および発泡ポリウレタンエラストマー試験結果を示す。発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法および機械強度などの測定は上記の実施例1と同様に行った。
原料物質の種類およびその配合割合ならびに製造した発泡ポリウレタンエラストマーの密度、硬度および機械的強度について表1に示す。
これらの試験結果について実施例1〜4と比較例1〜5を対比することにより、圧縮永久歪み(CS)値が5.0%以下を示す良好な範囲となるには、ウレタン形成性組成物中における水の量が0.15〜0.75質量%が好ましいことが判明した。
【0042】
【表1】

【0043】
[ウレタン形成性組成物中におけるジオール成分]
ウレタン形成性組成物中におけるジオール成分が発泡ポリウレタンエラストマーに与える影響を検討した。発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法および機械強度などの測定は上記の実施例と同様に行った。原料物質の種類およびその配合割合ならびに製造した発泡ポリウレタンエラストマーの密度、硬度および機械的強度について表2に示す。
表2の実施例4、6および比較例6を対比することにより、ジオール成分が含まれない発泡ポリウレタンエラストマーの機械強度は著しく低下するため、ウレタン形成性組成物中におけるジオール成分の存在が好ましいことが判明した。
【0044】
【表2】

【0045】
[ウレタン形成性組成物中における3官能ポリオール成分]
ウレタン形成性組成物中における3官能成分が発泡ポリウレタンエラストマーに与える影響を検討した。発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法および機械強度などの測定は上記の実施例と同様に行った。原料物質の種類およびその配合割合ならびに製造した発泡ポリウレタンエラストマーの密度、硬度および機械的強度などについて表3に示す。
表3の実施例4、7〜9と、比較例7を対比することにより、3官能ポリオール成分が存在しないとCSが悪化することから、ウレタン形成性組成物中における3官能ポリオール成分の存在が好ましいことが判明した。
【0046】
[ポリウレタン形成組成物中における3官能ポリオール成分の割合]
ウレタン形成性組成物中における3官能ポリマー成分の割合が発泡ポリウレタンエラストマーに与える影響を検討した。発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法および機械強度などの測定は上記の実施例と同様に行った。原料物質の種類および配合割合ならびに製造した発泡ポリウレタンエラストマーの密度、硬度および機械的強度について表3に示す。
表3に示した実施例4、7〜9の試験結果より、3官能ポリオール成分が増加するとTBは低い値を示すが,CSについて良好な値を示すことが判明した。
【0047】
【表3】

【0048】
[ポリウレタン形成組成物中における3官能ポリオール成分の2官能ポリオールへの変換]
ポリウレタン形成組成物中における3官能ポリオール成分を2官能ポリオールへ変換した。発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法および機械強度などの測定は上記の実施例と同様に行った。原料物質の種類および配合割合ならびに製造した発泡ポリウレタンエラストマーの密度、硬度および機械的強度については表4に示す。
表4の実施例4と比較例8を対比することにより、3官能ポリオール成分が存在しないとCSが悪化することが判明した。
【0049】
【表4】



(2)甲2に記載された事項
甲2には、以下の事項が記載されている。


」(548頁7〜11行)

(3)甲3に記載された事項
甲3には、以下の事項が記載されている。



」(93頁下から6行〜最下行)


」(98頁表3.13)


」(211頁14〜17行)

(4)甲4に記載された事項
甲4には、以下の事項が記載されている。






































(5)甲5に記載された事項
甲5には、以下の事項が記載されている。
「【請求項4】
(c)ポリイソシアネート化合物が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変成体を用いて得られたイソシアネートプレポリマーである請求項3記載の発泡体。」
「【0053】
ポリイソシアネート化合物の代表例としてはイソシアネートプレポリマー等が挙げられる。
【0054】
イソシアネートプレポリマーは、ポリイソシアネートモノマーとポリオールとをポリイソシアネートモノマーの過剰の存在下で、常法により攪拌、反応させることによって得られる。」

(6)甲6に記載された事項
甲6には、以下の事項が記載されている。
「1.軟質フォームの製造方法であって、
1)NCO価10〜25重量%を有する、下記を含むポリイソシアネート組成物と:
a)過剰量の有機ポリイソシアネートと平均公称ヒドロキシル官能価2〜3、数平均当量1000〜3000およびオキシエチレン含量5〜25重量%を有するポリオールとを反応させることにより製造された、NCO価5〜15重量%を有するイソシアネートプレポリマー70〜90重量部;
b)NCO価30〜33重量%を有するポリイソシアネート10〜30重量部;
2)前記ポリイソシアネート組成物100重量部当たり30〜150重量部の量のポリオール組成物であって、下記を含むポリオール組成物を:
a)平均公称ヒドロキシル官能価2〜3、数平均当量1000〜3000、およびオキシエチレン含量5〜25重量%を有するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール70〜90重量部;
b)平均公称ヒドロキシル官能価2〜8、数平均分子量200〜3000、および全オキシアルキレン含量に対して少なくとも80重量%のオキシエチレン含量を有するポリエーテルポリオール5〜25重量部;
c)水2〜8重量部;
2a)、2b)および2c)の量は合わせて100重量部である;
ならびに所望により
d)添加剤
イソシアネート指数40〜100で反応させることによる方法。
・・・
3.イソシアネートフルポリマーの製造に用いられるポリイソシアネートが、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-および2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネートの異性体混合物、ウレトンイミンおよび/またはカルボジイミド改質ジフェニルメタンジイソシアネートであって少なくとも25重量%のNCO含量をもつもの、ならびに少なくとも25重量%のNCO含量をもつウレタン改質ジフェニルメタンジイソシアネートから選択される、請求項1に記載の方法。」(請求項1、3)

(7)甲7に記載された事項
甲7には、以下の事項が記載されている。
「【0008】
【発明の実施の形態】
(1)A液(プレポリマー)
本発明においてA液として使用する末端にNCO基を含有するウレタンプレポリマー(以下プレポリマーと略記する)は、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(以下カルボジイミド変性MDIと略記する)とポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下PTMGと略記する)から得られるものである。カルボジイミド変性MDIとは、カルボジイミド体(ウレトンイミン)を5〜40重量%、好ましくは10〜35重量%含有するMDIである。・・・」

(8)甲8に記載された事項
甲8には、以下の事項が記載されている。


」(154頁右欄8〜12行)

(9)甲9に記載された事項
甲9には、以下の事項が記載されている。
「【0003】
また強度面を向上させるために、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を使用したイソシアネート基末端プレポリマーを使用する方法が考えられるが、トルエンジイソシアネートと比較すると、本発明で使用する芳香族ジアミンとの反応が格段に早くなってしまい、またイソシアネート基末端プレポリマーの粘度も増大するなどの弊害があり、成形が困難なものとなってしまうなどの問題が生じてしまう。」

(10)甲10に記載された事項
甲10には、以下の事項が記載されている。
「【0005】
しかしながら、粘度に関して、先行技術から既知の4,4’-MDIベースのプレポリマーは、類似構造のTDI系と比べて不利な点を有する。したがって、98重量%の4,4’-MDIを含有するMDIベースのプレポリマーは、23℃にて70000mPa・sの粘度を有するが、一方、比較できるTDIベースのプレポリマーは、23℃にて11000mPa・sのみの粘度を有する。・・・」

(11)甲11に記載された事項
甲11には、以下の事項が記載されている。
「【0003】このイソシアネート末端ウレタンプレポリマー(A成分)の製造用原料イソシアネートとして通常TDIが使用されているが、これはジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を使用するとプレポリマーの粘度が高く、かつB成分との反応性も大きく、作業上不都合を生じ易いためである。」

(12)甲12に記載された事項
甲12には、以下の事項が記載されている。
「【0006】・・・一方ポリオール中に含有するオキシテトラメチレン基の分子量が600を越えるジヒドロキシポリオールから得られるウレタンプレポリマーは、低温(10℃以下)において著しい増粘傾向や結晶化現象を起すため、鎖延長剤、架橋剤、着色剤、可塑剤、あるいは各種エラストマー改質用充填剤の混合性が悪くなり、均一な配合物が得られないため、機械的性質に優れたエラストマーが得られにくく、又塗料化や合成皮革製造時の作業性に欠点を有する。このような増粘傾向や結晶化現象をおこし易い、ウレタンプレポリマーの場合、作業性を改良するため、トルエン、キシレン、ベンゼン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の有機溶剤及び可塑剤を加えることにより、増粘抑制や結晶化防止を行っているが、これら有機溶媒は、環境汚染や、作業者の健康阻害をひき起こす問題がある。」

(13)甲13に記載された事項
甲13には、以下の事項が記載されている。
「【0012】
プレポリマー組成物
ポリイソシアネートプレポリマー組成物は、(a)平均官能価が少なくとも2でありかつ少なくとも20重量%のジイソシアネートモノマーを含む有機ポリイソシアネート、(b)一価アルコールおよび(c)平均ヒドロキシル官能価が少なくとも1.8から3.2以下であるポリオールの反応生成物を含む。」
「【0027】
プレポリマー組成物は可塑剤の存在下に製造でき、結果として、可塑剤を含んでよい。可塑剤は、プレポリマー組成物を製造した後に添加されてもよい。可塑剤は、例えば、プレポリマー組成物から製造されるフォームの特性を変えるために、または、組成物の粘度を低下させ、それにより、加工および取扱を容易にするために、プレポリマー組成物中に存在してよい。・・・」

(14)甲14に記載された事項
甲14には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリウレタン系エラストマー用可塑剤およびそれを含有するポリウレタン系エラストマー組成物に関する。・・・」

(15)甲15に記載された事項
甲15には、以下の事項が記載されている。
「【0026】更に、必要に応じて、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、各種充填剤、内部離型剤、その他の加工助剤を加えて用いることができる。なお、これらの助剤の中でイソシアネートと反応しうる活性水素基を有さないものについては、ポリイソシアネートにあらかじめ混合して使用することもできる。
【0027】本発明における軟質ポリウレタンフォームの製造方法における手順は、ポリイソシアネート(A)以外の、ポリオール(B)、発泡剤(C)、触媒(D)、整泡剤(E)、必要に応じて架橋剤、添加剤をあらかじめ混合してポリオールプレミックスを準備し、これとポリイソシアネート組成物(B)の2成分を混合発泡させるという方法である。この2成分の混合には、公知のメカニカル攪拌装置を備えた低圧注入機や、高圧衝突混合方式を利用した高圧注入機を使用することができる。このときのイソシアネートインデックス(イソシアネート基/活性水素基×100)は50〜150、好ましくは70〜130の範囲である。混合液はその後、所定の金型に注入され、軟質ポリウレタンフォームが製造される。・・・」

(16)甲16に記載された事項
甲16には、以下の事項が記載されている。
「【0032】本発明の軟質ポリウレタンフォーム用ポリイソシアネートには、必要に応じて乳化剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、難燃剤、可塑剤、顔料・染料、抗菌剤・抗カビ剤等の公知の各種添加剤や助剤を添加することができる。」
「【0053】〔軟質ポリウレタンフォームへの応用〕
応用実施例1
P-1と以下に示すポリオールプレミックスを用いて、金型内で軟質ポリウレタンフォームを水発泡させた後、金型から取り出し、直ちにローラークラッシングした。その後、クラッシング後の成形品を一昼夜放置し、JIS K-6401に準じてフォームの各種物性を測定した。」

(17)甲17に記載された事項
甲17には、以下の事項が記載されている。
「【0023】
イソシアネート成分は可塑剤を含有することが可能である。イソシアネート成分がプレポリマーを含む場合、可塑剤は、また、プレポリマーが生成されてから添加することが可能であるか、またはその生成の間に存在することが可能である(多官能性(メタ)アクリレート化合物が可能であるように)。可塑剤は粘度を低下させることなどのいくつかの機能を発揮する、そこで、イソシアネート成分は加工し取り扱うことがより容易となり、発泡反応速度を修正するか、または得られるウレタンフォームの物理的特性を柔軟化するかまたは別なふうに修正する。・・・」
「【0054】
実施例1および2
A.イソシアネート末端化プレポリマーの調製可塑化イソシアネート末端化プレポリマーを、窒素雰囲気下で以下の成分を一緒に混合し、一定のNCO含量が得られるまで55℃で加熱することにより製造した。
【0055】
【表1】

【0056】
得られる可塑化プレポリマーは、12.93wt%のNCO%、325当量および2.92イソシアネート基/分子の平均官能価を有する。
【0057】
B.ポリオール成分の調製
・・・
【0059】
C.フォーム製造実施例1
上記Aからのプレポリマー25.68質量部をトリメチロールプロパン・トリメタクリレート(サルトマーからのサルトマー(登録商標)SR350)15部およびt-ブチル過酸化物0.5部と混合することにより、イソシアネート成分を調製した。得られる混合物を上記Bからのポリオール成分と41.18対26.18の質量比で混合した。メカニカル・ミキサーを用いて室温で混合を行った。混合成分を蓋なし容器中に注ぎ、放置して室温で硬化させた。得られるフォームは独立気泡で硬質であった。それは6.66ポンド/立方フィート(106.6kg/m3)の密度を有する。
【0060】
D.フォーム製造実施例2
プレポリマー27.03質量部をサルトマー(登録商標)SR350)23.14部およびt-ブチル過酸化物0.38部と混合することにより、イソシアネート成分を調製した。得られる混合物を、上記Cに記載される条件下で、上記Bからのポリオール成分と50.55対23.57の質量比で混合した。得られるフォームは独立気泡で硬質であり、7.44ポンド/立方フィート(119kg/m3)の密度を有する。」
「【0062】
実施例3〜6
A.イソシアネート末端化プレポリマーの調製
ポリイソシアネート末端化プレポリマーを、窒素雰囲気下で以下の成分を一緒に混合し、一定のNCO含量が得られるまで55℃で加熱することにより製造した。
【0063】
【表3】

【0064】
B.ポリオール・マスターバッチの調製
・・・
【0066】
C.フォーム製造実施例3
上記Aからのイソシアネート末端化プレポリマー18.77質量部を18.93部のサルトマー350および0.9部のt-ブチル過酸化物と混合することにより、イソシアネート成分を調製した。次に、イソシアネート成分を上記Bからのポリオール成分18.93部と実施例1Cに記載される一般条件下で混合した。微々たる収縮を示す独立気泡の低密度硬質フォームが得られた。【0067】
D.フォーム製造実施例4
上記Aからのイソシアネート末端化プレポリマー32.17部を25.29部のサルトマー350および1.12部のクメン・ヒドロペルオキシドと混合することにより、イソシアネート成分を調製した。次に、イソシアネート成分を上記Bからのポリオール成分36.92部と実施例1Cに記載される一般条件下で混合した。安定な独立気泡の低密度硬質フォームが得られた。
【0068】E.フォーム製造実施例5
上記Aからのイソシアネート末端化プレポリマー25部を10部のサルトマー350および0.98部のクメン・ヒドロペルオキシドと混合することにより、イソシアネート成分を調製した。次に、イソシアネート成分を上記Bからのポリオール成分28.65部と実施例1Cに記載される一般条件下で混合した。安定な独立気泡の低密度硬質フォームが得られた。
【0069】F.フォーム製造実施例6
上記Aからのイソシアネート末端化プレポリマー17.5部を5部のサルトマー350および0.76部のクメン・ヒドロペルオキシドと混合することにより、イソシアネート成分を調製した。次に、イソシアネート成分を上記Bからのポリオール成分20.04部と実施例1Cに記載される一般条件下で混合した。安定な独立気泡の低密度半可撓性のフォームが得られた。」

2 各乙号証に記載された事項
(1)乙1に記載された事項
乙1には、以下の事項が記載されている。



」(220頁9行〜221頁2行)

(2)乙2に記載された事項
乙2には、以下の事項が記載されている。


」(93頁1〜5行、図34)

(3)乙3に記載された事項
乙3には、以下の事項が記載されている。










第5 当審の判断
当審は、当審が通知した取消理由1及び2、並びに申立人が申し立てた申立理由1〜3によっては、本件発明1〜10に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。

1 取消理由1について
(1)取消理由1の概要
取消理由1は、概略、本件発明1〜10における発明特定事項である「インテグラルスキンフォーム」にはどのようなものが含まれ、どのようなものが含まれないのかが明確でない、というものである。

(2)判断
甲2、乙1及び乙2はいずれも当該技術分野の一般的な技術書と認められるところ、甲2には、「インテグラルスキンポリウレタンフォーム」の説明として、「ポリウレタン発泡組成物を・・・発泡型・・・に・・・発泡機を使って注入し,発泡成形すると,表皮の密度が高く,内部の密度が低い発泡成形品,いわゆるインテグラルスキンポリウレタンフォーム・・・が得られる」と記載され、乙1には、「ISFは,モールド品成形時に,型内壁と接触するフォームの発泡を抑えてエラストマー状のスキン層を作ることによって,表皮とフォームを同時成形する成形法である」と記載され(摘記箇所の最初の段落)、乙2には、「1回注入発泡のプロセスを用い,同一物質で連続したフォーム芯部(コア)とソリド表層部(スキン)を形成するPUFモールド品を,インテグラルスキンフォーム・・・という。図34に示すごとく,表層部から芯部フォームに至る密度分布は,最大値より連続的に放物線を描きながら変化してゆき,中心部で最小値をとる。」と記載されるとともに、図34に図示されたインテグラルスキンフォーム断面の密度分布からフォームの表層部の密度が内部よりも大きいことが具体的に見て取れる。
してみると、本件発明における「インテグラルスキンフォーム」は、本願出願時の技術常識に基づいて、「発泡を抑えたスキン層であるフォームの表層部とそうでないフォームの内部とを同時に発泡成形した成形品であって、フォームの表層部の密度が内部よりも大きい成形品」を意味するものと解される。
この点に関し、特許権者は、意見書の4頁の「b.インテグラルスキンフォーム(ISF)の意味」において、「乙第1号証及び乙第2号証からわかるとおり、インテグラルスキンフォーム(ISF)は、「発泡を抑えたスキン層(ソリド表層部、表皮)と、フォーム芯部(コア)とを同時成形したモールド成形品」のことであるというのが、本件特許出願時の当業者の認識」であり、「スキン層 (ソリド表層部、表皮)の発泡が抑えられている結果、乙第2号証にあるとおり、スキン層(ソリド表層部、表皮)の密度は、当然のことながらフォーム芯部(コア)よりも大きく、そして、両者の密度の差が、前者の発泡が抑えられ、後者がそうでないことによるのは当業者には明らかである。」と述べており、当審の示す上記の解釈は特許権者の主張に沿うものである。
以上のことから、本件発明における「インテグラルスキンフォーム」は、明確である。

(3)まとめ
したがって、「インテグラルスキンフォーム」を発明特定事項として含む本件発明1〜10は明確であり、取消理由1によっては取り消すことができない。

2 取消理由2及び3並びに申立理由1及び2について
取消理由2及び申立理由1は甲1に基づく新規性欠如という同旨の理由であり、また、取消理由3及び申立理由2は甲1を主引例とする進歩性欠如という同旨の理由であるので、まとめて以下に検討する。

(1)本件発明1について
ア 甲1に記載された発明
申立人が提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲1の実施例1に着目すると、【0037】にポリオール成分の配合が記載され、【0038】にイソシアネート基末端プレポリマーの合成が記載され、全体の配合と物性については、【表1】に記載され(物性の詳細については【0035】に記載)、【0039】には、発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法が2つ記載されており、このうち、2つ目の発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法を認定すると、以下の2つの発明が記載されているといえる。
「ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)[商品名PTG−2000SN(保土谷化学工業(株)製)]85部、ポリオキシプロピレンポリオール(分子量3000)[商品名GL−3000(三洋化成工業(株)製)]10部、1,4−ブタンジオール[1,4−BG]5部、水0.31部、シリコーン整泡剤[商品名SZ−1649(東レ・ダウコーニング製)]1部、紫外線吸収剤(TINUVIN B75)0.8部、ジオクチル錫ジラウレート(DOTDL)0.005部を45℃で混合して、ポリオール(B)成分を得て、ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250,4,4´−体含有量99%)[商品名ミリオネートMT(日本ポリウレタン工業製)40.0質量部と、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)[商品名PTG−2000SN(保土谷化学工業(株)製)]66.1質量部とを、80℃で4時間ウレタン化反応させることにより、NCO含量が10.0質量%のイソシアネート基末端プレポリマー(A)を得て、
45℃に加温した上記イソシアネート基末端プレポリマー(A)103.8重量部と、45℃に加温した上記ポリオール(B)成分100重量部とを混合することにより、前者のイソシアネート基のモル数を後者の水を含めたイソシアネート反応性活性水素基の合計モル数で割った値(〔NCO〕/〔OH〕)に100を掛けた値であるイソシアネートインデックスが105となしたウレタン形成性組成物とし、
このウレタン形成性組成物を攪拌機にて90〜120秒間機械的攪拌することにより、当該ウレタン形成性組成物中に空気を取り込ませ微分散させたフロス状の原料を調製し、
常圧下、金型(250mm×180mm×20mm)に注入し、密閉後、当該金型を120℃のオーブン内に30分間放置することにより、注入されたフロス状の原料を硬化させ発泡ポリウレタンエラストマーを形成させ、これを金型から取り出し、その後、80℃、12時間オーブン中で更に硬化した、
パッド密度が0.425g/cm3、破断時伸びEBが240%、引裂強度TRが8.1kN/m、反発弾性率(リュプケ)が79%である、発泡ポリウレタンエラストマー」(以下「甲1発明1A」という。)

「甲1発明1Aの発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法」(以下「甲1発明1B」という。)

同様に、甲1の実施例3に着目すると、以下の2つの発明が記載されているといえる。
「ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)[商品名PTG−2000SN(保土谷化学工業(株)製)]85部、ポリオキシプロピレンポリオール(分子量3000)[商品名GL−3000(三洋化成工業(株)製)]10部、1,4−ブタンジオール[1,4−BG]5部、水0.55部、シリコーン整泡剤[商品名SZ−1649(東レ・ダウコーニング製)]1部、紫外線吸収剤(TINUVIN B75)0.8部、ジオクチル錫ジラウレート(DOTDL)0.005部を45℃で混合して、ポリオール(B)成分を得て、ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250,4,4´−体含有量99%)[商品名ミリオネートMT(日本ポリウレタン工業製)44.4質量部と、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)[商品名PTG−2000SN(保土谷化学工業(株)製)]73.4質量部とを、80℃で4時間ウレタン化反応させることにより、NCO含量が10.0質量%のイソシアネート基末端プレポリマー(A)を得て、45℃に加温した上記イソシアネート基末端プレポリマー(A)115.1重量部と、45℃に加温した上記ポリオール(B)成分100重量部とを混合することにより、前者のイソシアネート基のモル数を後者の水を含めたイソシアネート反応性活性水素基の合計モル数で割った値(〔NCO〕/〔OH〕)に100を掛けた値であるイソシアネートインデックスが105となしたウレタン形成性組成物とし、
このウレタン形成性組成物を攪拌機にて90〜120秒間機械的攪拌することにより、当該ウレタン形成性組成物中に空気を取り込ませ微分散させたフロス状の原料を調製し、
常圧下、金型(250mm×180mm×20mm)に注入し、密閉後、当該金型を120℃のオーブン内に30分間放置することにより、注入されたフロス状の原料を硬化させ発泡ポリウレタンエラストマーを形成させ、これを金型から取り出し、その後、80℃、12時間オーブン中で更に硬化した、
パッド密度が0.403g/cm3、破断時伸びEBが381%、引裂強度TRが8.1kN/m、反発弾性率(リュプケ)が60%である、発泡ポリウレタンエラストマー」(以下「甲1発明3A」という。)

「甲1発明3Aの発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法」(以下「甲1発明3B」という。)

同様に、甲1の実施例4に着目すると、以下の2つの発明が記載されているといえる。
「ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)[商品名PTG−2000SN(保土谷化学工業(株)製)]85部、ポリオキシプロピレンポリオール(分子量3000)[商品名GL−3000(三洋化成工業(株)製)]10部、1,4−ブタンジオール[1,4−BG]5部、水1.28部、シリコ ーン整泡剤[商品名SZ−1649(東レ・ダウコーニング製)]1部、紫外線吸収剤(TINUVIN B75)0.8部、ジオクチル錫ジラウレート(DOTDL)0.005部を45℃で混合して、ポリオール(B)成分を得て、ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250,4,4´−体含有量99%)[商品名ミリオネートMT(日本ポリウレタン工業製)57.9質量部と、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)[商品名PTG−2000SN(保土谷化学工業(株)製)]95.7質量部とを、80℃で4時間ウレタン化反応させることにより、NCO含量が10.0質量%のイソシアネート基末端プレポリマー(A)を得て、45℃に加温した上記イソシアネート基末端プレポリマー(A)149.0重量部と、45℃に加温した上記ポリオール(B)成分100重量部とを混合することにより、前者のイソシアネート基のモル数を後者の水を含めたイソシアネート反応性活性水素基の合計モル数で割った値(〔NCO〕/〔OH〕)に100を掛けた値であるイソシアネートインデックスが105となしたウレタン形成性組成物とし、
このウレタン形成性組成物を攪拌機にて90〜120秒間機械的攪拌することにより、当該ウレタン形成性組成物中に空気を取り込ませ微分散させたフロス状の原料を調製し、
常圧下、金型(250mm×180mm×20mm)に注入し、密閉後、当該金型を120℃のオーブン内に30分間放置することにより、注入されたフロス状の原料を硬化させ発泡ポリウレタンエラストマーを形成させ、これを金型から取り出し、その後、80℃、12時間オーブン中で更に硬化した、
パッド密度が0.4g/cm3、破断時伸びEBが321%、引裂強度TRが12.1kN/m、反発弾性率(リュプケ)が62%である、発泡ポリウレタンエラストマー」(以下「甲1発明4A」という。)

「甲1発明4Aの発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法」(以下「甲1発明4B」という。)

同様に、甲1の実施例5に着目すると、以下の2つの発明が記載されているといえる。
「ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)[商品名PTG−2000SN(保土谷化学工業(株)製)]85部、ポリオキシプロピレンポリオール(分子量3000)[商品名GL−3000(三洋化成工業(株)製)]10部、1,4−ブタンジオール[1,4−BG]5部、水2.3部、シリコーン整泡剤[商品名SZ−1649(東レ・ダウコーニング製)]1部、紫外線吸収剤(TINUVIN B75)0.8部、ジオクチル錫ジラウレート(DOT DL)0.005部を45℃で混合して、ポリオール(B)成分を得て、ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250,4,4´−体含有量99%)[商品名ミリオネートMT(日本ポリウレタン工業製)76.7質量部と、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)[商品名PTG−2000SN(保土谷化学工業(株)製)]126.8質量部とを、80℃で4時間ウレタン化反応させることにより、NCO含量が10.0質量%のイソシアネート基末端プレポリマー(A)を得て、45℃に加温した上記イソシアネート基末端プレポリマー(A)195.5重量部と、45℃に加温した上記ポリオール(B)成分100重量部とを混合することにより、前者のイソシアネート基のモル数を後者の水を含めたイソシアネート反応性活性水素基の合計モル数で割った値(〔NCO〕/〔OH〕)に100を掛けた値であるイソシアネートインデックスが105となしたウレタン形成性組成物とし、
このウレタン形成性組成物を攪拌機にて90〜120秒間機械的攪拌することにより、当該ウレタン形成性組成物中に空気を取り込ませ微分散させたフロス状の原料を調製し、
常圧下、金型(250mm×180mm×20mm)に注入し、密閉後、当該金型を120℃のオーブン内に30分間放置することにより、注入されたフロス状の原料を硬化させ発泡ポリウレタンエラストマーを形成させ、これを金型から取り出し、その後、80℃、12時間オーブン中で更に硬化した、
パッド密度が0.399g/cm3、破断時伸びEBが231%、引裂強度TRが13.0kN/m、反発弾性率(リュプケ)が63%である、発泡ポリウレタンエラストマー」(以下「甲1発明5A」という。)

「甲1発明5Aの発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法」(以下「甲1発明5B」という。)

同様に、甲1の比較例6に着目すると、以下の2つの発明が記載されているといえる。

「ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)[商品名PTG−2000SN(保土谷化学工業(株)製)]89.5部、ポリオキシプロピレンポリオール(分子量3000)[商品名GL−3000(三洋化成工業(株)製)]10.5部、水1.28部、シリコーン整泡剤[商品名SZ−1649(東レ・ダウコーニング製)]1部、紫外線吸収剤(TINUVIN B75)0.8部、ジオクチル錫ジラウレート(DOTDL)0.005部を45℃で混合して、ポリオール(B)成分を得て、ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250,4,4´−体含有量99% )[商品名ミリオネートMT(日本ポリウレタン工業製)40.3質量部と、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)[商品名PTG−2000SN(保土谷化学工業(株)製)]66.6質量部とを、80℃で4時間ウレタン化反応させることにより、NCO含量が10.0質量%のイソシアネート基末端プレポリマー(A)を得て、45℃に加温した上記イソシアネート基末端プレポリマー(A)103.6重量部と、45℃に加温した上記ポリオール(B)成分100重量部とを混合することにより、前者のイソシアネート基のモル数を後者の水を含めたイソシアネート反応性活性水素基の合計モル数で割った値(〔NCO〕/〔OH〕)に100を掛けた値であるイソシアネートインデックスが105となしたウレタン形成性組成物とし、
このウレタン形成性組成物を攪拌機にて90〜120秒間機械的攪拌することにより、当該ウレタン形成性組成物中に空気を取り込ませ微分散させたフロス状の原料を調製し、
常圧下、金型(250mm×180mm×20mm)に注入し、密閉後、当該金型を120℃のオーブン内に30分間放置することにより、注入されたフロス状の原料を硬化させ発泡ポリウレタンエラストマーを形成させ、これを金型から取り出し、その後、80℃、12時間オーブン中で更に硬化した、
パッド密度が0.380g/cm3、破断時伸びEBが92%、引裂強度TRが5.5kN/m、反発弾性率(リュプケ)が62%である、発泡ポリウレタンエラストマー」(以下「甲1発明6A」という。)

「甲1発明6Aの発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法」(以下「甲1発明6B」という。)

イ 甲1発明3Aとの対比・検討
(ア)対比
事案に鑑み、甲1発明3Aから、本件発明1と対比する。
甲1発明3Aにおける「発泡ポリウレタンエラストマー」は、発泡したポリウレタンすなわちポリウレタンフォームであることから、その限りにおいて、本件発明1の「ポリウレタンインテグラルスキンフォーム」と一致する。
甲1発明3Aにおける「ジオクチル錫ジラウレート(DOTDL)」、「水」は、本件明細書の【0038】、【0039】の記載からみて、それぞれ、本件発明1における「触媒(C)」、「発泡剤(D)」に相当する。
また、甲1発明3Aにおける「イソシアネート基末端プレポリマー(A)」は、「ジフェニルメタンジイソシアネート」と「ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)[商品名PTG−2000SN]」をウレタン化反応させて得られ、NCO含量が10.0質量%のプレポリマーであるから、本件発明1における「ジフェニルメタンジイソシアネートと数平均分子量1,000〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコールとのウレタン変性体であり
、イソシアネート基含有率7〜25質量%の有機ポリイソシアネート(a1)」である「有機ポリイソシアネート組成物(A)」に相当する。
さらに、甲1発明3Aにおける「ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)」を「85部」、「ポリオキシプロピレンポリオール(分子量3000)」を「10部」、「1,4−ブタンジオール」を「5部」含む「ポリオール(B)成分」は、「ポリオール(B)成分」中、「ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)」を85質量%含むから、本件発明1における「ポリオール成分(B)が、数平均分子量600〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコール(b1)を含み、ポリオール成分(B)中の(b1)の比率が50質量%以上である」との条件を満足する。

そうすると、本件発明1と甲1発明3Aは、
「少なくとも有機ポリイソシアネート組成物(A)、ポリオール成分(B)、触媒(C)、および発泡剤(D)を原料とするポリウレタンフォームであって、有機ポリイソシアネート組成物(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートと数平均分子量1,000〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコールとのウレタン変性体であり、イソシアネート基含有率7〜25質量%の有機ポリイソシアネート(a1)であること、およびポリオール成分(B)が、数平均分子量600〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコール(b1)を含み、ポリオール成分(B)中の(b1)の比率が50質量%以上であること、を特徴とするポリウレタンフォーム」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本件発明1は、ポリウレタンフォームが「インテグラルスキンフォーム」であるのに対し、甲1発明3Aは当該特定がない点

(イ)判断
a 相違点1が実質的な相違点か否かの検討
(a)甲1の記載について
上記相違点1について検討するに、甲1には、発泡ポリウレタンエラストマーがインテグラルスキンフォームであることは明記されていない。
そして、上記1(2)で示したとおり、「インテグラルスキンフォーム」は、発泡を抑えたスキン層であるフォームの表層部とそうでないフォームの内部とを同時に発泡成形した成形品であって、フォームの表層部の密度が内部よりも大きい成形品を意味すると解釈される。この解釈に基づいて判断すると、甲1において、発泡ポリウレタンエラストマーが金型を用いて一度に発泡成形して得られた成形品であることは記載されているものの(【0039】)、その表層部の密度が内部よりも大きいことは記載されておらず、また、これが甲1の記載から明らかでもないから、甲1発明3Aがインテグラルスキンフォームであるとはいえない。

(b)甲4に記載の実験について
甲4には、本件明細書に記載される実施例8を基にした実験1−1で得られたポリウレタンインテグラルスキンフォームと、甲1の実施例1、3〜5、比較例6を基にした実験2−1〜2−5で得られた発泡ポリウレタンエラストマーの物性、断面状態が記載されている。
しかしながら、甲4には、実験2−1〜2−5について、フォーム断面の密度分布が示されていないから表層部の方が内部よりも密度が大きいのか具体的に判断することができないし、走査電子顕微鏡により得られた断面状態を示す図3〜7を見てもフォーム内部と区別できるような発泡の抑えられたスキン層の存在を確認することすらできないから、これらの実験で得られた成形品が、発泡を抑えたスキン層であるフォームの表層部とそうでないフォームの内部とを同時に発泡成形した成形品であって、フォームの表層部の密度が内部よりも大きい成形品に相当するとは直ちには認められない。
してみると、甲4記載の実験結果からでは、甲1の実施例1、3〜5、比較例6で得られた発泡ウレタンエラストマーがインテグラルスキンフォームであるとはいえない。

(c)乙3に記載の実験について
乙3には、甲1の実施例1、3〜5、比較例6を基にした実験甲1−1,1−3〜1−6で得られた発泡ポリウレタンエラストマーの断面写真及び密度分布と、本件明細書に記載される実施例8を基にした実験で得られたポリウレタンインテグラルスキンフォームの断面写真及び密度分布が図示されている。ここで、乙3の「4.実験内容」の「(2)実験方法」、「5.(参考)特許6759648号の実施例8」の「(1)特許6759648号の実施例8」の記載によれば、各実験で採用された原料及び製造方法は、甲1及び本件明細書で開示された原料及び製造方法とそれぞれ同様であるから、それぞれ忠実な再現実験であるといえる。
そして、実験甲1−1,1−3〜1−6について、乙3の「4.実験内容」の「(3)評価結果」によれば、「ア.断面の観察」の各図からいずれもフォームの表面付近に内部と同様の発泡が見られており、発泡が抑えられたスキン層の存在は確認できない。さらに、同「イ.密度分布の測定」のグラフから実験甲1−1,1−3〜1−6のいずれについてもフォームの表面付近と内部とで密度に大きな差の無いことが具体的に確認できる。一方、実施例8の再現実験について、同「5.(参考)特許6759648号の実施例8」の「(2)断面及び密度分布」の「ア.断面」の図から、表面付近の目測約200μm程度の厚さにわたって、より内部と比べて気泡が小さくその数も少ない、発泡が抑えられた領域が存在することが見て取れるし、さらに、同「イ.密度分布」のグラフから表面に近い部分が内部よりも密度が顕著に大きいことが具体的に確認できるから、当該実験と、実験甲1−1,1−3〜1−6との間には、断面状態及び厚さ方向の密度分布において明確な差違が存在するといえる
してみると、乙3記載の実験結果からでは、甲1の実施例1、3〜5、比較例6について、インテグラルスキンフォームであるとはいえない。

(d)甲4及び乙3の記載を踏まえた判断
結局のところ、上記(b)、(c)のいずれの検討結果からも、甲1発明3Aはインテグラルスキンフォームであるとはいえない。
よって、相違点1は実質的な相違点である。

b 容易想到性の検討
相違点1が実質的な相違点であることを踏まえ、甲1発明3Aにおける発泡ウレタンエラストマーをインテグラルスキンフォームとすることの容易想到性について検討する。
上記a(a)で述べたように、甲1には、発泡ポリウレタンエラストマーをインテグラルスキンフォームとすることについては何ら記載が無い。
甲2、3は当該技術分野における一般的な技術書であり、インテグラルスキンフォームについては、基本的な特徴や用途が説明されているにとどまるものであって、甲1発明3Aの発泡ポリウレタンエラストマーをインテグラルスキンフォームとするための積極的な動機付けとなる記載は見当たらない。
また、甲5〜17の各文献には、そもそもインテグラルスキンフォームに関する具体的な記載はない。
なお、甲4、18は、本願出願時の公知文献ではないので、相違点に係る発明特定事項の容易想到性を検討するための副引例又は周知文献として参酌するものではない。
よって、各甲号証を参照しても、甲1発明3Aにおいて相違点1に係る本件発明1の特定事項であるインテグラルスキンフォームを採用することは当業者にとって容易に想到し得たことでない。

c 結論
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明3Aではないし、甲1発明3Aと甲1及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に想到できた発明であるともいえない。

ウ 甲1発明6Aとの対比・検討
(ア)対比
甲1の比較例6である甲1発明6Aは甲1発明3Aと比較して、ポリオール成分の種類として1,4−ブタンジオールを含んでいない点以外は同じであることを踏まえた上で本件発明1と甲1発明6Aとを対比すると、両者は上記イ(ア)と同じ点で一致し、下記の点で相違している。

相違点2:本件発明1は、ポリウレタンフォームが「インテグラルスキンフォーム」であるのに対し、甲1発明6Aでは当該特定がない点

(イ)判断
相違点2は、上記イ(ア)の相違点1と同様のものである。
そして、相違点1について上記イ(イ)aで検討したのと同じ理由により、甲4及び乙3に記載の甲1の比較例6に基づく実験の結果を参照しても、甲1発明6Aがインテグラルスキンフォームであるとはいえないから、相違点2は実質的な相違点である。
さらに、相違点1について上記イ(イ)bで検討したのと同じ理由により、各甲号証を参照しても、甲1発明6Aにおいて相違点2に係る本件発明1の特定事項であるインテグラルスキンフォームを採用することは当業者にとって容易に想到し得たことでない。
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明6Aではないし、甲1発明6Aと甲1及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に想到できた発明であるともいえない。

エ 甲1発明1A、4A、5Aとの対比・検討
(ア)対比
甲1の実施例1、4、5である甲1発明1A、4A、5Aは甲1発明3Aと原料成分が同じであることを踏まえた上で本件発明1と甲1発明1A、4A、5Aとをそれぞれ対比すると、両者は上記イ(ア)と同じ点で一致し、下記の点で相違している。

相違点3:本件発明1は、ポリウレタンフォームが「インテグラルスキンフォーム」であるのに対し、甲1発明1A、4A、5Aでは当該特定がない点

(イ)判断
相違点3は、上記イ(ア)の相違点1と同様のものである。
そして、相違点1について上記イ(イ)aで検討したのと同じ理由により、甲4及び乙3に記載の甲1の実施例1、4、5に基づく実験の結果を参照しても、甲1発明1A、4A、5Aがインテグラルスキンフォームであるとはいえないから、相違点3は実質的な相違点である。
さらに、相違点1について上記イ(イ)bで検討したのと同じ理由により、各甲号証を参照しても、甲1発明1A、4A、5Aにおいて相違点3に係る本件発明1の特定事項であるインテグラルスキンフォームを採用することは当業者にとって容易に想到し得たことでない。
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明1A、4A、5Aではないし、これら甲1記載の発明と甲1及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に想到できた発明であるともいえない。

オ 小括
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明と甲1及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に想到できた発明でもない。

(2)本件発明2〜6について
本件発明2〜6は、本件発明1を引用してさらに限定した発明である。
したがって、上記(1)で述べた理由と同じ理由により、本件発明4は、甲1に記載された発明ではなく、また、本件発明2〜6は、甲1に記載された発明と甲1及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に想到できた発明でもない。

(3)本件発明7について
ア 甲1発明1B、3B〜6Bとの対比
本件発明7と甲1発明1B、3B〜6Bを、上記(1)と同様に対比するに、甲1発明1B、3B〜6Bにおける「発泡ポリウレタンエラストマー」は、発泡していることから少なくとも「ポリウレタンフォーム」である点で、本件発明7と一致し、甲1発明1B、3B〜6Bにおける「ジオクチル錫ジラウレート(DOTDL)」、「水」は、それぞれ、本件発明7における「触媒(C)」、「発泡剤(D)」に相当し、甲1発明1B、3B〜6Bでは、「ジオクチル錫ジラウレート(DOTDL)」、「水」を含む「ポリオール(B)成分」と「イソシアネート基末端プレポリマー(A)」を反応させるから、本件発明7に係る「有機ポリイソシアネート組成物(A)とポリオール成分(B)とを、触媒(C)、および発泡剤(D)の存在下で反応させる」との点を満たす。
また、甲1発明1B、3B〜6Bにおける「イソシアネート基末端プレポリマー(A)」は、「ジフェニルメタンジイソシアネート」と「ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)[商品名PTG−2000SN]」をウレタン化反応させて得られ、NCO含量が10.0質量%のプレポリマーであるから、本件発明7における「ジフェニルメタンジイソシアネートを数平均分子量1,000〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコールにてウレタン変性したイソシアネート基含有率7〜25質量%の有機ポリイソシアネート(a1)」である「有機ポリイソシアネート組成物(A)」に相当する。
さらに、甲1発明1B、3B〜6Bにおける「ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)」は、「ポリオール(B)成分」中、50質量%以上含むから、本件発明7における「ポリオール成分(B)が、数平均分子量600〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコール(b1)を含み、ポリオール成分(B)中の(b1)の比率が50質量%以上である」との条件を満足する。

そうすると、本件発明7と甲1発明1B、3B〜6Bは、
「有機ポリイソシアネート組成物(A)とポリオール成分(B)とを、触媒(C)、および発泡剤(D)の存在下で反応させるポリウレタンフォームの製造方法において、有機ポリイソシアネート組成物(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートを数平均分子量1,000〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコールにてウレタン変性したイソシアネート基含有率7〜25質量%の有機ポリイソシアネート(a1)であること、および、ポリオール成分(B)が、数平均分子量600〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコール(b1)を含み、ポリオール成分(B)中の(b1)の比率が50質量%以上であること、を特徴とするポリウレタンフォームの製造方法」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点4:本件発明7は、ポリウレタンフォームが「インテグラルスキンフォーム」であるのに対し、甲1発明1B、3B〜6Bには、当該特定がない点

イ 判断
相違点4は、上記(1)イ(ア)の相違点1と同様のものである。
そして、相違点1について上記(1)イ(イ)aで検討したのと同じ理由により、甲4及び乙3に記載の実験の結果を参照しても、甲1発明1B、3B〜6Bの発泡ポリウレタンエラストマーがインテグラルスキンフォームであるとはいえないから、相違点4は実質的な相違点であると認める。
さらに、相違点1について上記(1)イ(イ)bで検討したのと同じ理由により、各甲号証を参照しても、甲1発明1B、3B〜6Bにおける発泡ポリウレタンエラストマーを相違点3に係る本件発明7の特定事項であるインテグラルスキンフォームとすることは当業者にとって容易に想到し得たことでない。
以上のとおりであるから、本件発明7は、甲1発明1B、3B〜6Bではないし、これら甲1記載の発明と甲1及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に想到できた発明であるともいえない。

(4)本件発明8〜10について
本件発明8〜10は、本件発明7を引用してさらに限定した発明である。
したがって、上記(3)で述べた理由と同じ理由により、本件発明10は、甲1に記載された発明ではなく、また、本件発明8〜10は、甲1に記載された発明並びに甲1及び他の甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に想到できた発明でもない。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、取消理由2及び3並びに申立理由1及び2によっては本件発明1〜10に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
したがって、当審が通知した取消理由及び特許異議申立ての申立理由によっては、本件発明1〜10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
異議決定日 2021-12-28 
出願番号 P2016-058313
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C08G)
P 1 651・ 121- Y (C08G)
P 1 651・ 537- Y (C08G)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 佐藤 健史
土橋 敬介
登録日 2020-09-07 
登録番号 6759648
権利者 東ソー株式会社
発明の名称 ポリウレタンインテグラルスキンフォーム及びその製造方法  
代理人 財部 俊正  
代理人 吉住 和之  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  
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