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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B05D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B05D
管理番号 1381678
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-03-29 
確定日 2021-11-19 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6764480号発明「膜の製造方法、積層体の製造方法および電子デバイスの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6764480号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1−12]に訂正することを認める。 特許第6764480号の請求項1及び4ないし12に係る特許を維持する。 特許第6764480号の請求項2及び3に対する特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許6764480号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)8月18日(優先権主張 平成28年8月25日)を国際出願日とする出願であって、令和2年9月15日にその特許権の設定登録(請求項の数12)がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和3年3月29日に特許異議申立人 特許業務法人朝日奈特許事務所(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし12)がされ、同年6月4日付けで取消理由が通知され、同年7月30日に特許権者 富士フイルム株式会社(以下、「特許権者」という。)より意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年8月27日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を特許異議申立人に行ったところ、同年9月28日に特許異議申立人より意見書が提出されたものである。

第2 訂正の可否についての判断

1 訂正の内容

本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「前記樹脂組成物層に対して露光および現像を行ってパターンを形成した後、前記樹脂組成物層を2段階以上の多段階で加熱し、2段階目の加熱を1段階目の加熱温度よりも高い温度で行う、膜の製造方法。」との記載を「前記樹脂組成物層に対して露光および現像を行ってパターンを形成した後、前記樹脂組成物層を2段階以上の多段階で加熱し、2段階目の加熱を1段階目の加熱温度よりも高い温度で行い、前記1段階目の加熱を、140〜170℃の温度にて10〜60分行い、前記2段階目の加熱を、180〜240℃の温度にて60〜300分行う、膜の製造方法。」に訂正する。
あわせて、請求項1を直接または間接的に引用する、請求項4ないし12についても、同様に訂正する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4における「請求項1〜3のいずれか1項に」の記載を「請求項1に」に訂正する。
あわせて、請求項4を直接または間接的に引用する、請求項6ないし12についても、同様に訂正する。

(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5における「請求項1〜3のいずれか1項に」の記載を「請求項1に」に訂正する。
あわせて、請求項5を直接または間接的に引用する、請求項6ないし12についても、同様に訂正する。

(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6における「請求項1〜5のいずれか1項」の記載を「請求項1、4及び5のいずれか1項」に訂正する。
あわせて、請求項6を直接または間接的に引用する、請求項7ないし12についても、同様に訂正する。

(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7における「請求項1〜6のいずれか1項」の記載を「請求項1及び4〜6のいずれか1項」に訂正する。
あわせて、請求項7を直接または間接的に引用する、請求項8ないし12についても、同様に訂正する。

(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8における「請求項1〜7のいずれか1項」の記載を「請求項1及び4〜7のいずれか1項」に訂正する。
あわせて、請求項8を直接または間接的に引用する、請求項9ないし12についても、同様に訂正する。

(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9における「請求項1〜7のいずれか1項」の記載を「請求項1及び4〜7のいずれか1項」に訂正する。
あわせて、請求項9を直接または間接的に引用する、請求項10ないし12についても、同様に訂正する。

(10) 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項11における「請求項1〜7のいずれか1項」の記載を「請求項1及び4〜7のいずれか1項」に訂正する。
あわせて、請求項11を引用する、請求項12についても、同様に訂正する。

(11) 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項12における「請求項1〜7のいずれか1項」の記載を「請求項1及び4〜7のいずれか1項」に訂正する。

(12) 一群の請求項について
本件訂正請求による訂正前の請求項1〜12について、訂正前の請求項2〜12は訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正請求による訂正後の請求項1〜12は、特許法第120条の5第4稿に規定する一群の請求項である。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1) 訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、「1段階目の加熱」と「2段階目の加熱」の加熱条件がそれぞれ「140〜170℃の温度にて10〜60分行う」こと、「180〜240℃の温度にて60〜300分行う」ことを限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、「1段目の加熱」と「2段目の加熱」の加熱条件については、明細書の段落【0025】及び【0029】に記載されている。
してみると、訂正事項1に係る請求項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項1を直接または間接的に引用する、請求項4ないし12についても、同様である。

(2) 訂正事項2及び3について
訂正事項2に係る請求項2の訂正及び訂正事項3に係る請求項3の訂正はいずれも、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当該訂正が願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

(3) 訂正事項4ないし11について
訂正事項4ないし11に係る請求項4ないし12の訂正はいずれも、請求項2、3が削除されたことに伴い、引用先請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当該訂正が願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
訂正の対象となる請求項を直接又は間接的に引用する他の請求項においても同様である。

(4) まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1−12]について訂正することを認める。

第3 本件特許発明

上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。また、本件特許発明1ないし本件特許発明12を総称して、「本件特許発明」という場合がある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
ポリイミド前駆体と反応性基を有するシランカップリング剤とを含む樹脂組成物を用いて支持体上に樹脂組成物層を形成し、
前記樹脂組成物が感光性樹脂組成物であり、
前記樹脂組成物層に対して露光および現像を行ってパターンを形成した後、前記樹脂組成物層を2段階以上の多段階で加熱し、2段階目の加熱を1段階目の加熱温度よりも高い温度で行い、前記1段階目の加熱を、140〜170℃の温度にて10〜60分行い、前記2段階目の加熱を、180〜240℃の温度にて60〜300分行う、膜の製造方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記シランカップリング剤が有する反応性基が、酸基、アミノ基、エチレン性不飽和結合を有する基、および、環状エーテル基から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の膜の製造方法。
【請求項5】
前記シランカップリング剤が有する反応性基が、酸基、エチレン性不飽和結合を有する基、および、環状エーテル基から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の膜の製造方法。
【請求項6】
前記ポリイミド前駆体が、式(1)で表される繰り返し単位を含むポリイミド前駆体である、請求項1、4及び5のいずれか1項に記載の膜の製造方法。
【化1】

式(1)中、A21およびA22は、それぞれ独立に、酸素原子または−NH−を表し、R21は、2価の有機基を表し、R22は、4価の有機基を表し、R23およびR24は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。
【請求項7】
前記樹脂組成物層の形成が、前記樹脂組成物を、支持体に塗布することにより行われる、請求項1及び4〜6のいずれか1項に記載の膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1及び4〜7のいずれか1項に記載の膜の製造方法を含む積層体の製造方法。
【請求項9】
請求項1及び4〜7のいずれか1項に記載の膜の製造方法を用いて膜を製造する工程を2回以上繰り返す、請求項8に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
更に、金属層を形成する工程を含む、請求項8または9に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
請求項1及び4〜7のいずれか1項に記載の膜の製造方法を用いて膜を製造する工程と、前記膜上に金属層を形成する工程とを交互にそれぞれ2回以上行う、請求項8〜10のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
請求項1及び4〜7のいずれか1項に記載の膜の製造方法、または、請求項8〜11のいずれか1項に記載の積層体の製造方法を含む、電子デバイスの製造方法。」

第4 特許異議申立書に記載された特許異議申立理由について

特許異議申立人が特許異議申立書において、請求項1ないし12に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。

申立理由1−1(甲第1号証を根拠とする新規性
本件特許の請求項1、2及び4ないし12に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び4ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

申立理由1−2(甲第2号証を根拠とする新規性
本件特許の請求項1及び3ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び3ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

申立理由1−3(甲第3号証を根拠とする新規性
本件特許の請求項1ないし9及び12に係る発明は、下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9及び12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

申立理由1−4(甲第4号証を根拠とする新規性
本件特許の請求項1及び3ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び3ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

申立理由2−1(甲第1号証を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

申立理由2−2(甲第2号証を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

申立理由2−3(甲第3号証を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

申立理由2−4(甲第4号証を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

9 証拠方法
甲第1号証:特開2000−327775号公報
甲第2号証:特開2012−194520号公報
甲第3号証:特開2006−309202号公報
甲第4号証:特開2011−128359号公報

第5 取消理由通知に記載した取消理由について

請求項1ないし12に係る特許に対して、当審が令和3年5月28日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。(なお、特許異議申立理由のうち、申立理由1−1のうち請求項1及び4ないし12に係る部分、申立理由1−2、申立理由1−3、申立理由1−4のうち請求項1、3、4及び6ないし12に係る部分、申立理由2−1、申立理由2−2、申立理由2−3及び申立理由2−4はいずれも取消理由に包含される。)

取消理由1−1(甲第1号証を根拠とする新規性
本件特許の請求項1及び4ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び4ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

取消理由1−2(甲第2号証を根拠とする新規性
本件特許の請求項1及び3ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び3ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

取消理由1−3(甲第3号証を根拠とする新規性
本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

取消理由1−4(甲第4号証を根拠とする新規性
本件特許の請求項1、3、4及び6ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、4及び6ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

取消理由2−1(甲第1号証を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

取消理由2−2(甲第2号証を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1いし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

取消理由2−3(甲第3号証を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

取消理由2−4(甲第4号証を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

第6 当審の判断

1 取消理由について

(1) 主な証拠の記載等

ア 甲第1号証の記載事項等

(ア) 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「耐熱性樹脂組成物の処理方法」に関し、次の記載がある。

「【請求項1】一般式(1)で表される構造単位を主成分とするポリマーによって基板上に形成したパターンを、(T±10)℃で10分間以上熱処理する工程を含有することを特徴とする耐熱性樹脂組成物の処理方法。(ただしTは該ポリマーに含まれる溶媒の1気圧における沸点(℃)である。)
【化1】

(R1は少なくとも2個以上の炭素原子を有する3価から8価の有機基、R2は、少なくとも2個以上の炭素原子を有する2価から6価の有機基、R3は水素、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオンまたは炭素数1から20までの有機基を示す。mは3から100000までの整数、nは0から2までの整数であり、nが2の場合のR3は同じでも異なっていてもよい。p、qは0から4までの整数であり、n+q>0である。)」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体分野において層間絶縁膜、表面保護層などに用いられる耐熱性樹脂の熱処理方法に関する。」
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】…(中略)…したがって、パターンエッジ部がだれることなく、より矩形になるようなポリマー組成や処理条件が求められている。
【0007】本発明はかかる従来技術の諸欠点に鑑み創案されたもので、本発明の目的は、耐熱性樹脂組成物のパターンを熱処理する際に、該耐熱性樹脂組成物に含まれる溶媒の沸点付近の温度で熱処理するステップをキュア条件に導入することによって、良好なパターンプロファイルを提供することにある。」
「【0011】
【発明の実施の形態】
…(中略)…
【0069】
本発明における耐熱性樹脂前駆体を基板に塗布する。塗布方法としては、スピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティングなどの方法がある。また塗布膜厚は、塗布方法、組成物の固形分濃度、粘度によって調整することができるが、通常乾燥後の膜厚が0.1〜150μmになるように塗布される。
…(中略)…
【0071】
次に、所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いるのが好ましい。露光量としては50〜1000mJ/cm2の範囲が好ましい。特に好ましい範囲は100〜600mJ/cm2である。
…(中略)…
【0073】
耐熱性樹脂組成物のパターンを形成するには、現像処理を行う。該耐熱性樹脂組成物がネガ型感光性の場合、未露光部を現像液で除去することにより、ポジ型感光性の場合、露光部を現像液で除去することによりレリーフ・パターンが得られる。
…(中略)…
【0079】現像後、200℃から500℃の温度を加えて耐熱性樹脂皮膜に変換する。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分から5時間実施する。一例としては、130℃、200℃、350℃で各30分づつ熱処理する。あるいは室温より400℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。本発明では、使用する溶媒の1気圧における沸点が(T±10)℃で10分間以上熱処理する工程を加えることが最も特徴であり、重要である。
【0080】本発明による感光性樹脂組成物により形成した耐熱性樹脂皮膜は、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜などの用途に用いられる。」
「【0081】
【実施例】以下、本発明を詳細に説明するために、実施例で説明する。
…(中略)…
【0083】合成例2
乾燥空気気流下、500mlの4つ口フラスコに無水ピロメリット酸10.9g(0.05モル)をγ−ブチロラクトン(GBL:1気圧における沸点は206℃)100gに分散させた。ここに、2−ヒドロキシエチルメタクリレート13g(0.1モル)、ピリジン7gを加えて50℃で2時間反応を行った。この溶液を氷冷し、ジシクロヘキシルカルボジイミド21g(0.1モル)をγ−ブチロラクトン25gに溶解した溶液を15分かけて滴下した。さらに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル10g(0.05モル)をγ−ブチロラクトン25gに分散させた溶液を10分かけて滴下した。この溶液を氷冷下、3時間反応させ、ついで50℃で1時間反応させた。反応終了後、析出した尿素化合物をろ過で除いた。ろ液を3lの水に投入してポリアミド酸エステルの沈殿を生成した。この沈殿を集めて、水とメタノールで洗浄の後に真空乾燥機で50℃、24時間乾燥した。このポリアミド酸エステルの粉体15gとメルカプトベンズイミダゾール0.75g、トリメチロールプロパントリアクリレート1g、エチレングリコールジメタクリレート2g、p−t−ブチルカテコール0.5g、ミヒラーケトン0.5g、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン0.5g、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム0.5gを加えた感光性耐熱性樹脂前駆体のワニスBを得た。」
「【0103】実施例および比較例
4インチのシリコンウエハ上に、ワニスAを、プリベーク後の膜厚が10μmとなるように、コーターディベロッパーSKW−636(大日本スクリーン(株)製)を用いて、スピンコートした。ついで、SKW−636の真空吸着式ホットプレートを用いて、95℃で2分、100℃で2分乾燥を行った。つぎに、塗膜を露光機(キャノン(株)製PLA−501F)にセットし、グレースケール(コダック社 Photographic step tablet No2 21 steps)を介して露光を行った。このときの紫外線の強度は480mJ/cm2(365nm)であった。
【0104】ホットプレートで80℃、1分間のベークを行った後、N−メチル−2−ピロリドン(70部)とキシレン(30部)の混合溶媒を用い、浸透現像を行った。現像はSKW−636の現像装置を用いた。ついで、イソプロピルアルコールで20秒間リンスし、スピンナーで回転乾燥した。光学顕微鏡を用いてパターンを観察したところ、所望のパターンが良好に得られた。得られた露光・現像済みのウエハをイナートオーブン(西山製作所製)を用いてキュアを行った。キュア条件は200℃を30分間、350℃を1時間とした(実施例)。ここで、ワニスAの溶媒であるNMPの1気圧における沸点は202℃である。比較として、140℃を30分間、350℃を1時間についてもおこなった(比較例)。キュア膜の断面を電子顕微鏡(日立製作所製S−2300)で観察し、20μmのライン&スペースの断面凸部分におけるエッジ部の角度θを求めた。
【0105】キュア条件が200℃で30分間、350℃で1時間の場合、実施例1のθは50゜であったが、キュア条件が140℃で30分間、350℃で1時間の場合の比較例1のθは40゜であった。したがって、ワニスの溶媒の沸点近傍の温度でキュアすることで、より矩形なパターン断面が得られることがわかった。
【0106】実施例2〜12、比較例2〜12についてはそれぞれ表1、表2に示した。なお、表中、PLA:露光機PLA−501F(キャノン製)、g線:g線ステッパーNSR−1506−g6E(ニコン製)、NMP/Xylene(7/3):N−メチル−2−ピロリドン(70部)とキシレン(30部)の混合溶媒、DV−605:現像液(東レ製)、TMAH:テトラメチルアンモニウムの水溶液、IPA:イソプロピルアルコールを示している。
【0107】
【表1】



(イ) 甲第1号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に実施例2の記載を中心に整理すると、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「乾燥空気気流下、500mlの4つ口フラスコに無水ピロメリット酸10.9g(0.05モル)をγ−ブチロラクトン(GBL:1気圧における沸点は206℃)100gに分散させ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート13g(0.1モル)、ピリジン7gを加えて50℃で2時間反応を行い、この溶液を氷冷し、ジシクロヘキシルカルボジイミド21g(0.1モル)をγ−ブチロラクトン25gに溶解した溶液を15分かけて滴下し、さらに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル10g(0.05モル)をγ−ブチロラクトン25gに分散させた溶液を10分かけて滴下し、この溶液を氷冷下、3時間反応させ、ついで50℃で1時間反応させ、反応終了後、析出した尿素化合物をろ過で除き、ろ液を3lの水に投入してポリアミド酸エステルの沈殿を生成し、この沈殿を集めて、水とメタノールで洗浄の後に真空乾燥機で50℃、24時間乾燥し、このポリアミド酸エステルの粉体15gとメルカプトベンズイミダゾール0.75g、トリメチロールプロパントリアクリレート1g、エチレングリコールジメタクリレート2g、p−t−ブチルカテコール0.5g、ミヒラーケトン0.5g、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン0.5g、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム0.5gを加えた感光性耐熱性樹脂前駆体のワニスBを得て、4インチのシリコンウエハ上に、ワニスBを、プリベーク後の膜厚が10μmとなるように、コーターディベロッパーSKW−636(大日本スクリーン(株)製)を用いて、スピンコートし、ついで、SKW−636の真空吸着式ホットプレートを用いて、95℃で2分、100℃で2分乾燥を行い、つぎに、塗膜を露光機(キャノン(株)製PLA−501F)にセットし、グレースケール(コダック社 Photographic step tablet No2 21 steps)を介して紫外線の強度は480mJ/cm2(365nm)で露光を行い、ホットプレートで80℃、1分間のベークを行った後、N−メチル−2−ピロリドン(70部)とキシレン(30部)の混合溶媒を用い、SKW−636の現像装置を用いて浸透現像を行い、ついで、イソプロピルアルコールで20秒間リンスし、スピンナーで回転乾燥し、得られた露光・現像済みのウエハをイナートオーブン(西山製作所製)を用いて200℃を30分間、350℃を1時間でキュアを行う、塗膜の製造方法。」

イ 甲第2号証の記載事項等

(ア) 甲第2号証の記載事項

甲第2号証には、「感光性樹脂組成物、硬化レリーフパターンの製造方法及び半導体装置」に関し、次の記載がある。

「【請求項1】
(A)ポリイミド前駆体であるポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリオキサゾール前駆体となり得るポリヒドロキシアミド、ポリアミノアミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、及びポリベンズチアゾールから成る群より選ばれる少なくとも一種の樹脂:100質量部、
(B)プリン誘導体:該(A)樹脂100質量部を基準として0.01〜10質量部、並びに、
(C)感光剤:該(A)樹脂100質量部を基準として1〜50質量部
を含む感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)樹脂は、下記一般式(1):
【化1】

{式中、X1は、4価の有機基であり、Y1は、2価の有機基であり、n1は、2〜150の整数であり、そしてR1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、
又は下記一般式(2):
【化2】

(式中、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3の有機基であり、そしてm1は、2〜10の整数である。)で表される1価の有機基、又は炭素数1〜4の飽和脂肪族基である。}で表される構造を有するポリイミド前駆体、下記一般式(3):
【化3】

{式中、X2は、炭素数6〜15の3価の有機基であり、Y2は、炭素数6〜35の2価の有機基であり、かつ同一の構造であるか、又は複数の構造を有してよく、R6は、炭素数3〜20のラジカル重合性の不飽和結合基を少なくとも一つ有する有機基であり、そしてn2は、1〜1000の整数である。}
で表される構造を有するポリアミド、下記一般式(4):
【化4】

{式中、Y3は、炭素原子を有する4価の有機基であり、Y4、X3及びX4は、それぞれ独立に、2個以上の炭素原子を有する2価の有機基であり、n3は、1〜1000の整数であり、n4は、0〜500の整数であり、n3/(n3+n4)>0.5であり、そしてX3及びY3を含むn3個のジヒドロキシジアミド単位並びにX4及びY4を含むn4個のジアミド単位の配列順序は問わない。}
で表される構造を有するポリオキサゾール前駆体、及び下記一般式(5):
【化5】


{式中、X5は、4〜14価の有機基であり、Y5は、2〜12価の有機基であり、R7及びR8は、それぞれ独立に、フェノール性水酸基、スルホン酸基又はチオール基から選ばれる基を少なくとも一つ有する有機基を示し、n5は、3〜200の整数であり、そしてm2及びm3は、0〜10の整数を示す。}
で表される構造を有するポリイミドから成る群より選ばれる少なくとも一種の樹脂である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
…(中略)…
【請求項9】
(1)請求項1〜8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布することによって感光性樹脂層を該基板上に形成する工程と、
(2)該感光性樹脂層を露光する工程と、
(3)該露光後の感光性樹脂層を現像してレリーフパターンを形成する工程と、
(4)該レリーフパターンを加熱処理することによって硬化レリーフパターンを形成する工程と
を含む、硬化レリーフパターンの製造方法。
…(中略)…
【請求項11】
請求項9又は10に記載の製造方法により得られる硬化レリーフパターンを含む半導体装置。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子部品の絶縁材料、並びに半導体装置におけるパッシベーション膜、バッファーコート膜及び層間絶縁膜等のレリーフパターンの形成に用いられる感光性樹脂組成物、それを用いた硬化レリーフパターンの製造方法、並びに半導体装置に関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の組成物は、膜厚を厚くすると銅又は銅合金上で変色が発生するといった問題があった。したがって、本発明は、銅又は銅合金の上でも変色を起こさない硬化膜を与える感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いてパターンを形成する硬化レリーフパターンの製造方法、並びに半導体装置を提供することを目的とする。」
「【発明を実施するための形態】
【0022】
…(中略)…
【0176】
<硬化レリーフパターンの製造方法及び半導体装置>
また、本発明は、(1)上述した本発明の感光性樹脂組成物を基板上に塗布することによって樹脂層を該基板上に形成する工程と、(2)該樹脂層を露光する工程と、(3)該露光後の樹脂層を現像してレリーフパターンを形成する工程と、(4)該レリーフパターンを加熱処理することによって硬化レリーフパターンを形成する工程とを含む、硬化レリーフパターンの製造方法を提供する。以下、各工程の典型的な態様について説明する。
【0177】
(1)感光性樹脂組成物を基板上に塗布することによって樹脂層を該基板上に形成する工程
本工程では、本発明の感光性樹脂組成物を基材上に塗布し、必要に応じてその後乾燥させて樹脂層を形成する。塗布方法としては、従来から感光性樹脂組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法等を用いることができる。
…(中略)…
【0179】
(2)樹脂層を露光する工程
本工程では、上記で形成した樹脂層を、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー等の露光装置を用いて、パターンを有するフォトマスク又はレチクルを介して又は直接に、紫外線光源等により露光する。
…(中略)…
【0181】
(3)露光後の樹脂層を現像してレリーフパターンを形成する工程
本工程においては、露光後の感光性樹脂層の露光部又は未露光部を現像除去する。ネガ型の感光性樹脂組成物を用いる場合(例えば(A)樹脂としてポリイミド前駆体を用いる場合)には、未露光部が現像除去され、ポジ型の感光性樹脂組成物を用いる場合(例えば(A)樹脂としてポリオキサゾール前駆体を用いる場合)には、露光部が現像除去される。現像方法としては、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸漬法等の中から任意の方法を選択して使用することができる。また、現像の後、レリーフパターンの形状を調整する等の目的で、必要に応じて任意の温度及び時間の組合せによる現像後ベークを施してもよい。
…(中略)…
【0187】
(4)レリーフパターンを加熱処理することによって硬化レリーフパターンを形成する工程
本工程では、上記現像により得られたレリーフパターンを加熱することによって、硬化レリーフパターンに変換する。加熱硬化の方法としては、ホットプレートによるもの、オーブンを用いるもの、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いるもの等種々の方法を選ぶことができる。加熱は、例えば180℃〜400℃で30分〜5時間の条件で行うことができる。加熱硬化の際の雰囲気気体としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いることもできる。
【0188】
<半導体装置>
本発明はまた、上述した本発明の硬化レリーフパターンの製造方法により得られる硬化レリーフパターンを含む、半導体装置を提供する。本発明は、半導体素子である基材と、前記基材上に上述した硬化レリーフパターン製造方法により形成された樹脂の硬化レリーフパターンとを含む半導体装置も提供する。また、本発明は、基材として半導体素子を用い、上述した硬化レリーフパターンの製造方法を工程の一部として含む半導体装置の製造方法にも適用できる。本発明の半導体装置は、上記硬化レリーフパターン製造方法で形成される硬化レリーフパターンを、表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、又はバンプ構造を有する半導体装置の保護膜等として形成し、既知の半導体装置の製造方法と組合せることで製造することができる。
【0189】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記のような半導体装置への適用の他、多層回路の層間絶縁、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、及び液晶配向膜等の用途にも有用である。」
「【実施例】
【0190】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例、比較例及び製造例においては、感光性樹脂組成物の物性を以下の方法に従って測定及び評価した。
…(中略)…
【0193】
(4)耐薬品性試験
(ネガ型感光性樹脂によるレリーフパターンの形成)
6インチ窒化膜付きシリコンウエハー(協同インターナショナル社製)上に、感光性樹脂組成物をスピン塗布し、乾燥して17μm厚の塗膜を感光性樹脂層として形成した。この塗膜にテストパターン付レチクルを用いてghiステッパー(Prisma−ghi、ウルトラテック社製)により、200mJ/cm2でエネルギーを照射して露光した。次いで、ウエハー上に形成した塗膜を、シクロペンタノンを用いて現像機(D−SPIN636型、日本国、大日本スクリーン製造社製)でスプレー現像し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートでリンスして未露光部を現像除去し、樹脂のレリーフパターンを得た。レリーフパターンを形成したウエハーを昇温プログラム式キュア炉(VF−2000型、日本国、光洋リンドバーグ社製)を用いて、窒素雰囲気下、200℃で1時間、続いて250℃で2時間加熱処理することにより、10μm厚の樹脂の硬化レリーフパターンを窒化膜付きシリコンウエハー上に得た。」
「【0197】
<製造例1>((A)ポリイミド前駆体としてのポリマーAの合成)
4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gを2l容量のセパラブルフラスコに入れ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)131.2gとγ―ブチロラクトン400mlを入れて室温下で攪拌し、攪拌しながらピリジン81.5gを加えて反応混合物を得た。反応による発熱の終了後に室温まで放冷し、16時間放置した。
【0198】
次に、氷冷下において、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)206.3gをγ−ブチロラクトン180mlに溶解した溶液を攪拌しながら40分かけて反応混合物に加え、続いて4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)93.0gをγ−ブチロラクトン350mlに懸濁したものを攪拌しながら60分かけて加えた。更に室温で2時間攪拌した後、エチルアルコール30mlを加えて1時間攪拌し、次に、γ−ブチロラクトン400mlを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。
【0199】
得られた反応液を3lのエチルアルコールに加えて粗ポリマーから成る沈殿物を生成した。生成した粗ポリマーを濾別し、テトラヒドロフラン1.5lに溶解して粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を28lの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾別した後、真空乾燥して粉末状のポリマー(ポリマーA)を得た。ポリマーAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は20,000であった。
【0200】
<製造例2>((A)ポリイミド前駆体としてのポリマーBの合成)
製造例1の4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gに代えて、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)147.1gを用いた以外は、前述の製造例1に記載の方法と同様にして反応を行い、ポリマーBを得た。ポリマーBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は22,000であった。」
「【0215】
<実施例1>
ポリマーA、Bを用いて以下の方法でネガ型感光性樹脂組成物を調製し、調製した感光性樹脂組成物の評価を行った。ポリイミド前駆体であるポリマーA50gとB50g((A)樹脂に該当)を、8−アザアデニン((B)プリン誘導体に該当)0.2g、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム(表1には「PDO」と記載する)((C)感光剤に該当)4g、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン1.5g、N−フェニルジエタノールアミン10g、メトキシメチル化尿素樹脂(MX−290)((D)架橋剤に該当)4g、テトラエチレングリコールジメタクリレート8g、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]フタルアミド酸1.5g、及び2−ニトロソ−1−ナフト−ル0.05gと共に、N−メチル−2−ピロリドン(以下ではNMPという)80gと乳酸エチル20gから成る混合溶媒に溶解した。得られた溶液の粘度を、少量の前記混合溶媒を更に加えることによって約35ポイズ(poise)に調整し、ネガ型感光性樹脂組成物とした。
【0216】
前記ネガ型感光性樹脂組成物を、前述の方法に従って評価した結果、銅変色の評価が「最良」であり、銅密着の評価が「最良」であり、耐薬品性の評価が「良」であった。」

(イ) 甲第2号証に記載された発明

上記(ア)の記載、特に、実施例1の樹脂組成物を用いた耐薬品性試験をおこなうためのレリーフパターンの製造方法に関して整理すると、甲第2号証には次の発明(以下、「甲2A発明」という。)が記載されていると認める。

「4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gを2l容量のセパラブルフラスコに入れ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)131.2gとγ―ブチロラクトン400mlを入れて室温下で攪拌し、攪拌しながらピリジン81.5gを加えて反応混合物を得て、反応による発熱の終了後に室温まで放冷し、16時間放置し、次に、氷冷下において、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)206.3gをγ−ブチロラクトン180mlに溶解した溶液を攪拌しながら40分かけて反応混合物に加え、続いて4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)93.0gをγ−ブチロラクトン350mlに懸濁したものを攪拌しながら60分かけて加え、更に室温で2時間攪拌した後、エチルアルコール30mlを加えて1時間攪拌し、次に、γ−ブチロラクトン400mlを加え、反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得て、得られた反応液を3lのエチルアルコールに加えて粗ポリマーから成る沈殿物を生成し、生成した粗ポリマーを濾別し、テトラヒドロフラン1.5lに溶解して粗ポリマー溶液を得て、得られた粗ポリマー溶液を28lの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾別した後、真空乾燥して粉末状のポリマーAを得る工程と、
前記ポリマーAの4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gに代えて、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)147.1gを用いた以外は、前記ポリマーAと同様にして反応を行い、ポリマーBを得る工程と、
ポリイミド前駆体である前記ポリマーA50gとB50g((A)樹脂に該当)を、8−アザアデニン((B)プリン誘導体に該当)0.2g、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム((C)感光剤に該当)4g、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン1.5g、N−フェニルジエタノールアミン10g、メトキシメチル化尿素樹脂(MX−290)((D)架橋剤に該当)4g、テトラエチレングリコールジメタクリレート8g、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]フタルアミド酸1.5g、及び2−ニトロソ−1−ナフト−ル0.05gと共に、N−メチル−2−ピロリドン80gと乳酸エチル20gから成る混合溶媒に溶解し、得られた溶液の粘度を、少量の前記混合溶媒を更に加えることによって約35ポイズ(poise)に調整し、ネガ型感光性樹脂組成物を得る工程と、
6インチ窒化膜付きシリコンウエハー(協同インターナショナル社製)上に、前記感光性樹脂組成物をスピン塗布し、乾燥して17μm厚の塗膜を感光性樹脂層として形成し、この塗膜にテストパターン付レチクルを用いてghiステッパー(Prisma−ghi、ウルトラテック社製)により、200mJ/cm2でエネルギーを照射して露光し、次いで、ウエハー上に形成した塗膜を、シクロペンタノンを用いて現像機(D−SPIN636型、日本国、大日本スクリーン製造社製)でスプレー現像し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートでリンスして未露光部を現像除去し、樹脂のレリーフパターンを得て、レリーフパターンを形成したウエハーを昇温プログラム式キュア炉(VF−2000型、日本国、光洋リンドバーグ社製)を用いて、窒素雰囲気下、200℃で1時間、続いて250℃で2時間加熱処理することにより、10μm厚の樹脂の硬化レリーフパターンを窒化膜付きシリコンウエハー上に得る工程と、
を有する塗膜の製造方法。」

また、上記(ア)の記載、特に、実施例1の樹脂組成物を用いた硬化レリーフパターンの製造方法及び半導体装置(段落【0176】−【0189】)に関して整理すると、甲第2号証には、さらに次の発明(以下、「甲2B発明」という。)が記載されていると認める。

「4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gを2l容量のセパラブルフラスコに入れ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)131.2gとγ―ブチロラクトン400mlを入れて室温下で攪拌し、攪拌しながらピリジン81.5gを加えて反応混合物を得て、反応による発熱の終了後に室温まで放冷し、16時間放置し、次に、氷冷下において、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)206.3gをγ−ブチロラクトン180mlに溶解した溶液を攪拌しながら40分かけて反応混合物に加え、続いて4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)93.0gをγ−ブチロラクトン350mlに懸濁したものを攪拌しながら60分かけて加え、更に室温で2時間攪拌した後、エチルアルコール30mlを加えて1時間攪拌し、次に、γ−ブチロラクトン400mlを加え、反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得て、得られた反応液を3lのエチルアルコールに加えて粗ポリマーから成る沈殿物を生成し、生成した粗ポリマーを濾別し、テトラヒドロフラン1.5lに溶解して粗ポリマー溶液を得て、得られた粗ポリマー溶液を28lの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾別した後、真空乾燥して粉末状のポリマーAを得る工程と、
前記ポリマーAの4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gに代えて、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)147.1gを用いた以外は、前記ポリマーAと同様にして反応を行い、ポリマーBを得る工程と、
ポリイミド前駆体である前記ポリマーA50gとB50g((A)樹脂に該当)を、8−アザアデニン((B)プリン誘導体に該当)0.2g、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム((C)感光剤に該当)4g、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン1.5g、N−フェニルジエタノールアミン10g、メトキシメチル化尿素樹脂(MX−290)((D)架橋剤に該当)4g、テトラエチレングリコールジメタクリレート8g、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]フタルアミド酸1.5g、及び2−ニトロソ−1−ナフト−ル0.05gと共に、N−メチル−2−ピロリドン80gと乳酸エチル20gから成る混合溶媒に溶解し、得られた溶液の粘度を、少量の前記混合溶媒を更に加えることによって約35ポイズ(poise)に調整し、ネガ型感光性樹脂組成物を得る工程と、
前記ネガ感光性樹脂組成物を基板上に塗布することによって樹脂層を該基板上に形成する工程と、
前記樹脂層を露光する工程と、
露光後の樹脂層を現像してレリーフパターンを形成する工程と、
レリーフパターンを、温度プログラムを設定できる昇温式オーブン等で、180℃〜400℃で30分〜5時間の条件で加熱処理することによって硬化レリーフパターンを形成する工程と、
を有する塗膜の製造方法。」

ウ 甲第3号証の記載事項等

(ア) 甲第3号証の記載事項

甲第3号証には、「感光性樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置」に関し、次の記載がある。

「【請求項1】
(a)ポリイミドおよび/またはポリイミド前駆体、(b)感光剤、(c)高誘電率無機粒子、(d)溶剤を有し、(c)高誘電率無機粒子が1種類の平均粒子径からなるペロブスカイト型結晶構造あるいは複合ペロブスカイト型結晶構造を有するもの、もしくは、2種類以上の平均粒子径を有するものであって、かつその最小の平均粒子径が0.06μm以上であるペロブスカイト型結晶構造あるいは複合ペロブスカイト型結晶構造を有するものであることを特徴とする感光性樹脂組成物。
…(中略)…
【請求項8】
(a)ポリイミドまたはポリイミド前駆体が一般式(1)〜(6)で表される構造を主成分とするポリマーであることを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

(R6は2個以上の炭素原子を有する2価から8価の有機基、R7は2個以上の炭素原子を有する2価から6価の有機基、R8は水素、または炭素数1から20までの有機基を示す。sは10から100000までの範囲、fは0から2までの整数、d、eは0から4までの整数を示し、d+e>0である。)
【化2】

(R1は4から14価の有機基、R2は2から12価の有機基、R3、R5は水素原子または、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基、炭素数1から20までの有機基より選ばれる基を少なくとも一つ有する有機基を示し、同じでも異なっていてもよい。R4は2価の有機基を示す。X、Yは、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基より選ばれる基を少なくとも一つ有する2から8価の有機基を示す。nは3から200までの範囲を示す。m、α、βは0から10までの整数を示す。)
【化3】

(R20は2個以上の炭素原子を有する3価または4価の有機基、R21は2個以上の炭素原子を有する2価の有機基、R22は水素原子またはアルカリ金属イオンアンモニウムイオンまたは炭素数1〜30の有機基を示す。kは5から100000までの範囲を示す。gは1または2である。)」
「【技術分野】
【0001】
実装基板やウェハレベルパッケージなどの半導体を用いるシステム用の基板やパッケージに内蔵するキャパシタ用の層間絶縁膜として用いる高誘電率材料を形成するための感光性樹脂組成物やそれらを用いて作製した半導体装置に関する。

「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる状況に鑑み、本発明は、実装基板やウェハレベルパッケージなどの半導体を用いるシステム用の基板やパッケージに内蔵するキャパシタ用層間絶縁膜が高誘電率、高信頼性かつ高耐熱性であり、フォトリソグラフィーにより容易にパターン形成できる感光性樹脂組成物を提供し、さらにトランジスター、当該感光性樹脂組成物から得られる硬化膜が形成された半導体素子、電極からなるキャパシタを有する半導体装置を提供する。」
「【0115】
現像後、120℃から400℃の温度を加えて硬化膜にする。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分から5時間実施する。一例としては、130℃、200℃、350℃で各30分ずつ熱処理する。あるいは室温より400℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。」
「【0129】
本発明の感光性樹脂組成物及び硬化膜の用途は特に限定されないが、例えば、高誘電率層としてプリント配線基板の内蔵コンデンサ用層間絶縁材料に用いられる他、多層基板の層間絶縁膜、周波数フィルター、無線用アンテナ、電磁シールドなど、多種の電子部品、装置への適用が可能である。」
「【実施例】
【0134】
…(中略)…
【0138】
合成例1 ヒドロキシル基含有酸無水物(a)の合成
乾燥窒素気流下、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHF)18.3g(0.05モル)とアリルグリシジルエーテル34.2g(0.3モル)をγ−ブチロラクトン100gに溶解させ、−15℃に冷却した。ここにγ−ブチロラクトン50gに溶解させた無水トリメリット酸クロリド22.1g(0.11モル)を反応液の温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、0℃で4時間反応させた。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して、トルエン1Lに投入して酸無水物(a)を得た。
【0139】
【化7】

【0140】
合成例2 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物(b)の合成
BAHF18.3g(0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここに4−ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0141】
固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム−炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、ろ過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、ジアミン化合物(b)を得た。得られた固体をそのまま反応に使用した。
【0142】
【化8】


「【0146】合成例4 キノンジアジド化合物(1)の合成
乾燥窒素気流下、2−ナフトール7.21g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド13.43g(0.05モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン5.06gを滴下した。滴下終了後、室温で2時間反応させた後、トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入させた。その後析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、キノンジアジド化合物(1)を得た。」「【0148】合成例5 キノンジアジド化合物(2)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−HAP(商品名、本州化学工業(株)製)、15.31g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド40.28g(0.15モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン15.18gを用い、合成例4と同様にしてキノンジアジド化合物(2)を得た。
【0149】
【化11】


「【0154】
実施例1
窒素気流下、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル4.1g(0.0205モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)50gに溶解させた。ここにヒドロキシ基含有酸無水物(a)21.4g(0.03モル)をNMP14gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で4時間反応させた。その後、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール7.14g(0.06モル)をNMP5gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、50℃で3時間攪拌し、樹脂溶液を得た。反応終了後、樹脂溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を80℃の真空乾燥機で20時間乾燥した。ポリマーの重量平均分子量をGPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、25000であった。
【0155】
このようにして得たポリマーの固体11.8gを計り、上記に示したナフトキノンジアジド化合物(1)4gを加え、ワニス溶剤のγ−ブチロラクトン30gに溶解させてワニスA−1を得た。
【0156】
チタン酸バリウム(堺化学(株)製、BT−05、平均粒径:0.5μm)323重量部、γ−ブチロラクトン57重量部、分散剤(ビックケミー(株)製、BYK−W9010)3.2重量部をホモジナイザーを用いて氷冷下で1時間混合分散し、分散液B−1を得た。
【0157】
60重量部の分散液B−1に26重量部のワニスA−1をボールミルを用いて混合し、感光性樹脂組成物C−1を作製した。HMDS(ヘキサメチレンジシラザン)蒸気処理を施した6インチシリコンウェハ上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて120℃で3分プリベークした。次に露光装置(ユニオン光学(株)製PEM−6M)に50/50、40/40、30/30、25/25、20/20、15/15μmのラインアンドスペース(L/S)マスクをセットし、サンプルとマスクの間を密着条件下で、露光量150mJ/cm2(365nmの強度)で露光を行った。露光後の膜を、滝沢産業(株)製AD−2000のスプレー型現像装置を用い、スプレー圧力は1.5kg/cm2で水酸化テトラメチルアンモニウムの2.38%水溶液を6分間噴霧した。露光部を除去し、水にてリンス処理した。現像後の膜を光洋サーモシステム(株)製イナートオーブンINL−60を用いてN2雰囲気下で140℃で60分間、350℃で1時間で硬化させ、硬化膜を得た。硬化膜の膜厚は、東京精密(株)製サーフコム1400を用いて触針式で測定を行ったところ、5μmであり、現像による膜厚減少は0.8μmであった。硬化膜のラインアンドスペースパターンを光学顕微鏡を用いて確認したところ、L/Sが15/15μm以上のパターンでは精度が±0.5μm以内であることが確認された。」
「【0163】
実施例3
乾燥窒素気流下、ジアミン(b)13.6g(0.0225モル)、末端封止剤として、4−エチニルアニリン(商品名:P−APAC、富士写真フイルム(株)製)0.29g(0.0025モル)をNMP50gに溶解させた。ここにヒドロキシ基含有酸無水物(a)17.5g(0.025モル)をピリジン30gとともに加えて、60℃で6時間反応させ樹脂溶液を得た。反応終了後、樹脂溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を80℃の真空乾燥機で20時間乾燥した。ポリマーの重量平均分子量をGPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、26000であった。
このようにして得たポリマーの固体10gを計り、上記に示したナフトキノンジアジド化合物(2)3.9g、ビニルトリメトキシシラン1gをγ−ブチロラク
トン30gに溶解させてワニスA−3を得た。
【0164】
60重量部の分散液B−1と38重量部のワニスA−3をボールミルを用いて合し、感光性樹脂組成物C−3を作製した。露光量105mJ/cm2(365nmの強度)、現像液にP−7G(東京応化工業(株)製)を用いて2分噴霧し、光洋サーモシステム(株)製イナートオーブンINL−60を用いてN2雰囲気下で140℃で60分間、250℃で1時間熱処理し硬化させた以外は、実施例1の方法に基づき硬化膜を得た。硬化膜の膜厚は4μmであり、現像による
膜厚減少は0.9μmであった。硬化膜のラインアンドスペースパターンを光学微鏡を用いて確認したところ、L/Sが15/15μm以上のパターンでは精度が±0.5μm以内であった。」

(イ) 甲第3号証の記載された発明

上記(ア)の記載、特に、実施例3の記載を中心に整理すると、甲第3号証には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。

「乾燥窒素気流下、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHF)18.3g(0.05モル)とアリルグリシジルエーテル34.2g(0.3モル)をγ−ブチロラクトン100gに溶解させ、−15℃に冷却した。ここにγ−ブチロラクトン50gに溶解させた無水トリメリット酸クロリド22.1g(0.11モル)を反応液の温度が0℃を越えないように滴下し、滴下終了後、0℃で4時間反応させ、この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して、トルエン1Lに投入して酸無水物(a)

を得る工程と、
BAHF18.3g(0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、−15℃に冷却し、ここに4−ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下し、滴下終了後、−15℃で4時間反応させ、その後室温に戻し、析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥し、固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム−炭素を2g加え、ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行い、約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させ、反応終了後、ろ過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、ジアミン化合物(b)

を得る工程と、
乾燥窒素気流下、TrisP−HAP(商品名、本州化学工業(株)製)、15.31g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド40.28g(0.15モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にし、ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン15.18gを滴下し、滴下終了後、室温で2時間反応させた後、トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入させ、その後、析出した沈殿をろ過で集め、この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、キノンジアジド化合物(2)

を得る工程と、
チタン酸バリウム(堺化学(株)製、BT−05、平均粒径:0.5μm)323重量部、γ−ブチロラクトン57重量部、分散剤(ビックケミー(株)製、BYK−W9010)3.2重量部をホモジナイザーを用いて氷冷下で1時間混合分散し、分散液B−1を得る工程と、
乾燥窒素気流下、ジアミン(b)13.6g(0.0225モル)、末端封止剤として、4−エチニルアニリン(商品名:P−APAC、富士写真フイルム(株)製)0.29g(0.0025モル)をNMP50gに溶解させ、ここにヒドロキシ基含有酸無水物(a)17.5g(0.025モル)をピリジン30gとともに加えて、60℃で6時間反応させ樹脂溶液を得て、反応終了後、樹脂溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集め、ポリマー固体を80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、このようにして得たポリマーの固体10gを計り、上記に示したナフトキノンジアジド化合物(2)3.9g、ビニルトリメトキシシラン1gをγ−ブチロラクトン30gに溶解させてワニスA−3を得る工程と、
60重量部の分散液B−1と38重量部のワニスA−3をボールミルを用いて混合し、感光性樹脂組成物C−3を作製し、
HMDS(ヘキサメチレンジシラザン)蒸気処理を施した6インチシリコンウェハ上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて120℃で3分プリベークし、次に露光装置(ユニオン光学(株)製PEM−6M)に50/50、40/40、30/30、25/25、20/20、15/15μmのラインアンドスペース(L/S)マスクをセットし、サンプルとマスクの間を密着条件下で、露光量105mJ/cm2(365nmの強度)で露光を行い、露光後の膜を、滝沢産業(株)製AD−2000のスプレー型現像装置を用い、スプレー圧力は1.5kg/cm2でP−7G(東京応化工業(株)製)を2分噴霧し、露光部を除去し、水にてリンス処理し、現像後の膜を光洋サーモシステム(株)製イナートオーブンINL−60を用いてN2雰囲気下で140℃で60分間、250℃で1時間で硬化させ、硬化膜を得る工程と、
を有する硬化膜の製造方法。」

エ 甲第4号証の記載事項等

(ア) 甲第4号証の記載事項

甲第4号証には、「ポジ型感光性樹脂組成物、それを用いた硬化膜及び電子部品」に関し、次の記載がある。

「【請求項1】
(a)アルカリ性水溶液に可溶なポリマーと、
(b)光の照射を受けて酸を発生する化合物と、
(c)酢酸と、
(d)ウレア結合を有するシランカップリング化合物と、
を含有してなることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
…(中略)…
【請求項3】
前記(a)成分が、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、及びそれらの前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
…(中略)…
【請求項6】
前記(d)成分が、下記一般式で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化14】

(式中、qは1〜10の整数、R4及びR5は各々独立に炭素数1〜5のアルキル基、rは0〜2である。)
…(中略)…
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、前記塗布、乾燥工程により得られた感光性樹脂膜を露光する工程と、前記露光後の感光性樹脂膜の露光部を除去するためにアルカリ水溶液を用いて現像する工程と、及び前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程を含むことを特徴とするパタ−ンの製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の硬化物が層間絶縁膜層、再配線層又は表面保護膜層として設けられていることを特徴とする電子部品。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、パタ−ンの製造方法及び電子部品に関し、さらに詳しくは、感光性を有する耐熱性高分子を含有する耐熱性ポジ型感光性樹脂組成物、これを用いた硬化膜とパタ−ンの製造方法及び電子部品に関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
…(中略)…
【0009】
従来、接着助剤であるシランカップリング剤を使用すると、硬化後の基板との密着性が得られることが分かっている。特にウレア結合を有するシランカップリング剤は密着性向上効果が高い。しかし、前記カップリング剤を添加したワニスを室温で長時間放置するとパターン膜中に、ウレア結合を有するシランカップリング剤の反応物と考えられる異物が発生することがある。
【0010】
パターン膜中の異物は外観不良、膜の上にメタル層を付けた際に曇りや凹凸が発生し、さらに、基板との密着性が低下するという問題がある。」
「【0052】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、上記(a)〜(d)成分に加えて、(e)加熱により架橋又は重合し得る架橋剤、(f)シランカップリング化合物(但しウレア結合は含ます)、(g)熱酸発生剤、(h)溶解促進剤、(i)溶解阻害剤、(j)密着性付与剤、(k)界面活性剤又はレベリング剤、(l)溶剤等の成分を配合してもよい。」
「【0061】
(f)成分:シランカップリング化合物((d)成分以外)
本発明における(f)成分としては、(d)成分以外の、シランカップリング化合物であれば特に制限はないが、中でもヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング化合物が好ましい。 (以下略)」
「【0093】
(加熱処理工程)
次いで、加熱処理工程では、現像後得られたパターンを加熱処理することにより、硬化膜パターンを形成することができる。加熱温度は、好ましくは280℃以下、より好ましくは120〜280℃、さらに好ましくは160〜250℃である。」
「【0105】
[電子部品、及びその製造工程]
次に、本発明のパターン硬化膜を有する電子部品の製造方法の一実施形態として、半導体装置の製造方法を図面に基づいて説明する。
図1〜図5は、多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であり、第1の工程から第5の工程へと一連の工程を表している。
図1〜図5において、回路素子(図示しない)を有するSi基板等の半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜2で被覆され、露出した回路素子上に第1導体層3が形成されている。半導体基板上にスピンコート法等で層間絶縁膜層4としてのポリイミド樹脂等の膜が形成される(第1の工程、図1)。
【0106】
次に、塩化ゴム系、フェノールノボラック系等の感光性樹脂層5が、マスクとして層間絶縁膜層4上にスピンコート法で形成され、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁膜層4が露出するように窓6Aが設けられる(第2の工程、図2)。この窓6Aに露出する層間絶縁膜層4は、酸素、四フッ化炭素等のガスを用いるドライエッチング手段によって選択的にエッチングされ、窓6Bが空けられる。次いで、窓6Bから露出した第1導体層3を腐食することなく、感光樹脂層5のみを腐食するようなエッチング溶液を用いて感光樹脂層5が完全に除去される(第3の工程、図3)。
【0107】
さらに、公知の写真食刻技術を用いて、第2導体層7を形成させ、第1導体層3との電気的接続が完全に行われる(第4の工程、図4)。3層以上の多層配線構造を形成する場合は、上記の工程を繰り返して行い各層を形成することができる。
【0108】
次に、表面保護膜8を形成する。図1〜図5の例では、この表面保護膜を次のようにして形成する。即ち、本発明の感光性樹脂組成物をスピンコート法にて塗布、乾燥し、所定部分に窓6Cを形成するパターンを描いたマスク上から光を照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターン樹脂膜を形成する。その後、このパターン樹脂膜を加熱して表面保護膜層8としての感光性樹脂のパターン硬化膜とする(第5の工程、図5)。
この表面保護膜層(感光性樹脂のパターン硬化膜)8は、導体層を外部からの応力、α線等から保護するものであり、得られる半導体装置は信頼性に優れる。この表面保護膜層は、特にアルミニウム基板やアルミニウム配線に対する密着性が高いので、そのような基板や配線の上部に形成するのに好適である。
【0109】
尚、上記の実施形態では、表面保護膜層8を本発明のポジ型感光性樹脂組成物で形成したが、層間絶縁膜層4、感光性樹脂層5も本発明の組成物で形成できる。
【0110】
本発明の電子部品は、上述した半導体装置の例のように、本発明の感光性樹脂組成物を用いて、上記パターン硬化膜の製造方法によって形成されるパターン硬化膜を有する。ここで、電子部品としては、半導体装置や多層配線板、各種電子デバイス等を含む。
本発明のパターン硬化膜は、具体的には、半導体装置等電子部品の表面保護膜や層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜等の形成に使用することができる。本発明による電子部品は、感光性樹脂組成物を用いて形成される表面保護膜や層間絶縁膜を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。
【0111】
また、図6に別の実施形態の半導体装置の一例の断面構造を示す。この断面図は多層配線構造を示している。
層間絶縁層1の上にはAl配線層20が形成され、その上部にはさらに絶縁層30(例えばP−SiN層)が形成され、さらに素子の表面保護膜層40が形成されている。配線層20のパット部50からは再配線層60が形成され、外部接続端子であるハンダ、金等で形成された導電性ボール70との接続部分である、コア80の上部まで伸びている。さらに表面保護膜層40の上には、カバーコート層90が形成されている。再配線層60は、バリアメタル100を介して導電性ボール70に接続されているが、この導電性ボール70を保持するために、カラー110が設けられている。このような構造のパッケージを実装する際には、さらに応力を緩和するために、アンダーフィル120を介することもある。
【0112】 この図において、本発明の感光性樹脂組成物は、層間絶縁層30や表面保護膜層40ばかりではなく、その優れた特性故、カバーコート層90、コア80、カラー110、アンダーフィル120等の材料として非常に適している。本発明の感光性樹脂組成物を用いた耐熱性感光性樹脂硬化体は、メタル層や封止剤等との接着性に優れ、応力緩和効果も高いため、本発明の感光性樹脂組成物から得られた耐熱性感光性樹脂硬化体をカバーコート層、コア、カラー、アンダーフィル等に用いた半導体素子は、極めて信頼性に優れるものとなる。【0113】 上記図6のような本発明の半導体装置は、前記組成物を用いて形成されるカバーコート、再配線用コア、半田等のボール用カラー、フリップチップ等で用いられるアンダーフィル等を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。」
「【実施例】
【0114】
…(中略)…
【0118】
合成例3
[ポリイミド前駆体((a)成分)の合成]
攪拌機及び温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA)10g(32mmol)とイソプロピルアルコール3.87g(65mmol)とをN−メチルピロリドン45gに溶解し、1,8−ジアザビシクロウンデセンを触媒量添加して、その後、60℃にて2時間加熱した。続いて室温下(25℃)で15時間攪拌し、エステル化を行った。その後、氷冷下で塩化チオニルを7.61g(64mmol)加え、室温に戻し2時間反応を行い、酸クロリドの溶液(以下、酸クロリド溶液Iという)を得た。
【0119】
次に、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン40gを仕込み、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン10.25g(28mmol)を添加し、攪拌溶解した後、ピリジン7.62g(64mmol)を添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、調製した酸クロリド溶液Iを30分間で滴下した後、30分間攪拌を続けた。攪拌後の反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物を濾別して集め、減圧乾燥することによってカルボキシル基末端のポリアミド酸エステル(ポリアミド前駆体)を得た(以下、ポリマーIIIという)。ポリマーIIIのGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は19,400であり、分散度は2.2であった。」
「【0121】
実施例1〜4及び比較例1〜3
[感光性樹脂組成物の調製]
表1に示す成分を、表1に示す配合量で、γ−ブチロラクトン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを重量比9:1で混合した溶剤に溶解して、それぞれ感光性樹脂組成物を調製した。
尚、表1において、各成分の()内の数は(a)成分であるポリマー100重量部に対する添加量(重量部)を示す。溶剤の使用量は、いずれもポリマー100重量部に対して200重量部であった。
【0122】
【表1】

【0123】
表1中の、ポリマーI,II,IIIは合成例で調整したものであり、B1、B2(AZエレクトロニックマテリアルズ社製)C1、C2、D1(東レダウコーニング社製)は以下の通りである。
【0124】
【化13】


【0125】
C1:CH3COOH
C2:ピリジン
D1:H2NCONH(CH2)3Si(OEt)3
【0126】
[パターン硬化膜の製造]
実施例1〜4及び比較例1〜3で調製した感光性樹脂組成物を、それぞれシリコンウエハ上にスピンコートして、乾燥膜厚が7〜12μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に、超高圧水銀灯を光源とし、干渉フィルターを介して、100から1000mJ/cm2まで10mJ/cm2刻みでi線照射量を変化させ、所定のパターンをウエハに照射して、露光を行った。露光後、120℃で3分間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38重量%水溶液にて露光部のシリコンウエハが露出するまで現像した後、水でリンスして、パターン樹脂膜をそれぞれ得た。
【0127】
次に、作製したパターン樹脂膜付きウエハを縦型拡散炉μ−TF(光洋サーモシステム社製)を用いて窒素雰囲気下、100℃で1時間加熱した後、さらに200℃で1時間加熱してパターン硬化膜(硬化後膜厚5〜10μm)をそれぞれ得た。」




















(イ) 甲第4号証に記載された発明

上記(ア)の記載、特に、実施例4の記載を中心に整理すると、甲第4号証には次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認める。

「攪拌機及び温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA)10g(32mmol)とイソプロピルアルコール3.87g(65mmol)とをN−メチルピロリドン45gに溶解し、1,8−ジアザビシクロウンデセンを触媒量添加して、その後、60℃にて2時間加熱し、続いて室温下(25℃)で15時間攪拌し、エステル化を行い、その後、氷冷下で塩化チオニルを7.61g(64mmol)加え、室温に戻し2時間反応を行い、酸クロリドの溶液(以下、酸クロリド溶液Iという)を得て、次に、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン40gを仕込み、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン10.25g(28mmol)を添加し、攪拌溶解した後、ピリジン7.62g(64mmol)を添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、調製した酸クロリド溶液Iを30分間で滴下した後、30分間攪拌を続け、攪拌後の反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物を濾別して集め、減圧乾燥することによってカルボキシル基末端のポリアミド酸エステル(ポリアミド前駆体)を得る(以下、ポリマーIIIという)工程と、
前記ポリマーIIIを100重量部と、B1

を11重量部と、C1:CH3COOHを3重量部と、D1:H2NCONH(CH2)3Si(OEt)3を2重量部の配合量でγ−ブチロラクトン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを重量比9:1で混合した溶剤200重量部に溶解して、感光性樹脂組成物を調製する工程と、
前記感光性樹脂組成物を、シリコンウエハ上にスピンコートして、乾燥膜厚が7〜12μmの塗膜を形成し、得られた塗膜に、超高圧水銀灯を光源とし、干渉フィルターを介して、100から1000mJ/cm2まで10mJ/cm2刻みでi線照射量を変化させ、所定のパターンをウエハに照射して、露光を行い、露光後、120℃で3分間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38重量%水溶液にて露光部のシリコンウエハが露出するまで現像した後、水でリンスして、パターン樹脂膜を得て、次に、作製したパターン樹脂膜付きウエハを縦型拡散炉μ−TF(光洋サーモシステム社製)を用いて窒素雰囲気下、100℃で1時間加熱した後、さらに200℃で1時間加熱してパターン硬化膜(硬化後膜厚5〜10μm)を得る工程と、
を有する硬化膜の製造方法。」

(2) 対比・判断

ア 取消理由1−1(甲第1号証を根拠とする新規性)及び取消理由2−1(甲1号証を主引用文献とする進歩性)について

(ア) 本件特許発明1について

本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「ポリアミド酸エステル」は、テトラカルボン酸2無水物である「無水ピロメリット酸」とジアミンである「4,4’−ジアミノジフェニルエーテル」とを反応させたものである。そうすると、甲1発明における「乾燥空気気流下、500mlの4つ口フラスコに無水ピロメリット酸10.9g(0.05モル)をγ−ブチロラクトン(GBL:1気圧における沸点は206℃)100gに分散させ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート13g(0.1モル)、ピリジン7gを加えて50℃で2時間反応を行い、この溶液を氷冷し、ジシクロヘキシルカルボジイミド21g(0.1モル)をγ−ブチロラクトン25gに溶解した溶液を15分かけて滴下し、さらに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル10g(0.05モル)をγ−ブチロラクトン25gに分散させた溶液を10分かけて滴下し、この溶液を氷冷下、3時間反応させ、ついで50℃で1時間反応させ、反応終了後、析出した尿素化合物をろ過で除き、ろ液を3lの水に投入してポリアミド酸エステルの沈殿を生成し、この沈殿を集めて、水とメタノールで洗浄の後に真空乾燥機で50℃、24時間乾燥し、このポリアミド酸エステルの粉体15g」は、本件特許発明1における「ポリイミド前駆体」に相当する。
甲1発明における「3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン」は、メタクリル基を有しているから、本件特許発明1における「反応性基を有するシランカップリング剤」に相当する。
甲1発明における「ポリアミド酸エステルの粉体15gとメルカプトベンズイミダゾール0.75g、トリメチロールプロパントリアクリレート1g、エチレングリコールジメタクリレート2g、p−t−ブチルカテコール0.5g、ミヒラーケトン0.5g、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン0.5g、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム0.5gを加えた感光性耐熱性樹脂前駆体のワニスB」は、本件特許発明1における「感光性樹脂組成物」である「樹脂組成物」に相当する。
甲1発明において、「4インチのシリコンウエハ上に、ワニスBを、プリベーク後の膜厚が10μmとなるように、コーターディベロッパーSKW−636(大日本スクリーン(株)製)を用いて、スピンコートし、ついで、SKW−636の真空吸着式ホットプレートを用いて、95℃で2分、100℃で2分乾燥」をしているものでり、甲1発明においては、「4インチのシリコンウエハ」上に「ワニスB」が層として形成されているといえるから、甲1発明は、「支持体上に樹脂組成物層を形成」しているものである。
甲1発明の「ワニスB」は、「塗膜を露光機(キャノン(株)製PLA−501F)にセットし、グレースケール(コダック社 Photographic step tablet No2 21 steps)を介して紫外線の強度は480mJ/cm2(365nm)で露光を行い、ホットプレートで80℃、1分間のベークを行った後、N−メチル−2−ピロリドン(70部)とキシレン(30部)の混合溶媒を用い、SKW−636の現像装置を用いて浸透現像を行い、ついで、イソプロピルアルコールで20秒間リンスし、スピンナーで回転乾燥」する工程は、本件特許発明1における「露光および現像を行ってパターンを形成」する工程に相当する。
甲1発明における「得られた露光・現像済みのウエハをイナートオーブン(西山製作所製)を用いて200℃を30分間、350℃を1時間でキュアを行う」工程は、本件特許発明1における「樹脂組成物層を2段階以上の多段階で加熱し、2段階目の加熱を1段階目の加熱温度よりも高い温度で行う」工程であるとの限りにおいて相当する。

したがって、両者は、
「ポリイミド前駆体と反応性基を有するシランカップリング剤とを含む樹脂組成物を用いて支持体上に樹脂組成物層を形成し、
前記樹脂組成物が感光性樹脂組成物であり、
前記樹脂組成物層に対して露光および現像を行ってパターンを形成した後、前記樹脂組成物層を2段階以上の多段階で加熱し、2段階目の加熱を1段階目の加熱温度よりも高い温度で行う、膜の製造方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1−1)
1段階目及び2段階目の加熱条件に関し、本件特許発明1は、「前記1段階目の加熱を、140〜170℃の温度にて10〜60分行い、前記2段階目の加熱を、180〜240℃の温度にて60〜300分行う」と特定されるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。

上記相違点1−1について検討する。
甲1発明の加熱条件は、「200℃を30分間、350℃を1時間」であるから、相違点1−1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明は、甲1発明ではない。

また、甲第1号証には、「現像後、200℃から500℃の温度を加えて耐熱性樹脂皮膜に変換する。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分から5時間実施する。一例としては、130℃、200℃、350℃で各30分づつ熱処理する。あるいは室温より400℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。」(【0079】)との記載があるものの、当該記載の「一例」であっても条件が異なるものであるし、あえて、相違点1−1に係る本件特許発明1の熱処理条件に調整する動機付けもない。

なお、この点について、特許異議申立人は意見書において、甲第1号証の段落【0107】の【表1】には、本件特許発明1の「前記1段階目の加熱を、140〜170℃の温度にて10〜60分行い」との特定事項を満たす条件が記載されていることを主張するが、当該【表1】に記載の実施例・比較例はいずれも、1段階目及び2段階目の熱処理条件をともに満たすものは記載されていない。また、甲第1号証の段落【0079】の記載を見ても、相違点1−1に係る本件特許発明1の特定事項を導くことができないことは、上述のとおりである。

したがって、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ) 本件特許発明4ないし12について

本件特許発明4ないし12は、請求項1を直接または間接的に引用する発明であり、本件特許発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1は、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明1の特定事項を全て含む発明である本件特許発明4ないし12もまた、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ 取消理由1−2(甲2を根拠とする新規性)、取消理由2−2(甲2を主引用文献とする進歩性)について

(ア) 本件特許発明1について

A 甲2A発明との対比・判断

本件特許発明1と甲2A発明とを対比する。
甲2A発明における「ポリマーA」及び「ポリマーB」は、テトラカルボン酸2無水物である「4,4’−オキシジフタル酸二無水物」又は「3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物」とジアミンである「4,4’−ジアミノジフェニルエーテル」とを反応させたものである。そうすると、甲2A発明における「4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gを2l容量のセパラブルフラスコに入れ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)131.2gとγ―ブチロラクトン400mlを入れて室温下で攪拌し、攪拌しながらピリジン81.5gを加えて反応混合物を得て、反応による発熱の終了後に室温まで放冷し、16時間放置し、次に、氷冷下において、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)206.3gをγ−ブチロラクトン180mlに溶解した溶液を攪拌しながら40分かけて反応混合物に加え、続いて4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)93.0gをγ−ブチロラクトン350mlに懸濁したものを攪拌しながら60分かけて加え、更に室温で2時間攪拌した後、エチルアルコール30mlを加えて1時間攪拌し、次に、γ−ブチロラクトン400mlを加え、反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得て、得られた反応液を3lのエチルアルコールに加えて粗ポリマーから成る沈殿物を生成し、生成した粗ポリマーを濾別し、テトラヒドロフラン1.5lに溶解して粗ポリマー溶液を得て、得られた粗ポリマー溶液を28lの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾別した後、真空乾燥して」得られた「粉末状」の「ポリマーA」及び「前記ポリマーAの4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gに代えて、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)147.1gを用いた以外は、前記ポリマーAと同様にして反応を行い」得られた「ポリマーB」は、本件特許発明1における「ポリイミド前駆体」に相当する。
甲2A発明における「N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]フタルアミド酸」は、フタルアミド酸であって、ケイ素化合物であるから、本件特許発明1における「反応性基を有するシランカップリング剤」に相当する。
甲2A発明における「ポリイミド前駆体である前記ポリマーA50gとB50g((A)樹脂に該当)を、8−アザアデニン((B)プリン誘導体に該当)0.2g、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム((C)感光剤に該当)4g、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン1.5g、N−フェニルジエタノールアミン10g、メトキシメチル化尿素樹脂(MX−290)((D)架橋剤に該当)4g、テトラエチレングリコールジメタクリレート8g、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]フタルアミド酸1.5g、及び2−ニトロソ−1−ナフト−ル0.05gと共に、N−メチル−2−ピロリドン80gと乳酸エチル20gから成る混合溶媒に溶解し、得られた溶液の粘度を、少量の前記混合溶媒を更に加えることによって約35ポイズ(poise)に調整」した「ネガ型感光性樹脂組成物」は、本件特許発明1における「感光性樹脂組成物」である「樹脂組成物」に相当する。
甲2A発明における「6インチ窒化膜付きシリコンウエハー(協同インターナショナル社製)上に、前記感光性樹脂組成物をスピン塗布し、乾燥して17μm厚の塗膜を感光性樹脂層として形成」する工程は、本件特許発明1における「支持体上に樹脂組成物層を形成」する工程に相当する。
甲2A発明における「塗膜を感光性樹脂層として形成し、この塗膜にテストパターン付レチクルを用いてghiステッパー(Prisma−ghi、ウルトラテック社製)により、200mJ/cm2でエネルギーを照射して露光し、次いで、ウエハー上に形成した塗膜を、シクロペンタノンを用いて現像機(D−SPIN636型、日本国、大日本スクリーン製造社製)でスプレー現像し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートでリンスして未露光部を現像除去し、樹脂のレリーフパターンを得」る工程は、本件特許発明1における「樹脂組成物層に対して露光および現像を行ってパターンを形成」する工程に相当する。
甲2A発明における「レリーフパターンを形成したウエハーを昇温プログラム式キュア炉(VF−2000型、日本国、光洋リンドバーグ社製)を用いて、窒素雰囲気下、200℃で1時間、続いて250℃で2時間加熱処理することにより、10μm厚の樹脂の硬化レリーフパターンを窒化膜付きシリコンウエハー上に得る工程」は、本件特許発明1における「樹脂組成物層を2段階以上の多段階で加熱し、2段階目の加熱を1段階目の加熱温度よりも高い温度で行う」工程であるとの限りにおいて相当する。

したがって、両者は、
「ポリイミド前駆体と反応性基を有するシランカップリング剤とを含む樹脂組成物を用いて支持体上に樹脂組成物層を形成し、
前記樹脂組成物が感光性樹脂組成物であり、
前記樹脂組成物層に対して露光および現像を行ってパターンを形成した後、前記樹脂組成物層を2段階以上の多段階で加熱し、2段階目の加熱を1段階目の加熱温度よりも高い温度で行う、膜の製造方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点2A−1)
1段階目及び2段階目の加熱条件に関し、本件特許発明1は、「前記1段階目の加熱を、140〜170℃の温度にて10〜60分行い、前記2段階目の加熱を、180〜240℃の温度にて60〜300分行う」と特定されるのに対し、甲2A発明にはそのような特定がない点。

上記相違点2A−1について検討する。
甲2A発明の加熱条件は、「200℃で1時間、続いて250℃で2時間」であるから、相違点2A−1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明は、甲2A発明ではない。

また、甲第2号証には、「加熱は、例えば180℃〜400℃で30分〜5時間の条件で行うことができる。」(【0187】)との記載があるものの、加熱条件を多段階とする際の条件の設定指針は明らかではないし、実施例の記載(【0193】など)を見ても、相違点2A−1に係る本件特許発明1の特定事項を満たす条件とするように調整する動機付けがあるともいえない。

なお、この点について、特許異議申立人は意見書において、甲第2号証の段落【0187】、【0193】の記載をあげつつ、加熱条件は適宜設定できる旨主張するが、この点については、上記の検討のとおりであるから、当該主張は採用しない。

したがって、本件特許発明1は、甲2A発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

B 甲2B発明との対比・判断

本件特許発明1と甲2B発明とを対比する。
甲2B発明における「ポリマーA」及び「ポリマーB」は、テトラカルボン酸2無水物である「4,4’−オキシジフタル酸二無水物」又は「3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物」とジアミンである「4,4’−ジアミノジフェニルエーテル」とを反応させたものである。そうすると、甲2B発明における「4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gを2l容量のセパラブルフラスコに入れ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)131.2gとγ―ブチロラクトン400mlを入れて室温下で攪拌し、攪拌しながらピリジン81.5gを加えて反応混合物を得て、反応による発熱の終了後に室温まで放冷し、16時間放置し、次に、氷冷下において、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)206.3gをγ−ブチロラクトン180mlに溶解した溶液を攪拌しながら40分かけて反応混合物に加え、続いて4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)93.0gをγ−ブチロラクトン350mlに懸濁したものを攪拌しながら60分かけて加え、更に室温で2時間攪拌した後、エチルアルコール30mlを加えて1時間攪拌し、次に、γ−ブチロラクトン400mlを加え、反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得て、得られた反応液を3lのエチルアルコールに加えて粗ポリマーから成る沈殿物を生成し、生成した粗ポリマーを濾別し、テトラヒドロフラン1.5lに溶解して粗ポリマー溶液を得て、得られた粗ポリマー溶液を28lの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾別した後、真空乾燥して」得られた「粉末状」の「ポリマーA」及び「前記ポリマーAの4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gに代えて、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)147.1gを用いた以外は、前記ポリマーAと同様にして反応を行い」得られた「ポリマーB」は、本件特許発明1における「ポリイミド前駆体」に相当する。
甲2B発明における「N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]フタルアミド酸1.5g」は、フタルアミド酸であって、ケイ素化合物であるから、本件特許発明1における「反応性基を有するシランカップリング剤」に相当する。
甲2B発明における「ポリイミド前駆体である前記ポリマーA50gとB50g((A)樹脂に該当)を、8−アザアデニン((B)プリン誘導体に該当)0.2g、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム((C)感光剤に該当)4g、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン1.5g、N−フェニルジエタノールアミン10g、メトキシメチル化尿素樹脂(MX−290)((D)架橋剤に該当)4g、テトラエチレングリコールジメタクリレート8g、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]フタルアミド酸1.5g、及び2−ニトロソ−1−ナフト−ル0.05gと共に、N−メチル−2−ピロリドン(以下ではNMPという)80gと乳酸エチル20gから成る混合溶媒に溶解し、得られた溶液の粘度を、少量の前記混合溶媒を更に加えることによって約35ポイズ(poise)に調整」した「ネガ型感光性樹脂組成物」は、本件特許発明1における「感光性樹脂組成物」である「樹脂組成物」に相当する。
甲2B発明における「ネガ感光性樹脂組成物を基板上に塗布することによって樹脂層を該基板上に形成する工程」は、本件特許発明1における「支持体上に樹脂組成物層を形成」する工程に相当する。
甲2B発明における「樹脂層を露光する工程と、露光後の樹脂層を現像してレリーフパターンを形成する工程」は、本件特許発明1における「露光および現像を行ってパターンを形成」する工程に相当する。
甲2B発明における「レリーフパターンを、温度プログラムを設定できる昇温式オーブン等で、180℃〜400℃で30分〜5時間の条件で加熱処理する」は、本件特許発明1における「加熱」に相当する。

したがって、両者は、
「ポリイミド前駆体と反応性基を有するシランカップリング剤とを含む樹脂組成物を用いて支持体上に樹脂組成物層を形成し、
前記樹脂組成物が感光性樹脂組成物であり、
前記樹脂組成物層に対して露光および現像を行ってパターンを形成した後、前記樹脂組成物層を加熱する、膜の製造方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点2B−1)
樹脂組成物層を加熱する工程に関して、本件特許発明1は、「2段階以上の多段階で加熱し、2段階目の加熱を1段階目の加熱温度よりも高い温度で行い、前記1段階目の加熱を、140〜170℃の温度にて10〜60分行い、前記2段階目の加熱を、180〜240℃の温度にて60〜300分行う」と特定するのに対し、甲2B発明は、そのような特定がない点。

そこで、上記相違点2B−1について検討する。
相違点2B−1は、実質、相違点2A−1と同旨である。
してみると、上記Aの検討と同じであるから、本件特許発明1は、甲2B発明ではなく、また、甲2B発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

以下、「甲2A発明」と「甲2B発明」を総称して「甲2発明」とし、検討を進める。

(イ) 本件特許発明4ないし12について

本件特許発明4ないし12は、請求項1を直接または間接的に引用する発明であり、本件特許発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(ア)A(甲2A発明との対比・判断)及びB(甲2B発明との対比・判断)のとおり、本件特許発明1は、甲2発明(甲2A発明・甲2B発明)ではなく、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明1の特定事項を全て含む発明である本件特許発明4ないし12もまた、甲2発明ではなく、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 取消理由1−3(甲第3号証を根拠とする新規性)、取消理由2−3(甲第3号証を主引用文献とする進歩性)について

(ア) 本件特許発明1について

本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明における「ワニスA−3」は、テトラカルボン酸2無水物である「ヒドロキシ基含有酸無水物(a)

」と「ジアミン化合物(b)

」とを反応させたものである。そうすると、甲3発明における「乾燥窒素気流下、ジアミン(b)13.6g(0.0225モル)、末端封止剤として、4−エチニルアニリン(商品名:P−APAC、富士写真フイルム(株)製)0.29g(0.0025モル)をNMP50gに溶解させ、ここにヒドロキシ基含有酸無水物(a)17.5g(0.025モル)をピリジン30gとともに加えて、60℃で6時間反応させ樹脂溶液を得て、反応終了後、樹脂溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集め、ポリマー固体を80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、このようにして得たポリマーの固体10gを計り、上記に示したナフトキノンジアジド化合物(2)3.9g、ビニルトリメトキシシラン1gをγ−ブチロラクトン30gに溶解させて」得た「ワニスA−3」は、その原料から見て、本件特許発明1における 「ポリイミド前駆体と反応性基を有するシランカップリング剤とを含む樹脂組成物」に相当する。
甲3発明における「60重量部の分散液B−1と38重量部のワニスA−3をボールミルを用いて混合し」て作製された「感光性樹脂組成物C−3」は、本件特許発明1における「感光性樹脂組成物」である「樹脂組成物」に相当する。
甲3発明における「感光性樹脂組成物C−3」を、「HMDS(ヘキサメチレンジシラザン)蒸気処理を施した6インチシリコンウェハ上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて120℃で3分プリベーク」する工程は、本件特許発明1における「支持体上に樹脂組成物層を形成」する工程に相当する。
甲3発明における「露光装置(ユニオン光学(株)製PEM−6M)に50/50、40/40、30/30、25/25、20/20、15/15μmのランアンドスペース(L/S)マスクをセットし、サンプルとマスクの間を密着条件下で、露光量105mJ/cm2(365nmの強度)で露光を行い、露光後の膜を、滝沢産業(株)製AD−2000のスプレー型現像装置を用い、スプレー圧力は1.5kg/cm2でP−7G(東京応化工業(株)製)を2分噴霧し、露光部を除去し、水にてリンス処理」する工程は、本件特許発明1における「露光および現像を行ってパターンを形成」する工程に相当する。
甲3発明における「現像後の膜を光洋サーモシステム(株)製イナートオーブンINL−60を用いてN2雰囲気下で140℃で60分間、250℃で1時間で硬化させ、硬化膜を得る工程」は、本件特許発明1における「樹脂組成物層を2段階以上の多段階で加熱し、2段階目の加熱を1段階目の加熱温度よりも高い温度で行う」工程であるとの限りにおいて相当する。

したがって、両者は、
「ポリイミド前駆体と反応性基を有するシランカップリング剤とを含む樹脂組成物を用いて支持体上に樹脂組成物層を形成し、
前記樹脂組成物が感光性樹脂組成物であり、
前記樹脂組成物層に対して露光および現像を行ってパターンを形成した後、前記樹脂組成物層を2段階以上の多段階で加熱し、2段階目の加熱を1段階目の加熱温度よりも高い温度で行う、膜の製造方法。」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点3−1)
1段階目及び2段階目の加熱条件に関し、本件特許発明1は、「前記1段階目の加熱を、140〜170℃の温度にて10〜60分行い、前記2段階目の加熱を、180〜240℃の温度にて60〜300分行う」と特定されるのに対し、甲3発明にはそのような特定がない点。

上記相違点3−1について検討する。
甲3発明の加熱条件は、「140℃で60分間、250℃で1時間」であるから、相違点3−1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明は、甲3発明ではない。

また、甲第3号証には、「120℃から400℃の温度を加えて硬化膜にする。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分から5時間実施する。一例としては、130℃、200℃、350℃で各30分ずつ熱処理する。あるいは室温より400℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。」(【0115】)との記載があるものの、加熱条件を多段階とする際の条件の設定指針は明らかではないし、実施例の記載(【0253】の【表1】など)を見ても、相違点3−1に係る本件特許発明1の特定事項を満たす条件とするように調整する動機付けがあるともいえない。

なお、この点について、特許異議申立人は意見書において、甲第3号証の段落【0115】及び【0253】の【表1】の記載をあげつつ、加熱条件は適宜設定できる旨主張するが、この点については、上記の検討のとおりであるから、当該主張は採用しない。

したがって、本件特許発明1は、甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ) 本件特許発明4ないし12について

本件特許発明4ないし12は、請求項1を直接または間接的に引用する発明であり、本件特許発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1は、甲3発明ではなく、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明1の特定事項を全て含む発明である本件特許発明4ないし12もまた、甲3発明ではなく、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

エ 取消理由1−4(甲第4号証を根拠とする新規性)、取消理由2−4(甲第4号証を主引用文献とする進歩性)について

(ア) 本件特許発明1について

本件特許発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明における「ポリアミド酸エステル」は、「3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物」とジアミンである「ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン」とを反応させたものである。そうすると、甲4発明における「攪拌機及び温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA)10g(32mmol)とイソプロピルアルコール3.87g(65mmol)とをN−メチルピロリドン45gに溶解し、1,8−ジアザビシクロウンデセンを触媒量添加して、その後、60℃にて2時間加熱し、続いて室温下(25℃)で15時間攪拌し、エステル化を行い、その後、氷冷下で塩化チオニルを7.61g(64mmol)加え、室温に戻し2時間反応を行い、酸クロリドの溶液(以下、酸クロリド溶液Iという)を得て、次に、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン40gを仕込み、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン10.25g(28mmol)を添加し、攪拌溶解した後、ピリジン7.62g(64mmol)を添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、調製した酸クロリド溶液Iを30分間で滴下した後、30分間攪拌を続けた。攪拌後の反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物を濾別して集め、減圧乾燥することによって」得た「カルボキシル基末端のポリアミド酸エステル(ポリアミド前駆体)」は、本件特許発明1における「ポリイミド前駆体」に相当する。
甲4発明における「D1:H2NCONH(CH2)3Si(OEt)3」は、アミノ基を有するものであるから、本件特許発明1における「反応性基を有するシランカップリング剤」に相当する。
甲4発明における「前記ポリマーIIIを100重量部と、B1

を11重量部と、C1:CH3COOHを3重量部と、D1:H2NCONH(CH2)3Si(OEt)3を2重量部の配合量でγ−ブチロラクトン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを重量比9:1で混合した溶剤200重量部に溶解して」て得られた「感光性樹脂組成物」は、本件特許発明1における「感光性樹脂組成物」である「樹脂組成物」に相当する。
甲4発明における「シリコンウエハ上にスピンコートして、乾燥膜厚が7〜12μmの塗膜を形成」する工程は、本件特許発明1における「支持体上に樹脂組成物層を形成」する工程に相当する。
甲4発明における「得られた塗膜に、超高圧水銀灯を光源とし、干渉フィルターを介して、100から1000mJ/cm2まで10mJ/cm2刻みでi線照射量を変化させ、所定のパターンをウエハに照射して、露光を行い、露光後、120℃で3分間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38重量%水溶液にて露光部のシリコンウエハが露出するまで現像した後、水でリンスして、パターン樹脂膜を得て、次に、作製したパターン樹脂膜付きウエハを縦型拡散炉μ−TF(光洋サーモシステム社製)を用いて窒素雰囲気下、100℃で1時間加熱した後、さらに200℃で1時間加熱してパターン硬化膜(硬化後膜厚5〜10μm)を得る工程」は、本件特許発明1における「露光および現像を行ってパターンを形成」する工程に相当する。
甲4発明における「現像後の膜を光洋サーモシステム(株)製イナートオーブンINL−60を用いてN2雰囲気下で140℃で60分間、250℃で1時間で硬化させ、硬化膜を得る工程」は、本件特許発明1における「樹脂組成物層を2段階以上の多段階で加熱し、2段階目の加熱を1段階目の加熱温度よりも高い温度で行う」工程であるとの限りにおいて相当する。

したがって、両者は、
「ポリイミド前駆体と反応性基を有するシランカップリング剤とを含む樹脂組成物を用いて支持体上に樹脂組成物層を形成し、
前記樹脂組成物が感光性樹脂組成物であり、
前記樹脂組成物層に対して露光および現像を行ってパターンを形成した後、前記樹脂組成物層を2段階以上の多段階で加熱し、2段階目の加熱を1段階目の加熱温度よりも高い温度で行う、膜の製造方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点4−1)
1段階目及び2段階目の加熱条件に関し、本件特許発明1は、「前記1段階目の加熱を、140〜170℃の温度にて10〜60分行い、前記2段階目の加熱を、180〜240℃の温度にて60〜300分行う」と特定されるのに対し、甲4発明にはそのような特定がない点。

上記相違点4−1について検討する。
甲4発明の加熱条件は、「140℃で60分間、250℃で1時間」であるから、相違点3は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は、甲4−1発明ではない。

また、甲第4号証には、「加熱温度は、好ましくは280℃以下、より好ましくは120〜280℃、さらに好ましくは160〜250℃である。」(【0093】)との記載があるものの、加熱条件を多段階とする際の条件の設定指針は明らかではないし、実施例の記載などを見ても、相違点4−1に係る本件特許発明1の特定事項を満たす条件とするように調整する動機付けがあるともいえない。

なお、この点について、特許異議申立人は意見書において、甲第4号証の段落【0126】及び【0127】(実施例)には2段階加熱の記載があり、段落【0093】には加熱温度範囲の記載があるから、加熱条件は適宜設定できる旨主張するが、この点については、上記の検討のとおりであるから、当該主張は採用しない。

したがって、本件特許発明1は、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ) 本件特許発明4ないし12について

本件特許発明4ないし12は、請求項1を直接または間接的に引用する発明であり、本件特許発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1は、甲4発明ではなく、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明1の特定事項を全て含む発明である本件特許発明4及び6ないし12は甲4発明ではないし、本件特許発明1の特定事項を全て含む発明である本件特許発明4ないし12は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

2 採用しなかった異議申立理由について

取消理由において採用しなかった異議申立理由は、申立理由1−1(甲第1号証を根拠とする新規性)のうち請求項2に係る部分、及び、申立理由1−4(甲第4号証を根拠とする新規性)のうち請求項5に係る部分である。

(1) 申立理由1−1のうち請求項2に係る部分について
請求項2は訂正により削除されたから、異議申立理由1−1のうち請求項2に係る部分は、理由がない。

(2) 申立理由1−4のうち請求項5に係る部分について
本件特許発明5は、請求項1を引用する発明であり、本件特許発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記1(2)エ(ア)のとおり、本件特許発明1は、甲4発明ではないから、本件特許発明1の特定事項を全て含む発明である本件特許発明5もまた、甲4発明ではないから、異議申立理由1−4のうち請求項5に係る部分は、理由がない。

第7 結語

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1及び4ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1及び4ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項2、3に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項2、3に係る特許異議の申立ては、いずれも、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド前駆体と反応性基を有するシランカップリング剤とを含む樹脂組成物を用いて支持体上に樹脂組成物層を形成し、
前記樹脂組成物が感光性樹脂組成物であり、
前記樹脂組成物層に対して露光および現像を行ってパターンを形成した後、前記樹脂組成物層を2段階以上の多段階で加熱し、2段階目の加熱を1段階目の加熱温度よりも高い温度で行い、
前記1段階目の加熱を、140〜170℃の温度にて10〜60分行い、
前記2段階目の加熱を、180〜240℃の温度にて60〜300分行う、膜の製造方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記シランカップリング剤が有する反応性基が、酸基、アミノ基、エチレン性不飽和結合を有する基、および、環状エーテル基から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の膜の製造方法。
【請求項5】
前記シランカップリング剤が有する反応性基が、酸基、エチレン性不飽和結合を有する基、および、環状エーテル基から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の膜の製造方法。
【請求項6】
前記ポリイミド前駆体が、式(1)で表される繰り返し単位を含むポリイミド前駆体である、請求項1、4及び5のいずれか1項に記載の膜の製造方法。
【化1】

式(1)中、A21およびA22は、それぞれ独立に、酸素原子または−NH−を表し、R21は、2価の有機基を表し、R22は、4価の有機基を表し、R23およびR24は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。
【請求項7】
前記樹脂組成物層の形成が、前記樹脂組成物を、支持体に塗布することにより行われる、請求項1及び4〜6のいずれか1項に記載の膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1及び4〜7のいずれか1項に記載の膜の製造方法を含む積層体の製造方法。
【請求項9】
請求項1及び4〜7のいずれか1項に記載の膜の製造方法を用いて膜を製造する工程を2回以上繰り返す、請求項8に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
更に、金属層を形成する工程を含む、請求項8または9に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
請求項1及び4〜7のいずれか1項に記載の膜の製造方法を用いて膜を製造する工程と、前記膜上に金属層を形成する工程とを交互にそれぞれ2回以上行う、請求項8〜10のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
請求項1及び4〜7のいずれか1項に記載の膜の製造方法、または、請求項8〜11のいずれか1項に記載の積層体の製造方法を含む、電子デバイスの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照
異議決定日 2021-11-11 
出願番号 P2018-535633
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (B05D)
P 1 651・ 121- YAA (B05D)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 植前 充司
奥田 雄介
登録日 2020-09-15 
登録番号 6764480
権利者 富士フイルム株式会社
発明の名称 膜の製造方法、積層体の製造方法および電子デバイスの製造方法  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  
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