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審決分類 審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A47J
審判 一部申し立て 2項進歩性  A47J
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  A47J
管理番号 1381679
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-03-29 
確定日 2021-11-20 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6765307号発明「新鮮な抽出した冷たいコーヒー飲料の作成方法及びかかる方法を実行するためのコーヒーマシン」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6765307号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−25〕について訂正することを認める。 特許第6765307号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6765307号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜25に係る特許についての出願は、2015年2月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年4月1日 スイス国、2014年10月3日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和2年9月17日にその特許権の設定登録がされ、令和2年10月7日に特許掲載公報が発行された。
これに対して令和3年3月29日に特許異議申立人であるメリッタ プロフェッショナル コーヒー ソリューションズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト(以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1に係る特許について特許異議の申立てがされた。
そして、その後の手続は以下のとおりである。
・令和3年5月28日付けで取消理由通知
・令和3年8月30日に特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
・令和3年9月3日付けで訂正請求があった旨の通知
・令和3年10月22日に申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和3年8月30日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜25について訂正すること(以下「本件訂正」という。)を求めるものであって、その内容は以下の訂正事項1のとおりである。なお、下線は、特許権者が訂正箇所を示すために付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記熱いコーヒーの前記冷却するステップは、少なくとも1つの熱交換器において冷水取り入れ口からの冷水の流れと排他的に熱的接触をさせることによって行われる」と記載されているのを、「前記熱いコーヒーの前記冷却するステップは、少なくとも1つの熱交換器において、直接外部上水道に又は真水用の内部貯蔵タンクに接続された冷水取り入れ口からの冷水の流れと排他的に熱的接触をさせることによって行われる」に訂正する。

ここで、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である請求項[1−25]に対して請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1において、訂正前の「冷水取り入れ口からの冷水の流れ」を「直接外部上水道に又は真水用の内部貯蔵タンクに接続された冷水取り入れ口からの冷水の流れ」とすることにより、熱交換器における冷水の流れを限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、特許明細書等における明細書の段落【0049】における「冷水取り入れ口15は、直接外部上水道に又は真水用の内部貯蔵タンクに接続することができる。」との記載に基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記ア、イのとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、明細書に記載されており、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、結論のとおり本件訂正を認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正後の請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明1」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
新鮮な抽出した冷たいコーヒー飲料の作成方法であって、
a) 所定量のコーヒー粉で抽出手段を満たすステップと、
b) 前記抽出手段において、前記所定量のコーヒー粉に湯及び/又は熱い蒸気を押し通すことによって、熱いコーヒー飲料を抽出するステップと、
c) 少なくとも1つの熱交換器によって、前記熱いコーヒー飲料を冷却するステップと、
d) 前記冷却されたコーヒー飲料をコーヒー取り出し口で分配するステップと、
を含み、
e) 前記熱いコーヒーの前記冷却するステップは、少なくとも1つの熱交換器において、直接外部上水道に又は真水用の内部貯蔵タンクに接続された冷水取り入れ口からの冷水の流れと排他的に熱的接触をさせることによって行われる、方法。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1に係る特許に対して、当審が令和3年3月5日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は以下のとおりである。
なお、取消理由は、申立人が主張する全ての特許異議申立理由を含み、その証拠方法も全て採用したものである。
(1)理由1(新規性
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記(3)アの文献に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)理由2(進歩性
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記(3)アの文献に記載された発明及び技術常識(例証として下記(3)イ及びウの文献3を参照。)に基いて、その出願前(優先日前)にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3)引用文献一覧
ア 特開2011−19907号公報(甲第1号証であって、以下「甲1」という。)
イ 特表2014−501164号公報(甲第2号証であって、以下「甲2」という。)
ウ 欧州特許出願公開第2036466号明細書(本件特許の明細書の段落0048に示された文献であって、以下「文献3」という。)

2 引用文献について
(1)甲1について
ア 甲1の記載
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲1には、次の記載がある。
なお、下線は当審で付したものであり、「・・・」は記載の省略を表す(以下同様。)。
(ア)「【要約】
【課題】迅速にいれたてのアイスコーヒを作ることのできる装置および方法を提供することである。
【解決手段】コーヒを作るための抽出ユニット4と、冷却機11と、冷媒が貫流する第1流路と抽出ユニット4のコーヒ送出流路4aと連結された第2流路を有するコーヒクーラー14と、新鮮水供給口2と、新鮮水クーラー13とを含み、前記新鮮水クーラー13は第1流路と第2流路を有する。新鮮水供給口2は下流側で前記新鮮水クーラー13の第2流路と連結され、さらに下流側でコーヒクーラー14の第1流路と連結され、かつ下流側で前記抽出ユニット4と連結されており、新鮮水クーラー13の第1流路は冷却機の冷媒回路と連結されている。」

(イ) 「【請求項10】
−抽出ユニット(4)において熱いコーヒを作るステップと、
−熱交換器として形成されたコーヒクーラー(14)と冷却機(11)とによってコーヒを冷却するステップとを含むアイスコーヒ製造方法であって、
新鮮水は前記冷却機(11)によって冷却され、冷却された新鮮水は前記コーヒクーラー(14)の第1流路を通って送り出され、コーヒは前記コーヒクーラー(14)の第2流路を通って送り出され、前記第1流路と前記第2流路は熱伝達可能に連結されているが、液体流通可能には連結されておらず、かつ、前記新鮮水は前記コーヒクーラー(14)の下流側で、前期新鮮水からコーヒを作るために前記抽出ユニット(4)に送り込まれることを特徴とするアイスコーヒ製造方法。」

(ウ) 「【0001】
本発明は、コーヒを作るための抽出ユニットと、冷却機と、熱交換器として形成されたコーヒクーラーとを含むアイスコーヒ製造装置、及び抽出ユニットでの熱いコーヒを作るステップと、熱交換器として形成されたコーヒクーラーと冷却機とによってコーヒを冷却するステップとを含むアイスコーヒ製造方法に関する。」

(エ) 「【0004】
ただし、短時間でいれたてのアイスコーヒを作りたいという要望が少なくない。さらにコーヒの抽出には、一方で、水を加熱するための大量のエネルギーが必要であり、同時に、圧縮機等を用いた冷却プロセスのために大量のエネルギーが必要である。
・・・
【0006】
そこで本発明の目的は、迅速にいれたてのアイスコーヒを作ることのできる装置および方法を提供することである。また、いれたてのアイスコーヒを作るにあたり省エネが達成されることも意図している。さらに、アイスコーヒの注出温度の事前設定は、例えば抽出ユニットに供給される水の温度とは無関係に行えることも重要である。」

(オ) 「【0007】
アイスコーヒ製造装置に関しての上記課題は、本発明によれば、コーヒを作るための抽出ユニットと、冷却機と、熱交換器として形成されたコーヒクーラーとを含み、前記コーヒクーラーは互いに熱伝達可能に連結されているが液体流通可能には連結されていない少なくともそれぞれ1本の第1流路と第2流路を有し、前記第1流路は冷媒の貫流が可能で、前記第2流路は前記抽出ユニットのコーヒ送出流路と液体流通可能に連結され、さらに新鮮水供給口と、さらに別の熱交換器として形成された新鮮水クーラーとを含み、前記新鮮水クーラーは互いに熱伝達可能に連結されているが液体流通可能には連結されていない少なくともそれぞれ1本の第1流路と第2流路を有し、前記新鮮水供給口は下流側で前記新鮮水クーラーの前記第2流路と連結され、さらに下流側で前記コーヒクーラーの前記第1流路と連結され、前記下流側で前記抽出ユニットと液体流通可能に連結されており、前記新鮮水クーラーの前記第1流路は前記冷却機の冷媒回路と液体流通可能に連結されていることを特徴とすることにより解決される。
【0008】
抽出ユニットで熱いコーヒを作るステップと、熱交換器として形成されたコーヒクーラーと冷却機とによってコーヒを冷却するステップとを含むアイスコーヒ製造方法において、上記課題は、本発明によれば、新鮮水は前記冷却機によって冷却され、冷却された新鮮水は前記コーヒクーラーの第1流路を通って送り出され、コーヒは前記コーヒクーラーの第2流路を通って送り出され、前記第1流路と前記第2流路は熱伝達可能に連結されているが、液体流通可能には連結されておらず、前期新鮮水は前記コーヒクーラーの下流側で、前期新鮮水からコーヒを作るために前記抽出ユニットに送り込まれることを特徴とすることにより解決される。
【0009】
本発明によるアイスコーヒ製造装置及びアイスコーヒ製造方法の好適な実施形態はそれぞれの従属請求項記載した通りである。
アイスコーヒを作るための本発明による装置は、コーヒを作るための抽出ユニットと、冷却機と、熱交換器として形成されたコーヒクーラーとを含んでいる。このコーヒクーラーは少なくともそれぞれ1本の第1流路と第2流路を有している。これら双方の流路は熱伝達可能に連結されているが、ただし液体流通可能に連結されていない。
【0010】
上記の第1流路は冷媒の貫流が可能で、上記の第2流路は抽出ユニットのコーヒ送出流路と液体流通可能に連結されている。したがって、抽出し立てのコーヒは抽出ユニットからコーヒ送出流路を経てさらに第2流路を通って送り出され、その際、熱交換によって、第1流路を送り出される冷媒によって冷却される。
【0011】
重要な点は、本装置がさらに、新鮮水供給口と、さらに別の熱交換器として形成された新鮮水クーラーとを含んでいることである。コーヒクーラーと同様に、新鮮水クーラーも同じく少なくともそれぞれ1本の第1流路と第2流路を有しており、その際、これら双方の流路は熱伝達可能に連結されているが、ただし液体流通可能に連結されていない。
【0012】
上記の新鮮水供給口は下流側で新鮮水クーラーの第2流路と連結され、さらに、下流側でコーヒクーラーの第1流路と連結され、さらに下流側で抽出ユニットと液体流通可能に連結されている。新鮮水クーラーの第1流路は上記冷却機の冷媒回路と液体流通可能に連結されている。
なお、本願明細書において、「下流側で」および「液体流通可能に連結されて」なる表現はそれぞれ、場合によってさらに別の中間要素が流路内に配置されていることを含んでいる。
【0013】
従来の技術とは異なり、本発明による装置はコーヒクーラーに加えてさらに、新鮮水クーラーを有している。この新鮮水クーラーと上記の冷却機によって新鮮水は冷却される。冷却された新鮮水はコーヒクーラーの第1流路を貫流することにより、この冷却された新鮮水はコーヒクーラーに関して冷媒として機能する。そのため、こうした熱交換によって、コーヒはコーヒクーラー中で冷却されると共に、新鮮水もまた加温されることになる。このようにして加温された新鮮水は抽出ユニットに送り出され、同所において抽出によってコーヒが作られて、その後にこのコーヒは再び上述したようにして冷却される。
【0014】
したがって、本発明による装置は、いれたてのコーヒがコーヒクーラー中で冷却されて直接に注出可能であるために、いれたてのアイスコーヒを作ることができる。とりわけ、コーヒの冷却は新鮮水クーラーによって冷却された新鮮水の冷却効果によりコーヒクーラーを1回通過させるだけで十分であることから、従来の技術に比較して、抽出されたコーヒを貯蔵タンクと熱交換機との間で何度も繰り返して循環させる必要はまったくない。しかもこれによって、コーヒクーラーを1回通過させた後に直ちにいれたてのアイスコーヒを注出することができるため、熱いいれたてのコーヒを作るのに要される時間とほぼ同じ時間で、要望どおりいれたてのアイスコーヒを供することができる。」
・・・
【0016】
本装置は好ましくは、冷却されたコーヒを容器、例えばコーヒカップに注出するためのコーヒ注出口を含んでいる。
【0017】
コーヒクーラーの十分な冷却効果を達成するために、新鮮水クーラーと冷却機とは好ましくは、新鮮水は新鮮水クーラーの貫流後、7℃以下の温度、好ましくは4℃以下の温度、好適には1℃?3℃の範囲の温度に冷却されるように形成されている。この最終温度は好ましくは、新鮮水の初期温度つまり15℃?30℃の範囲にある少なくとも典型的な新鮮水の初期温度とは関係なく達成される。これは一方において、制御と当該温度センサとによって保証されていてよいが、ただし、新鮮水クーラーと冷却機とを、積極的な制御なしでも、少なくとも上記の好適なものとして述べた温度範囲内で新鮮水の所定の最終温度が達成されるように、寸法設計して形成するのが特に好都合でかつ省コスト的である。
【0018】
したがって、十分な冷却効果を達成するには、新鮮水を新鮮水クーラーによって顕著に冷やすのが好適である。この場合、新鮮水が凍結する危険が存在している。従来の技術から熱交換器の場合に既知のように、好ましくは温度センサと当該制御によって凍結が防止されるようにする補助的な電熱装置を設けることも本発明に含まれている。ただし、新鮮水クーラーと冷却機とを新鮮水クーラーが蒸発器温度>0℃を有するようにして構成するのが特に好適である。これによって、コスト増をもたらす電熱装置と当該制御を不要として、新鮮水の凍結を効果的に防止することができる。」

(カ) 「【0025】
好ましくは、本装置は、場合により熱いいれたてのコーヒかまたはいれたてのアイスコーヒが作られるように形成されている。
【0026】
それゆえ、本発明による装置は好適な実施形態において、新鮮水供給口と新鮮水クーラーの第2流路との間に配置された新鮮水流路選択弁を有している。新鮮水供給口は新鮮水流路選択弁を経て場合により、既述したように新鮮水クーラーの第2流路と液体流通可能に連結可能であるかまたは、新鮮水クーラーの第2流路ならびにコーヒクーラーの第1流路を共にバイパスして、抽出ユニットと液体流通可能に連結可能である。
【0027】
したがって、新鮮水流路選択弁を経て、新鮮水は双方のクーラーを通過するかまたは、これら双方のクーラーを通過することなく、抽出ユニットに送り出されるかをプリセットすることができる。前者は既述したようにアイスコーヒを作るために行われ、後者は熱いコーヒを作るために行われる。
【0028】
別な実施形態として、抽出ユニットのコーヒ送出流路とコーヒクーラーの第2流路との間に配置されたコーヒ流路選択弁を備えるのが好適である。このコーヒ流路選択弁により、抽出ユニットのコーヒ送出流路は場合により、コーヒクーラーの第2流路と液体流通可能に連結されるかまたは、コーヒクーラーの第2流路をバイパスして、コーヒを容器に注出するためのコーヒ注出口と液体流通可能に連結されるかすることができる。したがって、これにより、熱いコーヒを作る場合には、抽出ユニットによって抽出されたコーヒを、コーヒクーラーをバイパスして、直接にコーヒ注出口に導き、他方、アイスコーヒを作る場合には、既述したように、抽出ユニットによって抽出された熱いコーヒをコーヒクーラーの第2流路を経てコーヒ注出口に導くことが可能である。」

(キ) 「【0030】
特に好適な形態は、本発明による装置を2つの構造ユニットで形成することである。この場合、第1の構造ユニットはコーヒを作るための既知の装置と同じであり、新鮮水供給口、抽出ユニットならびにコーヒ注出口を含んでいる。新鮮水供給口は下流側で抽出ユニットと液体流通可能に連結されており、抽出ユニットは下流側でコーヒ注出口と液体流通可能に連結されている。重要な点は、新鮮水供給口と抽出ユニットとの間に上述したような新鮮水流路選択弁が配置されており、この新鮮水流路選択弁によって新鮮水は場合により、第1の構造ユニットの新鮮水出口に送り出されるかまたは抽出ユニットに送り出されるかすることができる。第1の構造ユニットはさらに、冷却された新鮮水用の流入口を有しており、この流入口は抽出ユニットと液体流通可能に連結されている。またさらに、第1の構造ユニットは既述したようなコーヒ流路選択弁を有しており、抽出ユニットで作られたコーヒはこのコーヒ流路選択弁によって、第1の構造ユニットのコーヒ出口に送り出されるかまたはコーヒ注出口に送り出される。さらに、第1の構造ユニットは、コーヒ注出口と液体流通可能に連結されたコーヒ入口を有している。
【0031】
第2の構造ユニットは、第1の構造ユニットの新鮮水出口と液体流通可能に連結された新鮮水入口を含んでいる。この新鮮水入口は下流側で新鮮水クーラーの第2流路と液体流通可能に連結され、さらに下流側でコーヒクーラーの第1流路と液体流通可能に連結され、最後に第2の構造ユニットの新鮮水出口と液体流通可能に連結されている。第2の構造ユニットの新鮮水出口は再び第1の構造ユニットの新鮮水入口と液体流通可能に連結されている。
【0032】
第2の構造ユニットはさらにコーヒ入口を含み、このコーヒ入口は第1の構造ユニットのコーヒ出口と液体流通可能に連結されており、その下流側でコーヒクーラーの第2流路と連結され、さらに下流側で、場合により上述したような洗浄流路選択弁を介在させて、第2の構造ユニットのコーヒ出口と連結されている。第2の構造ユニットのこのコーヒ出口は第1の構造ユニットのコーヒ入口と連結されている。
【0033】
第2の構造ユニットはさらに冷却機を含んでおり、この冷却機の冷媒回路は新鮮水クーラーの第1流路と液体流通可能に連結されている。
【0034】
双方の構造ユニットは好ましくは独立したユニットとして形成され、特に、それぞれ1個のハウジング内に配置されており、好ましくはそれぞれ所要の給電装置、例えば電気接続端子および場合により必要な制御装置および制御接続端子を有している。
【0035】
これにより、第1の構造ユニットは完全なコーヒメーカとして使用可能であり、加えてさらに必要に応じ、例えば別個に事後的に入手可能な第2の構造ユニットを増設することができるため、双方のユニットを併せれば、さらに、いれたてのアイスコーヒも作ることができるという利点が得られる。」

(ク) 「【0040】
本発明はさらに、アイスコーヒ製造方法に関する。この方法は以下の方法ステップを含んでいる。すなわち、抽出ユニットにおいて熱いコーヒが作られるステップと、このコーヒが熱交換器として形成されたコーヒクーラーと冷却機とによって冷却されるステップである。
【0041】
重要な点は、新鮮水は冷却機によって冷却され、冷却された新鮮水はコーヒクーラーの第1流路を通って送り出され、他方、コーヒはコーヒクーラーの第2流路を通って送り出され、その際、第1流路と第2流路は熱伝達可能に連結されているが、ただし液体流通可能に連結されていないということである。新鮮水は新鮮水からコーヒを作るために、コーヒクーラーの下流側で抽出ユニットに送り出される。したがって、本発明による方法において、コーヒは冷却された新鮮水を介して間接的に冷却機によって冷却される。
【0042】
好ましくは、新鮮水はさらに別の熱交換器として形成された新鮮水クーラーによって冷却され、その際、冷却機と新鮮水クーラーの第1流路との間に冷媒回路が形成され、新鮮水供給口の下流側で新鮮水は新鮮水クーラーの第2流路を通って送り出される。この場合、第1流路と第2流路は熱伝達可能に連結されているが、ただし液体流通可能に連結されていない。
【0043】
本発明による方法のさらに別の好ましい実施形態において、新鮮水は、少なくとも15℃?30℃の範囲の任意の新鮮水初期温度につき、新鮮水クーラーを貫流した後、7℃以下の温度、好ましくは4℃以下の温度、好適には1℃?3℃の範囲の温度に冷却される。
【0044】
有利には、洗浄のために、コーヒクーラーの第2流路は洗浄流出流路と液体流通可能に連結され、コーヒ注出のために、コーヒクーラーの第2流路はコーヒ注出口と液体流通可能に連結される。

(ケ) 「【0047】
本発明による装置および本発明による方法は、好ましくはいれたてのアイスコーヒが約10℃の温度で注出されるように形成されている。この温度は一般的には特に心地よいものとして感じられる。
【0048】
本発明による装置は、所望のミックス飲料を事前設定することのできる制御装置と組み合わせることができ、その際に、この制御装置が本装置、とりわけ冷却機をミックス飲料の最終温度が約10℃となるように制御することができれば特に好適である。
・・・
【0050】
本発明による装置における重要な点は、コーヒはコーヒクーラーの第2流路の貫流後十分に冷却されて、所定の温度を有しているということである。好ましくは、コーヒクーラーは、コーヒクーラーの少なくとも第2流路はできるだけ僅かな容積を有し、こうして、十分な冷却が保証されるように形成されている。これにより、一方で、十分な冷却が保証されると共に、他方で、コーヒの注出後にクーラー内に残存している液体量をできるだけ僅かなものとし、それゆえ、洗浄プロセスが短縮されると共にコーヒを作る際の先駆時間も減少させられるという利点が生ずる。」

(コ) 「【0056】
以下、図1を参照して、本発明のその他の特徴および好ましい実施形態を説明する。
第1のユニットはコーヒメーカ1を表している。このコーヒメーカは新鮮水供給口2を有しており、この新鮮水供給口は新鮮水流路選択弁3を経て場合により抽出ユニット4または新鮮水出口5と液体流通可能に連結可能である。抽出ユニット4はフルオートマチックコーヒメーカ自体の場合に公知であるように形成されており、下流側でコーヒ流路選択弁6と液体流通可能に連結されたコーヒ送出流路4aを有している。
【0057】
コーヒはコーヒ流路選択弁6を経て場合により、コーヒ注出口7またはコーヒ出口8に送り出されることができる。コーヒメーカ1はさらに、コーヒ注出口7と液体流通可能に連結されたコーヒ入口9を有している。
さらに、コーヒメーカ1は、新鮮水流路選択弁3をバイパスして抽出ユニット4と液体流通可能に連結された第2の新鮮水入口2aを有している。
【0058】
第2のユニットは冷却ユニット10を表している。この冷却ユニットは、新鮮水出口5と液体流通可能に連結された新鮮水入口15と、第2の新鮮水入口2aと液体流通可能に連結された新鮮水出口12aと、コーヒ出口8と液体流通可能に連結されたコーヒ入口18と、コーヒ入口9と液体流通可能に連結されたコーヒ出口19とを含んでいる。
冷却ユニット10はさらに、冷却機11と、熱交換器として形成された新鮮水クーラー13と、同じく熱交換器として形成されたコーヒクーラー14と、洗浄流路選択弁16とを含んでいる。
新鮮水入口15から出発して、この流れは下流側で新鮮水クーラー13の第2流路と連結され、さらに下流側でコーヒクーラー14の第1流路と連結され、さらに下流側で新鮮水出口12aと液体流通可能に連結されている。
コーヒ入口18は下流側でコーヒクーラー14の第2流路と連結され、さらに下流側で洗浄流路選択弁16と液体流通可能に連結されている。洗浄流路選択弁16により、コーヒは場合により、コーヒ出口19かまたは洗浄流出流路17に送り出されことができ、その際、洗浄流出流路17は排出口に合流している。
新鮮水流路選択弁3、コーヒ流路選択弁6および洗浄流路選択弁16はそれぞれ、制御装置によって制御可能な3ポート弁(3方向弁)として形成されている。
【0059】
コーヒメーカ1はさらに、コーヒメーカ1の構成要素を制御すると共に、制御インタフェースを経て冷却ユニット10の構成要素も制御する図中不図示の制御装置を有している。
【0060】
ユーザが、例えば熱いコーヒをセレクトする場合には、新鮮水供給口2は、冷却ユニットをバイパスして、抽出ユニット4と連結され、さらに抽出ユニットは、同じく冷却ユニットをバイパスして、コーヒ注出口7と液体流通可能に連結される。続いて、それ自体公知の方法で、抽出ユニットへの新鮮水の供給によってコーヒが作られて、コーヒ注出口からコーヒが注出される。
【0061】
これに対してユーザがアイスコーヒをセレクトする場合には、新鮮水供給口2は新鮮水流路選択弁3を経て、また、コーヒ注出口7はコーヒ流路選択弁6を経てそれぞれ冷却ユニット10と液体流通可能に連結される。したがって、新鮮水は新鮮水供給口から、新鮮水出口5と新鮮水入口15とを経て、新鮮水クーラー13の第2流路を通って流れる。冷却機11は冷媒回路を経て新鮮水クーラー13の第1流路と液体流通可能に連結されているために、新鮮水は新鮮水クーラーを貫流した後、約2℃の温度を有している。続いて、新鮮水はコーヒクーラー14の第1流路を通り、同所を貫流した後、新鮮水出口12aと第2の新鮮水入口2aとを経て抽出ユニット4に供給される。抽出ユニットはこの新鮮水からそれ自体公知の方法でコーヒを作り出し、それをコーヒ送出流路4aを通じて送り出し、こうして、コーヒはコーヒ流路選択弁6と、コーヒ出口8と、コーヒ入口18とを経てコーヒクーラー14の第2流路に送り出される。同所を貫流した後、コーヒは先ず洗浄流路選択弁16を経て洗浄流出流路17に送り出される。ただしこれは、洗浄剤の残滓がある場合にそれを取り除いて正しい冷却機能を達成するために、5秒?15秒にわたって必要であるにすぎない。続いて、コーヒはさらに、洗浄流路選択弁16と、コーヒ出口19と、コーヒ入口9とを経てコーヒ注出口7に送られて、アイスコーヒが注出される。」

(サ) 「【図1】



イ 上記アの記載から分かること
(ア)上記アの要約、請求項10、段落0001、0006、0014、0025、0040及び0047並びに図1の記載によれば、甲1には、いれたてのアイスコーヒの製造方法が記載されている。
(イ)上記アの請求項10、段落0001、0008、0025〜0028、0040、0060及び0061並びに図1の記載によれば、いれたてのアイスコーヒの製造方法は、抽出ユニット4において公知の方法で熱いコーヒを抽出するステップを含むことが分かる。
(ウ)上記アの請求項10、段落0001、0008、0009、0013、0014、0040、0050及び0061並びに図1の記載によれば、いれたてのアイスコーヒの製造方法は、新鮮水クーラー13及びコーヒクーラー14によって、熱いコーヒを冷却するステップを含むことが分かる。
(エ)上記アの段落0016、0028、0030、0044及び0061並びに図1の記載によれば、いれたてのアイスコーヒの製造方法は、冷却されたコーヒをコーヒ注出口7で注出するステップを含むことが分かる。
(オ)上記アの請求項10、段落0007〜0009、0011〜0014、0017、0018、0030〜0033、0040〜0043及び0061並びに図1(特に、新鮮水クーラー13によって冷却された新鮮水の温度について、段落0017、0018及び0043)の記載によれば、熱いコーヒを冷却するステップは、冷却機11の冷媒回路が連結された第1流路と、新鮮水供給口2からの新鮮水が通って流れる第2流路を有する新鮮水クーラー13において前記第2流路を通って送り出された新鮮水供給口2からの新鮮水が7℃以下の温度に冷却され、コーヒクーラー14において前記新鮮水クーラー13からの冷却された新鮮水の流れと熱伝達させることによって行われることが分かる。

ウ 甲1発明
上記(ア)及び(イ)を総合して整理すると、甲1には、次の事項からなる発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「いれたてのアイスコーヒの製造方法であって、
抽出ユニット4において公知の方法で熱いコーヒを抽出するステップと、
新鮮水クーラー13及びコーヒクーラー14によって、前記熱いコーヒを冷却するステップと、
前記冷却されたコーヒをコーヒ注出口7で注出するステップと、
を含み、
前記熱いコーヒを冷却するステップは、冷却機11の冷媒回路が連結された第1流路と、新鮮水供給口2からの新鮮水が通って流れる第2流路を有する前記新鮮水クーラー13において前記第2流路を通って送り出された新鮮水供給口2からの新鮮水が7℃以下の温度に冷却され、前記コーヒクーラー14において前記新鮮水クーラー13からの冷却された新鮮水の流れと熱伝達させることによって行われる、方法。」

(2)甲2について
ア 甲2の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲2には、次の記載がある。
(ア)「【0003】
関連技術の説明
フィルタまたはバッグを通じて抽出されるコーヒーまたは茶などの、フィルタを通じて飲料を抽出するための多くの方法および装置が公知である。注ぎ込み技術としてここで説明される1つの方法は、コーヒーまたは茶の鑑定家による消費のためのより小さな部分においてカスタマイズされた飲料レシピを手作業で準備するためにバリスタとともに一般的になった。注ぎ込み装置及び技術は、カスタマイズされたレシピがフルポットなどのより大きな部分において製造される場合に生じる廃棄物を減じることができ、バリスタが個人用のサービスを提供するのを見ている消費者に芸術的劇場を提供する。
【0004】
慣用の注ぎ込み技術および装置は、通常、コーヒー粉砕物で満たされたフィルタ上およびその中に高温水を手作業で注ぎ、これにより、フィルタにおけるコーヒー粉砕物を湿らせ、抽出されたコーヒー飲料を製造し、この飲料は、その後、フィルタを通って一回分の提供容器に滴下する。慣用の注ぎ込み装置および技術は、特別なコーヒーレシピのカップサイズの分量を製造する、手作業の、不規則に適用されるプロセスを伴う。コーヒーのこのような少量の提供を製造することができる装置の例は、Kealyに対する米国特許第5865094号明細書に開示されている。」

イ 甲2の記載事項
上記アによると、甲2には、次の事項(以下「甲2の記載事項」という。)が記載されていると認める。
なお、括弧内は、本件訂正発明1の対応する用語若しくは語句を示す。
「コーヒー(熱いコーヒー飲料)を抽出するための方法において、
所定量のコーヒー粉砕物(コーヒー粉)でフィルタ(抽出手段)を満たすステップと、
前記フィルタにおいて、前記所定量のコーヒー粉砕物に高温水(湯及び/又は熱い蒸気)を注ぐ(押し通す)ことによって、コーヒーを抽出するステップとを含むこと。」

(3)文献3について
ア 文献3の記載
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲3には、次の記載がある。
なお、uウムラウトは「ue」で表した。また、翻訳文は当審によるものである。
(ア)「[0017] In Fig. 1 ist die Brueheinrichtung 1 in der Fuellposition dargestellt. Dies bedeutet, dass sich der untere Kolben 4 in der untersten Position befindet, in welcher er durch die am Rahmen 2 angebrachte Klinkeinrichtung 11 gehalten wird. ・・・
[0018] In diese Bruehkammer 12 wird nun das frisch gemahlene Kaffeepulver zugefuehrt. ・・・
[0019] Nach dem Befuellen der Bruehkammer 12 mit frisch gemahlenem Kaffeepulver wird die Spindel 9 ueber den Elektromotor 10 in Rotation versetzt, ueber den Gewindeteil 2 wird der Bruehzylinder 6 hoch gefahren, wobei der untere Kolben 4 ueber entsprechende Mitnehmer mitgenommen wird. ・・・Das ausgebruehte Kaffeepulver verbleibt in der Bruehkammer 12 und bildet einen Kaffeepulverkuchen, der sehr kompakt und feucht ist.」
<翻訳文>
「[0017] 図1では、抽出装置1は充填位置で示されている。これは、下側ピストン4が、フレーム2に取り付けられたラッチ装置11によって保持される最下位置にあることを意味する。この位置は、スピンドル9を介して対応する回転によって下側ピストン4がラッチ装置11にラッチされるまで抽出シリンダ6が最下位置に移動することによって達成され、その後、抽出シリンダ6は、スピンドル9を回転させることによって再び上昇させられる。図1から明らかなように、下側ピストンが最下位置にあると、抽出シリンダ6が下側ピストン4に対して上昇し、これにより、抽出シリンダ6の内部に、下側ピストン4によって底部が閉鎖された抽出チャンバ12が形成される。
[0018] 新たに粉砕されたコーヒー粉末は、この抽出チャンバ12に供給される。このコーヒー粉末は、図示されていないが、対応するコーヒーマシン内にも収容されているコーヒー粉砕機内で既知の方法で粉砕され、粉末は、第1の漏斗13を通過して旋回漏斗14に至り、旋回漏斗を通って、粉砕されたコーヒー粉末が抽出チャンバ12内に供給される。この場合、供給されるコーヒー粉末の量は、どのような種類のコーヒーを得るかに応じて、既知の方法で計量される。
[0019] 抽出チャンバ12が新たに挽かれたコーヒー粉末で満たされた後、スピンドル9は電気モータ10を介して回転させられ、抽出シリンダ6はねじ部2を介して上昇させられ、下側ピストン4は対応するドライバによって運ばれる。抽出シリンダ6及び下側ピストン4は、抽出チャンバ12が上側ピストン3によって閉じられ、抽出チャンバ12内に位置するコーヒー粉末が押圧されるまで上昇する。この位置では、図2に示される。図2では、抽出位置に到達している。既知の方法で、熱湯は、矢印15で示されるように、下から抽出チャンバ12に供給され、熱湯は、抽出チャンバ12及びその中に位置する粉砕されたコーヒー粉末を通って流れ、既知の方法で上側ピストン3に取り付けられ、矢印16で示されるように、抽出されたコーヒーとして導出される排出チャネルを介して排出され、既知の方法で、ライン(図示せず)を介してコーヒーマシンの注ぎ口に達し、そこから下に設けられた容器に達する。コーヒーを抽出するために、抽出チャンバ12内のコーヒー粉末は、流れる抽出水に対抗するように、2つのピストン3と4との間で圧縮され、その結果、抽出水は、約8バールの圧力で抽出チャンバ12を通って押されなければならない。抽出されたコーヒー粉末は、抽出チャンバ12内に留まり、非常にコンパクトで湿ったコーヒー粉末ケーキを形成する。」

(イ)「




イ 上記アによると、文献3には、次の事項(以下「文献3の記載事項」という。)が記載されていると認める。なお、括弧内は、本件訂正発明1の対応する用語若しくは語句を示す。
「コーヒー(熱いコーヒー飲料)を抽出するための方法において、
所定量のコーヒー粉末(コーヒー粉)で、下側ピストン4及び抽出シリンダ6で形成した抽出チャンバ12(抽出手段)を満たすステップと、
前記抽出チャンバ12において、排出チャネルが取り付けられた上側ピストン3で閉じられた状態で前記所定量のコーヒー粉末を熱湯が通って流れる(所定量のコーヒー粉に湯及び/又は熱い蒸気を押し通す)ことによって、コーヒーを抽出するステップとを含むこと。」

3 当審の判断
(1)対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
・後者の「いれたてのアイスコーヒ」は、前者の「新鮮な抽出した冷たいコーヒー飲料」に相当し、以下同様に、「いれたてのアイスコーヒの製造方法」は「新鮮な抽出した冷たいコーヒー飲料の作成方法」に、「抽出ユニット4」は「抽出手段」に、「コーヒ」は「コーヒー飲料」に、「新鮮水クーラー13及びコーヒクーラー14」は「少なくとも1つの熱交換器」に、「コーヒ注出口7」は「コーヒー取り出し口」に、「注出」は「分配」に、「新鮮水供給口2」は「冷水取り入れ口」に、「新鮮水」は「冷水」に、「熱伝達させる」は「排他的に熱的接触をさせる」に、それぞれ相当する。
・後者の「抽出ユニット4において公知の方法で熱いコーヒを抽出するステップ」を含むことは、前者の「a) 所定量のコーヒー粉で抽出手段を満たすステップ」と、「b) 前記抽出手段において、前記所定量のコーヒー粉に湯及び/又は熱い蒸気を押し通すことによって、熱いコーヒー飲料を抽出するステップ」とを含むことに、「前記抽出手段において、熱いコーヒー飲料を抽出するステップ」を含むという点で一致する。

・後者の「前記熱いコーヒを冷却するステップは、冷却機11の冷媒回路が連結された第1流路と、新鮮水供給口2からの新鮮水が通って流れる第2流路を有する前記新鮮水クーラー13において前記第2流路を通って送り出された新鮮水供給口2からの新鮮水が7℃以下の温度に冷却され、前記コーヒクーラー14において前記新鮮水クーラー13からの冷却された新鮮水の流れと熱伝達させることによって行われる」ことは、前者の「前記熱いコーヒーの前記冷却するステップは、少なくとも1つの熱交換器において、直接外部上水道に又は真水用の内部貯蔵タンクに接続された冷水取り入れ口からの冷水の流れと排他的に熱的接触をさせることによって行われる」ことに、「前記熱いコーヒーの前記冷却するステップは、少なくとも1つの熱交換器において、冷水の流れと排他的に熱的接触をさせることによって行われる」という点で一致する。

そうすると、両者の間には次の一致点及び相違点が認められる。
[一致点]
「新鮮な抽出した冷たいコーヒー飲料の作成方法であって、
前記抽出手段において、熱いコーヒー飲料を抽出するステップと、
少なくとも1つの熱交換器によって、前記熱いコーヒー飲料を冷却するステップと、
前記冷却されたコーヒー飲料をコーヒー取り出し口で分配するステップと、
を含み、
前記熱いコーヒーの前記冷却するステップは、少なくとも1つの熱交換器において、冷水の流れと排他的に熱的接触をさせることによって行われる、方法。」

[相違点1]
「前記抽出手段において、熱いコーヒー飲料を抽出するステップ」を含むことに関し、本件訂正発明1では、「a) 所定量のコーヒー粉で抽出手段を満たすステップ」と、「b) 前記抽出手段において、前記所定量のコーヒー粉に湯及び/又は熱い蒸気を押し通すことによって、熱いコーヒー飲料を抽出するステップ」とを含むのに対して、甲1発明では、「抽出ユニット4において公知の方法で熱いコーヒを抽出するステップ」を含むものであるが、公知の方法とはどの様な方法なのかが明示されていない点。

[相違点2]
「前記熱いコーヒーの前記冷却するステップは、少なくとも1つの熱交換器において、冷水の流れと排他的に熱的接触をさせることによって行われる」ことに関し、本件訂正発明1では、「前記熱いコーヒーの前記冷却するステップは、少なくとも1つの熱交換器において、直接外部上水道に又は真水用の内部貯蔵タンクに接続された冷水取り入れ口からの冷水の流れと排他的に熱的接触をさせることによって行われる」のに対して、甲1発明では、「前記熱いコーヒを冷却するステップは、冷却機11の冷媒回路が連結された第1流路と、新鮮水供給口2からの新鮮水が通って流れる第2流路を有する前記新鮮水クーラー13において前記第2流路を通って送り出された新鮮水供給口2からの新鮮水が7℃以下の温度に冷却され、前記コーヒクーラー14において前記新鮮水クーラー13からの冷却された新鮮水の流れと熱伝達させることによって行われる」点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
甲1発明の「抽出ユニット4において公知の方法で熱いコーヒを抽出するステップ」における「公知の方法」とは、上記相違点1に係る本件発明の各ステップa)及びb)を備えたものと解するのが自然であるから、上記相違点1は実質的な相違点ではない。
仮に上記相違点1が実質的な相違点であったとしても、上記2(2)イの甲2の記載事項及び上記2(3)イの文献3の記載事項に示されるように、熱いコーヒー飲料を抽出する際に、「所定量のコーヒー粉で抽出手段を満たすステップ」と、「前記抽出手段において、前記所定量のコーヒー粉に湯及び/又は熱い蒸気を押し通すことによって、熱いコーヒー飲料を抽出するステップ」を行うことは、本件特許の優先日前に技術常識であったと認められるので、甲1発明において技術常識を考慮することにより、上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について
本件訂正発明1は、氷を備えたマグに分配されることを想定した約30〜35℃程度のコーヒー飲料を作成する方法であり(本件特許明細書の段落0013及び0054)、単純で省エネルギーの方法で熱いか又は冷却されたコーヒーの選択的な分配を可能にすることを目的とするものである(同段落0014)。
これに対して、甲1発明は、約10℃程度のいれたてのアイスコーヒを迅速に作成することを目的とした方法であり(甲1の要約並びに段落0006、0014、0047及び0048)、本件訂正発明1とは作成しようとするコーヒー飲料及び解決しようとする課題が異なるものである。
そして、甲1発明において、約10℃程度のいれたてのアイスコーヒを迅速に作成するために、新鮮水クーラー13によって新鮮水供給口2からの新鮮水が7℃以下の温度に冷却されるのであるから、新鮮水クーラー13の冷却機11の使用は必須の事項であり、新鮮水クーラー13の冷却機11の使用を止めると、甲1発明の本来の目的を果たさないものとなる。また、甲1に新鮮水クーラー13の冷却機11の使用を止めるような記載や示唆もない。
そうすると、甲1発明において、新鮮水クーラー13の冷却機11の使用を止めて、熱いコーヒーを冷却するステップを、コーヒクーラー14において直接外部上水道に又は真水用の内部貯蔵タンクに接続された新鮮水供給口2(冷水取り入れ口)からの新鮮水(冷水)の流れと熱伝達させる(排他的に熱的接触をさせる)ことによって行われるようにする動機付けは認められず、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ 申立人の主張について
申立人は、令和3年10月21日に提出された意見書5ページ14行〜同ページ25行において次の主張をする。
「引用文献1に開示された発明と、訂正後の本件特許発明1を比較すると、訂正後の本件特許発明1は引用文献1に開示された発明から、「冷却機11」の機能又は構成を省いたにすぎない。これは、技術の具体的適用に伴う設計変更であり、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。換言すれば、「冷却機11」の機能を省けば、該「冷却機11」に係る構造が無くなるので、「単純で省エネルギーの方法で熱いか又は冷却されたコーヒーの選択的な分配」が可能になるのは当然であり、当業者ならば引用文献1に開示された発明から容易に着想できる内容である。
従って、冒頭に記載の如く、訂正後の本件特許発明1は、依然として引用文献1及び引用文献2に記載の発明により進歩性を有さず、特許法第29条第2項の規定により、取り消されるべきものであると思料する。」
しかし、上記イで検討したとおり、新鮮水クーラー13の冷却機11の使用を止める動機付けは認められない(阻害要因があるというべきである)から、甲1発明(引用文献1に開示された発明)から冷却機11の,機能を省いて本件訂正発明1のような単純で省エネルギーな方法とすることは当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。

エ 効果について
そして、本件訂正発明1は、上記相違点2に係る構成を備えることにより、上記イで述べたとおり、氷を備えたマグに分配されることを想定した約30〜35℃程度のコーヒー飲料を作成する方法であって、「単純で省エネルギーの方法」で「冷却されたコーヒー」の「分配を可能にする」(本件特許明細書の段落0014)という所期の効果を奏するものである。

オ まとめ
したがって、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1発明並びに甲2の記載事項及び文献3の記載事項にみられる技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)小活
上記(3)のとおりであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものとはいえず、特許法第113条第2号に該当しない。

第5 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものではないないから、特許法第113条第2号には該当せず、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
新鮮な抽出した冷たいコーヒー飲料の作成方法であって、
a)所定量のコーヒー粉で抽出手段を満たすステップと、
b)前記抽出手段において、前記所定量のコーヒー粉に湯及び/又は熱い蒸気を押し通すことによって、熱いコーヒー飲料を抽出するステップと、
c)少なくとも1つの熱交換器によって、前記熱いコーヒー飲料を冷却するステップと、
d)前記冷却されたコーヒー飲料をコーヒー取り出し口で分配するステップと、を含み、
e)前記熱いコーヒーの前記冷却するステップは、少なくとも1つの熱交換器において、直接外部上水道に又は真水用の内部貯蔵タンクに接続された冷水取り入れ口からの冷水の流れと排他的に熱的接触をさせることによって行われる、方法。
【請求項2】
前記冷却するステップは、前記コーヒー飲料が前記コーヒー取り出し口で分配される前に、第2の流れにおける所定量の冷水を、前記少なくとも1つの熱交換器から来る前記コーヒー飲料と混ぜることを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出ステップ用に用いられる前記湯及び/又は熱い蒸気は、ボイラーにおいて作成され、前記冷水の第1の流れは、前記少なくとも1つの熱交換器における前記熱交換後に前記ボイラーに供給されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記冷水の第1の流れは、前記少なくとも1つの熱交換器における前記熱交換後に排出されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記熱的接触は、第1の熱交換器における前記熱いコーヒーと冷水の第1の流れとの間の第1の熱交換、及び第2の熱交換器における前記熱いコーヒーと冷水の第2の流れとの間の第2の熱交換を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1及び第2の熱交換は、次々と実行されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1及び第2の熱交換は、並列に実行されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1及び第2の熱交換は、二者択一的に実行されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記抽出ステップ用に用いられる前記湯及び/又は熱い蒸気は、ボイラーにおいて作成され、前記冷水の第1の流れは、前記第1の熱交換器における前記熱交換後に前記ボイラーに供給され、前記冷水の第2の流れは、前記第2の熱交換器における前記熱交換後に排出されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
予め選択されたコーヒー飲料の前記作成用に、特定の総量の冷水は、特定量のコーヒー粉と関連付けられること、及び冷水が混ぜられる場合に、抽出に用いられる前記湯の量が対応して低減されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
抽出用に用いられる前記湯の量及び前記混ぜられる冷水の量は、対応するバルブによりコントローラーによってコントロールされることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
抽出用に提供される前記コーヒー粉は、自動的に挽かれて前記抽出手段に供給されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の前記方法を実行するためのコーヒーマシンであって、湯用の取り入れ口及び前記抽出したコーヒー飲料用の取り出し口を備えた、前記コーヒー飲料を抽出するための手段と、取り出し配管手段によって前記抽出手段の前記取り出し口に接続されるコーヒー取り出し口と、を含み、前記抽出したコーヒーの冷却用に、1次側及び2次側を備えた少なくとも1つの熱交換器が提供され、前記少なくとも1つの熱交換器は、その1次側で、前記抽出手段の前記取り出し口から前記コーヒー取り出し口につながる前記取り出し配管手段に挿入され、前記少なくとも1つの熱交換器の前記2次側は、冷水取り入れ口と接続されることを特徴とするコーヒーマシン。
【請求項14】
前記コーヒーマシンは、取り入れ口及び取り出し口を備えたボイラーを含み、それにより、前記ボイラーの前記取り入れ口は、第1の冷水供給パイプによって前記冷水取り入れ口に接続され、前記ボイラーの前記取り出し口は、前記コーヒー飲料を抽出するための湯及び/又は熱い蒸気を前記抽出手段の前記取り入れ口に分配すること、及び前記少なくとも1つの熱交換器は、その2次側で、前記第1の冷水供給パイプに挿入されることを特徴とする、請求項13に記載のコーヒーマシン。
【請求項15】
前記少なくとも1つの熱交換器の前記2次側は、前記冷水取り入れ口から前記2次側を通って流れる冷却水が、冷却水排出パイプを通って排出されるように、前記冷却水排出パイプに更に接続されることを特徴とする、請求項13に記載のコーヒーマシン。
【請求項16】
1次側及び2次側を有する更なる熱交換器が提供され、前記更なる熱交換器は、その1次側で、前記抽出手段の前記取り出し口から前記コーヒー取り出し口につながる前記取り出し配管手段に挿入され、前記更なる熱交換器は、前記冷水取り入れ口から前記2次側を通って流れる冷却水が、冷却水排出パイプを通って排出されるように、その2次側で前記冷水取り入れ口及び前記冷却水排出パイプと接続されることを特徴とする、請求項14に記載のコーヒーマシン。
【請求項17】
前記第1及び第2の熱交換器の前記1次側は、前記抽出手段の前記取り出し 口から前記コーヒー取り出し口につながる前記取り出し配管手段内に直列に配 置されることを特徴とする、請求項16に記載のコーヒーマシン。
【請求項18】
前記第1及び第2の熱交換器の前記1次側は、前記抽出手段の前記取り出し口から前記コーヒー取り出し口につながる前記取り出し配管手段内に並列に配置されることを特徴とする、請求項16に記載のコーヒーマシン。
【請求項19】
前記少なくとも1つの熱交換器から前記コーヒー取り出し口に流れる前記コーヒー飲料に冷水を加える手段が提供されることを特徴とする、請求項13に記載のコーヒーマシン。
【請求項20】
前記冷水を加える手段は、前記少なくとも1つの熱交換器の後の前記取り出し配管手段を前記冷水取り入れ口に接続する第2の冷水供給パイプを含むことを特徴とする、請求項19に記載のコーヒーマシン。
【請求項21】
コントロール可能なバルブは、前記第2の冷水供給パイプに挿入され、加えられる前記冷水の量をコントロールするために前記コーヒーマシンのコントローラーに接続されることを特徴とする、請求項20に記載のコーヒーマシン。
【請求項22】
前記少なくとも1つの熱交換器の前記1次側は、熱い飲料パイプによって橋渡しされ得、前記抽出手段の前記取り出し口は、前記取り出し配管手段から前記熱い飲料パイプに切り替えられ得ることを特徴とする請求項13に記載のコーヒーマシン。
【請求項23】
前記抽出手段は、閉鎖自在の抽出室であって、そこへと挽きたてのコーヒー粉がグラインダーから供給され得、そこを通してボイラーからの加圧された湯が、前記コーヒー飲料の抽出中に流れる閉鎖自在の抽出室を備えた抽出ユニットを含むことを特徴とする、請求項13に記載のコーヒーマシン。
【請求項24】
前記グラインダーは、前記コーヒーマシンに一体化されることを特徴とする、請求項23に記載のコーヒーマシン。
【請求項25】
前記抽出ユニットは、自動的に開閉されることを特徴とする、請求項23に記載のコーヒーマシン。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-11-11 
出願番号 P2016-560581
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (A47J)
P 1 652・ 113- YAA (A47J)
P 1 652・ 851- YAA (A47J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 槙原 進
林 茂樹
登録日 2020-09-17 
登録番号 6765307
権利者 シェーラー アーゲー
発明の名称 新鮮な抽出した冷たいコーヒー飲料の作成方法及びかかる方法を実行するためのコーヒーマシン  
代理人 特許業務法人英知国際特許事務所  
代理人 特許業務法人 有古特許事務所  
代理人 特許業務法人英知国際特許事務所  
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