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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
管理番号 1381681
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-30 
確定日 2022-01-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第6784856号発明「容器詰め濃縮エキス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6784856号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6784856号の請求項1〜10に係る発明についての出願は、特許法第30条第2項の規定の適用を受けようとする出願である旨を願書に記載して令和2年1月8日(優先権主張 平成31年4月5日)にされた出願であって、令和2年10月27日にその特許権の設定登録がされ、令和2年11月11日に特許公報が発行された。その後、その特許について、令和3年4月30日に特許異議申立人 西田 友美(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和3年8月16日付け取消理由通知により取消理由を通知した。それに対し、特許権者は、令和3年11月19日に意見書を提出した。

第2 本件特許発明
特許第6784856号の請求項1〜10に係る特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
5〜25倍の希釈倍率で水と混合して1リットル以上の飲料を調製するための、100〜400mL容量の容器に収容された濃縮エキスであって、
10℃における回転数60rpmでのB型粘度が1〜10mPa・sであり、10℃における回転数6rpmでのB型粘度が5〜15mPa・sであり、1回の使用で全ての量が使用される1回使い切りタイプである、上記濃縮エキス。
【請求項2】
10℃における回転数60rpmでのB型粘度が3〜8.5mPa・sである、請求項1に記載の濃縮エキス。
【請求項3】
前記濃縮エキスが、穀類エキス、及び/又は、茶エキスを含む、請求項1又は2に記載の濃縮エキス。
【請求項4】
前記飲料が、麦茶飲料、緑茶飲料、又は、烏龍茶飲料である、請求項1〜3のいずれかに記載の濃縮エキス。
【請求項5】
前記容器が缶容器である、請求項1〜4のいずれかに記載の濃縮エキス。
【請求項6】
前記容器が、面積が10cm2以下の開口部を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の濃縮エキス。
【請求項7】
前記容器が、開口部の外側に溝を有する形状である、請求項1〜6のいずれかに記載の濃縮エキス。
【請求項8】
前記容器が、開口部の外側に縁を有する形状である、請求項1〜7のいずれかに記載の濃縮エキス。
【請求項9】
前記濃縮エキスに前記希釈倍率を乗じた量が収容可能な1〜5L容量の第2の容器に注ぎ入れ、前記濃縮エキスを希釈した飲料を調製するための、請求項1〜8のいずれかに記載の濃縮エキス。
【請求項10】
前記第2の容器が、蓋部を有する樹脂容器である、請求項9に記載の濃縮エキス。」
(以下、各請求項に係る発明を、請求項順に「本件特許発明1」、「本件特許発明2」、……、「本件特許発明10」という。)

第3 取消理由及び特許異議申立理由の概要
1 取消理由の概要
当審において、令和3年8月16日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
理由1(実施可能要件違反)
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

・理由1について
・請求項1〜10
……、本件特許に係る出願の審査段階の令和2年9月24日に提出された意見書には、
「(4)本願発明の実施品について
本願発明の実施品は、「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶濃縮タイプ」として2019年4月より販売を開始しており(添付資料3)、消費者の方々に広く受け入れられ、商業的に大きな成功を収めております(添付資料4)。
従来、煮出しや水出しによって麦茶を調製する場合、時間や手間がかかっておりましたが、本願発明によれば、極めて迅速かつ簡便に美味しい麦茶を安定して調製することが可能になります。
本願発明の実施品は、上市後すぐに消費者の方々に受け入れられ、市場において大きな支持を受けております。これは、本願発明によって得られる優れた効果が多くの消費者の方々に評価された結果だと考えられます。」との記載があり、添付資料3として、サントリー食品インターナショナル(株)が「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ」180g缶を令和1年4月16日(火)から発売する旨を記したニュースリリースが添付されている。
したがって、令和2年9月24日当時、市場に流通していた「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ」は本件特許発明を実施したもの(以下、「本件特許発明実施品」という。)であると認められる。
一方、甲第1号証(西田友美 作成の令和3年4月30日付け実験成績証明書(以下、「申立人実験成績証明書」という。))には、「GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶濃縮タイプ」の内容液の粘度を測定したことが記載されており、申立人実験成績証明書の日付けは令和3年4月30日付けであって、上記意見書の提出日である令和2年9月24日から日数があまり経っておらず、令和2年9月24日から令和3年4月30日までの間に、市場に流通する「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ」の内容が変更されたとは常識的に考えられないことから、申立人実験成績証明書で実験対象とされた「GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶濃縮タイプ」も本件特許発明実施品と認められる。
しかし、申立人実験成績証明書に記された粘度測定条件は、本件特許明細書等の発明の詳細な説明(段落0075〜0077)と同じ条件であるにもかかわらず、「GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶濃縮タイプ」の内容液の粘度の測定値は、10℃における回転数60rpmでのB型粘度の測定値が4.4mPa・sであり、10℃における回転数6rpmでのB型粘度の測定値が0.0mPa・sであることが示されているから、本件特許発明実施品であっても、本件特許発明の発明特定事項「10℃における回転数60rpmでのB型粘度が1〜10mPa・sであり、10℃における回転数6rpmでのB型粘度が5〜15mPa・sであ」ることを満足しないことがあると認められる。
本件特許発明実施品は、本件特許明細書等の発明の詳細な説明に記載された方法により製造されたものと認められるから、当業者が発明の詳細な説明の記載によって本件特許発明の発明特定事項「10℃における回転数60rpmでのB型粘度が1〜10mPa・sであり、10℃における回転数6rpmでのB型粘度が5〜15mPa・sであ」ることを満足するものを製造するためには、当業者に期待し得る程度を超える過度の試行錯誤を要すると認められる。
よって、発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1〜6を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

甲第1号証:西田友美 作成,令和3年4月30日付け実験成績証明書

2 特許異議申立理由の概要
特許異議申立書に記載された特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
[申立理由1]
本件明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明1について、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。また、本件特許発明1を引用する本件特許発明2〜10についても同様である。よって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

[申立理由2]
本件特許発明1〜10は、下記の甲第1号証〜甲第11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1〜10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第1号証:西田友美 作成の令和3年4月30日付け実験成績証明書
甲第2号証:特願2020−001596号の審査段階における令和2年9月24日提出の意見書
甲第3号証:東機産業株式会社「TVB−10形粘度計 取扱説明書」,表紙、奥付、14〜17頁、22〜25頁、34〜37頁および40〜41頁
甲第4号証:株式会社東京化学同人,「化学辞典」第1版第1刷(1995年5月10日発行),324頁
甲第5号証:ユニテックフーズ株式会社「食品開発ラボ」の「食品開発の仕掛けと仕組み:HOME>商品企画・商品開発>増粘とゲル化」についてのウェブページ、[Online]、印刷日:2021年4月15日、インターネット
甲第6号証:西田友美 作成の令和3年4月28日付け製品説明書
甲第7−1号証:ショッピングサイトAmazon.co.jpの「サントリー GREEN GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶濃縮タイプ ノンカフェイン 180g×30本」についてのウェブページ、[Online]、印刷日:2021年4月14日、インターネット
甲第7−2号証:ショッピングサイトAmazon.co.jpの「サントリー GREEN GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶濃縮タイプ ノンカフェイン 180g×30本」についてのウェブページ、[Online]、印刷日:2021年4月14日、インターネット
甲第8号証:アマゾンジャパン合同会社が販売し、2020年8月16日に発送した「サントリー GREEN GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶 濃縮タイプ ノンカフェイン 180g×30本」について2020年8月17日に発行された領収書
甲第9号証:ショッピングサイトAmazon.co.jpの「サントリー GREEN GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶濃縮タイプ ノンカフェイン 180g×30本」のカスタマーレビューについてのウェブページ、[Online]、印刷日:2021年4月14日、インターネット
甲第10号証:ショッピングサイトAmazon.co.jpの「Amazon Vine 先取りプログラム 」についてのウェブページ、[Online]、印刷日:2021年4月14日、インターネット
甲第11号証:特開2018−52590号公報
(以下、甲第1号証、甲第2号証、……、甲第11号証を、順に、「甲1」、「甲2」、……、「甲11」ともいう。)

第4 当審の判断
当審は、本件特許発明1〜10に係る特許は、令和3年8月16日付け取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由により取消すべきものではないと判断する。
理由は以下のとおりである。

1 令和3年8月16日付け取消理由通知に記載した取消理由及び申立理由1について
(1)申立人実験成績証明書に記載された実験者について
申立人実験成績証明書には、実験者が「西田友美」であることは記載されているものの、その「西田友美」の経歴・技能等については一切記載されておらず、本件特許明細書の発明の詳細な説明(特に、段落0075)に記載された粘度測定方法により、「サントリーGREEN GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶濃縮タイプ」の内容液の粘度を正確に測定するために必要な知識・技能等を有する者であるとは、申立人実験成績証明書の記載から確認できない。

(2)申立人実験成績証明書に示された測定の対象について
申立人実験成績証明書「4.測定の対象」の項(1頁9〜12行)には、測定の対象の販売名、内容量及び販売者は記載されているものの、入手時期及び入手後の保管状況(温度等)は一切記載されていない。
甲6には「サントリーGREEN GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶 濃縮タイプ」についての記載があり、甲7−1〜甲9には「サントリーGREEN GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶濃縮タイプ ノンカフェイン」についての記載があるものの、申立人実験成績証明書に示された測定の対象が、甲6〜甲9に記載された製品のいずれかと、物品として同一であることの根拠を見出すことはできない。
そして、甲1〜甲11の記載を検討しても、申立人実験成績証明書に示された測定の対象の入手時期および入手後の保管状況(温度等)は不明である。
たとえ、甲8の記載によりアマゾンジャパン合同会社から販売され2020年8月16日に発送されたことが示される「サントリーGREEN GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶濃縮タイプ ノンカフェイン」が、申立人実験成績証明書に示された測定の対象とされたものであったとしても、発送後の保管状況(温度等)は不明であって、測定の対象が缶に封入されたものであることを考慮しても、内容物が保管中に変質した可能性を否定できない。

(3)申立人実験成績証明書に示された試験方法
申立人実験成績証明書「5.試験方法」の項(2頁1〜12行)には、以下の測定条件に従って粘度測定を実施した旨が記載されている。
<測定条件>
・使用機種:B型粘度計(TBV−10型・東機産業社製)
・ローター:No.20
・測定試料:400mL
・測定温度:10℃
・測定時間:30秒
・ローター回転数:6rpm及び60rpm

特許権者が令和3年11月19日に提出した意見書に添付した乙第1号証(東機産業社のB型粘度計カタログ(東機産業社のウェブページよりダウンロード、印刷日:2021年10月20日)http://www.tokisangyo.co.jp/pdf/viscometer/TVB10_15.pdf)の記載によれば、TBV−10形粘度計を用いて低粘度のサンプルを測定する場合には、そのうちM型を使用するとともに「低粘度アダプタ」を使用することが必要であると認められるにもかかわらず、申立人実験成績証明書3〜5頁に掲載された写真1〜4には当該「低粘度アダプタ」が写っていないことから、申立人実験成績証明書「6.結果」の項(2頁13〜19行)に示された結果は、本来必要である「低粘度アダプタ」を使用せずに粘度測定を行った結果と推定される。

(4)小括
以上(1)〜(3)を勘案すると、申立人実験成績証明書の記載事項を根拠にして、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が不備であって、本件特許発明1〜本件特許発明10が実施可能要件を満たしていないとすることはできない。
したがって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとすることはできず、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。

2 申立理由2(取消理由に採用しなかった特許異議申立理由)について
(1)申立人の認定する甲6発明の検討
ア 甲6の記載について
甲6には、「製品名:グリーンダ・カ・ラ やさしい麦茶 濃縮タイプ」(甲6製品)に関して、「1.構成について」の項において、甲6製品から申立人の認定した以下の発明(以下、「申立人認定甲6発明」という。)が記載され、「2.商品の説明」の項において、その認定の根拠が記載されている。

[申立人認定甲6発明]
a.5.6〜11.1倍の希釈倍率で水と混合して1〜2リットルの飲料を調製するための、約200mL容量の容器に収容された濃縮エキスであって、
b.10℃における回転数60rpmでのB型粘度が4.4mPa.s(測定下限値以下)であり、10℃における回転数6rpmでのB型粘度が0.0mPa.s(測定下限値以下)であり、
c.1回の使用で全ての量が使用される1回使い切りタイプである、
d.上記濃縮エキス
であって、さらに、
e.前記濃縮エキスが、穀類エキスを含み、
f.前記飲料が、麦茶飲料であり、
g.前記容器がアルミ製の缶容器であり、
h.前記容器が、面積が2.6cm2の開口部を有し、
i.前記容器が、開口部の外側に溝を有する形状であり、
j.開口部の外側に縁を有する形状であり、
k.濃縮エキスに希釈倍率5.6〜11.1倍を乗じた量が収容可能な1〜2L容量の容器に注ぎ入れ、甲6製品を希釈した飲料を調整するためのもの、である。

しかし、甲6の作成日は、本件特許出願後の令和3年4月28日であることから、甲6の記載は、甲6に示された製品について、その内容物の10℃における回転数60rpmでのB型粘度及び10℃における回転数6rpmでのB型粘度が、本件特許出願前に不特定の者に秘密でないものとして知られたことの根拠になるとは認められず、公然知られる状況又は公然知られるおそれのある状況で実施をされたことの根拠になるとも認められない。
また、甲6の作成日は、本件特許出願後の令和3年4月28日であることから、甲6に示された製品の内容物の10℃における回転数60rpmでのB型粘度及び10℃における回転数6rpmでのB型粘度が、本件特許出願前に頒布された刊行物に記載されたこと又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったことの根拠となるものではない。

イ 甲1、甲2、甲7−1及び甲7−2、甲8、並びに甲9に記載された製品について
甲2の【意見の内容】の「2.拒絶理由に対する意見」の「(4)本願発明の実施品について」の項には「本願発明の実施品は、「GREEN GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ」として2019年4月より販売を開始しており(添付資料3)、消費者の方々に広く受け入れられ、商業的に大きな成功を収めております(添付資料4)。」と記載されていることから、「GREEN GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ」は本件特許出願前に販売されていたものと認められる。
また、甲1、甲6に記載される「サントリー GREEN GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶濃縮タイプ」、甲2に記載される「GREEN GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ」、甲7−1〜甲9に記載される「サントリー GREEN GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶 濃縮タイプ ノンカフェイン」は、表示される名称に多少の違いはあっても同一商品名の製品であると認められる。
しかし、甲1〜甲11の記載を検討しても、それらの内容物の10℃における回転数60rpmでのB型粘度及び10℃における回転数6rpmでのB型粘度が、本件特許出願前に不特定の者に秘密でないものとして知られたことの根拠は見出せない。

また、甲1〜甲11の記載を検討しても、容器に収容された濃縮エキスについて、一般に、その販売開始後には競業者等による分析等が行われて、その内容が公然知られる状況又は公然知られるおそれのある状況になるといえる根拠は見出せないし、たとえその販売開始後に競業者等による分析等が行われることがあったとしても、様々な成分・特性等の分析があり得るところ、特に10℃における回転数60rpmでのB型粘度及び10℃における回転数6rpmでのB型粘度について競業者等による分析等が行われて、公然知られる状況又は公然知られるおそれのある状況になるといえる根拠は見出せない。
したがって、甲1、甲6に記載される「サントリー GREEN GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶濃縮タイプ」、甲2に記載される「GREEN GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ」、甲7−1〜甲9に記載される「サントリー GREEN GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶 濃縮タイプ ノンカフェイン」について、その内容物の10℃における回転数60rpmでのB型粘度及び10℃における回転数6rpmでのB型粘度が、本件特許出願前に公然知られる状況又は公然知られるおそれのある状況で実施をされたことの根拠は見出せない。

また、甲1〜甲11の記載を検討しても、甲1、甲6に記載される「サントリー GREEN GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶濃縮タイプ」、甲2に記載される「GREEN GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ」、甲7−1〜甲9に記載される「サントリー GREEN GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶 濃縮タイプ ノンカフェイン」について、その内容物の10℃における回転数60rpmでのB型粘度及び10℃における回転数6rpmでのB型粘度が、本件特許出願前に頒布された刊行物に記載されたこと又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったことの根拠は見出せない。

したがって、申立人の主張(特に、特許異議申立書28頁8行〜30頁9行)にかかわらず、申立人認定甲6発明は、特許法第29条第1項第1号にいう「特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明」ではなく、特許法第29条第1項第2号にいう「特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明」又は「特許法第29条第1項第3号にいう「特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」でもない。
また、甲1、甲6に記載される「サントリー GREEN GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶濃縮タイプ」、甲2に記載される「GREEN GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ」、甲7−1〜甲9に記載される「サントリー GREEN GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶 濃縮タイプ ノンカフェイン」のいずれについても、その内容物の10℃における回転数60rpmでのB型粘度及び10℃における回転数6rpmでのB型粘度が、本件特許出願前に不特定の者に秘密でないものとして知られたとはいえず、本件特許出願前に公然知られる状況又は公然知られるおそれのある状況で実施をされたともいえず、本件特許出願前に頒布された刊行物に記載されたこと又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったことであるともいえない。

(2)進歩性の検討
上記(1)に示したとおりであるから、たとえ、甲1、甲6に記載される「サントリー GREEN GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶濃縮タイプ」、甲2に記載される「GREEN GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ」、甲7−1〜甲9に記載される「サントリー GREEN GREEN DA・KA・RA(グリーンダカラ)やさしい麦茶 濃縮タイプ ノンカフェイン」が本件特許出願前に販売された製品であるとしても、当業者が、本件特許出願前に、その内容物の成分・特性等のうち「10℃における回転数60rpmでのB型粘度」及び「10℃における回転数6rpmでのB型粘度」に特に着目した上で、さらも調整・変更をして、「10℃における回転数60rpmでのB型粘度が1〜10mPa.s」かつ「10℃における回転数6rpmでのB型粘度が5〜15mPa.s」、または、「10℃における回転数60rpmでのB型粘度が3〜8.5mPa.s」かつ「10℃における回転数6rpmでのB型粘度が5〜15mPa.s」にすることの動機付けはなく、甲1〜甲11の記載を検討しても、当業者が容易に想到し得たこととすることはできない。
そして、本件特許発明1〜10は、本件特許明細書に記載されるとおり、容器への液残りや注ぐ際の液だれが抑制され、1リットル以上の多量の飲料を一度に調製する場合であっても繰り返し同じ味が再現できる容器詰め濃縮エキスを提供することが可能となるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。

申立人は、本件特許発明1〜5、本件特許発明7〜本件特許発明10は、申立人認定甲6発明に基いて当業者が容易に想到し得たものであり、本件特許発明6は、申立人甲6発明および甲11の記載事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである旨を主張しているが(特許異議申立書30頁10行〜37頁28行)、以上のとおりであるから、申立人の主張は受けいれられず、「10℃における回転数60rpmでのB型粘度が1〜10mPa.s」であり、かつ「10℃における回転数6rpmでのB型粘度が5〜15mPa.s」であることを発明特定事項の一つとする本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明3〜本件特許発明10、並びに「10℃における回転数60rpmでのB型粘度が3〜8.5mPa.s」であり、かつ「10℃における回転数6rpmでのB型粘度が5〜15mPa.s」であることを発明特定事項の一つとする本件特許発明2及び本件特許発明2を引用する本件特許発明3〜本件特許発明10は、甲1〜甲11の記載を検討しても、当業者が、特許法第29条第1項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(4)小括
以上(1)〜(3)のとおり、本件特許発明1〜10は、当業者が、特許法第29条第1項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1〜10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、令和3年8月16日付け取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由のいずれによっても、本件特許発明1〜本件特許発明10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1〜本件特許発明10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-12-23 
出願番号 P2020-001596
審決分類 P 1 651・ 536- Y (A23L)
P 1 651・ 121- Y (A23L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 村上 騎見高
齊藤 真由美
登録日 2020-10-27 
登録番号 6784856
権利者 サントリーホールディングス株式会社
発明の名称 容器詰め濃縮エキス  
代理人 山本 修  
代理人 中村 充利  
代理人 小野 新次郎  
代理人 中西 基晴  
代理人 宮前 徹  

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