• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
審判 全部申し立て 発明同一  H01M
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
管理番号 1381682
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-05-06 
確定日 2021-09-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第6783412号発明「二次電池負極用スラリー組成物、二次電池負極スラリー用分散剤組成物、二次電池用負極、及び二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6783412号の請求項1〜11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6783412号(請求項の数11。以下,「本件特許」という。)は,2019年(令和1年)9月17日(優先権主張:平成30年9月28日,平成31年2月25日)を国際出願日とする特許出願(特願2020−504036号)に係るものであって,令和2年10月23日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は,令和2年11月11日である。)。
その後,令和3年5月6日に,本件特許の請求項1〜11に係る特許に対して,特許異議申立人である佐藤怜(以下,「申立人」という。)により,特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
本件特許の請求項1〜11に係る発明は,本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1〜11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下,それぞれ「本件発明1」等という。また,本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。

【請求項1】
二次電池負極スラリー用分散剤組成物と,負極活物質とを含む,二次電池負極用スラリー組成物であって,
前記二次電池負極スラリー用分散剤組成物が,ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体(I)を含む重合性成分aの重合体及び/又はその中和物である高分子成分Aを含み,
前記単量体(I)の溶解度パラメーター(SP)が10〜17(cal/cm3)1/2であり,
前記単量体(I)が,単量体(i)及び単量体(ii)を含み,前記単量体(i)がカルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体であり,前記単量体(ii)がカルボキシル基及び/又はその塩である基と反応する基を有する単量体であり,
前記単量体(I)が,ニトリル系単量体(iii)をさらに含み,
下記条件1を満たす,二次電池負極用スラリー組成物。
条件1:前記二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,500MPa以上である。
【請求項2】
前記負極活物質が,Si及び/又はSi化合物を含む,請求項1に記載の二次電池負極用スラリー組成物。
【請求項3】
前記重合性成分aに占める前記単量体(i)の重量割合が20〜90重量%であり,前記重合性成分aに占める前記単量体(ii)の重量割合が3〜40重量%であり,前記重合性成分aに占める前記単量体(iii)の重量割合が5〜45重量%である,請求項1又は2に記載の二次電池負極用スラリー組成物。
【請求項4】
さらに下記条件2を満たす,請求項1〜3のいずれかに記載の二次電池負極用スラリー組成物。
条件2:前記二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分を,体積比率が50/50のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネートの混合物に浸漬し,60℃にて1週間静置した後の,前記二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分の重量膨潤率が120重量%以下である。
【請求項5】
さらに下記条件3を満たす,請求項1〜4のいずれかに記載の二次電池負極用スラリー組成物。
条件3:前記二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分濃度2.5重量%水分散液の,670nm波長の光透過率が,60%以上である。
【請求項6】
ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体(I)を含む重合性成分aの重合体及び/又はその中和物である高分子成分Aを含み,
前記単量体(I)の溶解度パラメーター(SP)が10〜17(cal/cm3)1/2であり,
前記単量体(I)が,単量体(i)及び単量体(ii)を含み,前記単量体(i)がカルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体であり,前記単量体(ii)がカルボキシル基及び/又はその塩である基と反応する基を有する単量体であり,
前記単量体(I)が,ニトリル系単量体(iii)をさらに含み,
下記条件1を満たす,二次電池負極スラリー用分散剤組成物。
条件1:二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,500MPa以上である。
【請求項7】
前記重合性成分aに占める前記単量体(i)の重量割合が20〜90重量%であり,前記重合性成分aに占める前記単量体(ii)の重量割合が3〜40重量%であり,前記重合性成分aに占める前記単量体(iii)の重量割合が5〜45重量%である,請求項6に記載の二次電池負極スラリー用分散剤組成物。
【請求項8】
さらに下記条件2を満たす,請求項6又は7に記載の二次電池負極スラリー用分散剤組成物。
条件2:二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分を,体積比率が50/50のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネートの混合物に浸漬し,60℃にて1週間静置した後の,二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分の重量膨潤率が120重量%以下である。
【請求項9】
さらに下記条件3を満たす,請求項6〜8のいずれかに記載の二次電池負極スラリー用分散剤組成物。
条件3:二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分濃度2.5重量%水分散液の,670nm波長の光透過率が,60%以上である。
【請求項10】
集電体上に被膜を有する二次電池用負極であって,前記被膜が,請求項1〜5のいずれかに記載の二次電池負極用スラリー組成物の不揮発分を含む,二次電池用負極。
【請求項11】
請求項10に記載の二次電池用負極を含む,二次電池。

第3 特許異議の申立ての理由の概要
本件特許の請求項1〜11に係る特許は,下記1〜10のとおり,特許法113条2号及び4号に該当する。証拠方法は,下記11の甲第1号証〜甲第5号証(以下,単に「甲1」等という。)である。
1 申立理由1−1(新規性
本件発明1〜11は,甲1に記載された発明であり,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1〜11に係る特許は,同法113条2号に該当する。
2 申立理由1−2(新規性
本件発明1〜11は,甲2に記載された発明であり,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1〜11に係る特許は,同法113条2号に該当する。
3 申立理由1−3(新規性
本件発明1及び3〜11は,甲3に記載された発明であり,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1及び3〜11に係る特許は,同法113条2号に該当する。
4 申立理由2−1(進歩性
本件発明1〜11は,甲1に記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1〜11に係る特許は,同法113条2号に該当する。
5 申立理由2−2(進歩性
本件発明1〜11は,甲2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1〜11に係る特許は,同法113条2号に該当する。
6 申立理由2−3(進歩性
本件発明1〜11は,甲3に記載された発明に基いて,又は,甲3に記載された発明並びに甲1及び2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1〜11に係る特許は,同法113条2号に該当する。
7 申立理由3−1(拡大先願)
本件発明1〜11は,本件特許の出願の日前の特許出願であって,本件特許の出願後に特許法41条3項の規定により出願公開がされたものとみなされた,甲4に係る特許出願(特願2019−161653号)の優先権の主張の基礎とされた特願2018−168269号の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,本件特許の出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,また本件特許の出願の時において,その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので,同法29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1〜11に係る特許は,同法113条2号に該当する。
8 申立理由3−2(拡大先願)
本件発明1〜11は,本件特許の出願の日前の外国語特許出願(特許法184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって,本件特許の出願後に国際公開がされた甲5に係る外国語特許出願(PCT/KR2018/010897,特願2020−515206号)の国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,本件特許の出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,また本件特許の出願の時において,その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので,同法29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから(同法184条の13参照),本件特許の請求項1〜11に係る特許は,同法113条2号に該当する。
9 申立理由4(サポート要件)
本件発明1〜11については,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではないから,本件特許の請求項1〜11に係る特許は,同法113条4号に該当する。
10 申立理由5(明確性要件)
本件発明1〜11については,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に適合するものではないから,本件特許の請求項1〜11に係る特許は,同法113条4号に該当する。
11 証拠方法
・甲1 国際公開第2015/008626号
・甲2 特開2018−6334号公報
・甲3 中国特許出願公開第1328102号明細書
・甲4 特開2020−43064号公報
・甲5 国際公開第2019/054816号

第4 当審の判断
以下に述べるように,特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1〜11に係る特許を取り消すことはできない。

1 申立理由1−1(新規性),申立理由2−1(進歩性
(1)甲1に記載された発明
甲1の記載(請求項1,3,7,8,[0011],[0031],[0042],[0044],[0046],[0052],[0068],[0073],[0077],[0082]〜[0085],[0136],[0138],[0164],[0168]〜[0171],表1,表2)によれば,特に,表1に示されるS5,S7([0136],[0138],[0164],[0171])にそれぞれ着目すると,甲1には,以下の発明が記載されていると認められる。

「容量7Lのセパラブルフラスコの内部を十分に窒素置換した後,水1050質量部を仕込み,内温70℃に昇温し,次いで過硫酸ナトリウム0.3質量部を投入し,
次いで,水110質量部,アクリルアミド(AMM)50質量部,メタクリルアミド(MAMM)10質量部,アクリルアミドt−ブチルスルホン酸(ATBS)5質量部,アクリル酸(AA)25質量部,メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)5質量部,メタクリロニトリル(MAN)5質量部の混合液を1時間かけて滴下し,70℃±3℃で2時間反応を行い,さらに90℃±3℃で2時間反応を行い,その後,冷却し,20wt%水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調節することにより,水溶性重合体(A)を8wt%含有する水溶液を得て,
上記で得られた水溶性重合体(A)を8wt%含有する水溶液に,水溶性重合体(A)100質量部に対して化合物(B)としてのメタクリルアミドを0.05質量部添加し,150rpmで撹拌することにより調製した,蓄電デバイス用バインダー組成物。」(以下,「甲1発明1」という。)

「容量7Lのセパラブルフラスコの内部を十分に窒素置換した後,水1050質量部を仕込み,内温70℃に昇温し,次いで過硫酸ナトリウム0.3質量部を投入し,
次いで,水110質量部,アクリルアミド(AMM)69質量部,アクリル酸(AA)18質量部,アリルスルホン酸(AS)2質量部,メタクリル酸メチル(MMA)5質量部,アクリル酸n−ブチル(BA)3質量部,アクリロニトリル(AN)3質量部,の混合液を1時間かけて滴下し,70℃±3℃で2時間反応を行い,さらに90℃±3℃で2時間反応を行い,その後,冷却し,20wt%水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調節することにより,水溶性重合体(A)を8wt%含有する水溶液を得て,
上記で得られた水溶性重合体(A)を8wt%含有する水溶液に,水溶性重合体(A)100質量部に対して化合物(B)としてのアクリル酸を0.02質量部添加し,150rpmで撹拌することにより調製した,蓄電デバイス用バインダー組成物。」(以下,「甲1発明2」という。)

(2)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と甲1発明1及び2とを対比する。
(ア)甲1発明1における「アクリルアミド(AMM)」,「メタクリルアミド(MAMM)」,「アクリル酸(AA)」,「メタクリロニトリル(MAN)」の各単量体,甲1発明2における「アクリルアミド(AMM)」,「アクリル酸(AA)」,「アクリロニトリル(AN)」の各単量体は,本件明細書の表9によれば,いずれも,本件発明6における「溶解度パラメーター(SP)が10〜17(cal/cm3)1/2であり」,「ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体(I)」に相当する。
(イ)上記単量体のうち,甲1発明1における「アクリル酸(AA)」は,本件発明6における「カルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体」である「単量体(i)」に相当し,甲1発明1における「アクリルアミド(AMM)」,「メタクリルアミド(MAMM)」は,本件発明6における「カルボキシル基及び/又はその塩である基と反応する基を有する単量体」である「単量体(ii)」に相当し,甲1発明1における「メタクリロニトリル(MAN)」は,本件発明6における「ニトリル系単量体(iii)」に相当する。
また,上記単量体のうち,甲1発明2における「アクリル酸(AA)」は,本件発明6における「カルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体」である「単量体(i)」に相当し,甲1発明2における「アクリルアミド(AMM)」は,本件発明6における「カルボキシル基及び/又はその塩である基と反応する基を有する単量体」である「単量体(ii)」に相当し,甲1発明2における「アクリロニトリル(AN)」は,本件発明6における「ニトリル系単量体(iii)」に相当する。
(ウ)そして,甲1発明1及び2における,上記各単量体を含む「混合液」,その混合液から得られた「水溶性重合体(A)」は,それぞれ,本件発明6における,単量体(I)を含む「重合性成分a」,その重合性成分aの「重合体及び/又はその中和物である高分子成分A」に相当する。
また,甲1発明1及び2において,水溶性重合体(A)を8wt%含有する水溶液に化合物(B)を添加し,撹拌することにより調製した「蓄電デバイス用バインダー組成物」は,甲1の記載([0040],[0145])によれば,負極活物質を含む負極用スラリーを調製するために用いられるものであり,活物質の分散性が良好となるものであるから,本件発明6における高分子成分Aを含む「二次電池負極スラリー用分散剤組成物」に相当する。
(エ)以上によれば,本件発明6と甲1発明1及び2とは,
「ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体(I)を含む重合性成分aの重合体及び/又はその中和物である高分子成分Aを含み,
前記単量体(I)の溶解度パラメーター(SP)が10〜17(cal/cm3)1/2であり,
前記単量体(I)が,単量体(i)及び単量体(ii)を含み,前記単量体(i)がカルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体であり,前記単量体(ii)がカルボキシル基及び/又はその塩である基と反応する基を有する単量体であり,
前記単量体(I)が,ニトリル系単量体(iii)をさらに含む,
二次電池負極スラリー用分散剤組成物。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
・相違点1
本件発明6は,「条件1:二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,500MPa以上である。」との「条件1を満たす」ものであるのに対して,甲1発明1及び2は,そのような「条件1を満たす」ものであるのかどうか不明である点。

イ 相違点1の検討
(ア)まず,相違点1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
a 甲1には,甲1発明1及び2に係る蓄電デバイス用バインダー組成物の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率については,何ら記載されていない。
また,甲1発明1及び2に係る蓄電デバイス用バインダー組成物であれば,その不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,当然に500MPa以上となることが,技術常識であるともいえない。
b(a)この点,申立人は,甲1には,条件1が記載されていない点で,一見相違するが,アクリル酸,メタクリル酸,メタクリルアミド,アクリルアミド,アクリロニトリル,メタクリロニトリルは,本件発明6の単量体(I)に含まれる単量体(i)及び単量体(ii)として,本件明細書に溶解度パラメーターとともに記載されたものであり,また,その共重合比についても,単量体(I)を含む重合性成分aに占める単量体(i)及び単量体(ii)の好ましい範囲として,本件明細書に記載された範囲を満たすものである(本件明細書【0025】〜【0029】,表9)から,仮に測定すれば,条件1を充足する蓋然性が極めて高いといえると主張する(申立書62頁)。
しかしながら,一般に,共重合体の機械的特性は,共重合体を得るための単量体の種類や割合だけで決まるものではなく,重合方法や重合条件のほか,共重合体の重量平均分子量等の各種物性によっても異なることが,通常である。
そうすると,仮に,甲1発明1及び2に係る蓄電デバイス用バインダー組成物に含まれる水溶性重合体(A)を得るための単量体の全てが,本件発明6の単量体(I)に含まれる単量体(i),単量体(ii)及び単量体(iii)のいずれかに該当するものであり,また,その割合についても,本件明細書に記載された好ましい範囲を満たすものであったとしても,それらのことのみをもって,水溶性重合体(A)を含む不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,当然に500MPa以上となるということはできない。
また,特に,甲1発明1及び2については,水溶性重合体(A)を得るための単量体には,本件発明6の単量体(I)に含まれる単量体(i),単量体(ii)及び単量体(iii)のいずれにも該当しない単量体も含まれており,さらに,蓄電デバイス用バインダー組成物には,化合物(B)も含まれていることから,不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,当然に500MPa以上となるというには,さらなる困難性があるといえる。
よって,申立人の主張は採用できない。
(b)また,申立人は,上記主張に関連して,仮に甲1に記載の高分子成分が条件1を充足しない場合,どのような高分子成分ならば条件1を充足するか不明であり,本件発明6は,発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えていると主張する(申立書62頁)。
しかしながら,本件明細書には,単量体(I)に含まれる単量体(i),単量体(ii)及び単量体(iii)について,その具体例と割合について記載され(【0025】〜【0034】),また,高分子成分Aの製造方法についても記載され(【0041】〜【0045】),実施例においては,各種の単量体を用いて所定の重合方法及び重合条件で,実際に高分子成分Aを製造するとともに,当該高分子成分Aを含む二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,500MPa以上であるものを製造したことが記載されている(【0120】〜【0161】)から,これらの記載によれば,当業者であれば,どのような高分子成分Aであれば,条件1を満たすか,理解できるといえる。
よって,申立人の主張は採用できない。
c 以上によれば,相違点1は実質的な相違点である。
したがって,本件発明6は,甲1に記載された発明であるとはいえない。

(イ)次に,相違点1の容易想到性について検討する。
上記(ア)で述べたとおり,甲1には,甲1発明1及び2に係る蓄電デバイス用バインダー組成物の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率については,何ら記載されておらず,また,甲1発明1及び2に係る蓄電デバイス用バインダー組成物であれば,その不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,当然に500MPa以上となることが,技術常識であるともいえない。
そうすると,甲1発明1及び2において,「条件1:二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,500MPa以上である。」との「条件1を満たす」ようにする動機付けがあるとはいえない。
以上によれば,甲1発明1又は2において,「条件1:二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,500MPa以上である。」との「条件1を満たす」ようにすることが,当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって,本件発明6は,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括
以上のとおり,本件発明6は,甲1に記載された発明であるとはいえず,また,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明7〜9について
本件発明7〜9は,本件発明6を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(2)で述べたとおり,本件発明6が,甲1に記載された発明であるとはいえず,また,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明7〜9についても同様に,甲1に記載された発明であるとはいえず,また,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明1について
本件発明6は,二次電池負極スラリー用分散剤組成物に関する発明である。
一方,本件発明1は,二次電池負極スラリー用分散剤組成物と,負極活物質とを含む,二次電池負極用スラリー組成物に関する発明であるところ,本件発明1で用いられる二次電池負極スラリー用分散剤組成物は,本件発明6に係る二次電池負極スラリー用分散剤組成物と同じものである。
そうすると,本件発明1についても,上記(2)で本件発明6について述べたのと同様の理由により,甲1に記載された発明であるとはいえず,また,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)本件発明2〜5,10及び11について
本件発明2〜5,10及び11は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(4)で述べたとおり,本件発明1が,甲1に記載された発明であるとはいえず,また,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2〜5,10及び11についても同様に,甲1に記載された発明であるとはいえず,また,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(6)まとめ
以上のとおり,本件発明1〜11は,甲1に記載された発明であるとはいえない。
また,本件発明1〜11は,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって,申立理由1−1(新規性),申立理由2−1(進歩性)によっては,本件特許の請求項1〜11に係る特許を取り消すことはできない。

2 申立理由1−2(新規性),申立理由2−2(進歩性
(1)甲2に記載された発明
甲2の記載(請求項1,【0010】,【0012】,【0014】,【0028】,【0032】,【0035】〜【0040】,【0080】〜【0084】,表1)によれば,特に,表1に示される製造例3(【0082】〜【0084】)に着目すると,甲2には,以下の発明が記載されていると認められる。

「撹拌機,温度計,還流冷却管,窒素ガス導入管を備えた反応装置に,イオン交換水2300g,アクリルアミド(AM)50mol%,N−メチロールアクリルアミド(NMAM)10mol%,アクリルアミドt−ブチルスルホン酸(ATBS)25mol%,メタリルスルホン酸ナトリウム(SMAS)0.5mol%,アクリル酸(AA)2.5mol%,アクリル酸エチル(EA)4mol%,アクリロニトリル(AN)8mol%を入れ,窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後,50℃まで昇温し,
そこに2,2‘−アゾビス−2−アミジノプロパン 二塩酸塩(日宝化学株式会社製 製品名「NC−32」)4.0g,イオン交換水30gを投入し,80℃まで昇温し1.5時間反応を行い,
次いで,NC−32 4.0g,イオン交換水30gを投入し80℃にて1.5時間反応することにより得られた,固形分15.0%,粘度(25℃)が55,000mPa・sのポリ(メタ)アクリルアミド(B1)を含む水溶液。」(以下,「甲2発明」という。)

(2)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明における「アクリルアミド(AM)」,「N−メチロールアクリルアミド(NMAM)」,「アクリル酸(AA)」,「アクリロニトリル(AN)」の各単量体は,本件明細書の表9によれば,いずれも,本件発明6における「溶解度パラメーター(SP)が10〜17(cal/cm3)1/2であり」,「ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体(I)」に相当する。
(イ)上記単量体のうち,甲2発明における「アクリル酸(AA)」は,本件発明6における「カルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体」である「単量体(i)」に相当し,甲2発明における「アクリルアミド(AM)」,「N−メチロールアクリルアミド(NMAM)」は,本件発明6における「カルボキシル基及び/又はその塩である基と反応する基を有する単量体」である「単量体(ii)」に相当し,甲2発明における「アクリロニトリル(AN)」は,本件発明6における「ニトリル系単量体(iii)」に相当する。
(ウ)そして,甲2発明における,反応装置に入れられた上記各単量体の混合物,その混合物から得られた「ポリ(メタ)アクリルアミド(B1)」は,それぞれ,本件発明6における,単量体(I)を含む「重合性成分a」,その重合性成分aの「重合体及び/又はその中和物である高分子成分A」に相当する。
また,甲2発明におけるポリ(メタ)アクリルアミド(B1)を含む「水溶液」は,甲2の記載(【0012】,【0088】,【0092】,【0094】,表2)によれば,リチウムイオン電池の負極を得るための,シリコン粒子(負極活物質)を含む負極用スラリーを得るために用いられるものであり,分散剤として作用するものであるから,本件発明6における高分子成分Aを含む「二次電池負極スラリー用分散剤組成物」に相当する。
(エ)以上によれば,本件発明6と甲2発明とは,
「ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体(I)を含む重合性成分aの重合体及び/又はその中和物である高分子成分Aを含み,
前記単量体(I)の溶解度パラメーター(SP)が10〜17(cal/cm3)1/2であり,
前記単量体(I)が,単量体(i)及び単量体(ii)を含み,前記単量体(i)がカルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体であり,前記単量体(ii)がカルボキシル基及び/又はその塩である基と反応する基を有する単量体であり,
前記単量体(I)が,ニトリル系単量体(iii)をさらに含む,
二次電池負極スラリー用分散剤組成物。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
・相違点2
本件発明6は,「条件1:二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,500MPa以上である。」との「条件1を満たす」ものであるのに対して,甲2発明は,そのような「条件1を満たす」ものであるのかどうか不明である点。

イ 相違点2の検討
(ア)まず,相違点2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲2には,甲2発明に係るポリ(メタ)アクリルアミド(B1)を含む水溶液の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率については,何ら記載されていない。
また,甲2発明に係るポリ(メタ)アクリルアミド(B1)を含む水溶液であれば,その不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,当然に500MPa以上となることが,技術常識であるともいえない。
なお,申立人は,甲2についても,甲1と同様に主張するが(上記1(2)イ(ア)b参照),同様の理由により,申立人の主張は採用できない。
以上によれば,相違点2は実質的な相違点である。
したがって,本件発明6は,甲2に記載された発明であるとはいえない。

(イ)次に,相違点2の容易想到性について検討する。
上記(ア)で述べたとおり,甲2には,甲2発明に係るポリ(メタ)アクリルアミド(B1)を含む水溶液の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率については,何ら記載されておらず,また,甲2発明に係るポリ(メタ)アクリルアミド(B1)を含む水溶液であれば,その不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,当然に500MPa以上となることが,技術常識であるともいえない。
そうすると,甲2発明において,「条件1:二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,500MPa以上である。」との「条件1を満たす」ようにする動機付けがあるとはいえない。
以上によれば,甲2発明において,「条件1:二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,500MPa以上である。」との「条件1を満たす」ようにすることが,当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって,本件発明6は,甲2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括
以上のとおり,本件発明6は,甲2に記載された発明であるとはいえず,また,甲2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明7〜9について
本件発明7〜9は,本件発明6を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(2)で述べたとおり,本件発明6が,甲2に記載された発明であるとはいえず,また,甲2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明7〜9についても同様に,甲2に記載された発明であるとはいえず,また,甲2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明1について
本件発明6は,二次電池負極スラリー用分散剤組成物に関する発明である。
一方,本件発明1は,二次電池負極スラリー用分散剤組成物と,負極活物質とを含む,二次電池負極用スラリー組成物に関する発明であるところ,本件発明1で用いられる二次電池負極スラリー用分散剤組成物は,本件発明6に係る二次電池負極スラリー用分散剤組成物と同じものである。
そうすると,本件発明1についても,上記(2)で本件発明6について述べたのと同様の理由により,甲2に記載された発明であるとはいえず,また,甲2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)本件発明2〜5,10及び11について
本件発明2〜5,10及び11は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(4)で述べたとおり,本件発明1が,甲2に記載された発明であるとはいえず,また,甲2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2〜5,10及び11についても同様に,甲2に記載された発明であるとはいえず,また,甲2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(6)まとめ
以上のとおり,本件発明1〜11は,甲2に記載された発明であるとはいえない。
また,本件発明1〜11は,甲2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって,申立理由1−2(新規性),申立理由2−2(進歩性)によっては,本件特許の請求項1〜11に係る特許を取り消すことはできない。

3 申立理由1−3(新規性),申立理由2−3(進歩性
(1)甲3に記載された発明
甲3の記載によれば,特に,実施例1,2を前提として,実施例4〜15,17,18及び24〜26にそれぞれ着目すると,甲3には,以下の発明が記載されていると認められる(以下の発明をまとめて「甲3発明」という。)。

「アクリルアミド(AM),メタクリル酸リチウム(LiMAA)を蒸留水に溶解させ,アクリロニトリル(AN)を加え,次に過硫酸アンモニウムを加えて反応を開始させ,58℃で15時間反応させ製造した,AM:LiMAA:AN=3:5:2であり,共重合体の含有量が15%であり,半透明の粘性液体である,リチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダー。」(実施例4)

「アクリルアミド(AM),メタクリル酸リチウム(LiMAA)を蒸留水に溶解させ,アクリロニトリル(AN)を加え,次に過硫酸アンモニウムを加えて反応を開始させ,58℃で15時間反応させ製造した,AM:LiMAA:AN=2:3:1であり,共重合体の含有量が15%であり,半透明の粘性液体である,リチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダー。」(実施例5)

「アクリルアミド(AM),メタクリル酸リチウム(LiMAA)を蒸留水に溶解させ,アクリロニトリル(AN)を加え,次に過硫酸アンモニウムを加えて反応を開始させ,58℃で15時間反応させた,AM:LiMAA:AN=2:1:3であり,共重合体の含有量が15%であり,セミエマルションの粘性液体である,リチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダー。」(実施例6)

「アクリルアミド(AM),メタクリル酸リチウム(LiMAA)を蒸留水に溶解させ,アクリロニトリル(AN)を加え,次に過硫酸アンモニウムを加えて反応を開始させ,58℃で15時間反応させた,AM:LiMAA:AN=2:2:2であり,共重合体の含有量が15%であり,セミエマルションの粘性液体である,リチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダー。」(実施例7)

「アクリルアミド(AM),メタクリル酸リチウム(LiMAA)を蒸留水に溶解させ,アクリロニトリル(AN)を加え,次に過硫酸アンモニウムを加えて反応を開始させ,58℃で15時間反応させた,AM:LiMAA:AN=1:2:3であり,共重合体の含有量が15%であり,セミエマルションの粘性液体である,リチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダー。」(実施例8)

「アクリルアミド(AM),メタクリル酸リチウム(LiMAA)を蒸留水に溶解させ,アクリロニトリル(AN)を加え,次に過硫酸アンモニウムを加えて反応を開始させ,58℃で15時間反応させた,AM:LiMAA:AN=1:1:2であり,共重合体の含有量が15%であり,セミエマルションの粘性液体である,リチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダー。」(実施例9)

「アクリルアミド(AM),メタクリル酸リチウム(LiMAA)を蒸留水に溶解させ,アクリロニトリル(AN)を加え,次に過硫酸アンモニウムを加えて反応を開始させ,63℃で15時間反応させた,AM:LiMAA:AN=11:24:45であり,共重合体の含有量が15%であり,乳液状の粘性液体である,リチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダー。」(実施例10)

「アクリルアミド(AM),メタクリル酸リチウム(LiMAA)を蒸留水に溶解させ,アクリロニトリル(AN)を加え,次に過硫酸アンモニウムを加えて反応を開始させ,63℃で15時間反応させた,AM:LiMAA:AN=1:2:5であり,共重合体の含有量が15%であり,乳液状の粘性液体である,リチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダー。」(実施例11)

「アクリルアミド(AM),メタクリル酸リチウム(LiMAA)を蒸留水に溶解させ,アクリロニトリル(AN)を加え,次に過硫酸アンモニウムを加えて反応を開始させ,63℃で15時間反応させた,AM:LiMAA:AN=3:12:25であり,共重合体の含有量が15%であり,乳液状の粘性液体である,リチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダー。」(実施例12)

「アクリルアミド(AM),メタクリル酸リチウム(LiMAA)を蒸留水に溶解させ,アクリロニトリル(AN)を加え,乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸リチウムを加え,次に過硫酸アンモニウムを加えて反応を開始させ,58℃で15時間反応させた,AM:LiMAA:AN=3:4:3であり,共重合体の含有量が15%であり,半透明の粘性液体である,リチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダー。」(実施例13)

「アクリルアミド(AM),メタクリル酸リチウム(LiMAA)を蒸留水に溶解させ,アクリロニトリル(AN),酢酸ビニル(VAc)を加え,次に過硫酸アンモニウム,亜硫酸ナトリウムを加えて反応を開始させ,40℃で15時間反応させた,AM:LiMAA:AN:VAc=18:30:12:5であり,共重合体の含有量が15%であり,乳液状の粘性液体である,リチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダー。」(実施例14)

「アクリルアミド(AM),メタクリル酸リチウム(LiMAA)を蒸留水に溶解させ,アクリロニトリル(AN),酢酸ビニル(VAc)を加え,次に過硫酸アンモニウム,亜硫酸ナトリウムを加えて反応を開始させ,40℃で15時間反応させた,AM:LiMAA:AN:VAc=18:30:12:9であり,共重合体の含有量が17%であり,乳液状の粘性液体である,リチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダー。」(実施例15)

「アクリルアミド(AM),メタクリル酸リチウム(LiMAA)を蒸留水に溶解させ,アクリロニトリル(AN),メタクリル酸ブチル(BMA)を加え,次に過硫酸アンモニウムを加えて反応を開始させ,60℃で15時間反応させ製造した,AM:LiMAA:AN:BMA=1.5:3:8:1であり,共重合体の含有量が15%であり,乳液状の粘性液体である,リチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダー。」(実施例17)

「アクリルアミド(AM),メタクリル酸リチウム(LiMAA)を蒸留水に溶解させ,アクリロニトリル(AN),メタクリル酸ブチル(BMA)を加え,乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸リチウムを加え,次に過硫酸アンモニウムを加えて反応を開始させ,60℃で15時間反応させ製造した,AM:LiMAA:AN:BMA=1:5:10:2であり,共重合体の含有量が15%であり,白濁液の粘性液体である,リチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダー。」(実施例18)

「アクリルアミド(AM),アクリル酸リチウム(LiAA)を蒸留水に溶解させ,アクリロニトリル(AN)を加え,次に過硫酸アンモニウムを加えて反応を開始させ,58℃で15時間反応させ製造した,AN:LiAA:AM=5:2:1であり,共重合体の含有量が15%であり,半透明の粘性液体である,リチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダー。」(実施例24)

「アクリルアミド(AM),アクリル酸リチウム(LiAA),メタクリル酸リチウム(LiMAA)を蒸留水に溶解させ,アクリロニトリル(AN)を加え,次に過硫酸アンモニウムを加えて反応を開始させ,59℃で18時間反応させ製造した,AN:LiMAA:AM:LiAA=5:2:1:0.08であり,共重合体の含有量が15%であり,半透明の粘性液体である,リチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダー。」(実施例25)

「アクリルアミド(AM),アクリル酸リチウム(LiAA),メタクリル酸リチウム(LiMAA)を蒸留水に溶解させ,アクリロニトリル(AN)を加え,次に過硫酸アンモニウムを加えて反応を開始させ,59℃で18時間反応させ製造した,AN:LiMAA:AM:LiAA=5:2:1:0.3であり,共重合体の含有量が15%であり,半透明の粘性液体である,リチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダー。」(実施例26)

(2)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と甲3発明とを対比する。
(ア)甲3発明における「アクリルアミド(AM)」,「アクリロニトリル(AN)」の各単量体は,本件明細書の表9によれば,いずれも,本件発明6における「溶解度パラメーター(SP)が10〜17(cal/cm3)1/2であり」,「ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体(I)」に相当する。
(イ)上記単量体のうち,甲3発明における「アクリルアミド(AM)」は,本件発明6における「カルボキシル基及び/又はその塩である基と反応する基を有する単量体」である「単量体(ii)」に相当し,甲3発明における「アクリロニトリル(AN)」は,本件発明6における「ニトリル系単量体(iii)」に相当する。
(ウ)そして,甲3発明における,上記各単量体の混合物,その混合物から得られた「共重合体」は,それぞれ,本件発明6における,単量体(I)を含む「重合性成分a」,その重合性成分aの「重合体及び/又はその中和物である高分子成分A」に相当する。
また,甲3発明における,「共重合体」を含む「粘性液体」である「リチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダー」は,甲3の記載(2頁13〜14行,3頁16〜17行)によれば,炭素負極材料と混合し,スラリーとして,負極を製造するために用いられるものであるから,本件発明6における高分子成分Aを含む「二次電池負極スラリー用」「組成物」に相当する。
(エ)以上によれば,本件発明6と甲3発明とは,
「ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体(I)を含む重合性成分aの重合体及び/又はその中和物である高分子成分Aを含み,
前記単量体(I)の溶解度パラメーター(SP)が10〜17(cal/cm3)1/2であり,
前記単量体(I)が,単量体(ii)を含み,前記単量体(ii)がカルボキシル基及び/又はその塩である基と反応する基を有する単量体であり,
前記単量体(I)が,ニトリル系単量体(iii)をさらに含む,
二次電池負極スラリー用組成物。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
・相違点3−1
本件発明6は,「条件1:二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,500MPa以上である。」との「条件1を満たす」ものであるのに対して,甲3発明は,そのような「条件1を満たす」ものであるのかどうか不明である点。
・相違点3−2
本件発明6は,単量体(I)が,「カルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体であ」る「単量体(i)」を含むのに対して,甲3発明は,「メタクリル酸リチウム(LiMAA)」,「アクリル酸リチウム(LiAA)」を含むものの,これら単量体が「単量体(i)」に該当するものであるかどうか不明である点。
・相違点3−3
本件発明6は,二次電池負極スラリー用「分散剤」組成物であるのに対して,甲3発明は,二次電池負極スラリー用「分散剤」組成物であるかどうか不明である点。

イ 相違点3−1の検討
(ア)まず,相違点3−1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲3には,甲3発明に係る共重合体を含む粘性液体であるリチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダーの不揮発分からなる成形膜の引張弾性率については,何ら記載されていない。
また,甲3発明に係る共重合体を含む粘性液体であるリチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダーであれば,その不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,当然に500MPa以上となることが,技術常識であるともいえない。
なお,申立人は,甲3についても,甲1と同様に主張するが(上記1(2)イ(ア)b参照),同様の理由により,申立人の主張は採用できない。
以上によれば,相違点3−1は実質的な相違点である。
したがって,相違点3−2及び3−3について検討するまでもなく,本件発明6は,甲3に記載された発明であるとはいえない。

(イ)次に,相違点3−1の容易想到性について検討する。
上記(ア)で述べたとおり,甲3には,甲3発明に係る共重合体を含む粘性液体であるリチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダーの不揮発分からなる成形膜の引張弾性率については,何ら記載されておらず,また,甲3発明に係る共重合体を含む粘性液体であるリチウムイオン二次電池の炭素負極用バインダーであれば,その不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,当然に500MPa以上となることが,技術常識であるともいえない。
そうすると,甲3発明において,「条件1:二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,500MPa以上である。」との「条件1を満たす」ようにする動機付けがあるとはいえない。そして,そのことは,甲1及び2の記載を考慮したとしても,変わるものではない。
以上によれば,甲3発明において,「条件1:二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,500MPa以上である。」との「条件1を満たす」ようにすることが,当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって,相違点3−2及び3−3について検討するまでもなく,本件発明6は,甲3に記載された発明に基いて,又は,甲3に記載された発明並びに甲1及び2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括
以上のとおり,本件発明6は,甲3に記載された発明であるとはいえず,また,甲3に記載された発明に基いて,又は,甲3に記載された発明並びに甲1及び2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明7〜9について
本件発明7〜9は,本件発明6を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(2)で述べたとおり,本件発明6が,甲3に記載された発明であるとはいえず,また,甲3に記載された発明に基いて,又は,甲3に記載された発明並びに甲1及び2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明7〜9についても同様に,甲3に記載された発明であるとはいえず,また,甲3に記載された発明に基いて,又は,甲3に記載された発明並びに甲1及び2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明1について
本件発明6は,二次電池負極スラリー用分散剤組成物に関する発明である。
一方,本件発明1は,二次電池負極スラリー用分散剤組成物と,負極活物質とを含む,二次電池負極用スラリー組成物に関する発明であるところ,本件発明1で用いられる二次電池負極スラリー用分散剤組成物は,本件発明6に係る二次電池負極スラリー用分散剤組成物と同じものである。
そうすると,本件発明1についても,上記(2)で本件発明6について述べたのと同様の理由により,甲3に記載された発明であるとはいえず,また,甲3に記載された発明に基いて,又は,甲3に記載された発明並びに甲1及び2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)本件発明2〜5,10及び11について
本件発明2〜5,10及び11は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(4)で述べたとおり,本件発明1が,甲3に記載された発明であるとはいえず,また,甲3に記載された発明に基いて,又は,甲3に記載された発明並びに甲1及び2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2〜5,10及び11についても同様に,甲3に記載された発明であるとはいえず,また,甲3に記載された発明に基いて,又は,甲3に記載された発明並びに甲1及び2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(6)まとめ
以上のとおり,本件発明1及び3〜11は,甲3に記載された発明であるとはいえない。
また,本件発明1〜11は,甲3に記載された発明に基いて,又は,甲3に記載された発明並びに甲1及び2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって,申立理由1−3(新規性),申立理由2−3(進歩性)によっては,本件特許の請求項1〜11に係る特許を取り消すことはできない。

4 申立理由3−1(拡大先願)
(1)甲4に係る特許出願(特願2019−161653号)の優先権の主張の基礎とされた特願2018−168269号の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明
甲4に係る特許出願(以下,「甲4出願」という。)の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)の記載(請求項1,3,【0009】,【0013】,【0029】,【0040】〜【0043】,【0054】,【0061】,【0152】〜【0161】,表1)によれば,特に,表1に示される製造例1〜11(【0153】,【0154】)にそれぞれ着目すると,甲4出願の当初明細書等には,以下の発明が記載されていると認められる(以下の発明をまとめて「甲4発明」という。)。
また,甲4出願の優先権の主張の基礎とされた特願2018−168269号(以下,「甲4優先基礎出願」という。)の当初明細書等には,上記で指摘した甲4出願の当初明細書等の記載と同じ記載があるから,甲4優先基礎出願の当初明細書等にも,以下の甲4発明が記載されていると認められる。
そして,その甲4発明については,甲4出願について出願公開がされた時に,甲4優先基礎出願について出願公開がされたものとみなして,特許法29の2本文の規定が適用される(同法41条3項)。

「撹拌機,温度計,還流冷却管,窒素ガス導入管を備えた反応装置に,イオン交換水1254g,50%アクリルアミド水溶液(50mol%),80%アクリル酸水溶液(15mol%),48%水酸化ナトリウム水溶液(6mol%),アクリロニトリル(35mol%)を入れ,窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後,50℃まで昇温し,
80%アクリル酸水溶液15mol%のうち,6mol%は,48%水酸化ナトリウム水溶液(6mol%)により中和され,アクリル酸のナトリウム塩(6mol%)として存在し,
そこに2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン 二塩酸塩(日宝化学株式会社製 製品名「NC−32」)2.0g,イオン交換水20gを投入し,80℃まで昇温し3時間反応を行うことにより得られた,ポリアクリルアミドを含む水溶液。」(製造例1)

「撹拌機,温度計,還流冷却管,窒素ガス導入管を備えた反応装置に,イオン交換水1254g,50%アクリルアミド水溶液(50mol%),80%アクリル酸水溶液(15mol%),48%水酸化ナトリウム水溶液(15mol%),アクリロニトリル(35mol%)を入れ,窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後,50℃まで昇温し,
80%アクリル酸水溶液15mol%のうち,15mol%は,48%水酸化ナトリウム水溶液(15mol%)により中和され,アクリル酸のナトリウム塩(15mol%)として存在し,
そこに2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン 二塩酸塩(日宝化学株式会社製 製品名「NC−32」)2.0g,イオン交換水20gを投入し,80℃まで昇温し3時間反応を行うことにより得られた,ポリアクリルアミドを含む水溶液。」(製造例2)

「撹拌機,温度計,還流冷却管,窒素ガス導入管を備えた反応装置に,イオン交換水1254g,50%アクリルアミド水溶液(50mol%),80%アクリル酸水溶液(10mol%),48%水酸化ナトリウム水溶液(4mol%),アクリロニトリル(40mol%)を入れ,窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後,50℃まで昇温し,
80%アクリル酸水溶液10mol%のうち,4mol%は,48%水酸化ナトリウム水溶液(4mol%)により中和され,アクリル酸のナトリウム塩(4mol%)として存在し,
そこに2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン 二塩酸塩(日宝化学株式会社製 製品名「NC−32」)2.0g,イオン交換水20gを投入し,80℃まで昇温し3時間反応を行うことにより得られた,ポリアクリルアミドを含む水溶液。」(製造例3)

「撹拌機,温度計,還流冷却管,窒素ガス導入管を備えた反応装置に,イオン交換水1254g,50%アクリルアミド水溶液(50mol%),80%アクリル酸水溶液(10mol%),48%水酸化ナトリウム水溶液(10mol%),アクリロニトリル(40mol%)を入れ,窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後,50℃まで昇温し,
80%アクリル酸水溶液10mol%のうち,10mol%は,48%水酸化ナトリウム水溶液(10mol%)により中和され,アクリル酸のナトリウム塩(10mol%)として存在し,
そこに2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン 二塩酸塩(日宝化学株式会社製 製品名「NC−32」)2.0g,イオン交換水20gを投入し,80℃まで昇温し3時間反応を行うことにより得られた,ポリアクリルアミドを含む水溶液。」(製造例4)

「撹拌機,温度計,還流冷却管,窒素ガス導入管を備えた反応装置に,イオン交換水1254g,50%アクリルアミド水溶液(35mol%),80%アクリル酸水溶液(20mol%),48%水酸化ナトリウム水溶液(8mol%),アクリロニトリル(45mol%)を入れ,窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後,50℃まで昇温し,
80%アクリル酸水溶液20mol%のうち,8mol%は,48%水酸化ナトリウム水溶液(8mol%)により中和され,アクリル酸のナトリウム塩(8mol%)として存在し,
そこに2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン 二塩酸塩(日宝化学株式会社製 製品名「NC−32」)2.0g,イオン交換水20gを投入し,80℃まで昇温し3時間反応を行うことにより得られた,ポリアクリルアミドを含む水溶液。」(製造例5)

「撹拌機,温度計,還流冷却管,窒素ガス導入管を備えた反応装置に,イオン交換水1254g,50%アクリルアミド水溶液(60mol%),80%アクリル酸水溶液(20mol%),48%水酸化ナトリウム水溶液(8mol%),アクリロニトリル(20mol%)を入れ,窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後,50℃まで昇温し,
80%アクリル酸水溶液20mol%のうち,8mol%は,48%水酸化ナトリウム水溶液(8mol%)により中和され,アクリル酸のナトリウム塩(8mol%)として存在し,
そこに2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン 二塩酸塩(日宝化学株式会社製 製品名「NC−32」)2.0g,イオン交換水20gを投入し,80℃まで昇温し3時間反応を行うことにより得られた,ポリアクリルアミドを含む水溶液。」(製造例6)

「撹拌機,温度計,還流冷却管,窒素ガス導入管を備えた反応装置に,イオン交換水1254g,50%アクリルアミド水溶液(60mol%),80%アクリル酸水溶液(10mol%),48%水酸化ナトリウム水溶液(4mol%),アクリロニトリル(30mol%)を入れ,窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後,50℃まで昇温し,
80%アクリル酸水溶液10mol%のうち,4mol%は,48%水酸化ナトリウム水溶液(4mol%)により中和され,アクリル酸のナトリウム塩(4mol%)として存在し,
そこに2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン 二塩酸塩(日宝化学株式会社製 製品名「NC−32」)2.0g,イオン交換水20gを投入し,80℃まで昇温し3時間反応を行うことにより得られた,ポリアクリルアミドを含む水溶液。」(製造例7)

「撹拌機,温度計,還流冷却管,窒素ガス導入管を備えた反応装置に,イオン交換水1254g,50%アクリルアミド水溶液(70mol%),80%アクリル酸水溶液(10mol%),48%水酸化ナトリウム水溶液(9mol%),アクリロニトリル(20mol%)を入れ,窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後,50℃まで昇温し,
80%アクリル酸水溶液10mol%のうち,9mol%は,48%水酸化ナトリウム水溶液(9mol%)により中和され,アクリル酸のナトリウム塩(9mol%)として存在し,
そこに2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン 二塩酸塩(日宝化学株式会社製 製品名「NC−32」)2.0g,イオン交換水20gを投入し,80℃まで昇温し3時間反応を行うことにより得られた,ポリアクリルアミドを含む水溶液。」(製造例8)

「撹拌機,温度計,還流冷却管,窒素ガス導入管を備えた反応装置に,イオン交換水1254g,50%アクリルアミド水溶液(65mol%),80%アクリル酸水溶液(5mol%),48%水酸化ナトリウム水溶液(4mol%),アクリロニトリル(30mol%)を入れ,窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後,50℃まで昇温し,
80%アクリル酸水溶液5mol%のうち,4mol%は,48%水酸化ナトリウム水溶液(4mol%)により中和され,アクリル酸のナトリウム塩(4mol%)として存在し,
そこに2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン 二塩酸塩(日宝化学株式会社製 製品名「NC−32」)2.0g,イオン交換水20gを投入し,80℃まで昇温し3時間反応を行うことにより得られた,ポリアクリルアミドを含む水溶液。」(製造例9)

「撹拌機,温度計,還流冷却管,窒素ガス導入管を備えた反応装置に,イオン交換水1254g,50%アクリルアミド水溶液(42mol%),80%アクリル酸水溶液(20mol%),48%水酸化ナトリウム水溶液(18mol%),アクリロニトリル(20mol%),アクリル酸2−ヒドロキシエチル(18mol%)を入れ,窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後,50℃まで昇温し,
80%アクリル酸水溶液20mol%のうち,18mol%は,48%水酸化ナトリウム水溶液(18mol%)により中和され,アクリル酸のナトリウム塩(18mol%)として存在し,
そこに2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン 二塩酸塩(日宝化学株式会社製 製品名「NC−32」)2.0g,イオン交換水20gを投入し,80℃まで昇温し3時間反応を行うことにより得られた,ポリアクリルアミドを含む水溶液。」(製造例10)

「撹拌機,温度計,還流冷却管,窒素ガス導入管を備えた反応装置に,イオン交換水1254g,50%アクリルアミド水溶液(37mol%),80%アクリル酸水溶液(13mol%),48%水酸化ナトリウム水溶液(10mol%),アクリロニトリル(15mol%),アクリル酸2−ヒドロキシエチル(35mol%)を入れ,窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後,50℃まで昇温し,
80%アクリル酸水溶液13mol%のうち,10mol%は,48%水酸化ナトリウム水溶液(10mol%)により中和され,アクリル酸のナトリウム塩(10mol%)として存在し,
そこに2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン 二塩酸塩(日宝化学株式会社製 製品名「NC−32」)2.0g,イオン交換水20gを投入し,80℃まで昇温し3時間反応を行うことにより得られた,ポリアクリルアミドを含む水溶液。」(製造例11)

(2)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と甲4発明とを対比する。
(ア)甲4発明における「アクリルアミド」,「アクリル酸」,「アクリル酸のナトリウム塩」,「アクリロニトリル」の各単量体は,本件明細書の表9によれば,いずれも,本件発明6における「溶解度パラメーター(SP)が10〜17(cal/cm3)1/2であり」,「ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体(I)」に相当する。
(イ)上記単量体のうち,甲4発明における「アクリル酸」,「アクリル酸のナトリウム塩」は,本件発明6における「カルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体」である「単量体(i)」に相当し,甲4発明における「アクリルアミド」は,本件発明6における「カルボキシル基及び/又はその塩である基と反応する基を有する単量体」である「単量体(ii)」に相当し,甲4発明における「アクリロニトリル」は,本件発明6における「ニトリル系単量体(iii)」に相当する。
(ウ)そして,甲4発明における,反応装置に入れられた上記各単量体の混合物,その混合物から得られた「ポリアクリルアミド」は,それぞれ,本件発明6における,単量体(I)を含む「重合性成分a」,その重合性成分aの「重合体及び/又はその中和物である高分子成分A」に相当する。
また,甲4発明におけるポリアクリルアミドを含む「水溶液」は,甲4の記載(【0013】,【0162】,【0163】,【0165】,表2)によれば,リチウムイオン電池の負極を得るための,シリコン粒子(負極活物質)を含む負極用スラリーを得るために用いられるものであり,分散剤として作用するものであるから,本件発明6における高分子成分Aを含む「二次電池負極スラリー用分散剤組成物」に相当する。
(エ)以上によれば,本件発明6と甲4発明とは,
「ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体(I)を含む重合性成分aの重合体及び/又はその中和物である高分子成分Aを含み,
前記単量体(I)の溶解度パラメーター(SP)が10〜17(cal/cm3)1/2であり,
前記単量体(I)が,単量体(i)及び単量体(ii)を含み,前記単量体(i)がカルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体であり,前記単量体(ii)がカルボキシル基及び/又はその塩である基と反応する基を有する単量体であり,
前記単量体(I)が,ニトリル系単量体(iii)をさらに含む,
二次電池負極スラリー用分散剤組成物。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
・相違点4
本件発明6は,「条件1:二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,500MPa以上である。」との「条件1を満たす」ものであるのに対して,甲4発明は,そのような「条件1を満たす」ものであるのかどうか不明である点。

イ 相違点4の検討
甲4には,甲4発明に係るポリアクリルアミドを含む水溶液の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率については,何ら記載されていない。
また,甲4発明に係るポリアクリルアミドを含む水溶液であれば,その不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,当然に500MPa以上となることが,技術常識であるともいえない。
なお,申立人は,甲4についても,甲1と同様に主張するが(上記1(2)イ(ア)b参照),同様の理由により,申立人の主張は採用できない。
以上によれば,相違点4は実質的な相違点である。
また,相違点4が,課題解決のための具体化手段における微差であるともいえない。
したがって,本件発明6は,甲4発明と同一であるとはいえない。

(3)本件発明7〜9について
本件発明7〜9は,本件発明6を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(2)で述べたとおり,本件発明6が,甲4発明と同一であるとはいえない以上,本件発明7〜9についても同様に,甲4発明と同一であるとはいえない。

(4)本件発明1について
本件発明6は,二次電池負極スラリー用分散剤組成物に関する発明である。
一方,本件発明1は,二次電池負極スラリー用分散剤組成物と,負極活物質とを含む,二次電池負極用スラリー組成物に関する発明であるところ,本件発明1で用いられる二次電池負極スラリー用分散剤組成物は,本件発明6に係る二次電池負極スラリー用分散剤組成物と同じものである。
そうすると,本件発明1についても,上記(2)で本件発明6について述べたのと同様の理由により,甲4発明と同一であるとはいえない。

(5)本件発明2〜5,10及び11について
本件発明2〜5,10及び11は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(4)で述べたとおり,本件発明1が,甲4発明と同一であるとはいえない以上,本件発明2〜5,10及び11についても同様に,甲4発明と同一であるとはいえない。

(6)まとめ
以上のとおり,本件発明1〜11は,甲4発明と同一であるとはいえない。
したがって,申立理由3−1(拡大先願)によっては,本件特許の請求項1〜11に係る特許を取り消すことはできない。

5 申立理由3−2(拡大先願)
(1)甲5に係る外国語特許出願(PCT/KR2018/010897,特願2020−515206号)の国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面(以下,「甲5先願明細書等」という。)に記載された発明
甲5先願明細書等の記載(甲5訳文の請求項1,4,5,7,9,【0005】,【0022】〜【0026】,【0035】,【0038】,【0081】,【0083】〜【0113】)によれば,特に,製造例1,3,4(【0095】,【0096】,【0099】,【0100】,【0104】)にそれぞれ着目すると,甲5先願明細書等には,以下の発明が記載されていると認められる(以下の発明をまとめて「甲5発明」という。)。

「100mL丸底フラスコに2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA,水溶解度:約15%)5g,アクリル酸(AA,水溶解度:99%以上)1.43g,アクリロニトリル(AN,水溶解度:1%未満)0.71gおよび蒸留水65gを入れて,入口をシーリングし,
30分の間窒素でバブリング(bubbling)して酸素を除去し,反応フラスコを65℃に加熱されたオイルバス(oil bath)に入れた後に7mgの開始剤(VA−65,Wako Chem)および4mgのCTA(2−メルカプトエタノール(2−mercaptoethanol))を投与して反応を開始させ,
前記反応を約20時間程度進行後に終了させて製造した,AA:HEA:AN=約2:7:1程度であり,重量平均分子量(Mw)が約260,000程度である,ランダム共重合体を含むバインダー。」(製造例1)

「100mL丸底フラスコに2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA,水溶解度:約15%)5g,アクリル酸(AA,水溶解度:99%以上)1.8g,アクリロニトリル(AN,水溶解度:1%未満)0.36gおよび蒸留水65gを入れて,入口をシーリングし,
30分の間窒素でバブリング(bubbling)して酸素を除去し,反応フラスコを65℃に加熱されたオイルバス(oil bath)に入れた後に7mgの開始剤(VA−65,Wako Chem)および4mgのCTA(2−メルカプトエタノール(2−mercaptoethanol))を投与して反応を開始させ,
前記反応を約20時間程度進行後に終了させて製造した,AA:HEA:AN=約25:70:5程度であり,重量平均分子量(Mw)が約280,000程度である,ランダム共重合体を含むバインダー。」(製造例3)

「100mL丸底フラスコに2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA,水溶解度:約15%)5g,アクリル酸(AA,水溶解度:99%以上)2.3g,アクリロニトリル(AN,水溶解度:1%未満)0.38gおよび蒸留水65gを入れて,入口をシーリングし,
30分の間窒素でバブリング(bubbling)して酸素を除去し,反応フラスコを65℃に加熱されたオイルバス(oil bath)に入れた後に7mgの開始剤(VA−65,Wako Chem)および4mgのCTA(2−メルカプトエタノール(2−mercaptoethanol))を投与して反応を開始させ,
前記反応を約20時間程度進行後に終了させて製造した,AA:HEA:AN=約30:65:5程度であり,重量平均分子量(Mw)が約220,000程度である,ランダム共重合体を含むバインダー。」(製造例4)

(2)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と甲5発明とを対比する。
(ア)甲5発明における「アクリル酸」,「アクリロニトリル」の各単量体は,本件明細書の表9によれば,いずれも,本件発明6における「溶解度パラメーター(SP)が10〜17(cal/cm3)1/2であり」,「ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体(I)」に相当する。

(イ)上記単量体のうち,甲5発明における「アクリル酸」は,本件発明6における「カルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体」である「単量体(i)」に相当し,甲5発明における「アクリロニトリル」は,本件発明6における「ニトリル系単量体(iii)」に相当する。
(ウ)そして,甲5発明における,丸底フラスコに入れられた上記各単量体の混合物,その混合物から得られた「ランダム共重合体」は,それぞれ,本件発明6における,単量体(I)を含む「重合性成分a」,その重合性成分aの「重合体及び/又はその中和物である高分子成分A」に相当する。
また,甲5発明における「ランダム共重合体」を含む「バインダー」は,甲5の記載(【0081】,【0104】,【0113】)によれば,二次電池の負極を製造するための負極スラリー組成物を製造するために用いられるものであり,分散性を高めるものであるから,本件発明6における高分子成分Aを含む「二次電池負極スラリー用分散剤組成物」に相当する。
(エ)以上によれば,本件発明6と甲5発明とは,
「ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体(I)を含む重合性成分aの重合体及び/又はその中和物である高分子成分Aを含み,
前記単量体(I)の溶解度パラメーター(SP)が10〜17(cal/cm3)1/2であり,
前記単量体(I)が,単量体(i)を含み,前記単量体(i)がカルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体であり,
前記単量体(I)が,ニトリル系単量体(iii)をさらに含む,
二次電池負極スラリー用分散剤組成物。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
・相違点5−1
本件発明6は,「条件1:二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,500MPa以上である。」との「条件1を満たす」ものであるのに対して,甲5発明は,そのような「条件1を満たす」ものであるのかどうか不明である点。
・相違点5−2
本件発明6は,単量体(I)が,「カルボキシル基及び/又はその塩である基と反応する基を有する単量体であ」る「単量体(ii)」を含むのに対して,甲5発明は,「2−ヒドロキシエチルアクリレート」を含むものの,この単量体が「単量体(ii)」に該当するものであるかどうか不明である点。

イ 相違点5−1の検討
甲5には,甲5発明に係るランダム共重合体を含むバインダーの不揮発分からなる成形膜の引張弾性率については,何ら記載されていない。
また,甲5発明に係るランダム共重合体を含むバインダーであれば,その不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,当然に500MPa以上となることが,技術常識であるともいえない。
なお,申立人は,甲5についても,甲1と同様に主張するが(上記1(2)イ(ア)b参照),同様の理由により,申立人の主張は採用できない。
以上によれば,相違点5−1は実質的な相違点である。
また,相違点5−1が,課題解決のための具体化手段における微差であるともいえない。
したがって,相違点5−2について検討するまでもなく,本件発明6は,甲5発明と同一であるとはいえない。

(3)本件発明7〜9について
本件発明7〜9は,本件発明6を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(2)で述べたとおり,本件発明6が,甲5発明と同一であるとはいえない以上,本件発明7〜9についても同様に,甲5発明と同一であるとはいえない。

(4)本件発明1について
本件発明6は,二次電池負極スラリー用分散剤組成物に関する発明である。
一方,本件発明1は,二次電池負極スラリー用分散剤組成物と,負極活物質とを含む,二次電池負極用スラリー組成物に関する発明であるところ,本件発明1で用いられる二次電池負極スラリー用分散剤組成物は,本件発明6に係る二次電池負極スラリー用分散剤組成物と同じものである。
そうすると,本件発明1についても,上記(2)で本件発明6について述べたのと同様の理由により,甲5発明と同一であるとはいえない。

(5)本件発明2〜5,10及び11について
本件発明2〜5,10及び11は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(4)で述べたとおり,本件発明1が,甲5発明と同一であるとはいえない以上,本件発明2〜5,10及び11についても同様に,甲5発明と同一であるとはいえない。

(6)まとめ
以上のとおり,本件発明1〜11は,甲5発明と同一であるとはいえない。
したがって,申立理由3−2(拡大先願)によっては,本件特許の請求項1〜11に係る特許を取り消すことはできない。

6 申立理由4(サポート要件)
(1)申立人は,本件発明1及び6は,単量体(i)〜単量体(iii)を含む重合性成分aの重合体及び/又はその中和物である高分子成分Aを含むものであるところ,単量体(i)〜単量体(iii)の含有量,含有比率は特定されていないが,本件明細書の発明の詳細な説明には,出願時の技術常識を考慮しても,単量体(i)〜単量体(iii)の含有量,含有比率がどのような場合であっても,課題を解決し得るまでの開示は見当たらないから,出願時の技術常識に照らしても,本件発明1及び6の範囲まで,本件明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないと主張する。また,本件発明2〜5及び7〜11についても同様に主張する。(申立書69〜70頁)

(2)しかしながら,本件明細書の記載(【0004】,【0007】)によれば,本件発明6の課題は,負極活物質に対して結着性に優れる二次電池負極スラリー用分散剤組成物を提供することであると認められる。
そして,本件明細書の記載(【0008】〜【0010】,【0012】,【0013】,【0017】,【0019】〜【0021】,【0025】〜【0034】,【0066】〜【0068】,【0092】,【0120】〜【0161】,表1〜9)によれば,上記課題は,重合性成分aの重合体及び/又はその中和物である高分子成分Aを含む二次電池負極スラリー用分散剤組成物において,重合性成分aが,「溶解度パラメーター(SP)が10〜17(cal/cm3)1/2であり」,「ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体(I)」を含み,単量体(I)が,「カルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体」である「単量体(i)」,「カルボキシル基及び/又はその塩である基と反応する基を有する単量体」である「単量体(ii)」,「ニトリル系単量体(iii)」を含み,さらに,「条件1:二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率が,500MPa以上である。」との「条件1を満たす」ものとすることによって,解決できることが理解できる。
これに対して,申立人は,本件発明6において,単量体(i)〜単量体(iii)の含有量,含有比率が特定されていないと上記課題が解決できないことを,具体的な根拠を示して主張するものではない。
以上のとおりであるから,本件発明6において,単量体(i)〜単量体(iii)の含有量,含有比率は特定されていないからといって,本件発明6の課題が解決できないとはいえない。また,本件発明1〜5及び7〜11についても同様である。
よって,申立人の主張は採用できない。

(3)したがって,申立理由4(サポート要件)によっては,本件特許の請求項1〜11に係る特許を取り消すことはできない。

7 申立理由5(明確性要件)
(1)申立人は,本件発明1及び6は,「二次電池負極スラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の引張弾性率」により特定されているところ,当該引張弾性率は,成形膜の製造条件や引張弾性率の測定条件によって,その値は変化するものであるが,その条件が特定されていないから,本件発明1及び6は明確ではないと主張する。また,本件発明2〜5及び7〜11についても同様に主張する。(申立書70頁)

(2)確かに,申立人が指摘するように,請求項1及び6には,成形膜の製造条件や引張弾性率の測定条件については,明記されていない。
しかしながら,本件明細書の【0068】,【0126】には,それらの条件について具体的に記載されており,当業者であれば,これらの記載を参酌することにより,理解できるといえる。
これに対して,申立人は,請求項1及び6において,成形膜の製造条件や引張弾性率の測定条件が特定されていないと,本件発明1及び6が不明確となること,また,引張弾性率が,成形膜の製造条件や引張弾性率の測定条件によって,その値が変化することについて,具体的な根拠を示して主張するものではない。
以上によれば,本件発明1及び6は明確である。また,本件発明2〜5及び7〜11についても同様である。
よって,申立人の主張は採用できない。

(3)したがって,申立理由5(明確性要件)によっては,本件特許の請求項1〜11に係る特許を取り消すことはできない。

第5 むすび
以上のとおり,特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1〜11に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許の請求項1〜11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-09-13 
出願番号 P2020-504036
審決分類 P 1 651・ 161- Y (H01M)
P 1 651・ 121- Y (H01M)
P 1 651・ 113- Y (H01M)
P 1 651・ 537- Y (H01M)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 平塚 政宏
特許庁審判官 粟野 正明
井上 猛
登録日 2020-10-23 
登録番号 6783412
権利者 松本油脂製薬株式会社
発明の名称 二次電池負極用スラリー組成物、二次電池負極スラリー用分散剤組成物、二次電池用負極、及び二次電池  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ