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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1381861
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-23 
確定日 2022-02-24 
事件の表示 特願2016− 67886「情報処理装置及び方法、並びにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 1日出願公開、特開2016−201106〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
1.手続
本願は、平成27年4月9日に出願した特願2015−80124号の一部を分割して、平成28年3月30日に新たな特許出願としたものであって、手続の概要は以下のとおりである。

手続補正 :平成30年 4月 9日
拒絶理由通知 :平成31年 2月 5日(起案日)
手続補正 :平成31年 4月15日
拒絶査定 :令和 元年 7月10日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :令和 元年10月23日
手続補正 :令和 元年10月23日

2.査定
原審での査定の理由は、概略、以下のとおりである。

理由1(新規性)この出願の請求項1、5〜7、12、13に係る発明(平成31年4月15日提出の手続補正書による)は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2(進歩性)本願の請求項1〜13に係る発明(平成31年4月15日提出の手続補正書による)は、下記引用例に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用例1:特開2007−11876号公報
引用例2:特開2001−306852号公報

第2 補正の却下の決定
令和元年10月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について次のとおり決定する。

《結論》
平成28年7月8日付けの手続補正を却下する。

《理由》

1.本件補正の内容
令和元年10月23日付けの手続補正は、補正前の請求項1の記載を補正後の請求項1の記載とする以下のとおりの補正事項を含むものである。

(補正前)
【請求項1】
第1ユーザによって操作される情報処理装置であって、
前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権に関する公報の情報を、サーバによる第2情報及び第3情報の抽出の根拠となる情報を含む第1情報として、前記サーバに通知する公報通知手段と、
前記サーバにおいて、
前記公報通知手段により通知された前記第1情報により特定される前記公報に含まれ得る第1書類の内容のうち、所定の文字、図形、記号、又はそれらの結合が、前記第2情報として抽出され、
当該公報に含まれ得る第2書類の内容のうち、抽出された前記第2情報と関連する文字、図形、記号又はそれらの結合が、前記第3情報として抽出され、
所定の文字、図形、記号、又はそれらの結合を第4情報として予め登録している複数の第2ユーザのうち、抽出された前記第3情報と関連のある第4情報を登録した者が、通知対象者として決定され、
当該通知対象者の端末に対して、当該知的財産権に関する情報が第5情報として通知され、
当該通知対象者の端末から、当該第5情報に関する当該知的財産権に対して当該通知対象者が興味を有する旨の第6情報が取得されて、
当該第6情報に基づいて、前記複数の第2ユーザの中に当該知的財産権に興味を有する者が存在することを少なくとも示す情報が、第7情報として生成され、
前記情報処理装置により前記第1情報が通知された結果として生成された当該第7情報が、当該情報処理装置に送信された場合において、
当該第7情報を受付ける受付手段と、
を備える情報処理装置。

(補正後:下線は補正箇所)
【請求項1】
第1ユーザによって操作される情報処理装置であって、
事業に使用されていないが前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権を、前記第1ユーザが保有する1以上の知的財産権の中から特定し、当該知的財産権に関する公報の情報を、サーバによる第2情報及び第3情報の抽出の根拠となる情報を含む第1情報として、前記サーバに通知する公報通知手段と、
前記サーバにおいて、
前記公報通知手段により通知された前記第1情報により特定される前記公報に含まれ得る第1書類の内容のうち、所定の文字、図形、記号、又はそれらの結合が、前記第2情報として抽出され、
当該公報に含まれ得る第2書類の内容のうち、抽出された前記第2情報と関連する文字、図形、記号又はそれらの結合が、前記第3情報として抽出され、
所定の文字、図形、記号、又はそれらの結合を第4情報として予め登録している複数の第2ユーザのうち、抽出された前記第3情報と関連のある第4情報を登録した者が、通知対象者として決定され、
当該通知対象者の端末に対して、当該知的財産権に関する情報が第5情報として通知され、
当該通知対象者の端末から、当該第5情報に関する当該知的財産権に対して当該通知対象者が興味を有する旨の第6情報が取得されて、
当該第6情報に基づいて、前記複数の第2ユーザの中に当該知的財産権に興味を有する者が存在することを少なくとも示す情報が、第7情報として生成され、
前記情報処理装置により前記第1情報が通知された結果として生成された当該第7情報が、当該情報処理装置に送信された場合において、
当該第7情報を受付ける受付手段と、
を備える情報処理装置。

2.補正の適否
(2−1)補正の範囲・単一性
本件補正は、願書に最初に添付した明細書の記載に基づくものであり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。
また、以下の(2−2)で検討するように、補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明が、補正前の発明と単一性を満たすことは明らかである。

(2−2)補正の目的
a)上記補正事項は、補正前の請求項1の「第1ユーザが活用を希望する知的財産権に関する公報の情報」の構成について、本件補正により「事業に使用されていないが前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権を、前記第1ユーザが保有する1以上の知的財産権の中から特定し、当該知的財産権に関する公報の情報」との記載とすることで、「第1ユーザが活用を希望する知的財産権に関する公報の情報」の構成について、「第1ユーザが活用を希望する知的財産権を、前記第1ユーザが保有する1以上の知的財産権の中から特定し、当該知的財産権に関する公報の情報」との特定事項を有するように補正したものである。
これは、補正前の「第1ユーザが活用を希望する知的財産権」の構成について、i)の補正事項では「事業に使用されていない」という限定事項を付加し、ii)の補正事項では、「第1ユーザが活用を希望する知的財産権に関する公報の情報」について、「事業に使用されていないが前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権」を「前記第1ユーザが保有する1以上の知的財産権の中から特定し」た「知的財産権に関する公報の情報」であるという限定事項を付加した補正であるといえる。
したがって、本件補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、かつ、補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定された、特許請求の範囲の減縮に該当する補正事項を含んでいると認められる。

(2−3)独立特許要件
そこで、以下、上記補正後の請求項1に係る発明が独立特許要件を満たすか否かについて検討する。

(ア)補正後の請求項1に記載された発明
本件補正後の請求項1に記載された発明は、一応、以下のとおりである。((A)ないし(J)は当審において付与した。以下「構成要件(A)」等として引用する。)
【請求項1】
(A)第1ユーザによって操作される情報処理装置であって、
(B)事業に使用されていないが前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権を、前記第1ユーザが保有する1以上の知的財産権の中から特定し、当該知的財産権に関する公報の情報を、サーバによる第2情報及び第3情報の抽出の根拠となる情報を含む第1情報として、前記サーバに通知する公報通知手段と、
(C)前記サーバにおいて、
(C1)前記公報通知手段により通知された前記第1情報により特定される前記公報に含まれ得る第1書類の内容のうち、所定の文字、図形、記号、又はそれらの結合が、前記第2情報として抽出され、
(C2)当該公報に含まれ得る第2書類の内容のうち、抽出された前記第2情報と関連する文字、図形、記号又はそれらの結合が、前記第3情報として抽出され、
(C3)所定の文字、図形、記号、又はそれらの結合を第4情報として予め登録している複数の第2ユーザのうち、抽出された前記第3情報と関連のある第4情報を登録した者が、通知対象者として決定され、
(C4)当該通知対象者の端末に対して、当該知的財産権に関する情報が第5情報として通知され、
(C5)当該通知対象者の端末から、当該第5情報に関する当該知的財産権に対して当該通知対象者が興味を有する旨の第6情報が取得されて、
(C6)当該第6情報に基づいて、前記複数の第2ユーザの中に当該知的財産権に興味を有する者が存在することを少なくとも示す情報が、第7情報として生成され、
(C7)前記情報処理装置により前記第1情報が通知された結果として生成された当該第7情報が、当該情報処理装置に送信された場合において、
(D)当該第7情報を受付ける受付手段と、
(E)を備える情報処理装置。

(イ)本件補正後発明について
(イ−1)情報処理装置を特定する構成要件について
本件補正後の請求項1に記載された発明は、構成要件(A)、(E)の記載によれば、「(第1ユーザによって操作される)情報処理装置」に係る発明である。
上記情報処理装置を特定する事項は、上記請求項の記載からみて、上記構成要件(A)、(B)、(D)、(E)であって、構成要件(C)、(C1)〜(C7)は、情報処理装置から(第1情報として)公報の情報通知され、また、情報処理装置が受付ける第7情報を送信する、サーバを特定する構成要件であって、情報処理装置を直接的に特定する構成要件ではない。
してみると、本件補正後発明を特定する構成要件は、一応上記構成要件(A)、(B)、(D)、(E)といえる。
(イ−2)構成要件(B)について
次に、構成要件(B)について検討する。
構成要件(B)における「事業に使用されていないが前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権を、前記第1ユーザが保有する1以上の知的財産権の中から特定し、当該知的財産権に関する公報の情報を、前記サーバに通知する公報通知手段と」の記載は、情報処理装置が有する公報通知手段を直接的に特定する構成であるといえる。
一方、「(公報の情報を、)サーバによる第2情報及び第3情報の抽出の根拠となる情報を含む第1情報として(、前記サーバに通知する)」の記載は、サーバに通知する公報の情報を更に限定する記載であると認めることはできるが、サーバによって抽出処理を行うことを前提とした限定であって直接的に情報処理装置を限定する特定事項ではない。
上記第2情報、第3情報の抽出処理について、請求項の記載をみると
「(C1)前記公報通知手段により通知された前記第1情報により特定される前記公報に含まれ得る第1書類の内容のうち、所定の文字、図形、記号、又はそれらの結合が、前記第2情報として抽出され、
(C2)当該公報に含まれ得る第2書類の内容のうち、抽出された前記第2情報と関連する文字、図形、記号又はそれらの結合が、前記第3情報として抽出され、」
と特定されている。
上記特定事項に対応する発明の詳細な説明は、
「【0021】
特許権者は、活用を希望する特許権の情報(例えば特許番号等)を予めサーバ1に通知しているものとする。即ち、当該特許権の公報(特許掲載公報若しくは出願公開公報)の内容が公報情報DB61にデータとして記憶されているものとする。
ここで、活用を希望する特許権とは、事業者の事業に使用されていない特許権や、専用実施権の設定や通常実施権の許諾をしていない特許権等が想定される。
【0022】
換言すると、公報情報DB61には、特許権者端末2−1乃至2−nの夫々から通知された各種特許権の公報の内容がデータとして記憶されている。ここで、公報の内容のデータは、必ずしも公報の謄本のデータである必要は特になく、その名称のごとく、公報の内容さえ特定できれば足り、任意の形態のデータでよい。
【0023】
クレーム内単語抽出部51は、所定の特許権者が活用を希望する所定の特許権(以下、「活用希望特許権」と呼ぶ)に関する公報に含まれる請求の範囲の内容(クレームの内容)のうち、所定の単語を、クレーム内単語として抽出する。
ここで、クレーム内単語の抽出手法や抽出個数は、特に限定されず任意でよい。ただし、クレームとは、特許権の技術的範囲を確定するもの(出願段階では特許を受けようとする発明を確定するもの)であり、いわば権利書の内容である。従って、少なくとも権利取得時点において、事業を進める等にあたり特許権者が特に力を入れている内容が、クレームに現されていることが多い。従って、数多く表れる単語は、それだけ特許権者にとって重要であると共に、発明のポイント(特別な技術的特徴の1つ)を現している可能性が高い。
そこで、本実施形態では、クレーム内単語抽出部51は、クレームに登場する単語の頻度分布を作成し、頻度(登場回数)が上位の単語をクレーム内単語として抽出している。
【0024】
明細書内単語抽出部52は、活用希望特許権に関する公報に含まれる明細書の内容のうち、抽出されたクレーム内単語と関連する単語を、明細書内関連単語として抽出する。
ここで、クレーム内単語と関連する単語の抽出手法は、特に限定されない。例えば既知の類義語辞典等を参照して抽出する手法を採用してもよいし、機械学習等を利用した所定のアルゴリズムを用いて抽出する手法を採用してもよい。」
であると認めることができ、構成要件(C1)は、特に段落0023のクレーム内単語として抽出する構成に、構成要件(C2)は段落0024の明細書内関連単語として抽出する構成に対応すると認められる。
ここで、これらの抽出処理に用いられる公報の情報は、段落0021に「当該特許権の公報(特許掲載公報若しくは出願公開公報)の内容が公報情報DB61にデータとして記憶されているものとする」との記載が、段落0022の記載によれば「ここで、公報の内容のデータは、必ずしも公報の謄本のデータである必要は特になく、その名称のごとく、公報の内容さえ特定できれば足り、任意の形態のデータでよい」との記載があるから、普通に公開されている特許公報の内容であれば足りるといえ、第1情報としてサーバに通知される知的財産権に関する公報の情報は、普通に公開されている特許権の公報の内容を表す情報(すなわち、知的財産権に関する公報の情報)以上に格別の内容を含むものではないことは明白である。
以上のことから、構成要件(B)で特定される事項は、
(B’)事業に使用されていないが前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権を、前記第1ユーザが保有する1以上の知的財産権の中から特定し、当該知的財産権に関する公報の情報を、前記サーバに通知する公報通知手段と、
であると認める。
(イ−3)構成要件(D)について
「第7情報」について、構成要件(C6)、(C7)の記載を参酌すると、当該構成要件は、
「(C6)当該第6情報に基づいて、前記複数の第2ユーザの中に当該知的財産権に興味を有する者が存在することを少なくとも示す情報が、第7情報として生成され、
(C7)前記情報処理装置により前記第1情報が通知された結果として生成された当該第7情報が、当該情報処理装置に送信された場合において、」
と特定されている。
すなわち、第7情報は、「知的財産権に興味を有する者が存在することを少なくとも示す情報」であって、「情報処理装置により前記第1情報が(サーバに)通知された結果として生成され」、「(サーバから)情報処理装置に送信された」情報であるといえ、「前記第1情報」は、上記(イ−2)で検討したとおり、「知的財産権に関する公報の情報」であるから、第7情報は「知的財産権に興味を有する者が存在することを少なくとも示す情報であって、情報処理装置により当該知的財産権に関する公報の情報がサーバに通知された結果として生成され、サーバから情報処理装置に送信された情報」ということができる。
上記特定事項に対応する発明の詳細な説明は、
「【0029】
応答受付部55は、通知対象者の端末(事業者端末3)から所定の応答を受付けて、通知部54に通知する。通知部54は、当該応答を特許権者端末2に通知する。」
「【0040】
同様に、ステップS21−3において、事業者端末3−3は、特許掲載公報を受信する。
ステップS22−3において、事業者端末3−3は、興味有応答を送信する。
ステップS16において、サーバ1の応答受付部55は、興味有応答を受信して受け付ける。
ステップS17において、通知部54は、興味有応答をした2以上の事業者(本例では事業者端末3−2,3−3を操作する事業者)に関する情報を、2以上の事業者を特定する情報を除外して(例えば匿名で)リスト化したもの(以下、「匿名事業者リスト」と呼ぶ)を、特許権者端末2に送信する。
【0041】
特許権者端末2を介して匿名事業者リストが提示された特許権者は、ライセンス交渉等を希望する事業者(以下、「ライセンス等交渉者」と呼ぶ)を選択する。
ステップS3において、特許権者端末2は、ライセンス等交渉者に対して、当該ライセンス等交渉者を特定する情報の開示(例えば匿名の解除)の指示を、サーバ1に通知する。
ステップS18において、サーバ1の応答受付部55は、当該指示を特許権者からの応答として受け付ける。
ステップS19において、通知部54は、ライセンス等交渉者の端末(本例では事業者端末3−2)に対して、開示要求(特許権者端末2からの応答)を通知する。
ライセンス等交渉者として選択された事業者が特許権者との交渉に応じる場合、ステップS25−2において、当該事業者の事業者端末3−2は、当該事業者を特定する情報の開示を特許権者端末2に対して行う。
ステップS4において、特許権者端末2は、当該情報開示を受諾する。」
などであると認めることができる。
すなわち、第7情報は、サーバの通知部が特許権者端末に通知する情報であって、特許権者がサーバに登録した特許掲載公報を見て興味応答を示した事業者のリスト(匿名事業者リスト)を少なくとも含む情報であるということができ、これは、上記特許請求の範囲の記載から特定した第7情報と格別の相違はない。
以上特許請求の範囲の記載及び発明の詳細な説明の記載からみて、第7情報は「知的財産権に興味を有する者が存在することを少なくとも示す情報であって、情報処理装置により当該知的財産権に関する公報の情報がサーバに通知された結果として生成され、サーバから情報処理装置に送信された情報」であると認めることができ、構成要件(D)は、「知的財産権に興味を有する者が存在することを少なくとも示す情報であって、情報処理装置により当該知的財産権に関する公報の情報がサーバに通知された結果として生成され、サーバから情報処理装置に送信された情報を受付ける受付手段」(構成要件(D’))と認める。
(イ−4)本件補正後発明
してみると、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、本件補正後発明という。)は、以下のとおりの発明と認定できる。

(A)第1ユーザによって操作される情報処理装置であって、
(B’)事業に使用されていないが前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権を、前記第1ユーザが保有する1以上の知的財産権の中から特定し、当該知的財産権に関する公報の情報を、前記サーバに通知する公報通知手段と、
(D’)知的財産権に興味を有する者が存在することを少なくとも示す情報であって、情報処理装置により当該知的財産権に関する公報の情報がサーバに通知された結果として生成され、サーバから情報処理装置に送信された情報を受付ける受付手段と、
(E)を備える情報処理装置。

(ウ)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2007−11876号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される特許検索システムには、以下のような問題点があった。
従来の検索システムでは、ユーザは、キーワードを入力してデータベース内の膨大な文献データから検索を行っていたが、各文献に記載されている知的財産権が具体的にはどの分野で利用されるものか、どのような事業に適用可能であるか、といったことを把握するためには、その文献の内容を1つ1つ吟味していかなければならず、多大な労力と時間を必要としていた。
このようなことから、例えば事業主等は、自分自身の事業に関連する知的財産権を特定することが困難であり、その結果として、知的財産権の買取、ならびに実施(使用)の許諾及び事業提携の申出といった、事業を行う際に必要な手続きに障害が生じてしまい、無用な権利侵害を招いたりする可能性があった。
一方、知的財産権の権利者の中には、自身の知的財産権が登録されたにもかかわらず、設備や資金が不足し実施や使用が困難であるため、知的財産権の有償譲渡又はライセンス契約の締結を希望している場合も多い。しかし、前述したように知的財産権の利用を希望している側から知的財産権の内容を把握することが困難であり、かつ権利者側から知的財産権の価値を積極的にPRする機会がほとんどないため、知的財産権の有効活用が困難となってしまっている。

【0016】
<第1の実施の形態>
(第1の実施の形態の概要)
まず、本発明の第1実施の形態における概要について簡単に説明する。
本実施の形態における知的財産情報提供システムにおいて、知的財産権の権利者(以下、単に権利者という)は、自身が保有する知的財産権の譲渡又は実施(使用)を許諾する旨の情報(以下、譲渡許諾情報という)をシステム内のデータベースに登録する。この譲渡許諾情報には、その知的財産権の価値をPRする文章の情報が含まれている。
その後、第三者から知的財産権の譲受又は実施(使用)の許諾を受けることを希望する者(以下、利用希望者という)は、前述のデータベース内の譲渡許諾情報(PR文)を参照し、自身が譲受又は実施(使用)の許諾を受けたい知的財産権を選択する。
知的財産情報提供システムは、その知的財産権の利用希望を受け付けると、該当する知的財産権の権利者側に、その知的財産権の利用希望がある旨を通知して、知的財産権の譲渡又は実施(使用)の仲介を行う。
このようにして、知的財産権の利用価値を積極的にPRする情報を、知的財産権の利用側に提示するので、知的財産権の譲渡又は実施(使用)の仲介を効果的に行うことができ、知的財産権の有効活用を実現することが可能となる。
以下、本実施の形態における知的財産情報提供システムの構成を説明し、次に動作について説明を進める。
【0017】
(第1の実施の形態の構成)
(1)全体構成
図1は、本発明の実施の形態における知的財産情報提供システムの構成を示す図である。以下、図を用いて、知的財産情報提供システムの全体的な構成を説明し、次に、このシステム内のサーバ及び端末個々の構成について説明を進める。
知的財産情報提供システムは、特許等の知的財産権の譲渡又は実施(使用)許諾の希望等を受け付ける知的財産情報提供サーバ10と、これらの知的財産権の譲渡や実施(使用)等に関する情報を管理するデータベース20と、知的財産権の譲渡や実施(使用)の許諾の申し出をそのデータベース20に登録するための譲渡許諾情報登録端末30と、そのデータベース20にアクセスし知的財産権の譲受や実施(利用)の申込を行う譲渡許諾情報利用端末40とを有し、これらサーバ及び端末がインターネット等のネットワーク1を介して接続されて構成される。
以下、これら知的財産情報提供システムの各構成要素について、個別に説明していく。
【0018】
知的財産情報提供サーバ10は、データベース20とともに前述のシステムの管理側により管理されるワークステーション等の情報処理装置であって、権利者側の譲渡許諾情報登録端末30から知的財産権の譲渡又は実施(使用)の許諾の申し出を受信し、データベース20に登録する。
また、知的財産情報提供サーバ10は、譲渡許諾情報利用端末40からの要求に応じて、データベース20内の譲渡許諾情報を抽出し、譲渡許諾情報利用端末40に送信する。
【0019】
譲渡許諾情報登録端末30は、権利者により操作されるPC又は携帯端末等の通信可能な情報処理装置であって、譲渡許諾情報を知的財産情報提供サーバ10に送信しデータベース20に登録する。
この譲渡許諾情報は、例えば、知的財産権の内容、PR情報、譲渡又は実施(使用)を許諾するときの条件等の各種情報から構成される。
【0020】
譲渡許諾情報利用端末40は、利用希望者により操作されるPC又は携帯端末等の通信可能な情報処理装置であって、データベース20に登録された譲渡許諾情報にアクセスすることでその譲渡許諾情報を表示し、この譲渡許諾情報に示される知的財産権の譲受又は実施(使用)を希望する旨の情報を知的財産情報提供サーバ10に送信する。
【0021】
データベース20は、前述のシステムの管理側により管理されるデータベースであって、知的財産権ならびにその権利者側及び利用希望者側の個人情報等を管理する。
また、図に示すように、このデータベース20は、権利者の個人情報を管理する権利者DB21と、利用希望者の個人情報を管理する利用希望者DB22と、権利者の知的財産権の情報を管理する譲渡許諾情報DB23と、知的財産権の譲受又は許諾を受けるときに利用希望者が希望する条件等(以下、利用希望条件という)を管理する利用希望条件DB24と、知的財産権の文献情報を管理する知的財産文献DB25と、知的財産権の手続き等の期限情報を管理する期限管理DB26とから構成される。
以下、これらデータベース20を構成する各領域(データベース)について、個別に説明する。

【0024】
また、譲渡許諾情報DB23には、前述の譲渡許諾情報が管理されている。
この譲渡許諾情報には、該当する知的財産権の内容、番号(出願番号、登録番号等)、PR情報等が含まれる。なお、この譲渡許諾情報の内容に関しては後ほど詳述する。
【0025】
また、利用希望条件DB24には、前述の利用希望条件が管理されている。
この利用希望条件には、利用希望側が権利者側から知的財産権を譲受又は実施(使用)するときに希望する各種条件(予算、期間等)が含まれる。なお、この利用希望条件の内容に関しては後ほど詳述する。
【0026】
また、知的財産文献DB25には、特許公報、商標公報等、知的財産権の文献の情報が管理されている。

【0032】
(第1の実施の形態の動作)
本実施の形態における知的財産情報提供システムは、前述したような構成を備え、以下のような動作を行う。
すなわち、まず、知的財産情報提供システムでは、権利者及び利用希望者の個人情報と前述の譲渡許諾情報とをデータベース20に登録した後に(1.個人情報及び譲渡許諾情報の登録動作)、利用希望者側から知的財産権を利用するときに希望する条件の提示を受けると、その譲渡許諾情報を利用希望者側に提供して知的財産権の流動化及び有効活用を促進する(2.譲渡許諾情報の提供動作)。
また、本実施の形態では、知的財産情報提供システムは、権利者等からの依頼に応じて、知的財産権の手続きの期限管理を行う(3.知的財産権の管理動作)。
さらに、この知的財産情報提供システムは、知的財産権の文献情報を蓄積し、要求に応じてこれらの文献情報を提供することができる(4.知的財産権の文献情報の登録動作)。
以下、本実施の形態における知的財産情報提供システムによるこれらの各動作(1)〜(4)について詳細に説明する。
【0033】
(1)個人情報及び譲渡許諾情報の登録動作
まず、知的財産権の権利者又は利用希望者は、それぞれ端末30、40を用いて、自身の個人情報をキーボード等で入力すると、それら各端末30、40は、その入力された個人情報を知的財産情報提供サーバ10に送信する。
知的財産情報提供サーバ10は、その個人情報を受信すると、その個人情報の送信元の権利者又は利用希望者に対して固有のIDを付与し、そのIDに個人情報を対応付けてデータベース20に登録する。
このとき、知的財産情報提供サーバ10は、権利者の個人情報に関しては権利者DB21に、利用希望者の個人情報に関しては利用希望者DB22にそれぞれ登録する。登録する個人情報の内容については、前述した各データベースの登録内容の通りである。
このようにして、知的財産情報提供サーバ10は、権利者側又は利用希望者側から個人情報を受信すると、IDを付与し、その個人情報の登録動作を行う。

【0040】
譲渡許諾情報利用端末40は、その利用希望条件の提示用の画面情報を受信すると、その画面情報を表示し、利用希望者は、譲渡許諾情報利用端末40を用いて、その画面上の入力欄に沿って前述の利用希望条件をキーボード等で入力していく(ステップS102)。
図4は、その利用希望条件の提示用の画面情報の一例を示す図である。
図に示すように、利用希望者は、譲渡許諾情報利用端末40を用いて、例えば、
・知的財産権の分野(バイオケミカル、ソフトウェア、・・・)
・知的財産権の種類(特許、商標、著作権、・・・)
・知的財産権の利用方法(譲受、専用実施/使用、通常実施/使用、・・・)
・譲受又は実施(使用)するに当って支払う予算
・権利者側から譲渡等の申出を受け付ける最終期日(受付締め切り期日)
といった利用希望条件を入力する。
【0041】
譲渡許諾情報利用端末40は、その入力された利用希望条件を知的財産情報提供サーバ10に送信する(ステップS103)。
知的財産情報提供サーバ10は、その利用希望条件を受信すると、その受信した利用希望条件を利用希望条件DB24に登録する(ステップS104)。
【0042】
そして、知的財産情報提供サーバ10は、前述の譲渡許諾情報DB23を参照し、その登録した利用希望条件に合致した譲渡許諾情報の検索を行う(ステップS105)。
ここで、知的財産情報提供サーバ10は、例えば、知的財産権の分野:ソフトウェア、種類:特許、利用方法:譲受、利用範囲:日本全国、・・・・といったような各条件が利用希望条件に示されている場合、それらと同様の条件を示す知的財産権の譲渡許諾情報を譲渡許諾情報DB23から抽出する。
【0043】
知的財産情報提供サーバ10は、それらの各条件に合致した譲渡許諾情報を抽出すると、その抽出した譲渡許諾情報の一覧を示す画面情報を作成して、その作成した一覧の画面情報を譲渡許諾情報利用端末40に送信する(ステップS106)。
譲渡許諾情報利用端末40は、その譲渡許諾情報の一覧を示す画面情報を受信すると、その画面情報を表示する(ステップS107)。利用希望者により、その一覧画面上から1つの譲渡許諾情報が選択されると、譲渡許諾情報利用端末40は、その選択情報をシステムサーバ10に送信する(ステップS108)。
【0044】
知的財産情報提供サーバ10は、その選択情報を受信すると、その選択情報で選択されている譲渡許諾情報を譲渡許諾情報DB23から抽出し(ステップS109)、この抽出した譲渡許諾情報の詳細を示す画面情報を作成して、譲渡許諾情報利用端末40に送信する(ステップS110)。
譲渡許諾情報利用端末40は、その譲渡許諾情報の詳細の画面情報を受信すると、その画面情報を表示する(ステップS111)。
図5は、この利用希望者により選択された譲渡許諾情報の詳細を示す画面情報の一例を示す図である。
図に示すように、この譲渡許諾情報の詳細の画面情報には、知的財産権の種類:特許、分野:ソフトウェア、可能な利用方法:譲受等とともに、その知的財産権のPR情報、利用に当っての参考見積もり等が示されている。このように、権利者は、利用希望者に対して自身の知的財産権の具体的な利用方法やその利用による予想収益等を示すことで、この知的財産権の有用性をアピールする。
さらに、この譲渡許諾情報の画面上には、この知的財産権の権利者に対する質問や要望の入力欄が設けられており、利用希望者は、必要に応じ、その質問や要望を譲渡許諾情報利用端末40で入力する。
利用希望者は、その画面上に示された知的財産権の譲受又は実施(使用)を希望するとき、譲渡許諾情報利用端末40でその旨のキー操作等を行う。この操作により、譲渡許諾情報利用端末40は、その画面上の知的財産権の譲受又は実施(使用)を希望する旨の情報(以下、利用希望情報という)を知的財産情報提供サーバ10に送信する(ステップS112)。
なお、この利用希望情報には、利用希望者IDや知的財産権の番号、前述の質問や要望の入力内容等が含まれている。
【0045】
知的財産情報提供サーバ10は、その利用希望情報を受信すると、その譲受又は実施(使用)を希望する利用希望者の個人情報を利用希望者DB22から抽出し(ステップS113)、この抽出した利用希望者の個人情報と、その利用希望情報とを含む画面情報を作成し、この作成した画面情報を今回利用希望されている知的財産権を保有する権利者の譲渡許諾情報登録端末30に送信する(ステップS114)。
【0046】
譲渡許諾情報登録端末30は、知的財産情報提供サーバ10からその画面情報を受信すると、その受信した画面情報を表示する(ステップS115)。
その後、権利者は、その画面上に表示された利用希望者の個人情報や利用希望情報を確認し、譲渡許諾情報登録端末30を用いて、その利用希望に対する許否や質問に対する回答等を入力し(ステップS116)、譲渡許諾情報利用端末40に送信する(ステップS117)。このとき、権利者は、その知的財産権の価値をアピールするようなPR情報を譲渡許諾情報登録端末30を用いて追加登録してもよい。
それから、権利者は、利用希望者との間で連絡をとり、知的財産権の譲渡又は実施(使用)の許諾の契約等の手続きを進める。

【0049】
まず、権利者は、知的財産情報提供システムによる期限管理サービスを受けるにあたって必要な基本情報(管理対象の知的財産権の番号等)の登録を行う(ステップS201〜S206)。
まず、権利者は、譲渡許諾情報登録端末30を用いて知的財産情報提供サーバ10にアクセスすると(ステップS201)、知的財産情報提供サーバ10は、このような基本情報の登録のための画面情報を譲渡許諾情報登録端末30に送信する(ステップS202)。
【0050】
譲渡許諾情報登録端末30は、その画面情報を受信すると、その受信した画面情報を表示する(ステップS203)。
図7は、この知的財産権の管理のための基本情報の登録画面の一例を示す図である。
権利者は、譲渡許諾情報登録端末30を用い、その登録用の画面上の入力欄に沿って、基本情報をキーボード等で入力していく(ステップS204)。
例えば、ここでは、
・管理対象の知的財産権の番号
・前述の期限が近づいたときの通知先(権利者本人、共同権利者、・・・)
・通知の対象となる期間/期限(審査請求期間、優先権主張、・・・)
等が入力される。
【0051】
譲渡許諾情報登録端末30は、これら入力された基本情報(知的財産権の番号、通知先、通知対象の期限、・・・)を知的財産情報提供サーバ10に送信する(ステップS205)。
知的財産情報提供サーバ10は、これら基本情報を受信すると、期限管理DB26に登録する(ステップS206)。
【0052】
そして、知的財産情報提供サーバ10は、譲渡許諾情報DB23に登録されている基準日(出願日等)と、今回期限管理DB26に登録された管理対象の期間又は期限の種類(審査請求期限等)とを参照し、実際の期限となる期日を算出する(ステップS207)。
例えば、原則として、基準日(出願日)を2005年1月1日、管理対象の期限を審査請求期限(出願日から1年6ヶ月)とすると、2006年7月1日と算出される。
【0053】
ここで、知的財産情報提供サーバ10には、管理対象の期限の種類ごとに、所定期間を示す情報が予め蓄積されているものとする。
図8は、この所定期間を示す情報の一例を示す図である。
例えば、図に示すように、審査請求期限であればこの所定期間は3ヶ月となり、国内優先期限であれば2ヶ月、・・・・といったように決められている。
知的財産情報提供サーバ10は、前述の算出した実際の期限日から、その所定期間だけ前の期日を実際の通知日として決定する(ステップS208)。
例えば、管理対象の期限を審査請求期限であるとすると、この所定期間は3ヶ月であるので、2006年7月1日の3ヶ月前の2006年4月1日を通知日として決定する。
【0054】
知的財産情報提供サーバ10は、一定時間ごとに、現時点と、その決定した通知日とを比較し(ステップS209)、その通知日に至ると(ステップS209/Yes)、期限管理DB26に登録されている通知先の端末(譲渡許諾情報登録端末30等)に対して、その期限に近づいた旨の通知情報を送信する(ステップS210)。
また、このとき、知的財産情報提供サーバ10は、手続きの種類、請求項の数、区分の数、出願又は請求の時期等に基づいて、この期限に関する手続きにおいて権利者が納付する必要がある費用を算出し、通知情報として通知先の端末に送信するようにしてもよい。
図9は、その期限が近づいた旨の通知情報の一例を示す図である。
通知情報を受信した通知先の端末は、この図に示すように、審査請求期限まであと3ヶ月となった旨や、その審査請求にかかる料金等が示された通知情報を画面表示し、その通知先の人物は、この画面表示内容を閲覧して、自身に関連している知的財産権の期限を確認する。
【0055】
このように、知的財産情報提供サーバ10は、権利者等から、管理対象となる期限及びその通知先を指定されると、対象となる知的財産権の期限管理を行い、その期限が近づくと、自動的にその指定された通知先に、期限が近づいている旨の通知情報を送信するので、権利者等は、その端末の画面上の通知情報を閲覧するだけで、自身に関連する知的財産権の期限を確認できるので、その知的財産権の期限管理が容易となる。
【0056】
なお、前述の期限日の通知先は、例えば、審査請求期限の通知のときには権利者及び代理人に通知し、年金納付期限の通知のときには権利者のみに通知するといったように、各管理対象の期限ごとに異なっていてもよい。
【0057】
(4)知的財産権の文献情報の登録動作
また、知的財産情報提供システムにおいては、知的財産文献DB25に特許公報等の知的財産権の文献情報を登録しておくことで、ユーザは、自分の端末を用いて、知的財産情報提供サーバ10にアクセスして、その文献情報を閲覧することができる。
この知的財産権の文献情報は、知的財産情報提供サーバ10により知的財産文献DB25に登録される。
これは、知的財産権の権利者が、譲渡許諾情報登録端末30を用いて、自身が保有する知的財産権の文献情報を知的財産情報提供サーバ10に送信し、知的財産情報提供サーバ10は、その受信した文献情報を登録するようにしてもよい。
また、知的財産情報提供サーバ10が、図示しない公的機関のサーバ等にアクセスし、その公的機関のサーバ等が提供する文献情報をダウンロードし、知的財産文献DB25に登録するようにしてもよい。
【0058】
このようにして、特許公報や商標公報等の知的財産権の文献情報が、文献DB25に登録されるので、知的財産権の権利者、利用希望者及びその他のユーザは、PCや携帯電話機等の携帯端末を用いて知的財産情報提供サーバ10にアクセスして、その知的財産文献DB25内の文献情報を容易に閲覧することができるようになる。

(エ)引用例1に記載された発明
(エ−1)知的財産情報提供システムの全体構成
【0017】の記載によれば、引用例1に記載された「知的財産情報提供システム」は「特許等の知的財産権の譲渡又は実施(使用)許諾の希望等を受け付ける知的財産情報提供サーバ10と、これらの知的財産権の譲渡や実施(使用)等に関する情報を管理するデータベース20と、知的財産権の譲渡や実施(使用)の許諾の申し出をそのデータベース20に登録するための譲渡許諾情報登録端末30と、そのデータベース20にアクセスし知的財産権の譲受や実施(利用)の申込を行う譲渡許諾情報利用端末40とを有し、これらサーバ及び端末がインターネット等のネットワーク1を介して接続されて構成される。」とあるから、知的財産情報提供システムは、知的財産情報提供サーバ10とデータベース20と譲渡許諾情報登録端末30と譲渡許諾情報利用端末40とがネットワーク1を介して接続されるシステムであるといえる。そして、上記システムを譲渡許諾情報登録端末30からみると、譲渡許諾情報登録端末30は、知的財産情報提供システムに利用される端末であって、知的財産情報提供サーバ10及びデータベース20とネットワーク1を介して接続される端末であるといえる。
また、【0018】には「知的財産情報提供サーバ10は、データベース20とともに前述のシステムの管理側により管理されるワークステーション等の情報処理装置」と記載されているから、知的財産情報提供サーバ10とデータベース20とは併せて管理側装置と称することができる。
さらに、【0021】には「このデータベース20は、権利者の個人情報を管理する権利者DB21と、利用希望者の個人情報を管理する利用希望者DB22と、権利者の知的財産権の情報を管理する譲渡許諾情報DB23と、知的財産権の譲受又は許諾を受けるときに利用希望者が希望する条件等(以下、利用希望条件という)を管理する利用希望条件DB24と、知的財産権の文献情報を管理する知的財産文献DB25と、知的財産権の手続き等の期限情報を管理する期限管理DB26とから構成される」との記載があるから、管理側装置は、知的財産情報提供サーバ10とデータベース20とからなり、データベースは、権利者の知的財産権の情報を管理する譲渡許諾情報DB23、知的財産権の譲受又は許諾を受けるときに利用希望者が希望する条件等(以下、利用希望条件という)を管理する利用希望条件DB24、知的財産権の文献情報を管理する知的財産文献DB25を備えていることが記載されている。
以上の記載から、知的財産情報提供システムに利用される端末であって、譲渡許諾情報DB23、利用希望条件DB24、知的財産文献DB25を備えるデータベース20と知的財産情報提供サーバ10とからなる管理側装置に対して、ネットワークを介して接続される譲渡許諾情報登録端末30に関する発明が開示されているといえる。
(エ−2)譲渡許諾情報登録端末30
譲渡許諾情報登録端末30は、
i)【0019】の記載によれば、「譲渡許諾情報登録端末30は、権利者により操作されるPC又は携帯端末等の通信可能な情報処理装置であって、譲渡許諾情報を知的財産情報提供サーバ10に送信しデータベース20に登録する」ものであって、「譲渡許諾情報は、例えば、知的財産権の内容、PR情報、譲渡又は実施(使用)を許諾するときの条件等の各種情報から構成される」ものである。
ii)【0057】の記載によれば「知的財産情報提供システムにおいては、知的財産文献DB25に特許公報等の知的財産権の文献情報を登録しておくこと」が可能であり、「知的財産権の文献情報は、知的財産情報提供サーバ10により知的財産文献DB25に登録され」、「知的財産権の権利者が、譲渡許諾情報登録端末30を用いて、自身が保有する知的財産権の文献情報を知的財産情報提供サーバ10に送信し、知的財産情報提供サーバ10は、その受信した文献情報を登録するようにしてもよ」いものである。
(エ−3)利用希望情報
「譲渡許諾情報利用端末40は、その利用希望条件の提示用の画面情報を受信すると、その画面情報を表示し、利用希望者は、譲渡許諾情報利用端末40を用いて、その画面上の入力欄に沿って前述の利用希望条件をキーボード等で入力し」(【0040】)、「その入力された利用希望条件を知的財産情報提供サーバ10に送信」し、「知的財産情報提供サーバ10は、その利用希望条件を受信すると、その受信した利用希望条件を利用希望条件DB24に登録」(【0041】)し、「知的財産情報提供サーバ10は、前述の譲渡許諾情報DB23を参照し、その登録した利用希望条件に合致した譲渡許諾情報の検索を行」い(【0042】)、「知的財産情報提供サーバ10は、それらの各条件に合致した譲渡許諾情報を抽出すると、その抽出した譲渡許諾情報の一覧を示す画面情報を作成して、その作成した一覧の画面情報を譲渡許諾情報利用端末40に送信」(【0043】)し、「譲渡許諾情報利用端末40は、その譲渡許諾情報の一覧を示す画面情報を受信すると、その画面情報を表示する(ステップS107)。利用希望者により、その一覧画面上から1つの譲渡許諾情報が選択されると、譲渡許諾情報利用端末40は、その選択情報をシステムサーバ10に送信」(【0043】)、「知的財産情報提供サーバ10は、その選択情報を受信すると、その選択情報で選択されている譲渡許諾情報を譲渡許諾情報DB23から抽出し(ステップS109)、この抽出した譲渡許諾情報の詳細を示す画面情報を作成して、譲渡許諾情報利用端末40に送信する(ステップS110)。譲渡許諾情報利用端末40は、その譲渡許諾情報の詳細の画面情報を受信すると、その画面情報を表示」(【0044】)し、「利用希望者は、その画面上に示された知的財産権の譲受又は実施(使用)を希望するとき、譲渡許諾情報利用端末40でその旨のキー操作等を行う。この操作により、譲渡許諾情報利用端末40は、その画面上の知的財産権の譲受又は実施(使用)を希望する旨の情報(以下、利用希望情報という)を知的財産情報提供サーバ10に送信する」(【0044】)ことから、
利用希望情報は、
「利用希望者は、譲渡許諾情報利用端末40を用いて、その画面上の入力欄に沿って前述の利用希望条件をキーボード等で入力し、
その入力された利用希望条件を知的財産情報提供サーバ10に送信し、
知的財産情報提供サーバ10は、前述の譲渡許諾情報DB23を参照し、利用希望条件に合致した譲渡許諾情報の検索を行い、
知的財産情報提供サーバ10は、それらの各条件に合致した譲渡許諾情報を抽出すると、その抽出した譲渡許諾情報の一覧を示す画面情報を作成して、その作成した一覧の画面情報を譲渡許諾情報利用端末40に送信し、
譲渡許諾情報利用端末40は、受信した譲渡許諾情報の一覧を示す画面情報を表示し、
利用希望者により、その一覧画面上から1つの譲渡許諾情報が選択されると、譲渡許諾情報利用端末40は、その選択情報をシステムサーバ10に送信し、
知的財産情報提供サーバ10は、受信した選択情報で選択されている譲渡許諾情報を譲渡許諾情報DB23から抽出し(ステップS109)、抽出した譲渡許諾情報の詳細を示す画面情報を作成して、譲渡許諾情報利用端末40に送信し、
譲渡許諾情報利用端末40は、その譲渡許諾情報の詳細の画面情報を受信し、画面に表示し、
利用希望者は、その画面上に示された知的財産権の譲受又は実施(使用)を希望するとき、譲渡許諾情報利用端末40でその旨のキー操作等を行うことにより、譲渡許諾情報利用端末40は、その画面上の知的財産権の譲受又は実施(使用)を希望する旨の情報(以下、利用希望情報という)を知的財産情報提供サーバ10に送信する」
という処理の結果、譲渡許諾情報利用端末40からサーバに送信される情報であることが記載されている。
(エ−4)利用希望情報と利用希望情報を含む画面情報
【0045】の記載によれば「知的財産情報提供サーバ10は、その利用希望情報を受信すると、その譲受又は実施(使用)を希望する利用希望者の個人情報を利用希望者DB22から抽出し(ステップS113)、この抽出した利用希望者の個人情報と、その利用希望情報とを含む画面情報を作成し、この作成した画面情報を今回利用希望されている知的財産権を保有する権利者の譲渡許諾情報登録端末30に送信(ステップS114)」し、
【0046】の記載によれば「譲渡許諾情報登録端末30は、知的財産情報提供サーバ10からその画面情報を受信すると、その受信した画面情報を表示する(ステップS115)」ことが開示されている。
(エ−5)まとめ(引用発明)
以上のことからみて、上記引用例1には以下の発明(以下、引用発明という。)が記載されている。

知的財産情報提供システムに利用される端末であって、譲渡許諾情報DB23、利用希望条件DB24、知的財産文献DB25を備えるデータベース20と知的財産情報提供サーバ10とからなる管理側装置に対して、ネットワークを介して接続される譲渡許諾情報登録端末30に関する発明であって、
譲渡許諾情報登録端末30は、
権利者により操作されるPC又は携帯端末等の通信可能な情報処理装置であって、譲渡許諾情報を知的財産情報提供サーバ10に送信しデータベース20に登録するものであって、
譲渡許諾情報は、知的財産権の内容、PR情報、譲渡又は実施(使用)を許諾するときの条件等の各種情報から構成され、
知的財産情報提供サーバ10からその画面情報を受信すると、その受信した画面情報を表示する、
譲渡許諾情報登録端末30であって、
知的財産情報提供システムにおいては、知的財産文献DB25に特許公報等の知的財産権の文献情報を登録しておくことが可能であり、
上記知的財産権の文献情報は、知的財産情報提供サーバ10により知的財産文献DB25に登録され、知的財産権の権利者が、譲渡許諾情報登録端末30を用いて、自身が保有する知的財産権の文献情報を知的財産情報提供サーバ10に送信し、知的財産情報提供サーバ10は、その受信した文献情報を登録するようにしてもよく
利用希望情報は、
利用希望者は、譲渡許諾情報利用端末40を用いて、その画面上の入力欄に沿って前述の利用希望条件をキーボード等で入力し、
その入力された利用希望条件を知的財産情報提供サーバ10に送信し、
知的財産情報提供サーバ10は、前述の譲渡許諾情報DB23を参照し、利用希望条件に合致した譲渡許諾情報の検索を行い、
知的財産情報提供サーバ10は、それらの各条件に合致した譲渡許諾情報を抽出すると、その抽出した譲渡許諾情報の一覧を示す画面情報を作成して、その作成した一覧の画面情報を譲渡許諾情報利用端末40に送信し、
譲渡許諾情報利用端末40は、受信した譲渡許諾情報の一覧を示す画面情報を表示し、
利用希望者により、その一覧画面上から1つの譲渡許諾情報が選択されると、譲渡許諾情報利用端末40は、その選択情報をシステムサーバ10に送信し、
知的財産情報提供サーバ10は、受信した選択情報で選択されている譲渡許諾情報を譲渡許諾情報DB23から抽出し(ステップS109)、抽出した譲渡許諾情報の詳細を示す画面情報を作成して、譲渡許諾情報利用端末40に送信し、
譲渡許諾情報利用端末40は、その譲渡許諾情報の詳細の画面情報を受信し、画面に表示し、
利用希望者は、その画面上に示された知的財産権の譲受又は実施(使用)を希望するとき、譲渡許諾情報利用端末40でその旨のキー操作等を行うことにより、譲渡許諾情報利用端末40は、その画面上の知的財産権の譲受又は実施(使用)を希望する旨の情報(以下、利用希望情報という)を知的財産情報提供サーバ10に送信する、
ことで譲渡許諾情報利用端末40からサーバに送信される情報であり、
知的財産情報提供サーバ10は、その利用希望情報を受信すると、その譲受又は実施(使用)を希望する利用希望者の個人情報を利用希望者DB22から抽出し(ステップS113)、この抽出した利用希望者の個人情報と、その利用希望情報とを含む画面情報を作成し、この作成した画面情報を今回利用希望されている知的財産権を保有する権利者の譲渡許諾情報登録端末30に送信する、
知的財産情報提供システムの譲渡許諾情報登録端末30。

(オ)対比
(オ−1)
引用発明の「権利者」は、引用例の発明の詳細な説明の【0016】には「知的財産権の権利者(以下、単に権利者という)は、自身が保有する知的財産権の譲渡又は実施(使用)を許諾する旨の情報(以下、譲渡許諾情報という)をシステム内のデータベースに登録する」と記載されているところ、本件補正後発明の「第1ユーザ」は、本願明細書の発明の詳細な説明の【0047】に「第1ユーザ(例えば特許権者)」と記載されているから、引用発明の「権利者」と本件補正後発明の「第1ユーザ」とは、ともに特許権者であるという点において相違はない。
また、引用発明の「譲渡許諾情報登録端末」は、「譲渡許諾情報登録端末30は、権利者により操作されるPC又は携帯端末等の通信可能な情報処理装置」であるとろ、本件補正後発明の「情報処理装置」は「第1ユーザによって操作される情報処理装置」であって、上記のとおり、引用発明の「権利者」と本件補正後発明の「第1ユーザ」とに相違はないから、引用発明の「譲渡許諾情報登録端末」は、本件補正後発明の「情報処理装置」に相当する。
したがって、引用発明は、構成要件(A)、(E)を備えている。
(オ−2)
引用発明の「譲渡許諾情報登録端末」は、「譲渡許諾情報を知的財産情報提供サーバ10に送信しデータベース20に登録する」ものであって、「この譲渡許諾情報は、例えば、知的財産権の内容、PR情報、譲渡又は実施(使用)を許諾するときの条件等の各種情報から構成される」構成がまず特定されている。
これに加えて、「知的財産情報提供システムにおいては、知的財産文献DB5に特許公報等の知的財産権の文献情報を登録しておくことが可能であり」、「上記知的財産権の文献情報は、知的財産情報提供サーバ10により知的財産文献DB25に登録され」、「知的財産権の権利者が、譲渡許諾情報登録端末30を用いて、自身が保有する知的財産権の文献情報を知的財産情報提供サーバ10に送信し、知的財産情報提供サーバ10は、その受信した文献情報を登録するようにしてもよい」構成であるから、特許公報等の知的財産権の文献情報は、譲渡許諾情報登録端末30を用いて知的財産情報提供サーバ10に送信され知的財産文献DB25に登録される構成であるといえる。
上記特許公報等の知的財産権の文献情報を譲渡許諾情報登録端末30を用いて知的財産情報提供サーバ10に送信するためには、譲渡許諾情報登録端末30は、特許公報等の知的財産権の文献情報を知的財産情報提供サーバ10に送信するための送信手段を有することは明白である。
上記引用発明の「特許公報等の知的財産権の文献情報」、「送信手段」は、本件補正後発明の「知的財産権に関する公報の情報」、「公報通知手段」に相当することは明らかである。
上記引用発明の構成において、知的財産権の権利者が、譲渡許諾情報登録端末30を用いて、自身が保有する知的財産権の文献情報を送信するのであるから、上記送信する「特許公報等の知的財産権の文献情報」は、知的財産権の権利者が、自身が保有する知的財産権の中から、知的財産情報提供サーバ10に送信し登録するという判断を行っているのであるから、知的財産権の権利者が特定した文献情報である。
また、引用発明において権利者がサーバに登録する特許は、引用例1の
【0016】
「このようにして、知的財産権の利用価値を積極的にPRする情報を、知的財産権の利用側に提示するので、知的財産権の譲渡又は実施(使用)の仲介を効果的に行うことができ、知的財産権の有効活用を実現することが可能となる。」
【0029】
「このように、権利者は、自身の個人情報や知的財産権の内容に加えて、この知的財産権をどのような事業に利用することができ、どれくらいの利益を得ることが可能か、といった知的財産権の譲渡又は実施(使用)許諾に向けてのPR文等を譲渡許諾情報DB23に登録するので、知的財産権の利用希望者に対してその知的財産権のセールスポイントを積極的にアピールすることができ、知的財産権を有効活用することが可能となる。」
【0047】
「以上説明したように、本実施の形態では、知的財産権の利用方法や、利用したときの予想収益等がデータベース20に登録されており、利用希望者に対して知的財産権の有用性を積極的にアピールしているので、その知的財産権が権利者以外の第三者に実施又は使用される機会が増加し、知的財産権の流動化及び有効活用を容易に促進することが可能となる。」
【0059】
「以上説明したように、本実施の形態では、データベース20に知的財産権の権利情報や知的財産権の価値を積極的にPRするPR情報を登録しておき、知的財産権の譲受又は実施(使用)を希望する者が、この登録情報を閲覧してその内容を簡単に把握することができるので、その結果として、知的財産権が権利者以外の第三者に譲渡又は実施(使用)される機会を増やし、知的財産権の有効活用を促進することが可能となる。」
などの記載によれば、特許権者が活用を希望する知的財産権であるといえる。
以上のことからみて、引用発明は「前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権を、前記第1ユーザが保有する1以上の知的財産権の中から特定し、当該知的財産権に関する公報の情報を、サーバに通知する公報通知手段」を有しているといえる。もっとも、引用発明では、前記第1ユーザ(特許権者)が活用を希望する知的財産権について、「事業に使用されていない」ことを特定する構成を有しておらず、この点で、引用発明は、本件補正後発明と相違する。
(オ−3)
引用発明の「利用希望者」、「利用希望情報」は、引用発明の「利用希望者は、その画面上に示された知的財産権の譲受又は実施(使用)を希望するとき、譲渡許諾情報利用端末40でその旨のキー操作等を行うことにより、譲渡許諾情報利用端末40は、その画面上の知的財産権の譲受又は実施(使用)を希望する旨の情報(以下、利用希望情報という)を知的財産情報提供サーバ10に送信する」の特定事項からみて、本件補正後発明の「知的財産権に興味を有する者」、「知的財産権に興味を有する者が存在することを少なくとも示す情報」に相当する。
また、引用発明の「利用希望情報」は、上記利用希望情報を得るための過程の処理からみて、上記利用希望者が、知的財産情報提供サーバ10の譲渡許諾情報DB23を参照して検索を行った結果から得られる情報である。
そして、知的財産情報提供サーバ10の譲渡許諾情報DB23に登録されている情報は、(オ−2)で検討したように、「知的財産権の権利者が、譲渡許諾情報登録端末30を用いて、自身が保有する知的財産権の文献情報を知的財産情報提供サーバ10に送信し」て登録がされる情報であるから、上記登録がなされていない情報は表示されないという点において、「情報処理装置により当該知的財産権に関する公報の情報がサーバに通知された結果」として登録されている情報である。
すなわち、「利用希望情報」は、「情報処理装置により当該知的財産権に関する公報の情報がサーバに通知された結果として登録されている情報」である、知的財産情報提供サーバ10の譲渡許諾情報DB23に登録されている情報を検索し、さらにいくつかの処理をした結果生成され、譲渡許諾情報利用端末40から知的財産情報提供サーバ10に送信される情報であるといえる。
そして、知的財産情報提供サーバ10は、その利用希望情報を受信すると、利用希望情報を含む画面情報を作成し、この作成した画面情報を今回利用希望されている知的財産権を保有する権利者の譲渡許諾情報登録端末30に送信するものであって、譲渡許諾情報登録端末30は、知的財産情報提供サーバ10からその画面情報を受信すると、その受信した画面情報を表示するのであるから、譲渡許諾情報登録端末30は、利用希望情報を含む画面情報を受信するための受付手段を有しているといえる。
以上のことから、引用発明は「知的財産権に興味を有する者が存在することを少なくとも示す情報であって、情報処理装置により当該知的財産権に関する公報の情報がサーバに通知された結果として生成され、サーバから情報処理装置に送信された情報を受付ける受付手段」を備えている。
(オ−4)まとめ(一致点・相違点)
以上まとめると、本件補正後発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し相違点で相違する。
<一致点>
第1ユーザによって操作される情報処理装置であって、
前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権を、前記第1ユーザが保有する1以上の知的財産権の中から特定し、当該知的財産権に関する公報の情報を、サーバに通知する公報通知手段と、
知的財産権に興味を有する者が存在することを少なくとも示す情報であって、情報処理装置により当該知的財産権に関する公報の情報がサーバに通知された結果として生成され、サーバから情報処理装置に送信された情報を受付ける受付手段と、
を備える情報処理装置。

<相違点>
本件補正後発明では、「事業に使用されていないが前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権」であるのに対し、引用発明では、前記第1ユーザ(特許権者)が活用を希望する知的財産権について、「事業に使用されていない」ことを特定する構成を有していない点で相違する。

(カ)判断
特許権者(第1ユーザ)が保有する特許権は複数あり、そして、その特許権について、自身がその事業に実際に利用しているか否か、あるいは、(実施権の設定や権利の譲渡などにより)他の事業者に対して利用可能とするか否か、などの判断は、特許権者が自身の事業計画などに基づいて適宜なされることは当たり前に行われていることである。
また、引用例1においても【0005】に、
「一方、知的財産権の権利者の中には、自身の知的財産権が登録されたにもかかわらず、設備や資金が不足し実施や使用が困難であるため、知的財産権の有償譲渡又はライセンス契約の締結を希望している場合も多い。」
と記載されるように、自身が保有する特許権について、自分では実施しないものの、他者に対して当該特許権を利用可能とすることも普通に想定している。
したがって、上記の判断に際して、自身が保有する特許権について、自分では実施をしていないが他の事業者に対して利用可能とする場合も当然想定されることであり、上記当然想定される特許権について、引用発明の情報処理装置(譲渡許諾情報登録端末30)を用いて登録することは、普通に想定できることであるから、引用発明に上記相違点に係る構成を付加し本件補正後発明とすることは当業者が容易になしえたことである。

(キ)効果
以上のように、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記相違点に係る構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

(ク)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、
『請求項1に係る本願発明と引用文献1〜2に記載の発明とを対比するに、
請求項1に係る本願発明は、上述の技術的特徴のうち少なくとも技術的特徴(A)及び(B)を有している。技術的特徴(A)及び(B)は、要するに、第1ユーザにより操作される情報処理装置が、第1ユーザの事業に使用されていないものの、第1ユーザが活用を希望する知的財産権に関する公報の情報を、サーバによる第2情報及び第3情報の抽出の根拠となる情報を含む第1情報として、第1ユーザが保有する1以上の知的財産権の中から抽出してサーバに通知するというものである。
即ち、請求項1に係る本願発明では、当初明細書段落[0021]〜[0022]に記載されているように、(α)特許権者端末2(本願の情報処理装置の一実施形態)が、事業者の事業に使用されていない特許権(本願の請求項1の「知的財産権」の一例)等を、特許権者(本願の請求項1の「第1ユーザ」の一例)が活用を希望する特許権として特定し、その情報(例えば特許番号等)をサーバ1(本願の請求項1の「サーバ」の一例)に通知する。
(β)特許権者端末2により特定されて通知される特許権の情報を受信するサーバ1は、当初明細書中の段落[0020]に記載されているように、クレーム内単語抽出部51と、明細書内単語抽出部52とを備える。
クレーム内単語抽出部51は、所定の特許権者が活用を希望する所定の特許権(以下、「活用希望特許権」と呼ぶ)に関する公報に含まれる請求の範囲の内容(クレームの内容)のうち、所定の単語を、クレーム内単語として抽出する。
明細書内単語抽出部52は、活用希望特許権に関する公報に含まれる明細書の内容のうち、抽出されたクレーム内単語と関連する単語を、明細書内関連単語として抽出する。』(下線、(α)、(β)の記号は当審で付加した。)
と述べ、
『このため、特許権者端末2により特定されて通知される特許権の情報には、サーバ1がクレーム内単語及び明細書内関連単語を抽出する際の根拠となる情報(本願の請求項1の「第1情報」の一例)が含まれることになる。
つまり、サーバは、情報処理装置(当初明細書にいう「特許権者端末2」)により第1情報が特定されて、通知がなされるからこそ第2情報及び第3情報を抽出することができる。』
と主張している。
ここで、上記主張について検討するに、上記(α)は、当審が上記(イ−2)において、認定したように、(情報処理装置が有する)公報通知手段の構成として認定しているから、当審の認定と請求人の認定とに相違はない。
一方、上記(β)の記載によれば、「サーバ1は・・・抽出する」と記載するように、サーバ1が行う処理として記載しているから、請求人もこれらの抽出の処理は、情報処理装置の処理を特定していないものとして認定している。
請求人は、結局サーバにおいて、「第1情報が特定されて、通知がなされるからこそ第2情報及び第3情報を抽出することができる」から、本件発明の認定に際して、「第1情報」、「第2情報」、「第3情報」をそれぞれ認定する必要があると述べているようであるが、上記(イ−2)で、本件明細書の記載を参酌して検討したように、「第1情報」は、それ単独では、知的財産権に関する公報の情報と言い替えることができるものであり、この点で、「第1情報」を「知的財産権に関する公報の情報」とする上記認定に誤りはない。
そして、上記第1情報のどのような構成(公報のどのような記載)を利用して、情報を処理するかは、サーバがそれ独自に行う処理あって、本件補正後発明において、「第2情報」の抽出処理、「第3情報」の抽出処理は、情報処理装置から送信される情報との関係でいえば、「知的財産権に関する公報」の情報があれば抽出が可能な処理であって、それ以上、格別な構成を「第1情報」が有することは必要としないことは、本件明細書の記載からも明らかである。
してみると、上記請求人の「サーバは、情報処理装置(当初明細書にいう「特許権者端末2」)により第1情報が特定されて、通知がなされるからこそ第2情報及び第3情報を抽出することができる」の主張は、正しいといえるが、上記第1情報は、引用発明で開示された「知的財産権に関する公報の情報」であれば、第2情報及び第3情報を抽出することができるのであって、それ以上の技術的意味を持たないのであるから、請求人が主張する「上述の技術的特徴(A)及び(B)は、「他のサブコンビネーション」に関する事項として、請求項1に係るサブコンビネーションの発明の構造、機能等を特定していると把握することができると思料する」との主張を採用することはできない。

(ケ)まとめ(独立特許要件)
以上によれば、補正後発明は、引用例1に記載された発明および、本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

したがって、本件補正後発明は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
(ア)補正前の請求項1に記載された発明
令和元年10月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし請求項13に係る発明は、平成31年4月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項13に係る発明のとおりであるところ、そのうち、補正前の請求項1に記載された発明は、一応、以下のとおりのものである。((a)〜(e)は当審が付与した。以下「構成要件(a)」等として引用する。)

【請求項1】
(a)第1ユーザによって操作される情報処理装置であって、
(b)前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権に関する公報の情報を、サーバによる第2情報及び第3情報の抽出の根拠となる情報を含む第1情報として、前記サーバに通知する公報通知手段と、
(c)前記サーバにおいて、
(c1)前記公報通知手段により通知された前記第1情報により特定される前記公報に含まれ得る第1書類の内容のうち、所定の文字、図形、記号、又はそれらの結合が、前記第2情報として抽出され、
(c2)当該公報に含まれ得る第2書類の内容のうち、抽出された前記第2情報と関連する文字、図形、記号又はそれらの結合が、前記第3情報として抽出され、
(c3)所定の文字、図形、記号、又はそれらの結合を第4情報として予め登録している複数の第2ユーザのうち、抽出された前記第3情報と関連のある第4情報を登録した者が、通知対象者として決定され、
(c4)当該通知対象者の端末に対して、当該知的財産権に関する情報が第5情報として通知され、
(c5)当該通知対象者の端末から、当該第5情報に関する当該知的財産権に対して当該通知対象者が興味を有する旨の第6情報が取得されて、
(c6)当該第6情報に基づいて、前記複数の第2ユーザの中に当該知的財産権に興味を有する者が存在することを少なくとも示す情報が、第7情報として生成され、
(c7)前記情報処理装置により前記第1情報が通知された結果として生成された当該第7情報が、当該情報処理装置に送信された場合において、
(d)当該第7情報を受付ける受付手段と、
(e)を備える情報処理装置。

(イ)本願発明
上記補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明とを対比すると、構成要件(a)、(c)〜(e)は、構成要件(A)、(C)〜(E)と共通であるから、上記「第2 2.(2−3)(イ)」の認定と同様に認定する。
構成要件(b)「前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権に関する公報の情報を、サーバによる第2情報及び第3情報の抽出の根拠となる情報を含む第1情報として、前記サーバに通知する公報通知手段と」は、本件補正により構成要件(B)「事業に使用されていないが前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権を、前記第1ユーザが保有する1以上の知的財産権の中から特定し、当該知的財産権に関する公報の情報を、サーバによる第2情報及び第3情報の抽出の根拠となる情報を含む第1情報として、前記サーバに通知する公報通知手段と」のように補正されたところ、「知的財産権に関する公報の情報を、サーバによる第2情報及び第3情報の抽出の根拠となる情報を含む第1情報として、前記サーバに通知する」の特定事項は、上記「第2 2.(2−3)(イ)(イ−2)」で検討したように、「知的財産権に関する公報の情報を、前記サーバに通知する」と認定できるから、補正前発明の「知的財産権に関する公報の情報を、サーバによる第2情報及び第3情報の抽出の根拠となる情報を含む第1情報として、前記サーバに通知する」も、補正後発明と同様に認定できることは明らかである。
したがって、補正前発明の構成要件(b)は「前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権に関する公報の情報を、前記サーバに通知する公報通知手段と」(以下、構成要件(b’)という。)と認定する。

以上のことから、本願発明は、、
(a)第1ユーザによって操作される情報処理装置であって、
(b’)前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権を、サーバに通知する公報通知手段と、
(d’)知的財産権に興味を有する者が存在することを少なくとも示す情報であって、情報処理装置により当該知的財産権に関する公報の情報がサーバに通知された結果として生成され、サーバから情報処理装置に送信された情報を受付ける受付手段と、
(e)を備える情報処理装置。
と認める。

2.引用例1の記載
審査官が拒絶の査定で引用した引用例1には、上記第2 2.(2−3)(ウ)に示したとおりの事項が記載されている。

3.引用例1記載の発明
上記引用例1には、上記第2 2.(2−3)(エ)に示した、引用発明が記載されている。

4.対比・判断
本願発明は、上記1.(イ)で認定したとおりであるところ、構成要件(a)、(d’)、(e)は補正後発明の構成要件(A)、(D’)、(E)と共通であるから、第2 2.(2−3)(オ)で対比したとおり、引用発明と相違がない。
構成要件(b’)について検討すると、上記「第2 2.(2−3)(オ)(オ−2)」で対比したとおり、『引用発明は「前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権を、前記第1ユーザが保有する1以上の知的財産権の中から特定し、当該知的財産権に関する公報の情報を、サーバに通知する公報通知手段」を有している』のであるから、構成要件(b’)を有していることも明らかである。
以上のことから、引用発明と本願発明とに相違はない。
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明である。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項2ないし13に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-02-18 
結審通知日 2021-02-24 
審決日 2021-03-11 
出願番号 P2016-067886
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 113- Z (G06Q)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 佐藤 聡史
特許庁審判官 渡邊 聡
松田 直也
発明の名称 情報処理装置及び方法、並びにプログラム  
代理人 正林 真之  
代理人 林 一好  
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