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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F25D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1382212
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-08 
確定日 2022-02-17 
事件の表示 特願2016−154372「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月 8日出願公開、特開2018− 21731〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年8月5日の出願であって、令和2年7月3日付けで拒絶の理由が通知され、令和2年8月28日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年12月7日付け(発送日:令和2年12月15日)で拒絶査定がなされ、それに対して、令和3年3月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和3年3月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年3月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年8月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜7の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
冷蔵庫本体と、
前記冷蔵庫本体の前面開口部を開閉し、前面に板材を有する扉と、
機能の操作を検知する操作部と、
前記操作部での前記操作の検知を受ける制御部と、
前記板材の内側に設けられ、前記操作部が前記操作を検知した場合に、前記制御部により駆動されて振動を発生する振動発生部と、を備え、
前記操作部の周囲にガード電極が配置され、前記制御部は、前記操作部での前記操作の検知と前記ガード電極に触れたことの検知との両方を受けたとき、このときの前記操作部での前記操作の検知は無効にすることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記操作部が前記操作を検知した場合に、前記制御部により駆動されて操作音を発生する操作音発生部を備え、
前記操作部にスイッチ電極が複数配置され、前記制御部は、前記操作部の押された前記スイッチ電極が判別できた場合には、前記操作音発生部には前記操作音を発生させ、前記制御部は、前記操作部の押された前記スイッチ電極が判別できなかった場合またはあらかじめ定めた禁止操作が行われた場合には、前記振動発生部により振動を発生させることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記操作部が前記操作を検知した場合に、前記制御部により駆動されて操作音を発生する操作音発生部を備え、
前記制御部は、前記操作部の前記操作が判別できた場合には、前記操作音発生部には前記操作音を発生させ、前記制御部は、あらかじめ定めた特定の前記操作のみ、前記振動発生部により振動を発生させることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記扉は、前記冷蔵庫本体に対して扉支持部を用いて、前記冷蔵庫本体に開閉可能に支持され、前記板材は、前記扉の板材支持部材により支持されており、
前記振動発生部は、前記扉支持部から離れた位置に配置され、かつ前記板材支持部材から離れた位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記板材は、前記扉の板材支持部材により支持されており、前記振動発生部は、前記板材支持部材から離れた位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記振動発生部は、前記板材の内側に直接接して配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記板材の内側には、薄肉部分が設けられており、前記薄肉部分の内側には前記振動発生部が配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の冷蔵庫。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1〜7の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
冷蔵庫本体と、
前記冷蔵庫本体の前面開口部を開閉し、前面に板材を有する扉と、
機能の操作を検知する操作部と、
前記操作部での前記操作の検知を受ける制御部と、
前記板材の内側に設けられ、前記操作部が前記操作を検知した場合に、前記制御部により駆動されて振動を発生する振動発生部と、
前記操作部が前記操作を検知した場合に、前記制御部により駆動されて操作音を発生する操作音発生部と、を備え、
前記操作部の周囲にガード電極が配置され、前記制御部は、前記操作部での前記操作の検知と前記ガード電極に触れたことの検知との両方を受けたとき、このときの前記操作部での前記操作の検知は無効にするものであり、
前記操作音発生部は、前記振動発生部から離れた位置に配置され、前記操作音発生部から前記操作部までの距離が、前記振動発生部から前記操作部までの距離よりも長いことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記操作部にスイッチ電極が複数配置され、前記制御部は、前記操作部の前記スイッチ電極が1つのみ触れられたことにより触れられた前記スイッチ電極が判別できた場合には、前記操作音発生部には前記操作音を発生させ、前記制御部は、前記操作部の前記スイッチ電極が2つ以上同時に触れられたことにより触れられた前記スイッチ電極が判別できなかった場合またはあらかじめ定めた禁止操作が行われた場合には、前記振動発生部により振動を発生させることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記制御部は、前記操作部の前記操作が判別できた場合には、前記操作音発生部には前記操作音を発生させ、前記制御部は、あらかじめ定めた特定の前記操作のみ、前記振動発生部により振動を発生させることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記扉は、前記冷蔵庫本体に対して扉支持部を用いて、前記冷蔵庫本体に開閉可能に支持され、前記板材は、前記扉の板材支持部材により支持されており、
前記振動発生部は、前記扉支持部から離れた位置に配置され、かつ前記板材支持部材から離れた位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記板材は、前記扉の板材支持部材により支持されており、前記振動発生部は、前記板材支持部材から離れた位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記振動発生部は、前記板材の内側に直接接して配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記板材の内側には、薄肉部分が設けられており、前記薄肉部分の内側には前記振動発生部が配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の冷蔵庫。」

新規事項の追加について
(1)請求項1について
請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「冷蔵庫」に関して、「前記操作部が前記操作を検知した場合に、前記制御部により駆動されて操作音を発生する操作音発生部」を備える点、「前記操作音発生部は、前記振動発生部から離れた位置に配置され、前記操作音発生部から前記操作部までの距離が、前記振動発生部から前記操作部までの距離よりも長い」点を限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求項1についての補正は、補正前の請求項2の記載、本願明細書の段落【0028】、図1の記載に基づくものであるから、新規事項を追加するものではない。

(2)請求項2について
請求項2についての補正は、「前記制御部は、前記操作部の前記スイッチ電極が1つのみ触れられたことにより触れられた前記スイッチ電極が判別できた場合には、前記操作音発生部には前記操作音を発生させ、前記制御部は、前記操作部の前記スイッチ電極が2つ以上同時に触れられたことにより触れられた前記スイッチ電極が判別できなかった場合またはあらかじめ定めた禁止操作が行われた場合には、前記振動発生部により振動を発生させる」とするものであり、令和2年7月3日の拒絶の理由の理由1(特許法第36条第4項第1号)、理由2(特許法第36条第6項第2号)に関連して、スイッチ電極による判別について明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、請求項2についての補正が新規事項を追加するものか否かについて検討する。本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、スイッチ電極による判別に関して次のとおり記載されている。
「【0058】
動作例3では、さらに、使用者が、例えば図1に示す左側の扉3の操作部31を手指や肘等で触れて、操作部31は左側の扉3の開扉操作を受けたことを検知した場合に、制御部100は、図6に示す操作部31のスイッチ電極21F(操作部31の操作)が判別できた場合には、操作音発生部50には例えば「ピー」等の操作音を発生させる。
【0059】
一方、使用者が、例えば図1に示す左側の扉3の操作部31を手指や肘等で触れたが、制御部100は、例えば操作部31の押されたスイッチ電極21F(操作部31の操作)が判別できなかった場合(検知エラー)には、振動発生部31により振動を発生させる。」
上記記載においては、「(操作部31の操作)が判別できた場合」と「(操作部31の操作)が判別できなかった場合」が記載されているが、請求項2についての補正により追加された「スイッチ電極が1つのみ触れられたことにより触れられた前記スイッチ電極が判別できた場合」、及び「スイッチ電極が2つ以上同時に触れられたことにより触れられた前記スイッチ電極が判別できなかった場合」については記載されていない。
そして、上記補正により追加された点は、当初明細書等には記載されておらず、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、請求項2についての補正を含む本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件に違反するものであり、同法159条第1項で読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 独立特許要件について
上記のとおり、本件補正は却下すべきものであるが、仮に本件補正が当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであって、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものとして、本件補正後の請求項1に記載された発明(上記1(2)参照。以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開2009−257627号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審にて付したものである。)。

(1−a)「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、静電容量式センサを用いたタッチスイッチは、マイクロスイッチを用いたタッチスイッチとは異なり、使用者において、タッチスイッチが自らの操作を認識(検出)したかどうかを、知覚的(触覚的)に把握することが難しい。そのため、開扉装置が動作するまでタッチスイッチに手を触れたままにしておくことが想定され、その場合、突き指などの怪我をするおそれがある。
【0004】
そこで、本発明は、静電容量式センサを用いたタッチスイッチが使用者の操作を検出したことを、使用者に知覚させやすくして、安全に開扉装置を駆動させることができる冷蔵庫を提供することを目的とする。」

(1−b)「【0007】
以下、本発明の実施形態に係る冷蔵庫について図面に基づいて説明する。
【0008】
図1は、一実施形態に係る冷蔵庫10の閉扉状態での斜視図であり、図2は、その開扉状態での斜視図である。この冷蔵庫10は、最上段に観音開き式扉による左右両開きの冷蔵室12を備え、冷蔵室12の下方に、製氷室14と冷凍室16,18が引き出し扉方式により設けられたものである。
【0009】
冷蔵室12の前面開口部には、該開口部を幅方向に区分し、冷蔵庫本体11の左右両側に設けたヒンジ20,20で回動自在に枢支した観音開き式の左扉22および右扉24が設けられており、両扉22,24により冷蔵室12が閉塞されるように構成されている。両扉22,24の裏面周縁部には、ガスケット26が全周縁にわたって取り付けられており、冷蔵庫本体11の開口縁、及び左扉22の裏面に設けられた縦仕切り体28に当接して冷蔵室12内をシールしている。
【0010】
冷蔵庫本体11の上面前方部には、閉塞状態にある上記扉22,24を自動開放させる開扉装置30が設けられている。開扉装置30は、ソレノイドなどのアクチュエータにより動作する左右一対のプッシャ32,32を備えて、該プッシャ32,32により扉22,24の背面を前方に押圧することにより、扉22,24が前方に押し開かれるように構成されている。開扉装置30は、図3に示すように、冷蔵庫10のメイン制御部(メイン制御回路)34に接続されており、該メイン制御部34から出力される駆動信号により、上記の開扉動作を行うように構成されている。
【0011】
上記扉22,24の前面には、使用者の操作により上記開扉装置30を駆動させるための信号を出力するタッチスイッチ36,36が設けられている。タッチスイッチ36は、この例では、各扉22,24の枢支側辺に対向する反枢支側の縁部に形成された取っ手38,38の前面にそれぞれ設けられている。
【0012】
タッチスイッチ36は、人体の静電容量を検出する静電容量式センサを用いて構成されている。詳細には、図3に示すように、この静電容量式のタッチスイッチ36は、使用者が触れるタッチ部としての前面部を構成するアクリル板などの樹脂板40と、該樹脂板40の背後に重ね設けられた検出用電極を構成する金属板などの導電体42と、該導電体42に接続された静電容量検出回路44とで構成されている。樹脂板40の前面に人体が接触すると、導電体42との間で形成される静電容量が変化するので、この静電容量の変化を静電容量検出回路44で検出することにより、使用者がタッチスイッチ36を操作したことを検出することができる。
【0013】
静電容量検出回路44は、冷蔵庫10のメイン制御部34に接続されており、使用者の静電容量を検出したときに、その信号をメイン制御部34に出力する。出力された信号は、メイン制御部34に実装されたマイコン(不図示)に入力され、該マイコンから上記の通り開扉装置30に駆動信号が出力される。
【0014】
図1に示すように、上記扉22,24の前面には、また、各タッチスイッチ36,36が使用者の静電容量を検出したこと、即ち、使用者の操作が各タッチスイッチ36,36により認識されたことを、当該使用者に対して報知する報知手段46,46がそれぞれ設けられている。報知手段46は、タッチスイッチ36を操作する使用者によって認識しやすいように、タッチ部である樹脂板40の近傍に設けられており、この例では、発光体としての発光ダイオード(以下、LEDという。)により構成されている。」

(1−c)「【0027】
図8は、更に他の実施形態を示したものである。この例では、報知手段としてLED46に代えて、音発生手段としてのブザー66を設けており、ブザー66が鳴動することにより、タッチスイッチ36が使用者の静電容量を検出したことを、当該使用者に報知するように構成されている。ブザー66は、タッチスイッチ36を操作する使用者によって認識しやすいように、タッチ部である樹脂板40の近傍に設けられている。
【0028】
ブザー66は、メイン制御部34に接続されており、メイン制御部34からの駆動信号に基づき、音が出るように構成されている。
【0029】
この例では、使用者がタッチスイッチ36に接触して、静電容量検出回路44がそのことを検出すると、静電容量検出回路44からの信号がメイン制御部34に実装されているマイコン(不図示)に入力され、マイコンから出力される駆動信号に基づき、ブザー66が鳴る。これにより、使用者はタッチスイッチ36が認識したことを聴覚的に容易に把握することができる。
【0030】
以上の実施形態では、報知手段として、LED46やブザー66を用いたが、使用者が知覚しやすいものであれば、これには限定されず、例えば、使用者が接触するタッチ部を振動させるためのバイブレータを設け、バイブレータによる振動により使用者の触覚に訴えるようにしてもよい。」

上記(1−a)〜(1−c)の事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
「冷蔵庫本体11と、
前面開口部に設けられた左扉22および右扉24と、
上記扉22,24を自動開放させる開扉装置30と、
使用者の操作により上記開扉装置30を駆動させるための信号を出力するタッチスイッチ36と、
タッチスイッチ36が、使用者の静電容量を検出したときに、その信号を出力するメイン制御部34と、
タッチスイッチ36が使用者の静電容量を検出したことを、メイン制御部34からの駆動信号に基づき当該使用者に報知する報知手段として、タッチスイッチ36のタッチ部である樹脂板40の近傍に設けられたブザー66と、を備え、
前記報知手段として、ブザー66には限定されず、使用者が接触するタッチ部を振動させるためのバイブレータを設け、バイブレータによる振動により使用者の触覚に訴えるようにしてもよい冷蔵庫。」

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2009−111557号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている

(2−a)「【0001】
本発明は、情報入出力装置、その情報入出力装置を備えた電子機器、誘導加熱調理器、加熱調理器、冷蔵庫、洗濯機、および炊飯器に関するものである。」

(2−b)「【0022】
出力手段3は、たとえばLCDあるいは有機ELディスプレイなどの表示装置を用いることができる。図1においては表示装置3aとしてLCDを用いたものを示した。
表示装置3aは、機器本体20の動作や異常の状態、あるいは入力手段2による入力情報に対する応答情報を、文字、図面、色などの情報として出力する。
表示装置3aを用いることで、ユーザの視覚に対する出力を行うことができる。
特に有機ELディスプレイは、表示部を薄くできるので、入出力装置1を小型化することができる。
【0023】
また、出力手段3は、たとえばスピーカなどの音声出力手段を用いることができる。図1においては音声出力手段3bとしてスピーカを用いたものを示した。
音声出力手段3bは、機器本体20の動作や異常の状態、あるいは入出力手段2による入力情報に対する応答情報を、ビープ音、メロディ、音声などの音声として出力する。
音声出力手段3bを用いることで、ユーザの聴覚に対する出力を行うことができる。
【0024】
また、出力手段3は、たとえば振動モータなどの振動発生手段を用いることができる。図1においては、振動発生手段3cとして振動モータを用いたものを示した。
振動発生手段3cは、機器本体20の動作や異常の状態、あるいは入出力手段2による入力情報に対する応答情報を、振動として出力する。
振動発生手段3cを用いることで、ユーザの触覚に対する出力を行うことができる。
【0025】
以上に示した出力手段3の構成については、前述した出力手段3のすべての構成を並列的に搭載してもよい。なお、図1においては、出力手段3として表示装置3a、音声出力手段3b、振動発生手段3cの全ての構成を搭載した例について示した。
機器本体の機能や使用環境、使用状態、コストなどを考慮し、出力手段3の前述の構成の中から必要なものだけを搭載するものとしてもよい。」

(2−c)「

【図1】



(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「冷蔵庫本体11」は、本願補正発明の「冷蔵庫本体」に相当する。
また、引用発明の「前面開口部に設けられた左扉22および右扉24」は、前面開口部を開閉するものといえる。さらに、冷蔵庫を開閉する扉の前面には板材を有していることは明らかである。
よって、引用発明の「前面開口部に設けられた左扉22および右扉24」は、本願補正発明の「冷蔵庫本体の前面開口部を開閉し、前面に板材を有する扉」に相当する。

イ 引用発明の「開扉装置30を駆動させる」ことは、本願補正発明でいう「機能」に含まれるものである。
よって、引用発明の「使用者の操作により上記開扉装置30を駆動させるための信号を出力するタッチスイッチ36」は、本願補正発明の「機能の操作を検知する操作部」に相当する。

ウ 引用発明における「タッチスイッチ36が、使用者の静電容量を検出」する点は、本願補正発明の「操作部での前記操作の検知」する点に相当する。
よって、引用発明の「タッチスイッチ36が、使用者の静電容量を検出したときに、その信号を出力するメイン制御部34」は、本願補正発明の「操作部での操作の検知を受ける制御部」に相当する。

エ 引用発明の「ブザー66」により「メイン制御部34からの駆動信号に基づき当該使用者に報知する」点は、本願補正発明の「制御部により駆動されて操作音を発生する」点に相当する。
よって、引用発明の「タッチスイッチ36が使用者の静電容量を検出したことを、メイン制御部34からの駆動信号に基づき当該使用者に報知する報知手段として、タッチスイッチ36のタッチ部である樹脂板40の近傍に設けられたブザー66」は、本願補正発明の「操作部が操作を検知した場合に、制御部により駆動されて操作音を発生する操作音発生部」に相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「冷蔵庫本体と、
前記冷蔵庫本体の前面開口部を開閉し、前面に板材を有する扉と、
機能の操作を検知する操作部と、
前記操作部での前記操作の検知を受ける制御部と、
前記操作部が前記操作を検知した場合に、前記制御部により駆動されて操作音を発生する操作音発生部と、を備えた冷蔵庫。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は、「板材の内側に設けられ、操作部が操作を検知した場合に、制御部により駆動されて振動を発生する振動発生部」を備えるのに対し、引用発明は、「報知手段として、ブザー66には限定されず、使用者が接触するタッチ部を振動させるためのバイブレータを設け、バイブレータによる振動により使用者の触覚に訴えるようにしてもよい」ものであり、操作音発生部(ブザー66)と振動発生部(バイブレータ)を共に備えるものかどうか明らかではない点。

[相違点2]
本願補正発明は、「操作部の周囲にガード電極が配置され、制御部は、前記操作部での前記操作の検知と前記ガード電極に触れたことの検知との両方を受けたとき、このときの前記操作部での前記操作の検知は無効にするもの」であるのに対し、引用発明は、そのような構成を有していない点。

[相違点3]
本願補正発明は、「操作音発生部は、振動発生部から離れた位置に配置され、前記操作音発生部から前記操作部までの距離が、前記振動発生部から前記操作部までの距離よりも長い」のに対し、引用発明はそのように特定されていない点。

(4)判断
ア 上記[相違点1]について検討する。
引用発明には、少なくとも操作音発生部(ブザー66)又は振動発生部(バイブレータ)のいずれかを設ける点が開示されているものであり、引用発明の振動発生部(バイブレータ)を外から見えないよう板材の内側に設けることは当業者が適宜なし得たことである。
一方、引用例2(上記(2−a)、(2−b)参照。)には、入出力手段2による入力情報に対する応答情報を、ビープ音、メロディ、音声などの音声として出力する音声出力手段3bと、入出力手段2による入力情報に対する応答情報を、振動として出力する振動発生手段3cとを同時に搭載した冷蔵庫が記載されている(以下「引用例2記載の事項」という。)。
引用発明と引用例2記載の事項とは、操作に基づく報知手段を有する冷蔵庫である点で共通するから、引用発明に引用例2記載の事項を適用し、操作音発生部を備えるとともに振動発生部を備えるように構成し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

イ 上記[相違点2]について検討する。
操作部の周囲にガード電極を配置し、操作部での操作の検知とガード電極に触れたことの検知との両方を受けたときに操作の検知を無効にする点は、周知の技術である。
(例えば、原査定において引用文献6として引用した特開2009−111996号公報の段落【0023】〜【0025】、図1に記載された、操作スイッチの周囲にダミースイッチを近接配置し、ダミースイッチの有効な接触を検出したときは操作スイッチの接触検出を無効にする点、同じく引用文献7として引用した国際公開第2014/208585号の段落[0312]に記載された接触センサとガード電極の両方を不用意に触れた場合には、左扉の開閉操作を無効にする点を参照のこと。)
よって、引用発明における操作部(タッチスイッチ)の構成として、操作部における上記周知の技術を適用し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

ウ 上記[相違点3]について検討する。
引用発明において、操作音発生部(ブザー66)は、操作部(タッチスイッチ36のタッチ部である樹脂板40)の近傍に設けられている。また、振動発生部(バイブレータ)は、操作部(タッチ部)を振動させるものであるから、操作部に接触して設けられるものといえる。
そして、引用発明における操作音発生部、操作部、振動発生部の配置は、当業者が部品の組み立て等を考慮して適宜設定するものであるところ、上記のとおり、振動発生部は操作部に接触して設けられること、及び操作音発生部(ブザー66)は操作部(タッチスイッチ36のタッチ部である樹脂板40)の近傍に設けられてよいことを踏まえると、操作音発生部を、振動発生部から離れた位置に配置するとともに、操作音発生部から操作部までの距離を、振動発生部から操作部までの距離よりも長いように構成することは、当業者にとって格別困難なこととはいえない。
よって、引用発明において、上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

エ 本願発明が奏する効果について
上記相違点1〜3によって本願発明が奏する効果は、当業者が引用発明、引用例2記載の事項及び周知の技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

オ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において「引用文献2においては、「報知手段」の一例としてLED46が示され、当該「報知手段」の代替例として、ブザー66(本願の操作音発生部に対応)及びバイブレータ(本願の振動発生部に対応)が示されております(引用文献2の段落[0014]、[0027]、[0030]参照)。このため、引用文献2にも、「振動発生部の発生する振動と、操作音発生部の発生する操作音とが、互いに干渉しない」ようにするための「操作音発生部と振動発生部と操作部との位置関係に関する事項」は開示されていないものと思料します。」と主張する(「2.拒絶査定の理由について」)。
しかしながら、上記ウで検討したとおり、操作音発生部を、振動発生部から離れた位置に配置するとともに、操作音発生部から操作部までの距離を、振動発生部から操作部までの距離よりも長いように構成することは、当業者にとって格別困難なこととはいえない。
そして、振動発生部や操作音発生部が互いに影響を受けないような配置にすることも、当業者において設計上当然考慮されることといえる。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(5)まとめ
以上のように、本願補正発明は、引用発明、引用例2記載の事項及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するから、同法159条第1項の規定において準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、仮にそうでなくても、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜7に係る発明は、令和2年8月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜7に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2[理由]1(1)」に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献2:特開2009−257627号公報(引用例1)
引用文献6:特開2009−111996号公報(周知技術を示す文献)
引用文献7:国際公開第2014/208585号(周知技術を示す文献)

3 引用例
引用例1及びその記載事項は、前記「第2[理由]3(1)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]3」で検討した本願補正発明から「前記操作部が前記操作を検知した場合に、前記制御部により駆動されて操作音を発生する操作音発生部」を備える点、及び「前記操作音発生部は、前記振動発生部から離れた位置に配置され、前記操作音発生部から前記操作部までの距離が、前記振動発生部から前記操作部までの距離よりも長い」点を削除するものである。
本願発明と引用発明とを対比すると、上記「第2[理由]3(4)ア」で検討したとおり、引用発明には、少なくとも操作音発生部(ブザー66)又は振動発生部(バイブレータ)のいずれかを設ける点が開示されているから、
本願発明と引用発明とは、
「 冷蔵庫本体と、
前記冷蔵庫本体の前面開口部を開閉し、前面に板材を有する扉と、
機能の操作を検知する操作部と、
前記操作部での前記操作の検知を受ける制御部と、を備えた冷蔵庫。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1’]
本願発明は、「板材の内側に設けられ、操作部が操作を検知した場合に、制御部により駆動されて振動を発生する振動発生部」を備えるのに対し、引用発明は、「報知手段として、ブザー66には限定されず、使用者が接触するタッチ部を振動させるためのバイブレータを設け、バイブレータによる振動により使用者の触覚に訴えるようにしてもよい」ものである点。

[相違点2’]
本願発明は、「操作部の周囲にガード電極が配置され、制御部は、前記操作部での前記操作の検知と前記ガード電極に触れたことの検知との両方を受けたとき、このときの前記操作部での前記操作の検知は無効にするもの」であるのに対し、引用発明は、そのような構成を有していない点。

ア 相違点1’について検討する。
引用発明は、「報知手段として、ブザー66には限定されず、使用者が接触するタッチ部を振動させるためのバイブレータを設け、バイブレータによる振動により使用者の触覚に訴えるようにしてもよい」ものであるから、報知手段として操作音発生部(ブザー66)ではなく、振動発生部(バイブレータ)を設ける点が開示されているといえる。
よって、相違点1’は実質的な相違点とはいえない。

イ 相違点2’について検討する。
上記「第2[理由]3(3)」に示した相違点2と同様のものであるから、上記「第2[理由]3(4)イ」で検討したとおり、引用発明における操作部(タッチスイッチ)の構成として周知の技術を適用し、本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

よって、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-12-08 
結審通知日 2021-12-14 
審決日 2021-12-28 
出願番号 P2016-154372
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F25D)
P 1 8・ 561- Z (F25D)
P 1 8・ 121- Z (F25D)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 平城 俊雅
槙原 進
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 三好 秀和  
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